JP4592700B2 - 機械的蒸気圧縮法による単段フラッシュ蒸発法海水淡水化装置に用いる蒸発室 - Google Patents
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Description
蒸発法による造水装置にも各種あるが、従来から最も一般的に採用されているのは、多段フラッシュ蒸発法造水装置(以下「MSF」と言う。)、熱的蒸気圧縮法と組み合わせた多重効用蒸発器式造水装置(TVC−MED。以下「TVC」と言う。)、および、機械的蒸気圧縮法と組み合わせた単段フラッシュ蒸発法造水装置(Single Stage−MVC。以下「MVC」と言う。)である。
MSFは、大容量の造水装置として数多くの実績を有するが、第6図に示すように、少しずつ運転圧力を変えた数多くの区画(段)に分けた蒸発室101を用い、低圧でフラッシュ蒸発を段階的に行なわせる構成を採るので、蒸発室は大型となり、必要伝熱面積も大きく、その結果として設備全体の規模が大きくなり、大きな敷地を必要とし、建設費も高くなる。
また、蒸発室を少しずつ運転圧力を変えた数多くの段に分けているので、それぞれの段の圧力を平衡状態にまで持っていくための制御が難しい。したがって、装置の起動停止操作が難しくて時間もかかるので、一般に連続運転することが原則になっている。
TVCは、第7図に示すように、20Bar前後の蒸気を用いて、4段から5段の多重効用蒸発器111の最終段112の蒸気をエジェクタ113で加圧するものであり、加圧用の蒸気の潜熱を全て利用できるので、MFSに比較して建設費や造水に必要なエネルギー費が安価である。
また、多重効用蒸発器111では、蒸発伝熱を行なうので伝熱係数が大きく、また、ブラインの循環を必要とせず、さらに、可動部がないために運転や保守管理が容易であるので、中容量あるいは小容量の造水装置として多く使用されている。
一方、従来型のMVCは、第8図に示すように、蒸発室で発生した蒸気をブロア、コンプレッサ等の機械的蒸気圧縮手段122で圧縮し、圧縮により高温高圧化した蒸気を蒸発室に設けた伝熱管123の中を流し、その凝縮熱を利用して、蒸発室の上からスプレーする海水124から水を蒸発させる型の蒸発室121を使用している。
この伝熱管外面はTVCと同様に蒸発伝熱となっているので伝熱係数が大きく、ブラインの循環も必要とせず、MSFに比較して伝熱面積、設備の規模とも小さく、大きな敷地を必要とせず、建設費も割安ですみ、起動停止や運転制御が簡単という利点がある。
しかし、以下に述べるように大容量化には難点があり、また、中容量や小容量の分野では、運転や保守管理がより容易なTVCにおされて、実績が少なかった。
これら各種の造水装置に共通する問題として、蒸発室における硬質スケールの発生がある。
第9図に示すように、硬質スケールの主成分であるCaSO4の溶解度は温度により変化する。また、CaSO4が析出する結晶形態は温度により異なり、70℃以下では2水塩CaSO4・2H2Oが、70℃から90℃では無水塩CaSO4が、さらに、90℃以上では半水塩CaSO4・1/2H2Oが析出する。
そこで、従来は無水塩CaSO4の溶解度が十分に高い温度域、すなわち、65°Cから70℃に伝熱管外面の温度を維持するように、伝熱管内を通す蒸気の圧力を0.3Bar程度の低圧に保持してスケール発生防止を図ってきた。
しかし、従来からこれら各種の造水装置で採用されてきたこの低い圧力領域では、フラッシュ蒸発により発生する蒸気の比体積が極めて大きくなる。
特にMVCでは、この発生した蒸気をブロア等で圧縮する必要があるので、大容量のMVCを作ろうとすると、取り扱う体積流量が極めて大きい大型のブロア等を製作せねばならない。この超大型のブロア等を製作することは難しく、それがMVCで大容量の造水装置が実用化されなかった一つの原因でもあった。
このブロア等の製作限界の問題解決のためには、US.Patent No.5,676,801等の発明が種々試みられている。
さらに、この問題に関連して蒸気室の運転圧力を高くする、例えば、大気圧にして運用するシステム(Yehia M.El−Sayedの論文「Thermoeconomics of some options of large mechanical vapor−compression units」 Desalination 125(1999)251−257のFig.2参照)のアイディアも提案されている。
この提案に従って大気圧付近まで蒸気圧力を上昇させると、ブロア等が扱う蒸気の比体積は大幅に減少するので、ブロア等の大型化の問題は緩和できるが、前述したCaSO4スケールの析出において問題が生じる。
すなわち、温度が上昇すると単に溶解度が低下して析出する量が増加するだけではなく、晶析速度も非常に早くなるので、この提案のように大気圧付近、すなわち、100℃付近で従来のMVCのように蒸発伝熱を行なわせると、伝熱面上に急速に多量のスケールが析出することとなる。
また、MVCで大容量の造水装置が実用化されなかった二つ目の原因として、造水に伴う動力費の問題がある。
多段に分けた蒸発室で段階的にフラッシュ蒸発を行なわせるMSFと異なり、MVCは単段のフラッシュ蒸発を行なうので、蒸発室入口と出口のブライン(あるいは海水)の温度差が小さい。
造水装置で製造される水の量は、「蒸発室入口と出口とのブライン(あるいは海水)温度差」と「蒸発室を通過するブライン(あるいは海水)の量」の積を「蒸発潜熱」で除した量になるので、同じ量の水を作るには、ブライン(あるいは海水)温度差に逆比例して大量のブライン、あるいは、海水を循環させる必要がある。
一例を挙げれば、MSFではこのブライン温度差が67degC程度であるのに対し、MVCでは海水温度差が3.5degCから5degC程度であり、13から20倍の開きがある。
その結果、同じ量の水を製造するには、MVCではMSFに較べて13から20倍の多量のブラインあるいは海水を循環させねばならず、そのための動力が多大となり、造水コストが高くなるという認識があった。
これまで大気圧で運用される大容量MVCの実績が無いことは、たとえ先に挙げたブロアの発明や大気圧での運用のアイディアによりブロア等の問題は解決できたとしても、蒸発室におけるスケールの発生の問題や、ブラインあるいは海水の循環に必要な動力費の問題を解決するに至っていないためと考えられる。
大容量MVCを実現するためには、蒸発室、特に、その伝熱面でのスケール発生の防止を図り、ブラインあるいは海水の循環に必要な動力を低減させるとともに、フラッシュ蒸発ができるだけ小さな蒸発室の中で効果的に、かつ、安定して円滑に行なわれるようにして、蒸発室の小型化による一層の経済性を追求をしなければならない。また、造水装置の安定した運転のためには、ブラインあるいは海水の流動の安定性も確保されなければならない。
さらに、MVCにおいては、蒸発室からブロア等に送られる蒸気中のミストが多いと、ミストにより運ばれたスケール成分がブロア翼表面等に付着して濃縮され、腐食やスケール析出によるブロア等の機械的トラブルの基になるので、蒸発室からの蒸気に伴うミストを極力少なくすることも大切である。
したがって、大容量MVCを実用化するためには、これらの問題を解決できる蒸発室の開発が課題となる。
その発生した蒸気(以下「蒸気1」という。)を圧縮する機械的蒸気圧縮手段と、
その圧縮された蒸気(以下「蒸気2」という。)を凝縮させることにより当該蒸発室に送るブラインを加熱する熱交換手段と、
当該蒸発室でフラッシュ蒸発を終えたブラインを、補給された海水と共に当該熱交換手段に返す循環手段と、
当該熱交換手段を出たブラインを蒸発室に戻す連絡管とを有する機械的蒸気圧縮法による単段フラッシュ蒸発法造水装置に用いる当該蒸発室であって、
ブラインの循環が停止した場合でも、当該熱交換手段内の当該ブラインの圧力を、当該蒸気2の温度の飽和圧力以上に保持するために、当該熱交換手段に当該蒸気2の温度の飽和圧力と蒸気1の圧力の差以上の水頭差を与えるように、当該熱交換手段に比べて高い位置に配置された蒸発室である。
すなわち、従来のMVCで用いられてきた海水を加熱する熱交換手段をその内部に有する蒸発室に替えて、ブラインをフラッシュ蒸発することを専らとする蒸発室と、蒸気2の凝縮によりブラインを加熱することを専らとする熱交換手段とを分けたMVCである。
従来のMVCでは伝熱面において海水の蒸発伝熱が行なわれるので、伝熱面上でのスケールの発生が避けられなかったのに対し、本発明の構成では、伝熱面において蒸発室で発生した蒸気の凝縮伝熱が行なわれるので、被加熱側のブラインの圧力を、加熱側の蒸気2の温度の飽和圧力以上に保っておけば、容易にブラインの沸騰を防ぎ、スケールの発生を抑制することができる。
そのためには、造水装置の運転状態の如何に関わらず、いつでも熱交換手段の中のブラインが加熱側の蒸気2の温度の飽和圧力以上の圧力を保持できなければならない。
蒸発室と熱交換手段を分離し、その蒸発室を熱交換手段に比べて充分高い位置に配置することにより、その水頭差によって熱交換手段の中のブラインにスケールの生成を抑制するのに必要な圧力、すなわち、蒸気2の温度の飽和圧力以上の圧力を与えることができる。
より詳細に説明すれば、蒸発室で発生した蒸気1を機械的圧縮手段で圧縮した蒸気2の温度の飽和圧力は、蒸気1の圧力に対して一定の差圧を持つように設計・運用される。
一方、通常運転時の熱交換手段の中のブラインの圧力は、蒸発室の圧力に、熱交換手段から蒸発室までの管路抵抗と水頭差を加えてものであるから、管路抵抗と水頭差の合計が上記の一定の差圧以上であれば、通常は熱交換手段の内部でブラインの沸騰は起こらない。
しかし、ブラインの流れが何らかの原因で止まり、熱交換手段から蒸発室までの配管等の管路抵抗が零になる場合も考えられる。そのときには、その管路抵抗が無くなった分だけ熱交換手段中のブラインの圧力が低下し、ブラインの温度の飽和圧力以下になればブラインは沸騰する。
その場合でも蒸発室と熱交換手段との水頭差を蒸発室の圧力に加算した値が、上記の蒸気2の温度の飽和圧力以上になるように蒸発室を熱交換手段より高い位置に配置すれば、いかなる運転状態においても伝熱面におけるスケールの発生の問題を回避できる。
特に、蒸発室を大気圧付近、すなわち、100°C付近で運転する造水装置の場合には、65°Cから70°Cで運転される造水装置に較べてスケールの晶析速度が極めて大きくなるので、絶対にスケールを析出させないように、この水頭差を常に確保することが必要である。
さらに、本発明の蒸発室は、前記連絡管から当該蒸発室へ前記ブラインが流入する部分がノズルになっており、当該ブラインの保有する静圧の一部が効率よく水平方向の速度成分を有する動圧に変化するように、当該ノズルは、流路断面が流れに従って緩やかに縮小する形状を有し、かつ、水平から上方に0°から50°の間の方向を向いており、
当該蒸発室の底面が、当該ノズルを通って減圧された当該ブラインのフラッシュ蒸発がほぼ完了するまでの部分である水平の部分と、フラッシュ蒸発がほぼ完了した当該ブラインが当該蒸発器内の当該ノズルと反対の位置にあるブライン出口に向かう部分であって底面が水平から上方に20°から60°の間の角度で傾斜した部分、とを有する蒸発室である。
上述の通り循環手段により押されて熱交換手段を出たブラインは連絡管を通って上向きに流れて蒸発室に達する。この上向きに流れてきたブラインが蒸発室に入るところに、水平から上方に0°から50°の間の方向を向いた、流路断面が緩やかに縮小するノズルを設け、ブラインはこのノズルを通って蒸発室に入り、ブラインから水をフラッシュ蒸発させる。
ノズルの流路断面を緩やかに縮小させることにより、ブラインの保有する静圧の一部が効率良く動圧に変化し、ノズルの方向を水平から上方に0°から50°の間の角度とすることにより、ノズルを出たブラインは水平方向の速度成分を多く含むことになる。
ノズルを出たブラインは、激しくフラッシュ蒸発を行ないながら、水平方向の速度成分により蒸発室の中をノズルとは反対の位置にあるブライン出口に向かって流れる。蒸発室の底面をノズルに近い部分、すなわち、フラッシュ蒸発が行なわれている部分と、その先の部分に分け、前者の部分は水平の底面とし、後者の部分は水平から上方に20°から60°の角度で傾斜した底面とすることにより、ブラインの有する水平方向の速度成分は、ブラインがその傾斜した底面を駆け上がることにより効率よく静圧に再変換される。この変換された静圧は、その分だけ循環手段に要する動力を減少させる効果を有する。
この場合に、上記の底面の水平な部分と水平から上方に20°から60°の間の角度で傾斜した部分との間を、緩やかな曲面で繋ぐことがより望ましい。
二つの底面の繋ぎ部分におけるブラインの流れに対する抵抗が減少し、あるいは、その部分で渦流を起こすことによるエネルギーの損失を最小にして、さらに効率よく静圧への変換が図られ、その分だけ、さらに循環手段に要する動力を減少させる効果を有する。
さらに、本発明の蒸発室において、上記のノズルが、当該蒸発室の前記底面の水平な部分に面した壁の当該底面の近くに横方向に延びるスリット状の出口を有する形で設けられ、当該ノズルからの噴出方向が水平から20°から50°上方に向いていることが望ましい。
フラッシュ蒸発が効率よく行なわれると、蒸発室出口におけるブラインの温度と蒸発室内の飽和温度との差、すなわち、非平衡温度差(Non Equilibrium Temperature Difference。 以下「NETD」と言う。)が小さくなる。NETDが減少すれば、蒸気室出口のブラインの温度が下がり、それに見合って循環するブライン量あたりの製造される水の量が増加し、一方、熱交換手段においては温度差が増大してその伝熱面積が小さくできるので、循環に要する動力や設備費を低減できる。
小さな蒸発室でNETDを減少させるには、フラッシュ蒸発をする液体をでるだけ細粒化して蒸発室内に分散させたり、液体の流れに外乱を与えることにより蒸発に関与する実質面積を増やしたり、蒸発室内のブラインの液深を浅くしてフラッシュ蒸発可能な液深と全体の液深の比を大きくしたりする。
しかし、大容量の海水淡水化装置においては多量にブラインを扱うことから、細粒化して分散する等の手法を採用することは難しい。一方、ブラインの液深を浅くするには、前記の断面が緩やかに縮小するノズルを、蒸発室の一つの壁の幅を有効に使って、横方向に延びるスリット状の出口を有するように形成し、ブラインを薄い板状にして蒸発室に流入させればよい。
しかし、この場合に単に蒸発室の底面に沿ってブラインを流し込んだだけでは、蒸発室の底面を覆うブラインの上面の面積のみしか蒸発に関与しない。
そこで、そのノズルの噴出方向を水平から20°から50°上方に向けることにより、ブラインをノズルから斜め上方に噴出させ、噴出したブラインの板状の流れと蒸発室の底面との間に空間を作る。その結果、この噴出した板状の流れは上下2面に蒸発に関与する面積を持つことになり、それだけ蒸発が促進される。また、噴出した板状の流れの下面から発生した蒸気は、その板状の流れを突き破って上方に逃げるので、噴出した板状の流れに外乱を与えることになり、さらに蒸発は加速される。
蒸発が加速されることにより、単位床面積あたりの蒸発量が増大し、NETDは減少し、比較的小さい蒸発室の中で効果的にフラッシュ蒸発を行なうことができる。
また、本発明の蒸発室において、前記連絡管から前記ノズルに入る前記ブラインの圧力が、当該蒸発室内の圧力に比べて、「当該ブラインの温度に対応する飽和圧力」と「当該蒸発室内の圧力」の差圧の1.1から1.5倍の差圧分だけ高いことが望ましい。
前述した構成を取ることにより、熱交換手段は蒸発室より水頭差分だけ低い位置に配置されるので、両者の間は上下に結ぶ連絡管で繋がれる。
その連絡管の中を蒸発室に向かって上向きに流れるブラインは、位置が高くなるに従って静圧が減少する。また、その連絡管出口でブラインが保有していた静圧の一部がノズルの中で次第に動圧に変化し、その分さらにブラインの静圧が低下する。ブラインは熱交換手段により蒸発室の飽和温度以上の温度に加熱されているから、ノズルを出て蒸発室の圧力と等しい圧力になる前に、すなわち、ノズル内で、場合によっては連絡管の中を上向きに流れる間にも、ブラインの一部は蒸発を始める可能性がある。
連絡管の中、あるいは、ノズルの中のその出口より位置的に低い部分で蒸発が始まると、蒸発が始まった部分のブラインの見かけの比重量が変動することから、系全体のブラインの圧力が変動し、循環も不安定になる。
そこで、連絡管からノズルに入るブラインの圧力を当該蒸発室内の圧力に比べて、蒸発室に流入する「当該ブラインの温度に対応する飽和圧力」と「当該蒸発室内の圧力」の差圧の1.1から1.5倍の差圧分だけ高くなるようにノズルを設計することにより、ノズルの出口の近くに至って、はじめてブラインの静圧はその温度の飽和圧力となり、連絡管内では勿論、ノズル内でもその出口近傍を除いては蒸発を起こすことが無く、系全体のブラインの圧力が変動したり、それによって系全体が不安定になることを防ぐことができる。
さらに、本発明の蒸発室は、その蒸発室を上部と下部に二分割する壁を有し、その壁は前記ブライン出口の近傍において前記蒸気1を当該壁を通って当該蒸発室下部から当該蒸発室上部へ流通させる開口を有し、また、当該蒸発室上部において当該開口の反対側に当該蒸気1の出口を設け、当該開口を通って当該蒸気1が当該蒸発室下部から当該蒸発室上部に流れるときに、その方向を反転させることが望ましい。
以上に説明したように、本発明の蒸発室では、その一つの壁に設けられたスリット状のノズル出口から噴出したブラインはその水平方向の速度成分により反対側の壁に向かって流れながらフラッシュ蒸発を行なう。反対側の壁の付近にはブライン出口が設けられ、そのブライン出口を通ってブラインは蒸発室から循環手段へと送られる。
その蒸発室を上部と下部に二分割する壁を設け、上記の通り開口を設け、かつ、蒸気1の蒸発室からの出口をその開口とは反対の方向、言い換えれば、上下に二分割する壁を隔てて前記のノズルと同じ壁の側に設けることにより、フラッシュ蒸発により発生した蒸気は蒸発室下部ではブラインと同じ方向に流れ、開口においてその流れ方向を反転させて、蒸発室上部を逆方向に流れて出口へ向かう。この開口における180°の方向転換により、蒸気中に含まれているミストの多くの部分を慣性により分離することができ、機械的蒸気圧縮手段に行く蒸気中のミストを大幅に減少することができる。
また、本発明の蒸発室は、前記蒸発室上部に、前記その方向を反転させた蒸気1の流れを遮るほぼ縦型の複数のミストセパレータを設け、かつ、少なくとも当該蒸気1の流れの最上流側に設置された当該ミストセパレータに洗浄用スプレー装置を設けることが望ましい。
蒸発室の上部を横方向に流れる蒸気1の流れを遮る形で複数のミストセパレータを設けることにより、上記の180°の方向転換でも分離できなかったミストをさらに分離回収することができる。
一方、ミストセパレータに捕獲されたミストが、そのミストセパレータに付着したまま保持されていると、そこを通過する蒸気1の力により再飛散されて、再び蒸気1のミスト量を増加させてしまう。従来のMVCで多く用いられた縦方向に流れる蒸気を遮る形で配置される横型のミストセパレータでは、捕獲されたミストがスムースに排出されず、再飛散の問題があった。
そこで、本発明ではミストセパレータをほぼ縦型にすることにより、捕獲されたミストはミストセパレータに沿って流下しやすくし、再飛散を防ぐことができる。
また、少なくとも蒸気1の流れの最上流側に設置されたミストセパレータに洗浄用スプレー装置を設ける。
この装置によりスプレーされた洗浄水は、ミストセパレータに付着したミストを希釈し、スケールの防止を図るとともに、蒸気1を飽和蒸気にすることにより以下のような効果を有する。
すなわち、前述の通り蒸発室に流入するブラインは蒸発室の圧力の飽和温度より高温であり、また、蒸発室のブライン出口においてもNETD分だけ飽和温度より高温であるから、それに接していた蒸気1はわずかに過熱された状態にある。
この過熱された状態の蒸気が、残存したミストを含んだままミストセパレータや機械的蒸気圧縮手段に運ばれると、過熱温度によりミストは蒸発し、そこに含まれていたスケール成分がミストセパレータや機械的蒸気圧縮手段において析出しトラブルの基になる。
洗浄水をスプレーすることにより、蒸気1の過熱を解消し、ミストセパレータや機械的蒸気圧縮手段におけるスケールの析出を防止し、それに伴う問題を減少することができる。
また、スプレーされた洗浄水はミストセパレータのセパレータ効率の向上にも寄与する。
すなわち、MVCでこの洗浄用スプレー装置に使用される水は、一般に熱交換手段で凝縮した凝縮水である。この凝縮水は蒸発室の飽和温度より高い温度を維持しているので、スプレー装置を出るとともにその一部がスプラッシュ蒸発して、それ自身がミストを発生して、ミスト量を増大させる。
ミストセパレータは、細い針金をスポンジ状に固めたもの等を本体としている。その針金の間の狭い隙間をミストを含んだ蒸気が衝突を繰返しながら進み、保持していたミストを衝突によりその本体上に置き去ることによりミスト捕獲の効果を発揮する。そこで、ミストセパレータにある程度ミストが付着すると、狭い隙間がますます狭くなり、衝突が激しくなってミストが捕獲されやすくなる。
したがって、洗浄水のスプラッシュ蒸発によるミスト量の増大はセパレータ効率を向上させる。
スプレー装置を設けたミストセパレータのみでなく、その後段に設けられたミストセパレータにおいても、同じ理由によりセパレータ効率が向上する。
ミストセパレータをほぼ縦型にすることにより、洗浄に使用した水もミストセパレータに沿って上から下へ流下してミストセパレータの下部までの洗浄に役立つ。ほぼ縦型のミストセパレータの採用により、洗浄を終えた水も容易に排出される。
さらに、本発明の蒸発室は、前記洗浄用スプレー装置が、洗浄対象となる前記ミストセパレータをいくつかの部分に分割して、その分割した各部分を順番に洗浄できるようにするのが望ましい。
ミストセパレータをいくつかの部分に分割し順番に洗浄することにより、洗浄水の付着によるミストセパレータの圧力損失の増加を、洗浄中の一部の範囲にとどめるので、全体としての圧力損失の増加を緩和することができ、かつ、間欠的な洗浄により洗浄水の有効利用を図ることができる。
以上に述べた通り、本発明により、大容量MVCを実用化するのに必要な、伝熱面におけるスケール発生の問題を解決し、ブラインの循環に要する動力が少なく、系全体のブラインの圧力変動を押さえて安定した運転をもたらし、フラッシュ蒸発ができるだけ小さな蒸発室の中で効果的に、かつ、安定して円滑に行なわれ、かつ、蒸発室から機械的蒸気圧縮手段に送られる蒸気中のミストを極力除去して、機械的蒸気圧縮手段におけるスケール発生を防止できる蒸発室を提供できる。
第2図は、本発明に係る蒸発室の最良の形態である一実施例の断面図である。
第3図は、本発明に係る蒸発室に設けられるノズルの一実施例の説明図である。
第4図は、第3図に示すノズルの各点でブラインが有する流速、動圧、静圧、および、全圧の例を示す表である。
第5図は、本発明に係る蒸発室に設けられる洗浄用スプレー装置の一実施例の説明図である。
第6図は、従来から使われてきたMSFの説明図である。
第7図は、従来から使われてきたTVCの説明図である。
第8図は、従来から使われてきたMVCの説明図である。
第9図は、硫酸カルシウムの溶解度曲線である。
蒸発室3には、熱交換手段4により蒸発室3の飽和温度以上に加熱されたブライン31が、ノズル5を通って導入される。ノズル5により蒸発室の圧力まで減圧され、ブラインから水がフラッシュ蒸発して蒸気が発生する。発生した蒸気(蒸気1)はブロア、コンプレッサ等の機械的蒸気圧縮手段6により圧縮され、蒸気1に比べて高温高圧の蒸気(蒸気2)になる。蒸気2は熱交換手段4に導かれブライン33と熱交換することにより凝縮して生産水36となる。
熱交換手段4の伝熱面7全体を伝熱効率の高い凝縮伝熱状態に保つのが望ましいので、熱交換手段4に入る蒸気2が飽和状態になるように、蒸気2を機械的蒸気圧縮手段6から熱交換手段4に送る配管8の途中で生産水36の一部37を注入するのが良い。注入する水の量は、蒸気温度調整手段(図示されていない)により調整される。
蒸発室3に送り込まれたブライン31のうち、フラッシュ蒸発を終えたブライン32の大部分33は、補給された海水38と共にポンプ等の循環手段9により熱交換手段4に戻され、残りの部分34は海水予熱器11において補給される海水を予熱した後、ブライン排出ポンプ12により排出される。
生産水36もまた、海水予熱器11において補給される海水38を予熱し、生産水ポンプ14、15により必要とされる場所に送水される。補給される海水38は、海水ポンプ17により系内に送り込まれ、海水予熱器11において、排出されるブライン34および生産水36より熱を受け取ったのち、循環するブライン33に混入される。
なお、図では、海水予熱器11として、チューブ・シェル型の熱交換器を想定して表示しているが、それに替えてプレート型の熱交換器やMSFを用いることも当然考えられる。
本発明では、以上説明した系統にしたがって機器を配置するにあたり、蒸発室3を熱交換手段4より高い位置に配置することにより、その水頭差Hを利用して、熱交換手段4の中のブラインの圧力を蒸気2の温度の飽和圧力以上に保つことにより、ブラインの沸騰を防ぎスケールの生成を抑制する。
必要な水頭差Hは次のように選定する。
機械的圧縮手段6で圧縮した蒸気2の温度の飽和圧力は、蒸気1の圧力に対して一定の差圧を持つように設計・運用される。一方、熱交換手段4の中のブラインの圧力は蒸気室3の圧力にそこに至る間の管路抵抗と水頭差を加えたものであるから、管路抵抗と上記水頭差の合計が上記の「一定の差圧」以上であれば、通常の運転状態においては熱交換手段4の中でのブラインの沸騰は起こらない。
しかし、ブラインの流れが何らかの原因で止まり、熱交換手段4を出た後の配管やノズルでの管路抵抗が零になる場合も考えられる。そのときには、その管路抵抗が無くなった分だけ熱交換手段4内のブラインの圧力が低下することとなるので、熱交換器4の中でのブラインの沸騰が起こりやすい状態になる。
この状態でも、蒸発室3と熱交換手段4との水頭差Hを蒸気室の圧力に加算した値が、蒸気2の温度の飽和圧力以上となるように、蒸発室3を熱交換手段4より高い位置に配置しておけば、ブラインの循環が停止した場合においても、熱交換手段4の中のブラインの圧力は、蒸気2の温度の飽和圧力以上に保持され、ブラインの沸騰は避けられ、スケールの発生を抑制することができる。
なお、熱交換手段4の中のいずれの部分においても確実に沸騰を起こさせないためには、水頭差Hとして、図に示すように熱交換手段4の上面と蒸発室3の下面との水頭差で考えることが必要である。
なお、この様に蒸発室3と熱交換手段4を上下に高さを変えて配置することにより、熱交換手段4と蒸発室3を繋ぐ連絡管18の中を、ブラインは上向きに流れることとなる。
第2図は、蒸発室3の最良の形態の一実施例の断面図を示す。第1図で説明したように、加熱されたブライン31は連絡管18を通って蒸発室3の入口であるノズル5に至り、蒸発室3内に噴射されると、ブライン39から水がフラッシュ蒸発して蒸気が発生する。
ノズル5は、その流路断面が緩やかに縮小する形状を有し、ブライン31の保有する静圧の一部を効率よく動圧に変えるので、その動圧に相当する速度でブラインは蒸発室3の中に噴射される。
また、ノズル5の噴出方向αは水平から上方に0°から50°の間を向いているので、噴射されたブラインは大きな水平方向の速度成分を有し、その水平方向の速度成分により蒸発室3のノズル5とは反対の壁近くに位置するブライン出口24に向かって流れる。
蒸発室3の底面は、ノズル5に近い部分、すなわち、フラッシュ蒸発が行なわれている部分25は水平で、その先の部分26は水平から上方に20°から60°の角度βを持って傾斜している。
フラッシュ蒸発を終えたブラインが有する水平方向の速度成分は、傾斜した底面部分26をブラインが駆け上がることにより、効率よく静圧に再変換される。その結果、図に示すようにブライン出口24においては、ブラインの液面がhだけ上昇することになり、この水頭差分だけブラインの循環手段に要する動力が節約できる。
一つの試算によれば、第1図のブライン循環手段9の所要揚程、すなわち、ブラインが循環手段9を出て熱交換手段4,連絡管18、ノズル5、蒸発室3を通って循環手段9に戻るまでの管路抵抗は約6mである。
上記の手段により、後述する第3図のC点でブラインが有する動圧、すなわち、蒸発室3内に噴射されたブラインの有する動圧の半分の1.25mが静圧に再変換されれば、約20%の循環動力の節減になる。
ちなみに、傾斜した底面部分26を設けることなく、蒸発室3の底面全体を平面にすると、ノズル5から噴出したブラインの有する動圧の大部分は、ブラインの流れの乱れや渦流を作ることにより浪費されてしまう。
なお、水平の底面部分25と傾斜した底面部分26との間を、緩やかな曲面27で繋ぐことが望ましい。二つの底面部分の繋ぎ部分においてブラインの流れに対する抵抗が減少し、あるいは、その部分で渦流を起こすことによるエネルギー損失を最小にして、さらに効率よく静圧への変換が図られ、その分だけ、さらに循環動力を節減することができる。
第2図の実施例において、ノズル5の噴射方向αは水平ではなく、斜め上方、角度にして水平から20°から50°上方に向けることにより、ノズル5から板状を成して噴射されるブライン39はその噴射方向に向かって放出され、フラッシュ蒸発を行ないながら放物線を描いて進んでいき、ブライン39と底面25の間には空間ができる。
この噴出したブライン39の板状の流れは、その上の面からフラッシュ蒸発により蒸気41を発生させるだけでなく、その下の面からも蒸気42を発生させる。すなわち、単に蒸発室の底面に沿ってブラインを板状に噴出させた場合はその上面しか蒸発に関与しないのに対し、上面と下面、あわせて2倍の蒸発に関与する面積を持つことになり、それだけ蒸発が促進される。
さらに、板状のブライン39の下面から発生した蒸気42は、板状の流れ39を随所で突き破る蒸気の流れ43を作って上方へ逃げるので、板状の流れ39は大きく乱され、さらに蒸発が加速される。
蒸発が促進されることにより、蒸発室の単位床面積あたりの蒸発量が増大し、NETDは減少し、比較的小さい蒸発室の中で効果的にフラッシュ蒸発を行なうことができる。
第3図は、蒸発室3に設けられるノズル5の一実施例の説明図である。
前述した通り、大容量の海水淡水化装置では多量のブラインを扱うことから、蒸発室へのブラインの入口としては、蒸発室の一つの壁の幅を有効に使って横方向に延びるスリット状の出口を有する形状を採用することが望ましい。そこで、ノズル5は、蒸発室3の前壁21の幅一杯の幅を持ち、蒸発室3の底面22に近接して延びるスリット状の出口24を有する。
連絡管18により送り込まれるブライン31はノズル5に入り、その入口のA点、中間部のB点、出口24のC点と、次第に流路断面が縮小するにつれてブラインの流速は大きくなり、その動圧の増加分だけブラインの静圧は減少し、C点において蒸発室3の圧力と等しくなる。
第4図に、蒸発室3がほぼ大気圧の1.02barで運用され、ブライン31の温度と蒸発室の飽和温度の差、すなわち、フラッシュ温度差が5degCの場合の、ノズルの各点でブラインが有する流速(m/s)、動圧(m)、静圧(m)、および、全圧(m)の一例を示す。これは、ノズルのA点、B点、C点における流路の幅は変わらず、高さが3:2:1の比率を持ったノズルの計算例であり、C点、すなわち、蒸発室の静圧を0mとして表示している。
上記のフラッシュ温度差5degCは圧力差0.195bar(1.95m)に相当し、したがって、蒸気室の圧力に比べて、1.95m以上の圧力がかかっていればブラインはフラッシュしない。
この計算結果によれば、A点において2.22m、B点において1.88mの圧力が、それぞれかかっているので、A点においてはフラッシュ蒸発は起こらず、B点においてはわずかにフラッシュ蒸発が生じる結果となっている。
以上の計算結果から分かるように、フラッシュ温度差に相当する圧力差、すなわち、「流入するブラインの温度に対応する飽和圧力」と「蒸発室内の圧力」の圧力差(上記の場合の1.95bar)以上に、連絡管18からノズル5に入るブラインの圧力が蒸発室3内の圧力に比べて高くなるようにノズルを設計することにより、ブラインの蒸発をノズル内にとどめることができ、上向きに流れる連絡管の途中で蒸発が始まるのを防ぎ、蒸発が始まることによるブラインの見かけ比重量の変動に伴う系全体のブラインの圧力の変動やブライン循環の不安定を回避できる。
実際には、フラッシュ温度に相当する圧力差そのものを蒸発室の圧力に加算するのではなく、余裕を見てその1.1倍以上の圧力差をあたえるのが望ましく、また、むやみにこの圧力差を大きくしても、ブラインの循環に必要なエネルギーを浪費するだけであるから、上限はフラッシュ温度差に相当する圧力の1.5倍とすることが望ましい。
さらに、第2図に示された蒸発室3は、その内部を上下と下部に二分割する壁51を有している。その壁51はブライン出口24の近傍に開口52を有している。フラッシュ蒸発により発生した蒸気41、42、43は、一旦 蒸発室下部53の中をブライン39の流れに沿ってブライン出口24方向に流れ、この開口52を通って反転しながら蒸気室上部54に流れこみ、さらに、蒸気室上部54に設けられたミストセパレータ61、62を通って、開口52とは反対の方向に設けられた蒸気出口55に至り、機械的蒸気圧縮手段に送られる。
この開口52における180°の方向転換により、蒸気中に含まれているミストの大部分を慣性により分離することができ、機械的蒸気圧縮手段に行く蒸気中のミストを大幅に減少することができる。
なお、壁51のノズル5近傍の部分51aは、ノズル出口上部から始まる斜面とし、蒸発室下部53の流路断面がノズル出口からゆっくりと広がるようにするのが望ましい。また、開口52の近くには、適宜ガイドベーン56をおくことが望ましい。いずれも、発生した蒸気の流れをスムースにし、機械的蒸気圧縮手段の負荷の低減に寄与できる。
本実施例では、蒸気室上部54に、開口52においてその方向を反転させた蒸気の流れを遮る形で、ほぼ縦型のミストセパレータが2台61、62が設けられており、その蒸気の上流側にあるミストセパレータ61には、洗浄用のスプレー洗浄装置63が設けられている。
この様に蒸気の流れを遮る形で複数のミストセパレータを設けることにより、開口52における180°の方向転換でも分離できなかったミストをさらに回収することができる。
また、ミストセパレータをほぼ縦型にすることにより、捕獲されたミストはミストセパレータに沿って流下しやすくなり、ミストセパレータの下部に設けた排出路64から容易に排出することが可能であり、従来のMVCで用いられた横型のミストセパレータ124(第8図参照)のように捕獲されたミストがスムースに排出されず再飛散するという問題が解消できる。
又、上流側のミストセパレータ61に洗浄用スプレー装置63を設けることにより、前述したように、ミストセパレータ61に付着したミストを希釈してスケールの防止を図ると共に、ミストセパレータを通過する蒸気の過熱を解消してミストセパレータ61、62や機械的蒸気圧縮手段におけるスケールの析出に伴う問題を減少することができる。また、ミストセパレータのセパレータ効率向上にも寄与する。
なお、ミストセパレータ61がほぼ縦型であることから、洗浄用スプレー装置63によりミストセパレータ61の上部にスプレーされた洗浄水は、ミストセパレータに沿って上から下へと流下し、その下部まで洗浄し、排出路64から容易に排出される。
なお、第2図では、ミストセパレータを2台設け、その上流側の1台に洗浄用のスプレー装置を設けた例を示したが、ミストセパレータや洗浄用スプレー装置の台数を増やして、さらにセパレート効率の向上を図ることもできる。
第5図では、洗浄用スプレー装置63が、その洗浄対象であるミストセパレータ61をいくつかの区分、図の場合は4区分、に分割して、その分割した各部分を順番に洗浄できるようにしている。
すなわち、洗浄水の噴射部分を4個のノズル65a、65b、65c,66dに分け、それぞれのノズルに至るラインに弁66a、66b、66c、66dを設けて、それらの弁を個別に開閉するように制御装置67で制御を行なう。
図では、弁66bのみが開で、他の弁が閉の状態を示しており、ノズル65bのみから洗浄水がスプレーされ、縦型のミストセパレータ61に沿って流下しながら、その下部まで洗浄しているところである。
洗浄しているのは、ノズル65bの下の部分のみに限られているので、蒸気1は圧力損失の大きいこの部分を避けて流れる。その結果、洗浄によるミストセパレータ61の圧力損失の増加を全体としては緩和することができ、かつ、間欠的な洗浄により洗浄水の有効利用を図ることができる。
Claims (7)
- 蒸気室の圧力の飽和温度以上に加熱されたブラインを導入し、当該ブラインから水をフラッシュ蒸発させて蒸気を発生させる当該蒸発室と、
その発生した蒸気(以下「蒸気1」という。)を圧縮する機械的蒸気圧縮手段と、
その圧縮された蒸気(以下「蒸気2」という。)を凝縮させることにより当該蒸発室に送るブラインを加熱する熱交換手段と、
当該蒸発室でフラッシュ蒸発を終えたブラインを、補給された海水と共に当該熱交換手段に返す循環手段と、
当該熱交換手段を出たブラインを蒸発室に戻す連絡管とを有する機械的蒸気圧縮法による単段フラッシュ蒸発法造水装置に用いられる蒸発室であって、
ブラインの循環が停止した場合でも、当該熱交換手段内の当該ブラインの圧力を、当該蒸気2の温度の飽和圧力以上に保持するために、当該熱交換手段に当該蒸気2の温度の飽和圧力と蒸気1の圧力の差以上の水頭差を与えるように、当該熱交換手段より高い位置に配置された蒸発室。 - 第1項に記載の蒸発室であって、
前記連絡管から当該蒸発室へ前記ブラインが流入する部分がノズルになっており、当該ブラインの保有する静圧の一部が効率よく水平方向の速度成分を有する動圧に変化するように、当該ノズルは、流路断面が流れに従って緩やかに縮小する形状を有し、かつ、水平から上方に0°から50°の間の方向を向いており、
当該蒸発室の底面が、当該ノズルを通って減圧された当該ブラインのフラッシュ蒸発がほぼ完了するまでの部分である水平の部分と、フラッシュ蒸発がほぼ完了した当該ブラインが当該蒸発器内の当該ノズルと反対の位置にあるブライン出口に向かう部分であって底面が水平から上方に20°から60°の間の角度で傾斜した部分、とを有する蒸発室。 - 第2項に記載の蒸発室であって、前記ノズルが、当該蒸発室の前記底面の水平な部分に面した壁の当該底面の近くに横方向に延びるスリット状の出口を有する形で設けられ、当該ノズルからの噴出方向が水平から20°から50°上方に向いている蒸発室。
- 第1項から第3項のいずれかに記載の蒸発室であって、前記連絡管から前記ノズルに入る前記ブラインの圧力が、当該蒸発室内の圧力に比べて、当該ブラインの温度に対応する飽和圧力と当該蒸発室内の圧力の差圧の1.1から1.5倍の差圧分だけ高い蒸発室。
- 第2項から第4項のいずれかに記載の蒸発室であって、その蒸発室を上部と下部に二分割する壁を有し、その壁は前記ブライン出口の近傍において前記蒸気1を当該壁を通って当該蒸発室下部から当該蒸発室上部へ流通させる開口を有し、また、当該蒸発室上部において当該開口の反対側に当該蒸気1の出口を設け、当該開口を通って当該蒸気1が当該蒸発室下部から当該蒸発室上部に流れるときに、その方向を反転させる蒸発室。
- 第5項に記載の蒸発室であって、前記蒸発室上部に、前記その方向を反転させた蒸気1の流れを遮るほぼ縦型の複数のミストセパレータを設け、かつ、少なくとも当該蒸気1の流れの最上流側に設置された当該ミストセパレータに洗浄用スプレー装置を設けた蒸発室。
- 第6項に記載の蒸発室であって、前記洗浄用スプレー装置が、洗浄対象となる前記ミストセパレータをいくつかの部分に分割して、その分割した各部分を順番に洗浄する蒸発室。
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