JP4615751B2 - 共振抑制装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,被制御物体の制御に関し,特に,磁気ディスク装置または光ディスク装置におけるヘッドを特定位置に移動させる位置決め制御系などの共振制御に好適なノッチフィルタを用いた共振抑制装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば,磁気ディスク装置のヘッド位置決め制御装置では,回転する円板(磁気ディスク)の目的位置をシークするため,円板の放射方向にヘッドを移動させる。ヘッドの移動は,アームの基部に設けたVCM(ボイスコイルモータ)によりアームを揺動させることにより行うため,ヘッド位置決め制御装置のアームや軸受けなどでは共振が発生する。例えば,アームおよびVCMは,おおむね3kHz 以上の周波数帯域に大小の共振モードが存在する。この共振モードは,位置決め精度に悪影響を及ぼすばかりか,シーク残留振動の要因となり,最悪の場合にはヘッド位置決め制御装置の動作が不安定になる要因にもなる。したがって,従来は,共振モードを除去するため,共振モードの存在する周波数に対し必要な個数のノッチフィルタを制御ループに挿入している。
【0003】
ところで,共振モードは製品ごとに固体間のばらつきがあり,さらに温度や経時変化などの環境によって変動する。そのため,一義的に決めた定数パラメータの固定ノッチフィルタでは,設定した周波数と実際に共振モードが存在する周波数とに乖離が生じた場合に,動作が不安定になったり,発振したりして,かえって位置決め制御の精度を悪化させるといった問題が生じるおそれがあった。
【0004】
そのため,ノッチフィルタをその製品ごとに自動的に調整する手段として,ヘッド位置決め制御系に外部からテスト信号を印加して,その製品のメカコンプライアンス特性を測定し,この測定値をもとにノッチフィルタのパラメータを決定するようにしていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし,外部からテスト信号を印加している間は,製品の本来の目的を達成できない。例えば磁気ディスク装置であれば,テスト信号を印加している間はディスクへのデータの読み書きや目標トラックへの移動ができない。したがって,外部からのテスト信号を用いてノッチフィルタを調整する手法は,キャリブレーション時間を新たに設けて行うか,あるいは,工場出荷時や電源投入時にしか行うことができなかった。
【0006】
本発明は,上記の問題点に鑑み,製品ごとに,共振を抑制するノッチフィルタのパラメータをその製品のDSP(デジタルシグナルプロセッサ)上で推定し,共振点を補償するノッチフィルタの設定中心周波数を適応的に自律変更させて,共振を抑制する共振抑制装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため,本発明は,磁気ディスク装置のヘッド位置決め制御系などの共振抑制に好適なノッチフィルタについて,該ノッチフィルタの設定中心周波数のみを自動的に調整して共振を抑制するものであり,以下の手段を備える。
【0008】
本発明は,制御対象の出力信号または前記制御対象に対する入力信号のいずれか一方を受信する信号受信手段と,前記受信信号に対し前記ノッチフィルタの既設定の中心周波数の近傍の高周波数域側の狭帯域(若干高い領域)または低周波数域側の狭帯域(若干低い領域)に重み付けをする重み付け処理手段と,前記重み付けした高周波数域側または低周波数域側の狭帯域のそれぞれの分散値を算出する分散値算出手段と,前記高周波数域側の分散値と前記低周波数域側の分散値とを比較し,前記高周波数域側分散値が大きい場合には前記ノッチフィルタの中心周波数を高周波数域側へずらして設定し,または,前記低周波数域側分散値が大きい場合には前記ノッチフィルタの中心周波数を低周波数域側へずらして設定するパラメータ推定手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また,本発明の重み付け処理手段は,前記高周波数域側の狭帯域もしくは前記低周波数域側の狭帯域に対する重み関数または重み付けの値が,一方が他方より大きくなるように重み付けを行うことを特徴とする。
【0010】
また,本発明のパラメータ推定手段は,前記ノッチフィルタの中心周波数を所定の単位周波数ずつ高周波数域側もしくは低周波数域側へずらして設定することを特徴とする。
【0011】
また,本発明のパラメータ推定手段は,複数のノッチフィルタを備える場合に,前記ノッチフィルタの各々の中心周波数が所定の帯域間隔を保持するように設定することを特徴とする。
【0012】
また,本発明の分散値算出手段は,前記ノッチフィルタの該当周波数帯域に共振と無関係の周波数のピークが存在する場合に,予め当該ピークの逆特性を設定した重み関数を用いて重み付けを行うことを特徴とする。
【0013】
本発明は,以下のように作用する。本発明は,信号受信手段により,制御対象であるVMCなどのアクチュエータへの指示電流信号を受信し,重み付け処理手段により,この受信信号の前記ノッチフィルタの設定中心周波数の近傍の高周波数域側の狭帯域および低周波数域側の狭帯域に重み付けをし,分散値算出手段により,両側の狭帯域の重み付けをした電流値の分散値を算出する。次に,パラメータ推定手段により,高周波数域側の分散値と低周波数域側の分散値とを比較し,分散値の大きい方に共振点が存在すると推定することができるので,前記ノッチフィルタの設定中心周波数を,所定単位分だけ分散値が大きい方へずらして設定する。以上の処理を複数回繰り返すことにより,前記ノッチフィルタの設定中心周波数が最適に設定されることになる。なお,信号受信手段は,アクチュエータへの指示信号電流の代わりにアクチュエータが出力する位置誤差信号を用いることもできる。
【0014】
このように,本発明では,ノッチフィルタの設定中心周波数の近傍両側の狭帯域の電流値の分散を求め,分散値の大きい周波数を共振周波数とし,その分散を最小化するようにノッチフィルタを設定する。
【0015】
これにより,共振の非常に広範囲のばらつきや変動を予め考慮する必要がなく,製品ごとに,共振抑制のためのノッチフィルタの高精度の調整を自律的に行うことができる。また,ノッチフィルタの調整に外部のテスト信号を印加する必要がなく,通常のフォロイング制御中で実行できるため,運用中も共振抑制のためのノッチフィルタ適応動作が可能である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下,本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
〔第1の実施の形態〕
図1に,本発明を適用する制御系として磁気ディスク装置のヘッド位置決め制御系を示す。図1に示すように,ヘッド位置決め制御系は,制御対象であるアクチュエータ2,アクチュエータ2からの位置誤差信号5のフィードバックを制御するフィードバックコントローラ4とを備える。本発明にかかる共振抑制装置は,共振パラメータ自動調整器1,アクチュエータ2に対し共振を抑制させるための適応ノッチフィルタ3からなる。
【0018】
共振パラメータ自動調整器1は,信号受信部11と,重み付け処理部12,13,分散値算出部14,15と,パラメータ推定部16とを備える。
【0019】
信号受信部11は,アクチュエータ2の出力である位置誤差信号5または入力である指示電流信号6を受信する手段である。
【0020】
重み付け処理部12は,適応ノッチフィルタ3の設定中心周波数fr の近傍の低周波数域側の狭帯域に伝達関数である重み関数Wl を作用させる手段である。重み付け処理部13は,同様に,適応ノッチフィルタ3の設定中心周波数fr の近傍の高周波数域側の狭帯域に重み関数Wh を作用させる手段である。重み関数Wl およびWh の添え字lおよびhは,現在の適応ノッチフィルタ3の設定中心周波数fr より低い(low) 周波数領域か高い(high)周波数領域かを示すものである。
【0021】
分散値算出部14は,重み付け処理部12により重み付けされた適応ノッチフィルタ3の設定中心周波数fr の低周波数域側の狭帯域について周波数の分散値σl を計算する手段である。分散値算出部15は,同様に,重み付け処理部13により重み付けされた適応ノッチフィルタ3の設定中心周波数fr の高周波数域側の狭帯域について周波数の分散値σh を計算する手段である。
【0022】
パラメータ推定部16は,分散値σl と分散値σh とを比較して,分散値の高い方向にΔfだけ適応ノッチフィルタ3の設定中心周波数fr を移動させる手段である。
【0023】
以下に,本発明の動作を説明する。
【0024】
重み付け処理部12,13では,それぞれ,重み関数Wl およびWh を用いて,適応ノッチフィルタ3の設定中心周波数fr の両サイドの周波数領域で重み付けを行い,分散値算出部14,15では,重み付け処理部12,13のそれぞれの重み関数Wl およびWh の出力から,現在設定されている適応ノッチフィルタ3の設定中心周波数fr の近傍両サイドの周波数領域の分散値σl およびσh を求める。信号受信部11からの同一の信号に2つの重み関数Wl およびWh を作用させるため,常に,設定中心周波数fr の両側に分散値σl および分散値σh を得ることができる。
【0025】
本例では,重み関数Wl およびWh を図2に示すような伝達関数とする。具体的には,以下の式(1)に表す2次の伝達関数である。
【0026】
【数1】
Figure 0004615751
【0027】
また,図3に,本制御系の電流スペクトラムの例を示す。ここで,実際の共振周波数は4kHz 〜6kHz 程度であるため,適応ノッチフィルタ3の設定中心周波数fr の設定範囲もこの範囲に限定するとする。図3に示すように,同領域の電流の周波数軸上のむらは,適応ノッチフィルタ3の部分(5.2kHz と6.1kHz )を除き5dB程度である。
【0028】
分散値σl およびσh が求まれば,それらの分散値の高い方に共振点が存在すると推定することができる(この推定は正しい)ので,適応ノッチフィルタ3の設定中心周波数fr を分散値の高い方にΔfだけ動かせばよい。ここでは,Δfは250Hzとする。
【0029】
パラメータ推定部16のロジックを以下のようにする。
【0030】
【数2】
Figure 0004615751
【0031】
式(2)中のfind< > は,第1項と第2項の除算結果が第3項λ以上の時は−1を,1/λ以下の時は+1を,それ以外のときは0を返すという意味である。電流のスペクトラムはホワイトではないため,その分だけ誤差がのることになるため,分散の絶対値も考慮して設計パラメータλを導入している。このような,しきい値を導入することにより,共振点とは関係ない要因による分散値の周波数軸上のむらを吸収することが可能である。ここで,図2に示す重み関数をかけた分散は,平均されて更に小さくなると思われるので,設計パラメータλは2とする。
【0032】
なお,重み関数Wl およびWh が,適応ノッチフィルタ3の設定中心周波数fr の関数になっているのは,適応ノッチフィルタ3の設定中心周波数fr によって重み関数Wl およびWh も周波数軸上でシフトしていかなければならないことを意味する。これは,信号受信部11からの同一の信号に重み関数Wl およびWh を作用させることにより達成できる。
【0033】
図4に,本発明の処理の流れを説明する図を示す。
【0034】
共振パラメータ自動調整器1では,信号受信部11により指示電流信号6または位置誤差信号5を受信する(ステップS1)。重み付け処理部12,13では,適応ノッチフィルタ3の設定中心周波数fr の近傍の高周波数域および低周波数域側の狭帯域に重み付けを行い(ステップS2),分散値算出部14,15では,重み付け処理部12,13の出力をもとにそれぞれの分散値σl ,σh を求め(ステップS3),パラメータ推定部16では,分散値σl ,σh を比較する(ステップS4)。分散値σl が大きい(低周波数域側が大きい)場合には(ステップS5),現在の適応ノッチフィルタ3の設定中心周波数fr を単位分(250Hz)低周波数域側へずらして設定し(ステップS6),分散値σh が大きい(高周波数域側が大きい)場合には(ステップS5),現在の適応ノッチフィルタ3の設定中心周波数fr を単位分(250Hz)高周波数域側へずらして設定し(ステップS7),いずれでもない場合にはそのまま終了する。
〔第2の実施の形態〕
複数の共振点が存在する場合,通常,それぞれの適応ノッチフィルタ3を設けて前出の処理をそれぞれの共振点について行い,共振を抑制していく。この場合,図1に示す共振パラメータ自動調整器1はそれぞれの適応ノッチフィルタ3ごとに備えられる。
【0035】
しかし,複数の共振点(共振峰)が存在すると,周波数重み付けされた2つの分散の平均値に適応ノッチフィルタ3が設定されるため,適応ノッチフィルタ3を適用しようとする周波数領域に複数個の共振峰が近い周波数帯域に存在する場合には,それぞれの共振峰に適応ノッチフィルタ3を挿入しても,十分に適応できない場合が生ずる。
【0036】
図5に,2つの共振峰に対する適応ノッチフィルタ3の適応が失敗の場合の状態を示す。この場合には,少なくとも共振峰の個数である2個以上の適応ノッチフィルタ3を該当する周波数領域に設定しなければならない。しかし,共振峰と同じ個数,すなわち2個の適応ノッチフィルタ3を挿入しても,2つの共振峰が近いために,2個とも図5中に点線で示されている周波数に設定されてしまう可能性がある。
【0037】
これに対して,それぞれの共振峰に対する適応ノッチフィルタ3について,重み付け処理部12,13のそれぞれで用いる重み関数を異なる特性,すなわち低周波数域と高周波数域で異なる特性とすることで回避できる。
【0038】
第2の実施の形態においては,図1に示す共振パラメータ自動調整器1の重み付け処理部12,13は,それぞれ高周波数域側の狭帯域もしくは低周波数域側の狭帯域に対する重み関数または重み付けの値が,一方が他方より大きくなるように重み付けを行うようにする。
【0039】
例えば,2個の適応ノッチフィルタ3の内,低周波数域側の共振峰用の適応ノッチフィルタ3については,図6に示すように,重み付け処理部12で用いる重み関数の特性を変えて低周波数域側の重みを強くしておき,もう片方の高周波数域側の共振峰用の適応ノッチフィルタ3については,図7に示すように,重み付け処理部13で用いる重み関数の特性を変えて高周波数域側の重みを強くしておく。このように,相互に隣接する適応ノッチフィルタ3の重み付けのパターンを,それぞれ異なるものにしておくことによって,周波数軸上の役割分担を行うようにする。
【0040】
〔第3の実施の形態〕
3つ以上の共振峰が存在する場合には,第2の実施の形態で説明したような適応ノッチフィルタ3の周波数軸上の役割分担が成り立たない場合がある。この場合には,それぞれの適応ノッチフィルタ3の設定中心周波数fr が相互に近づき過ぎないように一定の制限を加えることにより,異なる共振峰に対する適応ノッチフィルタ3の設定中心周波数fr が同じ周波数に設定されることを回避する。
【0041】
第3の実施の形態においては,図1に示す共振パラメータ自動調整器1のパラメータ推定部16は,適応ノッチフィルタ3の各々の設定中心周波数fr が所定の帯域間隔を保持するように設定中心周波数fr を設定する。例えば図8に示すように,3つの適応ノッチフィルタ3の設定中心周波数fr1,fr2,fr3である場合に,これらの設定中心周波数fr1,fr2,fr3が,相互に少なくとも周波数帯域幅dより離れているように設定すると,全ての適応ノッチフィルタ3の設定中心周波数fr1,fr2,fr3が同じ周波数に設定されることはない。したがって,仮に1つの適応ノッチフィルタ3の設定中心周波数fr1が,分散の平均値に設定されたとしても,それ以外の適応ノッチフィルタ3の平均値である設定中心周波数fr2には設定されないため,必ず共振峰を打ち消すところに落ち着くことになる。
【0042】
〔第4の実施の形態〕
共振パラメータ自動調整器1に入力される測定信号に,共振によらないピークが共振峰の近傍に存在するときは,共振峰の判定を誤る可能性がある。制御対象が製造環境によって特定のスペクトラム特性が現れる場合があるからである。この場合には,前述した適応ノッチフィルタ3のアルゴリズムでは対処できない。第1の実施の形態において,パラメータ推定部16で用いるパラメータλで,信号の周波数的なむらを吸収することはすでに説明したが,それ以外の方法として,重み関数の特性を工夫する。
【0043】
すなわち,第4の実施の形態において,予め適応ノッチフィルタ3の該当周波数領域の信号のパワースペクトラムの平均(数台,数ヘッド分)を測定しておき,図9に示すように,重み付け処理部12,13は,重み関数Wl およびWh に予めそのスペクトラムの逆特性rを含ませておいたものを用いるようにする。信号スペクトラムにバラツキがある場合には,この方法により対処するのは困難であるが,極端なバラツキがなければ,前出のパラメータλの設定およびスペクトラムの逆特性の設定により,ほとんどカバーできるものと考えられる。なお,この信号のパワースペクトラムの逆特性rは信号受信部11で作用させるようにしてもよい。
【0044】
以上,本発明をその実施の態様により説明したが,本発明はその主旨の範囲において種々の変形が可能である。例えば,前述の本発明の実施の形態は,それぞれを個別に実施することができる他,これらのいくつかを適宜組み合わせて実施することも可能である。
〔具体例〕
本発明の効果を明らかにするために,具体例として以下のシミュレーション評価を行った。具体例において実施する制御系として,現代制御理論にもとづき設計を行ったフィードバックコントローラ4を使用した制御系を用いた。シミュレーションは2秒間行い,一次モードの共振周波数を時間とともに,4.5kHz→4.9kHz→5.3kHzへ変化させた場合の適応ノッチフィルタ3の挙動を評価した。適応ノッチフィルタ3の設定中心周波数fr の初期値は4.5kHzである。入力の位置誤差信号5のサンプリング周波数は10kHz とした。このときのプラント特性は時間の経過とともに図10に示すように変化した。
【0045】
まず,本発明にかかる適応ノッチフィルタ3がない場合の結果を説明する。図11は,設定中心周波数が4.5kHzの固定ノッチフィルタを適用した場合の開ループ特性の変動を示す図である。図11において,実線は共振周波数が4.5kHzの場合(初期状態)の開ループ特性を示し,点線は共振周波数が5.3kHzの場合(最終状態)の開ループ特性を示す。共振周波数が4.5kHzから5.3kHzへ移動するにつれ,2次安定余裕(2回目のゼロクロスにおける安定余裕)が小さくなっていること,すなわち,共振峰により開ループゲインが上昇していることがわかる。このときの位置誤差パワースペクトラムを図12および図13に示す。図12は初期状態(共振周波数が4.5kHz)の場合のスペクトラムを示し,図13は最終状態(共振周波数が5.3kHz)の場合のスペクトラムを示す。図12に示すように,初期状態では正常であるが,時間の経過とともに共振周波数が変動し,図13に示すように,最終状態では,共振周波数近傍の位置誤差が増大していることが分かる。
【0046】
一方,図14に,本発明を適用した場合の開ループ特性の変動を示す。図14において,点線は初期状態(共振周波数が4.5kHz)の場合の開ループ特性を示し,実線は最終状態(共振周波数が5.3kHz)の場合の開ループ特性を示す。適応ノッチフィルタ3が共振点に追従しているため,本発明を適用していない場合(図11参照)に比べて,ゲインの増大が解消されていることがわかる。
【0047】
図15および図16に,本発明にかかる適応ノッチフィルタ3を適用した場合の位置誤差信号5のパワースペクトラムを示す。図15に示すパワースペクトラムは図12に示す場合とほぼ同様であるが,特に,図16に示す最終状態では,図13に示す本発明を適用しない場合の最終状態に比べて,共振周波数での位置誤差悪化が少ないことがわかる。なお,共振による位置誤差が完全になくなっていないように見えるのは,第一にシミュレーションでは外乱モデルを適応ノッチフィルタ3の適応動作に併せて変更していないため,第二にFFTによりスペクトラム表示させるために用いる時間信号自体が時間の経過とともに適応ノッチフィルタ3の適応動作によって変動してしまい正確でなくなってしまうため,などの理由が挙げられる。
【0048】
図17に,適応ノッチフィルタ3の設定中心周波数fr の推定結果の経時変化を示す。共振周波数の切替えポイントは,0.67秒,1.33秒である。適応ノッチフィルタ3の共振点追従には若干のタイムラグがあるが,共振周波数の4.5kHz→4.9kHz→5.3kHzという変化に正確に追従していることがわかる。
【0049】
本発明の形態および実施例の特徴を列記すると以下のとおりである。
【0050】
(付記1) ノッチフィルタを用いて制御対象に生じる共振を抑制する共振抑制装置であって,
前記制御対象の出力信号または前記制御対象に対する入力信号のいずれか一方を受信する信号受信手段と,
前記受信信号に対し前記ノッチフィルタの既設定の中心周波数の近傍の高周波数域側または低周波数域側の所定狭帯域に重み付けをする重み付け処理手段と,
前記重み付けした高周波数域側または低周波数域側の狭帯域のそれぞれの分散値を算出する分散値算出手段と,
前記高周波数域側の分散値と前記低周波数域側の分散値とを比較し,前記高周波数域側分散値が大きい場合には前記ノッチフィルタの中心周波数を高周波数域側へずらして設定し,または,前記低周波数域側分散値が大きい場合には前記ノッチフィルタの中心周波数を低周波数域側へずらして設定するパラメータ推定手段とを備える
ことを特徴とする共振抑制装置。
(付記2) 付記1記載の共振抑制装置において,
前記重み付け処理手段は,複数のノッチフィルタを備える場合に,隣接する前記ノッチフィルタの重み付けのパターンが,相互に異なるものとなるように重み付けを行う
ことを特徴とする共振抑制装置。
(付記3) 付記1記載の共振抑制装置において,
前記パラメータ推定手段は,前記ノッチフィルタの中心周波数を所定の単位周波数ずつ高周波数域側もしくは低周波数域側へずらして設定する
ことを特徴とする共振抑制装置。
(付記4) 付記1記載の共振抑制装置において,
前記パラメータ推定手段は,複数のノッチフィルタを備える場合に,前記ノッチフィルタの各々の中心周波数が所定の帯域間隔を保持するように設定する
ことを特徴とする共振抑制装置。
(付記5) 付記1記載の共振抑制装置において,
前記分散値算出手段は,前記ノッチフィルタの該当周波数帯域に共振と無関係の周波数のピークが存在する場合に,予め当該ピークの逆特性を設定した重み関数を用いて重み付けを行う
ことを特徴とする共振抑制装置。
(付記6) ノッチフィルタを用いて制御対象に生じる共振を抑制する共振抑制方法であって,
前記制御対象の出力信号または前記制御対象に対する入力信号のいずれか一方を受信する信号受信処理過程と,
前記受信した信号に対し前記ノッチフィルタの既設定の中心周波数の近傍の高周波数域側または低周波数域側の所定狭帯域に重み付けをする重み付け処理過程と,
前記重み付けした高周波数域側または低周波数域側の狭帯域のそれぞれの分散値を算出する分散値算出過程と,
前記高周波数域側の分散値と前記低周波数域側の分散値とを比較し,前記高周波数域側分散値が大きい場合には前記ノッチフィルタの中心周波数を高周波数域側へずらして設定し,または,前記低周波数域側分散値が大きい場合には前記ノッチフィルタの中心周波数を低周波数域側へずらして設定するパラメータ推定処理過程とを備える
ことを特徴とする共振抑制方法。
【0051】
(付記7) 付記6記載の共振抑制方法において,
前記重み付け処理過程では,前記高周波数域側の狭帯域もしくは前記低周波数域側の狭帯域に対する重み関数または重み付けの値が,一方が他方より大きくなるように重み付けを行う
ことを特徴とする共振抑制方法。
【0052】
(付記8) 付記6記載の共振抑制方法において,
前記パラメータ推定処理過程では,前記ノッチフィルタの中心周波数を所定の単位周波数ずつ高周波数域側もしくは低周波数域側へずらして設定する
ことを特徴とする共振抑制方法。
【0053】
(付記9) 付記6記載の共振抑制方法において,
前記パラメータ推定処理過程では,複数のノッチフィルタを備える場合に,前記ノッチフィルタの各々の中心周波数が所定の帯域間隔を保持するように設定する
ことを特徴とする共振抑制方法。
【0054】
(付記10) 付記6記載の共振抑制方法において,
前記分散値算出過程では,前記ノッチフィルタの該当周波数帯域に共振と無関係の周波数のピークが存在する場合に,予め当該ピークの逆特性を設定した重み関数を用いて重み付けを行う
ことを特徴とする共振抑制方法。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明では,共振を抑制するノッチフィルタの調整に外部のテスト信号を印加する必要がなく,通常のフォロイング制御中でもノッチフィルタの適応動作が実行できる。そのため,共振の非常に広範囲のばらつきや変動を予め考慮する必要なく,製品ごとに共振制御のためのノッチフィルタの高精度の調整を自律的に行うことができる。その結果として,アーム位置決め制御の精度の改善が可能になるだけでなく,製品ごとの手動によるファインチューニングを不要にすることができる。
【0056】
また,本発明の最小構成は,周波数重み関数として2次程度のフィルタを実装するだけでよく,コードサイズ的にも数十Wordで済むため(ただし,適応ノッチフィルタおよび重み関数のためのパラメータテーブルを除く),簡単に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理説明図である。
【図2】第1の実施の形態における重み関数の例を示す図である。
【図3】電流スペクトラムの例を示す図である。
【図4】第1の実施の形態における本発明の処理フローを示す図である。
【図5】第2の実施の形態における適応ノッチフィルタの適用失敗の状態例を示す図である。
【図6】第2の実施の形態における低周波数域側の共振点に対する適応ノッチフィルタ用の重み関数の例を示す図である。
【図7】第2の実施の形態における高周波数域側の共振点に対する適応ノッチフィルタ用の重み関数の例を示す図である。
【図8】第3の実施の形態における複数の適応ノッチフィルタの設定中心周波数の間隔の設定例を示す図である。
【図9】第4の実施の形態における信号のスペクトラムの逆特性を含ませた重み関数の例を示す図である。
【図10】実施例におけるプラント特性の経時変化の例を示す図である。
【図11】本発明を適用しない(固定ノッチフィルタ4.5kHzを適用した)場合の開ループ特性の変動の例を示す図である。
【図12】本発明を適用しない場合の初期状態(4.5kHz)での位置誤差パワースペクトラムの例を示す図である。
【図13】本発明を適用しない場合の最終状態(5.3kHz)での位置誤差パワースペクトラムの例を示す図である。
【図14】本発明を適用した場合の開ループ特性の変動の例を示す図である。
【図15】本発明を適用した場合の初期状態(4.5kHz)での位置誤差パワースペクトラムの例を示す図である。
【図16】本発明を適用した場合の最終状態(5.3kHz)での位置誤差パワースペクトラムの例を示す図である。
【図17】実施例における適応ノッチフィルタの設定中心周波数の推定結果の経時変化を示す図である。
【符号の説明】
1 共振パラメータ自動調整器
11 信号受信部
12,13 重み付け処理部
14,15 分散値算出部
16 パラメータ推定部
2 アクチュエータ
3 適応ノッチフィルタ
4 フィードバックコントローラ
5 位置誤差信号
6 指示電流信号

Claims (5)

  1. ノッチフィルタを用いて制御対象に生じる共振を抑制する共振抑制装置であって,
    前記制御対象の出力信号または前記制御対象に対する入力信号のいずれか一方を受信する信号受信手段と,
    前記受信信号に対し前記ノッチフィルタの既設定の中心周波数の近傍の高周波数域側または低周波数域側の所定狭帯域に重み付けをする重み付け処理手段と,
    前記重み付けした高周波数域側または低周波数域側の狭帯域のそれぞれの分散値を算出する分散値算出手段と,
    前記高周波数域側の分散値と前記低周波数域側の分散値とを比較し,前記高周波数域側分散値が大きい場合には前記ノッチフィルタの中心周波数を高周波数域側へずらして設定し,または,前記低周波数域側分散値が大きい場合には前記ノッチフィルタの中心周波数を低周波数域側へずらして設定するパラメータ推定手段とを備える
    ことを特徴とする共振抑制装置。
  2. 請求項1記載の共振抑制装置において,
    前記重み付け処理手段は,複数のノッチフィルタを備える場合に,隣接する前記ノッチフィルタの重み付けのパターンが,相互に異なるものとなるように重み付けを行う
    ことを特徴とする共振抑制装置。
  3. 請求項1記載の共振抑制装置において,
    前記パラメータ推定手段は,前記ノッチフィルタの中心周波数を所定の単位周波数ずつ高周波数域側もしくは低周波数域側へずらして設定する
    ことを特徴とする共振抑制装置。
  4. 請求項1記載の共振抑制装置において,
    前記パラメータ推定手段は,複数のノッチフィルタを備える場合に,前記ノッチフィルタの各々の中心周波数が所定の帯域間隔を保持するように設定する
    ことを特徴とする共振抑制装置。
  5. 請求項1記載の共振抑制装置において,
    前記分散値算出手段は,前記ノッチフィルタの該当周波数帯域に共振と無関係の周波数のピークが存在する場合に,予め当該ピークの逆特性を設定した重み関数を用いて重み付けを行う
    ことを特徴とする共振抑制装置。
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