JP4596095B2 - 高分子固体電解質 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオン伝導性高分子電解質及びそれを用いたポリマー電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビデオカメラ、ノート型パソコン及び携帯電話などの小型家電や、携帯型情報機器の近年の急速な市場拡大に伴い、これらの機器に使われる電池としてリチウムイオンを電解質とする小型あるいは薄型の二次電池の需要が急速に高まっている。また、電動アシスト自転車、電気自動車、燃料電池自動車用補助電源、及びバイクなどにも軽量大容量二次電池の需要も高くなっている。このような背景のもと、軽量で薄膜型電池を実現するためのイオン伝導性高分子電解質の開発が近年盛んである。イオン伝導性高分子電解質は、主として有機溶媒を全く含まない高分子固体電解質と有機溶媒を含む高分子ゲル電解質に分けられるが、イオン導電率の問題から有機溶媒を含む高分子ゲル電解質が主流となっている。
【0003】
高分子ゲル電解質に使用されるバインダー樹脂としては、例えば特開昭57−143356号公報にポリフッ化ビニリデンが、特開平5−109310号公報にはポリエチレンオキシドが、特開平4−308660号公報にはポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)が開示されていた。中でも、特開平11−60870号公報にはポリフッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体とビスフェノールZポリカーボネートのブレンドによりイオン導電率を向上させる記述があった。
【0004】
しかしながら、産業廃棄物埋立地の土壌汚染など環境問題がクローズアップされている今日において、寿命となった電池を埋め立て廃棄されるのではなく、減量とエネルギー回収が可能なガス化溶融炉等で燃焼廃棄処理されることを想定すると、燃焼時に炉を傷めるフッ化水素発生源となるフッ素樹脂の使用を低減させる要求があった。さらに、有機溶媒を含み発火の恐れのあるリチウムイオン電池においてポリエチレンオキシドやPMMAは難燃性の観点から不十分であり、前記の特開平11−60870号公報においては、導電率の点で十分満足出来るものではなく、改善が望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の問題点であるフッ化水素の発生がなく難燃性を有する、高分子固体電解質のバインダーを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のビスフェノール類とポリシロキサン構造を有するビスフェノール類より誘導された共重合ポリカーボネート樹脂をバインダーに用いた高分子固体電解質はイオン伝導度が高く非ハロゲンで難燃性を有しており、良好なポリマー電池用高分子固体電解質となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、一般式(A)および一般式(B)からなる構造単位を有し、一般式(B)の構造単位が全構造単位中20〜70重量%であり、かつ極限粘度が0.2〜2.0dl/gであるポリカーボネートとイオン解離したI族またはII族金属塩を含む高分子固体電解質およびそれを用いたポリマー電池を提供するものである。
【0008】
【化4】
(式中、R1 〜R4 は、各々独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、又は炭素数7〜17のアラルキル基であり、これらの基に炭素原子を有する場合には置換基として、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基を有することもできる。Xは、
【化5】
であり、ここにR5 〜R6 は、それぞれ水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、又は炭素数6〜12のアリール基を表すか、R5 〜R6 が一緒に結合して、炭素環または複素環を形成する基を表し、これらの基に炭素原子を有する場合には置換基として、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基を有することもできる。R7 〜R8 は、それぞれ水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。aは0〜20の整数を表す。)
【化6】
(式中、R9 〜R10は、各々独立して、水素、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、又は炭素数7〜17のアラルキル基であり、これらの基に炭素原子を有する場合には置換基として、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基を有することもできる。R11〜R14は、各々独立して、水素、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、又は炭素数7〜17のアラルキル基であり、これらの基に炭素原子を有する場合には置換基として、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基を有することもできる。R15は炭素数1〜6のアルキレン基またはアルキリデン基を表すか単に結合を表す。Yは、−Si(R16)(R17)O−及び/又は−Si(R18)(R19)O−の単独重合体またはランダム共重合体を表し、重合度は0〜200であり、R16〜R19は、各々独立して、水素、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、又は炭素数7〜17のアラルキル基であり、これらの基に炭素原子を有する場合には置換基として、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、又は炭素数1〜5のアルコキシ基を有することもできる。)
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の高分子固体電解質の材料として用いられるポリカーボネートは、ビスフェノールAと炭酸エステル形成性化合物からポリカーボネートを製造する際に用いられる公知の方法、例えばビスフェノール類とホスゲンとの直接反応(ホスゲン法)、あるいはビスフェノール類とビスアリールカーボネートとのエステル交換反応(エステル交換法)などの方法を採用することができる。
【0010】
前者のホスゲン法においては、通常、酸結合剤および溶媒の存在下において、本発明における一般式(A)を誘導するビスフェノール類と一般式(B)を誘導するポリシロキサン化合物とをホスゲンと反応させる。酸結合剤としては、例えばピリジンや、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などが用いられ、また溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、キシレンなどが用いられる。さらに、縮重合反応を促進するために、トリエチルアミンのような第三級アミン触媒および第四級アンモニウム塩などの触媒を、また重合度調節には、フェノール、p-t-ブチルフェノール、p-クミルフェノール、アルキル置換フェノール類、ヒドロキシ安息香酸アルキル類やアルキルオキシフェノール類などの一官能基化合物を分子量調節剤として加える。さらに、所望に応じ亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイトなどの酸化防止剤や、フロログルシン、イサチンビスフェノール、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、α,α',α"-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリイソプロピルベンゼンなどの分岐化剤を小量添加してもよい。反応は通常0〜150℃、好ましくは5〜50℃の範囲である。反応時間は反応温度によって左右されるが、通常0.5分〜10時間、好ましくは1分〜2時間である。また、反応中は、反応系のpHを10以上に保持することが望ましい。
【0011】
一方、後者のエステル交換法においては、本発明における一般式(A)を誘導するビスフェノール類と一般式(B)を誘導するポリシロキサン化合物とを、ビスアリールカーボネートと混合し、減圧下で高温において反応させる。この時、フェノール、p-t-ブチルフェノール、p-クミルフェノール、アルキル置換フェノール類、ヒドロキシ安息香酸アルキル類やアルキルオキシフェノール類などの一官能基化合物を分子量調節剤として加えてもよい。反応は通常150〜350℃、好ましくは200〜300℃の範囲の温度において行われ、また減圧度は最終で好ましくは1mmHg以下にして、エステル交換反応により生成した該ビスアリールカーボネートから由来するフェノール類を系外へ留去させる。反応時間は反応温度や減圧度などによって左右されるが、通常1〜6時間程度である。反応は窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく。また、所望に応じ、酸化防止剤や分岐化剤を添加して反応を行ってもよい。
【0012】
ホスゲン法とエステル交換法では、一般式(A)構造を誘導するビスフェノール類および一般式(B)構造を誘導するビスフェノール化合物の反応性を考慮した場合、ホスゲン法の方が好ましい。
【0013】
本発明中のポリカーボネートの製造に使用される一般式(A)を誘導するビスフェノール類としては、具体的には4,4'−ビフェニルジオール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3- メチルフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルファイド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノ−ルA;BPA )、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノ−ルZ;BPZ )、2,2-ビス(4-ヒドロキシ−3-メチルフェニル)プロパン(ジメチルビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ−3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1- フェニルエタン(ビスフェノールAP;BPAP)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3- アリルフェニル)プロパン、3,3,5-トリメチル-1,1- ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3- メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4'-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスフェノールなどが例示される。これらは、2種類以上併用することも可能である。また、これらの中でも特に9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3- メチルフェニル)フルオレン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1- フェニルエタン、3,3,5-トリメチル-1,1- ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ−3-メチルフェニル)プロパンが好ましい。
【0014】
本発明中のポリカーボネートの製造に使用される一般式(B)を誘導するポリシロキサン化合物としては、具体的には、
【化7】
などが例示される。
【0015】
これらは、2種類以上併用することも可能である。中でも、特に、両末端に3-(2-ヒドロキシフェニル)プロピル基を有するジメチルシロキサンとジフェニルシロキサンのランダム共重合、又はα,ω−ビス[3-(o-ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサンが好ましい。
【0016】
一方、炭酸エステル形成性化合物としては、例えばホスゲンや、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジナフチルカーボネートなどのビスアリルカーボネートが挙げられる。これらの化合物は2種類以上併用して使用することも可能である。
【0017】
本発明において、一般式(A)を誘導するビスフェノール類に対して、一般に0.1〜4mol%の範囲でフロログルシン、イサチンビスフェノール、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、α,α',α"-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリイソプロピルベンゼンなど分岐化剤を添加し、分岐化ポリカーボネートとする事が可能である。分岐化することにより金属塩をより保持しやすい構造となる場合がある。
【0018】
これらの反応で合成されたポリカーボネート重合体は、押出成形、射出成形、ブロ−成形、圧縮成形、湿式成形など公知の成形法で成形可能であるが、ポリマー電池高分子固体電解質用バインダー樹脂としては容易に湿式成形、押出法によるフィルム成形、圧縮延伸成形ができることが望ましい。そのために必要な成形性と機械的強度を保持する範囲は、極限粘度が0.2〜2.0dl/gの範囲であることが好ましい。
【0019】
さらに、一般式(B)の構造単位が全構造単位中20〜70重量%であることが好ましい。一般式(B)が20重量%未満では難燃効果が小さく、70重量%を超えると高分子固体電解質に必要な機械的強度が不足する。
【0020】
上記高分子固体電解質には、他のポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、フッ化ビニリデン−6フッ化アセトン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどの1種または2種以上が含有されてポリマーアロイとなっていても良い。ただし、フッ化樹脂は、本発明の趣旨から30重量%以下の添加量にすることが好ましい。
【0021】
次に、高分子固体電解質の具体的な作製方法を述べる。製造は、好ましくは水分の少ないドライルームあるいはグローブボックス中で行う。まず高分子を溶媒に分散・溶解させる。このときの溶媒は高分子が溶解可能な各種溶媒から適宜選択すればよく、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、トルエン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アセトン、ジメチルホルムアミド等を用いることが好ましい。溶媒に対する高分子の濃度は、好ましくは5〜25重量%である。
【0022】
次に、上記高分子溶液に電解液を添加する。電解液は、電解質を有機溶媒に溶解したものであり、リチウム2次電池に使用されているものの中から適宜選択して使用すればよい。電解質としては、金属塩として一般式M+ X- で表されるものが例示され、M+ はLi+ 、Na+ 、K+ の群より選ばれる一つであって、X- はClO4 - 、BF4 - 、PF6 - 、CF3 SO3 - 、(CF3 SO2 )2 N- 、(C2 F5 SO2 )2 N- 、(CF3 SO2 )3 C- 、(C2 F5 SO2 )3 C- からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。更に、リチウム2次電池として応用する場合は、LiPF6 、LiClO4 、LiBF4 、LiCF3 SO3 、LiN(CF3 SO2 )2 等が使用される。このような非水溶媒系の電解質塩の濃度は、好ましくは0.5〜3モル/リットルである。
【0023】
電解液の溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1、3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、γ−ブチロラクトン、スルホラン、3−メチルスルホラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン、エチルジグライム等の非水溶媒を用いることができる。電解液の含有量は、高分子:電解液=50:50〜20:80の重量比が好ましい。
【0024】
高分子溶液と電解液の混合溶液(以下「ゲル電解質溶液」と略称)を基体上に塗布する。この基体は平滑なものなら何でも良い。例えばポリエステルフィルム、ガラス、ポリテトラフルオロエチレンフィルムなどである。ゲル電解質溶液を基体に塗布するための手段は特に限定されず、基体の材質や形状などに応じて適宜決定すればよい。一般に、メタルマスク印刷法、静電塗装法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法、スクリーン印刷法等が使用されている。その後必要に応じて平板プレス、カレンダーロール等により圧延処理を行う。
【0025】
塗布後に、高分子を溶解したときの溶媒を蒸発させれば、高分子固体電解質のフィルムが出来上がる。溶媒を蒸発させるときの温度は室温でも良いが、加熱しても良い。出来上がった高分子固体電解質は半透明で弾力性があるものとなる。
【0026】
なお、電解液は上述のようにゲル電解質溶液作製時に混合しておいても良いが、あらかじめ電解液を含まないフィルムを作製後、電解液を含浸させてもよい。また、フィルム強度、膨潤性を増加させるためにSiO2 等をフィラーとして添加してもよい。
【0027】
本発明の高分子固体電解質を使用した2次電池、特にリチウム2次電池の構造は特に限定されない。通常、積層型電池や円筒型電池等に適用される。
【0028】
また、本発明の高分子固体電解質と組み合わせる電極は、好ましくは電極活物質、前記高分子固体電解質、必要により導電助剤との組成物を用いる。
【0029】
負極には、炭素材料、リチウム金属、リチウム合金あるいは酸化物材料のような負極活物質を用い、正極は、リチウムイオンがインターカレート・デインターカレート可能な酸化物または炭素のような正極活物質を用いることが好ましい。このような電極を用いることにより良好な特性のリチウム2次電池を得ることができる。
【0030】
電極活物質として用いる炭素材料は、例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、天然あるいは人造の黒鉛、樹脂焼成炭素材料、カーボンブラック、炭素繊維などから適宜選択すればよい。これらは粉末として用いられる。
【0031】
リチウムイオンがインターカレート・デインターカレート可能な酸化物としては、リチウムを含む複合酸化物が好ましく、例えば、LiCoO2 、LiMn2 O4 、LiNiO2 、LiV2 O4 などが挙げられる。この酸化物の粉末の平均粒子径は1〜40μm 程度であることが好ましい。
【0032】
必要により添加される導電助剤としては、好ましくは黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、ニッケル、アルミ、銅、銀等の金属が挙げられ、特に黒鉛が好ましい。
【0033】
電極組成は、正極では活物質:導電助剤:高分子固体電解質=30〜90:3〜10:10〜70の重量比の範囲で、且つ活物質、導電助剤及び高分子固体電解質の合計量が100重量部であることが好ましい。また、負極では活物質:導電助剤:高分子固体電解質=30〜90:0〜10:10〜70の重量比の範囲で、且つ活物質、導電助剤及び高分子固体電解質の合計量が100重量部であることが好ましい。
【0034】
本発明では、上記負極活物質および/または正極活物質、好ましくは両活物質を、上述したゲル電解質溶液中に混合して集電体表面に接着させる。
【0035】
その作製方法は、例えば、ゲル電解質溶液に活物質、必要に応じて炭素材料、金属などの導電助剤等を混合した電極塗布溶液を銅箔、アルミ箔などの集電体上に塗布し、溶媒を蒸発させて作製する。なお、集電体は金属箔、金属メッシュなどが通常使用される。金属箔よりも金属メッシュの方が電極との接触抵抗が小さくなるが、本発明の高分子固体電解質の場合は金属箔でも十分接触抵抗が小さくなる。
【0036】
このように、電極にも高分子固体電解質と同一の高分子材料を用いることにより、高分子固体電解質との接着性が向上し、内部抵抗が減少する。なお、負極活物質にリチウム金属、リチウム合金を用いる場合には、負極活物質と高分子固体電解質との組成物を用いなくても良い。
【0037】
【実施例】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、実施例に限定されるものではない。
【0038】
実施例1
8.8%(w/v) の水酸化ナトリウム水溶液450ml に9,9-ビス(4−ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン75.6g (以下BCFLと略称、0.2mol)とハイドロサルファイト0.1gを加え溶解した。これにメチレンクロライド360ml を加え、15℃に保ちながら撹拌しつつ、ホスゲン34g を30分かけて吹き込んだ。
吹き込み終了後、激しく撹拌して反応液を乳化させ、1分後撹拌状態の反応液にp-ターシャルブチルフェノール2.2g(以下PTBPと略称、0.015mol)と下記ポリシロキサン化合物81g (以下Si1 と略称、0.022mol)とを加え、さらに10分間撹拌後、0.2mlのトリエチルアミンを加え、さらに50分撹拌を継続し重合させた。
【0039】
【化8】
【0040】
重合液を水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和し、洗液の導電率が10μS以下になるまで水洗を繰り返した後、精製樹脂液を得た。得られた精製樹脂液を、強攪拌されている60℃の温水に樹脂液をゆっくり滴下し、溶媒を除去しつつ重合物を固形化した。固形物を濾過後、乾燥して白色粉末状重合体を得た。
この重合体は、メチレンクロライドを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の温度20℃における極限粘度[η]は0.39dl/g であった。(ハギンズ定数0.45として計算)
得られた上記重合体を赤外線吸収スペクトルより分析した結果、1770cm-1付近の位置にカルボニル基による吸収、1240cm-1付近の位置にエーテル結合による吸収が認められ、カーボネート結合を有することが確認された。また、1100〜1020cm-1の位置にシロキサン由来の吸収も認められた。
結果より、この重合体は下記構造単位からなるポリカーボネート重合体と認められた。
【0041】
【化9】
【0042】
次に、アルゴングローブボックス中において以下のように300mlの三角フラスコに水分含有量30ppm 以下のテトラヒドロフラン(以下THFと略称)を22.5g、1M濃度のLiClO4 /(体積混合比50%のエチレンカーボネート+プロピレンカーボネート)溶液を10.5g、上記ポリカーボネート重合体(以下CP1と略称)を4.5g入れ、室温で90分間混合したら均一な溶液となった。このゲル電解質溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにギャップ0.8mmのアプリケーターで幅50mmに塗布した。これを1時間風乾し、THFを蒸発させCP1/1M濃度LiClO4 溶液からなる透明な高分子固体電解質フィルムを得た。このフィルムは弾力性があり十分ハンドリング可能な強度であった。このフィルムの膜厚は0.2mmであった。このときの仕込み組成はCP1:1M濃度LiClO4 溶液=36:64の重量比であった。
【0043】
導電率測定は複素インピーダンス測定(測定電圧10mA)を用いた。測定は高分子固体電解質を直径12mmに切り抜き直径15mmのSUS304製の電極で挟んで測定した。25℃における導電率は1.2×10-3S/cm であった。
【0044】
難燃試験は、CP1自体を300℃で加熱圧縮成型し、1.5cm ×3cm ×厚さ2mm の試験片を作成し、垂直炎ブンゼンバーナーに接触させた後の燃焼時間を測定した。また、乾燥後の高分子固体電解質フィルムについては、1g精秤したものに垂直炎ブンゼンバーナーを接触燃焼させ、自然鎮火後の残渣重量を測定し難燃性の目安とした。
【0045】
実施例2
BCFLの代わりに2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン45.6g (以下BPA と略称、0.2mol)、Si1 の代わりに下記ポリシロキサン化合物50.8g (以下Si2 と略称、0.015mol)、PTBPを0.67g (0.0045mol )に変更し、かつBPA 投入と同時に1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン0.61g (以下TPE と略称、0.002mol)を添加した以外は、実施例1と同様に重合を行った。
【0046】
【化10】
【0047】
得られた重合体は極限粘度[η]は0.70dl/gで赤外線吸収スペクトルより分析した結果、下記構造のポリカーボネート重合体(以下CP2と略称)と認められた。
【0048】
【化11】
【0049】
実施例1と同様の方法で、CP2:1M濃度LiPF6 溶液=36:64の重量比である高分子固体電解質を作製した。なお、ここで使用した1M濃度LiPF6 溶液は実施例1と同様の溶媒に溶解したものである。25℃における導電率は9.7×10-4S/cmであった。
【0050】
実施例3
BCFLの代わり1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン53.6g (以下BPZ と略称、0.2mol)、Si1の代わりに下記ポリシロキサン化合物58g(以下Si2 と略称、0.015mol)、PTBPを0.7g(0.0047mol )に変更し、かつBPZ 投入と同時にTPE0.61g(0.002mol)を添加した以外は、実施例1と同様に重合を行った。
【0051】
【化12】
【0052】
得られた重合体は極限粘度[η]は0.61dl/gで赤外線吸収スペクトルより分析した結果、下記構造のポリカーボネート重合体(以下CP3と略称)と認められた。
【0053】
【化13】
【0054】
実施例1と同様の方法で、CP3:1M濃度LiPF6 溶液=36:64の重量比である高分子固体電解質を作製した。なお、ここで使用した1M濃度LiPF6 溶液は実施例1と同様の溶媒に溶解したものである。25℃における導電率は8.2×10-4S/cmであった。
【0055】
実施例4
BCFLの代わり1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1- フェニルエタン29g (以下BPAPと略称、0.1mol)及び2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3- メチルフェニル)プロパン25.6g (以下BPC と略称、0.1mol)、Si1 の代わりにSi2 を60g(0.018mol) 、PTBPを1.0g(0.0067mol )に変更し、かつBPAP及びBPC の投入と同時に1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン0.61g (以下TPEと略称、0.002mol)を添加した以外は、実施例1と同様に重合を行った。
得られた重合体は極限粘度[η]は0.57dl/gで赤外線吸収スペクトルより分析した結果、下記構造のポリカーボネート重合体(以下CP4と略称)と認められた。
【0056】
【化14】
【0057】
実施例1と同様の方法で、CP4:1M濃度LiPF6 溶液=36:64の重量比である高分子固体電解質を作製した。なお、ここで使用した1M濃度LiPF6 溶液は実施例1と同様の溶媒に溶解したものである。25℃における導電率は7.8×10-4S/cmであった。
【0058】
実施例5
上記実施例1で作製したゲル電解質溶液(THF/CP1/1M濃度LiClO4 溶液)を45g、ホモジナイザーの容器に入れコバルト酸リチウム(セイミケミカル社製、粒径2〜3μm)を10.8gとアセチレンブラック(電気化学工業社製商品名HS−100)を1.35g添加し、12000rpm で5分間室温で分散した。この塗布液をアルミ箔(縦30mm、横30mm、厚み30μm)にメタルマスク印刷機で直径15mmの円形状に印刷し、1時間風乾しTHFを蒸発させた。この電極の膜厚は0.15mmであった。この電極を正極としこの上に、実施例1で作製した高分子電解質フィルムを直径25mmに切り抜いたもの、直径20mm、厚み0.1mmのリチウムフォイルを圧着したニッケル箔(縦30mm、横30mm、厚み35μm)をこの順序で積層し周囲をポリオレフィン系のホットメルト接着剤でシールしリチウム2次電池を作製した。この電池の内部抵抗は70Ωであった。さらに、充電方向から5mAの電流で、電池電圧が4.5Vになるまで充電し、2.0Vになるまで充放電を100回繰り返した後の、充放電容量維持率(%)=充放電実験後の容量/初期容量×100を見たところ、維持率は77%であった。
【0059】
比較例1
実施例1のCP1の代わりに、市販のBPAホモ型ポリカーボネート(三菱瓦斯化学(株) 製、ユーピロンE-2000)を用いた以外は実施例1と同様に行った。樹脂がTHFと1M濃度LiClO4 溶液の混合溶液に溶解不足のため白濁し、良質なキャストフィルムは得られず、THFを除去後の固体電解質の25℃における導電率は1.2×10-6S/cmであった。
【0060】
比較例2
実施例2のCP2の代わりに、市販のBPZホモ型ポリカーボネート(三菱瓦斯化学(株) 製、ユーピロンZ400)を用いた以外は実施例2と同様に行った。
THFを除去後の固体電解質の25℃における導電率は8.2×10-5S/cmであった。
【0061】
比較例3
実施例2のCP2の代わりに、市販のポリメチルメタクリレート(三菱レイヨン(株) 製、アクリペットWF)を用いた以外は実施例2と同様に行った。
THFを除去後の固体電解質の25℃における導電率は2.7×10-4S/cmであった。
【0062】
実施例1〜4および比較例1〜3の固体電解質特性と難燃特性について表1に示した。
【0063】
【0064】
(表の説明)
導電率:25℃、インピーダンスアナライザー(ヒューレット・パッカード製HP4285A)を用い測定電圧10mAで測定した。
垂直炎燃焼時間:試験片に対しブンゼンバーナー炎先端部に10秒間接触させた後、バーナーを取り除いてからの試験片の燃焼時間。
燃焼残渣:試験片フィルムに対し、ブンゼンバーナー炎先端部に2秒間接触着火させた後、ステンレスバット上で自然鎮火するまで放置後の残渣重量。
BPA ホモ型PC:2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンをモノマーとしたホモポリカーボネート。
BPZ ホモ型PC:1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンをモノマーとしたホモポリカーボネート。
PMMA:ポリメチルメタクリレート
【0065】
【発明の効果】
本発明の高分子固体電解質は、従来の非ハロゲン系のポリマー電池用バインダーに比してね導電率が高く、高分子固体(ゲル)電解質として優れた特性を示すと共に、非ハロゲン系でも十分な難燃性を示す。そのため、リチウム2次電池などのポリマー電池材料として好適である。また、本高分子固体電解質は2次電池と類似構造を持つ電気2重層キャパシタにも応用可能である。
Claims (7)
- 一般式(A)および一般式(B)からなる構造単位を有し、一般式(B)の構造単位が全構造単位中20〜70重量%であり、かつ極限粘度が 0.2〜2.0dl/gであるポリカーボネートとイオン解離したI族またはII族金属塩を含むことを特徴とする高分子固体電解質。
- 金属塩が、一般式M+ X- で表され、M+ はLi+ 、 K+、Na+ なる群から選ばれる一つであって、X- はClO4 - 、BF4 - 、PF6 - 、CF3 SO3 - 、(CF3 SO2 )2 N- 、(C2 F5 SO2 )2 N- 、(CF3 SO2 )3 C- 、(C2 F5 SO2 )3 C- からなる群から選ばれる一つである請求項1記載の高分子固体電解質。
- 金属塩M+ がLi+ である請求項2記載の高分子固体電解質。
- 一般式(A)で表される構造単位が9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3- メチルフェニル)フルオレン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス (4-ヒドロキシフェニル)-1- フェニルエタン、3,3,5-トリメチル-1,1- ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3- メチルフェニル)プロパンから誘導された請求項1記載の高分子固体電解質。
- 一般式(A)構造単位に対し、0.1〜4mol%分岐構造を有する請求項1記載の高分子固体電解質。
- 一般式(B)の構造単位が、両末端に3-(2-ヒドロキシフェニル)プロピル基を有するジメチルシロキサンとジフェニルシロキサンのランダム共重合、又は α,ω−ビス[3-(o-ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサンより誘導された請求項1記載の高分子固体電解質。
- 正極と、負極と、これらの間に位置するポリマー電解質からなるポリマー電池において、該ポリマー電解質が、請求項1記載の高分子固体電解質からなることを 特徴とするポリマー電池。
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