JP4610143B2 - 子宮筋収縮抑制薬 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、アドレノメデュリンを含有する、子宮筋自動収縮またはブラジキニンによる収縮を抑制するための組成物に、より詳細には、子宮筋自動収縮またはブラジキニンによる収縮を選択的に抑制するための組成物に関する。
背景技術
産科の分野で最も重要な問題の一つは早産の管理である。妊娠22週以後から37週未満の分娩を早産といい、全分娩の5〜10%を占める。早産により分娩された新生児を早産児といい、低出生体重児であることが多い。近年、新生児管理は著しく進歩したとはいえ、早産児は正常分娩された新生児と比較して罹患率および死亡率が高いので、可能な限り妊娠状態を維持して早産を予防することが望ましい。
現在広範に用いられている早産予防薬としては、β−アドレナリン作用性の交感神経作用薬、硫酸マグネシウム、およびインドメサシン(プロスタグランジン合成阻害剤)などが公知である。
代表的なβ−アドレナリン作用性作用薬であるリトドリンは、母体に、頻脈、レニン分泌の増大、高血糖症(および新生児の低血糖症)を含む種々の心血管性および代謝性の副作用を引き起こす。テルブタリンおよびアルブテロールを含む他のβ−作用性作用薬は、リトドリンと同様の副作用を有する。
4〜8mg/dLの治療範囲を超える血漿濃度の硫酸マグネシウムは、心臓伝導および神経筋伝達の阻害、呼吸低下、ならびに心停止を引き起こし、従って腎機能が損なわれた場合には、この薬剤は好適ではなくなる。
インドメサシンは、胎児の肺動脈高血圧症、動脈管開存異常などの胎児副作用があるので、大量使用および長期使用は禁忌である。
このように、現在公知の早産予防薬は種々の欠点を有する。それゆえ、これらの欠点を有さない、新規な早産予防薬が望まれている。
分娩の開始、すなわち陣痛発来の機序は、いまだ完全には解明されていないが、子宮収縮作用をもつオキシトシン、プロスタグランジンなどの関与が示唆されている。ブラジキニンもオキシトシンおよびプロスタグランジンと同様に、子宮収縮作用を有するが、その生理的、あるいは病態生理的な意義については、未だ不明である。しかし、ブラジキニンは本来、炎症性のメディエーターであり、妊娠子宮における異常な増加が早産、流産を引き起こす可能性が示唆されている(文献1;文献リストは本書末尾に記載する)。そのため、子宮筋の自動収縮を抑制し得る薬剤、またはブラジキニンの子宮筋収縮作用を抑制し得る薬剤、特に子宮筋の自動収縮を選択的に抑制し得る薬剤、またはブラジキニンの子宮筋収縮作用を選択的に抑制し得る薬剤が見出されれば、早産を予防するためだけでなく、流産を予防するため、帝王切開前に分娩を停止するために有用であると考えられる。
さらに、この薬剤は、月経困難症を治療するために有用であると考えられる。なぜなら、月経困難症は、排卵周期中の月経に関連する周期的痛みによって特徴付けられ、この痛みは、子宮の収縮および虚血に由来するものと考えられるからである。
アドレノメデュリン(AM)は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)ファミリーの一員であり、当初、ヒト褐色細胞腫から降圧作用を有するペプチドとして単離された(文献2)。AMは、種々の組織において様々な役割を果たすことが知られている(文献3)。これは、AMの生体に対する作用機序が一様ではないことを示唆する。
メス生殖系(例えば、下垂体の後葉(文献3)および子宮(文献4)におけるAMタンパク質あるいはAM mRNAのレベルは、副腎髄質におけるレベルと同程度に高い。また、母体血液中の循環AMのレベル(文献5)ならびに胎児胎盤組織(文献6)および子宮(文献7)におけるAMおよびAM mRNAの量は、両方とも、正常な妊娠の間に上昇した。妊娠合併症の1つである妊娠中毒症では、母体の血漿AMレベルは変化しなかった(文献5)かまたは低下(文献8)したが、羊水および臍静脈中のAM含量は、正常妊娠(文献9)と比較して高かった。しかし、これらの胎児組織および母体組織におけるAMの生理学的役割およびAMの機能の詳細は、依然として不明である。
AMの子宮収縮に与える影響については、AMが、5μM以上の高濃度でのみガラニン(CGRPニューロンに含まれる神経ペプチド)による子宮の緊張性収縮を抑制すること、さらにその作用がCGRP[8−37]により消失することが、唯一報告されている(文献7)。しかし、ガラニンによる子宮収縮の意義が全く不明であること、また、AMの作用が、ナノモル(nM)オーダー以下の濃度(AMが作用しうる濃度として多くの論文で報告されている)ではみられず、マイクロモル(μM)オーダー以上という高濃度でしか確認できないことから、生理的なAMの作用を反映しているとは考えにくい。
子宮の運動性(収縮/弛緩)は、交感神経、副交感神経による神経性の調節だけでなく、CGRP(文献10)や、一酸化窒素(NO)、オキシトシン、プロスタグランジンF2α(PGF2α;血圧上昇、血管収縮、腸管運動促進、子宮収縮、黄体退行促進、および気管支収縮作用を有し、分娩誘発剤として使用される代表的なプロスタグランジン)などの様々な物質により協調的に調節されている。また、前述のブラジキニンのように、異常収縮を引き起こし、早産の原因となりうるものも子宮の運動性に影響を与える。しかし、子宮の自動収縮、ならびにオキシトシン、PGF2αなどの調節因子による収縮、あるいは、ブラジキニンによる収縮にAMがどのような影響を与えるかは、全く知られていない。
本発明は、上記問題点の解決を意図するものであり、子宮筋の自動収縮またはブラジキニンによる収縮を抑制する、好ましくは選択的に抑制する新規な薬剤を提供することを目的とする。
発明の開示
本発明者は、もともと血圧降下作用を有するペプチドとして同定されたアドレノメデュリンが、子宮筋の自動収縮およびブラジキニンによる収縮を抑制する作用を有すること、およびこの抑制作用が選択的であることを見出し、これに基づいて本発明を完成させた。
本発明の子宮筋自動収縮またはブラジキニンによる収縮を抑制するための組成物は、アドレノメデュリンを含有する。本発明の組成物は、子宮筋自動収縮またはブラジキニンによる収縮を選択的に抑制するため、早産を予防するため、流産を予防するため、帝王切開前に分娩を停止するため、または月経困難症を治療するために用いられ得る。
1つの実施態様において、上記アドレノメデュリンは、(a)配列表の配列番号1の13位のSerから52位のTyrまでのアミノ酸配列を有するペプチド;(b)アミノ酸配列(a)において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ子宮筋収縮抑制作用を有するペプチド;(c)配列表の配列番号1の1位のTyrから52位のTyrまでのアミノ酸配列を有するペプチド;(d)アミノ酸配列(c)において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ子宮筋収縮抑制作用を有するペプチド;(e)配列表の配列番号1の−73位のAlaから52位のTyrまでのアミノ酸配列を有するペプチド;(f)アミノ酸配列(e)において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ子宮筋収縮抑制作用を有するペプチド;(g)配列表の配列番号1の−94位のMetから91位のLeuまでのアミノ酸配列を有するペプチド;または、(h)アミノ酸配列(g)において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ子宮筋収縮抑制作用を有するペプチドを含む。
他の実施態様では、上記アドレノメデュリンのC末端は、アミド化されるか、またはGlyが付加され得る。
他の実施態様では、上記アドレノメデュリンにおいて、配列表の配列番号2の16位のCysと21位のCysとが架橋され得る。上記架橋は、ジスルフィド結合または−CH−CH−結合であり得る。
本発明の早産または流産の予防方法は、アドレノメデュリンを含有する組成物を用いる。
本発明は、早産または流産の予防薬を製造するためのアドレノメデュリンの使用を提供する。
発明を実施するための最良の形態
本発明の実施においては、特に指示されない限り、当該分野で既知であるタンパク質の分離および分析法、組換えDNA技術、およびアッセイ方法が採用される。
I.定義
以下に、本発明を説明する上で用いられる用語を説明する。
アドレノメデュリンは、上述のように、当初、血圧降下作用を有するペプチドとしてヒト褐色細胞腫から単離されたペプチドである。本発明において、用語「アドレノメデュリン」は、この特定のペプチドに限定されず、このペプチドに対してアミノ酸配列における実質的な相同性を有するペプチドもまた含んでいう。相同なペプチドの例として、種変異体、および対立遺伝子変異体がある。ヒト由来のアドレノメデュリンは、配列表の配列番号2の1位のTyrから52位のTyrまでのアミノ酸配列を含む。(配列表の配列番号2の−94位のMetから91位のLeuまでのアミノ酸配列からなるペプチドは、プレプロアドレノメデュリンと考えられる。シグナルペプチドがプロセシングされた配列表の配列番号2の−73位のAlaから91位のLeuまでのアミノ酸配列からなるペプチドは、プロアドレノメデュリンと考えられる。配列表の配列番号2の13位のSerから52位のTyrまでのアミノ酸配列からなるペプチドは、血圧降下作用が確認されたアドレノメデュリンフラグメントである。これらのいずれの形態も、本発明において使用され得る。)ヒト由来のアドレノメデュリンは、配列表の配列番号1の447位のTから602位のCまでのポリヌクレオチド配列によりコードされ得る。ブタ由来のアドレノメデュリンの場合、配列表の配列番号4の1位のTyrから52位のTyrまでのアミノ酸配列を含む。ブタ由来のアドレノメデュリンは、配列表の配列番号3の430位のTから585位のCまでのポリヌクレオチド配列によりコードされ得る。ラット由来のアドレノメデュリンは、配列表の配列番号6の1位のTyrから50位のTyrまでのアミノ酸配列を含む。ラット由来のアドレノメデュリンは、配列表の配列番号5の433位のTから582位のTまでのポリヌクレオチド配列によりコードされ得る。
ヒトの疾患または治療の目的において、ヒト由来のペプチドが好ましいことは明らかである。しかし、他の哺乳動物由来の相同なペプチドもまた目的に応じて使用可能である。さらに、他の哺乳動物由来のペプチドとの比較は、ヒト由来のペプチドの所望の活性が保持された改変体を得るうえで重要である。
本発明に用いられるアドレノメデュリンは、上記の配列によって必ずしも限定されることはなく、これらの配列に対して、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつ所望の活性が保持された相同なペプチドも対象として含まれる。
アミノ酸の保存的置換は、相同なペプチドを得るための好ましい手段のひとつである。保存的置換は、代表的には以下のグループ内での置換を包含する:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン。
2つのアミノ酸配列の間の相同性は、必要であればギャップを導入して、残基の適合を最適化することにより決定される。ヒトのアドレノメデュリンに実質的なアミノ酸配列相同性を有するペプチドは、ヒトのアドレノメデュリンのアミノ酸配列と、代表的には少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、そしてより好ましくは少なくとも約80%の相同性を有し、そして特に好ましい実施態様では、少なくとも約90%以上の相同性を有する。相同性決定のためのソフトウェアは、容易に入手可能である。
本発明においては、定義上、下記の実施例1と実質的に同一の条件(AMの添加濃度は100nMとする)で測定したとき、子宮筋の自動収縮度が実施例1のコントロール区に示された値の約90%以下、好ましくは約80%以下であるとき、またはブラジキニンによる収縮度が実施例2のコントロール区に示された値の約90%以下、好ましくは約80%以下であるとき、「子宮筋収縮抑制作用を有する」という。
本発明においては、定義上、下記の実施例1と実質的に同一の条件(AMの添加濃度は100nMとする)で測定したとき、子宮筋の自動収縮度が実施例1のコントロール区に示された値の約90%より高い、好ましくは約95%以上であるとき;ブラジキニンによる収縮度が実施例2のコントロール区に示された値の約90%より高い、好ましくは約95%以上であるとき;またはオキシトシンもしくはプロスタグランジンF2αによる収縮度が実施例4においてAM添加前に示された値の約90%より高い、好ましくは約95%以上であるとき収縮を「抑制しない」という。
本発明においては、子宮筋の自動収縮またはブラジキニンによる収縮は抑制するが、オキシトシンおよびプロスタグランジンF2αによる収縮は抑制しない場合に、「選択的な子宮筋収縮抑制作用を有する」という。
本発明に用いられるペプチドのC末端は、アミド化されていても、されていなくてもよい。「C末端のアミド化」とは、ペプチドの修飾反応の1つをいい、ペプチドのC末端アミノ酸のCOOH基が、CONHの形態になることをいう。生体内で作動する多くの生理活性ペプチドは、はじめ分子量のより大きな前駆体タンパク質として生合成され、これが細胞内移行の過程で、C末端アミド化のような修飾反応を受けて成熟する。アミド化は、C末端アミド化酵素が、前駆体タンパク質に作用することによって、行われる。前駆体タンパク質においては、アミド化される残基のC末端側には常にGly残基が存在し、さらにそのC末端側に、例えばLys−ArgあるいはArg−Argなどの塩基性アミノ酸配列対が続いていることが多い(文献11)。
II.子宮筋収縮抑制作用を有するアドレノメデュリン
本発明においては、アドレノメデュリンは、子宮筋自動収縮またはブラジキニンによる収縮を抑制するため、好ましくは選択的に抑制するための組成物の有効成分として利用される。また、アドレノメデュリンは、早産または流産の予防薬を製造するための有効成分として利用される。アドレノメデュリンは、天然の供給源から単離されたもの、組換えDNA技術を使用して産生したもの、または化学合成したものであり得る。
アドレノメデュリンを天然の供給源から単離する場合、例えば、以下のようにして精製し得る。アドレノメデュリンは、例えばまず、ヒト褐色細胞腫を破壊して得られる粗抽出物を、各種クロマトグラフィーにかけることによって精製され得る。その際、血小板cAMPの活性の上昇をモニターすることによって、目的のアドレノメデュリンを含むフラクションを得ることができる。アドレノメデュリンの単離および精製方法については、特開平7−196693号公報に記載される。
アドレノメデュリンを組換えDNA技術を使用して産生する場合、目的のペプチドをコードするDNA配列が、種々の組換え系を用いて発現される。発現ベクターの構築および適切なDNA配列を有する形質転換体の作製は、当該技術分野で公知の方法によって実施される。発現は、原核生物系または真核生物系で実施され得る。
原核生物宿主としては、E.coli、バチルス属菌、およびその他のバクテリアが用いられる。そのような原核生物には、複製部位と宿主に適合する制御配列とを含むプラスミドベクターが用いられる。例えば、E.coliは、典型的には、E.coli由来のプラスミドである、pBR322の誘導体を用いて形質転換される。ここでの制御配列とは、転写開始のためのプロモーター、必要に応じてオペレーター、およびリボソーム結合部位配列を含むと定義される。この制御配列には、β−ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系(文献12)、トリプトファンプロモーター系(文献13)、およびλ由来のPプロモーターおよびN遺伝子リボソーム結合部位(文献14)のような一般的に用いられているものが包含される。
真核生物宿主としては、例えば酵母および哺乳動物細胞が用いられ得る。このような真核生物には、複製部位と宿主に適合する制御配列とを含むプラスミドベクターが用いられる。例えば、酵母は、pYEUra3(Clontech)を用いて形質転換される。その他に、真核生物宿主で有用なプロモーターには、例えば糖分解酵素を合成するためのプロモーター(例えば、3−ホスホグリセレートキナーゼのためのプロモーター(文献15);エノラーゼ遺伝子由来のプロモーター;YEp13から得られたLeu2遺伝子由来のプロモーター;メタロチオネイン由来のプロモーター;SV40由来の初期または後期プロモーター、ポリオーマウイルス、アデノウイルスII、ウシ乳頭腫ウイルス、およびトリ肉腫ウイルス由来のプロモーターのような他のウイルスプロモーターが包含される。宿主細胞と適切なプロモーターとの組合せは当業者に公知であり、必要に応じて適切に選択され得る。
発現ベクターを適当な宿主細胞に導入することによって形質転換体が得られる。この形質転換体を適当な条件で培養することにより、所望のアドレノメデュリンを得ることができる。
アドレノメデュリンの化学合成は、当該技術分野で公知の方法で行われ得る。例えば、ペプチド合成機による個相法で合成され得る。C末端がアミド化されているペプチドは、ベンズヒドリルアミンレジンを用いて、ペプチド合成機にてC末端アミノ酸から順次N末端アミノ酸まで標準的なDCC/HOBtで縮合させ、得られたペプチドレジンから標準的な開裂法(トリフルオロメタンスルホン酸法)で、目的とするペプチドを切り出して、作製し得る。
C末端がアミド化されたアドレノメデュリンを得るためには、宿主内で発現させて得られたペプチドのC末端のカルボキシル基を、化学的にアミド化するか、または目的とするアミノ酸配列のC末端にGlyが付加したペプチドを調製し、これに前述のC末端アミド化酵素を作用させてアミド化すればよい。
あるいは、アドレノメデュリンのC末端にGlyが付加したペプチドは、前述の通り、生体内のC末端アミド化酵素の作用によってC末端がアミド化され得る。
ジスルフィド結合は、例えば、空気酸化または適当な酸化剤でペプチドを酸化することにより形成させ得る。ジスルフィド結合の−CH−CH−結合への置換は、周知の方法(文献16)により行い得る。一般に、ジスルフィド結合を−CH−CH−結合に置換することにより、ジスルフィド結合の開裂がなくなり、タンパク質が安定化する。
以上のようにして得られたアドレノメデュリンが子宮筋収縮抑制作用を、好ましくは選択的な子宮筋収縮抑制作用を有することは、当該分野で公知の、子宮筋収縮作用についてのアッセイ方法を用いて行われ得る。アッセイ方法の例としては、エストロゲンで前処理した雌ラットの子宮を用いる方法、発情前期または発情期の処女の雌ラットの子宮を用いる方法、妊娠中、分娩中、あるいは分娩後の雌ラットの子宮を用いる方法などが挙げられる。エストロゲンで前処理した雌ラットの子宮を用いる場合、例えば、以下の条件で子宮筋収縮抑制作用をアッセイし得る:エストロゲン(例えば、17β−エストラジオール)を投与した雌ラットから子宮を摘出し、これをいくつかに切断することにより子宮断片を得る。子宮断片の血管付着部を除去して、子宮切片を得る。得られた子宮切片を、リンゲル液などの緩衝液中に浸漬しながら、アイソメトリックトランスデューサーおよびアイソトニックトランスデューサーなどの測定装置を用いて、子宮筋の収縮を継続的に調べる。自動収縮をする子宮筋の律動が一定になったところで、またはブラジキニン、オキシトシン、もしくプロスタグランジンF2αを添加した後に、溶液に被験ペプチドを添加し、子宮筋の収縮の変化を調べる。被験ペプチドの存在下および非存在下で子宮筋を収縮させて、収縮のレベルを比較することにより、ペプチドの子宮筋収縮抑制作用が判断される。このようにして子宮筋の自動収縮、またはブラジキニン、オキシトシン、もしくはプロスタグランジンF2αによる子宮筋の収縮に対する被験ペプチドの作用を決定する。子宮筋の自動収縮またはブラジキニンによる子宮筋の収縮は抑制するが、オキシトシンもしくはプロスタグランジンF2αによる子宮筋の収縮は抑制しない被験ペプチドは、選択的な子宮筋収縮抑制作用を有すると判断される。
III.子宮筋収縮抑制用組成物の調製
本発明の組成物は、有効量のアドレノメデュリンに加えて、当業者に公知の任意の賦形剤を含有し得る。賦形剤の例としては、乳糖、コーンスターチ、ステアリン酸マグネシウム、ミョウバンなどが挙げられる。
本発明の組成物は、当該分野で公知の方法に従って調製され得る。
本発明の組成物は、任意の形状であり得る。本発明の組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤のような固体;または水溶液および懸濁液のような液体であり得る。本発明の組成物を錠剤として経口投与する場合、通常、乳糖、コーンスターチ、およびステアリン酸マグネシウムのような賦形剤が使用され得る。本発明の組成物をカプセル剤として経口投与する場合、通常、乳糖および乾燥コーンスターチのような賦形剤が使用され得る。水性懸濁液として経口投与するためには、アドレノメデュリンを乳濁液または懸濁液と組み合わせて使用し得る。水性懸濁液は、必要に応じて、甘味剤および香料を含有し得る。本発明の組成物を筋肉内、腹腔内、皮下、および静脈内注射する場合は、滅菌した溶液にアドレノメデュリンを溶解させて緩衝液を調製し、pHを適切な値に調節する。本発明の組成物を静脈内投与する場合は、組成物は等張であることが好ましい。
本発明の組成物は、早産または流産の予防薬として用いられ得る。
IV.子宮筋収縮抑制用組成物の投与
本発明の組成物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing社、Easton、PAに記載されているような従来のペプチドの処方物の形で投与され得る。例えば、本発明の組成物は、経口投与;静脈投与、筋肉注射、腹腔内注射、および皮下注射のような非経口投与により投与され得る。これらのペプチドを羊水中へ補充することも可能である。好ましくは、これらのペプチドは、注射によって投与され得る。
本発明の組成物を、ヒトに投与する場合、1日あたりの用量は、通常、患者の症状、重篤度、感受性に対する個体差、体重、年齢などを考慮して、当業者によって適切に決定され得る。本発明の組成物は、1日1回投与されてもよいし、1日数回に分けて投与されてもよい。
本発明の組成物を投与することにより、早産または流産が予防される。
(実施例)
以下、本発明の子宮筋自動収縮またはブラジキニンによる収縮を抑制するため、好ましくは選択的に抑制するための薬としてのアドレノメデュリンの作用についてさらに具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。本実施例で用いたアドレノメデュリンは、配列番号6の1位のTyrから50位のTyrまでのアミノ酸配列からなる、合成ペプチドである(Peptide Institute,Inc.より入手)。
(実施例1:雌ラット子宮の自動収縮に対するアドレノメデュリンの効果)
10〜12週齢の雌ラットに、0.2mlの30%エタノール中1μgの17β−エストラジオールを皮下注射した。
翌日、このラットの頭部を強打することにより、屠殺した。次いでこのラットを断頭し、瀉血し、そして子宮を摘出した。摘出した子宮を、a〜dの4つの部分に切断し(図1(A))、次いで、各断片から血管の付着部側を切除することにより、子宮切片(図1(B))を得た。
アドレノメデュリンのラット子宮に対する影響を、アイソトニックトランスデューサーTD−112S(日本光電社製)を1g張力で用いて子宮切片の収縮を測定することにより調べた。
まず、子宮切片を、30mlのグルコース添加改変クレブス−リンゲル重炭酸溶液(Modified Krebs−Ringer bicarbonate(KRB)solution with glucose)(以下、単に「改変KRB溶液」という。)中に浸したまま、アイソトニックトランスデューサーに取り付けた。改変KRB溶液の組成は、以下の通りである:122mM NaCl、26mM NaHCO、5mM KCl、1mM MgSO・7HO、0.03mM EDTA−2Na、2.4mM CaCl、および11mMグルコース;pH7.4)。
子宮筋収縮を継続的に測定した。子宮筋の自動的律動が一定になるのを確認した後、10−4Mアドレノメデュリン(実験サンプル)または蒸留水(コントロールサンプル)を、それぞれ、30μlずつ、グルコース添加改変KRB溶液に添加し、アドレノメデュリンの濃度を100nMとした。アドレノメデュリンまたは蒸留水の添加から30分後、4.5MのKClを300μl添加してKCl濃度を45mMとした。
結果を、図2(a)〜(d)に示す。ここで、図2の(a)〜(d)は、それぞれ図1(A)のa〜dの部分の子宮切片を用いて得られた結果に対応する。図2(a)および(b)はコントロールを、図2(c)および(d)は100nMアドレノメデュリン添加の結果を示す。それぞれの図の左側の矢印は、蒸留水またはアドレノメデュリンを添加した時点を示す。それぞれの図の右側の矢印は、45mMのKClを添加した時点を示す。
図2(a)および(b)に示されるように、子宮筋の自動収縮は、蒸留水の添加の影響を受けなかった。一方、アドレノメデュリンを添加した場合、子宮筋の自動収縮が顕著に抑制された(図2(c)および(d))。また、45mMのKClの添加により、コントロール添加サンプルでもアドレノメデュリン添加サンプルでも強い収縮が起きたことから、アドレノメデュリンの添加が、子宮平滑筋細胞の脱分極によって生じる電位依存性Caチャネルの活性化による筋収縮には影響を与えないことがわかった。
なお、アイソメトリックトランスデューサーを用いて同じ実験を行ったところ、上記と同じ結果が得られた(データは示さず)。
(実施例2:雌ラット子宮に対するアドレノメデュリンの濃度依存的効果)
実施例1と同様に子宮切片を調製し、改変KRB溶液中でアイソトニックトランスデューサーにとり付け、子宮筋の収縮を継続的に測定した。子宮筋の自動的律動が一定になるのを確認した後、1×10−6、2×10−6、7×10−6、2×10−5、および7×10−5M アドレノメデュリン(実験サンプル)、または蒸留水(コントロールサンプル)を、それぞれ、最初の添加を0分として、5分後、12分後、22分後、および32分後に改変KRB溶液に30μlずつ添加して、アドレノメデュリンの濃度を各々1、3、10、30、および100nMとした。次いで、アドレノメデュリンまたは蒸留水の最初の添加から45分後、4.5MのKClを300μl添加してKClの濃度を45mMとした。
結果を、図3(a)〜(c)に示す。ここで、図3の(a)〜(c)は、それぞれ図1(A)のb〜dの部分の子宮切片を用いて得られた結果に対応する。図3(a)および(b)は、1〜100nMの各種濃度のアドレノメデュリン添加の結果を、そして図3(c)はコントロールを示す。それぞれの図の矢印は、アドレノメデュリン、蒸留水、またはKClを添加した時点を示す。
図3(a)および(b)に示されるように、子宮筋の自動収縮は、アドレノメデュリンの添加により、濃度依存的に抑制されることがわかった。
(実施例3:アドレノメデュリンによるブラジキニン誘導性子宮筋収縮の抑制)
実施例1と同様に子宮切片を調製し、改変KRB溶液中でアイソトニックトランスデューサーにとり付け、10nMブラジキニン(Peptide Institute,Inc.)を改変KRB溶液に添加した時点から、子宮筋の収縮を継続的に測定した。ブラジキニンの添加の20分後、100nMアドレノメデュリンまたは蒸留水をさらに添加した。
結果を、図4(a)および(b)に示す。ここで、図4の(a)および(b)は、それぞれ図1(A)のaおよびcの部分の子宮切片を用いて得られた結果に対応する。図4(a)は、100nMアドレノメデュリン添加の結果を、そして図4(b)は蒸留水添加の結果を示す。それぞれの図の矢印は、ブラジキニン、アドレノメデュリン、または蒸留水を添加した時点を示す。
図4(a)および(b)に示されるように、ブラジキニンにより誘導される子宮筋の収縮は、アドレノメデュリンの添加により抑制された。
(実施例4:オキシトシンまたはプロスタグランジンF2αによる収縮に対するアドレノメデュリンの効果)
8〜12週齢の雌ラットを用い、実施例1と同様にして子宮切片を調製した。
次いで、37℃にて、95% O/5% COを通気した、30mlの改変KRB溶液を満たした組織チャンバー中に子宮切片を入れ、実施例1と同様に子宮切片の収縮を測定した。40分間の平衡化後、子宮切片を、1μM AM[22−52]または1μM CGRP[8−37]の非存在下または存在下で15分間プレインキュベーションし、次いでAMを組織チャンバー中の改変KRB溶液に添加することによりAMの濃度を1〜100nMに徐々に増加させながらAMに曝露した。
17β−エストラジオール注射を与えていないラットを用いる別の実験では、10nM ブラジキニン、1nM オキシトシン、または1μM PGF2αによる子宮収縮に対する100nM AMの効果を、1μM AM[22−52]または1μM CGRP[8−37]の非存在下または存在下で試験した。
いずれの測定においても、45mM KCl分極により子宮を最終的に収縮させ、子宮の応答を確認した。結果を図6(a)〜(f)および図7(a)〜(e)に示す。
エストロゲンの一種である17β−エストラジオールで処理したラットから単離した子宮切片は、律動様式で自動収縮した(図6(a);ここでは、AM溶液の代わりに蒸留水を添加している)。濃度を徐々に増すように(1〜100nM)AMをチャンバーに加えることにより、自動収縮は、濃度依存的に抑制された(IC50=23nM)(図6(b)および(c))。AMの抑制効果は、100nM AMにより子宮筋が完全に弛緩した場合でさえも、改変KRB溶液を洗浄交換しAMを除去することにより可逆的であった(図6(c))。1μM AM[22−52]または1μM CGRP[8−37]のいずれかを予め添加することは、それ自体では効果が無かったが、1〜100nM AMの添加による収縮抑制効果をほぼ完全に妨げた(図6(d)および6(e))。図6(f)は、図6(b)、(d)、および(e)の結果を比較したグラフである。
エストロゲン処理していないラットから子宮切片を調製した場合、これらは、種々の間隔および振幅で自動収縮した。図7(a)、(b)、および(c)に示すように、1nM オキシトシン、1μM PGF2α、または10nM ブラジキニンは、いずれも、収縮を顕著に刺激した。100nMのAMは、オキシトシン(図7(a))またはPGF2α(図7(b))により引き起こされる収縮に対して、ほとんど影響を与えなかった。他方、ブラジキニンによる収縮は、自動収縮を完全に抑制し得る濃度である100nMのAMにより完全にブロックされた(図7(c))。ブラジキニンによる収縮に対するAMの抑制効果は、AM[22−52]またはCGRP[8−37]を予め添加することにより消失した(図7(d)および(e))。
(実施例の考察)
本発明者の知る限り、本実施例は、AMが、ラット子宮の自律的な自動収縮を濃度依存的に可逆的に抑制することを初めて実証した。さらに、AMは、ブラジキニンによる収縮は抑制したが、オキシトシン、PGF2αあるいは、高K刺激による収縮には影響しなかった。このことは、AMの作用が、子宮平滑筋を直接的に弛緩させるものでなく、自動的収縮、あるいは、ブラジキニンによる収縮の発生機構を選択的に抑制していることを示唆する。
本実施例において、AMによる子宮収縮抑制作用は、AMレセプターに対するアンタゴニストであるAM[22−52]と、CGRPレセプターに対するアンタゴニストであるCGRP[8−37]の両者でブロックされた。このことより、AMの作用は、AMレセプターとCGRPレセプターの両者を介して発現すると考えられる。AMの作用がCGRP[8−37]によってブロックされることに関しては、本実施例以外にも、単離されたラット腸間膜血管系においてAMの血管拡張作用を、CGRP[8−37]がブロックする(文献17)、ラット脳室へのAM投与による心拍数および血圧の上昇を、AM[22−52]あるいはCGRP[8−37]がブロックする(文献18)などの報告がある。また、ラット子宮を用いた結合実験において、AMは、125I−AM結合、125I−CGRP結合の両者を置換しうる、すなわち、AMは、AMの結合部位だけでなく、CGRPの結合部位にも結合しうることが報告されている(文献7)。これらの知見は、本実施例で得られた結果を裏付けるものである。
子宮におけるAM蛋白、AM遺伝子の発現は、AMが発見された副腎髄質における発現のレベルに匹敵して多い(文献7;文献3)。ラットおよびヒトの子宮で、AMが発現しているのは、子宮平滑筋組織より、むしろ子宮内膜組織であることが報告されている。このことより、子宮内膜で産生されたAMが、パラクリン因子として子宮平滑筋に作用してものと推測される。
さらに、AMによる子宮収縮抑制作用の臨床的な意義について考察する。
妊娠子宮において、AMの発現量は非妊娠時の約1.8〜約4.5倍、125I−AM結合量は約10倍、125I−CGRP結合量は約4倍といずれも増加するが(文献7;文献4;文献19)、CGRPの発現量は、検出限界以下に減少することが報告されている(文献7)。これらの知見と、本実施例で得られた「AMが、AMレセプターおよびCGRPレセプターの両者を介して子宮収縮を抑制する」との結果をあわせると、妊娠子宮においては、発現が増加したAMが、子宮収縮を抑制することにより、妊娠の維持に重要な役割を果たしている可能性が示唆される。
また、本実施例において、AMは、ブラジキニンによる収縮は抑制したが、オキシトシンおよびPGF2αによる収縮は抑制しなかった。一般に、オキシトシンおよびPGF2αによる収縮は、分娩において重要な役割を担うとされている。一方、ブラジキニンによる収縮については、その生理的、あるいは病態生理的な意義は、未だ不明であるものの、本来、ブラジキニンが炎症反応によって局所で産生される炎症性のメディエーターである(文献20)ことから、妊娠子宮における異常な増加が早産、流産を引き起こす可能性が示唆されている(文献1)。したがって、AMは、オキシトシンおよびPGF2αによる正常分娩時の収縮は阻害することなく、ブラジキニンによる異常収縮のみを選択的に抑制することによって、流早産を防止し、妊娠を維持するように働いている可能性が示唆される。
上記の結果をまとめると、非妊娠ラットの単離した子宮切片において、アドレノメデュリン(AM)は、自動定期収縮を濃度依存的に抑制した(IC50=23nM)。AMの抑制効果は、CGRPレセプターについての推定アンタゴニストであるカルシトニン遺伝子関連ペプチド[8−37](CGRP[8−37])によっても、AMレセプターの推定アンタゴニストであるAM[22−52]のいずれによっても、完全に防止された。AMはまた、ブラジキニンによる子宮収縮を減衰させた。ブラジキニンによる子宮収縮は、CGRP[8−37]またはAM[22−52]によりブロックされる。一方、AMは、オキシトシンまたはプロスタグランジンF2αによる収縮応答には抑制効果がない。これらの結果は、AMが子宮筋の自動収縮およびブラジキニンによる子宮筋の収縮を選択的に抑制することを示す。
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産業上の利用可能性
本発明により、アドレノメデュリンを含有する、子宮筋自動収縮またはブラジキニンによる収縮を抑制するため、好ましくは選択的に抑制するための組成物が提供される。この組成物は、早産および流産を予防するため、帝王切開時に分娩を停止するため、ならびに月経困難症を治療するために有用である。
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
図1(A)は、実施例において子宮切片を採取した子宮部位を示す模式図である。図1(B)は、調製した子宮切片の形状を示す模式図である。
図2(a)は図1(A)のaの子宮切片に蒸留水を;図2(b)は図1(A)のbの子宮切片に蒸留水を;図2(c)は図1(A)のcの子宮切片に100nMアドレノメデュリンを;そして図2(d)は図1(A)のdの子宮切片に100nMアドレノメデュリンを添加した場合に子宮筋の収縮を測定した結果示すグラフである。
図3(a)は図1(A)のbの子宮切片に1〜100nMアドレノメデュリンを;図3(b)は図1(A)のcの子宮切片に1〜100nMアドレノメデュリンを;そして図3(c)は図1(A)のdの子宮切片に蒸留水を添加した場合に子宮筋の収縮を測定した結果を示すグラフである。
図4(a)は図1(A)のaの子宮切片にブラジキニンを添加し、次いで100nMアドレノメデュリンを添加した場合の子宮筋の収縮を、図4(b)は図1(A)のbの子宮切片にブラジキニンを添加し、次いで蒸留水を添加した場合に、子宮筋の収縮を測定した結果を示すグラフである。
図5は、ヒト褐色細胞腫由来のアドレノメデュリンのアミノ酸配列を示す図である。RE1からRE6は、このアミノ酸配列をアルギニルエンドペプチダーゼで切断した場合に生成される断片を示す。
図6は、AMによる子宮の自動収縮の濃度依存的抑制;AM[22−52]またはCGRP[8−37]による防止を示す図である。(a)〜(e)は、類似の結果を有する5つの別々の実験からの代表的な記録である。p<0.05、薬物なしでの応答と比較(一因子分散分析);p<0.05、AM単独と比較(二因子分散分析)。
図7は、AMによっては引き起こされるが、AM[22−52]またはCGRP[8−37]によるオキシトシンまたはPGF2αの防止によっては引き起こされない、ブラジキニンによる子宮収縮の抑制を示す図である。(a)から(e)は、類似の結果を有する5回の別々の実験からの代表的な記録を示す。

Claims (17)

  1. アドレノメデュリンを含有する、子宮筋自動収縮またはブラジキニンによる収縮を抑制するための組成物。
  2. 子宮筋自動収縮またはブラジキニンによる収縮を選択的に抑制するために用いられる、請求項1に記載の組成物。
  3. 早産を予防するために用いられる、請求項1または2に記載の組成物。
  4. 流産を予防するために用いられる、請求項1または2に記載の組成物。
  5. 帝王切開前に分娩を停止するために用いられる、請求項1または2に記載の組成物。
  6. 月経困難症を治療するために用いられる、請求項1または2に記載の組成物。
  7. 前記アドレノメデュリンが、
    (a)配列表の配列番号2の13位のSerから52位のTyrまでのアミノ酸配列を有するペプチド、または、
    (b)アミノ酸配列(a)において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ子宮筋収縮抑制作用を有するペプチドである、
    請求項1または2に記載の組成物。
  8. 前記アドレノメデュリンが、
    (c)配列の配列番号2の1位のTyrから52位のTyrまでのアミノ酸配列を有するペプチド、または、
    (d)アミノ酸配列(c)において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ子宮筋収縮抑制作用を有するペプチドである、
    請求項7に記載の組成物。
  9. 前記アドレノメデュリンが、
    (e)配列表の配列番号2の−73位のAlaから52位のTyrまでのアミノ酸配列を有するペプチド、または、
    (f)アミノ酸配列(e)において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ子宮筋収縮抑制作用を有するペプチドである、
    請求項8に記載の組成物。
  10. 前記アドレノメデュリンが、
    (g)配列表の配列番号2の−94位のMetから91位のLeuまでのアミノ酸配列を有するペプチド、または、
    (h)アミノ酸配列(g)において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ子宮筋収縮抑制作用を有するペプチドである、
    請求項9に記載の組成物。
  11. 前記アドレノメデュリンのC末端がアミド化されている、請求項1または2に記載の組成物。
  12. 前記アドレノメデュリンのC末端にGlyが付加されている、請求項1または2に記載の組成物。
  13. 前記アドレノメデュリンにおいて、配列表の配列番号2の16位のCysと21位のCysとが、架橋されている、請求項1または2に記載の組成物。
  14. 前記架橋が、ジスルフィド結合である、請求項13に記載の組成物。
  15. 前記架橋が、−CH−CH−結合である、請求項13に記載の組成物。
  16. アドレノメデュリンを含有する産または流産の予防
  17. 早産または流産の予防薬を製造するためのアドレノメデュリンの使用。
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