JP4622193B2 - 冷凍装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う冷凍装置に関し、特に、冷凍サイクルの高圧が冷媒の臨界圧力以上となるものに係る。
【0002】
【従来の技術】
従来より、閉回路内で冷媒を循環させて蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う冷凍装置が知られており、空調機等として広く利用されている。この種の冷凍装置としては、例えば特開平10−54617号公報に開示されているように、冷凍サイクルの高圧を冷媒の臨界圧力以上に設定したものが知られている。この冷凍装置では、圧縮機において冷媒をその臨界圧力以上にまで圧縮しているため、圧縮機モータの消費電力が嵩み、高いCOP(成績係数)が得られないという問題がある。
【0003】
この問題に対しては、特開2001−107881号公報に開示されているように、冷凍装置に膨張機を設けるという対策が提案されている。尚、本明細書でいう膨張機は、流体機械の一種としての原動機と同義である。この場合、冷凍装置には、膨張弁やキャピラリチューブに代えて、膨張機が冷媒の膨張機構として設けられる。そして、膨張機において高圧冷媒の内部エネルギを機械的な動力に変換し、得られた動力を圧縮機の駆動に利用することで、圧縮機モータの消費電力を削減している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記冷凍装置では、その運転条件によって冷凍サイクルの高圧や低圧が変動する。例えば、上記冷凍装置を空調機として用いた場合、その冷凍サイクルにおける高圧や低圧は、室内や室外の気温変化に応じて変動する。また、冷房運転時と暖房運転時でも、その冷凍サイクルにおける高圧や低圧は異なっている。数値を例示すると、冷凍サイクルの高圧は7〜9MPa の範囲で変動し、その低圧は2〜4.6MPa の範囲で変動する。このように、上記冷凍装置では、冷凍サイクルにおける高圧と低圧の比が大幅に変動する。
【0005】
一方、上記の膨張機としては、スクロール式やスクリュー式などの流体機械を用いる場合がある。ところが、この種の流体機械は内部容積比が一定である。つまり、冷凍サイクルにおける高圧と低圧の比が変動するにも拘わらず、膨張機における膨張比は一定で変化しない。このため、内部容積比が一定の流体機械を膨張機として用いると、冷凍サイクルにおける高圧と低圧の比が膨張機の膨張比と一致せず、冷凍装置の運転が円滑に行われなくなるという問題があった。
【0006】
また、流体機械で構成される膨張機は、その設計膨張比から大きく外れた状態で運転されることとなる。このため、過膨張によってキャビテーションが発生し、これに起因するエロージョンよって流体機械が損傷することから、冷凍装置の信頼性を損なうという問題もあった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、膨張機によって高圧冷媒からの動力回収を行う冷凍装置において、内部容積比が一定の流体機械を膨張機として用いた場合であっても、その円滑な運転と信頼性を確保することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明が講じた第1の解決手段は、冷媒の充填された冷媒回路(10)を備え、該冷媒回路(10)に設けられた圧縮機(21)で冷媒を該冷媒の臨界圧力以上にまで圧縮して冷凍サイクルを行う冷凍装置を対象としている。そして、上記冷媒回路(10)には、内部容積比が一定の流体機械により構成される膨張機(22)と、該膨張機(22)と直列に接続された開度可変の膨張弁(23)とが冷媒の膨張機構として設けられるものである。
【0009】
また、上記第1の解決手段は、上記の構成に加え、冷媒回路(10)では、膨張機(22)の上流に膨張弁(23)が配置され、上記冷媒回路(10)において、冷媒の臨界圧力よりも低圧の中間圧冷媒が膨張弁(23)から流出し、飽和液状態または気液二相状態の中間圧冷媒が膨張機(22)へ流入する動作が行われるものである。
【0010】
本発明が講じた第2の解決手段は、上記第1の解決手段において、冷媒回路(10)における膨張機(22)と膨張弁(23)の間には、冷媒を一時的に貯留するための容器部材(31)が設けられるものである。
【0011】
本発明が講じた第3の解決手段は、上記第1の解決手段において、冷媒回路(10)における膨張機(22)と膨張弁(23)の間に設けられて中間圧の冷媒を液冷媒とガス冷媒とに分離する気液分離器(32)と、上記気液分離器(32)で分離されたガス冷媒を圧縮機(21)へ供給するためのガス管路(33)とを備えるものである。
【0012】
本発明が講じた第4の解決手段は、上記第1,第2又は第3の解決手段において、冷媒回路(10)には、二酸化炭素が冷媒として充填されるものである。
【0013】
−作用−
上記第1の解決手段では、冷媒回路(10)内で冷媒を循環させることにより、冷凍サイクルが行われる。具体的に、冷媒回路(10)の圧縮機(21)では、吸入された冷媒がその臨界圧力以上にまで圧縮される。圧縮機(21)から吐出された高圧冷媒は、放熱した後に膨張機構で減圧される。減圧後の低圧冷媒は、吸熱して蒸発した後に圧縮機(21)へ吸入されて再び圧縮される。
【0014】
上記冷媒回路(10)では、互いに直列に接続された膨張機(22)と膨張弁(23)によって膨張機構が構成されている。ただし、本解決手段では、膨張機(22)の上流側に膨張弁(23)を設けてもよいし、膨張機(22)の下流側に膨張弁(23)を設けてもよい。つまり、膨張機(22)又は膨張弁(23)のうち、何れか一方で高圧冷媒が中間圧にまで減圧され、残りの他方で中間圧冷媒が低圧にまで減圧される。その際、膨張機(22)は、導入された冷媒の内部エネルギを動力に変換する。
【0015】
本解決手段において、膨張機(22)は、内部容積比が一定の流体機械によって構成されている。従って、膨張機(22)へ流入する冷媒と膨張機(22)から流出する冷媒の圧力比は、一定のままで変化しない。一方、膨張弁(23)は、その開度を変更できるように構成されている。このため、膨張弁(23)の出入口における冷媒の圧力比は、膨張弁(23)の開度によって変化する。そして、本解決手段では、冷媒回路(10)において膨張機(22)と膨張弁(23)が直列に配置されている。従って、膨張機(22)と膨張弁(23)とで構成された膨張機構の出入口における冷媒の圧力比は、膨張機(22)の膨張比が一定であっても、膨張弁(23)の開度を変更することによって変動する。
【0016】
また、上記第1の解決手段では、冷媒回路(10)において膨張機(22)の上流側に膨張弁(23)が設けられる。つまり、冷媒回路(10)を流れる高圧冷媒は、放熱した後に先ず膨張弁(23)を通過して中間圧にまで減圧される。その後、膨張弁(23)からの中間圧冷媒は、膨張機(22)へ流入して低圧にまで減圧される。膨張機(22)では、中間圧冷媒のもつ内部エネルギの一部が機械的な動力に変換される。
【0017】
上記第2の解決手段では、膨張機(22)と膨張弁(23)の間に容器部材(31)が設けられる。この容器部材(31)には、膨張機(22)又は膨張弁(23)の何れか一方を通過した後の中間圧冷媒が流入する。つまり、容器部材(31)へは、臨界圧力よりも圧力の低い冷媒が流入する。そして、容器部材(31)に貯留される液冷媒の量を増減させることによって、冷媒回路(10)を循環する冷媒量の調節が行われる。
【0018】
上記第3の解決手段では、膨張機(22)と膨張弁(23)の間に気液分離器(32)が設けられる。この気液分離器(32)には、膨張機(22)又は膨張弁(23)の何れか一方を通過した後の中間圧冷媒が流入する。つまり、気液分離器(32)へは、臨界圧力よりも圧力の低い冷媒が流入する。そして、気液分離器(32)では、気液二相状態となって流入した中間圧の冷媒が、液冷媒とガス冷媒に分離される。
【0019】
本解決手段において、気液分離器(32)の中間圧の液冷媒は、膨張機(22)又は膨張弁(23)を通過して低圧となり、その後に吸熱して蒸発してから圧縮機(21)へ送られる。一方、気液分離器(32)の中間圧のガス冷媒は、ガス管路(33)を流れて圧縮機(21)へ吸入される。つまり、圧縮機(21)は、低圧のガス冷媒と中間圧のガス冷媒とを吸入する。
【0020】
上記第4の解決手段では、冷媒回路(10)の冷媒として二酸化炭素(CO2)が用いられる。
【0021】
【発明の効果】
本発明では、内部容積比が一定の膨張機(22)と開度可変の膨張弁(23)の両方を冷媒回路(10)に設けている。このため、膨張機(22)の膨張比を変更できなくても、膨張弁(23)の開度を変更することにより、冷凍サイクルの高圧や低圧を冷凍装置の運転条件に適した値に設定することが可能となる。従って、本発明によれば、冷凍サイクルの高圧や低圧を最適な値に設定して冷凍装置の運転を常に円滑に行うことができる。
【0022】
また、本発明によれば、運転中の膨張機(22)における膨張比を、その膨張機(22)を構成する流体機械の設計膨張比とほぼ同じに保つことが可能となる。従って、本発明によれば、冷媒の過膨張によるキャビテーションを防止でき、キャビテーションに起因する膨張機(22)の損傷を回避して冷凍装置の信頼性を高めることができる。
【0023】
また、本発明では、膨張機(22)を膨張弁(23)の下流側に設置している。従って、本発明によれば、膨張機(22)を膨張弁(23)の上流側に設置する場合に比べ、膨張機(22)において冷媒の内部エネルギを機械的な動力へ確実に変換することが可能となる。
【0024】
この点について説明する。冷媒の圧力が臨界圧力以上の場合、該冷媒は液相と気相の区別がない状態であり、比体積が僅かに変化しただけでも圧力が大きく変動する。そのため、高圧の冷媒を中間圧にまで膨張させる過程で膨張機(22)を用いると、膨張機(22)としての流体機械の内部で僅かな漏れが生じただけでも、膨張機(22)において得られる動力は大幅に減少してしまう。
【0025】
一方、冷媒がその臨界圧力よりも低圧の場合、該冷媒は気液二相状態となって圧力の変動と共に比体積も大きく変動する。そのため、中間圧の冷媒を低圧にまで膨張させる過程で膨張機(22)を用いると、膨張機(22)としての流体機械の内部でいくらか漏れが生じても、それに伴う圧力の低下は僅かであって膨張機(22)で得られる動力もさほど減少しない。
【0026】
これに対し、本発明では、冷媒回路(10)における膨張弁(23)の下流に膨張機(22)を設け、中間圧の冷媒を低圧にまで膨張させる過程で膨張機(22)を用いている。このため、本発明によれば、膨張機として用いられる流体機械の内部で冷媒の漏れが多少発生したとしても、膨張機における動力回収を確実に行うことができる。
【0027】
また、上記第2の解決手段によれば、中間圧の冷媒を容器部材(31)に一時的に貯留することで、冷媒回路(10)を循環する冷媒量の調節が可能となる。ここで、高圧が冷媒の臨界圧力よりも低い通常の冷凍サイクルを行う冷凍装置では、冷媒回路(10)にレシーバを設け、高圧の液冷媒をレシーバに貯留することで冷媒回路(10)を循環する冷媒量を調節している。ところが、冷媒の圧力がその臨界圧力以上となると、冷媒は液相と気相の区別がない状態となる。このため、本解決手段の冷凍装置のように、冷凍サイクルの高圧が冷媒の臨界圧力以上となる場合には、高圧冷媒が流入する従来のレシーバを設けても、レシーバが常に単相の冷媒で満たされた状態となって冷媒量の調節が不可能となる。そこで、本解決手段では、その臨界圧力よりも圧力の低い中間圧冷媒を容器部材(31)へ導入することで、冷媒回路(10)を循環する冷媒量の調節を可能としている。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
《参考技術1》
先ず、参考技術1の空調機について説明する。
【0030】
図1に示すように、本参考技術は、冷凍装置により構成された空調機である。この空調機は、冷媒回路(10)とコントローラ(50)とを備え、冷房運転と暖房運転を切り換えて行うように構成されている。
【0031】
上記冷媒回路(10)には、室内熱交換器(11)、室外熱交換器(12)、第1四路切換弁(13)、第2四路切換弁(14)、圧縮機(21)、膨張機(22)、電動膨張弁(23)、及びレシーバタンク(31)が設けられている。この冷媒回路(10)では、膨張機(22)と電動膨張弁(23)が直列に配置されており、これらが冷媒の膨張機構を構成している。また、冷媒回路(10)には、二酸化炭素(CO2)が冷媒として充填されている。
【0032】
上記室内熱交換器(11)は、いわゆるクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器により構成されている。室内熱交換器(11)へは、図外のファンによって室内空気が供給される。室内熱交換器(11)では、供給された室内空気と冷媒回路(10)の冷媒との熱交換が行われる。上記冷媒回路(10)において、この室内熱交換器(11)は、その一端が第1四路切換弁(13)の第1のポートに配管接続され、その他端が第2四路切換弁(14)の第1のポートに配管接続されている。
【0033】
上記室外熱交換器(12)は、いわゆるクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器により構成されている。室外熱交換器(12)へは、図外のファンによって室外空気が供給される。室外熱交換器(12)では、供給された室外空気と冷媒回路(10)の冷媒との熱交換が行われる。上記冷媒回路(10)において、この室外熱交換器(12)は、その一端が第1四路切換弁(13)の第2のポートに配管接続され、その他端が第2四路切換弁(14)の第2のポートに配管接続されている。
【0034】
上記圧縮機(21)は、ローリングピストン型の流体機械により構成されている。この圧縮機(21)は、吸入した冷媒(CO2)をその臨界圧力以上にまで圧縮する。上記冷媒回路(10)において、上記圧縮機(21)は、その吐出側が第1四路切換弁(13)の第3のポートに配管接続され、その吸入側が第1四路切換弁(13)の第4のポートに配管接続されている。
【0035】
上記膨張機(22)は、スクロール型の流体機械により構成されている。つまり、この膨張機(22)は、内部容積比が一定の容積形流体機械により構成されている。上記冷媒回路(10)において、上記膨張機(22)は、その流入側が第2四路切換弁(14)の第3のポートに配管接続され、その流出側が上記レシーバタンク(31)に配管接続されている。尚、膨張機(22)を構成する流体機械は、その内部容積比が一定のものであればスクロール型に限らず、例えばスクリュー型、歯車型、ルーツ型のものであってもよい。
【0036】
上記レシーバタンク(31)は、縦長で円筒状の密閉容器であって、中間圧冷媒を貯留するための容器部材を構成している。上記冷媒回路(10)において、このレシーバタンク(31)は、電動膨張弁(23)の流入側と配管接続されている。このように、上記冷媒回路(10)では、膨張機(22)の下流側に電動膨張弁(23)が設けられている。
【0037】
上記電動膨張弁(23)は、パルスモータ等で弁体を回転させることによって、その開度を変更できるように構成されている。上記冷媒回路(10)において、この電動膨張弁(23)は、その流出側が第2四路切換弁(14)の第4のポートに配管接続されている。
【0038】
上述のように、第1四路切換弁(13)は、第1のポートが室内熱交換器(11)と、第2のポートが室外熱交換器(12)と、第3のポートが圧縮機(21)の吐出側と、第4のポートが圧縮機(21)の吸入側とそれぞれ接続されている。この第1四路切換弁(13)は、第1のポートが第3のポートと連通し且つ第2のポートが第4のポートと連通する状態(図1に実線で示す状態)と、第1のポートが第4のポートと連通し且つ第2のポートが第3のポートと連通する状態(図1に破線で示す状態)とに切り換わるように構成されている。
【0039】
一方、第2四路切換弁(14)は、第1のポートが室内熱交換器(11)と、第2のポートが室外熱交換器(12)と、第3のポートが膨張機(22)の流入側と、第4のポートが電動膨張弁(23)の流出側とそれぞれ接続されている。この第1四路切換弁(13)は、第1のポートが第3のポートと連通し且つ第2のポートが第4のポートと連通する状態(図1に実線で示す状態)と、第1のポートが第4のポートと連通し且つ第2のポートが第3のポートと連通する状態(図1に破線で示す状態)とに切り換わるように構成されている。
【0040】
本参考技術において、上記圧縮機(21)の駆動軸には、上記膨張機(22)と圧縮機モータ(24)とが連結されている。この圧縮機(21)は、膨張機(22)での冷媒の膨張により得られた動力と、圧縮機モータ(24)へ通電することにより得られた動力との両方によって回転駆動される。また、上記圧縮機モータ(24)には、図外のインバータから所定周波数の交流電力が供給されている。そして、上記圧縮機(21)は、圧縮機モータ(24)へ供給される電力の周波数を変更することで、その容量が可変に構成されている。
【0041】
本参考技術の空調機には、図示しないが、温度や圧力のセンサが設けられている。上記圧縮機(21)の吐出側に接続された配管には、吐出管温度Tdを検出する温度センサと、吐出圧力pdを検出する圧力センサとが設けられている。上記室内熱交換器(11)には、室内熱交換器温度Thiを検出する温度センサが設けられている。上記室外熱交換器(12)には、室外熱交換器温度Thoを検出する温度センサが設けられている。更に、上記空調機には、室内空気温度Trを検出する温度センサと、室外空気温度Toを検出する温度センサとが設けられている。
【0042】
上記コントローラ(50)には、上述した温度センサや圧力センサの検出値が入力されている。また、このコントローラ(50)には、ユーザーによって設定された室内設定温度Trsetが入力されている。そして、コントローラ(50)は、圧縮機(21)の容量調節や電動膨張弁(23)の開度調節を、各センサの検出値や室内設定温度Trsetに基づいて行うように構成されている。
【0043】
尚、このコントローラ(50)は、室内熱交換器温度Thiを冷房時の冷媒蒸発温度として用いると共に、室外熱交換器温度Thoを暖房時の冷媒蒸発温度として用いることにより、所定の動作を行うように構成されている。このため、室内熱交換器温度Thiを検出する温度センサは、室内熱交換器(11)で冷房時に冷媒の過熱度がつかない位置に設置されている。また、室内熱交換器温度Thoを検出する温度センサは、室外熱交換器(12)で暖房時に冷媒の過熱度がつかない位置に設置されている。
【0044】
−運転動作−
〈暖房運転〉
上記空調機の暖房運転時の動作について、図1及び図2を参照しながら説明する。尚、図2は、上記空調機における冷凍サイクルを、モリエル線図(圧力−エンタルピ線図)上に表したものである。
【0045】
暖房運転時において、第1四路切換弁(13)及び第2四路切換弁(14)は、図1に実線で示す状態に切り換わる。この状態で圧縮機(21)を駆動すると、冷媒回路(10)で冷媒が循環して冷凍サイクルが行われる。その際、室内熱交換器(11)が放熱器として機能し、室外熱交換器(12)が蒸発器として機能する。
【0046】
具体的に、圧縮機(21)からは、図2における点1の状態の高圧冷媒が吐出される。この高圧冷媒の圧力PHは、その臨界圧力PCよりも高くなっている。圧縮機(21)から吐出された冷媒は、第1四路切換弁(13)を通って室内熱交換器(11)へ導入される。
【0047】
室内熱交換器(11)では、導入された高圧冷媒が室内空気と熱交換を行う。この熱交換により、高圧冷媒は室内空気に対して放熱し、そのエンタルピが点1の状態から点2の状態にまで低下する。点2の状態の高圧冷媒は、第2四路切換弁(14)を通って膨張機(22)へ導入される。一方、室内熱交換器(11)で高圧冷媒により加熱された室内空気は、調和空気として室内へ送り返される。
【0048】
室内熱交換器(11)で放熱した後の点2の状態の冷媒は、膨張機(22)において膨張し、その圧力及びエンタルピが点3の状態にまで低下する。つまり、膨張機(22)では、高圧冷媒が膨張して圧力PMの中間圧冷媒となる。この中間圧冷媒は、その臨界圧力PCよりも低圧であって、気液二相状態となっている。そして、気液二相状態の中間圧冷媒が、膨張機(22)から流出し、レシーバタンク(31)を通って電動膨張弁(23)へ送られる。
【0049】
電動膨張弁(23)では、中間圧冷媒が減圧され、その圧力が点3の状態から点4の状態にまで低下する。つまり、電動膨張弁(23)を通過することで、中間圧冷媒が減圧されて圧力PLの低圧冷媒となる。点4の状態の低圧冷媒は、第2四路切換弁(14)を通って室外熱交換器(12)へ導入される。
【0050】
室外熱交換器(12)では、導入された低圧冷媒が室外空気と熱交換を行う。この熱交換により、低圧冷媒が室外空気から吸熱し、そのエンタルピが点4の状態から点5の状態にまで増大する。点5の状態の低圧冷媒は、室外熱交換器(12)から流出し、第1四路切換弁(13)を通って圧縮機(21)へ送られる。
【0051】
圧縮機(21)に吸入された点5の状態の冷媒は、圧縮されて点1の状態となる。つまり、圧縮機(21)では、圧力PLの低圧冷媒が圧縮されて圧力PHの高圧冷媒となる。そして、この高圧冷媒が圧縮機(21)から室内熱交換器(11)へ送られる。
【0052】
上述のように、膨張機(22)において、冷媒の圧力及びエンタルピが点2から点3の状態にまで低下する。そして、この膨張機(22)では、点2と点3のエンタルピ差に相当する動力が得られ、この得られた動力が圧縮機(21)の駆動に利用される。
【0053】
〈冷房運転〉
上記空調機の冷房運転時の動作について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0054】
冷房運転時において、第1四路切換弁(13)及び第2四路切換弁(14)は、図1に破線で示す状態に切り換わる。この状態で圧縮機(21)を駆動すると、冷媒回路(10)で冷媒が循環して冷凍サイクルが行われる。その際、室外熱交換器(12)が放熱器として機能し、室内熱交換器(11)が蒸発器として機能する。
【0055】
具体的に、圧縮機(21)からは、図2における点1の状態の高圧冷媒が吐出される。この高圧冷媒の圧力PHは、その臨界圧力PCよりも高くなっている。圧縮機(21)から吐出された冷媒は、第1四路切換弁(13)を通って室外熱交換器(12)へ導入される。
【0056】
室外熱交換器(12)では、導入された高圧冷媒が室外空気と熱交換を行う。この熱交換により、高圧冷媒は室外空気に対して放熱し、そのエンタルピが点1の状態から点2の状態にまで低下する。点2の状態の高圧冷媒は、第2四路切換弁(14)を通って膨張機(22)へ導入される。
【0057】
室外熱交換器(12)で放熱した後の点2の状態の冷媒は、膨張機(22)において膨張し、その圧力及びエンタルピが点3の状態にまで低下する。つまり、膨張機(22)では、高圧冷媒が膨張して圧力PMの中間圧冷媒となる。この中間圧冷媒は、その臨界圧力PCよりも低圧であって、気液二相状態となっている。そして、気液二相状態の中間圧冷媒が、膨張機(22)から流出し、レシーバタンク(31)を通って電動膨張弁(23)へ送られる。
【0058】
電動膨張弁(23)では、中間圧冷媒が減圧され、その圧力が点3の状態から点4の状態にまで低下する。つまり、電動膨張弁(23)を通過することで、中間圧冷媒が減圧されて圧力PLの低圧冷媒となる。点4の状態の低圧冷媒は、第2四路切換弁(14)を通って室内熱交換器(11)へ導入される。
【0059】
室内熱交換器(11)では、導入された低圧冷媒が室内空気と熱交換を行う。この熱交換により、低圧冷媒が室内空気から吸熱し、そのエンタルピが点4の状態から点5の状態にまで増大する。点5の状態の低圧冷媒は、室内熱交換器(11)から流出し、第1四路切換弁(13)を通って圧縮機(21)へ送られる。一方、室内熱交換器(11)で低圧冷媒により冷却された室内空気は、調和空気として室内へ送り返される。
【0060】
圧縮機(21)に吸入された点5の状態の冷媒は、圧縮されて点1の状態となる。つまり、圧縮機(21)では、圧力PLの低圧冷媒が圧縮されて圧力PHの高圧冷媒となる。そして、この高圧冷媒が圧縮機(21)から室外熱交換器(12)へ送られる。
【0061】
上述のように、膨張機(22)において、冷媒の圧力及びエンタルピが点2から点3の状態にまで低下する。そして、この膨張機(22)では、点2と点3のエンタルピ差に相当する動力が得られ、この得られた動力が圧縮機(21)の駆動に利用される。
【0062】
−コントローラの制御動作−
暖房運転時や冷房運転時において、上記コントローラ(50)は、下記に示すような所定の制御動作を行い、圧縮機(21)の運転周波数や電動膨張弁(23)の開度を調節している。それに伴い、暖房運転中や冷房運転中には、冷凍サイクルの高圧PHと低圧PLの値が変動する。つまり、空調機の運転中には、冷凍サイクルにおける高圧PHと低圧PLの比PH/PLが変化する。
【0063】
本参考技術では、膨張機(22)をスクロール型の流体機械により構成しているため、膨張機(22)における膨張比、即ち膨張機(22)の出入口における冷媒の圧力比PH/PMは一定で変化しない。一方、電動膨張弁(23)の開度を変更すると、電動膨張弁(23)の出入口における冷媒の圧力比PM/PLが変化する。従って、膨張機(22)の膨張比が一定であっても、電動膨張弁(23)の開度を調節することにより、冷凍サイクルの高圧PHや低圧PLが運転状態に適した値に設定される。
【0064】
〈暖房運転時の制御動作〉
暖房運転時には、コントローラ(50)が所定の制御動作を行い、圧縮機(21)の容量や電動膨張弁(23)の開度を調節する。
【0065】
暖房運転を開始する場合、コントローラ(50)は、下記の〈a〉から〈c〉の動作を順に行う。
〈a〉入力された室内空気温度Trと室外空気温度Toとに基づいて制御領域分けを行い、その領域分けに従い、予め記憶している表から圧縮機(21)の運転周波数の初期値F0を決定する。
〈b〉決定された運転周波数Fと室外空気温度Toとを予め記憶する関係式へ代入し、電動膨張弁(23)の開度の初期値Ev0を決定する。
〈c〉電動膨張弁(23)の開度を初期値Ev0に設定し、圧縮機モータ(24)へ周波数F0の交流電力を供給して圧縮機(21)を起動する。
【0066】
一方、暖房運転中において、コントローラ(50)は、下記の〈d〉から〈f〉の動作を、所定の時間間隔で繰り返し行う。
〈d〉入力された吐出圧力pd、室内空気温度Tr、及び室外熱交換器温度Thoを予め記憶する関係式へ代入し、吐出管温度の制御目標値Tdsetを決定する。
〈e〉入力された吐出管温度Tdと制御目標値Tdsetの差に基づいて電動膨張弁(23)の開度操作量ΔEvを決定し、その値に従って電動膨張弁(23)の開度を変更する。
〈f〉入力された室内空気温度Trと室内設定温度Trsetの差に基づいて圧縮機(21)の運転周波数の変化量ΔFを決定し、その値に従って圧縮機モータ(24)へ供給する交流電力の周波数を変更する。
【0067】
〈冷房運転時の制御動作〉
冷房運転時には、コントローラ(50)が所定の制御動作を行い、圧縮機(21)の容量や電動膨張弁(23)の開度を調節する。
【0068】
冷房運転を開始する場合、コントローラ(50)は、下記の〈g〉から〈i〉の動作を順に行う。
〈g〉入力された室内空気温度Trと室外空気温度Toとに基づいて制御領域分けを行い、その領域分けに従い、予め記憶している表から圧縮機(21)の運転周波数の初期値F0を決定する。
〈h〉決定された運転周波数Fと室外空気温度Toとを予め記憶する関係式へ代入し、電動膨張弁(23)の開度の初期値Ev0を決定する。
〈i〉電動膨張弁(23)の開度を初期値Ev0に設定し、圧縮機モータ(24)へ周波数F0の交流電力を供給して圧縮機(21)を起動する。
【0069】
一方、暖房運転中において、コントローラ(50)は、下記の〈j〉から〈l〉の動作を、所定の時間間隔で繰り返し行う。
〈j〉入力された吐出圧力pd、室内空気温度Tr、及び室内熱交換器温度Thiを予め記憶する関係式へ代入し、吐出管温度の制御目標値Tdsetを決定する。
〈k〉入力された吐出管温度Tdと制御目標値Tdsetの差に基づいて電動膨張弁(23)の開度操作量ΔEvを決定し、その値に従って電動膨張弁(23)の開度を変更する。
〈l〉入力された室内空気温度Trと室内設定温度Trsetの差に基づいて圧縮機(21)の運転周波数の変化量ΔFを決定し、その値に従って圧縮機モータ(24)へ供給する交流電力の周波数を変更する。
【0070】
−参考技術1の効果−
本参考技術では、冷媒回路(10)において、内部容積比が一定の膨張機(22)と開度可変の電動膨張弁(23)の両方が直列に設けられている。このため、膨張機(22)の膨張比が一定であっても、電動膨張弁(23)の開度を変更することにより、冷凍サイクルの高圧や低圧を空調機の運転条件に適した値に設定できる。従って、本参考技術によれば、膨張比が一定の膨張機(22)を備える空調機においても冷凍サイクルの高圧や低圧を最適な値に設定することが可能となり、上記空調機の暖房運転や冷房運転を常に円滑に行うことができる。
【0071】
また、本参考技術によれば、運転中の膨張機(22)における膨張比を、その膨張機(22)を構成する流体機械の設計膨張比とほぼ同じに保った上で、空調機の運転を行うことがが可能となる。従って、本参考技術によれば、冷媒の過膨張によるキャビテーションを防止でき、キャビテーションに起因する膨張機(22)の損傷を回避して空調機の信頼性を高めることができる。
【0072】
また、本参考技術では、冷媒回路(10)における膨張機(22)と電動膨張弁(23)の間にレシーバタンク(31)を設けている。このため、気液二相状態の中間圧冷媒をレシーバタンク(31)一時的に貯留することで、冷媒回路(10)を循環する冷媒量の調節が可能となる。
【0073】
ここで、冷凍サイクルの高圧が冷媒の臨界圧力よりも低い一般的な冷凍装置では、冷媒回路(10)にレシーバを設け、高圧の液冷媒をレシーバに貯留することで冷媒回路(10)を循環する冷媒量を調節している。ところが、冷媒の圧力がその臨界圧力以上となると、冷媒は液相と気相の区別がない状態となる。このため、本参考技術の空調機のような冷凍サイクルの高圧が冷媒の臨界圧力以上となるものでは、高圧冷媒が流入する従来のレシーバを設けても、レシーバが超臨界状態の冷媒で満たされてしまい、冷媒量の調節が不可能となる。そこで、本参考技術では、臨界圧力よりも低圧の中間圧冷媒をレシーバタンク(31)に一時的に貯留することで、冷媒回路(10)で循環する冷媒量の調節を可能としている。
【0074】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1は、上記参考技術1において膨張機(22)と電動膨張弁(23)の位置を入れ替え、冷媒回路(10)における膨張機(22)の上流側に電動膨張弁(23)を配置したものである。ここでは、本実施形態に係る空調機の構成について、上記参考技術1と異なる部分を説明する。
【0075】
図3に示すように、電動膨張弁(23)は、その流入側が第2四路切換弁(14)の第3のポートに配管接続され、その流出側がレシーバタンク(31)の上部に配管接続されている。また、膨張機(22)は、その流入側がレシーバタンク(31)の下部に配管接続され、その流出側が第2四路切換弁(14)の第4のポートに配管接続されている。
【0076】
−運転動作−
〈暖房運転〉
本実施形態の空調機における暖房運転時の動作について、図3及び図4を参照しながら説明する。尚、図4は、上記空調機における冷凍サイクルを、モリエル線図(圧力−エンタルピ線図)上に表したものである。
【0077】
暖房運転時において、第1四路切換弁(13)及び第2四路切換弁(14)は、図3に実線で示す状態に切り換わる。この状態で圧縮機(21)を駆動すると、冷媒回路(10)で冷媒が循環して冷凍サイクルが行われる。その際、室内熱交換器(11)が放熱器として機能し、室外熱交換器(12)が蒸発器として機能する。
【0078】
具体的に、圧縮機(21)からは、図4における点1の状態の高圧冷媒が吐出される。この高圧冷媒の圧力PHは、その臨界圧力PCよりも高くなっている。圧縮機(21)から吐出された冷媒は、第1四路切換弁(13)を通って室内熱交換器(11)へ導入される。
【0079】
室内熱交換器(11)では、導入された高圧冷媒が室内空気と熱交換を行う。この熱交換により、高圧冷媒は室内空気に対して放熱し、そのエンタルピが点1の状態から点2の状態にまで低下する。点2の状態の高圧冷媒は、第2四路切換弁(14)を通って電動膨張弁(23)へ送られる。一方、室内熱交換器(11)で高圧冷媒により加熱された室内空気は、調和空気として室内へ送り返される。
【0080】
電動膨張弁(23)では、高圧冷媒が減圧され、その圧力が点2の状態から点3の状態にまで低下する。つまり、電動膨張弁(23)を通過することで、高圧冷媒が減圧されて圧力PMの中間圧冷媒となる。この中間圧冷媒は、その臨界圧力PCよりも低圧であって、気液二相状態となっている。そして、気液二相状態の中間圧冷媒が、電動膨張弁(23)から流出し、レシーバタンク(31)を通って膨張機(22)へ送られる。
【0081】
レシーバから送り込まれた点3の状態の冷媒は、膨張機(22)において膨張し、その圧力及びエンタルピが点4の状態にまで低下する。つまり、膨張機(22)では、中間圧冷媒が膨張して圧力PLの低圧冷媒となる。点4の状態の低圧冷媒は、第2四路切換弁(14)を通って室外熱交換器(12)へ導入される。
【0082】
室外熱交換器(12)では、導入された低圧冷媒が室外空気と熱交換を行う。この熱交換により、低圧冷媒が室外空気から吸熱し、そのエンタルピが点4の状態から点5の状態にまで増大する。点5の状態の低圧冷媒は、室外熱交換器(12)から流出し、第1四路切換弁(13)を通って圧縮機(21)へ送られる。
【0083】
圧縮機(21)に吸入された点5の状態の冷媒は、圧縮されて点1の状態となる。つまり、圧縮機(21)では、圧力PLの低圧冷媒が圧縮されて圧力PHの高圧冷媒となる。そして、この高圧冷媒が圧縮機(21)から室内熱交換器(11)へ送られる。
【0084】
上述のように、膨張機(22)において、冷媒の圧力及びエンタルピが点3から点4の状態にまで低下する。そして、この膨張機(22)では、点3と点4のエンタルピ差に相当する動力が得られ、この得られた動力が圧縮機(21)の駆動に利用される。
【0085】
〈冷房運転〉
上記空調機の冷房運転時の動作について、図3及び図4を参照しながら説明する。
【0086】
冷房運転時において、第1四路切換弁(13)及び第2四路切換弁(14)は、図3に破線で示す状態に切り換わる。この状態で圧縮機(21)を駆動すると、冷媒回路(10)で冷媒が循環して冷凍サイクルが行われる。その際、室外熱交換器(12)が放熱器として機能し、室内熱交換器(11)が蒸発器として機能する。
【0087】
具体的に、圧縮機(21)からは、図4における点1の状態の高圧冷媒が吐出される。この高圧冷媒の圧力PHは、その臨界圧力PCよりも高くなっている。圧縮機(21)から吐出された冷媒は、第1四路切換弁(13)を通って室外熱交換器(12)へ導入される。
【0088】
室外熱交換器(12)では、導入された高圧冷媒が室外空気と熱交換を行う。この熱交換により、高圧冷媒は室外空気に対して放熱し、そのエンタルピが点1の状態から点2の状態にまで低下する。点2の状態の高圧冷媒は、第2四路切換弁(14)を通って電動膨張弁(23)へ送られる。
【0089】
電動膨張弁(23)では、高圧冷媒が減圧され、その圧力が点2の状態から点3の状態にまで低下する。つまり、電動膨張弁(23)を通過することで、高圧冷媒が減圧されて圧力PMの中間圧冷媒となる。この中間圧冷媒は、その臨界圧力PCよりも低圧であって、気液二相状態となっている。そして、気液二相状態の中間圧冷媒が、電動膨張弁(23)から流出し、レシーバタンク(31)を通って膨張機(22)へ送られる。
【0090】
レシーバから送り込まれた点3の状態の冷媒は、膨張機(22)において膨張し、その圧力及びエンタルピが点4の状態にまで低下する。つまり、膨張機(22)では、中間圧冷媒が膨張して圧力PLの低圧冷媒となる。点4の状態の低圧冷媒は、第2四路切換弁(14)を通って室内熱交換器(11)へ導入される。
【0091】
室内熱交換器(11)では、導入された低圧冷媒が室内空気と熱交換を行う。この熱交換により、低圧冷媒が室内空気から吸熱し、そのエンタルピが点4の状態から点5の状態にまで増大する。点5の状態の低圧冷媒は、室内熱交換器(11)から流出し、第1四路切換弁(13)を通って圧縮機(21)へ送られる。一方、室内熱交換器(11)で低圧冷媒により冷却された室内空気は、調和空気として室内へ送り返される。
【0092】
圧縮機(21)に吸入された点5の状態の冷媒は、圧縮されて点1の状態となる。つまり、圧縮機(21)では、圧力PLの低圧冷媒が圧縮されて圧力PHの高圧冷媒となる。そして、この高圧冷媒が圧縮機(21)から室外熱交換器(12)へ送られる。
【0093】
上述のように、膨張機(22)において、冷媒の圧力及びエンタルピが点3から点4の状態にまで低下する。そして、この膨張機(22)では、点3と点4のエンタルピ差に相当する動力が得られ、この得られた動力が圧縮機(21)の駆動に利用される。
【0094】
−実施形態1の効果−
本実施形態では、冷媒回路(10)において、膨張機(22)を電動膨張弁(23)の下流側に設置している。このため、本実施形態によれば、上記参考技術1のように膨張機(22)を電動膨張弁(23)の上流側に設置する場合に比べ、膨張機(22)において冷媒の内部エネルギを機械的な動力へ確実に変換することが可能となる。
【0095】
この点について説明する。冷媒の圧力が臨界圧力以上である状態では、比体積が僅かに変化しただけでも圧力が大きく変動する。そのため、高圧PHの冷媒を中間圧PMにまで膨張させる過程で膨張機(22)を用いると、膨張機(22)としての流体機械の内部で僅かな漏れが生じただけでも、膨張機(22)において得られる動力は大幅に減少してしまう。
【0096】
一方、冷媒がその臨界圧力よりも低圧の場合、該冷媒は気液二相状態となっており、圧力の変動と共に比体積も大きく変動する。そのため、中間圧PMの冷媒を低圧PLにまで膨張させる過程で膨張機(22)を用いると、膨張機(22)としての流体機械の内部でいくらか漏れが生じても、それに伴う圧力の低下は僅かであって膨張機(22)で得られる動力もさほど減少しない。そして、実際の流体機械では、加工精度等の問題から、作動流体の漏れを完全に防止するのは極めて困難である。
【0097】
これに対し、本実施形態では、電動膨張弁(23)の下流に膨張機(22)を設け、中間圧PMの冷媒を低圧PLにまで膨張させる過程で膨張機(22)を用いるようにしている。このため、本実施形態によれば、膨張機(22)の内部における冷媒の漏れが生じても、これに起因する発生動力の減少を最小限に留めることができ、膨張する冷媒の内部エネルギを確実に動力として回収することが可能となる。
【0098】
《参考技術2》
参考技術2について説明する。本参考技術は、上記参考技術1の構成を変更し、いわゆる多効式冷凍サイクルを行うようにしたものである。つまり、本参考技術では、多効式冷凍サイクルを行うことにより、圧縮機モータ(24)の消費電力の低減を図っている。ここでは、本参考技術に係る空調機の構成について、上記参考技術1と異なる部分を説明する。
【0099】
図5に示すように、本参考技術の冷媒回路(10)には、上記参考技術1のレシーバタンク(31)に代えて気液分離器(32)が設けられている。この気液分離器(32)は、縦長で円筒状の密閉容器により構成され、膨張機(22)の流出側と配管接続されている。気液分離器(32)には、気液二相状態の中間圧冷媒が膨張機(22)から送り込まれる。気液分離器(32)へ送り込まれた中間圧冷媒は、そのうちの液冷媒が気液分離器(32)内の下部に溜まり、ガス冷媒が気液分離器(32)内の上部に溜まる。
【0100】
上記気液分離器(32)の底部は、電動膨張弁(23)の流入側と配管接続されている。気液分離器(32)に貯留する中間圧の液冷媒は、電動膨張弁(23)へと送られる。一方、気液分離器(32)の上端部は、圧縮機(21)と配管接続されている。気液分離器(32)に貯留する中間圧のガス冷媒は、圧縮機(21)へと送られる。つまり、気液分離器(32)と圧縮機(21)を接続する配管は、ガス管路(33)を構成している。
【0101】
本参考技術の圧縮機(21)へは、室外熱交換器(12)又は室内熱交換器(11)からの低圧のガス冷媒と、気液分離器(32)からの中間圧のガス冷媒とが供給されている。この圧縮機(21)は、吸入した低圧ガス冷媒を圧縮する一方、その圧縮行程の途中で中間圧ガス冷媒を吸入するように構成されている。
【0102】
尚、本参考技術において、気液分離器(32)に貯留する液冷媒の量を増減させれば、冷媒回路(10)を循環する冷媒量を変化させることができる。従って、本参考技術の気液分離器(32)は、上記参考技術1のレシーバタンク(31)の機能を兼ね備えている。
【0103】
−運転動作−
〈暖房運転〉
上記空調機の暖房運転時の動作について、図5及び図6を参照しながら説明する。尚、図6は、上記空調機における冷凍サイクルを、モリエル線図(圧力−エンタルピ線図)上に表したものである。
【0104】
暖房運転時において、第1四路切換弁(13)及び第2四路切換弁(14)は、図5に実線で示す状態に切り換わる。この状態で圧縮機(21)を駆動すると、冷媒回路(10)で冷媒が循環して冷凍サイクルが行われる。その際、室内熱交換器(11)が放熱器として機能し、室外熱交換器(12)が蒸発器として機能する。
【0105】
具体的に、圧縮機(21)からは、図6における点1の状態の高圧冷媒が吐出される。この高圧冷媒の圧力PHは、その臨界圧力PCよりも高くなっている。圧縮機(21)から吐出された冷媒は、第1四路切換弁(13)を通って室内熱交換器(11)へ導入される。
【0106】
室内熱交換器(11)では、導入された高圧冷媒が室内空気と熱交換を行う。この熱交換により、高圧冷媒は室内空気に対して放熱し、そのエンタルピが点1の状態から点2の状態にまで低下する。点2の状態の高圧冷媒は、第2四路切換弁(14)を通って膨張機(22)へ導入される。一方、室内熱交換器(11)で高圧冷媒により加熱された室内空気は、調和空気として室内へ送り返される。
【0107】
室内熱交換器(11)で放熱した後の点2の状態の冷媒は、膨張機(22)において膨張し、その圧力及びエンタルピが点3の状態にまで低下する。つまり、膨張機(22)では、高圧冷媒が膨張して圧力PMの中間圧冷媒となる。この中間圧冷媒は、その臨界圧力PCよりも低圧であって、気液二相状態となっている。膨張機(22)から流出した中間圧冷媒は、気液分離器(32)へ送られる。
【0108】
気液分離器(32)へ流入した中間圧冷媒は、点3'の状態の液冷媒と点3''の状態のガス冷媒に分離される。点3'の状態の液冷媒は、気液分離器(32)から電動膨張弁(23)へと送られる。一方、点3''の状態のガス冷媒は、気液分離器(32)から圧縮機(21)へと送られる。
【0109】
電動膨張弁(23)では、中間圧の液冷媒が減圧され、その圧力が点3'の状態から点4の状態にまで低下する。つまり、電動膨張弁(23)を通過することで、中間圧の液冷媒が減圧されて圧力PLの低圧冷媒となる。点4の状態の低圧冷媒は、第2四路切換弁(14)を通って室外熱交換器(12)へ導入される。
【0110】
室外熱交換器(12)では、導入された低圧冷媒が室外空気と熱交換を行う。この熱交換により、低圧冷媒が室外空気から吸熱し、そのエンタルピが点4の状態から点5の状態にまで増大する。点5の状態の低圧冷媒は、室外熱交換器(12)から流出し、第1四路切換弁(13)を通って圧縮機(21)へ送られる。
【0111】
上述のように、圧縮機(21)へは、点5の状態の低圧ガス冷媒と、点3''の状態の中間圧ガス冷媒とが供給されている。先ず、圧縮機(21)では、点5の状態のガス冷媒の圧縮が開始される。この圧縮過程にある冷媒は、点6の状態となった時点、即ちその圧力が圧力PMに達した時点で、点3''の状態のガス冷媒と混合される。混合後のガス冷媒は、点6'の状態となる。この点6'の状態の冷媒は、圧縮機(21)において引き続き圧縮されて点1の状態となる。そして、点1の状態の高圧冷媒が圧縮機(21)から室内熱交換器(11)へ送られる。
【0112】
また、膨張機(22)においては、冷媒の圧力及びエンタルピが点2から点3の状態にまで低下する。そして、この膨張機(22)では、点2と点3のエンタルピ差に相当する動力が得られ、この得られた動力が圧縮機(21)の駆動に利用される。
【0113】
〈冷房運転〉
上記空調機の冷房運転時の動作について、図5及び図6を参照しながら説明する。
【0114】
冷房運転時において、第1四路切換弁(13)及び第2四路切換弁(14)は、図5に破線で示す状態に切り換わる。この状態で圧縮機(21)を駆動すると、冷媒回路(10)で冷媒が循環して冷凍サイクルが行われる。その際、室外熱交換器(12)が放熱器として機能し、室内熱交換器(11)が蒸発器として機能する。
【0115】
具体的に、圧縮機(21)からは、図6における点1の状態の高圧冷媒が吐出される。この高圧冷媒の圧力PHは、その臨界圧力PCよりも高くなっている。圧縮機(21)から吐出された冷媒は、第1四路切換弁(13)を通って室外熱交換器(12)へ導入される。
【0116】
室外熱交換器(12)では、導入された高圧冷媒が室外空気と熱交換を行う。この熱交換により、高圧冷媒は室外空気に対して放熱し、そのエンタルピが点1の状態から点2の状態にまで低下する。点2の状態の高圧冷媒は、第2四路切換弁(14)を通って膨張機(22)へ導入される。
【0117】
室外熱交換器(12)で放熱した後の点2の状態の冷媒は、膨張機(22)において膨張し、その圧力及びエンタルピが点3の状態にまで低下する。つまり、膨張機(22)では、高圧冷媒が膨張して圧力PMの中間圧冷媒となる。この中間圧冷媒は、その臨界圧力PCよりも低圧であって、気液二相状態となっている。膨張機(22)から流出した中間圧冷媒は、気液分離器(32)へ送られる。
【0118】
気液分離器(32)へ流入した中間圧冷媒は、点3'の状態の液冷媒と点3''の状態のガス冷媒に分離される。点3'の状態の液冷媒は、気液分離器(32)から電動膨張弁(23)へと送られる。一方、点3''の状態のガス冷媒は、気液分離器(32)から圧縮機(21)へと送られる。
【0119】
電動膨張弁(23)では、中間圧の液冷媒が減圧され、その圧力が点3'の状態から点4の状態にまで低下する。つまり、電動膨張弁(23)を通過することで、中間圧冷媒が減圧されて圧力PLの低圧冷媒となる。点4の状態の低圧冷媒は、第2四路切換弁(14)を通って室内熱交換器(11)へ導入される。
【0120】
室内熱交換器(11)では、導入された低圧冷媒が室内空気と熱交換を行う。この熱交換により、低圧冷媒が室内空気から吸熱し、そのエンタルピが点4の状態から点5の状態にまで増大する。点5の状態の低圧冷媒は、室内熱交換器(11)から流出し、第1四路切換弁(13)を通って圧縮機(21)へ送られる。一方、室内熱交換器(11)で低圧冷媒により冷却された室内空気は、調和空気として室内へ送り返される。
【0121】
上述のように、圧縮機(21)へは、点5の状態の低圧ガス冷媒と、点3''の状態の中間圧ガス冷媒とが供給されている。先ず、圧縮機(21)では、点5の状態のガス冷媒の圧縮が開始される。この圧縮過程にある冷媒は、点6の状態となった時点、即ちその圧力が圧力PMに達した時点で、点3''の状態のガス冷媒と混合される。混合後のガス冷媒は、点6'の状態となる。この点6'の状態の冷媒は、圧縮機(21)において引き続き圧縮されて点1の状態となる。そして、点1の状態の高圧冷媒が圧縮機(21)から室外熱交換器(12)へ送られる。
【0122】
また、膨張機(22)においては、冷媒の圧力及びエンタルピが点2から点3の状態にまで低下する。そして、この膨張機(22)では、点2と点3のエンタルピ差に相当する動力が得られ、この得られた動力が圧縮機(21)の駆動に利用される。
【0123】
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2は、上記実施形態1の構成を変更し、いわゆる多効式冷凍サイクルを行うようにしたものである。つまり、本実施形態では、多効式冷凍サイクルを行うことにより、圧縮機モータ(24)の消費電力の低減を図っている。ここでは、本実施形態に係る空調機の構成について、上記実施形態1と異なる部分を説明する。
【0124】
図7に示すように、本実施形態の冷媒回路(10)には、上記実施形態1のレシーバタンク(31)に代えて気液分離器(32)が設けられている。この気液分離器(32)は、縦長で円筒状の密閉容器により構成され、電動膨張弁(23)の流出側と配管接続されている。気液分離器(32)には、気液二相状態の中間圧冷媒が電動膨張弁(23)から送り込まれる。気液分離器(32)へ送り込まれた中間圧冷媒は、そのうちの液冷媒が気液分離器(32)内の下部に溜まり、ガス冷媒が気液分離器(32)内の上部に溜まる。
【0125】
上記気液分離器(32)の底部は、膨張機(22)の流入側と配管接続されている。気液分離器(32)に貯留する中間圧の液冷媒は、膨張機(22)へと送られる。一方、気液分離器(32)の上端部は、圧縮機(21)と配管接続されている。気液分離器(32)に貯留する中間圧のガス冷媒は、圧縮機(21)へと送られる。つまり、気液分離器(32)と圧縮機(21)を接続する配管は、ガス管路(33)を構成している。
【0126】
本実施形態の圧縮機(21)へは、室外熱交換器(12)又は室内熱交換器(11)からの低圧のガス冷媒と、気液分離器(32)からの中間圧のガス冷媒とが供給されている。この圧縮機(21)は、吸入した低圧ガス冷媒を圧縮する一方、その圧縮行程の途中で中間圧ガス冷媒を吸入するように構成されている。
【0127】
尚、本実施形態において、気液分離器(32)に貯留する液冷媒の量を増減させれば、冷媒回路(10)を循環する冷媒量を変化させることができる。従って、本実施形態の気液分離器(32)は、上記実施形態1のレシーバタンク(31)の機能を兼ね備えている。
【0128】
−運転動作−
〈暖房運転〉
本実施形態の空調機における暖房運転時の動作について、図7及び図8を参照しながら説明する。尚、図8は、上記空調機における冷凍サイクルを、モリエル線図(圧力−エンタルピ線図)上に表したものである。
【0129】
暖房運転時において、第1四路切換弁(13)及び第2四路切換弁(14)は、図7に実線で示す状態に切り換わる。この状態で圧縮機(21)を駆動すると、冷媒回路(10)で冷媒が循環して冷凍サイクルが行われる。その際、室内熱交換器(11)が放熱器として機能し、室外熱交換器(12)が蒸発器として機能する。
【0130】
具体的に、圧縮機(21)からは、図8における点1の状態の高圧冷媒が吐出される。この高圧冷媒の圧力PHは、その臨界圧力PCよりも高くなっている。圧縮機(21)から吐出された冷媒は、第1四路切換弁(13)を通って室内熱交換器(11)へ導入される。
【0131】
室内熱交換器(11)では、導入された高圧冷媒が室内空気と熱交換を行う。この熱交換により、高圧冷媒は室内空気に対して放熱し、そのエンタルピが点1の状態から点2の状態にまで低下する。点2の状態の高圧冷媒は、第2四路切換弁(14)を通って電動膨張弁(23)へ送られる。一方、室内熱交換器(11)で高圧冷媒により加熱された室内空気は、調和空気として室内へ送り返される。
【0132】
電動膨張弁(23)では、高圧冷媒が減圧され、その圧力が点2の状態から点3の状態にまで低下する。つまり、電動膨張弁(23)を通過することで、高圧冷媒が減圧されて圧力PMの中間圧冷媒となる。この中間圧冷媒は、その臨界圧力PCよりも低圧であって、気液二相状態となっている。そして、電動膨張弁(23)から流出した中間圧冷媒は、気液分離器(32)へ送られる。
【0133】
気液分離器(32)へ流入した中間圧冷媒は、点3'の状態の液冷媒と点3''の状態のガス冷媒に分離される。点3'の状態の液冷媒は、気液分離器(32)から膨張機(22)へと送られる。一方、点3''の状態のガス冷媒は、気液分離器(32)から圧縮機(21)へと送られる。
【0134】
膨張機(22)では、中間圧の液冷媒が膨張し、その圧力及びエンタルピが点4の状態にまで低下する。つまり、膨張機(22)では、中間圧の液冷媒が膨張して圧力PLの低圧冷媒となる。点4の状態の低圧冷媒は、第2四路切換弁(14)を通って室外熱交換器(12)へ導入される。
【0135】
室外熱交換器(12)では、導入された低圧冷媒が室外空気と熱交換を行う。この熱交換により、低圧冷媒が室外空気から吸熱し、そのエンタルピが点4の状態から点5の状態にまで増大する。点1の状態の低圧冷媒は、室外熱交換器(12)から流出し、第1四路切換弁(13)を通って圧縮機(21)へ送られる。
【0136】
上述のように、圧縮機(21)へは、点5の状態の低圧ガス冷媒と、点3''の状態の中間圧ガス冷媒とが供給されている。先ず、圧縮機(21)では、点5の状態のガス冷媒の圧縮が開始される。この圧縮過程にある冷媒は、点6の状態となった時点、即ちその圧力が圧力PMに達した時点で、点3''の状態のガス冷媒と混合される。混合後のガス冷媒は、点6'の状態となる。この点6'の状態の冷媒は、圧縮機(21)において引き続き圧縮されて点1の状態となる。そして、点1の状態の高圧冷媒が圧縮機(21)から室内熱交換器(11)へ送られる。
【0137】
また、膨張機(22)においては、冷媒の圧力及びエンタルピが点3'から点4の状態にまで低下する。そして、この膨張機(22)では、点3'と点4のエンタルピ差に相当する動力が得られ、この得られた動力が圧縮機(21)の駆動に利用される。
【0138】
〈冷房運転〉
上記空調機の冷房運転時の動作について、図7及び図8を参照しながら説明する。
【0139】
冷房運転時において、第1四路切換弁(13)及び第2四路切換弁(14)は、図7に破線で示す状態に切り換わる。この状態で圧縮機(21)を駆動すると、冷媒回路(10)で冷媒が循環して冷凍サイクルが行われる。その際、室外熱交換器(12)が放熱器として機能し、室内熱交換器(11)が蒸発器として機能する。
【0140】
具体的に、圧縮機(21)からは、図8における点1の状態の高圧冷媒が吐出される。この高圧冷媒の圧力PHは、その臨界圧力PCよりも高くなっている。圧縮機(21)から吐出された冷媒は、第1四路切換弁(13)を通って室外熱交換器(12)へ導入される。
【0141】
室外熱交換器(12)では、導入された高圧冷媒が室外空気と熱交換を行う。この熱交換により、高圧冷媒は室外空気に対して放熱し、そのエンタルピが点1の状態から点2の状態にまで低下する。点2の状態の高圧冷媒は、第2四路切換弁(14)を通って電動膨張弁(23)へ送られる。
【0142】
電動膨張弁(23)では、高圧冷媒が減圧され、その圧力が点2の状態から点3の状態にまで低下する。つまり、電動膨張弁(23)を通過することで、高圧冷媒が減圧されて圧力PMの中間圧冷媒となる。この中間圧冷媒は、その臨界圧力PCよりも低圧であって、気液二相状態となっている。電動膨張弁(23)から流出した中間圧冷媒は、気液分離器(32)へ送られる。
【0143】
気液分離器(32)へ流入した中間圧冷媒は、点3'の状態の液冷媒と点3''の状態のガス冷媒に分離される。点3'の状態の液冷媒は、気液分離器(32)から電動膨張弁(23)へと送られる。一方、点3''の状態のガス冷媒は、気液分離器(32)から圧縮機(21)へと送られる。
【0144】
膨張機(22)では、中間圧の冷媒が膨張し、その圧力及びエンタルピが点4の状態にまで低下する。つまり、膨張機(22)では、中間圧冷媒が膨張して圧力PLの低圧冷媒となる。点4の状態の低圧冷媒は、第2四路切換弁(14)を通って室内熱交換器(11)へ導入される。
【0145】
室内熱交換器(11)では、導入された低圧冷媒が室内空気と熱交換を行う。この熱交換により、低圧冷媒が室内空気から吸熱し、そのエンタルピが点4の状態から点5の状態にまで増大する。点5の状態の低圧冷媒は、室内熱交換器(11)から流出し、第1四路切換弁(13)を通って圧縮機(21)へ送られる。一方、室内熱交換器(11)で低圧冷媒により冷却された室内空気は、調和空気として室内へ送り返される。
【0146】
上述のように、圧縮機(21)へは、点5の状態の低圧ガス冷媒と、点3''の状態の中間圧ガス冷媒とが供給されている。先ず、圧縮機(21)では、点5の状態のガス冷媒の圧縮が開始される。この圧縮過程にある冷媒は、点6の状態となった時点、即ちその圧力が圧力PMに達した時点で、点3''の状態のガス冷媒と混合される。混合後のガス冷媒は、点6'の状態となる。この点6'の状態の冷媒は、圧縮機(21)において引き続き圧縮されて点1の状態となる。そして、点1の状態の高圧冷媒が圧縮機(21)から室外熱交換器(12)へ送られる。
【0147】
また、膨張機(22)においては、冷媒の圧力及びエンタルピが点3'から点4の状態にまで低下する。そして、この膨張機(22)では、点3'と点4のエンタルピ差に相当する動力が得られ、この得られた動力が圧縮機(21)の駆動に利用される。
【0148】
《参考技術3》
参考技術3について説明する。本参考技術は、上記参考技術1の構成を変更し、いわゆる二段圧縮冷凍サイクルを行うようにしたものである。つまり、本参考技術では、二段圧縮冷凍サイクルを行うことにより、圧縮機モータ(24)の消費電力の低減を図っている。ここでは、本参考技術に係る空調機の構成について、上記参考技術1と異なる部分を説明する。
【0149】
図9に示すように、本参考技術の冷媒回路(10)では、上記参考技術1のレシーバタンク(31)が省略されており、その代わりに中間冷却器(40)が設けられている。中間冷却器(40)は、密閉容器状のシェル部(41)と、伝熱管により構成されてシェル部(41)に収納される管部(42)とを備えている。この中間冷却器(40)は、中間熱交換器を構成している。つまり、中間冷却器(40)は、シェル部(41)に貯留する冷媒と、管部(42)の内部を流れる冷媒とを熱交換させるように構成されている。
【0150】
本参考技術において、膨張機(22)の流入側と中間冷却器(40)の管部(42)の一端とは、共に第2四路切換弁(14)の第3のポートと配管接続されている。また、中間冷却器(40)の管部(42)の他端は、電動膨張弁(23)の流入側と配管接続されている。一方、中間冷却器(40)のシェル部(41)は、その流入側が膨張機(22)の流出側と配管接続され、その流出側が圧縮機(21)と配管接続されている。
【0151】
本参考技術の圧縮機(21)へは、室外熱交換器(12)又は室内熱交換器(11)からの低圧のガス冷媒と、中間冷却器(40)のシェル部(41)からの中間圧冷媒とが供給されている。この圧縮機(21)には、図示しないが、2つの圧縮機構が設けられている。そして、この圧縮機(21)は、低圧冷媒を低段側の圧縮機構へ吸入して中間圧にまで圧縮する一方、低段側の圧縮機構から吐出された中間圧冷媒とシェル部(41)からの中間圧冷媒を高段側の圧縮機構へ吸入して高圧にまで圧縮するように構成されている。
【0152】
−運転動作−
〈暖房運転〉
上記空調機の暖房運転時の動作について、図9及び図10を参照しながら説明する。尚、図10は、上記空調機における冷凍サイクルを、モリエル線図(圧力−エンタルピ線図)上に表したものである。
【0153】
暖房運転時において、第1四路切換弁(13)及び第2四路切換弁(14)は、図9に実線で示す状態に切り換わる。この状態で圧縮機(21)を駆動すると、冷媒回路(10)で冷媒が循環して冷凍サイクルが行われる。その際、室内熱交換器(11)が放熱器として機能し、室外熱交換器(12)が蒸発器として機能する。
【0154】
具体的に、圧縮機(21)からは、図10における点1の状態の高圧冷媒が吐出される。この高圧冷媒の圧力PHは、その臨界圧力PCよりも高くなっている。圧縮機(21)から吐出された冷媒は、第1四路切換弁(13)を通って室内熱交換器(11)へ導入される。
【0155】
室内熱交換器(11)では、導入された高圧冷媒が室内空気と熱交換を行う。この熱交換により、高圧冷媒は室内空気に対して放熱し、そのエンタルピが点1の状態から点2の状態にまで低下する。点2の状態の高圧冷媒は、第2四路切換弁(14)を通って膨張機(22)へ導入される。一方、室内熱交換器(11)で高圧冷媒により加熱された室内空気は、調和空気として室内へ送り返される。
【0156】
室内熱交換器(11)で放熱した後の点2の状態の冷媒は、第2四路切換弁(14)を通過してから二手に分流される。分流された点2の状態の冷媒は、その一方が膨張機(22)へ導入され、他方が中間冷却器(40)の管部(42)へ導入される。
【0157】
膨張機(22)では、点2の状態の高圧冷媒が膨張し、その圧力及びエンタルピが点6の状態にまで低下する。つまり、膨張機(22)では、高圧冷媒が膨張して圧力PMの中間圧冷媒となる。この中間圧冷媒は、その臨界圧力PCよりも低圧であって、気液二相状態となっている。膨張機(22)から流出した中間圧冷媒は、中間冷却器(40)のシェル部(41)へ導入される。
【0158】
中間冷却器(40)では、管部(42)を流れる高圧冷媒とシェル部(41)へ導入された中間圧冷媒との熱交換が行われる。この熱交換により、管部(42)を流れる高圧冷媒は、そのエンタルピが点2の状態から点3の状態にまで低下する。この点3の状態の高圧冷媒は、管部(42)から流出して電動膨張弁(23)へ送られる。一方、シェル部(41)へ導入された中間圧冷媒は、そのエンタルピが点6の状態から点7の状態にまで増大する。この点7の状態の中間圧冷媒は、シェル部(41)から流出して圧縮機(21)へ送られる。
【0159】
電動膨張弁(23)では、点3の状態の高圧冷媒が減圧され、その圧力が低下して点4の状態となる。つまり、電動膨張弁(23)を通過することで、高圧冷媒が減圧されて圧力PLの低圧冷媒となる。点4の状態の低圧冷媒は、第2四路切換弁(14)を通って室外熱交換器(12)へ導入される。
【0160】
室外熱交換器(12)では、導入された低圧冷媒が室外空気と熱交換を行う。この熱交換により、低圧冷媒が室外空気から吸熱し、そのエンタルピが点4の状態から点5の状態にまで増大する。点5の状態の低圧冷媒は、室外熱交換器(12)から流出し、第1四路切換弁(13)を通って圧縮機(21)へ送られる。
【0161】
上述のように、圧縮機(21)へは、点5の状態の低圧冷媒と、点7の状態の中間圧冷媒とが供給されている。圧縮機(21)において、点5の状態の低圧冷媒は、低段側の圧縮機構へ吸入され、圧縮されて点8の状態となる。つまり、低段側の圧縮機構では、冷媒が圧力PMにまで昇圧される。
【0162】
低段側の圧縮機構から吐出された点8の状態の冷媒は、中間冷却器(40)から送り込まれた点7の状態の冷媒と混合される。これらの冷媒を混合することにより、点8'の状態の冷媒が得られる。点8'の状態の冷媒は、高段側の圧縮機構へ吸入されて圧縮され、点1の状態となる。そして、点1の状態の高圧冷媒が圧縮機(21)から室内熱交換器(11)へ送られる。
【0163】
また、膨張機(22)においては、冷媒の圧力及びエンタルピが点2から点6の状態にまで低下する。そして、この膨張機(22)では、点2と点6のエンタルピ差に相当する動力が得られ、この得られた動力が圧縮機(21)の駆動に利用される。
【0164】
本参考技術において、膨張機(22)の膨張比は一定であり、膨張機(22)から流出する冷媒の圧力は冷凍サイクルの高圧に連動して変化するが、この膨張機(22)では高圧冷媒を中間圧にまで膨張させているに過ぎない。一方、電動膨張弁(23)では高圧冷媒を低圧にまで減圧しているが、この電動膨張弁(23)はその開度を調節可能である。従って、膨張機(22)の膨張比が一定で変化しなくても、電動膨張弁(23)の開度を調節することにより、冷凍サイクルの高圧を空調機の運転にとって最適な値に設定できる。
【0165】
〈冷房運転〉
上記空調機の冷房運転時の動作について、図9及び図10を参照しながら説明する。
【0166】
冷房運転時において、第1四路切換弁(13)及び第2四路切換弁(14)は、図9に破線で示す状態に切り換わる。この状態で圧縮機(21)を駆動すると、冷媒回路(10)で冷媒が循環して冷凍サイクルが行われる。その際、室外熱交換器(12)が放熱器として機能し、室内熱交換器(11)が蒸発器として機能する。
【0167】
具体的に、圧縮機(21)からは、図10における点1の状態の高圧冷媒が吐出される。この高圧冷媒の圧力PHは、その臨界圧力PCよりも高くなっている。圧縮機(21)から吐出された冷媒は、第1四路切換弁(13)を通って室外熱交換器(12)へ導入される。
【0168】
室外熱交換器(12)では、導入された高圧冷媒が室外空気と熱交換を行う。この熱交換により、高圧冷媒は室外空気に対して放熱し、そのエンタルピが点1の状態から点2の状態にまで低下する。
【0169】
室外熱交換器(12)で放熱した後の点2の状態の冷媒は、第2四路切換弁(14)を通過してから二手に分流される。分流された点2の状態の冷媒は、その一方が膨張機(22)へ導入され、他方が中間冷却器(40)の管部(42)へ導入される。
【0170】
膨張機(22)では、点2の状態の高圧冷媒が膨張し、その圧力及びエンタルピが点6の状態にまで低下する。つまり、膨張機(22)では、高圧冷媒が膨張して圧力PMの中間圧冷媒となる。この中間圧冷媒は、その臨界圧力PCよりも低圧であって、気液二相状態となっている。膨張機(22)から流出した中間圧冷媒は、中間冷却器(40)のシェル部(41)へ導入される。
【0171】
中間冷却器(40)では、管部(42)を流れる高圧冷媒とシェル部(41)へ導入された中間圧冷媒との熱交換が行われる。この熱交換により、管部(42)を流れる高圧冷媒は、そのエンタルピが点2の状態から点3の状態にまで低下する。この点3の状態の高圧冷媒は、管部(42)から流出して電動膨張弁(23)へ送られる。一方、シェル部(41)へ導入された中間圧冷媒は、そのエンタルピが点6の状態から点7の状態にまで増大する。この点7の状態の中間圧冷媒は、シェル部(41)から流出して圧縮機(21)へ送られる。
【0172】
電動膨張弁(23)では、点3の状態の高圧冷媒が減圧され、その圧力が低下して点4の状態となる。つまり、電動膨張弁(23)を通過することで、高圧冷媒が減圧されて圧力PLの低圧冷媒となる。点4の状態の低圧冷媒は、第2四路切換弁(14)を通って室内熱交換器(11)へ導入される。
【0173】
室内熱交換器(11)では、導入された低圧冷媒が室内空気と熱交換を行う。この熱交換により、低圧冷媒が室内空気から吸熱し、そのエンタルピが点4の状態から点5の状態にまで増大する。点5の状態の低圧冷媒は、室内熱交換器(11)から流出し、第1四路切換弁(13)を通って圧縮機(21)へ送られる。一方、室内熱交換器(11)で低圧冷媒により冷却された室内空気は、調和空気として室内へ送り返される。
【0174】
上述のように、圧縮機(21)へは、点5の状態の低圧冷媒と、点7の状態の中間圧冷媒とが供給されている。圧縮機(21)において、点5の状態の低圧冷媒は、低段側の圧縮機構へ吸入され、圧縮されて点8の状態となる。つまり、低段側の圧縮機構では、冷媒が圧力PMにまで昇圧される。
【0175】
低段側の圧縮機構から吐出された点8の状態の冷媒は、中間冷却器(40)から送り込まれた点7の状態の冷媒と混合される。これらの冷媒を混合することにより、点8'の状態の冷媒が得られる。点8'の状態の冷媒は、高段側の圧縮機構へ吸入されて圧縮され、点1の状態となる。そして、点1の状態の高圧冷媒が圧縮機(21)から室外熱交換器(12)へ送られる。
【0176】
また、膨張機(22)においては、冷媒の圧力及びエンタルピが点2から点6の状態にまで低下する。そして、この膨張機(22)では、点2と点6のエンタルピ差に相当する動力が得られ、この得られた動力が圧縮機(21)の駆動に利用される。
【0177】
本参考技術において、膨張機(22)の膨張比は一定であり、膨張機(22)から流出する冷媒の圧力は冷凍サイクルの高圧に連動して変化するが、この膨張機(22)では高圧冷媒を中間圧にまで膨張させているに過ぎない。一方、電動膨張弁(23)では高圧冷媒を低圧にまで減圧しているが、この電動膨張弁(23)はその開度を調節可能である。従って、膨張機(22)の膨張比が一定で変化しなくても、電動膨張弁(23)の開度を調節することにより、冷凍サイクルの高圧を空調機の運転にとって最適な値に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考技術1に係る空調機の概略構成図である。
【図2】 参考技術1に係る空調機の冷凍サイクルを示すモリエル線図である。
【図3】 実施形態1に係る空調機の概略構成図である。
【図4】 実施形態1に係る空調機の冷凍サイクルを示すモリエル線図である。
【図5】 参考技術2に係る空調機の概略構成図である。
【図6】 参考技術2に係る空調機の冷凍サイクルを示すモリエル線図である。
【図7】 実施形態2に係る空調機の概略構成図である。
【図8】 実施形態2に係る空調機の冷凍サイクルを示すモリエル線図である。
【図9】 参考技術3に係る空調機の概略構成図である。
【図10】 参考技術3に係る空調機の冷凍サイクルを示すモリエル線図である。
【符号の説明】
(10) 冷媒回路
(21) 圧縮機
(22) 膨張機
(23) 電動膨張弁(膨張弁)
(31) レシーバタンク(容器部材)
(32) 気液分離器
(33) ガス管路
Claims (4)
- 冷媒の充填された冷媒回路(10)を備え、該冷媒回路(10)に設けられた圧縮機(21)で冷媒を該冷媒の臨界圧力以上にまで圧縮して冷凍サイクルを行う冷凍装置であって、
上記冷媒回路(10)には、内部容積比が一定の流体機械により構成される膨張機(22)と、該膨張機(22)と直列に接続された開度可変の膨張弁(23)とが冷媒の膨張機構として設けられ
上記冷媒回路(10)では、膨張機(22)の上流に膨張弁(23)が配置され、
上記冷媒回路(10)において、冷媒の臨界圧力よりも低圧の中間圧冷媒が膨張弁(23)から流出し、飽和液状態または気液二相状態の中間圧冷媒が膨張機(22)へ流入する動作が行われる冷凍装置。 - 請求項1に記載の冷凍装置において、
冷媒回路(10)における膨張機(22)と膨張弁(23)の間には、冷媒を一時的に貯留するための容器部材(31)が設けられている冷凍装置。 - 請求項1に記載の冷凍装置において、
冷媒回路(10)における膨張機(22)と膨張弁(23)の間に設けられて中間圧の冷媒を液冷媒とガス冷媒とに分離する気液分離器(32)と、
上記気液分離器(32)で分離されたガス冷媒を圧縮機(21)へ供給するためのガス管路(33)と
を備えている冷凍装置。 - 請求項1,2又は3に記載の冷凍装置において、
冷媒回路(10)には、二酸化炭素が冷媒として充填されている冷凍装置。
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