JP4583141B2 - 分割静電チャック構造 - Google Patents

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本発明は、分割静電チャック構造に関する。静電チャックは、半導体製造装置や薄型ディスプレイ製造装置などに使用されるウェハや大型基板、さらにはDVD等のフィルム状基板を保持するために用いられている。
基板の大型化傾向が定着するにつれ静電チャックにおいても大型基板対応の要望が強い。ところが、基板と同様に静電チャックを大型化する場合、静電チャックの吸着面の全面で平坦な面精度を保つことが難しく、また、吸着面の部分的な不良発生ごとに静電チャック全体を交換する必要が生じる不具合がある。即ち、面精度に劣る吸着面を有する静電チャックを用いると、これに吸着されるウェハの接触面に凹凸形状の変形が生じることがある。また、大型吸着面は被吸着物サイズの対応範囲が広いだけに、比較的小型のものを吸着した場合、吸着面が露出し、部分的にプロセス中の高負荷雰囲気(例えば、プラズマ雰囲気など)に曝されることが多くなる。そして、これが不良発生の頻発を招くという悪循環を生じるおそれがある。
このような部分的な不良発生対策のため、静電チャックを分割構造としたものがある(例えば、特許文献1参照)。また、分割構造の静電チャックを用いて、大型基板の際の反りや撓みに対応するものがある(例えば、特許文献2)。
特開平7−297266号公報(第2−4頁、図1−2) 特開2000−37159号公報(第3−4頁、図1−4)
ところで、特に、半導体成膜プロセスにおいて、処理時間短縮、コスト低減及び省スペースなどのメリットからステンシルマスクを用いたイオン注入や荷電粒子リソグラフィが着目されている。この種の装置には、ウェハ及びマスク用の静電チャックが搭載されるが、このような静電チャックには、プロセス中のウェハやステンシルマスクの位置精度を厳格に維持することが求められる。
例えば、図1はステンシルマスク2を用いるイオンプレーティング法によるイオンビームの照射状態を示す概略図である。荷電粒子や光などのビーム1が、ステンシルマスク2を介して静電チャック3上のウェハ4に照射されている。この場合、ビーム1は平行状態で照射されるのが理想的である。しかしながら、現実にはビーム1には収差があり、これが転写パターンの位置ズレや滲みの原因となるため、マスク2とウェハ4との間隙を最小限にする必要がある。
即ち、図2において、不図示のパターンマスクを通過した3本のビーム1a、1b及び1cがウェハ4の法線方向に対して角度R1、R2及びR3でそれぞれ照射される場合、平行乖離度を示すビーム平行度を以下のように定義すると、
ビーム平行度=max.|Ri−Rave| ・・・(式1)
(Rave:R1、R2、R3の平均)
(式1)により示される平行度は、実際上0.2程度の下限値が不可避である。
ところが、マスク2とウェハ4との間隙を50μmとしたとき、この程度のビーム平行度でも転写パターンの位置ずれは0.175μmと算出され、2002年のDRAMに使用されるデザインルール(115nm)からは無視できない大きさであることが分る。位置ずれを修正するにはこのような間隙を短くする必要があり、この場合、上記したような面精度が劣る吸着面の静電チャックを用いると、吸着されるウェハの接触面に凹凸が生じ易く、極端な場合には、これによりマスク2とウェハ4が接触して干渉するなどの不具合がある。
これは、たとえ静電チャックを分割構造としても、ステンシルマスクを用いるイオンプレーティング法の開発などに対応するには、静電チャックの吸着面に対する平面精度を厳格に追求することが最重要課題であることを示す。
本発明は、上記問題点に鑑み、静電チャックの吸着面において、さらに良好な面精度を実現できる分割静電チャック構造を提供することを課題とする。
上記問題点に鑑み、本発明は、ベースプレートと、このベースプレート上の複数の静電チャックとを備えた分割静電チャック構造において、各静電チャックを、ベースプレートに対し平行な面に傾動可能に設けている。
これによれば、各静電チャックはそれぞれ独立に傾動して水平状態を保つことができる。このため、個々の静電チャックから成る静電チャックステージ全体で凹凸が生じることが抑制され、吸着面全体の平坦な面精度を確保することができる。また、このような面精度の確保だけでなく、例えば、反りや撓み部分のある基板に対して、これらの部分の吸着を担う静電チャックを傾動させることにより吸着面全体を変形面に沿って圧着させることができる。即ち、反りや撓みなどの変形面を有する基板に対しても、確実な吸着を行うことができる。
また、静電チャックの傾動は、上記したベースプレートと前記各静電チャックとを、それぞれ上下方向に伸縮可能な支持部材の上下両端により連接し、静電チャックの各下面内で平面を成す少なくとも3点を、支持部材の上端のそれぞれにおいて支持することで可能となる。即ち、この3点以上の支持点においてそれぞれ上下方向に独立に昇降運動を行うことにより、静電チャックの立体的な傾動が可能となる。なお、静電チャック面内で任意方向の軸回りの回動を可能にするため、各支持点は一直線上に配列されないことが必要である。
さらに、このような伸縮機構を備えた支持部材として、ピエゾ素子アクチュエータロッドを具体例として挙げることができる。負荷圧力により電気信号を発生するピエゾ素子を用いることで、この電気信号をアクチュエータによる伸縮作動と連動させることが可能である。
もちろん、ピエゾ素子アクチュエータ機構以外にも、各支持部材に間座(スペーサ)を介在させて伸縮可能にするようにしても良い。
また、静電チャック上を走査するレーザ変位計により測定された各静電チャックの傾斜状態に基づき、各静電チャックが水平姿勢となるように、支持部材を伸縮する制御系を備えるようにすれば、全静電チャックの傾斜状態の確認作業と水平姿勢への修正作業とを効率良く行うことができる。
一方、複数の静電チャックに、正負両極のいずれかを選択可能な電極をそれぞれ設けるようにすることで、基板に対する静電吸着は正負両極のいずれかに偏ることなく吸着面全体で確実な吸着が可能となる。
また、正負両極を選択可能にするには、印加電圧の正負を選択できる静電チャック吸着用電源を用いるなどを一例とすることができる。
この場合、ベースプレート上にある各静電チャックの正負両極の配列に着目して、互いに隣接する静電チャックから成る配列方向のうち、少なくとも一方向において電極の正負が互いに異なるように配列すると正負両極の偏りの解消が確実になる。
なお、静電チャックの形状として、円形、矩形及び正六角形などを用いることができ、また、静電チャックの重心及び静電チャック下面の各支持点から成る図心を、上下方向の同軸上に位置させることで個々の静電チャックの安定性を保つことができる。
さらに、静電チャックの上面から成る吸着面の表面粗さを、中心線平均粗さ表示で10μm以下のものとすることで、静電チャックの平坦性を正確に確保することができる。
以上の説明から明らかなように、本発明による静電チャックは、個々の分割静電チャック構造をそれぞれ傾動可能とするため、各分割構造を水平姿勢に修正することにより、全体の静電チャックステージによる吸着面で厳格な平面精度管理を行うことができる。
また、個別の分割構造の傾斜状態をレーザ変位計により測定し、この測定結果のフィードバックを、傾動作動による姿勢制御に用いることで効率良く良好な平面精度を得ることができる。
さらに、配列された静電チャックの隣接方向のうち少なくとも一方向で正負両極が互いに異なる順番の配列とすることにより、偏りなく確実な吸着力を確保できる。
図3は、正六角形型分割静電チャック構造の概略の上面図(a)及び断面図(b)である。正六角形形状の静電チャック30が蜂の巣状に配置され、これらチャック30の集合体が全体として、ウェハ4載置用の静電チャックステージ30Gを形成する。
図3(b)を参照して、個々の静電チャック30の上下両面は、ウェハ4を載置する上面30Tと、ベースプレート31より立設する3本の絶縁性昇降支柱32a、32b、32cで三点支持される下面30Bとに配される。また、個々の静電チャックは、それぞれ1個の電極Eを有しており、各電極Eはそれぞれ外部の電源33Aまたは33Cのいずれかに接続されている。
図4は、静電チャック30の詳細を示す拡大図である。上面図(a)及び断面図(b)に示すように、チャック30の上面30Tは、例えばポリイミドなどの誘電層を用い、チャック本体30Sはアルミニウム金属材料を用いている。また、下面30Bは、上記したようにベースプレート31より立設する3本の絶縁性昇降支柱32a、32b、32cで三点支持される。このとき、絶縁性昇降支柱32a、32b、32cの各上端が成す三角形の図心Cと静電チャック30の重心Gとは上下方向同軸上の位置関係にあることが望ましい。このように位置関係に規制するのは、傾斜状態においても静電チャック30の安定を保つためである。
アルミナ被膜された絶縁性の六角支柱から成る昇降支柱32a、32b、32cは、図4(b)に示すように、各下端部分の六角穴ボルト34a〜34cにより、ベースプレート31に固定されて立設する。そして、静電チャック30の下面30Bを支持する上端部分では、その先端ねじ部35a〜35cがチャック本体30Sの下方部分に螺挿されており、また、このねじ部35a〜35cに螺着されたスペーサSがねじ部35a〜35c上を回転して上下に昇降可能となっている。即ち、支柱32a〜32cの固定下端部34a〜34cと、各スペーサSとの距離が伸縮可能となる。これにより、各昇降支柱32a、32b、32cの上端部分のスペーサSを手動または自動で回転させると、これに伴い静電チャック30を昇降させることができ、さらに、各昇降支柱32a、32b、32cにおいて異なった伸縮運動を行うことにより静電チャック30を傾動させることができる。そして、上端部分35a、35b、35cは、平面的(本実施の形態では正三角形状)に配置されているため、昇降支柱32a、32b、32cが上下方向に独立に伸縮運動を行うことにより、静電チャックの立体的な傾動が可能となる。このような立体的な傾動は、下面30B内で任意方向の軸回りの回動が確保されることで可能となるのであり、このため、下面30Bの支持点数は少なくとも3点必要であり、また、支持点数を増加する場合も、全支持点が同一直線上にないような配置が求められる。
図5は、支柱32a、32b、32cの別態様の伸縮機構を示すための拡大図である。図4のスペーサSによるものと異なるのは、支柱32a、32b、32cの伸縮機構にピエゾ素子駆動を用いたことである。
即ち、図5(b)を参照して、各支柱32a、32b、32cはその下端部でそれぞれピエゾアクチュエータ駆動軸36a、36b、36cを介して、ベースプレート31内のピエゾアクチュエータ37a、37b、37cにそれぞれ接続される。なお、ピエゾアクチュエータ37a、37b、37cは、それぞれ取付けステー38a、38b、38cを介してベースプレート31にねじ止め固定されている。
ピエゾアクチュエータ駆動軸36a、36b、36cは、ピエゾアクチュエータ37a、37b、37cが発する電気信号に応じて上下方向に伸縮する機構であり、電動式作動を行える利点がある。
そして、図4または図5に示す機構により下面30Bの支持点における昇降及びこれを利用した静電チャック30の傾動が可能となり、このような昇降機構により、全ての静電チャック30をことごとく水平状態に揃えることができる。これは、図3(a)に示す静電チャックステージ30G全体で良好な面精度が得られることを意味し、最新のイオン注入法などで要求される厳格な平面精度への対応も可能である。
ところで、図3(b)に示すように静電チャック30はそれぞれ正負いずれかの電極を選択して搭載する構造であり、これによる静電気力による吸着エネルギーによりウェハ4に対する吸着を行う。このとき、静電チャックステージ30G全体で静電気力が偏在しないことが肝要である。このため、本発明では、図3(a)のような、分割静電チャック30で構成される蜂の巣状配列において、紙面左右方向若しくはこの方向と時計回り60°の角度方向の配列において、正負両極の配置が互いに異なるようにした。このようにすることで、チャックステージ30G全体で正負両極の偏りが抑制される。また、図示はしていないが、印加電圧の正負を選択できる静電チャック吸着用電源を用いるなどして正負両極を選択的に変更することも可能である。
このようにして、吸着効果を確実にした静電チャックステージ30Gでは、すべての静電チャック30の傾斜状態を個別に確認して姿勢制御を行うことが肝要である。
このための姿勢制御装置例の概略上面図及びその略断面図を図6に示す。この装置では、X−Y軸移動機構にチャックステージ30Gを搭載し、X−Y平面内で移動自在とした。即ち、X軸駆動軸60上で駆動するX軸駆動機構61により、チャックステージ30GをX軸方向ガイドレール62a、62b上でX軸に沿って移動可能とし、X軸方向ガイドレール62a、62bを載置したX−Yステージ63を、Y軸駆動軸64上で駆動するY軸駆動機構65により、Y軸方向ガイドレール66a、66b上でY軸に沿って移動可能とした。そして、このX−Y平面上に設けたレーザ変位計67により、その直下を走行する静電チャック30の配列の距離や傾斜状態を計測する。
そして、この計測結果により確認された各静電チャック30の傾斜状態に基づき、各静電チャック30がそれぞれ水平姿勢に復帰し、同一平面を形成するように、ピエゾ素子アクチュエータやスペーサなどを用いた伸縮機構を制御する。これにより、静電チャック30の吸着面全面における傾斜状態の確認作業や水平姿勢への復帰作業を効率良く行うことができ、厳格な水準で要求される平面精度が効果的に実現される。
さらに、吸着面全体の面精度をより厳格に保つために、各静電チャック30の吸着面の表面粗さを、中心線平均粗さ表示で10μm以下に規制することで、静電チャックの平坦性確保が確実になる。
なお、本実施の形態では、分割静電チャック30を正六角形形状としたが、これ以外にも円形、矩形など種々の変更例を用いることができる。ただし、上記したように、静電チャックの重心及び静電チャック下面の各支持点から成る図心を、上下方向の同軸上に位置させることで個々の静電チャックの安定性を保つことが望ましい。
ステンシルマスクを介したイオンビームの照射状態を示す概略図 各ビームの平行乖離を示す概略図 (a)正六角形型分割静電チャック構造の概略上面図 (b)(a)の略断面図 (a)分割静電チャック構造の第1態様を示す概略上面図 (b)(a)の略断面図 (a)分割静電チャック構造の第2態様を示す概略上面図 (b)(a)の略断面図 (a)分割静電チャック構造の姿勢制御装置の概略上面図 (b)(a)の略断面図
符号の説明
3 30 静電チャック
30G 静電チャックステージ
30T 上面
30B 下面
31 ベースプレート
32a、32b、32c 絶縁性昇降支柱(支持部材)
33A、33C 外部電源
34a、34b、34c 固定下端部分
35a、35b、35c 上端部分(支持点)
37a、37b、37c ピエゾアクチュエータ
67 レーザ変位計
C 図心
E 電極
G 重心
S スペーサ

Claims (8)

  1. ベースプレートと、該ベースプレート上の複数の静電チャックとを備えた分割静電チャック構造において、前記ベースプレートと前記各静電チャックとを、それぞれ上下方向に伸縮可能な支持部材の上下両端により連接し、前記静電チャックの各下面内で平面を成す少なくとも3点を、前記支持部材の上端のそれぞれで支持し、前記支持部材は、上端部分にねじ部が設けられており、前記ねじ部の前記静電チャック下面より下方の位置にはスペーサが螺着され、前記スペーサを介して前記静電チャックを上下動させることで、前記各静電チャックを、前記ベースプレートに対し平行な面に傾動可能としたことを特徴とする分割静電チャック構造
  2. ベースプレートと、該ベースプレート上の複数の静電チャックとを備えた分割静電チャック構造において、前記ベースプレートと前記各静電チャックとを、それぞれ上下方向に伸縮可能な支持部材の上下両端により連接し、前記静電チャックの各下面内で平面を成す少なくとも3点を、前記支持部材の上端のそれぞれで支持し、前記支持部材は、前記静電チャックの下面支持点と同数のピエゾ素子アクチュエータから成ることで、前記各静電チャックを、前記ベースプレートに対し平行な面に傾動可能としたことを特徴とする分割静電チャック構造。
  3. 前記静電チャック上を走査するレーザ変位計により測定された各静電チャックの傾斜状態に基づき、各静電チャックが水平姿勢となるように、前記支持部材を伸縮する制御系を備えることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の分割静電チャック構造。
  4. 前記複数の静電チャックは、正負両極のいずれかを選択可能な電極をそれぞれ有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の分割静電チャック構造。
  5. 前記静電チャックの電極は、印加電圧の正負を選択できる静電チャック吸着用電源により、正負両極のいずれかを選択可能としたことを特徴とする請求項4に記載の分割静電チャック構造。
  6. 前記ベースプレート上の複数の静電チャックは、互いに隣接する静電チャックから成る配列方向のうち、少なくとも1つの配列方向で前記電極の正負が互いに異なる配列となることを特徴とする請求項4または5に記載の分割静電チャック構造。
  7. 前記静電チャックの形状は、円形、矩形及び正六角形のいずれかから成り、該静電チャックの重心及び該静電チャック下面の各支持点から成る図心を、上下方向の同軸上に位置させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の分割静電チャック構造。
  8. 前記静電チャックの上面から成る吸着面は、10μm以下の中心線平均粗さを有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の分割静電チャック構造。
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