JP4627714B2 - キトサン中のトロポミオシンを測定する方法およびキトサンの製造方法 - Google Patents

キトサン中のトロポミオシンを測定する方法およびキトサンの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、キトサン中のトロポミオシン測定方法に関する。より詳しくは、イムノアッセイ方法、特にELISA方法によって、キトサン中のトロポミオシンを測定する方法に関する。また、当該測定方法によりトロポミオシン含量が評価されたキトサンに関する。
キトサンは機能性多糖であり、化粧品、健康食品、飼料添加物などの原料として広く使用されている。現在国内で一般に販売されているキトサンの殆どは、カニ殻を原料に工業生産されている。工業的には、キトサンは次のように製造される。まず、水産加工場などから発生するカニ殻を収集する。収集したカニ殻を希塩酸に浸漬して、カニ殻中の炭酸カルシウムを塩化カルシウムに変え、該塩化カルシウムを水洗除去することにより、カニ殻からキチンを単離する。次いで、このキチンを40質量%以上の高濃度水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して加熱することによって、キチンを脱アセチル化してキトサンとし、その後生成したキトサンを徹底的に水洗して、過剰の水酸化ナトリウムおよび副生する酢酸ナトリウムを除去し、乾燥することによりキトサンフレークが得られる。
上記のようにキトサンの製造工程は、酸およびアルカリ中への浸漬工程および水洗工程の繰り返しからなる。また、キチンの脱アセチル化は、40質量%以上の高濃度水酸化ナトリウム水溶液でキチンを膨潤させ、キチン中のアセチルアミノ基の約80%以上が脱アセチル化されてアミノ基になるまで行われる。脱アセチル化されたキチン、すなわち、生成したキトサンは、その後徹底的に水洗されるので、最終製品のキトサン中にカニ殻に付着したタンパク質はもちろんカニ殻中のタンパク質も未変性のまま、分解を受けずにそのままキトサン中に残存しているとは考え難い。
一方、キトサン中のタンパク質を、従来公知のタンパク質測定方法で測定すると、キトサンの構成要素であるグルコサミン単位が、タンパク質測定の阻害因子となり、タンパク質含有量の評価に値する結果が得られなかった。
キトサンの原材料であるカニ殻は、食物アレルギーを引き起こすアレルギー性タンパク質を含有することが知られている。上述した通り、最終製品のキトサン中にカニ殻に付着したタンパク質はもちろんカニ殻中のタンパク質も未変性のまま、分解を受けずにそのまま残存しているとは考え難いというのが現在の常識であり、従って、常法で製造したキトサン中にアレルギー性タンパク質がそのまま残存しているとは考えにくい。
現在、キトサンを含有する健康食品が広く食用されているが、当該健康食品にはキトサンの起源がカニ殻であることが明記されていること、一日に食する上記健康食品中のキトサンの上限量を1gとしていることなどと相まって、これまでキトサン食用によるアレルギー問題は起きていない。
キトサン中のタンパク質の量、特にアレルギー性のタンパク質の量またはそのタンパク質の一部であるペプチド断片(以下、そのペプチドと略す)もしくはそのタンパク質を構成するアミノ酸残基の量を測定することは困難である状況の中で、アレルギー発現に関係する可能性のあるタンパク質およびそのペプチドの含有量を測定し、それらの含有量をアレルギーを引き起こす可能性の指標として用い、市場に出すキトサンを評価することは、前記含有量がアレルギーの強さとまったく相関しない、あるいは殆ど相関しないとしても有意義なことであり、また、前記含有量の低いキトサンを製造し、前記含有量を評価したキトサンを市場に出すことは重要なことである。
最近アミノ酸分析の精度が格段に良くなり、新鋭機では前記グルコサミン単位などの妨害因子に影響されることなくキトサン中のアミノ酸を定量することが可能となったが、ここで分析されるのはあくまでもアミノ酸であり、前記アレルギー性タンパク質が、キトサン中においてモノマーのタンパク質として存在するのか、オリゴマーとして存在するのか、分解され、ペプチドとして存在するのか、アミノ酸として存在するのかは確定できない。また、この分析機器は非常に高価であり汎用には適さない。
従って本発明の目的は、キトサン中のアレルギー発現に関係する可能性のあるタンパク質、特にトロポミオシンおよびそのペプチドの含有量を簡便に精度よく測定する方法ならびにその測定方法によって得られる測定値が一定値以下であり、アレルギーを引き起こす可能性が低いと評価されたキトサンを提供することにある。
トロポミオシンは、分子量約3万3千のサブユニットからなる甲殻類中の筋肉タンパク質であり、現在、小エビの主なアレルゲンであることが確認されている。また、ロブスターおよびカニにおける分子のクローニング実験により、このタンパク質が甲殻類の共通のアレルゲンであると見なされている。従って食品によるアレルギー事故を未然に防ぐうえで、一般食品中のトロポミオシンの測定は重要であり、その測定のため、実際に免疫反応を利用した方法(enzyme-linked immunosorbent assay(ELISA方法))が開発および実用化されている。
そこで本発明者は、一般食品用に開発された前記トロポミオシンを測定するELISA方法を、キトサン中のトロポミオシンの測定に適用できるかどうかを検討した。その結果、固体のキトサンを酢酸、乳酸またはピロリドンカルボン酸などのキトサン溶解力を持つ有機酸類の少なくとも1種を含有する水溶液に溶解し、該水溶液を測定試料として各種抗体を使用するELISA方法を用いることにより、キトサン中のトロポミオシンを測定することが可能であるとの知見を得た。この測定方法よってキトサン中のトロポミオシンおよびそのペプチドの残存量の評価が可能であること、また、このトロポミオシンおよびそのペプチドの残存量が100ppm以下のキトサンは、アレルギーを引き起こす可能性が格段に低いこと、またはその可能性がないことを見出した。
すなわち、本発明は、キトサン中のトロポミオシンを、キトサンを有機酸の水溶液に溶解した状態で、イムノアッセイ方法で測定することを特徴とするトロポミオシン測定方法を提供する。
上記測定方法においては、イムノアッセイ方法が、ELISA方法であること;該ELISA方法が、一次抗体としての少なくとも1種の抗甲殻類トロポミオシン抗体と、少なくとも1種の標識抗体を使用するサンドイッチ方法であること;および上記標識抗体が、酵素標識抗甲殻類トロポミオシンポリクローナル抗体または酵素標識抗免疫グロブリン抗体であることが好ましい。
また、上記測定方法においては、上記甲殻類が、小エビ(a shrimp)類であり、酵素が、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼおよびβ−ガラクトシダーゼからなる群から選ばれる少なくとも1種であること;上記抗甲殻類トロポミオシン抗体が、測定用容器の内壁にコーティングされていること;および前記酵素が、ペルオキシダーゼであり、その基質としてo−フェニレンジアミン、2,2’−アジノビス(3−エチル−ベンズチアゾリンスルホン酸)ジアンモニウム塩およびテトラメチルベンジジンから選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。
また、上記測定方法においては、前記トロポミオシンの測定を、測定系の青色を測定して行うこと;前記トロポミオシンの測定を、青色を呈する測定系に硫酸またはリン酸を添加して、測定系を黄色に変え、該黄色を測定して行うこと;有機酸が、酢酸、乳酸およびピロリドンカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種であること;および有機酸水溶液の有機酸濃度が、0.1質量%以上1質量%以下であることが好ましい。
また、上記測定方法においては、キトサンが、その不溶解分が、以下の測定方法により1.0質量%以下のキトサンであることが好ましい。
(1)キトサンを105℃にて3時間乾燥する。
(2)乾燥前後の質量比からキトサン純分率を計算する。
(3)乾燥前のキトサンを1質量%の酢酸水溶液にキトサン純分(Aグラム)濃度0.5質量%に溶解する。
(4)上記水溶液を、恒量にしたG3のグラスフィルター(Bグラム)で濾過する。
(5)上記フィルター上の濾過残物を蒸留水で洗浄する。
(6)濾過残物を含むフィルターを105℃にて3時間乾燥し、秤量(Cグラム)する。
(7)式[(C−B)/A×100]によりキトサン中の不溶解分(質量%)を計算する。
また、本発明は、トロポミオシンの含有量が、100ppm以のキトサンを得るためのキトサンの製造方法であって、キトサンを有機酸の水溶液に溶解した状態で、イムノアッセイ方法でキトサン中のトロポミオシンの含有量を測定する工程を有することを特徴とするキトサンの製造方法を提供する。
本発明によれば、キトサン中のトロポミオシンを簡便かつ精度よく測定することができる。さらに、当該測定により、上記キトサンのヒトに対するアレルギー反応発現の可能性が、著しく低いかまたはないかを評価できる。本発明は、また、該アレルギー反応の可能性が著しく低いかまたはないと評価されたキトサンを提供することができる。
本発明を説明する前に、本発明で使用する用語を説明する。
「測定」とは、トロポミオシンの定量および単なる検出をも含めるものとする。
「一次抗体」とは、抗抗原抗体、すなわち、抗原に対する抗体を意味するものとする。この一次抗体にはモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体をも含めるものとする。一次抗体は、標識されていてもよく、されていなくてもよい。一次抗体を例示するならば、抗甲殻類トロポミオシン抗体を挙げることができる。一次抗体を産生する生物種としては、当該分野で通常使用される種々の生物種を用いることができる。当該生物種の中には、ハイブリドーマなどの培養細胞をも含む。
「二次抗体」とは、抗免疫グロブリン抗体、すなわち、抗体に対する抗体を抗原とする抗体を意味する。本発明においては、抗原に対する抗体の抗体だけでなく、抗体を作製した生物の免疫グロブリン自身(例、IgG)、すなわち、抗原と特異的に結合できなくても、抗体を作製した生物のIgGに特異的に結合できる抗体をも意味する。その他は一次抗体と同様である。この二次抗体は、標識されていてもよく、されていなくてもよい。
「トロポミオシン」とは、トロポミオシン自体に加えて、トロポミオシンの一部であるペプチドをも含むものとし、以後「トロポミオシンまたはそのペプチド」のことを単に「トロポミオシン」と略称する場合がある。
その他の用語は、特別に断りがない場合は、現在の免疫学、分子生物学および生化学の分野で使用されているものと同様な意味を有する。
以下、本発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明は、キトサン中のトロポミオシンを測定する方法である。当該キトサンは甲殻類から単離したキチンを原料として作られる。甲殻類からのキチンの単離方法は前記したような酸処理およびアルカリ処理を基本としたHackmanの方法が一般的であるが、これに限定されることなく、アルカリ処理の代わりにプロテアーゼなどの酵素を利用する方法などのこれまでに開発されているいずれの方法でもよい。
キトサンは、単離したキチンを水酸化アルカリ水溶液中で脱アセチル化して得られる。この場合、水酸化アルカリとしては水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどが使用され、水酸化アルカリ水溶液の濃度は35質量%以上であることが好ましい。脱アセチル化温度に制限はないが、低温であると反応速度が非現実的なものになってしまうので、20℃以上、好ましくは50℃以上である。
キチンを脱アセチル化後、得られたキトサンを十分に水洗する。本発明方法に使用するキトサンは、一例としてではあるが、酢酸濃度1質量%の水溶液にキトサンを濃度0.5質量%で溶解した時、キトサン中の不溶解分が1質量%以下のキトサンが好適である。そのようなものであればキトサンの脱アセチル化度に限定はない。
上記のような不溶解分の少ないキトサンを得るためには、現在の一般的な工業生産方法である、不均一系脱アセチル化法(キチンを溶解せずに水酸化アルカリ水溶液中に浸漬してキチンを脱アセチル化する方法)で得るキトサンの場合、70%以上の脱アセチル化度が必要であり、均一系脱アセチル化法(キチンを溶解状態で脱アセチル化する方法)で得るキトサンの場合、30%以上の脱アセチル化度が必要である。なお、脱アセチル化度はコロイド滴定によるキトサン構成糖単位中のグルコサミン単位のモル分率である。本発明においては、キトサンの分子量には限定はない。
本発明においてトロポミオシンを測定するキトサンは、有機酸水溶液に溶解した状態で使用する。これに対して、キトサンは、分散しにくいポリマーであり、キトサンが分散状態である場合、キトサンが分散不十分な状態となり、トロポミオシンの測定結果に誤差を生じる可能性があるので好ましくない。そこでキトサン中のトロポミオシンを測定する際、測定対象のキトサンに有機酸水溶液を加えるか、または有機酸水溶液にキトサンを加えるかして、キトサンを水溶液状態にしてキトサン中のトロポミオシンを測定するのが好ましい。
本発明において測定対象物であるキトサンを溶解するために使用する有機酸としては、酢酸、乳酸およびピロリドンカルボン酸などが好ましいものとして挙げられる。これらの有機酸水溶液の酸濃度は、0.1質量%以上2質量%未満が望ましく、より好適には0.5質量%以上1質量%以下である。上記有機酸の代わりに塩酸などの無機酸を使用したり、有機酸であってもその酸濃度が2質量%以上であると、得られるキトサン水溶液のpHが低くなりすぎ、キトサン水溶液中のトロポミオシンの測定値のバラつきが大きくなる傾向があり、好ましくない。また、有機酸濃度が0.1質量%未満ではキトサンは十分には溶解しない。上記の有機酸はキトサンと塩を形成している状態で使用してもよい。この場合は、上記の有機酸水溶液にキトサンを溶解する代わりに、キトサンの有機酸塩を試料調製用の溶媒に溶解すればよい。
測定に使用するキトサン水溶液のキトサンの濃度は、使用する有機酸水溶液の酸濃度に依存するので一概に言えないが、例えば、有機酸水溶液の濃度が1質量%の場合には、キトサン濃度として0.5質量%以上1質量%以下を例示できる。この濃度は、トロポミオシンを抽出用緩衝液などで希釈する前の濃度である。
上記のように本発明の方法においては、トロポミオシンの測定に使用するキトサンは、有機酸水溶液に溶解した水溶液状態で使用することが好ましい。このように水溶液状態のキトサンを用いれば、キトサン中のトロポミオシンの測定は、イムノアッセイ方法による測定であればどのような方法でもよく、特に限定されない。
また、使用するキトサンは、その脱アセチル化度や分子量に特に制限はないが、例えば、酢酸濃度1質量%の水溶液にキトサンを濃度0.5質量%で溶解した時、キトサン中の不溶解分が1質量%以下のキトサンであることが好適である。キトサン中の不溶解分は、以下のように測定される。
(1)キトサンを105℃にて3時間乾燥する。
(2)乾燥前後の質量比からキトサン純分率を計算する。
(3)乾燥前のキトサンを1質量%の酢酸水溶液にキトサン純分(Aグラム)濃度0.5質量%に溶解する。
(4)上記水溶液を、恒量にしたG3のグラスフィルター(Bグラム)で濾過する。
(5)上記フィルター上の濾過残物を蒸留水で洗浄する。
(6)濾過残物を含むフィルターを105℃にて3時間乾燥し、秤量(Cグラム)する。
(7)式[(C−B)/A×100]によりキトサン中の不溶解分(質量%)を計算する。
本発明は、前記のキトサン中のトロポミオシン(以下、特別に断らない限り、抗原と称する場合がある。)をイムノアッセイ方法を用いて測定する方法である。当該アッセイ方法には、競合イムノアッセイ方法およびサンドイッチ方法の二つの形式がある。本発明においてはどちらも好適に使用できる。さらに、これらの方法においては、測定のインジケーター(indicator)として、アイソトープ(131I、125I、14C、3H、57Co、75Seなど)、蛍光物質または酵素などを、抗原または抗体に標識して使用する方法が知られている。本発明においては、いずれの方法も使用することができる。
本発明において、測定方法としてサンドイッチ方法を使用する場合、測定精度および簡便性の面から、酵素で標識した抗体を使用する方法(ELISA方法と称される。)がより好適である。サンドイッチ方法においては、下記に示す一次抗体−抗原−標識抗体(一次または二次)の結合物(複合物ともいう。)を形成させる方法および一次抗体−抗原−無標識抗体(一次または二次)−標識二次抗体の結合物を形成させる方法がある。本発明においては、どちらも好適に使用できる。
本発明において、抗体を作成するための抗原として使用するトロポミオシンは、特に甲殻類由来のものがよい。例えば、カニ、エビ、ミジンコ、フジツボ、アミ、ワラジムシなどに由来するトロポミオシンを挙げることができる。より好適にはイセエビ(lobster)、小エビ(shrimp)およびカニ(crab)由来のトロポミオシンである。
本発明において使用する抗体は、抗原を使用して免疫(感作)したマウス、ハムスター、ニワトリ、ヤギ、ラット、ウサギなどの生物もしくはそれらから単離した細胞、または、抗原を使用して免疫した生物の脾臓からリンパ球を分離し、当該リンパ球をガン細胞(例えば、ミエローマ)と融合させて得た細胞(ハイブリドーマ)などを使用して調製するのがよい。しかし、本発明においてはこれらの例示に限定されない。すなわち、本発明の目的を達成できる生物もしくは細胞由来の抗体であればよい。モノクローナル抗体はハイブリドーマを用いて調製するのが好適である。
1.一次抗体−抗原−標識抗体(一次または二次)の結合物(複合物ともいう。)を形成させる方法。
この方法において使用する一次抗体は、少なくとも1種の一次抗体である。該一次抗体は、固定化(不溶化またはコーティングともいう。)されていても、いなくともよい。本発明は、キトサン中のトロポミオシンを測定する方法であるので、トロポミオシンの抗体であるならば、ポリクローナル抗体でも、モノクローナル抗体でもよい。測定精度の点から、一次抗体は、モノクローナル抗体を使用するのがより好適である。
上記方法において使用する標識抗体としては、少なくとも1種の一次抗体もしくは少なくとも1種の二次抗体、またはその混合物を含む。これらの抗体は、前記と同様にモノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよい。より好適な抗体の具体例として、一次抗体として抗小エビ(シュリンプ)トロポミオシン抗体が挙げられ、また、標識抗体としてペルオキシダーゼ標識抗免疫グロブリン抗体またはペルオキシダーゼ標識抗小エビ(シュリンプ)トロポミオシンポリクローナル抗体などが挙げられる。しかし、本発明はこれらの例示の抗体に限定されない。
上記方法において、固定化された抗体を使用する場合、抗体の固定化は、ガラス、プラスチックまたは紙などに対して行われる。具体的には、抗体の固定化を、ガラス、プラスチックまたは紙などの測定用容器、すなわち、試験管、小遠心チューブ、溝(ウェル)を有するプレート(例えば、マイクロタイタープレート)、またはビーズなどに行うのが好適である。抗体の固定化は、従来公知の方法で行うことができる。上記の固定化された抗体および標識抗体の調製は、同じ生物を免疫して調製してもよいが、異なった生物を免疫して調製するのが好適である。上記の方法においては、一次抗体と標識抗体との間に抗原が挟まれて、サンドイッチ状の結合物(conjugated substance)(複合物)が形成される。
本発明において、標識物質として蛍光物質を使用する場合、蛍光物質としては、本発明の目的が達成できるものであればいかなるものでもよいが、例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミンイソチアネートおよびフィコエリシリン(phycoerythrin)などを挙げることができる。蛍光物質の抗体への標識は、従来公知の方法で達成できる。標識物質として酵素を使用する場合、ELISA方法と称される。ELISA方法において、用いられる上記酵素としては、測定の精度および簡便性などからペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼおよびβ−ガラクトシダーゼなどを好適なものとして挙げることができる。これらのなかでもペルオキシダーゼを測定精度から特に好適なものとして挙げることができる。
上記の酵素の基質の好適な例示を以下に示す。酵素がペルオキシダーゼの場合は、o−フェニレンジアミン(発色:茶褐色)、2,2’−アジノビス(3−エチル−ベンズチアゾリンスルホン酸)ジアンモニウム塩、テトラメチルベンジジン(3,3’,5,5’−tetramethylbenzidine)(発色:青色)、ABTS(diammonium 2,2'-azino-bis(3-ethylbenzothiazoline-6-sulfate))(発色:青色)などが例示できる。これらのなかでも、発色の鋭敏性からテトラメチルベンジジンがより好ましい。酵素がアルカリホスファターゼの場合は、p−ニトロフェニルリン酸塩(発色:黄色)など、酵素がβ−ガラクトシダーゼの場合は、o−ニトロフェニルリン酸(発色:黄色)などが挙げられる。しかしながら、本発明においては、上記の例示に限定されるものではない。
酵素を抗体に標識する方法としては、従来公知の方法がいずれも好適に利用できる。標識方法の一つの具体例としては、抗体をまずビオチン化して(ビオチン化抗体)、酵素をストレプトアビジンで標識して、ビオチン化抗体のビオチンとストレプトアビジンとの結合を利用する方法がより好適である。酵素反応は、従来公知の条件で行うことができる。
2.一次抗体−抗原−無標識抗体(一次または二次)−標識二次抗体の結合物を形成させる方法。
この方法は、前記1の方法における標識抗体の代わりに、無標識の一次または二次抗体を使用し、さらに、標識二次抗体を使用するものである。当該標識二次抗体は、上記無標識の抗体に対する抗体(抗免疫グロブリン抗体)か、または上記無標識抗体に特異的に結合する抗体(例えば、標識抗体を作製した動物の抗体に、特異的に結合する抗体)であればよく、その由来を問わない。標識二次抗体は、本発明の場合、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でも使用できるが、好適にはポリクローナルを使用するのがよい。それ以外は前記1の方法と同様である。
上記の方法においては、一次抗体(この抗体は前記1.の方法と同様に固定化されていてもいなくともよいが、固定化されている方が好適である。)と抗原とが結合し、その結合物に無標識の一次または二次抗体が結合する。そして該結合物に標識二次抗体が結合する形式になる。標識物、標識方法などは前記1.の方法と同様である。
上記の方法において、より好適な抗体の具体例として、一次抗体としては、抗シュリンプトロポミオシン抗体が挙げられ、標識二次抗体としては、ペルオキシダーゼ標識抗免疫グロブリン(ポリクローナル)抗体を挙げることができる。しかし、本発明はこれらの例示に限定されない。
上記方法1.および2.において、使用する抗体の由来生物は、特に限定されないが、好適な一例を挙げると、前記1.の方法では、固相抗体ではマウスまたはラット由来、標識抗体ではウサギまたはヤギ由来、前記2.の方法では、固相抗体ではマウスまたはラット由来、無標識抗体ではウサギまたはヤギ由来、標識二次抗体ではヤギまたはウサギ由来が挙げられる。なお、前記1.および2.の方法に使用する、各種の抗体をコーティングした測定用容器は、市販されている(例えば、ELISA SYSTEMS社、BETHYL社などから)ので、それらを用いるのが好適である。また、所望の抗体、および所望の抗体をコーティングした測定用容器は、それらの作製を依頼して入手してもよい。依頼先として、タカラバイオ株式会社(大津市)などを例示できる。
次に、サンドイッチ方法の一般的な測定手順の一例について説明する。本発明は決してこれらの例に限定されることなく、種々の変法の使用が可能である。また、これらの手順は一般成書、例えば、(実験医学別冊)「免疫学的プロトコール」中内啓光編、羊土社、2004年発行;I.Roitt、「Essential Immunology」、8th、Blackwell、1994年;「超高感度酵素免疫測定法」石川栄治編、学会出版センター、1993年)などに記載されているので、詳しくはそれらを参照することにより本発明の実施が可能である。
以下サンドイッチ方法のうち固定化された抗体を使用する方法について例示する。
i)前記1.の方法:一次抗体−抗原−標識抗体(一次抗体または二次抗体)の結合物を形成させる方法は以下の手順を含む。
1)一次抗体を試験管または溝(ウェル)を有するプレート(例えば、マイクロタイタープレート)またはビーズなどの測定用容器内壁面または表面に固定化(コーティング)する。ここで、固定化に用いる測定用容器としては、ELISA用の高タンパク吸着処理済のもの、また、通常の細胞培養用のものが好適に用いられる。
まず、一次抗体を緩衝液で希釈して前記容器に添加し、室温で30分以上3時間以下、0℃以上10℃以下などの低温で約一晩静置する。その後、一次抗体溶液を除き、ブロッキング溶液(緩衝液にBSAを溶解したもの)を適量を添加し、前記と同様に静置後、ブロッキング溶液を除く。かくして、抗体を固定化することができる。
2)前記のようにして調製された容器に測定対象の前記キトサン水溶液を添加し、前記と同様に静置する。かくして、もし、キトサン水溶液中に抗原が存在するならば、抗原が抗体と結合する。この反応を一次免疫反応という場合がある。なお、測定用試料(キトサン水溶液)は、抗原抽出用緩衝液で希釈し、濃度の異なる複数の試料として測定に用いるのが好適である。
3)上記反応後の容器に、洗浄用緩衝液を添加し、次にそれを除去することにより、固定化された抗体と抗原との結合物を洗浄する。
4)上記3)の洗浄後の容器に、標識抗体(一次または二次)を含む溶液を添加して、前記と同様に静置する。かくして、固定化抗体−抗原−標識抗体の結合物を形成させることができる。この反応を二次免疫反応という場合がある。
5)上記4)の反応後の容器に、洗浄用緩衝液を添加し、次にそれを除去することにより結合物を洗浄する。
上記の緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液PBS、pH:6以上8以下、濃度:2mM以上500mM以下を使用できる。
6)以下のa)乃至c)の手順を行う。
a)標識抗体の標識物が酵素である場合次の手順を行う。
a−1)上記5)の洗浄後の結合物に酵素基質溶液を添加して酵素反応させる。酵素反応の時間および温度などの条件は、標識酵素の種類によって異なるが、当該酵素について従来公知の一般的条件で行ってよい。
a−2)上記酵素基質溶液添加後の溶液(反応液)の吸光度または蛍光強度を適当な波長を用いて測定する。この場合、反応液(測定系ともいう)をそのまま経時的に、適当な波長で測定してもよい。また、適当な反応時間後に、酸またはアジ化塩などの反応停止液を添加してから測定するのもよい。反応停止液を添加する方法は簡便性からより好適な方法である。好適な酸としてはリン酸(オルトリン酸)または硫酸を挙げることができる。酵素基質として3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンを用いる場合、反応液は青色であるが、反応液に酸を加えると黄色になるので、適当な波長でそれを測定する。
b)標識抗体の標識物が蛍光物質の場合、反応液の蛍光強度を測定する。
c)標識抗体の標識物がアイソトープの場合、アイソトープ活性をシンチレーションカウンターで測定する。
ii)前記2.の方法:一次抗体−抗原−無標識抗体(一次または二次)−標識二次抗体の結合物を形成させる方法は以下の手順を含む。
1)一次抗体の固定化(コーティング):前記i)の方法と同様である。
2)一次免疫反応:前記i)の2)の方法と同様である。
3)二次免疫反応:上記2)の洗浄後の容器に無標識抗体(一次または二次)を含む溶液を添加して、固定化一次抗体−抗原−無標識抗体(一次または二次)の結合物を形成させる。
4)上記3)の反応後の容器に、緩衝液を添加して、次にそれを除去して、固定化された抗体と抗原との結合物を洗浄する。
5)上記4)の洗浄後の溶液に標識二次抗体を含む溶液を添加し、固定化抗体−抗原−無標識抗体(一次または二次)−標識二次抗体の結合物を形成させる。この反応を三次免疫反応という場合がある。
6)上記5)の反応後の容器に緩衝液を添加し、次にそれを除去して、結合物を洗浄する。
7)以下のa)乃至c)の手順を行う。
a)標識抗体の標識物が酵素である場合の手順:前記i)の6)のa)の方法と同様である。
b)標識抗体の標識物が蛍光物質である場合の手順:前記i)の6)のb)の方法と同様である。
c)標識抗体の標識物がアイソトープの場合:前記i)の6)のc)の方法と同様である。
上記に説明した方法は、固定化した抗体を使用するものであるが、固定化しない抗体を使用する方法においては、一次反応前、二次反応前および三次反応前に遠心分離により、結合物(複合物)を分離するのが好適である。
上記の測定においては、測定対象のサンプルに加え、標準となる抗原についても並行して測定を行うのが好適である。また、陽性コントロールおよび陰性コントロールについての測定も、並行して行うのがよい。また、例えば、実際の測定に先立ち、濃度が既知のサンプルについて検量線を作成しておいて、試料の濃度を検量線から求める方がより精度の高い測定値が得られる。
上記の測定における測定器(機)は、それ用に市販されているものを使用するのがよい。例えば、マイクロプレートリーダなどを挙げることができる。好適な波長で測定すればよい。
また、測定試薬などはキットとして、市販されているので、それを使用して本発明の目的を達成するのが、簡便であり好適である。例えば、ELISA SYSTEMS PTY Ltd製(Australlia)の「Crustacean Tropomyosin Residue」Microwell ELISA Product Code:ESCRUR−48分析キットなどを挙げることができる。このようなキットを購入し、添付されている説明書および分析手順に従って測定するのがよい。
また、本発明は、上記本発明の方法で測定した時に、トロポミオシンの含有量が、100ppm以下であることを特徴とするキトサンを提供する。当該キトサンは、例えば、食品用原料や化粧品原料として使用した場合、ヒトに対してアレルギー現象を生じる可能性がないか、あるいはその可能性が極めて低く安全性が高い。これに対してトロポミオシンの含有量が100ppmを超えるキトサンでは、ヒトに対するアレルギー反応がある程度は心配される。
次に実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、文中「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
以下の実施例および比較例におけるトロポミオシン測定方法は、イムノアッセイ法の中のELISA法である。そして一次抗体として抗マウスシュリンプトロポミオシン抗体の使用および標識抗体として抗マウスシュリンプトロポミオシンポリクローナル抗体コンジュゲートペルオキシダーゼ(ペルオキシダーゼ標識抗マウスシュリンプトロポミオシンポリクローナル抗体)を使用するサンドイッチ測定方法である。
実施例1
ELISA SYSTEMS社のカニ・エビ用アレルゲンテストキットである「Crustacean Tropomyosin Residue」Microwell ELISA Product Code:ESCRUR-48分析キット48)を用いて、以下の手順でカニ由来キトサン中に残存するトロポミオシンを測定した。
キットの調製法は、製品に付属の添付文書に従った。すなわち、濃縮洗浄用緩衝液(NaCl含有リン酸緩衝液)の25mLを、475mLのイオン交換水中に投入し、洗浄用緩衝液として洗浄ビンに入れた。また、濃縮抽出用溶液(NaClを含むリン酸緩衝液)の25mLを475mLのイオン交換水中に投入し、抗原の抽出用溶液として保存ビンに入れた。
キトサン濃度および酢酸濃度ともに0.5%の水溶液とした場合、20℃における回転粘度計による測定粘度が500mPa・sであり、かつコロイド滴定による脱アセチル化度が90%であるキトサンサンプルから、キトサン純分1部を0.5部の乳酸を含む脱イオン水99部に溶解し、1%キトサン水溶液を得た。また、このキトサン水溶液の1部を予め60℃に暖めた抽出用溶液9部に加えて混合し、0.1%キトサン水溶液を得た。この場合のキトサン中のキトサン不溶解分は前記測定方法により0.5%であった。
上記0.1%キトサン水溶液を60℃の温浴に15分間入れ、5分毎に1分間振盪/混合することによりトロポミオシンの抽出を行った。この抽出液を静置し、G3ガラスフィルターで濾過した。濾液をよく混合した後、サンプルとしてトロポミオシン測定試験に供した。
次いでキットの使用方法に従いキットの準備を行った。すなわち、キットの使用前にキットの一式を室温(20℃以上25℃以下)に戻し、サンプルおよびコントロールの測定に必要な数のウェルを有するウェルプレートを準備してホルダーにセットした。この時、各ウェルプレートに識別マークを入れて誤測定を防いだ。なお、ウェルには抗シュリンプトロポミオシン抗体がコーティングされている。
陰性コントロール(トロポミオシン濃度0ppm)ならびに陽性コントロール(同0.05ppm、0.10ppm、0.25ppmおよび0.50ppm)水溶液を、各々100μLずつウェルに添加した。また、上記各サンプルの100μLずつをウェル一つづつに添加した。なお、各コントロールおよびサンプルは2連で測定を行った。
10秒間ホルダーをゆっくりとスライドさせ、ウェル内の溶液を混合した。これを室温で30分間インキュベートし、一次免疫反応を行った。反応後、ウェル内の溶液を除去し、洗浄用緩衝液を用いて各々のウェルをオーバーフローするまで満たしてからウェル内の溶液を完全に除去した。この操作を5回繰り返し洗浄を行った。ペルオキシダーゼ標識抗シュリンプトロポミオシンポリクローナル抗体溶液の100μLを各々のウェルに添加した。10秒間ホルダーをゆっくりとスライドさせ、ウェル内の溶液を混合した。これを室温で15分間インキュベートし、二次免疫反応を行った。
反応後、ウェル内の反応液を除去し、洗浄用緩衝液を用いて各々のウェルをオーバーフローするまで満たしてからウェル内の溶液を完全に除去した。この操作を5回繰り返し洗浄を行った。
酵素基質溶液の100μLを各々のウェルに添加した。10秒間ホルダーをゆっくりとスライドさせ、ウェル内の溶液を混合した。これを室温で10分間インキュベートし、発色反応を行った。この段階で、陽性の溶液は青色に呈色した。停止液(オルソリン酸水溶液)の100μLを各々のウェルに添加した。10秒間ホルダーをゆっくりとスライドさせてウェル内の溶液を混合し、酵素反応を停止した。ここで、上記青色に呈色した溶液は、黄色へと変化した。
吸光度の測定はマイクロプレートリーダ(TOSOH社製、MPR-A4iII)により行った。すなわち、サンプルは450nm、リファレンスは620nmの波長で測定を行った。なお、空のウェルにて測定した値をゼロとした。また、測定は、停止液の添加から30分以内に行った。各コントロール中のトロポミオシン濃度に対する吸光度をプロットして検量線を得た。この検量線を用いて、各サンプルの吸光度からトロポミオシン濃度を求め、サンプル中の甲殻類由来トロポミオシンを定量し、トロポミオシンの有無について判定を行った。
キトサン純分が0.1%である上記サンプル中のトロポミオシン濃度は、検量線から0.05ppmと求められた。よって、キトサンサンプルの純分1g当たり、50ppmのトロポミオシンを含むことが確認できた。このキトサンサンプルは有意なアレルギー反応を示さなかった。
実施例2
トロポミオシン測定試験の準備として、抽出用溶液および洗浄用緩衝液は、実施例1と同様に調製した。キトサン濃度および酢酸濃度がともに0.5%である水溶液とした場合、20℃における回転粘度計による測定粘度が100mPa・sであり、かつコロイド滴定による脱アセチル化度が78%であるキトサンのピロリドンカルボン酸塩の純分1部を、予め60℃に暖めた希釈抽出溶液99部と混合し、キトサンのピロリドンカルボン酸塩の1%水溶液を得た。この場合のキトサン中のキトサン不溶解分は前記測定方法により0.3%であった。
この水溶液を60℃の水浴に15分間入れ、5分毎に1分間振盪/混合することによりトロポミオシンの抽出を行った。この抽出液を静置し、G3ガラスフィルターで濾過した。濾液をよく混合した後、試験に供した。また、この水溶液の1部を、予め60℃に暖めた抽出用溶液9部に加えて混合し、キトサンのピロリドンカルボン酸塩の0.1%水溶液を得た。よく混合した後、試験に供した。
キトサンのピロリドンカルボン酸塩の1%水溶液におけるトロポミオシン濃度は、検量線から0.5ppmと求められた。よって、キトサンのピロリドンカルボン酸塩の純分1gあたり、50ppmのトロポミオシンを含むことが確認できた。また、キトサンのピロリドンカルボン酸塩の0.1%水溶液におけるトロポミオシン濃度は、検量線から0.05ppmと求められた。よって、キトサンのピロリドンカルボン酸塩の純分1gあたり、50ppmのトロポミオシンを含むことが確認できた。
キトサンのピロリドンカルボン酸塩中のキトサン含有量は70%であるので、キトサン純分1gあたり71ppmのトロポミオシンを含むことが確認できた。このキトサンのピロリドンカルボン酸は有意なアレルギー反応を示さなかった。
実施例3
実施例1における乳酸水溶液に代えて濃度1%の酢酸水溶液を使用し、かつキトサン濃度を1%にした以外は実施例1と同様にしてトロポミオシンを測定したところ、実施例1と同じ結果が得られた。
実施例4
キトサン濃度および酢酸濃度ともに0.5%の水溶液とした場合、20℃における回転粘度計による測定粘度が300mPa・sであり、かつコロイド滴定による脱アセチル化度が100%であるキトサンサンプルから、キトサン純分1部を0.5部の乳酸を含む脱イオン水99部に溶解し、1%キトサン水溶液を得た。また、このキトサン水溶液の1部を予め60℃に暖めた抽出用溶液9部に加えて混合し、0.1%キトサン水溶液を得た。この場合のキトサン中のキトサン不溶解分は前記測定方法により0.2%であった。
実施例1におけるキトサンを上記キトサンに代えた以外は実施例1と同様にしてトロポミオシンを測定したところ、上記キトサン中のトロポミオシンは本方法の検出限界以下であった。このキトサンサンプルは有意なアレルギー反応を示さなかった。
比較例1
トロポミオシン測定試験の準備として、抽出用溶液および洗浄用緩衝液を、実施例1と同様に調製した。実施例1で使用したキトサンサンプルの純分1部を、予め60℃に暖めた抽出用溶液9部を入れたビーカーに加え、該溶液をマグネット攪拌子スターラで混合し10%キトサン分散液を得た。この分散液を60℃の水浴に15分間入れ、5分毎に1分間振盪/混合することによりトロポミオシンの抽出を行った。この抽出液を静置し、G3ガラスフィルターで濾過した。濾液をよく混合した後、試験に供した。
同様に、実施例1で使用したキトサンサンプルの純分1部を、予め60℃に暖めた希釈抽出溶液99部に加えて混合し、1%キトサン分散液を得た。この分散液を60℃の水浴に15分間入れ、5分毎に1分間振盪/混合することによりトロポミオシンの抽出を行った。この抽出液を静置し、G3ガラスフィルターで濾過した。濾液をよく混合した後、試験に供した。
また、上記1%キトサン分散液の1部を、予め60℃に暖めた抽出用溶液9部と混合し、0.1%キトサン分散液を得た。いずれもよく混合した後、トロポミオシン測定試験に供した。
実施例1と同様に測定を行い、トロポミオシン測定結果の判定を行った。キトサン純分を10%、1%または0.1%含むキトサン分散液のいずれにおいてもトロポミオシンは検出されなかった。本キットのトロポミオシンの検出限界が0.1ppmであるので、キトサンサンプルの純分1gあたり、トロポミオシン含有量は10%キトサン分散液では1ppm以下、1%キトサン分散液では10ppm以下、0.1%キトサン分散液では100ppm以下であると結論できた。
実施例1および比較例1は同一のキトサンサンプルを使用しているが、結果は大きく異なっている。この相違は、実施例1ではキトサンを溶解して測定に用いるのに対し、比較例1ではキトサンを簡単に分散しただけで測定に使用しており、比較例1程度の簡単な分散ではキトサン中のトロポミオシンが十分に抽出されないためであると考えられ、キトサン分析の際にはキトサンを溶解して測定に使用するのが好適であることを示している。
本発明によれば、キトサン中のトロポミオシンを簡便かつ精度よく測定することができる。さらに、当該測定により、上記キトサンのヒトに対するアレルギー反応発現の可能性が、著しく低いかまたはないかを評価できる。本発明は、また、該アレルギー反応の可能性が著しく低いかまたはないと評価されたキトサンを提供することができる。

Claims (13)

  1. キトサン中のトロポミオシンを、キトサンを有機酸の水溶液に溶解した状態で、イムノアッセイ方法で測定することを特徴とするトロポミオシン測定方法。
  2. イムノアッセイ方法が、ELISA方法である請求項1に記載の測定方法。
  3. ELISA方法が、一次抗体としての少なくとも1種の抗甲殻類トロポミオシン抗体と、少なくとも1種の標識抗体を使用するサンドイッチ方法である請求項2に記載の測定方法。
  4. 標識抗体が、酵素標識抗甲殻類トロポミオシンポリクローナル抗体または酵素標識抗免疫グロブリン抗体である請求項3に記載の測定方法。
  5. 甲殻類が、小エビ類であり、酵素が、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼおよびβ−ガラクトシダーゼからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載の測定方法。
  6. 抗甲殻類トロポミオシン抗体が、測定用容器の内壁にコーティングされている請求項3に記載の測定方法。
  7. 酵素が、ペルオキシダーゼであり、その基質としてo−フェニレンジアミン、2,2’−アジノビス(3−エチル−ベンズチアゾリンスルホン酸)ジアンモニウム塩およびテトラメチルベンジジンから選ばれる少なくとも1種を使用する請求項4に記載の測定方法。
  8. トロポミオシンの測定を、測定系の青色を測定して行う請求項7に記載の測定方法。
  9. トロポミオシンの測定を、青色を呈する測定系に硫酸またはリン酸を添加して、測定系を黄色に変え、該黄色を測定して行う請求項8に記載の測定方法。
  10. 有機酸が、酢酸、乳酸およびピロリドンカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の測定方法。
  11. 有機酸水溶液の有機酸濃度が、0.1質量%以上2質量%未満である請求項1に記載の測定方法。
  12. キトサンが、その不溶解分が、以下の測定方法により1.0質量%以下のキトサンである請求項1に記載の測定方法。
    (1)キトサンを105℃にて3時間乾燥する。
    (2)乾燥前後の質量比からキトサン純分率を計算する。
    (3)乾燥前のキトサンを1質量%の酢酸水溶液にキトサン純分(Aグラム)濃度0.5質量%に溶解する。
    (4)上記水溶液を、恒量にしたG3のグラスフィルター(Bグラム)で濾過する。
    (5)上記フィルター上の濾過残物を蒸留水で洗浄する。
    (6)濾過残物を含むフィルターを105℃にて3時間乾燥し、秤量(Cグラム)する。
    (7)式[(C−B)/A×100]によりキトサン中の不溶解分(質量%)を計算する。
  13. トロポミオシンの含有量が100ppm以下のキトサンを得るためのキトサンの製造方法であって、キトサンを有機酸の水溶液に溶解した状態で、イムノアッセイ方法でキトサン中のトロポミオシンの含有量を測定する工程を有することを特徴とするキトサンの製造方法。
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