JP4589893B2 - 洗濯機 - Google Patents

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Description

本発明は、水平又は傾斜した回転軸回りに回転駆動される回転槽を備えた洗濯機に関する。
従来より、この種の洗濯機は、ドラムを水槽内に収容し、この水槽を外箱内に収容し、この外箱の前面に設けられた外開口部と、上記水槽の前側端部に設けられた内開口部とを通して、被洗濯物をドラムに出し入れするように形成されている。
上記洗濯機としては、上記外開口部と内開口部とを、概ね筒状のベローズで直接連結したものがある。この洗濯機は、外開口部に設けられた扉が閉じたとき、この扉の縁部にベローズの端部が密着して、水槽内の水が外箱外に漏れることを防止している。また、上記ベローズによって、水槽内の水が水槽と外箱との間に漏れることを防止している。しかしながら、この洗濯機は、ドラムの回転駆動に伴って水槽に生じる振動が、ベローズを介して外箱に伝達されるので、この外箱の振動と騒音が大きいという不都合がある。また、上記ベローズが、水槽から受ける振動や、脱水時に高速回転する被洗濯物との摩擦等に起因して劣化し易く、水漏れを生じ易いという問題がある。
そこで、従来、ベローズを削除して外開口部と内開口部とを離隔することにより、水槽から外箱への振動の伝達を防止し、また、ベローズの劣化に伴う不都合を防止する洗濯機が提案されている(例えば、特開2004−329778号公報参照)。この従来の洗濯機は、外箱の底面の前側と後ろ側に設けられたサスペンションによって、水槽の前側下部と後ろ側下部とを支持している。これにより、ドラムの回転駆動に伴う水槽の前側部分の振れ回りや、ドラムへの被洗濯物の投入に伴う水槽の姿勢変化を低減するようにしている。
しかしながら、上記従来の洗濯機は、振動や騒音の低減効果が不十分になり易いという不都合がある。詳しくは、上記水槽の前側下部を支持するサスペンションは、水槽からの振動の大きさを低減するが、このサスペンションの取り付け位置に近い外箱の前側部分に振動を伝え易い。したがって、外箱の前面パネルや、この前面パネルに取り付けられた外扉を振動させて騒音を生じ易くて、振動や騒音の低減効果が不十分になり易い。
特開2004−8545号公報
そこで、この発明の課題は、振動や騒音の低減効果が確実に得られる洗濯機を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の洗濯機は、
前側に開口部を有し、後ろ側に背面を有する外箱と、
上記外箱内に配置される水槽と、
上記水槽内に配置され、水平又は前側から後ろ側に向かうにつれて下るように傾斜した回転軸回りに回転駆動される回転槽と、
上記外箱内に配置されて上記水槽を支持する支持部であって、この支持部に作用する荷重の重心の前後方向位置と略同じ前後方向位置に配置された支持部と、
上記水槽の上記支持部で支持される支持位置よりも後ろ側に接続され、この水槽の接続部分を下方に向かって付勢する第1付勢部材とを備えていることを特徴としている。
上記構成によれば、上記支持部が、上記荷重の重心の前後方向位置と略同じ前後方向位置に配置されていることにより、この支持部で支持された水槽内の回転槽が安定して回転駆動される。したがって、この回転槽の回転駆動に伴う水槽の振動が効果的に低減される。さらに、上記支持部が上記荷重の重心の前後方向位置と略同じ前後方向位置に配置され、かつ、上記第1付勢部材が上記水槽の支持位置よりも後ろ側に接続されているので、上記水槽の振動が外箱の前側部分に伝わり難い。このように、水槽の振動を低減できる上に、水槽から外箱に振動が伝わり難くできるので、外箱の振動や騒音を従来よりも大幅に低減できる。
また、上記第1付勢部材によって、上記回転槽内に被洗濯物が投入されることによる水槽の姿勢の変化を効果的に低減できる。
ここで、上記第1付勢部材は、一端が水槽の下部に接続されていると共に、他端が外箱の底面に接続されているのが好ましい。これにより、上記水槽の支持位置よりも後ろ側の部分を、上記外箱の底に向かって効率よく付勢できる。さらに、第1付勢部材の他端を外箱の側面に接続するよりも、上記外箱の振動を少なくできる。また、第1付勢部材の他端を外箱の側面に接続する場合のような外箱の補強が不要であるので、外箱の構造を簡易にできて、製造コストの削減ができる。
なお、本発明において、前後方向とは、外箱の外開口部が形成される前面と、この外箱の前面と対向する背面との間を最短距離で結ぶ方向であって、水平面と平行の方向をいう。
また、上記支持部によって支持される荷重は、上記水槽、内扉及び回転槽の荷重に限られず、例えば上記回転槽を駆動する駆動装置の荷重等、水槽と一体に振動する部材の荷重を含んでもよい。
また、上記洗濯機は、上記水槽内に加熱空気を供給して回転槽内の被洗濯物を乾燥させる乾燥装置を備えてもよい。この場合、上記支持部は、上記乾燥装置の荷重を支持してもよい。
また、上記支持部は、例えばダンパーや弾性部材を用いた緩衝装置を含んで形成することにより、水槽から外箱に伝わる振動を低減するのが好ましい。
一実施形態の洗濯機は、上記外箱の外開口部と上記水槽の内開口部は、互いに連結される連結部材が無くて、互いに離隔している。
上記実施形態によれば、上記水槽から外箱へ振動が直接伝達することが、確実に防止される。
一実施形態の洗濯機は、上記第1付勢部材は、上記水槽の幅方向の略中央に接続されている。
上記実施形態によれば、上記第1付勢部材は、幅方向において、上記水槽内の回転槽内に投入される被洗濯物の位置と概ね同一の位置に、上記水槽に対して付勢力を与えるので、上記被洗濯物が投入されたときの水槽の姿勢変化を効果的に低減できる。
なお、上記幅方向とは、上記前後方向と略直角であって、水平面と平行の方向をいう。換言すれば、上記幅方向は、上記外箱の前面と背面との間に連なる2つの側面の間を最短距離で結ぶ方向のうち、水平面と平行の方向をいう。
一実施形態の洗濯機は、上記第1付勢部材は、上記水槽の幅方向の両側に接続されている。
上記実施形態によれば、上記水槽の幅方向の両側に付勢力を与えることにより、この水槽の鉛直方向の姿勢の変化に加えて、幅方向の姿勢の変化をも低減できる。
一実施形態の洗濯機は、上記水槽の上部に接続されていると共に、上記第1付勢部材のバネ定数よりも小さいバネ定数を有し、上記水槽の上部を前後方向に付勢する第2付勢部材を備える。
上記実施形態によれば、上記第2付勢部材によって、上記回転槽の回転駆動に伴う水槽の振動を更に効果的に低減できる。ここで、上記第2付勢部材は第1付勢部材よりもバネ定数が小さいので、上記水槽が振動する際、この水槽から第2付勢部材に作用する力は、上記水槽から第1付勢部材に作用する力よりも小さい。したがって、上記第2付勢部材を外箱の例えば天面に接続した場合においても、この第2付勢部材から外箱に伝わる力が小さいので、この外箱の振動が増大することを防止できる。その結果、上記外箱の振動対策の補強を最小限にしつつ、この外箱の振動を低減することができる。
なお、上記バネ定数とは、付勢部材の単位変形量に対する付勢力の変化量をいい、付勢部材をバネに限定することを意味しない。
一実施形態の洗濯機は、上記支持体に作用する荷重は、定格量の被洗濯物の荷重を含む。
上記実施形態によれば、上記回転槽内に定格量の被洗濯物が投入された状態で、上記支持体に作用する荷重の前後方向位置と、上記支持体の前後方向位置とが略同じになる。したがって、被洗濯物が投入された状態の回転槽が安定して回転駆動され、その結果、現実に運転が行われる状態で上記水槽に生じる振動を低減できる。
本発明の洗濯機によれば、上記水槽を支持する支持部が、この支持部に作用する荷重の重心の前後方向位置と略同じ前後方向位置に配置されていることにより、回転槽の回転駆動に伴う水槽の振動を低減でき、さらに、上記水槽の支持位置よりも後ろ側に接続された第1付勢部材が、この水槽への接続部分を外箱の底側に付勢することにより、外箱の前側部分への振動の伝達を防止しつつ水槽の姿勢の変化を低減できる。
また、上記第1付勢部材は、幅方向において水槽の略中央に付勢力を与えることにより、上記水槽内の回転槽内に被洗濯物が投入されたとき、この水槽の姿勢の変化を効果的に低減できる。
また、上記第1付勢部材は、水槽の幅方向の両側に付勢力を与えることにより、この水槽の鉛直方向の姿勢の変化に加えて、幅方向の姿勢の変化をも低減できる。
また、上記支持体に作用する荷重は、定格量の被洗濯物の荷重を含むので、被洗濯物が投入された状態の回転槽が安定して回転駆動され、その結果、現実に運転が行われる状態で上記水槽に生じる振動を低減できる。
以下、本発明の洗濯機を図示の実施形態により詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態の洗濯機としてのドラム式洗濯乾燥機を示した斜視図である。図2は、上記ドラム式洗濯乾燥機を、幅方向の中央を通って前後方向に延びる鉛直面で切断して、左側から見た断面図である。図3は、上記ドラム式洗濯乾燥機を前側から見た主要部の透視図である。
このドラム式洗濯乾燥機は、概ね直方体の外箱1を備える。この外箱1は、底盤11と、この底盤11上に形成された胴部12と、この胴部12の上端に取り付けられた天板13とを有する。上記胴部12は、前面121、左側面122、右側面123及び背面124を含んでいる。
このドラム式洗濯乾燥機において、外箱1の左側面122と右側面123との間の最短距離を結ぶ方向であって水平面と平行な方向(矢印Wで示す方向)を、幅方向という。また、外箱1の前面121と背面124との間の最短距離を結ぶ方向であって水平面と平行な方向(矢印Dで示す方向)を、前後方向という。
外箱1の前面121には略矩形の外開口部15が形成されており、この外開口部15を開閉する外扉2が外箱1の前面121に取り付けられている。外扉2は前面側から見て略矩形状を有し、この外扉2の両側かつ外箱1の内側に配置されたレールに沿って、上下方向にスライド可能に形成されている。上記外扉2の上端には、図示しない把手と、この把手に連結された図示しない係合爪が設けられている。把手に上向きの力が与えられ、この外扉2が上方にスライドされて最上位置に達したとき、上記係合爪が外箱1の係合部材に係合して、この外扉2が外開口部15を閉じた状態を保持するようになっている。一方、把手に下向きの力が与えられると、この把手に連結された係合爪が駆動され、この係合爪と係合部材との係合が解除される。これにより、外扉2が自重で下方にスライドして、外開口部15が開放されるようになっている。外扉2の中央には透明板が取り付けられており、この透明板を通して内部が視認可能になっている。
外箱1の上部の前面121には、洗剤ケース16が引き出し可能に収納されており、この洗剤ケース16内に、洗剤、漂白剤および柔軟剤を投入するようになっている。
また、外箱1の前面121の上部には、洗剤ケース16と並んで、操作ボタンや表示パネルを有する操作部17が設けられている。この操作部17に電気的に接続された図示しない制御装置が、外箱1内に収納されている。この制御装置によって、操作ボタンで入力された内容に沿った運転を行うように各部の動作を制御し、また、運転状態を表示パネルに表示するようになっている。
外箱1内には、回転軸A回りに回転自在に配置された回転槽としてのドラム3と、このドラム3を収容する水槽4とが配置されている。このドラム3と水槽4は、いずれも有底の円筒形状を有し、底部を外箱1の背面側に向けて配置されている。水槽4の底部の外側面に、上記ドラム3を回転駆動するモータ5が配置されている。水槽4は、外箱1の底盤11上に設けられた支持部としてのサスペンション6によって支持されている。また、水槽4は、下部に第1付勢部材としての引張コイルバネ7が接続されていると共に、上部に第2付勢部材としての上部コイルバネ8が接続されている。サスペンション6、引張コイルバネ7及び上部コイルバネ8は後に詳述する。
ドラム3は、回転軸Aが前側から後ろ側に向かうにつれて下るように傾斜しており、この傾斜角度は水平方向に対して5°以上30°以下の間に設定されている。このドラム3は、水槽4の中心軸に対して上方に偏心して配置されている。なお、ドラム3の回転軸Aは水平であってもよい。
ドラム3の前側の端部にはドラム開口部31が形成されており、このドラム開口部31は、水槽4の内開口部41と外箱1の外開口部15に連なっている。このドラム開口部31は内開口部41と略同一の径を有し、ドラム開口部31の縁を取り囲むように環状のバランサ32が取り付けられている。
ドラム3の周面部の全域には複数の小孔33が設けられており、この小孔33を通して洗濯水やすすぎ水や乾燥空気が流通するようになっている。なお、図2では、一部の小孔33のみを図示しており、他の小孔33の図示は省略している。ドラム3の内周面には、回転軸と略平行に延在すると共に回転軸に向かって突出する複数のバッフル34が設けられている。ドラム3の底部の外側面には駆動軸35が固定されており、この駆動軸35の先端にモータ5が連結されている。
水槽4は、ドラム3と同様に、中心軸が前側から後ろ側に向かうにつれて下るように傾斜しており、この傾斜角度は水平方向に対して5°以上30°以下の間に設定されている。なお、水槽4の中心軸は水平であってもよい。
この水槽4の前側の端部には略円形の内開口部41が形成されており、この内開口部41を開閉する略円盤状の内扉42が、図示しないヒンジで回動自在に水槽4の前側端部に取り付けられている。この内扉42の上記ヒンジと反対側に、把手43と、この把手43に連結された図示しない係合爪が設けられている。この内扉42が閉じたとき、上記係合爪が水槽4の前側端部に設けられた係合部材に係合して、内扉42が内開口部41を閉じた状態を保持するようになっている。一方、上記把手43が前方に揺動されると、この把手43に連結された係合爪が駆動され、係合爪と係合部材との係合が解除されて、内扉42が回動可能になる。この内扉42は、外箱1の外開口部15が開放されたとき、全開位置まで回動して内開口部41を開放するようになっている。内扉42の中央には、ドラム3側に向かって凸状に突出した円盤状のガラス窓が設けられており、このガラス窓を通してドラム3内が視認可能になっている。
水槽4の内開口部41の縁には、ゴムや軟質樹脂等の弾性体で形成されたパッキン44が設けられている。内扉42が閉じたとき、内扉42の縁部がパッキン44に密着して、水槽4内の洗濯水等の漏れを防止している。
水槽4の内開口部41と外箱1の外開口部15とは、ベローズのような直接連結する部材が無くて、互いに離隔している。
水槽4の底部の外側面に、上記ドラム3の駆動軸35に連結されたモータ5が取り付けられている。このモータ5は、駆動軸35に固定されて永久磁石を含むロータ51と、このロータ51を取り囲むと共にコイルを含むステータ52を有し、上記ロータ51及びステータ52をモータケース53で覆っている。このモータ5は、制御装置によって供給電力が制御されて、ロータ51の回転数が可変制御されるようになっている。
さらに、水槽4には、図示しない乾燥装置と、温水装置と、給水装置と、排水装置と、循環装置とが取り付けられている。
乾燥装置は、熱交換器と、ヒータと、ファンとを有する。この乾燥装置は、乾燥工程において、水槽4内の湿り空気を吸引して水分を凝縮除去した後、この空気を過熱して高温空気にして水槽4内に戻すことにより、ドラム3内の被洗濯物を乾燥させるようになっている。
温水装置は、乾燥装置のヒータとファンを用いて、洗濯及びすすぎ工程において、水槽内の洗濯水又はすすぎ水を吸引し、この洗濯水又はすすぎ水を加熱して、高温の洗濯水又はすすぎ水を水槽4内に戻すように形成されている。これにより、洗濯工程又はすすぎ工程の効率化を行うようになっている。
給水装置は、洗剤ケース16に投入された洗剤や柔軟剤を含んだ洗濯水やすすぎ水を、水槽4内に供給するように形成されている。洗剤ケース16には、水道蛇口に接続された水道水供給路から水道水が供給され、また、風呂水ポンプに接続された風呂水供給路から風呂水が供給される。水道水供給路には給水弁が介設され、この給水弁の開度を制御して、洗濯水又はすすぎ水の供給量を制御するようになっている。また、風呂水ポンプの動作を制御して、洗濯水又はすすぎ水の供給量を制御するようになっている。
排水装置は、水槽4に設けられた排水口に連なる排水路と、この排水路に介設された排水弁を有し、上記排水弁を切り替えて、水槽4内の洗濯水やすすぎ水を排出するようになっている。
循環装置は、排水路に一端が接続されていると共に、水槽4の上部に開口した循環ノズルに他端が接続された循環水路と、この循環水路に介設された循環ポンプを有する。この循環装置は、上記排水弁が閉じた状態で、水槽4内の洗濯水やすすぎ水を、排水口から吸引して循環ノズルから再び水槽4内に供給することにより、ドラム内の被洗濯物に洗濯水やすすぎ水を効率的に晒すようにしている。
水槽4の下部には、カウンターウェイト47が取り付けられている。詳しくは、このカウンターウェイト47は、円筒形状の水槽4の周面部であって、外箱1の前面121に近く、かつ、底盤11に最も近い位置に取り付けられている。このカウンターウェイト47によって、サスペンション6に作用する荷重の重心Gを所定位置に調節している。
上記ドラム3、水槽4、内扉42、モータ5、及び、水槽4に取り付けられた各装置の荷重が、水槽4を支持するサスペンション6に作用する。
サスペンション6は、図2に示すように、前後方向において、このサスペンション6に作用する荷重の重心Gの位置と略同じ位置に配置されている。詳しくは、側面から見て、上記ドラム3、水槽4、内扉42、モータ5、及び、上記水槽4に取り付けられた各装置の荷重の重心Gから鉛直下方に底盤11に向かう仮想線と上記サスペンション6の支持方向軸とが一致するように、上記サスペンション6が取り付けられている。
サスペンション6は、図3に示すように、幅方向の両側に2つ設けられている。この2つのサスペンションは、水槽4に固定された上端よりも、底盤11に固定された下端が幅方向の外側に位置して、前側から見てハ字状をなしている。
サスペンション6は、下端が底盤11に連結されたダンパー61と、このダンパー61から突出するロッドの回りに配置された圧縮コイルバネ62とを有する。上記ダンパー61は、シリンダと、このシリンダ内に収納されて上記ロッドの下端に連結されたピストンと、このピストンの外周面に設けられてシリンダの内周面に接触するウレタンシートを有する。このダンパー61は、ウレタンシートとシリンダとの摩擦によって、ロッドに作用する衝撃力の緩衝作用を奏する。このダンパー61のシリンダの上端に、上記圧縮コイルバネ62の下端が係止している。上記ダンパー61のロッドの上端と、上記圧縮コイルバネ62の上端とが、鍔状の連結具63で互いに連結されている。この鍔状の連結具63と、水槽4の下部に固定された支持具46との間にゴム製のブッシュを挟んだ状態で、上記連結具63と支持具46とが固定されている。
なお、上記ダンパー61は、ウレタンシートとシリンダとの摩擦によって緩衝作用を奏する機械ダンパー以外に、オイル等の粘性流体を用いた流体ダンパーであってもよい。
水槽4の下部には、サスペンション6の支持位置よりも後ろ側に、1つの引張コイルバネ7が接続されている。詳しくは、図2に示すように、引張コイルバネ7の上端が、円筒形状の水槽4の周面部の下端であって、この水槽4の底部に近い位置に接続されている。この引張コイルバネ7の下端は、上記底盤11に接続されている。この引張コイルバネ7は、図3に示すように、水槽4の幅方向の略中央に位置している。この水槽4がサスペンション6の上端周りに前傾したとき、引張コイルバネ7で水槽4の下部を底盤11側に付勢して、水槽4の姿勢の大きな変化を防止するようにしている。なお、引張コイルバネ7の外箱1への接続は、本実施形態では底盤11に対して行うが、下方を向く引張成分が得られるのであれば、背面124に対して接続を行ってもよい。但し、この場合、引張コイルバネと背面124との接続部や、胴部12の構造を強固にする必要が生じるため、底盤11に対して接続を行うほうが、胴部12へ振動が伝達しにくく静音性を実現しやすい点で好ましい。
また、水槽4の上部には、サスペンション6の支持位置よりも後ろ側、かつ、引張コイルバネ7よりも前側に、上部コイルバネ8が接続されている。上部コイルバネ8は、第1バネ81と第2バネ82との2つのコイルバネを有する。この第1バネ81と第2バネ82は、引張コイルバネ7のバネ定数よりも小さいバネ定数を有する。
第1バネ81の下端は、円筒形状の水槽4の周面部の上端、かつ、前後方向においてサスペンション6の支持位置と引張コイルバネ7の接続位置との間に接続されている。一方、第1バネ81の上端は、外箱1の天板13に接続されている。第1バネ81は、上端が下端よりも前側に位置している。
第2バネ82の下端は、第1バネ81の下端と同じ位置に接続されている。一方、第2バネ82の上端は、外箱1の背面124の上端近傍に接続されている。第2バネは、上端が下端よりも後ろ側に位置している。
図2に示すように、第1バネ81と第2バネ82とで、側面から見てV字状をなしている。また、図3に示すように、第1バネ81と第2バネ82のいずれも、幅方向の中央に配置されている。この第1バネ81と第2バネ82によって、水槽4の前後方向の振動を効果的に低減できる。また、第1バネ81と第2バネ82は、引張コイルバネ7のバネ定数よりも小さいバネ定数を有するので、水槽4が振動するとき、水槽4から引張コイルバネ7に作用する力よりも、水槽4から第1バネ81及び第2バネ82に作用する力の方が小さい。したがって、第1バネ81及び第2バネ82から外箱1の天板13及び背面124に伝わる振動は、引張コイルバネ7に伝わる振動よりも少ない。また、第1バネ81及び第2バネ82と外箱1の天板13及び背面124との接続部や胴部12の構造を強固にする必要はない。
上記構成のドラム式洗濯乾燥機は、以下のように動作する。
まず、操作者によって、外扉2と内扉42が開かれて、外開口部15と内開口部41を通してドラム3内に被洗濯物が投入される。この後、外扉2と内扉42が閉じられて、操作部17の電源スイッチがオンにされ、操作ボタンが操作されて、実行すべき運転内容が設定される。この後、運転開始ボタンがオンにされるに伴って、入力された設定に沿った運転を開始する。
ここで、ドラム3内に被洗濯物が投入されると、サスペンション6に作用する荷重の重心Gが前側に移動して、サスペンション6の上端周りに水槽4が前傾する。このとき、水槽4の下部に接続された引張コイルバネ7が伸張し、これに伴って水槽4の下部が底盤11側に付勢される。これによって、水槽4の前傾角度が低減されて、水槽4の姿勢の変化が低減される。したがって、ドラム3内への被洗濯物の投入によって水槽4が大幅に前傾して、内扉42と外開口部15の縁とが接触したり、干渉により内扉42の開放ができない等の不都合が防止される。
運転が開始されると、まず、給水装置によって水槽4内に洗濯水を供給する。図示しない水位センサーによって、水槽4内に所定量の洗濯水が供給されたことが検知されると、洗濯水の供給を停止する。続いて、モータ5に所定電力を供給してドラム3を低速駆動すると共に、循環装置を起動して循環ノズルから洗濯水を吐出する。これにより、被洗濯物に洗濯水を十分に晒しつつ、バッフル34によって被洗濯物の持ち上げと落下を繰り返して、洗濯工程を行う。
洗濯工程において、ドラム3が低速駆動され、このドラム3内で被洗濯物の持ち上げと落下が繰り返されることにより、水槽4が振動する。ここで、水槽4の内開口部41と外箱1の外開口部15とは、従来のようにベローズで直接連結されていなくて、互いに離隔しているので、水槽4から外箱1に伝わる振動を少なくできる。この水槽4の内開口部41と外箱1の外開口部15との離隔は、引張コイルバネ7によって安定して保持される。しかも、水槽4は、荷重の重心位置に配置されたサスペンション6で支持されているので、安定してドラム3が回転駆動される。したがって、水槽4の振動を小さくできる。さらに、この水槽4の上部に接続された上部コイルバネ8によって、水槽4の前後方向の振動が効果的に低減され、また、水槽4の振動は、引張コイルバネ7によっても低減される。さらに、水槽4の前側が従来のようにサスペンションで支持されていないので、前側のサスペンションを介して水槽の前面に振動が伝わることもない。その結果、水槽4の振動が小さく、しかも、水槽4から外箱1に伝達する振動を低減できて、洗濯工程時の騒音を効果的に低減することができる。
洗濯工程が終了すると、排水装置を起動して、水槽4及びドラム3内の洗濯水を排出する。
水位センサーによって水槽4内の排水の完了が検知されると、排水装置の排水弁を閉じ、給水装置によって水槽4内にすすぎ水を供給する。所定量のすすぎ水が供給されたことが検知されると、すすぎ水の供給を停止する。続いて、モータ5を起動してドラム3を低速駆動すると共に、循環装置を起動して、すすぎ工程を行う。すすぎ工程においても、洗濯工程と同様に、水槽4の振動が低減され、また、外箱1に伝達される振動が低減されて、騒音を効果的に低減できる。
水槽4への給水と、ドラム3の駆動と、水槽4からの排水とのサイクルを所定回数行ってすすぎ工程が終了すると、脱水工程を行う。
脱水工程では、ドラム3を高速駆動して、ドラム3内の被洗濯物から遠心力によって水を取り除き、この水を水槽4内に排出する。
脱水工程において、ドラム3の高速駆動によって水槽4が振動するが、洗濯工程及びすすぎ工程と同様に、水槽4の振動が低減され、また、外箱1に伝達される振動が低減される。特に、脱水工程においてサスペンション6に作用する重心の位置は、洗濯工程における重心位置よりも、サスペンション6の配置位置に近くなる。したがって、ドラム3を安定して高速駆動することができ、その結果、脱水工程における水槽4及び外箱1の振動と騒音を効果的に低減できる。
脱水工程が終了すると、乾燥工程を行う。
乾燥工程では、ドラム3を低速駆動すると共に、乾燥装置を動作させる。乾燥装置によって、水槽4内に高温空気を供給して被洗濯物の水分を蒸発させ、この蒸発した水分を含む湿り空気を水槽4から排出し、この湿り空気から水分を凝縮して除去する。除去された水分は、排水路によって外箱1外に排出する。
乾燥工程において、洗濯工程及びすすぎ工程と同様に、水槽4の振動が低減され、また、外箱1に伝達される振動が低減される。特に、乾燥工程においてサスペンション6に作用する重心の位置は、洗濯工程における重心位置よりも、サスペンション6の配置位置に近くなる。したがって、ドラム3を安定して低速駆動することができ、その結果、乾燥工程における振動と騒音を効果的に低減できる。
乾燥工程を所定時間行い、被洗濯物が乾燥すると、ドラム3及び乾燥装置の動作を停止して、ブザーを鳴動して運転の完了を通知する。
このように、本実施形態のドラム式洗濯乾燥機は、水槽4の内開口部41と外箱1の外開口部15とが離隔しているので、水槽4から外箱1に伝わる振動を少なくできる。また、サスペンション6の配置位置を荷重の重心位置と略同じにしているので、ドラム3の回転駆動に伴う水槽4の振動を少なくできる。さらに、水槽4の上部に接続された上部コイルバネ8によって、水槽4の前後方向の振動を効果的に低減でき、また、引張コイルバネ7によっても水槽4の振動を低減できる。しかも、水槽4の前側は従来のようにサスペンションが接続されていないので、水槽4の前面の振動が増大することもない。これらにより、本実施形態によれば、外箱1の振動及び騒音を効果的に防止して、低振動及び低騒音のドラム式洗濯乾燥機が実現できる。
図4及び5は、本発明の第2実施形態の洗濯機としてのドラム式洗濯乾燥機を示す図である。本実施形態では、第1付勢部材としての引張コイルバネ7と、第2付勢部材としての上部コイルバネ8の構成が異なる。本実施形態において、第1実施形態と同一の構成部分には同一の参照番号を付して、詳細な説明を省略する。
図4の断面図に示すように、上部コイルバネ8は、上部第1バネ83と上部第2バネ84との2つのコイルバネを有し、この上部第1バネ83と上部第2バネ84は、側面から見て逆V字状に配置されている。
すなわち、上部第1バネ83の下端は、水槽4の周面部の上端、かつ、前側端部に接続されている。この上部第1バネ83の上端は、前後方向において、サスペンション6の配置位置と略同一の位置で、外箱1の天板13に接続されている。上部第1バネ83の上端は下端よりも後ろ側に位置している。
また、上部第2バネ84の下端は、水槽4の周面部の上端、かつ、底部の近傍に接続されている。この上部第2バネ84の上端は、上部第1バネ83の上端と同じ位置で、外箱1の天板13に接続されている。上部第2バネ84の上端は下端よりも前側に位置している。
上部第1バネ83及び上部第2バネ84は、図5の透視図に示すように、いずれも幅方向の中央に配置されている。
一方、引張コイルバネ7は、図5の透視図に示すように、前面から見てハ字状に配置された下部第1バネ71と下部第2バネ72とを有する。図5では、理解容易のため、左側のサスペンション6を破線で表現している。下部第1バネ71と下部第2バネ72は、前側から見て、ハ字状に配置された2つのサスペンション6よりも傾斜角度が緩やかなハ字状に配置されている。また、下部第1バネ71と下部第2バネ72は、2つのサスペンション6と長手方向の略中央で各々交わるように配置されている。詳しくは、下部第1バネ71と下部第2バネ72の上端は、各サスペンション6の上端よりも幅方向の内側の位置で、水槽4に接続されている。また、下部第1バネ71と下部第2バネ72の下端は、各サスペンションの下端よりも幅方向の内側の位置で、底盤11に接続されている。また、図4に示すように、下部第1バネ71と下部第2バネ72の上端は、いずれも、水槽4の周面部の下端かつ底部の近傍に接続されている。下部第1バネ71と下部第2バネ72の下端は、上端の鉛直下方で底盤11に接続されている。
上記構成のドラム式洗濯乾燥機は、上部コイルバネ8の上部第1バネ83及び上部第2バネ84により、水槽4の前後方向の振動低減に加えて、水槽4の姿勢の変化を低減することができる。つまり、図4において、サスペンション6と水槽4との連結部分を中心として、水槽4が反時計回りに回動する角度が、上部第1バネ83によって低減される。また、サスペンション6と水槽4との連結部分を中心として、水槽4が時計回りに回動する角度が、上部第2バネ84によって低減される。
また、引張コイルバネ7の下部第1バネ71と下部第2バネ72により、水槽4の姿勢変化の低減に加えて、水槽4の幅方向の振動や、水槽4の底部の振れ回りを防止できる。
このように、本実施形態のドラム式洗濯乾燥機によれば、第1実施形態と比較して、水槽4の防振性能を更に高めて、低振動化と低騒音化を高めることができる。
上記第1実施形態及び第2実施形態において、ドラム3内に被洗濯物が投入されていないときの重心位置に、サスペンション6の配置位置を一致させたが、定格量の被洗濯物がドラム3に投入されたときの荷重の重心位置に、サスペンション6の配置位置を一致させてもよい。すなわち、ドラム3に被洗濯物が投入されていない場合において、荷重の重心位置よりも前側にサスペンション6を配置する。そして、定格量の被洗濯物がドラム3に投入されたとき、サスペンション6に作用する全荷重の重心位置が前側に移動して、この重心位置とサスペンション6の配置位置とが一致するようにする。このように、現実の運転条件を考慮することにより、ドラム3の回転駆動を現実に安定させることができて、水槽4の振動を効果的に低減することができる。
また、上記水槽4、内扉42及び回転槽3、駆動装置5、その他水槽4と一体に振動する部材の荷重に、定格量の被洗濯物の荷重と、水槽4内の水の荷重とを加えた全荷重の重心位置に対して、サスペンション6の配置位置を一致させてもよい。これにより、洗濯工程やすすぎ工程において、水槽4の振動を最も効果的に低減できる。
また、上記水槽4、内扉42及び回転槽3、駆動装置5、その他水槽4と一体に振動する部材の荷重に、定格量の被洗濯物の荷重と、この被洗濯物に脱水開始時に残留する水の荷重とを加えた全荷重の重心位置に対して、サスペンション6の配置位置を一致させてもよい。これにより、脱水工程において、水槽4の振動を最も効果的に低減できる。
また、乾燥装置や送風装置を削除して、乾燥機能を有しないドラム式洗濯機を構成してもよい。
また、上部コイルバネ8は、上記各実施形態に限定することなく、水槽4の姿勢保持のために適宜支持形態を変更してもよい。
また、矩形状の外開口部15に矩形状の外扉2をスライド自在に配置したが、外開口部と外扉は上記各実施形態に限定することなく、例えば外開口部を円形状に形成して縁部にヒンジを設け、このヒンジに円盤状の外扉を回動自在に連結してもよい。
また、上記外箱1の形状は直方体に限られず、曲面を有する多面体であってもよい。
本発明の第1実施形態のドラム式洗濯乾燥機を示す斜視図である。 第1実施形態のドラム式洗濯乾燥機の断面図である。 第1実施形態のドラム式洗濯乾燥機を前側から見た主要部の透視図である。 第2実施形態のドラム式洗濯乾燥機の断面図である。 第2実施形態のドラム式洗濯乾燥機を前側から見た主要部の透視図である。
符号の説明
1 外箱
2 外扉
3 ドラム
4 水槽
6 サスペンション
7 引張コイルバネ
15 外開口部
41 内開口部
42 内扉

Claims (6)

  1. 前側に開口部を有し、後ろ側に背面を有する外箱と、
    上記外箱内に配置される水槽と、
    上記水槽内に配置され、水平又は前側から後ろ側に向かうにつれて下るように傾斜した回転軸回りに回転駆動される回転槽と、
    上記外箱内に配置されて上記水槽を支持する支持部であって、この支持部に作用する荷重の重心の前後方向位置と略同じ前後方向位置に配置された支持部と、
    上記水槽の上記支持部で支持される支持位置よりも後ろ側に接続され、この水槽の接続部分を下方に向かって付勢する第1付勢部材とを備えていることを特徴とする洗濯機。
  2. 請求項1に記載の洗濯機において、
    上記第1付勢部材は上記水槽の周面部下端に接続されることを特徴とする洗濯機。
  3. 請求項1に記載の洗濯機において、
    上記第1付勢部材は、上記水槽の幅方向の略中央に接続されていることを特徴とする洗濯機。
  4. 請求項1に記載の洗濯機において、
    上記第1付勢部材は、上記水槽の幅方向の両側に接続されていることを特徴とする洗濯機。
  5. 請求項1に記載の洗濯機において、
    上記水槽の上部に接続されていると共に、上記水槽の上部を前後方向に付勢する第2付勢部材を備え、上記第2付勢部材は上記支持部で支持される支持位置よりも後ろ側で上記水槽に接続されていることを特徴とする洗濯機。
  6. 請求項1に記載の洗濯機において、
    上記支持部に作用する荷重は、定格量の被洗濯物の荷重を含むことを特徴とする洗濯機。
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