JP4608369B2 - 硬貨識別装置 - Google Patents

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本願発明は、硬貨識別装置に関する。
硬貨識別装置において、投入された硬貨が転動する硬貨通路を隔てて、おのおのの対を成す2つのセンサコイルを互いに対抗する形で配置し、3対のセンサコイルを使用して、一の対により硬貨の材質を判定し、他の2対により硬貨の直径及び厚さといったその硬貨の幾何学的形状を判定し、それによって硬貨の真偽を判定することは周知である。この種の硬貨識別装置は、特表2001−513232号公報に記載されている。上記の硬貨識別装置においては、対を成す一方のコイルに交流電源を接続し、磁界を誘起させ、他方のコイルに流れる誘導電流を計測することにより、コイル対全体としてのインピーダンスを測定する。上記のインピーダンスは、対を成す2つのコイルのそれぞれの自己インダクタンスとその2つのコイル間の相互インダクタンスとによって決定される。2つのコイルの間を硬貨が通過すると上記の相互インダクタンスが変化し、従って、2つのセンサコイル対は、上記のインピーダンスの変化のパターンを判定することにより硬貨の材質及びその幾何学的形状を判定する。2つのコイルの間の相互インダクタンスは、2つのコイルと硬貨との間の幾何学的位置関係と、硬貨の材質及び幾何学的形状とによって決定される。従って、硬貨の真偽及び種類、すなわち、硬貨の材質及びその幾何学的形状を精密に判定するためには、センサコイルが配置された検査領域を投入された硬貨が転動している間、硬貨の種類にかかわらず、2つのコイルと硬貨との間の幾何学的位置関係を一定に保つことが重要となる。
センサコイルが配置された検査領域を投入された硬貨が転動している間、2つのコイルと硬貨との間の幾何学的位置関係を一定に保つという問題を取り扱っている先行技術文献としては、実開昭52−116991号公報、特公平6−36205号公報、及び特開2004−110296号公報がある。これらのうち、実開昭52−116991号公報及び特公平6−36205号公報は、硬貨通路の一方の壁面に形成された開口部内に回転可能に軸結合された本体部分と、その本体部分から硬貨通路内部に延在する硬貨受け止め用の腕と、その硬貨受け止め用の腕とは反対の方向に本体部分の底部から開口部の深部に向かって延在する釣合い錘とからなる硬貨押圧部材を使用する硬貨安定化機構を備えた硬貨識別装置を開示している。上記の本体部分と硬貨受け止め用の腕と釣合い錘とは、一体に成型されている。釣合い錘は、硬貨が硬貨受け止め用の腕に当接した状態でその硬貨の重量に抗して本体部分を徐々に回転させ得る質量を有している。すなわち、硬貨が投入されると、硬貨通路の一方の壁面に形成された開口部から延在する硬貨押圧部材の硬貨受け止め用の腕は、落下してくる硬貨を受け止め、その硬貨の運動エネルギーによって硬貨押圧部材の本体部分が回転し、その本体部分の上端が、開口部が形成されている一方の壁面に対向する他方の壁面に硬貨を押圧する。その後、釣合い重りの質量によって硬貨押圧部材は、徐々に反対の方向に回転し、硬貨を開放する。
上記の硬貨安定化機構の動作は、硬貨の質量によって異なった動作をする。質量の小さな硬貨を投入した場合には、その硬貨の質量に対する釣合い重りの質量の比率が大きくなるので、硬貨押圧部材は、回転することにより押圧した硬貨を開放する。硬貨を開放する際に、硬貨受け止め用の腕は、硬貨を乗せたまま上下動する。従って、一旦安定させた硬貨の姿勢及び転動コースが再び不安定となる。一方、質量の大きな硬貨を投入した場合には、その硬貨の質量に対する釣合い重りの質量の比率が小さくなるので、硬貨押圧部材は、硬貨を押圧したまま反対方向には回転しない。押圧され続けている硬貨は、自身の質量により、斜面をなしている硬貨通路内をすべるように移動する。上記のように、硬貨の質量、すなわち、硬貨の種類によってその硬貨の姿勢及び転動コースを安定させることができるか否かが異なる。
従って、上記の硬貨安定化機構は、投入された硬貨が硬貨通路を転動している間、硬貨の種類にかかわらずその硬貨が一定の姿勢及び一定の転動コースを維持することを一瞬の押圧により可能とするものではない。また、硬貨の姿勢及び転動コースが安定するまでにある程度の距離を必要とするため、硬貨投入口から硬貨識別部までの距離、すなわち、硬貨押圧部材から硬貨識別部までの距離を最小化するものでもない。さらに、質量の大きな硬貨を連続して投入した場合には、最初に投入した硬貨が硬貨押圧部材のところで留まっている時間が長いため、硬貨通路内に硬貨が詰まってしまうという問題を生じうる。特開2004−110296号公報のものも、細部の構成は異なっているものの、上記と同様の問題を生じる。
これに対して、特開2000−259892号公報及び特表平10−508395号公報は、硬貨通路の一方の壁面に開口部を設け、その開口部の内部に錘を回転可能に軸結合し、その錘の一部が開口部から硬貨通路内に突出していることにより、投入された硬貨を他方の壁面に押圧し、一定の距離内で硬貨の姿勢及び転動のコースを安定させる硬貨安定化機構を備えた硬貨識別装置を開示している。しかしながら、上記の硬貨安定化機構も、硬貨の質量、すなわち、硬貨の種類によってその姿勢及び転動のコースの安定化に要する距離が異なるため、投入された硬貨が硬貨通路を転動している間、硬貨の種類にかかわらずその硬貨が一定の姿勢及び一定の転動コースを投維持することを一瞬の押圧により可能とするものではない。また、硬貨の姿勢及び転動のコースの安定化に少なくとも所定の距離を要するため、硬貨安定化機構から硬貨識別部までの距離を最小化するものでもない。
特表2001−513232号公報 実開昭52−116991号公報 特公平6−36205号公報 特開2004−110296号公報 特開2000−259892号公報 特表平10−508395号公報
上記の問題に鑑みて、本願発明は、投入された硬貨が硬貨通路を転動している間、硬貨の種類にかかわらずその硬貨が一定の姿勢及び一定の転動コースを投維持することを一瞬の押圧により可能とすることにより、硬貨投入口から硬貨識別部までの距離を最小化した硬貨識別装置を提供することを目的とする。
本願発明の硬貨識別装置は、投入された硬貨を落下させてレール部材の上面に衝突するように案内すると共に、レール部材の上面から転動した硬貨が硬貨検査部を通過するように案内する硬貨通路と、レール部材が硬貨の衝突によって安定位置から所定の角度だけ回転し、硬貨がレール部材の上面を通過すると安定位置に復帰するように、レール部材を揺動自在に支承する支承機構とを含み、硬貨を硬貨通路の壁面に押圧する硬貨押圧部を備えると共に硬貨押圧部が硬貨通路から退避する安定位置と硬貨押圧部が硬貨の押圧を行う押圧位置との間で所定の角度だけ揺動自在に支承された硬貨当接部材をさらに含み、硬貨当接部材は、硬貨の衝突によって回転するレール部材に接触し、レール部材からの衝撃力を受けると、レール部材から離れて、硬貨当接部材を押圧位置まで回転させる衝撃伝達部をさらに備え、硬貨当接部材が押圧位置にあるときに、硬貨当接部材が硬貨通路から退避するのを妨げないように、レール部材と硬貨当接部材との間に間隔が設けられていることを特徴とする。
本願発明の更なる態様によれば、本願発明の硬貨識別装置は、硬貨通路と、硬貨通路の底面の一部を定義すると共に所定の角度だけ回転可能に支持されたレール部材と、硬貨通路の側に設けられ、所定の角度だけ回転可能に支持された硬貨当接部材であって、レール部材の下に延在する衝撃伝達部を備えた硬貨当接部材とからなる。硬貨当接部材は、第1の回転方向に付勢されており、硬貨当接部材の第1の回転方向への回転は、その衝撃伝達部がレール部材に当接することによって制限されており、硬貨当接部材の第2の回転方向への回転は、レール部材によっては制限されておらず、第2の回転方向は、投入された硬貨がレール部材に当接したときのレール部材の回転方向であり、第2の回転方向に回転したレール部材が衝撃伝達部に当接することによって硬貨当接部材が少なくともレール部材の回転角度よりも大きな角度だけ第2の方向に回転する。上記の硬貨識別装置において、レール部材は、衝撃伝達部によって支持されている。
硬貨当接部材は、その硬貨当接部材の回転軸を基準として硬貨押圧部と衝撃伝達部とは反対の側に位置するように硬貨当接部材に取り付けられた少なくとも1つのバランスウェイトによって付勢されてもよく、又は、硬貨当接部材の回転軸を基準として硬貨押圧部と衝撃伝達部とは反対の方向に位置するように硬貨当接部材に取り付けられた少なくとも1つのスプリング部材によって付勢されてもよい。
従って、上記の硬貨識別装置においては、投入された硬貨が硬貨通路を転動している間、硬貨の種類にかかわらずその硬貨が一定の姿勢及び一定の転動コースを維持することを一瞬の押圧により可能とすることにより、硬貨投入口から硬貨識別部までの距離を最小化することが可能である。さらに、硬貨当接部材が、硬貨を瞬間的に押圧した後、直ちにもとの位置に復帰して硬貨通路から退避するため、硬貨を連続的に投入した場合においても硬貨通路における硬貨の詰まりを防止することが可能である。
第1図乃至第3図は、本願発明の硬貨識別装置100を示している斜視図である。硬貨識別装置100の下方には、図示しない硬貨収容部分102が配置される。硬貨識別装置100は、図示するように、硬貨検査部101と硬貨分類手段102とを備えている。硬貨識別装置100の上面には、硬貨投入口103が形成されており、その硬貨投入口103から投入された硬貨を硬貨検査部101に案内する図示しない硬貨通路を備える。硬貨通路は、図示しない硬貨進入路と硬貨転動通路とからなる。すなわち、硬貨投入口103の下方に、硬貨進入路が垂直に形成され、さらに、その硬貨進入路に接続されると共に底面が硬貨識別部101に向かって下向きの斜面をなしている硬貨転動通路が形成されている。投入された硬貨は、硬貨転動通路を転動しつつ硬貨検査部101を通過する。硬貨進入路と硬貨転動通路とは、最もサイズの大きな硬貨の直径および厚さに適合した寸法を有している。従って、より小さな硬貨が通過する場合には、硬貨進入路および硬貨転動通路内のその硬貨が通過している部分により大きな空きスペースを生じることになる。硬貨識別装置100は、さらに、その前面からみて反時計周りの方向に回転可能であるように軸105により軸結合されている蓋部材104を備えている。蓋部材104は、軸105に巻回されると共に蓋部材104に時計回りの方向の復元力を与えるバネにより付勢されている。
硬貨投入口103から投入された硬貨は、硬貨侵入路を垂直に落下して硬貨侵入路と硬貨転動通路との接続部分にいたる。硬貨侵入路と硬貨転動通路との接続部分には、硬貨のばたつき、暴れ、揺れ、又は跳ねといった硬貨の不規則な挙動を抑えるための図示しない硬貨押圧手段が配置されている。後に詳述するように、硬貨押圧手段は、硬貨が安定した姿勢を維持し且つ常に所定のコースを転動しつつ通過するように、硬貨の姿勢及び進路を制御する。硬貨は、一定の姿勢及び一定のコースを維持したまま、硬貨転動通路が定義する斜面を転動しつつ降下し、硬貨検査部101を通過する。硬貨検査部101は、3対のセンサコイルを備えており、1対のセンサコイルを使用して硬貨の材質を判定し、残りの2対の対のセンサコイルを使用して硬貨の直径及び厚さを判定する。これらの3つの要素に基づいて硬貨の真偽及び金種を判定し、真正であると判定された硬貨は、硬貨分類手段102により硬貨受入通路106aを介して硬貨収容部に案内されて収容され、一方、偽造硬貨であると判定された硬貨は、硬貨収容部には収容されず、硬貨返却口106bから返却される。
図4は、硬貨識別装置100を蓋部材104の前面方向から見た透視図である。硬貨投入口103から投入された硬貨は、硬貨進入路107を落下した後、例外的場合を除き、硬貨進入路107と硬貨転動通路108との接続部分にいたる。硬貨進入路107と硬貨転動通路108とは、最もサイズの大きな硬貨の直径および厚さに適合した寸法を有しているため、より小さな硬貨が通過する場合には、硬貨進入路107及び硬貨転動通路108内の硬貨が通過している部分により大きな空きスペースを生じる。従って、硬貨進入路107を落下する硬貨のコースを一定に維持するために硬貨案内部材113を蓋部材104の背面に配接する。硬貨案内部材113の奏する効果を説明するために、硬貨案内部材113が存在しない状況を仮定する。硬貨進入路107及び硬貨転動通路108の寸法に適合した硬貨、例えば、500円硬貨が投入された場合には、500円硬貨は、硬貨進入路の側壁114に沿って硬貨進入路107内を落下して硬貨進入路107と硬貨転動通路108との接続部にいたり、硬貨押圧手段109によってその姿勢及びコースを安定化されて、その安定した姿勢及びコースを維持したまま上記の3対のセンサコイルを通過する。従って、硬貨進入路107及び硬貨転動通路108の寸法に適合した寸法の硬貨の場合には、問題はない。
これに対して、本発明の硬貨識別装置100の場合には、硬貨進入路107及び硬貨押圧手段109に極めて近接して上記の3対のセンサコイルが配置されているため、硬貨進入路107の寸法よりも小さな寸法の硬貨の場合に問題がある。すなわち、以下で説明するのは、上記の例外的な場合である。例えば、小さな直径および厚さの50円硬貨が投入された場合に、厚さが小さいため、50円硬貨の不規則な動作によって投入された50円硬貨が硬貨進入路107の側壁114に沿って落下せず、硬貨転動通路108よりにそれて落下する場合も想定される。かかる場合には、第1に、その投入された50円硬貨は、硬貨押圧手段109を通過せず、硬貨押圧手段109による姿勢及びコース制御を経ることなく硬貨転動通路108を隔てて対抗して配置されたセンサコイル対の間を通過することとなる。これは、センサコイル対によって測定されるインピーダンスの変化のパターンに影響を与え、材質及び幾何学的形状の精密な判別を不可能にする。第2に、センサコイル対の一方または双方を斜めに横切って通過することにより、硬貨がセンサコイルの中心を通過しないこととなるため、主として材質の精密な判別を不可能にする。
従って、硬貨案内部材113は、特に、サイズ変化が大きい複数種類の硬貨が使われるように設計された硬貨識別装置において極めて重要になる。かかる事情に鑑みて、硬貨進入路107内での硬貨の流れに規則性を持たせるべく、硬貨案内部材113を配設する。硬貨案内部材113は、硬貨押圧手段109とは独立に動作するものであり、本願発明においては、必ずしも必須の要件ではない。しかしながら、硬貨押圧手段109との組み合わせにおいて使用することにより、より硬貨の識別精度を向上させることが可能である。具体的には、硬貨案内部材113は、蓋部材104の背面に形成された図示しない開口部から蓋部材104の背面に垂直に突出するように図示しないばね等により付勢されており、硬貨の縁が硬貨案内部材113と接触して硬貨案内部材113を押圧しながら落下することにより、硬貨案内部材113は、硬貨の落下を妨げないように、且つ、硬貨を側壁114に向かって押すように、徐々に開口部の内側に退避する。硬貨案内部材113は、その長さ方向の辺が、硬貨進入路107の側壁114に対して鋭角をなして傾斜しつつ下向きに向くように配設され、それによって、硬貨進入路107の側壁114の方に硬貨案内部材113と接触しつつ落下する硬貨を移動させる。硬貨の接触によって所定の力よりも大きな力が硬貨案内部材113に加わった場合には、硬貨案内部材113は、硬貨を通過させるために硬貨進入路107から開口部内に退避する。これにより、硬貨の種類にかかわらず、投入された硬貨は、すべて、硬貨進入路107の側壁114に沿って落下することを確保される。
さらに、硬貨進入路107と硬貨転動通路108が最もサイズの大きな硬貨の直径および厚さに適合した寸法を有していることに起因して、直径及び厚さの小さな硬貨ほど、硬貨進入路107と硬貨転動通路108との接続部において、ばたつき、暴れ、揺れ、又は跳ねといった不規則な挙動をしやすい。従って、硬貨進入路107と硬貨転動通路108との接続部分には、硬貨押圧手段109が配置されており、その不規則な挙動を抑えるように動作する。硬貨押圧手段109は、蓋部材104の背面と対向して硬貨転動通路108を定義する壁面に硬貨を瞬間的に押圧することにより、硬貨の姿勢を安定させ、且つ、硬貨がその姿勢を維持したまま所定のコースを通るようにする。すなわち、硬貨転動通路108を回転しながら通過する硬貨とセンサコイル110乃至112との間の距離の最小値を硬貨の種類にかかわらず一定に保つように作用する。
硬貨押圧手段109によってその姿勢及び進路を制御された硬貨は、回転しながら硬貨転動通路108の底面を定義する斜面を移動し、硬貨転動通路108を挟んで対向配置された3対のセンサコイル110乃至112のそれぞれの間を通過する。例えば、センサコイル110を使用して硬貨の材質を判定し、センサコイル111を使用して硬貨の直径を判定し、センサコイル112を使用して硬貨の厚さを判定するように構成することが可能である。上記の構成は、一例に過ぎず、例えば、センサコイル110及びセンサコイル112のそれぞれが単独で硬貨の材質と厚さの双方を判定することも可能である。従って、センサコイル及び112をそれぞれ異なった周波数で、例えば、センサコイル110を低い周波数でセンサコイル112を高い周波数で動作させることにより、硬貨の材質に関するより詳細なデータを取得することも可能である。すなわち、周波数が高くなるほど表皮効果の深さは小さくなるので、同一の硬貨について異なる深さの材質に関するデータを取得することが可能である。さらに、センサコイルをRF領域の周波数で動作させる場合には、硬貨に流れる電流は、表面に近い極めて浅い領域のみに流れるので、硬貨表面のごく微細な形状の変化を判別することも可能となる。
センサコイル110乃至112は、それぞれ、蓋部材104の前面と背面との間に配置された1つのコイルと、蓋部材104の背面と対向して硬貨転動通路108を定義する壁面の背後に配置された1つのコイルとからなる対を成している。対を成す一方のコイルに交流電源を接続し、磁界を誘起させ、他方のコイルに流れる誘導電流を計測することにより、コイル対全体としてのインピーダンスを測定することが可能である。上記のインピーダンスは、対を成す2つのコイルのそれぞれの自己インダクタンスとその2つのコイル間の相互インダクタンスとによって決定される。2つのコイルの間を硬貨が通過すると上記の相互インダクタンスが変化し、従って、センサコイル110乃至112は、上記のインピーダンスの変化のパターンを判定することにより硬貨の材質及びその幾何学的形状を判定する。2つのコイルの間の相互インダクタンスは、2つのコイルと硬貨との間の幾何学的位置関係と、硬貨の材質及び幾何学的形状とによって決定される。従って、硬貨の真偽及び種類、すなわち、硬貨の材質及びその幾何学的形状を精密に判定するためには、硬貨の種類にかかわらず、2つのコイルと硬貨との間の幾何学的位置関係を一定に保つことが重要となる。
センサコイル110乃至112を過ぎると、硬貨転動通路108は、矢印"v"で示される方向の経路と矢印"i"で示される方向の経路の2つの経路に分岐する。すなわち、硬貨転動通路108は、真正な硬貨であると判定された硬貨を硬貨収容部に案内する経路"v"と、偽造硬貨であると判定された硬貨を硬貨返却口106bに案内する経路"i"とに分岐する。硬貨転動通路108が分岐する箇所には、図示しないソレノイドによって駆動される板状の硬貨振り分け部材112が配置されている。硬貨が投入されていない状態及び投入された硬貨が偽造硬貨であると判定された状態においては、ソレノイドは、駆動されておらず、振り分け部材112は、硬貨転動通路108に突出しており、矢印"v"で示される方向の経路を閉鎖している。投入された硬貨が真正な硬貨であると判定された場合には、ソレノイドを駆動させて振り分け部材112を硬貨転動通路108から退避させる。従って、図示するように、センサコイル110乃至112により真正な硬貨であると判定された硬貨は、矢印"v"で示される方向に案内されて硬貨収容部に収容される。センサコイル110乃至112が偽造硬貨であると判定した硬貨は、矢印"i"で示される方向に誘導され、硬貨返却口106bから返却される。
上記のように、硬貨の種類にかかわらず、対を成す2つコイルと硬貨との間の幾何学的位置関係を一定に保つことは重要であり、硬貨押圧手段109は、硬貨転動通路108を回転しながら通過する硬貨とセンサコイル110乃至112の間の距離の最小値を硬貨の種類にかかわらず一定に保つように作用する。硬貨押圧手段109は、図5A、図5B、及び第6図に示されているレール部材200と硬貨当接部材300とからなる。
第6図に示されているように、硬貨当接部材300は、図示しないバランスウェイトを収容する本体部301と、本体部の底部から延在している2つの衝撃伝達用の腕303と、本体部の上部から延在している2つ硬貨押圧用の腕302と、本体部の両側面から延在している軸304とからなる。2つの衝撃伝達用の腕303は、衝撃伝達部として機能し、2つの硬貨押圧用の腕302は、硬貨押圧部として機能する。衝撃伝達用の腕303と硬貨押圧用の腕302は、硬貨当接部材300の本体301からみて同じ方向に延在している。硬貨当接部材300は、通常、センサコイル110乃至112が放射する磁界に影響を与えないようにプラスティック等の樹脂によって形成される。バランスウェイトは、通常、比重の大きな銅等の金属材料からなる。硬貨当接部材300の本体301は、複数のバランスウェイトを収容することが可能であり、バランスウェイトの数によって硬貨の質量と硬貨当接部材300の質量との間の最適な関係を実現する。代替的に、硬貨当接部材300の本体部301と1つ又は複数のバランスウェイトとは、一体成型することも可能である。また、1又は複数のバランスウェイトを収容することにより、回転軸304を基準として硬貨当接部材300の重心が衝撃伝達用の腕303及び硬貨押圧用の腕302と反対の側に位置することを確実にする。硬貨当接部材300は、蓋部材104の前面と背面との間に軸304により回転可能に軸結合されるが、上記のように回転軸304を基準として硬貨当接部材300の重心が衝撃伝達用の腕303及び硬貨押圧用の腕302と反対の側に位置するため、硬貨が投入されていない状態では、硬貨当接部材は、硬貨押圧用の腕302がその延在している方向にさらに突出するように回転することはなく、むしろ、硬貨当接部材300は、硬貨当接部材300の自重によって硬貨押圧用の腕302が硬貨転動通路108には突出しない位置に付勢されている。上記では、硬貨当接部材300が1つ又は複数のバランスウェイトによって付勢されている例を説明したが、代替的に、硬貨当接部材300は、硬貨当接部材300の回転軸304を基準として硬貨押圧用の腕302と衝撃伝達用の腕303とは反対の方向に位置するように硬貨当接部材に取り付けられた少なくとも1つのスプリング部材によって付勢されてもよい。
図5Aを参照すると、レール部材200は、基部201とその基部201から突出している突出部202とからなる。基部201は、突出部202と比較して大きな質量を有している。従って、レール部材200の重心は、基部201の部分にある。レール部材200は、所定の幅を持った帯の形状の凹部にその基部201が収容されることにより支承される。上記の同心状の帯の形状の凹部の半径方向の幅は、レール部材200が上下に回転運動することができるようにレール部材200の基部201の幅に適合している。レール部材は、落下する硬貨の運動エネルギーによって回転する必要があるため、慣性モーメントが大きくなるような比重の大きな材料で形成するのは好ましくない。比較的比重の小さなプラスティック等の樹脂によって形成するのが好ましいが、耐久性の観点からその表面をステインレススチール等の金属部材によって被覆するのが好ましい。
図5A及び図5Bを参照すると、硬貨当接部材300は、蓋部材104の背面400と図示しない前面との間に軸304により回転可能に軸結合される。一方、レール部材200は、所定の幅を持った帯の形状の凹部にその基部201が収容されることにより支承され、硬貨が投入されていない状態では、レール部材200の底面と硬貨当接部材300の衝撃伝達用の腕303とが接しており、レール部材200は、硬貨当接部材300の衝撃伝達用の腕303によって支持されて安定位置に付勢されている。硬貨当接部材300及びレール部材200が安定位置にある状態で、硬貨当接部材300の回転軸304の中心と衝撃伝達用の腕303の上面とを結ぶ直線が基平面502に対してなす角度α1を第1の角度とする。基平面502は、硬貨識別装置100が水平に配置されたときに水平面に平行な平面を形成する。図5Bにおいて、レール部材は、上下方向、すなわち、時計回りの方向と反時計回りの方向に回転可能であるように支承されているが、時計回りの方向の回転は、蓋部材104の背面400によって制限され、反時計回りの方向の回転は、図示しないストッパ手段によって制限されている。従って、レール部材200は、安定位置から反時計回りの方向に所定の角度範囲でのみ回転可能である。レール部材200の質量は、バランスウェイトを備えた硬貨当接部材300の質量と比較して無視できるほど小さいので、レール部材200と硬貨当接部材300とからなる硬貨押圧手段109の全体としての重心の位置は、硬貨当接部材300の重心の位置とほぼ一致すると考えてよい。上記のように、硬貨当接部材300は、その本体部301が1又は複数のバランスウェイトを収容するため回転軸304を基準として硬貨当接部材300の重心が衝撃伝達用の腕303及び硬貨押圧用の腕302と反対の側に位置するようにすることにより、時計回りの回転方向に向かう外力によって付勢されている。硬貨当接部材300は、その回転軸304により回転可能であるように支持されているので、時計回りの方向と反時計回りの方向とに回転可能であるが、時計回りの方向の回転は、硬貨当接部材300の衝撃伝達用の腕303の上面がレール部材200の底面に当接することにより制限される。従って、レール部材200が安定位置にある状態においては、回転軸304の中心と衝撃伝達用の腕303の上面とを結ぶ直線は、基平面502に対して第1の角度α1をなしており、硬貨押圧用の腕302は、硬貨通路108から退避している。
硬貨が投入されると、その硬貨が硬貨進入路107の下端に位置するレール部材200の突出部202の上面に当接することにより、レール部材200の突出部202は、反時計回りの方向に回転する。上記のように、レール部材200は、硬貨当接部材300の衝撃伝達用の腕303によって支持されているので、レール部材の回転に伴って硬貨当接部材も同じ方向に回転する。硬貨自身の重量により、投入された硬貨がレール部材200及び衝撃伝達用の腕303に与える回転のエネルギーの大きさは異なる。従って、硬貨自身の重量によってレール部材200及び硬貨当接部材300の回転の速度は異なる。硬貨が投入されていない状態では、硬貨当接部材300の衝撃伝達用の腕303の上面とレール部材200の底面とは接触しているが、硬貨がレール部材200に当接した時点からあるいはレール部材200と硬貨当接部材300がある角度回転した時点から、硬貨当接部材300の衝撃伝達用の腕303の上面とレール部材200の底面とは離れて回転する。離れる位置は、投入された硬貨の重量によって決定される。レール部材200は、ある所定の角度だけ回転して図示しないストッパ手段によってその回転を止める。このときの硬貨当接部材300の回転軸304の中心と衝撃伝達用の腕303の上面とを結ぶ直線が基平面502に対してなす角度α2を第2の角度とする。また、この状態におけるレール部材200の位置を硬貨受け止め位置と称し、硬貨当接部材300の位置を復帰位置と称する。硬貨受け止め位置においては、レール部材200は、蓋部材104の背面400に対向する硬貨転動通路108の他方の面503に向かって降下する斜面を突出部202が形成するように傾斜し、それによって硬貨が所定のコースを通過するのを確実にするように作用する。
硬貨当接部材300が安定位置と復帰位置にある間は、硬貨押圧用の腕302は、硬貨通路108に突出していない。レール部材200は、硬貨当接部材300の回転軸304の中心と衝撃伝達用の腕303の上面とを結ぶ直線が基平面502に対して第2の角度α2をなすときに、硬貨受け止め位置にあり、その位置で図示しないストッパ手段によって停止する。一方、硬貨当接部材300は、レール部材200及び衝撃伝達用の腕303を介して与えられた回転のエネルギーにより自身の質量の慣性で回転を継続する。硬貨当接部材300の回転軸304の中心と衝撃伝達用の腕303の上面とを結ぶ直線が基平面502に対してなす第2の角度α2を超えて硬貨当接部材300が回転した瞬間、すなわち、硬貨当接部材300が復帰位置を越えて反時計回りの方向に回転した瞬間に、硬貨押圧用の腕302は、硬貨通路108内に突出し始め、その後の回転により、蓋部材104の背面400と対抗する他方の面503に向かって硬貨を押圧する。
硬貨当接部材300が蓋部材104の背面400に対向する面に向かって硬貨を完全に押圧した状態で、硬貨当接部材300の反時計回りの方向への回転角は、最大値に達する。この状態において、硬貨当接部材300の回転軸304の中心と衝撃伝達用の腕303の上面とを結ぶ直線が基平面502に対してなす角α3を第3の角度とし、このときの硬貨当接部材300の位置を硬貨押圧位置と称する。ここで、α2−α1=θ、α3−α2=Δθとすると、硬貨当接部材300の反時計回りの方向への回転角φが0≦φ≦θである範囲では、硬貨押圧用の腕302は、開口部405から硬貨転動通路108内には突出しておらず、θ<φ≦θ+Δθとなる範囲内で、硬貨押圧用の腕302は、開口部405から硬貨転動通路108内に突出することとなる。従って、0≦φ≦θである範囲を退避領域、θ<φ≦θ+Δθである範囲を突出領域と称する。また、上記のように、硬貨当接部材300の衝撃伝達用の腕303の上面とレール部材200の底面とは、0≦φ≦θの範囲に属するいずれかの角度φ0に達した時点から離れて回転する。
上記のように、硬貨当接部材300は、0≦φ≦θの範囲に属するいずれかの角度φ0に達するまではレール部材200の回転に伴って回転して復帰位置に至るが、復帰位置においては、硬貨当接部材300の硬貨押圧用の腕302は、硬貨通路108には突出していない。レール部材200は、硬貨当接部材300が復帰位置にあるときに、硬貨受け止め位置において図示しないストッパ手段によってその回転を止められるが、硬貨当接部材300は、自身の持つ質量による慣性によってその後も回転する。復帰位置を過ぎると、硬貨押圧用の腕302は、硬貨転動通路108内に突出する。その後、硬貨当接部材300は、硬貨当接部材300の回転軸304の中心と衝撃伝達用の腕303の上面とを結ぶ直線が基平面502に対して第3の角度α3をなす硬貨押圧位置にまで回転するため、レール部材200の底面と衝撃伝達用の腕303の上面との間には、所定の間隙、すなわち、遊びを生ずる。硬貨押圧用の腕302によって硬貨を押圧した硬貨当接手段300は、硬貨との衝突による反発力と、硬貨当接部材300の重心が回転軸304を基準として衝撃伝達用の腕303及び硬貨押圧用の腕302と反対の側に位置することに起因する時計回りの回転方向に働く外力とによって、瞬間的に硬貨を押圧した後、硬貨が当接しておりストッパ手段によって停止させられているレール部材200によって制限されるため、硬貨当接部材300の回転軸304の中心と衝撃伝達用の腕303の上面とを結ぶ直線が基平面502に対して第2の角度α2をなす復帰位置にまで瞬時に回転して停止する。それに伴って、硬貨押圧用の腕302は、瞬時に硬貨転動通路108から退避する。
第7図及び第8図は、蓋部材104の背面400を示す図である。第7図は、硬貨が投入されていないときの蓋部材104の背面400の様子を示しており、硬貨当接部材300は、硬貨転動通路108から退避している。第8図は、投入された硬貨がレール部材200の上面に当接して硬貨当接部材300が硬貨転動通路108に突出している状態を示している。尚、図面の明瞭さの観点から、投入された硬貨は、図示されていない。
硬貨は、401で示されている位置から投入される。上記のように、投入された硬貨を図示しない硬貨検査部に案内する硬貨通路は、硬貨進入路107と硬貨転動通路108とからなる。硬貨進入路107は、蓋部材の背面400と、背面400に対向する図示しない他方の面と、蓋部材104の側面402と、その側面に対向する面とによって規定される。硬貨進入路107の寸法は、もっとも大きな直径を有する種類の硬貨に適合して規定されている。従って、その直径よりも小さな直径を有する硬貨が投入された場合には、蓋部材104の側面402とそれに対向する面との間の間隔が大きいため、投入された硬貨がレール部材200に案内されないといった事態が想定される。従って、図示のように、蓋部材104の背面に硬貨案内部材403を配設し、その硬貨案内部材403によって投入された硬貨を側面402に沿って落下するように案内する。硬貨案内部材403は、開口部405から蓋部材104の背面400に垂直に突出するように図示しないばね等により付勢されており、投入された硬貨が硬貨案内部材403に接して硬貨案内部材403を押し圧しつつ落下する際に、側面402と硬貨案内部材403との間の距離が硬貨の直径よりも小さくなった時点から徐々に開口部405内に退避する。この硬貨案内部材403は、投入された硬貨が側面402に沿って硬貨進入路107内を落下することを確保する。
硬貨進入路107の下端、すなわち、硬貨進入路107と硬貨転動通路108との接続部分には、レール部材200が配設されている。レール部材200は、硬貨当接部材300の回転軸を中心として半径方向に所定の幅を持った同心状の帯の形状の凹部にレール部材200の基部が収容されることにより支承される。上記の同心状の帯の形状の凹部は、蓋部材の背面400と蓋部材の図示しない前面との間にあり、同心状の帯の形状の凹部の半径方向の幅は、レール部材200が上下に回転運動することができるようにレール部材200の基部の幅に適合している。レール部材200は、硬貨が投入されていない状態では、レール部材200の底面と硬貨当接部材300の衝撃伝達用の腕とが接しており、レール部材200は、硬貨当接部材300の衝撃伝達用の腕によって支持されて安定位置に付勢されている。硬貨が位置401から投入されてレール部材200に当接すると、レール部材200は、硬貨受け止め位置にまで回転し、ストッパ406によってその位置で回転を停止する。硬貨受け止め位置においては、レール部材200は、蓋部材104の背面400に対向する硬貨転動通路108の他方の面に向かって降下する斜面を形成するように傾斜し、それによって硬貨が所定のコースを通過するのを確実にするように作用する。
レール部材200は、硬貨当接部材300の衝撃伝達用の腕によって支持されているので、レール部材200の回転に伴って硬貨当接部材300も同じ方向に回転する。レール部材200は、ある所定の角度だけ回転してストッパ手段406によってその回転を止める。レール部材200が硬貨受け止め位置にあるとき、硬貨当接部材300は、復帰位置にある。硬貨当接部材300が安定位置と復帰位置にある間は、硬貨押圧用の腕は、硬貨転動通路108に突出していない。レール部材200が硬貨受け止め位置でストッパ手段406によって停止させられた後も、硬貨当接部材300は、レール部材200及び衝撃伝達用の腕を介して与えられた回転のエネルギーにより自身の質量の慣性でその後も回転し、従って、硬貨当接部材300の衝撃伝達用の腕の上面は、硬貨がレール部材200に当接した時点からあるいは硬貨当接部材300が安定位置と復帰位置との間にあるいずれかの位置を通過した時点から、レール部材200の底面から離れ、硬貨当接部材300は、硬貨転動通路108内に突出する。硬貨当接部材300は、硬貨転動通路108内に突出し、蓋部材104の背面400と対抗する他方の面に向かって硬貨を押圧する。硬貨当接部材300が蓋部材104の背面400に対向する面に向かって硬貨を完全に押圧した状態で、硬貨当接部材300の回転角は、最大値に達し、硬貨当接部材300は、硬貨押圧位置に達する。硬貨当接部材300は、硬貨押圧位置にまで回転するため、硬貨当接部材300と硬貨受け止め位置で止められているレール部材200の底面との間には所定の間隙、すなわち、遊びを生ずる。硬貨を押圧した硬貨当接部材300は、瞬間的に硬貨を押圧した後、硬貨との衝突による反発力と、硬貨当接部材300の重心が回転軸を基準として衝撃伝達用の腕及び硬貨押圧用の腕と反対の側に位置することに起因して時計回りの回転方向に働く外力とにより、レール部材200がストッパ手段によって停止させられている硬貨受け止め位置に対応する復帰位置にまで瞬時に回転する。それに伴って、硬貨押圧用の腕302は、瞬時に硬貨転動通路108から退避する。
上記のように、硬貨当接部材300は、投入された硬貨を押圧してその硬貨の姿勢及び転動のコースを瞬間的に安定させた後、速やかに硬貨転動通路108から開口部405内に退避する。従って、投入された硬貨は、その運動を停止させられることはない。さらに、硬貨転動通路108の底面を規定する斜面404は、レール部材200が硬貨受け止め位置にあるときに背面400に対してなす傾斜角と等しい角度だけ傾斜して形成されている。従って、レール部材200が硬貨を受け止めている状態では、レール部材200と斜面404との間に段差はない。従って、投入された硬貨は、レール部材200を経て安定した姿勢及びコースを維持したまま斜面404を転動する。
斜面404が配設されている部分には、硬貨転動通路108を隔てて蓋部材104の背面400の内側及びその背面400に対向する他方の面の内側に対向する形で図示しない3対のセンサコイルが配置されている。上記のように、硬貨識別装置の硬貨進入路107及び硬貨転動通路108は、通常、最もサイズの大きな硬貨に適合するように形成されている。ここで、硬貨案内部材403を配設しない場合を仮定する。硬貨進入路107及び硬貨転動通路108の寸法に適合した硬貨、例えば、500円硬貨が投入された場合には、500円硬貨は、蓋部材104の側面402に沿って硬貨進入路107内を落下し、レール部材200に衝突した後、硬貨当接部材300によってその姿勢及びコースを安定化されて、その安定した姿勢及びコースを維持したまま上記の3対のセンサコイルを通過する。従って、硬貨進入路107及び硬貨転動通路108の寸法に適合した寸法の硬貨の場合には、問題はない。
本発明の硬貨識別装置の場合には、硬貨進入路107、レール部材200及び硬貨当接部材300に極めて近接して上記の3対のセンサコイルが配置されているため、硬貨進入路107の寸法よりも小さな寸法の硬貨の場合に問題がある。すなわち、例えば、小さな直径および厚さの50円硬貨が投入された場合に、直径が小さいため、50円硬貨の不規則な挙動によって投入された50円硬貨が硬貨進入路107を垂直に落下せず、硬貨転動通路108よりにそれて落下する場合も想定される。かかる場合には、第1に、その投入された50円硬貨は、レール部材200に衝突することなく、すなわち、硬貨当接部材300による姿勢及びコース制御を経ることなく硬貨転動通路108を隔てて対抗して配置されたセンサコイルの間を通過することとなる。これは、センサコイルによって測定されるインピーダンスの変化のパターンに影響を与え、材質及び幾何学的形状の精密な判別を不可能にする。第2に、センサコイル対の一方または双方を斜めに横切って通過することにより、硬貨がセンサコイルの中心を通過しないこととなるため、主として硬貨の材質の精密な判別を不可能にする。
従って、硬貨案内部材403は、特に、サイズ変化が大きいコインが使われるように設計された硬貨識別装置において極めて重要になる。上記のように、かかる硬貨識別装置において、大きな硬貨に適合する通路に沿って小さな硬貨の移動を制御することは困難である。かかる事情に鑑みて、硬貨進入路107内での硬貨の流れに規則性を持たせるべく、硬貨案内部材403を配設する。硬貨案内部材403は、レール部材200及び硬貨当接部材300とは独立に動作するものであり、本願発明においては、必ずしも必須の要件ではない。しかしながら、レール部材200及び硬貨当接部材300からなる硬貨押圧手段と組み合わせて使用することにより、より硬貨の識別精度を向上させることが可能である。具体的には、硬貨案内部材403は、開口部405から蓋部材104の背面400に垂直に突出するように図示しないばね等により付勢されている。硬貨案内部材403は、その長さ方向の辺が、蓋部材104の側面402に対向する他方の側面から当該側面402に向かって降下するように、側面402に対して鋭角をなして傾斜して配設され、それによって、硬貨進入路107を定義する蓋部材104の側面402側の方に硬貨案内部材403に接しつつ落下する硬貨を移動させる。硬貨は、硬貨案内部材403に接しつつ落下し、硬貨案内部材403と蓋部材104の側面402との間の距離が硬貨の直径よりも小さくなった時点から、硬貨を通過させるために硬貨進入路107から開口部405内に徐々に退避する。これにより、硬貨の種類にかかわらず、投入された硬貨は、すべて、蓋部材104の側面402に沿って落下することを確保される。従って、上記で例示した50円硬貨等の直径及び厚さの小さな硬貨も、蓋部材104の側面402に沿って落下し、レール部材200に確実に衝突することとなる。
第9図乃至第13図は、第1図乃至第3図において示されている硬貨識別装置100のA-A'に沿った面の断面図を示す図である。硬貨識別装置100の上面には、硬貨投入口103が形成されており、硬貨投入口103の下方に、硬貨進入路107が形成されている。硬貨進入路107は、蓋部材104の背面400とその背面400に対向しかつ平行に位置する面503とレール部材200とによって定義されている。レール部材200の下方には、水平に配置された基平面502がある。蓋部材104の背面400に対抗して配置された面503は、基平面502を基準として反時計回りの方向にわずかな角度だけ傾斜して配置され、蓋部材104の背面400も、同様に、基平面502を基準として反時計回りの方向にわずかな角度だけ傾斜して配置されており、面503及び背面400は、平行な対を成している。レール部材200は、硬貨進入路107の下端に位置しており、その上面が、背面400から面503に向かって降下する斜面を形成するように配置されている。従って、面503及び背面400が共に基平面502を基準として反時計回りの方向にわずかな角度だけ傾斜して配置されることにより、硬貨501画面503にもたれかかった形で転動することを確保する。
レール部材200の下方には、硬貨当接部材300の衝撃伝達用の腕303が配置される。硬貨当接部材300は、硬貨進入路107の外側で、且つ、蓋部材104の背面400に形成された開口部405内に収容されている。硬貨当接部材300は、蓋部材104の前面と背面との間に図示しない回転軸により回転可能に軸結合される。硬貨当接部材300は、1又は複数のバランスウェイト305を収容する本体部301と、本体部の底部から延在している衝撃伝達用の腕303と、本体部の頂部から延在している硬貨押圧用の腕302とからなる。衝撃伝達用の腕303と硬貨押圧用の腕302は、硬貨当接部材300の本体301からみて同じ方向に延在している。硬貨当接部材300の本体301は、1又は複数のバランスウェイトを収容することが可能であり、バランスウェイトの数によって硬貨の質量と硬貨当接部材300の質量との間の最適な関係を実現する。また、1又は複数のバランスウェイトを収容することにより、回転軸を基準として硬貨当接部材300の重心が衝撃伝達用の腕303及び硬貨押圧用の腕302と反対の側に位置することを確実にする。
第9図は、硬貨501が硬貨進入路107を落下しつつある状況を図示しており、第10図は、硬貨501がレール部材200に当接した状態を図示している。投入された硬貨が硬貨進入路107の下端に位置するレール部材200に当接することにより、レール部材200は、反時計回りの方向に回転する。一方、硬貨当接部材300の衝撃伝達用の腕303は、レール部材200の底面に接して配置されているため、回転するレール部材200は、硬貨当接部材300の衝撃伝達用の腕303を押し、硬貨当接部材300は、レール部材200の回転に伴って同じ方向に回転する。すなわち、レール部材200は、回転軸の周りに回転して、硬貨当接部材300の衝撃伝達用の腕303を押すことにより、落下してきた硬貨を受け止めた際の衝撃を硬貨当接部材300の衝撃伝達用の腕303に伝達する。硬貨の運動エネルギーは、レール部材200及び衝撃伝達用の腕303を介して硬貨当接部材300に伝達される。硬貨501が投入されてレール部材200に当接し、レール部材200は、硬貨受け止め位置にまで回転し、図示しないストッパ手段によってその位置で回転を停止する。硬貨受け止め位置においては、レール部材200は、蓋部材104の背面400からその背面400に対抗する他方の面503に向かって降下する斜面を形成するように傾斜し、それによって硬貨が所定のコースを通過するのを確実にするように作用する。レール部材200が硬貨受け止め位置にあるとき、硬貨当接部材300は、復帰位置にある。硬貨当接部材300が安定位置と復帰位置にある間は、硬貨押圧用の腕302は、硬貨転動通路108に突出していない。
第11図は、硬貨当接部材300が図示しない回転軸の周りに反時計方向に回転し硬貨501を上記の他方の面503に押圧している状態を示している。レール部材200が硬貨受け止め位置で図示しないストッパ手段によって停止させられた後も、硬貨当接部材300は、レール部材200及び衝撃伝達用の腕303を介して与えられた回転のエネルギーにより自身の質量の慣性でその後も回転し続け、硬貨当接部材300は、硬貨転動通路108内に突出する。伝達された運動エネルギーにより、硬貨当接部材300は、回転軸の周りに回転して硬貨押圧位置に達する。硬貨押圧用の腕302は、蓋部材104の背面400と対抗する他方の面503に向かって硬貨501を押圧する。硬貨当接部材300が蓋部材104の背面400に対向する他方の面503に向かって硬貨を完全に押圧した状態で、硬貨当接部材300の回転角は、最大値に達し、硬貨当接部材300は、硬貨押圧位置に達する。硬貨当接部材300は、硬貨押圧位置にまで回転するため、硬貨当接部材300の衝撃伝達用の腕303の上面と硬貨受け止め位置で止められているレール部材200の底面との間には所定の間隙、すなわち、遊びを生ずる。さらに、硬貨当接部材300の本体301が1又は複数のバランスウェイト305を収容するため、硬貨当接部材300全体の重心は、回転軸を基準として衝撃伝達用の腕303及び硬貨押圧用の腕302と反対の側に位置している。硬貨501を押圧した硬貨当接部材300は、瞬間的に硬貨を押圧した後、硬貨501との衝突による反発力と、硬貨当接部材300の重心が回転軸を基準として衝撃伝達用の腕及び硬貨押圧用の腕と反対の側に位置することに起因して時計回りの回転方向に働く外力とにより、レール部材200がストッパ手段によって停止させられている硬貨受け止め位置に対応する復帰位置にまで時計回りの方向に瞬時に回転する。それに伴って、硬貨押圧用の腕302は、瞬時に硬貨通路108から退避する。
第12図は、硬貨当接部材300が開口部405に退避した状態を示している。ここで注意すべきことは、レール部材200と硬貨当接部材300の衝撃伝達用の腕303とは、一体成型されているわけではないので、レール部材200と硬貨当接部材300とは独立に運動するということである。すなわち、硬貨当接部材300は、瞬間的に硬貨501を押圧して硬貨501の姿勢と転動コースとを安定させるが、硬貨501との衝突による反発力と、硬貨当接部材300の重心が回転軸を基準として衝撃伝達用の腕303及び硬貨押圧用の腕302と反対の側に位置することに起因して時計回りの回転方向に働く外力とにより、瞬時に復帰位置にまで復帰する。すなわち、硬貨当接部材300は、硬貨501を押圧した後直ちに、時計回りの方向、すなわち、最初の回転の方向とは逆の方向に回転を開始し、硬貨501を開放する。従って、レール部材200に硬貨501が乗っているにもかかわらず、開口部405内に退避する。硬貨当接部材300が復帰位置を越えて反時計方向に回転を開始した後、復帰位置に戻るまでの間、レール部材200は、一切運動することはない。また、硬貨当接部材300は、瞬間的に硬貨501を押圧して硬貨501の姿勢と転動コースとを安定させ、その後直ちに開口部405に退避するため、硬貨501の転動を妨げることがない。
第13図は、硬貨501が、一定の姿勢及び一定のコースを維持したまま、レール部材200を通過して硬貨転動通路108を転動している状態を示している。硬貨501がレール部材200に当接すると、レール部材200は、硬貨受け止め位置まで回転し、蓋部材104の背面400からその背面400に対向する他方の面503に向かって降下する斜面を形成するように傾斜し、それによって硬貨が所定のコースを通過するように作用する。上記のように、硬貨転動通路108の底面を規定する斜面404は、レール部材の傾きの最大値と等しい角度だけ基平面502に対して傾斜して形成されている。従って、レール部材200が硬貨を受け止めている状態では、レール部材200と硬貨転動通路108の斜面との間に段差はない。従って、投入された硬貨は、レール部材200を経て安定した姿勢及びコースを維持したまま硬貨転動通路108の斜面を転動する。硬貨501が通過した後、レール部材200は、元の安定位置に復帰し、それに伴って硬貨当接部材300も、硬貨が投入される前の安定位置に戻る。
従って、上記の硬貨識別装置においては、投入された硬貨が硬貨通路を転動している間、硬貨の種類にかかわらずその硬貨が一定の姿勢及び一定の転動コースを維持することを一瞬の押圧により可能とすることにより、硬貨投入口から硬貨識別部までの距離を最小化することが可能である。さらに、硬貨当接部材が、硬貨を瞬間的に押圧した後、直ちに硬貨通路から退避するため、硬貨を連続的に投入した場合においても硬貨通路における硬貨の詰まりを防止することが可能である。
本願発明の硬貨識別装置の主要部分100を示している斜視図である。 本願発明の硬貨識別装置の主要部分100を示している斜視図である。 本願発明の硬貨識別装置の主要部分100を示している斜視図である。 硬貨識別装置の主要部分を蓋部材の前面方向から見た透視図である。 硬貨押圧手段を構成するレール部材と硬貨当接部材とを示す図である。 硬貨押圧手段を構成するレール部材と硬貨当接部材とを示す図である。 硬貨押圧手段を構成する硬貨当接部材を示す図である。 蓋部材の背面を示す図である。 蓋部材の背面を示す図である。 硬貨が硬貨進入路を落下しつつある状況を図示する図である。 硬貨がレール部材に衝突した状態を図示する図である。 硬貨当接部材が回転軸の周りに反時計方向に回転し硬貨を押圧している状態を示す図である。 硬貨当接部材が開口部に退避した状態を示す図である。 硬貨が一定の姿勢及び一定のコースを維持したまま、レール部材を通過して硬貨通路を転動している状態を示す図である。

Claims (7)

  1. 硬貨検査部を備えた硬貨識別装置であって、
    投入された硬貨を落下させてレール部材の上面に衝突するように案内すると共に、前記レール部材の前記上面から転動した硬貨が硬貨検査部を通過するように案内する硬貨通路と、
    前記レール部材が前記硬貨の衝突によって安定位置から所定の角度だけ回転し、前記硬貨が前記レール部材の上面を通過すると前記安定位置に復帰するように、前記レール部材を揺動自在に支承する支承機構と、
    前記硬貨を前記硬貨通路の壁面に押圧する硬貨押圧部を備え、前記硬貨押圧部が前記硬貨通路から退避する安定位置と前記硬貨押圧部が前記硬貨の押圧を行う押圧位置との間で所定の角度だけ揺動自在に支承された硬貨当接部材とを含み、
    前記硬貨当接部材は、前記硬貨の衝突によって回転する前記レール部材に接触し、前記レール部材からの衝撃力を受けると、前記レール部材から離れて、前記硬貨当接部材を前記押圧位置まで回転させる衝撃伝達部をさらに備え、
    前記硬貨当接部材が前記押圧位置にあるときに、前記硬貨当接部材が前記硬貨通路から退避するのを妨げないように、前記レール部材と前記硬貨当接部材との間に間隔が設けられていることを特徴とする硬貨識別装置。
  2. 請求項1に記載の硬貨識別装置において、前記硬貨通路の壁面に形成された開口部から突出し、前記硬貨通路の下流に向かって所定の角度をなして傾斜して配設され、前記硬貨を前記硬貨通路の一方の側に付勢しつつ前記硬貨を前記レール部材へと誘導する硬貨案内部材をさらに含む硬貨識別装置。
  3. 硬貨検査部を備えた硬貨識別装置であって、
    硬貨通路と、
    硬貨通路の底面の一部を定義し、所定の角度だけ回転可能に支持されたレール部材と、
    前記硬貨通路に隣接して設けられ、所定の角度だけ回転可能に支持された硬貨当接部材であって、前記レール部材の下に延在する衝撃伝達部を備えた硬貨当接部材とからなり、
    前記硬貨当接部材は、第1の回転方向に付勢されており、前記硬貨当接部材の前記第1の回転方向への回転はその衝撃伝達部が前記レール部材に当接することによって制限されており、前記硬貨当接部材の第2の回転方向への回転は前記レール部材によっては制限されておらず、前記第2の回転方向は投入された硬貨が前記レール部材に当接したときの前記レール部材の回転方向であり、前記第2の回転方向に回転したレール部材が前記衝撃伝達部に当接することによって前記硬貨当接部材が少なくとも前記レール部材の回転角度よりも大きな角度だけ該第2の方向に回転する硬貨識別装置。
  4. 請求項1又は3に記載の硬貨識別装置であって、前記レール部材は、前記衝撃伝達部によって支持されている硬貨識別装置。
  5. 請求項3に記載の硬貨識別装置において、前記硬貨当接部材は、前記硬貨当接部材から延在する硬貨押圧部を備え、前記硬貨押圧部は、前記硬貨当接部材が前記第2の回転方向に回転したとき、前記硬貨通路内に突出する硬貨識別装置。
  6. 請求項1又は3に記載の硬貨識別装置において、前記硬貨当接部材は、前記硬貨当接部材の回転軸を基準として前記硬貨押圧部と前記衝撃伝達部とは反対の側に位置するように前記硬貨当接部材に取り付けられた少なくとも1つのバランスウェイトによって付勢される硬貨識別装置。
  7. 請求項1又は3に記載の硬貨識別装置において、前記硬貨当接部材は、前記硬貨当接部材の回転軸を基準として前記硬貨押圧部と前記衝撃伝達部とは反対の方向に位置するように前記硬貨当接部材に取り付けられた少なくとも1つのスプリング部材によって付勢される硬貨識別装置。
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