以下、本発明を、電子写真方式の画像形成装置である電子写真プリンタ(以下、単にプリンタという)に適用した実施形態について説明する。
まず、本実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、本プリンタを示す概略構成図である。同図において、本プリンタは、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),黒(K)の各色の画像を形成するための4組のプロセスユニット1Y,M,C,Kを備えている。なお、以下、各符号の添字Y,M,C,Kは、それぞれイエロー、マゼンダ、シアン、黒用の部材であることを示す。
互いに水平方向に並ぶようにそれぞれ並行配設されたプロセスユニット1Y,M,C,Kは、それぞれ潜像担持体たるドラム状の感光体11Y,M,C,Kを有している。本プリンタは、これらプロセスユニット1Y,M,C,Kの他、光書込ユニット2、給紙カセット3、レジストローラ対4、紙搬送ユニット5、定着ユニット6、機内温度センサ7などを備えている。また、図示しない4つのトナー補給装置や、電源ユニットなども備えている。
上記光書込ユニット2は、図示しない光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を備え、画像データに基づいて各感光体11Y,M,C,Kの表面にレーザー光Lを走査する。
各プロセスユニット1Y,M,C,Kは、使用するトナーの色が異なる点の他は、ほぼ同様の構成になっている。Y用のプロセスユニット1Yを例にすると、これは、感光体11Yの他、帯電手段12Y、現像装置13Y、クリーニング手段14Y、除電手段15Y、Y用光学センサ16Yなども有している。
上記帯電手段12Yとしては、コロトロン等からのコロナ放電によって感光体11Yを帯電せしめる帯電チャージャーを用いることができる。また、感光体11Yとの対向位置で回転可能に配設された帯電ローラや帯電ブラシに転写バイアスを印加する方式のものでもよい。
Y用の感光体11Yにおいて、そのドラム形状の軸線方向における一端近傍には、ドラム周面の全周に渡って鏡面と非鏡面とが繰り返される図示しないスケール部が設けられている。上記Y用光学センサ16Yは、反射型フォトセンサからなり、図示しない発光素子からこのスケール部に向けて光を照射する。この光は、スケール部表面で反射した後、Y用光学センサ16Yの図示しない受光素子によって受光される。Y用光学センサ16Yは、受光素子での受光量に応じた電圧信号を、図示しない制御部に出力する。Y用光学センサ16Yの対向位置において、感光体11Yのスケール部の鏡面と非鏡面とが交互に通過することにより、Y用光学センサ16Yからは、感光体11Yの線速に応じた周波週のパルス電圧が出力されることになる。また、同様にして、M,C,K用光学センサ16M,C,Kからは、感光体11M,C,Kの線速に応じた周波週のパルス電圧が出力される。
上記帯電手段12Yによって一様帯電せしめられた感光体11の表面に、光書込ユニット2で変調及び偏向されたレーザー光Lが走査されると、露光部に静電潜像が形成される。この静電潜像は、後述する現像装置13YによってYトナー像に現像される。他のプロセスユニット1M,C,Kにおいても、同様にして、感光体11M,C,K上にM,C,Kトナー像が形成される。
上記給紙カセット3は、記録体たる転写紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容しており、その一番上の転写紙Pに給紙ローラ3aを押し当てている。そして、所定のタイミングで給紙ローラ3aを回転させて、転写紙Pを給紙路に送り出す。この給紙路の末端には、レジストローラ対4が配設されており、送られてきた転写紙Pを、Y用のプロセスユニット1Yの感光体11Y上に形成されたYトナー像に同期させ得るタイミングで給紙路の末端から送り出す。
上記紙搬送ユニット5は、各プロセスユニット1Y,M,C,Kの下方に配設されており、無端移動する紙搬送ベルト51、駆動ローラ52、テンションローラ53、4つの転写チャージャー54Y,M,C,K等を有している。また、ベルト用光学センサ55も有している。紙搬送ベルト51は、図示しない駆動系によって図中反時計回りに回転駆動される駆動ローラ52と、テンションローラ53とにより、各感光体11Y,M,C,Kに対向するように横長の姿勢で張架されている。そして、駆動ローラ52の回転に伴って、図中反時計回りに無端移動せしめられ、各感光体11Y,M,C,Kとの対向位置であるY,M,C,K用の転写位置を順次通過する。これら転写位置では、紙搬送ベルト51のループ内側に、転写チャージャー54Y,M,C,Kが紙搬送ベルト51を介してそれぞれ感光体11Y,M,C,Kに対向するように配設されている。そして、感光体11Y,M,C,Kとの間に転写電界を形成する。なお、本プリンタにおいては、転写手段として転写チャージャー54Y,M,C,Kを設けているが、これらに代えて、転写ローラ等の転写バイアス印加部材に転写バイアスを印加する方式のものを用いてもよい。
紙搬送ベルト51において、その幅方向における一端近傍には、ベルト周面の全周に渡って明部と暗部とが繰り返される図示しないスケール部が設けられている。上記ベルト用光学センサ55は、反射型フォトセンサからなり、図示しない発光素子からこのスケール部に向けて光を照射する。この光は、スケール部表面で反射した後、ベルト用光学センサ55の図示しない受光素子によって受光される。ベルト用光学センサ55は、受光素子での受光量に応じた電圧信号を、図示しない制御部に出力する。ベルト用光学センサ55の対向位置において、紙搬送ベルト51のスケール部の暗部と明部とが交互に通過することにより、ベルト用光学センサ55からは、紙搬送ベルト51の線速に応じた周波週のパルス電圧が出力されることになる。
上述のレジストローラ対4によって送り出された転写紙Pは、紙搬送ユニット5の紙搬送ベルト51のおもて面(ループ外面)に保持されながら、上述のY,M,C,K用の転写位置を順次通過する。各プロセスユニット1Y,M,C,Kの感光体11Y,M,C,K上で現像されたY,M,C,Kトナー像は、Y,M,C,K用の転写位置で、上記転写電界の作用を受けて転写紙P上に重ね合わせて転写される。この重ね合わせの転写により、転写紙P上にはフルカラー画像が形成される。
フルカラー画像が形成された転写紙Pは、紙搬送ベルト51の無端移動に伴って図中右側から左側に向けて搬送されて、紙搬送ユニット5の図中左側方に配設された定着ユニット6に受け渡される。定着ユニット6は、ハロゲンランプ等の熱源を内包し且つ図中時計回りに回転駆動される定着ローラ6aと、これに当接しながら当接部で同方向に表面移動するように回転駆動される加圧ローラ6bとによって定着ニップを形成している。そして、紙搬送ユニット5から受け渡された転写紙Pをこの定着ニップに挟み込みながら、図中右側から左側へと搬送する。この搬送の際、ニップ圧や加熱によってフルカラー画像を転写紙Pの表面に定着せしめる。
Y用のプロセスユニット1Yにおいて、回転に伴ってY用の転写位置を通過した感光体11Y表面は、クリーニング手段14Yによって転写残トナーのクリーニング処理が施される。かかるクリーニング手段14Yとしては、ブレードやブラシ等のクリーニング部材を感光体11Y表面に当接させて転写残トナーを機械的に掻き取り除去するものを用いることができる。また、感光体11Yに当接しながら回転するクリーニングローラ等の回転部材にクリーニングバイアスを印加して、転写残トナーを静電的に除去する方式のものでもよい。
上記クリーニング手段14Yによってクリーニング処理が施された感光体11Y表面は、除電ランプ等の除電手段15Yによって除電処理が施された後、帯電手段12Yによって再び一様帯電せしめられる。
Y用のプロセスユニット1Yの現像装置13Yは、筺体開口から一部を露出させるように回転可能に配設された現像ロール、スクリュウやパドル等からなる図示しない現像剤攪拌手段、図示しない透磁率センサ等を有している。現像装置13Yの筺体内には、磁性キャリアと、摩擦帯電性のYトナーとを含む図示しない二成分現像剤が収容されている。この二成分現像剤は上記現像剤攪拌手段によって撹拌搬送されながら現像ロールの表面に担持される。そして、現像ロールの回転に伴って、図示しない規制部材による規制位置を通過して層厚が規制されてから、感光体11Yに対向する現像領域に搬送され、ここで感光体11Y上の静電潜像にYトナーを付着させる。この付着により、感光体11Y上にYトナー像が形成される。現像によってYトナーを消費した二成分現像剤は、現像ロールの回転に伴って現像装置13Yの筺体内に戻される。
上述の図示しないY,M,C,K用の4つのトナー補給装置は、それぞれY,M,C,Kトナーを収容するトナー収容器を着脱可能に支持している。そして、Y,M,C,Kトナー収容器内のY,M,C,Kトナーを、Y,M,C,K用の現像装置13Y,M,C,K内に補給するようになっている。なお、これらY,M,C,Kトナー収容器内には、それぞれ所定の間隙を介して対向する電極対が設けられており、プリンタ本体側から延びるリードを介して、その電極間に抵抗検知用バイアスが印加されるようになっている。これらリードには、それぞれY,M,C,Kトナー用の電流検知センサが接続されており、その電流検知値と、抵抗検知用バイアスの値とに基づいて、Y,M,C,Kトナーの電気抵抗値がそれぞれ求められる。
現像装置13Yの上記透磁率センサは、現像装置13Y内に収容される二成分現像剤の透磁率に応じた値の電圧を出力する。二成分現像剤の透磁率は、二成分現像剤のトナー濃度とある程度の相関を示すため、この透磁率センサはYトナー濃度に応じた値の電圧を出力することになる。この出力電圧の値は、図示しない上述の制御部に送られる。制御部は、RAM等の記憶手段に、透磁率センサからの出力電圧の目標値であるY用Vtrefを格納している。また、他のプロセスユニット1M,C,Kの現像装置13M,C,Kに搭載された透磁率センサからの出力電圧の目標値であるM用Vtref、C用Vtref、K用Vtrefのデータも格納している。Y用Vtrefは、図示しないYトナー補給装置の駆動制御に用いられる。具体的には、上記制御部は、Y用の現像装置13Yの透磁率センサからの出力電圧の値をY用Vtrefに近づけるように、図示しないY用トナー補給装置を駆動制御してY用の現像装置13Y内にYトナーを補給させる。この補給により、Y用の現像装置13Y内における二成分現像剤のYトナー濃度が所定の範囲内に維持される。他の現像装置13M,C,Kについても、同様のトナー補給制御が実施される。
図2は、本プリンタの電気回路の一部を示すブロック図である。同図において、制御部100は、プリンタ全体の制御を司る制御手段であり、演算処理を行うCPU100a、記憶手段たるRAM100b、100c等を有している。かかる構成の制御部100には、周知の技術によって機内の温度を検知する機内温度センサ7が接続されている。また、各色用の現像装置(13Y,M,C,K)における上述の透磁率センサもそれぞれ接続されている。また、各プロセスユニット(1Y,M,C,K)にそれぞれ設けられた上述のY,M,C,K用光学センサ16Y,M,C,Kも接続されている。また、図示しない各色のトナー収容器内に収容されたY,M,C,Kトナーに流れる電流値を検知する上述のY,M,C,K用電流検知センサ9Y,M,C,Kも接続されている。更には、各種駆動回路101、画像処理部103、操作表示部8、各種バイアス電源回路104なども接続されている。
かかる構成において、各色用の現像装置(13Y,M,C,K)の透磁率センサは、それぞれ事物たる二成分現像剤の情報を取得する情報検知手段として機能している。また、Y,M,C,K用光学センサ16Yは、それぞれ事物たる感光体11Y,M,C,Kの光反射率の情報を取得する情報検知手段として機能している。また、定着温度センサ6cは、事物たる定着ローラ(6a)の表面温度の情報を取得する情報検知手段として機能している。また、ベルト用光学センサ55は、事物たる紙搬送ベルト(51)の光反射率の情報を取得する情報検知手段として機能している。また、Y,M,C,K用電流検知センサ9Y,M,C,Kは、それぞれ図示しないトナー収容器内に収容されるY,M,C,Kトナーに流れる電流値の情報を取得する情報検知手段として機能している。また、制御部100は、記憶手段たるRAM100bやROM100c内に格納された情報、接続された各種機器から送られてくる情報などを取得する情報取得手段として機能している。このように、本プリンタは、互いに異なる情報を取得する複数の情報取得手段を備えている。
上記各種駆動回路101は、制御部からの制御信号に基づいて、図示しないメインモータなどといった各種駆動源102における駆動のON/OFFを制御するための回路である。但し、上述の光書込ユニット2における光源の駆動については、かなり高速にON/OFFを制御する必要があるため、制御部とは別に、その駆動を制御する画像処理部103が設けられている。この画像処理部103は、パーソナルコンピュータ等の外部から送られてくる画像信号に基づいて、光書込ユニット2の光源やポリゴンモータ(ポリゴンミラーの駆動源)の駆動を制御する。
上記操作表示部8は、画像を表示する液晶ディスプレイ等からなる図示しない表示部と、ユーザーによる操作情報を受け付けるテンキー等からなる図示しない操作部とを有している。そして、制御部100からの制御信号に基づいて表示部に所定の画像を表示したり、操作表示部によって受け付けた操作情報を制御部100に送信したりする。かかる構成の操作表示部8も、事物たる操作情報を取得する情報取得手段として機能している。
上記各種バイアス電源回路は、制御部100からの制御信号に基づいて、現像ロールに印加する現像バイアスなど、各種バイアスの値を制御するための回路である。
本発明において、情報取得手段によって取得される情報としては、センシング情報、パラメータ記憶情報、画像情報などが挙げられる。
上記センシング情報は、光学センサ、電圧センサ、電流センサ等の各種センサによって取得される情報である。画像形成装置においては、寸法、駆動速度、時間(タイミング)、重量、電流値、電圧値、振動、音、磁力、光量、温度、湿度、気圧、気流、各種ガス濃度等の情報がセンサによって取得可能である。
上記駆動速度としては、駆動モータ、定着ローラ、駆動ローラ、レジストローラ、搬送ローラ等の回転部材の回転速度などが挙げられ、周知のエンコーダー等によって検出することができる。
上記電流値としては、駆動モータの電流値や転写電流値などが挙げられ、周知の電流計によって検出することができる。また、被検対象(転写紙等)を介して一対の電極(搬送ローラ対など)を接触させて、その電極間の電流値を測定したり、被検対象の表面電位を測定したりして、被検対象の電気抵抗値を検知することもできる。
上記音としては、駆動モータや駆動伝達系からの発生音などが挙げられ、周知のマイクロフォン等によって検出することができる。その発生音の大きさに基づいて、駆動モータや駆動伝達系に付与される突発的なストレスを検知することができる。また、トナー像が転写される前の転写紙の表面にガイド部材等を接触させ、その接触に伴って発生する振動音や摺動音を検知することで、転写紙の表面粗さを検知することも可能である。
上記温度としては、気温、定着ローラ表面温度、駆動モータ温度などが挙げられ、周知の温度センサによって検出することができる。
上記光量は、反射型フォトセンサや透過型フォトセンサ等によって検出が可能で、搬送路内を搬送される紙の検知や、感光体に対するトナー付着量の検知などに利用することができる。また、複数のフォトセンサ間における所定光量以上の検知タンミングのずれにより、搬送路内における紙やベルト等の移動速度を検出することに利用することもできる。また、エンコーダー等によって検出した紙搬送ローラ対等の回転速度との併用により、紙搬送ローラ対と紙とのスリップを検知することもできる。また、所定の入射角で転写紙表面に入射した光について、所定の反射方向で光量を検出することで、転写紙表面の光沢性を検知することもできる。また、転写紙の厚み方向における紫外線の透過光量を検出することで、その転写紙について上質紙、再生紙、OHPの何れであるかを検知することもできる。また、LEDアレイ等の光源群からそれぞれ発した光を転写紙表面で反射させて、それぞれの反射光をCCD等の複数受光素子で検出することで、その転写紙表面についておもて面であるか裏面であるかを検知することもできる。また、赤外線またはμ波の光の吸収量を反射光量や透過光量によって検出することで、転写紙に含まれている水分量を検知することもできる。
上記寸法としては、紙を搬送ローラ対で挟んだときの両ローラの相対的な位置変位を光学センサ等で検知したり、紙が進入してくることによって押し上げられる部材の移動量を検知したりして求められる紙の厚みが挙げられる。また、所定の力で押圧した転写紙の変形量(湾曲量)を検出することで、その転写紙の剛性を検知することもできる。また、フォトセンサや接触センサ等を用いて、転写紙のカール量を検知することもできる。
現像剤(一成分又は二成分)の特性は、電子写真プロセスの機能の根幹に影響するため、システムの動作や出力にとって重要な因子となる。よって、現像剤の特性を知ることは異常の判定において極めて重要である。トナーの特性としては、潜像担持体に対する付着量、帯電量およびその分布、流動性、凝集度、二成分現像剤中における嵩密度、電気抵抗、誘電率、外添剤量、消費量、容器内残量、二成分現像剤中における濃度などが挙げられる。
現像剤の潜像担持体に対する付着量については、潜像担持体にテスト用の静電潜像を形成し、これを所定の現像条件で現像して得られた基準トナー像に対する光反射率(光反射量)を測定することで検知することができる。また、現像剤の電気抵抗や誘電率については、現像装置内に一対の電極を設け、印加電圧と電流の関係を測定することで検知することができる。また、現像装置内にコイルを設け、そのコイルにおける電圧電流特性を測定することで、現像剤のインダクタンスを検知することもできる。また、現像剤収容器(現像装置を含む)内に光学方式や静電容量式のレベルセンサを設けることで、現像剤の容器内残量を検知することもできる。
現像剤の特性と同様に、感光体の特性も電子写真プロセスの機能と密接に関わる。感光体の特性としては、感光膜厚、表面特性(摩擦係数、凹凸)、表面電位(各プロセス前後)、表面エネルギー、散乱光、温度、表面位置(フレ)、線速度、電位減衰速度、抵抗・静電容量、表面水分量等が挙げられる。
感光体の感光膜厚については、次のようにして検知することができる。即ち、感光体に接触する帯電ローラ等の帯電部材から感光体への電流値を検出する。そして、帯電部材への印加電圧と、予め調べられた感光体の誘電厚みに対する電圧電流特性とを比較することにより、感光膜厚を求めることができる。また、感光体の表面電位や温度については、周知の表面電位センサや温度センサによって検知することができる。また、非接触帯電方式における帯電部材と感光体とのギャップについては、ギャップを通過させた光の量を測定することで検知することが可能である。また、帯電による電磁波については、広帯域アンテナによって検知することができる。
使用されるトナーの特性も、装置の異常の判定に役立つ重要な要素である。また、感光体のベタ潜像部の電位検出値と、そのベタ画像に対する単位面積あたりのトナー付着量とに基づいて、トナーの帯電量を求めることもできる。また、転写体上においてドット(画素像)の周囲に飛び散ったトナーの量については、次のようにして求めることができる。即ち、赤外光のエリアセンサ等によって撮影した感光体上におけるドットパターン画像と、転写体上で同様に得たドットパターン画像との比較によって求めるのである。また、定着処理に伴って定着ローラ等の定着部材に逆転移してしまうトナーのオフセット量については、定着前の転写紙における反射光量と、その転写紙を定着した後の定着部材における反射光量との比較によって求めることができる。また、感光体等の転写元における転写残トナー量については、転写前後における転写元や転写先の光反射量の変化に基づいて求めることができる。また、感光体の非画像部に付着してしまういわゆるカブリトナーの量については、感光体又は転写体上において、比較的広範囲の波長領域を検知する光学センサで画像背景部を読み取ることで検知することができる。または、高解像度のエリアセンサで背景部のエリアごと画像情報を読み取り、その画像に含まれるトナー粒子数を計数することによっても求めることができる。
画像形成装置においては、形成されるトナー像の特性も、装置の異常を判定するための重要な要素となる。トナー像の高さについては、変位センサで縦方向から測定した奥行きと、平行光のリニアセンサで横方向から測定した遮光長とに基づいて求めることができる。形成されたトナー像の画像濃度については、光学センサによる検出光量(反射光量や透過光量)に基づいて求めることができる。また、トナー像の色については、反射光や透過孔の投光波長を検出することで求めることができる。画像濃度や色情報を得るには感光体上または中間転写体上のトナー像を被検対象としてよいが、色ムラなど、色のコンビネーションを測るには被検対象を転写紙上のトナー像にする必要がある。また、画像の階調性については、階調レベルごとに感光体上に形成されたトナー像や、転写体に転写されたトナー像の反射濃度を光学センサによって検出することで求めることができる。
形成される画像の質、即ち、画質も、装置の異常を判定するための重要な要素となる。トナー像の鮮鋭性については、スポット径の小さい単眼センサ、若しくは高解像度のラインセンサを用いて、ライン画像の繰り返しパターンを感光体上や転写体上で読み取ることによって求めることができる。また、トナー像の粒状性(ざらつき感)については、ハーフトーン画像を鮮鋭性の場合と同様に読み取って、予も取り結果のノイズ成分を算出することで求めることができる。また、紙の姿勢ズレによる転写紙上でのトナー像の相対的な傾きについては、次のようにして検知することができる。即ち、転写紙を幅方向の両端でそれぞれ検知する2つの紙検知センサを設け、両者の検知タイミングの差に基づいて求めるのである。また、重ね合わせトナー像における色ずれについては、中間転写体または転写紙上の重ね合わせ画像のエッジ部を、単眼の小径スポットセンサ若しくは高解像度ラインセンサで検知することによって求めることができる。また、紙やローラ等のスリップに起因する紙送り方向におけるトナー像の濃度ムラについては、小径スポットセンサ若しくは高解像度ラインセンサによって転写紙上における副走査方向の濃度ムラを測定し、特定周波数の信号量を計測することによって求めることができる。また、トナー像の光沢ムラについてはは、転写紙上におけるトナー像を正反射式光学センサで検知することで求めることができる。また、像流れや像かすれなどは、感光体や転写体上でトナー像をエリアセンサにより検知し、得られた画像情報を画像処理することで求めることができる。また、画像の後端白抜けやベタクロス白抜けについては、感光体や転写体上のトナー像を高解像度ラインセンサによって検知することで求めることができる。
上記温度を検出する温度センサとしては、異種金属同士や金属と半導体とを接合した接点に発生する熱起電力に基づいて温度を検出する熱電対方式のものを用いることができる。また、金属や半導体の抵抗率が温度によって変化することを利用した抵抗率変化素子方式のものでもよい。また、或る種の結晶において温度上昇に伴って結晶内の電荷の配置に偏りが生じて電荷を発生させることを利用した焦電型素子方式のものでもよい。また、温度による磁気特性の変化を検出する熱磁気効果素子方式のものでもよい。
上記湿度を検出する湿度センサとしては、H2OあるいはOH基の光吸収を測定する光学的測定方式のものや、水蒸気の吸着による材料の電気抵抗値変化を測定する方式のものを用いることができる。また、各種ガスについては、基本的にはガスの吸着に伴う、酸化物半導体の電気抵抗の変化を測定する周知のガスセンサによって検出することができる。また、気流(方向や流速)については、光学的測定法等によって検出が可能であるが、システムへの搭載を考慮すると、より小型なエアブリッジ型フローセンサが特に有用である。また、気圧の検出については、感圧材料を使用する、メンブレンの機械的変位を測定する方法や、振動を測定する方法などによって検出することができる。
情報取得手段によって取得される情報の1つである上記パラメータ記憶情報は、RAM等の記憶手段に格納されているパラメータ情報である。画像形成装置においては、制御パラメータ、操作履歴、消費電力、消耗品消費量、各種画像形成条件(モード)設定履歴、警告履歴等がパラメータ情報として記憶手段に格納され得る。
上記制御パラメータは、帯電電位、現像バイアス値、定着温度値など制御部によって設定される情報である。帯電電位等の他に、中間調処理やカラー補正などの各種画像処理パラメータの設定値、制御部が装置の動作のために設定する各種のパラメータ(紙搬送のタイミング、画像形成前の準備モードの実行時間など)が挙げられる。
上記操作履歴としては、用紙サイズ、色数、枚数、画質指示などの指定のためにユーザーによって行われる操作の履歴情報が挙げられる。また、上記消費電力としては、全期間または特定期間単位(1日、1週間、1ヶ月など)の総合消費電力や、その分布、変化量(微分)、累積値(積分)などが挙げられる。また、上記消耗心消費量としては、全期間または特定期間単位(1日、1週間、1ヶ月など)におけるトナーや用紙等の消耗品の消費量が挙げられる。
情報取得手段によって取得される情報の1つである上記画像情報は、出力する画像の情報として、画像形成装置外部から入力されたり、スキャナ等によって原稿読取されたりする情報である。着色画素累積数、文字部比率、ハーフトーン部比率、色文字比率、主走査方向のトナー消費分布、RGB信号(画素単位の総トナー量)、原稿サイズ、縁有り原稿、文字の種類(大きさ、フォント)等の情報が画像情報として挙げられる。着色画素累積数については、GRB信号別の画像データを画素ごとにカウントすることによって求めることができる。また、上記文字部比率については、オリジナル画像を文字・網点・写真・背景に分離し、文字部とハーフトーン部との比率に基づいて求めることができる。更には、同様にして色文字の比率も求めることができる。また、トナー消費分布については、着色画素の累積値を主走査方向で区切った領域別にカウントし、カウント値に基づいて求めることができる。また、画像サイズについては、制御部が発生する画像サイズ信号または画像データでの着色画素の分布に基づいて求めることができる。また、文字の種類(大きさ、フォント)については、画像情報に含まれる文字の属性データに基づいて求めることができる。
なお、本発明において、「情報取得手段によって取得される情報」とは、電流値など、センサ等によって取得される情報そのものの他、取得された情報に基づいて算出あるいは特定される情報をも含む概念である。
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。本プリンタは、各種の情報取得手段によって取得された複数種類の情報からなる多種情報について、MTS法によって異常であるか否かを判定するようになっている。そして、かかる判定を実施すべく、試作機(プリンタ標準機)から予め取得された標準情報である逆行列を記憶手段たる上記ROM100c内に記憶している。また、制御部100が、この逆行列に基づいて、実際に取得した各種情報の全て又は一部の組合せからなる組情報について異常であるか否かを判定し、結果に応じて操作表示部8に故障発生注意情報を表示させるようになっている。即ち、本プリンタにおいては、制御部100が、被検対象たるプリンタの異常を判定する判定手段として機能しているのである。なお、故障発生注意情報をユーザーに報知する報知手段として、操作表示部8の他に、音、印字、ランプ表示等による報知方式を採用したものを用いてもよい。
次に示す表1は、異常のない試作機から取得された各種情報に基づいて上記逆行列を構築するための、情報取得工程を説明する取得データテーブルである。この取得データテーブルでは、k種類の情報からなる組情報をn組取得して逆行列を構成する例を示している。
情報取得工程では、まず、1組目の組情報を構成するk種類の情報(y11、y12・・・・・・y1k)がそれぞれセンサや制御部100等によって取得され、データテーブル内の1行目のデータとして、それぞれ記憶手段内に記憶される。次いで、2組目の組情報を構成するk種類の情報(y21、y22・・・・・・y2k)がそれぞれセンサや制御部100等によって取得され、データテーブル内の2行目のデータとして、それぞれ記憶手段内に記憶される。以降、3組目からn組目までの組情報が同様に取得されて、データテーブル内の3行目・・・n行目のデータとして、それぞれ記憶手段内に記憶される。そして、最後に、各組情報を構成するk種類の情報について、それぞれn個における平均と標準偏差(σ)とが求められて、それぞれn+1、n+2行面のデータとして、記憶手段内に記憶される。
上記情報取得工程が終わると、次の表2に示すような正規化データテーブルが構築を構築する情報正規化工程が実施される。この正規化データテーブルは、上述の取得データテーブルに基づいて構築される。
データの正規化とは、各取得情報について、その絶対値情報ではなく、変量情報に変換するための処理であり、次に示す関係式に基づいて、各情報の正規化データが算出される。なお、次式におけるiは、n組の組情報のうちの何れか1つであることを示す符号である。また、jは、k種類の情報のうちの何れか1つであることを示す符号である。
上記情報正規化工程が終わると、次に、相関係数算出工程が行われる。この相関係数算出工程では、n組の正規化データ群において、それぞれk種類の正規化データのうち、互いに異なる2種類が成立し得る全ての組合せ(
kC
2通り)について、次式に基づいて相関係数r
pq(r
qp)が算出される。
全ての組合せについての相関係数r
pq(r
qp)が算出されると、次に、対角要素を1、その他のp行q列の要素を相関係数r
pqとした、k×k個の相関係数行列Rが構築される。なお、この相関係数行列Rの内容を、次式に示す。
このような相関係数算出工程が終わると、次に、行列変換工程が実施される。この行列変換工程により、上記数3で示した相関係数行列Rが、次式で示される逆行列A(R
−1)に変換される。
本プリンタは、以上のような情報取得工程、情報正規化工程、相関係数算出工程、行列変換工程という一連のプロセスによって構築された逆行列Aを、工場出荷時の上記ROM(100c)内に予め記憶している。そして、出荷先において、複数のセンサ等によって実際に取得した各種の情報の全て又は一部の組合せからなる組情報について、逆行列Aによる多次元空間内におけるマハラノビスの距離Dを、次式に基づいて算出する。
上記制御部(100)は、このようにして求めたマハラノビスの距離Dを、予め設定した閾値と比較する。そして、マハラノビスの距離D(以下、マハラノビス距離という)が閾値よりも大きい場合には、取得された組情報について正常分布から大きくずれている異常データであると判定して、操作表示部(8)に故障発生注意情報を表示する。
かかる構成の本プリンタによれば、各種の情報の全て又は一部の組合せからなる組情報の実測値についての異常をMTS法によって判定することで、原因が明確に特定されない故障の発生を予測することができる。ところが、本発明者らは、このような予測を行う試作プリンタにおいて、異常であるにもかかわらず正常であると誤検知される場合があることを見出した。この誤検知の原因は、動作モードの設定に関連していた。
本プリンタにおいては、普通紙印字モード、OHP印字モードという2つの動作モードが、上記操作表示部(8)に対するユーザーの操作に基づいて選択可能である。普通紙印字モードが選択されると、100[mm/sec]というプロセス線速(各感光体、紙搬送ベルト51、各搬送ローラ、レジストローラ対4、定着ローラ6a等の線速)の設定条件下で画像が形成される。これに対し、OHP印字モードが選択されると、50[mm/sec]というプロセス線速の設定条件下で画像が形成される。
本発明者らは、試作プリンタにおいて、上述の2つの動作モードを混在させながら、紙搬送ベルト(51)の線速と、各感光体(11Y,M,C,K)の線速とを上述の光学センサによる検知結果に基づいて取得した。具体的には、紙搬送ベルト(51)の線速(以下、ベルト線速という)と、各感光体の線速(以下、ドラム線速という)とをそれぞれ測定しながら、200枚の転写紙に基準画像を形成した。これら200枚のうち、最初の100枚については、普通紙印字モード(以下、モード1ともいう)にて上質紙に基準画像を形成した。また、その後の100枚については、OHP印字モード(以下、モード2ともいう)にてOHPシートに基準画像を形成した。そして、200枚の転写紙のプリントアウトに伴って取得された200組の正常データ群の組情報に基づいて、逆行列Aを構築した。
図3は、この逆行列Aを用いたMTS法によって算出されるマハラノビス距離Dの2乗値と、紙搬送ベルト(51)の線速(以下、ベルト線速という)と、各感光体の線速(以下、ドラム線速という)との関係を示すグラフである。このような関係を成立させる逆行列Aを用いて、その後のプリントアウトの際に取得された次の表3に示すような組情報について、マハラノビス距離Dを算出してプリンタの異常を判定したとする。
この表3において、サンプル番号S5やS6の組情報は、何れもベルト線速及びドラム線速が正常範囲である100[mm/sec]あるいは50[mm/sec]から大きくずれている。よって、モード1、モード2にかかわらず異常であると判定されるべきである。ところが、マハラノビス距離Dの2乗が何れも比較的小さな値であるので、正常であると誤判定されてしまう。
そこで、本実施形態に係るプリンタにおいては、次のように構成されている。即ち、上述した複数の情報取得手段によってそれぞれ個別に取得される複数種類の情報のうち、少なくとも何れか1つである第1特定情報の値と、第1特定情報とは別の情報である第2特定情報の値との正常関係を示す正常関係情報を記憶している。そして、判定手段たる上記制御部(100)が、第2特定情報の取得値を、第1特定情報の取得値と正常関係情報とに基づいて補正して、異常の判定に用いるように構成されている。
具体的には、第1特定情報が動作モード設定値である場合を例にすれば、データ記憶手段たる上記ROM(100c)に、各色の感光体(11Y,M,C,K)についてのドラム/モード正常関係データテーブルをそれぞれ記憶している。このドラム/モード正常関係データテーブルは、予めの試験によって調べられた動作モード設定値と、感光体(11Y,M,C,K)の正常値との関係を示すデータテーブルである。Y用の感光体(11Y)のドラム線速の正常値について、モード1、2においてそれぞれ「102」、「51」であることが予めの試験によって確認されている場合を例にすれば、Y用のドラム/モード正常関係データテーブルは次のようになる。即ち、「1と102」、「2と51」、をそれぞれ関連付けるデータテーブルである。同様にして、予めの試験によって確認された他色のM,C,Kにおける動作モード設定値とドラム線速の正常値との関係を示すM,C,K用のY用のドラム/モード正常関係データテーブルを、上記ROM(100c)に記憶している。本プリンタにおいて、動作モード設定値は、複数の情報取得手段によってそれぞれ個別に取得される複数種類の情報のうちの、少なくとも何れか1つである第1特定情報として機能している。また、Y,M,C,K用のドラム線速は、Y,M,C,K用光学センサ(16Y,M,C,K)による検知結果に基づいて算出される情報であるので、情報取得手段によって取得される情報であり且つ第1特定情報とは別の情報である第2特定情報として機能している。即ち、本プリンタにおいては、複数種類の情報のうち、第1特定情報の値と、第2特定情報の値との正常関係を示す正常関係情報たるY,M,C,K用のドラム/モード正常関係データテーブルをROM(100c)に記憶しているのである。
また、上述の例において、本プリンタは、ベルト/モード正常関係データテーブルも、データ記憶手段たる上記ROM(100c)に記憶している。このベルト/モード正常関係データテーブルは、予めの試験によって調べられた動作モード設定値と、ベルト線速の正常値との関係を示すデータテーブルである。例えば、ベルト線速の正常値について、モード1、2においてそれぞれ「98」、「49」であることが予めの試験によって確認されている場合に、ベルト/モード正常関係データテーブルは次のようになる。即ち、「1と98」、「2と49」、をそれぞれ関連付けるデータテーブルである。ベルト線速は、上記ベルト用光学センサ(55)による検知結果に基づいて算出される情報であるので、情報取得手段によって取得される情報であり且つ第1特定情報たる動作モード設定値とは別の情報である第2特定情報として機能している。即ち、本プリンタにおいては、ベルト/モード正常関係データテーブルも、第1特定情報の値と、第2特定情報の値との正常関係を示す正常関係情報として機能しているのである。
上記制御部(100)は、第2特定情報たる各色のドラム線速の取得値を、第1特定情報たる動作モード設定値の取得値と、上述のY,M,C,K用のドラム/モード正常関係データテーブルとに基づいて補正して、異常の判定に用いるように構成されている。より詳しくは、本プリンタが正常な状態である場合には、モード1、モード2において、Y用のドラム線速が上述のようにそれぞれ「102」、「51」となる。つまり、モード2におけるY用のドラム線速の正常値に対して、これとモード1におけるY用のドラム線速の正常値との差分(以下、正常値差分という)を加算した値が、後者の正常値になる。そこで、上記制御部(100)は、Y用のドラム線速がモード2の状態にて上記Y用光学センサからの出力に基づいて取得された場合には、その取得値を、上記正常値差分の加算によってモード1に相当する値に補正して、異常の判定に用いる。例えば、動作モード2のときに、Y用の感光体(11Y)のドラム線速の取得値が「54」であったとする。すると、上記制御部(100)は、この取得値を上記正常値差分である「51」の加算によって「105」に補正して異常の判定に用いるのである。
また、上記制御部(100)は、第2特定情報たるベルト線速の取得値を、第1特定情報たる動作モード設定値の取得値と、上述のベルト/モード正常関係データテーブルとに基づいて補正して、異常の判定に用いるようにも構成されている。より詳しくは、本プリンタが正常な状態である場合には、モード1、モード2において、ベルト線速が上述のようにそれぞれ「98」、「49」となる。つまり、モード2におけるY用のドラム線速の正常値に対して、これとモード1におけるY用のドラム線速の正常値との差分(以下、正常値差分という)を加算した値が、後者の正常値になる。そこで、上記制御部(100)は、ベルト線速がモード2の状態にて上記Y用光学センサからの出力に基づいて取得された場合には、その取得値を、上記正常値差分の加算によってモード1に相当する値に補正して、異常の判定に用いる。例えば、動作モード2のときに、ベルト線速が「52」であったとする。すると、上記制御部(100)は、この取得値を上記正常値差分である「49」の加算によって「101」に補正して異常の判定に用いるのである。
図4は、上記ROM(100c)内に記憶されている逆行列Aを用いたMTS法によって算出されるマハラノビス距離Dの2乗値と、ベルト線速及びドラム線速との関係の一例を示すグラフである。本プリンタは、このブラフで示される関係を実現するような逆行列Aを上記ROM(100c)内に記憶しており、この逆行列Aは、動作モード設定値がモード1となっている場合を前提とした標準情報である。モード1が前提になっているので、ベルト線速、ドラム線速の分布の中心は、それぞれ100[mm/sec]程度になっている。
先に示した表3におけるサンプル番号S5の組情報において、ベルト線速、ドラム線速は、ともに70[mm/sec]である。これらの情報がモード1の条件下で取得されたものと仮定してみる。すると、それぞれの情報は補正されることなくそのまま異常の判定に用いられ、それらによるマハラノビス距離Dの2乗値は明らかに異常になることが、図4からわかる。よって、サンプル番号S5の組情報がモード1の条件下で取得されると、プリンタが異常であると判定される。
一方、サンプル番号S5の組情報におけるベルト線速、ドラム線速が、ともに動作モード2の条件下で取得されたものと仮定してみる。すると、これらベルト線速、ドラム線速の取得値は、それぞれ「49」、「51」の加算によって「119」、「121」に補正される。これら補正後の値によるマハラノビス距離Dの2乗値は明らかに異常であることが、図4からわかる。よって、サンプル番号S5の組情報がモード2の条件下で取得されたものであっても、プリンタが異常であると判定される。
このように、本プリンタでは、第2特定情報たるベルト線速やドラム線速の実際の取得値について、次のように予測する。即ち、第1特定情報たる動作モード設定値が所定値であるモード1でないときに取得された値ではあるものの、仮にモード1であったならばどのような値で取得されるのかを、上記正常値差分に基づいて予測する。そして、ベルト線速やドラム線速をこのようにして得られた予測値と同じ値に補正した後、それぞれの補正値と、モード1用の逆行列Aとに基づいて、マハラノビス距離Dを求めて異常か否かを判定する。かかる構成では、第2特定情報たるベルト線速やドラム線速の取得値の正常値が、第1特定情報たる動作モード設定値の値に応じて異なってしまうことによる誤判定を回避することができる。
図5は、上記制御部(100)によって実施される異常判定制御のフローの一例を示すフローチャートである。この異常判定制御では、まず、1ジョブが開始されるまで制御フローの進行が待機される(ステップ1:以下、ステップをSと記す)。この1ジョブとは、転写紙1枚へのプリントアウトを行うための各機器動作のことである。1ジョブが開始されたと判断されると(S1でY)、次に、ベルト線速やドラム線速などといった組合せからなる組情報が実際に取得される(S2)。そして、その組情報における第1特定情報(例えば動作モード設定値)の取得値について、所定値(例えば動作モード1)であるか否かが判断される(S3)。ここで、第1特定情報が所定値でないと判断された場合(S3でN)には、S2で取得された組情報の中の第2特定情報(例えばドラム線速やベルト線速)が、所定値の第1特定情報(例えばモード1)に対応する値に補正される(S4)。この補正は、予めの試験によって確認された第1特定情報の値と、第2特定情報の値との正常関係を示す正常関係情報と、第1特定情報の取得値と、第2特定情報の取得値とに基づいてなされる。例えば、まず、モード2においてベルト線速が取得された場合には、まず、モード2という第1特定情報の取得値と、上述のベルト/モード正常関係データテーブルとに基づいて、上記正常値差分が特定される。そして、第2特定情報の取得値がこの正常値差分に基づいて、所定値の第1特定情報に対応する値に補正されるのである。このようにして第2特定情報の取得値が補正されたら、補正後の第2特定情報を含む組情報についてのマハラノビス距離Dが、上記ROM(100c)内に記憶されている逆行列Aに基づいて算出される(S5)。この逆行列Aは、第1特定情報が上記所定値であるときに取得された組情報に基づいて構築されたものである。
一方、上述のS3で、第1特定情報が所定値であると判断された場合(S3でY)には、S2で取得された組情報の中の第2特定情報が補正されることなく、制御フローが上述のS5の工程に進んで、組情報についてのマハラノビス距離Dが算出される。
マハラノビス距離Dが算出されると、次に、算出結果について、所定の閾値を超えるか否かが判断される(S6)。マハラノビス距離Dが閾値を超える場合には(S6でY)、何らかの原因によってプリンタ内に異常が発生している可能性が高い。よって、異常が発生していると判定されて故障発生注意情報が上記操作表示部(8)に表示された後(S7)、一連の制御フローが上記S1にリターンされる。一方、マハラノビス距離Dが閾値を超えない場合には(S6でN)、異常発生の可能性が低いので、異常であると判定されることなく、一連の制御フローが上記S1にリターンされる。
なお、理解を容易にするために、ベルト線速とドラム線速とからなる2次元空間におけるマハラノビス距離Dを求める例について説明した。しかし、より多くの次元の空間におけるマハラノビス距離Dを求めた方が、より多様な異常を検出することができる。動作モード設定値等の特定情報については、逆行列Aに含めても、含めなくてもよい。
また、第1特定情報と第2特定情報との正常な関係を示す正常関係情報として、データテーブルを上記ROM(100c)に記憶させた例について説明したが、両特定情報の関係をアルゴリズムで示すことが可能な場合もある。このような場合には、正常関係情報として、そのアルゴリズムを記憶させてもよい。
また、標準情報として、動作モード設定値がモード1となっている条件下で取得された正常データ群に基づく逆行列Aを記憶させた例について説明したが、モード2の条件下で取得された正常データ群に基づく逆行列Aを記憶させてもよい。更には、実際のプリントジョブでは用いられない中間的なモードに相当する条件下で取得された正常データ群に基づく逆行列Aを記憶させてもよい。これらの場合には、第2特定情報の取得値を、そのモード値に相当する値に補正すればよい。
また、上述のY,M,C,Kトナー用電流検知センサ(9Y,M,C,K)によって取得された電流値に基づいて算出される各色トナーの電気抵抗値は、機内温度に応じてその正常値分布が異なってくる。そこで、次のようにして異常を判定させるようにすることができる。即ち、トナーの電気抵抗値の情報を含む組情報について、第1特定情報たる温度情報が所定値である場合における逆行列Aを上記ROM(100c)に記憶させておく。また、プリンタ全体が正常である場合における温度と、トナーの電気抵抗値との正常関係を予め調べておき、その正常関係情報を上記ROM(100c)に記憶させておく。そして、トナーの電気抵抗値についての実際の取得値と、温度についての実際の取得値と、正常関係情報とに基づいて、温度が上述の所定値であると仮定した場合の値に、電気抵抗値の取得値を補正する。次に、補正後の電気抵抗値を含む組情報についてのマハラノビス距離Dを求めればよい。すると、例えば、図6のグラフのような、トナーの電気抵抗値を広範囲に渡って正常であると誤判定させてしまう(マハラノビス距離Dの分布を広くしてしまう)逆行列Aではなく、図7のグラフのような誤判定を回避し得る逆行列Aを用いることができる。
また、標準情報たる逆行列Aを1つだけ記憶させておく例について説明したが、互いに異なる値の第1特定情報にそれぞれ対応する複数の逆行列Aを記憶させてもよい。この場合は、対応する第1特定情報の値が第1特定情報の取得値に最も近い逆行列を、複数の逆行列Aの中から特定して、それと、補正後の第2特定情報を含む組情報とに基づいて、マハラノビス距離Dを求めさせるようにすればよい。こうすることで、例えば、図7のようなマハラノビス距離Dの分布を示す逆行列Aの他に、例えば、図8や図9のような分布を示す逆行列Aを用いて、プリンタの異常を判定させることができる。
本プリンタにおいて、異常判定装置を構成する複数の情報取得手段としては、次に列記するものが挙げられる。即ち、Y,M,C,K用光学センサ(16Y,M,C,K)、定着温度センサ(6c)、ベルト用光学センサ(55)、各電流検知センサ(9Y,M,C,K)、CPU(100a)、操作表示部(8)等である。また、RAM(100b)やROM(100c)が異常判定装置を構成する記憶手段として機能している。また、CPU(100a)が、異常判定装置を構成する異常判定手段として機能している。
次に、実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した各実施例のプリンタについて説明する。
[実施例1]
図10は、動作モード設定値がモード2になっている条件下で取得された正常データ群に基づいて構築された逆行列Aを用いたMTS法によって算出されるマハラノビス距離Dの2乗値と、ベルト線速と、ドラム線速との関係を示すグラフである。モード2が前提になっているので、ベルト線速、ドラム線速の分布の中心は、それぞれ50[mm/sec]程度になっている。モード1が前提になっている図4のグラフと比較してみると、次のことがわかる。即ち、マハラノビス距離Dの2乗値が20以内である範囲に注目すると、モード1のグラフの方がモード2のグラフよりも広い分布となっている。このように、情報の数値が大きくなるほど、マハラノビス距離Dの値が広い分布となるのが一般的である。
上述の実施形態においては、モード2における正常値と、モード1における正常値との差分である正常値差分の加算により、ベルト線速やドラム線速を補正する例について説明したが、このような補正では、次に説明する理由によって誤差が生じてしまう。即ち、プリンタ全体が正常な状態において、マハラノビス距離Dの分布は、図4と図10との比較からわかるように、モード2に基づくものよりも、モード1に基づくものの方が広くなる。また、各線速の補正に用いられる正常値差分は、「51」などといった具合に、特定の数値になるので分布をもたない。モード2の条件下における各線速の取得値をかかる正常値差分の加算によって補正した値には、モード2におけるより狭い分布だけしか反映されないので、補正値はモード1における実際の値よりも分布の中心側に位置する。すると、本来であれば閾値を超えるべきである補正値が、閾値を超えなくなって、異常を正常と誤判定させてしまうことがある。
そこで、本実施例1に係るプリンタにおいては、線速等の第2特定情報の取得値について、上述の正常値差分の加算によって補正するのではなく、次のようにして補正するように構成されている。即ち、まず、所定値の第1特定情報に対応する値と、情報取得手段によって実際に取得された取得値の第1特定情報に対応する値とを、正常関係情報に基づいて求める。そして、両方の値の比の乗算によって第2特定情報の取得値を補正する。具体的には、第1特定情報、第2特定情報が動作モード設定値、ベルト線速である場合を例にすると、所定値たるモード1に対応する値と、実際の動作モード設定値の取得値に対応する値とを、上述のベルト/モード正常関係データテーブルから特定する。そして、両方の値の比を演算する。このとき、両方の値が同じ、即ち、逆行列Aに対応する動作モード設定値と、ベルト線速が取得されたときの動作モード設定値とが同じモード1であった場合には、それぞれに対応するベルト線速も同じ値になるので、両方の値の比が「1」となる。一方、ベルト線速が取得されたときの動作モード設定値がモード2であった場合には、ベルト/モード正常関係データテーブルにてモード1に対応するベルト線速と、モード2に対応するベルト線速との比が「1」にはならない。その比(以下、正常値比という)は「2」程度となり、乗算により、後者のベルト線速の分布を、前者のベルト線速の分布に相当させるようにより広くする数値となる。よって、本プリンタでは、正常値比の乗算によって第2特定情報の取得値を補正することで、正常値差分の加算によって補正する場合に比べて、補正誤差による誤判定を抑えることができる。
[実施例2]
本実施例2に係るプリンタは、第1特定情報の取得値と、正常関係情報とに基づいて、第2特定情報の取得値を補正する点が、実施形態に係るプリンタと同じである。但し、MTS法に用いる逆行列Aを、機械書込不能なROM(100c)に記憶しているのではなく、機械書込可能なRAM(100b)に記憶する点が、実施形態に係るプリンタと異なる。また、それら逆行列Aを工場出荷時のRAMに予め記憶していない点も、実施形態に係るプリンタと異なる。CPU(100a)が出荷先での初期運転期間に伴って取得される複数の情報からなる多種情報(組情報の他、特定情報も含む)についての複数の取得結果に基づいて、逆行列Aを構築するようになっている。即ち、CPU(100a)が組情報の取得結果に基づいて、逆行列Aを構築する標準情報構築手段として機能する点も、実施形態に係るプリンタと異なるのである。なお、出荷先での初期運転期間においては、プリンタ内の各部材が新品であるので、各情報取得手段による各種情報の取得結果が、正常データとなる。
図11は、本プリンタの制御部(100)によって実施される逆行列構築制御のフローを示すフローチャートである。この逆行列構築制御は、出荷先における初期運転期間中に実行される。この初期運転期間は、具体的には、出荷後の第1回目のプリントジョブが行われてから、n回目のプリントジョブが行われるまでの期間である。図11に示す逆行列構築制御が実施される前提として、先に表1に示した取得データテーブルが、工場出荷時の本プリンタの上記RAM(100b)内に記憶されている。但し、この取得データテーブルは、データが空の状態になっている。
出荷後に初めに本プリンタの主電源が投入されると、逆行列構築制御が開始されて、組番号iの値が「0」に初期化される(S1)。この組番号iは、k種類の情報からなる組情報の実測回数を示す変数である。これが初期化された後、1ジョブが開始されると(S2でY)、組番号iに「1」が加算される(S3)。そして、各種センサやデータ読取によってk種類の情報からなる1つの組情報が取得(実測)された後(S4)、上述の取得データテーブルに格納される(S5)。次に、組番号iについて「n」であるか否かが判定され(S6)、「n」でない場合には(S6でN)、制御フローが上記S2にループせしめられる。このループにより、次回の1ジョブにて、i+1番目の組情報が取得されて、取得データテーブルに格納されることになる。一方、組番号iが「n」である場合には(S6でY)、n組の組情報についての情報取得工程が終了し、上述の情報正規化工程、相関係数算出工程、行列変換工程が順に行われる。具体的には、まず、取得データテーブルに基づいて正規化データテーブルが構築される(S7)。次いで、その正規化データテーブルに基づいて相関係数行列Rが構築された後、構築結果に基づいて逆行列Aが構築される(S8)。
なお、図11に示した逆行列構築制御の実施中に、動作モード設定値の変更など、第2特定情報の正常値を変化させるような条件変更が行われる場合も考えられる。このような場合でも、構築される逆行列Aに装置の標準情報を正確に反映させるように、逆行列構築制御中においても、必要に応じて第2特定情報を補正させるようにすることが望ましい。具体的には、図11に示した逆行列構築制御に代えて、図12に示すような逆行列構築制御を実施させるのである。同図の逆行列構築制御においては、S4とS5との間にSaやSbの工程が行われる点が、図11に示した逆行列構築制御と異なる。k種類の情報の取得によって1つの組情報が得られると(s4)、次に、図5に示した異常判定制御と同様にして、第1特定情報の取得値について、所定値であるか否かが判断される(sa)。そして、所定値である場合には(SaでY)、組情報中における第2特定情報の値が補正されることなく、組情報が取得データテーブルに記憶される(S5)。一方、所定値でない場合には(SaでN)、第2特定情報の取得値が所定値の第1特定情報に対応する値に補正されてから(Sb)、補正後の第2特定情報を含む組情報が取得データテーブルに記憶される。
以上の構成の本プリンタにおいては、逆行列Aとして、それぞれ他のプリンタ試験機の試運転に基づいて構築されたものではなく、本プリンタの初期運転時に取得した各種情報に基づいて構築したものを用いる。よって、異常の判定に用いる情報の正常値が各種部品の精度誤差などによって製品毎にばらついてしまうことによる判定精度の悪化を回避することができる。しかも、逆行列Aを出荷先にて自動で構築するので、出荷前に工場で各製品毎の試運転を行ってそれぞれの逆行列Aを構築することによるコストアップを回避することもできる。
なお、これまで、画像としてフルカラー画像という多色画像を形成するプリンタについて説明したが、単色画像を形成するプリンタについても、本発明の適用が可能である。また、実施例1では、複数の動作モード設定値(モード1、モード2の2種類)に関する第2特定情報を何れか1つの動作モード設定値に対応する値(100mm/secに対応する値)に補正したが、実際の動作モード設定値では出現しないような値(例えば10mm/sec)に対応させるように補正してもよい。また、実施例1では、2つの動作モード設定値に関する第2特定情報を一方の動作モード設定値に対応する値に補正したが、3種類以上の動作モード設定値に関する第2特定情報を2種類以上の動作モード設定値に対応する値にそれぞれ補正してもよい。このようにしても、記憶すべき標準情報の容量を減少させて低コスト化を図ることができる。
以上、実施例1に係るプリンタにおいては、標準情報たる逆行列Aがモード1などといった所定値の第1特定情報に対応する値になっている。また、判定手段たる上記制御部(100)が、第2特定情報について、所定値の第1特定情報(例えばモード1)に対応する値と、実際に取得された取得値に対応する値とを、ベルト/モード正常関係データテーブルなどといった正常値関係情報に基づいて求める。そして、両方の値の比である正常値比の乗算によって第2特定情報の取得値を補正する。かかる構成では、上述した理由により、第2特定情報の取得値を上記正常値差分の加算によって補正する場合よりも、補正誤差による誤判定を抑えることができる。
また、実施形態や各実施例に係るプリンタにおいては、標準情報としてデータ群の逆行列Aを用い、且つ、判定手段たる制御部(100)がその逆行列Aに基づいてマハラノビス距離Dを算出して異常の判定に用いるように構成されている。かかる構成では、単純に標準データと取得データとの比較によって異常を判定する従来の画像形成装置とは異なり、MST法を利用して原因が明確に特定されない故障の発生を予測することができる。
また、実施例2に係るプリンタにおいては、複数の情報取得手段によって取得される複数種類の情報からなる多種情報についての複数の取得値に基づいて、標準情報たる逆行列Aを構築する標準情報構築手段たるCPU(100a)を設けている。かかる構成では、上述した理由により、プリンタにおける製品毎の部品誤差による判定精度の低下を回避しつつ、各製品について出荷前に各逆行列を構築するための試運転を行うことによるコストアップを回避することができる。