本発明の第1実施の形態に係わる画像形成装置について、図1乃至図6により説明する。図1に示す画像形成装置は、タンデム型の中間転写方式を採用したデジタルカラー画像形成装置として構成されている。
このタンデム型の中間転写方式を採用した画像形成装置11本体の内部には、特殊色としての不可視光に吸収域を持つ近赤外線吸収色素を用いたいわゆる透明色(i)、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のトナー像を、2次転写に用いられる中間転写体(像担持体)としての中間転写ベルト32に対して1次転写するのに用いられる5つの画像形成ユニット10i、12K、14C、16M、18Yを、所定の間隔で並べて配置する。この画像形成ユニット10iは、中間転写ベルト32の搬送方向最下流側に配置しなければならないものではなく、他のブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の画像形成ユニット12K、14C、16M、18Yと任意の配置関係となるように構成しても良い。なお、この画像形成装置は、これら5色以外に、さらにユーザ特定の色である、いわゆるコーポレートカラーなどの特殊色を加えた6色以上のカラー画像形成装置として構成しても良い。
図1及び図2に示すように、5つの画像形成ユニット10i、12K、14C、16M、18Yは、それぞれ所定の速度で回転駆動される1次転写に用いられる像担持体としての感光体ドラム20を備え、この感光体ドラム20の回りに、その回転方向(図中矢印A方向)に順に、1次転写ロール22と、感光体ドラム20の表面を清掃するクリーニング装置24と、感光体ドラム20の表面を一様に帯電する帯電装置である帯電チャージャー26と、感光体ドラム20の表面に所定の色に対応した画像を露光して静電潜像を形成する画像露光装置(露光手段)としてのLEDプリントヘッド28(以下、「LPH」という)と、感光体ドラム20上に形成された静電潜像を所定の色のトナーで現像する現像装置としての現像器30とが、配設されている。
なお、後述する本発明の第2実施の形態に係わる画像形成装置に用いる5つの画像形成ユニット10i、12K、14C、16M、18Yは、クリーニング装置24をなくした、いわゆるクリーナレス方式の画像形成ユニット10i、12K、14C、16M、18Yとして構成する。
本第1実施の形態に係わる画像形成装置11では、各画像形成ユニット10i、12K、14C、16M、18Yに、それぞれ個別に各色の画像データが順次出力され、各LEDプリントヘッド28から画像データに応じて出射されたレーザ光が各々対応する感光体ドラム20の表面に照射されて静電潜像が形成される。これら各感光体ドラム20上に形成された静電潜像は、各対応する現像装置としての現像器30によって、それぞれ特殊色としての透明色(i)、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色のトナー像として現像される。
すなわち、上述のように構成された各画像形成ユニット10i、12K、14C、16M、18Yで画像を形成する場合には、感光体ドラム20の表面を帯電チャージャー26によって一様に帯電し、次に、帯電された感光体ドラム20の表面をLEDプリントヘッド28から画像データに応じて出射される画像形成用のレーザ光で露光することにより各色に対応した静電潜像を形成する。このように感光体ドラム20上に形成された静電潜像は、各現像器30によってそれぞれ特殊色としての透明色(i)、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色のトナーによりトナー像に現像される。これらのトナー像は、1次転写ロール22の帯電作用によって、感光体ドラム20が転接する中間転写ベルト(2次転写に用いられる中間転写体である像担持体)32上に順次多重に転写される。
なお、この画像形成ユニット10i、12K、14C、16M、18Yでは、各々のトナー像の転写工程が終了した後の感光体ドラム20の表面をクリーニング装置24によって残留トナーや紙粉等を除去し、次の画像形成プロセスに備える。
このクリーニング装置24は、クリーニングブレード34(図2に示す)によって、感光体ドラム20上の残留トナーや紙粉等を除去するようになっている。また、トナー像の転写工程が終了した後の中間転写ベルト32の表面は、これに接する位置に配置されたクリーニング装置36によって残留トナーや紙粉等が除去されて、次の画像形成プロセスに備える。
このようにして各画像形成ユニット10i、12K、14C、16M、18Yの感光体ドラム20上に、それぞれ形成された特殊色としての透明色(i)、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色のトナー像は、各画像形成ユニット10i、12K、14C、16M、18Yの上方に渡って配置された無端状のベルト部材である中間転写ベルト(2次転写に用いられる中間転写体である像担持体)32上に、各対応する1次転写ロール22によって多重に転写される。
各1次転写ロール22は、各々が対応する画像形成ユニット10i、12K、14C、16M、18Yの各感光体ドラム20に対応した位置で、中間転写ベルト32の裏面側に転接するよう配設する。
また、このカラー画像形成装置11の内部には、特殊色としての透明色(i)、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色の現像器30に、それぞれ対応する所定の色のトナーを、図示しないフレキシブルチューブを介して供給するトナーカートリッジ38を着脱可能に設置する。
また、中間転写ベルト32は、ベルトユニットの駆動ロール40と、1次転写面出しロール44と、2次転写ロール46に対し中間転写ベルト32を介して接触するバックアップロール48との間に一定のテンションで張架されており、定速性に優れた専用の駆動モータ(図示しない駆動源)によって回転駆動される駆動ロール40により、矢印方向に所定の速度で循環駆動されるようになっている。
このカラー画像形成装置では、中間転写ベルト32上に多重に転写された特殊色としての透明色(i)、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色のトナー像を、バックアップロール48に圧接する2次転写ロール46によって、圧接力及び電界で画像出力媒体としての記録用紙(図示せず)上に2次転写する。
これらの各色のトナー像が転写された記録用紙は、上方に位置する定着器50へと搬送される。この2次転写ロール46は、バックアップロール48の側方に圧接しており、下方から上方に搬送される記録用紙上に、各色のトナー像を2次転写するようになっている。そして、上記各色のトナー像が転写された記録用紙は、定着器50によって熱及び圧力で定着処理を受けた後、カラー画像形成装置11の上部に設けられた排出トレイ52上に排出される。
なお、記録用紙は、給紙装置としての給紙トレイ54から所定のサイズのものが、分離して搬送され用紙搬送路を通って所定のタイミングで中間転写ベルト32の2次転写位置へ供給され、前述のようにトナー像が転写されてから排出トレイ52上へ搬出される。
このタンデム型の中間転写方式を採用した画像形成装置11では、画像形成ユニット10iによって特殊色として透明トナーを利用して不可視画像を形成する場合に、不可視画像、記録用紙及び可視画像との分光反射率特性を、図3に例示するような特性をもつものにする。
この図3は、透明トナーでベタ画像を記録用紙上に作成し、その上にシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のトナー像を作成し分光反射率を測定した結果を示す。この図3において、波長400nm〜700nmの範囲は肉眼で見ることのできる可視光領域である。この領域では透明トナー像の反射率はYMCトナー像の反射率より高くなり、透明トナーの肉眼による観察が不可となる。
一方、波長700nm以上の領域は、肉眼で見ることのできない不可視光領域(近赤外光領域)であり、透明トナーはこの領域で分光反射率が急激に低下し、逆にYMCトナーは反射率が急激に高くなるため、両者の差が大きくなり、特定の手段により不可視画像の読みとりが可能となる。
具体的な読みとり手段としては、例えば、赤外光成分を有する照明(例えばハロゲンランプ)を用紙に照射しつつ、赤外光に感度を有するイメージセンサで画像を読みとるものがある。上記のような透明トナーを用いることで、隠蔽したい付加情報を不可視画像で形成することができ、セキュリティーやログ管理のような付加価値を提供できる。また透明トナーは特に刷り順等に寄らずどの位置でも読みとりは可能である。
また、このタンデム型の中間転写方式を採用した画像形成装置11では、画像形成ユニット10iによって、図4(A)の赤外光照射により機械読み取りにより認識した場合の拡大図に例示するような2次元パターンからなる不可視画像を形成しても良い。この赤外光で認識可能な2次元パターンの不可視画像は、図4(B)の模式図に例示するように、2値化され短い斜め線のような集合体で2次元コード化された形で画像形成され、外乱に強く書き込み、読みとりが可能となっている。この2次元パターンの不可視画像は、機械読み取りによりデジタル情報に復号変換し、ビット情報イメージ15として捉えられるように構成する。すなわち、この不可視画像は、CCD等の読み取り装置により、図4(A)に示されるような2次元パターンとして読み取られ、これがデジタル情報としてビット情報イメージ15に復号変換され、さらには、エンコード時の記録フォーマットに対応した方式で音声情報、文章、画像ファイル、アプリケーションソフトの電子ファイル等へデコードされる。
この図4(A)(B)に例示する2次元パターンは、回転角度が異なる複数の微小ラインビットマップで形成された場合の一例を示したものであり、具体的には、相互に異なる傾きを有する2種類の微小ライン単位13が配列し、片方が「0」、もう片方が「1」のビット情報を表している。この回転角度が異なる複数の微小ラインビットマップからなる2次元パターンは、可視画像に与えるノイズが極めて低く、かつ大量の情報を高密度にデジタル化して埋め込むことができるため、好適に用いられる。
次に、上述した本第1実施の形態に係わる画像形成装置11において、転写効率を向上させるための手段について説明する。この画像形成装置11に用いる転写効率向上の手段では、画像形成ユニット10iを除く、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)に係わる画像形成ユニット12K、14C、16M、18Yにおける4つの感光体ドラム20と、中間転写ベルト32との間に、速度差を設ける構成とする。ここでは、中間転写ベルト32の周速を、感光体ドラム20の周速よりも、1%早い構成とする。なお、感光体ドラム20の周速を、中間転写ベルト32の周速よりも、1%早い構成としても良い。
この転写効率を向上させるための手段では、例えば、画像形成ユニット12K、14C、16M、18Yにおける4つの感光体ドラム20を駆動するための駆動源に接続する駆動機構として設けた歯車伝達機構におけるギヤ比を変更調整することによって、中間転写ベルト32の周速が感光体ドラム20の周速よりも1%早くなるように設定する。
このように、感光体ドラム20と、中間転写ベルト32との間に速度差(周速度比)を設けることにより、感光体ドラム20上のトナー像には、1次転写ロール22での転写電界に加え、せん断力が働くため、転写効率が向上し、これに伴って画質が向上し、小さい文字、細線における中抜け画像の発生を防ぐことが可能となる。
このような転写効率を向上させるための手段を用いた画像形成装置11では、感光体ドラム20と、中間転写ベルト32との間に速度差(周速度比)を設けることの副作用として、光体ドラム20と、中間転写ベルト32との間の摩擦力が低減するため、中間転写ベルト32が駆動部の変動に伴う影響を受けやすくなり、いわゆるバンディングに起因するプロセス方向の濃度ムラが発生し易くなる。
そこで、本第1実施の形態に係わる画像形成装置11では、バンディングによるプロセス方向の濃度ムラを抑制する手段を設ける。
この画像形成装置11におけるバンディングによる濃度ムラを抑制する手段では、画像形成ユニット10iの感光体ドラム20と、中間転写ベルト32との間だけに速度差を設けないで、ほぼ等速の周速で転接する構成とする。
このように構成した画像形成装置11では、感光体ドラム20が中間転写ベルト32上を等速で転動するため、駆動手段の速度変動が中間転写ベルト32に伝達した場合に、中間転写ベルト32上を転動する感光体ドラム20が、速度変動を抑制する粘性抵抗として働き、バンディングの原因である中間転写ベルト32側の共振を減衰させ、中間転写ベルト32の移動方向と直交する方向に沿った帯状の領域の画像濃度がムラになる画質欠陥(濃度筋)の発生を抑制できる。
このバンディングによる濃度ムラを抑制する手段を用いた画像形成装置11では、画像形成ユニット10i(高付加価値な第5マーキングユニット)の感光体ドラム20における透明トナー自体の転写率が、他の画像形成ユニット12K、14C、16M、18Yと比較して若干低下するが、前述したように透明トナーによる書き込み情報が2値化された2次元コードであり外乱に強いため、画質欠陥の問題を生じることはない。
また、前述のように、転写効率向上の手段及びバンディングによる濃度ムラを抑制する手段を設けた画像形成装置11では、特殊色(特色)としての不可視光に吸収域を持つ透明トナーに対応した画像形成ユニットとを備えて高付加価値に構成するため、5つの画像形成ユニット10i、12K、14C、16M、18Yを備えた、いわゆる5エンジン化して大型化したマーキング部の幅寸法をそれ以上大きくしないようにバンディングの発生を防止するための回転部材(アイドラーロール)やその駆動手段を付加する広い設置場所を必要とする構成を付加することなく構成して中間転写ベルトのシステムを小型及び薄型に維持し、転写効率を向上させかつバンディングの抑制された高画質を得るという、二律背反した要求を同時に満足する画像形成装置11を構成できる。
次に、上述のように構成した本第1実施の形態に係わる画像形成装置11における効果を確認するために行った実験について説明する。
この実験では、本第1実施の形態に係わる画像形成装置11の構成である、4エンジンの画像形成ユニット12K、14C、16M、18Yの各感光体ドラム20と中間転写ベルト32との速度差を1%とし、透明トナー用の画像形成ユニット10iにおける感光体ドラム20と中間転写ベルト32とを等速で転接させる構成とする。
この画像形成装置に対する比較例1は、5エンジンの全てである画像形成ユニット10i、12K、14C、16M、18Yの各感光体ドラム20と中間転写ベルト32との速度差を1%に構成する。
この画像形成装置に対する比較例2は、5エンジンの全てである画像形成ユニット10i、12K、14C、16M、18Yの各感光体ドラム20と中間転写ベルト32とを等速で転接させる構成する。
前述したそれぞれの構成の画像形成装置により、実際に画像を形成して比較したところ、図5に示すような結果が得られた。
この図5に示す判定結果から分かるように、本第1実施の形態に係わる画像形成装置11の構成では、転写効率が高く、しかもバンディングが抑制されて高画質な画像を得られるという満足できる結果が得られた。
なお、比較例1では、バンディングにより画質が低下していた。また比較例2では、転写性の低下から小さな文字の中抜けが発生していた。
よって、本第1実施の形態に係わる画像形成装置11の構成は、比較例1及び比較例2から、その優位性が確認された。
次に、本発明の第2実施の形態について図6により説明する。この図6に示す画像形成装置11では、各画像形成ユニットにおいて、クリーニング装置24を省略して、いわゆるクリーナーレス構成とし、5エンジンとしての画像形成ユニット10i、12K、14C、16M、18Yを備えながら、画像形成装置11全体の更なる小型化を図る。
これと共に、本第2実施の形態に係わる画像形成装置11では、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色の画像形成ユニット12K、14C、16M、18Yにおける各感光体ドラム20と、中間転写ベルト32との間の各速度差を3%に設定し、中間転写ベルト32の周速の方が感光体ドラム20の周速よりも早くなる構成をとる。
さらに、透明トナー像が現像される画像形成ユニット10iにおける感光体ドラム20のみを中間転写ベルト32と等速(同速度)で駆動するよう構成する。
このように構成した本第2実施の形態に係わる画像形成装置11では、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の有色の画像形成ユニット12K、14C、16M、18Yにおける各感光体ドラム20と、中間転写ベルト32との速度差が大きくなり、更にせん断力効果が増加することになるから転写率が100%に近づく。
このため、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の有色の画像形成ユニット12K、14C、16M、18Yを、それぞれクリーニング装置24を省略したいわゆるクリーナーレス構成としても、転写残トナーによる混色等の問題が生じることがない。
また、透明トナー用の画像形成ユニット10iにおいては、転写残トナーが感光体ドラム20上に多少発生するが、例えばこの転写残トナーを、帯電チャージャー26の帯電ロールとLEDプリントヘッド28とを通過させて現像器30内に回収するように構成すれば、トナーが透明であるため露光障害が発生しないように構成できる。
さらに、このように構成した画像形成装置11では、感光体ドラム20上に発生した転写残トナーを帯電チャージャー26の帯電ロール等に回収し、非画像形成時に、帯電チャージャー26等に回収した転写残トナーを中間転写ベルト32側に吐き出させ、中間転写ベルト32からクリーニング装置36で回収するように構成しても良い。なお、このとき、中間転写ベルト32上に吐き出された転写残トナーがクリーニング装置36で回収を免れ通過した場合でも、転写残トナーが透明トナーであるため、搬送方向最上流にある画像形成ユニット18Yのイエロー(Y)トナーに混入して回収されても、混色の問題が発生しない。
また、このように構成した画像形成装置11では、前述した第1実施の形態に係わる画像形成装置11と同様に、透明トナー用の画像形成ユニット10iにおける感光体ドラム20(第5感光体)が、中間転写ベルト32に等速で転動することによる粘性効果により中間転写ベルト32の共振が減衰されてバンディングが抑制されて高画質な画像を得られると共に、小型な構成で高付加価値な画像形成装置11を構成することができる。
すなわち、上述のように構成した、いわゆるクリーナーレス画像形成装置は、転写不良による文字や細線の中抜け等が生じない高転写効率を獲得しながら、バンディングによるプロセス方向の濃度ムラも効果的に抑制できる。さらに、透明トナー用の画像形成ユニット10iの感光体ドラム20(第5感光体)の作用で中間転写ベルト32の共振を減衰しバンディングを抑制する構成で、他にアイドラーロールやその駆動手段を持たないため、高付加価値な透明トナー用の画像形成ユニット10i(第5マーキングユニット)を持ちながら省スペースを実現し、かつ廉価に製造できる。
ここで、この画像形成装置11では、1次転写において中抜けなどの画質欠陥を防止し転写効率を高めるため、感光体ドラム20の移動速度をVp、中間転写ベルト32の移動速度をVtとしたときに、感光体ドラム20の速度を基準とした、中間転写ベルト32と感光体ドラム20との周速度比である、|(Vt−Vp)|/Vpの式から求められる値を、0.009以上で、かつ0.05以下にするという条件(0.05≧|(Vt−Vp)|/Vp≧0.009)、トナーの平均粒径は5〜9μmで、形状係数は134以下という条件、および感光体ドラム表面の動摩擦係数は、0.9以下という条件を全て満たすように構成する。
次に、上述した画像形成装置11が、中抜けなどの画質欠陥を防止し、転写効率を高めるために満たすべき条件について説明する。
この画像形成装置11では、感光体ドラム20の周速度と中間転写ベルト32の周速度に差を設けることにより、感光体ドラム20上に形成されたトナー像が、中間転写ベルト32に摺擦されてせん断力を受けるため、付着力が弱められてクーロン力が支配的になり、中間転写ベルト32への転写が容易になり転写率が向上するように、条件を設定する。
この転写率を向上させる条件を求めるために用いた、画質および転写率の測定方法、評価方法は、以下の通りである。
画質は、文字、パッチ画像(ベタ画像、ハーフトーン画像)、線画像からなる混合画像チャートを用い、中抜けおよび転写ムラを評価する。
転写率は、ベタパッチ画像の、1次色(YMCK:100%)、2次色(Blue,Red:200%)、3次色(Process Black:300%)が並んだチャートを用いて測定する。
この測定方法は、トナー像を形成した後、中間転写ベルトに1次転写し、中間転写ベルト上にトナー像が担持され、記録媒体に2次転写される前の状態で画像形成装置をストップさせて行う。
例えばトナー像をY,M,C,K色の順で形成し、C色が1次転写された後に画像形成装置をストップさせる。すると感光体ドラム上には、C色の転写残トナーと、中間転写ベルト上に既に転写されているYM色の一部が感光体ドラムに転移したリトランスファー・トナーとが載っている。この転写残トナーとリトランスファー・トナーとをすべてテープ上に転写させて、そのテープとトナー残量限度見本とテープとを対比することにより転写率のグレード付けを行う。
ここで、トナー残量限度見本を下記の表1に示す。
@0010
この測定を、1次転写ロールのバイアス電圧を変えながら行うと、印加される電圧が高くなるに従い転写が促進されるので、転写残トナー量は減少し、逆に、印加される電圧が高くなるに従いニップ部の放電が促進されるので、リトランスファー・トナー量が増加する。
図7は、YMCK各色のトナー像を形成する毎に転写残トナー量とリトランスファー・トナー量をそれぞれ測定した結果を示す図であり、縦軸は、トナー残量限度見本と対比したグレードをあらわし、横軸は、1次転写ロールに印加される1次転写バイアス電圧をあらわしている。
図7に示す、転写残トナー量の測定結果(黒四角印)は、各色のトナー像を形成したときの転写残トナー量のうち、転写残トナー量が最も多い色の傾向曲線を表し、リトランスファー・トナー量の測定結果(白丸印)は、各色のトナー像を形成したときのリトランスファー・トナー量のうち、リトランスファーが最も早い色の傾向曲線を表す。
図から明らかなように転写残トナー量は、1次転写バイアス電圧が高くなると減少するが、反面、リトランスファー・トナー量は増加する。したがって、本実施形態では、両方の傾向曲線の交点をクロスポイントと定義し、クロスポイントにおけるトナー残量限度見本と対比したグレードが2以下となるように転写残トナー量およびリトランスファー・トナー量を抑制することにより、フルカラーの画像形成においてクロスポイント以下のトナー残量を達成させる。
ここで、トナー残量限度見本におけるグレード2は、最も色差として感知される、K色トナーがY色トナーに混色した場合の最大値であり、これ以上のトナー量が混色すると目視により色差として感知される。したがって、トナー残量がこれ以下となれば、その残トナーがクリーニングされずに転写されたとしても、正規に転写されたトナー像との色差変動が起きないので、残トナーをクリーナで回収しなくてもよい。
次に、中間転写ベルト32と感光体ドラム20との周速度比について説明する。
図8は、画像形成装置で未使用の初期状態にある中間転写ベルト32と感光体ドラム20とを利用したときにおける、周速度比を−0.05から+0.05まで変化させたときの、画質と転写率を測定した結果を示す図である。
ここで、本測定に用いた感光体ドラム20は、表面層にPTFEを含有する、動摩擦係数が0.9以下の感光体を用いる。トナーは、平均粒径が6.5μm、形状係数が118の球形トナーを用いる。
図8において、○印、△印、×印は、中抜けと転写ムラの発生状態をあらわす評価基準で、○印は、発生せず、△印は、一部に発生が見られる、×印は、顕著に発生が見られる状態をそれぞれ表す。
図8からわかるように、中抜けは、周速度比がゼロ(中間転写体ベルト32と感光体ドラム20とが等速)の場合に一部発生が見られた。また転写ムラは、周速度比が±0.05のときに一部に発生が見られた。この転写ムラは、通常の転写不良と異なり、周期性のある筋状の濃度変動によるもので、速度差があまり大きくなると感光体ドラム20又は中間転写ベルト32の何れかが引きずられ、一部回転変動が起きるためと考えられる。クロスポイントにおけるグレードは、周速度比がマイナスのときよりも、中間体ベルトの移動速度の方が早い、プラスのときの方が良好になる傾向がる。また周速度比がゼロのときは、転写率が極端に悪化し、目標グレードから大きくはずれてしまう。
したがって、周速度比は、転写率を向上させるひとつの制御因子であることが明らかである。
ここで、本実施の形態の画像形成装置では、中間転写ベルトの移動速度が、画像を形成するプロセス速度と一致しており、周速度比は、感光体ドラムの移動速度を変更する必要がある。このため、例えば周速度比がプラスのときは、トナー像が感光体上に形成されるときは周速度比分圧縮され、1次転写されるときは伸張されることになるので、周速度差が極端に異なる場合を除外すれば、記録媒体上に形成される最終画像においては画像の乱れは生じず、高画質で、且つ高転写率を得ることができる。
次に、上述した図8に示す周速度比を変化させたときの画質と転写率を測定した画像形成装置に対して行った信頼性試験について説明する。
この画像形成装置の信頼性試験は、図8に示す画質と転写率を測定したときと同条件で、画像形成装置によって5万枚プリントした段階で試験を中止し、評価したところ、図9に示すような結果が得られた。
この図9に示す評価の結果から分かるように、現像剤の劣化によりトナーと感光体の付着力が増加したため、転写性が全体に落ちて0.009未満では中抜けグレードが未達成となり許容できない。なお、これは、クリーナー無しの構成でも、クリーナーを設けた構成でも同様な結果である。よって、この画像形成装置では、長期に渡り高転写性を維持するために、0.09以上の速度差が必要で、画質維持のために、0.05以下の速度差が必要となることが分かる。すなわち、この画像形成装置では、長期に渡り高転写性を維持するために、の速度差を、0.09以上、0.05以下の範囲に設定することが必要である。
なお、画像形成装置11が、中抜けなどの画質欠陥を防止し、転写効率を高めるために満たすべき条件における、感光体ドラム表面20の動摩擦係数は、0.9以下という条件については、特開2004−29435公報の段落(0050)から段落(0058)までの記載及び添付図面の図5及び図6を援用する。
さらに、画像形成装置11が満たすべき条件における、トナーの平均粒径は5〜9μmで、形状係数は134以下という条件については、特開2004−29435公報の段落(0059)から段落(0065)までの記載及び添付図面の図5及び図7を援用する。
また、前述したタンデム型の中間転写方式を採用した画像形成装置11では、画像形成ユニット12K(必要に応じて画像形成ユニット10iを併用する)を利用して白黒画像を形成(透明画像を重畳して形成)し、又は全ての画像形成ユニット10i、12K、14C、16M、18Yを利用してフルカラー画像を形成することができることは勿論である。
なお、上述した実施の形態では、中間転写体方式の画像形成装置を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、用紙搬送ベルトにより搬送された画像出力媒体に各画像形成ユニットで形成された画像を直接転写する画像形成装置にも適用できる。また、本発明は前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、その他種々の構成を取り得ることは勿論である。