JP4582408B2 - ペプチドアレイ - Google Patents

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Description

本発明は、物質相互作用の解析系に用いられるペプチドアレイに関する。より詳細には、特定の構造からなる直鎖状のポリエチレングリコール(PEG)誘導体をバックグラウンド(Background)部分にコーティングすることにより、バックグラウンド部への非特異的な影響を低減され、物質間の結合シグナルとの比を大きくして精度の高い測定が可能なペプチドアレイに関する。
近年、生体分子の相互作用解析、発現分子のプロファイリング、もしくは診断に用いるバイオチップが注目を集めている。基板上に生体分子が固定化されることで操作が容易になり、場合によっては非常に多くの物質の相互作用を解析することができる。特に比較的分子量の小さなペプチドを基板上に固定化したペプチドアレイは、蛋白質のような変性の問題が比較的少なく、またコンビナトリアルケミストリーの側面が強いことから、近年酵素の基質探索や、あるいはインヒビターの探索などに広く用いられるようになってきている。なかでも、ポストゲノムの中にあっては、蛋白質の翻訳後修飾、特にリン酸化の解析は蛋白質の活性調節、機能調節を詳細に解明するうえで重要である。
これら生体分子同士の相互作用を観察する際に問題になるのが感度と非特異的吸着による影響、すなわち特異性である。ここで非特異的吸着とは、本来であれば相互作用しない分子へ対象物質が非特異的に吸着する場合のことを言う。その結果、擬陽性の判定を与えるため好ましくない。非特異的な吸着を抑制するために、生体高分子が固定化された基板を、デキストラン、ポリエチレングリコール(PEG)などの親水性高分子で表面をコートしたバイオチップが開発されている。例えば、カルボキシメチルデキストランのカルボキシル基を水溶性カルボジイミド(EDC)とN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化し、形成したスクシンイミド基と生体分子を固定化することに成功している(非特許文献1)。これらの親水性高分子には生体分子の非特異的吸着を抑制する効果があることが知られている。しかしながら、親水性高分子のコーティングによって、生体分子が親水性高分子中に埋没してしまい、生体高分子同士の相互作用が阻害されるという問題を生じる場合がある。
この生体高分子同士の相互作用の阻害は、測定シグナル低下の原因となる。この相互作用の阻害は、親水性高分子のコーティングに起因するだけでなく、生体高分子を基板に直接的に結合することによって生じることも少なくない。生体高分子を基板に直接的に結合すると、生体高分子の自由度が抑制されるためである。バイオチップの測定シグナル向上のためには、生体高分子同士の相互作用を容易せしめる必要がある。
測定シグナルを高める上では、チップ上の測定部以外のバックグラウンド部における非特異的な吸着の抑制が特に重要である。このバックグラウンド部にPEGを導入することにより、バックグラクンドにおける非特異吸着の抑制効果を示す報告も種々存在する(非特許文献2及び3)。しかしながら、測定系やその条件によっては必ずしも十分な効果を奏しない場合もあるのが実情である。
本発明は、ペプチドアレイを用いた相互作用解析において、特にバックグラウンド部への非特異吸着を効果的に抑制させることにより、特異性に優れた解析を実現させるためのペプチドアレイを提供するものである。
Anal.Biochem.198,268,1991 J.Am.Chem.Sci.121,8044,1999 Gene to Cells 9,153,2004
本発明の課題は、生体分子の特にバックグラウンド部への非特異的吸着を抑制することにより、なおかつ標的物質における結合シグナルを増大させるためのペプチドアレイを提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示すような手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
1.透明基板上にペプチドを固定化するためにパターン化された金表面にチオール基を介してアミノ基が導入され、かつペプチドの固定化されていない部分が式(I)(式中、mは4〜8の整数、nは3〜6の整数を示す。)で示される直鎖状の化合物でコーティングされてなり、式(II)もしくは式(III)に示す化合物である架橋剤がペプチドと金表面に導入されたアミノ基とを架橋して固定化されていることを特徴とする固定化されたペプチドのチップ上におけるリン酸化の、表面プラズモン共鳴(SPR)イメージング解析に用いるためのペプチドが固定化されてなるペプチドアレイ。



2.ペプチドの固定化されていない部分が式(IV)で示される直鎖状の化合物でコーティングされていることを特徴とする1のペプチドアレイ。

3.2種類以上のペプチドが同一チップ上に固定化され、かつ該固定化されるペプチドのうち少なくとも1種はプロテインキナーゼの基質として機能することを特徴とする1又は2のペプチドアレイ。
4.固定化されるペプチドの少なくとも一方の末端がシステイン残基であることを特徴とする1〜3のいずれかのペプチドアレイ。

本発明におけるアレイを用いた相互作用解析により、標的シグナルは向上され、更に非特異的吸着が抑制された精度のよい測定系を得ることができる。
本発明のペプチドアレイにおけるペプチドの固定化方法は特に限定されるものではなく、ペプチド配列におけるアミノ基やチオール基を介した方法、Hisタグを用いる方法などが挙げられる。この中では、特にチオール基を介してペプチドを固定化する方法が、特異性、感度の両面から特に好ましい。固定化されるペプチドに関しては、1種類のみであってもよいし、2種類以上であってもよい。ここで、ペプチドとは一般的に用いられる意味のものを指し、アミノ酸が2個以上ペプチド結合により連結されたものである。そのアミノ酸残基の数は特に限定されないが、通常は5〜60残基程度であり、10〜25残基程度がより好ましい。分析する目的に応じて、アミノ酸残基のうち1乃至数残基において化学的な修飾を加えられたアミノ酸が含まれていてもよい。また特に限定されるものではないが、特定の酵素に対して基質としての機能を有しているペプチドを少なくとも1種は含むことが好ましい。
固定化されるペプチドのアミノ酸配列において少なくとも1箇所以上のシステイン残基が存在することが好ましい。システイン残基は固定化されるペプチドが本来の機能を奏するために必要なアミノ酸配列として必須な残基として存在している場合であっても、あるいはペプチドが本来の機能を奏するために必要なアミノ酸配列に対してさらに付加された場合であってもよい。固定化されるペプチドにおけるシステイン残基の存在位置は特に限定されないが、好ましくは少なくとも一方の末端に、より好ましくは一方の末端のみに付加されてなる方がよい。一方の末端にシステイン残基を付加させる場合、システイン残基のみを付加してもよいが、固定化されたペプチドの自由度を上げることにより作用させる物質との相互作用の効率を高めるためにスペーサーとして1乃至数残基のアミノ酸配列をさらに付加させてもよい。スペーサー部分のアミノ酸配列は特に限定されないが、なかでもグリシン残基及び/又はアラニン残基もしくはセリン残基が1乃至数個の配列を付加させることが特に好ましい。
また、固定化されるペプチドに対して、チオール基を有する化合物が1箇所以上のいずれかのアミノ酸残基において化学結合されている状態のものを用いてもよい。該化合物の結合箇所も特に限定はされないが、いずれかの末端のアミノ酸残基に結合されていることが好ましい。
本発明において、チオール基を介してペプチドを固定化する場合、予めアミノ基を表面に導入した後、スクシンイミド(NHS)基もしくは硫酸スクシンイミド基とマレイミド(MAL)基を有するヘテロ二官能型架橋剤を用いることが特に好ましい。このようなヘテロ二官能型架橋剤としては、PEGのような親水性高分子の両端がNHS基とMAL基で修飾されたものを用いることも可能であるが、ペプチドの固定化収率を向上させるためには、より低分子量のものを用いてもよい。具体的には、式(II)に示す化合物Succinimidyl 4−[N−maleimidomethyl]cyclohexane−1−carboxylate(以下、SMCCと示す。)もしくは式(III)に示す化合物Sulfosuccinimidyl 4−[N−maleimidomethyl]cyclohexane−1−carboxylate(以下、SSMCCと示す。)が挙げられる。なお、式(II)もしくは式(III)に示す化合物と完全に同一構造のものだけを指すのではなく、その機能を損なわない範囲でアナログ化された化合物をも包含する。また、本発明においてはSMCC及びSSMCCのいずれも適用することが可能であるが、水に対する溶解性の点からは、緩衝液のような水系で反応させる場合においてはSSMCCを用いる方がより好ましい。
上述したような低分子量化合物を適用することにより、特に高分子量の物質を架橋剤として用いる場合と比べて、ペプチドのチップへの固定化効率が格段に高くなるため標的物質との結合効率も向上して、結合によるシグナルがより鮮明になるという効果を奏するものである。また、非特異的な影響に関してもほとんど問題とならず、いわゆるS/N比を大きくすることができる点で有利である。しかしながら、本発明において架橋剤の種類は、特にこれらに限定されるものではない。
上記SMCCもしくはSSMCCをチップ上に導入させてマレイミド表面を形成させるためには、SMCCにおけるもう一方の端に有するスクシンイミド基あるいはSSMCCにおけるもう一方の端に有する硫酸スクシンイミド基と反応性を有する官能基、具体的にはアミノ基を予めチップ上に導入させておく必要がある。チップ上にアミノ基を導入する手段は特に限定されるものではない。基板表面に分子を整列させる自己組織化表面の手法、反応試薬を用いて導入する方法、官能基を有する物質をチップ上にコーティングする手段などが挙げられる。また、表面に導入しておいた官能基を起点として、架橋剤を用いてアミノ基を導入する手段なども含まれる。
本発明におけるペプチドチップの固定化方法はさまざまな用途に応用可能である。一般にアレイにおける検出手段としてよく用いられている蛍光性物質、化学発光性物質、放射性物質等による検出系においても有効であるが、特に表面プラズモン共鳴(SPR)や和周波発生(SFG)、局在プラズモン共鳴(LPR)、エリプソメトリなどの光学的検出方法に絶大な効果を発揮する。なかでも、SPRによる解析系において特に有用である。一般的なチップ、アレイにおいては、相互作用の検出方法として蛍光物質や放射線同位体によるラベル手段による検出が用いられる。この場合、最終的にラベル物質が結合したかどうかだけを検出することができ、相互作用に関係のない物質が非特異的に吸着しても、誤って検出されることはない。従って、相互作用する対象物質がネガティブコントロールに対して非特異的に吸着してなければ、正確に測定できているものと判断することができる。
しかし、ラベルフリーな光学的検出方法においては、どのような物質がチップ上に吸着してもシグナルとして検出される。すなわち、測定対象ではない物質が非特異的に吸着するのと、特異的な吸着を区別することが難しい。よって、よりシビアに非特異的な吸着を抑制する手段が求められるため、本発明の固定化方法は非常に効果的である。
ELISA法やラベル物質を用いる相互作用解析方法においてはブロッキング方法として牛血清アルブミンやカゼインなどによる物理吸着が一般的に選択されている。物理吸着の方法は容易ではあるが、安定しておらず、経時的にチップ表面から脱離する場合がある。上記の光学的検出方法にはブロッキング剤の脱離さえも検出するため、共有結合によるブロッキングを行うことが好ましい。特に未反応のマレイミド基表面をブロッキングする場合は、チオール基を有する化合物を用いるのが好ましく、特にPEG(ポリエチレングリコール)の誘導体が好適に用いられる。
SPR、SFG、LPR、エリプソメトリにおいては、金属基板が使用される。本発明において、基板の素材は、酸・アルカリ・有機溶媒などに非常に安定な金が好ましい。実際、金は上記光学的検出方法で多用される物質である。また、金を支持する物質は透明である方が好ましく、透明なガラスであるとより好ましい。透明なガラスは容易に入手できるだけでなく、SPRやLPRの測定に極めて適しているからである。
金属基板を形成する方法としては、金属薄層をコーティングする方法が好ましい。金属をコーティングする方法は特に限定されるものではないが、一般的に蒸着法、スパッタリング法、イオンコーティング法などが選択される。光学的な検出方法に供するために、金属薄層の厚みをナノレベルでコントロールする必要がある。金属薄層の厚みも特に限定されるものではないが、一般的には30nmから80nmの範囲で選択される。金属薄層の剥離を抑制するため、0.5nmから10nmのクロム層やチタン層を予め基板にコーティングしておいてもよい。
このSPRを応用したSPRイメージング法は、広範囲に偏光光束を照射し、その反射像を解析することで、物質間の相互作用の様子を画像処理技術等を駆使することによりモニター化する方法であり、複数の物質を固定化したチップをスクリーニングすることや、表面に吸着する物体のモルホロジーを高感度に観察することが可能である。
SPRイメージング法においては、反射像を解析するためにチップに広範囲で偏光光束を照射し、かつ光束の照度を十分に確保するための手段が必要である。図1においてその一例を示した。偏光光束の照度は明るいほどセンサーの感度が上昇してより好ましい。
光源の種類は特に限定されるものではないが、SPR共鳴角の変化が特に敏感になる近赤外光を含む光を用いるのが好ましい。具体的には、メタルハライドランプ、水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯、白熱灯などの広範囲に光を照射することのできる白色光源を用いることができるが、なかでも得られる光の強度が十分に高く、光の電源装置が簡易で安価なハロゲンランプが特に好ましい。
通常の白色光源はフィラメント部に光の明暗ムラが生じる欠点がある。光源の光をそのまま照射すると、反射して得られる像に明暗ムラが生じ、スクリーニングやモルホロジー変化を評価するのが困難となる。したがって、チップに均一に光を照射する手段として、光をピンホールに通してから平行光にする方法が好ましい。ピンホールを通す手段は、明るさの均一な光束を得る手段としては好ましいが、そのままピンホールに光を通すと照度が低下する欠点がある。そこで、十分な照度を確保する手段として、ピンホールと光源の間に凸レンズを設置し、集光してピンホールを通す方法を用いることが好ましい。
白色光源は放射光であるため、集光する前に凸レンズを用いて平行光にする必要がある。凸レンズの焦点距離近傍に光源を設置することで、平行光を得ることができる。もう一枚凸レンズを設置し、そのレンズの焦点距離近傍にピンホールを設置することで集光した光をピンホールに通すことが可能である。ピンホール内で交差し、通過した光はカメラ用のCCTVレンズで平行光とするが、その際に得られる平行光束の断面面積は10〜1000mmに調節するのが好ましい。この方法によって広範囲にわたるスクリーニングやモルホロジー観察が可能となる。
相互作用をモニターする際に、上記偏光光束は物質あるいは物質の集合体が固定化されている金属薄膜の反対面に照射される。上記偏光光束は物質もしくは物質の集合体が固定化されている金属薄膜の反対面に照射され、その反射光束が得られる。金属薄膜からの反射光束は近赤外波長の光干渉フィルターを通し、ある波長付近の光のみを透過させてからCCDカメラで撮影される。
光干渉フィルターの中心波長は、SPRの感度が高い600〜1000nmが好ましい。光干渉フィルターの透過率が極大時の半分になる波長の波長幅を半値巾と呼ぶが、半値巾は小さい方が波長の分布がシャープとなり好ましく、具体的には半値巾100nm以下が好ましい。光干渉フィルターを通してCCDカメラで撮影された像はコンピュータに取り込まれ、ある部分の明るさの変化をリアルタイムで評価することや、画像処理により全体像の評価が可能である。こうして複数の物質を固定化したチップをスクリーニングすることや、表面に吸着する物体のモルホロジーを高感度に観察することができる。
本発明において用いるSPR用のチップは好ましくは透明な基板上に金属薄膜が形成された金属基板からなり、上記金属薄膜上に直接的もしくは間接的に、化学的もしくは物理的に、物質もしくは物質の集合体が固定化されているスライドが用いられる。基板の素材は特に限定されるものではないが、透明なものを用いるのが好ましい。具体的にはガラス、あるいはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、アクリルなどのプラスチック類が挙げられる。中でもガラスが特に好ましい。
基板の厚さは0.1〜20mm程度が好ましく1〜2mm程度がより好ましい。金属薄膜からの反射像を評価する目的を達成するために、SPR共鳴角はできるだけ小さい方が撮影される画像がひしゃげる恐れがなく解析がしやすい。したがって、透明基板あるいは透明基板とそれに接触するプリズムの屈折率nは1.5以上であることが好ましい。
本発明のペプチドアレイは、ペプチドの固定化されていない部分(バックグラウンド部)が、式(I)に示すような化合物によりコーティングされていることを特徴とするものである。式(I)においてmは1〜20の整数、nは1〜10の整数を示す。mの値は、2〜10の範囲がより好ましく、4〜8の範囲が更に好ましい。nの値は、2〜8の範囲がより好ましく、3〜6の範囲が更に好ましい。この化合物によりバックグラウンド部をコーティングすることにより、バックグラウンド部における非特異的吸着を非常に効果的に抑制することが実現される。また、本発明のペプチドアレイは、基板の製造ロットや処理条件などの様々な変動要因に依存されるデータの再現性も向上し、非常に安定な測定データを得ることが可能である。
本発明のペプチドアレイは、物質間の相互作用解析に主に用いられるが、特に用途が限定されるものではない。なかでも、特にペプチドのリン酸化の検出に有用である。この場合は、プロテインキナーゼの基質となりうるアミノ酸配列を含むペプチドを1種以上固定化されてなる。好ましくはプロテインキナーゼの基質となりうる多種類のペプチドが固定化されてなるアレイであり、これを用いてOn−chipでリン酸化反応を行うことにより、プロテインキナーゼ活性のプロファイリングによる網羅的な解析を行うことができ、創薬のスクリーニングに有用な技術を提供することが実現される。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。
[実施例1]
(ペプチド固定化)
式(IV)に示すような、末端官能基がチオール基である直鎖型チオールPEG試薬(SensoPath製SPSPT−0011)を1mMの濃度でエタノール7mlに溶解させた。直鎖型チオールPEGの分子量は336.54である。特に、金に対する金属結合性を示す。
18mm四方、2mm厚のSF15ガラススライドにクロムを3nm蒸着し、金を45nm蒸着した金蒸着スライドを、上記直鎖型PEGチオール溶液に3時間浸漬させ、金基板全体にPEGチオールを結合させた。
このスライドの上にフォトマスクを載せ、500W超高圧水銀ランプ(ウシオ電機製)で2時間照射し、UV照射部のPEGチオールを除去した。フォトマスクは500μm四方の正方形の穴が96個有し(8個×12個のパターンからなる。)、穴の中心間のピッチは1mmに設計されている。フォトマスクの穴があいている部分はUV光が透過し、スライドに照射されてパターン化される。照射されなかった部分はPEGが残り、チップのバックグラウンド(Background)部分としてレファレンス部として機能する。
8−Amino−1−Octanethiol, Hydrochrolide(8−AOT,同仁化学研究所製)の1mMエタノール溶液に1時間浸漬し、UV照射部に8−AOTの自己組織化表面を形成させた。SSMCC(ピアス製)をリン酸緩衝液(20mM リン酸、150mM NaCl;pH7.2)に0.4mg/mlで溶解し、金表面の8−AOTに15分間反応させた。8−AOTのアミノ基とSSMCCのNHS基が反応し、MAL基は未反応のまま残るため、PEGを介してマレイミド基を表面に導入することができた。
上記のようにして得られた表面に、図1下部に示したように、PKA(プロテインキナーゼA)の基質となるアミノ酸配列からなるペプチド(配列表・配列番号1)、PKA基質のネガティブコントロール(配列表・配列番号2;セリン残基がアラニン残基に置換)、PKA基質のポジティブコントロール(セリン残基がリン酸化)、cSrcキナーゼの基質となるアミノ酸配列からなるペプチド(配列表・配列番号3)、cSrcキナーゼ基質のポジティブコントロール(チロシン残基がリン酸化)を、いずれもリン酸緩衝液(20mMリン酸、150mM NaCl;pH7.2)に1mg/mlで溶解して、MultiSPRinterスポッター(東洋紡績製)を用いて10nlずつスポッティングを行った。その後、ウェットな環境下で室温、16時間静置させて固定化反応を行った。チップの表面に形成させたマレイミド基と基質ペプチド末端のシステイン残基が有するチオール基とが反応し、基質ペプチドを共有結合的に表面に固定化することができる。
(未反応マレイミド基のブロッキング)
基質ペプチドを固定化した表面をリン酸緩衝液で洗浄した後、未反応のマレイミド基をブロッキングするために、上記TEG−SHを1mM濃度になるようにリン酸緩衝液(20mMリン酸、150mM NaCl;pH7.2)に溶解して、250μlをチップ上に注出し、室温で1時間反応させた。また比較例として、片末端の官能基がチオール基、もう一方の官能基がメトキシ基であるPEGチオール(日本油脂製SUNBRIGHT MESH−50H)を1mM濃度になるようにリン酸緩衝液(20mMリン酸、150mM NaCl;pH7.2)に溶解して、250μlをチップ上に注出し、室温で1時間反応させた。ここで用いたPEGチオールの分子量は5,000である。
(SPR解析によるPKAリン酸化の検出)
上記のようにブロッキングを行ったアレイ上を用いてPKAによるリン酸化を行った。PKA溶液400μlをアレイ上にドロップして、30℃、4時間反応を行った。PKA溶液の組成は、PKA触媒サブユニット(プロメガ製)1μl、50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.4)375μl、1M塩化マグネシウム溶液20μl、10mM ATP4μlとした。その後、PBS及び水で3回ずつアレイの洗浄を行い、アレイ表面を乾燥した後、SPRイメージング機器(MultiSPRinter:東洋紡績製)にセットし、ランニングバッファーとして50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.4)を100μl/minの速度でフローセル内に流した。SPRからのシグナルが安定したのを確認した後に、リン酸化セリン抗体PSR−45(シグマ製)をSPR装置内のセルへ注入して作用させた。抗体は上記のランニングバッファーで1000倍希釈した溶液を用いて作用させた。シグナル上昇がプラトー状態になった時点で再度ランニングバッファーを送液して洗浄を行った。その際のSPRシグナルの変化を観察した。シグナル変化の観察は、各基質のスポット部位に加え、Backgroundにおいても実施した。
(観察の結果と考察)
SPRイメージングを行った結果を図1に示した。SPR解析に際して、CCDカメラによる画像の取り込みを5秒ごとに行い、抗体反応後における時点で取り込まれた画像から、反応前の時点での画像を、画像演算処理ソフトウエアScion Image(Scion Corp.製)を用いて引き算処理を行った結果である。PKA基質のポジティブコントロールに対しては非常に強い抗体結合シグナルの上昇を確認されており、更にPKA基質においてはある程度の割合で結合シグナルの上昇を認めることができる。一方、ネガティブコントロール、cSrc基質、ブランク及びBackgroundに関してはほとんどシグナル変化を認めることができない。用いた検出抗体の反応選択性の問題によりリン酸化チロシンにおいてもシグナルが確認されているが、セリン残基のリン酸化・非リン酸化の識別性に関しては、ここでは全く問題ない。したがって、この方法により、特異的なPKA基質のリン酸化を検出することができている。
[実施例2]
実施例1と同じアレイを作製、ブロッキングを行ったアレイ上を用いてcSrcキナーゼによるリン酸化を行った。cSrc溶液300μlをアレイ上にドロップして、30℃で5時間反応を行った。cSrc溶液の組成は、cSrcキナーゼ(Upstate製;5U/μl)6μl、50mM MES緩衝液(pH6.8)276μl、1M塩化マグネシウム溶液15μl、10mM ATP3μlとした。その後、PBS及び水で3回ずつアレイの洗浄を行い、アレイ表面を乾燥した後、SPRイメージング機器に同様にセットして、ランニングバッファーとして50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.4)を100μl/minの速度でフローセル内に流した。SPRからのシグナルが安定したのを確認した後に、リン酸化チロシン抗体PT−66(シグマ製)をSPR装置内のセルへ注入して作用させた。抗体は上記のランニングバッファーで2000倍希釈した溶液を用いて作用させた。シグナル上昇がプラトー状態になった時点で再度ランニングバッファーを送液して洗浄を行った。その際のSPRシグナルの変化を観察した。シグナル変化の観察は、各基質のスポット部位に加え、Backgroundにおいても実施した。
実施例1と同様にして、SPRイメージングを行った結果を図2に示した。この場合は、cSrc基質のポジティブコントロールに対しては非常に強い抗体結合シグナルの上昇を確認されており、更にcSrc基質においてはある程度の割合で結合シグナルの上昇を認めることができる。一方、PKA基質(セリン、リン酸化セリン、アラニン型全て)、ブランク及びBackgroundに関してはほとんどシグナル変化を認めることができない。したがって、この方法により、非常に特異的にcSrc基質のリン酸化を検出することができている。
本発明により、ペプチドアレイにおける非特異的吸着に関して効果的に抑制することができ、より正確な測定が可能となる。また処理方法も非常に容易であるうえに、様々な変動要因が関わった場合の測定データの安定性の点でも非常に優れている。今後産業界に大きく寄与することが期待される。
実施例1において、PKAによるリン酸化反応に関するSPRイメージングを行った結果を示す図である。 実施例2において、cSrcキナーゼによるリン酸化反応に関するSPRイメージングを行った結果を示す図である。

Claims (4)

  1. 透明基板上にペプチドを固定化するためにパターン化された金表面にチオール基を介してアミノ基が導入され、かつペプチドの固定化されていない部分が式(I)(式中、mは4〜8の整数、nは3〜6の整数を示す。)で示される直鎖状の化合物でコーティングされてなり、式(II)もしくは式(III)に示す化合物である架橋剤がペプチドと金表面に導入されたアミノ基とを架橋して固定化されていることを特徴とする固定化されたペプチドのチップ上におけるリン酸化の、表面プラズモン共鳴(SPR)イメージング解析に用いるためのペプチドが固定化されてなるペプチドアレイ。


  2. ペプチドの固定化されていない部分が式(IV)で示される直鎖状の化合物でコーティングされていることを特徴とする請求項1に記載のペプチドアレイ。
  3. 2種類以上のペプチドが同一チップ上に固定化され、かつ該固定化されるペプチドのうち少なくとも1種はプロテインキナーゼの基質として機能することを特徴とする請求項1又は2に記載のペプチドアレイ。
  4. 固定化されるペプチドの少なくとも一方の末端がシステイン残基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のペプチドアレイ。
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