近年、ディスク駆動装置におけるディスクの面記録密度が向上することに伴い、ディスク駆動装置を用いた民生用ビデオカムコーダ、携帯型オーディオ記録再生装置、デジタルスチルカメラなどのモバイル機器が多く存在している。このモバイル機器は、ユーザにより持ち運ぶことが可能であるため、落下したり、衝撃が与えられる場合がある。なお、ここでは、ディスク面に垂直な方向の力が与えられた状態のことを「落下する」といい、ディスク面に平行な方向の力が与えられた状態のことを「衝撃が与えられる」という。
しかしながら、このモバイル機器に用いられるディスク駆動装置においては、データの記録または再生を行うヘッドが、ディスクの所定のトラック(の位置)に移動し、データの記録または再生を行うため、例えばディスク駆動装置が落下して地面と衝突する場合、ヘッドがディスクと衝突する、いわゆるヘッドスラップ現象により、ディスクやヘッドが破壊されることがある。また、ディスク駆動装置に、外部から衝撃が与えられた場合、ヘッドが、データを記録するトラックとは異なるトラックに移動して、元のデータを消去してしまう恐れがある。
そこで、ディスク駆動装置では、ディスク駆動装置が落下して、地面にしょうとする場合や、外部から衝撃が与えられる場合においても、ディスク駆動装置の信頼性を維持するために、センサが設けられている。
図1は、センサが設けられた従来のディスク駆動装置の構成の一例を示している。なお、図1は、ディスク駆動装置1を上から見た透視図である。
図1のディスク駆動装置1は、シャーシ2と、シャーシ2の外側に設けられた3軸センサ3とから構成される。
シャーシ2は、外部からの力を吸収する材料(緩衝材)であるダンパー材4で覆われている。これにより、シャーシ2における外部からの力を緩和させることができる。
シャーシ2内の略中央には、磁気ディスク11が、ディスククランプ12で、スピンドルモータ13のハブに固定配置されている。これにより、磁気ディスク11は、図1中矢印A方向に高速で回転する。
また、シャーシ2内の図中右下のコーナには、アーム21、ボイスコイルモータ(VCM)22、ピボット23、およびヘッド24から構成されるVCMアクチュエータ14が設けられている。アーム21は、ピボット23を中心として、ディスク11の半径方向、即ち図中矢印B方向に、水平に回動可能なように、図示せぬ軸受などを介して取り付けられている。即ち、アーム21が回動するときの軌跡Cは、円弧である。VCM22は、アーム21の後端(図中右下側の端)に設けられており、アーム21に対する駆動力を発生して、アーム21を回動させる。
ヘッド24は、アーム21の先端(図中右上側の端)に取り付けられており、磁気ディスク11に対して記録または再生を行う。ヘッド24は、記録または再生を行わないとき、ランプ15上に退避される。
シャーシ2内の図中右上には、ヘッドアンプ16が設けられている。ヘッドアンプ16は、ヘッド24により再生した信号(以下、再生信号という)を増幅したり、記録するデータ(以下、記録データという)に対応する電気信号(以下、記録信号という)を生成し、増幅して、ヘッド24に供給する。
また、シャーシ2内の図中右上には、1軸センサ17が設けられている。1軸センサ17は、軌跡Cの略中点の接線Dに平行なM軸の方向の加速度を検出することで本来検出したいB方向の回転角加速度の検出の代用としている。そして、ヘッド24が、磁気ディスク11にデータを記録している場合に、1軸センサ17により検出された加速度により、ディスク駆動装置1に矢印B方向の衝撃が与えられたと判定されたとき、ヘッド24によるデータの記録が禁止(中止)される。これにより、磁気ディスク11にデータを記録する場合、外部から与えられた衝撃により、磁気ディスク11の、データを記録するトラックではない、例えば、そのトラックに隣接するトラックに、データが記録されることを防止することができる。即ち、外部から衝撃が与えられた場合においても、ディスク駆動装置1の信頼性を維持することができる。
しかしながら、1軸センサ17は、M軸の方向の加速度だけを検出するため、ディスク駆動装置1の落下を検知することは困難である。
そこで、図1のディスク駆動装置1では、ダンパー材4で覆われたシャーシ2の外側の近傍に、3軸センサ3が設けられている。
3軸センサ3は、互いに直交するx軸,y軸、またはz軸の各方向の加速度を検出する。ヘッド24が磁気ディスク11上にある場合に、3軸センサ3により検出された加速度により、ディスク駆動装置1が落下していると判定されたとき、ディスク駆動装置1が、落下して、地面に衝突する前に、ヘッド24を、退避領域であるランプ15に移動させ(アンロードさせ)、ヘッドスラップ現象を回避する。これにより、落下後の衝突により強い力が加えられた場合においても、ディスク駆動装置1は、信頼性を維持することができる。
図2は、図1のディスク駆動装置1の機能的構成例を示すブロック図である。
図1のディスク駆動装置1では、磁気ディスク11から再生信号が再生されたり、磁気ディスク11に記録データが記録される。
A/D変換部50には、1軸センサ17により検出された図1中M軸方向の加速度を表す信号(以下、M軸加速度信号という)が、1軸センサ17から供給される。A/D変換部50は、1軸センサ17からのM軸加速度信号を増幅し、そのM軸加速度信号の波形を整形する。そして、A/D変換部50は、そのM軸加速度信号に対してA/D変換を行い、その結果得られるデジタルデータを、M軸加速度データとして、VCM/SPMドライバ51に供給する。なお、ディスク駆動装置1には、A/D変換部50を設けず、VCM/SPMドライバ51が、A/D変換部50の機能をすべて果たすようにしてもよい。
VCM/SPMドライバ51は、サーボ制御部53の制御により、VCM22またはスピンドルモータ13を制御する。VCM/SPMドライバ51は、スピンドルモータ13が所定の速度で回転駆動するように制御する。VCM/SPMドライバ51は、VCM22を制御し、ヘッド24が所定のトラックに移動するように、アーム21を、ピボット23を中心として回動させる。例えば、サーボ制御部53からのヘッド24の退避の指令に応じて、VCM/SPMドライバ51は、VCM22を制御し、ヘッド24をランプ15に移動(退避)させる。また、VCM/SPMドライバ51は、A/D変換部50からのM軸加速度データを、サーボ制御部53に供給する。
サーボ制御部53、リード/ライトチャネル回路54、HDC(Hard Disk Controller)55、およびCPU(Central Processing Unit)56は、互いにバス52を介して接続されている。
ヘッドアンプ16は、ヘッド24からの再生信号を増幅し、増幅後の再生信号をサーボ制御部53に供給する。サーボ制御部53は、その再生信号に基づいて、トラッキングサーボ動作を行う。具体的には、サーボ制御部53は、再生信号から、ヘッド11を所定の位置に制御するための様々なパターンからなるサーボ情報を抽出し、ヘッド24の実際の位置を認識する。そして、サーボ制御部53は、そのヘッド24が実際にいる位置と、記録または再生を行うトラックの位置(目標としていたヘッド24の位置)とのズレを検出し、そのズレを考慮して、目標とするヘッド24の位置(以下、目標移動位置という)を決定する。即ち、サーボ制御部53は、いま検出したズレに基づいて、ヘッド24の目標移動位置のフィードバック制御を行う。
また、サーボ制御部53は、ヘッドアンプ16からの増幅後の再生信号のうち、サーボ情報以外の信号を、バス52を介して、リード/ライトチャネル回路54に供給する。さらに、サーボ制御部53は、リード/ライトチャネル回路54からの所定の処理後の記録データを、ヘッドアンプ16に供給する。ヘッドアンプ16は、その記録データに対応する電気信号(以下、記録信号という)を生成し、増幅して、ヘッド24に供給する。その結果、磁気ディスク11に記録データが記録される。
また、サーボ制御部53は、VCM/SPMドライバ51からのM軸加速度データに基づいて、ディスク駆動装置1に図1中矢印B方向の衝撃が与えられたかどうかを判定し、衝撃が与えられたと判定した場合、ヘッドアンプ16に、ヘッド24への記録信号の供給を禁止させる。即ち、サーボ制御部53は、磁気ディスク11への記録データの記録を禁止する。さらに、サーボ制御部53は、CPU56からバス52を介して供給された退避信号に応じて、VCM/SPMドライバ51にヘッド24の退避を指令する。
リード/ライトチャネル回路54は、サーボ制御部53からの再生信号に対して、A/D変換、復調などの所定の処理を行い、所定の処理後の再生信号を、再生データとして、バス52を介して、HDC55に供給する。また、リード/ライトチャネル回路54は、HDC55からの記録データに対して、変調などの所定の処理を行い、所定の処理後の記録データを、バス52を介して、サーボ制御部53に供給する。
HDC55は、リード/ライトチャネル回路54からの再生データに対して、必要に応じて、エラー訂正を施し、バス52を介して、CPU54に供給する。また、HDC55は、CPU54からの記録データに対して、エラー訂正コード(ECC(Error Correction Code))を追加して、バス52を介して、リード/ライトチャネル回路54に供給する。
CPU56は、例えば、HDC55からの再生データに基づいて、各種の処理を行う。また、CPU56は、例えば、図示せぬメモリからデータを読み出し、記録データとして、バス52を介して、HDC55に供給する。さらに、CPU56は、A/D変換部57からのx軸,y軸、またはz軸の各方向の加速度を表す外部3軸加速度信号に対応する外部3軸加速度データに基づいて、ディスク駆動装置1が落下しているかどうかを判定する。ディスク駆動装置1が落下していると判定された場合、CPU56は、退避信号を、バス52を介して、サーボ制御部53に供給する。
A/D変換部57には、3軸センサ3により検出されたx軸,y軸、またはz軸の各方向の加速度を表す外部3軸加速度信号が、3軸センサ3から供給される。A/D変換部57は、その外部3軸加速度信号を増幅し、波形を整形して、A/D変換を行う。そして、A/D変換部57は、その結果得られるデジタルデータを、外部3軸加速度データとして、CPU56に供給する。
以上のように構成されるディスク駆動装置1では、1軸センサ17が、M軸方向の加速度を検出し、A/D変換部50が、その加速度を表すM軸加速度信号に対応するM軸加速度データを、VCM/SPMドライバ51に供給する(S1)。VCM/SPMドライバ51は、M軸加速度データを、サーボ制御部53に供給し(S2)、サーボ制御部53は、そのM軸加速度データに基づいて、ディスク駆動装置1に図1中矢印B方向の衝撃が与えられたと判定した場合、サーボ制御部53は、ヘッドアンプ16に、ヘッド24への記録信号の供給を禁止させる(S3)。
また、ディスク駆動装置1では、3軸センサ3が、x軸,y軸、またはz軸の各方向の加速度を検出し、A/D変換部57が、その加速度を表す外部3軸加速度信号に対応する外部3軸加速度データを、CPU56に供給する(S11)。CPU56は、外部3軸加速度データに基づいて、落下しているかどうかを判定し、落下していると判定した場合、バス52を介して、サーボ制御部53に退避信号を供給する(S12)。サーボ制御部53は、その退避信号に応じて、VCM/SPMドライバ51に、ヘッド24の退避を指令し(S13)、VCM/SPMドライバ51は、その指令に応じて、VCM22を制御し、ヘッド24をランプ15に退避させる(S14)。
次に、図3を参照して、図2のサーボ制御部53によるトラッキングサーボ動作について説明する。
図3に示すように、サーボ制御部53は、VCM/SPMドライバ51を制御して、VCMアクチュエータ14のアーム21を回動させ、ヘッド24を所定のトラックに移動させる。このとき、各種の定常的、非定常的要因である要因d(例えば、衝撃などの外乱)により、ヘッド24が実際にいる位置と、目標移動位置とにズレが生じる。そこで、サーボ制御部53は、ヘッドアンプ16からの再生信号のサーボ情報に基づいて、ズレを検出し、そのズレに基づいて、ヘッド24の目標移動位置のフィードバック制御を行う。
一方、従来、例えば、装置内の結露を検出する結露センサが設けられ、結露センサにより結露が検出された場合、磁気ディスクを回転させることで、磁気ディスク表面に吸着される水を少なくし、水の付着によるヘッドの破壊を防止するディスク装置がある(例えば、特許文献1参照)。
以下に本発明の実施の形態を説明するが、請求項に記載の構成要件と、発明の実施の形態における具体例との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、請求項に記載されている発明をサポートする具体例が、発明の実施の形態に記載されていることを確認するためのものである。従って、発明の実施の形態中には記載されているが、構成要件に対応するものとして、ここには記載されていない具体例があったとしても、そのことは、その具体例が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、具体例が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その具体例が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
さらに、この記載は、発明の実施の形態に記載されている具体例に対応する発明が、請求項に全て記載されていることを意味するものではない。換言すれば、この記載は、発明の実施の形態に記載されている具体例に対応する発明であって、この出願の請求項には記載されていない発明の存在、すなわち、将来、分割出願されたり、補正により追加される発明の存在を否定するものではない。
請求項1に記載のディスク駆動装置は、
シャーシ(例えば、図4のシャーシ2)の略中央にディスク(例えば、図4の磁気ディスク71)を回転駆動させる回転駆動部(例えば、図4のスピンドルモータ13)が設けられ、前記ディスクに対してデータの記録または再生を行うヘッド(例えば、図4のヘッド24)が取り付けられたアーム(例えば、図4のアーム21)を回動して、前記ヘッドを前記ディスクの半径方向に移動させるアーム駆動部(例えば、図4のVCM22)が、前記シャーシの所定のコーナに設けられたディスク駆動装置(例えば、図4のディスク駆動装置70)において、
互いに直交するX軸,Y軸、およびZ軸の各方向の加速度を検出する加速度検出手段(例えば、図4の3軸センサ81)と、
前記加速度検出手段により検出されたX軸,Y軸、またはZ軸の方向の加速度に基づいて、前記ディスク駆動装置の落下を検出する落下検出手段(例えば、図7のステップS53の処理を実行する図5のCPU104)と、
前記加速度検出手段により検出されたX軸,Y軸、およびZ軸の各方向の加速度のうち、いずれか2つの軸の各方向の加速度に基づいて、前記アームが回動するときの前記ヘッドの軌跡(例えば、図4の軌跡C)である円弧の、前記ヘッドの現在の位置における接線の方向の加速度を求め、その加速度に基づいて、前記ディスク駆動装置に対する衝撃を検出する衝撃検出手段(例えば、図7のステップS32の処理を実行する図5のサーボ制御部102)と
を備えることを特徴とする。
前記X軸、Y軸、またはZ軸のうち、いずれか1つの軸が、前記円弧の平均的な接線(例えば、図4の接線D)に平行である
ことを特徴とする。
請求項3に記載のディスク駆動装置は、
前記ディスクに対するデータの記録を制御する記録制御手段(例えば、図6のステップS33の処理を実行する図5のサーボ制御部102)と、
前記ヘッドを所定の位置に移動させるヘッド制御手段(例えば、図7のステップS54の処理を実行する図5のVCM/SPMドライバ101)と
をさらに備え、
前記記録制御手段は、前記衝撃検出手段により衝撃が検出された場合、前記データの記録を禁止し(例えば、図6のステップS33の処理)、
前記ヘッド制御手段は、前記落下検出手段により落下が検出された場合、前記ヘッドを退避領域に移動させる(例えば、図7のステップS54の処理)
ことを特徴とする。
請求項4に記載のディスク駆動装置は、
前記加速度検出手段により検出されたX軸,Y軸、およびZ軸の各方向の加速度のうち、いずれか2つの軸の各方向の加速度に基づいて、前記ヘッドの位置を決定する決定手段(例えば、図10のステップS73とS74の処理を実行する図5のサーボ制御部102)
をさらに備え、
前記ヘッド制御手段は、前記決定手段により決定された位置に、前記ヘッドを移動させる(例えば、図10のステップS75の処理)
ことを特徴とする。
請求項5に記載のディスク駆動装置は、
前記シャーシは、外部からの力を吸収する緩衝材(例えば、図4のダンパー材4)で覆われている
ことを特徴とする。
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図4は、本発明を適用したディスク駆動装置の一実施の形態の外観構成例を示す図である。なお、図4は、ディスク駆動装置70を上から見た透視図である。また、図4において、図1と同一のものには、同一の符号を付してあり、説明は繰り返しになるので省略する。
図4のディスク駆動装置70では、ディスククランプ12に、アルミ基板の磁気ディスク71が装着されている。
また、ディスク駆動装置70では、シャーシ2の内部に、3軸センサ81が設けられている。3軸センサ81は、互いに直交するX軸,Y軸、またはZ軸の各方向の加速度ax,ay、またはazを検出する。なお、3軸センサ81は、X軸が接線Dに平行となり、かつZ軸が磁気ディスク71のディスク面に垂直となるように、シャーシ2の内部に配置される。
ディスク駆動装置70では、3軸センサ81がダンパー材4で覆われたシャーシ2の内部に配置されるので、ヘッド24におけるX軸,Y軸、またはZ軸の各方向の加速度と、3軸センサ81により検出されるX軸,Y軸、またはZ軸の各方向の加速度ax,ay、またはazとの差分が、3軸センサ81がダンパー材4の外側に配置される場合に比べて、少なくなる。また、X軸が、接線Dに平行となるように、3軸センサ81を配置したので、3軸センサ81により検出された加速度ax,ay、またはazに基づいて、接線Dに平行な方向の加速度を算出する必要がなく、X軸方向の加速度axをそのまま用いて、ディスク駆動装置70に与えられた衝撃(ディスク駆動装置70に対する衝撃)を検出することができる。その結果、衝撃を検出するまでの時間が短くて済む。
図5は、図4のディスク駆動装置70の機能的構成例を示すブロック図である。なお、図2と同一のものについては、繰り返しになるので、説明は省略する。
A/D変換部100には、3軸センサ81により検出された図4中のX軸の方向の加速度axを表すX軸加速度信号が、3軸センサ81から供給される。A/D変換部100は、図2のA/D変換部50と同様に、3軸センサ81からのX軸加速度信号を増幅し、そのX軸加速度信号の波形を整形する。そして、A/D変換部100は、そのX軸加速度信号に対してA/D変換を行い、その結果得られるデジタルデータを、加速度データTxとして、VCM/SPMドライバ101に供給する。
VCM/SPMドライバ101は、図2のVCM/SPMドライバ51と同様に、サーボ制御部102の制御により、VCM22またはスピンドルモータ13を制御する。例えば、サーボ制御部102から供給されるヘッド24の退避の指令に応じて、VCM/SPMドライバ101は、VCM22を制御し、ヘッド24をランプ15に退避させる。また、VCM/SPMドライバ101は、A/D変換部100からの加速度データTxを、サーボ制御部102に供給する。
サーボ制御部102には、図2のサーボ制御部53と同様に、ヘッドアンプ16から増幅後の再生信号が供給される。サーボ制御部102は、その再生信号に基づいて、トラッキングサーボ動作を行う。具体的には、サーボ制御部102は、再生信号からサーボ情報を抽出し、ヘッド24の実際の位置を認識する。そして、サーボ制御部102は、そのヘッド24が実際にいる位置と、目標移動位置とのズレを検出し、その検出したズレに基づいて、ヘッド24の目標移動位置のフィードバック制御を行うとともに、CPU104からの角加速度を表すデジタルデータである角加速度データrに基づいて、ヘッド24のズレを予測し、その予測したズレに基づいて、ヘッド24の目標移動位置のフィードフォワード制御を行う。
また、サーボ制御部102は、サーボ制御部53と同様に、ヘッドアンプ16からの増幅後の再生信号のうち、サーボ情報以外の信号を、バス52を介して、リード/ライトチャネル回路54に供給したり、リード/ライトチャネル回路54からの所定の処理後の記録データを、ヘッドアンプ16に供給する。さらに、サーボ制御部102は、CPU104からバス52を介して供給された退避信号に応じて、VCM/SPMドライバ101に、ヘッド24の退避を指令する。
さらに、サーボ制御部102は、サーボ制御部53と同様に、VCM/SPMドライバ101からの加速度データTxに基づいて、ディスク駆動装置70に図4中矢印B方向の衝撃が与えられたかどうかを判定し、衝撃が与えられたと判定した場合、ヘッドアンプ16に、ヘッド24への記録信号の供給を禁止させる。
A/D変換部103には、3軸センサ81により検出されたX軸,Y軸、またはZ軸の各方向の加速度ax,ay,azを表す信号(以下、内部3軸加速度信号という)が、3軸センサ81から供給される。A/D変換部103は、内部3軸加速度信号を増幅し、波形を整形して、A/D変換を行う。そして、A/D変換部103は、その結果得られるデジタルデータを、内部3軸加速度データTとして、CPU104に供給する。ここで、内部3軸加速度データTは、加速度データTx,Tx、またはTxからなっている。
CPU104は、例えば、図2のCPU56と同様に、HDC55からの再生データに基づいて、各種の処理を行ったり、図示せぬメモリからデータを読み出し、記録データとして、バス52を介して、HDC55に供給する。また、CPU104は、CPU56と同様に、A/D変換部103からの内部3軸加速度データTに基づいて、ディスク駆動装置70が落下しているかどうかを判定する。ディスク駆動装置70が落下していると判定された場合、CPU104は、退避信号を、バス52を介して、サーボ制御部102に供給する。
さらに、CPU104は、A/D変換部103からの内部3軸加速度データTから、加速度データTxとTyを抽出し、角加速度データrを算出する。ここで、角加速度データrとは、所定の条件における加速度データTxとTyのそれぞれの2乗の和の平方根の絶対値である。なお、角加速度データrを求め方法については、後述する図14と図15を参照して、詳細に説明する。CPU104は、バス52を介して、角加速度データrを、サーボ制御部102に供給する。
図6は、図5のディスク駆動装置70が行う衝撃検出処理を説明するフローチャートである。この衝撃検出処理は、例えば、ディスク駆動装置70の電源がオンされたとき、開始される。
ステップS31において、3軸センサ81は、X軸の方向の加速度axを検出し、その加速度axを表すX軸加速度信号を、A/D変換部100に供給する。A/D変換部100は、X軸加速度信号を増幅し、波形を整形して、A/D変換を行う。そして、A/D変換部57は、その結果得られる加速度データTxを、VCM/SPMドライバ101を介して、サーボ制御部102に供給し、ステップS32に進む。
ステップS32において、サーボ制御部102は、A/D変換部100からの加速度データTxが、所定の値N以上であるかどうかを判定する。ここで、所定の値Nとは、例えば、製造時に、製造元により設定された値であり、ヘッド24を、いま実際にいるトラック(の位置)から、そのトラックに隣接するトラック(の位置)に移動するために必要な、X軸の方向の加速度axに対応する加速度データTxの値である。即ち、加速度データTxが、所定の値N以上である場合、目標移動位置であるトラック(の位置)とは異なるトラックに、ヘッド24が移動する危険がある。
ステップS32において、加速度データTxが、所定の値N以上ではない(所定値Nより小さい)と判定された場合、即ちヘッド24が目標移動位置であるトラックとは異なるトラックに移動する危険がない場合、サーボ制御部102は、ディスク駆動装置1に図4中矢印B方向の衝撃が与えられていないと認識し(衝撃を検出せず)、ステップS33をスキップして、処理を終了する。
一方、ステップS32において、加速度データTxが、所定の値N以上であると判定された場合、即ちヘッド24が目標移動位置であるトラックとは異なるトラックに移動する危険がある場合、ステップS33に進み、サーボ制御部102は、ディスク駆動装置1に図4中矢印B方向の衝撃が与えられたと認識し(衝撃を検出し)、磁気ディスク71への記録データの記録を禁止する。即ち、サーボ制御部102は、ヘッドアンプ16に、ヘッド24への記録信号の供給を禁止させる。
このように、図5のディスク駆動装置70では、ヘッド24が目標移動位置であるトラックとは異なるトラックに移動する危険がある場合、磁気ディスク71への記録データの記録が禁止されるので、目標移動位置であるトラックとは異なるトラックに、誤って記録データを記録することを防止することができる。
なお、図6の衝撃検出処理は、ヘッド24が記録データの記録を行っている場合にのみ、行われるようにすることもできる。
図7は、図5のディスク駆動装置70が落下を検出する落下検出処理を説明するフローチャートである。この落下検出処理は、例えば、ディスク駆動装置70の電源がオンされたとき、開始される。
ステップS51において、3軸センサ81は、X軸,Y軸、またはZ軸の各方向の加速度ax,ay、またはazを検出し、その加速度ax,ay、またはazを表す内部3軸加速度信号を、A/D変換部103に供給する。そして、A/D変換部103は、内部3軸加速度信号を増幅し、波形を整形して、A/D変換を行う。そして、A/D変換部103は、その結果得られる内部3軸加速度データTを、CPU104に供給する。
ステップS51の処理後は、ステップS52に進み、CPU104は、内部3軸加速度データTの各ベクトルのベクトル和(Tx 2+Ty 2+Tz 2の平方根)の絶対値Vを算出し、ステップS53に進む。
ステップS53において、CPU104は、内部3軸加速度データTと絶対値Vに基づいて、ディスク駆動装置70が落下しているかどうかを判定する。ここで、例えば、CPU104は、前回の内部加速度データTと絶対値Vを図示せぬメモリに記憶しており、CPU104は、前回の内部加速度データTおよび絶対値Vと、今回の内部3軸加速度データTおよび絶対値Vとの差分の絶対値を、それぞれ求める。そして、CPU104は、その差分の絶対値が、それぞれ、所定の値以上である状態が、所定の時間以上続いており、絶対値Vが0G(Gは重力加速度)付近である場合、ディスク駆動装置70が落下していると判定する。
ステップS53において、ディスク駆動装置70が落下していないと判定された場合、即ちヘッドスラップ現象が起こる可能性が少ない場合、CPU104は、落下を検出せず、ステップS54をスキップして、処理を終了する。
一方、ステップS53において、ディスク駆動装置70が落下していると判定された場合、即ちヘッドスラップ現象が起こる可能性が高い場合、CPU104は、落下を検出し、ステップS54に進み、ヘッド24をランプ15に退避させる。具体的には、CPU104は、退避信号を、バス52を介して、サーボ制御部102に供給する。そして、サーボ制御部102は、CPU104からの退避信号に応じて、VCM/SPMドライバ101に、ヘッド24の退避を指令し、VCM/SPMドライバ101は、その指令に応じて、VCM22を制御し、ヘッド24をランプ15に退避させる。
このように、ディスク駆動装置70では、ディスク駆動装置70が落下している場合、即ちヘッドスラップ現象が起こる可能性が高い場合、ヘッド24がランプ15に退避されるので、ヘッドスラップ現象を回避することができる。
なお、図7の落下検出処理は、ヘッド24がランプ15に固定されていない場合にのみ、行われるようにすることもできる。
次に、図8を参照して、図6の衝撃検出処理と図7の落下検出処理を行うときの、図5のディスク駆動装置70の処理の流れを説明する。
まず最初に、ディスク駆動装置70が衝撃検出処理(図6)を行うときの、処理の流れを説明する。図6で説明したように、ステップS31において、3軸センサ81が加速度axを検出し、その加速度axを表すX軸加速度信号に対応する加速度データTxが、A/D変換部100から、VCM/SPMドライバ101を介して、サーボ制御部102に供給される。
ステップS32において、サーボ制御部102は、A/D変換部100からの加速度データTxに基づいて、図4中矢印B方向の衝撃を検出し、衝撃を検出した場合、ステップS33において、ヘッドアンプ16に、ヘッド24への記録信号の供給を禁止させる。
次に、ディスク駆動装置70が落下検出処理(図7)を行うときの、処理の流れを説明する。図7で説明したように、ステップS51において、3軸センサ81は、加速度ax,ay、またはazを検出し、その加速度ax,ay、またはazを表す内部3軸加速度信号に対応する内部3軸加速度データTが、A/D変換部103からCPU104に供給される。
ステップS53において、CPU104は、内部3軸加速度データTと絶対値Vに基づいて、落下を検出し、落下を検出した場合、ステップS54において、CPU104は、サーボ制御部102に退避信号を供給する。そして、サーボ制御部102は、その退避信号に応じて、VCM/SPMドライバ101にヘッド24の退避を指令し、VCM/SPMドライバ101は、その指令に応じて、ヘッド24をランプ15に退避させる。
以上のように、ディスク駆動装置70では、1つの3軸センサ81により検出された加速度ax,ay、またはazを用いて、衝撃と落下の両方を検出するので、3軸センサ3と1軸センサ17の2つのセンサが設けられた図1のディスク駆動装置1に比べて、コストを削減することができる。また、3軸センサ81が、シャーシ2の内部、即ちダンパー材2の内側に設けられているため、3軸センサが、ダンパー材2の外側に設けられる場合に比べて、ダンパー材2により外部からの力が緩和されたヘッド24の加速度と、3軸センサ81により検出された加速度ax,ay、またはazとの差分が少なくなり、より正確に、衝撃と落下を検出することができる。
次に、図9を参照して、図5のサーボ制御部102におけるトラッキングサーボ動作について説明する。
図9に示すように、サーボ制御部102は、VCM/SPMドライバ101(図5)を制御して、VCMアクチュエータ14のアーム21を回動させ、ヘッド24を所定のトラックに移動させる。このとき、各種の定常的、非定常的要因である要因d(例えば、衝撃などの外乱)により、ヘッド24が実際にいる位置と、目標移動位置とにズレが生じる。そこで、サーボ制御部53は、ヘッドアンプ16からの再生信号のサーボ情報に基づいて、ズレを検出し、そのズレに基づいて、ヘッド24の目標移動位置のフィードバック制御を行う。
このとき、サーボ制御部102は、さらに、CPU104からの角加速度データrに基づいて、ヘッド24のズレを予測し、その予測したズレに基づいて、ヘッド24の目標移動位置のフィードフォワード制御を行う。そして、サーボ制御部102は、フィードバックまたはフィードフォワード制御を行うことにより決定されたヘッド24の目標移動位置に、ヘッド24を移動させる。
以上のように、図5のディスク駆動装置70では、サーボ制御部102は、検出したズレに基づいてフィードバック制御を行うとともに、予測したズレに基づいて、フィードフォワード制御を行い、ヘッド24の目標移動位置を決定するので、フィードバック制御のみを行い、ヘッド24の目標移動位置を決定する図1のディスク駆動装置1の場合に比べて、トラッキングサーボ動作の性能を向上させることができる。また、ディスク駆動装置70では、ダンパー材2で覆われたシャーシ2の内部に3軸センサ81が設けられているので、ダンパー材2の外側に3軸センサが設けられる場合に比べて、ヘッド24におけるX軸とY軸の各方向の加速度と、3軸センサ81により検出される加速度axとayとの差分が小さくなる。その結果、加速度axとayに基づいて算出された角加速度データrを用いて行われるフィードフォワード制御の精度を、ダンパー材2の外側に3軸センサが設けられる場合に比べて、高めることができる。
図10は、図5のディスク駆動装置70が行うトラッキング制御処理を説明するフローチャートである。このトラッキング制御処理は、例えば、ユーザによる図示せぬ操作部の操作により、磁気ディスク71に対する記録または再生が指示されたとき、開始される。
ステップS71において、CPU104は、A/D変換部103から供給された外部3軸加速度データTから、加速度データTxとTyを抽出する。
ステップS71の処理後は、ステップS72に進み、CPU104は、ステップS71で抽出した加速度データTxとTyに基づいて、角加速度データrを算出して、サーボ制御部102に供給し、ステップS73に進む。
ステップS73において、サーボ制御部102は、ヘッドアンプ16からの再生信号のサーボ情報に基づいて、ヘッド24が実際にいる位置と、目標移動位置とのズレを検出し、その検出したズレに基づいて、ヘッド24の目標移動位置のフィードバック制御を行う。即ち、サーボ制御部102は、その検出したズレを考慮して、ヘッド24の目標移動位置を決定する。なお、最初のステップS73の処理では、まだヘッドアンプ16から再生信号が供給されていないので、サーボ制御部102は、何も処理を行わない。
ステップS73の処理後は、ステップS74に進み、サーボ制御部102は、角加速度データrに基づいて、角加速度データrが表す角加速度によりヘッド24が移動する距離、即ち生じるズレを予測し、その予測したズレに基づいて、ヘッド24の目標移動位置のフィードフォワード制御を行う。即ち、サーボ制御部102は、その予測したズレを考慮して、ステップS73で決定されたヘッド24の目標移動位置を変更する。
ステップS74の処理後は、ステップS75に進み、サーボ制御部102は、VCM/SPMドライバ101を制御して、ステップS74で変更されたヘッド24の目標移動位置に、ヘッド24を移動させる。ヘッド24は、記録または再生を行い、サーボ情報を含む再生信号を、ヘッドアンプ16に供給し、ステップS75からステップS71に戻る。ここで、ステップS73の処理では、直前のステップS75でヘッドアンプ16に供給されたサーボ情報に基づいて、ヘッド24が実際にいる位置と、目標移動位置とのズレが検出される。
次に、図11を参照して、図10のトラック制御処理を行うときの、図5のディスク駆動装置70の処理の流れを説明する。
図10で説明したように、CPU104は、A/D変換部103からの内部3軸加速度データTから、加速度データTxとTyを抽出し、加速度データTxとTyに基づいて、角加速度データrを算出して、サーボ制御部102に供給する。そして、サーボ制御部102は、ヘッドアンプ16からの再生信号に基づいて、ヘッド24の目標移動位置のフィードバック制御を行うとともに、角加速度データrに基づいて、ヘッド24の目標移動位置のフィードフォワード制御を行う。
ステップS75において、サーボ制御部102は、VCM/SPMドライバ101を制御して、フィードバックまたはフィードフォワード制御を行うことにより決定された目標移動位置に、ヘッド24を移動させる。
以上のように、ディスク駆動装置70では、ヘッド24の目標移動位置が、フィードバック制御されるだけでなく、3軸センサ81により検出された加速度axとayを用いて、フィードフォワード制御されるので、フィードバック制御のみを行う図1のディスク駆動装置1に比べて、高精度のトラッキングサーボ動作を行うことができる。
次に、図12を参照して、従来のディスク駆動装置と、本発明を適用した図5のディスク駆動装置70とを比較する。
図12では、1軸センサのみが設けられたディスク駆動装置(以下、1軸ディスク駆動装置という)、1軸センサ17と、ダンパー材4の外側に3軸センサ3と(1軸+外付け3軸センサ)が設けられた図1のディスク駆動装置1、およびダンパー材4で覆われたシャーシ2の内部に3軸センサ81(内部3軸センサ)が設けられた図5のディスク駆動装置70が比較されている。
図12に示すように、1軸ディスク駆動装置では、1軸センサが設けられているので、その1軸センサにより衝撃を検出し、衝撃を検出した場合、記録を禁止することにより、記録の保護(Write Protect)が可能である。従って、図12の項目を除いた第1行目の「Write Protect」の欄には、○が付けられている。
しかしながら、1軸ディスク駆動装置では、1つの軸の方向の加速度のみが検出されるので、落下を検出したり、トラッキングサーボ(Tracking servo)動作において、ヘッドの目標移動位置のフィードフォワード制御(F.F)を行うことは困難である。従って、図12の項目を除いた第2行目の「落下検出」の欄と、第3行目の「Tracking servo(F.F)」の欄には、×が付けられている。
また、1軸ディスク駆動装置では、上述したように、落下を検出することが困難であるため、ヘッドスラップ現象を回避することが困難である。これにより、1軸ディスク駆動装置では、ヘッドスラップ現象が生じた場合において破壊されやすいアルミ基板の磁気ディスク(Al disk)は装着されない。従って、図12の項目を除いた第4行目の「Al disk」の欄には、×が付けられている。
ところで、1軸ディスク駆動装置では、設けられるセンサが、1軸センサの1つだけであるので、センサのコストは安い。従って、図12の項目を除いた第5行目の「センサコスト」の欄には、○が付けられている。また、1軸ディスク駆動装置では、上述したように、アルミ基板の磁気ディスクは装着されず、例えば、ヘッドスラップ現象が起こった場合においても破壊されにくい、硬いガラス基板の磁気ディスクが装着される。ここで、一般的に、ガラス基板の磁気ディスクは、アルミ基板の磁気ディスクに比べて、コストが高いことが知られている。従って、図12の項目を除いた第5行目の「Disk コスト」の欄には、×が付けられている。
一方、図1のディスク駆動装置1では、1軸センサ17が設けられているので、その1軸センサ17により衝撃を検出し、衝撃を検出した場合、記録を禁止することにより、記録の保護が可能であり、「Write Protect」の欄には、○が付けられている。また、ディスク駆動装置1では、3軸センサ3も設けられているので、落下を検出することが可能であり、「落下検出」の欄には、○が付けられている。
さらに、ディスク駆動装置1では、3軸センサ3が設けられているので、3軸センサ3により検出されたx軸とy軸の方向の加速度axとayを用いて、トラッキングサーボ動作において、ヘッドの目標移動位置のフィードフォワード制御を行うことは可能である。しかしながら、ディスク駆動装置1では、ダンパー材4の外側に、3軸センサ3が設けられているので、3軸センサ3により検出される加速度axおよびayと、ダンパー材4により外部からの力が緩和されているシャーシ2の内部に設けられたヘッド24における加速度との差が大きい。
即ち、3軸センサ3では、ヘッド24における加速度を正確に検出することは困難である。その結果、ヘッドの目標移動位置のフィードフォワード制御を、精度良く行うことは困難であり、一般的には、ディスク駆動装置1において、フィードフォワード制御は行われていない。従って、「Tracking servo(F.F)」の欄には、一般的にフィードフォワード制御は行われていないので、精度が良くないことを表す△が、括弧を付けて書かれている。
また、ディスク駆動装置1では、上述したように、落下を検出することが可能であるため、ヘッドスラップ現象を回避することが可能である。これにより、ディスク駆動装置1では、ヘッドスラップ現象が生じた場合において破壊されやすいアルミ基板の磁気ディスクを装着することが可能であるが、一般的には、アルミ基板の磁気ディスクは装着されていない。従って、「Al disk」の欄には、一般的に、アルミ基板の磁気ディスクは装着されていないので、アルミ基板の磁気ディスクが装着されることを表す○が、括弧を付けて書かれている。
ところで、ディスク駆動装置1では、設けられるセンサが、1軸センサ17と3軸センサ3の2つであるので、1軸ディスク駆動装置のように、1つのセンサが設けられる場合に比べて、センサのコストは高くなる。従って、「センサコスト」の欄には、×が付けられている。また、ディスク駆動装置1では、上述したように、ガラス基板の磁気ディスクに比べて安価なアルミ基板の磁気ディスクが装着可能であるが、一般的には、アルミ基板の磁気ディスクは装着されていないので、「Disk コスト」の欄には、ディスクのコストが安いことを表す○が、括弧を付けて書かれている。
また、図5のディスク駆動装置70では、3軸センサ81が設けられているので、その3軸センサ81により検出されたX軸の方向の加速度axにより、衝撃を検出し、衝撃を検出した場合、記録を禁止することにより、記録の保護が可能であり、「Write Protect」の欄には、○が付けられている。さらに、ディスク駆動装置1では、3軸センサ81により検出されたX軸,Y軸、またはZ軸の各方向の加速度ax,ay、またはazにより、落下を検出することが可能であり、「落下検出」の欄には、○が付けられている。
また、ディスク駆動装置70では、ダンパー材4で覆われたシャーシ2の内部に、3軸センサ81が設けられているので、3軸センサ3が、ダンパー材4の外側に設けられているディスク駆動装置1に比べて、ヘッド24における加速度を正確に検出することができる。その結果、ディスク駆動装置70では、3軸センサ81により検出された加速度axとayを用いて、ヘッド24の目標移動位置のフィードフォワード制御を、精度良く行うことが可能であり、「Tracking servo(F.F)」の欄には、○が付けられている。
さらに、ディスク駆動装置70では、上述したように、落下を検出することが可能であるため、ヘッドスラップ現象を回避することが可能である。従って、ディスク駆動装置70では、ヘッドスラップ現象が生じた場合において破壊されやすいアルミ基板の磁気ディスク71が装着される。よって、「Al disk」の欄には、○が付けられている。以上のように、ディスク駆動装置70では、安価なアルミ基板の磁気ディスク71が装着されるので、ディスク駆動装置70全体のコストを削減することできる。
ところで、ディスク駆動装置70では、設けられるセンサが、3軸センサ81の1つであるので、ディスク駆動装置1のように、2つのセンサが設けられる場合に比べて、センサのコストは安くなる。しかしながら、一般的には、3軸の各方向の加速度ax,ay、またはazを検出する3軸センサ81は、1軸の方向の加速度を検出する1軸センサに比べて、コストが高い。従って、3軸センサ81が設けられたディスク駆動装置70におけるセンサのコストは、1軸センサが設けられた1軸ディスク駆動装置におけるセンサのコストに比べて、高くなる。
即ち、ディスク駆動装置70におけるセンサのコストは、1軸ディスク駆動装置におけるセンサのコストに比べて高く、ディスク駆動装置1におけるセンサのコストに比べて安いので、「センサコスト」の欄には、△が付けられている。
また、ディスク駆動装置70では、上述したように、ガラス基板の磁気ディスクに比べて安価なアルミ基板の磁気ディスクが装着されるので、「Disk コスト」の欄には、○が付けられている。
次に、図13を参照して、アルミ(Al)基板の磁気ディスク71と、ガラス(Glass)基板の磁気ディスク11の性能を比較する。
図13に示すように、安価なアルミ基板の磁気ディスク71は、コスト面でのメリットが大(◎)であり、アルミ基板の磁気ディスク71に比べてコストが高いガラス基板の磁気ディスク11は、コスト面でのメリットが小(△)である。
また、磁気特性とSNR(Signal-to-Noise Ratio)(信号対雑音比)においては、アルミ基板の磁気ディスク71は、最良(◎)であり、ガラス基板の磁気ディスク11は、良(○)である。さらに、磁気ディスクの表面の粗さなどの表面性においては、アルミ基板の磁気ディスク71は、最良(◎)であり、ガラス基板の磁気ディスク11は、良(○)である。
また、ディスクの製造性や調達のし易さを比較したアベイラビリティ(Availability)においては、アルミ基板の磁気ディスク71は、良(○)であり、ガラス基板の磁気ディスク11は、可(△)である。さらに、ヘッド24が、磁気ディスク上にある場合、即ち記録または再生を行っている場合に、ヘッドスラップ現象が生じる、いわゆるオペレーショナルショック(Ope.Schock)により、磁気ディスクが破壊されない可能性は、アルミ基板の磁気ディスク71において、低(△)であり、ガラス基板の磁気ディスク11において、高(○)である。
次に、図14と図15を参照して、図5のCPU104が、加速度データTxとTyに基づいて角加速度データrを求める方法について説明する。
図14と図15では、軌跡Cの略中央の位置P0に対応する磁気ディスク71のトラックのトラック番号をtrk0とする。また、位置P0とピボット23の中心Nとを結ぶ直線P0Nと、いまヘッドがいる位置PHとピボット23の中心Nとを結ぶ直線PHNとのなす角を角度θとする。例えば、いまヘッド24が位置P0にいる場合、即ち位置P0とPHが等しい場合、角度θは0度となる。
ここで、磁気ディスク71の隣接するトラック間の距離(トラックピッチ)、並びにヘッド24と中心N間の距離は、予め定められているため、例えば、トラック番号が、磁気ディスク71の内周から外周に向けて、順に付されている場合、位置P0に対応するトラックのトラック番号trk0と、位置PHに対応するトラックのトラック番号trkHとの差を求めることにより、角度θは、一義的に決定される。
また、図14と図15では、矢印Bの磁気ディスク71の内周から外周に向けた方向(CCW方向)を、正の方向とし、その逆の方向(CW方向)を負の方向とする。さらに、位置PHが位置P0より外周側にある場合の角度θを正の角度とし、位置PHが位置P0より内周側にある場合の角度θを負の角度とする。
図14を参照して、位置PHが、位置P0より外周側の任意の位置P1である場合、即ちヘッド24が位置P0より外周側の位置P1にいる場合の、ヘッド24における角加速度、即ち軌跡Cの位置P1における接線方向の加速度rg1を表す角加速度データrについて説明する。
なお、図14では、位置P1に対応する磁気ディスク71のトラックのトラック番号をtrk1とする。また、角度θは、上述したように、トラック番号trk0とtrk1との差を求めることにより、一義的に決定され、その決定された角度θを、角度θ1とする。
図14に示すように、ヘッド24が位置P0より外周側の位置P1にいる場合、要因dにより、ヘッド24に角加速度rg1が加えられるとき、ヘッド24には、角加速度rg1により、オフトラックさせる力(ヘッド24を、目標移動位置からズレた位置に移動させる力)が働く。
この場合、3軸センサ81は、角加速度rg1をX軸方向とY軸方向に分解した加速度を、それぞれ、加速度ax、ayとして検出し、A/D変換部103を介して、CPU104に供給する。CPU104に供給されるA/D変換後の加速度axとayである加速度データTxとTyは、以下の式(1)で表される。
Tx=rg1×cosθ
Ty=rg1×sinθ
・・・(1)
なお、実際には、A/D変換部103は、3軸センサ81から供給される加速度axとayを表す加速度信号を増幅し、その加速度信号の波形を整形した後、A/D変換を行っているが、式(1)では、A/D変換後の加速度データTxとTyが、それぞれ加速度axとayを表す加速度信号に等しいものとしている。
CPU104は、式(1)に基づいて、加速度rg1を表す角加速度データrを算出する。角加速度データrは、以下の式(2)で表される。
なお、式(2)のreは、製造元により、予め設定される所定の値である。製造元は、例えば、3軸センサ81の精度などに応じて、所定の値reを決定する。所定の値reが小さい場合、大きい場合に比べて、CPU104で角加速度データrが算出されやすくなる(3軸センサ81の感度が上がる)が、誤差も生じやすくなる。従って、製造元は、実験などを行うことにより、所定の値reを、妥当な値に設定する。
以上のように、ヘッド24が位置P0より外周側の任意の位置P1にある場合、CPU104は、A/D変換部103から供給される加速度データTxとTyに基づいて、|Tx/Ty−tanθ|が値re以下であるかどうかを判定し、|Tx/Ty−tanθ|が値re以下ではないと判定した場合、即ちヘッド24の移動に影響する軌跡Cの接線方向の加速度が加えられていない場合、角加速度データrを検出しない。例えば、CPU104は、角加速度データrを0とする。一方、|Tx/Ty−tanθ|が値re以下であると判定された場合、CPU104は、式(2)にしたがって、角加速度データrを算出する。
次に、図15を参照して、位置PHが、位置P0より内周側の任意の位置P2である場合、即ちヘッド24が位置P0より内周側の位置P2にいる場合の、ヘッド24における角加速度、即ち軌跡Cの位置P2における接線方向の加速度rg2を表す角加速度データrについて説明する。
なお、図15では、位置P1に対応する磁気ディスク71のトラックのトラック番号をtrk2とする。また、角度θは、上述したように、トラック番号trk0とtrk2との差を求めることにより、一義的に決定され、その決定された角度θを、角度θ2とする。
図15に示すように、ヘッド24が位置P0より内周側の位置P2にいる場合、要因dにより、ヘッド24に角加速度rg2が加えられるとき、ヘッド24には、角加速度rg2により、オフトラックさせる力が働く。
この場合、3軸センサ81は、角加速度rg1の場合と同様に、角加速度rg2をX軸方向とY軸方向に分解した加速度を、それぞれ、加速度ax、ayとして検出し、A/D変換部103を介して、CPU104に供給する。CPU104に供給されるA/D変換後の加速度axとayである加速度データTxとTyは、以下の式(3)で表される。
Tx=rg2×cosθ
Ty=rg2×sinθ
・・・(3)
CPU104は、式(3)に基づいて、加速度rg2を表す角加速度データrを算出する。角加速度データrは、以下の式(4)で表される。
以上のように、ヘッド24が位置P0より内周側の任意の位置P2にある場合、外周側の位置P1にある場合と同様に、CPU104は、A/D変換部103から供給される加速度データTxとTyに基づいて、|Tx/Ty−tanθ|が値re以下であるかどうかを判定し、|Tx/Ty−tanθ|が値re以下ではないと判定した場合、角加速度データrを検出しない。一方、|Tx/Ty−tanθ|が値re以下であると判定された場合、CPU104は、式(4)にしたがって、角加速度データrを算出する。
図13と図14に示すように、CPU104は、加速度データTxとTyに基づいて、ヘッド24の移動に影響する、軌跡Cのヘッド24がいる位置PHにおける接線方向の加速度を表す角加速度データrを求める。従って、CPU104は、角加速度データrに基づいて、フィードフォワード制御を行うことにより、要因dのトラッキングサーボ動作への影響を抑制することができる。
また、CPU104は、ヘッド24の移動に影響する加速度が加えられていない場合、即ち|Tx/Ty−tanθ|が値re以下ではない場合、角加速度データrを算出(検出)しないので、角加速度データrの誤検出を防止することができる。その結果、角加速度データrの誤検出によるトラッキングサーボ動作のエラーを、防止することができる。
なお、図4のディスク駆動装置70では、3軸センサ81が、X軸が接線D方向に平行となるように、シャーシ2の内部に配置されたが、X軸に限定されず、X軸,Y軸、またはZ軸のうちのいずれか1つの軸が、接線Dに平行となるように配置されればよい。
また、図4のディスク駆動装置70において、3軸センサ81のほかに、衝撃を検出するために接線D方向の加速度を検出する1軸センサを設ける場合には、3軸センサ81は、X軸,Y軸、またはZ軸のうちのいずれか1つの軸が、接線D方向に平行となるように配置されず、傾いて配置されてもよい。この場合、例えば、製造元は、接線D方向に対する、X軸,Y軸、またはZ軸の傾きの角度を、図示せぬ記憶部に記憶させておき、CPU105は、その角度を考慮して、式(3)または式(4)にしたがい、角加速度データrを算出する。
また、ディスク駆動装置70に装着されるアルミ基板の磁気ディスク71の大きさは、特に限定されないが、磁気ディスク71の大きさが大きいほど、磁気ディスク71を装着するために必要なスペースが大きくなるので、ディスク駆動装置70が大型化する。例えば、磁気ディスク71の大きさが、1.8インチ以下である場合、ディスク駆動装置70は、携帯に適した小型になる。
さらに、ディスク駆動装置70では、サーボ制御部102が、3軸センサ81により検出された加速度axに基づいて、衝撃を検出したが、3軸センサ81により検出された加速度axとayの両方に基づいて、衝撃を検出することもできる。この場合、サーボ制御部102は、例えば、ヘッド24が現在いる位置における軌跡Cの接線方向の加速度を、加速度axとayから算出し、その算出した加速度に基づいて、衝撃を検出する。
ここで、ヘッド24に影響する衝撃は、ヘッド24が現在いる位置、つまり図4の軌跡C上のある点における接線方向の衝撃である。従って、サーボ制御部102は、ヘッド24が現在いる位置における軌跡Cの接線方向の加速度に基づいて、衝撃を検出する場合、軌跡Cの平均的な接線方向の加速度axに基づいて衝撃を検出する場合に比べて、より正確に、ヘッド24に影響する衝撃を検出することができる。その結果、誤検出による記録の禁止を防止し、記録速度を高めることができる。
以上のように、ディスク駆動装置70では、シャーシ2の内部に、3軸センサ81を設け、3軸センサ81により検出されたX軸,Y軸、またはZ軸の各方向の加速度ax,ay、またはazに基づいて、ディスク駆動装置70の落下および衝撃を検出するようにしたので、低コストで、高い信頼性を維持することができる。
ここで、本明細書において、コンピュータに各種の処理を行わせるためのプログラムを記述する処理ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)も含むものである。
12 ディスククランプ, 13 スピンドルモータ, 14 VCMアクチュエータ, 15 ランプ, 16 ヘッドアンプ, 21 アーム, 22 VCM, 23 ピボット, 24 ヘッド, 70 ディスク駆動装置, 71 磁気ディスク, 81 3軸センサ, 101 VCM/SPMドライバ, 102 サーボ制御部