以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態にかかる液体保存用容器が用いられて液体分注処理が行われる液体分注装置100の全体構成を示す模式斜視図を図1に示す。本第1実施形態の液体分注装置100は、複数のウェルが形成された実験用容器(アッセイプレート)の一例であるマイクロタイタープレート(以降、マイクロプレート容器とする)に、有機溶媒(例えば、DMSO(ジメチルスルオキシド)に化合物を溶解させたもの)である液体を分注する装置である。より具体的には、創薬プロセスのスクリーニングにおけるアッセイ系にて使用される試料や検体が溶解された有機溶媒である液体を、微小微量化された所定量だけマイクロプレート容器のウェル内に分注する装置である。
図1に示すように、液体分注装置100は、上記液体が互いに独立して収容される凹部である複数のリザーバ11を有する大略プレート状の液体保存用容器の一例であるリザーバ容器1が載置されるリザーバ容器載置部3(液体保存用容器保持部の一例である)と、このリザーバ容器載置部3の下方に配置され、リザーバ容器1内に収容されている液体が供給される凹部である複数のウェル21を有する大略プレート状のマイクロプレート容器2が保持されるマイクロプレート容器保持部4(実験用容器保持部の一例である)と、このリザーバ容器1の1個のリザーバに対して、マイクロプレート容器2の1個のウェル21との図示上下方向における位置決めを可能に、マイクロプレート容器保持部4を図示水平方向(すなわち、図示X軸方向又はY軸方向)に移動させる容器保持部移動装置5と、リザーバ容器載置部3の上方に配置され、リザーバ容器1のそれぞれのリザーバ11内に収容されている液体を、マイクロプレート容器2のそれぞれのウェル21内に供給するための加圧を行う(その具体的な手法については後述する)加圧装置の一例である加圧ヘッド6と、この加圧ヘッド6を図示X軸方向又はY軸方向に移動させるヘッド移動装置7(位置決め装置の一例である)とを備えている。さらに、液体分注装置100には、図1に示すように、それぞれの構成装置の動作制御を互いに関連付けながら統括的に行う制御装置9が備えられている。
まず、リザーバ容器1の構成について詳細に説明を行う。当該説明にあたって、図2(A)及び(B)にリザーバ容器1の上面側の模式斜視図を示し、図3(A)及び(B)に下面側の模式斜視図を示し、図4(A)及び(B)に模式断面図を示す。なお、図2(A)、図3(A)、及び図4(A)のそれぞれは、対応する図である図2(B)、図3(B)、及び図4(B)に示すリザーバ容器1が備えるそれぞれの構成を部分的に分解した状態を示す模式図となっている。
図2から図4に示すように、リザーバ容器1は、その内側に液体を収容可能な互いに独立した収容空間を形成する複数の凹部であるリザーバ11が、例えば、複数行×複数列、本第1実施形態の図示の例では4行×6列の合計24個、その上面に形成された大略プレート状の形態を有している。それぞれのリザーバ11においては、その上面が開口部として形成されており、この開口部を通して注入された液体を、その底面及び内周側面にて囲まれた収容空間にて保持することが可能となっている。また、リザーバ11の底面中央部分には、その底面を貫通するように形成された貫通孔である吐出用流路12が形成されている。この吐出用流路12は、微小な孔径にて形成されており、リザーバ11内に収容された液体が、大気圧下においては吐出用流路12を通過することなく、所定以上の大きさの圧力が収容されている液面に対して付加された場合に液体を通過させて、リザーバ11の下方へと当該液体を吐出させることが可能に形成されている。
ここで、リザーバ容器1におけるリザーバ11の構成を示す模式拡大断面図を図5に示す。なお、図5に示すリザーバ11においては、液体8が収容された状態にある。図5に示すように、リザーバ11は、液体8を収容した状態において、開口部11aと液面8aとの間に必ず圧力付加用空間Sが形成されるように構成されている。このような構成を言い換えると、リザーバ11は、液体8を収容する液体収容用凹部13と、この凹部13の上部に配置され、液面8aの上方に圧力付加用空間Sを形成する環状の空間形成用枠部14とを備えて構成されており、図5に示すリザーバ11においては、液体収容用凹部13と空間形成用枠部14とが互いに一体的な部材として形成されている。なお、リザーバ11においては、収容されている液体8が吐出用流路12を通して吐出されることにより、液体8の収容量が減少することとなるが、このような場合にあっては、圧力付加用空間Sが拡大される、すなわち、空間形成用枠部14の占める部分が拡大され、液体収容用凹部13の占める部分が縮小されることとなる。従って、リザーバ11において、空間形成用枠部14と液体収容用凹部13との境界部分は、収容される液体8の量に応じて変わるものである。
また、吐出用流路12は、リザーバ11の液体収容用凹部13の底部中央部分に形成されている。このような吐出用流路12は、例えばオリフィスとしての機能を有するように形成されており、リザーバ11の液面8a上に形成された圧力付加用空間Sが大気圧下程度の圧力、あるいはそれ以下の圧力であるような場合、すなわち、大気圧下において圧力付加用空間Sに圧力が付加されていないような状態においては、収容されている液体8を通過させず、液体8の保持を行うことができるように形成されている。一方、圧力付加用空間Sに圧力が付加された場合には、収容されている液体8が吐出用流路12を通過してリザーバ11より吐出するように、吐出用流路12のオリフィスとしての機能が設定されている。このような吐出用流路12の孔径としては、例えば、φ0.5mm〜φ0.001mm程度に形成される。ただし、孔径はこのような場合についてのみ限定されるものではなく、大気圧下で液体を保持でき、加圧下で液体を吐出させるような機能を実現できるような孔径(あるいは流路長さも考慮して)に設定されればよい。
また、それぞれのリザーバ11における吐出用流路12は、設定された孔径や形状となるように高精度に形成されることが好ましい。例えば、図4(A)及び(B)に示すように、リザーバ容器1を、それぞれのリザーバ11に相当する部分を貫通孔として形成された本体部1aと、この本体部1aの底に接合されて上記それぞれの貫通孔の底部となって凹状のリザーバ11を構成する底板1bとにより構成させるとともに、シリコン基材等を用いてこの底板1bを形成して、底板1bに対してエッチング加工を施すことによりそれぞれの吐出用流路12を高精度に形成することができる。なお、このようなリザーバ容器1の形成材料としては、様々な材料を適用することができ、例えば、シリコン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、及びポリエチレンというような材料を用いることができる。
また、図2(A)及び(B)、並びに図4(A)及び(B)に示すように、リザーバ容器1の上面には、それぞれのリザーバ11の開口部11aを覆うように配置された保護シート15が備えられている。この保護シート15は、例えば、柔軟でありかつリザーバ容器1の上面に剥離可能に密着するように樹脂材料等により形成されている。ただし、このような場合のみに限定されるものではなく、プレート状の部材が用いられるような場合であってもよい。保護シート15は、それぞれのリザーバ11の開口部11aを覆うことで、その内部に収容されている液体に異物が混入することを防止し、リザーバ容器1における液体の保護機能を担う役目を果たすものである。
また、図3(A)及び(B)、並びに図4(A)及び(B)に示すように、リザーバ容器1に下面には、当該下面全体を覆うプレート状の部材である液体落下防止プレート16が脱着可能に装備されるようになっている。このプレート16は、液体が収容された状態のリザーバ容器1を運搬あるいは保管しておくような場合において、万が一吐出用流路12を通して収容されている液体が落下するような事態が生じても、当該液体の落下を防止する機能を有している。なお、図4(A)及び(B)に示すように、プレート16は、リザーバ容器1の底板1bに接触することなく、間隙を介して装備可能とされている。具体的には、本体部1aの下部周囲に形成された枠部1cの内側にプレート16の外周端部16aがはめ込まれることで、プレート16が装備されるように構成されている。このように底板1bに接触することなくプレート16が装備されることで、液体の落下が生じない限り、プレート16の表面に液体が付着することを防止することができる。このようなリザーバ容器1は、いわゆる従来のドータープレートに相当する機能を有している。すなわち、リザーバ容器1は、化合物を溶解した有機溶媒である液体を保管するための容器としての機能(収容される液体の保存機能)を有しており、従来のドータープレートと同様に取り扱うことが可能となっている。また、このような液体の保存機能に加えて、リザーバ容器1は、収容されている液体の吐出機能をもさらに備えており、このような機能をも併せ持つという観点からは、従来のドータープレートとは全く異なるものであると言うことができる。
次に、マイクロプレート容器2の模式斜視図を図6に示す。図6に示すように、マイクロプレート容器2は、その内側に液体を収容可能な互いに独立した収容空間を形成する複数の凹部であるウェル21が、例えば、複数行×複数列、本第1実施形態の図示の例では8行×12列の合計96個、その上面に形成された大略プレート状の形態を有している。それぞれのウェル21においては、その上面が開口部として形成されており、この開口部を通して注入、すなわち分注された液体を、その底面及び内周側面にて囲まれた収容空間にて保持することが可能となっている。なお、このようなマイクロプレート容器2は、収容される液体により耐性を有する材料により形成されることが好ましく、例えば樹脂材料により形成される。また、このマイクロプレート容器2の各ウェル21内に収容された液体に対して、スクリーニング、例えばHTSによるスクリーニングが実施され、候補物質等の探索が行われる。
次に、加圧ヘッド6の構成について、図7及び図8に示す模式説明図(断面図)を用いて説明する。なお、図7は、リザーバ容器1のリザーバ11に収容されている液体8が、マイクロプレート容器2のウェル21内に、加圧ヘッド6により分注される前の状態を示す模式部分断面図であり、図8は、液体8の分注が行われている状態を示す模式部分断面図である。この加圧ヘッド6は、リザーバ11内の圧力付加用空間Sに対して所定の圧力を付加することで、このリザーバ11内に収容されている液体8を、吐出用流路12を通じて吐出させて、その下方に位置決めされて配置されているウェル21内に当該吐出された液体を分注させるような加圧機能を有する装置である。
まず、図7に示すように、加圧ヘッド6は、リザーバ11の圧力付加用空間S内に圧力付加用通路を配置することで、当該圧力付加用通路を通じて圧力を付加可能とするヘッド本体部30と、図示しない圧力供給源より圧力供給管40を通じて伝達される圧力を、ヘッド本体部30にその大きさを制御しながら遮断可能に伝達するバルブユニット35により構成されている。
バルブユニット35は、いわゆるプランジャー型ソレノイドバルブとしての機能を有するように構成されており、その一端に圧力供給管40が接続されて伝達された圧力が常時供給された状態とされ、その他端がヘッド本体部30に圧力を伝達可能に連通されて接続されたる圧力供給ポート42と、圧力供給ポート42の上記他端の連通を開放可能に遮断する弁座32と、この弁座32がその端部に固定されるとともに、図示上下方向に移動可能にポート42内に配置され、磁性体により形成されたプランジャー33と、ポート42内に配置されたプランジャー33の周囲に配置され、電力が印加されることで、プランジャー33を図示上方へ移動させるような磁界を発生させるコイル34と、ポート42内においてプランジャー33を常時下方に付勢して弁座32を常時閉止状態とさせるバネ部41とを備えている。
ヘッド本体部30は、ポート42と連通されるとともに、弁座32によりその連通部分が開放可能に閉止されるように形成された通路であるノズル部31と、ノズル部31の下端と連通されて形成されるとともに、ヘッド本体部30の下面より所定の長さだけ突出するように配置された中空ピン部材(すなわち、その軸心方向に貫通孔が形成されたピン部材)である圧力付加ピン37とを備えている。このように、加圧ヘッド6において、バルブユニット35とヘッド本体部30とが備えられていることにより、圧力供給管40を通してポート42内に伝達された圧力が、コイル34に電力が印加されてプランジャー33がバネ部41の付勢力に抗して上昇されて弁座32が開放状態とされることで、ノズル部31内に伝達され、さらに圧力付加ピン37を通してその先端部より伝達(すなわち圧力伝達)させることが可能となっている。また、コイル34への電力の印加を停止することで、バネ部41の付勢力によりプランジャー33を下降させて、弁座32を閉止状態とさせ、圧力付加ピン37よりの圧力伝達を停止させることができる。
また、図7に示すように、このような圧力伝達を行う際に伝達される圧力の大きさを確実に制御するために、ヘッド本体部30のノズル部31内の圧力を検出する圧力検出部の一例である圧力センサ39が備えられている。この圧力センサ39により検出された圧力情報は、例えば制御装置9に入力され、制御装置9において、伝達される圧力の大きさを制御するようにコイル34への電力の印加時間等の制御が行われるようになっている。また、図8に示すように、ヘッド本体部30の下面には、弾性材料により環状に形成された当接部38が配置されている。この当接部38は、加圧ヘッド6が下降されて圧力付加ピン37の先端がリザーバ11内の圧力付加用空間S内に位置された状態において、このリザーバ11の略円形状の開口部11aの周囲の同じく環状の被当接部(あるいは被当接領域)11bと当接されるように形成されている。言い換えれば、加圧ヘッド6の当接部38が、リザーバ11の被当接部11bと当接状態とされることで、圧力付加ピン37の先端が圧力付加用空間S内に位置されるようになっている。なお、図8に示すように、この圧力付加用ピン37は、その先端が圧力付加用空間S内に位置された状態において、収容されている液体8に接触することが無いように、その先端の突出長さが設定されている。また、リザーバ容器1の上面に配置された保護シート15を貫通させ易いように、圧力付加ピン37の先端部は鋭端形状に形成されている。なお、このような構成の加圧ヘッド6においては、コイル34によるプランジャー33の移動を用いたバルブの開閉速度を、例えば0〜2Hzとし、圧力源を0.5MPa前後として設定される。なお、このようなそれぞれの設定値は、このような一例としての設定に限定されるものではなく、様々な設定値を採用することができる。
また、図1に示すように、液体分注装置100においては、このような構成の加圧ヘッド6を支持しながら昇降させる昇降装置18が備えられており、この昇降装置18はヘッド移動装置7により図示X軸方向又はY軸方向に移動可能に支持されている。なお、ヘッド移動装置7は、図示X軸方向において加圧ヘッド6を進退移動させるX軸ロボット7aと、このX軸ロボット7aをその両端部において支持しながら図示Y軸方向における進退移動を行うY軸ロボット7bにより構成されている。
ここで、加圧ヘッド6により圧力伝達を行うための主要な圧力供給系統を図9に示す模式系統図に示す。図9に示すように、液体分注装置100には、圧力供給源として例えば窒素ガス(N2)のような不活性ガスを所定の圧力にて加圧状態にて供給可能とする圧力源43と、真空供給源として減圧雰囲気を伝達可能な真空源44とが備えられている。これらの圧力源43と真空源44とは切り替えバルブ46を用いて選択されることで加圧ヘッド6へそれぞれの圧力を、圧力供給管40を通して伝達させることが可能とされている。なお、この切り替えバルブ46は、制御装置9により制御され、通常の圧力伝達の際には圧力源43が選択させて、加圧された窒素ガスの供給が行われるが、加圧ヘッド6において、圧力伝達経路に詰まり等が発生してその清掃を行う必要があるような場合には、真空源44が選択することが可能とされている。さらに、制御装置9は圧力センサ39により検出された圧力情報に基づいて、パルス発生部45を通じてコイル34へ印加する電圧の印加時間あるいは印加量を制御することで、加圧ヘッド6より付加される圧力の大きさ及び圧力付加時間を制御することが可能となっている。
また、図1に示すように、リザーバ容器載置部3は、載置されたリザーバ容器1の載置位置を解除可能に固定する機能を有している。このような固定機能を有する構成としては様々な構成を採用することができ、例えばリザーバ容器1の外周側面と係合される係合部が備えられ、両者の係合によりその載置位置の固定を行うようにすることができる。また、リザーバ容器載置部3は、リザーバ容器1の底面全体が開放されるようにリザーバ容器1を載置させることが可能とされている。すなわち、リザーバ容器1は、その下方に配置されるマイクロプレート容器2に対して、収容されている液体の分注を行う容器であるため、両者の間には遮断するような部材が配置されないように、リザーバ容器1の載置が行われる。具体的には、リザーバ容器載置部3において、載置された状態のリザーバ容器1のそれぞれのリザーバ11に対応する下方領域には、吐出された液滴の落下が阻害されないように開口部が設けられている。
また、図1に示すように、マイクロプレート容器保持部4は、その上面に載置されたマイクロプレート容器2の載置位置を解除可能に固定する機能を有しており、さらにこのマイクロプレート容器保持部4は容器保持部移動装置5上に設置されて、図示X軸方向及びY軸方向に移動させることが可能となっている。なお、マイクロプレート容器保持部4は、容器保持部移動装置5によりそのXY移動が行われて、リザーバ容器載置部3に載置された状態のリザーバ容器1との位置合わせが行われた状態で、マイクロプレート容器2の上面がこのリザーバ容器1の下面に接触しない程度に近接させた状態でマイクロプレート容器2を載置させるように、その載置高さが設定されていることが好ましい。このように設定することで、リザーバ11より吐出される液体を最短距離でウェル21内に分注させることが可能となる。
このように液体分注装置100において、ヘッド移動装置7、リザーバ容器載置部3、及び容器保持部移動装置5が備えられていることにより、所望のリザーバ11の下方に所望のウェル21を配置させて位置決めするとともに、このリザーバ11の上方に加圧ヘッド6を配置させて位置決めすることが可能となっている。
次に、本第1実施形態の液体分注装置100において、リザーバ容器1のリザーバ11内に収容保管された液体を、マイクロプレート容器2のウェル21内に所定の量だけ分注する液体分注処理方法について、図10に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、当該説明において、液体分注装置100におけるそれぞれの構成装置の動作は、制御装置9により互いの動作が関連付けられながら統括的に制御される。
まず、図10のフローチャートにおけるステップS1において、それぞれのリザーバ11内に液体が収容された状態のリザーバ容器1が、リザーバ容器載置部3に載置されるとともに、その載置位置が固定される。上述したようにリザーバ容器1は、その上面に保護シート15が配置されているとともに、その下面には液体落下防止プレート16が配置された状態とされている。そのため、当該載置の後、リザーバ容器1より液体落下防止プレート16が取り外される。なお、このプレート16の取り外しは、当該載置よりも前に行われるような場合であってもよいが、確実に液体の落下を防止するという観点からは、載置後に取り外しが行われることが好ましい。また、それとともに、マイクロプレート容器2をマイクロプレート容器保持部4により保持させる。
次に、ステップS2において、制御装置9において、リザーバ容器1における一個のリザーバ11と、マイクロプレート容器2における一個のウェル21とが選択される。この選択にあたっては、例えば、後述する手段等によって制御装置9に入力されているそれぞれの容器のID情報(識別情報)に関連付けられた分注処理情報、すなわち、どのリザーバ11に収容されている液体を、どのウェル21にどれだけ分注させるかという情報に基づいて、その選択動作が行われる。
制御装置9において、リザーバ11及びウェル21の選択が行われると、ステップS3において、選択された一個のリザーバ11とウェル21との位置決めが行われる。具体的には、リザーバ容器載置部3によりその載置位置が固定された状態のリザーバ容器1に対して、マイクロプレート容器保持部4により保持された状態のマイクロプレート容器2を、容器保持部移動装置5により図示X軸方向又はY軸方向に移動させて、リザーバ11とウェル21との水平方向における位置決めが行われる。この位置決めとともに、ヘッド移動装置7により加圧ヘッド6を図示X軸方向又はY軸方向に移動させて、上記選択されたリザーバ11の上方に加圧ヘッド6が位置されるように両者の位置決めが行われる。なお、この加圧ヘッド6が移動される際には、圧力付加ピン37がリザーバ容器1と接触することがないような昇降高さ位置に、加圧ヘッド6が位置された状態とされる。
なお、このような位置決めが行われる際には、例えば、加圧ヘッド6にリザーバ容器1の載置位置をその画像を撮像することにより認識する認識装置(例えば撮像カメラ)を備えさせて、このような認識装置により認識処理を行った上で、載置位置の位置ズレ量等を考慮しながら、加圧ヘッド6とリザーバ11との位置決めを高精度行うことができる。同様に、マイクロプレート容器2の保持位置を画像撮像により認識処理する認識装置を備えさせて、この認識装置による認識結果に基づいて、リザーバ11とウェル21との位置決めを行うことで、高精度な位置決めを行うことが可能となる。
このように位置決めされた状態が、図7の模式説明図に示すような状態である。なお、図7に示すように、圧力付加ピン37の先端部は、リザーバ11よりも上方に離間されて位置された状態であり、圧力付加ピン37の軸心と、リザーバ11の中心と、ウェル21の中心とが、上下方向に一列に配置されるように、上記それぞれの位置決めが行われることが好ましい。
次に、ステップS4において、昇降装置18により加圧ヘッド6の下降が開始される。加圧ヘッド6の下降が開始されると、まず圧力付加ピン37の先端部がリザーバ11の開口部11aを覆っている保護シート15の表面と接触し、その後さらに下降されることにより、当該先端部が保護シート15を貫通してリザーバ11内の圧力付加用空間S内に位置される。一方、ヘッド本体部30の下面に設置されている当接部38がリザーバ11の開口部11aの周囲における被当接部11bと当接されることにより、圧力付加ピン37の下降位置が規制され、昇降装置18による加圧ヘッド6の下降が停止される(ステップS5)。このように下降が停止された状態が、図8の模式説明図に示すような状態である。図8に示すように、当接部38が被当接部11bに当接されることにより圧力付加ピン37の下降位置が規定されているため、その先端部が圧力付加用空間S内に確実に位置されているものの、収容されている液体8の液面8aより離間された位置に配置された状態とされている。なお、このような状態においては、加圧ヘッド6のバルブユニット35において、圧力供給ポート42の出口が弁座32により閉止された状態とされているため、圧力付加ピン37を通じての圧力付加は開始されていない状態である。
その後、ステップS6において、加圧ヘッド6の圧力付加ピン37を通して、圧力付加用空間S内への圧力付加が行われる。具体的には、加圧ヘッド6において、コイル34への電力の印加が開始され、これに伴ってプランジャー33が上昇されて弁座32が開放状態とされる。これにより、圧力供給管40、圧力供給ポート42、ノズル部31、及び圧力付加ピン37による一連の圧力付加通路が圧力付加用空間Sに連通された状態とされ、所定圧力に加圧された窒素ガスが圧力付加用空間S内に供給される。
これにより圧力付加用空間S内の圧力が上昇され、この上昇された圧力が収容されている液体8の液面8aに作用して、リザーバ11における吐出用流路12を通してリザーバ容器11の下方へ液体8の一部が例えば液滴として吐出される。このように吐出された液体(液滴)は、図8に示すように、リザーバ11の下方に位置決めされているウェル21内に落下して供給、すなわち分注されることとなる。
この液体分注のための圧力付加が行われる際には、加圧ヘッド6の圧力センサ39により、ノズル部31内の圧力、すなわち、上記一連の圧力付加通路内における圧力が検出され、その検出情報が制御装置9に入力される。制御装置9においては、上記分注処理情報に含まれる付加すべき圧力値とその圧力付加時間に基づいて、弁座32の開度及びその開放時間の制御を行うため、所定量の液体8が吐出用流路12を通して吐出されたウェル21内に分注される。また、加圧ヘッド6の下面に設置されている環状の当接部38がリザーバ11の開口部11aの周囲の被当接部11bと当接された状態にあるため、圧力付加用空間Sがヘッド本体部30の下面と環状の当接部38により囲まれた状態とさせることができるため、例えば保護シート15と開口部11aとの間に隙間が存在するような場合であっても、圧力付加用空間Sをより気密な状態とさせることができる。このようにより気密な状態とさせることで、付加する圧力値と吐出用流路12を通して吐出される液体量との相関性を高めることができ、吐出量の制御をより高精度に行うことができる。
その後、所定量の液体の分注が完了したものと判断されると、コイル34への電力印加が停止されて弁座32が閉止状態とされる。これにより上記一連の圧力付加通路が閉止された状態とされ、圧力付加ピン37を通じての圧力付加用空間Sへの圧力付加が停止される。
その後、ステップS7において、昇降装置18により加圧ヘッド6の上昇が開始され、当接部38と被当接部11bとの当接状態が解除されるとともに、圧力付加用空間S内にその先端部が配置された状態にあった圧力付加ピン37がリザーバ11の上方へと上昇される。圧力付加ピン37の先端部がリザーバ容器1より離間された昇降高さ位置に達すると、加圧ヘッド6の上昇が停止される。
次に、ステップS8において、制御装置9にて上記分注処理情報に基づいて、次に分注処理を行うべきウェル21がマイクロプレート容器2内に存在するかどうかの判断が行われる。分注処理を行うべきウェル21が存在すると判断された場合には、ステップS2において、当該ウェル21とこのウェル21内に分注すべき液体が収容されているリザーバ11が選択され、ステップS3において両者の位置決めが行われる。その後、ステップS4からS7まで同様な手順により分注処理が行われる。なお、新たに選択されたウェル21に分注されるべき液体が、他のリザーバ容器1に収容されているような場合にあっては、リザーバ容器載置部3に載置されているリザーバ容器1の交換が行われる。
一方、ステップS8において、次に分注処理を行うべきウェル21が存在しないと判断された場合には、ステップS9において、リザーバ容器載置部3からリザーバ容器1が搬出されるとともに、マイクロプレート容器保持部4から分注処理が行われたマイクロプレート2が搬出されて、分注処理が完了する。なお、リザーバ容器1のリザーバ11において収容されている液体が残存しているような場合にあっては、液体の落下を防止すべく、液体落下防止プレート16を取り付けた状態にてその搬出が行われることが好ましい。
このような分注方法によれば、加圧ヘッド6において、リザーバ11内の圧力付加用空間S内に配置される圧力付加ピン37は、収容されている液体8に対して非接触な状態が保たれ、さらにこの圧力付加ピン37の先端部より圧力が付加されることでもって、吐出用流路12を通しての液体の分注を行うことができるため、完全非接触の液体分注を効率的に行うことが可能となる。特に、従来の超音波方式において必要である液面サーチ等の付随的な処理を行う必要もなく、効率的な分注処理を実現することができる。
さらに、それぞれのリザーバ11において、吐出用流路12は、大気圧下では、収容されている液体を通過させることなくその収容状態を保持することができ、圧力付加用空間Sに所定以上の圧力が付加されると、液体の通過を許可して、液体を吐出させることができるような孔径にて形成されているため、付加される圧力値及び圧力付加時間を制御することで、高精度かつ微量分注に対応可能な液体分注を実現することができる。例えばこのような圧力値や圧力付加時間を制御することで、吐出用流路12を通して吐出される液滴の大きさや間欠的に吐出される液滴の個数を制御して、このような液体分注を行うことができる。特に、圧力値や圧力付加時間を制御することで、幅広い範囲の分注量に対応することも可能となる。例えば、本第1実施形態の分注方式では、吐出される液体一滴あたり10nl〜100nlの範囲の吐出量に対応することができ、さらに吐出される液滴数を可変させることで、10nl〜2000nlの範囲の分注量に対応することが可能となり、実用に際して有効な分注装置を提供することができる。
さらに、それぞれのリザーバ11において、少なくとも底部の吐出用流路12を塞ぐ程度の液体8が残存していれば、圧力付加用空間Sに圧力付加を行うことで、液体の吐出分注を行うことができるため、高価な化合物である液体を無駄にすることもないという効果を得ることもできる。なお、例えば、リザーバ11の凹状底面に、吐出用流路12へと向かうような下降勾配を設けることで、液体の利用効率をさらに向上させることができる。
また、加圧ヘッド6により圧力付加のために供給されるガスとしては、例えば窒素ガスであるような場合について説明したが、このような場合に代えて、ヘリウム(He)ガスを用いることもできる。特にこのような不活性ガスを用いることで、収容されている液体に対してその保存状態に影響を与えにくいという効果を得ることができるが、このような観点からは、含有される水分量が少ないドライガスが用いられることも好ましい。
さらに、このリザーバ容器1は、圧力付加用空間S内に圧力が付加されない状態においては、液体保存用容器として用いることができる。すなわち、様々な種類の液体が収容されて保存されている容器(リザーバ容器1)を用いて、そこの収容されている液体に対して完全に非接触で微量分注を実現することが、本第1実施形態の液体分注装置100によれば可能となる。もちろん、一度分注処理に用いられたリザーバ容器1を装置から搬出して、そのまま残存している液体をリザーバ容器1にて保存し、再び分注処理にて用いるようなことも可能となる。
次に、本第1実施形態の液体分注装置100における情報の入出力に関する構成について以下に説明する。当該説明にあたって、液体分注装置100における情報の入出力に関する構成の制御ブロック図を図11に示す。
まず、このような情報入出力制御としては、例えば、リザーバ容器1やマイクロプレート容器2についての固有の識別情報の一例である容器ID情報を、それぞれの容器に設けられたICタグを読み取ることで取得し、この容器ID情報に基づいて取得された分注処理情報を用いて液体分注処理を実施し、さらにその実施結果を容器のICタグに記録するなどして、出力を行うという情報の取り扱いが実施可能とされている。
具体的には、ライブラリ情報Aと、分注処理情報Bと、容器ID情報Cとの大きく3種類の情報が取り扱われる。まず、「ライブラリ情報A」とは、リザーバ容器1の個々のリザーバ11に収容保管されている液体の情報であり、例えば、どのリザーバ容器1のどのリザーバ11にどのような仕様の液体が収容されているのかという情報である。次に、「分注処理情報B」とは、マイクロプレート容器2の個々のウェル21内に分注させる液体の種類と分注量の情報であり、実験計画やスクリーニング処理計画等に基づいて作成される情報である。なお、このようなライブラリ情報Aと分注処理情報Bとが、収容される液体の種類を含む容器情報の一例となっている。そして、「容器ID情報C」とは、実際に液体分注装置100に搬入されて取り扱われるリザーバ容器1やマイクロプレート容器2に設けられているICタグより読み取られる容器を他の容器から識別するための固有の識別情報である。また、このような容器ID情報Cは、図2(A)及び(B)に示すように、リザーバ容器1の側面に設けられた容器情報記録部の一例であるICタグ19や、図6に示すように、マイクロプレート容器2の側面に設けられたICタグ29において、読み取り可能に記録されている。さらに、ライブラリ情報A及び分注処理情報Bは、例えば、液体分注装置100とは別個に存在する情報記憶装置であるサーバ50に読み取り可能に保存されており、例えば、有線又は無線により構成されるネットワーク51を通じて制御装置9より当該情報を取得することが可能となっている。
図11に示すように、液体分注装置100の制御装置9には、それぞれの容器に設けられたICタグ19及び29を読み取ることで容器ID情報Cを取得する容器情報取得部の一例であるリーダ56(図1参照)と、上述したようにネットワーク51を通じてサーバ50より情報を入力あるいは出力する入出力部57と、このように取得された情報に基づいて分注処理の制御を行う分注処理制御部52とが備えられている。分注処理制御部52には、リーダ56を通じて入手された容器ID情報Cと入出力部57を通じて入手されたライブラリ情報Aを照合する情報照合部53と、照合が行われたライブラリ情報Aと分注処理情報Bとに基づいて、具体的に加圧ヘッド6の制御プログラムやそれぞれの移動装置の制御プログラムを作成する制御プログラム作成部54とが備えられている。また、制御装置9には、このような制御のための情報や制御状態を視認可能に表示するモニタ55と、制御装置9に対する制御指示などを入力するためのキーボード等に代表される入力装置58が備えられている。また、分注処理制御部52は、加圧ヘッド6における圧力付加動作の制御を行う加圧ヘッドコントローラ61と、昇降装置18とともにヘッド移動装置7により移動動作の制御を行うヘッド移動装置コントローラ62と、容器保持部移動装置5によるマイクロプレート容器2の移動動作の制御を行う容器保持部移動装置コントローラ63とに制御的に接続されており、これらのコントローラの制御を制御プログラムに基づいて行うことが可能とされている。
このような制御構成において、分注処理が行われるマイクロプレート容器2に設けられているICタグ29をリーダ56にて読み取り、マイクロプレート容器2の容器ID情報C2を取得し、この容器ID情報C2に基づいて、このマイクロプレート容器2についての分注処理情報Bをサーバ50からネットワーク51を通じて入出力部57により取得する。このように取得された情報は、分注処理制御部52に入力され、図示しない記憶部等において保持される。さらに、分注処理情報Bに基づいて、必要とされる種類の液体が収容されているリザーバ容器1のライブラリ情報Aを、サーバ50からネットワーク51を通じて入出力部57により取得する。
このように取得されたライブラリ情報Aは、分注処理制御部52に入力されるとともに、モニタ55に表示される。液体分注装置100のオペレータは、このライブラリ情報Aを、モニタ55を通じて参照することで、この分注処理に必要とされるリザーバ容器1を選択し、選択されたリザーバ容器1をリザーバ容器載置部3に載置する。このとき、リザーバ容器1のICタグ19をリーダ56にて読み取ることで、リザーバ容器1の容器ID情報C1が取得される。このように取得された容器ID情報C1は、分注処理制御部52に入力されるとともに、情報照合部53にて、リザーバ容器1の容器ID情報C1と、ライブラリ情報Aに含まれているリザーバ容器1を特定する情報(すなわちID情報)との照合が行われて、両者が一致していることが確認される。なお、両者の一致が確認されない場合には、モニタ55を通じて不一致である旨がオペレータに認識可能に通知される。
このような照合が行われると、ライブラリ情報Aと分注処理情報Bとに基づいて、制御プログラム作成部54にて、それぞれのコントローラ61〜63を制御するための制御プログラムが作成される。その後、このようにして作成されたそれぞれの制御プログラムに基づいて、分注処理制御部52によりそれぞれのコントローラ61〜63の制御が行われ、マイクロプレート容器2に対する分注処理が行われる。
なお、上述の説明においては、制御装置9に備えられたリーダ56を通じて、それぞれの容器のICタグ19、29を読み取るような場合について説明したが、例えば、ICタグへの情報の記録手段(例えば、分注結果情報出力部)をさらに備えさせて、分注処理結果情報をICタグに記録させるようにすることもできる。例えば、処理エラーが発生することなく分注処理が完了したような場合にあっては、その旨を示す情報をマイクロプレート容器2のICタグ29に書き込み、その後の実験処理等において確認できるようにする、あるいは、分注処理において処理エラーが発生したような場合にあっては、当該エラーが発生したウェル21を特定できる情報とその処理エラーの内容とを関連づけて記録させるようにすることもできる。なお、このような分注処理の結果情報は、例えば、分注処理制御部52に分注結果情報作成部(図示しない)を備えさせて作成することができる。また、上記説明では、容器情報記録部の一例としてICタグが用いられるような場合について説明したが、このような容器情報記録部は容器ID情報を読み取り可能な形態であればよく、例えばバーコードやID番号が用いられるような場合であってもよい。
(第2実施形態)
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、本発明の第2の実施形態にかかる液体保存用容器が用いられて液体分注処理が行われる液体分注装置は、上記第1実施形態の液体分注装置100が備える加圧ヘッド6とは異なる構造を有する加圧ヘッド206を備えている点において、上記第1実施形態とは相違している。なお、それ以外の構造については同様であるので、異なる構造を有する加圧ヘッド206について、図12及び図13に示す模式説明図(断面図)を用いて以下に説明する。なお、図12は、加圧ヘッド206、リザーバ容器1、及びマイクロプレート容器2が分注処理のために位置合わせが行われた状態を示しており、図13は、加圧ヘッド206がリザーバ11上に当接配置された状態を示している。
上記第1実施形態の加圧ヘッド6は、ヘッド本体部30の下面より圧力付加ピン37が突出されて配置された構成が採用されており、このように突出された圧力付加ピン37の先端部がリザーバ11の圧力付加用空間S内に配置されることにより、圧力付加用空間Sに対する圧力付加が行われるような構成が採用されている。これに対して、本第2実施形態の加圧ヘッド206は、上述のような圧力付加ピン37に代えて、ヘッド本体部230の下面に圧力付加用孔部237が設けられ、この孔部237を通じて圧力付加が行われるように構成されている。
具体的には、図12に示すように、ヘッド本体部230には、弁座32によりその入り口側端部が開閉されるノズル部31が設けられており、このノズル部31の出口側端部(図示下方端部)には、ヘッド本体部230の下面まで貫通するように形成された貫通孔である圧力付加用孔部237が設けられている。なお、この孔部237は、上記下面において開口するように形成された孔部であり、当該下面より突出されるようには形成されていない。また、ヘッド本体部230の下面には、上記第1実施形態と同様に環状の当接部38が設けられている。なお、加圧ヘッド206におけるその他の構成は、上記第1実施形態の加圧ヘッド6と同様であるので、同じ参照符号を付してその説明を省略する。
また、リザーバ容器1においては、それぞれのリザーバ11を覆うように配置されている保護シート215において、リザーバ11の開口部11aの略中央に相当する位置にシート孔部215aが形成されている。このシート孔部215aは、例えば、加圧ヘッド206に形成されている圧力伝達用孔部237の孔径と略同じか、あるいはこの孔径よりもやや大きくなるように形成されている。ただし、このシート孔部215aの孔径をあまり大きくしすぎると、リザーバ11を覆ってその内部に収容されている液体を保護するという機能が阻害される場合があるので、必要以上に大きく形成することは好ましくない。なお、リザーバ容器1におけるその他の構成、及びマイクロプレート容器2の構成は、上記第1実施形態と同様である。
このような構成の加圧ヘッド206を用いて液体分注処理を行う場合には、まず、図12に示すように、加圧ヘッド206と、リザーバ容器1において選択されたリザーバ11と、マイクロプレート容器2において選択されたウェル21との位置合わせを行う。このように位置合わせが行われることで、加圧ヘッド206の圧力伝達用孔部237が、リザーバ11におけるシート孔部215aの上方に位置された状態とされる。次に、加圧ヘッド206を下降させて、環状の当接部38をリザーバ11の被当接部11bに当接させる。このように当接が行われると、図13に示すように、圧力伝達用穴部237の下方開口端部が、保護シート215のシート孔部215aの近傍に配置された状態とされる。その後、バルブユニット35において、弁座32が上昇されて圧力供給ポート42とノズル部31とが連通された状態とされる。これにより、圧力供給管40、圧力供給ポート42、ノズル部31、圧力伝達用孔部237、及びシート孔部215aが連通された一連の圧力付加用通路が、リザーバ11の圧力付加用空間Sと連通された状態とされ、圧力供給管40を通じて伝達される圧力が、圧力付加用空間Sに付加されて、吐出用流路12より液体8の一部が吐出されて、ウェル21への液体の分注が行われる。
従って、突出配置された圧力付加ピン36が設けられないような場合であっても、圧力付加用孔部237を備えさせることで、リザーバ11の圧力付加用空間Sへの圧力付加を行うことができ、完全非接触で、微量分注に対応可能な効率的な液体分注を行うことができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態にかかる液体保存用容器が用いられて液体分注処理が行われる液体分注装置300の構成を示す模式斜視図を図14に示す。図14に示すように、本第3実施形態の液体分注装置300は、複数の加圧ヘッド306を備えている、すなわちマルチチャンネル化されている点において、上記第1実施形態の液体分注装置100と異なる構成を有している。
具体的には、図14に示すように、液体分注装置300は、図示X軸方向に一列に配列された4つの加圧ヘッド306を備えており、例えばこの配列個数は、リザーバ容器1におけるX軸方向のリザーバ11の配列個数と同じに設定されている。また、それぞれの加圧ヘッド306の配置間隔についても、リザーバ容器1におけるX軸方向のリザーバ11の配置間隔と同じとなるように設定されている。
このようにそれぞれの加圧ヘッド306が装備されていることにより、液体分注装置300をマルチチャンネル化することができ、例えば、リザーバ容器1において、X軸方向の一列のそれぞれのリザーバ11に対してそれぞれの加圧ヘッド306を同時に位置合わせて、加圧ヘッド306の位置合わせのための移動に要する時間を短縮することができ、効率的な分注処理を行うことができる。
特に、本第3実施形態にように、リザーバ容器1におけるX軸方向のリザーバ11の配列個数と同じ台数の加圧ヘッド306が備えられているような場合には、ヘッド移動装置307において、加圧ヘッド306の図示X軸方向の移動を行う装置(X軸ロボット)を無くすことも可能となり、装置構成を簡単かつ安価なものにすることも可能である。
上記それぞれの実施形態の説明を通じて、本発明の一形態を説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、様々な形態を採ることができる。例えば、図15(A)及び(B)に示すリザーバ容器1の模式断面図に示すように、それぞれのリザーバ11の底部に設けられた吐出用流路412の下方端部を底板1bより隆起させて突出させるように形成することもできる。このように隆起された隆起部412aを形成することで、例えば、吐出された液滴の流路412よりの離脱性を向上させて、効率的な液体吐出(分注)を行うことができる。なお、図15(B)は、このような吐出用流路412の部分拡大断面図である。
また、このような吐出用流路12に、開閉弁を設けて、液体吐出可能な状態と吐出できない状態とを切り替え可能とすることもできる。あるいは、開閉弁の開度と、圧力付加用空間Sに付加される圧力を組み合わせて制御することで、液体分注処理が行われるような場合であってもよい。
また、各々のリザーバ11に形成される吐出用流路12の形成個数は、1個のみに限られることはなく、複数個形成されるような場合であってもよいが、微量分注の観点からは1個のみ形成されることが好ましい。
また、リザーバ11内に収容された液体が吐出用流路12を通過して、1又は複数の液滴が吐出され、液滴の大きさや個数が制御されることで液体の吐出量が制御されるような場合について説明したが、このような場合についてのみ限定されるものではない。このような場合に代えて、例えば、複数の液滴が互いに連なった状態、すなわち吐出用流路12から液体が連続的に吐出されて、その吐出時間等が制御されることで吐出量を制御することもできる。
また、上記それぞれの実施形態においては、リザーバ容器1においてそれぞれのリザーバ11の開口部11aを覆うように保護シート15が配置されるような構成について説明を行ったが、このような場合に代えて、保護シート15が配置されていないような構成を採用することもできる。この保護シート15は、リザーバ11内に収容されている液体8に異物等が混入しないようにするためのものであり、異物混入等を問題としないような場合、あるいはその他の対策が採られているような場合にあっては、保護シートを必要としない場合もあり得るからである。
また、図5を用いてのリザーバ11の構成の説明においては、液体収容用凹部13の上部に環状の空間形成用枠部14が配置された状態にて、両者が一体的に形成されるような場合について説明したが、本発明はこのような場合についてのみ限定されるものではない。このような場合に代えて例えば、液体収容用凹部13の上部にリザーバ容器の上面より突出されるように空間形成用枠部14が形成されるような場合であってもよい。さらに液体収容用凹部13と空間形成用枠部14とが互いに別個の部材として形成され、両者が互いに接続されることで、両者が一体的な状態とされるような場合であってもよい。
なお、上記それぞれの実施形態においては、リザーバ容器1のリザーバ11を4行×6列にて構成し、マイクロプレート容器2のウェル21を8行×12列にて構成した場合を一例として説明したが、それぞれの容器1及び2においては、さらに多数のリザーバ11やウェル21を配置させることが可能である。
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。