JP4585527B2 - 原子炉システムのトリップ制御方法及び原子炉システム - Google Patents
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Description
本願は、2005年4月1日付けで出願された「Over Temperature and Over Power Delta-T Operating Margin」という名称の米国仮特許出願第60/667、320号の利点を主張するものである。
図1は、加圧水型原子炉(PWR)2と、その蒸気発生器6のためのホットレグ流体温度測定アセンブリ4とを、簡単な形で示す。一般的に、原子炉2は、管路8を介して水を受け取り、その水を加熱し、その水は、ホットレグとして知られている、別の管路10において原子炉2を出る。管路内を流体が流れる方向に対して垂直な円形平面上に配置される3つのセンサA、B、Cを示すために、図1において、ホットレグ10は、拡大された簡単な断面の形で示される。センサA、B、Cは、たとえば、熱電対或いは任意の他の既知の、又は適当な熱応答抵抗デバイスを含み、リードA1、B1、C1によってプロセッサ12に接続される。図1の例では、プロセッサ12は、メモリユニット14と、センサA、B、Cによってそれぞれ与えられる温度TA、TB、TC(特に図示されない)を指示するためのディスプレイ16とを備える。ホットレグ10内の総合的な測定温度内の偏り又はオフセット誤差を再現可能な値まで低減するために、その相対的な大きさに基づいて、TA、TB、TCに異なる重み係数を割り当てることが知られている。たとえば、TAが最も低い測定温度を生成するものと仮定すると、それは他のセンサよりも小さな重み値を受信し、TAのための重み係数が20パーセントである場合には、TB及びTCのための重み係数がそれぞれ40パーセントであるようにする。このようにして、最も雑音が多いセンサ(すなわちTA)には20パーセントの重み係数が割り当てられ、その誤差は、他の2つのセンサにおけるTB及びTCのオフセットの和の20パーセントである。この誤差は、解析において、又は基準化において相殺することができる。こうして、最も雑音が多いセンサに20パーセントだけの重み付けされた値を割り当てることによって、温度の揺らぎの影響を小さくすることができ、動作マージンを大きくすることができる。上記の方法及びシステムは一般的に知られており、米国特許第5,253,190号にさらに詳細に記述される。
図3に示されるように、本発明は、OTDT及びOPDTの動作マージン回復方法118及びRTS120を提供し、望ましくない温度の揺らぎに対応するためのフィルタリングが、単一のフィルタ126を用いることによって、ホットレグ10においてのみ実行される。具体的には、たとえば、限定はしないが、約1〜約4秒の可変の時定数を有するローパスフィルタがホットレグ10に導入される。さらに、本発明の目的は、OTDT及びOPDTチャネル又は回路130、136において個別に用いられるべき、ホットレグ温度及びコールドレグ温度Thot及びTcold、並びにそれぞれに関連付けられる温度信号13、15を分離することである。具体的には、たとえば、限定はしないが、蒸気破断のような事象に起因してコールドレグ11の温度が変化する図2の既存のフィルタリング方式によれば、デルタTの大きさがフィルタリングされ、低減される(たとえば、デルタTプロット、詳細には、図4に描かれる実線において示される、第1のスパイクを参照されたい)。逆に、図3の提案されたフィルタリング方式によれば、コールドレグ11の温度の変化はデルタTに影響を及ぼすことになり(たとえば、図5に描かれる実線において示される、デルタTプロットを参照されたい)、Thotフィルタは、デルタT信号又はOPDT(たとえば、図7に描かれる実線において示されるマージンプロットを参照されたい)を変更しないので、原子炉トリップは、必要に応じて生じることになり、それにより、炉心が目的どおりに保護される。したがって、図3に示される、本発明の提案されたフィルタリング方式及び方法によれば、ホットレグ温度の揺らぎを個別に動的に補償できるようになり、揺らぎによってOPDTトリップ機能が影響を及ぼされることがないという利点がある。
1.負荷遮断解析:本発明のThotだけのフィルタ126は、既知のRTS20(図2)の既存のTavgフィルタ26、デルタTフィルタ28よりも約2〜3パーセント高い負荷遮断能力を与えた。たとえば、既存のフィルタリング方式の場合に、その原子力発電所が、100%からの36%〜37%負荷遮断を乗り切ることができる場合には、本発明による提案されたThotだけのフィルタリングの場合には、その原子力発電所は、原子炉トリップを生じることなく、39%〜40%負荷遮断を乗り切ることができるであろう。
2.100%出力時蒸気配管破断(SLB)解析:本発明によるThotだけのフィルタリングは、既存のシステム20(図2)よりも約4〜5パーセント高い出力ピークを与え、それゆえ、安全マージンを与えた。
3.定常状態の揺らぎ:例示的な動作マージン回復方法118は、Tavg及びデルタTのフィルタリングが提供された場合と概ね同じ動作マージン回復を与え、それにより、本発明の個別のThotフィルタ126及び方法118の効率を実証した。
4.出力時制御棒引抜き(RWAP)過渡応答:RWAP過渡応答解析の結果は、T−hotだけのフィルタリングの場合、最小DNBRに関して、より限定的になることがある。しかしながら、ホットレグ10内のフィルタ126の時定数を最適化することによって、安全マージンを保持することができる。さらに、先に説明されたような、本発明の例示的な単一フィルタシステム120及び方法118の利点は、いかなる差があるにしても、はるかに勝っている。
5.制御棒制御システムの影響:本発明によるThotだけのフィルタリングは、制御システムのためにTavgが用いられるので、より良好な制御棒制御を与えた。本発明に従って、ホットレグ10内でフィルタを用いることにより、Tavgの揺らぎが減少し、それゆえ、制御棒の動きが減少する。
Claims (7)
- 原子炉システムで実行される原子炉システムのトリップ制御方法であって、
前記原子炉システムは、原子炉の炉心温度及び炉心出力分布を有し、蒸気発生器と、原子炉冷却システムと、原子炉トリップシステムとを備え、
前記原子炉冷却システムが、前記原子炉で加熱されたホットレグ流体の温度を測定し、ホットレグ流体のみの温度の揺らぎに起因する信号の摂動を平準化する単一のフィルタによりフィルタリングされたホットレグ温度信号を出力すると共に、前記ホットレグ流体を前記蒸気発生器へ送り、熱交換後のコールドレグ流体の温度を測定し、フィルタリングされていないコールドレグ温度信号を出力し、前記コールドレグ流体を前記原子炉に戻して前記原子炉を冷却する工程と、
前記原子炉トリップシステムが、前記原子炉冷却システムから出力されるフィルタリングされた前記ホットレグ温度信号と、フィルタリングされていない前記コールドレグ温度信号との平均値を用いて原子炉の緊急停止の判断基準とする過熱デルタ温度設定値、及び過出力デルタ温度設定値を設定し、前記原子炉冷却システムから出力されるフィルタリングされた前記ホットレグ温度信号と、フィルタリングされていない前記コールドレグ温度信号との偏差として演算される1次冷却材温度差が前記過熱デルタ温度設定値を超えるか、あるいは前記1次冷却材温度差が前記過出力デルタ温度設定値を超えるかのいずれかの場合に前記原子炉を緊急停止させるトリップ信号を出力する工程と、
を含むことを特徴とする原子炉システムのトリップ制御方法。 - 前記原子炉システムは、前記原子炉を緊急停止させる制御棒の制御を行う原子炉制御システムをさらに備え、
前記原子炉トリップシステムが、前記1次冷却材温度差が前記過熱デルタ温度設定値を超えたときに原子炉トリップを開始させるために、前記原子炉制御システムに対してトリップ信号を出力すると共に、前記1次冷却材温度差が前記過出力デルタ温度設定値を超えたときに原子炉トリップを開始させるために、前記原子炉制御システムに対してトリップ信号を出力する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の原子炉システムのトリップ制御方法。 - 前記原子炉は加圧水型原子炉であることを特徴とする請求項1または2に記載の原子炉システムのトリップ制御方法。
- 炉心温度及び炉心出力分布を有する原子炉のための原子炉システムであって、
蒸気発生器と、
前記原子炉で加熱されたホットレグ流体の温度を測定し、ホットレグ流体のみの温度の揺らぎに起因する信号の摂動を平準化する単一のフィルタによりフィルタリングされたホットレグ温度信号を出力すると共に、前記ホットレグ流体を前記蒸気発生器へ送り、熱交換後のコールドレグ流体の温度を測定し、フィルタリングされていないコールドレグ温度信号を出力し、前記コールドレグ流体を前記原子炉に戻して前記原子炉を冷却する原子炉冷却システムと、
前記原子炉冷却システムから出力されるフィルタリングされた前記ホットレグ温度信号と、フィルタリングされていない前記コールドレグ温度信号との平均値を用いて原子炉の緊急停止の判断基準となる過熱デルタ温度設定値、及び過出力デルタ温度設定値を設定し、前記1次冷却材温度差が前記過熱デルタ温度設定値を超えるか、あるいは測定された前記1次冷却材温度差が前記過出力デルタ温度設定値を超えるかのいずれかの場合に前記原子炉を緊急停止させるトリップ信号を出力する原子炉トリップシステムと、
を備えたことを特徴とする原子炉システム。 - 前記原子炉トリップシステムは、第1のコンパレータと第2のコンパレータをさらに備え、
前記第1のコンパレータは、測定された前記1次冷却材温度差と前記過熱デルタ温度設定値とを比較し、前記1次冷却材温度差が前記過熱デルタ温度設定値を超えた場合に前記原子炉を緊急停止させるトリップ信号を出力し、
前記第2のコンパレータは、測定された前記1次冷却材温度差と前記過出力デルタ温度設定値とを比較し、前記1次冷却材温度差が前記過出力デルタ温度設定値を超えた場合に前記原子炉を緊急停止させるトリップ信号を出力することを特徴とする請求項4に記載の原子炉システム。 - さらに、前記原子炉を緊急停止させる制御棒の制御を行う原子炉制御システムを備え、
前記原子炉トリップシステムは、
前記1次冷却材温度差が前記過熱デルタ温度設定値を超えたときに原子炉トリップを開始させるために、前記原子炉制御システムに対してトリップ信号を出力し、
前記1次冷却材温度差が前記過出力デルタ温度設定値を超えたときに原子炉トリップを開始させるために、前記原子炉制御システムに対してトリップ信号を出力することを特徴とする請求項4または5に記載の原子炉システム。 - 前記原子炉は加圧水型原子炉であって、
前記原子炉トリップシステムは、前記1次冷却材温度差が前記過熱デルタ温度設定値を超えたか、前記1次冷却材温度差が前記過出力デルタ温度設定値を超えたときに、前記加圧水型原子炉のトリップを開始させるトリップ信号を出力することを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1項に記載の原子炉システム。
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