JP2002031610A - 生体分子複合体の界面残基を同定する方法 - Google Patents

生体分子複合体の界面残基を同定する方法

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JP2002031610A JP2000214997A JP2000214997A JP2002031610A JP 2002031610 A JP2002031610 A JP 2002031610A JP 2000214997 A JP2000214997 A JP 2000214997A JP 2000214997 A JP2000214997 A JP 2000214997A JP 2002031610 A JP2002031610 A JP 2002031610A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】生体分子複合体、例えばタンパク質−タンパク
質複合体における相互作用界面を、従来法に比較して厳
密にかつ簡便に決定することができる方法を提供する 【解決手段】複合体を構成する複数の生体分子のうち、
一の生体分子の非易動性水素を重水素に、その易動性水
素の少なくとも70%を重水素に、それぞれ置換した
後、交差飽和現象により、これに隣接する他の生体分子
に含まれる水素から10Å以内に存在する当該一の生体
分子中に含まれ、交差飽和を受ける易動性水素の位置を
特定することにより生体分子複合体の界面残基を同定す
る。この結果、複合体の相互作用界面を従来法に比較し
てより厳密に決定することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生体分子複合体の
界面残基を同定する方法に関し、生体分子複合体におけ
る相互作用界面を厳密に決定することができる方法を提
供する。本発明によれば、交差飽和現象(Cross satura
tion phenomena)を利用しタンパク質や核酸等の生体分
子が複数結合して構成した複合体の界面残基を同定する
ことにより相互作用界面を従来法に比較してより厳密に
決定することができる。
【0002】
【従来の技術】生命現象には様々な分子の相互作用が関
与しており、複雑なネットワークを形成している。例え
ば、抗体やTリンパ球による免疫現象やホルモンによる
生理的な調節、転写因子による遺伝子の発現、情報伝達
経路等においてである。これら分子の相互作用ネットワ
ークを解明することは、今後新たな病気の治療方法の開
発に繋がる可能性があり、医薬研究において重要なテー
マであると言える。更に、様々な生体分子間の相互作用
部位を明らかにすることができれば、生命現象を分子レ
ベルで解明するのみならず相互作用部位を標的とした新
規薬物の設計にとって重要な情報を与えることが期待さ
れる(de Vos et al., 1992; Song et al.,1998; Clacks
on et al., 1995参照。)。
【0003】複合体の相互作用界面を同定する方法の一
つに、X線結晶解析を用いた分子の三次元構造を決定す
る方法がある。しかし、この方法は巨大なタンパク質複
合体の構造を求めるには技術的に困難な上に、時間を要
する作業を必要とする。また、結合活性の測定と組み合
わせた、分子表面を構成するアミノ酸残基の置換では、
結合部位の情報を間接的な形でしか与えない(Wells et
al., 1991; Cunningham et al., 1997参照。)。
【0004】一方、NMR法を用いた生体分子複合体、
例えばタンパク質−タンパク質及びタンパク質−核酸複
合体の相互作用界面残基の特定には、複合体形成に伴う
主鎖アミド基の化学シフト変化(Foster et al., 1998
参照。)や、水素−重水素(H-D)交換速度変化(Pater
son et al., 1990参照。)を指標に行われてきた。
【0005】プロテインAに関し、参考のために図1に
プロテインAと免疫グロブリンGとの模式図を示す。プ
ロテインAは黄色ブドウ球菌の細胞壁構成成分である、
免疫グロブリン結合タンパク質で、特に免疫グロブリン
GのFc領域に結合することが分かっている(Langone
et al., 1982参照。)。プロテインAの細胞外領域は相
同性の高い連続した五つのFc結合ドメインから構成さ
れており、それぞれN末端からE、D、A、B、Cと呼
ばれている。また、C末端には細胞壁結合領域Xがあ
る。
【0006】プロテインAのBドメイン(FB)の溶液
中三次元構造はNMRを用いて決定されており、またH
−D交換や化学シフト変化を基にFcフラグメントとの
結合に重要な残基が同定されている(Torigoe et al.,
1990; Gouda et al., 1992;Gouda et al., 1998参
照。)。
【0007】FBのFc結合状態の三次元構造について
は、既にX線結晶構造解析により求められている(Deis
enhofer et al., 1981参照。)。図2は、X線結晶構
造、H−D交換及び化学シフト変化により求められた相
互作用界面を図示したものであり、ここにはX線結晶構
造解析とNMR法により明らかとなった相互作用界面残
基を示したFBのCPKモデルが示されている。これら
の比較から、NMR法により同定された相互作用界面を
形成する残基は、X線結晶構造解析により明らかとなっ
たものと、その分布がよく似てはいるが完全には一致し
ていないことが分かる。特に、Fcとの結合に伴い化学
シフト変化やH−D交換速度変化を示した幾つかの残基
は、X線結晶構造により明らかになった相互作用界面に
存在しないものがあった。NMRとX線結晶構造解析に
おける矛盾の理由は、次のように考えられる。即ち、化
学シフトやH−D交換速度は、Fcとの結合に伴う局所
的な環境変化や僅かな構造変化によっても変化するため
である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】以上のような状況下
に、従来のNMR法では生体分子複合体、例えばタンパ
ク質複合体の相互作用界面を正確に捉えるには不十分で
あり、別の相互作用界面を捉えることのできる方法が望
まれていた。
【0009】本発明の目的は、生体分子複合体における
界面残基を同定し、その相互作用界面を厳密に決定する
ことのできる方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題
を解決するために、生体分子複合体における相互作用界
面をより厳密に同定することができる方法を開発すべ
く、先ず従来法について詳細に検討を行った。これま
で、高分解能NMR法により、例えば高分子量タンパク
質−タンパク質複合体(MW >50,000)の相互作用界面は、
複合体形成に伴う化学シフト変化や水素-重水素交換速
度変化を指標に明らかにされてきた(Fosteret al., 19
98; Paterson et al., 1990参照。)。しかし、それら
の方法で同定された界面はX線結晶構造解析により明ら
かとなったものと必ずしも一致することはなく、曖昧な
点が多々あり、この方法では厳密な分析には限界がある
ことが分かった。そこで、NMRを利用した同定法につ
いて鋭意検討した結果、重水素化と交差飽和現象(Cros
s saturation phenomena)を利用することによって高分
子量タンパク質複合体における相互作用界面をより厳密
に同定できることを見出し、本発明を完成するに到っ
た。
【0011】即ち、本発明は、複合体を構成する複数の
生体分子のうち、一の生体分子の非易動性水素を重水素
に、その易動性水素の少なくとも70%を重水素に、そ
れぞれ置換した後、交差飽和現象により、これに隣接す
る生体分子に含まれる水素から10Å以内に存在する当
該一の生体分子中に含まれ、交差飽和を受ける易動性水
素の位置を特定することに特徴を有する生体分子複合体
の界面残基を同定する方法に存する。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て説明する。
【0013】生体分子とは、動植物及び微生物の生体内
に存するタンパク質、核酸、脂質等の高分子物質であ
り、その分子量については複合体として、例えば100
00以上、複合体を構成する生体分子として2000以
上の高分子物質である。また、核酸はDNAであっても
RNAであってもよい。複合体にはタンパク質複合体、
核酸複合体、タンパク質核酸複合体、タンパク質脂質複
合体等が含まれ、タンパク質複合体とはタンパク質とタ
ンパク質、核酸複合体とは核酸と核酸、タンパク質核酸
複合体とはタンパク質と核酸、タンパク質脂質複合体と
はタンパク質と脂質が、非共有結合によってそれぞれ二
つ以上結合したものであり、結合する分子の数には制限
は無い。
【0014】非易動性水素とはC−Hのように溶媒であ
る水の水素と交換し得えない水素のことであり、易動性
水素とはN−H、O−H、S−Hのように溶媒である水
の水素と交換し得る水素のことである。
【0015】生体分子の非易動性水素を重水素化するに
は特に困難は無く、非易動性水素を重水素化する方法と
して知られている方法を採用することができる。簡便に
は、該生体分子を発現する微生物を重水素化した成分を
含有する培地中で培養すればよい。例えば、重水素化グ
ルコース或いは重水素化酢酸を含む培地成分を重水に溶
解させた培地中で微生物を培養し、増殖した菌体から生
体分子を回収することによって、重水素化生体分子を得
ることができる。非易動性水素の重水素化率は、少なく
とも80%、即ち80%以上であることが望ましい。ま
た、生体分子を重水素化アミノ酸或いは重水素化核酸か
ら合成する方法を適用することもできる。
【0016】易動性水素のうちX%を重水素化するため
には、溶媒とした水の組成を軽水(100−X)%、重
水X%とすればよい。本発明によって相互作用界面を決
定するためには、易動性水素を70%以上重水素化して
あればよく、その場合Xは70(%)以上となる。本発
明においては、この重水素化度として70%以上であれ
ばよいが、交差飽和の過剰な伝搬を防ぐ上から好ましく
は80〜90%程度の重水素化度が選択されるが、この
場合も上記X値に80〜90を使用して、容易に重水素
化することができる。このように、重水素置換する方法
自体については、特に困難はなく、従来の方法を採用し
て容易に行うことができる。
【0017】交差飽和とはNMR現象の一つであり、一
対の水素核磁化間のスピン−スピン相互作用によって生
じる。例えば、二つの分子からなる複合体の場合には一
方の分子から交差飽和を受ける。交差飽和を受けたもう
一方の分子の水素原子は、両者の相互作用界面に位置し
ていることとなる。交差飽和を生じさせるには、NMR
パルスを用いればよい。このとき、NMRスペクトルの
一部の領域にシグナルを与える水素原子に選択的に、N
MRパルスを与えて交差飽和現象を引き起こすことがで
きる。
【0018】本発明においては、被同定界面残基を含む
生体分子の非易動性水素原子が重水素化しているため、
当該生体分子に隣接する生体分子の水素から10Å以内
に存する当該生体分子の易動性水素が交差飽和を受け
る。そこで、この水素が含まれる残基の種類や当該残基
のN−末端からの順位(タンパク質の場合)、5'−末
端からの順位(核酸の場合)を決めることができる。従
って、当該生体分子の界面残基、或いは相互作用界面を
厳密に同定することができる。
【0019】更に、アディアバティックシェイプトパル
ス(adiabatic shaped-pulse)を用いることにより、弱
いラジオ波パワーで効率良く飽和を達成できる。また、
帯域選択的に作用させると、例えば非易動性水素のみを
飽和させることが可能となる。従って、生体分子複合体
の一方の非易動性水素を重水素化させれば、もう一方の
生体分子のみを選択的に飽和させることができ、その結
果生じた交差飽和から生体分子複合体の界面残基を決定
することが可能となる。帯域選択的に飽和するためには
WURST-2タイプのadiabatic shaped-pulse(Kupce, et a
l., 1995参照。)を用いると良いが、これに限定される
ものではない。
【0020】尚、本発明においては上記易動性水素に対
する重水素の置換を70%以上とすることにより、相互
作用界面残基を正確に同定する方法を見出したものであ
る。既に、重水素置換をせずに交差飽和現象を利用して
同定する試みもあったが、これは交差飽和が隣接する水
素原子を介して拡散してしまうことから本発明方法にお
けるように正確に同定することができない。
【0021】以下、本発明についてより具体的に説明す
る。 1.本発明方法の原理 図3には交差飽和の概念図が示され、ここに本発明者等
により開発された本発明方法の原理が概念図として示さ
れている。
【0022】相互作用界面を同定する対象であるタンパ
ク質Iを2H及び15Nで均一標識し、それと複合体を形成す
るタンパク質IIは非標識にする。このとき、タンパク質
複合体はプロトン密度が極めて低いタンパク質Iと高い
タンパク質IIから構成されることになる。
【0023】高分子量のタンパク質の場合、脂肪族プロ
トン領域を広域にラジオ波照射を行うことで、脂肪族プ
ロトンのみならず芳香族プロトンやアミドプロトンをも
同時に飽和することになる。この現象はスピン拡散とし
て良く知られている(Kalk et al., 1976; Akasaka, 19
81参照。)。ここで脂肪族プロトン領域への広域ラジオ
波照射をタンパク質I-II複合体に対して適用すると、2H
及び15Nで均一標識したタンパク質Iは脂肪族プロトンを
有しないことからラジオ波の影響を直接受けることはな
く、タンパク質IIのみが選択的にラジオ波照射の影響を
受け、またスピン拡散により均一なプロトンの飽和が起
こる。このとき、タンパク質Iの相互作用界面付近に存
在するアミドプロトンはその界面を介してタンパク質II
の飽和されたプロトンとの交差緩和の機構により飽和の
移動が観測される。
【0024】磁化の飽和はNMRシグナルの強度減少とし
て観測されるため、複合体の1H-15NHSQCスペクトル上に
観測されるアミドプロトンのシグナル強度減少を指標と
して、タンパク質Iの相互作用界面に存在する残基を特
定することができる。
【0025】2.交差飽和のパルスシーケンス 図4は本発明者等により開発された交差飽和に使用する
NMRパルススキームである。water-flip backタイプのTR
OSY-HSQCパルススキーム(Pervushin, et al., 1998; P
ervushin, et al., 1998参照。)の前に、WURST-2タイ
プのadiabaticshaped-pulse(Kupce, et al., 1995参
照。)による帯域選択的飽和法を組み込んである。WURS
T-2 adiabatic shaped-pulseを用いたコンポジットパル
スデカップリング法を脂肪族プロトンの飽和に用いるこ
とにより、adiabatic pulseでは弱いラジオ波パワーで
効率良く飽和を達成できる。
【0026】3.1H-1D NMR による選択的ラジオ波照射
の確認 図5により1H-1D NMRスペクトルによるFcフラグメント
の飽和の確認を行った。図5(a)は、非標識のFcフラ
グメントのみからなるサンプルに対してWURST-2による
プロトン磁化の飽和を行い、その直後に測定した1H-1D
NMRスペクトルである。帯域選択的WURST-2飽和スキーム
を用いることで、脂肪族プロトン領域におけるプロトン
磁化の飽和は効率良く行われ、またスピン拡散により芳
香族及びアミドプロトン領域にまで及ぶことが分かる。
【0027】一方、図5(b)は、図5(a)のスペクト
ルのうち水シグナル領域を拡大したものである。ラジオ
波の照射を行わなかった場合のスペクトルと比較して、
水のシグナル強度が殆ど変化しないことから、この飽和
方法は脂肪族プロトン領域に対して極めて選択性が高
く、水シグナルに対する直接的なラジオ波照射も行われ
ていないことが分かる(Additional information 2(交
差飽和に用いるラジオ波(Stretched adiabatic pulse W
URST2)の帯域))。即ち、FB-Fc複合体に対してこの方
法でラジオ波照射を行っても、FBのアミドプロトンを直
接飽和することがないのは勿論、水との交換が早いアミ
ドプロトンに対する影響もないことが分かる。
【0028】4.交差飽和のFB-Fc複合体への適用 以上により確立した測定方法を実際に2H、15N標識したF
Bと非標識のFcフラグメントからなる複合体に対して適
用した。図6は交差飽和の結果を図示したもので、図6
(a)と図6(b)は二重標識したFBと非標識のFcフラグ
メントの複合体に対して測定した1H-15N TROSY-HSQCス
ペクトルであり、それぞれ図6(a)がラジオ波照射を
行っていないスペクトル、図6(b)がラジオ波照射を
行ったスペクトルである。図6(a)を見て分かるよう
に、Fcとの結合状態のFBのアミド基由来の交差ピークは
殆ど全て分離して観測されており、その帰属は三重共鳴
TROSY(Salzmann et al., 1998; Salzmann et al., 199
9参照。)により行われている(Additional informatio
n 3(FBのNMRシグナルの帰属))。
【0029】複合体中のFBに対する1.2 secのラジオ波
照射による効果は、図6(b)に明らかである。殆どの
交差ピークの強度はラジオ波照射により減少している。
これは複合体中のFcフラグメントの飽和が相互作用界面
を通してFc結合状態のFB分子に移動したことを示してい
ると言える。但し、その強度減少は各アミド基において
ほぼ均一に起こっている。これは、Fcからの飽和移動が
相互作用界面に限定されず、FB分子内部のスピン拡散に
よってFB分子全体が均一に飽和されたためだと考えられ
る。
【0030】5.FB分子内のスピン拡散の影響について FB分子内のスピン拡散の抑制はサンプル溶媒中の軽水濃
度に依存している。複合体中のFBは3本のα-helixから
なる構造をとっている(Gouda et al., 1992;Gouda et
al., 1998; Jedenberg et al., 1996参照。)が、通常
のNMR測定に用いられる条件であるサンプル溶媒中の軽
水/重水濃度が90% H2O/10% 2H2Oの場合、重水素化され
たFBのi番目のアミドプロトンはi-1やi+1番目のアミド
プロトンから4Å以内に存在する(図7(FB分子内のプロ
トン間距離の模式図)参照。)。これでは、分子内のア
ミドプロトン間に強い磁気双極子-双極子相互作用が存
在することになり、分子内スピン拡散が起こり易い状況
であることが予想される。
【0031】交差飽和現象のシミュレーションによる
と、10% H2O/90% 2H2Oの条件の下では重水素化FB中のア
ミドプロトンは他のアミドプロトンからの距離がスピン
間相互作用の無視できるレベルにまで長くなるため、複
合体中でのFBの分子内スピン拡散による影響は効果的に
抑えられることになる(後述する交差飽和のシミュレー
ション)。即ち、FB分子の易動性水素原子の重水素化を
高度に行うことで、初めて分子間交差飽和現象を特異的
に観測することができるのである(図8(FB-Fc複合体
における、プロトン間距離の分布)参照。)。ところ
で、TROSY-HSQCは適当なタンパク質濃度(0.5〜1.0 mM)
であれば、ここで採用した溶媒条件では現実的な測定時
間(〜24 hrs)でも十分に観測できる。
【0032】6.FB-Fc複合体への交差飽和の適用(10%
H2O/90% 2H2O) 図9は交差飽和の結果(10% H2O/90% 2H2O)を図示し、
図9(a)と図9(b)は、溶媒中の軽水/重水濃度が10%
H2O/90% 2H2Oである二重標識したFBと非標識のFcフラ
グメントに対して測定した1H-15N TROSY-HSQCスペクト
ルであり、それぞれ図9(a)がラジオ波照射を行って
いない場合のスペクトル、図9(b)がラジオ波照射を
行った場合のスペクトルである。
【0033】複合体中のFBに対する1.2 secのラジオ波
照射による効果は、図9(b)に明確に現れている。幾
つかの交差ピークの強度は明らかにラジオ波照射により
減少している。これは複合体中のFcフラグメントの飽和
が相互作用界面を通してFc結合状態のFB分子に移動した
ことを示していると言える。但し、溶媒中の軽水/重水
濃度が90% H2O/10% 2H2Oの場合と比べてそれぞれのシグ
ナル強度変化に大きなばらつきが見られることが特徴と
して挙げられる。
【0034】7.交差飽和の結果 図10(交差飽和における交差ピークのシグナル強度比
のプロット)はラジオ波照射した場合とラジオ波照射し
なかった場合に得られた交差ピークのシグナル強度比を
FBのアミノ酸残基に対してプロットしたグラフである。
10% H2O/90% 2H 2Oの条件の下では、ヘリックスI(Gln10
-His19)とヘリックスII(Glu25-Asp37)にシグナル強
度比が小さい残基が特徴的に観測されている(図10参
照。)。更に、興味深いことにヘリックスIとIIにおい
て3又は4残基毎にその小さい値が観測されており(ヘ
リックスIではGln 11, Tyr 15, Leu 18、ヘリックスII
ではAsn 29, Ile 32, Lys 36)、これはヘリックスIとI
Iで、一方の面がFcフラグメントの結合に関与している
ことを示している。これらの結果はX線結晶構造での情
報と良く一致している。
【0035】また、溶媒中の軽水/重水濃度が90% H2O/1
0% 2H2Oの条件での結果も同様のプロットを行った。シ
グナル強度比を示すプロットはもはやスピン拡散のため
に特徴的なパターンを示さなくなっている。特に、アミ
ドプロトン間距離が近接しているヘリックス領域では隣
り合ったアミノ酸残基が10% H2O/90% 2H2Oの条件に比
べ、同じシグナル強度変化を示すようになっている(図
10に破線で示す。)。即ち、交差飽和では溶媒中の軽
水濃度を低く抑えておくことが極めて重要なことだと言
える。
【0036】8.FBのFc結合部位の比較 図11はFBのFc結合部位の比較のために図示したもの
で、図11はFBのFc結合部位をX線結晶構造解析で求め
られたものと、交差飽和を含むNMR法により明らかとな
ったものとを比較した図である。図11(a)ではX線結
晶構造でFcフラグメントとの結合により溶媒接触表面が
覆われた残基として挙げられたものをFBの構造(Gouda
et al., 1992; Gouda et al., 1998参照。)上にマッピ
ングしたものである。また、図11(b)や図11(c)
はそれぞれ、Fcフラグメントに結合することにより変化
した、FB分子の主鎖アミドプロトンの化学シフトやH-D
交換速度を指標として明らかにされた相互作用部位を示
している。
【0037】図11(b)や図11(c)よりNMR情報か
らFB分子のヘリックスIとIIがFcフラグメントとの結合
に主に関与していることが分かる。しかし、X線結晶構
造解析により明らかとなった相互作用界面に位置する残
基の幾つかはFcと結合しても、その化学シフトやH-D交
換速度は変化していないことが分かる。更に、Fcとの結
合に伴う化学シフト変化やH-D交換速度変化はFB分子の
表面はもとより内部の残基でも観測されていた。このこ
とは、Fcの結合が、FB分子内部の僅かな構造変化や運動
性又はフォールディングに影響を及ぼして、間接的に化
学シフトやH-D交換速度に影響を及ぼしていると考えら
れる。
【0038】一方、交差飽和により明らかとなった相互
作用界面を形成する残基(図11(d))はX線結晶構造
解析により明らかとなったものと殆ど一致している。即
ち、交差飽和は相互作用界面を従来法よりもより正確に
同定することができる。
【0039】以上の説明から明らかなように、本発明に
おいては、複合体を構成する複数の生体分子のうち、一
の生体分子の非易動性水素を重水素に、その易動性水素
の少なくとも70%、好ましくは80〜90%程度を重
水素に、それぞれ置換し、交差飽和現象(Cross satura
tion phenomena)を起こさせることにより、複合体相互
作用界面残基をより正確に同定することができるので、
本発明方法は、化学シフト変化やH-D交換速度変化を指
標にした従来の方法よりも明らかに優れていると言え
る。それは、この方法が複合体中、隣接する二分子間の
空間的な距離に強く依存した交差飽和現象を利用し、更
に部分的に重水素化することによって隣接する水素原子
を介した交差飽和の過剰な拡散を防止することができる
ためである。また、この方法はTROSYスキームを用いて
いることから、更に分子量の大きいタンパク質複合体に
対して適用することができると共に、他の複合体、例え
ばタンパク質-DNA複合体やタンパク質-脂質複合体に対
しても適用できると言える。
【0040】
【発明の作用】交差飽和現象を利用したもので、これは
相互に隣接する二分子間の空間的な距離に強く依存した
現象であるため、従来法に比較して厳密に相互作用界面
を同定することができる。
【0041】被同定生体分子の相互作用界面付近に存在
する、アミドプロトン等の易動性プロ トンはその界面
を介して複合体中これと隣接する生体分子の飽和された
プロトンとの交差緩和の機構により飽和の移動が生じる
ためと考えている。
【0042】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明す
る。尚、この実施例により本発明は何ら制限されること
はない。
【0043】(実施例1)以下、特に詳細な手順を中心
に具体的に説明する。 1.FBフラグメントの調製 プロテインAのFBフラグメントとサケ成長ホルモンとの
融合タンパク質をコードする遺伝子(Torigoe et al.,
1990参照。)を配列表配列番号1及び2に示すプライマ
ー5'-GCGCCCATGGAAAACCAACGGCTCTTCAAC-3'と5'-GCGCGGA
TCCTTAGGCCTTTGGCGCCTGAG-3'(下線は制限酵素サイトBa
mHIとNcoI、枠で囲んだ所はそれぞれ開始コドンと終止
コドンである)を用いてPCRで増幅した。PCR産物をNcoI
とBamHIで制限酵素消化し、T4 DNA ligseで処理するこ
とによりpET3d(Novagen, Inc.,Madison, WI)のNcoI、
BamHIサイトにクローニングした(図12(プロテインA
のFBフラグメントの大腸菌発現系構築とその遺伝子産物
を図示)参照。)。構築した発現ベクターpET-SpAはE.
coli BL21(DE3)細胞(Novagen, Inc., Madison,WI)に
トランスフォーメーションを行い、Ampicillin耐性クロ
ーンのプラスミドDNAのORF全長DNA塩基配列を確認した
(Phramacia-Biotech Gene-Rapid DNA sequencer)。
【0044】均一に2Hと15Nで標識したFBは、15NH4Cl、
[U-2H]glucoseと99.5% 2H2Oを組み合わせて調製したM9
最小培地を用いて培養し、基本的に以前に報告された方
法(Venters et al., 1995参照。)に従った。また、
2H, 13C, 15Nで均一を標識したFBを調製するときは、炭
素源として[U-13C]acetateを用いた。菌体(2 g)は直
接20 mlの70% formic acidに溶解させた後、50 mg/mlに
なるように1.0 gのBrCNを加え室温で攪拌しながら2 hr
反応させた。このとき、反応系は窒素ガスで十分交換さ
せていた。反応後50 mlの20 mM PBS(pH 7.4)とNaOHを適
量加えてpHを7.4に調整した後、25,000×gで30 min遠心
し、その上清を20 mM PBS(pH 7.4)で平衡化したφ1.5 c
m×10 cmのIgG Fast Flowカラム(Pharmacia-Biotech)
にアプライした。カラムは40 mlの100 mM Gly-HCl(pH
3.0)で溶出させ、その全量を分取した。得られたフラク
ションは、凍結乾燥を行い15 mlの0.1% TFAを含むMilli
Qに溶解させた後、ODS-AM AM-303(YMC Co. Ltd.)にアプ
ライした。カラムは1.0 ml/minの流速で0〜70% CH3-CN
の直線グラジエントをかけ、20 mlのフラクションを分
取した。FBは〜30% CH3-CNで溶出した。尚、低分子性の
不純物は20 mMのPBS(pH 7.4)で平衡化したφ 2.0 cm×3
0 cmのSuperrose 12カラム(Pharmacia-Biotech)を用
いて除き、その後再び逆相HPLCで精製を行った。逆相HP
LC(高速液体クロマトグラフィー)精製したタンパク質
は凍結乾燥した後に重量を測ることで定量した。
【0045】2.Fcフラグメントの調製 Fcフラグメントはヒトミエローマ細胞由来のIgG(κ) Ik
e-Nを用い、その調製は以前に報告された方法(Gouda e
t al., 1992参照。)に従った。
【0046】3.NMR測定条件とその解析について サンプルは450 μlの20 mM PBS(pH 6.0)のH2O/D2O中、
2H, 15N均一標識したFB(60 residues; 7 kDa)1.0 mM
と非標識Fc(50 kDa)をモル比2:1で混合した複合体(6
4 kDa)溶液を用いた。
【0047】NMR測定は、Bruker DRX600スペクトロメー
ターを用い、測定温度303Kで行った。
【0048】プロトンの化学シフトはDSSを基準として
求めた。15Nと13Cの化学シフトは1H/X絶対周波数比をそ
れぞれammoniaとDSSに対して0.10132905212と0.2514495
223であることを基に、間接的に求めた(Live et al., 1
984; Bax and Subramanian, 1986; Wishart et al., 19
95参照。)。
【0049】また、全てのスペクトルは、nmrPipe/nmrW
ish(Delaglio et al., 1995参照。)により処理と解析
を行った。
【0050】A. TROSY-Cross saturation experiment 交差飽和は図4(交差飽和に用いるNMRパルススキー
ム)に示したパルススキームを用いて行い、256×1024
ポイントのデータマトリックスを取り込み時間70.2 mse
c(t1), 53.3 msec(t2)で測定した。Fcフラグメントの脂
肪族領域プロトンの飽和はWURST-2デカップリングスキ
ーム(Kupce and Wagner, 1995参照。)を用いた。WURST
-2(adaibatic factor Q0=1)に対する最大ラジオ波強度
は0.17kHzである。飽和中心周波数は0.9ppm。測定時間
は繰り返しの待ち時間を3.2 sec(調整時間を2.0 sec(T
adj)、飽和時間を1.2 sec(Tsat))で20 hrである。
【0051】B. TROSY-HNCA 3D HNCAスペクトルは48×64×1024ポイントのデータマ
トリックスを取り込み時間13.2 msec(t1), 7.1 msec(t
2), 61.1 msec(t3)で測定した。各取り込み間の待ち時
間は、1.8secに設定したため全測定時間は2.0 daysであ
った。
【0052】C. TROSY-HN(CO)CA 3D HN(CO)CAスペクトルは、48×64×1024ポイントのデ
ータマトリックスを取り込み時間13.2 msec(t1), 7.1 m
sec(t2), 61.1 msec(t3)で測定した。各取り込み間の待
ち時間は、1.8secに設定したため全測定時間は2.0 days
であった。
【0053】(FB-Fc複合体でのFBのアミドプロトン T1
の評価)FB-Fc複合体タンパク質では、FBが高度に重水
素化されているためFBのアミドプロトンの縦緩和時間が
通常のタンパク質に比べて非常に長くなっていることが
予測される(Wang et al., 1999参照。)。そこで、交
差飽和の測定を行う上でパルス間の最適な待ち時間を決
めるために、アミドプロトンの縦緩和時間を測定する必
要がある。それは、各パルス間の待ち時間(データの取
り込み時間も含む)を2.5sec, 5.0secで測定したwater-
flip-back TROSY-HSQCスペクトルにおけるシグナル強度
比から評価できる。但し、始めのINEPT後の1Hにおける
2ステップの位相回し(90± y)によって、15Nのボルツ
マン成分(Pervushin et al., 1998参照。)によるシグ
ナルへの影響を取り除く必要があることに注意する必要
がある。
【0054】図13(非標識のFcとの複合体を形成し
た、98% 2H/15N均一標識FBの緩和時間)から、FBのアミ
ドプロトン T1は幅広い値を持ち、特にヘリックスIIIの
アミドプロトンの幾つかはより長いT1を有していること
が分かる。アミドプロトンのT1緩和は指数間数的な振る
舞いはしないが、求められた値は1Hの核磁化が飽和され
た後の2.5 secから5.0 secまでに起こる磁化の回復率の
平均に対応する。S/Nの観点から、各測定間の待ち時間
を〜6 secにするのがFB-Fc複合体にとっては適当だが、
HSQCスペクトルを必要とされる分解能で測定するための
最小時間でも現実的な測定時間とはならない。S/Nと分
解能の妥協点として3.2 secの待ち時間(交差飽和で
は、Tadj+Tsatに対応する)を実際の測定には用いた。
【0055】(交差飽和に用いるラジオ波(Stretched a
diabatic pulse WURST2)の帯域)既に、1H-1D NMRスペ
クトルによりFcの飽和は十分に達成されていることを確
認しているが、ここでは用いたラジオ波がどれ位いの周
波数領域に渡って有効に作用するかを明らかにするため
に、単一のプロトンシグナルの飽和により詳細に求め
た。図14(交差飽和に用いるラジオ波の帯域)は、交
差飽和に用いたWURST-2タイプのadiabatic shaped-puls
eの帯域をDSSの1.755 ppmのメチレンプロトンの飽和を
観測することで明らかにしたNMRスペクトルの結果であ
る。スペクトルからおよそ2.0 kHzの領域が効果的に飽
和を受けることが分かる。それは、図5(1H-1D NMRス
ペクトルによるFcフラグメントの飽和の確認)(a)に
示した領域に相当し、Fcのメチルプロトン領域を選択的
に飽和させることが可能であることが示唆される。ま
た、水シグナルの領域に対しては殆ど効果を持たないこ
とを示唆する。
【0056】(FBのNMRシグナルの帰属)FBの主鎖アミ
ド基由来1H-15N HSQC NMRシグナルの帰属は、連鎖帰属
法により明らかにした。表1(FBの主鎖アミド窒素とア
ミドプロトンの化学シフト)は、FB各アミノ酸残基にお
ける主鎖アミドプロトンとアミド窒素のNMRシグナルの
化学シフトを示した表である。
【0057】
【表1】
【0058】(交差飽和のシミュレーション)交差飽和
現象の基になっている原理は、プロトン核磁化間のスピ
ン‐スピン相互作用による交差緩和である。交差緩和は
スピン間の距離に依存することから、プロトンスピン間
距離からその振る舞いを予測することが可能である。こ
こでは、X線結晶構造が求められたFB-Fc複合体の座標を
用いることで交差飽和のシミュレーションを行った。そ
れは、Fc中のプロトンを時間1.5 secの間飽和させたと
き、FB側のプロトン磁化が交差飽和を受ける度合いを予
測した。但し、交差飽和のシミュレーションにはプログ
ラムCORONA(Zheng et al., 1997参照。)を改変したも
のを用いた。
【0059】図15(交差飽和のシミュレーション)
は、溶媒中の軽水/重水濃度が0% H2O/100% 2H2O, 10% H
2O/90% 2H2O, 90% H2O/10% 2H2Oの場合における、FBの
ヘリックスI前後のアミノ酸残基中アミドプロトンのシ
グナル変化をプロットした図である。但し、溶媒中の軽
水/重水濃度が0% H2O/100% 2H2OとはFB分子のプロトン
が観測プロトンのみであることを意味しており、分子内
のプロトン間の相互作用がない条件下での結果に対応す
る。0% H2O/100% 2H2Oと比較すると、10% H2O/90%で殆
ど得られる結果に違いがないのに対し、90% H2O/10% 2H
2Oでは隣り合ったアミドプロトンのシグナル強度変化が
殆ど同じになっている。これは、90% H2O/10% 2H2Oでは
アミドプロトン間が近接しているため分子内スピン拡散
が効果的に起こったためであると考えられる。一方、10
% H2O/90% 2H2OではFB分子中のアミドプロトンが完全に
独立である条件(00% H2O/100% 2H2O)とほぼ同じ結果
を与えることから、10% H2O/90% 2H2Oの条件の下ではFB
分子内のプロトンが分子内の他のアミドプロトンからの
距離がスピン間相互作用の無視できるレベルにまで長く
なり、複合体中でのFBの分子内スピン拡散による効果は
無視できるレベルにまで抑えられることになると考えら
れる。
【0060】(交差飽和における飽和時間(Tsat)につ
いて)分子内緩和を抑えた条件で測定するのが交差飽和
のポイントであるが、飽和時間を長くすることでも分子
内緩和はより強く観測される。即ち、飽和時間(Tsat)
は交差飽和における重要な条件の一つであり、分子内緩
和を抑えた最大の飽和時間に設定することが重要である
と言える。図16(飽和時間(Tsat)に対するシグナル
強度変化)は飽和時間に対するラジオ波照射を行わなか
った場合に対する、ラジオ波照射を行った場合の主鎖ア
ミドプロトン由来の交差ピークシグナル強度比である。
交差飽和で用いた飽和時間(Tsat = 1.2 sec)では、分
子量64,000の複合体の分子中でもFB分子内でのスピン拡
散を起こさない程度であり、かつ十分な交差ピークのシ
グナル強度減少をもたらすものであることを示してい
る。但し、この方法で用いられたサンプルの溶媒中に含
まれる軽水の濃度は、かなり低いことに注意すべきであ
る。
【0061】(交差飽和における溶媒中の軽水濃度の影
響について)交差飽和では、FcからFBへの飽和移動を溶
媒中のプロトン濃度を10%にすることでFB分子内のプロ
トン密度を低く抑え、複合体相互作用界面に限定的に交
差飽和現象が観測されるような条件を設定していた。実
際、90% H2Oの条件では分子内緩和が強く現れ、プロト
ン間距離が極めて近いヘリックス内ではほぼ同様のシグ
ナル強度減少が観測された。但し、溶媒中の軽水濃度が
減少することは、即ちNMR観測核の濃度が減少すること
で、NMRスペクトルの測定時間が増加するという欠点を
持っている。
【0062】そのため、現実的には分子内緩和が現れな
い最大の溶媒中軽水濃度の条件を見出すのが重要である
と言える。前記交差飽和のシミュレーションと同様にし
て溶媒中の軽水濃度が違う条件下でシミュレーションを
行うと図17(溶媒中の軽水濃度に対する交差緩和に対
する影響)に示すような結果となった。10% H2O/90% 2H2
O((a)点線)と比較すると、20% H2O/80% 2H2O
((a)実線)では殆どシグナル強度変化に大きな違い
は生じないが、30% H2O/70% 2H2O((b)実線)では隣
接したアミノ酸残基のシグナル強度変化の差が小さくな
っていることが分かる。これは、分子内のプロトン密度
が高くなり分子内緩和現象が無視できないレベルになっ
たためであり、交差飽和に適さないと考えられる。以上
の結果を基に、20% H2O/80% 2H2Oの溶媒中での交差飽和
現象が最適な条件であると結論し実際に測定を行ったと
ころ、10% H2O/90% 2H2Oと殆ど同じ結果が得られた。図
18に交差飽和の結果(20% H2O/80% 2H2O)を、図19
に交差飽和における交差ピークのシグナル強度比のプロ
ット(20% H2O/80% 2H2O)をそれぞれ示す。
【0063】以下に、本願明細書中で引用、参照した参
考文献のリストを示す。 1. Akasaka, K. (1981), Longitudinal relaxation of
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【0069】
【発明の効果】本発明によれば、生体分子複合体におけ
る相互作用界面を従来法に比較してより厳密に決定する
ことができる。その結果、例えば生体分子複合体がタン
パク質Aとタンパク質Bの複合体の場合、個々のタンパ
ク質の立体構造のみを基に、AとBの複合体の立体構造
を導き出すことが可能である。また、タンパク質Aの相
互作用界面を同定することによって、タンパク質Bと結
合するために必要な最低限の構造単位が分かる。従っ
て、その部分のみを模倣して、タンパク質Bと結合する
低分子化合物を調製することが可能となる。タンパク質
Bがレセプターであれば、調製した低分子化合物がアゴ
ニストやアンタゴニストとして機能することであろう。
このような手順に代表されるように、本法を応用するこ
とによって、工業的に重要な新規薬物等を調製すること
も可能となる。
【0070】
【配列表】 SEQUENCE LISTING 〈110〉味の素株式会社 (Ajinomoto Co., Inc.) 〈120〉生体分子複合体の界面残基を同定する方法 〈130〉P6757AJ 〈160〉2
【0071】 〈210〉1 〈211〉30 〈212〉DNA 〈213〉Artificial Sequence 〈220〉 〈223〉Description of Artificial Sequence : primer 〈400〉1 gcgcccatgg aaaaccaacg gctcttcaac 30
【0072】 〈210〉2 〈211〉30 〈212〉DNA 〈213〉Artificial Sequence 〈220〉 〈223〉Description of Artificial Sequence : primer 〈400〉2 gcgcggatcc ttaggccttt ggcgcctgag 30
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はプロテインAと免疫グロブリンGの模式
図である。図1(a):プロテインA;及び図1
(b):免疫グロブリンG。IgG binding domains:IgG
結合領域。
【図2】図2はFcに対するFB相互作用界面を三次元
構造上に図示したものである。図2(a):化学シフト
変化による解析結果;図2(b):H−D交換による解
析結果;及び図2(c):X線結晶構造解析結果。
【図3】図3は本発明者等により開発された交差飽和の
概念図である。 R.F.:ラジオ波;CROSS SATURATION:交差飽和;Protei
n I:プロテインI;Protein II:プロテインII。
【図4】図4は、本発明者等により開発された交差飽和
に用いるNMRパルススキームを図示したものである。パ
ルスは特に記載が無い限りx軸方向からかけている。細
い棒は90°パルスを、太い棒は180°パルスをそれぞれ
表している。Gzと示された線はz軸方向にかけたサイン
型パルス磁場勾配の強度と持続時間を表しており、それ
ぞれ次の通りである。GI=600μsec, 7.5 Gcm-1; G2=100
0μsec, 10 Gcm-1; G3=600μsec, 14.5 Gcm-1; G4=600
μsec, 20 Gcm-1。遅延時間Δは2.25msecである。ま
た、次の位相回しのスキームを用いた。φ1={y,-y, x,
-x}; φ2={-y}; φ3={-y}; φ4={-x}; φ5={-
y}; φ6(receiver)={y,-y}。15N(t1)次元では、位
相敏感スペクトルを各t1増加の2回目のFID取り込みを
次のように行うことで得、データ解析は参考文献(Perv
ushin et al., 1998参照。)に従った。φ1={y,-y, x,
-x}; φ2={y}; φ3={y}; φ4={-x}; φ5={y};
φ6(receiver)={-x, x}。
【図5】図5は1H-1D NMR による選択的ラジオ波照射の
確認に用いたNMRスペクトルを示す。図5(a):ラ
ジオ波照射の有無によるスペクトル;図5(b)前記ス
ペクトルの水シグナル領域の拡大図。Irradiation(-):
ラジオ照射を行わなかった場合;Irradiation(+):ラ
ジオ照射を行った場合。
【図6】図6は交差飽和の結果を図示したものである。
図6(a):ラジオ波照射を行っていない(ラジオ波照
射強度を120 dBに設定した)スペクトル;図6(b):
ラジオ波照射を行ったスペクトル。
【図7】図7はFB分子内のアミドプロトン間距離の模式
図である。 ●:HN(アミドプロトン)
【図8】図8はFB-Fc複合体におけるプロトン間距離の
分布を図示したものである。 FB:標識(重水素化);Fc:非標識。灰色の棒(二組
の棒のうち左側):H(FB)-H(FB);黒色の棒(二組の棒
のうち右側):H(FB)-H(Fc)。
【図9】図9は交差飽和の結果(10% H2O/90% 2H2O)を
示すもので、溶媒中の軽水/重水濃度が10% H2O/90% 2H2
Oである二重標識したFBと非標識のFcフラグメントに対
して測定した1H-15N TROSY-HSQCスペクトルでる。図9
(a):ラジオ波照射を行っていない場合(ラジオ波照
射強度を120dBに設定);及び図9(b):ラジオ波照
射を行った場合のスペクトル。
【図10】図10は交差飽和における交差ピークのシグ
ナル強度比のプロットを図示したものである。
【図11】図11は様々な手法によって得られたFBのFc
結合部位を比較したものである。図11(a):X線結
晶構造解析;図11(b):化学シフト変化;図11
(c):H−D交換速度変化;及び図11(d):交差
飽和。
【図12】図12はプロテインAのFBフラグメントの大
腸菌発現系構築とその遺伝子産物を図示したものであ
る。図12(a):pET−SpAの構造スキームの概
念図;及び図12(b):pET−SpAにより発現さ
れるタンパク質の模式図。
【図13】図13は非標識のFcとの複合体を形成した、
98% 2H/15N均一標識FBの緩和時間を図示した。図13
(a):溶媒中の軽水濃度が10%の場合;及び図13
(b):溶媒中の軽水濃度が90%の場合の値を示して
いる。
【図14】図14は交差飽和に用いるラジオ波の帯域を
図示したものである。
【図15】図15は交差飽和のシミュレーションを示し
たものである。
【図16】図16は飽和時間(Tsat)に対するシグナル
強度変化を図示したものである。
【図17】図17は溶媒中の軽水濃度に対する交差緩和
に対する影響を図示したものである。Residue number:
残基番号。図17(a):20% H2O/80% 2H2O(実線)と
10% H2O/90% 2H2O(破線)の比較;及び図17(b):
30% H2O/70% 2H2O(実線)と10% H2O/90% 2H2O(波線)
の比較。Helix I:へリックスI。
【図18】図18は交差飽和の結果(20% H2O/80% 2H
2O)を示すスペクトル図である。図18(a):ラジオ
波照射を行わなかった場合;及び図18b:ラジオ波照
射を行った場合のスペクトル。
【図19】図19は交差飽和における交差ピークのシグ
ナル強度比のプロット(20% H2O/80% 2H2O)を図示した
ものである。 Residue number: 残基番号。実線:20% H2O/80% 2H2O;
破線:10% H2O/90% 2H 2O。Helix I:へリックスI;Heli
x II:へリックスII;Helix III:へリックスIII。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12P 21/02 G01N 24/08 510D (C12P 21/02 510Q C12R 1:19) C12N 15/00 ZNAA

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】複合体を構成する複数の生体分子のうち、
    一の生体分子の非易動性水素を重水素に、その易動性水
    素の少なくとも70%を重水素に、それぞれ置換した
    後、交差飽和現象により、これに隣接する他の生体分子
    に含まれる水素から10Å以内に存在する当該一の生体
    分子中に含まれ、交差飽和を受ける易動性水素の位置を
    特定することを特徴とする生体分子複合体の界面残基を
    同定する方法。
  2. 【請求項2】当該一の生体分子の易動性水素の80〜9
    0%が重水素で置換される請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】交差飽和現象がアディアバティックシェイ
    プトパルス法によるものである請求項1記載の方法。
  4. 【請求項4】当該一の生体分子が、タンパク質、核酸又
    は脂質である請求項1記載の方法。
  5. 【請求項5】当該複合体を構成する生体分子の少なくと
    も一つがタンパク質、核酸又は脂質である請求項1記載
    の方法。
  6. 【請求項6】当該一の生体分子の非易動性水素の少なく
    とも80%が重水素で置換される請求項1記載の方法。
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