JP4584473B2 - 呼吸用気体供給装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素又は窒素を選択的に吸着する吸着剤を用い、圧力変動吸着方式により空気から酸素を濃縮して患者等使用者に供給する酸素濃縮装置のような呼吸用気体供給装置に関する。更に詳細には、使用者の呼吸サイクルに対応して吸入時においてのみ呼吸用気体を供給する装置であり、使用者の呼吸位相と共にその呼吸経路(経鼻及び経口)を検知、識別し、その呼吸に即応して患者の鼻孔及び/又は口部に呼吸用気体を供給することを特徴とする呼吸用気体供給装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、喘息、肺気腫症、慢性気管支炎等の呼吸器系疾患に苦しむ患者が増加する傾向があるが、その効果的な治療法の一つとして酸素濃度の高い呼吸用気体の吸入療法があり、空気から酸素濃縮気体を濃縮分離する酸素濃縮装置等の呼吸用気体供給装置が開発され、在宅医療用機器として一般に普及するようになってきている。
【0003】
一般家庭において長期間にわたって毎日使用されることが多いことから、装置の運転費用が少ない省電力型や日本の住宅事情に即した小型軽量の装置が望まれている。かかる要求を根本的に解決する方策の一つとして特公平3-22185に記載のような使用者の呼吸サイクルに対応して、吸入時においてのみ酸素濃縮気体を供給することが出来るようにして無駄な酸素濃縮気体の放出を防止し、装置効率を高める方法が提案されている。しかし、この方法は酸素濃縮器から延長されたチューブの先端につけられた鼻カヌーラ等により患者等使用者の呼吸情報を検知し、使用者の吸入時においてのみ酸素濃縮気体を鼻孔内に導入する方式であるため、就寝時等において使用者が口呼吸するような場合には、呼吸情報を検知することが出来ない。
【0004】
また別の何らかの手段で呼吸情報を検知し得たとしても呼吸をしていない鼻孔内に酸素濃縮気体が供給されることになるので、使用者は酸素濃縮気体を有効に吸入することが出来ず、血中酸素濃度の低下を招く等、この方法には重大な欠点があるため、就寝時を含め終日使用される可能性のある在宅医療用酸素濃縮装置のような呼吸用気体供給装置に対しては実質上採用できない状況にある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような課題を解決するものであり、患者等使用者が鼻及び口のいずれか一方または両方で呼吸する場合でも患者の呼吸サイクルに対応して、使用者の吸入時においてのみ呼吸用気体を供給し、かつ使用者がこれを有効に吸入することが出来るよう工夫された呼吸用気体供給装置である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる課題に対して本発明者らは鋭意検討した結果、患者等使用者の吸入時においてのみ呼吸用気体を供給する装置において、使用者の呼吸位相と共にその呼吸経路(経鼻及び経口)を検知、識別し、その呼吸に即応して使用者の鼻孔及び/又は口部に呼吸用気体を供給することによりその課題を解決するものである。
【0007】
即ち、本発明は、呼吸用気体の発生手段と、一端が該発生手段に連通し他端に該呼吸用気体の開放型供給手段を有し途中に自動開閉弁手段を有した導管手段と、呼吸における少なくとも一部の所定位相を検知し得る機能を有する呼吸位相検知手段と、該呼吸位相検知手段の検知結果に基づいて該自動開閉弁手段を制御するための制御手段を備え、使用者に呼吸用気体を供給する呼吸用気体供給装置において、使用者の呼吸が鼻呼吸か口呼吸かを識別する識別機能部を備え、識別結果に対応して鼻孔及び/又は口部に該開放型供給手段を介して呼吸用気体を供給する機能を有することを特徴とした呼吸用気体供給装置を提供するものである。
【0008】
また、該開放型供給手段が鼻孔供給手段及び口部供給手段を有し、該導管手段が該鼻孔供給手段、該口部供給手段への別々の流路を備えると共に、該自動開閉弁手段が、流路の開閉機能部及び該鼻孔供給手段、該口部供給手段への流路を選択する流路選択機能部を備えることを特徴とする呼吸用気体供給装置を提供するものである。
【0009】
また、該識別機能部が、該導管手段の該鼻孔供給手段、該口部供給手段への別々の流路間の圧変動を検出する手段であることを特徴とする呼吸用気体供給装置を提供するものである。
【0010】
また、該流路選択機能部が該識別機能部の識別結果に対応して各流路に流れる呼吸用気体の流量を制御する手段であることを特徴とする呼吸用気体供給装置を提供するものである。
【0011】
また、該開放型供給手段が鼻孔供給手段及び口部供給手段からなり、該導管手段が該鼻孔供給手段、該口部供給手段への別々の流路を備えると共に、各流路に自動開閉弁手段及び呼吸位相検知手段を備えることを特徴とする呼吸用気体供給装置を提供するものである。
【0012】
かかる本発明の手段により、呼吸が鼻及び口のいずれか一方または両方で行われた場合でも、吸入時において呼吸用気体を的確かつ有効に使用者に供給することができるので、就寝時にも安心して使用可能な、吸入時においてのみ呼吸用気体を供給する呼吸用気体供給装置の実現が可能となり、呼吸用気体供給量の節減による画期的な省電力化や小型軽量化がはかれる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の呼吸用気体供給装置は、例えば、空気からの酸素濃縮気体を使用者に供給する酸素濃縮装置であって、患者等使用者の呼吸サイクルに対応して吸入時においてのみ酸素濃縮気体を供給する装置であり、供給された酸素濃縮気体が使用者に有効に吸入されるよう鼻及び口呼吸に対応して各々患者の鼻孔及び/又は口部に呼吸用気体を供給する手段を備えたことを特徴とする酸素濃縮装置である。
【0014】
かかる装置において、呼吸用気体の発生手段としては、例えば、酸素又は窒素を選択的に吸着し得る吸着剤を充填した吸着床と、該吸着床に加圧空気を供給するコンプレッサーからなる吸着型酸素濃縮手段があげられる。その他高圧酸素ガスや液化酸素のように呼吸用気体が容器に貯蔵された形態のものを含め、各種の呼吸用気体の生成・発生手段、ならびに各種呼吸用気体の組成を有するものに適用できる。
【0015】
呼吸用気体の開放型供給手段としては、密閉されない状態即ち大気に開放された状態で使用者の鼻孔及び口部に対し呼吸用気体を供給できるものであって、例えば外形的には従来の鼻カヌーラを二つ合体させたような口鼻カヌーラであり、その鼻側の先端部は従来の鼻カヌーラと同様左右の鼻孔用に分岐し、口側の先端部は口呼吸の検知及び呼吸用気体の供給がより有効になるよう工夫された一本のノズル状のものがあげられる。
【0016】
自動開閉弁手段としては、流路の開閉機能と共に、呼吸用気体を開放型供給手段の鼻及び口側開口部に連通する接続流路に導くものであって、直流励磁式電磁弁、交流励磁式電磁弁、空気作動式自動弁、パイロット作動式電磁弁等の機構を持つものが好ましく、中でも鉄心等の動きがゆるやかで寿命が良く、かつ作動時の発生音が小さく低騒音化対策上有利な直流励磁式及び交流励磁式のものが好ましい。流路選択機能をもたらす手段の具体例としては、例えば実施例の2bのように仕切り板の位置を扇状に移動させて流路を選択する電磁流路セレクターがあげられる。また、どちらか一方の流路を選択するのみならず、例えば、仕切り板の位置を両者の間に位置させる等の方法により、通過する流体の流量を各流路に按分できるようにする手段もあげられる。
【0017】
呼吸位相検知手段としては、呼吸の際の呼気及び呼気のサイクルを検知する機能を持つものであればいかなるものであってもよく、具体例としては、呼気及び吸気の通路における気流の圧力、温度、湿度等、呼吸に基づいて変化する値を検知するための手段があげられる。その他に、例えば流体論理素子等の気体の流れ特性によるものもあげられる。
【0018】
圧力に基づく検知手段としては、圧力変動を検知するものと、圧力自体を測定するものがあるが、前者が実用上好ましく、特に圧力の変化速度を検知するようにしたものが感度を高めるうえで有効である。圧力変動を検知するための手段としては、例えば呼気及び吸気が通過する流路である鼻孔及び口部に開口部を有する導管に連通させてダイアフラム等を設けた圧力変動検知手段があげられる。
【0019】
ダイアフラム式の微圧変動検知手段にはステンレス等の金属材料を用いたものがあるが、その他に特開平01-021330号に記載される如き静電容量変化により圧力または差圧を測定するための誘電性物質で表面処理した高分子フィルムをダイアフラムして用いたものがあげられる。特にかかる高分子フィルムをダイアフラムとして用いた検知手段の場合には、数パスカル程度の微圧、微差圧の変動を検知するのに適している。なお、このような呼吸位相検知手段に連通し、他端が鼻孔及び口部への開放型供給手段に連通した導管は、呼吸用気体を鼻孔及び口部に供給するための導管手段とは別に設けてもよいが、両方の機能を各々一本の導管手段に持たせたものであってもよい。
【0020】
呼吸経路(経鼻及び経口)を識別する機能は、例えば呼吸位相検知手段に付帯させるが、自動開閉弁の制御手段に付帯させてもよく、また互いに機能を分担させるてもよい。
【0021】
呼吸位相検知手段に付帯させた具体例としては、上記ダイアフラムで仕切られた二つの空間と開放型供給手段に連通した各々の導管が別個に連通したものがあげられる。この場合、例えば静電容量値の変化の方向(増大または減少)からダイアフラムの湾曲方向、即ち呼吸が鼻あるいは口のいずれで行われたかの判断ができるものがあげられる。また、呼吸が鼻及び口の両方で行われた場合にも対応できる手段としては、例えば上記ダイアフラム二枚で仕切られた三つの空間のダイアフラム同士で囲まれる空間が大気と連通し、他の二つの空間が開放型供給手段の鼻及び口側開口部に連通した各々の導管と別個に連通したものがあげられる。
【0022】
呼吸位相を検知するための温度変化を検知する手段としては、熱電対等のように温度感知部材を鼻及び口での呼気及び吸気の通路即ち呼吸気流中に各々別個に置くものがあげられる。この検知手段において呼吸が鼻あるいは口のいずれで行われたかを識別する機能をもたらす手段の具体例としては、起電力が発生した熱電対の設置場所から識別するものがあげられる。また湿度変動の検知手段の例としては、湿度計を応用したものがあげられる。
【0023】
これらの中で圧力変動検知手段が、鼻孔及び口部での呼吸気流から離れた位置でその変動を検知できることから便利であり、特に圧力変動検知のための導管手段を、呼吸用気体を供給するための導管手段と共通にできる利点がある。
【0024】
かかる呼吸位相検知手段により検知する呼吸における少なくとも一部の所定位相としては、吸気開始時、呼気開始時等があげられる。特に、吸気開始時を所定位相として検知するようにしたものが吸気に対応させて呼吸用気体の供給が安定に行うことができるので実用上有利である。
【0025】
自動開閉弁の制御手段としては、検知手段により得られた呼吸情報に基づき、吸気の開始等に即応して流路の開閉を制御すると共に呼吸経路に対応した流路の選択を制御できるものであればよく、呼吸が鼻及び口の両方で行われ、各々の呼吸程度の相対的割合等に関する情報が検知手段により得られるような場合には、流路選択手段を通過する流体の流量を、例えばその程度に応じて各流路に按分するよう自動開閉弁の流路選択手段を制御できるようにしたものも含まれる。
【0026】
また本発明の呼吸用気体供給装置の導管手段の途中に、そこを通過する呼吸用気体を加湿するための加湿手段、呼吸用気体の一時貯留や圧力緩衝のためのタンク手段、流量等の測定・制御手段等の一部または全部を具備するようにしたものが実用上有利となる場合もある。
【0027】
本発明の呼吸用気体供給装置の特徴は、呼吸位相検知手段による検知・識別結果に基づいて、鼻及び口呼吸に対応して呼吸用気体供給導管の途中に設けた自動開閉弁手段の開閉及び流路選択を行うことによって、少なくとも吸気位相の一部において呼吸用気体を間欠的に鼻孔または口部に供給するようにして、呼吸用気体供給装置の画期的な省電力化や小型軽量化の実現を可能とする手段を具備せしめたことにある。
【0028】
【実施例】
図面を用いて本発明の呼吸用気体供給装置の具体的実施例について説明する。
ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
図1及び図2では、圧力変動吸着式酸素濃縮手段からなる酸素濃縮気体発生手段1からの酸素濃縮気体が、圧力変動の検知により呼吸位相を検知すると共にその情報の入信側を識別する圧力変動センサー4の検知・識別結果を基にデマンドコントローラー3により制御されるデマンドバルブ2を通過する。さらに、延長チューブ5を通過して鼻口カヌーラ6の開放型供給手段により供給される。デマンドバルブ2は酸素濃縮気体流路の開閉機能を持つ電磁開閉弁2aと流路の選択機能を持つ電磁流路セレクター2bで構成される。なお、酸素濃縮気体発生手段1自体の記載は、図1及び図2では省略する。
【0030】
図1では、呼吸が口で行われた時の呼吸情報、制御信号及び呼吸用気体の各々の流れを矢印で示す。口呼吸による圧力変動は鼻口カヌーラ6の口側管路6b及び延長チューブ5の口側管路5bを経て圧力変動センサー4に伝達される。圧力変動センサー4の検知・識別結果に基づいたデマンドコントローラー3からの制御信号がデマンドバルブ2の電磁セレクター2b及び電磁開閉弁2aに伝送され、口部に酸素濃縮気体が供給されるよう電磁流路セレクター2bの流路選択用仕切り板の位置を選択すると共に電磁開閉弁2aを一定時間開く。この間、酸素濃縮気体はデマンドバルブ2の電磁開閉弁2aを通過し、電磁流路セレクター2bによる流路選択に従って延長チューブ5の口側管路5b及び鼻口カヌーラ6の口側管路6bを流れ、その開口部から患者等使用者の口部に供給される。
【0031】
図2では、呼吸が鼻で行われた時の呼吸情報、制御信号及び呼吸用気体の各々の流れを矢印で示す。鼻呼吸による圧力変動は鼻口カヌーラ6の鼻側管路6a及び延長チューブ5の鼻側管路5aを経て圧力変動センサー4に伝達される。圧力変動センサー4の検知・識別結果に基づいたデマンドコントローラー3からの制御信号がデマンドバルブ2の電磁流路セレクター2b及び電磁開閉弁2aに伝送され、鼻孔に酸素濃縮気体が供給されるよう電磁流路セレクター2bの流路選択用仕切り板の位置を選択すると共に電磁開閉弁2aを一定時間開く。この間、酸素濃縮気体はデマンドバルブ2の電磁開閉弁2aを通過し、電磁流路セレクター2bによる流路選択に従って延長チューブ5の鼻側管路5a及び鼻口カヌーラ6の鼻側管路6aを流れ、その開放部から使用者の鼻孔に供給される。
【0032】
【発明の効果】
本発明の呼吸用気体供給装置では、呼吸が鼻及び口のいずれか一方または両方で行われた場合でも、吸入時において呼吸用気体を的確かつ有効に患者等使用者に供給し得るので、就寝時にても安心して使用可能な、吸入時においてのみ呼吸用気体を供給する呼吸用気体供給装置の実現が可能となり、呼吸用気体の供給量の節減による画期的な省電力化や装置の小型軽量化等のメリットが発現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の呼吸用供給装置における口呼吸時の模式的例示。
【図2】本発明の呼吸用供給装置における鼻呼吸時の模式的例示。
Claims (5)
- 呼吸用気体の発生手段と、一端が該発生手段に連通し他端に該呼吸用気体の開放型供給手段を有し途中に自動開閉弁手段を有した導管手段と、呼吸における少なくとも一部の所定位相を検知し得る機能を有する呼吸位相検知手段と、該呼吸位相検知手段の検知結果に基づいて該自動開閉弁手段を制御するための制御手段を備え、使用者に呼吸用気体を供給する呼吸用気体供給装置において、使用者の呼吸が鼻呼吸か口呼吸かを識別する識別機能部を備え、識別結果に対応して鼻孔及び口部のうち、呼吸が検知された方に該開放型供給手段を介して呼吸用気体を供給する機能を有することを特徴とした呼吸用気体供給装置。
- 該開放型供給手段が鼻孔供給手段及び口部供給手段を有し、該導管手段が該鼻孔供給手段、該口部供給手段への別々の流路を備えると共に、該自動開閉弁手段が、流路の開閉機能部及び該鼻孔供給手段、該口部供給手段への流路を選択する流路選択機能部を備えることを特徴とする請求項1に記載の呼吸用気体供給装置。
- 該識別機能部が、該導管手段の該鼻孔供給手段、該口部供給手段への別々の流路間の圧変動を検出する手段であることを特徴とする請求項2に記載の呼吸用気体供給装置。
- 該流路選択機能部が、該識別機能部の識別結果に対応して各流路に流れる呼吸用気体の流量を制御する手段であることを特徴とする請求項2,3に記載の呼吸用気体供給装置。
- 該開放型供給手段が鼻孔供給手段及び口部供給手段からなり、該導管手段が該鼻孔供給手段、該口部供給手段への別々の流路を備えると共に、各流路に自動開閉弁手段及び呼吸位相検知手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の呼吸用気体供給装置。
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