JP4586275B2 - 複合体の界面を同定する方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複合体の界面を同定する方法、特に好ましくは生体分子複合体の界面残基を同定する方法に関し、この方法によれば、複合体、特に生体分子複合体における相互作用界面を迅速にかつ高感度に決定することができる。詳しくは、アフィニティークロマトグラフィー、水素-重水素交換(H-D交換)、質量分析等を適宜組み合わせて、タンパク質や核酸等の生体高分子同士が複数、或いはこのような生体高分子と低分子物質が複数結合して形成された複合体の界面残基を、従来法に比較して、より迅速、高感度、高精度に決定することができる。
【0002】
【従来の技術】
生命現象には、様々な分子の相互作用が関与しており、複雑なネットワークを形成している。例えば、抗体やTリンパ球による免疫現象やホルモンによる生理的な調節、転写因子による遺伝子の発現、情報伝達経路、エネルギー代謝等においてである。これらの相互作用ネットワークを解明することは、今後の新たな病気の治療、予防方法の開発につながる可能性があり、医薬研究、健康栄養研究において重要なテーマであると言える。
【0003】
更に、様々な生体分子間の相互作用部位を明らかにすることができれば、生命現象を分子レベルで解明するのみならず相互作用部位を標的とした新規薬物の設計にとって重要な情報を与えることが期待される。また、インターフェロン、成長ホルモンを代表とする医薬用タンパク質の体内動態を改善するために、ポリエチレングリコールやターゲット素子をタンパク質に化学的に結合させる方法があるが、タンパク質の活性に必要な活性部位残基が明らかになれば、そこを避けて修飾基を導入することにより、活性を維持したまま医薬用タンパク質の改変が可能となる。
【0004】
また、医薬のみならず、産業用酵素の基質との結合部位が明らかになればアミノ酸残基を置換することにより機能の改変を行うことができる。
【0005】
人間を初めとして多くの生物の遺伝子配列情報が明らかになっている。また、生命現象の解明、医薬研究、微生物を用いた発酵研究においても、遺伝子配列情報を用いることにより、産業上重要な遺伝子の発見がなされてきている。これらの遺伝子は全て翻訳されてタンパク質となって機能している。トランスクリプトーム、プロテオーム解析などを用いた網羅的な研究により次々と発見されてくる有用タンパク質を産業レベルで活用するためには、迅速にかつ高感度でその生体分子の相互作用部位を明らかにする方法を確立する必要がある。
【0006】
複合体の相互作用界面を同定する方法の一つに、X線結晶解析を用いた分子の三次元構造を決定する方法がある。しかし、この方法は巨大なタンパク質複合体の構造を求めるには技術的に困難な上に、時間を要する作業を必要とする。一方、NMR法を用いた生体分子複合体、例えばタンパク質−タンパク質及びタンパク質―核酸複合体の相互作用界面残基の特定には、複合体形成を伴う主鎖アミド基の化学シフトや水素-重水素(H-D)交換速度変化を指標に行われてきた。しかし、NMR法においては、シグナルの帰属に際して安定同位体標識が必要であることと解析と実験に多くの試料と時間と手間を要する、また高濃度の試料を必要とするため溶解度に制限がある。一方、H-D交換反応とMS(質量分析)を用いた方法は、微量の試料でかつ迅速に生体高分子の相互作用残基を同定することができる。
【0007】
近年、D. Smith等は、H-D交換反応とMS(質量分析)を用いたタンパク質の溶媒露出部位を同定する方法を報告している(WO00/39326参照。)。この中に記載されているタンパク質-リガンド相互作用部位を解析する彼らの方法は二つある。一つは、タンパク質‐リガンド複合体を重水中に一定時間溶解し、経時的にサンプリングして、pHを2−3、温度を0℃以下にすることで、H-D交換速度を低下させた後、ペプシン消化によりペプチド断片とし、これを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と接続した液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析計(LC/MS/MS)で測定することにより、ペプチドの重水素化を経時的に追跡する。タンパク質単独の場合と比較することにより、重水素化速度の遅いペプチドフラグメントがリガンドとの結合に関与している部分である。この方法を用いてタンパク質‐リガンド相互作用部位を解析した報告が幾つかある(F. Wang Biochemistry, 36(13), 3756 (1997); Z. Zhang, Protein Sci., 6, 2203-2217 (1997); F. Wang, Protein Sci., 7, 293-299 (1998); F. Wang, Biochemistry, 37, 15289-15299 (1998); J. Engen, Biochemistry, 38, 8926-8935 (1999); D. Smith, J. Mass Spectrom., 32, 135-146 (1997)等参照。)。
【0008】
もう一つの方法は、試料を重水中に一定時間溶解し、交換性の水素を重水素に置換後にタンパク質とリガンドを混合して複合体を形成させる。その後、何らかの方法で重水を除くか希釈することにより、再度軽水(H2O)に溶解する。これを同じくペプシン消化によりペプチド断片として、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析計(LC/MS/MS)やマトリックス支援レーザーイオン化飛行時間型質量分析計(MALDI-TOFMS)で重水素化率を求めて相互作用部位を同定する方法である(H. Ehring, Anal. Biochem., 267, 252-259 (1999); J. Mandell, Proc. Natl, Acad. Sci. USA, 95, 14705-14710 (1998)等参照。)。
【0009】
しかし、これらの方法には幾つかの問題点があり、代表的なものを下記に列挙する。
【0010】
▲1▼重水溶媒と軽水溶媒に交換する場合、凍結乾燥を行ったり、希釈を必要とする。前者の場合、凍結乾燥により、タンパク質の立体構造変化が起こる可能性がある。また、凍結乾燥により生物活性が低下する試料には用いることができない。後者の場合、重水及び軽水純度を高くするために希釈前の蛋白試料の濃度を高くする必要がある。従って、NMRと同様に溶解度の低い試料への適用ができないし、生体内とかけ離れた濃度では立体構造、相互作用が生体内に存在する濃度の場合と同じでない可能性がある。
【0011】
▲2▼H-D交換、又はD-H交換後、酵素消化を行ったり、有機溶媒を含む高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製を行うため、タンパク質の立体構造を著しく変化させる状況に曝される。これにより、ペプチド内、ペプチド間のH-Dスクランブリングが生じる可能性が高い。
【0012】
▲3▼タンパク質‐タンパク質相互作用といった、分子量の大きな分子同士の解析においては、ペプチドを充分に分離、帰属することが困難である。
【0013】
上記問題点のうち、▲2▼については、近年、FT-ICRMS(フーリエ変換イオンサイクロトロン型質量分析計)によるフラグメンテーション法であるキャピラリースキマーCID法を用いて、ペプシンの代わりにタンパク質を断片化し、タンパク質‐タンパク質相互作用部位情報を得たという報告がある(明石知子、第48回 質量分析総合討論会 要旨集、p.208 (2000))。
【0014】
また、上記問題点のうち、▲3▼については、固定化タンパク質を用いたH-D交換とNMRにより、抗原タンパク質の抗体結合部位を解析した報告があるが、NMRをもちいているために高濃度でかつ大量の試料とシグナル帰属の手間を要する(Y. Paterson, Science, 249, 755-759 (1990)参照。)。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような状況下に、従来のX線結晶解析やNMR法では、複合体、特に生体分子複合体、例えばタンパク質複合体の相互作用界面を迅速にかつ高感度に捉えるには不十分である。また、従来のH-D交換とMSを用いた方法では、タンパク質-低分子リガンドの相互作用解析に留まり、より高分子量であるタンパク質‐タンパク質間の相互作用部位を迅速にかつ低濃度、高感度で捕らえることができる方法が望まれていた。
【0016】
本発明で解決しようとする課題は、その表面上の特定の位置で他の分子と結合する複数分子による複合体、好ましくはそのような生体分子複合体における界面残基を同定し、その相互作用界面を迅速にかつ低濃度、高感度で捉えることができる方法を提供することにあり、即ち、この課題を解決してそのような方法を提供するのが本発明の目的である。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために、その表面上の特定の位置で他の分子と結合する複数分子の複合体、特にそのような生体分子複合体における相互作用界面を迅速に、かつ低濃度、高感度で同定することができる方法を開発すべく、先ず、水素−重水素(H-D)交換法と質量分析(MS)によるフラグメンテーション法について詳細に検討した。
【0018】
ペプシン消化による従来法は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるペプチドの分離を必要とするため、有機溶媒に曝される。H-D交換後のタンパク質を有機溶媒存在下と非存在下で測定したところ、前者の方が重水素により多く交換されていることが分かり、有機溶媒中でタンパク質の構造変化が起こっていることが示唆された。そこで、有機溶媒が存在しない条件下で、かつ短時間でMSの測定を行うことが重要であることが分かった。
【0019】
そこで、MSによるフラグメンテーションについて、キャピラリースキマーCID(衝突活性化解離)法、Hexapole assisted capillary skimmer CID(HACS-CID)法、Infrared multiphoton Dissociation(IRMPD:赤外多光子解離法)法の測定方法を鋭意検討した結果、HACS-CID法、IRMPD法を用いることにより、タンパク質を容易にフラグメント化(断片化;フラグメンテーション)することに成功した。
【0020】
更に、固定化タンパク質とH-D交換反応の条件検討を行った。固定化タンパク質を用いたアフィニティークロマトグラフィーは、通常、塩濃度の高い吸着液と溶離液を用いる。しかし、塩濃度が高い緩衝液は、MSの測定に向いておらず、脱塩や希釈を必要とする。そこで、MSの測定に適した緩衝液を鋭意検討し、アフィニティークロマトグラフィーを用いて、そのまま迅速にMSの測定ができるようなH-D交換反応の条件、方法を見出した。この中で、相互作用界面が重水素化された複合体を高純度に調製し、この構成分子の中から相互作用界面のみ実質的に重水素化されている目的とする一の分子を容易に分離して、これをフラグメント化して質量分析に付すことにより、より精密に相互作用界面を同定する方法が見出された。
【0021】
以上の各種の知見に基づいて本発明が完成されるに到った。
【0022】
即ち、本発明は下記の工程を含むことに特徴を有する複合体の界面を同定する方法に存する:
(a)その表面上の特定の位置で他の分子と結合し、交換性水素を有する複数の分子を含む複合体の相互作用界面に存する交換性水素を重水素化する工程;
(b)複合体に存する一の分子を分離する工程;及び
(c)分離した一の分子又はその部分を質量分析に付してフラグメント化(断片化)した後、得られた各フラグメントの帰属と重水素化率を求める工程。
【0023】
当該分子の少なくとも1種が固相担体と結合手を介し又は介さずに結合していてもよいし、工程(a)は各構成分子の交換性水素を重水素で置換した後、当該複合体を構成してもよい。尚、前記(a)〜(c)工程以外に、本発明の目的、効果を阻害しない範囲で別の処理工程を含むことができ、このような工程であって前記(a)〜(c)工程を含み本発明で目的とする効果が得られる限り本発明の中に含まれる。
【0024】
前記質量分析による分析方法としては、MS/MS法、キャピラリースキマーCID法、HACS-CID法及びIRMPD法の何れかの方法を好ましく採用することができる。フラグメンテーションにおけるフラグメント(断片)の大きさは任意に選択することができるし、前記において重水素化率を求めたフラグメント、特に重水素化率が高いフラグメントの中から一部を、再度更にフラグメンテーション−質量分析に付すこともできる。
【0025】
当該複数の分子としては、生体分子及びそれ以外の低分子物質から選択することができる。
【0026】
尚、当該複合体が、1種以上の生体分子と1種以上の低分子物質で構成され、当該一の分子が生体分子である場合、当該一の分子を複合体から分離する際、同時に低分子物質が分離され、当該分離された低分子物質が共存する形態で当該一の分子が質量分析に付されてもよい。このような発明の態様も、混合系ではあるが、当該一の分子を分離してこれを質量分析に付しているので、当然本発明に含まれる。
【0027】
当該複合体が生体分子を1種以上含むことが望ましい。生体分子としては、タンパク質、核酸、糖質及び脂質から選択することができる。
【0028】
低分子物質とは、生体分子の特定の部位と結合する低分子量物質であり、アミノ基、カルボキシル基、ニトロ基等の官能基を有する有機化合物(有機金属化合物を含む。)を意味しており、このような低分子物質として、例えばアミノ酸、ペプチド、ホルモン、ステロイド、酵素の基質、酵素阻害剤、受容体に対するアゴニスト及びアンタゴニスト等を好ましいものとして挙げることができる。その具体的な例については、ペプチドホルモンとして、例えばプロスタグランジン、ロイコトルエン、アンジオテンシン、エンドセリン、セロトニンとその誘導体等や、イオンチャンネルブロッカーとその誘導体等、また酵素阻害剤としてファクターXa阻害剤、セリンプロテアーゼ阻害剤(phenylmethyl sulfonyl fluoride)、HIVプロテアーゼ阻害剤(インジナビル、サキナビル、リトナビル、ネルフィナビル)、HIV逆転写酵素阻害剤(エファピランツ、ネビラピン)等を挙げることができる。
【0029】
前記低分子物質の分子量の程度については、好ましくは20〜1500程度、より好ましくは50〜700程度、更に好ましくは100〜500程度が採用される。
【0030】
当該複合体を構成する複数の分子として、その分子の種類は制約されないが、(i)2〜5種の生体分子、(ii)1種以上の低分子物質と1〜4種の生体分子等を挙げることができる。
【0031】
当該複数の分子が2〜3分子で構成され、(i)生体分子2種、(ii)生体分子1種と低分子物質1種、(iii)生体分子3種、(iv)生体分子2種と低分子物質1種等が特に好ましいものとして採用される。
【0032】
当該複数分子の少なくとも1種が固相担体と結合手を介し又は介さずに結合していることが好ましい。
【0033】
前記工程(a)については下記の工程を少なくとも含むことができる:
(イ)複合体を構成する分子の交換性水素を重水素で置換する工程;及び
(ロ)構成分子の交換性水素が重水素で置換された複合体を、軽水溶液で処理して分子の相互作用界面以外に存する交換性水素について重水素−水素置換を行う工程。
【0034】
更に、本発明の目的、効果を阻害しない範囲で別の処理工程を含むことができる。
【0035】
また、前記工程(b)については、下記工程を少なくとも含むことができる:(ハ)複合体を酸性溶液又は結合阻害剤を含む溶離液で処理して、複合体から一の分子を分離する工程。
【0036】
その場合、前記一の分子が固相担体と結合手を介し又は介さずに結合していてもよい。前記一の分子が固相担体と結合手を介し又は介さずに結合する分子を質量分析に付するときは、固相担体から当該分子を、結合手を切断する等して分離することが望ましい。
【0037】
前記軽水溶液としては、揮発性塩−軽水緩衝液を、また前記溶離液としては、分離性能から酸性溶液を、それぞれ使用するのが好ましい。その場合の酸性溶液としては、分子の効率的なイオン化の点で実質的に不揮発性塩を含まないことが好ましい。
【0038】
揮発性塩としては酢酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、ギ酸アンモニウム等を例示することができ、その濃度として好ましくは0.01〜10重量%程度、より好ましくは0.01〜5重量%程度、更に好ましくは0.01〜1重量%程度が採用される。一方、軽水緩衝液としては通常の緩衝液を採用すればよいが、例えば酢酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、ギ酸アンモニウム緩衝液等が好ましく採用される。また、酸性溶液のpH値については、好ましくは1〜5程度、より好ましくは2〜4程度、更に好ましくは2〜3程度が採用される。その場合に使用される酸としては、酢酸、ギ酸、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等が選択される。
【0039】
以上溶液の中では、酢酸或いはギ酸の溶液がpKa,イオン化効率の点で特に好ましい。
【0040】
前記結合阻害剤は、複合体から目的とする一の分子を分離するための物質であり、複合体の分子間の相互作用界面を相互に分離するための物質として使用又は知られているものを選択し、採用することができる。この結合阻害剤は複合体の構成分子の種類や結合状態に応じて適宜選択することができる。例えば、酵素阻害剤の中から選択することができ、その代表例としてフェニルメチルスルホニルフルオライド(phenylmethyl sulfonyl fluoride)、リトナビル、ネルフィナビル)等を挙げることができる。
【0041】
より具体的な形態として、前記本発明において交換性水素を有し、分子と分子が特定の位置で結合する複数の分子を含む複合体を形成する複数の分子のうち、少なくとも1種は固相担体と結合手を介し、又は介さずに結合し、残りの分子は固相担体とは結合することなく、全ての交換性水素を重水素に置換した後、重水中で当該複数の分子を混合して当該複合体を形成させた後、これを軽水溶液で処理して、相互作用界面以外の重水素に置換されている交換性水素を水素に置換すると共に、複合体中に結合していない分子を除去し、次いで酸性溶液又は結合阻害剤を含む溶離液で、複合体を構成する一の分子を溶離させ、溶離液から得られた分子、固相担体に結合する一の分子(必要により固相担体から分離して)、及びこれら分子の部分の少なくとも1種を、質量分析に供して、フラグメント化した後、得られた各フラグメントの帰属と重水素化率を前記の如く求める方法を挙げることができる。
【0042】
前記複数の分子として2分子複合体、好ましくは(i)生体分子2種、(ii)生体分子1種とそれ以外の低分子物質1種等を挙げることができる。
【0043】
本発明方法の更に具体的な形態として、前記複合体を形成する複数の分子、例えば生体分子、低分子物質等のうち、一つ(1種類)をビーズ(固相担体)に結合、固定化し、交換性水素を重水素に置換した後、予め希釈或いはバッファー交換等により交換性水素を重水素に置換した残りの分子(生体分子又は低分子)を混合し、重水中で複合体を形成した後、中性付近(pH値5〜9程度)に揮発性塩―軽水緩衝液で置換、洗浄することにより、相互作用界面以外の重水素に置換されている交換性水素を水素に置き換えると共に、結合していない分子を除き、次いで酸性溶液、好ましくは不揮発性塩を実質的に含まない酸性溶液でH-D交換速度を低下させると同時に目的とする分子、例えば生体分子を溶離させ、そのまま質量分析、例えばキャピラリースキマーCID法、HACS-CID法、IRMPD法等でMS(質量分析)内でフラグメント化によりフラグメント(断片)とし、得られる断片を帰属して、重水素化率を導くことにより、生体分子複合体の界面を同定する方法を挙げることができる。
【0044】
この方法において、溶離液に含まれる分子ではなく固相担体と結合している分子について、固相担体から分離して(結合分離剤等の使用による結合手の切断等)そのまま同様にフラグメント化−質量分析に付することによりその相互作用界面の同定を行うことができる。
【0045】
本発明において、前記フラグメント化のフラグメントの大きさを任意選択することができる。また、一度常法によりフラグメント化−質量分析を行った後、得られたフラグメント(フラグメントイオン)の一部について、特に重水素化率が高いフラグメントについて更にフラグメント化−質量分析を繰り返すこともできる。この方法により一層精密化を図ることができる。
【0046】
例えば、前記方法において得られた各フラグメントのうち重水素化率が高いフラグメント(フラグメントイオン)の一部(1個又は複数個)について、例えばMS/MS法(IRMPD法、SORI-CID法等)に付してイオンを選択して、更にフラグメント化を行いMS/MSスペクトルを測定し、得られたフラグメント(フラグメントイオン)の帰属と重水素化率を求めることができる。
【0047】
また、前記方法において当該重水素化率が高いフラグメント(フラグメントイオン)の一部をMS/MS法に付する工程を1又は複数回繰り返すことにより、更に精密化を図ることができる。
【0048】
尚、MS/MSはタンデム質量分析等のことであり、第1のMSで生成したイオンのうち1つを前駆イオンとして選択し、そのイオンの分解から生じるプロダクトイオン(フラグメントイオン)を第2のMSで検出する方法である(マススペクトロメトリー関係用語集、日本質量分析学会参照。)。
【0049】
前記各種の方法に加えて、本発明には、前記記載の本発明方法により、複合体における界面が同定された分子(生体分子、低分子物質等)自体も含まれる。また、前記何れかの方法において得ることができ、他の分子と複合体を形成したときに生じる相互作用界面の交換性水素が実質的に重水素で置換された分子も本発明に含まれる。この場合、界面の交換性水素が実質的に置換された分子は当該他の分子と複合体を形成した状態にあってもよい。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0051】
本発明において複合体を構成する成分はその表面上の特定の位置で他の分子と結合する複数の分子である。特定の位置で結合するとは、例えば抗原−抗体の結合状態のように分子間で相互に分子の特定表面で接して結合する状態を意味する。本発明においては、そのような複合体を構成する複数の分子のうち目的とする二つの分子間で接し合う分子の表面(界面)(「相互作用部位」、「相互作用界面」とも称する。)に存する交換性水素を重水素化した後、二つの分子の一方又は双方をそれぞれ分離し、質量分析によりフラグメント化(断片化)後そのフラグメントイオンの重水素化率を求めて界面の同定を行う。前記フラグメントのうち重水素化率の高いフラグメントについて更にフラグメント化を行いより細かいフラグメントについて同様にその帰属と重水素化率を求めることにより精密化を図ることができる。一つの分子が複数の相互作用界面を有する場合にも、この分子を分離して本発明を適用することができる。
【0052】
例えば、3分子以上(1種以上であればよく、代表的には3種以上)で構成される複合体についても一の分子をそれぞれ分離して質量分析に付することで本発明を適用することができる。ここで、この一の分子が生体分子である場合、低分子物質と共存下でも、質量分析においてスペクトル的に区別可能であるためその混合状態で質量分析に付して当該生体分子を分析することもできる。従って、この一の生体分子を複合体から分離する際、同時に低分子物質も分離し、分離した一の生体分子と低分子物質が混合状態にある溶液であっても、本発明で使用する質量分析に付すことができ、この内容も当然本発明方法に含まれる。
【0053】
そのような複合体を構成する分子の例として生体分子や生体中に存在しない低分子物質が含まれる。生体分子には、動植物及び微生物の生体内に存在するタンパク質、核酸、糖質及び脂質等の各種物質が含まれ、その分子量については本発明の複合体としては特に制限はないが、特に好ましいものとして高分子物質(分子量3000〜100万程度)を挙げることができる。複合体にはタンパク質複合体、核酸複合体、タンパク質核酸複合体、タンパク質脂質複合体、酵素‐基質複合体等が含まれ、これらは、代表的には非共有結合によって二つ(2種)以上結合したものであり、結合する分子の数には制限はない。
【0054】
生体分子1種以上と、前記低分子物質1種又は2種以上とで構成される複合体も採用することができる。このような低分子物質の内容、種類等に関しては前述の通りである。
【0055】
交換性水素とは、N-H、O-H、S-Hのように溶媒である水の水素と交換し得る水素のことを意味する。
【0056】
本発明においては、実質的に相互作用界面のみ重水素化した一の分子(1種類の分子)を複合体から分離してそのフラグメント又はフラグメントの更なるフラグメントを質量分析に付してそれらの帰属及び重水素化率を求めるものである。
【0057】
一の分子を複合体から分離する方法には制約が無いが、好ましい方法として複合体を構成する分子で質量分析の対象とする分子以外の分子(生体分子、低分子物質等の1種類以上)を固定化し、例えば固相担体に結合しておくと、相互作用界面が重水素化された後、質量分析の対象とする分子のみ複合体から容易に分離することができる。
【0058】
例えば、2分子複合体の場合、分子の一方を固相担体に結合しておくと、相互作用界面を重水素化した状態で複合体以外の不純物を容易に除去することができる。これを例えば酸性溶離液或いは結合阻害剤溶液等で処理すると2分子が相互に分離して容易に一方の分子を分離することができる。固相担体に結合する分子も前記一方の分子からは分離しているが固相担体と結合しており、このままでは、質量分析に付すことはできない。このような場合、固相担体との結合にリンカー(結合手)を使用すると、その結合手をはずすための結合分離剤を使用してリンカー部分を切断して固相担体から当該分子を容易に分離することができ、これを同様に質量分析に付すことができる。前記結合分離剤は、結合手の種類に応じて選択することができ、例えば結合手がヒスチジンタグ等の場合には、イミダゾール等を使用することができる。
【0059】
このように分離した分子を、前記フラグメンテーション−質量分析に付すことができる。フラグメンテーションに際してフラグメントの大きさは任意に選択することができる。より大きなフラグメントの場合分析が精密さに欠けることが多い。また、細かいフラグメントの場合、精密さは期待できるが煩雑であり、そのような質量分析計を準備するのも困難である。このような場合、通常のフラグメント(キャピラリースキマーCID法、IRMPD法等)で質量分析を行い、その中で重水素化率の高い一部(1個又は複数個)のフラグメントについて、更にフラグメント化−質量分析を行い、必要によりこの操作を更に繰返し、より精密に目的とする相互作用界面の同定を行うことができる。
【0060】
一方、3分子複合体の場合も質量分析の対象とするためには一の分子を分離する必要がある。例えば、2種の分子を固相担体と結合、固定化しておき残りの1分子を溶離液中に分離する方法を採用したり、一の分子(1種類の分子)を固相担体と結合し、その際、結合手を介して固相担体に結合すると、この一の分子を複合体中他の構成分子から、結合手の部分を切断して分離することが容易であり、当該一の分子を分離した後結合手をはずして、担体からこの一の分子のみ分離して前記質量分析に付して重水素化率を同様に求めることもできる。
【0061】
一の分子、生体分子等を固相、例えばビーズへ結合して固定化する方法としては、既存の方法や、今後開発される固相担体への固定化の技術を利用すればよい。化学的にリンカー(結合手)を介して結合させたり、アビジン‐ビオチンの相互作用を利用したり、タンパク質をHis-Tag(ヒスチジンタグ)やGST(グルタチオンS-トランスフェラーゼ)等の融合タンパク質として発現させたものと、これらと相互作用する金属キレートカラム等を用いる等、既存のアフィニティークロマトグラフィーの技術を応用することができる。
【0062】
以下、本発明についてより具体的に説明する。本発明の代表的な形態を中心に説明するもので、当然本発明に含まれるが、本発明がこれに限定されることはない。
【0063】
図1及び2には、本発明者等により開発された本発明方法の原理が概念図として示されている。相互作用する一つの生体分子(抗hIL-6抗体1)をビーズ3に結合、固定化し、重水(D2O)溶媒に置換することにより、交換性水素(アミド水素)を全て重水素化することができる(抗hIL-6抗体1’)。一方、相互作用する他の生体分子(rhIL-6、2)(ここで、代わりに低分子リガンド等低分子物質を使用することもできる。)を同様に重水溶媒に置換して交換性水素(アミド水素)を重水素化することができる(rhIL-6、2’)。両者を生体分子固定化カラムに供することにより、カラム内で複合体を形成させる。このとき使用する溶媒は全て揮発性塩で構成されたものを使用するのが、分子の効率的なイオン化の点で好ましい。次に、軽水溶液(軽水溶媒、軽水含有水溶液等)を重水素化と同じ時間(例えば、10〜60分程度)、カラムに通液することにより、未結合の生体分子(2)を洗浄しかつ、交換性重水素を水素へ置換する(D-H交換)。このとき、複合体界面に存在する交換性重水素の交換速度は低下する(1”及び2”の生成)。その後、揮発性の酸性緩衝液でD-H交換速度を低下させると同時に可溶性生体高分子2”を溶出させ、これをMS(質量分析)の測定に供する。図2に示すように結合手、例えばアビジン‐ビオチン、His-Tag等を用いた場合は、更にこれらの結合を外す(結合分離剤等の使用で)ことにより、固相担体(ビーズ3)からもう一方の生体分子1”を遊離させ、これをMSの測定に供することにより、相互作用部位を同定することもできる。
【0064】
溶出画分のMSによる測定は、通常のMSスペクトルに加えて、キャピラリースキマーCID(衝突活性化解離)法、HACS-CID法(multipole stored assisted dissociation: MSAD法とも呼ぶ。)、IRMPD法等によりフラグメント化(断片化)を行うことができる。通常のMSスペクトルにより、タンパク質全体としての重水素化率の平均値を求めることができる。キャピラリースキマーCID法は、イオン化とイオン導入部にあるキャピラリーとスキマー間の電圧を利用してフラグメンテーションを誘起する方法である(S. Akashi, Anal. Chem.,71,4974-4980(1999)参照。)。また、HACS-CID法は更にヘキサポールにイオンを溜め込むことにより、キャピラリースキマーCID法の効率を向上させる方法である(K.A., Sannes-Lowery, J. Am. Soc. Mass Spectrom., 11, 1-9(2000)参照。)。一方、IRMPD法は、イオンに炭酸ガスレーザーを照射することにより、フラグメンテーションを誘起する方法である(C.P.Dufresne, J. Am. Soc. Mass Spectrom., 9, 1222-1225(1998)参照。)。H-D交換をしない生体分子のCIDスペクトルにおいて、各フラグメントイオンの帰属を行う。続いて、H-D交換を行った試料の測定を行い、その質量変化より、以下の式を用いて重水素化率を求めることができる。
【0065】
重水素化率(%) = [ (m/z D m/z H) x n / A ] x 100
m/z H:H-D交換を行っていない分子(対照)のフラグメントイオンのm/z(質量/電荷比)の重心
m/z D:H-D交換後のフラグメントイオンのm/zの重心
n :フラグメントイオンの価数
A :アミノ酸残基数(=主鎖アミド水素の数)
【0066】
以上のデータをまとめることにより、タンパク質全体としての重水素化率と比べて、高い部分と低い部分を一次構造上に表示することができる。また、立体構造が既知であれば、立体構造図に表示し、相互作用部位を同定することができる。即ち、本発明ではH-D交換後の生体分子をMS内フラグメンテーションでフラグメント化(断片化)し、前記質量スペクトルを求め、一方、H-D交換を行っていない同一分子で同様にフラグメントイオンを帰属し、その質量の変化から重水素率を求めることができる。
【0067】
更に、本発明の別の形態として、前記の如く得られたフラグメント(フラグメントイオン)のうち、幾つか(1個又は複数個)を別々に選択して、例えばMS/MS法(例えば、IRMPD法、SORI-CID法等)に付する方法を挙げることができる。この方法は、特定のフラグメントイオンを選択して、更にフラグメント化を行い、得られた各フラグメント(フラグメントイオン)の帰属と重水素化率を求めて、重水素化率の高い部位の同定を精密化することができる。更に、これを繰り返す(更に細かいフラグメントについて重水素化率を求める。)ことにより更に精密化を図ることができる。この結果、重水素化率が特に変化している部位(アミノ酸残基等)を更に詳細に調べることができる。
【0068】
前記図1及び2の説明から明らかなように、複合体形成後には複合体全体が固定化されているので固定化されない遊離の分子を固定化された複合体から容易に分離することができる。このようにして得られた複合体は軽水溶液処理によりのD-H交換を行い、その後溶離液(酸性溶液、結合阻害剤を含む溶液)で処理すると目的とする生体分子(2”)が容易に分離される。このとき、酸性溶液を使用するとH-D交換のクエンチ(速度の低下)が生じるのでより好ましい。
【0069】
このような軽水溶液には例えば軽水を含む水溶液を使用することができる。このとき、中性付近(pH5〜9程度)の揮発性塩、例えば酢酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、ギ酸アンモニウム等アンモニウム塩(好ましくは0.01〜10%(重量)程度、より好ましくは0.01〜5%(重量)程度、更に好ましくは0.01〜1%(重量)程度。)を含む軽水緩衝液、例えば酢酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、ギ酸アンモニウム緩衝液等アンモニウム塩緩衝液を使用するのが、分子の効率的なイオン化の点で好ましい。
【0070】
溶離液中に不揮発性塩、例えば塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム等の塩を含むと、分子のイオン化を抑制することとなり好ましくないので、実質的にそのような塩を含まない溶液を使用することが望ましい。
【0071】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。尚、この実施例により本発明は何ら制限されることはない。
【0072】
以下に、特に詳細な手順を中心に具体的に説明する。
1.リコンビナント・ヒトインターロイキン‐6(rhIL-6)の調製
rhIL-6は文献の方法により、大腸菌を用いて発現、精製を行った(D.Ejima, Biotechnol Bioeng., 62, 301-10(1999)参照。)。
【0073】
2.抗IL-6中和抗体の調製
抗IL-6中和抗体は、文献の方法により、ハイブリドーマMH166細胞上清より調製した(T. Matsuda, et. al., Eur. J. Immunol., 18, 951 (1988)参照。)。
【0074】
3.抗IL-6中和抗体固定化カラムの作成
常法に従い、抗IL-6中和抗体をNHS-活性化Hi-trapカラム(NHS-activateHi-trapカラム;アマシャム・ファルマシア社)に固定化した。1mg/mlの抗体溶液を4℃で1時間カップリングを行った。
【0075】
4.rhIL6のH-D交換反応
400μg/100μlのrhIL-6溶液を予め5mM 酢酸アンモニウム/重水溶液(pD 7)で十分平衡化したミクロスピンカラム(Micro Spin column;アマシャム・ファルマシアバイオテク社)に供し、4℃、2000rpmで、1分間遠心し、バッファー交換を行った。バッファー交換後、経時的にサンプリングし、氷冷上で2%酢酸になるように酢酸を添加し、その後、測定用バッファーを添加して、フーリエ変換イオンサイクロトロン型質量分析計(FT-ICRMS)によりMSスペクトルの測定を行った。
【0076】
これまで報告されているH-D交換反応の手法は、凍結乾燥試料を重水で溶解するか、タンパク質濃度の高い軽水溶液試料を重水緩衝液で希釈する方法である。しかしながら、活性(高次構造)を保ったまま凍結乾燥や濃縮ができないタンパク質も多く存在する。そこで、本発明者等は迅速に低容量でバッファー交換を行うためにミクロスピンカラムを用いて、4℃で5mM酢酸アンモニウム重水緩衝液へ置換した。このようにして、重水緩衝液中でH-D交換反応を行い、経時的にサンプリングを行い、2%酢酸(AcOH)−49%アセトニトリル(CH3CN)−49%重水(D2O)又は、2%酢酸(AcOH)−49%アセトニトリル(CH3CN)−49%H2Oで10倍希釈後、FT-ICRMSスペクトルを測定した。2%AcOH−49%アセトニトリル(CH3CN)−49%重水(D2O)で希釈した場合、重水素化がゆっくりと進行しているのに対して、2%AcOH−49%CH3CN−49%H2Oで希釈した場合は、逆にゆっくりとDがHに置き換わっていく様子を観測することができた。
【0077】
この結果から、アセトニトリルを加えることにより、rhIL-6の立体構造変化が起こり、内部に埋もれていた部分が露出することが懸念された。そこで、アセトニトリルを含まない溶媒(2%AcOH−H2O)で希釈した場合と比較した。MSスペクトルを比較するとアセトニトリルを含む方が、多価イオンの分布が低m/z(質量/電荷比)側にシフトした。このことは、アセトニトリルが存在することにより、rhIL-6の構造の一部が解けてH+が付き易くなったためと考えられる。次に、H-D交換後、2%酢酸(AcOH)−48%重水(D2O)で希釈した時のスペクトルと重水素化率の変化を追跡した結果、アセトニトリルを含まない場合でも、ゆっくりと重水素化が進行しているがアセトニトリルを含む場合よりも5%程低いことが分かった。この結果から、アセトニトリルによりrhIL-6の構造の一部が解けることが判明した。従って、H-D交換反応を用いたタンパク質−タンパク質相互作用部位の解析を行う場合は、有機溶媒を極力加えない条件を選択することとした。
【0078】
5.抗IL-6中和抗体カラムによるrhIL-6溶離条件検討
HPLC:多次元クロマトグラフィー インテグラル(Integral;PEバイオシステムズ社);
吸着溶液A:5mM 酢酸アンモニウム(pH 6.5);
吸着溶液B:75mMトリス-塩酸緩衝液(Tris-HCl;pH 7.5);
溶離液A:2% 酢酸;
溶離液B:0.1M グリシン, 0.5M NaCl (pH2.7);
カラム:抗IL-6中和抗体固定化カラム;
流速:1ml/min UV:280nm;
カラム温度:氷冷;及び
バッファー温度:4℃。
【0079】
吸着溶液A(又はB)で抗IL-6中和抗体固定化カラムを十分に平衡化した後に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)からカラムを外し、1mlのテルモシリンジで400μg/100μlのrhIL-6溶液をアプライした。アプライ後、HPLCに装着し、氷冷にて30分間放置した。その後吸着溶液A(又はB)でカラムを洗浄し、未吸着のrhIL-6を洗い流した。続いて、溶離液A(又はB)で溶出し、UV280nmでモニターしながら、分画した。
【0080】
各画分をそのまま、或いは前処理を行ってFT-ICRMSで測定した 。前処理は、逆相カラム(ポロス(POROS)0.3mm i.d.X1mm;PEバイオシステム社)を用いてオンライン脱塩・濃縮を行い、そのままFT-ICRMSのESI(エレクトロスプレーイオン化)イオン源へと導入した。
【0081】
溶離液の検討を行った結果、揮発性塩による緩衝液として吸着液に5mM 酢酸アンモニウム(pH 6.5)、溶離液に2%酢酸を用いた場合で、IL-6の吸着・溶出は通常のアフィニティークロマトグラフィーの条件と全く同じであった。不揮発性の塩を用いた場合は、逆相クロマト等による脱塩が必要であったが、この条件での溶出画分は、前処理をすることなく、MSの測定を行うことができた。
【0082】
6.hIL-6-抗IL-6中和抗体 複合体のH-D交換反応
HPLC:多次元クロマトグラフィー Integral (PEバイオシステムズ社);
重水素化溶液:5mM 酢酸アンモニウム重水溶液(pD 6.5);
吸着溶液:5mM 酢酸アンモニウム軽水溶液(pH 6.5);
溶離液:2% 酢酸;
カラム:抗IL-6中和抗体 固定化カラム;
流速:0.7μl/min;
UV:280nm;及び
カラム温度:氷冷、緩衝液(バッファー)温度:4℃。
【0083】
(1)rhIL-6の重水素化反応
200μg/50μlのrhIL-6溶液を予め5mM酢酸アンモニウム/重水溶液(pD7)で十分に平衡化したミクロスピンカラム(アマシャム・ファルマシアアバイオテク社)に供し、4℃2000rpmで、1分間遠心を行い、バッファー交換を行った。これに、950μl重水素化溶液を加えてH-D交換反応を30分間室温で行った。
【0084】
(2)抗IL-6中和抗体 固定化カラムの重水素化反応
2ml の重水素化溶液をテルモシリンジでゆっくりと抗IL-6中和抗体 固定化カラムに供した。10分間室温で放置した後、更に2mlの重水素化溶液を注入し、全体で30分間室温で放置することにより、H-D交換反応を行った。
【0085】
(3)rhIL-6-抗IL-6中和抗体 複合体形成とH-D逆交換(D-H交換)反応
H-D交換反応後にrhIL-6溶液1mlを抗IL-6中和抗体 固定化カラムにシリンジでゆっくりと注入した後、カラムをHPLCに接続した。氷冷で30分間静置して複合体を形成させた。その後、吸着溶液を流して未吸着のrhIL-6を洗い流すと共に、軽水溶液に置換してH-D逆反応を30分間行った。H-D逆交換(D-H交換)を行った後に、流速0.5μl/minで溶離液を流してrhIL-6を溶出した(約180μl)。分取したrhIL-6は直ちにFT-ICRMS測定を行った。
【0086】
7.hIL-6のFT-ICRMS測定
全ての測定は、gas assisted dynamic trapping 法(GADT)で行った。GADT法は、イオンを測定セル(Cell)内にトラップする際に、一時的にトラップ電圧を上げてかつイオンの運動エネルギーを低下させるためにアルゴン(Ar)ガスをトラップガス(cooling gas)としてパルスでセル内に導入する方法である。これにより、効率よくイオンをCell内にトラップすることが可能となり、感度が向上した。得られたパルスシークエンスを図3に示す。
【0087】
測定機器及び分析条件等は下記の通りである。
質量分析計:7T セルフシールド超伝導マグネット フーリエ変換イオンサイクロトロン質量分析計 ApexII(ブルカー・ダルトニクス社製);
流速:60 ml/h;
乾燥ガス(Drying gas):20psi, 150℃;
Nebulizing gas:30psi;
Ar gas :7.8 Torr;
ヘキサポール内蓄積時間(Hexapole accumulated time):1 sec(秒);
キャピラリー電圧(Capillary exit voltage):106.5 kV (normal scan)、150 kV(IRMPD)、220kV(HACS-CID);及び
データ取り込みポイント数(Data point):512K。
【0088】
8.IRMPD法及びHACS-CID法によるrhIL-6のフラグメンテーション
IRMPD法は、ICR-Cell内に閉じ込めたイオンに対して、300msec間炭酸ガス(CO2)レーザーを照射した(図4)。また、HACS-CID法は、通常の測定と同じパルスシークエンスを用いて、キャピラリー電圧(CapExitの電圧)を上げることと、Hexapole accumulation time を1-3secにすることで、フラグメンテーションを誘起することができた。
【0089】
9.データ解析法
FT-ICRMSスペクトルは全て、付属ソフトウエアXmassで解析を行った。フラグメントの帰属は、ソフトウエアFrag-Proを用いた。各フラグメントは、同位体分布を持つため、Excel(マイクロソフト社)を用いて重心計算を行った。H-D交換を行わないrhIL-6を対照とした。対照の重心とH-D交換後の重心の差を重水素化による質量/電荷比(m/z)の変化として、以下の計算式を用いて重水素化率を求めた。また、側鎖の交換性プロトンのH-D交換速度は非常に早いため、この方法では比較的H-D交換速度の遅い主鎖アミド水素のみをデータ解析対象とした。従って、交換可能なプロトンの数はアミノ酸残基数と等しくなる。
【0090】
重水素化率(%) = [ (m/z D m/z H) x n / A ] x 100
m/z H:H-D交換を行っていない分子(対照)のフラグメントイオンのm/zの重心
m/z D:H-D交換後のフラグメントイオンのm/zの重心
n :フラグメントイオンの価数
A :アミノ酸残基数(=主鎖アミド水素の数)
【0091】
10.rhIL-6-抗IL-6中和抗体 複合体形成とH-D逆交換(D-H交換)反応とMSによるフラグメンテーションの結果
前記6.において得られたFT-ICRMSスペクトルを図5(アフィニティークロマトグラフィー溶出画分のrhIL-6のFT-ICRMSスペクトル)に示した。
【0092】
前記の方法により、rhIL-6-抗IL-6中和抗体 複合体形成とH-D逆交換反応を行った。MSによるタンパク質全体の質量変化は極わずかであり、交換性水素の約3.75%が重水素化されていた。
【0093】
以上の方法において得られたHACS-CIDスペクトル(図6参照。)とIRMPDスペクトル(図7参照。)で得られたフラグメントイオンを帰属し、1つのアミノ酸配列に決定できるものについて重水素化率を算出した。平均重水素化率よりも高い部分を立体構造上にマップした図(図8:hIL-6 のレセプター結合部位とH-D交換反応の結果の比較)を示す。
【0094】
以上の結果から明らかなように、複合体であるIL-6と抗IL-6中和抗体の相互作用部位、即ちIL−6とそのレセプター結合部位をより正確に同定することができた。
【0095】
【発明の効果】
本発明によれば、その表面上の特定の位置で他の分子と結合する複数分子による複合体、特に生体分子複合体における相互作用界面を従来法に比較して、より大きな分子同士においても、より低濃度の試料で、より迅速かつ高感度に同定することができる。その結果、例えば生体分子複合体がタンパク質Aとタンパク質Bの複合体の場合、両者の相互作用界面を簡便かつ迅速に同定することができる。
これによって、例えば各々の一次構造のみを基に、機能改変のための変異アミノ酸残基の候補を挙げることができる。
【0096】
また、活性を妨げることなくポリエチレングリコールやターゲット素子をタンパク質に化学的に結合させるアミノ酸残基の候補を挙げることができる。更に、各々の立体構造が既知であれば、結合に必要なアミノ酸残基の構造が分かることから、低分子のドラッグデザインが可能である。
【0097】
更に、前記複合体において界面が同定された分子自体、或いは前記本発明の方法において得ることができ、他の分子と複合体を形成したときに生じる相互作用界面の交換性水素が実質的に重水素で置換された分子(複合体の形態にあってもよい。)を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明方法の原理を、rhIL-6−抗hIL-6抗体の相互結合(作用)部位の解析を例にして示す概念図である。
1:抗hIL-6抗体;1’:抗hIL-6抗体(重水素化);1”:抗hIL-6抗体(相互作用部位のみ重水素化):2:rhIL-6;2’:rhIL-6(重水素化);2”:rhIL-6(相互作用部位のみ重水素化);3:固相担体、ビーズ;
○:アミド水素;○中周囲部黒色:重水素化アミド水素;H2O:水;D2O:重水;Acid:酸。
【図2】図2は、本発明により、抗原と抗体をそれぞれ分離して解析する例を図示する。
1:抗hIL-6抗体;1’:抗hIL-6抗体(重水素化);1”:抗hIL-6抗体(相互作用部位のみ重水素化):2:rhIL-6;2’:rhIL-6(重水素化);2”:rhIL-6(相互作用部位のみ重水素化);3:固相担体、ビーズ;4:結合手。
【図3】図3はFT-ICRMSのGADT法測定パルスシークエンスを示す図である。
1: ESI source quench(イオン源クエンチ); 2:ICR cell quench(サイクロトロンセル内クエンチ);3:raise trap potential(トラップ電圧上昇);4:hexapole accumulation(ヘキサポール内でのイオン蓄積);5:ion generation(セルへのイオン移動);6:trap gas & ion accumulation into cell(セル内へのアルゴンガス導入とイオン蓄積);7:lower trap potential(トラップ電圧の低下);8:pumping delay(セル内真空度上昇);9:excitation for ICR(イオンサイクロトロン運動励起)。
【図4】図4は、FT-ICRMSのGADT-IRMPD法測定パルスシークエンスを示す図である。
1:ESI source quench;2:ICR cell quench;3:raise trap potential;4:hexapole accumulation;5:ion generation;6:trap gas & ion accumulation into cell;7:CO2 laser irradiation(炭酸ガスレーザー照射);8:lower trap potential;9:pumping delay;10:excitation for ICR。
【図5】図5は、アフィニティークロマトグラフィー溶出画分のrhIL-6のFT-ICRMSスペクトルを示す図である。
上段:試料(重水素化rhIL-6);下段:対照。
【図6】図6は、アフィニティークロマトグラフィー溶出画分のrhIL-6のHACS-CIDスペクトル(一部拡大)を示す図である。
上段:試料(重水素化rhIL-6);下段:対照。
【図7】図7は、アフィニティークロマトグラフィー溶出画分のrhIL-6のIRMPDスペクトルを示す図である。
上段:試料(重水素化rhIL-6);下段:対照。
【図8】図8は、hIL-6 のレセプター結合部位とH-D交換反応実験の結果の比較を示す図である。
図8a:文献情報によるhIL-6のレセプター結合部位(R. J. Simpson, Protein Sci., 6, 929 (1997) 参照。)。
図8b:H-D交換反応実験の結果から得られた抗IL-6抗体(anti-hIL-6 MoAb)結合部位。
1:siteI/gp80結合部位;2:siteII/gp130結合部位;3:siteIII/gp130結合部位;4:重水素化率が高い部位;5:重水素化率が低い部位。

Claims (21)

  1. 下記(a)、(b)、(c)の工程を含み、更に当該工程(a)が下記(イ)、(ロ)の工程を含むことを特徴とする複合体の界面を同定する方法:
    (a)その表面上の特定の位置で他の分子と結合し、交換性水素を有する複数の分子を含む複合体の相互作用界面に存する交換性水素を重水素化する工程;
    (b)複合体に存する一の分子を分離する工程;及び
    (c)分離した一の分子又はその部分を質量分析に付してフラグメント化した後、得られた各フラグメントの帰属と重水素化率を求める工程。
    (イ)複合体を構成する分子の交換性水素を重水素で置換する工程;及び
    (ロ)構成分子の交換性水素が重水素で置換された複合体を、軽水溶液で処理して分子の相互作用界面以外に存する交換性水素について重水素−水素置換を行う工程。
    当該複数の分子の少なくとも1種が固相担体と結合手を介し又は介さずに結合していてもよいし、工程(a)は各構成分子の交換性水素を重水素で置換した後、当該複合体を形成してもよい。
  2. 質量分析による分析方法が、MS/MS法、キャピラリースキマーCID法、HACS−CID法及びIRMPD法の少なくとも1種によるものである請求項1記載の方法。
  3. 当該複数の分子が生体分子及びそれ以外の低分子物質から選択される請求項1記載の方法。
  4. 当該複合体が、1種以上の生体分子と1種以上の低分子物質で構成され、当該一の分子が生体分子であり、工程(b)において当該一の分子を複合体から分離する際、同時に低分子物質が分離され、工程(c)において当該分離された低分子物質が共存する形態で当該一の分子が質量分析に付される請求項3記載の方法。
  5. 当該複合体が生体分子を1種以上含む請求項1記載の方法。
  6. 生体分子がタンパク質、核酸、糖質及び脂質から選択される請求項3又は5記載の方法。
  7. 低分子物質がアミノ酸、ペプチド、ホルモン、ステロイド、酵素の基質、酵素阻害剤、並びに受容体に対するアゴニスト及びアンタゴニストから選択される請求項3又は4記載の方法。
  8. 当該複数の分子が、2〜5種の生体分子、又は1種以上の低分子物質と1〜4種の生体分子である請求項3記載の方法。
  9. 当該複数の分子が、生体分子2種、生体分子1種と低分子物質1種、生体分子3種、及び生体分子2種と低分子物質1種の何れかである請求項8記載の方法。
  10. 当該複数の分子の少なくとも1種が固相担体と結合手を介し又は介さずに結合している請求項1記載の方法。
  11. 当該工程(b)が下記の工程を含む請求項記載の方法:
    (ハ)複合体を酸性溶液又は結合阻害剤を含む溶離液で処理して、複合体から一の分子を分離する工程。
    当該一の分子が固相担体と結合手を介し又は介さずに結合していてもよい。
  12. 当該一の分子が固相担体と結合手を介し又は介さずに結合し、当該一の分子を当該固相担体から分離する工程を含む請求項11記載の方法。
  13. 軽水溶液が、揮発性塩−軽水緩衝液である請求項記載の方法。
  14. 溶離液が酸性溶液である請求項11記載の方法。
  15. 酸性溶液が実質的に不揮発性塩を含まない請求項14記載の方法。
  16. 結合阻害剤が、フェニルメチルスルホニルフルオライド、リトナビル及びネルフィナビルの中から選択される請求項11記載の方法。
  17. 交換性水素を有し、分子と分子が特定の位置で結合する複数の分子を含む複合体を形成する複数の分子のうち、少なくとも1種は固相担体と結合手を介し、又は介さずに結合し、残りの分子は固相担体とは結合することなく、全ての交換性水素を重水素に置換した後、重水中で当該複数の分子を混合して当該複合体を形成させた後、これを軽水溶液で処理して、相互作用界面以外の重水素に置換されている交換性水素を水素に置換すると共に、複合体中に結合していない分子を除去し、次いで酸性溶液又は結合阻害剤を含む溶離液で、複合体を構成する一の分子を溶離させ、溶離液から得られた分子、固相担体に結合する一の分子及びこれら分子の部分の少なくとも1種を質量分析に供して、フラグメント化した後、得られた各フラグメントの帰属と重水素化率を求める請求項1記載の方法。
    当該複合体が、1種以上の生体分子と1種以上の低分子物質で構成され、当該一の分子が生体分子である場合、当該一の分子を複合体から分離する際、同時に低分子物質が分離され、当該分離された低分子物質が共存する形態で当該一の分子が質量分析に付されてもよい。
  18. 当該複数の分子が生体分子2種、又は生体分子1種とそれ以外の低分子物質1種である請求項17記載の方法。
  19. 請求項1又は17記載の方法において得られた各フラグメントのうち重水素化率が高いフラグメントの一部をMS/MS法に付して更にフラグメント化を行いMS/MSスペクトルを測定し、得られたフラグメントの帰属と重水素化率を求める請求項1又は17記載の方法。
  20. 当該方法において重水素化率が高いフラグメントの一部をMS/MS法に付して更にフラグメント化を行いMS/MSスペクトルを測定し、得られたフラグメントの帰属と重水素化率を求める工程を更に1又は複数回繰り返す請求項19記載の方法。
  21. 当該溶離液に含まれない固相担体に結合する一の分子は、固相から分離した後質量分析に供する請求項17記載の方法。
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