JP4609767B2 - システムの最適制御方法 - Google Patents
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Description
この汎関数を最小化する条件は,最適制御であるための必要条件であり,しかも未定定数を含む弱い条件であるが,制御対象の構造的性質をうまく活用することにより有益な制御則が得られる.後の事例によりその有用性を示す.
最適制御問題を定式化する.まず制御対象の特性表現について述べる.制御理論では制御対象の特性を運動方程式で記述するが,ここでは制御対象の全入出力パワーの収支の式を用いる.具体的には,システムの各自由度毎の運動方程式をベクトル表示しこれに速度ベクトルを乗じたものである.入力パワーは制御による入力だけでなく外乱入力も含まれ,また制御対象は受動要素だけとは限らないため,内部にエネルギ源がありこれが運動に影響を与えていれば外乱入力として扱う.
【式1】
ここで,d,e,q,u,v,z∈Rn,M∈Rn×n は正定対称な慣性マトリクス,nは制御対象の自由度である.qは一般化座標,uは制御則,vは力入力の外乱,zは変位入力の外乱である.dはコリオリ力や遠心力やダンピング力など,eはポテンシャル力である.このような一般化座標qの説明やこれを用いた機械系の運動方程式については、例えば非特許文献2のP11−12や非特許文献3のp54−55に解説されている.
制御対象が非線形であっても制御装置を合理的に設計すれば,式(1)のようにuを直接Mに作用させることができる.本論文では,このような合理的に設計された機械力学系システムを想定して最適制御則を導く.
上記のシステムに対し,次の評価関数を考える.
【式2】
ここでgは制御性能の評価を与えるスカラー関数であり,コスト関数の被積分項
式(2)を最小化する制御u(t)を求めることが最適制御の課題である.
【非特許文献1】有本卓,新版ロボットの力学と制御,(2002),PP.68−69.朝倉書店.
【非特許文献2】大貫義郎,解析力学,PP.11−12.朝倉書店.
【非特許文献3】有本卓,新版ロボットの力学と制御,(2002),PP.54−55.朝倉書店.
制御対象が非線形であっても制御装置を合理的に設計すれば,式(1)のようにuを直接Mに作用させることができる.本論文では,このような合理的に設計された機械力学系システムを想定して最適制御則を導く.
上記のシステムに対し,次の評価関数を考える.
式(2)を最小化する制御u(t)を求めることが最適制御の課題である.
有本卓,新版ロボットの力学と制御,(2002),PP.68−69.朝倉書店.
従来の最適制御理論では,随伴変数を導入して微分方程式を導きこれに元の状態方程式を連立させて解くことになるが,本論文ではこのような方法とは全く異なる手法を示す.最適制御の必要条件を求めるため次のスカラー関数Lを定義する.
【式3】
ここで,κは未定定数である.右辺の{}内は,式(1)の左辺と同じで制御対象の全パワー収支であるからエネルギ保存則を満たし常にゼロである.従って式(3)で表されるLの積分を最小化する条件は,式(2)も最小化する.
従って関数Lにqを変数とする変分原理を適用した次式はuが最適制御であるための必要条件を与える.Lはuに関して1次式であるから,∂L/∂uは意味がなく次式に制御に関するすべての情報が含まれる.
【式4】
Lにはqの2階の導関数が含まれるため一般的なオイラーの方程式に第3項が追加されている(例えば非特許文献4参照).
式(4)を積分し積分定数をゼロとすると次式になる.
【式5】
式(3)を式(5)に代入し左辺第1〜3項の順に記すと次のようになる.
【式6】
(式5)はLをqおよびその導関数で偏微分したものであるが、注目されるのはLの中
ることである.このuを左辺にもってきて他を右辺に移項すれば(式7)が得られる.
【式7】
このように,本手法はJを最小化するqとuの関係を直接導くことができるため,従来のように2点境界値問題を最適性の原理を用いて解くプロセスが不要になる.κは未定定数であるが,κ=0の時はuが制御の評価関数のパラメータのみで定まり,κ=∞の時はuが制御対象のパラメータのみで定まることからuが最適であるためにはκはゼロでない有限値でなければならないことは明らかである.
上式の第1行は外力vと慣性のq依存性に対する制御,第2行はコリオリ力や遠心力やダンピング力に対する制御,第3行はポテンシャル力とそのq依存性および外力zに対する制御,第4行は評価関数を低減させる制御でありそれぞれ意味が明確である.
式(7)には未実行の微積分項が含まれているが,全ての外力と状態量の検出あるいは推定が可能とすればこれらの実時間での実行は可能である.式(5)において積分定数をゼロとしたが,上記の結果より積分定数は制御則に一定のバイアスを与えることになるためゼロとすることが妥当であることがわかる.式(7)中の積分も同様である.
式(7)ではアクチュエータの数と系の自由度が同じであることを想定しているが,アクチュエータの数が少ない場合には次のような処置が必要になる.例えばアクチュエータが二つの独立な慣性Mi,Mi+1の間に置かれるような場合は,制御ベクトルuにその拘束条件を含めておき最適制御則は二つの制御則を重みを付けて加算したものにする.
【式8】
uopt,i,i+1=ρiui+ρi+1ui+1
ここでuI,ui+1はそれぞれが独立な制御として導いた場合の最適制御則であり,ρi,ρi+1は重み係数である.これらの重み係数や未定定数κの決定法については,次の具体例で示す.
【非特許文献4】L.E.エルスゴルツ,瀬川富士訳,科学者・技術者のための変分法,(1972),pp.34−37.ブレイン図書出版.
従って関数Lにqを変数とする変分原理を適用した次式はuが最適制御であるための必要条件を与える.Lはuに関して1次式であるから,∂L/∂uは意味がなく次式に制御に関するすべての情報が含まれる.
上式の第1行は外力vと慣性のq依存性に対する制御,第2行はコリオリ力や遠心力やダンピング力に対する制御,第3行はポテンシャル力とそのq依存性および外力zに対する制御,第4行は評価関数を低減させる制御でありそれぞれ意味が明確である.式(7)には未実行の微積分項が含まれているが,全ての外力と状態量の検出あるいは推定が可能とすればこれらの実時間での実行は可能である.式(5)において積分定数をゼロとしたが,上記の結果より積分定数は制御則に一定のバイアスを与えることになるためゼロとすることが妥当であることがわかる.式(7)中の積分も同様である.
式(7)ではアクチュエータの数と系の自由度が同じであることを想定しているが,アクチュエータの数が少ない場合には次のような処置が必要になる.例えばアクチュエータが二つの独立な慣性Mi,Mi+1の間に置かれるような場合は,制御ベクトルuにその拘束条件を含めておき最適制御則は二つの制御則を重みを付けて加算したものにする.
L.E.エルスゴルツ,瀬川富士訳,科学者・技術者のための変分法,(1972),pp.34−37.ブレイン図書出版.
まず特許文献1の評価関数を変数qを用いて記述する.
一定でレベルは極良路(ISO/TC108/クラスA)を60Km/h程度での走行に相当するように設定した.シミュレーションは,10−4secの固定ステップで2sec間行った.
した.パッシブダンパ制御は図1のパッシブダンパC2と同等の機能を制御で出すものである.スカイフックダンパ制御はばね下振動を押さえる機能がないためダンパが必要でありC2=1200Nsec/mとし,他はすべて C2=0とした.評価関数Jを振動に関する部分J1と制御入力エネルギに関する部分J2に分離すると次のようになる.
図4は,本制御と準最適制御について制御対象に伝達されるパワーのシミュレーション結果を示す.ともに大半の時間帯で伝達パワーは負の値を示しており,エネルギ回生を効果的に行っていることがわかる.
以上により,本制御則の式(26)は近似解法による準最適制御則(特許文献1の式(20))と比べ簡潔でありながら同等以上の効果があることが確認できた.
まず図5のモデルから式(1)の各要素を求めると次のようになる.
上式右辺第1行がパワー収支式から得られる項であり,第2,3行が評価関数から得られる項である.このケースではパワー収支式から得られる情報が少ないので評価関数に必要十分な情報を盛り込みこれを補っている.ここで,留意しなければならないのは,モデルから運動方程
小化する条件の一部として既に式(39)に含まれているためさらに代入することはLに余計な拘束を強いることになる.
u2を最適にするための必要条件は次の方程式から求めることができる.
まず,重み係数r2,r3,r4の選定を行う.図5のモデルからわかるようにq1を早めにゼロに収束させるとq3の調整が出来なくなる.従ってq3を収束させた後にq2を収束させることが望ましくこのためr2よりr3を大きく設定する.またコインの回転のオーバーシュートを抑えるためr4は大き目の値に設定する.以上よりr2=0.25,r3=2.5,r4=1.0とした.このケースでは入力エネルギは最終的にゼロになるため,r5の値はさほど重要ではない.他の重みとレベルを合わせて,r5=0.5とした.
シミュレーション結果を図6〜9に示す.まず,κの最適化を行う.κを変化させた場合の式(37)の値の変化を図6に示す.これよりκ=−0.1が最適値であることがわかる.以後この値を用いてシミュレーションを行う.
図7は[q1,q2,q3]の初期値を[1,1,−1]としてシミュレーションを行った結果である.q1の振動を利用してまずq3が収束し続いてq2がゆっくり収束している様子がわかる.
図8は,このときのq2,q3の軌跡を示す.q2は一度の速度切り替えで目標に収束しており良好な結果が得られた.
図5のモデルを漸近安定させる一例として非特許文献3において紹介されている制御則を用いて,図7と同一条件でシミュレーションした結果を図9に示す.特に収束性を良くする工夫はされてなく,漸近安定させる例として示されたものなので,本提案の結果との直接性能比較の対象ではないが,参考として掲示する.
式(1)はパワー収支式であるが,変位入力の外乱によるパワーが陽に表されていない.これを明示し入力側を左辺に蓄積・散逸側を右辺に書き直せば,次式のようになる.
ここで式(52)の第1,3項の和をE1とする.外乱入力パワーの和の積分をE2とすると,式(48)において外乱入力項を右辺に移項して,左右辺を積分すれば,
双方向ポンプ11は誘導モータ12で回される.誘導モータ12が右回転する場合はポンプ11からシリンダ3の上室に作動油が送られ、左回転する場合は下室に作動油が送られる.誘導モータはインバータ13の3相出力で駆動され,この3相出力は制御指令値によって制御される.バッテリーもしくはキャパシタ15とインバータ13の間には可逆チョッパ回路14が設けられモータ駆動時にはバッテリー電圧を昇圧し,充電時にはモータからの電圧を調整しモータ電圧がバッテリー電圧を下回っても回生可能にする.
他の車輪も同様の構成である.
じてモータの電流を変えれば、制御指令値に応じて力を発生させる制御系が実現できる.回生
uoptとからモータ駆動時か回生時かを判断し、モータ駆動時にはバッテリー電圧を昇圧し,回生時にはモータ電圧を昇圧する指令値ueを出力する.
2 車体(ばね上質量)
3 油圧シリンダ
4 ピストンロッド
5 アキュームレータ
6 上下Gセンサ(ばね上用)
7 上下Gセンサ(ばね下用)
8 サスペンション変位センサ
9 サスペンション伝達力センサ
10 制御回路
11 双方向ポンプ
12 誘導モータ
13 インバータ
14 可変チョッパ回路
15 バッテリもしくはキャパシタ
20 制御則演算部
21 ばね上速度演算部
22 ばね下速度演算部
23 タイヤ変位演算部
Claims (3)
- 制御対象の全入出力パワーの収支の式が次式で近似される制御システムにおいて,
(ここで,d,e,q,u,v,z∈Rn,M∈Rn×nは正定対称な慣性マトリクス,nは制御対象の自由度である.qは一般化座標,uは制御則,vは力入力の外乱,zは変位入力の外乱である.zはばねを介して慣性に作用するものとする.dはコリオリ力や遠心力やダンピング力など,eはポテンシャル力である.また制御対象は受動要素だけとは限らないため,内部にエネルギ源がありこれが運動に影響を与えていれば外乱入力として扱う.制御アクチュエータの数が制御対象の自由度nより少ない場合は、欠落したアクチュエータに対応するベクトルuの要素をゼロとする.また一つのアクチュエータが複数の慣性に作用する場合には、対応するベクトルuの要素にその条件を含めておく.変数qやzの上に付された記号“・”とその数は時間微分とその回数を表す.)
次式であらわされる評価関数を最小にする制御方法.
ここで、gはqとqの1階、2階の導関数に関する連続関数であって制御対象の制御性能を表現した関数であり、rは重み係数である.
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