JP4571379B2 - 流れ分離分析法による試料中の金属測定に使用する試薬及び測定方法 - Google Patents

流れ分離分析法による試料中の金属測定に使用する試薬及び測定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、試薬の原料中に測定対象の金属が不純物として含まれている場合であっても、試料中の測定対象の金属の測定結果に影響が及ぶことがなく、正確かつ高感度に試料中の金属を測定することができる試薬及び測定方法に関するものである。
本発明は、特に、分析化学、臨床検査、及び医薬品の品質管理等の分野において有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
試料中に微量に含まれる金属、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、カルシウム又はマグネシウム等の測定は、従来、フレームレス原子吸光法(FL−AAS)〔黒鉛炉原子吸光法(GF−AAS)〕、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP−AES)、又はICP質量分析法(ICP−MS)等により行われていた。
しかしながら、これらの測定方法に用いる装置は、大変高価でありかつ広いスペースを必要とするものであった。
【0003】
近年、これらの微量な金属の測定に、流れ分離分析法の一つである液体クロマトグラフィーを使用する方法が開発された。
すなわち、試料中の測定対象の金属を、前記金属と錯形成するラベル化キレート化合物と錯形成させ、そして液体クロマトグラフィーにより分離した前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体を測定することにより試料中の金属を測定する方法である。
【0004】
例えば一例を挙げると、試料中のアルミニウムの測定において、アルミニウムと錯形成するキレート化合物である8−キノリノールを含む試薬を試料と接触させ、次にこれに緩衝剤を含む試薬を添加混合することにより、試料中に含まれていたアルミニウムを、8−キノリノールと錯形成させて錯体とし、次にこれを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に導入して、このアルミニウムと8−キノリノールとの錯体と、その他の物質とを分離し、そして分離されたアルミニウムと8−キノリノールとの錯体の蛍光強度を測定することにより、試料中に含まれていたアルミニウムの定量測定を行う方法である(特許文献1及び特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−15244号公報
【特許文献2】
WO02/23181号公報
【0006】
この方法は、広く用いられている汎用の液体クロマトグラフィー装置(高速液体クロマトグラフィー装置)を使用するものであるので、費用が安価であり、広いスペースを必要とせず、かつ自動運転も可能な有用な方法である。
【0007】
しかしながら、この方法には以下のような問題が存在した。
すなわち、測定対象であるアルミニウムが、前記の試料中のアルミニウムの測定に使用する試薬の原料中に不純物として含まれていた場合、この試薬を用いて試料中のアルミニウムを測定した時に、得られるクロマトグラムに試薬の原料に不純物として含まれていたアルミニウムに由来するピークが生じ、試料中に含まれていた測定対象のアルミニウムに由来するピーク面積に、更に前記の不純物としてのアルミニウム由来のピーク面積が加わったピークとなってしまうという問題があった。
このため、アルミニウムを全く含まない試料(例えば、純水)を測定した際の盲検(ブランク)においても、アルミニウムのピークがクロマトグラムに生じてしまう。
【0008】
ところで、試料中の測定対象物質の測定における検出限界(測定下限)は、盲検値(ブランク値)の測定時の標準偏差(σ)の3倍の値(3σ)とされている。
従って、試料中の測定対象物質を更に微量な濃度まで正確に測定できるようにするためには、盲検値(ブランク値)を下げる必要がある。
【0009】
この盲検値(ブランク値)を下げるため、従来は、測定試薬に使用する原料を高度に精製して、原料中に含まれる測定対象物質(金属)を除去していた。
特に金属は、環境中にも多く存在していることから、原料中に不純物としての金属が混入している頻度は非常に高いものであった。
【0010】
しかしながら、この原料の精製(金属の除去)を行うためには、まず精製法を確立しなければならず、これには長期間の検討が必要であり、時間とコストが掛かっていた。
また、検討を続けても、精製法を確立できるとは限らないものである。
そして、もし精製法を確立できたとしても、この原料の精製(不純物としての金属の除去)を継続的に行わなければならないために、手間そして時間が掛かり、コストがかさむものであった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、試料中の測定対象の金属を、前記金属と錯形成するラベル化キレート化合物と錯形成させ、そして流れ分離分析法により分離した前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体を測定する試料中の金属の測定方法及びこの測定方法に使用する試薬において、前記測定方法に使用する試薬中に不純物としての前記金属が含まれている場合であっても、この不純物として含まれている金属に由来する盲検値(ブランク値)の上昇を防ぎ、これにより試料中の金属測定の検出限界を向上させ(測定下限を伸ばし)、その結果、より低濃度の金属が測れるようにし、すなわち、より高感度に測定が行え、かつ正確な測定値が得られる試料中の金属の測定方法及びこの測定方法に使用する試薬を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明(1)は、試料中の測定対象の金属を、前記金属と錯形成するラベル化キレート化合物と錯形成させ、そして流れ分離分析法により分離した前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体を測定する試料中の金属の測定方法に使用する試薬において、前記金属と、前記試薬に不純物として含まれる前記金属を捕捉することができる捕捉用キレート化合物との錯形成反応速度が、前記試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯形成反応速度の50%以下であるような前記捕捉用キレート化合物を前記試薬中に含有させ、前記試薬に不純物として含まれる前記金属を捕捉することを特徴とする、試料中の金属の測定に使用する試薬である。
【0013】
そして、本発明(2)は、前記金属と前記捕捉用キレート化合物との錯体の熱力学的安定性が、前記試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体の熱力学的安定性の10倍以上である、前記発明(1)の試料中の金属の測定に使用する試薬である。
【0014】
更に、本発明(3)は、前記金属と前記捕捉用キレート化合物との錯形成反応速度が、前記試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯形成反応速度より遅いことを特徴とする前記捕捉用キレート化合物である、前記発明(1)又は前記発明(2)の試料中の金属の測定に使用する試薬である。
【0015】
また、本発明(4)は、試料中の測定対象の金属を、前記金属と錯形成するラベル化キレート化合物と錯形成させ、そして流れ分離分析法により分離した前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体を測定することにより試料中の金属を測定する方法において、前記金属と、前記試薬に不純物として含まれる前記金属を捕捉することができる捕捉用キレート化合物との錯形成反応速度が、測定に使用する試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯形成反応速度の50%以下であるような前記捕捉用キレート化合物を測定に使用する試薬に含有させ、前記試薬に不純物として含まれる前記金属を捕捉することを特徴とする、試料中の金属の測定方法である。
【0016】
更に、本発明(5)は、前記金属と前記捕捉用キレート化合物との錯体の熱力学的安定性が、測定に使用する試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体の熱力学的安定性の10倍以上である、前記発明(4)記載の試料中の金属の測定方法である。
また、本発明(6)は、前記金属と前記捕捉用キレート化合物との錯形成反応速度が、前記試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯形成反応速度より遅いことを特徴とする前記捕捉用キレート化合物である、前記発明(4)又は前記発明(5)記載の試料中の金属の測定方法である。
【0017】
更に、本発明(7)は、試料中の測定対象の金属を、前記金属と錯形成するラベル化キレート化合物と錯形成させ、そして流れ分離分析法により分離した前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体を測定する試料中の金属の測定方法に使用する試薬において、前記金属と、前記試薬に不純物として含まれる前記金属を捕捉することができる捕捉用キレート化合物との錯形成反応速度が、前記試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯形成反応速度の50%以下であるような前記捕捉用キレート化合物を前記試薬中に含有させ、前記試薬に不純物として含まれる前記金属を捕捉することを特徴とする、試薬に不純物として含まれる金属に由来する盲検値の低減方法である
また、本発明()は、前記金属と前記捕捉用キレート化合物との錯体の熱力学的安定性が、測定に使用する試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体の熱力学的安定性の10倍以上である、前記発明(7)記載の試薬に不純物として含まれる金属に由来する盲検値の低減方法である。
【0018】
【発明の実施の形態】
I.試薬
1.総論
本発明の試料中の金属の測定に使用する試薬は、試料中の測定対象の金属を、前記金属と錯形成するラベル化キレート化合物と錯形成させ、そして流れ分離分析法により分離した前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体を測定する試料中の金属の測定方法に使用する試薬において、前記金属と捕捉用キレート化合物との錯形成反応速度が、前記試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯形成反応速度の50%以下であるような前記捕捉用キレート化合物を試薬中に含有することを特徴とするものである。
【0019】
なお、本発明の試料中の金属の測定に使用する試薬は、前記捕捉用キレート化合物を含有することにより、前記試薬に不純物として含まれる前記金属を捕捉することができる。
【0020】
2.流れ分離分析法による測定方法
この「試料中の測定対象の金属を、前記金属と錯形成するラベル化キレート化合物と錯形成させ、そして流れ分離分析法により分離した前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体を測定する試料中の金属の測定方法」であるが、「試料中の測定対象の金属を、前記金属と錯形成するラベル化キレート化合物と錯形成させること」及び「流れ分離分析法により分離した前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体を測定すること」を行って試料中の金属を測定する方法であれば、どのような方法でもよい。
【0021】
例えば、液体クロマトグラフィー等の流れ分離分析法の移動相(溶離液)にラベル化キレート化合物を含有させないプレカラム誘導体化法、液体クロマトグラフィー等の流れ分離分析法の移動相(溶離液)にラベル化キレート化合物を含有させるプレカラム誘導体化法、又はオンカラム誘導体化法等の流れ分離分析法による測定方法を挙げることができる。〔“壹岐ら,ドージンニュース,48巻,3頁,1989年”を参照。〕
【0022】
なお、プレカラム誘導体化法とは、ラベル化キレート化合物を含む試薬と試料とを混合し、試料中に含まれる測定対象の金属と前記ラベル化キレート化合物とを接触させ、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体を形成させた後に、液体クロマトグラフィー等の流れ分離分析法において、前記錯体、前記試料に含まれる成分、若しくは前記試薬に含まれている成分等を移動相(溶離液)により固定相中を移動させ、各成分の移動速度の差によりこれらを相互に分離し、この分離した前記錯体に由来するシグナル(信号)を測定することにより、試料中に含まれていた金属の測定を行う方法である。
【0023】
このプレカラム誘導体化法には、液体クロマトグラフィー等の流れ分離分析法の移動相(溶離液)にラベル化キレート化合物を含有させない方法と含有させる方法の2種類の手法がある。
【0024】
また、オンカラム誘導体化法とは、液体クロマトグラフィー等の流れ分離分析法の移動相(溶離液)にのみラベル化キレート化合物を含有させておき(すなわち、溶離液がラベル化キレート化合物を含む試薬となる)、そして、流れ分離分析法を行いながら金属とラベル化キレート化合物との錯体を形成させ、更に前記錯体の測定を行う方法である。
【0025】
前記の流れ分離分析法を用いて試料中の金属を測定する方法のうち、流れ分離分析法の移動相(溶離液)にラベル化キレート化合物を含有させないプレカラム誘導体化法が特に好適である。
【0026】
本発明における流れ分離分析法としては、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、オープンカラムによる液体クロマトグラフィー、電気泳動法又はキャピラリー電気泳動法等を挙げることができる。
このうち、特に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が好適である。
【0027】
3.測定対象の金属
本発明における、試料中の測定対象の金属としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、カルシウム、又はマグネシウム等を挙げることができる。
この測定対象の金属は、単体、イオン、又は化合物のいずれの形態のものも対象となる。
【0028】
4.試料
本発明において測定を行う試料としては、特に限定されず、生体試料、食物、飲料、飲料水、薬剤、試薬、河川水、湖沼水、海水又は土壌等を挙げることができる。
【0029】
このうち、生体試料は、特に限定されず、例えば、ヒト又は動物の、血液、血清、血漿、尿、精液、髄液、唾液、汗、涙、腹水若しくは羊水などの体液、毛髪、皮膚若しくは爪、大便、脳若しくは肝臓などの臓器、筋肉若しくは神経などの組織、又は細胞等を挙げることができる。
【0030】
また、食物は、特に限定されず、例えば、食肉、野菜、穀物、果物、水産物、又は加工食品等を挙げることができる。
【0031】
そして、飲料は、特に限定されず、例えば、ジュース、お茶、コーヒー、牛乳、又は酒類等を挙げることができる。
【0032】
更に、薬剤は、特に限定されず、例えば、輸液、注射液、軟膏、散剤、又は錠剤等を挙げることができる。
【0033】
なお、試料の形態は、液体であることが好ましいが、液体でない場合には、抽出処理又は可溶化処理等の前処理を既知の方法に従って行い、液体試料とすることが好ましい。
また、必要により、試料の除タンパク処理操作を行ってもよい。
【0034】
本発明における試料としては、特に、生体試料、又は薬剤等が試料である場合に好適である。
【0035】
5.測定対象の金属と錯形成するラベル化キレート化合物
▲1▼ 本発明におけるラベル化キレート化合物
本発明におけるラベル化キレート化合物は、試料中に含まれる測定対象の金属と錯形成することができ、かつ、この測定対象の金属と錯形成することにより、吸光度若しくは蛍光強度などの光学的シグナル、電気的シグナル又は放射化学的シグナル等のシグナル(信号)の生成あるいは変化を生じさせるものであれば、特に制限なく用いることができる。
【0036】
▲2▼ 解離不活性
なお、このラベル化キレート化合物としては、少なくとも流れ分離分析法により分離した「前記金属とこのラベル化キレート化合物との錯体」を測定するまでは、「前記金属」と「ラベル化キレート化合物」とには解離しないか又はごく僅かにしか解離しないものであることが好ましい。
すなわち、「前記金属とこのラベル化キレート化合物との錯体」の解離速度が充分小さいものであることが好ましい。
【0037】
▲3▼ ラベル化キレート化合物の具体例
このラベル化キレート化合物としては、例えば、4’,5’−カルセイン、8−キノリノール(8−ヒドロキシキノン)、SHA又はルモガリオン等を挙げることができる。
【0038】
6.捕捉用キレート化合物
▲1▼ 本発明における捕捉用キレート化合物
本発明における捕捉用キレート化合物は、試料中に含まれる測定対象の金属と錯形成することができるものであって、かつ、前記金属とこの捕捉用キレート化合物との錯形成反応速度が、前記試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯形成反応速度の50%以下であるものである。この要件を満たすものであれば、特に制限なく用いることができる。
【0039】
そして、この捕捉用キレート化合物としては、前記金属とこの捕捉用キレート化合物との錯形成反応速度が、前記試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯形成反応速度の20%以下のものが好ましく、10%以下のものがより好ましい。
【0040】
この理由であるが、前記試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯形成反応速度に比べて、前記金属とこの捕捉用キレート化合物との錯形成反応速度が小さければ小さい程、前記試薬と前記試料を混合、接触させた時に、前記の試料に含まれていた金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体の形成量が、前記の試料に含まれていた金属とこの捕捉用キレート化合物との錯体の形成量に比べて多くなる。
これにより、測定の盲検値(ブランク値)の低減度が高まり、ひいては検出限界が更に向上し、そして、測定の感度が上昇するので好ましい。
【0041】
なお、前記金属とこの捕捉用キレート化合物との錯体はその錯形成により、「前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体に由来するシグナル(信号)であって測定を行うシグナル」と同種のシグナルは生成せず、そして同種のシグナルの変化も生じない。
【0042】
これをより具体的に述べると、例えば、前記金属とこの捕捉用キレート化合物との錯体は、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体に由来する蛍光強度を測定する波長域においては蛍光を生じない、又は同じ波長域に蛍光を生じるもののリテンションタイムが異なるのでクロマトグラム上では区別できるということである。
【0043】
よって、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体に由来するシグナル(信号)の測定を行った時に、この前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体の存在量(濃度)のみが測定値に反映され、前記金属とこの捕捉用キレート化合物との錯体の存在量(濃度)は測定値に反映されず、前記ラベル化キレート化合物と錯形成した金属だけを測定することができるのである。
【0044】
▲2▼ 熱力学的安定性
また、この捕捉用キレート化合物としては、前記金属とこの捕捉用キレート化合物との錯体の熱力学安定性が、前記試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体の熱力学安定性の10倍以上のものが好適である。
【0045】
なお、本発明の試料中の金属の測定に使用する試薬に緩衝剤を含有させる場合には、前記金属とこの緩衝剤との錯体の熱力学安定性が、前記試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体の熱力学安定性より充分低いものであることが好ましい。
そして、この前記金属とこの緩衝剤との錯体の熱力学安定性が、前記試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記捕捉用キレート化合物との錯体の熱力学安定性より充分低いものであることが好ましい。
【0046】
▲3▼ 交換反応不活性
そして、この捕捉用キレート化合物としては、「前記金属とこの捕捉用キレート化合物との錯体」と「前記ラベル化キレート化合物」とが共存した時に、少なくとも流れ分離分析法により分離した「前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体」を測定するまでは、次の交換反応が起こらないか又はごく僅かにしか起こらないものであることが好ましい。
【0047】
「金属と捕捉用キレート化合物との錯体」+「ラベル化キレート化合物」→「金属とラベル化キレート化合物との錯体」+「捕捉用キレート化合物」
【0048】
また、この捕捉用キレート化合物としては、「前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体」と「前記捕捉用キレート化合物」とが共存した時に、少なくとも流れ分離分析法により分離した「前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体」を測定するまでは、次の交換反応が起こらないか又はごく僅かにしか起こらないものであることが好ましい。
【0049】
「金属とラベル化キレート化合物との錯体」+「捕捉用キレート化合物」→「金属と捕捉用キレート化合物との錯体」+「ラベル化キレート化合物」
【0050】
▲4▼ 解離不活性
更に、この捕捉用キレート化合物としては、「前記金属とこの捕捉用キレート化合物との錯体」が、少なくとも流れ分離分析法により分離した「前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体」を測定するまでは、「前記金属」と「捕捉用キレート化合物」とに解離しないものであることが好ましい。
すなわち、「前記金属とこの捕捉用キレート化合物との錯体」の解離速度が充分小さいものであることが好ましい。
【0051】
▲5▼ 濃度
試料中の金属の測定方法に使用する試薬に前記捕捉用キレート化合物を含有させる濃度であるが、これはその試薬中に不純物として含まれる前記金属の濃度、前記金属と前記捕捉用キレート化合物との錯体の組成、前記の捕捉用キレート化合物が何座配位子であるか、前記金属と前記捕捉用キレート化合物との錯体の熱力学的安定性、及びラベル化キレート化合物の存在の有無とその濃度等により異なるので一概に定めることはできない。
【0052】
しかしながら、通常は、盲検値(ブランク値)を低減する上で、捕捉用キレート化合物を含有させる濃度を、0.01μM以上とすることが好ましく、0.1μM以上とすることがより好ましく、1μM以上とすることが特に好ましい。
【0053】
また、捕捉用キレート化合物を含有させる濃度の上限であるが、これは特に制限はなく、前記試薬中におけるこの捕捉用キレート化合物の溶解度が上限となる。
【0054】
▲6▼ 捕捉用キレート化合物を含有させる試薬
捕捉用キレート化合物を含有させる試薬であるが、これは流れ分離分析法を用いた試料中の金属の測定に使用する試薬であれば特に制限なく対象となる。
【0055】
すなわち、試料中の測定対象の金属を、前記金属と錯形成するラベル化キレート化合物と錯形成させ、そして流れ分離分析法により分離した前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体を測定することにより試料中の金属を測定する方法に使用する試薬であれば、特に制限なく対象となる。
【0056】
測定対象の金属を不純物として含む、又は含む可能性がある前記試薬には、捕捉用キレート化合物を含有させる。
【0057】
不純物としての測定対象の金属を含まない、又は含む恐れがない前記試薬には、必ずしも捕捉用キレート化合物を含有させる必要はない。
【0058】
なお、前記試薬としては、例えば、前記ラベル化キレート化合物を含有する試薬、pHを調整するための緩衝剤を含有する試薬、流れ分離分析法の移動相(溶離液)、標準液又は洗浄液等を挙げることができる。
【0059】
▲7▼ ラベル化キレート化合物及び捕捉用キレート化合物を含有する試薬のpHラベル化キレート化合物と捕捉用キレート化合物の両方を含有する試薬のpHは、特に制限はなく、適宜選択して設定することができる。
しかしながら、このラベル化キレート化合物と捕捉用キレート化合物の両方を含有する試薬のpHは、pH6以上とすることが好ましく、pH7.5以上とすることがより好ましく、pH8.5以上とすることが特に好ましい。
このようにすることにより、盲検値(ブランク値)の低減効果を高めることができるので好ましい。
【0060】
▲8▼ 捕捉用キレート化合物の具体的説明
この捕捉用キレート化合物としては、例えば、2,2’−ジヒドロキシ−アゾベンゼン(以下、DHABと言うことがある)等を挙げることができる。
【0061】
捕捉用キレート化合物がDHABであり、ラベル化キレート化合物が4’,5’−カルセインであり、試料中の測定対象の金属がアルミニウムである場合を例にとって、以下、具体的説明を行う。
【0062】
前記▲1▼の錯形成反応速度について、後述する実施例における試薬中の濃度において本発明者らが実験を行って調べたところ、アルミニウムとDHABとの錯形成反応速度定数は、100秒−1−1以下であった。
【0063】
また、同じく後述する実施例における試薬中の濃度において本発明者らが実験により求めた、アルミニウムと4’,5’−カルセインとの錯形成反応速度定数は、2,900秒−1−1であった。
【0064】
従って、アルミニウムとDHABとの錯形成反応速度は、アルミニウムと4’,5’−カルセインとの錯形成反応速度の4%以下であり、50%以下という本発明の要件を満たしている。
【0065】
そして、前記▲3▼の「前記金属とこの捕捉用キレート化合物との錯体」と「前記ラベル化キレート化合物」とが共存した時の配位子の交換について、後述する実施例における試薬中の濃度において本発明者らが実験により調べたところ、「アルミニウムとDHABとの錯体」+「4’,5’−カルセイン」→「アルミニウムと4’,5’−カルセインとの錯体」+「DHAB」の交換反応の配位子交換反応定数は13.3秒−1−1であり、この交換反応は非常に遅いものであった。すなわち、この交換反応はほとんど起こらないか又はごく僅かにしか起こらないものである
【0066】
また、前記▲3▼の「前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体」と「前記捕捉用キレート化合物」とが共存した時の配位子の交換について、後述する実施例における試薬中の濃度において本発明者らが実験を行って調べたところ、次の交換反応の半減期は4.9時間であることが分かった。すなわち、次の交換反応の速度は充分小さいものであることが分かった。
【0067】
「アルミニウムと4’,5’−カルセインとの錯体」+「DHAB」→「アルミニウムとDHABとの錯体」+「4’,5’−カルセイン」
【0068】
II.測定方法
1.総論
本発明の試料中の金属の測定方法は、試料中の測定対象の金属を、前記金属と錯形成するラベル化キレート化合物と錯形成させ、そして流れ分離分析法により分離した前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体を測定することにより試料中の金属を測定する方法において、前記金属と捕捉用キレート化合物との錯形成反応速度が、測定に使用する試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯形成反応速度の50%以下であるような前記捕捉用キレート化合物を測定に使用する試薬に含有させることを特徴とするものである。
【0069】
なお、本発明の試料中の金属の測定方法においては、試料中の金属の測定に使用する試薬に前記捕捉用キレート化合物を含有させることにより、前記試薬に不純物として含まれる前記金属を捕捉することができる。
【0070】
また、前記金属と捕捉用キレート化合物との錯形成反応速度が、測定に使用する試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯形成反応速度の50%以下であるような捕捉用キレート化合物を含有させる、試料中の金属の測定に使用する試薬については、前記「I.試薬」の項に記載した通りである。
【0071】
2.流れ分離分析法による測定方法
この試料中の測定対象の金属を、前記金属と錯形成するラベル化キレート化合物と錯形成させ、そして流れ分離分析法により分離した前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体を測定する試料中の金属の測定方法であるが、「試料中の測定対象の金属を、前記金属と錯形成するラベル化キレート化合物と錯形成させること」及び「流れ分離分析法により分離した前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体を測定すること」を行って試料中の金属を測定する方法であれば、どのような方法でもよい。
詳細については、前記「I.試薬」の「2.流れ分離分析法による測定方法」の項に記載した通りである。
【0072】
3.測定対象の金属
測定対象の金属については、前記「I.試薬」の「3.測定対象の金属」の項に記載した通りである。
【0073】
4.試料
試料については、前記「I.試薬」の「4.試料」の項に記載した通りである。
【0074】
5.測定対象の金属と錯形成するラベル化キレート化合物
測定対象の金属と錯形成するラベル化キレート化合物については、前記「I.試薬」の「5.測定対象の金属と錯形成するラベル化キレート化合物」の項に記載した通りである。
【0075】
6.捕捉用キレート化合物
▲1▼ 本発明における捕捉用キレート化合物
本発明における捕捉用キレート化合物は、試料中に含まれる測定対象の金属と錯形成することができるものであって、かつ、前記金属とこの捕捉用キレート化合物との錯形成反応速度が、測定に使用する試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯形成反応速度の50%以下であるものである。この要件を満たすものであれば、特に制限なく用いることができる。
【0076】
そして、この捕捉用キレート化合物としては、前記金属とこの捕捉用キレート化合物との錯形成反応速度が、測定に使用する試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯形成反応速度の20%以下のものが好ましく、10%以下のものがより好ましい。
【0077】
この理由であるが、測定に使用する試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯形成反応速度に比べて、前記金属とこの捕捉用キレート化合物との錯形成反応速度が小さければ小さい程、前記試薬と前記試料を混合、接触させた時に、前記の試料に含まれていた金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体の形成量が、前記の試料に含まれていた金属とこの捕捉用キレート化合物との錯体の形成量に比べて多くなる。
これにより、測定の盲検値(ブランク値)の低減度が高まり、ひいては検出限界が更に向上し、そして、測定の感度が上昇するので好ましい。
【0078】
なお、前記金属とこの捕捉用キレート化合物との錯体はその錯形成により、「前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体に由来するシグナル(信号)であって測定を行うシグナル」と同種のシグナルは生成せず、そして同種のシグナルの変化も生じない。
【0079】
これをより具体的に述べると、例えば、前記金属とこの捕捉用キレート化合物との錯体は、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体に由来する蛍光強度を測定する波長域においては蛍光を生じない、又は同じ波長域に蛍光を生じるもののリテンションタイムが異なるのでクロマトグラム上では区別できるということである。
【0080】
よって、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体に由来するシグナル(信号)の測定を行った時に、この前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体の存在量(濃度)のみが測定値に反映され、前記金属とこの捕捉用キレート化合物との錯体の存在量(濃度)は測定値に反映されず、前記ラベル化キレート化合物と錯形成した金属だけを測定することができるのである。
【0081】
▲2▼ 熱力学的安定性
また、この捕捉用キレート化合物としては、前記金属とこの捕捉用キレート化合物との錯体の熱力学安定性が、測定に使用する試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体の熱力学安定性の10倍以上のものが好適である。
【0082】
なお、本発明の試料中の金属の測定に使用する試薬に緩衝剤を含有させる場合には、前記金属とこの緩衝剤との錯体の熱力学安定性が、測定に使用する試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体の熱力学安定性より充分低いものであることが好ましい。
【0083】
そして、この前記金属とこの緩衝剤との錯体の熱力学安定性が、測定に使用する試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記捕捉用キレート化合物との錯体の熱力学安定性より充分低いものであることが好ましい。
【0084】
捕捉用キレート化合物についてのその他の詳細は、前記「I.試薬」の「6.捕捉用キレート化合物」の▲3▼〜▲8▼の項に記載した通りである。
【0085】
7.固定相
液体クロマトグラフィーにおける固定相としては、例えば、オクタデシルシラン(ODS)カラムなどの既知の逆相クロマトグラフィーカラム、バイオプティックAV−1カラム〔GLサイエンス社〕などのタンパク質被覆化ODSカラム、カプセルパックMF ph−1カラム〔資生堂社〕若しくはカプセルパックALカラム〔資生堂社〕などの親水性基とフェニル基などの疎水性基を併せ持つ担体よりなるカラム、又はデベロシルシナールカラム〔野村化学社〕などのフェニル基等の疎水性基を有する担体よりなるカラム等を挙げることができる。
【0086】
また、電気泳動法及びキャピラリー電気泳動法の場合、ポリアクリルアミドゲル又はアガロースゲル等の既知の電気泳動用担体を固定相として用いることができる。
【0087】
8.移動相
流れ分離分析法における移動相(溶離液)の組成及びその移動速度は、固定相の種類、固定相の容量、又は分離した前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体の測定方法に応じて、適当な組成及び移動速度を適宜選択する。
【0088】
例えば、本発明の測定方法を逆相系のカラムを固定相として用いた液体クロマトグラフィーにより実施する場合には、メタノール、アセトニトリル若しくは酢酸などの有機溶媒を0〜50%の範囲で、MES、BES、CHES若しくはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどの既知の緩衝剤を0.001〜0.5MかつpH4.0〜9.0の範囲で、そして水を0〜95%の範囲で含む移動相(溶離液)等を用いることができる。
【0089】
そして、この移動相(溶離液)には、必要に応じて、アジ化ナトリウムなどの防腐剤、対イオン、又は、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤若しくは両性界面活性剤よりなる界面活性剤等を含有させてもよい。
なお、移動相(溶離液)の組成を時間的に変化させてもよい。
【0090】
移動相(溶離液)の移動速度は、高速液体クロマトグラフィーによる場合は、例えば、0.1〜10.0mL/分の範囲内で、またオープンカラムによる液体クロマトグラフィーの場合は、例えば、0.01〜5.0mL/分の範囲内で適宜設定すればよい。
【0091】
9.測定対象の金属とラベル化キレート剤との錯体の測定
分離した測定対象の金属とラベル化キレート剤との錯体の測定は、流れ分離分析法の移動相(溶離液)の流路中に前記錯体が存在する間に、この流路中に配置した検出装置により又は目視により、前記錯体に由来するシグナル(信号)を検出することにより行うことができる。
【0092】
また、流れ分離分析法から移動相(溶離液)を分別して収集し、このフラクションを検出装置にかけることにより又は目視により行うこともできる。
【0093】
なお、前記錯体に由来するシグナルとしては、例えば、前記錯体に由来する吸光度若しくは蛍光強度などの光学的シグナル、電気的シグナル又は放射化学的シグナル等を挙げることができる。
【0094】
10.試料中に含まれていた金属の定性又は定量
試料中の測定対象の金属の定性測定は、前記のようにして検出したシグナル(信号)を、測定対象の金属を含む標準試料のシグナル(信号)のリテンションタイム又は移動度等と対比することにより、分離した前記金属と前記ラベル化キレート剤との錯体に由来するシグナル(信号)を同定することができる。
【0095】
また、定量測定を行う場合には、更に、得られたクロマトグラム上のこの分離した前記錯体に由来するシグナル(信号)であるピークの高さ又は面積等を、濃度既知の前記金属を含む標準試料のものと比較し計算することにより、定量値を求めればよい。また、検出装置よりの電気信号(シグナル)を基に、定量値を算出してもよい。
【0096】
11.試料中の金属の測定
本発明の試料中の金属の測定方法により測定を行うことについて、流れ分離分析法の移動相(溶離液)にラベル化キレート化合物を含有させないプレカラム誘導体化法により測定を実施する場合を例にとって、以下説明を行う。
【0097】
▲1▼ ラベル化キレート化合物及び捕捉用キレート化合物を含有しかつpHが酸性域(又はアルカリ性域)にある試薬と試料とを混合し、試料中に含まれる測定対象の金属とラベル化キレート化合物とを接触させる。
【0098】
▲2▼ 前記▲1▼の試料と試薬との混合液に、中性付近に緩衝能を持つ緩衝剤及び捕捉用キレート化合物を含有する試薬を添加、混合し、この混合液のpHを中性域とし、そして、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体を形成させる。
【0099】
▲3▼ 前記▲2▼の混合液の一定量を、高速液体クロマトグラフィー装置に導入し、高速液体クロマトグラフィーにより、前記錯体、前記試料に含まれる成分、若しくは前記試薬に含まれている成分等を、前記捕捉用キレート化合物を含有する移動相(溶離液)により固定相(カラム)中を移動させ、各成分の移動速度の差によりこれらを相互に分離する。
【0100】
▲4▼ 前記▲3▼において分離した前記金属と前記ラベル化キレート剤との錯体に由来するシグナル(信号)である蛍光強度を、前記高速液体クロマトグラフィー装置の流路中に配置した蛍光検出器により測定する。
【0101】
▲5▼ 試料を測定して得たクロマトグラム上の蛍光強度のピークの高さ又は面積等を、濃度既知の前記金属を含む標準試料におけるクロマトグラム上の蛍光強度のピークの高さ又は面積等と比較し計算することにより、試料中に含まれていた測定対象の金属の定量値を求める。
または、蛍光検出器よりの電気信号(シグナル)を基に、定量値を算出する。
【0102】
【作用】
本発明の試料中の金属の測定に使用する試薬及び試料中の金属の測定方法においては、流れ分離分析法を用いて試料中の金属の測定を行う方法に使用する試薬に、試料中に含まれる測定対象の金属と錯形成することができる捕捉用キレート化合物を含有させることにより、前記試薬中に不純物としての前記金属が含まれていたとしても、この不純物としての前記金属を捕捉用キレート化合物により錯形成し捕捉してしまう。
【0103】
そして、前記金属と前記捕捉用キレート化合物との錯形成反応速度は、測定に使用する試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯形成反応速度の50%以下であるので、捕捉用キレート化合物を含有する前記試薬と測定対象の金属を含む試料を混合し、接触させた時には、錯形成反応速度が速い前記ラベル化キレート化合物が前記試料に含まれていた金属と錯体を形成することができ、前記ラベル化キレート化合物より錯形成反応速度が遅い前記捕捉用キレート化合物は前記試料に含まれていた金属と錯体を形成することができない。
【0104】
また、前記試薬中に不純物として含まれていた前記金属は、前記捕捉用キレート化合物と錯体を形成しているので、前記ラベル化キレート化合物と錯体を形成することはできない。
【0105】
更に、流れ分離分析法により分離した、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体を測定する時、すなわち、この錯体に由来するシグナル(信号)を検出する時に、前記金属と前記捕捉用キレート化合物との錯体は測り込まないので、結局、前記試料に含まれていた金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体に由来するシグナル(信号)のみを検出することになる。
【0106】
従って、前記試料に含まれていた金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体のみが測定されるので、得られる測定値は前記試料に含まれていた金属のものであり、前記試薬中に不純物として含まれていた金属は測定値に反映されない。
【0107】
以上のことにより、本発明の試薬及び測定方法は、盲検値(ブランク値)を低減することができ、ひいては、検出限界を向上させることができる。
【0108】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に説明する。なお、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0109】
〔実施例1〕(本発明の試薬及び方法と、従来の試薬及び方法との比較)
本発明の試料中の金属の測定に使用する試薬及び試料中の金属の測定方法により、試料中のアルミニウムの測定を行い、従来の試薬及び測定方法による測定との比較を行った。
なお、実験に用いた器具は、全てテフロン製のものを用いた。
【0110】
〔1〕試料中の金属の測定に使用する試薬の調製
1.本発明の試薬
▲1▼ ラベル化キレート化合物を含有する試薬〔本発明〕
下記の成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、そして水酸化ナトリウムによりpH10.0に調整し、その後一昼夜静置した。
【0111】
4’,5’−カルセイン 10μM
2,2’ −ジヒドロキシ−アゾベンゼン(DHAB) 10μM
CHES 1.5mM
【0112】
▲2▼ 緩衝剤を含有する試薬〔本発明〕
下記の成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、そして塩酸によりpH7.5に調整し、その後一昼夜静置した。
【0113】
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン 40mM
2,2’−ジヒドロキシ−アゾベンゼン(DHAB) 5μM
【0114】
▲3▼ 溶離液〔本発明〕
下記の成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、そして塩酸によりpH7.5に調整した。
【0115】
メタノール 18%(Wt)
2,2’−ジヒドロキシ−アゾベンゼン(DHAB) 125nM
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン 1mM
【0116】
2.従来の試薬
▲1▼ ラベル化キレート化合物を含有する試薬〔従来〕
下記の成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、そして水酸化ナトリウムによりpH10.0に調整し、その後一昼夜静置した。
【0117】
4’,5’−カルセイン 10μM
CHES 1.5mM
【0118】
▲2▼ 緩衝剤を含有する試薬〔従来〕
下記の成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、そして塩酸によりpH7.5に調整し、その後一昼夜静置した。
【0119】
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン 40mM
【0120】
▲3▼ 溶離液〔従来〕
下記の成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、そして塩酸によりpH7.5に調整した。
【0121】
メタノール 18%(Wt)
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン 1mM
【0122】
〔2〕試料
▲1▼ 標準液
100nMのアルミニウムを含む標準液(pH2.0)
【0123】
▲2▼ 河川水標準物質
社団法人日本分析化学会の河川水標準物質JAC0031(無添加)
〔アルミニウム認証値:13.4±0.7μg/L〕
【0124】
▲3▼ 純水
純水
【0125】
〔3〕測定手順
▲1▼ 前記〔1〕の1の▲1▼のラベル化キレート化合物を含有する試薬〔本発明〕、又は前記〔1〕の2の▲1▼のラベル化キレート化合物を含有する試薬〔従来〕の5mLを、メスフラスコ(50mL容)に入れた。
【0126】
▲2▼ 次に、このメスフラスコに、前記〔1〕の1の▲2▼の緩衝剤を含有する試薬〔本発明〕、又は前記〔1〕の2の▲2▼の緩衝剤を含有する試薬〔従来〕の10mLを入れた。
【0127】
▲3▼ その後、このメスフラスコに、前記〔2〕の▲1▼の標準液、前記〔2〕の▲2▼の河川水標準物質、又は前記〔2〕の▲3▼の純水を250〜500μL添加した。
【0128】
▲4▼ この後、直ちに純水で50mLに定容し、次いで、20℃で20分間静置した。
【0129】
▲5▼ 次に、この20uLを高速液体クロマトグラフィー装置に導入した。
溶離液として、前記〔1〕の1の▲3▼の溶離液〔本発明〕、又は前記〔1〕の2の▲3▼の溶離液〔従来〕を用い、流速は1mL/分とした。
【0130】
▲6▼ 高速液体クロマトグラフィー装置の蛍光検出器により、蛍光強度の検出を励起波長493nm及び輻射波長520nmにて行った。
【0131】
〔4〕本発明の試薬及び測定方法による測定と従来の試薬及び測定方法による測定との比較
【0132】
前記〔1〕の試薬及び前記〔2〕の試料を下のように組み合わせ、前記〔3〕の測定手順に従って測定を行った。
この測定結果のクロマトグラムを図1に示した。
なお、この図において、横軸はリテンションタイム(分)を、縦軸は蛍光強度を示す。
【0133】
▲1▼ ラベル化キレート化合物を含有する試薬〔従来〕、緩衝剤を含有する試薬〔従来〕、及び溶離液〔従来〕を試薬として用い、純水を試料として測定を行った。(クロマトグラムを図1の(1)に示した。)
【0134】
▲2▼ ラベル化キレート化合物を含有する試薬〔本発明〕、緩衝剤を含有する試薬〔本発明〕、及び溶離液〔従来〕を試薬として用い、純水を試料として測定を行った。(クロマトグラムを図1の(2)に示した。)
【0135】
▲3▼ ラベル化キレート化合物を含有する試薬〔従来〕、緩衝剤を含有する試薬〔従来〕、及び溶離液〔従来〕を試薬として用い、標準液を試料として測定を行った。(クロマトグラムを図1の(3)に示した。)
【0136】
▲4▼ ラベル化キレート化合物を含有する試薬〔本発明〕、緩衝剤を含有する試薬〔本発明〕、及び溶離液〔従来〕を試薬として用い、標準液を試料として測定を行った。(クロマトグラムを図1の(4)に示した。)
【0137】
〔5〕前記〔4〕の比較検討の考察
前記〔4〕の比較検討の結果であるクロマトグラム(図1)より、次のことが分かる。
【0138】
▲1▼ 図1の(1)のクロマトグラムより、試料中にアルミニウムが含まれない時も、クロマトグラム上にはアルミニウムに由来するピーク(リテンションタイム:約3.6〜約4.0分)が出現していることが分かる。
すなわち、試料以外の成分に由来するアルミニウム(混入したアルミニウム)が存在しており、これが盲検値(ブランク値)として現れていることが分かる。
【0139】
▲2▼ 図1の(1)と(2)のクロマトグラムを比較すると、捕捉用キレート化合物であるDHABを試薬に含有させることにより、アルミニウムに由来するピークがほとんど消失してしまうくらい減少していることが分かる。
すなわち、盲検値(ブランク値)が大幅に低減していることが分かる。
【0140】
▲3▼ 図1の(3)のクロマトグラムより、100nMのアルミニウムを含む試料においては、図1の(1)のアルミニウムに由来するピークに試料由来のアルミニウム分が加わったピークとなっていることが分かる。
【0141】
▲4▼ 図1の(4)のクロマトグラムより、試薬に捕捉用キレート化合物であるDHABを試薬に含有させた場合でも、確かに試料中に含まれる100nM分のアルミニウムを測定できていることが分かる。
また、図1の(3)のクロマトグラムと比較した場合、試料以外の成分から混入したアルミニウムの分だけ、ピークが減少していることが分かる。
【0142】
〔実施例2〕(盲検値の低減効果の確認)
本発明の試料中の金属の測定に使用する試薬及び試料中の金属の測定方法の、盲検値(ブランク値)を低減する効果を確かめた。
なお、実験に用いた器具は、全てテフロン製のものを用いた。
【0143】
〔1〕盲検値の測定
前記実施例1の〔1〕の試薬及び前記実施例1の〔2〕の試料を下のように組み合わせ、前記実施例1の〔3〕の測定手順に従って測定を行った。
【0144】
なお、各々の測定により得られたアルミニウム濃度は、純水を試料として測定した時の測定値(クロマトグラム上の蛍光強度のピークの高さ)を、標準液(アルミニウム濃度100nM)を試料として測定した時の測定値(クロマトグラム上の蛍光強度のピークの高さ)で除して、これに標準液のアルミニウム濃度(100nM)を掛けることにより求めた。
【0145】
▲1▼ ラベル化キレート化合物を含有する試薬〔従来〕、緩衝剤を含有する試薬〔従来〕、及び溶離液〔従来〕を試薬として用い、純水を試料として測定を行った。
測定により得られたアルミニウム濃度、すなわち盲検値(ブランク値)は、16nMであった。
【0146】
▲2▼ ラベル化キレート化合物を含有する試薬〔従来〕、緩衝剤を含有する試薬〔本発明〕、及び溶離液〔従来〕を試薬として用い、純水を試料として測定を行った。
測定により得られたアルミニウム濃度、すなわち盲検値(ブランク値)は、1.3nMであった。(これは、前記▲1▼における盲検値の8%である。)
【0147】
▲3▼ ラベル化キレート化合物を含有する試薬〔本発明〕、緩衝剤を含有する試薬〔本発明〕、及び溶離液〔従来〕を試薬として用い、純水を試料として測定を行った。
測定により得られたアルミニウム濃度、すなわち盲検値(ブランク値)は、0.96nMであった。(これは、前記▲1▼における盲検値の6%である。)
【0148】
▲4▼ ラベル化キレート化合物を含有する試薬〔本発明〕、緩衝剤を含有する試薬〔本発明〕、及び溶離液〔本発明〕を試薬として用い、純水を試料として測定を行った。
測定により得られたアルミニウム濃度、すなわち盲検値(ブランク値)は、0.86nMであった。(これは、前記▲1▼における盲検値の5%である。)
【0149】
〔2〕前記〔1〕の測定結果の考察
前記〔1〕の測定結果より、試薬に捕捉用キレート化合物であるDHABを含有させることにより、盲検値(ブランク値)を大幅に低減できることが分かる。
盲検値(ブランク値)は、緩衝剤を含有する試薬にDHABを含有させるだけでも、含有させない場合の8%とすることができ、そして、ラベル化キレート化合物を含有する試薬、緩衝剤を含有する試薬、及び溶離液の全ての試薬にDHABを含有させることにより、含有させない場合の5%とすることができることが確かめられた。
【0150】
〔実施例3〕(検出限界向上の確認)
本発明の試料中の金属の測定に使用する試薬及び試料中の金属の測定方法の、検出限界の向上効果を確かめた。
なお、実験に用いた器具は、全てテフロン製のものを用いた。
【0151】
〔1〕検出限界の向上効果の確認
前記実施例1の〔1〕の試薬及び前記実施例1の〔2〕の試料を下のように組み合わせ、前記実施例1の〔3〕の測定手順に従って測定を行った。
【0152】
なお、各々の測定により得られたアルミニウム濃度は、純水を試料として測定した時の測定値(クロマトグラム上の蛍光強度のピークの高さ)を、標準液(アルミニウム濃度100nM)を試料として測定した時の測定値(クロマトグラム上の蛍光強度のピークの高さ)で除して、これに標準液のアルミニウム濃度(100nM)を掛けることにより求めた。
【0153】
▲1▼ ラベル化キレート化合物を含有する試薬〔従来〕、緩衝剤を含有する試薬〔従来〕、及び溶離液〔従来〕を試薬として用い、純水を試料として測定を行った。
この測定を5回繰り返して行った。
この5回の測定の標準偏差(σ)を3倍した値(3σ)を検出限界とした。
検出限界は、1.3nMであった。
【0154】
▲2▼ ラベル化キレート化合物を含有する試薬〔本発明〕、緩衝剤を含有する試薬〔本発明〕、及び溶離液〔本発明〕を試薬として用い、純水を試料として測定を行った。
この測定を5回繰り返して行った。
この5回の測定の標準偏差(σ)を3倍した値(3σ)を検出限界とした。
検出限界は、0.076nMであった。
これは、いずれの試薬にもDHABを含有させない前記▲1▼における検出限界の約17倍の値であった。
【0155】
〔2〕前記〔1〕の測定結果の考察
前記〔1〕の測定結果より、試薬に捕捉用キレート化合物であるDHABを含有させることにより、検出限界が大幅に向上することが分かる。
【0156】
すなわち、ラベル化キレート化合物を含有する試薬、緩衝剤を含有する試薬、及び溶離液の全ての試薬にDHABを含有させることにより、含有させない場合に比べて約17倍検出限界が向上することが確かめられた。
【0157】
〔実施例4〕(河川水中のアルミニウムの測定)
本発明の試料中の金属の測定に使用する試薬及び試料中の金属の測定方法により、河川水中のアルミニウムの測定を行った。
なお、実験に用いた器具は、全てテフロン製のものを用いた。
【0158】
〔1〕河川水中のアルミニウムの測定
前記実施例1の〔1〕の試薬及び前記実施例1の〔2〕の試料を下のように組み合わせ、前記実施例1の〔3〕の測定手順に従って測定を行った。
【0159】
なお、各々の測定により得られたアルミニウム濃度は、純水を試料として測定した時の測定値(クロマトグラム上の蛍光強度のピークの高さ)を、標準液(アルミニウム濃度100nM)を試料として測定した時の測定値(クロマトグラム上の蛍光強度のピークの高さ)で除して、これに標準液のアルミニウム濃度(100nM)を掛けることにより求めた。
【0160】
ラベル化キレート化合物を含有する試薬〔本発明〕、緩衝剤を含有する試薬〔本発明〕、及び溶離液〔本発明〕を試薬として用い、河川水標準物質(認証値:13.4±0.7μg/L)を試料として測定を行った。
この測定により得られた河川水標準物質のアルミニウム濃度は、13.8μg/Lであった。
【0161】
〔2〕 前記〔1〕の測定結果の考察
前記〔1〕の測定結果より、試薬に捕捉用キレート化合物を含有させた本発明の試薬及び測定方法におけるアルミニウム濃度測定値は、社団法人日本分析化学会による認証値とほぼ同じ値であり、正確に測定を行えていることが確かめられた。
【0162】
【発明の効果】
本発明の試料中の金属の測定に使用する試薬及び試料中の金属の測定方法は、試料中の測定対象の金属の測定に使用する試薬中に不純物としての前記金属が含まれていたとしても、この不純物として含まれている金属に由来する盲検値(ブランク値)の上昇を防ぎ、これにより試料中の金属測定の検出限界を向上させ(測定下限を伸ばし)、その結果、より低濃度の金属が測れるようにし、すなわち、より高感度に測定が行えるようにし、かつ正確な測定値が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の試料中の金属の測定に使用する試薬及び試料中の金属の測定方法により純水及びアルミニウムを含む標準液を測定した時のクロマトグラム、並びに従来の試料中の金属の測定に使用する試薬及び試料中の金属の測定方法により純水及びアルミニウムを含む標準液を測定した時のクロマトグラムを示した図である。

Claims (8)

  1. 試料中の測定対象の金属を、前記金属と錯形成するラベル化キレート化合物と錯形成させ、そして流れ分離分析法により分離した前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体を測定する試料中の金属の測定方法に使用する試薬において、前記金属と、前記試薬に不純物として含まれる前記金属を捕捉することができる捕捉用キレート化合物との錯形成反応速度が、前記試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯形成反応速度の50%以下であるような前記捕捉用キレート化合物を前記試薬中に含有させ、前記試薬に不純物として含まれる前記金属を捕捉することを特徴とする、試料中の金属の測定に使用する試薬。
  2. 前記金属と前記捕捉用キレート化合物との錯体の熱力学的安定性が、前記試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体の熱力学的安定性の10倍以上である、請求項1記載の試料中の金属の測定に使用する試薬。
  3. 前記金属と前記捕捉用キレート化合物との錯形成反応速度が、前記試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯形成反応速度より遅いことを特徴とする前記捕捉用キレート化合物である、請求項1又は請求項2記載の試料中の金属の測定に使用する試薬。
  4. 試料中の測定対象の金属を、前記金属と錯形成するラベル化キレート化合物と錯形成させ、そして流れ分離分析法により分離した前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体を測定することにより試料中の金属を測定する方法において、前記金属と、前記試薬に不純物として含まれる前記金属を捕捉することができる捕捉用キレート化合物との錯形成反応速度が、測定に使用する試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯形成反応速度の50%以下であるような前記捕捉用キレート化合物を測定に使用する試薬に含有させ、前記試薬に不純物として含まれる前記金属を捕捉することを特徴とする、試料中の金属の測定方法。
  5. 前記金属と前記捕捉用キレート化合物との錯体の熱力学的安定性が、測定に使用する試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体の熱力学的安定性の10倍以上である、請求項4記載の試料中の金属の測定方法。
  6. 前記金属と前記捕捉用キレート化合物との錯形成反応速度が、前記試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯形成反応速度より遅いことを特徴とする前記捕捉用キレート化合物である、請求項4又は請求項5記載の試料中の金属の測定方法。
  7. 試料中の測定対象の金属を、前記金属と錯形成するラベル化キレート化合物と錯形成させ、そして流れ分離分析法により分離した前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体を測定する試料中の金属の測定方法に使用する試薬において、前記金属と、前記試薬に不純物として含まれる前記金属を捕捉することができる捕捉用キレート化合物との錯形成反応速度が、前記試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯形成反応速度の50%以下であるような前記捕捉用キレート化合物を前記試薬中に含有させ、前記試薬に不純物として含まれる前記金属を捕捉することを特徴とする、試薬に不純物として含まれる金属に由来する盲検値の低減方法。
  8. 前記金属と前記捕捉用キレート化合物との錯体の熱力学的安定性が、測定に使用する試薬中における前記ラベル化キレート化合物の濃度及び前記捕捉用キレート化合物の濃度において、前記金属と前記ラベル化キレート化合物との錯体の熱力学的安定性の10倍以上である、請求項7記載の試薬に不純物として含まれる金属に由来する盲検値の低減方法。
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