JP4620844B2 - 光触媒活性を有する金属板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面に光触媒活性を付与した金属板に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化チタンは、紫外線領域の特定波長の光を照射することによって、優れた光触媒活性を示し、光触媒作用に由来する強力な酸化反応によって、環境汚染物質の分解除去、防臭、防汚、殺菌作用を発揮することが知られ、様々な素材への適用および実用化が検討されている。例えば、特開平3-69695 号公報では、酸化チタン光触媒等を紙類に被覆して脱臭性、抗菌性等を有するものの記載がある。また、特開平2-280818号及び特開平3-94814 号公報では、この担体の崩壊防止の一方法として、セラミック繊維等を使用している。しかし、この方法は、セラミック繊維シートの後加工であるため、製造装置が特殊であること、素材に柔軟性が無いこと等、実用上の課題が多い。
【0003】
素材に柔軟性、加工性がある場合、ユーザー側でも、用途に合わせて曲げ、切断、穿孔などの加工ができ、適用範囲が飛躍的に拡大する。金属板は、ガラスやセラミック素材に比べ、二次加工が容易だが、表面に酸化チタン等の硬質で厚い皮膜が形成されていると、酸化チタンは金属板の変形に追従できず、金属板と酸化チタンとの界面で剥離したり、酸化チタン自体が崩壊する場合が普通である。このため、加工の終わった最終製品に、酸化チタンの皮膜を形成させる方法が一般的である。このとき、加工後の基材形状によっては、皮膜の形成が不均質になること、大きな皮膜形成装置が必要になること等、種々の問題があった。さらに、本来、酸化チタンと金属板は、熱膨張率やヤング率が著しく異なるため、温度や応力等の環境要因が変動すると、界面の剥離が生じやすい問題がある。このような課題を解決するために、酸化チタンの粒子を樹脂等の有機物に分散させることも検討されたが、光触媒活性が極端に低下したり、酸化チタンの強い酸化力で、酸化チタンに接する有機物が分解されたり等、の問題は避けられない。光触媒活性のある金属板で、柔軟性や加工性と、高い光触媒活性を両立することは、一般的にはできなかった。
【0004】
酸化チタン被覆方法については、チタンのアルコキシドの加水分解生成物を塗布する方法、すなわちゾル- ゲル法が最も一般的であり、これに類する他の技術としては、例えば、特開平4-83537 号公報に示される、チタンアルコキシドにアミド及び/ 又はグリコールを添加し、その反応生成物を利用する方法、及び特開平7-100378号公報に示されているように、チタンアルコキシドにアルコールアミン類を添加し、その反応生成物を塗料成分として用いる方法がある。しかし、上記のゾル- ゲル法では、塗料の粘度や塗布条件によって、形成される皮膜の厚さが変化し易く、皮膜の性能を高めるために厚膜化すると、乾燥の際の皮膜の収縮が大きいため、皮膜と基材表面との間の密着性が低くなり、剥離しやすくなる等の問題点がある。さらに、酸化チタン皮膜の結晶性を高めるためには、被覆後に乾燥させ、さらに焼成という3 つの工程が必須であり、酸化チタンの内、光触媒活性が高いとされるアナターゼ相を安定に形成させるには、一般的に、大気中で、焼成温度を500 ℃以上という高温で行う必要があった。さらに、1 回の塗布で得られる膜厚は、0.1 μm 程度の場合が多く、厚い膜にするためには、上記の塗布、乾燥、焼成を数回繰り返す等の複雑な工程を経る必要があった。高温で大気中で何回も焼成した場合、基材からの元素の拡散が避けられず、特に1μm 程度の厚さの皮膜の場合には、皮膜全体に基材中の元素が拡散し、酸化チタンの光触媒活性を低下させる等の問題があった。例えば、ステンレス鋼の場合、Crが酸化チタン膜中に拡散することが、知られている。
【0005】
以上のように、従来の酸化チタン皮膜が形成された金属板は、皮膜と金属板との密着性が悪いため、変形性、加工性に乏しく、触媒活性の発現性、持続性に問題があり、広範囲な実用化を妨げている。また、皮膜形成法についても、皮膜の均質性、密着性の向上には限界があり、処理工程も複雑で、効率のよい製造方法が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであって、酸化チタンの有する光触媒作用に由来する環境汚染物質の分解除去、防臭、防汚、殺菌作用を、より効果的に持続的に発揮しつつ、変形や加工性を兼ね備えた金属板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであって、金属酸化物半導体の有する光触媒作用に由来する環境汚染物質の分解除去、防臭、防汚、殺菌作用を、より効果的に持続的に発揮しつつ、変形や加工性を兼ね備えた金属板を提供することを目的とする。
【0008】
即ち、表面に0.5 〜5.0 μm の厚さの皮膜を有する金属板であって、該皮膜が、金属板から表面に向かって、金属チタン層からなる内層と、金属チタンとチタン酸化物からなり、化学組成が金属チタン層からチタン酸化物層に傾斜組成となっている中間層と、アナターゼ型酸化チタンを含むチタン酸化物層からなる外層と順に形成した皮膜を有し、前記内層の厚さが0.05〜1.0 μm 、前記中間層の厚さが0.05〜1.0 μm 、及び、前記外層の厚さが0.4 〜3.0 μm であり、前記外層が、アナターゼ型酸化チタンを80体積%以上含有することを特徴とする光触媒活性を有する金属板である。
さらに、前記中間層の傾斜組成が、連続的に変化している
た、金属板が、ステンレス鋼、又は、チタン又はチタン基合金である。
【0009】
また、上記光触媒活性を有する金属板を形成させる方法であって、内層から外層までの皮膜形成中は、一度も大気開放せず減圧下で、チタン蒸気又はイオン化したチタン蒸気と、酸素の分圧を別々に制御するPVD 法を用い、500 ℃以下の温度で金属板上に皮膜を形成させる方法であることを特徴とする光触媒活性を有する金属板の製造方法である。さらに、前記PVD 法が、スパッタリングまたはイオンプレーテイングであることが、好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
皮膜の構成、及び中間層の化学組成についての概念図を図1に示す。金属板表面には、金属チタン(Ti)からなる内層が形成される。不純物を含まない場合には、化学式でTiと表記され、 Ti 含有量は、100 質量% となる。外層は、チタン酸化物層であり、最も活性が高いのはアナターゼ型酸化チタンであり、不純物を含まない場合には、化学式でTiO2と表記することができる。この場合、Ti含有量は、約59.9質量% となる。中間層は、チタン含有量が、内層の含有量から、外層の含有量に、ほぼ連続的に変化するもので、大きな不連続点がないことが特徴であり、その変化は、ほぼ直線的であることが好ましい。これを傾斜組成と便宜上呼ぶことにする。
【0011】
中間層は、金属チタンと酸化チタンから構成され、それぞれの結晶粒が分散混合していても、あるいは固溶体を形成していてもよい。結晶質であっても、非晶質であってもよい。酸化チタンの結晶相には、Ti2O、TiO 、Ti2O3 、Ti2O5 、Ti3O5 、Tin O2n-1(n=4 〜10) 、TiO2等と表記できる組成の結晶相が知られ、それぞれの結晶相の混合層で形成されていてもよい。
【0012】
化学組成の不連続点を無くすことで、熱膨張率やヤング率等の物理特性の不連続を最小限に抑えることができる。光触媒活性を有する金属板は、様々な環境で、長期にわたって使用される可能性がある。温度変化が大きかったり、外力がかかったりする場合もあり、これらの環境要因に対して、皮膜の密着性や光触媒活性等の長期耐久性が求められる。このためには、皮膜と金属板基材との物理特性の連続性が必要であり、中間層は重要である。例えば、熱膨張率の不連続があると、ここに応力が集中し、皮膜の剥離の起点になる。具体的には、18Cr-8Niステンレス基板の表面に直接アナタ‐ゼ層が形成されている場合、基板の線膨張係数は、14.7×10-6/deg(20 ℃) なのに対して、アナターゼは、10.2×10-6/deg(20 ℃) である。500 ℃で製造されたアナターゼ被覆ステンレス板が20℃に冷却された時、例えば1m×1mの建材を想定すると、線方向に2.5 μm 程度のずれ( ステンレスとアナターゼの線膨張の差から概算) を生じるような応力が発生する。
【0013】
この応力は、アナターゼとステンレス基板との間に集中し、界面の残留応力と外力との複合された力が、両者の密着力を越えると剥離する。つまり、アナターゼとステンレスとの密着力以下の外力でも、界面に残留応力があると、アナターゼが容易に剥離することになる。このように、線膨張係数の差が界面の残留応力の大きさと相関するので、それぞれの界面での線膨張係数の差を少なくすることが、応力集中を避ける上で重要である。外層のチタン酸化物層は、皮膜形成法によっては応力が残留することがあり、中間層は応力の緩和層としても意味がある。上記機能を効果的に発揮するには、中間層の厚さは、0.05〜1.0 μm であることが望ましい。0.05μm 未満では、効果が少なく、1.0 μm より厚くても、その効果は変わらないため、不経済となる。
【0014】
外層の酸化チタン層は、0.4 μm 以上の膜厚が好ましく、光を効率的に吸収し、光触媒として機能する。最も効率的な光吸収には、1.0 μm 以上がさらに望ましい。酸化チタン層の膜厚は、3.0 μm を越えると、変形や曲げ加工性が劣るので、3.0 μm 以下が好ましい。最も望ましくは、2.0 μm 以下である。
外層の酸化チタン層の結晶相は、光触媒活性という観点から、アナターゼ主体であることが望ましい。TiO2組成の酸化チタンとして、アナターゼ、ルチル、ブルッカイトが知られているが、アナターゼ型酸化チタンが最も光触媒活性が高く、この含有量を増やすことが好ましい。最も好ましくは、アナターゼ型酸化チタンの外層中の含有率を80体積% 以上とすると、高い光触媒活性が得られる。目的に応じて、上記外層の表面に、白金族金属を担持させ、さらに触媒活性を高めても良い。この際、担持させる金属層は、上記皮膜の厚さの10% 以下であることが望ましく、この範囲であれば、変形や曲げ加工性を損なわない。
【0015】
内層のチタン層は、金属板とチタン酸化物の密着性向上に重要である。厚さは、0.05〜1.0 μm であることが効果的である。0.05μm 未満では、効果が少なく、1.0 μm より厚くても、その効果は変わらない。
金属板としては、汎用性、耐食性、意匠性、加工性、機能性に優れたステンレス鋼、チタンまたはチタン基合金が好ましい。これらは、建築材、空調機器、排ガス機器、浄水機器等に用いられる各種部材として、既に使用されており、実績もあるため、適用しやすい。
【0016】
上記のような光触媒活性を有する金属板は,皮膜をPVD(Physical Vapor Deposition)法等により、金属板表面に形成することで製造できる。PVD 法は、基材への温度による負荷が少なく、緻密で微細粒からなる結晶質皮膜が形成できる特徴がある。上記皮膜形成に適しているPVD 法として、具体的には、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングの各種手法が適している。金属板基材の熱による変形や、金属板基材から皮膜への元素拡散等による光触媒活性の劣化等の問題を生じないために、皮膜形成時の基材温度は500 ℃以下とする。上記3 手法は、いずれも基材の温度が500 ℃以下で皮膜形成可能で、十分な皮膜密着性と皮膜の結晶性が得られ、金属板基材の熱による変形や、金属板基材から皮膜への元素拡散等による光触媒活性の劣化等の問題は発生しにくい。また、上記3 手法は、成膜速度が毎分0.02〜0.2 μm 程度で、例えば1 μm の皮膜を得るのに5 〜50分と実用的である。
【0017】
PVD 法を上記皮膜の形成に適用する場合、減圧下で金属チタンを蒸発させ、反応ガスとして酸素を導入する方法が、酸化チタンの組成の制御性に優れ、適している。上記皮膜の中間層の傾斜組成も、蒸発させるチタン量と、反応ガスの酸素分圧または流量の比を、連続的に変化させることで、形成される。つまり、内層の形成には、酸素ガスを導入せず、チタン蒸気のみで成膜するが、中間層の形成には、酸素ガスを反応チャンバー中に少しづつ導入し、その導入量を時間とともに次第に増やし、外層の形成時に導入する酸素ガス量まで増やすといった工程で形成できる。このプロセスは、内層、中間層、外層までを、一度も大気開放せず、同一チャンバー内で連続的に形成できる。しかも、形成される結晶相の制御がしやすく、後熱処理等は必要ない。例えば、成膜時の基材温度が490 ℃で、金属チタンを蒸発させる電子ビームの電流を200mA(加速電圧20kV) 、酸素圧力を0.05Paとして、アーク放電活性化イオンプレーテイング装置で、イオン化を40V 、10A で行った場合、チタン蒸発源から45cm上部に設置させたステンレス鋼SUS304試料を基板とし、10分間の成膜を行なった場合、0.8 μm のルチル主体の皮膜を生成することができる。これに対して、同じ装置、試料で、基材温度300 ℃で20分間の成膜をした場合、約1.5 μm のアナターゼを主体にした皮膜が形成できる。このように、PVD 法では、イオン化、雰囲気圧力を適性に保ち、基材の温度、成膜時間等を制御することで、結晶相や膜厚を目的のものにすることができる。成膜速度も早いので、同様のプロセスを繰り返す必要もなく、従来のゾル- ゲル法と比べると、簡便かつ短時間で、管理しやすく、製造コストも低くできる。
【0018】
減圧下での成膜は、酸化チタンの形成反応を進める上で重要である。また、成膜中に、500 ℃以下で金属板基材を加熱すると、基材の温度による劣化を抑えつつ、皮膜の密着性、結晶性が向上するので好ましい。基材の加熱は、減圧下で行うので、大気中で焼成する場合より、基材表面の酸化は少ない。減圧にすることで、金属チタンの蒸発が効率良くできる。
【0019】
真空蒸着は,真空下で、金属チタンを電子ビーム等の熱源を用いて溶解し、チタンの蒸気を発生させ、これを基材に蒸着する方法である。装置構成が比較的簡単で、皮膜形成コストは上記3 手法の内で最も安い。スパッタリングは、イオン化したアルゴン等のガス成分をターゲットであるチタンに照射し、このターゲットからたたき出されたチタン成分を基材に成膜する方法である。イオンプレーティングは、電子ビーム等の熱源を用いて溶解し、チタンの蒸気を発生させ、プラズマでイオン化されたチタン成分を基材上で反応させ成膜する方法で、基材に電荷をかけることでイオンを呼び寄せ、緻密な皮膜形成に有利で、基材温度が低くても高い密着性が得られる。イオンプレーティング法では、微細粒の結晶よりなる皮膜形成が容易で、例えば、イオンプレーティング法の一種であるアーク放電活性化イオンプレーティング法を使い、基材の温度400 ℃で、酸素圧力0.05Paで成膜した厚さ1 μm のアナターゼ皮膜では、結晶粒が約0.01μm 程度の微細粒となる。
【0020】
このように目的とする皮膜の特性に応じて、成膜法を選ぶことができる。上記3 方法のうち、スパッタリング及びイオンプレーティング法は、プラズマによってチタン蒸気をイオン化あるいは励起活性化させるので、反応性に富み、基材の温度が低くても、高い皮膜の結晶性、密着性が得られ、皮膜も緻密で微細粒から構成される。成膜速度の点からは、電子銃蒸発源を使った、真空蒸着やイオンプレーティング法が有利である。さらに、アナターゼ相主体の皮膜を実用的な成膜速度で形成するには、基材の温度を200 〜450 ℃とし、チタンの蒸発速度が毎分0.06〜0.15μm に対して、酸素の雰囲気圧力が3 〜5 ×10-4Torrで、成膜することが好ましい。
【0021】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び比較例を示す。
工業用純チタン板及びステンレス鋼板(SUS304)を金属板基材とし、PVD 法等で皮膜形成を行って、得られた試料について、皮膜の性状( 構成、膜厚、アナターゼ型酸化チタン含有量、密着性) を調べ、さらにそれぞれの試料について、光触媒活性( ヨウ化カリウム分解度、脱臭効果、抗菌活性) を評価した。皮膜形成の諸条件や評価結果について、表1 に示す。チタン基合金は、Al、Zr、Hf、V 、Nb、Ta、Mn、Fe、Co、Ni、Cr等を0.5 〜5 質量% 含むものが一般的であるが、ここでは、Alを0.5 質量% 含むチタン基合金を使用した。
【0022】
皮膜の構成、膜厚、アナターゼ型酸化チタン含有量は、オージェ電子分光法、X 線光電子分光法、グロー放電発光分析法、ラマン散乱分析法、及びX 線回折法によって求めた。
密着性は、90°曲げ試験によって評価した。密着性評価用の基材は、SUS304のφ30mm、厚さ0.3 mmの円盤状基材を使い、この表面に皮膜を形成した。この試料を曲げ角90°に加工変形し、最も変形の大きい部分( 折れ曲がった部分) を反射顕微鏡で、倍率100 倍で観察した。皮膜が完全に剥離した場合を、密着性×、一部皮膜の剥離が起こり、部分的に皮膜が付着している場合を、密着性△、顕微鏡観察では剥離が認められない場合を、密着性○とした。
【0023】
光触媒活性の評価は、以下に示すゾル- ゲル法で、酸化チタン膜をSUS304ステンレス鋼鈑(40mm 角、厚さ1mm)に生成し、この光触媒活性との相対評価を行った。ゾル- ゲル法による作成は、作花( ゾル- ゲル法の科学、アグネ承風社、1988) の方法によった。具体的には、チタンテトライソプロポキシドを100ml の無水エタノールで濃度284g/lに希釈し、攪拌しながら、2N塩酸2ml を100ml の無水エタノールで希釈した溶液に滴下、透明なゾルを調整した。次に、ディップコーイング- 乾燥(100℃) の処理を繰り返し、基板上にゲル状化合物を生成させ、電気炉内600 ℃で5 時間の焼成を行った。4 回繰り返し、生成した皮膜の厚さは、0.5 μm であった。
【0024】
ヨウ化カリウム分解度は、ヨウ化カリウム水溶液に各試料を浸漬し、紫外線強度の高いブラックライト(3mw/cm2) を照射することによって、生成するヨウ素の生成量を評価した。上記ゾル- ゲル法で生成した皮膜による前記方法で試験したヨウ素の生成量を基準に、各試料で試験したヨウ素生成量が、基準量の0.5 倍未満の場合を評価×、0.5 〜1.5 倍未満を△、1.5 倍以上を○とした。
【0025】
脱臭効果については、各試料を置いた石英管の外部から一定強度の紫外線( ブラックライト:3w/cm2)を照射しつつ、一定流量のアルデヒドを流し、出口部でのアルデヒド残存濃度を測定することによって、評価した。上記ゾル- ゲル法で生成した皮膜による前記方法で試験したアルデヒド残存濃度を基準に、各試料で試験した残存濃度が、基準濃度の2 倍以上の場合を評価×、0.5 〜2 倍未満を△、0.5 倍未満を○とした。
【0026】
抗菌活性については、大腸菌を一定濃度で懸濁した生理食塩水を各試料の表面に滴下し、紫外線を1 時間照射した後の大腸菌の生存率によって評価した。上記ゾル- ゲル法で生成した皮膜による前記方法で試験した大腸菌の生存率を基準に、各試料で試験した大腸菌の生存率が、基準濃度の1.5 倍以上の場合を評価×、0.5 倍〜1.5 倍未満を△、0.5 倍未満を○とした。
【0027】
表1 のNo.1〜11,14,15,18 が比較例で、No.13,16,17が実施例である。ゾル- ゲル法に比べ、密着性と光触媒活性ともに同等以上の特性がみられたのが、実施例である。No.1は、皮膜形成をしていないブランクの基材そのものの評価結果である。皮膜生成法で、スパッタリング法として以下の2 法を試みた。SPは、ターゲットに金属チタンを使い、酸素ガスを反応ガスとして導入した。SP2 では、ターゲットに二酸化チタン( 外層生成用) と金属チタン( 内層生成用) を使い、アルゴンガスでプラズマの活性化を行った。SP2 では、中間層生成時には、二酸化チタンと金属チタンを、同時にターゲットに用いて成膜したが、チタン蒸気と酸素ガス分圧を個別に制御できていないために、中間層が傾斜組成にできなかった。SP、SP2 いずれも、ガス圧は2.7Pa とした。
【0028】
真空蒸着及びイオンプレーテイングによる外層の形成は、いずれも、酸素雰囲気、圧力0.05Paの下で、電子銃による金属チタンの蒸発を行った。内層の形成には、酸素ガスを導入せず、圧力0.05Pa以下で行い、中間層の形成には、金属チタンの蒸発速度を一定にして、酸素ガス流量を次第に増やすことによって制御した。内層、中間層、外層の膜厚の制御は、蒸着時間を変化させることで行った。膜厚は、蒸着時間が長くなると直線的に増加する。蒸着速度は、たとえば、No.17 のイオンプレーテイングでは、0.05μm/分で、金属チタンの蒸発速度とほぼ同じであった。
【0029】
溶射は、酸化チタン粒子をプラズマ照射した。基板の温度の上昇を避けるために、圧縮空気によって、基板の後部から冷却しながら、手早く溶射した。溶射法で、傾斜組成の制御性よく作成するのは限界がある(No.3)ので、十分な密着性が得られなかった。表1 の実施例(No.13,16,17) で明らかなように、表面の皮膜を0.5 〜5.0 μm の厚さとし、金属チタン層からなる内層と、金属チタンとチタン酸化物からなり、化学組成が金属チタン層からチタン酸化物層に傾斜組成となっている中間層と、チタン酸化物層からなる外層とを、目的に応じた組成に形成することで、密着性及び光触媒活性に優れた金属板が得られる。これらは、チタン蒸気又はイオン化したチタン蒸気と、酸素の分圧を別々に制御するPVD 法によって、効率的かつ有効に製造できることがわかる。
【0030】
【表1】
Figure 0004620844
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、光触媒活性を有する金属板の広範囲な実用化が可能になる。
皮膜内に傾斜組成の中間層を設けることにより、密着性に優れた皮膜となり、変形や加工も可能で、長時間の使用においても触媒活性の持続性を有する金属板が提供できる。また、皮膜形成を単一プロセスでできるため、工程管理がしやすく、製造コスト削減、作業効率向上に有利である。さらに、皮膜形成時の金属板基材の温度も低いため、熱による金属板の変形や意匠性の変化、皮膜の光触媒活性の低下等は避けられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の皮膜構造及び中間層の化学組成概念図。

Claims (3)

  1. 表面に0.5 〜5.0μm の厚さの皮膜を有する金属板であって、該皮膜が、金属板から表面に向かって、金属チタン層からなる内層と、金属チタンとチタン酸化物からなり化学組成が金属チタン層からチタン酸化物層に傾斜組成となっている中間層と、アナターゼ型酸化チタンを含むチタン酸化物層からなる外層と順に形成した皮膜を有し、前記内層の厚さが0.05〜1.0 μm 、前記中間層の厚さが0.05〜1.0 μm 、及び、前記外層の厚さが0.4 〜3.0 μm であり、前記外層がアナターゼ型酸化チタンを80体積%以上含有することを特徴とする光触媒活性を有する金属板。
  2. 前記中間層の傾斜組成が、連続的に変化していることを特徴とする請求項1に記載の光触媒活性を有する金属板。
  3. 前記金属板が、ステンレス鋼、又は、チタン又はチタン基合金である請求項1又は2に記載の光触媒活性を有する金属板。
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