JP4570774B2 - G−タンパク質共役受容体およびそれらの使用 - Google Patents

G−タンパク質共役受容体およびそれらの使用 Download PDF

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Description

【0001】
【技術分野】
発明の背景
G−タンパク質共役受容体
G−タンパク質共役受容体(GPCR)は、細胞内でのシグナル伝達の原因であるタンパク質の主な種類を構成する。GPCRsは3つの構造ドメインを有する:アミノ末端細胞外ドメイン、7回膜貫通セグメント、3つの細胞外ループおよび3つの細胞内ループを含有する膜貫通ドメイン、ならびにカルボキシ末端細胞内ドメイン。リガンドがGPCRの細胞外部分に結合すると、シグナルが細胞内に伝達されて、これは細胞の生物的または生理的特性に変化をもたらす。GPCRはG−タンパク質およびエフェクター(G−タンパク質によりモジュレートされる細胞内酵素およびチャンネル)と一緒に、細胞内の第2メッセンジャーの状態を細胞外のインプットにつなぐモジュラーシグナリング系の成分である。
【0002】
GPCR遺伝子および遺伝子産物は、疾病を引き起こす潜在的な原因である(Spiegelら、J.Clin.Invest.92:1119-1125(1993);Mckusickら、J.Med.Genet.30:1-26(1993))。ロドプシン遺伝子およびV2バソプレッシン受容体遺伝子中の特別な欠失は、色素性網膜症(Nathansら、Annu.Rev.Genet.26:403-424(1992))、および腎性尿崩症(Holtzmanら、Hum.Mol.Genet.2:1201-1204(1993))の種々の形態を引き起こすことが示された。このような受容体は中枢神経系および末梢生理学的プロセスの両方にきわめて重要である。進化的な分析では、このようなタンパク質の祖先はもともと複雑な身体の設計および神経系と関連して発達したことが示唆されている。
【0003】
GPCRタンパク質スーパーファミリーは、5つのファミリーに分類することができる:ファミリーI、ロドプシンに類型化される受容体およびβ2-アドレナリン受容体および現在表されている200を越える独特な員(Dohlmanら、Annu.Rev.Biochem.60:653-688(1991);ファミリーII、パラチロイドホルモン/カルシトニン/セクレチン受容体ファミリー(Juppnerら、Science 254:1024-1026(1991);Linら、Science 254:1022-1024(1991));ファミリーIII、代謝共役型グルタミン受容体ファミリー(Nakanishi,Science 258 597:603(1992));ファミリーIV、走化性およびディ.ディスコイダム(D.sidcoiseum)の発育に重要なcAMP受容体ファミリー(Kleinら、Science 241:1467-1472(1988));およびファミリーV、STE2のような菌類の接合フェロモン受容体(Kurian,Annu,Rev.Biochem.61:1097-1129(1992))。
【0004】
7個の推定上の疎水性セグメントを与え、そしてGPCRとは無関係と思われる他の少数のタンパク質もある:それらはG−タンパク質に共役するとは示されていなかった。ショウジョウバエ(Drosophila)は、光受容体-特異的タンパク質、セブンレスのブライド(bride of sevenless:boss)、7回膜貫通セグメントタンパク質を発現するが、これは徹底的に研究され、そしてGPCRである証拠は示されていない(Hartら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5047-5051(1993))。ショウジョウバエ(Drosophila)の遺伝子frizzled(fz)も、7回膜貫通セグメントを持つタンパク質であると考えられている。bossと同様に、fzがG−タンパク質と共役するとは示されていない(Vinsonら、Nature 338:263-264(1989))。
【0005】
G−タンパク質は、α、βおよびγサブユニットから成るグアニンヌクレオチドに結合するヘテロ三量体タンパク質のファミリーを表す。このようなタンパク質は通常、細胞表面受容体、例えば7回膜貫通セグメントを含有する受容体に結合する。GPCRへのリガンドの結合後、構造的変化がGタンパク質に伝わり、これはα−サブユニットが結合したGDT分子をGTP分子と交換し、そしてβγ−サブユニットからの解離を引き起こす。α−サブユニットのGTP−結合形態は、典型的にはエフェクターをモジュレートする部分として機能し、cAMP(例えば、アデニル酸シクラーゼの活性化による)、ジアシルグリセロールまたはイノシトールホスフェートのような第2メッセンジャーの生成を導く。20種以上のα-サブユニットがヒトでは知られている。これらのサブユニットは、βおよびγサブユニットのより小さなプールと会合する。哺乳動物のGタンパク質の例には、Gi、Go、Gq、GsおよびGtを含む。Gタンパク質はLodishら、Molecular Cell Biology(サイエンティフィック アメリカン ブックス社(Scientific American Books Inc.)、ニューヨーク、N.Y.、1995)に広く記載され、その内容は引用により本明細書に編入する。GPCR、Gタンパク質およびGタンパク質−結合エフェクターおよび第2メッセンジャー系は、G−タンパク質結合受容体ファクトブック(G-Protein Linked Receptor Fact Book)、Watsonら編集、アカデミック出版(Academic Press)(1994)に広範囲にわたって記述されている。
【0006】
GPCRは薬剤作用および開発の主要な標的である。したがって医薬品開発分野ではこれまでに未知のGPCRを同定し、そして特徴付けることは価値がある。本発明はこれまでに同定されていないヒトのGPCRを提供することにより、この技術に進歩をもたらす。
ムスカリン受容体
ムスカリン受容体は、アセチルコリンのそのような受容体に対する作用がキノコのアルカロイドであるムスカリンにより生成されるものと似ているために名付けられた名前であるが、自律神経および中枢神経系での心臓、平滑筋、腺において、およびニューロン(シナプス前部およびシナプス後部の両方)中の神経伝達物質であるアセチルコリンのほとんどの阻害および刺激効果を媒介する(Eglen,R.およびWatson,N.(1996))Pharmacology & Toxicology 78:59-68)。ムスカリン受容体はG−タンパク質共役受容体スーパーファミリーに属する(Wess,J.ら、(1990)Comprehensive Medicinal Chemistry 3:423-491)。他のすべてのGタンパク質−共役受容体と同様に、ムスカリン受容体も交互の細胞内および細胞外ループ、細胞外アミノ−末端ドメインおよび細胞質カルボキシ−末端ドメインにより連結された7箇所の疎水性膜貫通ヘリックスから成る遺伝的タンパク質の折りたたみ(fold)に従うことが予想されている。哺乳動物のムスカリン受容体は高度な配列同一性が特に膜貫通ドメインで示され、約145の不変アミノ酸を共有している(Wess,J.(1993)TIPS 14:308-313)。さらに、哺乳動物のすべてのムスカリン受容体が大変大きな第3細胞質ループを含み、これは膜−近位部分を除き、異なるファミリーの員の間で配列同一性がほとんど無いことを示す(Bonner,T.I.(1989) Trens Neurosci.12:148-151)。受容体へのリガノド結合は、ヘリックスの束内で構造的変化を誘発し、これは次に細胞質ドメインに伝わり、ここで特異的なGタンパク質との相互反応が起こると考えられている。
【0007】
分子クローニングの研究では、5つの分子的に異なる哺乳動物ムスカリン受容体タンパク質(M1〜M5受容体と命名された)の存在が明らかにされた(Bonner,T.I.(1989)Trens Neurosci.12:148-151;およびHulme,E.C.ら、(1990)Annu,Rev.Pharmacol.Toxicol.30:633-673)。M1受容体は主に脳(大脳皮質、臭球、臭結節、基底前脳/中隔、扁桃および海馬)、および外分泌腺で発現される(Buckley,N.J.ら、(1988)J.Neurosci.8:4646-4652)。M2受容体は脳(臭球、基底前脳/中隔、視床および扁桃)、ならびに回腸および心臓で発現される。M3受容体は脳(大脳皮質、臭結節、視床および海馬)、肺、回腸および外分泌腺で発現される。M4受容体は脳(臭球、臭結節、海馬、線条)、ならびに肺で発現される。最後にM5受容体は、主に脳(黒質)で発現される(Hulme,E.C.ら、(1990)A.Rev.Pharmac.Toxic.30:633-673)。
【0008】
ムスカリン受容体が最も直接相互反応する2つの酵素は、アデニル酸シクラーゼおよびホスホリパーゼCである。クローン化された受容体を用いた研究では、M1、M3およびM5ムスカリン受容体がGo(ホスホリパーゼCに結合する刺激タンパク質)またはGqと知られている型のGタンパク質と共役し、そしてそれらの活性化がホスホリパーゼCの活性化をもたらすことが示された。M2およびM4ムスカリン受容体はGiタンパク質(アデニル酸シクラーゼに結合する阻害タンパク質)に共役し、そしてそれらの活性化はアデニル酸シクラーゼの阻害をもたらす。このようなシグナル伝達経路を通して、ムスカリン受容体は、脳からの神経伝達物質の放出(アセチルコリンの放出)、消化酵素および膵臓中のインスリン分泌の調節、耳下腺によるアミラーゼ分泌の調節、ならびに心筋および平滑筋の収縮の調節を含む様々な生理学的機能の原因である(Caulfield,M.P.(1993)Pharmac.Ther.58:319-379)。
カルニチン受容体
L−カルニチン(4-N-トリメチルアンモニウム-3-ヒドロキシ-酪酸)は、心筋および骨格筋における長鎖脂肪酸代謝の調節に重要な役割を果たす(Bremer,(1983)Pharmacol.Rev.63,1420-1480;Bieber,(1988)Annu.Rev.Biochem.57,261-283;FritzおよびArrigoni-Martelli,(1993)Trens Pharmacol.Sci.14,355-360)。L-カルニチンは脳を含むすべての組織に見いだされ、ここでその局所的濃度は変動し、小脳および視床下部で最高に見いだされる(Bresolinら、(1982)Exp.Neurol.78,285-292;Shugら、(1982)Life Sci.,31,2869-2874)。血液から脳へのL−カルニチンの能動輸送があることも示された(BrooksおよびMcIntosh(1975)Biochem.J.148,439-445)。脳の生体エネルギープロセスについて主要な代謝経路はL−カルニチンが中軸的な役割を果たすミトコンドリアの脂肪酸酸化ではないので(Bieber,(1988)Annu.Rev.Biochem.57,261-283)、別の生理学的機能が探求された。多数の実験での証明は、この化合物が有力なニューロモジュレーターとして作用する可能性があることを示唆するが(Blumら、(1971)J.Pharmacol.Exp.Ther.178,331-338;Falchettoら、(1971)Can.J.Physiol.Pharmacol.49,1-7;FarielloおよびShug,(1981)Biochem.Pharmacol.30,1012-1013;Huthら、(1981)J.Neurochem.36,715-723;Shugら(1982)Life Sci.31,2869-2874;JaniriおよびTempesta(1983)Int.J.Clin.Pharmacol.Res.3,295-306;Zoccaratoら、(1983)Biochem.Biophys.Acta.734,381-383;HanuniemiおよびKontro,(1988)Neurochem.Res.3,317-323;Janiriら、(1991)J.Neural.Transm.86,135-146)、脳の神経伝達物質としてのL−カルニチンの直接的機能は除外された(Shugら(1982)Life Sci.31,2869-2874)。ラットの脳片においてGABAにより阻害されるカルニチンの能動輸送が、FarielloおよびShug(1981)Biochem.Pharmacol.30,1012-1013;Huthら、(1981)J.Neurochem.36,715-723により提案され、そしてまたGABAの取り込みがカルニチンにより阻害されることも提案された(HannuniemiおよびKontro、(1988)Neurochem.Res.3,317-323)。L−カルニチンはまた、コリン受容性ニューロンにおいてコリン様作用活性を表すことも示された(Tempestaら、(1982)Neuropharmacology 21,1207-1210;JaniriおよびTempesta、(1983)Int.J.Clin.Pharmacol.Res.3,295-306;Janiriら、(1991)J.Neural.Transm.86,135-146)。L−カルニチンは、L−カルニチンからCoAにミドコンドリア膜を通ってアセチル部分の可逆的な輸送を促進する酵素であるカルニチンアセチルトランスフェラーゼ(CAT)の重要なコファクターであり(Bieber,(1988)Annu.Rev.Biochem.57,261-283);このようにカルニチンはミドコンドリアのマトリックスから細胞質ゾルへのアセチル基の輸送の調節を通して、アセチルコリンの形成に関与することができる(WhiteおよびScates(1990)Neurochem.Res.15,597-601)。しかしCAT活性は主にミドコンドリアに局在し、そして脳中での場所的な優先的局在化は示されていない(McCamanら、(1966)J.Biol.Chem.241,930-934)。
発明の要約
本発明は、本明細書でflh84g5ポリペプチドと呼ぶポリペプチドまたはタンパク質GPCRをコードする新規核酸分子を提供し、これは例えばアセチルコリンまたはカルニチンのようなアセチルコリン様分子のようなGPCRリガンドのflh84g5リガンド反応性細胞に対する効果を、例えばホスホリパーゼCのシグナリング/活性をモジュレートすることによりモジュレートすることができる。flh84g5ポリペプチドをコードする核酸分子を、本明細書ではflh84g5核酸分子と称する。これらの核酸分子は、ムスカリンファミリーの受容体と高い配列相同性を有する。好適な態様では、flh84g5ポリペプチドはタンパク質のGファミリーの員であるタンパク質と相互反応(例えば結合)する。そのようなタンパク質の例には、Go、Gi、Gs、GqおよびGtを含む。このようなタンパク質はLodish Hら、Molecular Cell Biology(サイエンティフィック アメリカン ブックス社、ニューヨーク、N.Y.、1995);Dolphin A.C.ら、(1987)Trends Neurosci.10:53;およびBirnbaumer L.ら、(1992)Cell 71:1069に記載され、その内容は引用により本明細書に編入する。
【0009】
好適な態様では、flh84g5ポリペプチドはflh84g5リガンドと相互反応(例えば結合)する。例えばアセチルコリンは交感神経性および副交感神経性の節前シナプスならびに副交感神経性の節後シナプスおよび幾つかの交感神経性の節後シナプスにおいて、主要な神経伝達物質である。アセチルコリンが神経伝達物質であるシナプスはコリン作用性シナプスと呼ばれている。アセチルコリンは平滑筋の収縮、心拍、胃酸分泌のような腺の機能、および脳からの神経伝達物質の放出のような神経機能を調節するように作用する。本発明のflh84g5ポリペプチドは、アセチルコリンまたはカルニチンのようなアセチルコリン様分子のようなflh84g5リガンドへ結合し、そしてflh84g5リガンドが誘導する細胞へのシグナルを媒介のに役立つ。すなわちflh84g5分子はflh84g5リガンドが誘導する機能をモジュレートし、そして例えば異常なflh84g5リガンドレベル、または異常もしくは異所性のflh84g5ポリペプチド活性もしくは核酸発現に付随する疾患を処置するための標的として使用することができる。
【0010】
したがって本発明の1観点は、flh84g5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列またはそれらの生物学的に活性な部分、ならびにflh84g5をコードする核酸(例えばmRNA)を検出するためにプライマーまたはハイブリダイゼーションプローブとして適当な核酸断片を含んで成る単離された核酸分子(例えばcDNA)に関する。特に好適な態様では、単離された核酸分子は配列番号:1、4または31のヌクレオチド配列、ATCC(商標)に寄託番号98902で寄託されているプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、またはこれらのヌクレオチド配列のコード領域または相補体を含んで成る。別の特に好適な態様では、本発明の単離された核酸分子は本明細書に記載するflh84g5ポリペプチドの自然に存在する対立遺伝子変異体、遺伝的に改変された変異体および非ヒトおよび非ラット相同体を含んで成る。そのような核酸分子は、配列番号:1、4または31に示すヌクレオチド配列、ATCC(商標)に寄託番号98902で寄託されているプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、あるいはこのようなヌクレオチド配列の部分とハイブリダイズできると同定可能であるか、あるいはそれらと少なくとも約30〜35%、好ましくは少なくとも約40〜45%、より好ましくは少なくとも約50〜55%、さらに好ましくは少なくとも約60〜65%、一層より好ましくは少なくとも約70〜75%、さらにより一層好ましくは少なくとも約80〜85%、そして最も好ましくは少なくとも約90〜95%以上相同的である。別の好適な態様では、単離された核酸分子は配列番号:2、5または32のアミノ酸配列、あるいはATCC(商標)に寄託番号98902で寄託されているプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列をコードする。本発明の好適なflh84g5ポリペプチドは、好ましくは本明細書に記載するflh84g5活性の少なくとも1つも有する。
【0011】
別の好適な態様では、単離された核酸分子はポリペプチドまたはそれらの部分をコードし、ここでポリペプチドまたはそれらの部分は、ポリペプチドまたはそれらの部分は、配列番号:2、5または32のアミノ酸配列と十分に相同的であるアミノ酸配列を含み、例えばポリペプチドまたはそれらの部分がflh84g5活性を維持するように、配列番号:2、5または32のアミノ酸配列と十分に相同的である。好ましくは、核酸分子によりコードされるポリペプチドまたはそれらの部分は、flh84g5リガンド反応性細胞中でflh84g5リガンドの反応をモジュレートする能力を維持する。1つの態様では、核酸分子によりコードされるポリペプチドは、配列番号:2、5または32のアミノ酸配列(例えば配列番号:2、5または32の全アミノ酸配列)、あるいはATCC(商標)に寄託番号98902で寄託されているプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列と少なくとも約30〜35%、好ましくは少なくとも約40〜45%、より好ましくは少なくとも約50〜55%、さらに好ましくは少なくとも約60〜65%、一層より好ましくは少なくとも約70〜75%、さらにより一層好ましくは少なくとも約80〜85%、そして最も好ましくは少なくとも約90〜95%以上相同的である。別の好適な態様では、核酸分子は配列番号:2、5または32の少なくとも15個の連続するアミノ酸を含んで成るポリペプチド断片をコードする。さらに別の好適な態様では、ポリペプチドは、配列番号:2、5または32の全アミノ酸配列と実質的に相同的な(それぞれ配列番号:3、6または33に示す読み取り枠にコードされる)完全長のヒトのポリペプチドである。さらに別の好適態様では、核酸分子は配列番号:2、5または32のポリペプチドの自然に存在する対立遺伝子変異体をコードし、そして緊縮条件下でそれぞれ配列番号:1、4または31のヌクレオチド配列を含んで成る核酸分子とハイブリダイズする。
【0012】
さらに別の態様では、単離された核酸分子はヒトに由来し、そして膜貫通ドメインを含むポリペプチドの部分をコードする。好ましくはヒトの核酸部分によりコードされる膜貫通ドメインは、配列番号:2の任意のヒト膜貫通ドメイン(すなわち、アミノ酸残基34〜59、109〜130、152〜174、197〜219または396〜416)(これはそれぞれ配列番号:7、9、10、11および13と命名された別の配列として表される)、あるいは任意のラット膜貫通ドメイン(すなわち、配列番号:5のアミノ酸残基34〜59、73〜91、109〜103、152〜174、197〜219、360〜380または396〜416、これはそれぞれ配列番号:14、15、16、17、18、19および20と命名された別の配列に示されるか、また配列番号:34、35、36、37、38または39とそれぞれ命名された別の配列として示される配列番号:32のアミノ酸残基1〜8、26〜47、69〜91、114〜136、277〜297または313〜333)に、少なくとも約50〜55%、好ましくは少なくとも約60〜65%、より好ましくは少なくとも約70〜75%、さらにより好ましくは少なくとも約80〜85%、そして最も好ましくは少なくとも約90〜95%以上相同的である。より好ましくはヒト核酸分子によりコードされる膜貫通ドメインは、少なくとも約75〜80%、好ましくは少なくとも約80〜85%、より好ましくは少なくとも約85〜90%、そして最も好ましくは少なくとも約90〜95%以上、配列番号:2の膜貫通ドメイン(すなわちアミノ酸残基360〜380)(これは配列番号:12と命名された別の配列で示す)と相同的であるか、あるいは少なくとも約80〜85%、より少なくともは少なくとも約85〜90%、そして最も好ましくは少なくとも約90〜95%以上、配列番号:2の膜貫通ドメイン(すなわちアミノ酸残基73〜91)(配列番号:8と命名された別の配列として示す)と相同的である。
【0013】
別の好適な態様では、単離された核酸分子はヒトに由来し、そして配列番号:7〜13と、または配列番号:14〜20に示す対応するラット配列に少なくとも約75%以上相同的であり、そして以下の1以上のflh84g5活性を有する膜貫通ドメインを含むポリペプチド(例えば、ヘテロロガスなポリペプチドに融合したflh84g5ポリペプチドのようなflh84g5融合ポリペプチド)をコードする:1)flh84g5リガンドと相互反応(例えば結合)することができる;2)Gタンパク質または自然にflh84g5に結合する他のタンパク質と相互反応(例えば結合)することができる;3)イオンチャンネル(例えばカルシウム活性化クロライドチャンネルまたはカリウムもしくはカルシウムチャンネル)の活性をモジュレートすることができる;4)細胞質ゾルイオン、例えばカルシウムまたはクロライド濃度をモジュレートすることができる;5)神経伝達物質、例えばアセチルコリンまたはカルニチンのようなアセチルコリン様分子のニューロン、例えばシナプス前ニューロンからの放出をモジュレートすることができる;6)flh84g5リガンド反応性細胞(例えば、平滑筋細胞または腺細胞)中のflh84g5リガンド反応を、例えばflh84g5リガンド反応性細胞、例えばニューロンに有益な影響を及ぼすためにモジュレートすることができる;7)ホスプチジルイノシトール代謝回転を介してリガンド結合のシグナルをシグナリングすることができる;および8)ホスホリパーゼC活性をモジュレート、例えば活性化または阻害することができる。
【0014】
別の態様では、単離された核酸分子は少なくとも15個のヌクレオチド、例えば長さが少なくとも15個の連続するヌクレオチドであり、かしも緊縮条件下で配列番号:1、4または31のヌクレオチド配列を含んで成る核酸分子またはATCC(商標)に寄託番号98902で寄託されているプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列にハイブリダイズする。好ましくは単離された核酸分子は自然に存在する核酸分子に対応する。より好ましくは単離された核酸分子は、自然に存在するヒトflh84g5または生物的に活性なそれらの部分をコードする。さらに本明細書に開示するflh84g5をコードするcDNA(例えば配列番号:1、4または31)を考慮すれば、アンチセンス核酸分子(例えば、flh84g5 cDNA配列のコード鎖に相補的な分子)も本発 明により提供される。
【0015】
本発明の別の観点はベクター、例えば本発明の核酸分子を含有する組換え発現ベクターおよびそのようなベクターが導入された宿主細胞に関する。1つの態様ではそのような宿主細胞は、宿主細胞を適当な培地で培養することによりflh84g5ポリペプチドを生産するために使用される。所望によりflh84g5ポリペプチドは次に培地または宿主細胞から単離することができる。
【0016】
本発明のさらに別の観点は、flh84g5遺伝子が導入された、または改変されたトランスジェニック非ヒト動物に関する。1つの態様では、非ヒト動物のゲノムがflh84g5を導入遺伝子としてコードする本発明の核酸分子の導入により改変された。別の態様では、非ヒト動物のゲノム内の内在性flh84g5遺伝子が相同的組換えにより改変、例えば機能的に破壊された。
【0017】
本発明のさらに別の観点は、単離されたflh84g5ポリペプチドまたは部分、例えばそれらの生物学的に活性な部分に関する。好適な態様では、単離されたflh84g5ポリペプチドまたはそれらの部分は、flh84g5リガンド反応性細胞中でflh84g5リガンドの反応をモジュレートすることができる。別の好適な態様では単離されたflh84g5ポリペプチドまたはそれらの部分は、ポリペプチドまたはそれらの部分がflh84g5リガンド反応性細胞中でflh84g5リガンドの反応をモジュレートする能力を維持するように、配列番号:2、5または32のアミノ酸配列と十分に相同的である。
【0018】
1つの態様では、flh84g5ポリペプチドの生物学的に活性な部分は、ドメインまたはモチーフ、好ましくはflh84g5活性を有するドメインまたはモチーフを含む。このドメインは膜貫通ドメインである。膜貫通ドメインを含んで成るポリペプチドの活性部分がヒトから単離されるか、または誘導されるならば、膜貫通ドメインは配列番号:7、8、9、10、11、12、13、14、15、15、17、18、19、20、34、35、36、37、38または39に少なくとも約75〜80%、好ましくは少なくとも約80〜85%、より好ましくは少なくとも約85〜90%、そして最も好ましくは少なくとも約90〜95%以上相同的である。好ましくは膜貫通ドメインを含むflh84g5ポリペプチドの生物学的に活性な部分は、以下のflh84g5活性の1つも有する;1)アセチルコリンまたはカルニチンのようなアセチルコリン様分子のようなflh84g5リガンドと相互反応(例えば結合)することができる;2)Gタンパク質または自然にflh84g5に結合する他のタンパク質と相互反応(例えば結合)することができる;3)イオンチャンネル(例えばカルシウム活性化クロライドチャンネルまたはカリウムもしくはカルシウムチャンネル)の活性をモジュレートすることができる;4)細胞質ゾルイオン、例えばカルシウム、濃度をモジュレートすることができる;5)神経伝達物質、例えばアセチルコリンまたはカルニチンのニューロン、例えばシナプス前ニューロンからの放出をモジュレートすることができる;6)flh84g5リガンド反応性細胞(例えば、平滑筋細胞または腺細胞)中のflh84g5リガンド反応を、例えばflh84g5リガンド反応性細胞、例えばニューロンに有益な影響を及ぼすためにモジュレートすることができる;7)ホスファチジルイノシトール代謝回転を介してリガンド結合のシグナルをシグナリングすることができる;および8)ホスホリパーゼC活性をモジュレート、例えば活性化または阻害することができる。
【0019】
本発明はflh84g5ポリペプチドの単離された調製物も提供する。好適な態様では、flh84g5ポリペプチドは配列番号:2、5または32のアミノ酸配列、あるいはATCC(商標)に寄託番号98902で寄託されているプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を含んで成る。別の好適な態様では本発明は、本明細書に記載するflh84g5ポリペプチドの自然に存在する対立遺伝子変異体のような、配列番号:2、5または32(それぞれ配列番号:3、6または33に表す読み取り枠によりコードされる)の全アミノ酸配列に実質的に相同的な単離された完全長ポリペプチドに関する。さらに別の態様では、ポリペプチドは本明細書に記載するflh84g5ポリペプチドの非ヒトまたは非ラット相同体のような、配列番号:2、5または32の全アミノ酸配列に少なくとも約30〜35%、好ましくは少なくとも約40〜45%、より好ましくは少なくとも約50〜55%、さらにより好ましくは少なくとも約60〜65%、さらに一層好ましくは少なくとも約70〜75%、さらにより一層好ましくは少なくとも80〜85%、そして最も好ましくは少なくとも約90〜95%以上相同的である。他の態様では、単離されたflh84g5ポリペプチドは配列番号:2、5または32のアミノ酸配列に少なくとも約30〜40%以上相同的であるアミノ酸配列を含んで成り、そして以下のflh84g5活性の1以上を有する;1)flh84g5リガンドと相互反応(例えば結合)することができる;2)Gタンパク質または自然にflh84g5に結合する別のタンパク質と相互反応(例えば結合)することができる;3)イオンチャンネル(例えばカルシウム活性化クロライドチャンネルまたはカリウムもしくはカルシウムチャンネル)の活性をモジュレートすることができる;4)細胞質ゾルイオン、例えばカルシウムまたはクロライド濃度をモジュレートすることができる;5)神経伝達物質、例えばアセチルコリンまたはカルニチンのようなアセチルコリン様分子のニューロン、例えばシナプス前ニューロンからの放出をモジュレートすることができる;6)flh84g5リガンド反応性細胞(例えば、平滑筋細胞または腺細胞)中のflh84g5リガンド反応を、例えばflh84g5リガンド反応性細胞、例えばニューロンに有益な影響を及ぼすためにモジュレートすることができる;7)ホスファチジルイノシトール代謝回転を介してリガンド結合のシグナルをシグナリングすることができる;および8)ホスホリパーゼC活性をモジュレート、例えば活性化または阻害することができる。
【0020】
あるいは単離されたflh84g5ポリペプチドは、対立遺伝子変異体および本明細書に開示されたflh84g5ポリペプチドの非ヒトおよび非ラット相同体ならびに組換えDNA法により生成する遺伝的に改変された変異体のような、配列番号:1、4 または31のヌクレオチド配列とハイブリダイズ、例えば緊縮条件下でハイブリダイズするか、または少なくとも約30〜35%、好ましくは少なくとも約40〜45%、より好ましくは少なくとも約50〜55%、さらに好ましくは少なくとも約60〜65%、一層より好ましくは少なくとも約70〜75%、さらにより一層好ましくは少なくとも約80〜85%、そして最も好ましくは少なくとも約90〜95%以上相同的であるヌクレオチド配列、あるいATCC(商標)に寄託番号98902で寄託されているプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を含んで成る。また好適なflh84g5形態は、本明細書に記載する1以上のflh84g5活性も有することが好ましい。
【0021】
flh84g5ポリペプチド(または部分)あるいはそれらの生物学的に活性な部分は、作動可能に非-flh84g5ポリペプチドに連結されて(例えばヘテロロガスなアミノ酸配列を含んで成るポリペプチド)、融合ポリペプチドを形成することができる。さらにflh84g5ポリペプチドまたはそれらの生物学的に活性な部分は、ポリペプチドおよび医薬的に許容できるキャリアーを含んで成る医薬組成物中に包含することができる。
【0022】
本発明のflh84g5ポリペプチドまたはそれらの部分もしくは断片は、抗-flh84g5抗体を調製するために使用することができる。したがって本発明はflh84g5の抗原性ペプチドも提供し、これは配列番号:2、5または32に表されるアミノ酸配列の少なくとも8アミノ酸残基を含んで成り、そしてペプチドに対して生じた抗体がflh84g5と特異的免疫複合体を形成するようにflh84g5のエピトープを包含する。好ましくは抗原性ペプチドは少なくとも10アミノ酸残基、より好ましくは少なくとも15アミノ酸残基、さらにより好ましくは少なくとも20アミノ酸残基、そして最も好ましくは少なくとも30アミノ酸残基を含んで成る。さらに本発明は、flh84g5に特異的に結合する抗体を提供する。1つの態様では、抗体はモノクローナル抗体である。別の態様では抗体は検出可能な基質に結合される。さらに別の態様では、抗体は抗体および医薬的に許容されるキャリアーを含んで成る医薬組成物に包含される。
【0023】
本発明の別の観点は、flh84g5により媒介される細胞活性、例えばホスファチジルイノシトール代謝回転およびシグナル伝達;分子の分泌、例えば脳細胞からの神経伝達物質、または腺細胞からの酵素の放出;あるいは平滑筋細胞、例えば回腸平滑筋細胞、または心臓の細胞、例えば心筋細胞(cardiomyocyte)の収縮をモジュレートする方法に関する。そのような方法は、flh84g5が媒介する細胞の活性を、薬剤の不在で起こる同じ細胞の活性に比べて改変させるように、細胞を、flh84g5ポリペプチド活性またはflh84g5核酸発現をモジュレートする薬剤と接触させることを含む。好適な態様では、細胞(例えば平滑筋細胞または神経細胞)はflh84g5ポリペプチドが関与するシグナル伝達回路を通ってflh84g5リガンドに反応することができる。flh84g5活性をモジュレートする薬剤は、flh84g5ポリペプチド活性またはflh84g5核酸発現を刺激する薬剤であることができる。flh84g5ポリペプチド活性またはflh84g5核酸発現を刺激する薬剤の例は、小分子、活性flh84g5ポリペプチドおよび細胞中に導入されたflh84g5をコードする核酸を含む。flh84g5活性または発現を阻害する薬剤の例は、小分子、アンチセンスflh84g5核酸分子およびflh84g5に特異的に結合する抗体を含む。好適な態様では、細胞は個体内に存在し、そして薬剤が個体に投与される。
【0024】
また本発明は、種々の障害、例えばflh84g5の過剰な、劣った、または不適切な発現により引き起こされる症状のような異常なflh84g5ポリペプチド活性により媒介される障害を有する個体を処置するための方法に関する。例えば本発明は、神経系障害、例えば認識障害、睡眠障害、運動障害、分裂感情性障害、疼痛発生メカニズムに影響する障害、飲用障害、あるいは摂食障害;平滑筋が関係する障害、例えば過敏性腸症候群、心筋が関連する障害、例えば徐脈、あるいは腺が関連する障害、例えば口内乾燥症のような異所性のflh84g5ポリペプチド活性または核酸発現を特徴とする障害を有する個体を処置する方法に関する。このような方法は、個体の処置が起こるように個体にflh84g5モジューレーター(例えば小分子)を投与することを含む。
【0025】
別の態様では、本発明はflh84g5の過剰な、劣った、または不適切な発現により引き起こされる症状のような異常なflh84g5ポリペプチド活性により媒介される障害、例えば神経系障害、例えば認識障害、睡眠障害、運動障害、分裂感情性障害、疼痛発生メカニズムに影響する障害、飲用障害あるいは摂食障害;平滑筋が関係する疾患、例えば過敏性腸症候群;心筋が関連する障害、例えば徐脈;あるいは腺が関連する障害、例えば口内乾燥症を有する個体を処置する方法に関する。このような方法は、処置が起こるように個体にflh84g5ポリペプチドまたはそれらの部分を投与することを含む。神経系障害、平滑筋が関係する障害、心筋が関連する障害または腺が関連する障害は、処置が起こるように障害を持つ個体にflh84g5ポリペプチドまたはそれらの部分をコードする核酸を投与することにより本発明に従い処置することもできる。
【0026】
また本発明は、flh84g5遺伝子の自然に存在する、および組換え的に作成された遺伝子突然変異を検出する方法に関し、これにより突然変異した遺伝子を有する個体が、異所性または異常なflh84g5核酸発現またはflh84g5ポリペプチド活性を特徴とする障害、例えば神経系障害、平滑筋が関係する障害、心筋が関連する障害または腺が関連する障害の危険性にある(または疾患にかかる素因がある)かどうかを決定する。好適な態様では、この方法には個体に由来する細胞のサンプル中に、核酸塩基の置換、欠失または付加、あるいは遺伝子翻訳、逆位または挿入により引き起こされる大量の配列の変化により引き起こされるようなflh84g5ポリペプチドをコードする遺伝子の完全性に影響を及ぼす改変、またはflh84g5遺伝子の誤発現を特徴とする遺伝子突然変異の存在または不在を検出することを含む。
【0027】
本発明の別の観点は、生物サンプル中のflh84g5またはそれらの対立遺伝子変異体の存在を検出する方法に関する。好適な態様では、この方法には生物サンプル中のflh84g5の存在が検出されるように、生物サンプル(例えば脳または平滑筋細胞サンプル)を、flh84g5ポリペプチドまたはflh84g5 mRNAを検出することができる化合物または薬剤と接触させることを含む。化合物または薬剤は、例えばflh84g5 mRNAにハイブリダイズすることができる標識化された、もしくは標識できる核酸プローブ、またはflh84g5ポリペプチドに結合することができる標識化された、もしくは標識できる抗体である。本発明はさらに、例えば神経系障害、平滑筋が関係する障害、心筋が関連する障害または腺が関連する障害を持つ個体を診断するための方法を提供する。1つの態様ではこの方法には個体からの細胞または組織サンプル(例えば脳または平滑筋細胞サンプル)を、flh84g5ポリペプチドまたはmRNAを検出することができる薬剤と接触させ、細胞または組織サンプル中で発現したflh84g5ポリペプチドまたmRNAの量を測定し、細胞または組織サンプル中の発現したflh84g5ポリペプチドまたはmRNAの量を対照サンプルと比較し、そして対照サンプルと比較して細胞または組織サンプル中で発現したflh84g5ポリペプチドまたはmRNAの量に基づき診断を形成することを含む。好ましくは細胞サンプルは脳細胞サンプルである。flh84g5ポリペプチドまたはmRNAを検出できる試薬を含む、生物サンプル中のflh84g5を検出するためのキットも本発明の範囲内である。
【0028】
本発明のさらに別の観点は、異所性のflh84g5核酸発現またはポリペプチド活性が特徴である障害、例えば神経系障害、平滑筋が関係する障害、心筋が関連する障害または腺が関連する障害を処置するために、化合物、例えば試験化合物を同定するための方法、例えばスクリーニングアッセイに関する。このような方法は典型的にはflh84g5遺伝子の発現またはflh84g5ポリペプチドの活性をモジュレートする化合物または薬剤の能力をアッセイし、これにより異所性のflh84g5核酸発現またはflh84g5ポリペプチド活性を特徴とする障害を処置するための化合物を同定することを含む。好適な態様では、この方法には障害を持つ個体から得た生物サンプル、例えば細胞または組織サンプル、例えば脳もしくは平滑筋細胞サンプルを、化合物または薬剤と接触させ、生物サンプル中で発現したflh84g5ポリペプチドの量を決定し、および/またはflh84g5ポリペプチドの活性を測定し、対照サンプルの細胞中で発現したflh84g5ポリペプチドの量をおよび/または測定できるflh84g5生物活性と比較することを含む。対照と比較して、化合物または薬剤に暴露された細胞中で発現したflh84g5ポリペプチド発現またはflh84g5活性の量の変化が、flh84g5発現および/またはflh84g5活性のモジューレーションの指標である。
【0029】
また本発明は、flh84g5ポリペプチドと相互反応(例えば結合)する化合物または薬剤、例えば試験化合物または薬剤を同定する方法に関する。このような方法には、化合物をflh84g5ポリペプチドに結合させて複合体を形成できる条件下でflh84g5ポリペプチドを化合物または薬剤と接触させ、そしてflh84g5ポリペプチドと化合物の複合体の形成を検出する工程を含むことができ、ここで化合物がflh84g5ポリペプチドに結合できる能力は複合体中の化合物の存在により示される。
【0030】
さらに本発明は、flh84g5ポリペプチドと標的分子、例えばアセチルコリンもしくはカルニチンのようなアセチルコリン様分子、またはホスファチジルイノシトール代謝回転およびシグナルシグナリングに関与する細胞性タンパク質との相互作用をモジュレートする、例えば刺激または阻害する化合物または薬剤、例えば試験化合物または薬剤を同定する方法に関する。このような方法では、標的分子がflh84g5ポリペプチドと結合して複合体を形成できる条件下で、化合物または薬剤の存在下、flh84g5ポリペプチドを標的分子と接触させる。化合物または薬剤の不在下で形成された複合体の量に比べて、flh84g5ポリペプチドと標的分子との間の複合体の形成の変化、例えば増加または減少は、化合物または薬剤がflh84g5ポリペプチドと標的分子との相互反応をモジュレートする能力の指標である。
発明の詳細な説明
本発明は、flh84g5リガンドシグナリング経路において役割を果たし、または機能する本明細書でflh84g5核酸およびポリペプチド分子と称する新規分子の知見に基づく。1つの態様では、flh84g5分子は神経伝達物質のシグナリング経路、例えばflh84g5リガンドのシグナリング経路に関与する1以上のタンパク質の活性をモジュレートする。好適な態様では、本発明のflh84g5分子はflh84g5リガンドのシグナリング経路に関与するタンパク質の活性をモジュレートすることができ、これによりflh84g5リガンドのflh84g5リガンド反応性細胞に対する効果をモジュレートする。
【0031】
本明細書で使用するように、「flh84g5リガンド反応性細胞」という句は、アセチルコリンまたはカルニチンのようなアセチルコリン様分子のようなflh84g5リガンドによりモジュレートされ得る(例えば刺激または阻害)機能を有する細胞を称する。そのような機能の例は、シグナル伝達経路に参加する細胞内分子、例えばホスファチジルイノシトール 4,5-ビスホスフェート(PIP2)またはイノシトール1,4,5-トリホスフェート(IP3)の可動化、形質膜の極性化、分子の生産または分泌、細胞成分の構造の変化、細胞増殖、細胞移動、細胞分化および細胞の生存を含む。flh84g5リガンド反応性細胞は好ましくは、flh84g5受容体を発現する。flh84g5リガンド反応性細胞の例は、神経細胞、例えば中枢神経系および末梢神経系細胞(交感神経性および副交感神経性ニューロン);平滑筋細胞、例えば消化管、尿管、血管、気管および肺または子宮の平滑筋細胞;心筋の細胞、例えば心筋細胞(cardiomyocyte);ならびに外分泌腺細胞のような腺の細胞、例えば膵腺細胞、例えば膵臓ベータ細胞、涙腺細胞、汗腺細胞または耳下腺細胞を含む。
【0032】
細胞の種類に依存して、flh84g5リガンドにより現される反応は異なる。例えば神経細胞では、アセチルコリンまたはカルニチンのようなアセチルコリン様分子のようなflh84g5リガンドは、イオンチャンネルおよび神経のシグナル対ノイズ比を調節する。flh84g5リガンドシグナリング経路に関与するタンパク質の活性の阻害または過剰刺激、あるいはflh84g5リガンドの誤発現は、神経形質膜の低(hypo-)または過分極(hyperpolarization)および混乱した(perturbed)神経のシグナル対ノイズ比を導き、これは次に神経に関連する障害を導く。神経系が関係する障害の例は、認知障害、例えば記憶喪失、行動不能、失認、健忘性ジスノミア(dysnomia)、健忘性空間見当識障害、Kluver-Bucy症候群、アルツハイマーが関係する記憶喪失のような記憶および学習障害(Eglen.R.M.,(1996)Pharmacol and Toxicol.78(2):59-68;Perry E.K.(1995)Brain and Cognition 28(3):240-58)、および学習不能;意識に影響する障害、例えば幻覚、知覚障害またはLewy body痴呆に伴うデレリウム(delerium);分裂感情性障害(Dean B.(1996)Mol.Psychiatry1(1):54-8)、気分変動による精神分裂病(Bymaster F.P.(1997) J.Clin.Psychiatry 58(suppl.10):28-36;Yeomans J.S.(1995)Neuropharmacol.12(1):3-16;Reimann D.(1994)J.Psychiatric Res.28(3):195-210)、抑うつ性の病気(1次または2次);感情障害(Janowsky D.S.(1994)Am.J.Med.Genetics 54(4):335-44);睡眠障害(Kimura F.(1997)J.Neurophysiol.77(2):709-16)、例えば例えば鬱病に罹っている患者のREM睡眠異常(Reimann D.(1994)J.Psychosomatic Res.38 Suppl.1:15-25;Bourigin P.(1995)Neuroreport 6(3):532-6)、パラ睡眠異常(Sakai K.(1997)Eur.J.Neuroscience 9(3):415-23)、不眠(sleep-wakefulness)、および睡眠中の体温および呼吸低下異常(Shuman S.L.(1995)Am.J.Physiol.269(2 Pt 2):R308-17;Mallick B.N.(1997)Brain Res.750(1-2):311-7)。神経系が関連する障害の他の例には、疼痛が発生するメカニズムに影響する障害、例えば過敏性腸症候群に関連する疼痛(Mitch C.H.(1997) J.Med.Chem.40(4):538-46;Shannon H.E.(1997)J.Pharmac.and Exp.Therapeutics 281(2):884-94;Bouaziz H.(1995)Anesthesia and Analgesia 80(6):1140-5;またはGuimaraes A.P.(1994)Brain Res.647(2):220-30)または胸痛;運動障害(Monassi C.R.(1997)Physiol and Behav.62(1):53-9) 、例えばパーンキンソン病が関係する運動障害(Finn M.(1997)Pharmacol.Biochem.& Behavior 57(1-2):243-9;Mayorga A.J.(1997)Pharmacol.Biochem.& Behavior 56(2):273-9);摂食障害、例えばインスリンの過分泌が関係する肥満症(Maccario M.(1997)J Endocrinol.Invest.20(1):8-12;Premawardhana L.D.(1994)Clin.Endocrinol.40(5):617-21);または飲用障害、例えば糖尿病性多渇症(Murzi E.(1997)Brain Res.752(1-2):184-8;Yang X.(1994)Pharmacol.Biochem.& Behavior 49(1):1-6)。
【0033】
平滑筋では、アセチルコリンおよびカルニチンのようなアセチルコリン様分子が収縮を調節(例えば刺激または阻害)する。アセチルコリンおよびカルニチンのようなアセチルコリン様分子シグナリング回路が関与するタンパク質の活性の阻害または過剰刺激、あるいはアセチルコリンおよびカルニチンのようなアセチルコリン様分子の誤発現は、過敏性腸症候群、憩室疾患、切迫尿失禁、食道アカラシアまたは慢性閉塞性気道疾患のような平滑筋が関係する障害を導き得る。
【0034】
心筋では、アセチルコリンおよびカルニチンのようなアセチルコリン様分子が心拍数および心筋収縮能の低下を誘導する。アセチルコリンおよびカルニチンのようなアセチルコリン様分子シグナリング回路が関与するタンパク質の活性の阻害または過剰刺激、あるいはアセチルコリンおよびカルニチンのようなアセチルコリン様分子の誤発現は、病的な徐脈または頻拍、不整脈、粗動または細動のような心筋が関係する障害を導き得る。
【0035】
外分泌腺のような腺では、アセチルコリンおよびカルニチンのようなアセチルコリン様分子が酵素またはホルモンの分泌を調節し、例えば耳下腺ではアセチルコリンおよびカルニチンのようなアセチルコリン様分子がアミラーゼの放出を誘導し、そして膵臓ではアセチルコリンおよびカルニチンのようなアセチルコリン様分子が消化酵素およびインスリンの放出を誘導する。アセチルコリンおよびカルニチンのようなアセチルコリン様分子シグナリング回路が関与するタンパク質の活性の阻害または過剰刺激、あるいはアセチルコリンおよびカルニチンのようなアセチルコリン様分子の誤発現は、口内乾燥症または糖尿病のような腺が関係する疾患を導き得る。
【0036】
特に好適な態様では、flh84g5分子はGタンパク質の活性、ならびにflh84g5リガンド反応性細胞のホスファチジイルノシトール代謝および代謝回転をモジュレートすることができる。本明細書で使用するように、「Gタンパク質」は二次シグナルとして種々の細胞内シグナル伝達経路、例えば主にホスファチジイルノシトール代謝および代謝回転を通るアセチルコリンシグナルシグナリング経路に参加するタンパク質である。Gタンパク質はα、βおよびγサブユニットから成る、グアニンヌクレオチドに結合するヘテロ三量体タンパク質のファミリーを表す。このようなタンパク質は通常、細胞表面受容体、例えばムスカリン受容体のような7回膜貫通ドメインを含む受容体に結合する。リガンドが受容体に結合した後、構造的変化がGタンパク質に伝わり、これがα−サブユニットに結合したGDP分子のGTP分子への交換を引き起こし、そしてβγ−サブユニットからの解離を引き起こす。α−サブユニットのGTPに結合した形態は典型的にはエフェクターがモジュレートする部分として機能し、サイクリックAMP(例えばアデニル酸シクラーゼによる)、ジアシルグリセロールまたはイノシトールホスフェートのような第2のメッセージの生成を導く。人間では20種以上のα−サブユニットが知られ、これはより小さいβおよびγサブユニットのプールと会合する。哺乳動物のGタンパク質の例には、Gi、GO、Gq、GsおよびGtを含む。Gタンパク質はLodish H.ら、分子細胞生物学(Molecular Cell Biology)(サイエンティフィック アメリカン ブックス社:Scientific American books Inc.、ニューヨーク、N.Y.1995)に広く記載されている。
【0037】
本明細書で使用するように「ホスファチジイルノシトール代謝回転および代謝」とは、ホスファチジイルノシトール4,5-ビスホスフェート(PIP2)の代謝回転および代謝に関与する分子、ならびにこのような分子の活性を称する。PIP2は形質膜の細胞質ゾルの葉状器官に見いだされるリン脂質である。アセチルコリンのムスカリン受容体への結合が、形質膜酵素であるホスホリパーゼCを活性化し、これは次にPIP2を加水分解して1,2-ジアシルグリセロール(DAG)およびイノシトール1,4,5-トリホスフェート(IP3)を生成する。いったん形成されるとIP3は小胞体表面に拡散することができ、ここでIP3受容体、例えばIP3結合部位を含むカルシウムチャンネルタンパク質に結合することができる。IP3結合はチャンネルの開放を誘導することができ、カルシウムイオンを細胞質に放出させる。IP3も特異的キナーゼによりリン酸化されて、イノシトール1,3,4,5-テトラホスフェート(IP4)(細胞外媒体から細胞質へのカルシウム流入を引き起こすことができる分子)を形成することができる。続いてIP3およびIP4は、それぞれ不活性な生成物であるイノシトール1,4-ビホスフェート(IP2)およびイノシトール1,3,4-トリホスフェートに大変急速に加水分解され得る。このような不活性生成物は、PIP2を合成するために細胞により再利用されることができる。PIP2の加水分解により生成される他の第2メッセンジャー、すなわち1,2-ジアシルグリセロール(DAG)は細胞膜に残り、ここで酵素であるプロテインキナーゼCを活性化するために役立つことができる。プロテインキナーゼCは通常、細胞の細胞質中で可溶性であるが、細胞内カルシウム濃度が増加すると、この酵素は形質膜に移動し、ここでDAGにより活性化され得る。様々な細胞中でプロテインキナーゼCの活性化は、グリコーゲンシンターゼのリン酸化または種々の転写因子、例えばNF-kBのリン酸化のような種々の細胞応答をもたらす。本明細書で使用する「ホスファチジイルノシトール活性」という言葉は、PIP2またはその代謝産物の1つの活性を称する。
【0038】
flh84g5核酸分子は、適当なcDNAライブラリー(実施例1に詳細に記載する)をスクリーニングすることにより同定された。ラットflh84g5核酸分子は、ラット脳cDNAライブラリーをスクリーニングすることにより同定された。陽性クローンをシークエンシングし、そして部分的配列を核酸配列データベースの配列と比較することにより分析した。この分析は配列がムスカリンファミリーの受容体と相同的であることを示した。次により長いラットのクローンを単離し、そしてシークエンシングした。ヒトflh84g5核酸分子は、ヒトの小脳のcDNAライブラリーを、ラットの配列に基づき設計したプローブを使用してスクリーニングすることにより同定した。
【0039】
flh84g5ポリペプチドがflh84g5リガンド、Gタンパク質およびflh84g5リガンドのシグナリング経路に関与する他のタンパク質と相互反応(例えば結合)する能力のために、flh84g5ポリペプチドはflh84g5リガンドのシグナリング経路で機能するポリペプチドでもある。
【0040】
単離されたヒトのflh84g5 cDNAのヌクレオチド配列およびヒトflh84g5ポリペプチドの推定アミノ酸配列は、図1および配列番号:1および2にそれぞれ示す。ヒトflh84g5をコードする完全長のヌクレオチドを含有するプラスミドは、1988年9月30日にATCC(商標)に寄託番号98902で寄託された。この寄託は特許手続きのための微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約の下に維持される。この寄託は当業者の都合のためにのみなされ、そして寄託が35U.S.C.§112を必要とすることを認めない。
【0041】
単離されたラットのflh84g5 cDNAのヌクレオチド配列およびラットのflh84g5ポリペプチドの推定アミノ酸配列は、図2および配列番号:4および5にそれぞれ示す。
【0042】
単離された部分的なマウスのflh84g5 cDNAのヌクレオチド配列および部分的なマウスのflh84g5ポリペプチドの推定アミノ酸配列は、図3および配列番号:31および32にそれぞれ示す。
【0043】
約2689ヌクレオチド長のヒトのflh84g5遺伝子は、約51.2kDaの分子量を有し、そして約445アミノ酸残基長である完全長ポリペプチドをコードする。ヒトflh84g5ポリペプチドは少なくとも脳、特に小脳、大脳皮質、骨髄、後頭極、前頭葉、側頭葉、被殻、脳梁、扁桃、尾状核、海馬、黒質、視床下部の核および視床のような脳の領域;脊髄、胎盤、肺、脾臓、肝臓、骨格筋、腎臓および精巣に発現する。構造的分析に基づき、アミノ酸残基34〜59(配列番号:7)、73〜91(配列番号:8);109〜130(配列番号:9)、152〜174(配列番号:10)、197〜219(配列番号:11)、360〜380(配列番号:12)および396〜416(配列番号:13)は、膜貫通ドメインを含んで成る。本明細書で使用するように、用語「膜貫通ドメイン」とは、形質膜に広がる疎水性ヘリックスを含む構造的アミノ酸モチーフを称する。膜貫通ドメインは、好ましくは保存されたセリン、トレオニンおよびチロシン残基も含む。例えば残基109〜130(配列番号:9)、197〜219(配列番号:11)、360〜380(配列番号:12)および396〜416(配列番号:13)の間の膜貫通ドメインは、トレオニンおよびチロシン残基(膜表面から約1〜2ヘリックス離れて位置する)を含み、これはリガンド、例えばアセチルコリンまたはカルニチンのようなアセチルコリン様分子の結合に重要である。膜貫通ドメイン中の他の重要な残基は、残基109〜130(配列番号:9)の間の膜貫通ドメイン中に保存されたアスパラギン残基および残基152〜174(配列番号:10)の間の膜貫通ドメイン中に保存されたプロリン酸残基を含み、これらもリガンド、例えばflh84g5リガンドの結合に重要である。当業者は容易に明らかなように、種々のドメイン/flh84g5の断片に引用されるアミノ酸残基の始まりおよび終わりは構造的分析に基づき、そして実際の各々の開始/終結アミノ酸は本明細書に同定される幾つかのアミノ酸により変動してよい。
【0044】
約3244ヌクレオチド長であるラットのflh84g5遺伝子は、約51.2kDaの分子量を有し、そして約445アミノ酸残基長である完全長ポリペプチドをコードする。このラットのflh84g5ポリペプチドは脳で発現する。アミノ酸残基34〜59(配列番号:14)、73〜91(配列番号:15);109〜130(配列番号:16)、152〜174(配列番号:17)、197〜219(配列番号:18)、360〜380(配列番号:19)および396〜416(配列番号:20)は、膜貫通ドメインを含んで成る。
【0045】
少なくとも約2218ヌクレオチド長であるラットのflh84g5遺伝子は、少なくとも約41.6kDaの分子量を有し、そして少なくとも約362アミノ酸残基長である完全長ポリペプチドをコードする。このラットのflh84g5ポリペプチドは脳で発現する。アミノ酸残基1〜8(配列番号:14)、26〜47(配列番号:15);69〜91(配列番号:16)、114〜136(配列番号:17)、277〜297(配列番号:18)および313〜333(配列番号:19)は、膜貫通ドメインを含んで成る。
【0046】
少なくとも約2218ヌクレオチド長である部分的なマウスのflh84g5遺伝子は、少なくとも約41.6kDaの分子量を有し、そして少なくとも約362アミノ酸残基長であるポリペプチドをコードする。このマウスのflh84g5ポリペプチドは脳で発現する。アミノ酸残基1〜8(配列番号:34)、26〜47(配列番号:35);69〜91(配列番号:36)、114〜136(配列番号:37)、277〜297(配列番号:38)および313〜333(配列番号:39)は、膜貫通ドメインを含んで成る。
【0047】
flh84g5ポリペプチド、ポリペプチドの生物学的に活性な部分または断片、あるいはそれらの対立遺伝子変異体は、以下の1以上のflh84g5活性を有する;1)flh84g5リガンドと相互反応(例えば結合)することができる;2)Gタンパク質または自然にflh84g5に結合する他のタンパク質と相互反応(例えば結合)することができる;3)イオンチャンネル(例えばカルシウム活性化クロライドチャンネル)の活性をモジュレートすることができる;4)細胞質ゾルイオン、例えばカルシウムまたはクロライド濃度をモジュレートすることができる;5)神経伝達物質、例えばflh84g5リガンドの、ニューロン、例えばシナプス前ニューロンからの放出をモジュレートすることができる;6)flh84g5リガンド反応性細胞(例えば、平滑筋細胞または腺細胞)中のflh84g5リガンド反応を、例えばflh84g5リガンド反応性細胞、例えばニューロンに有益な影響を及ぼすためにモジュレートすることができる;7)ホスファチジルイノシトール代謝回転を介してリガンド結合のシグナルをシグナリングすることができる;および8)ホスホリパーゼC活性をモジュレート、例えば活性化または阻害することができる。
【0048】
本発明の種々の観点を、以下の細別に詳細に記載する:
I .単離された核酸分子
本発明の1観点は、flh84g5ポリペプチドまたはそれらの生物学的に活性な部分をコードする単離された核酸分子、ならびにflh84g5をコードする核酸(例えばflh84g5 mRNA)を同定するためにハイブリダイゼーションプローブとして使用するために十分な核酸断片に関する。本明細書で使用するように、用語「核酸分子」とは、DNA分子(例えばcDNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(例えばmRNA)およびヌクレオチド同族体を用いて生成したDNAまたはRNAの同族体を含むものとする。核酸分子は一本鎖または二本鎖であることができるが、好ましくは二本鎖DNAである。「単離された」核酸分子は、核酸の自然な供給源中に存在する他の核酸分子から分離されるものである。好ましくは「単離された」核酸分子は、核酸分子が由来する生物のゲノムDNA中、核酸を自然に挟む配列(すなわち核酸の5'および3'末端に位置する配列)を含まない。例えば様々な態様において、単離されたflh84g5核酸分子は核酸が由来する細胞(例えば海馬細胞)のゲノムDNA中、核酸を自然に挟む約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kbまたは0.1kb未満を含むことができる。さらにcDNA分子のような「単離された」核酸分子は、他の細胞材料または組換え法により生産される時は培養基、または化学前駆体もしくは化学的に合成する時は他の化学品を実質的に含まない。
【0049】
本発明の核酸分子、例えば配列番号:1、4もしくは31のヌクレオチド配列を有する核酸分子またはそれらの部分は、標準的な分子生物学法および本明細書に提供する配列情報を使用して単離することができる。例えばヒトflh84g5 cDNAは、ハイブリダイゼーションプローブとして配列番号:1、4または31のすべてまたは部分を、および標準的なハイブリダイゼーション法(例えばSambrook,J.,Fritsh,E.F.,およびManiatis,T.、モレキュラークローニング:ア ラボラトリーマニュアル(Molecular Cloning A Laboratory Manual)、第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリー出版(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク、1989に記載されているような) を使用してヒトの海馬ライブラリーから単離することができる。さらに配列番号:1、4もしくは31のすべてまたは部分を包含する核酸分子は、配列番号:1、4もしくは31の配列に基づき設計したオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、ポリメラーゼ連鎖反応により単離することができる。例えばmRNAは、正常な脳細胞から単離することができ(例えばChirgwinら(1979)Biochemistry 18:5294-5299のグアニジニウム−チオシアネート抽出法による)、そしてcDNAは逆転写酵素(例えばMoloney MLV 逆転写酵素、メリーランド州、ベセスダのギブコ(Gibco)/BRLから入手可能;あるいはAMV逆転写酵素、フィラデルフィア州、セントペテルスブルグのセイカガク アメリカ社(Seikagaku America Inc.)から入手可能)を使用して調製することができる。PCR増幅のための合成オリゴヌクレオチドプライマーは、配列番号:1、4もしくは31に示すヌクレオチド配列に基づき設計することができる。本発明の核酸は標準的なPCR増幅法に従い、鋳型および適切なオリゴヌクレオチドプライマーとしてcDNAまたはゲノムDNAを使用して増幅することができる。そのように増幅した核酸を適切なベクター中にクローン化し、そしてDNA配列分析により特徴付けることができる。さらに、flh84g5ヌクレオチド配列に対応するオリゴヌクレオチドを標準的な合成法により、例えば自動化DNA合成器を使用して調製することができる。
【0050】
好適な態様では、本発明の単離された核酸分析は、配列番号:1、4もしくは31に示すヌクレオチド配列またはATCC(商標)に寄託番号98902で寄託したプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列を含んで成る。配列番号:1の配列は、ヒトflh84g5 cDNAに対応する。このcDNAはヒトflh84g5ポリペプチド(すなわち、配列番号:1のヌクレオチド291〜1628からの「コード領域」)、ならびに5'非翻訳配列(配列番号:1のヌクレオチド1〜290)および3'非翻訳配列(配列番号:1のヌクレオチド1629〜2689)をコードする配列を含んで成る。あるいは核酸分子は配列番号:1のコード領域(配列番号:1のヌクレオチド291〜1628、配列番号:3として別に示す)のみを含んで成るものでもよい。配列番号:4の配列はラットのflh84g5 cDNAに対応する。このcDNAはラットのflh84g5ポリペプチド(すなわち、配列番号:4のヌクレオチド778〜2112からの「コード領域」)、ならびに5'非翻訳配列(配列番号:4のヌクレオチド1〜777)および3'非翻訳配列(配列番号:4のヌクレオチド2113〜3244)をコードする配列を含んで成る。あるいは核酸分子は配列番号:4のコード領域(例えば配列番号:4のヌクレオチド778〜2112、配列番号:6として別に示す)のみを含んで成るものでもよい。配列番号:31の配列は、部分的なマウスのflh84g5 cDNAに対応する。このcDNAはマウスのflh84g5ポリペプチドを部分をコードする配列(すなわち、配列番号:31のヌクレオチド1〜1089からの「コード領域」の一部)、および3'非翻訳配列(配列番号:31のヌクレオチド1090〜2218)をコードする配列を含んで成る。あるいは核酸分子は配列番号:31の部分的コード領域(ヌクレオチド1〜1089、配列番号:33として別に示す)のみを含んで成ることができる。
【0051】
別の好適な態様では、本発明の単離された核酸分子は、配列番号:1、4もしくは31の配列に示すヌクレオチド配列、ATCC(商標)に寄託番号98902で寄託したプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、またはこのようなヌクレオチド配列のずれかの部分に相補である核酸分子を含んで成る。配列番号:1、4もしくは31の配列に示すヌクレオチド配列に相補的である核酸分子は、配列番号:1、4もしくは31に示すヌクレオチド配列に十分相補的なものであるので、それぞれ配列番号:1、4もしくは31に示すヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができ、これにより安定な二本鎖を形成する。
【0052】
さらに別の好適な態様では、本発明の単離された核酸分子は配列番号:1、4または31のヌクレオチド配列、あるいはATCC(商標)に寄託番号98902で寄託されているプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、またはこれらのヌクレオチド配列の部分と少なくとも約30〜35%、好ましくは少なくとも約40〜45%、より好ましくは少なくとも約50〜55%、さらに好ましくは少なくとも約60〜65%、一層より好ましくは少なくとも約70〜75%、さらにより一層好ましくは少なくとも約80〜85%、そして最も好ましくは少なくとも約90〜95%以上相同的である。好ましくはそのような核酸分子は、flh84g5の機能的に活性または不活性な対立遺伝子変異体をコードする。さらに好適な態様では、本発明の単離された核酸分子は、例えば配列番号:1、4または31に示すヌクレオチド配列、ATCC(商標)に寄託番号98902で寄託されているプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、あるいはこのようなヌクレオチド配列のいずれかの部分とハイブリダイズ、例えば緊縮条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含んで成る。
【0053】
さらに本発明の核酸分子は、配列番号:1、4または31のコード領域の一部のみ、例えばプローブまたはプライマーとして、またはflh84g5の生物学的に活性な部分をコードする断片として使用することができる断片を含んで成ることができる。哺乳動物に由来するflh84g5遺伝子のクローニングから決定されたヌクレオチド配列は、他の細胞種、例えば他の組織中のflh84g5相同体、ならびに他の哺乳動物に由来するflh84g5相同体を同定および/またはクローニングするのに使用するためのプローブおよびプライマーの生成を可能とする。このプローブ/プライマーは典型的には、実質的に精製されたオリゴヌクレオチドを含んで成る。オリゴヌクレオチドは典型的には、緊縮条件下で配列番号:1、4または31センスの少なくとも約12個、好ましくは約25個、より好ましくは約40、50または75個の連続するヌクレオチド、配列番号:1、4または31のアンチセンス配列、あるいはそれらの自然に存在する突然変異体とハイブリダイズするヌクレオチドの領域を含んで成る。配列番号:1、4または31中のヌクレオチド配列に基づくプライマーは、PCR反応に使用してflh84g5相同体をクローン化することができる。flh84g5ヌクレオチド反応に基づくプローブは、同じまたは相同的なポリペプチドをコードする転写物またはゲノム配列を検出するために使用することができる。好適な態様では、プローブはさらにそれらに結合した標識基を含んで成り、例えば標識基は、放射性同位体、蛍光化合物、酵素または酵素コファクターであることができる。そのようなプローブは、個体に由来する細胞のサンプル中のflh84g5をコードする核酸のレベルを測定することによるような、例えばflh84g5 mRNAレベルを検出するか、またはゲノムflh84g5遺伝子が突然変異または欠失しているかどうかを決定することにより、flh84g5ポリペプチドを誤発現する細胞または組織を同定するための診断試験キットの一部として使用することができる。
【0054】
別の態様では、ポリペプチドまたはそれらの部分がflh84g5リガンド反応性細胞中でflh84g5リガンド反応をモジュレートする能力を維持するように、本発明の核酸分子は、配列番号:2、5または32のアミノ酸配列、あるいはATCC(商標)に寄託番号98902で寄託されているプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列に十分相同的であるアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはそれらの部分をコードする(例えば本明細書に記載するラットおよびヒトflh84g5ポリペプチドの自然に存在する対立遺伝子変異体)。本明細書で使用する「十分に相同的」という用語は、ポリペプチドまたはそれらの部分が、flh84g5リガンド反応性細胞中でflh84g5リガンド反応をモジュレートできるか、または当業者が本明細書に記載するラットおよびヒトflh84g5ポリペプチドの非機能的対立遺伝子変異体であると容易に認識するような、配列番号:2、5または32のアミノ酸配列、あるいはATCC(商標)に寄託番号98902で寄託されているプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列と同一または均等な(例えば配列番号:2、5または32のアミノ酸残基と同様の側鎖を有するアミノ酸残基)アミノ酸残基の最小数を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはそれらの部分を称する。別の態様では、このポリペプチドは配列番号:2、5または32のアミノ酸配列と少なくとも約30〜35%、好ましくは少なくとも約40〜45%、より好ましくは少なくとも約50〜55%、さらに好ましくは少なくとも約60〜65%、一層より好ましくは少なくとも約70〜75%、さらにより一層好ましくは少なくとも約80〜85%、そして最も好ましくは少なくとも約90〜95%以上相同的である。
【0055】
本発明のflh84g5核酸分子によりコードされるポリペプチドの部分は、好ましくはflh84g5ポリペプチドの生物学的に活性な部分である。本明細書で使用するように用語「flh84g5ポリペプチドの生物学的に活性な部分」とは、以下のflh84g5活性の1以上を有するflh84g5の部分、例えばドメイン/モチーフを含むものとする:1)flh84g5リガンドと相互反応(例えば結合)することができる;2)Gタンパク質または自然にflh84g5に結合する他のタンパク質と相互反応(例えば結合)することができる;3)イオンチャンネル(例えばカルシウム活性化クロライドチャンネルまたはカリウムまたはカルシウムチャンネル)の活性をモジュレートすることができる;4)細胞質ゾルイオン、例えばカルシウムまたはクロライド濃度をモジュレートすることができる;5)神経伝達物質、例えばアセチルコリンまたはカルニチンのようなアセチルコリン様分子の、ニューロン、例えばシナプス前ニューロンからの放出をモジュレートすることができる;6)flh84g5リガンド反応性細胞(例えば、平滑筋細胞または腺細胞)中のflh84g5リガンド反応を、例えばflh84g5リガンド反応性細胞、例えばニューロンに有益な影響を及ぼすためにモジュレートすることができる;7)ホスファチジルイノシトール代謝回転を介してリガンド結合のシグナルをシグナリングすることができる;および8)ホスホリパーゼC活性をモジュレート、例えば活性化または阻害することができる。
【0056】
標準的な結合アッセイ、例えば本明細書に記載するような免疫沈降および酵母ツーハイブリッドアッセイは、flh84g5ポリペプチドまたはそれらの生物学的に活性な部分がGタンパク質のような結合パートナーと相互作用(例えば結合)できる能力を測定するために行うことができる。flh84g5ポリペプチドまたはそれらの生物学的に活性な部分が、flh84g5リガンド反応性細胞中でflh84g5リガンド反応をモジュレートできるかどうかを決定するために、そのような細胞をflh84g5ポリペプチドまたはそれらの生物学的に活性な部分の過剰発現を駆動する構築物を用いてトランスフェクトすることができる。flh84g5リガンド反応性細胞、例えば完全な平滑筋細胞またはそのような細胞に由来する抽出物の調製法は当該技術分野では知られており、そしてGlukhovaら、(1987)Tissue Cell 19(5):657-63、Childsら、(1992)J.Biol.Chem.267(32):22853-9、およびWhiteら、(1996)J.Biol.Chem. 271(25):15008-17に記載されている。このような細胞は続いてflh84g5リガンドで処理することができ、そしてホスファチジルイノシトール代謝回転または細胞質ゾルのカルシウム濃度のようなflh84g5リガンドの細胞に及ぼす生物学的効果を、当該技術分野で既知の方法を使用して測定することができる(Hartzell H.C.ら(1988)Prog.Biophys.Mol.Biol.52:165-247)。あるいはトランスジェニック動物、例えばflh84g5ポリペプチドまたはそれらの生物学的に活性な部分を過剰発現するマウスを使用することができる。そのような動物からの組織を得、そしてflh84g5リガンドで処理することができる。例えば界面活性剤で表皮をはいだ筋肉繊維束の調製法は当該技術分野で知られている(Straussら、(1992)Am.J.Physiol.262:1437-45)。flh84g5リガンドに反応するこのような組織の収縮性は、例えばStraussら、同上に記載されているような等尺性の力の測定を使用して測定することができる。同様にflh84g5ポリペプチドまたはそれらの生物学的に活性な部分が、腺細胞のようなflh84g5リガンド反応性細胞中でflh84g5リガンド反応をモジュレートできるかどうかを決定するために、腺細胞、例えば組織培養により成長した耳下腺細胞を、flh84g5ポリペプチドまたはそれらの生物学的に活性な部分の過剰発現を駆動する構築物を用いてトランスフェクトすることができる。細胞は続いてflh84g5リガンドで処理され、そしてflh84g5リガンドがそのような細胞からのアミラーゼ分泌に及ぼす効果を、例えば標識した基質を用いた酵素アッセイを使用して測定することができる。flh84g5活性に使用する好適なアッセイは、M1、M3およびM5型の受容体について開発されたもののようなホスファチジルイノシトール代謝回転に基づくだろう(E.Watsonら、Gタンパク質結合受容体:ファクツブック(The G Protein Linked Receptor:FactsBook(アカデミック出版、ボストン、マサチューセッツ州、1994)を参照にされたい)(この内容は引用により本明細書に編入する)。
【0057】
1つの態様では、flh84g5の生物学的に活性な部分は膜貫通ドメインを含んで成る。好ましくは膜貫通ドメインはヒトに由来する核酸分子によりコードされ、そして配列番号:2の任意の膜貫通ドメインに(すなわちアミノ酸残基34〜59、109〜130、152〜174、197〜219または396〜416;これらはそれぞれ配列番号:7、9、10、11および13と命名された配列として別に示す、あるいはラットの膜貫通ドメイン(すなわち配列番号:5のアミノ酸残基34〜59、73〜91、109〜130、152〜174、197〜219、630〜380または396〜416;これらはそれぞれ配列番号:14、15、16、17、18、19および20と命名された配列として別に示し、または配列番号:32のアミノ酸残基1〜8、26〜47、69〜91、114〜136、277〜297または313〜333、これらはそれぞれ配列番号:34、35、36、37、38たは39と命名された配列として別に示す)に少なくとも約50〜55%、好ましくは少なくとも約60〜65%、より好ましくは少なくとも約70〜75%、さらに好ましくは少なくとも約80〜85%、そして最も好ましくは少なくとも約90〜95%以上相同的である。より好ましくはヒトの核酸分子によりコードされる膜貫通ドメインは、配列番号:12と命名された別の配列として示す配列番号:2の膜貫通ドメイン(すなわちアミノ酸残基360〜38)に少なくとも約75〜80、好ましくは少なくとも約80〜85%、より好ましくは少なくとも約85〜90%、そして最も好ましくは少なくとも約90〜95%以上相同的であるか、あるいは配列番号:8と命名された別の配列として示す配列番号:2の膜貫通ドメイン(すなわちアミノ酸残基73〜91)に少なくとも約80〜85、好ましくは少なくとも約85〜90%、そして最も好ましくは少なくとも約90〜95%以上相同的である。好適な態様では、膜貫通ドメインを含むポリペプチドの生物学的に活性な部分は、Gタンパク質または他の結合パートナーの細胞中での活性をモジュレートし、しかも/またはflh84g5リガンド反応性細胞中、例えば脳細胞中のflh84g5リガンド反応をモジュレートして、これにより細胞に有益な効果を及ぼすことができる。好適な態様では生物学的に活性な部分は、アミノ酸残基34〜59(配列番号:7)、73〜91(配列番号:8)、109〜130(配列番号:9)、152〜174(配列番号:10)、197〜219(配列番号:11)、360〜380(配列番号:12)および396〜416(配列番号:13)により表されるようなヒトのflh84g5の膜貫通ドメイン、アミノ酸残基34〜59(配列番号:14)、73〜91(配列番号:15)、109〜130(配列番号:16)、152〜174(配列番号:17)、197〜219(配列番号:18)、360〜380(配列番号:19)および396〜416(配列番号:20)により表されるような完全長のラットflh84g5の膜貫通ドメイン、あるいはアミノ酸残基1〜8(配列番号:34)、26〜47(配列番号:35)、69〜91(配列番号:36)、114〜136(配列番号:37)、277〜297(配列番号:38)および313〜333(配列番号:39)により表されるような部分的なマウスのflh84g5の膜貫通ドメインを含んで成る。生物学的に活性なflh84g5の部分をコードするさらなる核酸断片は、配列番号:1、4または31の部分を単離し、flh84g5ポリペプチドまたはペプチドのコードされた部分を発現させ(例えばインビトロでの組換え発現による)、そしてflh84g5ポリペプチドまたはペプチドのコードされた部分の活性を評価することにより調製することができる。
【0058】
本発明はさらに、遺伝子コードの縮重により配列番号:1、4または31(およびそれらの部分)に示すヌクレオチド配列とは異なる核酸部分を包含し、そしてこのように配列番号:1、4または31に示すヌクレオチド配列によりコードされるものと同じflh84g5ポリペプチドをコードする。別の態様では、本発明の単離された核酸分子は、配列番号:2、5または32に示すアミノ酸配列を有するポリペプチド、またはATCC(商標)に寄託番号98902で寄託されているプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する。さらに別の態様では本発明の核酸分子は、配列番号:2または4(それぞれ配列番号:3、6または33に示す読み取り枠によりコードされる)のアミノ酸配列、またはATCC(商標)に寄託番号98902で寄託されているプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列に実質的に相同的である完全長のヒトポリペプチドをコードする。
【0059】
配列番号:1、4または31に示すflh84g5ヌクレオチド配列に加えて、当業者はflh84g5のアミノ酸配列において変化を導くDNA配列の多型が群(例えばヒトの群)内に存在し得ると考えるだろう。flh84g5遺伝子におけるそのような遺伝的多型は、自然な対立遺伝子変異により1群の個体中に存在し得る。本明細書で使用するように「遺伝子」および「組換え遺伝子」という用語は、flh84g5ポリペプチド、好ましくは哺乳動物のflh84g5ポリペプチドをコードする読み取り枠を含んで成る核酸分子を称する。そのような自然な対立遺伝子変異は、典型的にはflh84g5遺伝子のヌクレオチド配列中で1〜5%の変異をもたらす。自然な対立遺伝子変異の結果である任意の、そしてすべてのそのようなヌクレオチド変異および、生じたflh84g5中のアミノ酸多型は、本発明の範囲内にあるものとする。そのような対立遺伝子変異には、活性な対立遺伝子変異ならびに非活性または活性が低下した対立遺伝子変異体を含み、後者の2種類は典型的には病的障害を生じる。さらに他の種に由来するflh84g5ポリペプチドをコードする核酸分子、そしてこのように配列番号:1のヒト配列とは異なるヌクレオチド配列を有するものは本発明の範囲内にあるものとする。本発明のヒトflh84g5 cDNAの自然な対立遺伝子変異体および非ヒト相同体に対応する核酸分子は、緊縮ハイブリダイゼーション条件下で標準的なハイブリダイゼーション法に従い、ハイブリダイゼーションプローブとしてヒトcDNAまたはそれらの部分を使用して、本明細書に開示されるようなヒトflh84g5核酸に対する相同性に基づき単離することができる。したがって別の態様では、本発明の単離された核酸分子は少なくとも15ヌクレオチド長であり、そして緊縮条件下で配列番号:1のヌクレオチド配列、またはATCC(商標)に寄託番号98902で寄託されているプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列を含んで成る核酸分子とハイブリダイズする。別の態様では核酸は少なくとも30、50、100、250、300、400、500、600、700、800、900または1000ヌクレオチド長である。本明細書で使用するように「緊縮条件下でハイブリダイズする」という用語は、互いに少なくとも60%相同的なヌクレオチド配列が、典型的には互いにハイブリダイズしたままであるハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を説明することを意図する。好ましくはこの条件は、互いに少なくとも約65%、より好ましくは少なくとも約70%、そしてさらにより好ましくは少なくとも約75%以上相同的である配列が、互いにハイブリダイズしたままであるような条件である。そのような緊縮条件は当業者には知られており、そして現在の分子生物学における手法(Current Protocol in Molecular Biology)、ジョン ウィリー&サンズ(John Wiley & Sons)、N.Y.(1989),6.3.1-6.3.6に見いだすことができる。緊縮ハイブリダイゼーション条件の好適な非限定的な例は、約45℃で6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリダイゼーション、続いて50〜65℃で0.2×SSC、0.1%SDS中にて1回以上の洗浄である。好ましくは、配列番号:1の配列と緊縮条件下でハイブリダイズする本発明の単離された核酸分子は、自然に存在する核酸分子に対応する。本明細書で使用するように、「自然に存在する」核酸分子とは、自然に存在するヌクレオチド配列を有するRNAまたはDNA分子(天然のポリペプチドをコードする)を称する。1つの態様では、核酸は自然なヒトflh84g5をコードする。
【0060】
群中に存在し得るflh84g5配列の自然に存在する対立遺伝子変異体に加えて、当業者はさらに配列番号:1、4または31のヌクレオチド配列に突然変異により変化を導入して、これによりflh84g5ポリペプチドの機能的能力を変えずにコードされるflh84g5ポリペプチドのアミノ酸配列に変化を導くことができると考えるだろう。例えば「非必須」アミノ酸残基でアミノ酸置換を導くヌクレオチド置換は、配列番号:1、4または31の配列に作成することができる。「非必須」アミノ酸残基は、flh84g5の活性を変えることなくflh84g5の野生型配列(例えば配列番号:2、5または32の配列)から改変され得る残基であり、一方「必須」アミノ酸残基は、flh84g5活性に必要である。例えば保存されているアミノ酸残基、例えばflh84g5の膜貫通ドメイン中のアスパラギン酸、プロリン トレオニンおよびチロシンは、flh84g5リガンドへの結合に最も重要であると思われ、すなわちlh84g5の必須残基である。しかし他のアミノ酸残基は(例えば、膜貫通ドメイン中に保存されていないか、または半−保存されているだけ)、活性に必須ではなく、したがってflh84g5活性を変化させずに改変され易いと思われる。
【0061】
したがって本発明の別の観点は、flh84g5活性に必須ではないアミノ酸残基に変化を含むflh84g5ポリペプチドをコードする核酸分子に関する。そのようなflh84g5ポリペプチドは、配列番号:2、5または32のアミノ酸配列とは異なるものの、本明細書に記載する少なくとも1つのflh84g5活性は保持している。1つの態様では単離された核酸分子は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んで成り、ここでポリペプチドは配列番号:2、5または32のアミノ酸配列と、少なくとも約30〜35%、好ましくは少なくとも約40〜45%、より好ましくは少なくとも約50〜55%、さらにより好ましくは少なくとも約60〜65%、さらに一層好ましくは少なくとも約70〜75%、さらにより一層好ましくは少なくとも80〜85%、そして最も好ましくは少なくとも約90〜95%以上相同的である。
【0062】
2つのアミノ酸配列または2つのヌクレオチド配列のパーセント同一性を決定するために(例えば配列番号:2、5または32およびそれらの突然変異体形)、配列を最適な比較の目的で並べる(例えば最適な配列のために第1または第2アミノ酸またはヌクレオチド配列の1つ、または両方にギャップを導入することができ、そして非相同的配列は比較目的のために除くことができる)。1態様では、比較目的で並べた参照配列の長さは、少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、そしてさらに一層好ましくは少なくとも70%、80%または90%の参照配列の長さである(例えば、177アミノ酸残基を有する配列番号:2、5または32のflh84g5アミノ酸配列に第2配列を並べる時、少なくとも80、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも120、さらにより好ましくは少なくとも140、そしてさらにより一層好ましくは少なくとも150、160または170個のアミノ酸残基を並べる)。アミノ酸位置またはヌクレオチド位置に対応するアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1配列の位置が第2配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドである時、分子はその位置で同一である(本明細書で使用するように、アミノ酸または核酸の「同一性」とは、アミノ酸または核酸の「相同性」と均等である)。2つの配列間のパーセント同一性は、ギャップおよび各ギャップの長さを考慮して(これは2つの配列の最適な整列のために導入される必要がある)、配列により共有される同一位置の数の関数である。
【0063】
2つの配列間の配列の比較およびパーセント同一性の決定は、数学的計算を使用して行うことができる。1つの態様では、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comより入手可能)のGAPプログラムに包含されたNeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.(48):444-453(1970))アルゴリズムを使用して、Blossom62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、および16、14、12、10、8、6または4のギャップ荷重、および1、2、3、4、5または6の長さ荷重を使用して決定する。さらに別の態様では、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comより入手可能)のGAPプログラムにを使用して、NWSgapdna.CMPマトリックス、および40、50、60、70または80のギャップ荷重、および1、2、3、4、5または6の長さ荷重を使用して決定する。別の態様では、2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に包含された、E.MeyersおよびW.Millerの計算式(CABIOS,4:11-17(198))を使用して、PAM120荷重残基表、12のギャップ長ペナルティおよび4のギャップペナルティを使用して決定する。
【0064】
本発明の核酸およびタンパク質配列は、例えば他のファミリーの員または関連する配列を同定するために、さらに公的なデータベースに対する調査を行うための「疑問配列(query sequence)」として使用することができる。そのような調査は、Altschulら、(1990)J.Mol.Biol.215:403-10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して行うことができる。BLASTヌクレオチド調査は、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて行い、本発明のflh84g5核酸分子に相同的なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質調査は、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて行い、本発明のflh84g5タンパク質分子に相同的なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的にギャップのある計算を得る時、Gapped BLASTをAltschulら(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402に記載されているように利用することができる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する時、個々のプログラムのデフォルトパラメーター(例えばXBLASTおよびNBLAST)を使用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照にされたい。
【0065】
配列番号:2、5または32のポリペプチドに相同的なflh84g5ポリペプチドをコードする単離された核酸分子は、1以上のアミノ酸の置換、付加または欠失をコードされたポリペプチド中に導入するために、1以上のヌクレオチド置換、付加または欠失をそれぞれ配列番号:1、4または31に導入することにより作成することができる。突然変異は、部位特異的突然変異誘発法およびPCR媒介突然変異誘発法のような標準的技法により、配列番号:1、4または31に導入することができる。好ましくは保存的アミノ酸置換を、1以上の予想される非必須アミノ酸残基に作成する。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置き換えられることである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該技術分野では定められている。このようなファミリーには塩基性側鎖(例えばリシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸、非電荷極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えばトレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)の持つアミノ酸を含む。このようにflh84g5中の予想される非必須アミノ酸残基は、好ましくは同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基に置き換えられる。あるいは別の態様では、突然変異はサチュレーション(saturation)突然変異誘発法のようにflh84g5コード配列のすべてまたは部分に沿って不規則に導入することができ、そして生成した突然変異体を本明細書に記載したflh84g5活性についてスクリーニングしてflh84g5活性を保持する突然変異体を同定することができる。配列番号:1、4または31の突然変異誘発法に続き、コードされたポリペプチドは組換え的(例えば実施例3および4に記載するように)に発現させることができ、そしてポリペプチドの活性を例えば本明細書に記載のアッセイを使用して測定することができる。
【0066】
上記のflh84g5ポリペプチドをコードする核酸分子に加えて、本発明の別の観点はそれらに対してアンチセンスである単離された核酸分子に関する。「アンチセンス」核酸は、ポリペプチドをコードする「センス」核酸に相補的なヌクレオチド配列を含んで成り、例えば二本鎖cDNA分子のコード鎖に対して相補的またはmRNA配列に対して相補的である。したがってアンチセンス核酸は、センス核酸と水素結合することができる。アンチセンス核酸は全flh84g5コード鎖またはそれらの部分のみと相補的であることができる。1つの態様では、アンチセンス核酸分子はflh84g5をコードするヌクレオチド配列のコード鎖の「コード領域」に対してアンチセンスである。
【0067】
用語「コード領域」とは、アミノ酸残基に翻訳されるコドンを含んで成るヌクレオチド配列の領域、例えばヌクレオチド291〜1628(配列番号:3として別に示す)を含んで成る配列番号:1の全コード領域、およびヌクレオチド778〜2112(配列番号:6として別に示す)を含んで成る配列番号:4のコード領域を称する。別の態様では、アンチセンス核酸分子は、flh84g5をコードするヌクレオチド配列のコード鎖の「非コード領域」に対してアンチセンスである。用語「非コード領域」は、アミノ酸に翻訳されないコード領域を挟む5'および3'配列を称する(すなわち、5'および3'非翻訳領域とも言う)。
【0068】
本明細書に開示するflh84g5をコードするコード鎖配列(例えば配列番号:1、4および31)を考慮すると、本発明のアンチセンス核酸はワトソンおよびクリックの塩基対の法則にしたがって設計することができる。アンチセンス核酸分子はflh84g5 mRNAの全コード領域に相補的であることができるが、より好ましくはflh84g5 mRNAのコードまたは非コード領域の一部に対してのみアンチセンスであるオリゴヌクレオチドである。例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドは、flh84g5 mRNAの翻訳開始部位の周辺領域に相補的であることができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45または50ヌクレオチド長である。本発明のアンチセンス核酸は、当該技術分野で既知の手順を使用して化学合成または酵素連結反応を使用して構築することができる。例えばアンチセンス核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)は、自然に存在するヌクレオチド、あるいは分子の生物学的安定性を増すように、またはアンチセンスとセンス核酸との間に形成される二本鎖の物理的安定性を増すように設計された種々の修飾ヌクレオチドを使用して化学的に合成でき、例えばホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを使用することができる。アンチセンス核酸を生成するために使用できる修飾ヌクレオチドの例には、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ-D-ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルキューオシン、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、キューオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)wおよび2,6-ジアミノプリンを含む。あるいはアンチセンス核酸は、核酸がアンチセンス方向にサブクローン化された発現ベクターを使用して、生物的に生産することができる(すなわち、さらに以下の細分に詳細に記載するように、挿入された核酸から転写されるRNAは、目的の標的核酸に対してアンチセンス方向である)。
【0069】
本発明のアンチセンス核酸分子は、それらがflh84g5ポリペプチドをコードする細胞性mRNAおよび/またはゲノムDNAにハイブリダイズまたは結合して、それによりポリペプチドの発現を転写および/または翻訳を抑制することにより抑制するように、典型的には個体に投与されるか、またはその場で生成される。ハイブリダイゼーションは、通例のヌクレオチド相補性により安定な二本鎖を形成でき、あるいは例えばDNA二本鎖に結合するアンチセンス核酸分子の場合は、二本鎖ヘリックスの主溝の特異的相互作用を通す。本発明のアンチセンス核酸分子の投与経路の例は、組織部位への直接注入を含む。あるいはアンチセンス核酸分子は選択した細胞を標的するために修飾し、そして次に全身的に投与することができる。例えば全身的投与にはアンチセンス分子は、例えばアンチセンス核酸分子を、細胞表面受容体または抗原に結合するペプチドまたは抗体に連結することにより、選択した細胞表面上に発現する受容体または抗原に特異的に結合するように修飾することができる。アンチセンス核酸分子は、本明細書に記載するベクターを使用して細胞に運ぶこともできる。アンチセンス分子の十分な細胞内濃度を達するためには、強力なpolIIまたはpolIIIプロモーターの制御下にアンチセンス核酸分子が配置されたベクター構築物が好適である。
【0070】
さらに別の態様では、本発明のアンチセンス核酸分子はα-アノマー核酸分子である。α-アノマー核酸分子は特異的二本鎖ハイブリッドを相補的RNAと形成し、ここでは通例のβ-ユニットとは対照的に、鎖が互いに平行に走る(Gaultierら(1987)Nucleic Acids Res.15:6625-6641)。またアンチセンス核酸分子は2'-o-メチルリボヌクレオチド(Inoueら、(1987)Nucleic Acids Res.15:6131-6148)、またはキメラRNA-DNA同族体(Inoueら、(1987)FEBS Lett.215:327-330)を含んで成ることができる。
【0071】
さらに別の態様では、本発明のアンチセンス核酸はリボザイムである。リボザイムは、mRNAのような一本鎖核酸を相補的領域を有するものに開裂することができるリボヌクレアーゼ活性を持つ触媒的RNA分子である。このようにリボザイム(例えばハンマーヘッド型リボザイム(HaselhofおよびGerlach(1988)Nature 344:585-591に記載されるような))は、flh84g5 mRNA転写物を触媒的に開裂し、それによりflh84g5 mRNAの翻訳を抑制するために使用することができる。flh84g5をコードする核酸に対する特異性を有するリボザイムは、本明細書に開示するflh84g5 cDNAのヌクレオチド配列(すなわち配列番号:1、4または31)に基づき、設計することができる。例えばTetrahymena L-19IVS RNAの誘導体は、活性部位のヌクレオチド配列がflh84g5をコードするmRNA中の開裂されるヌクレオチド配列に相補的であるように構築することができる。例えばCechら、米国特許第4,987,071号およびCechら、米国特許第5,116,742号明細書を参照にされたい。あるいはflh84g5 mRNAは、RNA分子のプールから特異的リボヌクレアーゼ活性を有する触媒的RNAを選択するために使用することができる。例えばBartel,D.およびSzostak,J.W.(1993)Science 261:1411-1418を参照にされたい。
【0072】
あるいはflh84g5遺伝子発現は、flh84g5の調節領域(例えばflh84g5プロモーターおよび/またはエンハンサー)に相補的な標的ヌクレオチド配列により抑制されて、標的細胞中でflh84g5遺伝子の転写を防止する三重ヘリックス構造を形成することができる。一般にHelence,C.(1991)Anticancer Drug Des.6(6):569-84;Helence,C.(19992) Ann,N.Y.Acad.Sci.660:27-36;およびMaher.L.J.(1992)Bioassay 14(12):807-15を参照にされたい。
II.組換え発現ベクター及び宿主細胞
本発明の別の態様は、flh84g5(またはその一部)をコードする核酸を含有するベクター、好ましくは発現ベクターに関する。本明細書において用いられる場合、「ベクター」という用語は、連結されている別の核酸を運ぶことができる核酸分子をさす。ベクターの一つの型は「プラスミド」であり、それはさらなるDNAセグメントを連結することができる環状の二本鎖DNAループをさす。別の型のベクターはウイルスベクターであり、その場合、ウイルスゲノム中にさらなるDNAセグメントを連結することができる。ある種のベクターは、導入される宿主細胞中で自律複製することができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム性哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳類ベクター)は宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノム中に組込まれ、それにより宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、ある種のベクターは、機能的に連結されている遺伝子の発現を導くことができる。本明細書では、そのようなベクターを「発現ベクター」と呼ぶ。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。プラスミドは最も一般的に用いられるベクター形態であるので、本明細書では、「プラスミド」と「ベクター」を互換可能に使用することができる。しかしながら、本発明は、同等な機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠損性レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)のような他の形態の発現ベクターも含むものとする。
【0073】
本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞における核酸の発現のために適当な形態の本発明の核酸を含んでなり、それは組換え発現ベクターが、発現に用いられる宿主細胞に基づいて選択される1つまたはそれ以上の調節配列を含み、それが発現される核酸配列に機能的に連結されることを意味する。組換え発現ベクター内で、「機能的に連結される」は、(例えば、インビトロ転写/翻訳系において、またはベクターが宿主細胞中に導入される場合には宿主細胞において)ヌクレオチド配列を発現できるように目的のヌクレオチド配列が調節配列(1つまたは複数)に連結されることを意味すると考えられる。「調節配列」という用語は、プロモーター、エンハンサー及び他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むものとする。そのような調節配列は、例えば、Goeddel; Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185、 Academic Press、 San Diego、 CA(1990)中に記述されている。調節配列は、多くの種類の宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を導くもの及びある種の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を導くもの(例えば、組織特異的調節配列)を含む。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望されるポリペプチドの発現レベル等のような因子により決まる可能性があることを当業者は認識する。本発明の発現ベクターを宿主細胞中に導入し、それにより本明細書に記述するような核酸によりコードされる融合ポリペプチドまたはペプチドを含むポリペプチドまたはペプチド(例えば、flh84g5ポリペプチド、flh84g5の突然変異体型、融合ポリペプチド等)を生産することができる。
【0074】
原核または真核細胞におけるflh84g5の発現のために本発明の組換え発現ベクターを設計することができる。例えば、エシェリキア・コリ(E. coli)のような細菌細胞、(例えば、バキュロウイルス発現ベクターを用いて)昆虫細胞、酵母細胞または哺乳類細胞においてflh84g5を発現させることができる。適当な宿主細胞は、Goeddel; Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185、 Academic Press、 San Diego、 CA(1990)中にさらに説明されている。あるいはまた、例えばT7プロモーター調節配列及びT7ポリメラーゼを用いて、組換え発現ベクターをインビトロで転写し、翻訳することができる。
【0075】
原核生物におけるポリペプチドの発現は、たいてい、融合または非融合ポリペプチドのいずれかの発現を導く構成的または誘導性プロモーターを含有するベクターを用いてエシェリキア・コリにおいて実施される。融合ベクターは、その中にコードされるポリペプチドに、通常は組換えポリペプチドのアミノ末端に多数のアミノ酸を付加する。そのような融合ベクターは典型的に3つの目的を果たす:1)組換えポリペプチドの発現を増やす;2)組換えポリペプチドの可溶性を高める;そして3)アフィニティー精製においてリガンドとして働くことにより組換えポリペプチドの精製を促進する。融合ポリペプチドの精製後に融合部分から組換えポリペプチドを分離できるように、融合発現ベクターでは、しばしば、蛋白質分解切断部位が融合部分と組換えポリペプチドの連結部に導入される。そのような酵素及びそれらのコグネイト認識配列は、第Xa因子、トロンビン及びエンテロキナーゼを含む。典型的な融合発現ベクターは、標的組換えポリペプチドにそれぞれグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質またはプロテインAを融合するpGEX(Pharmacia Biotech Inc.; Smith、 D. B.及びJohnson、 K. S.(1988) Gene 67:31-40)、 pMAL(New England Biolabs、 Beverly、 MA)及びpRIT5(Parmacia、 Piscataway、 NJ)を含む。一つの態様として、flh84g5のコーディング配列をpGEX発現ベクター中にクローン化してN末端からC末端にGST−トロンビン切断部位−flh84g5を含んでなる融合ポリペプチドをコードするベクターを作製する。グルタチオン−アガロース樹脂を用いてアフィニティークロマトグラフィーにより融合ポリペプチドを精製することができる。トロンビンで融合ポリペプチドを切断することによりGSTに融合していない組換えflh84g5を回収することができる。
【0076】
適当な誘導性の非融合エシェリキア・コリ発現ベクターの例は、pTrc(Amann等(1988)Gene 69:301-315)及びpET 11d(Studier等、Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185、Academic Press、 San Diego、 California(1990)60-89)を含む。pTrcベクターからの標的遺伝子発現は、ハイブリッドtrp-lac融合プロモーターからの宿主RNAポリメラーゼ転写による。pET 11dベクターからの標的遺伝子発現は、同時発現されるウイルスRNAポリメラーセ゛(T7 gn1)によりもたらされるT7 gn10-lac融合プロモーターからの転写による。このウイルスポリメラーゼは、lacUV5プロモーターの転写制御下にT7 gn1遺伝子を保有する内在λプロファージから宿主株BL21(DE3)またはHMS174(DE3)により供給される。
【0077】
エシェリキア・コリにおける組換えポリペプチド発現を最大にする一つの方法は、組換えポリペプチドをタンパク質分解的に切断する能力が損なわれている宿主細菌においてポリペプチドを発現させることである(Gottesman、S.、Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185、 Academic Press、 San Diego、 California(1990)119-128)。別の方法は、各アミノ酸の個々のコドンがエシェリキア・コリにおいて優先的に利用されるものであるように発現ベクター中に挿入される核酸の核酸配列を改変することである(Wada等、 (1992)Nucleic Acids Res. 20:2111-2118)。本発明の核酸配列のそのような改変を標準的なDNA合成技術により実施することができる。
【0078】
別の態様として、flh84g5発現ベクターは酵母発現ベクターである。酵母サッカロミセス・セレビシエ(S.cerivisae)における発現のためのベクター例は、pYepSec1(Baldari等、 (1987)Embo J. 6:229-234)、 pMFa(Kurjan及びHerskowitz、 (1982)Cell 30:933-943)、 pJRY88(Schultz等、(1987)Gene 54:113-123)及びpYES2(Invitrogen Corporation、 San Diego、 CA)を含む。
【0079】
あるいはまた、例えばバキュロウイルス発現ベクターを用いて、昆虫細胞においてflh84g5を発現させることができる。培養した昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)におけるポリペプチドの発現のために利用できるバキュロウイルスベクターは、pAcシリーズ(Smith等(1983) Mol. Cell Biol. 3:2156-2165)及びpVLシリーズ(Lucklow及びSummers (1989) Virology 170:31-39)を含む。
【0080】
さらに別の態様として、哺乳類発現ベクターを用いて哺乳類細胞において本発明の核酸を発現させる。哺乳類発現ベクターの例は、pCDM8(Seed、B.(1987)Nature 329:840)及びpMT2PC(Kaufman等(1987)EMBO J.6:187-195)を含む。哺乳類細胞において用いる場合、発現ベクターの制御機能はウイルスの調節要素により与えられることが多い。例えば、一般的に用いられるプロモーターはポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス及びシミアンウイルス40に由来する。原核及び真核細胞の両方の他の適当な発現系については、Sambrook、 J.、 Fritsh、 E. F.及びManiatis、 T.、 Molecular Cloning: A Laboratory Manual、 第2版、 Cold Spring Harbor Laboratory、 Cold Spring Harbor Laboratory Press、 Cold Spring Harbor、 NY、 1989の16及び17章を参照。
【0081】
別の態様として、組換え哺乳類発現ベクターは、特定の細胞型において優先的に核酸の発現を導くことができる(例えば、核酸を発現させるために組織特異的調節要素を用いる)。組織特異的調節要素は当該技術分野において既知である。適当な組織特異的プロモーターの限定しない例は、アルブミンプロモーター(肝臓特異的;Pinkert等(1987)Genes Dev.1:268-277)、リンパ系特異的プロモーター(Calame及びEaton(1988)Adv.Immunol. 43:235-275)、特にT細胞受容体(Winoto及びBaltimore(1989)EMBO J. 8:729-733)及び免疫グロブリン(Banerji等(1983)Cell 33:729-740; Queen及びBaltimore(1983) Cell 33:741-748)のプロモーター、ニューロン特異的プロモーター(例えば、ニューロフィラメントプロモーター;Byrne及びRuddle(1989)PNAS 86:5473-5477)、膵臓特異的プロモーター(Edlund等(1985)Science 230:912―916)並びに乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモーター;米国特許第4,873,316号及び欧州出願公開第264,166号)を含む。また、発生的に調節されるプロモーター、例えばマウスホックスプロモーター(Kessel及びGruss(1990)Science 249:374-379)及びα−フェトプロテインプロモーター(Campes及びTilghman(1989)Genes Dev. 3:537-546)も包含する。
【0082】
本発明はさらに、発現ベクター中にアンチセンスの向きにクローン化された本発明のDNA分子を含んでなる組換え発現ベクターを提供する。すなわち、flh84g5 mRNAにアンチセンスであるRNA分子を(DNA分子の転写により)発現できるようにDNA分子を調節配列に機能的に連結する。様々な細胞型においてアンチセンスRNA分子の連続発現を導く、アンチセンスの向きにクローン化された核酸に機能的に連結された調節配列、例えばウイルスのプロモーター及び/もしくはエンハンサーを選択することができ、またはアンチセンスRNAの構成的、組織特異的もしくは細胞型特異的発現を導く調節配列を選択することができる。アンチセンス発現ベクターは組換えプラスミド、ファージミドまたは弱毒ウイルスの形態であってもよく、その場合、アンチセンス核酸は高効率の調節領域の制御下で生産され、ベクターが導入される細胞型によりその活性を決定することができる。アンチセンス遺伝子を用いる遺伝子発現の調節の説明については、Weintraub、 H.等、 Antisense RNA as a molecular tool for genetic analysis、 Reviews-Trends in Genetics、 Vol.1(1) 1986を参照。
【0083】
本発明の別の態様は、本発明の組換え発現ベクターが導入されている宿主細胞に関する。「宿主細胞」及び「組換え宿主細胞」という用語は、本明細書において互換可能に用いられる。そのような用語は特定の該細胞だけでなく、そのような細胞の子孫または可能性がある子孫をさすと理解される。突然変異または環境的影響のいずれかのために後の世代においてある種の改変が起こる可能性があるので、そのような子孫は実際には親細胞と同一でない可能性があるが、それにもかかわらず本明細書に用いられるその用語の範囲内に含まれる。
【0084】
宿主細胞はあらゆる原核または真核細胞であってもよい。例えば、エシェリキア・コリのような細菌細胞、昆虫細胞、酵母または(チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)もしくはCOS細胞のような)哺乳類細胞においてflh84g5ポリペプチドを発現させることができる。他の適当な宿主細胞は当業者に既知である。
【0085】
通常の形質転換またはトランスフェクション技術により原核または真核細胞中にベクターDNAを導入することができる。本明細書に用いられる場合、「形質転換」及び「トランスフェクション」という用語は、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈殿、DEAE−デキストランによるトランスフェクション、リポフェクションまたは電気穿孔を初めとする、宿主細胞中に外来核酸(例えば、DNA)を導入するための様々な当該技術分野で認められている技術をさすものとする。宿主細胞を形質転換するかまたはトランスフェクトするための適当な方法をSambrook等(Molecular Cloning: A Laboratory Manual、 第2版、 Cold Spring Harbor Laboratory、 Cold Spring Harbor Laboratory Press、 Cold Spring Harbor、 NY、 1989)及び他の実験マニュアル中に見いだすことができる。
【0086】
哺乳類細胞の安定なトランスフェクションには、用いる発現ベクター及びトランスフェクション技術により、細胞のほんの一部分のみがそれらのゲノム中に外来DNAを組込むことができることが分かっている。これらの組込み体を同定し、選択するために、一般に、選択マーカー(例えば、抗生物質に対する耐性)をコードする遺伝子を目的の遺伝子と一緒に宿主細胞中に導入する。好ましい選択マーカーは、G418、ハイグロマイシン及びメトトレキセートのような薬剤に対する耐性を与えるものを含む。選択マーカーをコードする核酸をflh84g5をコードするものと同じベクター上で宿主細胞中に導入することができ、または別個のベクター上で導入することができる。導入した核酸で安定にトランスフェクトされた細胞を薬剤選択により同定することができる(例えば、選択マーカー遺伝子を含んでいる細胞は生存するが、他の細胞は死ぬ)。
【0087】
flh84g5ポリペプチドを生産する(すなわち、発現させる)ために、培養した原核または真核宿主細胞のような本発明の宿主細胞を用いることができる。従って、本発明はさらに、本発明の宿主細胞を用いてflh84g5ポリペプチドを生産する方法を提供する。一つの態様として、その方法は、flh84g5が生産されるまで適当な培地中で(flh84g5をコードする組換え発現ベクターが導入されている)本発明の宿主細胞を培養することを含んでなる。別の態様として、その方法はさらに、培地または宿主細胞からflh84g5を単離することを含んでなる。
【0088】
また、非ヒトトランスジェニック動物を作製するためにも本発明の宿主細胞を用いることができる。神経系疾患、平滑筋関連疾患、心筋関連疾患及び腺関連疾患のような選択した疾患の有害な症状を改善することができる薬剤または化合物、例えば薬物、製薬等を同定するように設計されたスクリーニングアッセイにおいて非ヒトトランスジェニック動物を用いることができる。例えば、一つの態様として、本発明の宿主細胞は、flh84g5コーディング配列が導入されている受精卵母細胞または胚性幹細胞である。次に、そのような宿主細胞を用いて、外来flh84g5配列がゲノム中に導入されている非ヒトトランスジェニック動物または内在性flh84g5配列が改変されている相同的組換え動物を作製することができる。そのような動物は、flh84g5の機能及び/または活性を研究するため並びにflh84g5活性のモジュレーターを同定及び/または評価するために有用である。本明細書に用いられる場合、「トランスジェニック動物」は、動物の1個またはそれ以上の細胞が導入遺伝子を含有する非ヒト動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはラットまたはマウスのような齧歯類である。トランスジェニック動物の他の例は、ヒト以外の霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ヤギ、ニワトリ、両生類等を含む。導入遺伝子は、トランスジェニック動物が発生する細胞のゲノム中に組込まれる外来DNAであり、それは成熟動物のゲノム中にとどまり、それによりトランスジェニック動物の1つまたはそれ以上の細胞型または組織においてコードした遺伝子産物の発現を導く。本明細書において用いられる場合、「相同的組み換え動物」は、動物の発生前に、内在性遺伝子と動物の細胞、例えば動物の胚性細胞中に導入された外来DNA分子の間の相同的組み換えによりflh84g5遺伝子が改変されている非ヒト動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはマウスである。
【0089】
例えば微量注入、レトロウイルス感染により受精卵母細胞の雄性前核中にflh84g5をコードする核酸を導入し、そしてその卵母細胞を偽妊娠メス仮親動物で発生させることにより本発明のトランスジェニック動物を作製することができる。配列番号:1のヒトflh84g5 cDNA配列を導入遺伝子としてヒト以外の動物のゲノム中に導入することができる。さらに、配列番号:4のラットflh84g5 cDNA配列を導入遺伝子としてラット以外の動物のゲノム中に導入することができる。さらに、(上の第I節においてさらに記述した)ヒトまたはラットflh84g5 cDNAへのハイブリダイゼーションに基づいてマウスflh84g5遺伝子のようなヒトflh84g5遺伝子の非ヒト相同物を単離し、導入遺伝子として用いることができる。また、導入遺伝子の発現効率を上げるためにイントロン配列及びポリアデニル化シグナルを導入遺伝子中に含んでもよい。flh84g5ポリペプチドの発現を特定の細胞に導くために組織特異的調節配列(1つまたは複数)をflh84g5導入遺伝子に機能的に連結することができる。胚操作及び微量注入によりトランスジェニック動物、特にマウスのような動物を作製する方法は当該技術分野において慣例的になっており、例えば、両方ともLeder等による米国特許第4,736,866号及び4,870,009号、Wagner等による米国特許第4,873,191号中並びにHogan、 B.、 Manipulating the Mouse Embryo(Cold Spring Harbor Laboratory Press、 Cold Spring Harbor、 N.Y.、 1986)中に記述されている。他のトランスジェニック動物を作製するために類似した方法を用いる。ゲノム中のflh84g5導入遺伝子の存在及び/または動物の組織もしくは細胞におけるflh84g5 mRNAの発現に基づいてトランスジェニック創始動物を同定することができる。次に、トランスジェニック創始動物を用いて導入遺伝子を保有するさらなる動物を育種することができる。さらに、flh84g5をコードする導入遺伝子を保有するトランスジェニック動物を他の導入遺伝子を保有する他のトランスジェニック動物にさらに交配させることができる。
【0090】
相同的組み換え動物を作製するために、欠失、付加または置換を導入したことによりflh84g5遺伝子を改変する、例えば機能的に破壊するflh84g5遺伝子の少なくとも一部を含有するベクターを調製する。flh84g5遺伝子は、ヒト遺伝子(例えば、配列番号:1のcDNAでスクリーニングしたヒトゲノムライブラリーから単離されたヒトゲノムクローンから)であってもよいが、より好ましくは、配列番号:4もしくは31のラットflh84g5遺伝子またはヒトflh84g5遺伝子の別の非ヒト相同物である。例えば、配列番号:1、4または31のflh84g5 cDNAをプローブとして用いてマウスゲノムDNAライブラリーからマウスflh84g5遺伝子を単離することができる。次に、マウスflh84g5遺伝子を用いてマウスゲノム中の内在性flh84g5遺伝子を改変するために適当な相同的組換えベクターを構築することができる。好ましい態様として、相同的組換え時に、内在性flh84g5遺伝子が機能的に破壊されるようにベクターを設計する(すなわち、もはや機能的ポリペプチドをコードしない;「ノックアウト」ベクターとも呼ばれる)。あるいはまた、相同的組み換え時に、内在性flh84g5遺伝子が突然変異を受けるか、そうでなければ改変されるが、なお機能性ポリペプチドをコードするようにベクターを設計することができる(例えば、上流調節領域を改変してそれにより内在性flh84g5ポリペプチドの発現を改変することができる)。相同的組換えベクターでは、ベクターにより保有される外来flh84g5遺伝子と胚性幹細胞中の内在性flh84g5遺伝子の間で相同的組換えが起こるようにflh84g5遺伝子の改変部分にはその5’及び3’末端でflh84g5遺伝子の付加的核酸が隣接する。隣接する付加的flh84g5核酸は、内在性遺伝子と相同的組換えができるために充分な長さのものである。典型的に、(5’及び3’末端の両方で)数キロ塩基の隣接するDNAをベクター中に含む(相同的組換えベクターの説明については、例えば、Thomas、K.R.及びCapecchi、 M. R.(1987) Cell 51:503を参照)。(例えば、電気穿孔により)ベクターを胚性幹細胞系に導入し、導入したflh84g5遺伝子が内在性flh84g5遺伝子と相同的に組換わっている細胞を選択する(例えば、Li、 E.等(1992)Cell 69:915を参照)。次に、選択した細胞を動物(例えば、マウス)の胚盤胞中に注入して集合キメラを形成する(例えば、Bradley、 A.、 Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach中、 E. J. Robertson、 編集(IRL.Oxford、 1987)pp.113-152を参照)。次に、キメラ胚を適当な偽妊娠メス仮親動物中に移植し、胚を出産させることができる。生殖細胞中に相同的に組換えられたDNAを保有する子孫を用いて、導入遺伝子の生殖細胞系伝達により動物の全ての細胞が相同的に組換えられたDNAを含有する動物を育種することができる。相同的組換えベクター及び相同的組換え動物を構築するための方法はさらにBradley、 A.(1991)Current Opinion in Biotechnology 2:823-829中並びにPCT国際公開WO第90/11354号; WO第91/01140号; WO第92/0968号; 及びWO第93/04169号中に記述されている。

【0091】
別の態様として、導入遺伝子を調節発現できる選択系を含有する非ヒトトランスジェニック動物を作製することができる。そのような系の一例は、バクテリオファージP1のcre/loxP組み換え酵素系である。cre/loxP組み換え酵素系の説明については、例えば、Lakso等(1992)PNAS 89:6232-6236を参照。組み換え酵素系の別の例は、サッカロミセス・セレビシエのFLP組み換え酵素系である(O’Gorman等(1991)Science 251:1351-1555)。導入遺伝子の発現を調節するためにcre/loxP組み換え酵素系を用いる場合、Cre組み換え酵素及び選択したポリペプチドの両方をコードする導入遺伝子を含有する動物が必要である。例えば、選択したポリペプチドをコードする導入遺伝子を含有するものと組み換え酵素をコードする導入遺伝子を含有するものの2匹のトランスジェニック動物を交配させることによる「二重」トランスジェニック動物の構築によりそのような動物を与えることができる。
【0092】
また、本明細書に記述する非ヒトトランスジェニック動物のクローンをWilmut、I.等(1997)Nature 385:810-813並びにPCT国際公開WO第97/07668号及びWO第97/07669号中に記述された方法に従って作製することもできる。簡潔に言えば、トランスジェニック動物からの細胞、例えば体細胞を単離し、そして増殖周期を出てG0期に入るように誘導することができる。次に、例えば電気パルスの使用により、静止細胞を単離した動物と同じ種の動物からの除核卵母細胞に静止細胞を融合することができる。次に、再構成された卵母細胞が桑実胚または胚盤胞に発生するようにそれを培養し、次に、偽妊娠メス仮親動物に移す。このメス仮親動物から生まれた子孫は、細胞、例えば体細胞を単離した動物のクローンである。
III .単離された flh84g5 ポリペプチド及び抗 -flh84g5 抗体
本発明の別の態様は、単離されたflh84g5ポリペプチド及びその生物学的に活性のある部分並びに抗-flh84g5抗体を作製するための免疫原として用いるために適当なペプチドフラグメントに関する。「単離された」または「精製された」ポリペプチドまたはその生物学的に活性のある部分は、組換えDNA技術により生産した場合には細胞材料を、または化学的に合成した時には化学的前駆体もしくは他の化学製品を実質的に含まない。「細胞材料を実質的に含まない」という用語は、生来または組換え的に生産される細胞の細胞成分からポリペプチドが分離されているflh84g5ポリペプチドの調製物を含む。1つの態様として、「細胞材料を実質的に含まない」という用語は、(乾量で)約30%未満の非flh84g5ポリペプチド(本明細書において「混入ポリペプチド」とも呼ばれる)、より好ましくは約20%未満の非flh84g5ポリペプチド、さらにより好ましくは約10%未満の非flh84g5ポリペプチド、そして最も好ましくは約5%未満の非flh84g5ポリペプチド有するflh84g5ポリペプチドの調製物を含む。flh84g5ポリペプチドまたはその生物学的に活性のある部分を組換え的に生産する場合、それは好ましくは培養培地も実質的に含まず、すなわち、培養培地はポリペプチド調製物の容量の約20%未満、より好ましくは約10%未満、そして最も好ましくは約5%未満に相当する。「化学的前駆体もしくは他の化学製品を実質的に含まない」という用語は、ポリペプチドの合成に含まれる化学的前駆体もしくは他の化学製品からポリペプチドが分離されているflh84g5ポリペプチドの調製物を含む。一つの態様として、「化学的前駆体もしくは他の化学製品を実質的に含まない」という用語は、(乾量で)約30%未満の化学的前駆体もしくは非flh84g5化学製品、より好ましくは約20%未満の化学的前駆体もしくは非flh84g5化学製品、さらにより好ましくは約10%未満の化学的前駆体もしくは非flh84g5化学製品、そして最も好ましくは約5%未満の化学的前駆体もしくは非flh84g5化学製品を有するflh84g5ポリペプチドの調製物を含む。好ましい態様として、単離されたポリペプチドまたはその生物学的に活性のある部分は、flh84g5ポリペプチドが由来する同じ動物からの混入ポリペプチドを欠く。典型的に、そのようなポリペプチドは、例えば、ヒト以外の細胞におけるヒトflh84g5ポリペプチドの組換え発現により生産される。
【0093】
本発明の単離されたflh84g5ポリペプチドまたはその一部は、flh84g5リガンド応答細胞におけるflh84g5リガンド応答を改変することができ、またはflh84g5ポリペプチドの天然に存在する非機能的対立遺伝子変異体であってもよい。好ましい態様として、ポリペプチドまたはその一部は、flh84g5リガンド応答細胞におけるflh84g5リガンド応答を改変する能力を維持するように配列番号:2、 5または32のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を含んでなる。ポリペプチドの一部は、好ましくは、本明細書に記述するような生物学的に活性のある部分である。別の好ましい態様として、ヒトflh84g5ポリペプチド(すなわち、配列番号:2のアミノ酸残基1-398)またはラットflh84g5ポリペプチド(すなわち、配列番号:5のアミノ酸残基1-445もしくは配列番号:32のアミノ酸残基1-401)は、それぞれ、配列番号:2、5もしくは32に示したアミノ酸配列または受託番号98902としてATCCR(商標)に寄託したプラスミドのDNAインサートのヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を有する。さらに別の好ましい態様として、flh84g5ポリペプチドは、受託番号98902としてATCCRに寄託したプラスミドのDNAインサートのヌクレオチド配列にハイブリダイズする、例えばストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を有する。さらに別の好ましい態様として、flh84g5ポリペプチドは、受託番号98902としてATCCRに寄託したプラスミドのDNAインサートのヌクレオチド配列に少なくとも約30-35%、好ましくは少なくとも約40-45%、より好ましくは少なくとも約50-55%、なおより好ましくは少なくとも約60-65%、さらにより好ましくは少なくとも約70-75%、さらにより好ましくは少なくとも約80-85%、そして最も好ましくは少なくとも約90-95%またはそれ以上相同なヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を有する。また、本発明の好ましいflh84g5ポリペプチドは、好ましくは、本明細書に記述したflh84g5活性の少なくとも一つを保有する。例えば、本発明の好ましいflh84g5ポリペプチドは、受託番号98902としてATCCRに寄託したプラスミドのDNAインサートのヌクレオチド配列にハイブリダイズする、例えば、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を含み、そしてそれはflh84g5リガンド応答細胞においてflh84g5リガンド応答を改変することができる。
【0094】
別の態様として、flh84g5ポリペプチドは、配列番号:2、5または32のアミノ酸配列に実質的に相同であり、そして配列番号:2、5または32のポリペプチドの機能的活性を保持するが、上の第I節において詳細に記述したように、天然の対立遺伝子変異または突然変異誘発によりアミノ酸配列が異なる。従って、別の態様として、flh84g5ポリペプチドは、配列番号:2、5または32のアミノ酸配列に少なくとも約30-35%、好ましくは少なくとも約40-45%、より好ましくは少なくとも約50-55%、なおより好ましくは少なくとも約60-65%、さらにより好ましくは少なくとも約70-75%、さらにより好ましくは少なくとも約80-85%、そして最も好ましくは少なくとも約90-95%またはそれ以上相同なアミノ酸配列を含んでなり且つ本明細書に記述したflh84g5活性の少なくとも1つを有するポリペプチドである。さらに別の態様として、本発明は、配列番号:2、5または32の全アミノ酸配列に実質的に相同な全長ヒトポリペプチドに関する。さらに別の態様として、本発明は、本明細書に記述したflh84g5ポリペプチドの非機能的な天然に存在する対立遺伝子変異体に関する。そのような対立遺伝子変異体は、典型的に、配列番号:2、5または32のアミノ酸配列の非保存的置換、欠失もしくは挿入または未成熟欠失(premature truncation)を含有する。
【0095】
flh84g5ポリペプチドの生物学的に活性のある部分は、flh84g5ポリペプチドのアミノ酸配列、例えば、配列番号:2、5もしくは32に示したアミノ酸配列またはflh84g5ポリペプチドに相同なポリペプチドのアミノ酸配列由来のアミノ酸配列を含んでなるペプチドを含み、それらは全長flh84g5ポリペプチドまたはflh84g5ポリペプチドに相同な全長ポリペプチドより少ないアミノ酸を含み、そしてflh84g5ポリペプチドの少なくとも1つの活性を示す。典型的に、生物学的に活性のある部分(ペプチド、例えば、長さが例えば、5、 10、 15、 20、 30、 35、 36、 37、 38、 39、 40、 50、 100またはそれ以上のアミノ酸であるペプチド)は、flh84g5ポリペプチドの少なくとも1つの活性を有するドメインまたはモチーフ、例えば膜貫通ドメインを含んでなる。好ましくは、ドメインはヒト由来の膜貫通ドメインであり、そして配列番号:7、 8、 9、 10、 11、 12もしくは13または対応するラット配列に少なくとも約75-80%、好ましくは少なくとも約80-85%、より好ましくは少なくとも約85-90%、そして最も好ましくは少なくとも約90-95%またはそれ以上相同である。好ましい態様として、膜貫通ドメインを含むポリペプチドの生物学的に活性のある部分は、細胞におけるGタンパク質の活性を改変することができ、そして/または細胞、例えばflh84g5リガンド応答細胞、例えば脳細胞におけるflh84g5リガンド応答を改変することができ、それによりflh84g5リガンド応答細胞に有益に作用する。好ましい態様として、生物学的に活性のある部分は、アミノ酸残基34-59(配列番号:7)、73-91(配列番号:8)、109-130(配列番号:9)、152-174(配列番号:10)、197-219(配列番号:11)、360-380(配列番号:12)及び396-416(配列番号:13)または配列番号:14-20及び34-39に示した対応するラット配列により表されるようなflh84g5の膜貫通ドメインを含んでなる。さらに、ポリペプチドの他の領域が欠失している他の生物学的に活性のある部分を組換え技術により作製し、本明細書に記述した1つまたはそれ以上の活性に関して評価することができる。好ましくは、flh84g5ポリペプチドの生物学的に活性のある部分は、生物学的活性を有する1つまたはそれ以上の選択したドメイン/モチーフまたはそれらの一部を含む。
【0096】
好ましくは、組換えDNA技術によりflh84g5ポリペプチドを製造する。例えば、ポリペプチドをコードする核酸分子を(上記のような)発現ベクター中にクローン化し、発現ベクターを(上記のような)宿主細胞中に導入し、そしてflh84g5ポリペプチドを宿主細胞において発現させる。次に、標準的なポリペプチド精製技術を用いて適切な精製スキームにより細胞からflh84g5ポリペプチドを単離することができる。組換え発現の代わりに、標準的なペプチド合成技術を用いてflh84g5ポリペプチド、タンパク質またはペプチドをを化学的に合成することができる。さらに、例えば(以下にさらに記述する)抗-flh84g5抗体を用いて、細胞(例えば、海馬細胞、黒質細胞または耳下腺細胞)から天然のflh84g5ポリペプチドを単離することができる。
【0097】
また、本発明はflh84g5キメラまたは融合ポリペプチドも提供する。本明細書において用いられる場合、flh84g5「キメラポリペプチド」または「融合ポリペプチド」は、非flh84g5ポリペプチドに機能的に連結されたflh84g5ポリペプチドを含んでなる。「flh84g5ポリペプチド」は、flh84g5に相当するアミノ酸配列を有するポリペプチドをさし、一方、「非flh84g5ポリペプチド」は、flh84g5ポリペプチドに実質的に相同ではないポリペプチドに相当するアミノ酸配列を有する異種起源のポリペプチド、例えば、flh84g5ポリペプチドと異なり、そして同じまたは異なる生物由来であるポリペプチドをさす。融合ポリペプチド内で、「機能的に連結された」という用語は、flh84g5ポリペプチドと非flh84g5ポリペプチドが相互にインフレームで融合していることを示すものとする。非flh84g5ポリペプチドをflh84g5ポリペプチドのN末端またはC末端に融合することができる。例えば、一つの態様として、融合ポリペプチドはGST-flh84g5融合ポリペプチドであり、その場合、flh84g5配列はGST配列のC末端に融合している。融合ポリペプチドの別の種類は、酵素融合ポリペプチド、例えばβ−ガラクトシダーゼ融合物、酵母2ハイブリッドGAL融合物、ポリHis融合物及びIg融合物を含むが、それらに限定されない。そのような融合ポリペプチド、特にポリHis融合物は、組換えflh84g5の精製を容易にすることができる。別の態様として、融合ポリペプチドはそのN末端に異種起源のシグナル配列を含有するflh84g5ポリペプチドである。ある種の宿主細胞(例えば哺乳類宿主細胞)では、異種起源のシグナル配列の使用によりflh84g5の発現及び/または分泌を高めることができる。
【0098】
好ましくは、本発明のflh84g5キメラまたは融合ポリペプチドを標準的な組換えDNA技術により生産する。例えば、異なるポリペプチド配列をコードするDNAフラグメントを通常の技術に従って、例えば、連結のために平滑末端化または付着末端化した末端、適切な末端を与えるための制限酵素消化、付着末端の適切な充填、望ましくない連結を避けるためのアルカリホスファターゼ処理及び酵素的連結を用いることにより、一緒にインフレームで連結する。別の態様として、自動DNA合成機を初めとする通常の技術により融合遺伝子を合成することができる。あるいはまた、2つの連続した遺伝子フラグメント間に相補的突出部を生じるアンカープライマーを用いて遺伝子フラグメントのPCR増幅を実施することができ、それを続いてアニーリングし、そして再増幅してキメラ遺伝子配列を生じることができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubel等編集、John Wiley & Sons:1992を参照)。さらに、すでに融合部分(例えばGSTポリペプチド)をコードする多数の発現ベクターが市販されている。融合部分がflh84g5ポリペプチドにインフレームで連結されるようにflh84g5をコードする核酸をそのような発現ベクター中にクローン化することができる。
【0099】
また、本発明は、flh84g5アゴニスト(模倣物)またはflh84g5アンタゴニストのいずれかとして機能するflh84g5ポリペプチドの相同物にも関する。好ましい態様として、flh84g5アゴニスト及びアンタゴニストは、flh84g5ポリペプチドの天然に存在する形態の生物学的活性のサブセットをそれぞれ刺激するかまたは阻害する。従って、限定された機能の相同物での処理により、特定の生物学的効果を引き出すことができる。1つの態様として、ポリペプチドの天然に存在する形態の生物学的活性のサブセットを有する相同物での患者の処置は、flh84g5ポリペプチドの天然に存在する形態での処置に比べて患者における副作用が少ない。
【0100】
flh84g5ポリペプチドの相同物を突然変異誘発、例えばflh84g5ポリペプチドの別個の点突然変異または欠失により作製することができる。本明細書において用いられる場合、「相同物」という用語は、flh84g5ポリペプチドの活性のアゴニストまたはアンタゴニストとして作用するflh84g5ポリペプチドの変異体型をさす。flh84g5ポリペプチドのアゴニストは、flh84g5ポリペプチドの生物学的活性の実質的に同じものまたはサブセットを保持することができる。flh84g5ポリペプチドのアンタゴニストは、例えば、flh84g5ポリペプチドを含むflh84g5カスケードの下流または上流のメンバーに競合的に結合することにより、flh84g5ポリペプチドの天然に存在する形態の1つまたはそれ以上の活性を阻害することができる。従って、本発明の哺乳類flh84g5ポリペプチド及びその相同物は、flh84g5リガンド応答細胞におけるflh84g5リガンド応答の正または負のいずれかのレギュレーターであってもよい。
【0101】
別の態様として、flh84g5ポリペプチドアゴニストまたはアンタゴニスト活性に関してflh84g5ポリペプチドの突然変異体、例えば欠失突然変異体の組み合わせライブラリーをスクリーニングすることにより、flh84g5ポリペプチドの相同物を同定することができる。1つの態様として、核酸レベルでの組み合わせ突然変異誘発によりflh84g5変異体の多様なライブラリーを作製し、多様な遺伝子ライブラリーによりコードする。例えば、可能なflh84g5配列の縮重組が個々のポリペプチドとして、あるいはまたflh84g5配列の組を中に含有する(例えばファージ展示のための)一組のより大きい融合ポリペプチドとして発現できるように合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列に酵素的に連結することによりflh84g5変異体の多様なライブラリーを作製することができる。縮重オリゴヌクレオチド配列から可能なflh84g5相同物のライブラリーを作製するために使用できる様々な方法がある。縮重遺伝子配列の化学合成を自動DNA合成機で実施し、次に、合成遺伝子を適切な発現ベクターに連結することができる。遺伝子の縮重組の使用により、可能なflh84g5配列の所望する組をコードする配列の全てを1つの混合物中に準備することができる。縮重オリゴヌクレオチドを合成する方法は、当該技術分野で既知である(例えばNarang,S.A.(1983) Tetrahedron 39:3;Itakura等(1984) Annu.Rev.Biochem.53:323;Itakura等(1984) Science 198:1056;Ike等(1983) Nucleic Acids Res 11.477を参照)。
【0102】
さらに、flh84g5ポリペプチドの相同物をスクリーニングし、続いて選択するために、flh84g5ポリペプチドコーディングフラグメントのライブラリーを用いてflh84g5フラグメントの多様な集団を作製することができる。1つの態様として、flh84g5コーディング配列の二本鎖PCRフラグメントを分子当たり約1回だけニックが生じる条件下でヌクレアーゼで処理し、二本鎖DNAを変性させ、異なるニック生成物からのセンス/アンチセンス対を含むことができる二本鎖DNAを形成するようにDNAを再生し、再形成した二本鎖からS1ヌクレアーゼでの処理により一本鎖部分を除去し、そして得られたフラグメントライブラリーを発現ベクターに連結することにより、コーディング配列フラグメントのライブラリーを作製することができる。この方法により、flh84g5ポリペプチドの様々な大きさのN末端、C末端及び内部フラグメントをコードする発現ライブラリーを得ることができる。
【0103】
点突然変異または欠失より作製された組み合わせライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするため及び選択した特性を有する遺伝子産物に関してcDNAライブラリーをスクリーニングするためのいくつかの技術が当該技術分野において知られている。そのような技術は、flh84g5ポリペプチドの組み合わせ突然変異誘発により作製された遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングのために適用できる。大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニングするために、容易に高処理量分析ができる、最も一般に用いられる技術は、典型的に、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクター中にクローニングし、得られたベクターのライブラリーで適切な細胞を形質転換し、そして適切な活性を検出することにより産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離を容易にする条件下で組み合わせ遺伝子を発現させることを含む。ライブラリー中の機能的突然変異体の頻度を高める新しい技術のレクルーシブアンサンブル(Recrusive ensemble)突然変異誘発(REM)をスクリーニングアッセイと組み合わせてflh84g5相同物を同定するために用いることができる(Arkin及びYourvan(1992) PNAS 89:7811-7815;Delgrave等(1993) Protein Engineering 6(3)327-331)。
【0104】
1つの態様として、多様なflh84g5ライブラリーを分析するために細胞に基づくアッセイを利用することができる。例えば、通常はflh84g5リガンドに応答する細胞系に発現ベクターのライブラリーをトランスフェクトすることができる。次にトランスフェクトされた細胞をflh84g5リガンドと接触させ、そして例えば細胞内カルシウム濃度を測定することにより、flh84g5リガンドによるシグナリングに対するflh84g5突然変異体の影響を検出することができる。次に、flh84g5リガンド誘導の阻害あるいはまた強化に関して優る細胞からプラスミドDNAを回収し、個々のクローンをさらに特性化することができる。
【0105】
ポリクローナル及びモノクローナル抗体調製のための標準的技術を用いてflh84g5に結合する抗体を作製するための免疫原として、単離されたflh84g5ポリペプチドまたはその一部もしくはフラグメントを用いることができる。全長flh84g5ポリペプチドを用いることができ、あるいはまた、本発明は免疫原として用いるためのflh84g5の抗原性ペプチドフラグメントを提供する。flh84g5の抗原性ペプチドは、配列番号:2、5または32に示したアミノ酸配列の少なくとも8個のアミノ酸残基を含んでなり、そしてペプチドに対して生じた抗体がflh84g5と特異的免疫複合体を形成するようにflh84g5のエピトープを包含する、。好ましくは、抗原性ペプチドは少なくとも10個のアミノ酸残基、より好ましくは少なくとも15個のアミノ酸残基、さらにより好ましくは少なくとも20個のアミノ酸残基、そして最も好ましくは少なくとも30個のアミノ酸残基を含んでなる。抗原性ペプチドにより包含される好ましいエピトープは、ポリペプチドの表面に位置するflh84g5の領域、例えば親水性領域である。
【0106】
典型的には、適当な被験体(例えばウサギ、ヤギ、マウスまたは他の哺乳類)を免疫原で免疫感作することにより抗体を調製するためにflh84g5免疫原を用いる。適切な免疫原性調製物は、例えば、組換え的に発現したflh84g5ポリペプチドまたは化学的に合成したflh84g5ペプチドを含有することができる。調製物はさらにフロイント完全もしくは不完全アジュバントのようなアジュバントまたは同様な免疫刺激剤を含むことができる。免疫原性flh84g5調製物での適当な被験体の免疫感作は、ポリクローナル抗-flh84g5抗体反応を誘導する。
【0107】
従って、本発明の別の態様は、抗-flh84g5抗体に関する。本明細書において用いられる場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性のある部分、すなわち、flh84g5のような抗原に特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含む分子をさす。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性のある部分の例は、抗体をペプシンのような酵素で処理することにより生成することができるF(ab)及びF(ab')2フラグメントを含む。本発明はflh84g5に結合するポリクローナル及びモノクローナル抗体を提供する。本明細書において用いられる場合、「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、flh84g5の特定のエピトープと免疫反応することができる抗原結合部位の1種のみを含む抗体分子の集団をさす。従って、モノクローナル抗体組成物は、典型的に、それが免疫反応する特定のflh84g5ポリペプチドに対して単一の結合親和性を示す。
【0108】
適当な被験体をflh84g5免疫原で免疫感作することによりポリクローナル抗-flh84g5抗体を上記のように調製することができる。固定化したflh84g5を用いて固相酵素免疫検定法(ELISA)でのような標準的技術により、免疫感作した被験体における抗-flh84g5抗体力価を継時的にモニターすることができる。所望される場合、flh84g5に対して誘導される抗体分子を哺乳類から(例えば、血液から)単離し、そしてIgG画分を得るためにプロテインAクロマトグラフィーのような周知の技術によりさらに精製することができる。免疫感作後の適切な時期に、例えば、抗-flh84g5抗体力価が最高である時に、抗体産生細胞を被験体から得、そして最初にKohler及びMilstein(1975) Nature 256:495-497(またBrown等(1981) J.Immumol.127:539-46;Brown等(1980)J.Biol.Chem.255:4980-83;Yeh等(1976)PNAS 76:2927-31;及びYeh等(1982) Int.J.Cancer 29:269-75も参照)により記述されたハイブリドーマ技術、より最近のヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor等、(1983) Immumol Today 4:72)、EBV-ハイブリドーマ技術(Cole等(1985) Monoclonal Antibodies and Cancer Threapy、Alan R.Liss,Inc.、pp.77-96)またはトリオーマ技術のような標準的技術によりモノクローナル抗体を調製するために用いることができる。モノクローナル抗体ハイブリドーマを作製するための技術は周知である(一般に、R.H.Kenneth、Monoclonal Antibodies:A New Dimension In Biological Analysis、Plenum Publishing Corp.、New York、New York (1980);E.A.Lerner(1981) Yale J.Biol.Med.,54:387-402;M.L.Gefter等(1977)Somatic Cell Genet 3:231-36を参照)。簡単に言えば、上記のようにflh84g5免疫原で免疫感作した哺乳類からのリンパ球(典型的には脾臓細胞)に不死細胞系(典型的には骨髄腫)を融合させ、得られたハイブリドーマ細胞の培養上清をスクリーニングして、flh84g5に結合するモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマを同定する。
【0109】
抗-flh84g5モノクローナル抗体を作製する目的のために、リンパ球と不死化細胞系を融合させるために用いられる多くの周知のプロトコールのいずれを適用してもよい(例えば、G.Galfre等(1977) Nature 266:55052;Gafter等、Somatic Cell Genet.上記引用;Lerner,Yale J.Biol.Med.,上記引用;Kenneth,Monoclonal Antibodies、上記引用を参照)。さらに、当業者は、同様に有用であるそのような方法の多数の変形があることを認識する。典型的には、不死細胞系(例えば骨髄種細胞系)はリンパ球と同じ哺乳類種に由来する。例えば、本発明の免疫原性調製物で免疫感作したマウス由来のリンパ球を不死化したマウス細胞系と融合することによりマウスハイブリドーマを作製することができる。好ましい不死細胞系は、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有する培養培地(「HAT培地」)に感受性であるマウス骨髄種細胞系である。標準的技術に従って多数の骨髄種細胞系のいずれか、例えばP3-NS1/1-Ag4-1、P3-x63-Ag8.653またはSp2/O-Ag14骨髄種系を融合相手として用いることができる。これらの骨髄種系はATCCRから入手できる。典型的には、ポリエチレングリコール(「PEG」)を用いてHAT-感受性マウス骨髄種細胞をマウス脾臓細胞と融合させる。次に、融合していない及び非生産的に融合した骨髄種細胞を殺す(融合していない脾臓細胞は、トランスフォームしていないので数日後に死ぬ)HAT培地を用いて、融合から生じたハイブリドーマ細胞を選択する。例えば標準的なELISAアッセイを用いて、flh84g5に結合する抗体に関してハイブリドーマ培養上清をスクリーニングすることにより、本発明のモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ細胞を検出する。
【0110】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを作製する代わりに、組換え組み合わせ免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージ展示ライブラリー)をflh84g5でスクリーニングすることでflh84g5に結合する免疫グロブリンライブラリーメンバーを単離することにより、モノクローナル抗-flh84g5抗体を同定し、単離することができる。ファージ展示ライブラリーを作製し、スクリーニングするためのキットは市販されている(例えば、Pharmacia 組換えファージ抗体システム(Recombinant Phage Antibody System)、カタログ番号27-9400-1;及びStratagene SurfZAP TM(商標)ファージ展示キット(Phage Display Kit)、カタログ番号240612)。さらに、抗体展示ライブラリーを作製し、スクリーニングするために特に容易に使用できる方法および試薬の例は、例えばLander等、米国特許第5,223,409号;Kang等、PCT国際公開第WO92/18619号;Dower等、PCT国際公開第WO 91/17271号;Winter等、PCT国際公開第WO 92/20791号;Markland等、PCT国際公開第WO 92/15679号;Breitling等、PCT国際公開第WO93/01288号;McCafferty等、PCT国際公開第WO92/01047号;Garrard等、PCT国際公開第WO92/09690号;Ladner等、PCT国際公開第WO92/02809号;Fuchs等、(1991) Bio/Technology 9:1370-1372;Hay等、(1992) Hum.Antibod.Hybridomas 3:81-85;Huse等、(1989) Science 246:1275-1281;Griffiths等、(1993) EMBO J 12:725-734;Hawkins等、(1992) J.Mol.Biol.226:889-896;Clarkson等(1991) Nature 352:624-628;Gram等(1992) PNAS 89:3576-3580;Garrad等(1991) Bio/Technology 9:1373-1377;Hoogenboom等(1991) Nuc.Acid Res. 19:4133-4137;Barbas等(1991) PNAS 88:7978-7982;及びMcCafferty等、Nature(1990) 348:552-554中に見いだすことができる。
【0111】
さらに、ヒトおよびヒト以外の両方の部分を含んでなり、標準的な組換えDNA技術を用いて作製することができるキメラ及びヒト化モノクローナル抗体のような組換え抗-flh84g5抗体は本発明の範囲内である。そのようなキメラ及びヒト化モノクローナル抗体を当該技術分野で既知の組換えDNA技術、例えばRobinson等、PCT国際出願第PCT/US86/02269号;Akira等、欧州特許出願第184,187号;Taniguchi,M.、欧州特許出願第171,496号;Morrison等、欧州特許出願第173,494号;Neuberger等、PCT国際公開第WO86/01533号;Cabilly等、米国特許第4,816,567号;Cabilly等、欧州特許出願第125,023号;Better等、(1988) Science 240:1041-1043;Liu等、(1987) PNAS 84:3439-3443;Liu等、(1987) J.Immumol. 139:3521-3526;Sun等、(1987) PNAS 84:214-218;Nishimura等、(1987) Canc.Res.47:999-1005;Wood等、(1985) Nature 314:446-449;及びShaw等、(1988) J.Natl.Cancer Inst.80:1533-1559);Morrison,S.L.(1985) Science 229:1202-1207;Oi等、(1986) BioTechniques 4:214;Winter、米国特許第5,225,539号;Jones等、(1986) Nature 321:552-525;Verhoeyan等、(1988) Science 239:1534;及びBeidler等、(1998) J.Immumol.141:4053-4060中に記述された方法を使用することにより製造することができる。
【0112】
アフィニティークロマトグラフィーまたは免疫沈降法のような標準的な技法によりflh84g5を単離するために抗-flh84g5抗体(例えばモノクローナル抗体)を用いることができる。抗-flh84g5抗体は細胞からの天然のflh84g5及び宿主細胞において発現させた組換え的に生産されたflh84g5の精製を容易にすることができる。さらに、flh84g5ポリペプチドまたはflh84g5ポリペプチドのフラグメントの発現の量及びパターンを評価するために、抗-flh84g5抗体を用いて(例えば細胞ライセートまたは細胞上清中の)flh84g5ポリペプチドを検出することができる。被験体におけるflh84g5代謝回転を同定するためにflh84g5ポリペプチドの循環フラグメントの検出を用いることができる。例えば、与えた処置計画の効能を決定するために、臨床試験方法の一部として組織中のポリペプチドレベルをモニターするために抗-flh84g5抗体を診断的に使用することができる。検出可能な物質に抗体をカップリングする(すなわち、物理的に連結する)ことにより検出を容易にすることができる。検出可能な物質の例は、様々な酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料及び放射性材料を含む。適当な酵素の例は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-グルコシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼを含み;適当な補欠分子族複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンを含み;適当な蛍光材料の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンを含み;発光材料の例はルミノールを含み;生物発光材料の例はルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンを含み、そして適当な放射性材料の例は125I、131I、35Sまたは3Hを含む。
IV.製薬学的組成物
本発明のflh84g5核酸分子、flh84g5ポリペプチド(特にflh84g5のフラグメント)、flh84g5モジュレーター及び抗-flh84g5抗体(本明細書において「活性化合物」とも呼ばれる)を被験体、例えばヒトへの投与のために適当な製薬学的組成物中に含むことができる。そのような組成物は典型的に核酸分子、ポリペプチド、モジュレーターまたは抗体及び製薬学的に許容しうる担体を含んでなる。本明細書に用いられる場合、「製薬学的に許容しうる担体」という用語は、薬剤投与に適合するあらゆる及び全ての溶媒、分散媒質、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等を含むと考えられる。製薬学的に有効な物質に対するそのような媒質及び薬剤の使用は当該技術分野において周知である。あらゆる通常の媒質または薬剤は活性化合物と配合禁忌でない限り、そのような媒質を本発明の組成物に用いることができる。また、補足的活性化合物を組成物中に含んでもよい。
【0113】
本発明の製薬学的組成物をその意図する投与経路に適合するように調合する。投与経路の例は、非経口、例えば静脈内、皮内、皮下、経口(例えば吸入)、経皮(局所)、経粘膜及び直腸投与を含む。非経口、皮内または皮下投与のために用いられる溶液または懸濁液は、以下の成分:注入用水、食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒のような滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗菌剤;アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムのような酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸のようなキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩のようなバッファー及び塩化ナトリウムまたはデキストロースのような張性調整剤を含むことができる。塩酸または水酸化ナトリウムのような酸または塩基でpHを調整することができる。非経口製剤をガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または多用量バイアル中に封入することができる。
【0114】
注入可能な用途のために適当な製薬学的組成物は、(水溶性の場合)滅菌水溶液または分散液、及び滅菌した注入可能な溶液または分散液を必要に応じて調製するための滅菌粉末を含む。静脈内投与のために、適当な担体は生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(商標)(BASF、Parsippany、NJ)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。全ての場合において、組成物は無菌でなければならず、そして容易に注入できる程度に流動性であるべきである。それは製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならず、そして細菌及び真菌のような微生物の混入作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール等)並びにそれらの適当な混合物を含む溶媒または分散媒質であってもよい。例えば、レシチンのようなコーティングの使用により、分散液の場合には必要な粒度の維持により、そして界面活性剤の使用により適切な流動性を保つことができる。様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等により微生物の作用を防止することができる。多くの場合において、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールのようなポリアルコール、塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に含むことにより注入可能な組成物のより長期間の吸収をもたらすことができる。
【0115】
上に挙げた成分のいずれかまたは組み合わせと共に適切な溶媒中に必要量の活性化合物(例えば、flh84g5ポリペプチドまたは抗-flh84g5抗体)を混和し、必要な場合、続いて濾過滅菌することにより滅菌した注入可能な溶液を調製することができる。通例、基本分散媒質及び上に挙げたものからの必要な他の成分を含有する滅菌したビヒクル中に活性化合物を混和することにより分散液を調製する。滅菌した注入可能な溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥であり、それは先に滅菌濾過した溶液からあらゆる付加的な所望する成分を加えた有効成分の粉末をもたらす。
【0116】
一般に、経口組成物は不活性希釈剤または食用担体を含む。それらをゼラチンカプセル剤中に封入するかまたは錠剤に圧縮することができる。経口治療投与の目的のためには、活性化合物を賦形剤と混和し、錠剤、トローチ剤またはカプセル剤の形態で用いることができる。また、口内洗浄剤としての使用のために液体担体を用いて経口組成物を調製することもでき、その場合、液体担体中の化合物を経口的に投与し、切り取り(swished)、そして吐き出すかまたは飲み込む。製薬学的に適合した結合剤及び/または添加剤材料を組成物の一部として含むことができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤等は以下の成分または類似した性質の化合物:微晶質セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチンのような結合剤;澱粉もしくはラクトースのような賦形剤;アルギン酸、Primogelもしくはコーンスターチのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはSterotesのような滑剤;コロイド二酸化ケイ素のような減摩剤(glidant);ショ糖もしくはサッカリンのような甘味料;またはペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジ香料のような香料のいずれも含むことができる。
【0117】
吸入による投与のために、適当な噴射剤、例えば二酸化炭素のような気体を含有する加圧容器もしくはディスペンサー、または噴霧器からエアゾールスプレーの形態で組成物を送達する。
【0118】
また、全身投与は経粘膜または経皮手段によってもよい。経粘膜または経皮投与のために、透過する障壁に適切な浸透剤を製剤中に用いる。そのような浸透剤は一般に当該技術分野において既知であり、例えば、経粘膜投与のためには、溶剤、胆汁塩及びフシジン酸誘導体を含む。鼻スプレーまたは座薬の使用により経粘膜投与を行うことができる。経皮投与のために、活性化合物を当該技術分野において一般に知られているような軟膏、膏薬、ゲルまたはクリームに調合する。
【0119】
また、化合物を直腸送達のために(例えば、ココアバターまたは他のグリセリドのような通常の座薬基剤と共に)座薬または滞留浣腸剤の形態に調製してもよい。
【0120】
一つの態様として、移植及びマイクロカプセル化送達系を初めとする制御放出製剤のような、体から迅速に除去されることから化合物を守る担体を用いて活性化合物を調製する。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸のような生物分解性の生体適合性ポリマーを用いることができる。そのような製剤の調製方法は当業者に明らかである。また、それらの材料をAlza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手してもよい。(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体で感染細胞を標的とするリポソームを初めとする)リポソーム懸濁液も製薬学的に許容しうる担体として用いることができる。例えば、米国特許第4,522,811号に記述されたような、当業者に知られている方法に従ってこれらを調製することができる。
【0121】
投与の容易さ及び投薬量の均一性のために、経口または非経口組成物を単位剤形に調合することが特に有益である。本明細書に用いられる場合、単位剤形は、処置される患者のために単位投薬量として適当な物理的に分割された単位をさし;各単位は、必要な製薬学的担体と会合した適切な治療効果をもたらすために計算された予め定められた量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤形の仕様は、活性化合物の独特な性質及び得られる特定の治療効果、並びに個体の処置のためにそのような活性化合物を調合する当該技術分野に固有の制約により決定され、そしてそれらに直接依存する。
【0122】
本発明の核酸分子をベクター中に挿入し、遺伝子治療ベクターとして用いることができる。例えば、静脈注射、局所投与(米国特許第5,328,470号を参照)によるかまたは定位固定注入(例えば、Chen等(1994)PNAS 91:3054−3057を参照)により遺伝子治療ベクターを患者に送達することができる。遺伝子治療ベクターの製薬学的調製物は、許容しうる希釈剤中に遺伝子治療ベクターを含むことができ、または遺伝子送達ビヒクルが埋め込まれる徐放性マトリックスを含んでなることができる。あるいはまた、完全な遺伝子送達ベクターを組換え細胞から損なわずに生産することができる場合(例えばレトロウイルスベクター)、製薬学的調製物は遺伝子送達系を生産する1つまたはそれ以上の細胞を含むことができる。
【0123】
製薬学的組成物を投与説明書と一緒に容器、パックまたはディスペンサー中に入れることができる。
V.本発明の使用及び方法
本明細書に記述した核酸分子、ポリペプチド、ポリペプチド相同物、モジュレーター及び抗体を1つまたはそれ以上の以下の方法:a)薬物スクリーニングアッセイ;b)特に疾病同定、対立遺伝子スクリーニング及び薬理遺伝学試験における診断アッセイ;c)処置の方法;d)薬理ゲノム学(pharmacogenomics);並びにe)臨床試験中の効果のモニタリングに用いることができる。本発明のflh84g5ポリペプチドは本明細書に記述した1つまたはそれ以上の活性を有し、従って、例えばflh84g5リガンドまたはflh84g5結合相手に結合することでそれを天然に存在するflh84g5ポリペプチドへの結合に利用できなくすることにより、例えばflh84g5リガンド応答細胞におけるflh84g5リガンド応答を調節するために用いることができる。以下にさらに記述するように、(例えば、宿主細胞または遺伝子治療用途において組換え発現ベクターにより)flh84g5ポリペプチドを発現させるため、(例えば、生物学的サンプル中の)flh84g5 mRNAまたはflh84g5遺伝子中の天然に存在するかもしくは組換え的に作製した遺伝子突然変異を検出するため及びflh84g5活性を調節するために本発明の単離された核酸分子を用いることができる。さらに、flh84g5ポリペプチド活性を調節する薬物または化合物をスクリーニングするため及びflh84g5ポリペプチドの不十分な生産または野生型flh84g5に比較して減少した活性を有するflh84g5ポリペプチド型の生産を特徴とする疾患を処置するためにflh84g5ポリペプチドを用いることができる。さらに、flh84g5ポリペプチド、特に生物学的サンプル中に存在するflh84g5のフラグメントを検出し、単離するため及びflh84g5ポリペプチド活性を調節するために本発明の抗-flh84g5抗体を用いることができる。
【0124】
A.薬物スクリーニングアッセイ
本発明は変種のまたは異常なflh84g5核酸発現及び/またはflh84g5ポリペプチド活性を特徴とする(またはそれと関連した)疾患を処置するために用いることができる化合物または薬剤を同定するための方法を提供する。これらの方法は、本明細書において薬物スクリーニングアッセイとも呼ばれ、典型的にflh84g5のアゴニストまたはアンタゴニストである候補/試験化合物または薬剤を、特にflh84g5ポリペプチドと相互作用する(例えば結合する)能力、flh84g5ポリペプチドと標的分子の相互作用を調節する能力並びに/またはflh84g5核酸発現及び/もしくはflh84g5ポリペプチド活性を調節する能力に関してスクリーニングする工程を含む。これらの能力の1つまたはそれ以上を有する候補/試験化合物または薬剤を、変種のまたは異常なflh84g5核酸発現及び/またはflh84g5ポリペプチド活性を特徴とする疾患を処置するための薬物として用いることができる。候補/試験化合物は、例えば、1)Igが末端についた融合ペプチド及びランダムペプチドライブラリーのメンバー(例えば、Lam, K.S.等(1991)Nature 354:82-84;Houghten, R.等(1991)Nature 354:84-86を参照)並びにD-及び/またはL-配置アミノ酸からなる組み合わせ化学により得られる分子ライブラリーを含む、可溶性ペプチドのようなペプチド;2)リンペプチド(例えば、ランダム及び部分的に縮重した、指定リンペプチドライブラリーのメンバー、例えば、Songyang, Z.等(1993)Cell 72:767-778を参照);3)抗体(例えば、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、抗-イディオタイプ、キメラ及び単鎖抗体並びにFab、F(ab’)2、Fab発現ライブラリーフラグメント及び抗体のエピトープ結合フラグメント);並びに4)有機及び無機小分子(例えば、組み合わせ及び天然生成物ライブラリーから得られた分子)を含む。
【0125】
一つの態様として、本発明は、flh84g5ポリペプチドと相互作用する(例えば結合する)候補/試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。典型的に、アッセイは、例えばflh84g5ポリペプチドまたはそのフラグメントに候補/試験化合物が相互作用して(例えば、結合して)複合体を形成できる条件下で、flh84g5ポリペプチドまたはその生物活性フラグメントと候補/試験化合物を合わせ、そして複合体の形成を検出する工程を含む組換え細胞に基づくかまたは無細胞アッセイであり、その場合、flh84g5ポリペプチドまたはそのフラグメントと相互作用する(例えば、結合する)候補化合物の能力は、複合体中の候補化合物の存在により示される。例えば、標準的な免疫検定法を用いて、flh84g5ポリペプチドと候補化合物の間の複合体の形成を定量することができる。
【0126】
別の態様として、本発明は、flh84g5ポリペプチド及びflh84g5ポリペプチドが通常相互作用する分子(標的分子)の間の相互作用(そしておそらくflh84g5活性も)調節する(例えば、刺激するかまたは阻害する)候補/試験化合物を同定するためのスクリーニングアッセイを提供する。そのような標的分子の例は、flh84g5ポリペプチドと同じシグナリング経路のポリペプチド、例えば認識機能シグナリング経路においてまたはflh84g5活性を含む経路において例えばflh84g5ポリペプチドの上流(活性刺激剤または阻害剤の両方を含む)または下流で機能する可能性があるポリペプチド、例えばGタンパク質またはホスファチジルイノシトール代謝回転及び/もしくはホスホリパーゼC活性化に関与する他の相互作用体(interactor)を含む。典型的に、アッセイは、例えば候補化合物の存在がなければ、flh84g5ポリペプチドまたはその生物学的に活性のある部分が標的分子と相互作用する(例えば結合する)条件下で、flh84g5ポリペプチドまたはその生物活性フラグメントを発現する細胞、flh84g5標的分子(例えばflh84g5リガンド)及び候補/試験化合物を合わせ、そしてflh84g5ポリペプチド及び標的分子を含む複合体の形成を検出するかまたはflh84g5ポリペプチドと標的分子の相互作用/反応を検出する工程を含む組換え細胞に基づくかまたは無細胞アッセイである。複合体形成の検出は、例えば、flh84g5ポリペプチドの誘導作用を測定することによる複合体の直接定量を含むことができる。(候補化合物の非存在下で検出されるものに対して)候補化合物の存在下でのflh84g5と標的分子の相互作用の(例えば、flh84g5と標的分子の間の複合体の形成の)減少のような統計学的に有意な変化は、flh84g5ポリペプチドと標的分子の間の相互作用の調節(例えば、刺激または阻害)を表す。例えば、免疫検定法を用いて、flh84g5ポリペプチドと標的分子の間の複合体の形成の調節を定量することができる。
【0127】
無細胞薬物スクリーニングアッセイを実施するためには、flh84g5またはその標的分子のいずれかを固定してポリペプチドの一方または両方の複合体形成していない形態からの複合体の分離を容易にすること並びにアッセイの自動化に対応することが望ましい。反応物を含有するために適当なあらゆる容器中で候補化合物の存在下及び非存在下で標的分子へのflh84g5の相互作用(例えば結合)を成し遂げることができる。そのような容器の例は、マイクロタイタープレート、試験管および微小遠心管を包む。一つの態様として、ポリペプチドをマトリックスに結合できるドメインを付加する融合ポリペプチドを提供することができる。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/flh84g5融合ポリペプチドをグルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical、St.Louis、MO)またはグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレート上に吸着させることができ、次に、それらを(例えば35S標識した)細胞ライセート及び候補化合物と合わせ、そして複合体形成を導く条件下で(例えば、塩及びpHが生理的条件で)混合物をインキュベートする。インキュベーション後に、あらゆる結合していない標識を除くためにビーズを洗浄し、マトリックスを固定し、放射能を直接または複合体を解離した後に上清中で測定する。あるいはまた、複合体をマトリックスから解離させ、SDS−PAGEにより分離し、ビーズ画分中に見出されるflh84g5結合ポリペプチドのレベルを標準的な電気泳動技術を用いてゲルから定量することができる。
【0128】
また、マトリックス上にポリペプチドを固定する他の技術も本発明の薬物スクリーニングアッセイにおいて用いることができる。例えば、ビオチンとストレプトアビジンの結合を利用してflh84g5またはその標的分子のいずれかを固定することができる。当該技術分野において周知の技術(例えば、ビオチニル化キット、Pierce Chemicals、Rockford、IL)を用いてビオチン−NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)からビオチニル化したflh84g5分子を調製し、ストレプトアビジンで被覆した96穴プレート(Pierce Chemical)のウェル中に固定することができる。あるいはまた、flh84g5と反応するが、その標的分子へのポリペプチドの結合を妨げない抗体をプレートのウェルに誘導化し、flh84g5を抗体結合によりウェル中に捕捉することができる。上記のように、flh84g5結合ポリペプチドの調製物及び候補化合物をプレートのflh84g5が存在するウェル中でインキュベートし、ウェル中に捕捉された複合体の量を定量することができる。そのような複合体の検出方法は、GST固定化複合体について上に記述したものに加えて、flh84g5標的分子と反応するか、またはflh84g5ポリペプチドと反応し、標的分子と競合する抗体を用いる複合体の免疫検出;並びに標的分子と関係する酵素活性を検出することによる酵素結合アッセイを包む。
【0129】
さらに別の態様として、本発明は、変種のまたは異常なflh84g5核酸発現またはflh84g5ポリペプチド活性を特徴とする(またはそれと関連する)疾患の処置において使用できる化合物を同定するための方法(例えば、スクリーニングアッセイ)を提供する。この方法は、典型的に、flh84g5核酸の発現またはflh84g5ポリペプチドの活性を調節する化合物または薬剤の能力をアッセイすることにより変種のまたは異常なflh84g5核酸発現またはflh84g5ポリペプチド活性を特徴とする疾患を処置するための化合物を同定する工程を含む。変種のまたは異常なflh84g5核酸発現またはflh84g5ポリペプチド活性を特徴とする疾患は本明細書中に記述されている。flh84g5核酸の発現またはflh84g5ポリペプチドの活性を調節する化合物または薬剤の能力をアッセイする方法は典型的には細胞に基づくアッセイである。例えば、flh84g5を含む経路によりシグナルを伝達するリガンドに感受性である細胞を候補化合物の存在下及び非存在下でflh84g5ポリペプチドを過剰発現するように誘導することができる。flh84g5依存的応答の統計学的に有意な変化(刺激または阻害のいずれか)をもたらす候補化合物を同定することができる。一つの態様として、flh84g5核酸の発現またはflh84g5ポリペプチドの活性を細胞において調節し、(ホスファチジルイノシトール代謝回転のような)目的の読み出しに対する候補化合物の影響を測定する。例えば、flh84g5依存的シグナルカスケードに応答してアップ−またはダウン−レギュレートされる遺伝子の発現をアッセイすることができる。好ましい態様として、そのような遺伝子の調節領域、例えば、5’の隣接プロモーター及びエンハンサー領域を容易に検出できる遺伝子産物をコードする(ルシフェラーゼのような)検出可能なマーカーに機能的に連結する。また、例えば、免疫ブロッティングにより、flh84g5またはflh84g5標的分子のリン酸化も測定することができる。
【0130】
あるいはまた、細胞を候補化合物と接触させ、そしてその細胞におけるflh84g5 mRNAまたはポリペプチドの発現を測定する方法においてflh84g5発現のモジュレーター(例えば、変種のまたは異常なflh84g5核酸発現またはflh84g5ポリペプチド活性を特徴とする疾患を処置するために用いることができる化合物)を同定することができる。候補化合物の存在下でのflh84g5 mRNAまたはポリペプチドの発現のレベルを候補化合物の非存在下でのflh84g5 mRNAまたはポリペプチドの発現のレベルと比較する。次に、この比較に基づいて候補化合物をflh84g5核酸発現のモジュレーターとして同定し、異常なflh84g5核酸発現を特徴とする疾患を処置するために用いることができる。例えば、flh84g5 mRNAまたはポリペプチドの発現が候補化合物の非存在下よりその存在下でより多い(統計学的に有意により多い)場合、その候補化合物をflh84g5 核酸発現の刺激剤として同定する。あるいはまた、flh84g5核酸発現が候補化合物の非存在下よりその存在下でより少ない(統計学的に有意により少ない)場合、その候補化合物をflh84g5核酸発現のインヒビターとして同定する。flh84g5 mRNAまたはポリペプチドを検出するために本明細書に記述した方法により細胞におけるflh84g5核酸発現のレベルを測定することができる。
【0131】
本発明のさらに別の態様として、flh84g5に結合するかまたはそれと相互作用し(「flh84g5−結合タンパク質」または「flh84g5−bp」)、flh84g5ポリペプチド活性を調節する他のタンパク質を同定するために、ツーハイブリッドアッセイ(例えば、米国特許第5,283,317号; Zervos等(1993)Cell 72:223-232; Madura等(1993) J.Biol.Chem. 268: 12046-12054; Bartel等(1993)Biotechniques 14:920-924; Iwabuchi等(1993)Oncogene 8:1693-1696;及びBrent WO94/10300を参照)において「餌タンパク質」としてflh84g5ポリペプチドまたはそのフラグメントを用いることができる。また、そのようなflh84g5−結合タンパク質は、例えばflh84g5経路の上流または下流要素としてflh84g5ポリペプチドによるシグナルの伝播にも関与していると思われる。
【0132】
ツーハイブリッド系は、分離可能なDNA結合および活性化ドメインからなる大部分の転写因子のモジュール性質に基づく。Batel, P.等、「Using the Two-Hybrid Systerm to Detect Protein-Protein Interactions」、Cellular Interactions inDevelopment: A Practical Approach中、Hartley, D.A.編集(Oxford University Press、Oxford、1993)pp.153-179。簡潔に言えば、このアッセイは2種の異なるDNA構築物を利用する。一方の構築物では、flh84g5をコードする遺伝子を既知の転写因子(例えばGAL−4)のDNA結合ドメインをコードする遺伝子に融合する。もう一方の構築物では、同定されていないタンパク質(「餌食」または「サンプル」)をコードするDNA配列のライブラリーからのDNA配列を既知の転写因子の活性化ドメインをコードする遺伝子に融合する。「餌」及び「餌食」タンパク質がインビボで相互作用することができ、flh84g5依存的複合体を形成する場合、転写因子のDNA結合及び活性化ドメインは接近する。この接近により、転写因子に応答する転写調節部位に機能的に連結されているレポーター遺伝子(例えばLacZ)を転写することができる。レポーター遺伝子の発現を検出することができ、機能的転写因子を含有する細胞コロニーを単離し、flh84g5と相互作用するタンパク質をコードするクローン化された遺伝子を得るために用いることができる。
【0133】
これらの薬物スクリーニングアッセイにより同定されたflh84g5ポリペプチド活性及び/またはflh84g5核酸発現のモジュレーターを例えば、神経系疾患、平滑筋関連疾患、心筋関連疾患及び腺関連疾患を処置するために用いることができる。これらの処置方法は、flh84g5ポリペプチド活性及び/または核酸発現のモジュレーターを例えば上の第IV節において記述したような製薬学的組成物中でそのような処置を必要とする患者、例えば本明細書に記述した疾患にかかっている患者に投与する工程を含む。
【0134】
b.診断アッセイ
本発明はさらに、生物学的サンプル中のflh84g5またはそのフラグメントの存在を検出するための方法を提供する。その方法は、flh84g5の存在が生物学的サンプルにおいて検出されるように、flh84g5ポリペプチドまたはmRNAを検出することができる化合物または薬剤と生物学的サンプルを接触させることを含む。flh84g5 mRNAを検出するための好ましい薬剤は、flh84g5 mRNAにハイブリダイズすることができる標識したまたは標識可能な核酸プローブである。核酸プローブは、例えば、配列番号:1、4もしくは31の全長flh84g5 cDNAまたは少なくとも15、30、50、100、250もしくは500ヌクレオチドの長さで且つストリンジェントな条件下でflh84g5 mRNAに特異的にハイブリダイズするために十分なオリゴヌクレオチドのようなその一部であってもよい。flh84g5ポリペプチドを検出するための好ましい薬剤は、flh84g5ポリペプチドに結合することができる標識したまたは標識可能な抗体である。抗体はポリクローナル、またはより好ましくはモノクローナルであってもよい。完全な抗体またはそのフラグメント(例えば、FabまたはF(ab’)2)を用いることができる。プローブまたは抗体に関して「標識したまたは標識可能な」という用語は、プローブまたは抗体に検出可能な物質をカップリングする(すなわち、物理的に連結する)ことによるプローブまたは抗体の直接的標識、並びに直接的に標識される別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接的標識を包含すると考えられる。間接的標識の例は、蛍光的に標識された二次抗体を用いる一次抗体の検出及び蛍光的に標識されたストレプトアビジンで検出することができるようなビオチンでのDNAプローブの末端標識を含む。「生物学的サンプル」という用語は、被験体から単離された組織、細胞および生物学的液体並びに被験体内に存在する組織、細胞および液体を包むと考えられる。すなわち、インビトロ及びインビボで生物学的サンプル中のflh84g5 mRNAまたはポリペプチドを検出するために本発明の検出方法を用いることができる。例えば、flh84g5 mRNAを検出するためのインビトロ技術は、ノーザンハイブリダイゼーション及びインサイチューハイブリダイゼーションを含む。flh84g5ポリペプチドを検出するためのインビトロ技術は、固相酵素免疫検定法(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈降法及び免疫蛍光法を含む。あるいはまた、標識した抗-flh84g5抗体を被験体に導入することにより被験体においてインビボでflh84g5ポリペプチドを検出することができる。例えば、放射性マーカーで抗体を標識することができ、被験体におけるその存在及び位置を標準的な画像形成技術により検出することができる。被験体において発現されたflh84g5の対立遺伝子変異体を検出する方法及びサンプル中のflh84g5ポリペプチドのフラグメントを検出する方法が特に有用である。また、本発明は、生物学的サンプル中のflh84g5の存在を検出するためのキットも包含する。例えば、キットは、生物学的サンプル中のflh84g5ポリペプチドまたはmRNAを検出することができる標識したまたは標識可能な化合物または薬剤;サンプル中のflh84g5の量を測定するための手段;及びサンプル中のflh84g5の量を基準と比較するための手段を含んでなる。化合物または薬剤を適当な容器中に包装することができる。キットはさらにflh84g5 mRNAまたはポリペプチドを検出するためにキットの使用説明書を含んでなることができる。
【0135】
また、flh84g5遺伝子中の天然に存在する遺伝子突然変異を検出することにより突然変異した遺伝子を有する被験体が本明細書に記述したような変種のまたは異常なflh84g5核酸発現またはflh84g5ポリペプチド活性を特徴とする疾患の危険にさらされているかどうかを決定するためにも本発明の方法を用いることができる。好ましい態様として、それらの方法は、被験体からの細胞のサンプルにおいて、flh84g5ポリペプチドをコードする遺伝子の完全な状態に影響を及ぼす少なくとも1つの改変を特徴とする遺伝子突然変異の有無またはflh84g5遺伝子の誤った発現を検出することを含む。例えば、(1)flh84g5遺伝子からの1個またはそれ以上のヌクレオチドの欠失;(2)flh84g5遺伝子への1個またはそれ以上のヌクレオチドの付加;(3)flh84g5遺伝子の1個またはそれ以上のヌクレオチドの置換;(4)flh84g5遺伝子の染色体再編成;(5)flh84g5遺伝子のメッセンジャーRNA転写産物のレベルの改変;(6)ゲノムDNAのメチル化パターンのような、flh84g5遺伝子の異常な修飾;(7)flh84g5遺伝子のメッセンジャーRNA転写産物の非野生型スプライシングパターンの存在;(8)flh84g5ポリペプチドの非野生型レベル;(9)flh84g5遺伝子の対立遺伝子の喪失;並びに(10)flh84g5ポリペプチドの不適切な翻訳後修飾のうち少なくとも1つの存在を確かめることによりそのような遺伝子突然変異を検出することができる。本明細書に記述するように、flh84g5遺伝子中の突然変異を検出するために用いることができる当該技術分野において既知の多数のアッセイ技術がある。
【0136】
ある態様として、突然変異の検出は、アンカーPCRまたはRACE PCRのようなポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、米国特許第4,683,195号及び第4,683,202号を参照)、あるいはまた、ライゲーション連鎖反応(LCR)(例えば、Landegran等(1988)Science 241:1077-1080;及びNakazawa等(1994)PNAS 91:360-364を参照)におけるプローブ/プライマーの使用を含み、後者はflh84g5遺伝子中の点突然変異を検出するために特に有用である可能性がある(Abravaya等(1995)Nucleic Acids Res.23:675-682を参照)。この方法は、被験体から細胞のサンプルを集め、サンプルの細胞から核酸(例えば、ゲノム、mRNAまたは両方)を単離し、flh84g5遺伝子(存在する場合)のハイブリダイゼーション及び増幅が起こるような条件下でflh84g5遺伝子に特異的にハイブリダイズする1個またはそれ以上のプライマーと核酸サンプルを接触させ、そして増幅産物の有無を検出か、または増幅産物の大きさを検出し、その長さをコントロールサンプルと比較する工程を含むことができる。
【0137】
別の態様として、サンプル細胞からのflh84g5遺伝子中の突然変異を制限酵素切断パターンの変化により同定することができる。例えば、サンプル及びコントロールDNAを単離し、(場合により)増幅し、1種またはそれ以上の制限エンドヌクレアーゼで消化し、そしてフラグメント長の大きさをゲル電気泳動により決定し、比較する。サンプルとコントロールDNA間のフラグメント長の大きさの違いは、サンプルDNA中の突然変異を示す。さらに、リボザイム切断部位の発生または喪失により特定の突然変異の存在を評点するために配列特異的リボザイム(例えば、米国特許第5,498,531号を参照)を用いることができる。
【0138】
さらに別の態様として、flh84g5遺伝子を直接シークエンスし、サンプルflh84g5の配列を対応する野生型(コントロール)配列と比較することにより突然変異を検出するために当該技術分野において既知の様々なシークエンス反応のいずれを用いてもよい。シークエンス反応の例は、Maxim及びGilbert((1977)PNAS 74:560)またはSanger((1977)PNAS 74:5463)により開発された技術に基づくものを含む。また、診断アッセイ((1995)Biotechniques 19:448)を実施する場合に、質量分析によるシークエンス法(例えば、PCT国際公開WO第94/16101号;Cohen等(1996)Adv.Chromatogr.36:127-162;及びGriffin等(1993)Appl.Biochem.Biotechnol.38:147-159を参照)を初めとする様々な自動シークエンス法を利用することができる。
【0139】
flh84g5遺伝子中の突然変異を検出するための他の方法は、切断剤からの保護を用いてRNA/RNAまたはRNA/DNA二重鎖中のミスマッチ塩基を検出する方法(Myers等(1985)Science 230:1242; Cotton等(1988)PNAS 85:4397; Saleeba等(1992)Meth. Enzymol. 217:286-295)、突然変異体及び野生型核酸の電気泳動移動度を比較する方法(Orita等(1989)PNAS 86:2766;Cotton(1993)Mutat Res 285:125-144;及びHayashi(1992)Genet Anal Tech Appl 9:73-79)、及び変性勾配ゲル電気泳動(Myers等(1985)Nature 313:495)を用いて変性剤の勾配を含有するポリアクリルアミドゲルにおける突然変異体または野生型フラグメントの移動をアッセイする方法を含む。点突然変異を検出するための他の技術の例は、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択的増幅及び選択的プライマー伸長を含む。
【0140】
C.処置の方法
本発明の別の態様は、変種のまたは異常なflh84g5核酸発現及び/またはflh84g5ポリペプチド活性を特徴とする(またはそれと関連する)疾病または疾患にかかっている患者、例えばヒトを処置するための方法に関する。これらの方法は、処置が起こるように患者にflh84g5モジュレーター(アゴニストまたはアンタゴニスト)を投与する工程を含む。「変種のまたは異常なflh84g5発現」という用語は、非野生型のflh84g5ポリペプチドの発現または非野生型レベルのflh84g5ポリペプチドの発現をさす。変種のまたは異常なflh84g5活性は、非野生型のflh84g5活性または非野生型レベルのflh84g5活性をさす。flh84g5ポリペプチドは、神経伝達物質、例えばアセチルコリンまたはカルニチンのようなアセチルコリン様分子の放出の調節;平滑筋収縮の調節;心筋収縮の調節;及び腺、例えば外分泌腺機能の調節を含む経路に関与するので、変種のまたは異常なflh84g5活性または発現は、正常な神経伝達物質、例えばアセチルコリンまたはカルニチンのようなアセチルコリン様分子の放出;正常な平滑筋;及び心筋収縮;並びに正常な腺、例えば外分泌腺機能を妨げる。異常なまたは変種のflh84g5活性または発現を特徴とする疾患または疾病の限定しない例は、神経系関連疾患、例えば中枢神経系関連疾患を含む。神経系関連疾患の例は、記憶喪失、失行、失認、健忘失名詞障害(amnestic dysnomia)健忘空間失見当識、クリューバー・ビューシー症候群、アルツハイマー関連記憶喪失(Eglen R.M.(1996)Pharmacol. and Toxicol.. 78(2):59-68;Perry E.K.(1995) Brain and Cognition 28(3):240-58)及び学習傷害のような認識疾患、例えば記憶及び学習疾患;意識に影響を及ぼす疾患、例えば幻視、知覚障害またはレビ小体痴呆と関連した譫妄(delelium-delilium?);分裂情動性障害(Dean B.(1996)Mol. Psychiatry 1(1):54-8)、気分変動を有する精神分裂病(Bymaster F.P.(1997)J.Clin.Psychiatry 58(suppl.10):28-36; Yeomans J.S.(1995) Neuropharmacol, 12(1):3-16; Reimann D.(1994) J.Psychiatric Res.28(3):195-210)、うつ病性疾患(一次または二次);情動性疾患(Janowsky D.S.(1994)Am.J.Med.Genetcs 54(4):335-44);睡眠疾患(Kumura F.(1997)J.Neurophysiol. 77(2):709-16)、例えば、うつ病(Riemann D.(1994)J.Psychosomatic Res. 38 Suppl. 1:15-23;Bourgin P.(1995)Neuroreport 6(3):532-6)、逆説睡眠異常(Sakai K.(1997) Eur. J. Neuroscience 9(3):415-23)、睡眠覚醒及び睡眠中の体温または呼吸抑制異常(Shuman S.L.(1995) Am. J. Physiol. 269(2 Pt 2): R308-17; Mallick B.N.(1997) Brain Res. 750(1-2):311-7)を患っている患者における例えばREM睡眠異常を含む。神経系関連疾患の他の例は、痛み生成機構に影響を及ぼす疾患、例えば過敏性腸症候群に関連する痛み(Mitch C.H.(1997)J. Med. Chem. 40(4:538-46; Shannon H.E.(1997) J. Pharmac. and Exp. Therapeutics 281(2):884-94; Bouaziz H.(1995) Anesthesia and Analgesia 80(6):1140-4; もしくはGuimaraes A.P.(1994) Brain Res. 647(2):220-30)または胸痛;運動疾患(Monassi C.R.(1997) Physiol and Behav. 62(1):53-9)、例えばパーキンソン病関連運動疾患(Finn M.(1997) Pharmacol. Biochem. & Behavior 57(1-2):243-9; Mayorga A.J.(1997)Pharmacol. Biochem. & Behavior 56(2):273-9); 食行動疾患、例えばインシュリン分泌過多関連肥満症(Maccario M.(1997) J. Endocrinol. Invest. 20(1):8-12; Premawardhana L.D.(1994) Clin. Endocrinol. 40(5):617-21);または飲水疾患(drinking disorders)、例えば糖尿病性多渇症(Murzi E.(1997) Brain Res. 752(1-2):184-8; Yang X.(1994) Pharmacol. Biochem, & Behavior 49(1):1-6)を含む。異常なまたは変種のflh84g5活性または発現を特徴とするかまたはそれと関連した疾患または疾病のなおさらなる例は、過敏性腸症候群、憩室疾患、尿失禁、食道無弛緩症または慢性閉塞性気道疾患のような平滑筋関連疾患;病的徐脈もしくは頻脈、不整脈、粗動もしくは細動のような心筋関連疾患;または口腔乾燥症もしくは糖尿病のような腺関連疾患を含む。本明細書に用いられる場合、「処置する」または「処置」という用語は、疾患または疾病、例えば異常なまたは変種のflh84g5ポリペプチド活性またはflh84g5核酸発現を特徴とするかまたはそれと関連した疾患または疾病の少なくとも1つの不都合な作用または症状の減少または軽減をさす。
【0141】
本明細書に用いられる場合、flh84g5モジュレーターは、flh84g5核酸発現及び/またはflh84g5ポリペプチド活性を調節することができる分子である。例えば、flh84g5モジュレーターはflh84g5核酸発現を調節、例えばアップレギュレート(活性化/作動)またはダウンレギュレート(抑制/相殺)することができる。別の例として、flh84g5モジュレーターはflh84g5ポリペプチド活性を調節(例えば、刺激/作動または阻害/相殺)することができる。flh84g核酸発現を阻害することにより変種のまたは異常な(非野生型)flh84g5核酸発現及び/またはflh84g5ポリペプチド活性を特徴とする(またはそれと関連した)疾患または疾病を処置することが望ましい場合、flh84g5モジュレーターは、本明細書に記述したようなアンチセンス分子、例えばリボザイムであってもよい。flh84g5核酸発現を阻害するために用いることができるアンチセンス分子の例は、開始コドンも含む配列番号:1の5’非翻訳領域の部分に相補的なアンチセンス分子及び配列番号:1、4または31の3’非翻訳領域の部分に相補的なアンチセンス分子を含む。配列番号:1の5’非翻訳領域の部分に相補的であり、そして開始コドンも含むアンチセンス分子の例は、配列番号:1のヌクレオチド280ないし296に相補的なヌクレオチドを含む核酸分子である。このアンチセンス分子は以下のヌクレオチド配列:5’ CCTGCGGGGCCATGGAG 3’(配列番号:21)を有する。配列番号:1の3’非翻訳領域の部分に相補的なアンチセンス分子の例は、配列番号:1のヌクレオチド1629ないし1645に相補的なヌクレオチドを含む核酸分子である。このアンチセンス分子は以下の配列:5’ GTGGCCCACCAGAGCCT 3’(配列番号:22)を有する。配列番号:1の3’非翻訳領域の部分に相補的なアンチセンス分子のさらなる例は、配列番号:1のヌクレオチド1650ないし1666に相補的なヌクレオチドを含む核酸分子である。このアンチセンス分子は以下の配列:5’ CAGCCACGCCTCTCTCA 3’(配列番号:23)を有する。配列番号:4の5’非翻訳領域の部分に相補的であり、そして開始コドンも含むアンチセンス分子の例は、配列番号:4のヌクレオチド766ないし783に相補的なヌクレオチドを含む核酸分子である。このアンチセンス分子は以下のヌクレオチド配列:5’ GCCTGCTGGGCCATGGAG 3’(配列番号:24)を有する。配列番号:4の3’非翻訳領域の部分に相補的なアンチセンス分子の例は、配列番号:4のヌクレオチド2113ないし2128に相補的なヌクレオチドを含む核酸分子である。このアンチセンス分子は以下の配列:5’TGAGCAGCTGCCCCAC 3’(配列番号:25)を有する。配列番号:4の3’非翻訳領域の部分に相補的なアンチセンス分子のさらなる例は、配列番号:4のヌクレオチド2133ないし2148に相補的なヌクレオチドを含む核酸分子である。このアンチセンス分子は以下の配列:5’ CTGAGGCCAGGCCCTT 3’(配列番号:26)を有する。
【0142】
また、flh84g5核酸発現を阻害するflh84g5モジュレーターは、flh84g5核酸発現を阻害する小分子または他の薬物、例えば本明細書に記述したスクリーニングアッセイを用いて同定される小分子または薬物であってもよい。flh84g核酸発現を刺激することにより変種のまたは異常な(非野生型)flh84g5核酸発現及び/またはflh84g5ポリペプチド活性を特徴とする(またはそれと関連した)疾患または疾病を処置することが望ましい場合、flh84g5モジュレーターは、例えば、flh84g5をコードする核酸分子(例えば、配列番号:1、4または31のヌクレオチド配列に相同なヌクレオチド配列を含んでなる核酸分子)またはflh84g5核酸発現を刺激する小分子もしくは他の薬物、例えば本明細書に記述したスクリーニングアッセイを用いて同定される小分子(ペプチド)もしくは薬物であってもよい。
【0143】
あるいはまた、flh84g5ポリペプチド活性を阻害することにより変種のまたは異常な(非野生型)flh84g5核酸発現及び/またはflh84g5ポリペプチド活性を特徴とする(またはそれと関連した)疾患または疾病を処置することが望ましい場合、flh84g5モジュレーターは、抗-flh84g5抗体またはflh84g5ポリペプチド活性を阻害する小分子もしくは他の薬物、例えば本明細書に記述したスクリーニングアッセイを用いて同定される小分子もしくは薬物であってもよい。flh84g5ポリペプチド活性を刺激することにより変種のまたは異常な(非野生型)flh84g5核酸発現及び/またはflh84g5ポリペプチド活性を特徴とする(またはそれと関連した)疾患または疾病を処置することが望ましい場合、flh84g5モジュレーターは、活性のあるflh84g5ポリペプチドもしくはその一部(例えば、配列番号:2、5もしくは32のアミノ酸配列もしくはその一部に相同なアミノ酸配列を有するflh84g5ポリペプチドもしくはその一部)またはflh84g5ポリペプチド活性を刺激する小分子もしくは他の薬物、例えば本明細書に記述したスクリーニングアッセイを用いて同定される小分子もしくは薬物であってもよい。
【0144】
本発明の一つの態様は、細胞付随活性を調節するための方法に関する。これらの方法は、細胞付随活性が薬剤の非存在下での細胞の細胞付随活性(例えば、ホスファチジルイノシトール代謝)に対して改変されるようにflh84g5ポリペプチド活性またはflh84g5核酸発現を調節する薬剤(または薬剤の有効量を含む組成物)と細胞を接触させることを含む。本明細書に用いられる場合、「細胞付随活性」は、細胞の正常なまたは異常な活性または機能をさす。細胞付随活性の例は、ホスファチジルイノシトール代謝回転、タンパク質のような分子の生産または分泌、収縮、増殖、移動、分化及び細胞生存を含む。好ましい態様として、細胞は脳の神経細胞、例えば海馬細胞である。「改変される」という用語は、本明細書において用いられる場合、細胞付随活性、特にホスファチジルイノシトール代謝回転及びホスホリパーゼC活性化の変化、例えば増加または減少をさす。一つの態様として、薬剤はflh84g5ポリペプチド活性またはflh84g5核酸発現を刺激する。そのような刺激剤の例は、活性のあるflh84g5ポリペプチド、細胞中に導入されているflh84g5をコードする核酸分子及びflh84g5ポリペプチド活性またはflh84g5核酸発現を刺激し且つ本明細書に記述した薬物スクリーニングアッセイを用いて同定される調節剤を含む。別の態様として、薬剤はflh84g5ポリペプチド活性またはflh84g5核酸発現を阻害する。そのような阻害剤の例は、アンチセンスflh84g5核酸分子、抗−flh84g5抗体及びflh84g5ポリペプチド活性またはflh84g5核酸発現を阻害し且つ本明細書に記述した薬物スクリーニングアッセイを用いて同定される調節剤を含む。、これらの調節方法をインビトロで(例えば、細胞を薬物と培養することにより)、あるいはまた、インビボで(例えば、薬物を患者に投与することにより)実施することができる。好ましい態様として、調節方法をインビボで実施し、すなわち、患者、例えば哺乳類、例えばヒト内に細胞は存在し、そして患者は異常なまたは変種のflh84g5ポリペプチド活性またはflh84g5核酸発現を特徴とするかまたはそれと関連した疾患または疾病にかかっている。
【0145】
処置の方法に用いる核酸分子、ポリペプチド、flh84g5モジュレーター、化合物等を本明細書に記述した適切な製薬学的組成物中に含み、その分子、ポリペプチド、モジュレーターまたは化合物等がその意図される機能を果たすことができる経路により患者に投与することができる。また、投与の経路の例は第IV節で本明細書中に記述されている。
【0146】
d.薬理ゲノム学
異常なflh84g5活性に関連した疾患(例えばCNS疾患)を(予防的にまたは治療的に)処置するために、本明細書に記述したスクリーニングアッセイにより同定されるようなflh84g5活性(例えばflh84g5遺伝子発現)に対して刺激または阻害作用を有する試験/候補化合物またはモジュレーターを個体に投与することができる。そのような処置と共に、個体の薬理ゲノム学(すなわち、個体の遺伝子型と外来化合物または薬物に対するその個体の反応の関係の研究)を考慮することができる。治療薬の代謝の違いは、用量と薬理学的に活性のある薬物の血中濃度の関係を変えることにより激しい毒性または治療の失敗をもたらす可能性がある。従って、個体の薬理ゲノム学により個体の遺伝子型の考慮に基づいて予防的または治療的処置のために有効な化合物(例えば薬物)を選択することができる。さらに、適切な投薬量及び治療計画を決定するためにそのような薬理ゲノム学を用いることができる。従って、個体におけるflh84g5ポリペプチドの活性、flh84g5核酸の発現またはflh84g5遺伝子の突然変異の内容を決定してそれにより個体の治療的または予防的処置のために適切な化合物(1つまたはそれ以上)を選択することができる。
【0147】
薬理ゲノム学は、患者において変わってしまった薬物素因及び異常な作用による薬物に対する反応の臨床的に有意な遺伝的変動を扱う。例えば、Eichelbaum、M.、Clin Exp Pharmacol Physiol、1996、23(10-11):983-985及びLinder、M.W.、Clin Chem、1997、43(2):254-266を参照。一般に、2つの型の薬理ゲノム学疾患を区別することができる。薬物が身体に対して作用する様式を変える1個の単一因子として伝達される遺伝的疾患(変わってしまった薬物作用)か、または身体が薬物に対して作用する様式を変える複数の単一因子として伝達される遺伝的疾患(変わってしまった薬物代謝)。これらの薬理ゲノム学疾患は、稀な欠損または多型のいずれかとして起こる可能性がある。例えば、グルコース−6−リン酸脱水素酵素欠損症(G6PD)は一般的な遺伝性酵素欠損症であり、その場合、主な臨床的合併症は酸化剤薬物(抗マラリア薬、スルホンアミド、鎮痛剤、ニトロフラン)の摂取及びソラマメの消費後の溶血である。
【0148】
例示的態様として、薬物代謝酵素の活性は薬物作用の強さ及び期間の両方の主要な決定要素である。薬物代謝酵素(例えば、N−アセチルトランスフェラーぜ2(NAT2)、並びにチトクロームP450酵素 CYP2D6及びCYP2C19)の遺伝子多型の発見は、標準的で安全な用量の薬物を服用した後に患者が予想される薬物効果を得ないかまたは過大な薬物反応及び激しい毒性を示すことがある理由に関して説明を与えている。これらの多型は集団において2つの表現型、多量代謝体(extensive metabolizer)(EM)及び少量代謝体(poor metabolize)(PM)で表される。PMの罹患率は別個の集団間で異なる。例えば、CYP2D6をコードする遺伝子は非常に多型であり、そしていくつかの突然変異がPMにおいて同定されており、それらは全て機能的なCYP2D6の欠如をもたらす。CYP2D6及びCYP2C19の少量代謝体は、標準的な用量を与えられた場合に過大な薬物反応及び副作用を極めて頻繁に経験する。代謝物が有効な治療成分である場合、PMは、そのCYP2D6で形成される代謝物モルヒネによりもたらされるコデインの鎮痛効果に関して示されるように、治療応答を示さない。他の極端な状態は、標準的な用量に応答しないいわゆる超迅速代謝体である。最近、超迅速代謝の分子的根拠がCYP2D6遺伝子増幅によることが同定されている。
【0149】
従って、個体におけるflh84g5ポリペプチドの活性、flh84g5核酸の発現またはflh84g5遺伝子の突然変異の内容を決定してそれにより患者の治療的または予防的処置のために適切な薬剤(1つまたはそれ以上)を選択することができる。さらに、患者の薬物応答性表現型の同定に薬剤代謝酵素をコードする多型対立遺伝子の遺伝子型決定を適用するために薬理ゲノム学研究を用いることができる。この知識は、投薬または薬物選択に適用される場合、不都合な反応または治療の失敗を回避することができ、従って、本明細書に記述した典型的なスクリーニングアッセイのいずれかにより同定されるモジュレーターのようなflh84g5モジュレーターで患者を処置する場合に治療または予防効率を高めることができる。
【0150】
e.臨床試験中の効果のモニタリング
flh84g5の発現または活性に対する化合物(例えば、薬物)の影響(例えば、flh84g5リガンド応答細胞に対するflh84g5リガンドの作用を調節する能力)のモニタリングを基礎的な薬物スクリーニングだけでなく、臨床試験においても適用することができる。例えば、低下したflh84g5遺伝子発現、ポリペプチドレベルまたはダウンレギュレートされたflh84g5活性を示す患者の臨床試験において、flh84g5遺伝子発現、ポリペプリドレベルを上げるか、またはflh84g5活性をアップレギュレートする本明細書に記述したようなスクリーニングアッセイにより決定された薬剤の有効性をモニターすることができる。あるいはまた、増加したflh84g5遺伝子発現、ポリペプチドレベル、またはアップレギュレートされたflh84g5活性を示す患者の臨床試験において、flh84g5遺伝子発現、ポリペプチドレベルを下げるか、またはflh84g5活性をダウンレギュレートするスクリーニングアッセイにより決定された薬剤の有効性をモニターすることができる。そのような臨床試験において、flh84g5及び好ましくは例えば神経系関連疾患に関与している他の遺伝子の発現または活性を特定の細胞のflh84g5リガンド応答性の「表示」またはマーカーとして用いることができる。
【0151】
例えば、限定としてではなく、(例えば、本明細書に記述したようなスクリーニングアッセイにおいて同定された)flh84g5活性を調節する化合物(例えば薬物または小分子)での処置により細胞において調節されるflh84g5を初めとする遺伝子を同定することができる。従って、例えば、臨床試験において、CNS疾患に対する化合物の効果を研究するために、細胞を単離し、RNAを調製し、そしてflh84g5及びその疾患に関与する他の遺伝子の発現レベルに関して分析することができる。遺伝子発現のレベル(すなわち、遺伝子発現パターン)を本明細書に記述したようなノーザンブロット分析もしくはRT−PCRにより、あるいはまた、本明細書に記述した方法のいずれかにより、生産されるポリペプチドの量を測定することにより、またはflh84g5もしくは他の遺伝子の活性レベルを測定することにより定量することがでできる。このように、遺伝子発現パターンは、化合物に対する細胞の生理学的応答を示すマーカーとして役立つ可能性がある。従って、化合物で個体を処置する前及びその間の様々な時点でこの応答状態を決定することができる。
【0152】
好ましい態様として、本発明は、(i)化合物の投与に前に患者から投与前サンプルを得;(ii)投与前サンプル中のflh84g5ポリペプチドの発現、mRNAまたはゲノムDNAのレベルを検出し;(iii)患者から1個またはそれ以上の投与後サンプルを得;(iv)投与後サンプル中のflh84g5ポリペプチドの発現または活性、mRNAまたはゲノムDNAのレベルを検出し;(v)投与前サンプル中のflh84g5ポリペプチドの発現または活性、mRNAまたはゲノムDNAのレベルを投与後のサンプルまたは複数のサンプル中のflh84g5ポリペプチド、mRNAまたはゲノムDNAと比較し;そして(vi)相応して患者への化合物の投与を変える工程を含んでなる、化合物(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣物、ポリペプチド、ペプチド、核酸、小分子または本明細書に記述したスクリーニングアッセイにより同定される他の薬物候補)での患者の処置の有効性をモニタリングする方法を提供する。例えば、flh84g5の発現または活性を検出されたものより高いレベルまで上げるため、すなわち、薬剤の有効性を上げるために化合物の増加した投与が望ましい場合がある。あるいはまた、flh84g5の発現または活性を検出されたものより低いレベルまで下げるため、すなわち、化合物の有効性を下げるために薬剤の減少した投与が望ましい場合がある。
【0153】
VI.部分 flh84g5 配列の使用
本明細書において同定されるcDNA配列の一部またはフラグメント(及び対応する完全な遺伝子配列)をポリヌクレオチド試薬として多様に用いることができる。例えば、これらの配列を:(a)染色体上にそれらのそれぞれの遺伝子をマッピングし;従って、遺伝病と関連する遺伝子領域の位置を突き止めるため;(b)微量の生物学的サンプルから個体を同定するため(組織タイピング);及び(c)生物学的サンプルの司法同定を助けるために用いることができる。これらの用途を下の節において記述する。
【0154】
a.染色体マッピング
いったん遺伝子の配列(または配列の一部)が単離されると、この配列を用いて染色体上にその遺伝子の位置をマッピングすることができる。この工程は染色体マッピングと呼ばれる。従って、染色体上にflh84g5遺伝子の位置をそれぞれマッピングするために本明細書に記述したflh84g5配列の一部またはフラグメントを用いることができる。染色体へのflh84g5配列のマッピングは、疾病と関連する遺伝子とこれらの配列を相関させることにおける重要な第一段階である。
【0155】
簡潔に言えば、flh84g5配列からPCRプライマー(好ましくは15-25bpの長さ)を調製することによりflh84g5遺伝子を染色体にマッピングすることができる。ゲノムDNA中の1個より多いエキソンにまたがらず、従って増幅工程を複雑にしないプライマーを迅速に選択するためにflh84g5配列のコンピューター分析を用いることができる。次に、これらのプライマーを個々のヒト染色体を含有する体細胞ハイブリッドのPCRスクリーニングのために用いることができる。flh84g5配列に対応するヒト遺伝子を含有するハイブリッドのみが増幅フラグメントを生じる。
【0156】
異なる哺乳類(例えば、ヒト及びマウス細胞)からの体細胞を融合することにより体細胞ハイブリッドを調製する。ヒト及びマウス細胞のハイブリッドは増殖し、分裂するにつれて、任意の順序で徐々にヒト染色体を喪失するが、マウス染色体を保持する。マウス細胞は特定の酵素を欠くので増殖できないが、ヒト細胞は増殖できる培地を用いることにより、必要な酵素をコードする遺伝子を含有する1個のヒト染色体が保持される。様々な培地を用いることにより、ハイブリッド細胞系のパネルを樹立することができる。パネル中の各細胞系は、単一のヒト染色体または少数のヒト染色体のいずれか及び一組の完全なマウス染色体を含有し、特定のヒト染色体への個々の遺伝子の容易なマッピングを可能にする(D’Eustachio P.等(1983)Science 220:919-924)。また、転座および欠失を有するヒト染色体を用いることによりヒト染色体のフラグメントのみを含有する体細胞ハイブリッドを製造することもできる。
【0157】
体細胞ハイブリッドのPCRマッピングは、特定の染色体に特定の配列を定めるための迅速な方法である。1台のサーマルサイクラーを用いて1日あたり3またはそれ以上の配列を定めることができる。オリゴヌクレオチドプライマーを設計するためにflh84g5配列を用いて、特定の染色体からのフラグメントのパネルで次位置決定(sublocalization)を行うことができる。flh84g5配列をその染色体にマッピングするために同様に用いることができる他のマッピング方法は、インサイチューハイブリダイゼーション(Fan、Y.等(1990)PNAS 87:6223-27中に記述される)、標識したフローソーティングした染色体での前スクリーニング及び染色体特異的cDNAライブラリーへのハイブリダイゼーションによる前選択を含む。
【0158】
1段階で正確な染色体位置を与えるために中期染色体散在物へのDNA配列の蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)をさらに用いることができる。紡錘体を壊すコルセミドのような化学物質により分裂が中期に止められている細胞を用いて染色体散在物を作製することができる。染色体をトリプシンでしばらくの間処理し、次に、ギムザで染色することができる。明暗のバンドのパターンが各染色体上に現れ、その結果、染色体を個々に同定することができる。500または600塩基程度の短いDNA配列でFISH技術を用いることができる。しかしながら、1,000塩基より大きいクローンは、簡単な検出のために十分なシグナル強度で独特な染色体位置に結合する可能性がより高い。好ましくは1,000塩基、より好ましくは2,000塩基が合理的な時間量で良好な結果を得るために十分である。この技術の総説については、Verma等、Human Chromosomes: A Manual of Basic Techniques(Pergamon Press)、New York、1988)を参照。
【0159】
単一の染色体もしくはその染色体上の単一部位に印を付けるために染色体マッピングのための試薬を個々に用いることができ、または複数の部位及び/もしくは複数の染色体に印を付けるために一団の試薬を用いることができる。実際には、遺伝子の非コーディング領域に対応する試薬がマッピング目的のために好ましい。コーディング配列はおそらく遺伝子ファミリー内で保存されており、従って、染色体マッピング中の交差ハイブリダイゼーションの機会を増やす。
【0160】
いったん配列を正確な染色体位置にマッピングすると、染色体上の配列の物理的位置を遺伝子地図データと相関させることができる。(そのようなデータは、例えば、Johns Hopkins University Welch Medical Libraryを通してオンラインで利用できる、V. McKusick、 Mendelian Inheritance in Man中に見い出される)。次に、例えば、Egeland、J.等(1987)Nature、325:783-787中に記述される連鎖分析(物理的に隣接する遺伝子の共遺伝)により、同じ染色体領域にマッピングされた遺伝子と疾病の間の関係を同定することができる。
【0161】
さらに、flh84g5遺伝子と関連した疾病に冒された個体と冒されていない個体間のDNA配列の違いを決定することができる。突然変異が冒された個体のいくつかまたは全てで認められるが、冒されていない個体では認められない場合、その突然変異は特定の疾病の原因因子であると思われる。冒された個体と冒されていない個体の比較は、一般に、染色体散在物から明白であるかまたはそのDNA配列に基づくPCRを用いて検出可できる欠失または転座のような、染色体中の構造変化をまず捜すことを含む。最終的には、突然変異の存在を確かめるため及び突然変異を多型と区別するために数個体からの遺伝子の完全なシークエンスを実施することができる。
【0162】
b.組織タイピング
また、微量の生物学的サンプルから個体を同定するために本発明のflh84g5配列を用いることもできる。例えば、米国陸軍は、その人員の同定のために制限断片長多型(RFLP)の使用を考慮している。この技術では、個体のゲノムDNAを1種またはそれ以上の制限酵素で消化し、そしてサザンブロット上でプローブで調べて同定のために独特なバンドを生じる。この方法は、失われるか、交換されるかまたは奪われる可能性があり、陽性の同定を困難にする「認識票(Dog Tags)」の現在の制約を欠点として持たない。本発明の配列は(米国特許5,272,057に記述される)RFPLのさらなるDNAマーカーとして有用である。
【0163】
さらに、個体のゲノムの選択した部分の実際の塩基ごとのDNA配列を決定する別の技術を提供するために本発明の配列を用いることができる。例えば、本明細書に記述したflh84g5配列を用いて配列の5’及び3’末端から2個のPCRプライマーを調製することができる。次に、これらのプライマーを用いて個体のDNAを増幅し、続いてそれをシークエンスすることができる。
【0164】
各個体は対立遺伝子の違いのためにそのようなDNA配列の独特な一組を持つので、このように調製された個体からの対応するDNA配列のパネルは独特な個体の同定を与えることができる。個体及び組織からそのような同定配列を得るために本発明の配列を用いることができる。本発明のflh84g5配列はヒトゲノムの部分を独特に示す。対立遺伝子変異はこれらの配列のコーディング領域においてある程度、そして非コーディング領域においてより大きい程度に起こる。個々のヒト間の対立遺伝子変異は各500塩基当たり約1回の頻度で起こると概算される。個体からのDNAを同定目的のために比較することができる基準として本明細書に記述した配列の各々をある程度用いることができる。非コーディング領域にはより多数の多型が存在するので、個体を識別するためにより少ない配列が必要である。配列番号:1、4及び31の非コーディング配列は、各々100塩基の非コーディング増幅配列を生じるおそらく10〜1,000プライマーの一団で陽性個体の同定を都合よく与えることができる。配列番号:3、6及び33のもののような予測されるコーディング配列を用いる場合、陽性個体の同定のためのプライマーのより適切な数は500−2,000であるとみられる。
【0165】
本明細書に記述したflh84g5配列からの一団の試薬を個体の独特な同定データベースを作製するために用いる場合、それらの同じ試薬を後でその個体からの組織を同定するために用いることができる。独特な同定データベースを用いて、生存するかもしくは死亡した個体の陽性の同定を極めて少量の組織サンプルから行うことができる。
【0166】
c.司法生物学における部分 flh84g5 配列の使用
DNAに基づく同定技術を司法生物学においても用いることができる。司法生物学は、例えば、犯罪の加害者を確かに同定するための手段として犯罪現場で見い出された生物学的証拠の遺伝子タイピングを使用する科学分野である。そのような同定を行うために、PCR技術を用いて犯罪現場で見い出された組織、例えば毛髪もしくは皮膚、または体液、例えば血液、唾液もしくは精液のような非常に少量の生物学的サンプルから採取されるDNA配列を増幅することができる。次に、増幅配列を基準と比較することができ、それにより生物学的サンプルの起源を同定することができる。
【0167】
本発明の配列を用いてヒトゲノム中の特定の遺伝子座を標的とするポリヌクレオチド試薬、例えばPCRプライマーを与えることができ、それは例えば別の「同定マーカー」(すなわち、特定の個体に固有の別のDNA配列)を提供することによりDNAに基づく司法同定の信頼性を高めることができる。上記のように、実際の塩基配列情報を制限酵素で生成したフラグメントにより形成されるパターンの正確な代わりとして同定のために用いることができる。非コーディング領域にはより多数の多型が存在し、この技術を用いて個体を識別することをより容易にするので、配列番号:1、4及び31の非コーディング領域を標的とする配列はこの用途のために特に適切である。ポリヌクレオチド試薬の例は、flh84g5配列またはその一部、例えば、少なくとも20塩基、好ましくは少なくとも30塩基の長さを有する配列番号:1、4及び31の非コーディング領域由来のフラグメントを含む。
【0168】
さらに、特定の組織、例えば脳組織を同定するために、例えばインサイチューハイブリダイゼーション技術において用いることができるポリヌクレオチド試薬、例えば標識されたまたは標識可能なプローブを与えるために本明細書に記述したflh84g5配列を用いることができる。これは、司法病理学者が未知の起源の組織を与えられる場合に非常に有用であるはずである。種により、そして/または器官の種類により組織を同定するためにそのようなflh84g5プローブのパネルを用いることができる。
【0169】
同様に、汚染に関して組織培養物をスクリーニングする(すなわち、培養物中の異なる種類の細胞の混合物の存在に関してスクリーニングする)ためにこれらの試薬、例えば、flh84g5プライマーまたはプローブを用いることができる。
【0170】
本発明を以下の実施例によりさらに具体的に説明し、それらは制限すると解釈されるべきではない。本願の全体にわたって引用される全ての参考文献、特許出願、特許及び公開特許出願の内容は引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0171】
実施例
実施例1:ラット及びヒトflh84g5 cDNAの同定
本実施例では、適切なcDNAライブラリーをスクリーニングすることによりflh84g5核酸分子を同定した。より具体的には、ラット前頭皮質のオリゴdTでプライミングしたcDNAライブラリーを平板培養し、コロニーを96ウェルプレート中に取った。それらのコロニーを培養し、各ウェルからプラスミドを調製し、各インサートの5’末端をシークエンスした。インサート以外の配列を自動「削除」した後、BLAST配列比較プログラム(BLASTN1.3MP、Altschul等(1990)J. Mol. Biol.215:403)を用いて公開タンパク質データベースに対してそれらのヌクレオチド配列を比較した。この配列比較からの結果を検討して、84g5と称する単一クローンを同定し、その最も高い類似性はラットムスカリン性アセチルコリン受容体M1(mACHR M1;ジーンバンクTM(商標)受託番号P08482)とであった。この配列を含有するクローンを96ウェルプレートから回収し、標準的な方法を用いてプラスミドを調製し、標準的な「コンティグ(contigging)」技術を用いてインサートを完全にシークエンスした。全インサート配列を用いた反復BLAST分析は再び、最も大きい類似性を有するタンパク質データベース中の配列がジーンバンクTM受託番号P08482に相当することを示した。5.000のギャップ加重及び0.100の長さ荷重を用いてGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムを用いてこの配列及びインサート配列を比較した。それらの結果は、最適化した配列整列のために4ギャップの挿入を有する2つの配列間で27.97%の同一性及び49.01%の類似性を示した。その整列は、84g5クローンがP08482配列中に完全にはまたがらず、明らかに分子のN末端領域で約30アミノ酸残基を欠いていることを示した。次に、配列番号:31の残基143−249にまたがるプローブを用いて同じ前頭皮質ライブラリーを再スクリーニングした。これは、配列番号:4に示した全長ラットflh84g5配列の同定をもたらした。公開ヌクレオチドデータベースのBLAST分析により、同等なヒト配列は示されなかった。残基1101ないし1650の間で84g5クローンに類似する一つのマウスESTのみが同定された(ジーンバンクTM受託番号AA118949)。
【0172】
プローブとしてラットcDNAのNci I/Not I制限フラグメントを用いてヒト小脳cDNAライブラリーをスクリーニングすることによりヒトflh84g5核酸分子を同定した。公開領域中のタンパク質及び核酸データベースのBLAST分析は再び、flh84g5核酸分子がmACHR M1配列に最も類似することを示した。また、それらの整列は、mAChR-6核酸分子が全長mACHRポリペプチドをコードすることも示した。
実施例2:flh84g5遺伝子の組織発現
ヒト及びラット組織からのRNAを用いたノーザン分析
レーン当たり2μgのポリA+RNAを含有するヒト脳複数組織ノーザン(MTN)ブロット、ヒトMTN I、II及びIIIブロット並びにラットMTNブロット(Clonetech、Palo Alto、CA)をラットflh84g5ヌクレオチド配列(NciI/NotI制限フラグメント)で調べた。10mlのExpress Hybハイブリダイゼーション溶液(Clonetech、Palo Alto、CA)中でそれらのフィルターを68℃で1時間プレハイブリダイゼーションし、その後、100ngの32P標識したプローブを添加した。Stratagene Prime-Itキット、カタログ番号300392(Clonetech、Palo Alto、CA)を用いてプローブを生成した。ハイブリダイゼーションを68℃で約2時間続けた。フィルターを0.05% SDS/2X SSC溶液中で室温で15分間、次に0.1% SDS/0.1X SSC溶液中で2回50℃で20分間洗浄し、次に、1枚のスクリーンと共にオートラジオグラフィーフィルムに-80℃で一晩感光させた。試験したヒト組織は:心臓、脳(試験した脳の領域は小脳、脳梁、大脳皮質、髄質、後頭極(occipital pole)、前頭葉、側頭葉、被殻、扁桃核、尾状核、海馬、黒質、視床下核及び視床を含んだ)、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、膵臓、脾臓、胸腺、前立腺、精巣、卵巣、小腸、結腸、末梢血白血球、胃、甲状腺、脊髄、リンパ節、気管、副腎及び骨髄を含んだ。試験したラット組織は:心臓、脳、脾臓、肺、肝臓、骨格筋、腎臓及び精巣を含んだ。
【0173】
ヒト全脳、以下のヒト脳領域:小脳、脳梁、大脳皮質、髄質、後頭極、前頭葉、側頭葉、被殻、扁桃核、尾状核、海馬、黒質、視床下核及び視床;並びにラット脳に対する強いハイブリダイゼーションがあり、約3kbのflh84g5遺伝子転写産物がこれらの組織において発現されることを示す。また、ヒト脊髄に対するハイブリダイゼーションもあった。
インサイチューハイブリダイゼーション
インサイチュー分析のために、成体Sprague-Dawleyラットの脳を取り出し、ドライアイス上で凍らせた。脳の10μm厚さの冠状切片をDEPC処理した1Xリン酸緩衝食塩水中4%のホルムアルデヒドで室温で10分間後固定し(postfix)、その後、DEPC 1Xリン酸緩衝食塩水中で2回、そして0.1Mトリエタノールアミン-HCL(pH 8.0)中で1回すすいだ。0.25%無水酢酸-0.1Mトリエタノールアミン-HCl中で10分間インキュベーション後、切片をDEPC 2XSSC(1XSSCは0.015Mクエン酸ナトリウムを加えた0.15M NaClである)中ですすいだ。次に、一連のエタノール洗浄により組織を脱水し、100%クロロホルム中で5分間インキュベートし、次に、100%エタノール中で1分間、そして95%エタノール中で1分間すすぎ、風乾させた。
【0174】
(PCRプライマーF、5’-CAAGAACCCTTTAAGCCAAG(配列番号:27)及びR、5’-GAAGAAGGTAACGCTGAGGA(配列番号:28)で作製した)ラット遺伝子の474bpフラグメント並びに(PCRプライマーF、5’-CAGAACCCCCACCAGATGCC(配列番号:29)及びR、5’-TAGTGGCACAGTGGGTAGAG(配列番号:30)で作製した)ラット遺伝子の529bpフラグメントをコードする35Sで放射性標識した(5 X 107 cpm/ml)cRNAプローブでハイブリダイゼーションを実施した。600mM NaCl、 10mM Tris(pH 7.5)、 1mM EDTA、 0.01%の剪断したサケ精子DNA、0.01%酵母tRNA、0.05%酵母全RNA X1型、1Xデンハルト溶液、50%ホルムアミド、10%デキストラン硫酸、100mMジチオトレイトール、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及び0.1%チオ硫酸ナトリウムを含有する溶液の存在下でプローブを55℃で18時間インキュベートした。
【0175】
ハイブリダイゼーション後、スライドを2X SSCで洗浄した。次に、切片をTNE(10mM Tris-HCl(pH 7.6)、 500mM NaCl及び1mM EDTAを含有する溶液)中で10分間、1ml当たり10μgのRNase Aを含むTNE中で30分間、そして最後にTNE中で10分間37℃で連続してインキュベートした。次に、スライドを室温で2X SSCですすぎ、2X SSCで50℃で1時間洗浄し、0.2X SSCで55℃で1時間、そして0.2X SSCで60℃で1時間洗浄した。次に、一連のエタノール-0.3M酢酸ナトリウム濃縮により切片を迅速に脱水し、その後で風乾させ、Kodak Biomax MR科学的画像形成フィルムに24時間感光させ、続いて、NB-2写真感光乳剤中に浸し、4℃で7日間感光させ、その後で現像し、対比染色した。
【0176】
多数の脳領域において著しいハイブリダイゼーションが見られた。これらは、皮質、尾状被殻、海馬、視床及び小脳を含んだ。高倍率でのこれらの領域の分析により、著しい標識がニューロンの細胞体にわたって見られることが示された。実施例3:細菌細胞における組換えflh84g5ポリペプチドの発現
本実施例では、flh84g5をエシェリキア・コリにおいて組換えグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)融合ポリペプチドとして発現させ、そしてその融合ポリペプチドを単離し、特性化する。具体的には、flh84g5をGSTに融合し、この融合ポリペプチドをエシェリキア・コリ、例えば株PEB199において発現させる。ヒト及びラットflh84g5ポリペプチドはそれぞれ約51.3kDa及び51.2kDaであると予測され、そしてGSTは26kDaであると予測されるので、融合ポリペプチドはそれぞれ約77.3kDa及び77.2kDaの分子量であると予測される。PEB199におけるGST-flh84g5融合ポリペプチドの発現をIPTGで誘導する。誘導したPEB199株の粗細菌ライセートから組換え融合ポリペプチドをグルタチオンビーズでのアフィニィティークロマトグラフィーにより精製する。細菌ライセートから精製したポリペプチドのポリアクリルアミドゲル電気泳動分析を用いて、得られた融合ポリペプチドの分子量を決定する。
実施例4:COS細胞における組換えflh84g5ポリペプチドの発現
COS細胞においてflh84g5遺伝子を発現させるために、Invitrogen Corporation(San Diego、CA)によるpcDNA/Ampベクターを用いる。このベクターはSV40複製起点、アンピシリン耐性遺伝子、エシェリキア・コリ複製起点、CMVプロモーター及びそれに続くポリリンカー領域、並びにSV40イントロン及びポリアデニル化部位を含有する。全flh84g5ポリペプチド及びフラグメントの3’末端にインフレームで融合したHA標識(Wilson等(1984)Cell 37:767)をコードするDNAフラグメントをベクターのポリリンカー領域中にクローン化し、それにより組換えポリペプチドの発現をCMVプロモーターの制御下に置く。
【0177】
プラスミドを構築するために、2個のプライマーを用いてPCRによりflh84g5配列を増幅する。5’プライマーは目的の制限部位及びそれに続く約20ヌクレオチドの開始コドンから始まるflh84g5コーディング配列を含有し;3’末端配列は目的のもう一つの制限部位、翻訳終止コドン、HA標識及びflh84g5コーディング配列の最後の20ヌクレオチドに相補的な配列を含有する。PCR増幅フラグメント及びpcDNA/Ampベクターを適切な制限酵素で消化し、CIAP酵素(New England Biolabs、Beverly、MA)を用いてベクターを脱リン酸する。好ましくは、選択する2つの制限部位は異なり、その結果、flh84g5遺伝子は正しい向きに挿入される。ライゲーション混合物をエシェリキア・コリ細胞(Stratagene Cloning Systems、La Jolla、CAから入手できる株HB101、DH5α、SUREを用いることができる)中に形質転換し、形質転換培養物をアンピシリン培地プレート上で平板培養し、耐性コロニーを選択する。形質転換体からプラスミドDNAを単離し、適切なフラグメントの存在に関して制限分析により調べる。
【0178】
続いて、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈殿法、DEAE-デキストランによるトランスフェクション、リポフェクションまたは電気穿孔を用いてCOS細胞をflh84g5-pcDNA/AmpプラスミドDNAでトランスフェクトする。宿主細胞をトランスフェクトするための他の適当な方法をSambrook、J.、Fritsh、E.F.及びManiatis、T.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual.第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989中に見い出すことができる。放射性標識(NEN、Boston、MAから入手できる35S-メチオニンまたは35S-システインを用いることができる)及びHA特異的モノクローナル抗体を用いる免疫沈降(Harlow、E.及びLane、D.、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1988)によりflh84g5ポリペプチドの発現を検出する。簡潔に言えば、細胞を35S-メチオニン(または35S-システイン)で8時間標識する。次に、培養培地を集め、溶剤(RIPAバッファー、150mM NaCl、 1% NP-40、 0.1% SDS、 0.5% DOC、 50mM Tris、 pH 7.5)を用いて細胞を溶解する。細胞ライセート及び培養培地の両方をHA特異的モノクローナル抗体で沈殿させる。次に、沈殿したポリペプチドをSDS-PAGEにより分析する。
【0179】
あるいはまた、flh84g5コーディング配列を含有するDNAを適切な制限部位を用いてpcDNA/Ampベクターのポリリンカー中に直接クローン化する。得られたプラスミドを上記のようにCOS細胞中にトランスフェクトし、放射性標識及びflh84g5特異的モノクローナル抗体を用いる免疫沈降によりflh84g5ポリペプチドの発現を検出する。
実施例5:ヒト及びラットflh84g5ポリペプチドの特性化
本実施例では、ヒト及びラットflh84g5ポリペプチドのアミノ酸配列を既知のポリペプチドのアミノ酸配列と比較し、様々なモチーフを同定した。
【0180】
アミノ酸配列を図1(配列番号:2)に示すヒトflh84g5ポリペプチドは、445アミノ酸残基を含む新規なポリペプチドである。ヒトflh84g5ポリペプチドは、アミノ酸残基34-59(配列番号:7)、73-91(配列番号:8)、109-130(配列番号:9)、152-174(配列番号:10)、197-219(配列番号:11)、360-380(配列番号:12)及び396-416(配列番号:13)の間に7個の膜貫通ドメインを含有する。BLASTNプログラム(BLASTN1.3MP、Altschul等(1990)J. Mol. Biol. 215:403)を用いてヒトflh84g5のヌクレオチド配列をデータベース問い合わせとして用いた。最も近いヒットはヒト、ラット、マウス及びブタmACHR M1(それぞれ、ジーンバンクTM受託番号P11229、P08482、P12657及びP04761)であった。最も高い類似性は32/70アミノ酸の同一性である。
【0181】
アミノ酸配列を図2(配列番号:5)に示すラットflh84g5ポリペプチドは、445アミノ酸残基を含む新規なポリペプチドである。ラットflh84g5ポリペプチドは、ヒトflh84g5ポリペプチド膜貫通ドメイン1-7(配列番号:7-13)に対応する、アミノ酸残基34-59(配列番号:14)、73-91(配列番号:15)、109-130(配列番号:16)、152-174(配列番号:17)、197-219(配列番号:18)、360-380(配列番号:19)及び396-416(配列番号:20)の間に7個の膜貫通ドメインを含有する。BLASTNプログラム(BLASTN1.3MP、Altschul等(1990)J. Mol. Biol. 215:403)を用いてラットflh84g5のヌクレオチド配列をデータベース問い合わせとして用いた。最も近いヒットはヒト、ラット、マウス及びブタmACHR M1(それぞれ、ジーンバンクTM受託番号P11229、P08482、P12657及びP04761)であった。最も高い類似性は33/70アミノ酸の同一性である。ヒドロパシープロットにより、ラットflh84g5ポリペプチドの膜貫通ドメインがラットmACHR M1のものに類似することが示された。また、細胞内ジスルフィド結合を生じさせるシステイン(配列番号:5の残基63及び44)も保存される。
実施例6:アフリカツメガエル卵母細胞におけるflh84g5の電気生理学的研究
モデル
ラットflh84g5のプラスミドcDNAをpGEMHEA中にサブクローン化した。次に、pGEMHEA中のcDNAをAflIIで直鎖状にし、T7 RNAポリメラーゼを用いてインビトロで転写した。濾胞を含まない単離したアフリカツメガエル(Xenopus)卵母細胞に(10nlの容量中)10ngのflh84g5 cRNAを微量注入した。96mM NaCl、2mM KCl、1.8mM CaCl2、1mMMgCl2、5mMHEPES(pH=7.6)を含有するND96溶液中で卵母細胞を使用前に少なくとも48時間維持した。カルニチンにより引き出される卵母細胞における内因性Ca++活性化Cl-電流を-80mVの保持電位で標準的な2電極電圧−クランプ(clamp)法(TEC-03増幅器、npi)を用いて測定した。電極を3M KClで満たし、それは0.5-3.0MΩの抵抗を有した。(約100μlの容量の)記録室にND96を重力により連続的に灌流させた。様々な濃度のカルニチンを灌流により卵母細胞に30-60秒間与えた。
結果
PI代謝回転に共役したGPCRによる卵母細胞におけるサイトソルCa++の上昇は、内因性Ca++活性化Cl-電流の活性化をもたらす。得られる外側へのCl-電流は、細胞外Ca++濃度にも依存する。flh84g5 cRNAを注入した卵母細胞において、L-カルニチンは、3mMのEC50で、濃度に依存してそのようなCa++活性化Cl-電流(Imax=3-6μA)を誘導する。水を注入した卵母細胞では、高濃度のL-カルニチン(10mMまで)はいかなる電流も誘導しないが、flh84g5を発現する卵母細胞における10mM L-カルニチン誘発電流を細胞外Ca++の除去により阻害できる。10mM D-カルニチンはL-カルニチンで見られたものより少量の電流を誘導する。また、カルニチン類似体のL-アセチルカルニチン(10mM)も少量の電流を誘導する。
【0182】
0.1-1mM ACh、GABA、5-HT、NE、Glu及びDAは、flh84g5 RNAを注入した卵母細胞においていかなる電流も誘導しない。さらに、卵母細胞におけるL-カルニチン誘発電流をムスカリン様アンタゴニストアトロピン(100μM)により妨げることができない。
同等物
当業者は、慣例の実験のみを用いて、本明細書に記述した本発明の特定の態様に対する多数の同等物を認めるか、または確かめることができる。そのような同等物は以下の請求の範囲により包含されるものとする。
【0183】
【0184】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】 ヒトflh84g5ヌクレオチド(配列番号:1)およびアミノ酸(配列番号:2)配列を表す。ヒトflh84g5遺伝子の5'および3'非翻訳領域を含まないコード領域を配列番号:3に表す。
【図2】 ラットflh84g5ヌクレオチド(配列番号:4)およびアミノ酸(配列番号:5)配列を表す。ラットflh84g5遺伝子の5'および3'非翻訳領域を含まないコード領域を配列番号:6に表す。
【図3】 部分的なマウスflh84g5ヌクレオチド(配列番号:31)およびアミノ酸(配列番号:32)配列を表す。マウスflh84g5遺伝子の3'非翻訳領域を含まない部分的コード領域を配列番号:33に表す。

Claims (22)

  1. a)配列番号:2のアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドをコードする核酸分子および
    b)配列番号:5のアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドをコードする核酸分子、並びに、
    c)緊縮条件下で配列番号:1を含んで成る核酸分子とハイブリダイズする核酸分子および
    )緊縮条件下で配列番号:4を含んで成る核酸分子とハイブリダイズする核酸分子であって、かつ、卵母細胞で発現させた際にL−カルニチン、D−カルニチンまたはL−アセチルカルニチンによりCa ++ 活性化Cl - 電流を誘導するポリペプチドをコードする核酸分子、
    から成る群から選択される単離された核酸分子。
  2. さらにベクター核酸配列を含んで成る、請求項1に記載の核酸分子。
  3. さらにヘテロロガスなポリペプチドをコードする核酸配列を含んで成る、請求項1に記載の核酸分子。
  4. 請求項1に記載の核酸分子を含む宿主細胞。
  5. 哺乳動物宿主細胞である、請求項4に記載の宿主細胞。
  6. 請求項1に記載の核酸分子を含む非ヒト哺乳動物宿主細胞。
  7. a)配列表の配列番号:1におけるヌクレオチド291〜1628として示されたオープンリーディングフレーム;および
    b)配列表の配列番号:4におけるヌクレオチド778〜2112として示されたオープンリーディングフレー
    ら成る群から選択される請求項1に記載の単離された核酸分子。
  8. a)配列番号:2のアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドおよび
    b)配列番号:5のアミノ酸配列を含んで成るポリペプチド、並びに、
    c)緊縮条件下で配列番号:1を含んで成る核酸分子とハイブリダイズする核酸分子および
    d)緊縮条件下で配列番号:4を含んで成る核酸分子とハイブリダイズする核酸分子によりコードされかつ、卵母細胞で発現させた際にL−カルニチン、D−カルニチンまたはL−アセチルカルニチンによりCa ++ 活性化Cl - 電流を誘導するポリペプチド
    から成る群から選択された単離されたポリペプチド。
  9. さらにヘテロロガスなアミノ酸配列を含んで成る、請求項8に記載のポリペプチド。
  10. 請求項8に記載のポリペプチドに選択的に結合する抗体。
  11. a)配列番号:2のアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドおよび
    b)配列番号:5のアミノ酸配列を含んで成るポリペプチド、並びに、
    c)緊縮条件下で配列番号:1を含んで成る核酸分子とハイブリダイズする核酸分子および
    )緊縮条件下で配列番号:4を含んで成る核酸分子とハイブリダイズする核酸分子によりコードされ、かつ、卵母細胞で発現させた際にL−カルニチン、D−カルニチンまたはL−アセチルカルニチンによりCa ++ 活性化Cl - 電流を誘導するポリペプチド
    から成る群から選択されるポリペプチドの生成方法であって、核酸分子を発現する条件下で請求項4に記載の宿主細胞を培養する工程を含んで成る上記方法。
  12. サンプル中、
    a)配列番号:2のアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドおよび
    b)配列番号:5のアミノ酸配列を含んで成るポリペプチド、並びに、
    c)緊縮条件下で配列番号:1を含んで成る核酸分子とハイブリダイズする核酸分子および
    )緊縮条件下で配列番号:4を含んで成る核酸分子とハイブリダイズする核酸分子によりコードされ、かつ、卵母細胞で発現させた際にL−カルニチン、D−カルニチンまたはL−アセチルカルニチンによりCa ++ 活性化Cl - 電流を誘導する活性を有するポリペプチド
    から成る群から選択されるポリペプチドの存在の検出法であって、
    (i)サンプルを前記ポリペプチドに選択的に結合する抗体または抗体のエピト−プ結合フラグメントと接触させ;そして
    (ii)抗体または抗体のエピト−プ結合フラグメントをサンプル中のポリペプチドに結合するかどうかを測定する、
    工程を含んで成る上記方法。
  13. 抗体がポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、抗イディオタイプ抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、Fab、F(ab')2およびFab発現ライブラリーフラグメントから成る群より選択される、請求項12に記載の方法。
  14. 試薬が、
    a)配列番号:2のアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドおよび
    b)配列番号:5のアミノ酸配列を含んで成るポリペプチド、並びに、
    c)緊縮条件下で配列番号:1を含んで成る核酸分子とハイブリダイズする核酸分子および
    )緊縮条件下で配列番号:4を含んで成る核酸分子とハイブリダイズする核酸分子によりコードされ、かつ、卵母細胞で発現させた際にL−カルニチン、D−カルニチンまたはL−アセチルカルニチンによりCa ++ 活性化Cl - 電流を誘導するポリペプチド
    に選択的に結合する抗体または抗体のエピト−プ結合フラグメントを含んで成る、請求項12に記載の方法に使用する試薬を含んで成るキット。
  15. サンプル中、
    a)配列番号:1を含んで成る核酸分子および
    b)配列番号:4を含んで成る核酸分子、並びに、
    c)緊縮条件下で配列番号:1を含んで成る核酸分子とハイブリダイズする核酸分子および
    )緊縮条件下で配列番号:4を含んで成る核酸分子とハイブリダイズする核酸分子によりコードされ、かつ、卵母細胞で発現させた際にL−カルニチン、D−カルニチンまたはL−アセチルカルニチンによりCa ++ 活性化Cl - 電流を誘導するポリペプチド
    から成る群から選択されるポリペプチドをコードする核酸分子の存在の検出法であって、
    方法が、
    i)サンプルを配列番号:1もしくは4からなる核酸分子または該核酸分子に相補的である核酸分子の断片であって該核酸分子もしくはその相補鎖に選択的にハイブリダイズする少なくとも15個の塩基からなる核酸プローブまたはプライマーと接触させ;そして
    ii)核酸プローブまたはプライマーがサンプル中の核酸分子に結合するかどうかを測定する、
    工程を含んで成る上記方法。
  16. サンプルがmRNAを含んで成り、そして核酸プローブと接触させられる請求項15に記載の方法。
  17. 試薬が、
    配列番号:1もしくは4からなる核酸分子または該核酸分子に相補的である核酸分子の断片であって該核酸分子もしくはその相補鎖に選択的にハイブリダイズする少なくとも15個の塩基からなる核酸を含んで成る、請求項15に記載の方法に使用する試薬を含んで成るキット。
  18. a)配列番号:2のアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドおよび
    b)配列番号:5のアミノ酸配列を含んで成るポリペプチド、並びに、
    c)緊縮条件下で配列番号:1を含んで成る核酸分子とハイブリダイズする核酸分子および
    )緊縮条件下で配列番号:4を含んで成る核酸分子とハイブリダイズする核酸分子によりコードされるポリペプチドであって、かつ、卵母細胞で発現させた際にL−カルニチン、D−カルニチンまたはL−アセチルカルニチンによりCa ++ 活性化Cl - 電流を誘導するポリペプチド
    から成る群から選択されるポリペプチドに結合する化合物の同定法であって、
    (i)ポリペプチドまたはポリペプチドを発現している細胞を、試験化合物と接触させ;そして
    (ii)ポリペプチドが試験化合物に結合するかどうかを測定する、
    工程を含んで成る上記方法。
  19. 請求項18に記載の方法であって、試験化合物のポリペプチドへの結合が、
    a)試験化合物/ポリペプチド結合の直接的検出による結合の検出;
    b)競合結合アッセイを使用する結合の検出;
    c)卵母細胞で発現させた際にL−カルニチン、D−カルニチンまたはL−アセチルカルニチンによりCa ++ 活性化Cl - 電流を誘導する活性をアッセイに使用する結合の検出、
    から成る群から選択される方法により検出される、上記方法。
  20. a)配列番号:2のアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドおよび
    b)配列番号:5のアミノ酸配列を含んで成るポリペプチド、並びに、
    c)ポリペプチドが緊縮条件下で配列番号:1を含んで成る核酸分子とハイブリダイズする核酸分子および
    )ポリペプチドが緊縮条件下で配列番号:4を含んで成る核酸分子とハイブリダイズする核酸分子であって、かつ、卵母細胞で発現させた際にL−カルニチン、D−カルニチンまたはL−アセチルカルニチンによりCa ++ 活性化Cl - 電流を誘導する活性を有するポリペプチドのホスファチジルイノシトールの代謝回転と共役したL−カルニチン、D−カルニチンまたはL−アセチルカルニチンによりCa ++ 活性化Cl - 電流を誘導する活性をモジュレートする化合物の同定方法であって、
    j)前記ポリペプチドを発現している卵母細胞を、前記ポリペプチドの活性をモジュレートするのに十分な濃度の化合物と接触させる工程を含んで成る上記方法。
  21. 活性がホスファチジルイノシトール代謝回転の上昇と共役したL−カルニチン、D−カルニチンまたはL−アセチルカルニチンによりCa ++ 活性化Cl - 電流の誘導をもたらす、請求項20に記載の方法。
  22. 活性が、ホスファチジルイノシトール代謝回転の低下と共役したL−カルニチン、D−カルニチンまたはL−アセチルカルニチンによりCa ++ 活性化Cl - 電流の誘導をもたらす、請求項20に記載の方法。
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