JP4581088B2 - 計算機支援診断装置および方法 - Google Patents
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Description
MRI画像を解析して、正常人のSPECT画像を模擬したテンプレート画像を作成する。
テンプレート画像と患者のSPECT画像の位置合わせを行う。
テンプレート画像とSPECT画像の差分をとり血流低下量の分布を表すDSI画像を作成し、医師に分かりやすい形で表示する。
以下では、各ステップのおける画像処理の詳細について述べる。
MRI画像とSPECT画像では画像の性質が異なるため、MRI画像からテンプレート画像を作成するには表1に挙げた点を考慮する必要がある。これらの点を考慮して、以下の手順によりMRI画像を解析してテンプレート画像を作成する。
MRI画像とSPECT画像から、2値画像処理の手法を用いて骨と皮膚の領域を除去する。
MRI画像を4つの領域(白質・灰質・CSF・その他)に分割する。領域分割の手法としては、本研究の一部として開発を行い、クラスタリングの代表的手法であるEMアルゴリズムを高速化した高速EMアルゴリズムを採用する。
脳MRI画像の領域分割に良く用いられる方法として、EMアルゴリズム(期待値最大化法)がある。これは、領域分割をクラスタリングの問題として定式化し、『分類』と呼ばれる各画素をその特徴ベクトルが最も近いクラスタに確率的に割り当てる操作と、分類した結果から『クラスタ中心を再計算』する操作を、交互に繰り返すことにより領域分割を実現するものである。しかし、通常のEMアルゴリズムは収束が遅く計算時間が多い問題点がある。そこで、EMアルゴリズムに画素のブロック化と呼ばれる新しい概念を導入して、大幅に(10倍以上)高速化することに成功した。高速EMアルゴリズムでは、図11のように画素の集合を(隣り合う画素が同じ部分集合に入らないように)L個の部分集合(S_1,S_2,…,S_L)に分けておく。まず、S_1だけでEMアルゴリズムの一反復を行い、次にS_2だけでEMアルゴリズムの一反復を行い、以下同様に処理を続け最後にS_LだけでEMアルゴリズムの一反復を行う。これが高速EMアルゴリズムの一反復となる。このように画像をブロックに分けてブロック毎に計算を行うと、EMアルゴリズムの一反復と同じ計算量でL回の反復を行うことができ、約L倍収束は高速化される。ブロック毎に計算を行ったことに起因する精度の低下は、ブロック数Lを極端に大きくとらない限り非常に小さい。ブロックに分割して計算を行って計算量を下げる考え方はPET(ポジトロン)の画像構成などにおいても使用されているが、領域分割への適用は本ケースが始めてである。
解剖学的位置関係から小脳の領域を同定する。
は各ヒストグラムの平均をσtemp,σspは標準偏差を示す。式(2)を最大にするパラメータ(mW,mG,mS,σ)を非線形最適化により求める。具体的な非線形最適化法としては、未知パラメータを一つずつ評価量が最大になるように更新することを反復する座標降下法(Coordinate Descent)を用いた。推定する4つのパラメータが正しい値であれば、テンプレート画像とSPECT画像の画素サイズが異なり位置合わせされていなくとも両者の脳領域のヒストグラムは(定数倍を除いて)同じ形になるので、ヒストグラムマッチングにより正しいパラメータが推定できると考えられる。
痴呆性疾患では大脳全体の血流値が小脳の血流値より低下している場合があり、このような症例では上述の手順で作成されたテンプレート画像は大脳の血流量が正常人より下がり気味となる。そこで、大脳の血流値を小脳の血流値で正規化してその影響を補正する。小脳の血流値で正規化する理由は、小脳は痴呆性疾患が進行しても血流量が保たれる場合が多いという事実に基づいている。補正したテンプレート画像は次式のように表される。
MRI画像とSPECT画像は撮像モダリティが異なるため、並進と回転で表される位置ずれが生じている。テンプレート画像はMRI画像から作成するので、SPECT画像とテンプレート画像の位置合わせを行う。ただし、テンプレート画像とSPECT画像はいずれも血流量分布を表す同じ物理的意味の画像なので、異種モダリティ画像の位置合わせのような複雑な手法(例えば画素値の相違の影響を吸収する相互情報量によるマッチングなど)は必要としない。また、同一患者の画像であるため、位置合わせを行う際の座標変換も単純な剛体変換である。本論文は、(1)画像間の相互相関係数を最大にする位置合わせ、(2)単純なモーメントを用いた位置合わせ、の2つの手法を検討した。(1)の方法について述べる。(大脳血流量正規化前の)テンプレート画像とSPECT画像ftemp(x,y,z),fsp(x,y,z)の位置合わせは、SPECT画像を3次元剛体変換することにより行う。その際に、3つの並進パラメータ(Δx,Δy,Δz)と(各座標軸回りの)3つの回転パラメータ(α,β,γ)を推定する必要がある。SPECT画像fsp(x,y,z)をパラメータ(Δx,Δy,Δz,α,β,γ)で剛体変換した画像をfT(x,y,z)とすると、ftemp(x,y,z)とfT(x,y,z)の相互相関係数は次式で定義される。
各ボクセルにおける血流低下量を表すDSI(Deterioration Score Image)画像DSI(x,y,z)は、(大脳血流量正規化後の)テンプレート画像と位置合わせ後のSPECT画像の差分をとり次式で計算される。
各スライスにおいて、DSI画像上で血流低下量が一定値以上の血流低下部位を、MRI画像上に重ね合わせて疑似カラー表示する。
脳表面付近における血流低下量が診断に重要であることから、3D−SSPなどのソフトウェアでは、脳表面から深さ方向に一定距離内の血流低下量の最大値を抽出しそれを上下前後左右の6方向に投影した表面投影画像により処理結果を表示することが行われている。これと同じ表示も行った。
実験データと評価方法
筑波大学病院において痴呆性疾患と診断された6人の患者(Patient A,B,C,D,E,F)の画像データを処理した。SPECT画像・MRI画像ともに筑波大学病院で撮影されたものであり、画像の取得条件は表3のようになっている。使用したMRI画像はマルチチャンネル(PD,T1,T2)のものである。
実行時間は、Pentium(登録商標) 4(3−GHz)プロセッサ・1G−BytesメモリのPCを用いて、1人の患者について約30分であった。図3に、Patient Bの症例におけるMRI画像・SPECT画像・テンプレート画像・DSI画像を示す。図4に図3の輪郭線図を示す。ただし、この症例はDLB(レビー小体型痴呆)である。図5にPatient BのDSI画像を、MRI画像との合成表示と表面投影により表したものを示す。図6に図5の輪郭線図を示す。また、図7にPatient DのDSI画像を、MRI画像との合成表示と表面投影により表したものを示す。図8に図7の輪郭線図を示す。
2人の医師による評価結果を以下にまとめる。
図9(および図10)は、脳血流SPECT画像を用いた痴呆性疾患の診断に使われてきた3D−SSPと実施例の処理結果を比較したものである。上段は、実施例で抽出したDSI画像を投影表示により表した結果である。下段は、3D−SSPで抽出したZスコアを投影表示により表した結果である。上段と下段で表示のグレースケールは異なるが、血流が低下していると判断された部位の位置は、実施例と3D−SSPとでほぼ一致している。実験に用いた全ての症例において3D−SSPによる解析結果と実施例の解析結果の間には大きな相関があり、実施例の有効性が確認されている。
3D−SSPはMinoshimaらにより開発された、脳の機能や血流が低下している部位を統計学的な画像解析により抽出し表示するソフトウェアである。特に、SPECT画像を用いた痴果性疾患の診断への有効性が数多く報告されている。3D−SSPでは以下の画像処理を行っている。まず、事前に同じ装置で撮影した複数の正常人の脳血流画像のデータベースを作成しておく。信頼できる解析結果を得るには、同じ装置で同じ条件で撮影した10人以上の正常人によるデータベースが必要であると言われている。そして、患者と(複数の)正常人の脳血流画像を標準の脳形状を表すタライラッハの標準脳座標に非線形変換して脳形状個人差の影響を吸収し、両者の比較を行い患者の脳血流値が正常人の値の標準偏差の何倍違っているかを表すZスコアを画素ごとに算出する。Zスコアの表示法としては、脳表面近傍の血流低下量の最大値を前後上下左右に投影して表示する表面投影表示(Stereotactic Surface Projection)が採用されている。3D−SSPの大きな問題点は、(1)多数の正常人のデータベース作成が必要であり大きな手間がかかること、(2)非線形変換だけで脳形状個人差の影響が完全に吸収されるとは考えにくくその影響による精度低下が避けられないこと、があげられる。3D−SSPと類似の画像解析に基づくソフトウェアとしてFrinstonらにより開発されたSPMがあるが、SPMも3D−SSPと同じ問題点がある。
Claims (11)
- SPECT/PET画像とMRI画像とを融合した計算機支援診断装置において、
患者のMRI画像を領域分割する手段、領域分割された各組織に一定の血流値又は代謝値を代入することにより、正常人のSPECT/PET画像を模擬したテンプレート画像を作成する手段、該テンプレート画像と患者のSPECT/PET画像の位置合せを行う手段、前記テンプレート画像と患者のSPECT/PET画像の差分をとり、血流異常量又は代謝異常量の分布を表すDSI(Deterioration Score Image)画像を作成する手段を有すること
を特徴とする計算機支援診断装置。 - 請求項1において、前記MRI画像を幾つかの領域に分割することを特徴とする計算機支援診断装置。
- 請求項1において、テンプレート画像を対象領域の濃度ヒストグラムとSPECT/PET画像の対象領域の濃度ヒストグラムの類似度が最大になるように自動推定する手段、および両者のヒストグラムマッチングによって各組織の血流値又は代謝値およびガウシアンフィルタの半値幅を推定する手段を有することを特徴とする計算機支援診断装置。
- 請求項1において、前記DSI画像上で血流異常量又は代謝異常量が一定値以上の血流又は代謝異常部位を、疑似カラー表示する手段を有することを特徴とする計算機支援診断装置。
- 請求項1において、血流異常量又は代謝異常量の最大値を抽出する手段、および抽出された血流異常量又は代謝異常量の最大値を上下前後左右の6方向に投影した表面画像を表示する手段を有することを特徴とする計算機支援診断装置。
- SPECT/PET画像とMRI画像とを融合した計算機支援診断装置において、
患者のMRI画像を取得する手段、領域分割された患者のMRI画像の分割された各組織に一定の血流値又は代謝値を代入することにより、正常人のSPECT/PET画像を模擬したテンプレート画像を作成する手段、前記テンプレート画像と患者のSPECT/PET画像とからDSI画像を作成する手段を有すること
を特徴とする計算機支援診断装置。 - 請求項6において、前記DSI画像上で血流異常量又は代謝異常量が一定値以上の血流又は代謝異常部位を、MRI画像上に重ね合わせて疑似カラー表示する手段を有することを特徴とする計算機支援診断装置。
- 請求項6において、血流異常量又は代謝異常量の最大値を抽出する手段、および抽出された血流異常量又は代謝異常量の最大値を上下前後左右の6方向に投影した表面画像を表示する手段を有することを特徴とする計算機支援診断装置。
- SPECT/PET画像とMRI画像とを融合した計算機作動方法において、
患者のMRI画像を取得し、領域分割された患者のMRI画像の分割された各組織に一定の血流値又は代謝値を代入することにより、正常人のSPECT/PET画像を模擬したテンプレート画像を作成し、前記テンプレート画像と患者のSPECT/PET画像とからDSI画像を作成すること
を特徴とする計算機作動方法。 - 請求項9において、前記DSI画像上で血流異常量又は代謝異常量が一定値以上の血流異常部位又は代謝異常部位を、疑似カラー表示することを特徴とする計算機作動方法。
- 請求項9において、血流異常量又は代謝異常量の最大値を抽出し、抽出された血流低下量又は代謝低下量の最大値を上下前後左右の6方向に投影した表面画像を表示することを特徴とする計算機作動方法。
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