JP4605690B2 - ワーク切断方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はワーク切断方法、特にレーザ光をワーク上に照射することにより該ワークを切断し、該ワークの板厚より小さい高さのミクロジョイントを加工するようにしたワーク切断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、レーザ加工機を用い、製品の輪郭に沿ってワークを切断する場合に、輪郭全部を切断すると、加工中に製品が散逸し所定の位置で集積できなくなるおそれがある。
【0003】
そのため、例えば図9(A)に示すように、製品Sの輪郭に沿った切断領域Kの途中に、ワークWと製品Sとの連結片Jであるミクロジョイントを形成しておき、加工後に、このミクロジョイントJを除去することにより、製品Sだけを分離し集積している。
【0004】
ところが、ミクロジョイントJの(図9(B))の高さHがワークWの板厚tと同じだとすると、ワークWが厚板の場合には、該ミクロジョイントJの高さHも大きくなり、このようなミクロジョイントJは除去するのが困難な場合がある。
【0005】
そこで、ミクロジョイントJを容易に除去するために、種々の手段が講じられている。
【0006】
例えば、特開平7−16667では、タレットパンチプレスなどで既に形成されたミクロジョイントM1 と(同公報の図1)、製品Gとの境界にレーザビームLBを照射させ、その部分を一部除去してワークWの薄板の厚さt0 程度としている。
【0007】
また、例えば、特開2001−334379では、レーザ加工機によるワークW(同公報の図2(A))の切断加工と同時にミクロジョイントJを加工し、該ミクロジョイントJの高さHを(同公報の図2(B)、図2(C))、ワークWの板厚tよりも小さくしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来技術のうちで、特開2001−334379に開示され手段は、ミクロジョイントJ(同公報の図4(A))の部分を、ワークWの下面32まで貫通しないように切断する方法である。
【0009】
この方法は、加工上の理由から、ワークWの下面32まで貫通しない状態で、切断位置IIからIIIを過ぎてIVまで切断した後(▲2▼)、一旦切断位置IIIに戻り(▲3▼)、該切断位置IIIからワークWを貫通して切断し(▲4▼)、J′とJ′′を除去することにより、前記ミクロジョイントJだけを残すようになっている。
【0010】
しかし、この方法は、前記した加工順序から分かるように、ミクロジョイントJの近傍は、レーザ光が2回照射されるのと同じ状態となり、本願の図10に示すように、溶融金属が付着すると共に変色する領域eが形成され、また、切断位置IIIでは、レーザ出力が急激に上昇することから、図示するように、凹みa、bが形成されると共に、その周囲の領域c、dが変色する。
【0011】
その結果、従来のワーク切断方法では、ワークWと製品Sとを連結するミクロジョイントJの近傍の品質が劣化し、加工後に、このようなミクロジョイントJを除去しても、ワークWから分離した製品Sは、製品としての価値が無く、再度加工をし直さなければならず、加工効率が著しく低下する。
【0012】
また、従来は、ミクロジョイントJを加工する場合に、切断条件のうちの切断速度Vと(特開2001−334379の図4(B))切断出力Pとアシストガス圧Gの3つを制御対象としている。
【0013】
これら3つの切断条件を、加工開始位置である切断位置IIで変更し、そのままの状態で切断位置IIIを過ぎてからIVで変更し、変更後IIIに戻ってからまた変更するというように、3回も変更し、それに伴って、加工ヘッドも前記切断位置II→III→IVと加工しながら前進した後、IV→IIIと加工しないで早送りで戻る。
【0014】
その結果、切断条件の制御機構が複雑になり、それに伴って、全体のワーク切断時間が長くなって動作が遅くなり、この点でも、加工効率が低下する。
【0015】
更に、従来は、ワークWが(本願の図10)厚板の場合には、ミクロジョイントJを加工しようとすると、ワークWが厚い分だけレーザ光の照射時間が長くなる。
【0016】
その結果、既述した品質劣化や動作の遅延が一層著しくなり、厚板のワークWには対応できないので、加工対象であるワークの板厚が制限され、加工範囲が狭められている。
【0017】
本発明の目的は、ワークの板厚より小さい高さのミクロジョイントを加工する場合に、品質の向上と動作の迅速化を図ることにより、加工効率を向上させ、板厚の制限を無くすことにより、加工範囲を拡大する。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、
交点A(図2)を有する少なくとも一対の切断予定線を有し、複数の切断予定線から成る製品輪郭に相当する閉ループに沿ってワークWと製品Sとの連結片Jを加工するレーザ光Lによるワーク切断方法であって、
上記一対の切断予定線のうちの一方の切断予定線が他方の切断予定線を越えることなく当該交点Aを形成し、
当該一方の切断予定線において、当該交点Aと反対側の点Bから切断を開始し、当該交点Aの所定距離手前Cから当該交点Aに至る前Dまでの間、少なくとも切断速度V又は切断出力Pを変更してワークWを貫通しないように加工し、当該切断速度V又は切断出力Pを変更し始めた点から当該交点Aに至る前までを連結片Jとし、当該連結片J近傍のレーザ光Lの照射回数を1回だけとすることを特徴とするワーク切断方法という技術的手段を講じている。
【0019】
上記本発明の構成によれば、ミクロジョイントJ近傍のレーザ光Lの照射回数は一回であり、そのため、溶融金属が付着すると共に変色する領域e(図10)が無くなり、また、所定の切断位置C(図4(A))から前工程の切断位置Dまで、即ち、ミクロジョイントJの加工領域C〜Dでは、始端面J2と上端面J3だけが加工され、終端面J1は加工されず、前工程で既に加工された切断領域K1の一方の内側面K1Aの下部kLが、ミクロジョイントJの終端面J1となるので、ミクロジョイントJの加工終了位置である前工程における切断位置Dでは、レーザ出力Pが(図4(B))急激に低下してゼロになり、そのため、凹みa(図10)、bや変色領域c、dは形成されず、従って、本発明によれば、ミクロジョイントJ近傍の品質が向上する。
【0020】
また、本発明の構成によれば、ミクロジョイントJの加工領域C〜Dでは、例えば、その前の加工領域B〜Cでの切断条件である切断速度V(図4(B))と切断出力Pとアシストガス圧Gの3つのうち、一部の切断速度Vと切断出力Pという2つの切断条件のみを変更し、しかも、変更回数は2回のみであることから(例えば所定の切断位置Cで(図4(A))、切断速度Vを(図4(B))上昇させると同時に切断出力Pを下降させ、前工程の切断位置Dで(図4(A))、切断速度V(図4(B))と切断出力Pを共にゼロにする)、本発明によれば、切断条件の制御機構が簡略化されて、動作が迅速に行われる。
【0021】
更に、本発明の構成によれば、前記したように、ミクロジョイントJ近傍のレーザ光Lの照射回数は1回であり、前工程の切断位置Dで加工が終了するので、ワークWが厚板であっても、従来と比べてレーザ光Lの照射時間が少なくなり、そのため、厚板であっても、変色などは(図10)発生せずに品質が向上すると共に、動作が迅速に行われ、従って、本発明によれば、厚板にも対応できるので、板厚の制限が無くなって、加工範囲が拡大される。
【0022】
よって、本発明によれば、ワークの板厚より小さい高さのミクロジョイントを加工する場合に、品質の向上と動作の迅速化を図ることにより、加工効率を向上させ、板厚の制限を無くすことにより、加工範囲を拡大することが可能となる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、実施の形態により添付図面を参照して、説明する。
【0024】
図1は、本発明によるワーク切断方法の実施形態を示す図である。
図1において、ワーク切断方法は、複数の工程▲1▼、▲2▼・・・から構成され、各工程では、切断方向が一方向であり、例えば加工ヘッド6(図3)を一方向に移動させながらレーザ光LをワークW上に照射することにより、加工が行われる。
【0025】
上記各工程は、ピアス工程と切断工程から成り、例えば、工程▲1▼では(図1)、ピアス穴P1を開けた後、切断領域K1に沿って切断加工が行われた後、加工ヘッド6を早送りで次の工程▲2▼の加工開始位置に移動させ、工程▲2▼では、同様に、ピアス穴P2を開けた後、切断領域K2に沿って切断加工が行われ、該切断工程の最終段階で、ワークWと製品Sの連結片JであるミクロジョイントJを加工する。
【0026】
この場合、図2に示すように、工程▲1▼で、ピアス穴P1を開けた後、切断領域K1に沿ってワークWの上面31から下面32まで貫通するような通常の切断加工を行い、この切断工程の終了時点では、加工ヘッド6は、該工程▲1▼の中心線と、次の工程▲2▼の中心線の交点Aに位置している。
【0027】
工程▲1▼の加工が終了した後、加工ヘッド6は、この交点Aから、早送りで次の工程▲2▼の加工開始位置に移動し、点Bを中心とするピアス穴P2を開けた後、同様に、切断領域K2に沿ってワークWの上面31から下面32まで貫通するように通常の切断加工を行う。
【0028】
その後、図示するように、所定の切断位置Cから前工程である前記▲1▼の切断位置Dまでは、後述するように(図4(B))、一部の切断条件、例えば切断速度Vと切断出力Pのみを変更した状態で、ワークWの下面32まで貫通しないで切断し、最後のワークWの下面32まで貫通しないで切断した部分C〜DをミクロジョイントJとする。
【0029】
この場合、図3に示すように、当該工程である▲2▼においては、加工ヘッド6を一方向に移動させながらワークW上にレーザ光Lを照射し、ミクロジョイントJを加工する場合に、前記所定の切断位置Cで切断速度Vと切断出力Pを変更後、その過渡期t1〜t2の間に、始端面J2が形成されると共に、定常期t2〜t3の間に、上端面J3が形成される。
【0030】
しかし、この上端面J3が形成された定常期の最後の時点t3で(図4(B))、ミクロジョイント加工は終了し、終端面J1(図4(A))のための加工は行われない。
【0031】
換言すれば、当該工程(例えば▲2▼)においては(図3)、ミクロジョイントJの始端面J2と上端面J3だけが加工され、終端面J1は加工されず、前工程(例えば▲1▼)で既に加工された切断領域K1の一方の内側面K1Aの上部kU が、上端面J3加工の終わりに除去されることにより、該一方の内側面K1Aの残った下部kL が、ミクロジョイントJの終端面J1となる(図4(A))。
【0032】
このような関係を有する当該工程と、その直前の前工程から成るワーク切断方法を、図2に示す工程▲1▼と▲2▼の間、工程▲2▼と▲3▼の間、工程▲3▼と▲4▼の間、工程▲4▼と▲5▼の間で行う。
【0033】
そして、前記したように、本発明では、ミクロジョイントJの(図3)終端面J1として、前工程で既に形成された切断領域K1の一方の内側面K1Aを利用しているので、当該工程が、最初の工程▲1▼である場合には、明らかに前工程が存在しないことから、図1〜図4に示すように、工程▲1▼では、ミクロジョイントJは加工されない。
【0034】
また、図1に示すように、最後の工程▲5▼の切断領域K5については、その加工開始位置が、最初の工程▲1▼の切断領域K1の加工終了位置と同じであり、そのため、切断領域K5は、既に切断領域K1と連続している。
【0035】
従って、図2に示すように、最後の工程▲5▼では、ピアス工程は無く、切断工程のみである。この場合、前記したように、最後の工程▲5▼の加工開始位置が、最初の工程▲1▼の加工終了位置と重なることから、その重なった領域では、レーザ光が2回照射されることになり、そのため、従来のように(図10)例えば変色領域eが形成される危険性があるが、この危険性は、上記最後の工程▲5▼の切断条件の立ち上がりを緩やかにするという後述するNC装置11(図5)の制御で回避可能である。
【0036】
一方、前記したワーク切断方法は、例えば工程▲2▼の(図4(A))ピアス穴P2が開けられた段階から開始され(図4(B)のt0)、この時点の切断位置B(図4(A))から所定の切断位置Cまでは、図示する切断速度Vと(図4(B))、切断出力Pと、アシストガス圧Gの他、焦点距離又はノズルギャップなどから成る切断条件が、最適に設定されている。
【0037】
そして、最適な切断条件により、前記したように、ワークWの上面31から下面32まで貫通する通常の切断加工が行われる。
【0038】
上記切断速度Vは、ワークWを切断する場合の速度であって、後述するように(図5)、例えば加工中はワークWが停止していて加工ヘッド6がY軸方向に移動するとすれば、切断速度Vは加工ヘッド6のY軸方向の移動速度に等しい。
【0039】
上記切断出力Pは(図4(B))、後述するレーザ発振器10(図5)から発振されベンドミラー7と集光レンズ21を介してワークW上に照射されるレーザ光Lの出力であり、アシストガス圧Gは(図4(B))、後述するガス発生器20(図5)から発生し集光レンズ21の下方に噴射されるアシストガスの圧力である。
【0040】
更に、焦点距離は、後述する集光レンズ21で(図5)の中心からその焦点までの距離であって該集光レンズ21で集光されたレーザ光Lが最も効果的に加工可能なワークW上の位置であり、ノズルギャップは、加工ヘッド6のノズルとワークWとの距離である。
【0041】
そして、既述したように、最初の切断位置Bから(図4(A))所定の切断位置Cまでは、切断速度V(図4(B))と切断出力Pとアシストガス圧Gは、いずれも一定であって切断条件は最適に設定され、この最適の切断条件により、ワークWは切断される(例えば図8のステップ104))。
【0042】
しかし、前記所定の切断位置C(図4(A))から前工程の切断位置Dまでは、ワークWの下面32まで貫通しないように切断すると共に、既述したように、切断条件の制御機構を簡略化し動作を迅速に行うために、前記切断速度V(図4(B))と切断出力Pとアシストガス圧Gのうちの一部の切断条件のみ、例えば、図示するように、切断速度Vと切断出力Pのみを変更した状態で切断する。
【0043】
即ち、前記所定の切断位置C(図4(A))において、切断速度Vを(図4(B))上昇させると同時に切断出力Pを下降させ、この上昇後の切断速度Vと下降後の切断出力Pで、ワークWの下面32まで貫通しないように切断し、前工程の切断位置D(図4(A))において、前記上昇後の切断速度Vと(図4(B))下降後の切断出力Pを共にゼロにする。
【0044】
この場合、切断速度Vと切断出力Pについて、最適な切断条件と(最初の切断位置B〜所定の切断位置C)、ミクロジョイント加工条件(所定の切断位置C〜前工程の切断位置D)は、ワークWとアシストガスの種類により、次のような例がある。
【0045】
例えば、厚板のワークWを(例えばSUS304−6.0t)アシストガスN2 の雰囲気中で切断する場合には、最適な切断条件(図4(A)のB〜C)としては、切断速度V(図4(B))が1400mm/分、切断出力Pが3000W、変更後のミクロジョイント加工条件(図4(A)のC〜D)としては、切断速度V(図4(B))が1800mm/分、切断出力Pが1200Wである。
【0046】
また、他の厚板のワークWを(例えばSPH3−6.0t)アシストガスO2 の雰囲気中で切断する場合には、最適な切断条件(図4(A)のB〜C)としては、切断速度V(図4(B))が2400mm/分、切断出力Pが3000W、変更後のミクロジョイント加工条件(図4(A)のC〜D)としては、切断速度V(図4(B))が3000mm/分、切断出力Pが600Wである。
【0047】
更に、前記所定の切断位置Cにおいて(図4(A))、切断速度Vを上昇、切断出力Pを下降させたとしても、直ちに定常状態とはならず、図4(B)のt1からt2までは過渡状態である。
【0048】
従って、このような過渡期t1〜t2を考慮し、前工程の切断位置Dを(図4(A))基準として、ミクロジョイントJが予め設定された高さHと長さMになる位置より前の位置、即ち前記切断速度Vと(図4(B))と切断出力Pが定常状態になる時点t2より若干早い時点t1に相当する位置Cを(図4(A))、該切断速度Vと切断出力Pを変更する所定の切断位置Cとする。
【0049】
前記構成を有する本発明のワーク切断方法を実施する装置としては、図5に示すような光軸移動タイプのレーザ加工機がある。
【0050】
図5に示すレーザ加工機は、ワークWを戴置する加工テーブル9を有し、該加工テーブル9の両側には、X軸ガイド4A、4Bが設けられている。
【0051】
これら加工テーブル9及びX軸ガイド4A、4Bを跨がって、Y軸方向に延びるキャリッジ1が設けられている。
【0052】
上記キャリッジ1の一方の下部17には、X軸ボールねじ15が螺合し該X軸ボールねじ15はX軸モータMxに結合し、該下部17は、X軸ガイド4Aに滑り結合しており、他方の下部18は、X軸ガイド4Bに滑り結合している。
【0053】
キャリッジ1の上面には、Y軸モータMyで回転するボールねじ8が設けられ、該ボールねじ8には、Y軸スライダ5が螺合し、該Y軸スライダ5には、Z軸モータMzで回転するボールねじ2に螺合した加工ヘッド6が設けられている。
【0054】
この構成により、X軸モータMxを駆動することにより、キャリッジ1をX軸方向へ、Y軸モータMyを駆動することにより、該キャリッジ1上で加工ヘッド6をY軸方向へ、Z軸モータMzを駆動することにより、Y軸スライダ5上で加工ヘッド6をZ軸方向へそれぞれ移動させ、該加工ヘッド6を該当する切断位置B〜D(図4(A))に位置決めするようになっている。
【0055】
加工ヘッド6は(図5)、よく知られているように、ベンドミラー7と集光レンズ21を有し、導管3と16を介してレーザ発振器10とガス発生器20に結合している。
【0056】
この構成により、レーザ発振器10から発振されたレーザ光Lは導管3を介して、またガス発生器20から発生したアシストガスは導管16を介してそれぞれ加工ヘッド6に入り、レーザ光Lはベンドミラー7で下方に反射して集光レンズ21で集光されてワークW上に照射され、アシストガスは集光レンズ21の下方で噴射されて切断の結果発生するドロスの排出と該集光レンズ21の保護・冷却などを行う。
【0057】
前記構成を有するレーザ加工機の制御は、NC装置11により行われる。
【0058】
NC装置11は、CPU11Aと、入力部11Bと、記憶部11Cと、切断位置検出部11Dと、加工ヘッド位置制御部11Eと、レーザ出力制御部11Fと、ガス制御部11Gにより構成されている。
【0059】
CPU11Aは、本発明による動作手順(図8)に従って切断位置検出部11Dや加工ヘッド位置制御部11Eなどに指示を与えることにより、レーザ加工機全体を制御する。
【0060】
入力部11Bは、既述した切断条件(図4(B))を入力し、それに基づいて、後述する自動プログラム装置12(図5)により、NCデータ(図7)が作成されて記憶部11C(図5)に記憶され、該NCデータは(図7)、その都度記憶部11Cから読み出されて所定の動作が行われる(図8)。
【0061】
この場合、既述したように、最初の切断位置B(図4(A))から所定の切断位置Cまでと、所定の切断位置Cから前工程の切断位置Dまでとは、動作が異なり、それに伴い、切断条件を、最適な切断条件(B〜C)データと、ミクロジョイント加工条件(C〜D)データとに分けて記憶する。
【0062】
即ち、自動プログラム装置12は(図5)、CAD部12AとCAM部12Bにより構成され、CAD部12Aは、例えば図6(A)に示すような製品形状を作成し、該製品形状に基づいて、CAM部12Bが、ミクロジョイントJ(図6(B))の位置を指示すると共に、加工順と(図6(C))軌跡データ(加工ヘッド6(図5)の移動方向)を作成する(図6(C)において、Sは開始点、1、2・・・はその後の加工順、Eは終了点である)。
【0063】
ここで、例えば既述した厚板のワークWを(例えばSUS304−6.0t)アシストガスN2 の雰囲気中で切断する場合に、最適な切断条件(図4(A)のB〜C)データ(切断速度V(図4(B))が1400mm/分、切断出力Pが3000W)による指令をE1、ミクロジョイント加工条件(図4(A)のC〜D)データ(切断速度V(図4(B))が1800mm/分、切断出力Pが1200W)による指令をE2とすれば、これら指令E1、E2を含むNCデータを作成する(図7)。
【0064】
切断位置検出部11Dは(図5)、前記X軸モータMxとY軸モータMyとZ軸モータMzのエンコーダEX とEY とEZ に接続され、各エンコーダEX とEY とEZ からのフィードバック信号を入力することにより、加工ヘッド6による切断位置を検出する。
【0065】
例えば、加工ヘッド6のX軸方向とZ軸方向の位置が固定されているとすれば、切断位置検出部11Dは、Y軸モータMyのエンコーダEY からのフィードバック信号を入力することにより、加工ヘッド6のY軸方向の切断位置B〜Dを(図4(A))検出する。
【0066】
そして、CPU11Aは、この切断位置検出部11Dを介して加工ヘッド6の切断位置を検出した場合には、その切断位置に対応した前記切断条件(図4(B))に基づいたNCデータを記憶部11Cから読み出し、該切断条件に従って加工ヘッド位置制御部11Eなどを制御する。
【0067】
加工ヘッド位置制御部11Eは、上記X軸モータMxとY軸モータMyとZ軸モータMzに接続され、加工ヘッド6の移動制御を行う。
。
【0068】
例えば、加工ヘッド6がY軸方向に移動する場合には(図5)、前記切断位置検出部11Dを介して切断位置を知らされた加工ヘッド位置制御部11Eは、Y軸モータMyを制御することにより、最初の切断位置B(図4(A))から所定の切断位置Cまでは、切断速度V(図4(B))を最適にし、所定の切断位置Cで、該最適な切断速度Vを上昇させ、所定の切断位置Cから前工程の切断位置Dまでは、上昇後の切断速度Vを維持し、前工程の切断位置Dでそれをゼロにするというように制御する。
【0069】
レーザ出力制御部11Fは(図5)、上記レーザ発振器10に接続され、例えば該レーザ発振器10から発振されるレーザ光Lの出力、即ち切断出力P(図4(B))を制御し、ガス制御部11Gは(図5)、上記ガス発生器20に接続され、例えば該ガス発生器20から発生するアシストガスの圧力、即ちアシストガス圧G(図4(B))を制御する。
【0070】
以下、前記構成を有する本発明の動作を図8に基づいて説明する。
【0071】
この場合、例えば図2に示すように、前工程を▲1▼、当該工程を▲2▼としたワーク切断方法を行うものとする。
【0072】
(1)前工程▲1▼の動作。
図8のステップ101において、ピアス穴P1を開け、ステップ102において、ワークWを最適な切断条件で切断する。
【0073】
この場合、ワークW(図2)の一箇所にピアス穴Pを開けた後、工程▲2▼と(図4(B))同様の最適な切断条件(図4(B)のB〜C)により、切断領域K1に沿って該ワークWを切断するが、工程▲1▼は、最初の工程であり、既述したように、この工程▲1▼では、ミクロジョイントJは加工されない。
【0074】
(2)当該工程▲2▼の動作。
(2)−A 所定の切断位置Cまでの動作。
図8のステップ103において、ピアス穴P2を開け、ステップ104において、ワークWを最適な切断条件で切断し、ステップ105において、所定の切断位置Cか否かを判断し、所定の切断位置Cでない場合は(NO)、ステップ104に戻って同じ動作を繰り返し、所定の切断位置Cの場合には(YES)、次段のステップ106に進む。
【0075】
即ち、CPU11Aは(図5)、前工程▲1▼の(図2)加工が終了したと判断した場合では、加工ヘッド位置制御部11Eを(図5)介して、加工ヘッド6(図2)を当該工程▲2▼側へ早送りで移動させ、レーザ出力制御部11Fと(図5)ガス制御部11Gを介して、ピアス穴P2(図2)を開ける。
【0076】
その後、CPU11Aは(図5)、切断位置検出部11Dを介して、加工ヘッド6が(図4(A))最初の切断位置Bと所定の切断位置Cの間にあると判断した場合には、加工ヘッド位置制御部11E(図5)とレーザ出力制御部11Fとガス制御部11Gを介して切断速度Vと(図4(B))切断出力Pとアシストガス圧Gが最適となるように制御し、これにより、切断領域K2に沿ってワークWが上面31から下面32まで貫通するように通常の切断加工が行われる。
【0077】
(2)−B 所定の切断位置Cから前工程の切断位置Dまでの動作。
CPU11Aが(図5)、切断位置検出部11Dを介して、加工ヘッド6が所定の切断位置Cにあると判断した場合には(図8のステップ105のYES)、既述したように、図8のステップ106に進んで、切断速度Vと切断出力P、又はそのいずれかのみを変更し、ステップ107において、ワークWの下面32まで貫通しないように切断し、ステップ108において、前工程の切断位置Dか否かを判断し、前工程の切断位置Dでない場合には(NO)、ステップ107に戻って同じ動作を繰り返し、前工程の切断位置Dの場合には(YES)、ステップ109において、変更後の切断速度Vと切断出力P、又はそのいずれかをゼロにする。
【0078】
即ち、CPU11Aは(図5)、加工ヘッド6が所定の切断位置Cにあると判断した場合には、該所定の切断位置Cがミクロジョイント加工開始位置であると見做し、加工ヘッド位置制御部11E(図5)とレーザ出力制御部11Fを介して、例えば、切断出力Pを上昇させると同時に切断出力Pを下降させ(図4(B)のt1)、これにより、ワークWは、その下面32まで貫通しないように切断される。
【0079】
この場合、既述したように、図4(B)t1〜t2は過渡期であって、その間に、始端面J2(図4(A))が形成され、t2で定常状態となり、以後の定常期t2〜t3の間に、上端面J3が形成される。
【0080】
このようにして上端面J3が加工され、該上端面J3の加工が終了すると(図4(B)のt3)、その時点で、前工程▲1▼(図4(A))で既に加工された切断領域K1の一方の内側面K1Aの上部kU が除去され、該一方の内側面K1Aの下部kL だけが残り、この残った下部kL が、既述したように、終端面J1となる。
【0081】
これにより、前記始端面J2と上端面J3と終端面J1により構成されるミクロジョイントJが加工されたことになる。
【0082】
このとき、CPU11Aは、切断位置検出部11Dを介して加工ヘッド6が前工程の切断位置Dにあると判断し、該前工程の切断位置Dはミクロジョイント加工終了位置と見做して、加工ヘッド位置制御部11E(図5)とレーザ出力制御部11Fを介して、前記変更した切断速度V(図4(B))と切断出力P、又はそのいずれかをゼロにし、併せて、ガス制御部11G(図5)を介して、それまで最適であったアシストガス圧G(図4(B))をゼロにする。
【0083】
【発明の効果】
上記のとおり、本発明によれば、ワークの板厚より小さい高さのミクロジョイントを加工する場合に、次のような効果がある。
【0084】
(1)ミクロジョイント近傍のレーザ光の照射回数は一回であり、そのため、溶融金属が付着すると共に変色する領域が無くなり、また、ミクロジョイントの加工領域では、始端面と上端面だけが加工され、終端面は加工されないので、ミクロジョイントの加工終了位置である前工程における切断位置では、レーザ出力が急激に低下してゼロになり、そのため、凹みや変色領域は形成されず、従って、本発明によれば、ミクロジョイント近傍の品質が向上する。
【0085】
(2)また、ミクロジョイントの加工領域では、例えば、一部の切断速度と切断出力という2つの切断条件のみを変更し、しかも、変更回数は2回のみであることから、本発明によれば、切断条件の制御機構が簡略化されて、動作が迅速に行われる。
【0086】
(3)更に、前記したように、ミクロジョイント近傍のレーザ光の照射回数は1回であり、前工程の切断位置で加工が終了するので、ワークが厚板であっても、従来と比べてレーザ光の照射時間が少なくなり、そのため、厚板であっても、変色などは発生せずに品質が向上すると共に、動作が迅速に行われ、従って、本発明によれば、厚板にも対応できるので、板厚の制限が無くなって、加工範囲が拡大される。
【0087】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるワーク切断方法の実施形態を示す説明図である。
【図2】図1の当該工程と前工程の関係を示す図である。
【図3】図2におけるミクロジョイントJの加工状態を示す図である。
【図4】本発明による切断位置と切断条件との関係を示す図である。
【図5】本発明によるワーク切断方法を実施するためのレーザ加工機とその制御装置を示す図である。
【図6】図5の制御装置によるデータ作成過程を示す図である。
【図7】本発明によるNCデータの例を示す図である。
【図8】本発明による動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】従来技術におけるミクロジョイントの説明図である。
【図10】従来技術における課題を説明する図である。
【符号の説明】
1 キャリッジ
2、8、15 ボールねじ
3、16 導管
5 Y軸スライダ
6 加工ヘッド
7 ベンドミラー
9 加工テーブル
10 レーザ発振器
11 NC装置
11A CPU
11B 入力部
11C 記憶部
11D 切断位置検出部
11E 加工ヘッド位置制御部
11F レーザ出力制御部
11G ガス制御部
12 自動プログラム装置
17、18 キャリッジ1の下部
20 ガス発生器
21 集光レンズ
L レーザ光
W ワーク
Mx X軸モータ
My Y軸モータ
Mz Z軸モータ
EX 、EY 、EZ エンコーダ
Claims (2)
- 交点を有する少なくとも一対の切断予定線を有し、複数の切断予定線から成る製品輪郭に相当する閉ループに沿ってワークと製品との連結片を加工するレーザ光によるワーク切断方法であって、
上記一対の切断予定線のうちの一方の切断予定線が、他方の切断予定線を超えることなく当該交点を形成し、
当該一方の切断予定線において、当該交点と反対側の点から切断を開始し、当該交点の所定距離手前から当該交点に至る前までの間、少なくとも切断速度又は切断出力を変更してワークを貫通しないように加工し、当該切断速度又は切断出力を変更し始めた点から当該交点に至る前までを連結片とし、当該連結片近傍のレーザ光の照射回数を1回だけとすることを特徴とするワーク切断方法。 - 上記一方の切断予定線において、当該交点に至る前で、連結片の上端面の加工が終了すると同時に他方の切断予定線における一方の内側面の上部が除去され、該一方の内側面の残った下部が、連結片の終端面となる請求項1記載のワーク切断方法。
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