JP4619454B1 - ガスの発生が低減された低温焼成瓦用光沢釉薬 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、ホウ素およびアルカリ類R Oを減らし、かつ光沢釉薬の融点を低くするとともに、環境に対する負荷がより小さい低温焼成瓦用光沢釉薬の製造方法および低温焼成瓦用光沢釉薬の提供。
【解決手段】下記工程(a)〜(c)を含む、Pbを含まない低温焼成瓦用光沢釉薬の製造方法および該製造方法によって製造される低温焼成瓦用光沢釉薬:
(a)光沢釉薬の色を決定する工程;
(b)前記光沢釉薬ベースにおいて用いられるB、アルカリ(R O)およびアルカリ土類のそれぞれについて、所定の基準量を決定する工程;ならびに
(c)BおよびR Oについて前記所定の基準量より少ない量を用い、アルカリ土類について前記所定の基準量より多い量を用い、PbOを用いずに光沢釉薬を製造する工程。
【選択図】なし

Description

本発明は、低温焼成瓦用光沢釉薬の製造方法、該製造方法によって製造される低温焼成瓦用光沢釉薬および低温焼成瓦に関する。
瓦の光沢釉薬は、我が国に昔から存在する伝統的な釉薬であり、その近年の主流は、平板の低貫入の銀系およびマット釉になっても日本の風土にあった落ち着きのある色種等である。
三河地方では、瓦の焼成として低温焼成(1130℃付近。とくに1100〜1160℃程度)が行われているところ、かかる低温焼成においても光沢釉薬が十分に熔解するように、光沢釉薬の融点を低くする成分としてホウ素、アルカリ類(アルカリ金属類)R O(LiO、NaO、KO)が用いられている。
しかしながら、これらの成分は、瓦の焼成時に一旦ガス化した後再溶着するため、混載した他色(銀、マット)の色調に悪影響を及ぼし、正規の所望の色調とは異なる発色をもたらす場合がある。また、混載がなくてもガスが炉内に残ることにより、次生産時の色への悪影響も問題となる。
さらに、混載した他色(銀、マット)の瓦への悪影響、すなわち発色が損なわれたりR Oの影響で釉薬の熱膨張が大きくなって貫入が発生したりするばかりでなく、光沢釉薬が十分に熔解しないと気泡抜け、寄りジワのような瓦の外観を損ねる現象が生じ、不良品やクレームの発生原因になるといった悪影響も無視できない。
上記のような問題点、とくにガスの発生の問題を解決するために、ホウ素およびアルカリ類R Oが用いられる量を減らし、かつ光沢釉薬の融点を低くすることが不可欠である。しかしながら、光沢釉薬の製造方法として、たとえば特許文献1に記載の方法が知られている一方、上記のようにホウ素およびアルカリ類R Oを減らし、かつ光沢釉薬の融点を低く保つ製造方法は未だ見出されていない。
また、鉛は、光沢釉薬の低融点化の効果がある物質として知られているが、環境負荷が大きいため適切に使用することはできない。また、色替え時の次生産色への影響をなくすために素焼き(無釉)の瓦を挟むことも行われる場合があるが、前記素焼き(無釉)の瓦自体が廃棄物となるため、かかる方法も環境に対する付加が大きい方法であるといわざるを得ない。
特開平6−072754号公報
上記背景の下、本発明は、ホウ素およびアルカリ類R Oを減らし、かつ光沢釉薬の融点を低くするとともに、環境に対する負荷がより小さい低温焼成瓦用光沢釉薬の製造方法および低温焼成瓦用光沢釉薬を提供することを課題とした。
上記課題に鑑み、本発明者らは、種々検討を重ねる中で、ある特定の物質群の中に光沢釉薬の融点を低くする物性を有するものがあることを見出し、さらに鋭意研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、少なくとも下記の各発明に関する:
(1)下記工程(a)〜(c)を含む、Pbを含まない低温焼成瓦用光沢釉薬の製造方法:
(a)光沢釉薬の色を決定する工程;
(b)前記光沢釉薬ベースにおいて用いられるB、アルカリ(R O)およびアルカリ土類のそれぞれについて、所定の基準量を決定する工程;ならびに
(c)BおよびR Oについて前記所定の基準量より少ない量を用い、アルカリ土類について前記所定の基準量より多い量を用い、PbOを用いずに光沢釉薬を製造する工程。
(2)BおよびR Oについての前記所定の基準量より少ない量が、ゼーゲル表示でそれぞれ0.3モル以下である、前記製造方法。
(3)アルカリ土類についての前記所定の基準量より多い量が、ゼーゲル表示で0.5モル以上である、前記製造方法。
(4)アルカリ土類がCaOを含む、前記いずれかの製造方法。
(5)色が、黒、茶、オレンジ、黄、緑、青緑またはピンクである、前記いずれかの製造方法。
(6)前記いずれかの製造方法で製造される、低温焼成瓦用光沢釉薬。
(7)瓦の1つの面(表側の面1)に光沢釉薬を施釉し、該表側の面1と相対して光沢釉薬を施釉していない瓦を、前記施釉した瓦の表側の面1から10〜20mmの間隔をおいて、表側の面1に裏側の面が相対するように設置し、前記施釉した瓦と施釉していない瓦を1050〜1160℃の範囲から選択される温度を30分間保持して焼成し、前記光沢釉薬を施釉していない瓦の、裏側の面および表側の面(表側の面2)のそれぞれにおける色について下式により求めた色差(ΔE)が20.5以下の範囲である、前記光沢釉薬:
Figure 0004619454

(式中、aおよびbは、それぞれ色彩色差計によって測定された色座標を表し、Lは色彩色差計によって測定された明度を表す。)。
(8)前記いずれかの瓦用光沢釉薬を用いた焼成によって製造される低温焼成瓦。
(9)焼成の温度が1100〜1160℃である、前記低温焼成瓦。
(10)下記工程を含む、低温焼成瓦の焼成時に発生するガスの量を抑制する方法:
(A)光沢釉薬の色を決定する工程;
(B)前記光沢釉薬ベースにおいて用いられるB、アルカリ(R O)およびアルカリ土類のそれぞれについて、所定の基準量を決定する工程;
(C)BおよびR Oについて前記所定の基準量より少ない量を用い、アルカリ土類について前記所定の基準量より多い量を用い、PbOを用いずに製造された光沢釉薬を用いて瓦を焼成する工程;ならびに
(D)工程(C)において焼成された瓦の1つの面(表側の面1)に光沢釉薬を施釉し、該表側の面1と相対して光沢釉薬を施釉していない瓦を、前記施釉した瓦の表側の面1から10〜20mmの間隔をおいて、表側の面1に裏側の面が相対するように設置し、前記施釉した瓦と施釉していない瓦を1050〜1160℃の範囲から選択される温度を30分間保持して焼成し、前記光沢釉薬を施釉していない瓦の、裏側の面および表側の面(表側の面2)のそれぞれにおける色について下式により求めた色差(ΔE)を20.5以下の範囲とする工程:
Figure 0004619454

(式中、aおよびbは、それぞれ色彩色差計によって測定された色座標を表し、Lは色彩色差計によって測定された明度を表す。)。
本発明の低温焼成瓦用光沢釉薬の製造方法または低温焼成瓦用光沢釉薬によれば、たとえば下記のような効果が奏される:
・混載や生産スケジュールに融通が利き生産性を向上できる。
・鉛を使用する必要がなく、ホウ素の使用量も抑えることになり、不良品等も少なく、人と環境への負荷が小さくすることができる。
・とくに黒の光沢釉薬の場合には、伝統的な光沢ブラックが現状の焼成条件を変えることなく、低温焼成域(1100〜1160℃)で発生する揮発ガスの発生を抑えることができる。そのため、混載された色(銀、マット)の瓦における貫入の発生を防ぐことができ、より高品質な瓦を効率的に提供することができる。
(定義)
本明細書において「低温焼成瓦」とは、1130℃付近、とくに約1100〜1160℃、あるいは約1110〜1150℃において焼成される瓦を意味する。
本明細書において「光沢釉薬ベース」とは、光沢釉薬の成分のうち発色成分(着色成分)以外の成分として配合される各成分の群を意味する。
本明細書において、光沢釉薬ベースにおいて用いられるB、アルカリ(R O)およびアルカリ土類の「所定の基準量」とは、本技術分野において採用し得る、瓦の製造または試験製造に用いることができるあらゆる量を意味する。
以下に本発明について詳細に説明する。
1.低温焼成瓦用光沢釉薬の製造方法
本発明の低温焼成瓦用光沢釉薬の製造方法は、下記工程(a)〜(c)を含む、Pbを含まない前記光沢釉薬の製造方法である:
(a)光沢釉薬の色を決定する工程;
(b)前記光沢釉薬ベースにおいて用いられるB、アルカリ(R O)およびアルカリ土類のそれぞれについて、所定の基準量を決定する工程;ならびに
(c)BおよびR Oについて前記所定の基準量より少ない量を用い、アルカリ土類について前記所定の基準量より多い量を用い、PbOを用いずに光沢釉薬を製造する工程。
(a)光沢釉薬の色を決定する工程は、所望の色を決定する工程である。当該色は特に限定されず、低温焼成瓦に用いられる一般的な色であれば如何なる量でも採用することができる。
本発明の製造方法は、光沢釉薬の色が、黒、茶、オレンジ、黄、緑、青緑またはピンクであるものにおいて好ましく、とくに黒、茶およびオレンジであるものにおいて好ましく、黒であるものにおいて最も好ましい。
(b)前記光沢釉薬ベースにおいて用いられるB、アルカリ(R O)およびアルカリ土類のそれぞれについて、所定の基準量を決定する工程は、上記(a)工程において決定された色について、低温焼成瓦に用いられる光沢釉薬中のB、アルカリ(R O)およびアルカリ土類の所定の基準量を決定する、次の(c)工程で用いられる上記各成分の量を決定する工程の前工程である。
これらの成分の所定の基準量は、とくに制限されないが、たとえば従来技術において用いられる量を基準とすると、B、アルカリ(R O)およびアルカリ土類のそれぞれの量として、たとえば0.6モル以上、0.5モル以上および0.5モル以下が例示される。
従来技術において用いられる量以上の量を基準とした場合、Bについての所定の基準量より少ない量は、好ましくは、ゼーゲル表示で0.5モル以下であり、より好ましくは0.45モル以下であり、さらにより好ましくは0.4モル以下であり、最も好ましくは0.3モル以下である。
これらの量は、
また、従来技術において用いられる量以上の量を基準とした場合、アルカリ(R O)についての前記所定の基準量より少ない量は、好ましくはゼーゲル表示で0.45モル以下であり、より好ましくは0.4モル以下であり、さらにより好ましくは0.4モル以下であり、最も好ましくは0.3モル以下である。
およびR Oについての前記所定の基準量より少ない量が、いずれも0.45モル以下である本発明の製造方法は好ましく、いずれも0.4モル以下である本発明の製造方法はより好ましく、いずれも0.3モル以下である本発明の製造方法は最も好ましい。
なお、Bおよびアルカリ(R O)の量の下限値は、各色の発色のために用いられる光沢釉薬が所望の効果を奏するように適宜決定することができる。該下限値は、たとえば0.05モル、0.1モル、0.2モルまたは0.3モルである。
また、Bおよびアルカリ(R O)の量は、他の成分とのバランスや溶融状態を考慮して設定することによって、他色への影響がなくすことができるところ、僅かな量でも減らすことによってガス発生量を低減せしめることができるばかりでなく、他色製品との混載割合を多くすることができる。
さらに、Bおよびアルカリ(R O)の量を調整することによって、光沢釉薬の融点が高く熔け不足となることを防ぎ、光沢の低下や発泡の発生も防ぐことができる。
なお、用いられるアルカリ(R O)の種類はとくに限定されず、LiO、NaO、KOの1種または2種以上を用いることができるところ、NaOおよび/またはKOを用いる製造方法は好ましい。
従来技術において用いられる量以下の量を基準とした場合、アルカリ土類についての前記所定の基準量より多い量は、好ましくは、ゼーゲル表示で0.5モルより大きく0.55モル未満であり、より好ましくは0.55モル以上0.6モル未満であり、最も好ましくは0.6モル以上である。
用いられるアルカリ土類の種類もとくに限定されず、CaO、ZnO、MgO、SrOおよびBaOからの1種または2種以上を用いることができ、アルカリ土類としてCaOを含む製造方法は好ましく、他のアルカリ土類も発色を阻害しない範囲で用いることができる。
なお、鉛は光沢釉薬の低融点化の効果を有するが、環境負荷の観点から、本発明の製造方法においては使用されない。
(c)BおよびR Oについて前記所定の基準量より少ない量を用い、アルカリ土類について前記所定の基準量より多い量を用い、PbOを用いずに光沢釉薬を製造する工程は、光沢釉薬を調製する工程であるところ、その方法および成分は、上記各要件を充足すればとくに制限されず、従来の方法を好適に用いることができる。
本発明の製造方法においては、他の成分も本発明の効果を阻害しない範囲で適宜用いることができる。
たとえば、着色成分として、MnO、Fe、Cr、CoおよびCuO等や各種顔料からの1種または2種以上を用いることができる。これらの成分の量としては、外割り重量%で、MnO:0.05〜10%、Fe:0.05〜15%、Cr:0.05〜5%、Co:0.05〜5%およびCuO:0.05〜5%を例示することができる。とくに黒色の低温焼成瓦の場合には、外割り重量%で、MnO:0.05〜5、Fe:5〜15%、Cr:0.05〜1.5%、Co:0.05〜3%およびCuO:0.05〜3%を例示することができる。
Crの添加は、その添加により色の発色を安定させることができるため好ましい。一方、Crの添加量を少なくすると、ガスの発生量をさらに抑制できるメリットがある。
釉調(光沢度)は、従来技術と同様でよく、たとえばSiO=6〜12Alによって規定されるものでよい。CaO/R O比が比較的大きくなると乳白しやすいが、SiO/Al比を大きくすることによりかかる乳白を防ぐことは可能である。たとえば、本発明の製造方法におけるSiO/Al比の好ましい範囲として7〜11が例示され、8〜10の範囲はより好ましい。
本発明の製造方法において用いられる原料にはとくに制限を受けず、一般的に釉薬に使用される鉱物や酸化物、合成品(フリット、ガラス粉、顔料など)、化学薬品を使用することができる。
その他の成分についても、釉薬に用いられる一般的な成分をそのまま使用することができる。かかる一般的な成分として、たとえばTiO、ZrO、SnO、PおよびSbからの1種または2種以上が、通常の釉薬調合の範囲内でそれぞれ使用可能である。これらの成分の量は、例えば、外割り重量%で0.05〜6.0%の範囲である。
本発明の製造方法において用いられる光沢釉薬の付着量はとくに制限されず従来技術と同程度の量でよいところ、実際の作業性を考慮すると70〜130g/J型桟瓦程度の量が好ましく、80〜120g/J型桟瓦程度の量がより好ましい。
本発明の製造方法においては、BおよびR Oの量が所定の基準量より低減されているため、その供給源であるフリット(ガラス)の添加量がより少なくなり、粗い原料も少なくなるといったメリットもある。
粒度は+75μmのものが7%以下であると好ましく、3%以下であるとより好ましい。粒度を微細にすることによって、反応性がより高くなるためフリットの粒が斑点状に残ったり、発泡したりすることを防ぐことができる。
2.低温焼成瓦用光沢釉薬
本発明は、上記いずれかの方法によって製造される低温焼成瓦用光沢釉薬にも関する。
本発明の光沢釉薬の色はとくに限定されないが、黒、茶、オレンジ、黄、緑、青緑またはピンクが好ましく、とくに黒、茶およびオレンジが好ましく、黒が最も好ましい。
黒の光沢釉薬を用いた瓦においては、融雪効果が期待でき、また、金沢市の景観条例にもかなうものである。
本発明の光沢釉薬のうち、黒の光沢釉薬にも上記のことが該当するところ、該光沢釉薬の特性について補足して以下に述べる。
本発明の黒の光沢釉薬においては、SiOおよび/またはAlの量を所定の基準量より減らして融点を一層低下せしめたものは好ましい。たとえば、従来技術ではSiOが3.5〜4.5モル、Alは0.35〜0.6モル程度含まれるのに対し、本発明の黒の光沢釉薬においてはSiOを2.0〜4.0モル、Alを0.2〜0.5モル程度に抑えることで融点を下げたものは好ましく、SiOを2.5〜3.7モル、Alを0.3〜0.45モル程度に下げたものはより好ましい。
本発明の黒の光沢釉薬の着色成分は、基本的にFe、MnO、Crであることは従来技術の光沢釉薬と同様であるが、本発明の黒の光沢釉薬においてはCrの添加量を少なくすることで発色を安定させることができる。すなわち、従来技術におけるCrの添加量は1重量%程度であるのに対し、本発明の黒の光沢釉薬においては、Crの添加量を0.05〜0.7重量%程度に抑えたものは好ましく、0.1〜0.6重量%程度に抑えたものはより好ましい。
Crの添加量を0.7重量%程度以下とすることにより光沢釉薬表層面にメタリック調の結晶が析出しそれが乱反射することで白く見え、黒としての発色が阻害されるのを防ぐことができる。また、Crの添加量を0.05重量%程度以上とすることによって、釉が透けて見えて素地の赤味(鉄分)が影響されるのを防ぐことができる。さらに、Crの添加量を上記各範囲に抑制することによって、同成分に起因するガス発生の量を抑制するといった効果も奏される。
本発明の黒の光沢釉薬において使用される他の原料にとくに制限はなく、一般的に釉薬に使用される鉱物や酸化物、合成品(フリット、ガラス粉、顔料など)、化学薬品を使用することができる。Crの供給原料として、クロマイトや顔料等の合成品を用いることができるところ、その添加量が少ない場合には、発色を安定させるために粒度の細かい生Crを使用することが好ましい。
その他の成分についても一般的に釉薬に使用される成分がそのまま使用可能である。アルカリ成分として先に挙げたアルカリ類、アルカリ土類を使用することができる。ZnOを用いないものは、発色が茶味にならないため好ましい。
酸性成分としてTiO、ZrO、Pが通常の釉薬調合の範囲内で使用可能である。
基本的な着色成分としては、Fe、MnO、Crであるがところ、厳密な色の調整のためにCuO、CoO、NiO等も用いることができる。CuO、CoO、NiO等を用いる場合、それらの量は好ましくは3重量%以下である。
本発明の光沢釉薬のうち、下記光沢釉薬は好ましい:
瓦の1つの面(表側の面1)に光沢釉薬を施釉し、該表側の面1と相対して光沢釉薬を施釉していない瓦を、前記施釉した瓦の表側の面1から10〜20mmの間隔をおいて、表側の面1に裏側の面が相対するように設置し、前記施釉した瓦と施釉していない瓦を1050〜1160℃の範囲から選択される温度を30分間保持して焼成し、前記光沢釉薬を施釉していない瓦の、裏側の面および表側の面(表側の面2)のそれぞれにおける色について下式により求めた色差(ΔE)が20.5以下の範囲である、前記光沢釉薬:
Figure 0004619454

(式中、aおよびbは、それぞれ色彩色差計によって測定された色座標を表し、Lは色彩色差計によって測定された明度を表す。)。
焼成時の揮発ガスの発生が少ない場合には、上記裏側の面と表側の面2における色差が小さくなるため、上記色差(ΔE)が焼成時の揮発ガスの発生量の指標となり、光沢釉薬におけるガス発生抑制効果を定量的に把握することが可能となるのである。
なお、光沢釉薬を施釉していない瓦と施釉した瓦の表側の面1との間隔は、用いる焼成炉の大きさ等を考慮して10〜20mmの範囲から適宜選択することができる。典型的には、前記間隔として15mmが例示される。
上記色差(ΔE)が20.5以下の範囲である光沢釉薬は、上記の製造方法によって調製することが可能である。
上記色差(ΔE)の範囲も、光沢釉薬を施釉していない瓦と施釉した瓦の表側の面1との間隔および所望の値を考慮して適宜設定してよい。該色差(ΔE)として、15より大きく20.5以下の範囲は好ましく、10より大きく15以下の範囲はより好ましく、0から10以下の範囲は最も好ましい。
本発明の低温焼成瓦光沢釉薬の製造は、上記いずれかの方法によって製造されるところ、従来の光沢釉薬の製造方法において採用されている工程を、本発明の効果を損ねない範囲で用いることができる。
3.低温焼成瓦
本発明は、上記いずれかの光沢釉薬を用いて製造される低温焼成瓦にも関する。該瓦の製造方法は、本発明の光沢釉薬を用いたものであればとくに限定されず、従来の製造方法の工程を採用することができる。
本発明の低温焼成瓦を焼成する際の焼成温度は低温焼成の焼成温度であればとくに制限されない。すなわち、該焼成温度として、1100〜1160℃の範囲の温度が好ましく用いられる。
また、本発明の瓦の種類もとくに限定されず、J型桟瓦、S型瓦、F型瓦およびM型瓦等が包含される。
4.低温焼成瓦の焼成時に発生するガスの量を抑制する方法
本発明は、下記工程を含む、低温焼成瓦の焼成時に発生するガスの量を抑制する方法にも関する:
(A)光沢釉薬の色を決定する工程;
(B)前記光沢釉薬ベースにおいて用いられるB、アルカリ(R O)およびアルカリ土類のそれぞれについて、所定の基準量を決定する工程;
(C)BおよびR Oについて前記所定の基準量より少ない量を用い、アルカリ土類について前記所定の基準量より多い量を用い、PbOを用いずに製造された光沢釉薬を用いて瓦を焼成する工程;ならびに
(D)工程(C)において焼成された瓦の1つの面(表側の面1)に光沢釉薬を施釉し、該表側の面1と相対して光沢釉薬を施釉していない瓦を、前記施釉した瓦の表側の面1から10〜20mmの間隔をおいて、表側の面1に裏側の面が相対するように設置し、前記施釉した瓦と施釉していない瓦を1050〜1160℃の範囲から選択される温度を30分間保持して焼成し、前記光沢釉薬を施釉していない瓦の、裏側の面および表側の面(表側の面2)のそれぞれにおける色について下式により求めた色差(ΔE)を20.5以下の範囲とする工程:
Figure 0004619454

(式中、aおよびbは、それぞれ色彩色差計によって測定された色座標を表し、Lは色彩色差計によって測定された明度を表す。)。
上記(A)〜(C)の工程は、それぞれ本発明の製造方法における上記(a)〜(c)の工程に対応する工程であり、上記に記載した事項を当てはめることができる。
また、光沢釉薬を施釉していない瓦と施釉した瓦の表側の面1との間隔が、用いる焼成炉の大きさ等を考慮して10〜20mmの範囲から適宜選択することができる。典型的には、前記間隔として15mmが例示される。
本発明の上記方法によれば、低温焼成瓦の焼成時に発生するガスの量を色差(ΔE)が20.5以下の範囲に抑制することができるところ、その範囲も、光沢釉薬を施釉していない瓦と施釉した瓦の表側の面1との間隔および所望の値を考慮して、適宜設定してよい。該色差(ΔE)として、15より大きく20.5以下の範囲は好ましく、10より大きく15以下の範囲はより好ましく、0から10以下の範囲は最も好ましい。色差(ΔE)として、20.0以下は好ましく、19.0以下はより好ましい。
また、抑制の割合としては、同じ色について所定の基準量のB、アルカリ(R O)およびアルカリ土類を用いた場合と比較して、好ましくは10〜99%であり、より好ましくは15〜99%であり、最も好ましくは20〜99%である。抑制の割合も、光沢釉薬を施釉していない瓦と施釉した瓦の表側の面1との間隔および所望の値を考慮して、適宜設定してよい。
[実施例]
以下において本発明について具体例によってさらに詳細に説明するが、これらの例は、如何なる意味においても本発明を限定するものではない。
ガス発生量低減効果確認試験
1.目的
本発明の光沢釉薬によって奏されるガス発生量低減効果を確認する。
2.材料と方法
材料として、J型桟瓦および表1に示す各組成の光沢釉薬を用いた。
方法は以下のとおりであった。
、アルカリ(R O。NaOおよび/またはKO)およびアルカリ土類の所定の基準量として、各比較例における量をそれぞれ採用した。光沢釉薬の調製自体は、本技術分野における一般的な方法に従って行った。
瓦を低温にて焼成し(参考例においては高温焼成を行った)、ガスの発生量を評価する工程は次のように行った。
瓦の1つの面(表側の面1)に光沢釉薬を施釉し、該表側の面1と相対して光沢釉薬を施釉していない瓦を、前記施釉した瓦の表側の面1から15mmの間隔をおいて、表側の面1に裏側の面が相対するように設置し、前記施釉した瓦と施釉していない瓦を1050〜1160℃の範囲から選択される温度を30分間保持して焼成し、前記光沢釉薬を施釉していない瓦の、裏側の面および表側の面(表側の面2)のそれぞれにおける色についての色差(ΔE)を、色彩色差計(CR−400、コニカミノルタ社製)を用いて測定したa、bおよびLを用いて下式により求めた。
Figure 0004619454

(式中、aおよびbは、それぞれ色彩色差計によって測定された色座標を表し、Lは色彩色差計によって測定された明度を表す。)。
なお、焼成は電気炉(外寸410mm×410mm×410mm。共栄電気製作所製)を用いて行った。昇温速度は200℃/hであり、各所定の焼成温度に達した後、その温度を30分間保った。その後、電気炉の扉を開けずに自然に放冷せしめた。放冷時間は各焼成温度に依存するが、約10時間であった。
また、上記のようにして求めた色差につき、「大変良好」(0以上12.0未満)、「良好」(12.0以上20.5以下)および「不良」(>20.5)をそれぞれ「◎」、「○」および「×」の記号で表中に示した。
なお、光沢釉薬の熔解の状態についても調査を行った。
(結果および考察)
結果は表1および2に示した。
本発明の光沢釉薬においては、色差は2.2(実施例7)〜17.3(実施例4)であったのに対し、比較例の光沢釉薬における色差は最も小さくても20.9(比較例4)であった。すなわち、本発明の光沢釉薬は、比較例の光沢釉薬より色差が顕著に小さく、焼成時の揮発ガス発生を抑制する効果が認められた。
また、黒、オレンジ、茶および緑の各色について比較しても、本発明の光沢釉薬は比較例の光沢釉薬より色差がはるかに小さかった。青緑および黄色については、比較例との比較は行わなかったが、それぞれにおける色差は11.8および9.9と極めて良好であった。
なお、比較例3は焼成温度不足のため光沢釉薬が十分に熔解しなかったため発色せず、ガス発生の影響を評価するに至らなかった。
黒についてより詳細に比較するに、焼成温度が1140℃である実施例1(R O含量:0.30モル、B含量:0.30モル、アルカリ土類酸化物含量:0.70モル)および比較例1(R O含量:0.70モル、B含量:1.10モル、アルカリ土類酸化物含量:0.30モル)における色差はそれぞれ11.7および28.3であった。すなわち、本発明の光沢釉薬における、色差を指標とするガス発生抑制効果は58.7%であった。
また、オレンジについて付言するに、焼成温度が1120℃および1130℃とほぼ等しい実施例5(R O含量:0.30モル、B含量:0.30モル、アルカリ土類酸化物含量:0.70モル)と比較例4(R O含量:0.70モル、B含量:1.10モル、アルカリ土類酸化物含量:0.30モル)における色差はそれぞれ3.4および20.9であった。すなわち、この場合の本発明の光沢釉薬における色差を指標とするガス発生抑制効果は83.7%であった。
上記のとおり、本発明の光沢釉薬は、ガス発生を抑制する効果を有することが明らかになった。
Figure 0004619454
Figure 0004619454
本発明によれば、ホウ素およびアルカリ類R Oを減らし、かつ光沢釉薬の融点を低くするとともに、環境に対する負荷がより小さい低温焼成瓦用光沢釉薬の製造方法および低温焼成瓦用光沢釉薬が提供される。したがって、本発明は低温焼成瓦用光沢釉薬および低温焼成瓦の製造産業ならびにその関連産業の発展に寄与するところ大である。

Claims (3)

  1. 下記工程(a)〜(c)を含む、Pbを含まない低温焼成瓦用光沢釉薬の製造方法:
    (a)光沢釉薬の色を黒、茶、オレンジ、黄、緑、青緑またはピンクに決定する工程;
    (b)前記光沢釉薬ベースにおいて用いられるB、アルカリ(R O)およびCaOを含むアルカリ土類のそれぞれについて、所定の基準量を決定する工程;ならびに
    (c)BおよびR Oについて前記所定の基準量より少ない量としてゼーゲル表示でそれぞれ0.3モル以下の量を用い、アルカリ土類について前記所定の基準量より多い量としてゼーゲル表示で0.5モル以上を用い、PbOを用いず、MnO、Cr、Co、CuOおよび黄色顔料からの1種または2種以上を用いて光沢釉薬を製造する工程。
  2. Feをさらに用いる、請求項1に記載の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の製造方法で製造される、低温焼成瓦用光沢釉薬。
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