JP4596352B2 - リグノセルロース系材料用接着剤組成物、並びにそれを用いた熱圧成形体及び熱圧成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機ポリイソシアネート化合物、ヨードプロパルギルカーバメート化合物、ホキシム化合物、ハロゲン化エーテル化合物を成分とする、防カビ性、防蟻性、防腐性等耐久性に優れたリグノセルロース系材料用接着剤組成物、並びにそれを用いた熱圧成形体及び熱圧成形体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
木質チップ、木質繊維等のリグノセルロース系材料の熱圧成形体(パーティクルボード、MDFと称される中密度繊維板等のボード等)用の接着剤として、従来、尿素樹脂、メラミン樹脂、尿素メラミン樹脂、フェノール樹脂、フェノールメラミン樹脂等のホルマリン系接着剤が使用されてきた。しかしながら、住宅環境の向上や健康面での安全性向上の点から、最近の、例えばシックハウス症候群の問題に見られるように接着剤から放出されるホルマリンを低減化させる必要が出てきた。
【0003】
前記問題に対応できる接着剤としては、非ホルマリン系接着剤である有機ポリイソシアネート化合物が、元来その構造にホルマリンを含有しないという特徴に加えて、その卓越した接着特性、耐熱水性等により、使用されつつある。しかし、有機ポリイソシアネート化合物を前記熱圧成形体用の接着剤として用いる場合、その優れた接着性の為、連続又はバッチ式プレスにて熱圧成形する際、接触する金属表面(以下、熱盤と称する。)に強固に接着するという現象が生じて、前記成形体を安定的に連続製造できないという問題点が生じる。
【0004】
この熱盤との接着の問題を解決するため、特開昭52−154875号公報、特開昭57−113053号公報、特開昭55−160014号公報、特開平4−232004号公報、特開平4−232004号公報、特開昭57−113053号公報、特開平4−232004号公報、特開平11−71566号公報等において離型剤を使用する技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、前記のような熱圧成形体の接着剤として有機ポリイソシアネート化合物を用いる際の問題点として、有機ポリイソシアネート化合物には、前記のようなホルマリン系接着剤に含まれるホルマリンが含まれていないため、それによる防カビ性、防虫性、防蟻性等が期待できないという点がある。更には、有機ポリイソシアネート化合物を用いた熱圧成形体に関しては、前記の熱盤に対する付着問題の解決が困難なため、現在はまだ広範に生産されておらず、したがって、この防カビ性、防虫性、防蟻性等の点が現時点でまだ顕著な問題として取り上げられていない。今後、熱盤に対する付着の問題の解決により、有機ポリイソシアネート化合物を用いた熱圧成形体が今後広範囲に使用されるようになれば、この防カビ性、防虫性、防蟻性等の点が、必ず次の解決すべき問題点となるのは間違いない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
現在、防カビ性、防虫性、防蟻性等を付与する化合物は数多く存在する。
例えば、特開平9−136304号公報には、木材小片又は木材繊維を、防虫剤としてシフェノトリン、ベルメトリン、シベルメトリン、フェンバレレートから選ばれる一種以上のピレスロイド化合物を含有する接着剤を用いて成形、熱圧して得られることを特徴とする防虫木質ボードが開示されている。
更にこの公報では、防カビ、防腐剤としてはヨードプロパルギルカーバメート化合物が開示され、ピレスロイド化合物とヨードプロパルギルカーバメート化合物とを用いて防虫、防カビ、防腐性に優れたボードが示されている。そして、その際に使用する接着剤としては、尿素樹脂、尿素・メラミン共縮合樹脂、フェノール・メラミン共縮合樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート樹脂が開示されている。
【0007】
一方、特公平7−84765号公報には、ウレタンプレポリマーであるポリオール成分と白蟻防除剤と微小粒体との混合液と、ウレタンプレポリマーであるイソシアネート成分とからなる二成分の混合液とを建築物の基礎の側面及び基礎の周辺地表面に塗布もしくは散布し、硬化させてウレタンプレポリマーの硬化被膜を形成させる防蟻材の施工方法が開示されている。そこでは白蟻防除剤としてクロルデン、デイルドリン、アルドリン等の有機塩素系薬剤やホキシム、フェニトロチオン、サイアノホス、アセフェート、クロスビリホス等の有機燐系薬剤、ベルメトリン等のピレスロイド系薬剤、バイゴン等のカーバメート系薬剤が好ましく、また忌避剤としてジエチルメタトルアミドが使用できると示されている。
【0008】
ところで、イソシアネート基は非常に反応性が高く、例えば水やアルコール、ポリオール、アミン化合物等活性水素基を有する化合物と極めて速く反応する性質を有し、更に反応系の塩基度(アルカリ性)が高い時も反応性が高くなる等、使用する際には組み合わせる化合物の種類やその条件を厳密に見極める必要がある。そのため、木質チップ、木質繊維等のリグノセルロース系材料の熱圧成形体(パーティクルボード、MDF等のボード等)用の接着剤としてイソシアネート系接着剤を用いる場合には、例えば熱圧成形体の熱圧後の含水率調整に使用する水や、ホルマリン系接着剤に含まれる水との反応や、リグノセルロース系材料に含まれる活性水素基との反応だけでなく、共存している各種化合物と何らかの反応を起こすことも充分に考慮しておかねばならない。すなわち、リグノセルロース系材料の接着剤としてイソシアネート系接着剤を使用する場合には、これらの反応のため接着剤組成物の粘度が上昇するためリグノセルロース系材料への接着剤組成物の均一塗布並びに均一な成形(フォーミング)ができず、密度、物性、厚み等において均質な熱圧成形体が得られないという問題点が生じる。
【0009】
前記の特開平9−136304号公報には、防カビ、防虫、防腐性を付与する化合物としてピレスロイド化合物とヨードプロパルギルカーバメート化合物が開示されているが、これらの化合物をイソシアネート系接着剤と組み合わせた場合に、その化合物の種類ではその混合液自体が増粘する場合があり、長時間安定的に使用することが困難であった。一方、特公平7−84765号公報では、防蟻性を付与させる方法として、白蟻防除剤と微小粒体をウレタンプレポリマーであるイソシアネート成分ではなく、ウレタンプレポリマーであるポリオール成分に混合した混合液を、建築物や基礎の表面にその白蟻防除剤と微小粒体を含んだ接着剤を塗布する施工方法を開示しているが、この両成分を混合した場合には前記と同様に、接着剤の増粘という問題が生じる。
【0010】
イソシアネート系接着剤は、この特公平7−84765号公報のようにポリオール成分とイソシアネート成分からなる二成分タイプのイソシアネート系接着剤だけでなく、イソシアネート単独又は活性水素化合物とのイソシアネート基末端プレポリマー単独のイソシアネート系接着剤を用いる場合もあり、その際には防カビ、防虫、防蟻、防腐性を付与する化合物と組み合わせた場合、前記と同様に接着剤の増粘という問題が生じる懸念がある。更に、この特公平7−84765号公報では、建築物や基礎の表面にその白蟻防除剤と微小粒体を含んだ接着剤を塗布する施工方法を開示しているのみであり、リグノセルロース系材料の熱圧成形体用に用いられる木質チップ、木質繊維等への根本的な防虫、防蟻、防カビ、防腐対策は開示されていなかった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意研究の結果、防虫、防蟻、防カビ、防腐性の根本的な解決のためには、パーティクルボード、MDF等のボード等のリグノセルロース系材料の熱圧成形体用に用いられる木質チップ、木質繊維等の接着剤中に防虫、防蟻、防カビ、防腐性を付与させる化合物を混合する方が、木質チップ、木質繊維等への接着剤及びその化合物の浸透、被覆が可能のため、より効果的な防虫、防蟻、防カビ、防腐性を付与できるという観点に立ち、その際に予想される、接着剤の液の安定性不良を解決する手段として、特公平7−84765号公報のように二液タイプのウレタン系システムでなくてもイソシアネート基末端のウレタンプレポリマー単独で接着剤として使用する場合でも、有機ポリイソシアネート化合物と特定の組成の化合物からなる接着剤組成物が、液の安定性があり、防カビ性、防虫性、防蟻性、防腐性に優れた接着剤組成物として前記の諸問題を解決できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(6)に示されるものである。
(1) 有機ポリイソシアネート化合物(A)、ヨードプロパルギルカーバメート化合物(B)、ホキシム化合物(C)、ハロゲン化エーテル化合物(D)およびワックスエマルジョン(E)からなるリグノセルロース系材料用接着剤組成物。
【0014】
(2) ワックスエマルジョン(E)が、パラフィン系ワックスエマルジョンである前記(1)のリグノセルロース系材料用接着剤組成物。
【0015】
(3) ワックスエマルジョン(E)が、モンタン系ワックスエマルジョンである前記(1)のリグノセルロース系材料用接着剤組成物。
【0016】
(4) 触媒(F)を更に含有してなることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかのリグノセルロース系材料用接着剤組成物。
【0017】
(5) ホルマリン縮合系樹脂(G)を更に含有してなることを特徴とする、前記(1)〜(4)のいずれかのリグノセルロース系材料用接着剤組成物。
【0018】
(6) 前記(1)〜(5)のいずれかの接着剤組成物を用いたリグノセルロース系材料の熱圧成形体。
【0019】
(8) 前記(1)から(6)のいずれか1項に記載の接着剤組成物を用いたリグノセルロース系材料の熱圧成形体の製造方法。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の接着剤組成物の構成成分について述べる。
(A)成分に用いられる有機ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと称する。)、MDIとMDI系多核縮合体との混合物(以下、ポリメリックMDIと称する。)、液状MDI(カルボジイミド変性MDI)、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリメチレンキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート等のポリイソシアネートの単独又は2種以上の混合物や、前記ポリイソシアネートに触媒を加え、二量体(ウレトジオン変性)又は三量体(イソシアヌレート変性)としたもの等が挙げられる。本発明においては、本発明に規定するヨードプロパルギルカーバメート化合物、ホキシム化合物、ハロゲン化エーテル化合物、ワックスエマルジョン、触媒との相溶性の良いタイプが好ましい。
【0021】
また前記のほかにも、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、ラウリルアルコール等のモノオールや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のジオールや、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオールや、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンや、そのほかジグリセリン、ソルビトール、蔗糖等の単独又は混合物にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを単独又は併用し、公知の方法で付加重合して得られるモノオール又はポリオールと、前記有機ポリイソシアネート化合物とを、例えば有機ポリシソシアネート化合物のイソシアネート基と前記モノオール又はポリオールの水酸基との当量比(イソシアネート基/水酸基)が1.5〜500、好ましくは2.0〜400の範囲となるように公知の方法で反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーも、前記(A)成分として好適に用いることができ、前記のようにヨードプロパルギルカーバメート化合物、ホキシム化合物、ハロゲン化エーテル化合物、ワックスエマルジョンや触媒との相溶性の良いタイプが好ましい。
【0022】
有機ポリイソシアネート化合物(A)のイソシアネート含量は25〜35質量%が好ましく、特に28〜33質量%がより好ましい。また、25℃における粘度は1,000mPa・s以下、好ましくは800mPa・s以下である。
【0023】
本発明で好ましい有機ポリイソシアネート化合物(A)は、ポリメリックMDIとポリエーテルモノ及び/又はジオールとのイソシアネート基末端プレポリマーである。
【0024】
本発明において、ヨードプロパルギルカーバメート化合物(B)を用いる目的は、有機ポリイソシアネート化合物を接着剤として用いて得られた熱圧成形体における防カビ性、防腐性としての効果である。好ましいヨードプロパルギルカーバメート化合物(B)としては、ヨードプロパルギルエチルカーバメート、ヨードプロパルギルプロピルカーバメート、ヨードプロパルギルブチルカーバメート等のヨードプロパルギルアルキルカーバメート、ヨードプロパルギルフェニルカーバメート、ヨードプロパルギルベンジルカーバメート等が挙げられる。
【0025】
本発明において、ホキシム化合物(C)を用いる目的は、同様の前記熱圧成形体における防虫性、防蟻性としての効果である。好ましいホキシム化合物(C)としては、0,0−ジエチル−o−(α−シアノベンジリデンアミノ)チオホスフェートが挙げられる。
【0026】
本発明において、ハロゲン化エーテル化合物(D)を用いる目的は、防カビ性、防虫性、防蟻性、防腐性としての効果に加えて、熱圧成形体用の接着剤として有機ポリイソシアネート化合物を用いた場合、前記ヨードプロパルギルカーバメート化合物(B)とホキシム化合物(C)を用いた場合の接着剤混合液の安定性改良剤としての効果である。すなわち、イソシアネート基の反応性をコントロールする方法としては、一般的に酸性することが効果的な方法であり、例えば有機酸又はそれに準じた化合物を少量添加することが一般的であるが、ハロゲン化エーテル化合物(D)を用いることにより、防カビ性、防虫性、防蟻性、防腐性等の性能とイソシアネート基の反応性のコントロールという性能を付与することになるので好ましい。このハロゲン化エーテル化合物(D)としては、具体的には、2,2,2′,2′−テトラクロルジエチルエーテル、2,2,2,2′,2′,2′−ヘキサクロルジエチルエーテル、2,3,3,3,2′,3′,3′,3′−オクタクロルジプロピルエーテル、2,2,3,3,3,2′,2′,3′,3′,3′−デカクロルジプロピルエーテル、2,2,2,2′,2′,2′−ヘキサブロムジエチルエーテル、2,3,3,3,2′,3′,3′,3′−オクタヨードジプロピルエーテル等が挙げられる。
【0027】
本発明において、ワックスエマルジョン(E)を用いる目的は、熱盤との接着性を回避させるための離型剤としての効果であり、例えば、パラフィンワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス等の天然ワックス、及びパラフィンワックス誘導体、モンタンワックス誘導体、硬化ひまし油、ステアリン酸アミド等の合成ワックスを水性エマルジョンにしたもの等が挙げられ、その中でも特に、パラフィン系ワックス、モンタン系ワックス及びその誘導体が良好な離型性を発現し、二次的効果として、熱圧成形体の耐熱水性に良好な効果を与えることになる。
【0028】
ワックス成分のエマルジョン化には、公知の乳化剤を用いることが可能である。このような乳化剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルアリールスルホン酸塩等の界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテル等と脂肪酸等とのエステル等の界面活性剤を挙げることができる。
【0029】
ワックス成分の融点は40〜160℃である。ワックス成分の融点が40℃未満の場合では、通常の熱圧成形温度である100〜200℃の条件下で蒸発、気化しやすくなり、離型性を発揮しにくくなる。一方、融点が160℃以上の場合では、熱圧成形温度が200℃の条件下であっても成形時間内に成形体の内部の温度が必ずしもその温度まで上昇するとは限らないため、ワックス成分が成形体表面に熱移動しにくくなり、熱盤との離型性を発揮できない。また、安定なワックスエマルジョンを得ることが難しい。
更に、ワックスエマルジョン(E)の固形分は10〜60質量%のものが好ましい。
【0030】
本発明に用いられる触媒(F)は、前記(A)成分と、水や(E)成分やリグノセルロース系材料との反応硬化を促進するための触媒としても作用するものである。
【0031】
触媒としては、アミン系触媒、金属系触媒等がある。アミン系触媒の具体例として、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−プロピルイミダゾール、1−シアノイミダゾール、1−シアノメチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1−メチル−2−エチルイミダゾール、1−メチル−4−エチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1−エチル−4−メチルイミダゾール、ピリジン、α−ピコリン等が挙げられる。
【0032】
また、有機ポリイソシアネート化合物と反応する活性水素を有するアミン系触媒として、N,N−ジメチルエタノールアミン等のN,N−ジアルキルアルカノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミン、トリエタノールアミン等のトリアルカノールアミン、N,N,N′−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルヒドロキシプロピレンジアミン等も使用することができる。
【0033】
金属系触媒としては、触媒活性を発現できる金属化合物であれば特に制限はなく、例えば、スズ、亜鉛、カルシウム、チタン等のエステル化物、金属塩、酸誘導体、酸化物、塩化物等が挙げられ、具体的には、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジクロライド、オクチル酸スズ、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸カルシウム、テトラブチルチタネート、テトラステアリルチタネート、酸化スズ、塩化スズ、塩化マグネシウム等が挙げられる。
【0034】
更に触媒(F)の配合量は、質量比で(A)に対して、0.1〜20質量%が好ましく、特に0.5〜15質量%が好ましい。かかる(C)成分の配合量が前記下限値未満である場合には、硬化反応が不充分で、目的とした成形体が得られにくくなる傾向があり、また前記上限値を越える場合には、硬化反応が速すぎて熱盤での熱圧までにリグノセルロース系材料が反応固化してしまい正常な成形体が得られない。
【0035】
ホルマリン縮合系樹脂(G)としては、尿素樹脂、メラミン樹脂、尿素メラミン共縮合樹脂、フェノール樹脂、フェノールメラミン共縮合樹脂等が混合使用できる。(G)成分に対する(A)成分の配合量は、固形分換算の質量比で、(A)成分/(G)成分=5/95〜95/5が好ましく、特に10/90〜90/10が好ましい。
【0036】
リグノセルロース系材料の熱圧成形体は、リグノセルロース系材料に本発明の接着剤組成物を塗布し、加熱圧縮することによって得られる。このリグノセルロース系材料としては、パーティクルボード、オリエンテッドストランドボード(OSB)、ウェイファーボード、ラミネーテッドベニアランバー(LVL)、ラミネーテッドストランドランバー(LSL)、パラレルストランドランバー(PSL)等に使用される木質削片であるストランドチップ、ダストチップ、フレークチップや、ハードボード、MDF、インシュレーションボード等に使用されるファイバー、コーリャン茎、バガス、籾殻、麻、わら、い草、あし、椰子の実や樹、ゴムの樹、とうもろこし、おがくず等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
接着剤組成物の塗布方法としては、有機ポリイソシアネート化合物(A)、ヨードプロパルギルカーバメート化合物(B)、ホキシム化合物(C)、ハロゲン化エーテル化合物(D)、ワックスエマルジョン(E)、触媒(F)及び前記のホルマリン系接着剤(G)は、リグノセルロース系材料に塗布する直前に混合して使用するか、又は(A)〜(G)を別々に塗布して使用する。このとき、水を加えた混合系であってもよい。
連続ラインで製造するときは、ヨードプロパルギルカーバメート化合物(B)、ホキシム化合物(C)、ハロゲン化エーテル化合物(D)、ワックスエマルジョン(E)、触媒(F)、ホルマリン系接着剤(G)をあらかじめ混合しておいたものを使用するほうが好ましい。この予備混合物と有機ポリイソシアネート化合物(A)と水をスタティックミキサーで連続的に混合してから、リグノセルロース系材料に塗布し、成形する。
成形条件はボードの公知の成形条件であればすべて適用できる。
【0038】
リグノセルロース系材料に対する各々の添加量は、リグノセルロース系材料に対して、有機ポリイソシアネート化合物(A)が固形分で5〜20質量%、ヨードプロパルギルカーバメート化合物(B)が固形分で0.005〜2質量%、ホキシム化合物(C)が固形分で0.005〜2質量%、ハロゲン化エーテル化合物(D)が固形分で0.005〜2質量%、ワックスエマルジョン(E)が固形分で0.5〜10質量%、触媒(F)が固形分で0.005〜4質量%である。
【0039】
【発明の効果】
このように本発明の、有機ポリイソシアネート化合物(A)、ヨードプロパルギルカーバメート化合物(B)、ホキシム化合物(C)、ハロゲン化エーテル化合物(D)からなる接着剤組成物を用いることによって、防カビ、防虫、防蟻、防腐性に優れたリグノセルロース系材料の熱圧成形体を得ることができ、また特定組成のワックスエマルジョン(E)を用いることにより、その熱圧成形時に、熱盤表面との接着を防ぐことができるだけでなく、物性面でも優れたリグノセルロース系材料の熱圧成形体を得ることが可能となった。
【0040】
【実施例】
次に、本発明のリグノセルロース系材料用接着剤組成物、並びにそれを用いた熱圧成形体及び製造方法を、合成例、実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はかかる合成例、実施例のみに限定されるものではない。なお「%」は、特に断りのない限り「質量%」を意味する。
【0041】
[A液の合成]
合成例1〜5
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた、容量が2000mlの反応器を用いて、原料イソシアネートと原料モノ又はポリオールを表1に示す量を仕込んだ後、80℃まで昇温して3時間反応させて、有機ポリイソシアネート化合物A1〜A5を合成した。
表1に原料の種類、使用量、分析値を示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【0044】
[接着剤組成物の調製及び評価]
上記、表1により得られた有機ポリイソシアネートA1〜A5と下記に示す防カビ剤等、離型剤、触媒を組み合わせてリグノセルロース系材料用接着剤組成物を調整した。その各接着剤組成物の仕込み量を表2に示す。
なお、比較例1は、ワックスエマルジョンを用いなかったため成形体が熱盤に非常に強固に接着し、物性評価はできなかった。比較例2〜4についてもワックスエマルジョンを用いなかったため成形体が熱盤に非常に強固に接着したが、下記の防カビ性、防蟻性、防腐性評価用のサンプル作成の必要上、熱盤の上下に離型紙を敷いて熱圧成形した。
【0045】
【表2】
【0046】
[B液原料]
IC:ヨードプロバルギルブチルカーバメート
[C液原料]
ホキシム:0,0−ジエチル−o−(α−シアノベンジリデンアミノ)チオホスフェート
[D液原料]
OCDPE:2,3,3,3,2′,3′,3′,3′−オクタクロルジプロピルエーテル
[E液原料]
ワックスエマルジョンP:
モンタン系のワックスエマルジョン(融点=78℃、固形分=30%)
ワックスエマルジョンQ:
パラフィン系のワックスエマルジョン(融点=60℃、固形分=30%)
[F液原料]
触媒S:トリエチレンジアミン
触媒T:N,N−ジメチルエタノールアミン
触媒U:ジブチルチンジラウレート
[G液原料]
M:尿素メラミン共縮合樹脂(モル比=1.5、固形分=50%)
【0047】
[リグノセルロース系材料の熱圧成形体の成形方法]
(1)成形条件
ボードサイズ:40cm×40cm
ボード厚み:15mm
設定密度:720kg/m3
木質チップ又は木質繊維の含水率及び樹種:3%、針葉樹
製品含水率:9%
マット含水率:14%
熱盤(プレス)温度:200℃
熱盤(プレス)圧力:3MPa(面圧)
熱盤(プレス)時間:150秒
【0048】
(2)成形方法
表2に記載の熱圧成形体の作成について、針葉樹の木質チップを用いて得られるパーティクルボード(実施例1、2、5、比較例1、2)については、下記の1)の方法にて作成し、木質繊維を用いて得られる中密度繊維板(実施例3、4、比較例3、4)については、下記の2)の方法にて作成した。
1)実施例1、2、5、比較例1、2の成形体の作成方法
表2に記載の量の針葉樹の木質チップを撹拌羽根のついた容積約0.5m3 のブレンダーに投入し、そこに表2に記載の量の有機ポリイソシアネート化合物、ワックスエマルジョン、触媒及びマット含水率用の水の混合物を、約5分間混合撹拌しながらスプレー塗布した。その後、その接着剤組成物が塗布された木質チップを取り出して、成形後の成形体の密度が設定密度になるように計量し、下記の鉄板上に前記ボードサイズになるようにフォーミングし、更に同形状の鉄板を上に載せ、前記条件で熱圧成形した。
2)実施例3、4、比較例3、4の成形体の作成方法
表2に記載の量の針葉樹の木質チップを加圧リファイナー(解繊機)を用いて、蒸解圧力=0.7MPa、蒸解温度=150℃の条件で解繊(繊維化)した。それを配管に通し、そこに表2に記載の量の有機ポリイソシアネート化合物、ワックスエマルジョン、触媒及びマット含水率用の水の混合物を同時に配管内に添加して、気流乾燥機にて前記マット含水率になるまで乾燥させた。その後、その接着剤組成物が塗布された木質繊維を取り出して、成形後の成形体の密度が設定密度になるように計量し、下記のステンレススチール板上に前記ボードサイズになるようにフォーミング成形装置を用いてフォーミングし、更に同形状のステンレススチール板を上に載せ、前記条件で熱圧成形した。
【0049】
(3)評価方法
[物性測定]
前記、表2の実施例1、2、5、比較例1、2の成形体の各種物性値については、JIS A−5908に準じて測定し、実施例3、4、比較例3、4の成形体の各種物性値については、JIS A−5905に準じて測定し、その結果を表2に示す。
[防カビ性の評価]
JIS Z 2911(カビ抵抗性試験方法)に従って、JIS規定の5菌種混合胞子懸濁液を用い、シャーレ内の培地上に設置した3個の縦3cm、横3cm、高さ1cmの大きさのボードサンプルのそれぞれに前記の胞子懸濁液を0.5ml垂らした後、密封した。28℃、99%の恒温器中で30日経過後のボード表面のカビの繁殖の程度を目視で判定した。全く繁殖が見られないボードを−、完全に表面がカビの繁殖で被覆されたボードを++として、−、+、++の3段階で表2に示す。
[防蟻性の評価]
直径9cm、深さ2cmの大きさのシャーレに湿った濾紙を敷いて、その上に前記と同じ大きさのボードサンプルを入れた。そして、そこにイエシロアリ20匹を入れて、20℃、65%の条件下で10日間保管し、その後のイエシロアリによるボードサンプルの食害被害状況(蟻道)を目視で観察した。全く食害被害が見られないボードサンプルを−、ボード全面に食害被害が見られるボードサンプルを++として、−、+、++の3段階で表2に示す。
[防腐性の評価]
前記の防蟻性と同様に、直径9cm、深さ2cmの大きさのシャーレに湿った濾紙を敷いて、その上に前記と同じ大きさのボードサンプルを入れた。そして、そこにオオウズワラタケの菌を入れて、20℃、65%の条件下で30日間保管し、その後のオオウズワラタケによるボードサンプルの腐朽被害状況を目視で観察した。全く腐朽被害が見られないボードサンプルを−、ボード全面に腐朽被害が見られるボードサンプルを++として、−、+、++の3段階で表2に示す。
[離型性の評価]
ボード上下に高抗張力ステンレススチール板を置き、前記成形時に離型性の確認を行い、その結果を表2に示す。
[可使時間の測定]
前記、表2の実施例1〜5、比較例1〜4におけるA液からG液の組み合わせにより得られる接着剤組成物を50℃、2時間放置して、その組成物のゲル化の有無を判定した。ゲル化したサンプルを「不可」、流動性があってゲル化していないサンプルを「可」と判定し、その結果を表2に示す。
Claims (6)
- 有機ポリイソシアネート化合物(A)、ヨードプロパルギルカーバメート化合物(B)、ホキシム化合物(C)、ハロゲン化エーテル化合物(D)およびワックスエマルジョン(E)からなるリグノセルロース系材料用接着剤組成物。
- ワックスエマルジョン(E)が、パラフィン系ワックスエマルジョンである請求項1に記載のリグノセルロース系材料用接着剤組成物。
- ワックスエマルジョン(E)が、モンタン系ワックスエマルジョンである請求項1に記載のリグノセルロース系材料用接着剤組成物。
- 触媒(F)を更に含有してなることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のリグノセルロース系材料用接着剤組成物。
- ホルマリン縮合系樹脂(G)を更に含有してなることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のリグノセルロース系材料用接着剤組成物。
- 請求項1から5のいずれか1項に記載の接着剤組成物を用いたリグノセルロース系材料の熱圧成形体。
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