JP4613273B2 - イネのトランスポゾン遺伝子 - Google Patents

イネのトランスポゾン遺伝子 Download PDF

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Description

この発明は、イネのトランスポゾン遺伝子に関し、より詳細には、イネのAc/Ds型トランスポゾン遺伝子及びその自律性因子に関する。
イネの転移活性のある内在性トランスポゾンを用いた遺伝子タギングには、レトロトランスポゾンであるTos17を用いて未知遺伝子の同定と機能解析のための大規模なトランスポゾンタギングが行なわれている(非特許文献1)。一方、転移活性のある内在性DNAトランスポゾンでは、Ping/Pong(特許文献1)やnDart/Dart(特許文献2)によるタギングが試みられている。
WO2003/040363 WO2005/003349 Plant Molecular Biology 54: 325-334, 2004
しかし、大規模なタギングが行われているTos17はタギング効率の約10倍以上にもなる培養変異が同時に起きることが問題であり、Ping/Pongの場合は未だ有益な未知遺伝子をタギング出来ないことが問題である。自然栽培条件下で転移を誘導できる唯一のnDart/Dartでもトランスポゾンによる挿入部位の選択性があるので全ての遺伝子タギングができない可能性があり、新たな遺伝子同定のために自然栽培条件下で転移活性のある新規の内在性トランスポゾンが求められている。
それゆえ、本発明は、遺伝子タギングに用いることのできる新たなイネの転移活性のある内在性トランスポゾンを提供する。
本発明者らは、本発明者らが単離し解析をおこなってきた黄色の葉に緑色の斑が入るイネの易変性変異体lgl-m(light green leaves-mutable)(以下「lgl-m変異体」又は単に「lgl-m」という。)を解析した。その結果、この変異の原因となっているのは、lgl遺伝子への、新規DNAトランスポゾン(nArdt)の挿入による遺伝子破壊であることを確認した。このlgl遺伝子はイネ8番染色体25.9 Mb周辺に座乗するPPRドメインをもつ遺伝子であった。本発明者らは、更に、このnArdtをQueryとしてイネ(Oryza sativa)の遺伝子データベースを検索と易変性を示す系統の解析(マップベースクローニング法)によって、その転移制御をおこなう自律性因子(Ardt)を同定した。本発明者らは、このlgl遺伝子がイネの葉緑素蓄積に重要な役割を果たし、nArdt/Ardt系トランスポゾンが遺伝子タギングに利用可能であることを確認した。
即ち、本発明は、配列番号1で表される塩基配列から成るDNAから成るイネの非自律性トランスポゾン遺伝子である。
また本発明は、配列番号2で表される塩基配列から成るDNAから成るイネの自律性トランスポゾン遺伝子である。
本発明のトランスポゾン(nArdt/Ardt)は易変性を示す突然変異体から、実験的に同定された転移活性を有する新規のDNAトランスポゾンであるので、遺伝子タギングに用いることができる。遺伝子タギングを行なう場所は、組換え生物を生育する特別な施設を必要せず、圃場で大規模に有用作物の選抜を行なうことができる。
また、タギング個体の解析には後述のnArdt系因子特異的なトランスポゾンディスプレイ法を用いることにより、原因遺伝子を容易に同定できる。
本発明のトランスポゾン(nArdt/Ardt)は、自然栽培条件下で転移するイネの内在性DNAトランスポゾンである。そのため選抜できた有用な性質を持つ突然変異体や遺伝子タギングを行なう集団は、組換え生物とならずに圃場で大規模に植物を育成させることができる。
また、従来技術で問題となっていた転移誘導時のカルス培養をする必要がないために、遺伝子破壊の原因を高めることができる。また、トランスポゾンは配列によって挿入しやすい配列があることから、本発明のトランスポゾンは、従来用いられてきたトランスポゾンではタギングできなかった新たな遺伝子を同定できる可能性が高い。
イネのゲノムプロジェクトの成果により、イネゲノムは多くのレトロトランスポゾンを構成要素としてもち、ゲノムの3%弱がDNAトランスポゾンであると報告されている(Nature vol. 436, 793-800, 2005)。しかし、多くのトランスポゾン様配列が実際にトランスポゾンであるか否かは、配列情報の解析からだけでは分ることは無く、実験的に検証する必要がある。さらにトランスポゾンであった場合もメチル化などによってその転移は抑制されていることが多いので、転移活性を有するトランスポゾンを配列だけから見つけることはできない。
本発明で同定されたトランスポゾンは下記のトランスポゾン遺伝子である。
(1)非自律性トランスポゾン遺伝子(nArdt)
nArdtは両末端に12bpの反復配列(TIR: Terminal Inverted Repeat)を有する。この12bpのTIR配列は11bpが相補的になっているため、両末端を閉じて立体構造をとることができる。そのために転移することができると考えられる。
さらにその内側に、5’側末端配列(TIR)に接して92bp、3’側末端配列(TIR)に接して31bpの副末端反復領域(サブターミナル領域)をもつ。
後述の解析(実施例4、表2)の結果、5’側のTIRでは、5’側末端の3bpが一致し、かつTIR全体として少なくとも9bpが一致し、3’側のTIRでは3’側末端の3bpが一致し、かつTIR全体として少なくとも9bpが一致している。
一方、サブターミナル領域(5’側92bp、3’側31bp)は、5’側は83%以上、3’側は81%以上相同である。
nArdtが属するAc/Dsファミリーのトランスポゾンは、末端反復配列と副末端反復領域が保存されていれば、共通の転移酵素であるトランスポゼースによって転移を誘導されることが報告されているので(Genetics 153: 1919-1928 (1999))、このような末端反復配列と副末端反復領域を有していれば、その内部構造に関係なく転移できるといえる。
(2)自律性トランスポゾン遺伝子(Ardt)
Ardtは、その両端(1〜111塩基、3446〜3488塩基)に、非自律性トランスポゾン遺伝子(nArdt)を2分割してもつ。即ち、Ardtは、5’側末端に、nArdtの5’側末端のTIR(1〜111塩基)をもち、3’側末端に、nArdtの3’側末端のTIR(3446〜3488塩基)をもつ。
更に、Ardtは、その中央部分(660〜3353塩基)にトランスポゼース酵素をコードする遺伝子(iArdt)をもつ。
Ardt内部にコードされているトランスポゼース酵素は、520塩基目から転写が始まり3444塩基目で転写が終了する。その転写産物は520塩基目から634塩基目までがイントロンとして取り除かれ、660〜662塩基のATGが開始メチオニンとして翻訳が始まり3351〜3353のTAGで翻訳が終了する。この間の配列(2694bp)は、1206〜1418塩基間がBEDドメイン(TIBS 25, 421-423 (2000))であり、3063〜3245塩基がhATドメイン(The Plant Cell, vol.12, 211-223 (2000))を有するトランスポゼース遺伝子である。
後述の解析(実施例4、表3)の結果、Ardtの5’側末端111塩基は、nArdtの5’側TIR(配列番号1の1〜104塩基)に相当し、85%以上相同である。3’側末端43塩基は、nArdtの3’側TIRに相当し、97%以上相同(1bp異なる)である。
また、トランスポゼース部分(660〜3353塩基)は99.9%以上相同であり、Ardt1-2(配列番号2)に対しBEDドメイン(660〜1418塩基、213bp)は全く同一、hATドメイン(3063〜3353塩基、183bp)は98.9%相同(2bp異なる)である。
トランスポゾンは細胞分裂が活発になる条件下の生育により、転移頻度が上昇することが知られている。そのため通常の生育条件で転移するトランスポゾン(自律又は非自律)の転移頻度をさらに上昇させるためには、植物をストレス環境下で生育させることが有効である。このストレス環境としては、DNAの脱メチル化を引き起こす薬剤や処理、紫外線・γ線などの各種放射線の照射、又は植物細胞を脱分化させたカルス培養等の人工培養系の利用などが挙げられる。この中で薬剤処理は操作が簡単であり転移も確実であるため好ましい。このようなDNAの脱メチル化を引き起こす薬剤としては、5−アザシチジン、5−アザデオキシシチジン、1-b-D-アラビノフラノシル-アザシチジン、デヒドロ-5-アザシチジン、ゼブラリン(2〔1H〕-primidinone riboside), ヒドララジンなどが挙げられる。
このような処理によりトランスポゾンの転移頻度を上昇させ、突然変異体の出現率を上げることによって効率的に望む変異体を得ることが可能である。
また、このトランスポゾンが導入されたプラスミドを用いて植物を形質転換することができる。プラスミドとして、Tiプラスミド、pBI121プラスミド等のバイナリーベクターを用いることができる。ここで用いることのできるプロモーターとしては、カリフラワーモザイクウィルスの 35Sプロモーター、熱ショックプロモーター、化学物質誘導性プロモーター等が挙げられる。またプロモータ及び上記遺伝子の結合方法に特に制限は無く、通常の遺伝子工学的手法に従って適宜行うことができる。
この宿主である植物としては、イネ、シロイヌナズナ、タバコ、トマト、ペチュニ ア、アブラナ、ワタ又はトウモロコシが好ましい。いずれも形質転換の方法が確立しており、研究、産業及び園芸上で重要な植物である。
以下、実施例にて本発明を例証するが、本発明を限定することを意図するものではない。
試験例1
本試験例では、日本晴から黄色葉突然変異体(lgl-m変異体)を分離した(図1)。このlgl-m変異体の葉は、細胞分裂の系譜によって、緑色の復帰細胞を持つ領域と黄色葉変異を持つ細胞が異なる。そのためDNAトランスポゾンの原因遺伝子からの脱離が易変性の原因と考えられた。
実施例1
本実施例では、試験例1で得たlgl-m変異体の斑入を引き起こすDNA型トランスポゾン遺伝子とlgl変異の原因遺伝子を同定することを目的として、以下のように日本型イネとインド型イネ間の塩基配列の違いを利用して遺伝子同定(マップベースクローニング法)を行った。
lgl-m変異体とインド型イネの"カサラス"を交雑して養成したF2集団を用いて、lgl変異体の表現型を示す個体を選抜して遺伝子同定に用いた。lgl表現型を示すF2の827個体をもちいて、lgl表現型とリンクする2つのマーカー(CH4775-1及びCH12203-1)を決めた。lgl遺伝子が座乗する領域は第8染色体の長腕の下部、約238 kbの範囲内であった(図2)。
この領域には機能未知であるが発現しているmRNAが報告されており(Genetics 153, 1919-1928 (1999))、その情報をもとに30個ほどの遺伝子が予想することができた。これら遺伝子について実験的に機能を解析された遺伝子はなかったが、lgl変異体はDNAトランスポゾンの挿入が原因となっていることが予想されたので、挿入配列の有無を調べた。その結果、Pentatricopeptide repeat ドメイン(配列番号3の709〜993塩基)を持つ遺伝子AK120052(配列番号3)をプライマー(PPR-F1: GAGGCTCGCCTTCCCGTCCT(配列番号4), PPR-R1: GTGACGGCGAGCGGGTAGAG(配列番号5))を用いてPCRで増幅したところ、lgl変異体では、野生型にはない挿入配列(配列番号1)があることを見つけた。この挿入配列は、末端にDNAトランスポゾンに特徴的な反復配列(末端反復配列)があった。配列番号1の5’側上流と3’側下流には、全く同じ8 bp(gcacagct)が存在していた。これまで報告されているAc/Dsファミリーに分類されるDNAトランスポゾンは、挿入時に8bpの標的配列とその重複を生じることが判明しており、上記の事象はそれと一致している。このことから、この挿入配列(配列番号1)は新規のDNAトランスポゾンである可能性が高いことが示された。この配列は561bpと短く、内部に転移酵素のORFをコードできない非自律性因子であり、後述のように通常は転移を確認できない日本晴で転移するように活性化されたと思われるのでnArdt1-0(nonautonomous Activated rice DNA transposon1-0)と命名した。
実施例2
本実施例では、nArdtがlgl-m変異体において実際に脱離をしている活性のあるトランスポゾンであるかどうかを検討した。
個体別にlgl-m変異体から抽出したDNAを用いて、挿入領域からnArdt脱離後に残されるフットプリントを解析した。Lgl遺伝子の第1エキソンを含んだ領域を増幅するプライマーPPR-F1(5'-GAGGCTCGCCTTCCCGTCCT-3'(配列番号6))とPPR-R1(5'-GTGACGGCGAGCGGGTAGAG-3'(配列番号7))を用いてPCRを行った。反応産物は、0.8% LOIIIアガロースゲル(Takara社)にて分画し、配列番号1のトランスポゾン遺伝子のサイズが欠損した時と同じサイズのPCR生産物が増幅されていることを確認し増幅産物の塩基配列を決定した。PCR産物をQIA quick PCR purification Kit(キアゲン社)を用いて精製し、シークエンサー(ABI PRISM3130、Applied Biosystem社)にて塩基配列を決定し各種のソフトウェアを用いて塩基配列の解析を行った。結果を表1に示す。
この表1において、lgl-wは野生型、lgl-mは黄色葉突然変異体、lgl-sxは易変性変異体のnArdt脱離型を示す。下線はnArdt挿入の標的重複配列を示す。このlgl-m変異体において、13種類(lgl-sx1〜13)のフットプリントによる塩基配列の変化が確認された。これはnArdtが実際に転移する因子であることを示している。
実施例3
本実施例ではnArdtのlgl遺伝子への挿入が突然変異の原因となっているかどうかを確認した。
nArdtの挿入とは別の変異原によって、lgl遺伝子が壊された系統あれば、lgl変異体と交配実験によってメンデルの法則に従って分離をするかどうかを調べることができる。発明者は、別のDNA型トランスポゾンであるnDartが転移しやすい系統を多数育種している。そこで同じような表現型を示している変異体を探索し、nDartがlgl遺伝子の別の場所に挿入した突然変異体lgl-m1-1を選抜した(nArdtが挿入した系統をlgl-m1-2と呼称する)。lgl-m1-1とlgl-m1-2の交雑実験をおこなった。この交配実験では、同じ遺伝子の欠損が原因である場合は、F1の個体の半分がlgl表現型を示し、違う遺伝子に原因であった場合は、lgl表現型を示す個体は分離しないことが予想される。その結果、後代の分離比を調べたところ、約半分の個体がlgl変異体であった。このことはlgl-m1-1変異体とlgl-m1-2変異体の原因遺伝子は対立遺伝子(アレリック)の関係にあることを示しており、同じ遺伝子の欠損が変異の原因となっていることを示している。この結果はnArdtの挿入がlgl変異の原因であることを示している。
実施例4
本実施例では、nArdtと同じ自律性因子によって転移させられる非自律性因子と自律性因子をデータベース(BLAST)によって検索した。検索はnArdtの配列(配列番号1)をQueryとした。BLAST解析からヒットした配列から28個のイネ塩基配列を同定した。
このうち23個(下表)はnArdtの一部に塩基置換もしくは欠失・挿入が生じているが、内部にORFを組むことができない非自律性因子であった。
これらの配列は共通した特徴を示す。
5’側のTIRでは、5’側末端の3bpが一致し、かつTIR全体として少なくとも9bpが一致している。表2で、92%,83%,75%と表示されているものはそれぞれ11bp,10bp,9bpが一致していることを示す。
3’側のTIRでは、同様に、3’側末端の3bpが一致し、かつTIR全体として少なくとも9bpが一致している。
一方、TIRの内側のサブターミナル領域(5’側92bp、3’側31bp)は、5’側は83%以上、3’側は81%以上相同である。
全体では、78.5%以上相同である。
一方、残りの5つは、nArdt系因子の特徴である5’側の104bpと3’側の43bpを有しているが内部構造が異なっている3488 bpの長い因子であった。その5つの内部の配列中で、翻訳開始コドン(ATG)・終始コドン(TGA)指標に最も長いORFを取ることが出来る配列を検索した。最も長いORFを持つmRNAは、完全長cDNAのデータベースに登録されていなっかったので、配列情報を元に実際に発現していることと、転写開始点及び転写終了点を5'及び3' Race法で決定した(特許文献2)。この最も長いORFをタンパク質のデータベースに対して検索を行ったところ、これまで報告されているトランスポゼースで保存されているドメインであるBED及びhATドメインを含んでいたので、トランスポゼースであることが判明した。このことによりこの5つの因子は自律性因子と考えられた。
下表にこの5個の自律性因子を示す。
Ardt1-2(配列番号2)の5'側末端111塩基は、nArdt(配列番号1)の5'側TIR(配列番号1の1〜104塩基)に相当し、85%以上相同である。nArdt(配列番号1)の5'側TIRと比較すると、Ardt1-2(配列番号2)の49番目の塩基(T)、79番目の塩基(T)、90〜94番目の塩基(AACAC)の合計7個の塩基挿入されている。3'側末端43塩基は、nArdt(配列番号1)の3'側TIRに相当し、97%以上相同(1bp異なる)である。
また、Ardt1-2(配列番号2)に対し、トランスポゼース部分(660〜3353塩基)は99.9%以上相同、BEDドメイン(660〜1418塩基、213bp)は全く同一、hATドメイン(3063〜3353塩基、183bp)は98.9%相同(2bp異なる)であった。
実施例5
本実施例は、自律性因子Ardt1-2(配列番号2)が非自律性因子nArdt1-0(配列番号1)を転移させていることを示す。
nArdt1-0は、非自律性因子であるので、その転移は自律性因子によってコントロールされている。自律性因子をヘテロに持つlgl変異体の自殖させて後代から出現する易変性示す個体の分離比を調べてみたところ、易変性示す個体と示さない個体のが3:1であったので、一因子が原因遺伝子である場合のメンデルの法則に従っていた。このことからlgl-m1-2系統でnArdtを転移させているのは、一因子のArdtであることが示された。データベースで検索されて5つのトランスポゼース全てが、lgl-m1-2系統でnArdtを転移させているわけではないので、活性な自律性因子aArdt (active Ardt)を明らかにするために、インド型カサラスと交配した後代を用いてマップベースクローニングを行った。その結果、1番染色体のマーカー(Theor. Appl Genet. (2000) 100, 697-712)RM6738とRM7419に囲まれた30 Mbの約191 kbの範囲内に存在していることを明らかにした。しかしながら、日本晴ゲノムの解析からこの領域内にnArdt関連因子が存在していないので、新規に挿入した因子がaArdtとなっている可能性が示唆された。



そこで開発したnArdt/Ardtの挿入領域を特定する手法の開発(トランスポゾンディスプレイ法)を行なった(Plant Biotechnol. 18, 143 (2001))。
トランスポゾンディスプレイ法は、(1)ゲノムを制限酵素で消化し、(2)消化したゲノムと任意のアダプターDNAをライゲーション反応によって連結し、PCRの鋳型としてPCR反応を行なう。そののち(3)トランスポゾンとアダプターDNA特異的なプライマーを用いてPCR反応を行ない、(4)電気泳動によって特異的なバンドパターンを検出する。
ここで、制限酵素TaqI、MseI、MspI、BfaI用のアダプター (adapter-top, 5'-GAGGATGAGTCCTGAG-3'(配列番号8); adapter-bottom (TaqI, MspI), 5'-CGCTCAGGACTCAT-3'(配列番号9); adapter-bottom (MseI, BfaI), 5'-TACTCAGGACTCAT-3'(配列番号10))を用いた。
1回目のPCR反応には、それぞれ制限酵素毎にアダプタープライマーとして、TaqIプライマー(5'-GAGGATGAGTCCTGAGCGA-3'(配列番号11)) 、MseI プライマー(5'- GAGGATGAGTCCTGAGTAA-3'(配列番号12))、MspIプライマー(5'- GAGGATGAGTCCTGAGCGG-3'(配列番号13))、BfaIプライマー(5'-GAGGATGAGTCCTGAGTAG-3'(配列番号14))とトランスポゾン毎にnArdt用プライマー(5'-GGGAATACCCRGGAATCATGG-3'(配列番号15))とArdt用プライマー(5'-CCTGGGAATACATAGGCATCACT-3'(配列番号16))を用いた。
2回目のPCR反応には、同じ制限酵素毎のアダプタープライマーとローダミンをラベルしたnArdt用プライマー(5'-CCCRGGAATCATGGTRGCTC-3'(配列番号17))とArdt用プライマー(5'-CATAGGCATCACTGTAGCTC-3'(配列番号18))を使用した。
lglm1-2変異体を解析した結果、この領域内にlgl-m1-2系統にだけ存在しているバンド因子を検出することができた(図3)。このバンドがマッピングの候補領域の中に存在しているnArdt系因子であるのならば、自律性因子であることが示唆される。この挿入配列を切り出して塩基配列の決定を行なったところ、nArdtに特徴的な5'側の配列の一部とその外側に隣接した配列であることが判明した。隣接して配列の日本晴ゲノム上の位置を明らかにしたところ、解析によって得られた配列はマッピングによって狭められて自律性因子が存在しているはずの候補領域の一部の配列と一致していた。しかしながら、日本晴ゲノムの情報にはこの位置にnArdt系因子が挿入していなかったので、lgl-m1-2系統にのみ、nArdt系因子が挿入している可能性が示唆される。そこでこの部分を増やすようにプライマー(AP003223-F:GAGGGAATTAGACCGGCTGGCCAAAAGCGT(配列番号19))と(AP003223-R: GCCACCCCCCGCGACTCGATCCAT(配列番号20))を設計してPCRを行ったところ、図4に示すように3.4 kbの 挿入配列がlgl-m1-2系のみに生じていることが判明した。塩基配列を決定したところ、この配列は、配列番号2と同一配列であった。これは、Ardt1-2(配列番号2)が、6番染色体から1番染色体に転移した活性のある自律性因子であることを示している。
実施例6
本実施例は、アザシチジン処理によりArdtの脱離を人為的に誘導できることを示す。
10 mMのアザシチジン水溶液に12時間イネ(台中65号及び日本晴)の種子をつけたのち播種した。発芽したイネの幼苗が第4葉になるまで生育させた後DNAを抽出してArdt1-2を挟むようにPCRをおこな脱離したあとのフットプリントを検出した。PCRに用いたプライマーは(5'-gtgcactatgcaatctcgagt-3'(配列番号21))と(5'-ggtgaagtcgacgacactct-3'(配列番号22))を用い、反応条件は実施例1に従った。PCRによってArdt1-2 が脱離したときに残されるフットプリンの塩基配列を決定したところ、複数種類が確認できた。結果を表4に示す。A10SVは上記処理された台中65号、A10NTは、上記処理された日本晴を示す。
A10SV4及びA10SV7(台中65号)とA10NT12及びA10NT16(日本晴)では、Ardt1-2が脱離した場合に増幅されると予想される小さいサイズのバンドが検出された。そのバンドの塩基配列を決定したところ、フットプリントが残されていたことから安定な系統でもnArdt系因子の脱離を誘導できることが示された。
通常は転移を確認できない日本晴系統をアザシチジン処理することによって、自律性因子(Ardt)の脱離が確認された。
日本晴(イネ)の黄色葉突然変異体(lgl-m)を示す図である。緑色の葉の一部が黄変している。 黄色葉突然変異体(lgl-m)の8番染色体上のトランスポゾン(nArdt)の挿入位置を示す図である。 カサラスF2集団中の活性自律性因子(Ardt1-2)の検出を示す電気泳動図である。カサラスF2のLgl-m個体に共通して存在し、カサラスや日本晴れには存在しないバンドが検出された。 カサラスF2集団中の活性自律性因子(Ardt1-2)の検出を示す電気泳動図である。3.4Kbのバンドは活性自律性因子(Ardt1-2)に相当する。

Claims (5)

  1. 配列番号1で表される塩基配列から成るDNAから成るイネの非自律性トランスポゾン遺伝子。
  2. 配列番号2で表される塩基配列から成るDNAから成るイネの自律性トランスポゾン遺伝子。
  3. 請求項1又は2に記載の遺伝子が導入された形質転換体であって、宿主がシロイヌナズナ、タバコ、トマト、ペチュニア、アブラナ、ワタ又はトウモロコシである形質転換体
  4. 請求項に記載の形質転換体を薬剤で処理することにより請求項1又は2に記載のトランスポゾン遺伝子を転移させる方法。
  5. 前記薬剤が5−アザシチジンである請求項に記載の方法。
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