電動のロールペーパー供給装置に関する過去の出願等を見ることで、本発明の主体が明確になるので、はじめにそれらの説明から入ることにする。
日本における、電動ロールペーパー供給装置に関する特許出願としては、本件出願人が調査した内で最も古い出願は、特許文献1特開昭54−12971である。スイッチを押すと一定量のペーパーが自動的に送り出されるというものであり、ふたつのローラーに挟まれたペーパーが本体の下方前部へと排出される。電動のペーパー切断機構を有するものではない。図示はしないが、ロールペーパーを上方に配置し、電動機構部を略下方に配置する、という一般的な配置方法をとっている。次に古い出願は特許文献2特開昭63−171532である。とても大げさな装置であって、商品化が難しいものであるが、電動のペーパー送り出し機構やハサミ状の電動ペーパー切断機構を備えているという点では全自動電動ロールペーパー供給装置の基本型であると言える。図示はしないが、ロールペーパーを上方に配置し、電動機構部を略下方に配置する、という一般的な配置方法をとっている。なお、この特開昭63−171532の出願人は、ペーパーの受け皿を加えた改良発明を特許文献3特開平2−220620にても行っているが、基本的な構成はほとんど変わっていない。
商品化できそうな出願としては、特許文献4特開平3−264016がある。図1は、その特許出願の公報に掲載されている図のコピーである。符号などは変更してある。図1に示されるように、ペーパー送り出し用の駆動ローラー1と受動ローラー2とによって挟まれたペーパーは、モーター3の駆動力により連続的に送り出される。送り出されたペーパーは、ペーパー送り出しローラー群の下方に配置された電動切断機構により、一定の長さに達するたびに切断される。先の発明やこの発明のように、電動ロールペーパー供給装置においては、電動のペーパー送り出し機構や電動のペーパー切断機構を、ロールペーパー支持部の下方に配置する配置方法が一般的である。重い機構部を下方に配置し、軽いペーパーを上方に配置する配置方法は、重量的なイメージバランスを考えた上でも安定感がある。そしてペーパーの交換も、そのような配置の方が容易であると思われているようである。また、ペーパーを下方へ引き出して切断する、という作業イメージを考えた上でも、従来の、手でフタを押さえてペーパーを引きちぎる方式のホルダーが、ペーパーを下方へと引き出した後に切断する、という作業イメージに近いものがあり、違和感が少ないと思われているようである。
前述した特許文献4特開平3−264016の出願人は、他にも2件の電動ロールペーパー供給装置に関する特許出願をしている。ひとつは特許文献5特開平4−297213であって、図2は、その特許出願の公報に掲載されている図のコピーである。符号などは除去してある。もうひとつは特許文献6特開平5−111442であって、図3は、その特許出願の公報に掲載されている図のコピーである。符号などは除去してある。いずれの発明もロールペーパーを上方に配置し、電動機構部を下方に配置する、という配置方法をとっている。図示はしないが、特許文献7特開平6−269374も、ロールペーパーを上方に配置し、電動機構部を下方に配置する、という配置方法をとっている。
図4は、特許文献8特開平9−75258の公報に掲載されている図のコピーである。符号などは変更してある。図4に示されるように、ペーパー送り出し用の駆動ローラー4と受動ローラー5とによって挟まれたペーパーは、モーターの駆動力により連続的に送り出される。送り出されたペーパーは、ペーパー送り出しローラー群の下方に配置された切断機構により切断される。この発明もロールペーパーを上方に配置し、電動機構部を下方に配置する、という配置方法をとっている。フタを上方に開いてペーパーを交換する。図示はしないが、特許文献9特開平9−206237も、ロールペーパーを上方に配置し、電動機構部を下方に配置する、という配置方法をとっている。この特開平9−206237では、切断を手動で行っている。
図示はしないが、特許文献10特開平9−276178や特許文献11特開平10−248745や特許文献12特開平10−14811や特許文献13特開2001−29258の公報に掲載されている発明においても、ロールペーパーを上方に配置し、電動機構部を下方に配置する、という配置方法をとっている。このように、ロールペーパーを上方に配置し、電動機構部を下方に配置する、という配置方法をとる発明が、電動ロールペーパー供給装置においては、とても多い。このようなタイプの電動ロールペーパー供給装置は、どうしても縦方向に長いデザインになりやすく、また大型になりやすいという欠点を持つ。尺間法に基づいた古いタイプの日本家屋では、トイレ空間の横幅が、実質的には80cm以下のところもあり、そのようなトイレに、壁から大きく飛び出てしまう装置を取り付けた場合には、人が通る幅がわずかしか残らなくなってしまう。そして、縦方向に長いデザインのペーパーホルダーで、ペーパーの排出方向が略前方下方である構造のものは、通常の手の位置でペーパーをつかもうとすれば、装置をかなり上の位置に取り付ける必要がある。その位置は洋式トイレに腰かけたとすると、ほぼ目線に一致するくらい高い位置であり、とても大きな圧迫感を覚えることになる。また、立ち上がろうとするときに、思わず肩をぶつけてしまうことにもなり、高齢の方や視力を失われた方などにとっては危険なものとなってしまう。特許文献12特開平10−14811や特許文献13特開2001−29258のようなタイプは大型で縦長デザインの典型である。もっとも小型で縦方向の長さが短いデザインと思われる特許文献8特開平9−75258のようなタイプであっても、ロールペーパー直径の2倍以上の縦方向寸法となっており、また、設置したときの壁からの距離、つまり出っ張り具合もロールペーパー直径の1.5倍以上となっている。ロールペーパーを上方に配置し、自動送り出しや自動切断の電動機構部を下方に配置するタイプの電動ロールペーパー供給装置で、たとえばロールペーパー直径の2倍以下の縦方向寸法にデザインされた発明は見あたらない。
図5は、特許文献14特開平10−5149の公報に掲載されている図のコピーである。符号などは変更してある。これまで例示してきた発明は、ペーパーを連続的に送り出す装置がロールペーパーの略下方に配置されたものであったが、図5の例は、ペーパーを連続的に送り出す装置がロールペーパーの前方に配置されたものである。図5に示されるように、ペーパー送り出し用の駆動ローラー6と受動ローラー7とによって挟まれたペーパーは、モーターの駆動力により連続的に送り出される。送り出されたペーパーは、ペーパー送り出し装置の前方に配置された手動の切断機構により切断される。フタを手で押し下げるとカッターがペーパーを切断する構造となっている。手動の切断機構を用いて小型化しているので、全自動式とは異なり、ただ1回の操作で必要な長さのペーパーを手にすることはできない。駆動ローラー6は、ロールペーパーの側方に配置された駆動モーターと減速歯車部とによって駆動される。この発明は、前述してきたような多くの発明とは異なり、ペーパーを前方に向けて排出するという大きな特徴がある。このデザイン手法により、装置の縦方向寸法は、側面図の方向からみた場合には最大限に小さくなっている。しかし、その特徴を台無しにするような、大きな欠点が新たに発生している。それは、ロールペーパーの送り出し機構と切断機構とを、ロールペーパーの略前方に配置したため、ペーパーホルダーの前端部が、取り付け壁面からとても大きく飛び出てしまうことである。JIS規格のロールペーパー直径はおよそ11cmであるので、図示された実施例では、およそ18cmも壁から飛び出してしまっている。これは前述した理由によるように、日本の家屋で使うにはとても不適切な発明であり、デザインである。そして、側面図の方向でのスリム化を達成するために、駆動モーターや減速歯車部などをロールペーパーの側方に配置しており、平面図の方向から見れば、装置は前方にも側方にも大型化してしまっている。特に、前方への飛び出し部が大きくなったことは、狭い日本のトイレ空間においてはとても大きな欠点となる。便座に向かって歩くときや、便座から立ち上がって戻るときなどに、膝やももなどをぶつける危険性がとても高くなる。また、これだけ前方への飛び出し部が大きいと、便座から立ち上がるときに、思わずホルダーの上面先端部に手をかけ、そして、よっこらしょ、と体重をかけてしまう。高齢の方や脚力の弱った方などでは、ほとんどの方がそのようにしてしまうことが予想される。最悪の場合には、ホルダーが壁からとれてしまうことも考えられる。前方への飛び出し部が大きくなれば、その分だけテコの原理が働き、ホルダーを壁から引き離す力も大きくなってしまうのである。頼りにして体重をあずけたものが、突然に崩れ落ちるように取れてしまった場合には、高齢の方や脚力の弱った方などは、ほぼ間違いなく転倒してしまう。これは危険である。狭いトイレの内幅を考えれば、装置の前方部分が取り付け壁面から大きく飛び出てしまうことは、致命的な欠点となるのである。フタが上方に開くタイプなので、ペーパーの交換は容易である。しかし、フタが移動する範囲の空間には、手すりや棚板を取り付けることは許されない。高齢者用のトイレには、多くの場合、手すりや棚板を配置することが要求され、手すりの位置などは、人間工学的に決められることが多い。水平方向に長い一般的な手すりが左右の壁に配置された場合には、手すりの上部空間直近には何も配置してはいけない。そこは高齢者の手や腕が移動するのに必要な空間だからである。そのような場合、図5の例による製品は、手すりの18cm以上下方に設置する必要がある。そうしなければフタが開かないので、ペーパーの交換ができないからである。その位置は、ヒザよりも低い位置となってしまう。それではペーパーを引き出す手が、自分の足や便座などにあたり、とても不便である。図5の例による発明は、高齢者用のトイレには不向きな発明である、といえる。
図6は、特許文献15特開平11−178741の公報に掲載されている図のコピーである。符号などは除去してある。この発明は、ペーパーを略前方下方に向けて排出するという特徴がある。フタが上方に開くタイプなので、ペーパーの交換は上方より行うことができるのであるが、図5の例と同様の欠点があり、手すりなどが必要な高齢者用のトイレには不向きな発明である。
図7は、特許文献16特開平11−244189の公報に掲載されている図のコピーである。符号などは除去してある。この発明も、ペーパーを略前方下方に向けて排出するという特徴がある。しかし、ペーパーホルダーの前端部が、図5の例よりも、更に大きく取り付け壁面から飛び出てしまう発明であって、欠点も更に大きくなっている。ペーパーの先端部付近を送り出し機構の間に通してやるのも面倒そうであり、実際にどのようにしてペーパーの交換を行ったらよいのかが、とてもわかりにくい発明である。
図8は、特許文献17特開2000−184986の公報に掲載されている図のコピーである。符号などは除去してある。この発明も、ペーパーを前方に向けて排出するという特徴がある。しかし、ペーパーホルダーの前端部が、図5の例よりも更に大きく取り付け壁面から飛び出てしまう発明であって、欠点も更に大きくなっている。フタが上方に開くタイプなので、ペーパーの交換は容易であるが、図5の例と同様、手すりなどが必要な高齢者用のトイレには不向きな発明である。
図9は、特許文献18特表平11−501228の公報に掲載されている図のコピーである。符号などは除去してある。この発明は、ロールペーパーの略前方下部からペーパーを排出するものである。そして、ロールペーパーの上方と前方とをL字状にカバーしているフタ部材を、前方に回転下降させることにより、ロールペーパーの上方部を開放し、装置の上方からロールペーパーの交換を行うことができるという特徴がある。しかし、ペーパーホルダーの装置前端部が、図5の例とほぼ同じように、取り付け壁面から大きく飛び出てしまう発明であって、同様の欠点を有している。フタが下方に開く特別なタイプではあるが、送り出し機構がロールペーパーの前方に固定的に配置されていて、ロールペーパーの上方部を開放して装置の上方からロールペーパーの交換を行う必要があるので、図5の例と同様、手すりなどが必要な高齢者用のトイレには不向きな発明である。ペーパーの交換は容易そうに見えるが、ふたつに離れた送り出し機構の間に、ペーパーの先端部分を通してやらなければならないので、実際の作業は複雑で面倒である。
図10は、特許文献19特開2003−125972の公報に掲載されている図のコピーである。符号などは除去してある。この発明も、ペーパーを略前方に向けて排出するという特徴がある。しかし、駆動装置やコントロール装置をペーパーホルダーの側方に配置しており、装置全体としてはとても大型である、という大きな欠点を持つ。また特別な自動切断装置を、露出させるように略前方に配置しているが、図を見ても、説明を読んでも、自動切断装置がどのように駆動されるのかが理解しにくい。ロールペーパーをどのように交換するのか、その方法も理解しにくい。発明としての説明が全く不十分と感じられる。次の大きな欠点として、装置の使用者は、ペーパーの交換時にペーパー先端部を、その自動切断装置に設けられた細い隙間に通してあげなければならない、という点が挙げられる。これはとても面倒な作業である。目の不自由な方がトイレに入り、この装置が壁に取り付けられていたとしたら、その方は果たしてこの装置を使うことができるのだろうか。ペーパーの交換はできるのだろうか。とても不安になる発明である。
図11は、特許文献20特開2004−261505の公報に掲載されている図のコピーである。符号などは除去してある。この発明は、ペーパーの送り出しのみを電動で行い、フタの先端部にある切断刃を利用して、ペーパーを手で引きちぎるものである。自動切断装置を内蔵していない電動式ペーパーホルダーであるので、装置全体としては小型に描かれているが、自動切断装置を配置したらどのような全体形状と大きさになるのか、については記されていない。この考案もフタが上方に開くタイプなので、図5の例とほぼ同様の欠点を有している。電動切断機構は有していないのであるが、この発明は日本で商品化された第1号の電動送り出し機構付きロールペーパーホルダーではないかと思われる。
図12は、特許文献21特開2004−269144の公報に掲載されている図のコピーである。符号などは除去してある。この発明は、ペーパーの送り出しも切断も電動で行う全自動タイプである。特殊な切断刃カセットを有することを特徴としている。ペーパーを上方に配置し、電動送り出し機構と電動切断機構とを下方に配置した、典型的な全自動タイプである。縦方向に長く、全体として大型である、という欠点があるが、特許公報に載ったデザインとほぼ同様の体裁で、この発明は商品化されている。この発明は日本で商品化された第1号の、全自動タイプの電動ロールペーパーホルダーではないかと思われる。しかし、大型すぎる、それゆえか高価、ペーパーの交換が面倒、などの欠点があり、2005年11月現在、改良型の第2号機が発表されている。発表はされているが、発売はまだのようである。
ここまでは、特許に関する従来例を掲げてきた。次に、実用新案に関する従来例について記述する。日本における、電動ロールペーパー供給装置に関する実用新案登録出願としては、本件出願人が調査した内で最も古い出願は、特許文献22実開昭47−36197である。スイッチを押すと一定量のペーパーが自動的に送り出されるというものであり、ふたつのローラーに挟まれたペーパーがペーパーの下方前部へと排出される。電動のペーパー切断機構を有する。ロールペーパーを上方に配置し、電動機構部を略下方に配置する、という一般的な配置方法をとっているので図示はしない。
図13は、特許文献23実開平6−77685の公報に掲載されている図のコピーである。符号などは除去してある。この例は、図10で示した特許文献19特開2003−125972の公報に、従来の考案として例示されていたものである。考案の名称は、電動式ペーパーホルダー、となっているが、ペーパーの送り出しのみを電動で行い、切断は図13のごとく、手で引きちぎるものである。自動切断装置を内蔵していない電動式ペーパーホルダーであるので、装置全体としては小型に描かれているが、自動切断装置を配置したらどのような全体形状と大きさになるのか、については記されていない。この考案もフタが上方に開くタイプなので、図5の例とほぼ同様の欠点を有している。すなわち、フタを上方に向けてほぼ全開にしないとロールペーパーの交換ができない。それゆえ、高齢者向けの手すりや棚板を、電動式ペーパーホルダーの上方直近には配置できないのである。
ここで従来の発明や考案において、装置の開閉やロールペーパーの交換がどのようになされてきたのかをまとめてみる。
図1、図2、図3の実施例などは、カバーパネルが開き戸のように垂直な回転軸を持って回転しながら開く、というものと推測されるのであるが、装置自体がとても大型であって、一般家庭のトイレにはとうてい設置できないシロモノである。勿論、発明そのものが公共の施設などを対象にしているものらしいので、小型化する、という発想は全くないようである。使用状態の図もあり、いかにも家庭用に小型化できているように描かれてはいるが、故意に装置を小さく描いているだけであって、はっきりといえば、ウソのイメージを描いているものである。図4、図5、図6の実施例では、フタを上方に向けて開き、ロールペーパーを交換している。図7の実施例は、フタを上方に向けて開くように推測される。カバーパネルが開き戸のように垂直な回転軸を持って回転しながら開く、という方法も考えられるが、その方法では送り出し機構の間にペーパーをセットすることは難しい。図8の実施例は、フタを上方に向けて開き、ロールペーパーを交換している。図9の実施例は、フタが略L字形であって、ある支点を中心に前方へと回転するという特殊な構造である。しかしロールペーパーの交換は上方から行うしか方法がない。したがって、ホルダーの上方直近に、高齢者向けの手すりや棚板を配置してしまうと、ロールペーパーの交換はできなくなってしまうのである。図10の実施例は、ロールペーパーの交換方法が全く不明なものである。上方のフタを開き、側方の壁部材を開くかはずすかして、側方よりロールペーパーを電動の回転軸に差し込み、駆動構造の不明な電動切断装置にペーパー端を通すのであろう、と推測される。とにかくロールペーパーの交換が相当に面倒であることだけは確かである。図11の実施例は、フタを上方に向けて開き、ロールペーパーを交換している。図12の実施例は商品化されている。その商品は、前面のパネル全体を上方に向けて大きく開き、ロールペーパーを専用の軸芯棒に通し、軸芯棒を本体の軸受けにセットすることで、ロールペーパーの交換を行っている。その後、電動切断装置にペーパー端を通す、という作業が必要である。図13の実施例は、フタを上方に向けて開き、ロールペーパーを交換している。
以上のように、電動ロールペーパー供給装置に関する従来の発明や考案においては、次のような欠点がある。カバーパネルが開き戸のように垂直な回転軸を持って回転しながら開くタイプでは、装置が大型になる。カバーパネルが水平な回転軸を持って回転しながら上方に開くタイプでは、高齢者向けの手すりや棚板を電動式ペーパーホルダーの上方直近には配置できない。カバーパネルが水平な回転軸を持って回転しながら下方に開くが、ロールペーパーの交換を上方から行うしか方法がないタイプでは、高齢者向けの手すりや棚板を電動式ペーパーホルダーの上方直近には配置できない。ロールペーパーを専用の軸芯棒に通さなければロールペーパーの交換ができないタイプでは、巻き芯ありペーパーと巻き芯なしペーパーとではセットの仕方を変えなければならず、高齢の方などでは即座の対応が難しい。電動切断装置にペーパー端を通す、という作業が必要であるタイプでは、狭いすき間にペーパー端をくぐらせる必要があり、柔らかで形の崩れやすいトイレットペーパーの先端を、狭いすき間にくぐらせる作業は手先の器用なひとでも難しく、手先の震えるような高齢の方などにとっては非常に困難な作業となる。
以上が、出願人が調べた、日本の電動ロールペーパー供給装置のおよその状況である。このように、電動ロールペーパー供給装置においては、全体的に小型で、配置位置の制限がなく、巻き芯ありペーパーと巻き芯なしペーパーとで対応を変える必要がなく、柔らかで形の崩れやすいトイレットペーパーを電動送り出し機構や電動切断機構の機構中に簡単に通すことができる、という条件をすべて満足させるような発明や考案はなかった。
次に、電動ではない、一般的なペーパーホルダーにおける、装置の開閉方法とロールペーパーの交換方法とを調べてみる。調べるにあたって特に注目すべき点は、高齢者向けの手すりや棚板をペーパーホルダーの上方直近に配置できるかどうかである。
調査にあたって、以下のようなありふれたロールペーパーの交換方法をとるものは除外した。
ロールペーパーを専用の軸芯棒に通して交換するようなとても古いタイプ。ロールペーパーをホルダーの下方から押し込むと、左右の支持棒が一時的に上方側方に逃げ、次にペーパーの巻き芯に入り込む、という具合に交換する現在の一般的なタイプ。ロールペーパーをホルダーの前方から押し込むと、支持棒が一時的に後方側方に逃げ、次にペーパーの巻き芯に入り込む、という具合に交換する現在の一般的なタイプ。ボックス形状や受け皿形状の単純なホルダー本体に、上方からロールペーパーを投入セットするタイプ、など。
図14は、特許文献24特開平8−98786の公報に掲載されている図のコピーである。符号などは除去してある。この発明は、バケット状のフロントカバーを手前に開き、バケット部にペーパーを入れる構造である。配置位置の上下左右にかなり自由な空間があり、手すりや棚板を上方直近にも配置することができる。ペーパー先端部を特定のすき間に通す必要があり、構造を理解できないひとにはペーパーのセットが少し難しいという欠点がある。また、片手では切断刃が少し使いにくい、という欠点もある。
図15は、特許文献25実案登録第3030122の公報に掲載されている図のコピーである。符号などは除去してある。この考案は、バケット状のフロントカバーを手前に回転させて開き、バケット部の内側にペーパーを入れる構造である。配置位置の上下左右にかなり自由な空間があり、手すりや棚板を上方直近にも配置することができる。ペーパー先端部を特定のすき間に通す必要がなく、構造をあまりよく理解できないひとでも、ペーパーのセットが難しくて困るということはない。切断刃が片手で扱えるような工夫がしてあるが、そのワンハンドカット用の切断刃の構造は、この考案の出願以前からよく知られた構造であり特に新しいものではない。バケット状のフロントカバー上部を通るペーパーは、通常はフリー状態にあり、何かに挟まれているものではない。ペーパーを切断しようとして、ペーパーを引き上げたときにのみ、切断刃の反対側端部がペーパーを押さえ付ける構造となっている。
図16は、特許文献26特開平11−155763の公報に掲載されている図のコピーである。符号などは除去してある。この発明は、フロントカバーを手前に開き、壁に取り付けられた本体のバケット部にペーパーを入れる構造である。配置位置の上下左右にかなり自由な空間があり、手すりや棚板を上方直近にも配置することができる。ペーパー先端部を特定のすき間に通す必要があり、構造を理解できないひとにはペーパーのセットが少し難しいという欠点がある。
図17は、特許文献27特開2000−254037の公報に掲載されている図のコピーである。符号などは除去してある。この発明は、フロントカバーを有するボックス部を手前に引き出してから少し下方へ傾け、ボックス部に上方からペーパーを入れる構造である。配置位置の上下左右にかなり自由な空間があり、手すりや棚板を上方直近にも配置することができる。ワンハンドカット用の特殊な切断刃構造は有していない。
図18は、特許文献28特開2000−316745の公報に掲載されている図のコピーである。符号などは除去してある。この発明は、フロントカバーを含むL字状ボックス部を、支持軸を中心として手前に回転させて開き、L字状ボックス部に前方からペーパーを入れる構造である。配置位置の上下左右にかなり自由な空間があり、手すりや棚板を上方直近にも配置することができる。ワンハンドカット用の特殊な切断刃構造は有していない。一般的な切断刃が天井部先端に配置してある。
図19は、特許文献29特開2001−46273の公報に掲載されている図のコピーである。符号などは除去してある。この発明は、バケット状のフロントカバーを手前下方に回転させて開き、バケット部にペーパーを入れる構造である。デザイン的な差異はあるものの、請求項1から請求項5までの内、請求項4の上下方向スリットを設けること以外、基本的に特許文献25実案登録第3030122の内容とほとんど同じであり、新規性はない。むしろ、バケット状のフロントカバーを手前に回転させて開いたときには下方でペーパーを支える面が不足してしまい、ペーパーが落ちないように押さえながら、フロントカバーを閉じていかなければならない、という欠点が発生している。図のように、フロントカバーを開いた状態で、ロールペーパーを置いて手を離すことができないのは明らかである。
以上が、一般的によく見られるペーパーホルダーとは少し異なった装置の開閉方法とロールペーパーの交換方法とを有する、電動ではないペーパーホルダーに関する従来例である。高齢者向けの手すりや棚板をペーパーホルダーの上方直近に配置できるかどうかを調査のポイントとした。本発明は、このような特殊な従来例も参考にしながら、独自の機構レイアウトや工夫を重ねて成されたものであり、取り扱い方が簡単で、小型で、配置位置の制限がなく、巻き芯ありペーパーと巻き芯なしペーパーとで対応を変える必要がなく、柔らかで形の崩れやすいトイレットペーパーを電動送り出し機構や電動切断機構の機構中に簡単に通すことができる、という条件をすべて満足させるような電動ロールペーパー供給装置を提供するものである。
最後に、非特許文献1として、製品として発売されている電動ペーパーホルダーの説明書の一部を示す。説明書に付してある記号や文字などは除去した。この製品は、2005年9月に発売されたものである。商品名は ペーパークルクル である。上方にロールペーパーを保持するボックス部を配置して、下方に電動送り出しローラー部と電動切断部とを配置した従来の一般的な電動ペーパーホルダータイプである。下方の電動機構部を手前に開き、開いたときにできるすき間にペーパー先端部を通してからフタを閉じる必要がある。図は、下方の電動機構部のフロントカバーを、手前に90度、回転するように開いた様子を示している。全体的にとても大型で、しかもロールペーパーを保持するボックス部のフタが上方に開くため、製品の上方直近には手すりや棚板は配置できない。またペーパーが下方に排出されるため、製品の下方直近にも手すりや棚板は配置できず、配置位置には大きな制限がある。
特開昭54−12971
特開昭63−171532
特開平2−220620
特開平3−264016
特開平4−297213
特開平5−111442
特開平6−269374
特開平9−75258
特開平9−206237
特開平9−276178
特開平10−248745
特開平10−14811
特開2001−29258
特開平10−5149
特開平11−178741
特開平11−244189
特開2000−184986
特表平11−501228
特開2003−125972
特開2004−261505
特開2004−269144
実開昭47−36197
実開平6−77685
特開平8−98786
実案登録第3030122
特開平11−155763
特開2000−254037
特開2000−316745
特開2001−46273
図20。2005年9月発売の電動ペーパーホルダーの、説明書の一部。
図21は、本発明を実施した実施例1の外観側面図である。壁に取り付けられたホルダー本体8の上方に棚板部材9が配置され、ホルダー本体8の内側にフロントカバー10が支持されている。フロントカバー上方先端部11が見える。
図22は、本発明を実施した実施例1の外観正面図である。棚板を有するトイレットペーパーホルダーは横2連式が多いので、横2連式を描いた。ホルダー本体8の上方に棚板部材9が配置され、ホルダー本体8の内側にフロントカバー10が支持されている。フロントカバー上方先端部11が見える。
図23は、本発明を実施した実施例1の構造を示す、断面模式図である。フロントカバー10はホルダー本体8に軸12を介して回転できるように配置されている。フロントカバー10とホルダー本体8は仮止めのノッチや磁石の利用などにより、簡単に開けたり閉じたりすることができるようにされるのが一般的である。ホルダー本体8と棚板部材9との間に、乾電池13をセットすることもできるが、家庭用の100ボルト電源を用いることができれば、乾電池は不要となる。フロントカバー上方平面部14にはロール状部材15が回転可能に配置されている。本体の内壁天井平面部16にはロール状部材17が回転可能に配置されている。ロール状部材15はバネ18により、ロール状部材17の方向に押されていて、様々な厚さのペーパーを挟んで送り出すのに適する状態になっている。指19がフロントカバー上方先端部11をつかみ、矢印20の方向に、手前に引いて開こうとしている。せり出し部分であるフロントカバー上方先端部11を、指でつまんでバケットを開くことができるので、フロントカバーのバケット部には、開く目的の特別なツマミを設ける必要はない。
図24は、本発明を実施した実施例1の構造を示す、断面模式図である。ロールペーパーをセットする様子を示す。フロントカバー10は軸12を中心に矢印21の方向に回転し、本体に設けられた回転止め部材22によって、図のような位置で止まる。この状態でペーパー送り出し用のロール状部材15とロール状部材17は完全に引き離され、引き離されたふたつのペーパー送り出し用部材の間に、ロールペーパー23を矢印24の方向に投入セットすることができる。ロールペーパー23を巻きほどしたペーパー先端部分25は図のように、フロントカバー上方先端部11から少しだけ長くはみ出るようにする。
図25は、本発明を実施した実施例1の構造を示す、断面模式図である。ロールペーパー23をセットした後にフロントカバー10を矢印26の方向に閉じた様子を示す。ペーパー先端部分25は図のように、フロントカバー上方先端部11から少しだけ垂れ下がっている。ペーパー送り出し用のロール状部材15とロール状部材17はペーパーを挟んでいる。ロールペーパー23は、主としてフロントカバー10の内側バケット部分によって支えられるので、巻き芯があってもなくても構わない。
図26は、本発明を実施した実施例1の構造を示す、断面模式図である。ロールペーパーを引き出す様子を示す。指19がペーパー先端部分25をつかみ、矢印27の方向に引っ張る。巻きほどかれたペーパーは矢印28の方向に動き、ロールペーパー23は矢印29の方向に回転するように動く。ロールペーパー23の下方外周部はフロントカバー10の内側バケット部分でスリップする。フロントカバー10の内側バケット部分に複数の回転ローラーを設ければ、ロールペーパー23はスリップすることなく、もっとスムーズに回転できるようになる。ペーパーが動くと、ペーパー送り出し用のロール状部材15とロール状部材17は、それぞれに付された矢印の方向に回転する。ロール状部材17の軸にはワンウェイクラッチを配置しておくのがよい。あるいは、中間プーリー小30と中間プーリー大31との間にワンウェイクラッチを配置しておくのがよい。そうすることにより、ペーパーの引き出しによってモーター32が逆転されることがなくなり、プーリー間をつなぐベルト類の消耗を防ぐこともできる。ペーパーの引き出しによって回転する部材、たとえばロール状部材15、ロール状部材17、中間プーリー小30、中間プーリー大31などの軸に回転センサーを配置すれば、ペーパーの引き出し具合を監視することができる。それにより、ペーパーの引き出し行為が停止した直後に電動の切断装置が作動するように設定することができる。ペーパーの引き出し行為を完了した後に、使用者が切断用に配置された手押しスイッチや赤外線感知スイッチなどを操作して、ペーパーを切断することができるのはいうまでもない。フロントカバー上方先端部11に、ペーパーを切断するための切断刃を一体的に成型するのも良い。機械部分が故障して自動の送り出しや切断ができなくなったときには、左手でペーパーを押さえて、右手でペーパーを引き下げるようにして切ることができる。
図27は、本発明を実施した実施例1の構造を示す、断面模式図の部分拡大図である。ロールペーパーを電動の切断装置が切断する様子を示す。切断刃33はL字状部材34の先端に取り付けられている。L字状部材34は軸35を中心に回転できるように配置されている。プッシュバー36には鉄材37が取り付けられている。ペーパーの動きの停止を自動感知すると自動的に入るスイッチか、手押しスイッチなどにより回路に電流が流れると、電磁石38が機能して鉄材37を矢印39の方向に引きつける。するとプッシュバー36の先端は矢印40の方向に動いてL字状部材34の後端を押し、切断刃33は矢印41の方向に勢いよく動いてペーパーを切断する。切断が完了した後は、電磁石38への電力の供給を停止する回路とする。バネ42の復元力によってプッシュバー36は初期位置へと復帰し、バネ43の復元力によって切断刃33の付いたL字状部材34も初期位置へと復帰する。バネ44はモーター32を支え、振動音の発生を押さえている。切断の次はペーパーの送り出しが始まる。使用者が本体に配置された手押しスイッチや赤外線感知スイッチなどを操作して、ペーパーの送り出しをすることができる。またペーパーの切断行為が停止した直後に電動の送り出し装置が作動するように、プログラムで設定しておいても良い。
図28は、本発明を実施した実施例1の構造を示す、断面模式図の部分拡大図である。電動の送り出し装置がロールペーパーを送り出す様子を示す。送り出し用のスイッチが入ると、モーター32の軸に取り付けられた駆動プーリー45が矢印の方向へ回転し、駆動ベルト46が矢印の方向へ回転して、駆動力が中間プーリー大31に伝わる。次に中間プーリー小30の回転が伝道ベルト47を介してロール状部材17を矢印の方向へ回転させる。ペーパー48はロール状部材17とロール状部材15とによって挟まれているので、矢印49の方向へ引き上げられ、矢印50の方向へと送り出される。図25のような垂れ下がり位置で送り出しが停止されるように、プログラムで設定しておくのが良い。そうすれば図26のように、すぐにペーパー端をつまんで引き出すことができる。
図34は、本発明を実施した実施例5の構造を示す、断面模式図である。実施例4までとは異なり、本体底部76が前方へと伸びていて、フロントカバー77には円弧状の前方壁がない。フロントカバー77の回転の中心となる軸78の位置も、本体底部をなす円弧の中心とは異なっている。フロントカバー上方先端部79をつまみ、矢印80の方向に回転させ、開こうとするところである。フロントカバーの形状、本体の形状、それらの取り付け位置などが異なるだけで、基本的な構造は図23とほぼ同じである。
図35は、本発明を実施した実施例5の構造を示す、断面模式図である。ロールペーパーをセットする様子を示す。軸78を中心にして、フロントカバー77が矢印81の方向に回転して開いている。ロールペーパー82が矢印83の方向に投入セットされる。フロントカバー77は本体底部の前端部にあたり、これ以上は開かない。
図36は、本発明を実施した実施例5の構造を示す、断面模式図である。ロールペーパー82のセットが完了し、フロントカバー77が閉じられた様子を示す。ロールペーパー82が本体底部76に乗っていることが分かる。図25と比べれば分かりやすい。図25の実施例1では、ロールペーパーはフロントカバーの内側に乗っていた。図36の実施例5では、ロールペーパー82が露出して見える。触ることもできる。これはロールペーパー82の減り方がひと目で分かるという利点がある。
図37は、本発明を実施した実施例6の構造を示す、断面模式図である。基本的な構造は図23実施例1とほぼ同じである。実施例1では、フロントカバーをひとつの軸を中心に回転させていたが、実施例6では、ふたつのガイドレールに沿ってフロントカバーを動かし、前方へと開いている点が異なる。フロントカバー84は矢印85の方向に引き出されようとしている。
図38は、本発明を実施した実施例6の構造を示す、断面模式図である。フロントカバー84を矢印86の方向にほぼ水平方向に引き出した状態を示している。本体87に設けられた上レール88と下レール89に沿って、フロントカバー84に設けられたピン90とピン91が、矢印92と矢印93の方向に移動する。ピン91が下レール89の前方部に行き着くと、やがてピン90はピン91を中心に回転することになる。上レール88と下レール89の中心部直線部分は、曲線を含むひと組の平行な自由線であってもよい。
図39は、本発明を実施した実施例6の構造を示す、断面模式図である。ピン90を有するフロントカバー84が、ピン91を中心に矢印94の方向に回転している様子を示す。この後、ロールペーパーをセットする。
図40は、本発明を実施した実施例6の構造を示す、断面模式図である。ロールペーパー95を矢印96の方向に投入セットする様子を示す。この後、フロントカバー84を閉じる。
図41は、本発明を実施した実施例6の構造を示す、断面模式図である。フロントカバー84を矢印97の方向に押して、完全に閉じた様子を示す。フロントカバー84が閉じられた状態では、構造的に図25実施例1とほぼ同じである。ペーパーセット後の機能については、図25実施例1の詳細な説明に準ずる。
駆動ローラー1、受動ローラー2、モーター3、駆動ローラー4、受動ローラー5、駆動ローラー6、受動ローラー7、ホルダー本体8、棚板部材9、フロントカバー10、フロントカバー上方先端部11、軸12、乾電池13、フロントカバー上方平面部14、ロール状部材15、内壁天井平面部16、ロール状部材17、バネ18、指19、矢印20、矢印21、回転止め部材22、ロールペーパー23、矢印24、ペーパー先端部分25、矢印26、矢印27、矢印28、矢印29、中間プーリー小30、中間プーリー大31、モーター32、切断刃33、L字状部材34、軸35、プッシュバー36、鉄材37、電磁石38、矢印39、矢印40、矢印41、バネ42、バネ43、バネ44、駆動プーリー45、駆動ベルト46、伝道ベルト47、ペーパー48、矢印49、矢印50、フロントカバー51、ロール状部材52、面部材53、バネ54、棚板55、乾電池56、フロントカバー57、植毛部を有する部材58、植毛部を有する部材59、長穴60、支持部材61、支持部材62、矢印63、ペーパー64、矢印65、矢印66、矢印67、大プーリー68、支点69、連結バー70、軸71、フロントカバー72、矢印73、ロールペーパー74、矢印75、本体底部76、フロントカバー77、軸78、フロントカバー上方先端部79、矢印80、矢印81、ロールペーパー82、矢印83、フロントカバー84、矢印85、矢印86、本体87、上レール88、下レール89、ピン90とピン91、矢印92、矢印93、矢印94、ロールペーパー95、矢印96、矢印97