JP4594948B2 - Cr−Mo−V鋼製のタービンロータの脆化度評価方法 - Google Patents

Cr−Mo−V鋼製のタービンロータの脆化度評価方法 Download PDF

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Description

本発明はCr−Mo−V鋼製のタービンロータの脆化度評価方法に関し、たとえば特殊な工具を使わずに脆化度を評価するとともに、評価の精度を向上するCr−Mo−V鋼製のタービンロータの脆化度評価方法に関する。
タービンロータは大型の高速回転機器であり、その使用中に万が一破壊すようなことがあると大惨事を引き起こすこととなるため、高い信頼性を確保しておくことが要求される。火力プラントの高中圧タービンロータはCr―Mo―V鋼製であり、その運転温度が脆化の発生する可能性のある温度域に相当するため、長期間使用されている高中圧タービンロータにおいては脆化が進行する可能性がある。タービンロータの脆化が進行すると材料の靭性が低下し、大惨事に繋がる瞬時の脆性破壊によるロータバーストを引き起こす可能性が高くなる。そのため、長期使用Cr―Mo―V鋼製のタービンロータの脆化度を評価することは、タービンロータの強度信頼性を検討するためにも、供用中の設備の余寿命を評価する上でも最も重要な課題の1つである。
一般的に、タービンロータの脆化度の評価にはJISで規定されているシャルピー衝撃試験により求められる破面遷移温度(以下、FATTともいう)を指標として評価される。しかし、実際のFATTを求めるためには通常、断面10mm角で長さ55mmの試験片が10本程度以上必要であるところ、供用中のタービンロータからこのような試験片を切り出すことはできない。そのため、タービンロータの脆化度の評価には、非破壊検査法や供用中のタービンロータから採取可能な微小な試験片による破壊試験結果をFATTに換算する方法が用いられている。
非破壊検査法の例としては、粒界腐食法に基づくレプリカ法により粒界腐食溝の幅や深さからFATTを推定する方法や、材料組織の不純物元素の粒界偏析量とFATTとの関係を推定する方法が提案されている(たとえば、非特許文献1参照)。
また、FATTに換算する方法の例としては、微小試験片による衝撃試験や小型パンチ(SP)試験による破壊特性評価法(たとえば、非特許文献2参照)による試験結果とFATTとの相関からタービンロータのFATTを推定する方法が提案されている。
しかしながら、非特許文献1に開示の非破壊評価法によるFATT推定では、実験室で作製された脆化模擬材による試験結果からの換算式が利用される。そのため、温度変化による粒界腐食量の差の影響を受ける等、精度的に問題となる場合がある。また、タービンロータの脆化が最も問題となる部位は中心孔部であるため通常の作業での評価部位からのレプリカ採取はできない。そのため、採取可能な位置での結果を中心孔部の結果と推定するか、中心孔部奥深くからレプリカ等を採取するための特殊工具が必要となる。
また、非特許文献2に開示の微小な試験片による評価においては、非破壊評価と同様に、中心孔部からの試験片の採取ができない上に、タービンロータが複雑な形状をした高速回転設備であるため、試験片を採取できる箇所が限定される。すなわち、評価部位から直接試験片を採取することができないことから、間接的な評価しかできない。したがって、脆化度の測定精度に改善の余地がある。
角屋好邦他、「Cr−Mo−V鋼高温ロータの経年脆化の非破壊推定法」、日本機械学会論文集、平成3年5月、57巻、537号、A編、第65頁〜第70頁 「微小試験片材料評価技術の進歩」、日本原子力学会、1992年3月、第151頁〜第241頁
したがって、本発明の目的は、特殊な工具を使わずに脆化度を評価するとともに、評価の精度を向上する、Cr−Mo−V鋼製のタービンロータの脆化度評価方法を提供することである。
本発明のCr−Mo−V鋼製のタービンロータの脆化度評価方法は、Cr−Mo−V鋼製のタービンロータの脆化度を評価する方法である。温度T(℃)で時間t(時間)使用による破面遷移温度の増加量(ΔFATTTt)を、xをx=360×[1750t×exp{−33200/(T+273)}]1/2×[1+1.79y×10-5×exp{10500/1.98(T+273)}]/[8.5×10-8×exp{10500/1.98(T+273)}]で表わし、yをy=(10P+5Sb+4Sn+As)×102で表わし、K2をK2=(2Si+Mn+Ni+Cu)×(10P+5Sb+4Sn+As)×10で表わし、Si(珪素)、Mn(マンガン)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、P(リン)、Sb(アンチモン)、Sn(スズ)、およびAs(ヒ素)をタービンロータを構成する材料に含有されるそれぞれの元素の濃度(質量%)として、
ΔFATTTt=(425.0+1.778K2−0.9643T−0.001990K2T)×{1−exp(x2)erfc(x)}・・・・(式1)により求めることにより、タービンロータの脆化度を判断することを特徴としている。
本発明者は火力発電所にて長時間使用されたタービンロータについて使用中の温度の異なる部位についてシャルピー衝撃試験により脆化度調査を実施し、不純物元素量、使用温度、および使用時間と実際のタービンロータの材料の脆化量との関係を見出し、その結果、上記式(1)を見出した。そのため、上記式1によりタービンロータの中心孔部など所望の部位のΔFATTTtを、その部位を採取することなく評価することができる。すなわち、特殊な工具を使わずに脆化度を評価することができる。また、上記式(1)は温度条件なども加味されているので、脆化度の評価の精度を向上することができる。
なお、上記タービンロータの脆化度の評価にはFATTを指標として評価される。また、本明細書において、FATTとは、破面遷移温度(Fracture Appearance Transition Temperature)を意味し、JIS Z 2242に規定されている金属材料のシャルピー衝撃試験により測定される値である。また、上記式1中のyおよびK2を求めるために必要な対象材料に含まれる各元素の濃度は、JIS G1211,G1215,1235,1253,1257等の一般公知の鉄鋼材料の化学成分分析の測定に用いられる方法により測定される値である。
上記Cr−Mo−V鋼製のタービンロータの脆化度評価方法において好ましくは、温度T(℃)で時間t(時間)経過後のタービンロータの破面遷移温度(FATTTt)を、ΔFATTTtを上記式1により求める値とし、FATT0を未使用状態のタービンロータの初期破面遷移温度として、
FATTTt=FATT0+ΔFATTTt・・・・・(式2)
により求めることにより、タービンロータの脆化度を判断することを特徴としている。
これにより、使用前の初期FATTであるFATT0が判れば上記式1によりタービンロータの中心孔部など所望の部位のFATTTtを、その部位を採取することなく評価することができる。すなわち、特殊な工具を使わずに脆化度を評価することができる。また、上記式1は温度条件なども加味されているので、FATTTtに基づく脆化度の評価の精度を向上することができる。
上記Cr−Mo−V鋼製のタービンロータの脆化度評価方法において好ましくは、タービンロータのFATT0が不明な場合に、FATT0は、タービンロータからサンプル材を採取する採取工程と、サンプル材から作製した微小試験片の破壊試験により脆化度評価データを測定する測定工程と、Cr−Mo−V鋼製のタービンロータの破面遷移温度と微小試験片により測定される前記脆化度評価データとの予め求められている相関関係を用いて、測定工程で測定された微小試験片の脆化度評価データをタービンロータの破面遷移温度に換算する換算工程と、測定工程におけるサンプル材の採取位置のタービンロータ運転中の温度が350℃以上460℃以下の場合には、式1を用いて破面遷移温度の増加量を求めるとともに式2により初期破面遷移温度を求め、測定工程におけるサンプル材の採取位置のタービンロータ運転中の温度が350℃未満または460℃を超える場合には、換算工程における換算された破面遷移温度を初期破面遷移温度とする工程とを実施することにより求めることを特徴としている。
これにより、製造年次の古いタービンロータなどタービンロータのFATT0が不明な場合に、より正確なFATT0を求めることができる。
本発明のCr−Mo−V鋼製のタービンロータの脆化度評価方法によれば、評価対象とする部位の脆化度を評価できるので、特殊な工具を使わずに脆化度を評価するとともに、評価の精度を向上することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
図1は、本発明の実施の形態におけるタービンロータの例を示す概略図である。図2は、シャルピー衝撃試験により求まる遷移曲線とFATTとの関係を示す模式図である。図3は、本発明の実施の形態におけるCr−Mo−V鋼製のタービンロータの脆化度評価の手順を示すフローチャートである。図4は、微小試験片を示す概略図である。図5は、タービンロータ断面での中心孔部からのシャルピー衝撃試験片を採取した図である。図6は、実機にて長期間使用されたタービンロータ中心孔部のFATTと使用温度との関係を示す図である。図7は、長期間使用されたタービンロータ中心孔部の脆化量ΔFATTと使用温度との関係を示す図である。図8は、脆化係数K2と脆化量ΔFATTとの関係を示す図である。図9は、実測脆化量ΔFATTと推定脆化量ΔFATTTtとの関係を示す図である。図10は、推定脆化量ΔFATTTtと使用温度との関係を実測脆化量ΔFATTを含めて示す図である。図11は、複数のCr−Mo−V鋼タービンロータの材料によるシャルピー衝撃試験により求めた破面遷移温度FATTと、同材料の微小試験片による衝撃試験による破面遷移温度FATTsとの相関関係を示す図である。図1〜図11を参照して、本発明の実施の形態におけるCr−Mo−V鋼製のタービンロータの脆化度評価方法を説明する。
なお、上記「Cr−Mo−V鋼製のタービンロータ」とは、ASTM(米国材料試験協会;American Society for Testing and Materials)規格のA470−65 Class8に代表されるCr(クロム)が0.90質量%〜1.50質量%、Mo(モリブデン)が1.00質量%〜1.50質量%、V(バナジウム)が0.20質量%〜0.30質量%含有された低合金鋼鍛造タービンロータを意味する。
また、Cr−Mo−V鋼製のタービンロータは、たとえば図1に示すような形状である。図1に示すように、検査対象となるCr−Mo−V鋼製のタービンロータ10において、高速回転により最も応力の大きくなる部位は、タービンロータ10の断面中心部に設けられている中心孔部11である。そのため、長期使用後の脆化度評価の対象は、運転中のタービンロータ10の脆性破壊に対して最も考慮する必要のある部位である中心孔部11である。
本発明では、Cr−Mo−V鋼製のタービンロータの脆化度を、中心孔部11について、破面遷移温度の増加量(ΔFATTTt)またはタービンロータの破面遷移温度(FATTTt)の少なくともいずれか一方で評価している。
ここで、破面遷移温度について説明する。図2に示すように、シャルピー衝撃試験において、試験片の温度を変化させて多数の試験を実施することにより2種類の遷移曲線を得ることができる。その1つは、試験片破断時の吸収エネルギーが試験片の温度に従って変化することにより得られるものであり、図2において吸収エネルギーで示した曲線であり、各試験温度での値は図2の左縦軸(吸収エネルギー)で示した値である。他の1つは、試験後の破断試験片の破断面に表れる脆性破面と延性破面の面積の比である破面率が試験片の温度に従って変化することにより得られるものであり、図2の脆性破面率で示した曲線で、各試験温度での値は図2の右縦軸(脆性破面率)で示した値である。このうち、脆性破面率の遷移曲線において、試験片破断面の脆性破面の面積と延性破面の面積とが等しくなる温度、すなわち脆性破面率および延性破面率が50%となる試験温度(図2におけるTrS50で示される温度)が破面遷移温度(Fracture Appearance Transition Temperature)であり、FATTで表される。
タービンロータを長時間使用して脆化が進行すると、図2に示すように、脆性破面率で示した遷移曲線が、脆化後の脆性破面率として示した曲線のように遷移曲線が高温側に移動し、これに伴いFATTも大きくなる。使用温度T℃でt時間使用された後のFATTをFATTTtと、この間のFATTの増加量をΔFATTTtとすると、ΔFATTTtによって、タービンロータの脆化度を評価することができる。
また、図1に示すように、使用前の初期FATTをFATT0とすると、FATTTtは次の(式2)で表せる。
FATTTt=FATT0+ΔFATTTt・・・・・(式2)
したがって、使用前の初期FATT0と使用温度T℃でt時間使用されたことによる脆化量ΔFATTTtが求まれば、その時点でのFATTであるFATTTtを求めることができる。FATTTtによっても、タービンロータの脆化度を評価することができる。
具体的には、図3に示すように、まず、タービンロータからサンプル材を採取する採取工程(S10)を実施する。採取工程(S10)では、後述する測定工程(S20)におけるサンプル材から作製した微小試験片の破壊試験による脆化度評価データの測定と分析工程(S60)における不純物元素量の分析のために、評価対象のCr−Mo−V鋼製のタービンロータの採取可能な部位から、必要量のサンプル材を採取する。採取可能な位置として、図1に例示したタービンロータの場合では、たとえば位置12から小さなサンプル材を採取する。なお、サンプル材の採取可能な位置は、タービンロータのタイプによって異なり、それぞれのタービンロータの採取可能な位置12からサンプル材は採取される。
採取工程(S10)では、一般公知の方法により必要量のサンプル材を採取できる。採取の方法は、たとえば、中空ドリルや芯取工具等により必要なサンプル材を採取する方法などが挙げられる。
次に、図3に示すように、サンプル材から作製した微小試験片の破壊試験により脆化度評価データを測定する測定工程(S20)と、サンプル材の不純物元素を分析する分析工程(S60)とを実施する。
微小試験片の脆化度評価データを測定する測定工程(S20)では、採取工程(S10)で採取したサンプル材から、たとえば図4に示す形状の微小試験片を作製し、非特許文献2に開示されている衝撃試験を実施して、微小衝撃試験片の破面遷移温度FATTsを測定する。なお、上記「脆化度評価データ」は、微小試験片により求められる破面遷移温度や、微小試験片を破壊する際の吸収エネルギー値などが挙げられる。
サンプル材の不純物元素を分析する分析工程(S60)では、採取工程(S10)で採取したサンプル材の一部を用いて、JIS G1211,G1215,1235,1253,1257等の一般公知の鉄鋼材料の成分分析測定に用いられる方法による化学成分分析により、当該タービンロータに含まれる、Si、Mn、Ni、Cu、P、Sb、Sn、およびAsの各元素の濃度(質量%)を求める。
なお、評価対象としているタービンロータに含まれる、Si、Mn、Ni、Cu、P、Sb、Sn、およびAsの全ての濃度(質量%)がそのタービンロータ製造時のミルシート等により既知の場合は、分析工程(S60)を省略しても良い。また、Si、Mn、Ni、Cu、P、Sb、Sn、およびAsの一部の濃度(質量%)が既知の場合は、分析工程(S60)では、既知でない元素のみの濃度を測定してもよい。
次に、図3に示すように、評価対象部位の運転中の温度T(℃)で時間t(時間)使用による破面遷移温度の増加量(ΔFATTTt)を求めるΔFATTTt決定工程(S80)を実施する。ΔFATTTt決定工程(S80)では、xをx=360×[1750t×exp{−33200/(T+273)}]1/2×[1+1.79y×10-5×exp{10500/1.98(T+273)}]/[8.5×10-8×exp{10500/1.98(T+273)}]で表わし、yをy=(10P+5Sb+4Sn+As)×102で表わし、K2をK2=(2Si+Mn+Ni+Cu)×(10P+5Sb+4Sn+As)×10で表わし、Si、Mn、Ni、Cu、P、Sb、Sn、およびAsをタービンロータを構成する材料に含有されるそれぞれの元素の濃度(質量%)として、
ΔFATTTt=(425.0+1.778K2−0.9643T−0.001990K2T)×{1−exp(x2)erfc(x)}・・・・(式1)
により求める。ΔFATTTt決定工程(S80)で求めたΔFATTTtにより、タービンロータの脆化度を判断する。
ΔFATTTt決定工程(S80)では、上記式2に、分析工程(S60)で測定されたそれぞれの元素の濃度、またはそれぞれの元素の既知の濃度と、温度Tと、時間tとを代入する。これにより、ΔFATTTtを求めることができる。
ここで、上記式1について説明する。タービンロータは長尺設備であり、運転中のタービンロータの温度は部位により異なるため、当該部位の運転中の温度に従って長期使用に伴う脆化量が異なる。このため本発明者は、火力発電所にて15.2万〜24.2万時間使用後に廃却された型式の異なる図1に例示するような8体のCr−Mo−V鋼製のタービンロータA〜Hを、図1における軸方向数カ所で輪切りし、図5に示すように輪切りした各部分の中心孔部11から円周方向にJIS Z 2202の2mmVノッチシャルピー衝撃試験片23を18本採取し、当該中心孔部のFATTをそれぞれ求める試験を実施した。そして、本発明者は、8体のタービンロータA〜Hについて実施して求めたFATTと、シャルピー衝撃試験片23の採取位置の運転中の推定温度との関係を求めた。その結果を図6に示す。図6に示すように、本発明者は、使用温度が350℃以上460℃以下の温度範囲内ではFATTが大きいことを見出した。
また、本発明者は、図6に示す試験対象としたタービンロータA〜Hの使用前の初期FATTが不明であるため、上記FATTの測定とは別に、タービンロータA〜Hから切り出した供試材に対して脱脆化熱処理を施した。具体的には、鉄鋼材料の脆化は、材料中の不純物元素が長時間の使用に伴って材料の粒界に偏析する事により粒界強度が低下するために発生する。そのため、粒界に偏析した不純物元素を拡散させるために、各タービンロータから採取した供試材を加熱して600℃で1時間保持後、冷却速度を毎時30℃で加熱炉内で冷却する脱脆化熱処理を行なった。脱脆化熱処理後の供試材からシャルピー衝撃試験片を作製して、上述したシャルピー衝撃試験を同様に実施して、タービンロータA〜Hの脱脆化熱処理後における供試材のFATTを求めた。これらの脱脆化処理後の供試材のFATTを各タービンロータA〜Hの初期FATT(FATT0)として、図6で求めた各タービンロータについて測定した各中心孔部のFATTと、FATT0との差を各タービンロータの各中心孔部の長期使用による脆化量であるΔFATTとした。そして、各タービンロータA〜Hについて求めた結果と、図6と同様の運転中の推定温度との関係を求めた。その結果を図7に示す。図7に示すように、図6と同様に、本発明者は、使用温度が350℃以上460℃以下の温度範囲内ではΔFATTが大きくなっていることを見出した。
Cr−Mo−V鋼製のタービンロータの脆化は、材料中の不純物元素が長時間の使用に伴って材料の粒界に偏析することにより粒界強度が低下するために発生し、その低下の度合いは使用温度および使用時間とともに、タービンロータの材料中に含まれる不純物元素の量により異なる。このため、不純物元素量に基づいて導出される各種脆化係数と、図7を求めた各タービンロータの推定使用温度が350℃以上460℃以下でのΔFATTとの関係を本発明者が検討した結果、図8に示すように、次の式1−2で表わされるK2とΔFATTとの関係が最も良い相関を示した。
2=(2Si+Mn+Ni+Cu)×(10P+5Sb+4Sn+As)×10・・・・・・(式1−2)
そこで、脆化量が不純物元素の粒界偏析量に比例すると仮定すると,D.Mcleanの二元合金の平衡粒界偏析の時間依存性を表す式(D.McLean : Grain Boundary in metals , p116 , Oxford Univ.Press,London , 1957)から次の式3が成立する。
ΔFATTTt=ΔFATTT∞{1−exp(x2)erfc(x)}・・・・(式3)
式3中、ΔFATTTtは温度T℃でt時間使用したことによる脆化量(FATTの増加量)、ΔFATTT∞は温度T℃におけるにおける飽和脆化量であり、xは次の式4で表される。
x=2(Dt)1/2/αd・・・・・・(式4)
ただし、式4中、Dは、偏析元素の対象材料母相中の拡散係数、tは使用時間、αは偏析元素の粒界への飽和偏析量と偏析元素の母相中での濃度の比、およびdは粒界の厚さである。
したがって、xが定まり、ΔFATTT∞を推定できれば上記式3から使用温度T℃でt時間使用したことによる脆化量ΔFATTTtを推定することができる。
なお、上記式4にて求まるxについては、ここでは便宜上、2.25Cr―1Mo低合金鋼と3Cr−1Mo低合金鋼について求められている文献値(高野、勝亦:21/4Cr−1Moおよび3Cr−1Mo鋼の長時間恒温焼きもどし脆化量の推定、鉄と鋼 第78年(1992)第2号 P296)を用いることとし、拡散係数については、D=1750exp{−33200/(T+273)}、偏析元素の濃度比αについては、α=[(1/3)exp{Q/R(T+273)}]/[1+Cexp{Q/(T+273)}]、ただし、Qは偏析元素が母相に固溶した時と粒界に偏析した時のエネルギー差でQ=10500cal/mol、Rはガス定数でR=1.98cal/K・mol、Cは偏析元素の母相中での濃度でC=1.79(10P+5Sb+4Sn+As)×10-5とし、粒界の厚さdをd=8.5×10-8cmと仮定した値を用いることにより、上述の式(4)からxが求まる。すなわち、yをy=(10P+5Sb+4Sn+As)×102で表わすと、xは、x=360×[1750t×exp{−33200/(T+273)}]1/2×[1+1.79y×10-5×exp{10500/1.98(T+273)}]/[8.5×10-8×exp{10500/1.98(T+273)}]で示される。
次に、ΔFATTT∞の推定については、式3を変形した次の式5を用いて、図7において使用温度が350℃以上460℃以下のデータについて、使用温度T℃と、使用時間tについて試験で求まった各ΔFATTTtと式4にて求めたxからΔFATTT∞の推定値を求めた。
ΔFATTT∞=ΔFATTTt/{1−exp(x2)erfc(x)}・・・・(式5)
求めたΔFATTT∞と、使用温度T℃および図8に示すΔFATTと相関性の認められた脆化係数K2との関係を、重回帰分析により次の式6を求めた。
ΔFATTT∞=414.5+2.058K2−0.9417T−0.002594K2T・・・・・(式6)
したがって、本発明者は、式6を式3に当てはめて、上述の式2を得た。
次に、上記式2の信頼性について説明する。上記式2に、上記式4にて求めたxを用いて、各使用温度および使用時間でのΔFATTTtを計算した結果と、図7に示す実機材試験の結果から求まったΔFATTとの関係を求めた。その結果を図9に示す。図9に示すように、両者の関係は、相関係数が90.2%、標準偏差σが8.6℃となり、良い相関が認められた。
なお、ここでの誤差は、実験誤差の他に、タービンロータが大形鍛鋼品であることによるバラツキ、試験片採取位置の運転時の実際の使用温度が不明であり、その計測が非常に困難であるため解析により求められている推定使用温度を使用していること、実機では起動停止が繰り返されているため推定使用温度での使用時間の不正確さ、およびxについて文献値をそのまま使用していることなどによるものと考えられる。
また、図10は、使用温度が350℃以上460℃以下の間について、上記式2によりA〜Hの各タービンロータの使用時間で各使用温度における脆化量ΔFATTTtを計算した結果を、図7で示した実測値とともに示したものである。図10に示すように、計算結果による脆化量ΔFATTTtは、350℃以上460℃以下の温度範囲において実験結果から求まった脆化量ΔFATTと同様に増加しており、実験結果との誤差は±15℃程度以下であった。このことから、精度良く推定ができていることがわかる。
以上の工程(S10,S60,S80)を実施することによって、ΔFATTTtを求めることができる。そのため、求められたΔFATTTtを用いて、タービンロータの脆化度を評価することができる。
次に、図3に示すように、Cr−Mo−V鋼製のタービンロータの破面遷移温度と、微小試験片により測定される脆化度評価データとの予め求められている相関関係を用いて、測定工程(S20)で測定された微小試験片の脆化度評価データをタービンロータの破面遷移温度に換算する換算工程(S30)を実施する。
換算工程(S30)では、たとえば、図11に示すように、複数のCr−Mo−V鋼のタービンロータの材料によるシャルピー衝撃試験と、微小試験片による衝撃試験とを実施して、複数のCr−Mo−V鋼タービンロータの材料によるシャルピー衝撃試験での破面遷移温度FATTと、微小試験片の衝撃試験による破面遷移温度FATTsとの相関関係を予め求めておく。任意のFATTsから、FATTへ変換できる図11に示す関係を用いることによって、測定工程(S20)で微小試験片により求まったFATTsを、Cr−Mo−V鋼タービンロータの材料によるシャルピー衝撃試験によるFATTへ変換できる。本明細書では、換算工程(S30)において、微小試験片の衝撃試験によるFATTsから、Cr−Mo−V鋼タービンロータの材料によるFATTに換算したものをFATT(FATTs)と表す。
なお、換算工程(S30)で用いるCr−Mo−V鋼製のタービンロータの破面遷移温度と、採取工程(S10)により採取されたサンプル材から作製された微小試験片により得られる脆化度評価データとの相関関係は、微小試験片による破面遷移温度を用いた方法による換算に限定されず、たとえば微小試験片の衝撃試験により得られる吸収エネルギー遷移温度やSP試験(スモールパンチ試験)等により求まる相関関係を予め求めておいて、それらから換算を行なってもよい。
また、評価精度の信頼性をより確保するために、換算工程(S30)で用いるCr−Mo−V鋼製のタービンロータの破面遷移温度と、微小試験片による脆化度評価データとの相関関係は、実機にて長時間(10万時間以上)使用されたCr−Mo−V鋼製のタービンロータの破面遷移温度と、微小試験片による破壊試験のデータとの相関関係を用いることが好ましい。
次に、図3に示すように、測定工程(S20)における微小試験片の採取位置のタービンロータ運転中の温度が350℃以上460℃以下かどうかを判断する判断工程(S40)を実施する。本発明者は、鋭意研究の結果、Cr−Mo−V鋼製のタービンロータについて、使用温度が350℃以上460℃以下の範囲内で長期間使用されると有意な脆化を示すとともに、使用温度が350℃以上460℃以下の範囲外では有意な脆化が認められなかったことを発見した。そのため、判断工程(S40)では、採取工程(S10)で採取したサンプル材の長期使用に伴う有意な脆化量を考慮する必要があるか否かを判断する。
なお、Cr−Mo−V鋼製のタービンロータが350℃以上460℃以下の使用温度で長期間使用されると有意な脆化を示すことについては、図6および図7を用いて上述した理由による。
したがって、測定工程(S20)における微小試験片の採取位置のタービンロータ運転中の温度が350℃以上460℃以下の温度範囲外の場合には、判断工程(S40)では、NOと判断される。この場合には、長期使用に伴う微小試験片の脆化量を考慮する必要がない。そのため、判断工程(S40)後には、FATT0決定工程(S50)が実施される。
一方、測定工程(S20)における微小試験片の採取位置のタービンロータ運転中の温度が350℃以上460℃以下の場合には、判断工程(S40)では、YESと判断される。この場合には、長期使用に伴う微小試験片の脆化量を考慮した補正が必要となる。そのため、判断工程(S40)後に、ΔFATTTt(TP)決定工程(S70)が実施される。
判断工程(S40)でYESと判断された場合には、微小試験片の採取位置の破面遷移温度の増加量(ΔFATTTt(TP))を求めるΔFATTTt(TP)決定工程(S70)を実施する。ΔFATTTt(TP)工程(S70)では、サンプル材採取位置の運転中の温度をT(℃)、タービンロータの運転時間をt(時間)として、xをx=360×[1750t×exp{−33200/(T+273)}]1/2×[1+1.79y×10-5×exp{10500/1.98(T+273)}]/[8.5×10-8×exp{10500/1.98(T+273)}]で表わし、yをy=(10P+5Sb+4Sn+As)×102で表わし、K2をK2=(2Si+Mn+Ni+Cu)×(10P+5Sb+4Sn+As)×10で表わし、Si、Mn、Ni、Cu、P、Sb、Sn、およびAsをタービンロータに含有されるそれぞれの元素の濃度(質量%)としたときに、
ΔFATTTt(TP)=(425.0+1.778K2−0.9643T−0.001990K2T)×{1−exp(x2)erfc(x)}・・・・(式1−3)
を用いて破面遷移温度の増加量ΔFATTTt(TP)を求める。
具体的には、ΔFATTTt(TP)決定工程(S70)では、微小試験片の採取位置の運転中の温度をT℃、当該タービンロータの使用時間をt時間とし、Si、Mn、Ni、Cu、P、Sb、Sn、およびAsの各濃度は、分析工程(S60)で分析した濃度を用いて上記式1−3に代入する。これにより、式1−3に基づいて採取工程(S10)で採取した微小試験片の採取位置の運転中の温度が350℃以上460℃以下の場合の、微小試験片の脆化量ΔFATTTt(TP)を求めることができる。なお、評価対象としているタービンロータに含まれる、Si、Mn、Ni、Cu、P、Sb、Sn、およびAsの一部の濃度(質量%)が既知の場合で、分析工程(S60)で既知でない元素のみを測定した場合は、それらを組み合わせた値を用いる。
次に、式2により初期破面遷移温度を求めるFATT0決定工程(S50)を実施する。採取工程(S10)におけるサンプル材の採取位置のタービンロータ運転中の温度が350℃未満または460℃を超える場合には、換算工程(S30)における換算された破面遷移温度を初期破面遷移温度とする。すなわち、350℃未満または460℃を超える場合のFATT0決定工程(S50)では、換算工程(S30)で求めたFATT(FATTs)が、初期FATTとしてのFATT0と決定する。
一方、採取工程(S10)におけるサンプル材の採取位置のタービンロータ運転中の温度が350℃以上460℃以下の場合には、上述したように、換算工程(S30)で求めたFATT(FATTs)は、長期間の使用に伴う破面遷移温度の増加量ΔFATTTt(TP)を含んだ値となる。そのため、350℃以上460℃以下の場合のFATT0決定工程(S50)では、換算工程(S30)にて求めたFATT(FATTs)からΔFATTTt(TP)決定工程(S70)で求めた微小試験片の破面遷移温度の増加量ΔFATTTt(TP)を減算して、初期FATTであるFATT0を求める。すなわち、350℃以上460℃以下の場合のFATT0決定工程(S50)では、
FATT0=FATT(FATTs)−ΔFATTTt(TP)・・・・・(式7)
として評価対象のタービンロータの初期FATTであるFATT0を決定する。
これにより、微小試験片の採取位置の運転中の温度が350℃以上460℃以下の温度範囲によらず、FATT0を求めることができる。製造年次の古いタービンロータなどの製造時の初期FATT(FATT0)が求められていない場合や、製造時に初期FATTが求められていても評価対象部位と材料特性の異なる部位で求められた製造時の値である等、長期使用後の脆化度評価に対してはその信頼性に欠けることが多い。このような時にFATT0決定工程(S50)を実施すると効果的である。
なお、評価対象タービンロータにおいて、脆化度評価を行なうに当たって、信頼できる初期FATT(FATT0)が既知の場合は、測定工程(S20)、換算工程(S30)、判断工程(S40)、FATT0決定工程(S50)、およびΔFATTTt(TP)決定(S70)の全ての工程を省略しても良い。
次に、温度T(℃)で時間t(時間)経過後のタービンロータの破面遷移温度(FATTTt)を求めるFATTTt決定工程(S90)を実施する。FATTTt決定工程(S90)では、ΔFATTTtを式1により求める値とし、FATT0を未使用状態のタービンロータの初期破面遷移温度として、
FATTTt=FATT0+ΔFATTTt・・・・・(式2)
により求める。FATTTt決定工程(S90)により求められるFATTTt用いて、タービンロータの脆化度を判断する。
具体的には、FATTTt決定工程(S90)では、
FATTTt=FATT0+[(425.0+1.778K2−0.9643T−0.001990K2T)×{1−expx2erfc(x)}]・・・・・(式8)
を用いて、FATT0決定工程(S50)により決定したFATT0または既知のFATT0を式8に代入することにより、FATTTtを求める。
以上の工程(S10〜S90)を実施することによって、FATTTtを求めることができる。求められたFATTTtを用いてタービンロータの脆化度を評価することができる。
[実施例]
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例では、火力発電所にて224千時間程度運転された後に廃却されたCr−Mo−V鋼製のタービンロータについて、評価対象とした箇所からシャルピー衝撃試験片を採取して実際にシャルピー衝撃試験を実施して求めた実測FATTおよび実測ΔFATTと、本発明に基づいて求めた評価対象部位の推定FATT値であるFATTTtおよび推定ΔFATTとを比較した例で説明する。なお、実測ΔFATTは、対象タービンロータの初期FATTが不明であるため、FATTの測定とは別に供試材を切り出して脱脆化熱処理を施し、その脱脆化処理材からシャルピー衝撃試験片を作製してシャルピー衝撃試験を実施して求めたFATTを初期FATT(FATT0)とし、評価対象部位で測定されたFATTとFATT0との差を実測ΔFATTとした。
具体的には、本発明の実施の形態および図12に基づいて、評価対象部位31の推定FATTであるFATTTtを図3の手順に従って、以下のとおり求めた。なお、図12は、実施例におけるタービンロータの評価部位とサンプル材採取位置を示す略図である。実施例におけるタービンロータは図1に示したタービンロータと同様に、タービン翼の取り付け部が左右対称であり、かつタービンロータは上下対象である。そのため、図12は実施例におけるタービンロータのタービン翼の取り付け部の1/4部分についての概略図である。なお、図12は、タービン翼を省略して図示している。
まず、採取工程(S10)として、当該タービンロータの端面部を切断し、図1における位置12に相当するタービンロータ端面から、サンプル材を採取した。なお、実施例では廃却タービンロータを対象としているため、端面を切断して、微小試験片を作製するために必要なサンプル材を採取した。そして、採取したサンプル材から、図4に示す形状の微小試験片を14本作製した。
次に、測定工程(S20)として、採取したサンプル材から微小試験片を作製して、微小試験片による衝撃試験を実施し、微小試験片による破面遷移温度(FATTs)を測定した。その結果、FATTsは10℃であった。
次に、換算工程(S30)として、測定工程(S20)にて求めたFATTs(10℃)を、図11によりシャルピー衝撃試験によるFATTに換算した。その結果、FATTは120℃であった。
次に、当該タービンロータの微小衝撃試験片の採取位置の運転中の温度は、解析により求められている温度分布から280℃であると推定された。そのため、使用温度350℃以上460℃以下の範囲外であったので、判断工程(S40)での判定はNOであった。
次に、FATT0決定工程(S50)として、初期FATT(FATT0)は、換算工程(S30)にてFATTに換算して求めた値となるので、FATT0は120℃となった。
次に、分析工程(S60)として、不純物元素分析を分析した。その結果、Siは0.28(質量%)、Mnは0.73(質量%)、Niは0.18(質量%)、Cuは0.11(質量%)、Pは0.015(質量%)、Sbは0.002(質量%)、Snは0.011(質量%)、Asは0.009(質量%)であった。
次に、ΔFATTTt決定工程(S80)として、上記式1に基づいて、図12の中心孔部の内の評価対象部位31の位置でのΔFATTTtを求めた。式1において、評価対象部位31の運転中の温度は解析より求められている温度分布から400℃であったことから、使用温度Tは、400℃であり、使用時間tは、当該タービンロータの運転時間で、224,000時間であった。
また、脆化係数K2およびxを、分析工程(S60)で求めた各元素濃度(質量%)を用いて、式1−2および式4により計算した。その結果、K2は33.7であり、xは1.236であった。
その結果、ΔFATTTt決定工程(S80)では、ΔFATTTtは46℃となった。また、FATTTt決定工程(S90)では、FATTTtは166℃となった。
(実測値)
実測値を求めるために、図12において、タービンロータの中心孔部11の、評価対象部位31を脆化評価する箇所として、評価対象部位31を含む位置33にて当該タービンロータを切断した。そして、図5に示すシャルピー衝撃試験片23と同様に、切断面の中心孔部の評価対象部位31からシャルピー衝撃試験片18本を採取して、シャルピー衝撃試験を実施して、評価対象部位31のFATTを計測した。その結果、実測値によるFATTは167℃であった。また、FATT測定とは別に切り出した供試材の脱脆化熱処理後の供試材から作製したシャルピー衝撃試験片によるシャルピー衝撃試験により求めた初期FATT(FATT0)は、126℃であり、評価対象部位で測定されたFATT(167℃)とFATT0(126℃)との差から脆化量ΔFATTは、41℃であった。
(結果)
以上の結果から、図12における評価対象部位31のFATTの実測値が167℃、初期FATTとしてFATT0が126℃、脆化量であるΔFATTが41℃であったのに対して、本発明に基づく評価対象部位31の推定FATT(FATTTt)は166℃、推定初期FATT(FATT0)は120℃、推定脆化量であるΔFATTTtは46℃であった。そのため、精度良くFATTTtおよびΔFATTTtが推定できることが確認された。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明のCr−Mo−V鋼製のタービンロータの脆化度評価方法によれば、特殊な工具を使わずに脆化度を評価するとともに、評価の制度を向上することができる。そのため、火力発電所で用いられているタービンロータについて、検査時に脆化度を評価することができる。
本発明の実施の形態におけるタービンロータの例を示す概略図である。 シャルピー衝撃試験により求まる遷移曲線とFATTとの関係を示す模式図である。 本発明の実施の形態におけるCr−Mo−V鋼製のタービンロータの脆化度評価の手順を示すフローチャートである。 微小試験片を示す概略図である。 タービンロータ断面での中心孔部からのシャルピー衝撃試験片を採取した図である。 実機にて長期間使用されたタービンロータ中心孔部のFATTと使用温度との関係を示す図である。 長期間使用されたタービンロータ中心孔部の脆化量ΔFATTと使用温度との関係を示す図である。 脆化係数K2と脆化量ΔFATTとの関係を示す図である。 実測脆化量ΔFATTと推定脆化量ΔFATTTtとの関係を示す図である。 推定脆化量ΔFATTTtと使用温度との関係を実測脆化量ΔFATTを含めて示す図である。 複数のCr−Mo−V鋼タービンロータの材料によるシャルピー衝撃試験により求めた破面遷移温度FATTと、同材料の微小試験片による衝撃試験による破面遷移温度FATTsとの相関関係を示す図である。 実施例におけるタービンロータの評価部位とサンプル材採取位置を示す略図である。
符号の説明
10 タービンロータ、11 中心孔部、12,33 位置、23 シャルピー衝撃試験片、31 評価対象部位。

Claims (3)

  1. Cr−Mo−V鋼製のタービンロータの脆化度を評価する方法であって、
    温度T(℃)で時間t(時間)使用による破面遷移温度の増加量(ΔFATTTt)を、
    xをx=360×[1750t×exp{−33200/(T+273)}]1/2×[1+1.79y×10-5×exp{10500/1.98(T+273)}]/[8.5×10-8×exp{10500/1.98(T+273)}]で表わし、yをy=(10P+5Sb+4Sn+As)×102で表わし、K2をK2=(2Si+Mn+Ni+Cu)×(10P+5Sb+4Sn+As)×10で表わし、Si、Mn、Ni、Cu、P、Sb、Sn、およびAsを前記タービンロータを構成する材料に含有されるそれぞれの元素の濃度(質量%)として、
    ΔFATTTt=(425.0+1.778K2−0.9643T−0.001990K2T)×{1−exp(x2)erfc(x)}・・・・(式1)
    により求めることにより、前記タービンロータの脆化度を判断することを特徴とする、Cr−Mo−V鋼製のタービンロータの脆化度評価方法。
  2. 温度T(℃)で時間t(時間)経過後の前記タービンロータの破面遷移温度(FATTTt)を、
    ΔFATTTtを前記式1により求める値とし、FATT0を未使用状態の前記タービンロータの初期破面遷移温度として、
    FATTTt=FATT0+ΔFATTTt・・・・・(式2)
    により求めることにより、前記タービンロータの脆化度を判断することを特徴とする、請求項1に記載のCr−Mo−V鋼製のタービンロータの脆化度評価方法。
  3. 前記タービンロータの前記FATT0が不明な場合に、前記FATT0は、
    前記タービンロータからサンプル材を採取する採取工程と、
    前記サンプル材から作製した微小試験片の破壊試験により脆化度評価データを測定する測定工程と、
    Cr−Mo−V鋼製のタービンロータの破面遷移温度と、前記微小試験片により測定される前記脆化度評価データとの予め求められている相関関係を用いて、前記測定工程で測定された前記微小試験片の前記脆化度評価データを前記タービンロータの破面遷移温度に換算する換算工程と、
    前記測定工程における前記サンプル材の採取位置の前記タービンロータ運転中の温度が350℃以上460℃以下の場合には、前記式1を用いて破面遷移温度の増加量を求めるとともに前記式2により初期破面遷移温度を求め、前記測定工程における前記サンプル材の採取位置の前記タービンロータ運転中の温度が350℃未満または450℃を超える場合には、前記換算工程における換算された破面遷移温度を初期破面遷移温度とする工程とを実施することにより求めることを特徴とする、請求項2に記載のCr−Mo−V鋼製のタービンロータの脆化度評価方法。
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