JP4602490B2 - 熱可塑性樹脂混練物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電気・電子分野、自動車分野、その他の各種工業材料分野、食品・包装分野のプラスチック材料として利用できる熱可塑性樹脂混練物及び、この混練物を用いて成形される熱可塑性樹脂成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂は加工性・生産性に優れ、溶融射出成形法や溶融押出成形法などの成形方法により所望の形状の製品・部品を効率よく生産できるため、電気・電子分野、自動車分野、その他の各種工業材料分野、食品・包装分野の製品・部品用の材料として幅広く用いられている。
昨今、特に電気・電子分野、自動車分野、その他の各種工業分野では製品・部品の耐熱性に関する要求が厳しくなってきているため、多くの高耐熱性熱可塑性樹脂が開発されているが、耐熱性の向上に伴い熱可塑性樹脂をペレット状の熱可塑性樹脂混練物に加工する溶融混練の加工温度も上昇し、分解温度に近づくために種々の問題が発生している。
【0003】
即ち、熱可塑性樹脂混練物に加工する溶融混練の加工温度が分解温度に近づくと熱劣化による変色、炭化が起こるため、この熱可塑性樹脂混練物を用いて成形される製品・部品の色調・外観に問題を生ずる。
この問題を解決するために、従来技術では熱安定剤、酸化防止剤などの添加剤を熱可塑性樹脂に添加して溶融混練する方法が提案されているが、高耐熱性熱可塑性樹脂混練物では溶融混練の加工温度が高いために添加剤を添加しても成形品の色調・外観は充分に改善されない。
【0004】
また、添加剤を増量した熱可塑性樹脂混練物を用いて成形すると、耐熱性・機械物性が逆に低下する問題が発生する。
さらに、色調・外観を改良する技術としてミネラルオイル等の可塑剤を、熱可塑性樹脂に添加して溶融混練の加工温度を下げる方法も古くから行われているが、この方法の熱可塑性樹脂混練物を用いて得られる成形体には、色調・外観に関して良好であるが、耐熱性及び機械物性が低下する。
従って、従来技術の熱可塑性樹脂混練物及び、これを加工して得られる成形体は色調・外観と耐熱性・機械物性のバランスが不充分なため、産業界の要求に十分応えるものではない。
【0005】
特開平10−34726公報には、難成形樹脂材料の押出し成形において、あらかじめ樹脂に炭酸ガスなどの無機ガスを吸着させた後に、可塑化し押出し賦形する方法が示されている。この方法では樹脂中に無機ガスを含有したまま賦形するため、押出し物が発泡しやすく、押出し物表面の発泡を防止するには、表面をダイ内で十分冷却する必要があり、熱可塑性樹脂の製造、特に、熱可塑性樹脂混練物の製造に応用しようとしても生産性の点で問題があった。
また、特開平9−104780公報や特開平10−53662公報には、押出し発泡体の製造方法として、加圧した炭酸ガスなどの発泡剤を押出し機に注入する方法が示されているが、これらは炭酸ガスを発泡剤として用いているに過ぎず、良好な樹脂物性を有する樹脂混練物の製造法とは何ら関係がない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、例えばペレット形状の熱可塑性樹脂混練物を用いて得られる成形体において、色調・外観と耐熱性・機械物性のバランスが充分で、産業界の要求に十分応える成形体を提供すること目的とする。
即ち、本発明は溶融混練の工程における熱可塑性樹脂の熱劣化による変色、炭化を抑制することにより色調・外観を改善し、かつ耐熱性・機械物性を保った熱可塑性樹脂混練物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、成形性・色調・外観が優れ、かつ耐熱性・機械物性に優れる熱可塑性樹脂混練物の製造方法に関して検討した結果、熱可塑性樹脂の溶融混練加工において、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、0.7〜20.0重量部の炭酸ガス(B)を含有した混合物を溶融混練し、溶融混練中に炭酸ガス(B)を放散する製造法により、発泡がなく、色調・外観と耐熱性・機械物性の全てが良好な熱可塑性樹脂混練物を高い生産性で製造可能であることを見出した。更に、得られた熱可塑性樹脂混練物を各種成形方法で再加工して得られる成形体は色調・外観と耐熱性・機械物性の全てが良好になることを見出し本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、
[1] 熱可塑性樹脂の溶融混練加工において、溶融混練する前において、熱可塑性樹脂(A)に、0.1MPa〜15MPaの圧力の炭酸ガス(B)を0.1秒間以上接触させることにより、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、0.7〜20.0重量部の炭酸ガス(B)を含有させた混合物を溶融混練し、溶融混練中に炭酸ガス(B)を放散し、発泡のない熱可塑性樹脂混練物を得ることを特徴とする熱可塑性樹脂混練物の製造方法、
[2] 熱可塑性樹脂の溶融混練加工において、溶融混練過程において、熱可塑性樹脂(A)に、0.1MPa〜30MPaの圧力の炭酸ガス(B)を押出機のシリンダーより注入することにより、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、0.7〜20.0重量部の炭酸ガス(B)を含有させた混合物を溶融混練し、溶融混練中に炭酸ガス(B)を放散し、発泡のない熱可塑性樹脂混練物を得ることを特徴とする熱可塑性樹脂混練物の製造方法、
[3] 熱可塑性樹脂(A)が非晶性熱可塑性樹脂であり、溶融混練の加工温度が熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度+150℃以下の温度であることを特徴とする[1]又は[2]記載の熱可塑性樹脂混練物の製造方法、
[4] 熱可塑性樹脂(A)が結晶性熱可塑性樹脂であり、溶融混練の加工温度が熱可塑性樹脂(A)の融点+100℃以下の温度であることを特徴とする[1]又は[2]記載の熱可塑性樹脂混練物の製造方法、
[5] 熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度が110℃〜250℃であることを特徴とする[3]記載の熱可塑性樹脂混練物の製造方法、
[6] 熱可塑性樹脂(A)が変性ポリフェニレンエーテル樹脂であることを特徴とする[3]又は[5]記載の熱可塑性樹脂混練物の製造方法、
である。
本発明の熱塑性樹脂混練物は炭酸ガスの樹脂可塑化効果により溶融混練時の樹脂粘度が低減し、せん断発熱を効果的に抑制できるため、熱劣化、変色・炭化が起こらず優れた色調・外観を持つものである。
更に、本発明では溶融混練中に炭酸ガスを放散するため、加工後の熱可塑性樹脂混練物に炭酸ガスが残留しないので、熱可塑性樹脂の本来の耐熱性・機械物性を保つ。従って、この熱可塑性樹脂混練物は発泡がなく、色調・外観と耐熱性・機械物性の全てが良好であり、産業界の要求に十分応える各種工業分野の製品・部品を提供することが可能になる。
また、この熱可塑性樹脂混練物を更に再加工して得られる成形体も色調・外観と耐熱性・機械物性全てが良好であり、産業界の要求に十分応える各種工業分野の製品・部品を提供することが可能になる。
【0009】
本発明の熱可塑性樹脂(A)は溶融押出成形法や溶融射出成形法などの成形方法により所望の形状の製品・部品を生産でき、電気・電子分野、自動車分野、その他の各種工業材料分野の製品・部品用の材料として幅広く用いられているプラスチック材料である。
本発明の熱可塑性樹脂(A)は成形可能なプラスチック材料であれば、その一次構造、タクティシティー、高次構造等の高分子構造、形状、製造法はいずれのものでも採用できる。
本発明の熱可塑性樹脂(A)は非晶性熱可塑性樹脂と結晶性熱可塑性樹脂に分類される。
【0010】
本発明の非晶性熱可塑性樹脂の例として具体的には、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリアリレート、変成ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン等の熱可塑性のプラスチック材料、及びこれらのプラスチック材料を一種または二種以上混合したブレンド物である。
【0011】
本発明のスチレン系樹脂とは、スチレンを必須原料とするホモポリマー、コポリマー及びこれらのポリマーを他の樹脂より得られるポリマーブレンドである。本発明のスチレン樹脂はポリスチレンまたはABS樹脂であることが好ましい。
本発明のポリスチレンとは、スチレンホモポリマーまたは、樹脂相中にゴムが分布したゴム強化ポリスチレンである。
【0012】
本発明の変性ポリフェニレンエーテル樹脂とは、ポリフェニレンエーテルを溶融混練してなる樹脂及び、ポリフェニレンエーテルをそのほかの組成物と混合し溶融混練してなるポリマーアロイまたは、ポリマーコンポジットである。
本発明の変性ポリフェニレンエーテル樹脂で好ましいものはポリフェニレンエーテル100重量部に対してポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ゴム補強したシンジオタクチックポリスチレンを500重量部以下の範囲、好ましくは200重量部以下を加えたものである。 本発明のポリフェニレンエーテル(以下、単にPPEと略記)は、結合単位が化1で示されるものである。
【0013】
【化1】
【0014】
化1の内、R1,R2,R3,およびR4はそれぞれ、水素、ハロゲン、炭素数1〜7までの第一級または第二級低級アルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基または少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択されるものであり、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0015】
本発明のPPEは、0.5g/dl,クロロホルム溶液を用い30℃で測定する還元粘度が、0.15〜0.70の範囲、より好ましくは0.20〜0.60の範囲にある重合体または共重合体である。
本発明のPPEは具体的には、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等である。
【0016】
本発明のPPEの具体的例として、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体のごときポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。
本発明のPPEは、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく使用できる。
【0017】
本発明のPPEで最も好ましいのはポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である。
本発明では、スチレン、スチレン系化合物、α,β−不飽和カルボン酸、α,β−不飽和カルボン酸のエステル、α,β−不飽和カルボン酸の酸無水物より選択される1種または2種以上の化合物と上記PPEとを反応して得られるPPE誘導体もPPEとして使用することができる。
【0018】
本発明で使用するPPEの製造方法は限定されない。
本発明で使用するPPEの製造方法の例として、米国特許第3306874明細書記載の第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、2,6−キシレノールを酸化重合する方法がある。
米国特許第3306875、同第3257357および同第3257358明細書、特公昭52−17880および特開昭50−51197および同63−152628公報等に記載された方法もPPEの製造方法として好ましい。
【0019】
本発明の結晶性熱可塑性樹脂の例として具体的には、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、全芳香族ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン等の熱可塑性のプラスチック材料、及びこれらのプラスチック材料を一種または二種以上混合したブレンド物、及び非晶性熱可塑性樹脂と結晶性熱可塑性樹脂を混合したブレンド物である。
【0020】
本発明の熱可塑性樹脂(A)は目的に応じ所望の添加剤を添加しても良い。
本発明の熱可塑性樹脂(A)に使用する添加剤は、熱安定剤、酸化防止剤、UV吸収剤、界面活性剤、滑剤、充填剤、難燃剤、顔料、染料、耐衝撃性付与剤、ポリマー添加剤、フィラー、ガラス繊維、カーボン繊維、無機繊維、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシカーボネート、ヒドロパーオキサイド、パーオキシケタール等である。
【0021】
本発明の炭酸ガス(B)とは、二酸化炭素を主成分とする混合物である。
即ち、本発明の炭酸ガス(B)は、気体、液体、固体、超臨界状態、何れかの状態の二酸化炭素又は、二種以上の状態の二酸化炭素を60重量%以上含有する混合物である。
本発明の熱可塑性樹脂(A)に炭酸ガス(B)を含有した混合物とは、熱可塑性樹脂(A)に気体の炭酸ガス(B)を収着させたもの、溶融した熱可塑性樹脂(A)に炭酸ガス(B)を圧入したもの、熱可塑性樹脂(A)と炭酸ガス(B)が共存する状態のものであれば、何れの状態のものでも採用することができる。
【0022】
本発明の混合物に含有される炭酸ガス(B)の量は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、0.7〜20.0重量部である。本発明で熱可塑性樹脂100重量部に含有される炭酸ガス(B)の量が0.7重量部未満の場合、炭酸ガス(B)の樹脂可塑化効果が不充分なため熱可塑性樹脂(A)の粘度は充分に低下せず、溶融混練時のせん断発熱を効果的に抑制できず、熱劣化による、変色・炭化が起こり、得られる熱可塑性樹脂混練物は色調・外観の問題が生ずる。 本発明で熱可塑性樹脂(A)100重量部に含有される炭酸ガス(B)の量が20.0重量部を超える場合には、混合物の状態が不安定なため、溶融混練の工程制御が困難になる。
【0023】
本発明の溶融混練とは、混合機を用い熱可塑性樹脂を可塑化し溶融状態にし、混練した後、冷却し固化する工程である。
本発明の混合機とは、溶融混練できる装置であればその種類、構造、構成は何れのものでも採用できる。
本発明の混合機の例として、スタティックミキサー、バンバリーミキサー、単軸押出機、コニーダー、2軸押出機などがある。
【0024】
本発明の混合機として、単軸押出機、コニーダー、2軸押出機が好ましい。
本発明の混合機として、コニーダー、2軸押出機が更に好ましい。
本発明の混合機として、2軸押出機が極めて好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂混練物の形状は限定されない。
本発明の熱可塑性樹脂混練物の形状はペレット状が好ましく使用できる。
ペレット状に加工する手段としては、例えば、混合機として2軸押出機を使用する場合には、溶融混練した熱可塑性樹脂をストランド状にした後、カッターを用いて切断するストランドカット法、溶融状態の熱可塑性樹脂をカッターで切断するホットカット法、溶融状態の熱可塑性樹脂を水中でカッターを用い切断するアンダーウォーター法が好ましい。
【0025】
炭酸ガスを放散する方法としては、例えば、混合機として2軸押出機を使用する場合には、溶融混練中に2軸押出機のベントより炭酸ガスを大気に放散したり、吸引ポンプに接続し放散する方法などがある。この場合は、ベント部のガス圧力を調整して放散量を制御することもできる。炭酸ガスを放散後の熱可塑性樹脂のせん断発熱を抑制するため、放散する場所は、ダイに近接した部分のベントであることが望ましい。
【0026】
本発明では、実質的に熱可塑性樹脂混練物の発泡が抑制できれば、溶融混練中の混合物から全ての炭酸ガスを放散することは必ずしも必要ではない。
本発明において溶融混練中の混合物中に残る炭酸ガスは、例えば、混合機として2軸押出機を使用する場合には、ダイ部分及び、冷却中のストランド表面から放散され、熱可塑性樹脂混練物を発泡させることない。
冷却後の熱可塑性樹脂混練物中に残る炭酸ガスは、大気中に放置すれば自然に放散し、熱可塑性樹脂混練物が発泡させることはない。
【0027】
本発明の方法では、溶融混練における熱可塑性樹脂混練物の変色・炭化の最も大きな原因である熱可塑性樹脂固体が溶融するときにおこる非常に強いせん断発熱を抑制できる。
本発明では、溶融混練時の押出機のシリンダー温度は熱可塑性樹脂を通常溶融混練する時のシリンダー温度以下でかつ溶融混練が可能であれば何れの温度でも、色調・外観が向上する。
本発明の熱可塑性樹脂混練物の製造方法では、熱可塑性樹脂(A)が非晶性熱可塑性樹脂の場合には、溶融混練の加工温度が熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度+150℃以下の温度であるときに好ましい熱可塑性樹脂混練物が得られる。また、本発明の熱可塑性樹脂混練物の製造方法では、熱可塑性樹脂(A)が結晶性熱可塑性樹脂の場合、溶融混練の加工温度が熱可塑性樹脂(A)の融点+100℃以下の温度であるときに好ましい熱可塑性樹脂混練物が得られる。
【0028】
本発明の溶融混練の加工温度とは、加工中の混合機の温度である。
本発明の溶融混練の加工温度は、実質的に差がなければ混合機の設定温度で代用できる。
本発明では、溶融混練の加工温度が熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度+100℃以下、もしくは融点+70℃以下の温度の温度である場合は更に好ましい。
【0029】
本発明では、溶融混練の加工温度が熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度+50℃以下、もしくは融点+40℃以下の温度の温度である場合に極めて好ましい効果がみられる。本発明では、熱可塑性樹脂(A)に炭酸ガス(B)を含有する方法として、溶融混練する前に熱可塑性樹脂(A)と0.1MPa〜15MPaの圧力の炭酸ガス(B)を0.1秒間以上接触させ、熱可塑性樹脂(A)に炭酸ガス(B)を含有する方法が好ましい。
【0030】
本発明では、熱可塑性樹脂(A)に炭酸ガス(B)を含有する方法として、溶融混練する前に熱可塑性樹脂(A)と0.4MPa〜10MPaの圧力の炭酸ガス(B)を10秒間以上接触させる方法が更に好ましい。
本発明では、熱可塑性樹脂(A)に炭酸ガス(B)を含有する方法として、溶融混練する前に熱可塑性樹脂(A)と1MPa〜5MPaの圧力の炭酸ガス(B)を100秒間以上接触させる方法が極めて好ましい。
【0031】
本発明では、熱可塑性樹脂(A)に炭酸ガス(B)を含有する方法として、溶融混練過程にある熱可塑性樹脂(A)と炭酸ガス(B)を押出機のシリンダーより注入する方法も好ましく採用できる。この場合、炭酸ガス(B)の注入圧力は、押出し機のガス注入位置の樹脂圧力以上にすることが必要であり、ベントから注入する場合は0.1MPa程度の低圧でも注入できるが、押出し機の圧縮〜混練部から注入する場合は30MPa程度の圧力が必要になる。また、炭酸ガス(B)の注入量を一定に保つことが重要であり、定量ポンプとしてプランジャーポンプを用いたり、ガス流量を計測してガス供給圧をフィードバック制御するなどのガス流量制御をすることが好ましい。
【0032】
いずれの方法で炭酸ガス(B)を熱可塑性樹脂(A)に混合する場合でも、樹脂を押出し機に供給するホッパ付近の雰囲気を炭酸ガスにすることが好ましい。これは、高温の樹脂と酸素が接触し、樹脂が酸化劣化するのを防止したり、可塑化安定性を阻害する窒素を除くためである。
本発明では、押出し混練に高い樹脂温度が必要とされるような、熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度が110℃〜250℃である場合に、熱可塑性樹脂混練物の色調・外観は顕著に改善される。
本発明の非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、熱可塑性樹脂に対する示差熱走査型熱量計(DSC)の測定において、20℃/分で昇温するときに得られる温度−熱流量グラフのオンセット温度で定義される。
【0033】
本発明のガラス転移温度は、オンセット温度が複数ある場合にはその内の最高の温度で定義される。
本発明での結晶性熱可塑性樹脂の融点とは、示差熱走査型熱量計(DSC)の測定を行い、20℃/分で昇温するときに得られる温度−熱流量グラフのピークトップ温度で定義される。
本発明では熱可塑性樹脂が変性ポリフェニレンエーテル樹脂である場合、熱可塑性樹脂混練物の色調改善効果が極めて顕著である。
【0034】
本発明の熱可塑性樹脂混練物はその用途を限定されない。
本発明の熱可塑性樹脂混練物は電気・電子分野、自動車分野、その他の各種工業材料分野、食品・包装分野において良好な色調を要求される用途として好ましく適用できる。
本発明の熱可塑性樹脂混練物は、炭酸ガス(B)の樹脂可塑化効果により、溶融混練時に変色、炭化などの問題が起こらず、色調・外観が良好である。さらに、加工後の熱可塑性樹脂混練物中に炭酸ガス(B)が残留しないため、熱可塑性樹脂混練物の耐熱性、機械物性は、その原料である熱可塑性樹脂(A)が本来示す耐熱性、機械物性と同等になる。 即ち、本発明の熱塑性樹脂組成物は溶融混練時に炭酸ガスによる樹脂可塑化効果により樹脂の粘度が低下し、せん断発熱を効果的に抑制できるため熱劣化がなく、変色・炭化が起こらず優れた色調・外観を持つものである。
【0035】
更に、本発明の熱可塑性樹脂混練物には炭酸ガスが残留していないため、熱可塑性樹脂の本来の耐熱性と機械物性を示す。
従って、本発明の熱可塑性樹脂混練物を各種成形方法で加工すると、色調・外観と耐熱性・機械物性の全てが良好な成形体が得られ、産業界の要求に十分応える各種工業分野の製品・部品を提供することが可能になる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例では、次の熱可塑性樹脂(A)を用いる。
A−1:2,6−ジメチルフェノールを酸化重合して得た還元粘度0.54のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)
A−2:2,6−ジメチルフェノールを酸化重合して得た還元粘度0.31のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)
A−3:ポリアミド樹脂(旭化成工業(株)社製レオナ1300S)
A−4:変成ポリフェニレンエーテル樹脂(旭化成工業(株)社製ザイロン500H)
A−5:ポリエーテルイミド(GE社製Ultem1000)
A−6:ポリエーテルスルホン(ICI社製Victrex200p)
A−7:ABS樹脂(旭化成工業(株)社製スタイラックIM15)
A−8:ポリスチレン(旭化成工業(株)社製スタイロンG9305)
A−9:ポリアセタール(旭化成工業(株)社製テナック3010)
A−10:PMMA樹脂(旭化成工業(株)社製デルペット80N)
【0037】
実施例及び比較例では、次の炭酸ガス(B)を用いる。
B−1:ドライアイス
B−2:温度35℃において圧力が0.07MPaの炭酸ガス
B−3:温度35℃において圧力が0.15MPaの炭酸ガス
B−4:温度35℃において圧力が0.3MPaの炭酸ガス
B−5:温度35℃において圧力が0.5MPaの炭酸ガス
B−6:温度35℃において圧力が0.8MPaの炭酸ガス
B−7:温度35℃において圧力が1.2MPaの炭酸ガス
B−8:温度35℃において圧力が4MPaの炭酸ガス
B−9:温度35℃において圧力が6MPaの炭酸ガス
B−10:温度35℃において圧力が8MPaの炭酸ガス
B−12:温度35℃において圧力が12MPaの炭酸ガス
B−13:温度35℃において圧力が15MPaの炭酸ガス
【0038】
実施例及び比較例では、次の方法でガラス転移温度及び融点を評価する。
熱可塑性樹脂(A)に対し、示差熱走査型熱量計(DSC)の測定を行い、20℃/分で昇温するときに得られる温度−熱流量グラフのオンセット温度をガラス転移温度とする。
また、同様に示差熱走査型熱量計(DSC)の測定を行い、20℃/分で昇温するときに得られる温度−熱流量グラフのピークトップ温度を融点とする。
【0039】
実施例及び比較例では、次の方法で成形体の色調・外観を評価する。
射出成形機を用いて、本発明の熱可塑性樹脂混練物より50*80*3mmの平板状成形体を成形し、この平板状成形体の色と異物の数を観察して成形体の色調・外観を評価する。
実施例及び比較例では、次の方法で成形体の耐熱性・機械物性を評価する。
射出成形機を用いて、本発明の熱可塑性樹脂混練物よりASTM規格試験片を射出成形により、ASTM規格に従って、熱変形温度(ASTM D−648:18.6kg荷重)、引張強度(ASTM D−638:23℃)、曲げ弾性率(ASTM D−790:23℃)、アイゾット(ノッチ付き)衝撃強度(ASTM D−256:23℃)を測定して成形体の耐熱性・機械物性を評価する。
【0040】
【実施例1】
熱可塑性樹脂(A−1)100重量部をガス注入口がついたオートクレーブ中に入れ密封した後に、ガス注入口を通して(B−7)を供給し、オートクレーブ内の圧力が(B−7)と等しくなった後に2時間静置し、炭酸ガスを2.8重量部収着し含有した混合物(C−1−7)を得る。
熱可塑性樹脂(A−1)のガラス転移温度は215℃である。
280℃にシリンダー温度を設定した独国ウェルナー社製相互咬み合い型2軸押出機「ZSK−25押出機」を用い、供給量12kg/時で(C−1−7)の溶融混練を行う。この時、押出機フィード口、押出機サイドベント口それぞれより炭酸ガスの放散が観測される。押出機より吐出するストランド状の溶融樹脂を水で冷却した後にストランドカッターを用いペレット状で炭酸ガスによる発泡のない熱可塑性樹脂混練物(D−1−7)を得る。
【0041】
(D−1−7)を成形して得た平板は淡い黄色の色調であり、異物は観測されない。
(D−1−7)の成形品の物性は、熱変形温度が188℃、引張強度が760kg/cm2、曲げ弾性率が26,000kg/cm2、アイゾッド強度が5.5kg・cm/cmである。
【0042】
【比較例1】
280℃にシリンダー温度を設定した独国ウェルナー社製相互咬み合い型2軸押出機「ZSK−25押出機」を用い、供給量12kg/時で熱可塑性樹脂(A−1)の溶融混練を行い熱可塑性樹脂混練物(E−1)を得る。
(E−1)を成形して得た平板は茶褐色であり、多数の異物が観測される。
(E−1)の成形品の物性は、熱変形温度が186℃、引張強度が730kg/cm2、曲げ弾性率が25,000kg/cm2、アイゾッド強度が4kg・cm/cmである。
【0043】
【実施例2】
熱可塑性樹脂(A−2)のガラス転移温度は212℃である。
押出機の溶融ゾーン直後のサイドベント1にノズル付の栓を付し、ダイ前のサイドベント2を開口し、280℃にシリンダー温度を設定した独国ウェルナー社製相互咬み合い型2軸押出機「ZSK−25押出機」を用い(A−2)の溶融混練を行う。
(A−2)を押出機フィード口より供給量12kg/時で供給し、(B−9)をサイドベント1のノズルから0.60kg/時で圧入する。
(A−2)100重量部に対する、炭酸ガスの含有率は5.0重量部である。
【0044】
大気圧のサイドベント2より炭酸ガスの放散が観測され、放散されるガスを冷却器に導き、室温で計測される放散炭酸ガス量は0.58kg/時である。押出機より吐出する発泡のないストランド状の溶融樹脂を水で冷却した後にストランドカッターを用い熱可塑性樹脂混練物(D−2−9)を得る。
(D−2−9)を成形して得た平板は淡い黄色の色調であり、平板に異物は観測されない。
(D−2−9)の成形品の物性は、熱変形温度が187℃、引張強度が750kg/cm2、曲げ弾性率が25,500kg/cm2、アイゾッド強度が5kg・cm/cmである。
【0045】
【比較例2】
(B−9)の圧入を停止する以外は、実施例2と同様の条件で(A−2)の溶融混練を行い、熱可塑性樹脂混練物(E−2)を得る。
(E−2)を成形して得た平板は茶褐色であり、異物が観測される。
(E−2)の成形品の物性は、熱変形温度が184℃、引張強度が730kg/cm2、曲げ弾性率が24,800kg/cm2、アイゾッド強度が3.8kg・cm/cmである。
【0046】
【実施例3】
熱可塑性樹脂(A−3)の融点は、256℃である。
押出機の溶融ゾーン直後のサイドベント1にノズル付の栓を付し、ダイ前のサイドベント2を開口し、280℃にシリンダー温度を設定した独国ウェルナー社製相互咬み合い型2軸押出機「ZSK−25押出機」を用い(A−3)の溶融混練を行う。
(A−3)を押出機フィード口より供給量12kg/時で供給し、(B−9)をサイドベント1のノズルから0.6kg/時で圧入する。
(A−3)100重量部に対する、炭酸ガスの含有率は5.0重量部である。
【0047】
サイドベント2より炭酸ガスの放散が観測される。押出機より吐出する発泡のないストランド状の溶融樹脂を水で冷却した後にストランドカッターを用い熱可塑性樹脂混練物(D−3−9)を得る。(D−3−9)を成形して得た平板は白色であり、平板に異物は観測されない。
(D−3−9)の成形品の物性は、熱変形温度が72℃、引張強度が830kg/cm2、曲げ弾性率が29,500kg/cm2、アイゾッド強度が4.8kg・cm/cmである。
【0048】
【比較例3】
(B−9)の圧入を停止する以外は、実施例3と同様の条件で(A−3)の溶融混練を行い、熱可塑性樹脂混練物(E−3)を得る。(E−3)を成形して得た平板は淡黄色であり、少量の異物が観測される。
(E−3)の成形品の物性は、熱変形温度が70℃、引張強度が830kg/cm2、曲げ弾性率が29,000kg/cm2、アイゾッド強度が4.0kg・cm/cmである。
【0049】
【実施例4】
押出機の溶融ゾーン直後のサイドベント1にノズル付の栓を付し、ダイ前のサイドベント2を開口し、280℃にシリンダー温度を設定した独国ウェルナー社製相互咬み合い型2軸押出機「ZSK−25押出機」を用い(A−4)の溶融混練を行う。
熱可塑性樹脂(A−4)のガラス転移温度は153℃である。
(A−4)を押出機フィード口より供給量12kg/時で供給し、(B−9)をサイドベント1のノズルから0.6kg/時で圧入する。
(A−4)100重量部に対する、炭酸ガスの含有率は5.0重量部である。
【0050】
サイドベント2より炭酸ガスの放散が観測される。押出機より吐出する発泡のないストランド状の溶融樹脂を水で冷却した後にストランドカッターを用い熱可塑性樹脂混練物(D−4−9)を得る。(D−4−9)を成形して得た平板は淡黄色であり、平板に異物は観測されない。
(D−4−9)の成形品の物性は、熱変形温度が125℃、引張強度が520kg/cm2、曲げ弾性率が24,500kg/cm2、アイゾッド強度が15.5kg・cm/cmである。
【0051】
【比較例4】
(B−9)の圧入を停止する以外は、実施例4と同様の条件で(A−4)の溶融混練を行い、熱可塑性樹脂混練物(E−4)を得る。(E−4)を成形して得た平板は淡黄色であり、少量の異物が観測される。
(E−4)の成形品の物性は、熱変形温度が120℃、引張強度が500kg/cm2、曲げ弾性率が24,300kg/cm2、アイゾッド強度が14.4kg・cm/cmである。
【0052】
【実施例5】
押出機の溶融ゾーン直後のサイドベント1にノズル付の栓を付し、ダイ前のサイドベント2を開口し、300℃にシリンダー温度を設定した独国ウェルナー社製相互咬み合い型2軸押出機「ZSK−25押出機」を用い(A−5)の溶融混練を行う。
熱可塑性樹脂(A−5)のガラス転移温度は225℃である。
(A−5)を押出機フィード口より供給量12kg/時で供給し、(B−9)をサイドベント1のノズルから0.6kg/時で圧入する。
(A−5)100重量部に対する、炭酸ガスの含有率は5.0重量部である。
【0053】
サイドベント2より炭酸ガスの放散が観測される。押出機より吐出する発泡のないストランド状の溶融樹脂を水で冷却した後にストランドカッターを用い熱可塑性樹脂混練物(D−5−9)を得る。(D−5−9)を成形して得た平板は黄褐色であり、平板に異物は観測されない。
(D−5−9)の成形品の物性は、熱変形温度が202℃、引張強度が1070kg/cm2、曲げ弾性率が33,500kg/cm2、アイゾッド強度が5.5kg・cm/cmである。
【0054】
【比較例5】
(B−9)の圧入を停止する以外は、実施例5と同様の条件で(A−5)の溶融混練を行い、熱可塑性樹脂混練物(E−5)を得る。(E−5)を成形して得た平板は褐色であり、多量の異物が観測される。
(E−5)の成形品の物性は、熱変形温度が202℃、引張強度が1040kg/cm2、曲げ弾性率が33,000kg/cm2、アイゾッド強度が4.5kg・cm/cmである。
【0055】
【実施例6】
押出機の溶融ゾーン直後のサイドベント1にノズル付の栓を付し、ダイ前のサイドベント2を開口し、320℃にシリンダー温度を設定した独国ウェルナー社製相互咬み合い型2軸押出機「ZSK−25押出機」を用い(A−6)の溶融混練を行う。
熱可塑性樹脂(A−6)のガラス転移温度は225℃である。
(A−6)を押出機フィード口より供給量12kg/時で供給し、(B−9)をサイドベント1のノズルから0.6kg/時で圧入する。
(A−6)100重量部に対する、炭酸ガスの含有率は5.0重量部である。
【0056】
サイドベント2より炭酸ガスの放散が観測される。押出機より吐出する発泡のないストランド状の溶融樹脂を水で冷却した後にストランドカッターを用い熱可塑性樹脂混練物(D−6−9)を得る。(D−6−9)を成形して得た平板は淡黄色であり、平板に異物は観測されない。
(D−6−9)の成形品の物性は、熱変形温度が205℃、引張強度が900kg/cm2、曲げ弾性率が27,500kg/cm2、アイゾッド強度が9.5kg・cm/cmである。
【0057】
【比較例6】
(B−9)の圧入を停止する以外は、実施例6と同様の条件で(A−6)の溶融混練を行い、熱可塑性樹脂混練物(E−6)を得る。(E−6)を成形して得た平板は淡黄色であり、少量の異物が観測される。
(E−6)の成形品の物性は、熱変形温度が201℃、引張強度が850kg/cm2、曲げ弾性率が26,300kg/cm2、アイゾッド強度が8.6kg・cm/cmである。
【0058】
【実施例7】
押出機の溶融ゾーン直後のサイドベント1にノズル付の栓を付し、ダイ前のサイドベント2を開口し、240℃にシリンダー温度を設定した独国ウェルナー社製相互咬み合い型2軸押出機「ZSK−25押出機」を用い(A−7)の溶融混練を行う。
熱可塑性樹脂(A−7)のガラス転移温度は115℃である。
(A−7)を押出機フィード口より供給量12kg/時で供給し、(B−9)をサイドベント1のノズルから0.6kg/時で圧入する。
(A−7)100重量部に対する、炭酸ガスの含有率は5.0重量部である。
【0059】
サイドベント2より炭酸ガスの放散が観測される。押出機より吐出する発泡のないストランド状の溶融樹脂を水で冷却した後にストランドカッターを用い熱可塑性樹脂混練物(D−7−9)を得る。(D−7−9)を成形して得た平板は白色であり、平板に異物は観測されない。
(D−7−9)の成形品の物性は、熱変形温度が93℃、引張強度が460kg/cm2、曲げ弾性率が27,500kg/cm2、アイゾッド強度が32kg・cm/cmである。
【0060】
【比較例7】
(B−9)の圧入を停止する以外は、実施例7と同様の条件で(A−7)の溶融混練を行い、熱可塑性樹脂混練物(E−7)を得る。(E−7)を成形して得た平板は白色であり、少量の異物が観測される。
(E−7)の成形品の物性は、熱変形温度が90℃、引張強度が450kg/cm2、曲げ弾性率が27,000kg/cm2、アイゾッド強度が27kg・cm/cmである。
【0061】
【実施例8】
押出機の溶融ゾーン直後のサイドベント1にノズル付の栓を付し、ダイ前のサイドベント2を開口し、220℃にシリンダー温度を設定した独国ウェルナー社製相互咬み合い型2軸押出機「ZSK−25押出機」を用い(A−8)の溶融混練を行う。
熱可塑性樹脂(A−8)のガラス転移温度は108℃である。
(A−8)を押出機フィード口より供給量12kg/時で供給し、(B−9)をサイドベント1のノズルから0.6kg/時で圧入する。
(A−8)100重量部に対する、炭酸ガスの含有率は5.0重量部である。
【0062】
サイドベント2より炭酸ガスの放散が観測される。押出機より吐出する発泡のないストランド状の溶融樹脂を水で冷却した後にストランドカッターを用い熱可塑性樹脂混練物(D−8−9)を得る。(D−8−9)を成形して得た平板は無色透明であり、平板に異物は観測されない。
(D−8−9)の成形品の物性は、熱変形温度が89℃、引張強度が550kg/cm2、曲げ弾性率が34,500kg/cm2、 アイゾッド強度が1.8kg・cm/cmである。
【0063】
【比較例8】
(B−9)の圧入を停止する以外は、実施例8と同様の条件で(A−8)の溶融混練を行い、熱可塑性樹脂混練物(E−8)を得る。(E−8)を成形して得た平板はわずかに黄身を帯びた透明であり、少量の異物が観測される。
(E−8)の成形品の物性は、熱変形温度が87℃、引張強度が530kg/cm2、 曲げ弾性率が33,300kg/cm2、 アイゾッド強度が1.6kg・cm/cmである。
【0064】
【実施例9】
押出機の溶融ゾーン直後のサイドベント1にノズル付の栓を付し、ダイ前のサイドベント2を開口し、220℃にシリンダー温度を設定した独国ウェルナー社製相互咬み合い型2軸押出機「ZSK−25押出機」を用い(A−9)の溶融混練を行う。
熱可塑性樹脂(A−9)の融点は178℃である。
(A−9)を押出機フィード口より供給量12kg/時で供給し、(B−9)をサイドベント1のノズルから0.6kg/時で圧入する。
(A−9)100重量部に対する、炭酸ガスの含有率は5.0重量部である。
【0065】
サイドベント2より炭酸ガスの放散が観測される。押出機より吐出する発泡のないストランド状の溶融樹脂を水で冷却した後にストランドカッターを用い熱可塑性樹脂混練物(D−9−9)を得る。(D−9−9)を成形して得た平板は白色であり、平板に異物は観測されない。
(D−9−9)の成形品の物性は、熱変形温度が127℃、引張強度が710kg/cm2、 曲げ弾性率が28,500kg/cm2、 アイゾッド強度が11.5kg・cm/cmである。
【0066】
【比較例9】
(B−9)の圧入を停止する以外は、実施例9と同様の条件で(A−9)の溶融混練を行い、熱可塑性樹脂混練物(E−9)を得る。(E−9)を成形して得た平板は乳白色であり、少量の異物が観測される。
(E−9)の成形品の物性は、熱変形温度が125℃、引張強度が680kg/cm2、曲げ弾性率が27,300kg/cm2、アイゾッド強度が10.4kg・cm/cmである。
【0067】
【実施例10】
押出機の溶融ゾーン直後のサイドベント1にノズル付の栓を付し、ダイ前のサイドベント2を開口し、240℃にシリンダー温度を設定した独国ウェルナー社製相互咬み合い型2軸押出機「ZSK−25押出機」を用い(A−10)の溶融混練を行う。
熱可塑性樹脂(A−10)のガラス転移温度は120℃である。
(A−10)を押出機フィード口より供給量12kg/時で供給し、(B−9)をサイドベント1のノズルから0.6kg/時で圧入する。
(A−10)100重量部に対する、炭酸ガスの含有率は5.0重量部である。
【0068】
サイドベント2より炭酸ガスの放散が観測される。押出機より吐出する発泡のないストランド状の溶融樹脂を水で冷却した後にストランドカッターを用い熱可塑性樹脂混練物(D−10−9)を得る。(D−10−9)を成形して得た平板は無色透明であり、平板に異物は観測されない。
(D−10−9)の成形品の物性は、熱変形温度が103℃、引張強度が760kg/cm2、曲げ弾性率が34,500kg/cm2、アイゾッド強度が1.7kg・cm/cmである。
【0069】
【比較例10】
(B−9)の圧入を停止する以外は、実施例10と同様の条件で(A−10)の溶融混練を行い、熱可塑性樹脂混練物(E−10)を得る。(E−10)を成形して得た平板は無色透明であり、少量の異物が観測される。
(E−10)の成形品の物性は、熱変形温度が99℃、引張強度が740kg/cm2、曲げ弾性率が33,500kg/cm2、アイゾッド強度が1.6kg・cm/cmである。
【0070】
【実施例11】
(B−7)の代わりに(B−12)を使用する以外は実施例1と同様の方法で炭酸ガスを15.8重量部収着し含有した混合物(C−1−12)を得る。
押出機フィード口及び付近のシリンダー温度を53℃に設定し、その他のシリンダー温度を270℃に設定する以外は実施例1と同様の方法で(C−1−12)の溶融混練を行い、熱可塑性樹脂混練物(D−1−12)を得る。
この時、押出機フィード口、押出機サイドベント口それぞれより炭酸ガスの放散が観測され、溶融混練は不安定になる。
(D−1−12)を成形して得た平板は淡い黄色の色調であり、異物は観測されない。 (D−1−12)の成形品の物性は、熱変形温度が189℃、引張強度が780kg/cm2、曲げ弾性率が26,200kg/cm2、アイゾッド強度が5.2kg・cm/cmである。
【0071】
【比較例11】
(B−7)の代わりに(B−13)を使用する以外は実施例1と同様の方法で炭酸ガスを21.5重量部収着し含有した混合物(C−1−13)を得る。
押出機フィード口及び付近のシリンダー温度を53℃に設定し、その他のシリンダー温度を270℃に設定する以外は実施例1と同様の方法で(C−1−13)の溶融混練を試みるが、押出機フィード口より炭酸ガスが激しく放散され溶融混練が困難である。
【0072】
【実施例12】
(B−7)の代わりに(B−3)を使用する以外は実施例1と同様の方法で炭酸ガスを0.7重量部収着し含有した混合物(C−1−3)及び、熱可塑性樹脂混練物(D−1−3)を得る。
(D−1−3)を成形して得た平板は茶褐色であり、異物は観測されない。
(D−1−3)の成形品の物性は、熱変形温度が187℃、引張強度が740kg/cm2、曲げ弾性率が25,200kg/cm2、アイゾッド強度が5.1kg・cm/cmである。
【0073】
【比較例12】
(B−7)の代わりに(B−2)を使用する以外は実施例1と同様の方法で炭酸ガスを0.3重量部収着し含有した混合物(C−1−2)及び、熱可塑性樹脂混練物(D−1−2)を得る。
(D−1−2)を成形して得た平板は茶褐色であり、異物が観測される。
(D−1−2)の成形品の物性は、熱変形温度が187℃、引張強度が730kg/cm2、曲げ弾性率が25,200kg/cm2、アイゾッド強度が4.2kg・cm/cmである。
【0074】
【実施例13】
(B−9)の代わりに(B−4)を使用し、0.12kg/時で圧入する以外は実施例2と同様の操作で(A−2)100重量部に対する、炭酸ガスの含有率が1.0重量部の混合物の押出を行い、熱可塑性樹脂混練物(D−2−4)を得る。
(D−1−3)を成形して得た平板は茶褐色であり、異物は観測されない。
(D−1−3)の成形品の物性は、熱変形温度が187℃、引張強度が745kg/cm2、曲げ弾性率が25,000kg/cm2、アイゾッド強度が5kg・cm/cmである。
【0075】
【比較例13】
(B−9)の代わりに(B−2)を使用する以外は実施例13と同様の操作で(A−2)の押出を行う。押出機に炭酸ガスが導入されず、サイドベントからの炭酸ガスの放散は観測されない。
得られる熱可塑性樹脂混練物を成形して得た平板は茶褐色であり、多数の異物が観測される。
【0076】
【実施例14】
熱可塑性樹脂(A−3)100重量部と(B−1)5重量部をオートクレーブ内に密封し24時間静置し、炭酸ガスを2.4重量部収着し含有した混合物(C−3−1)を得る。
280℃にシリンダー温度を設定した独国ウェルナー社製相互咬み合い型2軸押出機「ZSK−25押出機」を用い(C−3−1)の溶融混練を行う。
フィード口及びサイドベント2より炭酸ガスの放散が観測される。押出機より吐出する発泡のないストランド状の溶融樹脂を水で冷却した後にストランドカッターを用い熱可塑性樹脂混練物(C−3−1)を得る。(C−3−1)を成形して得た平板は白色であり、平板に異物は観測されない。
(D−3−1)の成形品の物性は、熱変形温度が71℃、引張強度が830kg/cm2、曲げ弾性率が29,200kg/cm2、アイゾッド強度が4.6kg・cm/cmである。
【0077】
【実施例15】
熱可塑性樹脂(A−4)100重量部をオートクレーブ内に密封し、実施例1と同様に(B−5)を供給後、4時間静置し、炭酸ガスを1.4重量部収着し含有した混合物(C−4−5)及び、熱可塑性樹脂混練物(D−4−5)を得る。(D−4−5)を成形して得た平板は淡黄色であり、平板に異物は観測されない。
(D−4−5)の成形品の物性は、熱変形温度が123℃、引張強度が515kg/cm2、曲げ弾性率が24,400kg/cm2、アイゾッド強度が15.6kg・cm/cmである。
【0078】
【実施例16】
熱可塑性樹脂(A−5)100重量部をオートクレーブ内に密封し、実施例1と同様に(B−6)を供給後、4時間静置し、炭酸ガスを1.2重量部収着し含有した混合物(C−5−6)及び、熱可塑性樹脂混練物(D−5−6)を得る。(D−5−6)を成形して得た平板は黄色であり、平板に異物は観測されない。
(D−5−6)の成形品の物性は、熱変形温度が203℃、引張強度が1060kg/cm2、曲げ弾性率が33,200kg/cm2、アイゾッド強度が5.1kg・cm/cmである。
【0079】
【実施例17】
(B−7)の代わりに(B−8)を使用する以外は実施例1と同様の方法で炭酸ガスを6.8重量部収着し含有した混合物(C−1−8)を得る。
押出機フィード口及び付近のシリンダー温度を53℃に設定し、その他のシリンダー温度を270℃に設定する以外は実施例1と同様の方法で(C−1−8)の溶融混練を行い、熱可塑性樹脂混練物(D−1−8)を得る。
この時、押出機フィード口、押出機サイドベント口それぞれより炭酸ガスの放散が観測される。
(D−1−8)を成形して得た平板は淡い黄色の色調であり、異物は観測されない。
(D−1−8)の成形品の物性は、熱変形温度が189℃、引張強度が770kg/cm2、曲げ弾性率が25,400kg/cm2、アイゾッド強度が5.5kg・cm/cmである。
【0080】
【実施例18】
サイドベント1のノズルから圧入する(B−9)を(B−10)に変更する以外は実施例5と同様の操作で熱可塑性樹脂混練物(D−5−9)を得る。(D−5−9)を成形して得た平板は黄褐色であり、平板に異物は観測されない。
(D−5−9)の成形品の物性は、熱変形温度が203℃、引張強度が1070kg/cm2、曲げ弾性率が33,300kg/cm2、アイゾッド強度が5.3kg・cm/cmである。
Claims (6)
- 熱可塑性樹脂の溶融混練加工において、溶融混練する前において、熱可塑性樹脂(A)に、0.1MPa〜15MPaの圧力の炭酸ガス(B)を0.1秒間以上接触させることにより、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、0.7〜20.0重量部の炭酸ガス(B)を含有させた混合物を溶融混練し、溶融混練中に炭酸ガス(B)を放散し、発泡のない熱可塑性樹脂混練物を得ることを特徴とする熱可塑性樹脂混練物の製造方法。
- 熱可塑性樹脂の溶融混練加工において、溶融混練過程において、熱可塑性樹脂(A)に、0.1MPa〜30MPaの圧力の炭酸ガス(B)を押出機のシリンダーより注入することにより、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、0.7〜20.0重量部の炭酸ガス(B)を含有させた混合物を溶融混練し、溶融混練中に炭酸ガス(B)を放散し、発泡のない熱可塑性樹脂混練物を得ることを特徴とする熱可塑性樹脂混練物の製造方法。
- 熱可塑性樹脂(A)が非晶性熱可塑性樹脂であり、溶融混練の加工温度が熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度+150℃以下の温度であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱可塑性樹脂混練物の製造方法。
- 熱可塑性樹脂(A)が結晶性熱可塑性樹脂であり、溶融混練の加工温度が熱可塑性樹脂(A)の融点+100℃以下の温度であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱可塑性樹脂混練物の製造方法。
- 熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度が110℃〜250℃であることを特徴とする請求項3記載の熱可塑性樹脂混練物の製造方法。
- 熱可塑性樹脂(A)が変性ポリフェニレンエーテル樹脂であることを特徴とする請求項3又は5記載の熱可塑性樹脂混練物の製造方法。
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