JP4619454B1 - ガスの発生が低減された低温焼成瓦用光沢釉薬 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記工程(a)〜(c)を含む、Pbを含まない低温焼成瓦用光沢釉薬の製造方法および該製造方法によって製造される低温焼成瓦用光沢釉薬:
(a)光沢釉薬の色を決定する工程;
(b)前記光沢釉薬ベースにおいて用いられるB2O3、アルカリ(R1 2O)およびアルカリ土類のそれぞれについて、所定の基準量を決定する工程;ならびに
(c)B2O3およびR1 2Oについて前記所定の基準量より少ない量を用い、アルカリ土類について前記所定の基準量より多い量を用い、PbOを用いずに光沢釉薬を製造する工程。
【選択図】なし
Description
しかしながら、これらの成分は、瓦の焼成時に一旦ガス化した後再溶着するため、混載した他色(銀、マット)の色調に悪影響を及ぼし、正規の所望の色調とは異なる発色をもたらす場合がある。また、混載がなくてもガスが炉内に残ることにより、次生産時の色への悪影響も問題となる。
さらに、混載した他色(銀、マット)の瓦への悪影響、すなわち発色が損なわれたりR1 2Oの影響で釉薬の熱膨張が大きくなって貫入が発生したりするばかりでなく、光沢釉薬が十分に熔解しないと気泡抜け、寄りジワのような瓦の外観を損ねる現象が生じ、不良品やクレームの発生原因になるといった悪影響も無視できない。
(1)下記工程(a)〜(c)を含む、Pbを含まない低温焼成瓦用光沢釉薬の製造方法:
(a)光沢釉薬の色を決定する工程;
(b)前記光沢釉薬ベースにおいて用いられるB2O3、アルカリ(R1 2O)およびアルカリ土類のそれぞれについて、所定の基準量を決定する工程;ならびに
(c)B2O3およびR1 2Oについて前記所定の基準量より少ない量を用い、アルカリ土類について前記所定の基準量より多い量を用い、PbOを用いずに光沢釉薬を製造する工程。
(3)アルカリ土類についての前記所定の基準量より多い量が、ゼーゲル表示で0.5モル以上である、前記製造方法。
(4)アルカリ土類がCaOを含む、前記いずれかの製造方法。
(5)色が、黒、茶、オレンジ、黄、緑、青緑またはピンクである、前記いずれかの製造方法。
(7)瓦の1つの面(表側の面1)に光沢釉薬を施釉し、該表側の面1と相対して光沢釉薬を施釉していない瓦を、前記施釉した瓦の表側の面1から10〜20mmの間隔をおいて、表側の面1に裏側の面が相対するように設置し、前記施釉した瓦と施釉していない瓦を1050〜1160℃の範囲から選択される温度を30分間保持して焼成し、前記光沢釉薬を施釉していない瓦の、裏側の面および表側の面(表側の面2)のそれぞれにおける色について下式により求めた色差(ΔE)が20.5以下の範囲である、前記光沢釉薬:
(式中、a*およびb*は、それぞれ色彩色差計によって測定された色座標を表し、L*は色彩色差計によって測定された明度を表す。)。
(9)焼成の温度が1100〜1160℃である、前記低温焼成瓦。
(10)下記工程を含む、低温焼成瓦の焼成時に発生するガスの量を抑制する方法:
(A)光沢釉薬の色を決定する工程;
(B)前記光沢釉薬ベースにおいて用いられるB2O3、アルカリ(R1 2O)およびアルカリ土類のそれぞれについて、所定の基準量を決定する工程;
(C)B2O3およびR1 2Oについて前記所定の基準量より少ない量を用い、アルカリ土類について前記所定の基準量より多い量を用い、PbOを用いずに製造された光沢釉薬を用いて瓦を焼成する工程;ならびに
(D)工程(C)において焼成された瓦の1つの面(表側の面1)に光沢釉薬を施釉し、該表側の面1と相対して光沢釉薬を施釉していない瓦を、前記施釉した瓦の表側の面1から10〜20mmの間隔をおいて、表側の面1に裏側の面が相対するように設置し、前記施釉した瓦と施釉していない瓦を1050〜1160℃の範囲から選択される温度を30分間保持して焼成し、前記光沢釉薬を施釉していない瓦の、裏側の面および表側の面(表側の面2)のそれぞれにおける色について下式により求めた色差(ΔE)を20.5以下の範囲とする工程:
(式中、a*およびb*は、それぞれ色彩色差計によって測定された色座標を表し、L*は色彩色差計によって測定された明度を表す。)。
・混載や生産スケジュールに融通が利き生産性を向上できる。
・鉛を使用する必要がなく、ホウ素の使用量も抑えることになり、不良品等も少なく、人と環境への負荷が小さくすることができる。
・とくに黒の光沢釉薬の場合には、伝統的な光沢ブラックが現状の焼成条件を変えることなく、低温焼成域(1100〜1160℃)で発生する揮発ガスの発生を抑えることができる。そのため、混載された色(銀、マット)の瓦における貫入の発生を防ぐことができ、より高品質な瓦を効率的に提供することができる。
本明細書において「低温焼成瓦」とは、1130℃付近、とくに約1100〜1160℃、あるいは約1110〜1150℃において焼成される瓦を意味する。
本明細書において「光沢釉薬ベース」とは、光沢釉薬の成分のうち発色成分(着色成分)以外の成分として配合される各成分の群を意味する。
本明細書において、光沢釉薬ベースにおいて用いられるB2O3、アルカリ(R1 2O)およびアルカリ土類の「所定の基準量」とは、本技術分野において採用し得る、瓦の製造または試験製造に用いることができるあらゆる量を意味する。
1.低温焼成瓦用光沢釉薬の製造方法
本発明の低温焼成瓦用光沢釉薬の製造方法は、下記工程(a)〜(c)を含む、Pbを含まない前記光沢釉薬の製造方法である:
(a)光沢釉薬の色を決定する工程;
(b)前記光沢釉薬ベースにおいて用いられるB2O3、アルカリ(R1 2O)およびアルカリ土類のそれぞれについて、所定の基準量を決定する工程;ならびに
(c)B2O3およびR1 2Oについて前記所定の基準量より少ない量を用い、アルカリ土類について前記所定の基準量より多い量を用い、PbOを用いずに光沢釉薬を製造する工程。
本発明の製造方法は、光沢釉薬の色が、黒、茶、オレンジ、黄、緑、青緑またはピンクであるものにおいて好ましく、とくに黒、茶およびオレンジであるものにおいて好ましく、黒であるものにおいて最も好ましい。
これらの成分の所定の基準量は、とくに制限されないが、たとえば従来技術において用いられる量を基準とすると、B2O3、アルカリ(R1 2O)およびアルカリ土類のそれぞれの量として、たとえば0.6モル以上、0.5モル以上および0.5モル以下が例示される。
これらの量は、
B2O3およびR1 2Oについての前記所定の基準量より少ない量が、いずれも0.45モル以下である本発明の製造方法は好ましく、いずれも0.4モル以下である本発明の製造方法はより好ましく、いずれも0.3モル以下である本発明の製造方法は最も好ましい。
また、B2O3およびアルカリ(R1 2O)の量は、他の成分とのバランスや溶融状態を考慮して設定することによって、他色への影響がなくすことができるところ、僅かな量でも減らすことによってガス発生量を低減せしめることができるばかりでなく、他色製品との混載割合を多くすることができる。
さらに、B2O3およびアルカリ(R1 2O)の量を調整することによって、光沢釉薬の融点が高く熔け不足となることを防ぎ、光沢の低下や発泡の発生も防ぐことができる。
なお、鉛は光沢釉薬の低融点化の効果を有するが、環境負荷の観点から、本発明の製造方法においては使用されない。
たとえば、着色成分として、MnO、Fe2O3、Cr2O3、Co3O4およびCuO等や各種顔料からの1種または2種以上を用いることができる。これらの成分の量としては、外割り重量%で、MnO:0.05〜10%、Fe2O3:0.05〜15%、Cr2O3:0.05〜5%、Co3O4:0.05〜5%およびCuO:0.05〜5%を例示することができる。とくに黒色の低温焼成瓦の場合には、外割り重量%で、MnO:0.05〜5、Fe2O3:5〜15%、Cr2O3:0.05〜1.5%、Co3O4:0.05〜3%およびCuO:0.05〜3%を例示することができる。
Cr2O3の添加は、その添加により色の発色を安定させることができるため好ましい。一方、Cr2O3の添加量を少なくすると、ガスの発生量をさらに抑制できるメリットがある。
その他の成分についても、釉薬に用いられる一般的な成分をそのまま使用することができる。かかる一般的な成分として、たとえばTiO2、ZrO2、SnO2、P2O5およびSb2O5からの1種または2種以上が、通常の釉薬調合の範囲内でそれぞれ使用可能である。これらの成分の量は、例えば、外割り重量%で0.05〜6.0%の範囲である。
粒度は+75μmのものが7%以下であると好ましく、3%以下であるとより好ましい。粒度を微細にすることによって、反応性がより高くなるためフリットの粒が斑点状に残ったり、発泡したりすることを防ぐことができる。
本発明は、上記いずれかの方法によって製造される低温焼成瓦用光沢釉薬にも関する。
本発明の光沢釉薬の色はとくに限定されないが、黒、茶、オレンジ、黄、緑、青緑またはピンクが好ましく、とくに黒、茶およびオレンジが好ましく、黒が最も好ましい。
黒の光沢釉薬を用いた瓦においては、融雪効果が期待でき、また、金沢市の景観条例にもかなうものである。
本発明の光沢釉薬のうち、黒の光沢釉薬にも上記のことが該当するところ、該光沢釉薬の特性について補足して以下に述べる。
Cr2O3の添加量を0.7重量%程度以下とすることにより光沢釉薬表層面にメタリック調の結晶が析出しそれが乱反射することで白く見え、黒としての発色が阻害されるのを防ぐことができる。また、Cr2O3の添加量を0.05重量%程度以上とすることによって、釉が透けて見えて素地の赤味(鉄分)が影響されるのを防ぐことができる。さらに、Cr2O3の添加量を上記各範囲に抑制することによって、同成分に起因するガス発生の量を抑制するといった効果も奏される。
その他の成分についても一般的に釉薬に使用される成分がそのまま使用可能である。アルカリ成分として先に挙げたアルカリ類、アルカリ土類を使用することができる。ZnOを用いないものは、発色が茶味にならないため好ましい。
基本的な着色成分としては、Fe2O3、MnO、Cr2O3であるがところ、厳密な色の調整のためにCuO、CoO、NiO等も用いることができる。CuO、CoO、NiO等を用いる場合、それらの量は好ましくは3重量%以下である。
瓦の1つの面(表側の面1)に光沢釉薬を施釉し、該表側の面1と相対して光沢釉薬を施釉していない瓦を、前記施釉した瓦の表側の面1から10〜20mmの間隔をおいて、表側の面1に裏側の面が相対するように設置し、前記施釉した瓦と施釉していない瓦を1050〜1160℃の範囲から選択される温度を30分間保持して焼成し、前記光沢釉薬を施釉していない瓦の、裏側の面および表側の面(表側の面2)のそれぞれにおける色について下式により求めた色差(ΔE)が20.5以下の範囲である、前記光沢釉薬:
(式中、a*およびb*は、それぞれ色彩色差計によって測定された色座標を表し、L*は色彩色差計によって測定された明度を表す。)。
なお、光沢釉薬を施釉していない瓦と施釉した瓦の表側の面1との間隔は、用いる焼成炉の大きさ等を考慮して10〜20mmの範囲から適宜選択することができる。典型的には、前記間隔として15mmが例示される。
上記色差(ΔE)の範囲も、光沢釉薬を施釉していない瓦と施釉した瓦の表側の面1との間隔および所望の値を考慮して適宜設定してよい。該色差(ΔE)として、15より大きく20.5以下の範囲は好ましく、10より大きく15以下の範囲はより好ましく、0から10以下の範囲は最も好ましい。
本発明は、上記いずれかの光沢釉薬を用いて製造される低温焼成瓦にも関する。該瓦の製造方法は、本発明の光沢釉薬を用いたものであればとくに限定されず、従来の製造方法の工程を採用することができる。
本発明の低温焼成瓦を焼成する際の焼成温度は低温焼成の焼成温度であればとくに制限されない。すなわち、該焼成温度として、1100〜1160℃の範囲の温度が好ましく用いられる。
また、本発明の瓦の種類もとくに限定されず、J型桟瓦、S型瓦、F型瓦およびM型瓦等が包含される。
本発明は、下記工程を含む、低温焼成瓦の焼成時に発生するガスの量を抑制する方法にも関する:
(A)光沢釉薬の色を決定する工程;
(B)前記光沢釉薬ベースにおいて用いられるB2O3、アルカリ(R1 2O)およびアルカリ土類のそれぞれについて、所定の基準量を決定する工程;
(C)B2O3およびR1 2Oについて前記所定の基準量より少ない量を用い、アルカリ土類について前記所定の基準量より多い量を用い、PbOを用いずに製造された光沢釉薬を用いて瓦を焼成する工程;ならびに
(D)工程(C)において焼成された瓦の1つの面(表側の面1)に光沢釉薬を施釉し、該表側の面1と相対して光沢釉薬を施釉していない瓦を、前記施釉した瓦の表側の面1から10〜20mmの間隔をおいて、表側の面1に裏側の面が相対するように設置し、前記施釉した瓦と施釉していない瓦を1050〜1160℃の範囲から選択される温度を30分間保持して焼成し、前記光沢釉薬を施釉していない瓦の、裏側の面および表側の面(表側の面2)のそれぞれにおける色について下式により求めた色差(ΔE)を20.5以下の範囲とする工程:
(式中、a*およびb*は、それぞれ色彩色差計によって測定された色座標を表し、L*は色彩色差計によって測定された明度を表す。)。
また、光沢釉薬を施釉していない瓦と施釉した瓦の表側の面1との間隔が、用いる焼成炉の大きさ等を考慮して10〜20mmの範囲から適宜選択することができる。典型的には、前記間隔として15mmが例示される。
また、抑制の割合としては、同じ色について所定の基準量のB2O3、アルカリ(R1 2O)およびアルカリ土類を用いた場合と比較して、好ましくは10〜99%であり、より好ましくは15〜99%であり、最も好ましくは20〜99%である。抑制の割合も、光沢釉薬を施釉していない瓦と施釉した瓦の表側の面1との間隔および所望の値を考慮して、適宜設定してよい。
以下において本発明について具体例によってさらに詳細に説明するが、これらの例は、如何なる意味においても本発明を限定するものではない。
1.目的
本発明の光沢釉薬によって奏されるガス発生量低減効果を確認する。
2.材料と方法
材料として、J型桟瓦および表1に示す各組成の光沢釉薬を用いた。
方法は以下のとおりであった。
B2O3、アルカリ(R1 2O。Na2Oおよび/またはK2O)およびアルカリ土類の所定の基準量として、各比較例における量をそれぞれ採用した。光沢釉薬の調製自体は、本技術分野における一般的な方法に従って行った。
瓦の1つの面(表側の面1)に光沢釉薬を施釉し、該表側の面1と相対して光沢釉薬を施釉していない瓦を、前記施釉した瓦の表側の面1から15mmの間隔をおいて、表側の面1に裏側の面が相対するように設置し、前記施釉した瓦と施釉していない瓦を1050〜1160℃の範囲から選択される温度を30分間保持して焼成し、前記光沢釉薬を施釉していない瓦の、裏側の面および表側の面(表側の面2)のそれぞれにおける色についての色差(ΔE)を、色彩色差計(CR−400、コニカミノルタ社製)を用いて測定したa*、b*およびL*を用いて下式により求めた。
なお、光沢釉薬の熔解の状態についても調査を行った。
結果は表1および2に示した。
本発明の光沢釉薬においては、色差は2.2(実施例7)〜17.3(実施例4)であったのに対し、比較例の光沢釉薬における色差は最も小さくても20.9(比較例4)であった。すなわち、本発明の光沢釉薬は、比較例の光沢釉薬より色差が顕著に小さく、焼成時の揮発ガス発生を抑制する効果が認められた。
また、黒、オレンジ、茶および緑の各色について比較しても、本発明の光沢釉薬は比較例の光沢釉薬より色差がはるかに小さかった。青緑および黄色については、比較例との比較は行わなかったが、それぞれにおける色差は11.8および9.9と極めて良好であった。
なお、比較例3は焼成温度不足のため光沢釉薬が十分に熔解しなかったため発色せず、ガス発生の影響を評価するに至らなかった。
上記のとおり、本発明の光沢釉薬は、ガス発生を抑制する効果を有することが明らかになった。
Claims (3)
- 下記工程(a)〜(c)を含む、Pbを含まない低温焼成瓦用光沢釉薬の製造方法:
(a)光沢釉薬の色を黒、茶、オレンジ、黄、緑、青緑またはピンクに決定する工程;
(b)前記光沢釉薬ベースにおいて用いられるB2O3、アルカリ(R1 2O)およびCaOを含むアルカリ土類のそれぞれについて、所定の基準量を決定する工程;ならびに
(c)B2O3およびR1 2Oについて前記所定の基準量より少ない量としてゼーゲル表示でそれぞれ0.3モル以下の量を用い、アルカリ土類について前記所定の基準量より多い量としてゼーゲル表示で0.5モル以上を用い、PbOを用いず、MnO、Cr2O3、Co3O4、CuOおよび黄色顔料からの1種または2種以上を用いて光沢釉薬を製造する工程。 - Fe2O3をさらに用いる、請求項1に記載の製造方法。
- 請求項1または2に記載の製造方法で製造される、低温焼成瓦用光沢釉薬。
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