JP4610730B2 - カルシウム補給用の組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、骨粗鬆症等の生体構成カルシウムの異常の予防や治療に有用な経口投与成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の日本に於ける急激な食生活の西洋化は、これまで築き上げてきた食文化を根底より覆すものであり、日本人の生体に対するその影響は計り知れないものがある。加えて、この様な食の西洋文化を受け入れるに当たり、西洋食文化をすべて受け入れたのではなく、受け入れられない部分を残しての導入であり、この様な導入は食生活のバランスに大きな歪みを生じさせることになっている。取り分け、ミネラルに関しては、従前のミネラル源であった海藻などを棄却したにも関わらず、西洋食文化のミネラル源である、乳製品や動物の内臓等の食文化を導入しなかったことにより、欠乏を来すケースが多くなってきている。この様な観点から、ミネラル分を栄養補助食品などで補う潮流ができてきているが、この様な場合、特に問題となるのは、ミネラルの吸収に当たっては、ミネラル単独では効果がなく、ミネラル吸収促進剤との組み合わせに於いて初めて効果を現すものであるということである。例えば、従前の日本食文化に於いては、海藻類に含まれるオリゴ糖類がこの様な役目を担っており、西洋食文化に於いては乳タンパク等がこの様な役目を担っていた。これらのミネラル吸収促進剤は、ミネラルの存在様式によりその効果が異なることから、前記ミネラル吸収用の栄養補助食品に好適な、ミネラルの塩乃至は複合体の吸収を促進するミネラル吸収促進剤の開発が望まれていた。更に、付言すれば、ミネラルの吸収促進が必要なのは、この様な経口製剤のみにとどまらず、経皮的な投与に於いても同様であり、前述したようなミネラル吸収促進剤の開発が望まれていた。かかるミネラルの内、近年特に重要視されているのはカルシウムである。これは、前記のごとく、食生活の西洋化に伴い、日本人に於いてカルシウム摂取量が著しく減少したことと、燐酸イオンを含む清涼飲料水の摂取量の激増によるカルシウム排泄の激増が原因の根底にあると言われており、かかる問題の具現化は、骨粗鬆症の激増となって社会問題として現れている。この様な骨粗鬆症などのカルシウム不足に対する処置としては、骨粉や乳由来のカルシウムなどのカルシウム源の投与、カルシウムの骨形成系への移向を促すビタミンDやビタミンKの投与、骨吸収を抑え、骨形成を促進するカルシトニンやエルカトニンなどのホルモン類の投与が行われているが、その効果は今ひとつであり、その原因としては投与したカルシウムの生体利用性にあると言われている。又、前記の物質の殆どが注射剤形であることは、日常的な摂取或いは投与に障害があり、この様な投与経路の改善、即ち、経口投与可能な剤形化も望まれていた。
【0003】
一方、キク科タラクサカム属の植物のエキスはホコウエイの名で漢方生薬として知られており、その効果としては抗菌作用や健胃作用が知られているが、このものがカルシウムの体内への吸収を促進する作用を有することは全く知られていなかった。また、このものをカルシウム源や骨形成関与ビタミンと組み合わせることも、この様な組み合わせにより、カルシウムの生体利用率が高まり、骨形成に極めて好ましい影響を与えることも全く知られていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、カルシウムの生体内利用率を向上せしめ、以て、骨形成に有用な経口投与成物を提供することを課題とする。
【0005】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、カルシウムの生体内利用率を向上せしめ、以て、骨形成に有用な経口投与成物を提供すべく、鋭意研究努力を重ねた結果、キク科タラクサカム属の植物のエキスにカルシウムを生体に効果的に吸収せしめる作用を見出し、このものとカルシウム源、骨形成関与ビタミンとを組み合わせて経口投与成物に含有させることにより、骨形成に有用な経口投与成物が得られることを見出し発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示す技術に関するものである。
(1)1)セイヨウタンポポ、カンサイタンポポ及びモウコタンポポから選択される一種または二種以上のキク科タラクサカム属植物の極性溶媒抽出物と、2)カルシウム源と、3)ビタミンD群、ビタミンK群から選択される一種または二種以上の骨形成関与ビタミン(但し、ビタミンK 1 単独の場合を除く)とを含有することを特徴とする、カルシウム補給用の経口投与成物。
(2)キク科タラクサカム属植物の極性溶媒抽出物が根部の極性溶媒抽出物であることを特徴とする、(1)に記載の経口投与成物。
(3)骨形成関与ビタミンがビタミンD 3 及びタミンK 2 を含むことを特徴とする、(1)又は(2)に記載の経口投与成物。
(4)食品であることを特徴とする、(1)〜(3)何れか1つに記載の経口投与成物。
(5)骨粗鬆症に適用されることを特徴とする、(1)〜(4)何れか1つに記載の経口投与成物。
下、実施の形態を中心に本発明について更に詳細に説明を加える。
【0006】
【発明の実施の形態】
(1)本発明の経口投与成物の必須成分であるキク科タラクサカム属植物の極性溶媒抽出物
本発明の経口投与成物は、キク科タラクサカム属(Taraxacum)植物の極性溶媒抽出物を含有することを特徴とする。タラクサカム属の植物としては、イヨウタンポポ、カンサイタンポポ、モウコタンポポ等が挙げられる。これらの内、特に好ましいものは、入手のたやすい、セイヨウタンポポある。又、本発明で言う極性溶媒抽出物とは、物体やその加工物に溶媒を加え抽出した抽出物、抽出物から溶媒を除去した抽出物の溶媒除去物、抽出物乃至はその溶媒除去物をカラムクロマトグラフィーや液液抽出で精製した分画精製物等の総称を意味するが、抽出物の溶媒除去物を用いることが、漢方的な意味に於ける成分の複合構成による効果が得られることから特に好ましい。この様な抽出に用いることのできる極性溶媒としては、水、アルコール類、アセトンなどのケトン類、ジエチルエーテルやテトラヒドロフランなどのエーテル類、塩化メチレンやクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、酢酸エチルや蟻酸メチルなどのエステル類等ら選ばれる1種乃至は2種以上が挙げられる。これらの内、特に好ましいものは水及びアルコール類であり、中でも含水エタノールが特に好ましい。これは、この様な溶媒で抽出される成分の組み合わせが、カルシウムの吸収を促進し、生体利用性を向上させるのに特に好適であるからである。又、植物体の部位としては、全草のいずれの部位も使用可能であるが、根部が特に好ましい。これは、この部位にカルシウムの吸収を促進する成分が多く含まれているからである。この様な抽出作業は、通常知られている方法に準じて行えば良く、例えば、植物体乃至はその加工物に対し1〜10倍量の溶媒を加え、常温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬すればよい。その後、必要に応じて濾過などして不溶物を除去し、抽出物を得た後、所望により、減圧留去乃至は凍結乾燥して溶媒を除去すれば、抽出物の溶媒除去物が得られる。かくして得られ抽出物の溶媒除去物は、キク科タラクサカム属植物の極性溶媒抽出物として、カルシウムの生体への吸収を著しく促進する作用を有する。本発明の経口投与成物における、キク科タラクサカム属植物の極性溶媒抽出物の好ましい含有量は、組成物全量に対して、総量で0.01〜20重量%が好ましく、更に好ましくは0.1〜10重量%である。これは少なすぎると効果を発揮しない場合があり、多すぎると効果が頭打ちになり、処方の自由度を損なう場合があるからである。
【0007】
(2)本発明の経口投与成物の必須成分であるカルシウム源
本発明の経口投与成物はカルシウム源を含有することを特徴とする。本発明の経口投与成物に含有できるカルシウム源としては、通常医薬品や食品で使用される含カルシウム素材であれば特段の限定なくしようでき、例えば豚や牛の骨を加熱、粉砕加工した骨粉、貝殻を焼成、粉砕した貝殻粉、鶏卵などの卵の殻を焼成、粉砕した卵殻粉、燐酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ドロマイトなどの無機カルシウム塩、牛乳などより得られる乳タンパクとカルシウムの複合体等が例示できる。これらは唯1種を含有させることもできるし、2種以上を組み合わせて含有させることもできる。これらの内、特に好ましいものは、ドロマイト或いは卵殻粉である。かかるカルシウム源は前記キク科タラクサカム属植物の極性溶媒抽出物とともに組成物とすることにより、生体内に速やかに吸収されその生体内利用率が高められる。かかる効果は骨形成の律則段階であるカルシウムの生体内取込、生体内利用率を改善する効果を発揮する。本発明の経口投与成物に於ける、カルシウム源の好ましい含有量は、組成物全量に対し、総量で0.1〜80重量%が好ましく、更に好ましくは0.5〜50重量%である。これは少なすぎると効果を発揮しない場合があり、多すぎると錠剤などの製剤化時に必要な賦形剤や食品などに於いて重要なファクターとなる嬌味嬌臭剤等の素材を配合することができなくなり、処方の自由度を損なう場合があるからである。
【0008】
(3)本発明の経口投与成物の必須成分である骨形成関与ビタミン
本発明の経口投与用の組成物は、骨形成関与ビタミンを必須成分として含有することを特徴とする。ここで、本発明で言う骨形成関与ビタミンとは、骨形成或いはカルシウムの生体内への吸収に関与するビタミンあり、タミンK 1 、K 2 等のビタミンK群、ビタミンD 1 、D 2 、D 3 等のビタミンD群が挙げられ、これらの何れもが本発明の経口投与成物の構成要素となることができ、これらは唯1種を使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。これらの内、特に好ましいものは、ビタミンD 3 とビタミンK 2 の組み合わせである。これは、この組み合わせに於いてカルシウムの腸管からの吸収、生体内への取込、骨形成の促進に及ぼす効果が著しいためである。本発明の経口投与成物に於ける、かかる骨形成関与ビタミンの好ましい含有量は、総量で0.05〜20重量%であり、更に好ましくは、0.1〜10重量%である。これは多すぎるとビタミンの過剰投与の懸念がある場合があり、少なすぎると効果を発現しない場合があるからである。
【0009】
(4)本発明の経口投与成物
本発明の経口投与成物は、上記必須成分を含有し、経口経路で投与されることを特徴とする。経口投与の経路をとることにより、注射剤などに於ける投与の困難さが克服でき、以て、投与漏らしによる薬物効果の損失を防ぐことができる。本発明の組成物としては、経口投与されるものであれば特段の限定は受けないが、例えば、食品或いは医薬品などが好ましく例示でき、これらの中では食品に適用するのが特に好ましい。本発明の組成物では、上記本発明の必須成分以外に、通常、これらの組成物で使用される任意の成分を含有することができる。かかる任意の成分としては、例えば、食品や医薬品であれば、賦形剤、結合剤、増量剤、嬌味嬌臭剤、崩壊剤、pH調整剤、保存料、着色料、酸化安定剤、ビタミン類などの有効成分などが例示できる。又、骨形成に好ましい影響を与えるとされている、カルシトニンやエルカトニンなどを含有することもできるが、これらのものは腸管吸収しにくいので特に含有する必要は無い。本発明の経口投与成物の剤形は、経口投与成物で知られている剤形であれば特段の限定は受けず、例えば、顆粒、散剤、錠剤、カプセル剤、液剤などのほか、ウェハースやクッキー、ビスケットなどの菓子類、即席麺やスープなどの食品類が例示でき、顆粒剤や錠剤などの固形製剤に於いては更に被覆剤により被覆を施すことも可能である。本発明の経口投与成物は、これらの成分を常法に従って処理することにより製造することができる。
【0010】
【実施例】
以下に、実施例を示して本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がこれら実施例にのみ限定されないことは言うまでもない。
【0011】
<実施例1>
通常食(MF:オリエンタル酵母製)及び水道水で飼育した6週令のウィスター系雄性ラット(1群7匹、計28匹)を投与前24時間絶食させた後、下記の表1に示した成分をそれぞれ2mL/kgの投与量となるよう1%トリトンX−100(和光純薬製)生理食塩水溶液に可溶化させた溶液を、ラット腹腔内に組成物の量として200mg/kgの割合となるようにそれぞれ投与した。コントロール群には1%トリトンX−100生理食塩水溶液のみを上記と同じ2mL/kgの割合で投与した。投与の6時間後に麻酔下において全てのラットの腹部を開腹し胃幽門部端と十二指腸の遠位端を結さつし十二指腸ループを作成した。ループ内に放射性同位体でラベルした(45Ca)塩化カルシウムを投与し、10分後に門脈より採血して血中のカルシウム移行量とループのカルシウム残存量を放射活性により測定した。サンプルを投与した群における総(45Ca)塩化カルシウム投与量の放射活性より十二指腸ループの残存カルシウム放射活性を減じた値(7匹の平均値)を、コントロール群における総(45Ca)塩化カルシウム投与量の放射活性より十二指腸ループの残存カルシウム放射活性を減じた値(7匹の平均値)で除して1を減じ、これに100を乗じた値をカルシウムの吸収促進値として評価に用いた。結果は、表1に示す。これより、骨形成関与ビタミンをタラクサカム属植物の極性溶媒抽出物を共存させることにより、カルシウムの腸管からの吸収を著しく高めることがわかる。又、ビタミンDは骨形成促進とカルシウムの腸管吸収促進の2つの作用を兼ね備えるものであるが、通常の条件では、ビタミンDを投与しても、腸管からのカルシウム吸収が骨形成促進作用に追いついておらず、腸管からのカルシウム吸収が律則段階となっており、ビタミンD以外の物質により更に腸管吸収を高めることがビタミンDの骨形成促進作用をより効果的に発現させる要因となっていることがわかる。
【0012】
【表1】
Figure 0004610730
【0013】
<実施例2>
下記に示す処方に従って、本発明の経口投与成物である、食品を作成した。即ち、処方成分を10重量部の水を噴霧しながら造粒し、40℃で送風乾燥し、顆粒を得た。この顆粒を打錠して錠剤とし、これに30重量部の白糖、10重量部のゼラチンを糖衣し錠剤として康食品を得た。
結晶セルロース 8 重量部
ビタミンD 3 1 重量部
ビタミンK 2 1 重量部
卵殻カルシウム 30 重量部
エキス1 5 重量部
乳糖 10 重量部
ヒドロキシプロピルセルロース 5 重量部
【0014】
<実施例3>
下記に示す処方に従って、本発明の経口投与組成物であるドリンク剤を作成した。即ち、処方成分を可溶化、加熱滅菌し、無菌充填してドリンク剤を得た。
オリゴガラクチロン酸カルシウム複合体 1 重量部
卵殻カルシウム 1 重量部
ビタミンD 3 0.1重量部
ビタミンK 2 0.1重量部
ポリオキシエチレン硬化ひまし油 0.1重量部
エキス1 0.5重量部
マルチトール 20 重量部
クエン酸 0.3重量部
水 77 重量部
【0015】
<実施例4>
下記に示す処方に従って、本発明の経口投与成物である、食品を作成した。即ち、処方成分を10重量部の水を噴霧しながら造粒し、40℃で送風乾燥し、顆粒を得た。
結晶セルロース 8 重量部
ビタミンD 3 1 重量部
ビタミンK 2 1 重量部
卵殻カルシウム 15 重量部
ドロマイト 20 重量部
エキス1 5 重量部
乳糖 5 重量部
ヒドロキシプロピルセルロース 5 重量部
【0016】
<実施例5>
下記に示す処方に従って、本発明の経口投与成物である、食品を作成した。即ち、処方成分を10重量部の水を噴霧しながら造粒し、40℃で送風乾燥し、顆粒を得た。
結晶セルロース 18 重量部
ビタミンD 3 1 重量部
ビタミンK 2 1 重量部
卵殻カルシウム 5 重量部
ドロマイト 5 重量部
エキス2 10 重量部
乳糖 10 重量部
ヒドロキシプロピルセルロース 10 重量部
【0017】
<実施例6>
下記に示す処方に従って、本発明の経口投組成物である、食品を作成した。即ち、処方成分を10重量部の水を噴霧しながら造粒し、40℃で送風乾燥し、顆粒を得た。
結晶セルロース 16 重量部
ビタミンD 3 2 重量部
ビタミンK 2 2 重量部
卵殻カルシウム 5 重量部
ドロマイト 5 重量部
エキス3 10 重量部
乳糖 10 重量部
ヒドロキシプロピルセルロース 10 重量部
【0018】
本発明によれば、カルシウムの生体内利用率を向上せしめ、以て、骨形成に有用なカルシウム補給用の経口投与成物を提供することができる。

Claims (4)

  1. 1)セイヨウタンポポ、カンサイタンポポ及びモウコタンポポから選択される一種または二種以上のキク科タラクサカム属植物の極性溶媒抽出物と、2)カルシウム源と、3)ビタミンD群、ビタミンK群から選択される一種または二種以上の骨形成関与ビタミン(但し、少なくともビタミンK 2 を含む)とを、有効成分として含有することを特徴とする、カルシウム補給用の経口投与組成物。
  2. キク科タラクサカム属植物の極性溶媒抽出物が根部の極性溶媒抽出物であることを特徴とする、請求項1に記載の経口投与組成物。
  3. 骨形成関与ビタミンがビタミンD3 含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の経口投与組成物。
  4. 骨粗鬆症に適用されることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項に記載の経口投与組成物。
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