JP4576989B2 - 着色剤およびそれを用いたインクジェット記録用インク組成物 - Google Patents
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本発明は、顔料系色材と同等の耐光性を有しながら、色材の分散性に優れ、かつ吐出安定性および耐水性にも優れるインク組成物が得られる着色剤に関する。
インクジェット記録方法は、インクの小滴を微細なノズルから飛翔させ、記録媒体に付着させて記録を行う記録方法である。インクジェット記録方法に用いられるインク中の色材として、従来から水溶性染料が使用されているが、これら水溶性染料系のインクにおいては、耐光性や耐水性の向上が求められている。
前記重合開始剤が微分散した水性媒体中に、スルホン酸基を介して、色素化合物とエチレン性不飽和基を有するポリオキシエーテル類とが化学的に結合した構造を有するモノマーとエチレン性不飽和結合を有するモノマーとを添加して、重合溶液を調整する工程と、
前記重合溶液を、前記モノマーが懸濁しないように攪拌しながら、加熱重合する工程と、
を含んでなるものである。
本発明による着色剤は、スルホン酸基を介して、色素化合物とエチレン性不飽和基を有するポリオキシエーテル類とが化学的に結合した構造を有するモノマー単位を含んでなる重合体からなるものである。従来、顔料をインク中で安定的に分散させるためにオキシエチレン鎖を有する樹脂が顔料分散剤として使用されているが、数十ナノメートルオーダーの粒径の顔料では、分散安定性が低下してしまう。本発明にあっては、色素化合物をオキシエチレン鎖を有する樹脂に化学的に結合させることによって、数十ナノメーターオーダーの着色剤粒子を実現したものである。すなわち、本発明による着色剤は、色素化合物が樹脂に化学的に結合した構造を有するものであるため、着色剤を微粒子化した場合でも、着色剤同士の凝集が生じにくい。したがって、このような超微粒子の着色剤を使用することにより、インク中での着色剤濃度を高めることができるとともに、高濃度のインク組成物とした場合でも、着色剤の分散性に優れ、かつ優れた吐出安定性および耐水性を実現できる。
で表されるものであることが好ましい。このモノマー単位は、色素化合物(R2)が、スルホン酸基を介してオキシエチレン鎖と化学的に結合した構造を有している。本発明においては、オキシエチレン鎖の鎖長は、nが6〜13であることが好ましい。この範囲とすることにより、着色剤の最大粒子径を2μm以下とすることができる。
本発明による第一の態様としての着色剤の製造方法は、分散安定剤を含んでなる水性媒体中に、非イオン性重合開始剤を微分散させて、この重合開始剤が微分散した水性媒体中にスルホン酸基を介して、色素化合物とエチレン性不飽和基を有するポリオキシエーテル類とが化学的に結合した構造を有するモノマーとエチレン性不飽和結合を有するモノマーとを添加して重合溶液を調整し、この重合溶液を、前記モノマーが懸濁しないように攪拌しながら、不活性雰囲気化で加熱重合して、着色剤を得るものである。このように重合開始剤が微分散した水性媒体中にモノマーが懸濁しないように攪拌することにより、粒子径2μm以下の粒子を得ることができる。本発明においては、スルホン酸基を介して、色素化合物とエチレン性不飽和基を有するポリオキシエーテル類とが化学的に結合した構造を有するモノマーとして、上記式(I)で表されるモノマーを好ましく使用できる。
本発明によるインク組成物は、上記の着色剤を色材として含有するものである。本発明による着色剤を使用することにより、通常の染料を色材として使用した場合よりもより高濃度のインクを調整できる。また高濃度とした場合であっても、ノズルの目詰まり等を起こさない。さらに、色材(着色剤)の粒子径を数十ナノメーターオーダーまで小さくした場合でも、色材の分散性が安定的に保たれるため、通常の顔料系インクと比較して、低粘度となる。
(1)色素モノマーの合成
オキシエチレン鎖n=6の色素モノマー
銅フタロシアニンテトラスルホン酸ナトリウム誘導体1.0g(1mmol)をジメチルホルムアミド5ml中で攪拌しながら、塩化チオニル0.5g(4.8mmol)を滴下した。滴下後、環流管により60℃で2時間反応させた。その後、室温まで反応液を冷却後、熱の反応容器にニューフロンティアNFバイソマーPEM6E(第一工業製薬製)5gとピリジン10gとを投入したものに、攪拌しながら上記反応溶液をゆっくり滴下した。次いで、室温で12時間攪拌した後、反応溶液をメタノール50mlに一気に加えた。この溶液を吸引ろ過することにより、固形物を回収し、メタノールで固形物を洗浄することにより、色素モノマー1を0.3g得た。
ニューフロンティアNFバイソマーPEM6E(第一工業製薬製)5gとピリジン10gとの投入に代えて、ブレンマーPE350(日本油脂製)3gとピリジン2gとを投入した以外は、上記と同様にして反応を行った。この反応溶液を遠心分離器にて固形分を回収(12000回転、10分間)し、メタノールで固形分を洗浄することにより、色素モノマー2を0.5g得た。
銅フタロシアニンテトラスルホン酸ナトリウム誘導体10g(10mmol)をジメチルホルムアミド50ml中で攪拌しながら、塩化チオニル5g(48mmol)を滴下した。滴下後、環流管により60℃で3時間反応させた。その後、室温まで反応液を冷却後、熱の反応容器にMA−100A(日本乳化剤製)25gとピリジン10gとを投入したものに、攪拌しながら上記反応溶液をゆっくり滴下した。次いで、室温で36時間攪拌した後、反応溶液をメタノール200mlに一気に加えた。この反応溶液を遠心分離器にて固形分を回収(12000回転、10分間)し、メタノールで固形分を洗浄することにより、色素モノマー3を4.7g得た。
銅フタロシアニンテトラスルホン酸ナトリウム誘導体10g(10mmol)をジメチルホルムアミド50ml中で攪拌しながら、塩化チオニル5g(48mmol)を滴下した。滴下後、環流管により60℃で3時間反応させた。その後、室温まで反応液を冷却後、熱の反応容器にPEG600(Nakalai製)40gとピリジン10gとを投入したものに、攪拌しながら上記反応溶液をゆっくり滴下した。次いで、室温で36時間攪拌した後、反応溶液をメタノール200mlに一気に加えた。この反応溶液を遠心分離器にて固形分を回収(12000回転、10分間)し、メタノールで固形分を洗浄することにより、化合物を4.7g得た。得られた化合物をピリジン30ml中に攪拌しながら加え、その混合物中にメタクロリロイルクロライド0.9g(100mmol)を滴下した。次いで、室温で24時間攪拌したした後、反応溶液をメタノール200mlに一気に加えた。この反応溶液を遠心分離器にて固形分を回収(12000回転、10分間)し、メタノールで固形分を洗浄することにより、色素モノマー4を4.5g得た。
得られた色素モノマー1(20.0g)と、重合開始剤(2.0g)とDisper BYK−190(5.0g)と水(353g)を混合し、ペイントシェイカーで2時間攪拌することにより、色素モノマーと重合開始剤の分散液を調整した。と、得られた分散液(380g)にスチレンモノマー(20.0g)g(不飽和エチレンモノマー)と界面活性剤(ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム)(25g)と水(75g)を添加して、窒素雰囲気下、前記色素モノマー、スチレンモノマーが懸濁しないように攪拌しながら、この重合溶液を70℃で終夜反応させて、着色剤1(500g)を得た。
下記表1に示す各インク組成物を混合し、10μmのメンブランフィルターでろ過し、実施例のインク組成物1〜8を得た。得られた組成物の色材濃度は2%であった。なお、表中の数字は重量基準で表したものである。
(1)滲み性評価
上記で得られた各インク組成物をインクジェットプリンタ(PX−V500、セイコーエプソン社製)のインクカートリッジの全列に充填し、専用紙(スーパーファイン用紙、セイコーエプソン社製)に、10ポイントのcentury体アルファベット文字全種を印刷した。この印刷物を、温度40℃、湿度80RH%の恒温恒湿槽内で48時間放置した。その後、印刷物を恒温恒湿槽から取り出し、画像(文字)の滲みを観察した。
上記で得られた各インク組成物をインクジェットプリンタ(PX−G900、セイコーエプソン社製)のインクカートリッジの全列に充填し、専用紙(写真用紙<光沢>、セイコーエプソン社製)にDuty100%で印刷した。得られた印刷物に1m上から白色蛍光灯を照射したときの、印刷物からの反射光が白ければ○、赤ければ×とした。評価結果は、下記表2に示される通りであった。
各インク組成物をインクジェットプリンタ(PX−V500、セイコーエプソン社製)のインクカートリッジの全列に充填した。次いで、記録ヘッドをインク交換位置に移動させて、インクカートリッジを取り外した。そして、インクジェットプリンタを温度40℃、湿度80RH%の恒温恒湿槽内に一週間放置した。その後、インクジェットプリンタを恒温恒湿槽から取り出し、常温常湿(25℃、40RH%)で一日放置した後、プリンタの電源をONにして、全インクノズルが復帰するまでクリーニングボタンを複数回押した。
Claims (5)
- 前記重合体が、エチレン性不飽和結合を有するモノマー単位であって、フタロシアニン骨格を有していないモノマー単位を更に含んでなる、請求項1に記載の着色剤。
- 前記エチレン性不飽和結合を有するモノマー単位であって、前記フタロシアニン骨格を有していないモノマー単位が、スチレンモノマー、および(メタ)アクリル酸モノマーからなる群から選択される一または二種以上を含んでなる、請求項2に記載の着色剤。
- 前記重合体が、前記式(I)で表されるモノマー単位を30〜100mol%含んでなる、請求項2または3に記載の着色剤。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の着色剤を含んでなるインク組成物。
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