JP4559959B2 - 高強度ばね用鋼 - Google Patents

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Description

本発明はエンジン用弁ばねや懸架ばねにもちいるばね用鋼に関するものであり、特に冷間でコイリングされ、高強度かつ高靱性を有するばね用鋼に適するものである。
自動車の軽量化、高性能化に伴い、ばねも高強度化され、熱処理後に引張強度1500MPaを越えるような高強度鋼がばねに供されている。近年では引張強度1900MPaをこえる鋼線も要求されている。それはばね製造時の歪取り焼鈍や窒化処理など、加熱によって少々軟化してもばねとして支障のない材料硬度を確保するためである。
また、窒化処理やショットピーニングでは表層硬度が高まり、ばね疲労における耐久性が格段に向上することが知られているが、ばねのへたり特性については表層硬度で決まるものではなく、ばね素材内部の強度または硬度が大きく影響する。従って内部硬度を非常に高く維持できる成分にしあげることが重要である。
その手法としては、V、Nb、Mo等の元素を添加することで焼入れで固溶し、焼き戻しで析出する微細炭化物を生成させ、それによって転位の動きを制限し、耐へたり特性を向上させた発明がある(例えば、特許文献1参照)。
一方、鋼のコイルばねの製造方法では鋼のオーステナイト域まで加熱してコイリングし、その後、焼入れ焼戻しを行う熱間コイリングとあらかじめ鋼に焼入れ焼戻しを施した高強度鋼線を冷間にてコイリングする冷間コイリングがある。冷間コイリングでは鋼線の製造時に急速加熱急速冷却が可能なオイルテンパー処理や高周波処理などを用いることができるため、ばね材の旧オーステナイト粒径を小さくすることが可能で、結果として破壊特性に優れたばねを製造できる。またばね製造ラインにおける加熱炉などの設備を簡略化できるため、ばねメーカーにとっても設備コストの低減につながるなどの利点があり、最近では太径の懸架ばねにおいても冷間化が進められている。
しかし冷間コイリングばね用鋼線の強度が大きくなると、冷間コイリング時に折損し、ばね形状に成形できない場合も多く、そのような場合には強度と加工性が両立しないために工業的には不利ともいえる方法でコイリングせざるを得なかった。通常、弁ばねの場合、オンラインでの焼入れ焼戻し処理、いわゆるオイルテンパー処理した鋼線を冷間でコイリングすることが多いが、例えば900〜1050℃に加熱してばね形状にコイリングし、その後425〜550℃で焼戻し処理するなど、コイリング時の折損を防止するために線材を加熱して変形を容易な温度で熱間コイリングし、その後、高強度を得るためにコイリング後の調質処理を行う発明がある(例えば、特許文献2参照)。このようなコイリング時の加熱とコイリング後の調質処理はばね寸法の熱処理ばらつきの原因になったり、処理能率が極端に低下したりするため、コスト、精度、製品安定性の点で冷間コイリングされたばねに比べ劣る。
また炭化物に関しては、例えばNb、V系の炭化物の平均粒径に注目した発明がなされているが、V、Nb系炭化物の平均粒径の制御だけでは不十分であることを示している(例えば、特許文献3参照)。この先行技術では圧延中の冷却水によって異常組織が生じることを懸念する記述があり、実質的には乾式圧延を推奨している。このことは工業的には非定常作業であり、通常の圧延と明らかに異なることが推定され、たとえ平均粒径を制御しても周辺マトリックス組織に不均一を生じると圧延トラブルを生じることを示唆している。
また、セメンタイトを中心とした炭化物も制御することで性能向上を図った発明がある(例えば、特許文献4参照)。
しかしさらなる疲労、へたりなどのばね性能向上とためにはさらなる高強度化とばねの加工性(コイリング性)確保が必要であり、これまでの成分や熱処理後の炭化物の寸法制御だけでは限界があった。
このように強度と加工性を両立するような技術が模索され、セメンタイト系炭化物に着目した組織制御によって強度と加工性の両立が図られてきた(前記特許文献4参照)。さらに、残留オーステナイトを防止することによって安定性を増した(例えば、特許文献5参照)。これらはその熱処理工程に負うところが大きい。一方、弁ばねでは酸化物が重点的に制御されており、酸化物制御による疲労強度向上が主張されている。この酸化物は疲労強度そのものだけでなく、耐破壊特性の安定性あるいは製品ばらつきにも影響すると考えられ、破面における介在物出現率を抑制することが求められている(例えば、特許文献6参照)。
さらに酸化物だけでなく硫化物、窒化物、炭化物およびそれらの複合介在物が存在していれば、疲労強度を低下させたり、加工性低下の原因となる。これまで弁ばねのような非常に高い引張強度を有する鋼において前述の特許文献6ではTiNを、そして、炭化物についても制御が試みられてきたが(例えば、特許文献7参照)、硫化物にまで考慮した技術は少ない。
硫化物に注目した例として、Ti、Cu、Ca、Zrのすくなくとも1種以上を添加することが有効としているものがあるが、その実施例では大半がTi添加であり、Tiを添加しない場合でもZr、Caなど酸化物生成元素を多量に添加している(例えば、特許文献8参照)。本発明の特徴の一つであるZrについて考えると10ppm以上(実施例では70ppm)という、多量に添加されているため、酸化物への影響が大きく、疲労強度を低下させたり、介在物出現率が高くなるなどの弊害を生じる。
また、他の例として、Zr添加が有効とするものがあるが(例えば、特許文献9参照)、その添加量は、10ppm以上(実施例では23ppm)という、多量に添加されているため、酸化物への影響が大きく、疲労強度を低下させたり、介在物出現率が高くなるなどの弊害を生じる。
さらに、Zr添加量を鋼中固溶量0.5ppm以下に抑制すべきであることが示され、これを超えると介在物起因の弊害が生じることが明記されている発明がある(例えば、特許文献10参照)。しかし、この添加量では硫化物制御には不十分であり、そのことは前述の特許文献8からも容易に推測される。
特開昭57−32353号公報 特開平05−179348号公報 特開平10−251804号公報 特開2002−180198号公報 特開2000−169937号公報 特開平6−158226号公報 特開平10−251804号公報 特開平10−1746号公報 特開2003−105485号公報 特開平9−310145号公報
本発明は冷間でコイリングされ、十分な大気強度とコイリング加工性を両立できる引張強度2000MPa以上のばね用鋼線に供するばね用鋼を提供することを課題としている。
発明者らは従来のばね鋼線では注目されていなかった鋼中の酸化物、硫化物を化学元素によって制御して高強度とコイリング性を両立させたばね用鋼を開発するに至った。
すなわち本発明は次に示す鋼材を要旨とする。
(1) 質量%で、
C:0.45〜0.7%、
Si:1.0〜3.0%、
Mn:0.05〜2.0%、
P:0.015%以下、
S:0.015%以下、
N:0.0015〜0.02%、
t−O:0.0002〜0.01%、
W:0.05〜1.0%、
Cr:0.05〜2.5%、
Zr:0.0001〜0.0005%、
V:0.05〜1.0%、
を含有し、さらに、
Al≦0.01%、
Ti≦0.003%
に制限し、残部がFe及び不可避不純物より成ることを特徴とするばね用鋼。
(2) 質量%で、
C:0.45〜0.7%、
Si:1.0〜3.0%、
Mn:0.05〜2.0%、
P:0.015%以下、
S:0.015%以下、
N:0.0015〜0.02%、
t−O:0.0002〜0.01%、
W:0.05〜1.0%、
Cr:0.05〜2.5%、
Zr:0.0001〜0.0005%、
Mg:0.0001〜0.0005%、
を含有し、さらに、
Al≦0.01%、
Ti≦0.003%
に制限し、残部がFe及び不可避不純物より成ることを特徴とするばね用鋼。
(3) 質量%で、
C:0.45〜0.7%、
Si:1.0〜3.0%、
Mn:0.05〜2.0%、
P:0.015%以下、
S:0.015%以下、
N:0.0015〜0.02%、
t−O:0.0002〜0.01%、
W:0.05〜1.0%、
Cr:0.05〜2.5%、
Zr:0.0001〜0.0005%、
V:0.05〜1.0%、
Mg:0.0001〜0.0005%、
を含有し、さらに、
Al≦0.01%、
Ti≦0.003%
に制限し、残部がFe及び不可避不純物より成ることを特徴とするばね用鋼。
) さらに質量%で、
Mo:0.05〜1.0%
を含むことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のばね用鋼。
) さらに質量%で、
b:0.01〜0.05%
含むことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のばね用鋼。
) さらに質量%で、
Ni:0.05〜3.0%、
Co:0.05〜3.0%、
B:0.0005〜0.006%
の1種または2種以上を含むことを特徴とする上記(1)〜()いずれかに記載のばね用鋼。
) さらに質量%で、
Cu:0.05〜0.5%
を含むことを特徴とする上記(1)〜()のいずれかに記載のばね用鋼。
) さらに質量%で、
a:0.0002〜0.01%、
Hf:0.0002〜0.01%
の1種または2種を含むことを特徴とする上記(1)〜()のいずれかに記載のばね用鋼。
) さらに質量%で、
Te:0.0002〜0.01%、
Sb:0.0002〜0.01%
の1種または2種を含むことを特徴とする上記(1)〜()のいずれかに記載のばね用鋼。
本発明鋼は、冷間コイリングばね用鋼線中のセメンタイトを含む球状炭化物、硬質酸化物、硫化物を制御することで、強度を2000MPa以上に高強度化するとともに、コイリング性を確保し高強度かつ破壊特性に優れたばねを製造可能になる。
発明者は高強度と加工性を両立するための化学成分を規定することで、さらに良好な性能を得ることのできる鋼を発明するに至った。
その詳細を以下に示す。
C:0.45〜0.70%
Cは鋼材の基本強度に大きな影響を及ぼす元素であり、従来より十分な強度を得られるように0.45〜0.7%とした。0.45%未満では十分な強度を得られない。特にばね性能向上のための窒化を省略した場合でも十分なばね強度を確保するには0.50%以上のCが好ましい。さらに強度−コイリングのバランス観点から好ましくは0.6%以上とするのがよい。
一方、C量が増加すると、焼入れ焼戻し後の強度は向上する。しかし焼入れ時のマルテンサイト形態が中炭素鋼で一般的なラスマルテンサイトからレンズマルテンサイトにその形態を変化させることが知られている。レンズマルテンサイトを焼戻して生成させた焼戻しマルテンサイト組織の炭化物分布はラスマルテンサイトを焼戻した場合のそれと比較して、炭化物密度が低かったり、一定方向に並んで分布するために結晶に極端に方向性を生じ、ラスマルテンサイトの焼戻し組織よりも脆い。0.70%を超えて添加すると、焼入れ時のレンズレンズマルテンサイト量や残留オーステナイト量が多くなる傾向にあり、焼戻し後の強度が高くなるものの延性が低下するため、0.70%を上限とした。また熱処理工程でのC固溶が不十分であると局部的に実質過共析となり、粗大セメンタイトを多量に析出するため、靱性を著しく低下させる。このことは同時にコイリング特性を低下させる。
さらにC量が多い場合には合金系やセメンタイト系の炭化物の固溶が困難になる傾向にあり、熱処理における加熱温度が低い場合や加熱時間が短い場合には強度やコイリング性が不足する場合も多い。このようにC量を増加することでレンズマルテンサイトや未固溶炭化物の増加により、脆化する場合も多い。
そのため、そのため好ましくは0.68%以下とすることで、未溶解炭化物とレンズマルテンサイト生成と未溶解炭化物を減少させることができる。
Si:1.0〜3.0%
Siは鋼製造時には脱酸元素として添加されるとともに、ばね鋼ではばねの強度、硬度と耐へたり性を確保するために必要な元素であり、少ない場合、必要な強度、耐へたり性が不足するため、1.0%を下限とした。またSiは粒界の炭化物系析出物を球状化、微細化する効果があり、積極的に添加することで粒界析出物の粒界占有面積率を小さくする効果がある。しかし多量に添加しすぎると、材料を硬化させるだけでなく、脆化する。そこで焼入れ焼き戻し後の脆化を防ぐために3.0%を上限とした。
Siは焼戻し軟化抵抗にも寄与する元素でもあるため高強度線材を作成するにはある程度多量に添加することが好ましい。具体的には1.2%以上添加することが好ましい。さらに高強度ばねでは耐へたり性が重要であることから、さらに好ましくは1.6%以上、さらに好ましくは2.0%以上の添加がよい。一方、安定的なコイリング性を得るためには好ましくは2.6%以下とすることが好ましい。
Mn:0.05〜2.0%
Mnは脱酸や鋼中SをMnSとして固定するとともに、焼入れ性を高めて熱処理後の硬度を十分に得るため、多用される。この安定性を確保するために0.05%を下限とする。またMnによる脆化を防止するために上限を2.0%とした。
さらに強度とコイリング性を両立させるには、好ましくは0.1〜1.5%が好ましい。炭化物希薄域への影響を考慮すると、残留オーステナイトや合金元素の偏析を抑制する場合には極力低く、0.4%未満、さらには0.3%以下に抑制することが好ましい。一方、熱処理鋼線の直径が大きくなると焼入れ性を確保する必要があル場合にはMnは容易に焼入れ性を付与できるために有効な元素である。この焼入れ性を優先させる場合には0.4%を超えて添加してもよい。ただし炭化物希薄域やコイリングを考慮する場合には1.0%以下にすることが有効である。
P:0.015%以下
Pは鋼を硬化させるが、さらに偏析を生じ、材料を脆化させる。特にオーステナイト粒界に偏析したPは衝撃値の低下や水素の侵入により遅れ破壊などを引き起こす。そのため少ない方がよい。そこで脆化傾向が顕著となるPは0.015%以下と制限した。さらに熱処理鋼線の引張強度が2150MPaを超えるような高強度の場合には0.01%未満にすることが好ましい。
S:0.015%以下
SもPと同様に鋼中に存在すると鋼を脆化させる。Mnによって極力その影響を小さくするが、MnSも介在物の形態をとるため、破壊特性は低下する。特に高強度鋼のでは微量のMnSから破壊を生じることもあり、Sも極力少なくすることが望ましい。その悪影響が顕著となる0.015%を上限とした。
さらに熱処理鋼線の引張強度が2150MPaを超えるような高強度の場合には0.01%未満にすることが好ましい。
N: 0.0015〜0.02%
Nは鋼中マトリックスを硬化させるが、Ti、Vなどの合金元素が添加されている場合には窒化物として存在し、鋼線の性質に影響を与える。Ti、Nb、Vを添加した鋼では炭窒化物の生成が容易になり、オーステナイト粒微細化のピン止め粒子となる炭化物、窒化物および炭窒化物の析出サイトになりやすい。そのためばね製造までに施される様々な熱処理条件で安定的にピン止め粒子を生成することができ、鋼線のオーステナイト粒径を微細に制御することができる。このような目的から0.0015%以上のNを添加させる。一方、過剰なNは窒化物および窒化物を核として生成した炭窒化物および炭化物の粗大化を招く。Ti、V、Nbなどの窒化物/炭窒化物生成元素を添加する場合には粗大な窒化物/炭窒化物を析出したり、Bを添加するとBNを析出するなどによって、耐破壊特性を損なう。そこでそのような弊害の伴わない0.02%を上限とする。
ただしNは熱間延性を低下させる元素でもあるため、熱処理などの容易性を考慮すると0.009%以下が好ましい。また下限いついても少ない方が好ましいのであるが、製造上のコストや脱窒工程での容易性を考慮すると0.0015%以上が好ましい。
またV、Nbなどのピン止め効果によって熱処理時のオーステナイト粒径微細化を指向する場合にはある程度多量のNを添加するほうが好ましく、0.007%以上添加しても良い。
t−O:0.0002〜0.01%
鋼中には脱酸工程を経て生じた酸化物や固溶したOが存在している。しかし、この酸素量が多い場合には酸化物系介在物が多いことを意味している。酸化物系介在物の大きさが小さければばね性能に影響しないが、大きい酸化物が大量に存在しているとばね性能に大きな影響を及ぼす。
合計酸素量(t−O)が0.01%を超えて存在するとばね性能を著しく低下させるために、その上限を0.01%とする。また酸素が少なければ良いが0.0002%未満にしても、その効果が飽和するので、これを下限とする。
実用上の脱酸工程などの容易性を考慮すると0.0005〜0.002%に調整することが望ましい。
W:0.05〜1.0%
Wは焼入れ性を向上させるとともに、鋼中で炭化物を生成し、強度を高める働きがある。従って極力添加する方が好ましい。Wの特徴は他の元素とは異なり、セメンタイトを含む炭化物の形状を微細にすることである。またWの炭窒化物はTi、Nbなどにくらべ低温でしか生成しないため、W自身も未溶解炭化物として残留しにくい。さらにV等の未溶解炭化物を残留しやすい元素によって生成される炭化物の成長を抑制し、未溶解炭化物の寸法を抑制する効果も有する。
また析出硬化により焼戻し軟化抵抗を付与できる。すなわち窒化やひずみ取り焼鈍においても大きく内部硬度を低下させることが無い。
その添加量が0.05%未満では効果は見られず、1.0%以上では粗大な炭化物を生じ、かえって延性などの機械的性質を損なう恐れがあるのでWの添加量を0.05〜1.0%とした。さらに熱処理の容易性などを考慮すると0.1〜0.4%が好ましい。特に圧延直後の過冷組織などの弊害を避けつつ、最大限の焼戻し軟化抵抗を得るためには0.15%以上の添加がさらに好ましい。
Cr:0.05〜2.5%
Crは焼入れ性および焼戻し軟化抵抗を向上させるために有効な元素であるが、添加量が多いとコスト増を招くだけでなく、焼入れ焼戻し後に見られるセメンタイトを粗大化させる。結果として線材は脆化するためにコイリング時に折損を生じやすくする。そこで焼入れ性および焼戻し軟化抵抗の確保のために0.05%を下限とし、脆化が顕著となる2.5%を上限とした。
Crはセメンタイトの加熱による溶解を阻害するため、特にC:0.55%以上とC量が多くなるとCr量を抑制した方が粗大炭化物生成を抑制でき、強度とコイリング性を両立しやすい。従って、好ましくはその添加量を2.0%以下にすることがこのましい。さらに好ましくは1.7%程度である。
一方、窒化処理を行う場合にはCrが添加されている方が窒化による硬化層を深くできる。従ってその0.7%以上の添加が好ましく、さらに高強度ばね向けの窒化に適するようにするには1.1%以上の添加が好ましい。
Zr:0.0001〜0.0005%
Zrは酸化物および硫化物生成元素である。ばね鋼においては酸化物を微細に分散するため、Mgと同様、MnSの析出核となる。それにより疲労耐久性を向上させたり、延性を増すことでコイリング性を向上させる。0.0001%未満ではその効果は見られず、また0.0005%を超えて添加しても硬質酸化物生成を助長するため、硫化物が微細分散しても酸化物起因のトラブルを生じやすくなる。また多量添加では酸化物以外にもZrN、ZrSなどの窒化物、硫化物を生成し、製造上のトラブルやばねの疲労耐久特性を低下させるので0.0005%以下とした。さらに高強度ばねに用いる場合にはこの添加量を0.0003%以下にすることが好ましい。これらの元素は微量ではあるが、副原料を厳選し、耐火物などを精密に制御することで制御可能である。
たとえば取鍋、タンディッシュ、ノズルなど溶鋼と長時間接する場合ような場所にZr耐火物が多用することにより200t程度の溶鋼に対して1ppm程度添加することができる。さらにそれを考慮しつつ規定範囲を超えないように副原料を添加すれば良い。
鋼中Zrの分析方法は測定対象鋼材の表層スケールの影響を受けない部分から2gを採取し、JIS G 1237−1997付属書3と同様の方法でサンプルを処理した後、ICPによって測定できる。その際、ICPにおける検量線は微量Zrに適するように設定する。
Al≦0.01%
Alは脱酸元素であり酸化物生成に影響する。硬質酸化物を生成しやすいために不用意に添加すると硬質炭化物を生成し、疲労耐久性を低下させる。特に高強度ばねにおいてはばねの疲労限度そのものよりも疲労強度のばらつき安定性を低下させ、Al量が多いと介在物起因の破断発生率が多くなるため、その量を制限することが需要家から要求される。また硫化物制御の観点から、Zrを添加することで硫化物を微細分散、球状化させるにはAl量が多すぎるとその効果を損なうため、その点からも多量に添加するのは好ましくない。そのため高強度ばね用鋼材においては従来よりも抑制する必要があり、0.01%以下(0%を含む)に制限した。さらに高疲労強度を要求する場合には0.002%以下にすることが好ましい。
Ti≦0.003%
Tiは脱酸元素であるとともに窒化物、硫化物生成元素であるため、酸化物および窒化物、硫化物生成に影響する。多量の添加は硬質酸化物、窒化物を生成しやすいために不用意に添加すると硬質炭化物を生成し、疲労耐久性を低下させる。Alと同様に特に高強度ばねにおいてはばねの疲労限度そのものよりも疲労強度のばらつき安定性を低下させ、Ti量が多いと介在物起因の破断発生率が多くなるため、その量を0.003%以下(0%を含む)に制限した。また硫化物制御の観点から、Zrを添加することで硫化物を微細分散、球状化させるにはTi量が多すぎるとその効果を損なうため、その点からも多量に添加するのは好ましくない。そのため高強度ばね用鋼材においては従来よりも制限する必要があり、0.003%がその上限である。さらに高疲労強度を要求する場合には0.002%以下にすることが好ましい。
Mo:0.05〜1.0%
Moは焼戻しや窒化温度程度の温度で炭化物として析出する。これら析出物を生成することで焼き戻し軟化抵抗を得ることができ、高温での焼戻しや工程で入れられるひずみ取り焼鈍や窒化などの熱処理を経ても軟化せず高強度を発揮させることができる。この事は窒化後のばね内部硬度の低下を抑制したり、ホットセッチングやひずみ取り焼鈍を容易にするため、最終的なばねの疲労特性を向上させることとなる。しかしその析出物が大きくなりすぎ、鋼中炭素と結びついて粗大炭化物を生成する。このことは鋼線の高強度化に寄与すべきC量を減少させ、添加したC量相当の強度が得られなくなる。さらに粗大炭化物が応力集中源となるためコイリング中の変形で折損しやすくなる。またMoは添加することで焼入れ性を向上させるとともに、焼戻し軟化抵抗を与えることができる。すなわち強度を制御する際の焼戻し温度を高温化させることがきる。この点は粒界炭化物の粒界占有面積率を低下させるのに有利である。すなわちフィルム状に析出する粒界炭化物を高温で焼き戻すことで球状化させ、粒界面積率を低減することに効果がある。またMoは鋼中ではセメンタイトとは別にMo系炭化物を生成する。特にV等に比べその析出温度が低いので炭化物の粗大化を抑制する効果がある。その添加量は0.05%未満では効果が認められない。ただしその添加量が多いと、圧延や伸線前の軟化熱処理などで過冷組織を生じ易く、割れや伸線時の断線の原因となりやすい。すなわち、伸線時にはあらかじめ鋼材をパテンチング処理によってフェライト−パーライト組織としてから伸線することが好ましい。
Moは焼入れ性を大きく付与する元素であるため、添加量が多くなるとパーライト変態終了までの時間が長くなり、圧延後の冷却時やパテンチング工程では過冷組織が生じやすく、伸線時に断線の原因になったり、断線せず、内部クラックとして存在した場合には、最終製品の特性を大きく劣化させる。Moが1.0%を超えると、焼入れ性が大きくなり、工業的にフェライト−パーライト組織にすることが困難になるので、これを上限とする。圧延や伸線などの製造工程で製造性を低下させるマルテンサイト組織の生成を抑制し、工業的に安定して圧延、伸線を容易にするには0.4%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは0.2%程度である。
V:0.05〜1.0%
Vについては窒化物、炭化物、炭窒化物の生成によるオーステナイト粒径の粗大化抑制のほかに焼戻し温度での鋼線の硬化や窒化時の表層の硬化に利用することもできる。その添加量は0.05%未満では添加した効果がほとんど認められない。また多量添加は粗大な未固溶介在物を生成し、靱性を低下させるとともに、Moと同様、過冷組織を生じ易く、割れや伸線時の断線の原因となりやすい。そのため工業的に安定した取り扱いが容易な1.0%を上限とした。
Vの窒化物、炭化物、炭窒化物は鋼のオーステナイト化温度A3点以上でも生成しているため、その固溶が不十分な場合には未固溶炭化物(窒化物)として残留しやすい。従って工業的には0.5%以下にすることが好ましく、さらに0.2%以下とすることが好ましい。
Nb:0.01〜0.05%
Nbについては窒化物、炭化物、炭窒化物の生成によるオーステナイト粒径の粗大化抑制のほかに焼戻し温度での鋼線の硬化や窒化時の表層の硬化に利用することもできる。その添加量は0.01%未満では添加した効果がほとんど認められない。また多量添加は粗大な未固溶介在物を生成し、靱性を低下させるとともに、Moと同様、過冷組織を生じ易く、割れや伸線時の断線の原因となりやすい。そのため工業的に安定した取り扱いが容易な0.05%を上限とした。
Nbの窒化物、炭化物、炭窒化物は鋼のオーステナイト化温度A3点以上でも生成しているため、その固溶が不十分な場合には未固溶炭化物(窒化物)として残留しやすい。従って工業的には0.04%以下にすることが好ましく、さらに0.03%以下とすることが好ましい。
Ni:0.05〜3.0%
Niは焼入れ性を向上させ、熱処理によって安定して高強度化することができる。またマトリックスの延性を向上させてコイリング性を向上させる。しかし焼入れ焼戻しでは残留オーステナイトを増加させるので、ばね成形後にへたりや材質の均一性の点で劣る。その添加量は0.05%未満では高強度化や延性向上に効果が認められない。一方、Niの多量添加は好ましくなく、3.0%超では残留オーステナイトが多くなる弊害が顕著になるとともに、焼入れ性や延性向上効果が飽和し、コスト等の点で不利になる。
Co:0.05〜3.0%
Coは焼入れ性を低下させる場合もあるが、高温強度を向上させることができる。また炭化物の生成を阻害するため、本発明で問題となる粗大な炭化物の生成を抑制する働きがある。したがってセメンタイトを含む炭化物の粗大化を抑制できる。従って、添加することが好ましい。添加する場合、0.05%未満ではその効果が小さい。しかし多量に添加するとフェライト相の硬度が増大し延性を低下させるので、その上限を3.0%とした。
B:0.0005〜0.006%
Bは焼入れ性向上元素とオーステナイト粒界の清浄化に効果がある。粒界に偏析して靱性を低下させるP、S等の元素をBを添加することで無害化し、破壊特性を向上させる。その際、BがNと結合してBNを生成するとその効果は失われる。添加量はその効果が明確になる0.0005%を下限とし、効果が飽和する0.006%を上限とした。ただしわずかでもBNが生成すると脆化させるためBNを生成しないよう十分な配慮が必要である。したがって好ましくは0.003以下であり、さらに好ましくはTi等の窒化物生成元素によってフリーのNを固定しておくとともに、B:0.001〜0.002%にすることが有効である。
Cu:0.05〜0.5%
Cuについては、Cuを添加することで脱炭を防止できる。脱炭層はばね加工後に疲労寿命を低下させるため、極力少なくする努力が成されている。また脱炭層が深くなった場合にはピーリングとよばれる皮むき加工によって表層を除去する。またNiと同様に耐食性を向上させる効果もある。脱炭層を抑制することでばねの疲労寿命向上やピーリング工程の省略することができる。Cuの脱炭抑制効果や耐食性向上効果は0.05%以上で発揮することができ、後述するようにNiを添加したとしても0.5%を越えると脆化により圧延きずの原因となりやすい。そこで下限を0.05%、上限を0.5%とした。Cu添加によって室温における機械的性質を損なうことはほとんどないが、Cuを0.3%を越えて添加する場合には熱間延性を劣化させるために圧延時にビレット表面に割れを生じる場合がある。そのため圧延時の割れを防止するNi添加量をCuの添加量に応じて[Cu%]<[Ni%]とすることが好ましい。Cu0.3%以下の範囲では圧延きずが生じないことから、圧延きず防止を目的としてNi添加量を規制する必要がない。
Mg:0.0001〜0.0005%
MgはMnS生成温度よりも高い溶鋼中で酸化物を生成し、MnS生成時には既に溶鋼中に存在している。従ってMnSの析出核として用いることができ、これによりMnSの分布を制御できる。またその個数分布もMg系酸化物は従来鋼に多く見られるSi、Al系酸化物より微細に溶鋼中に分散するため、Mg系酸化物を核としたMnSは鋼中に微細に分散することとなる。従って同じS含有量であってもMgの有無によってMnS分布が異なり、それらを添加する方がMnS粒径はより微細になる。その効果は微量でも十分得られ、Mgを0.0001%以上添加すればMnSは微細化する。しかし0.0005%を超えると硬質酸化物を生じやすくするほか、MgSなどの硫化物も生じ始め、疲労強度の低下やコイリング性の低下を招く。そこでMg添加量を0.0001〜0.0005%とした。高強度ばねに用いある場合には0.0003%以下とすることが好ましい。これらの元素は微量ではあるが、Mg系耐火物を多用することで0.0001%程度添加できる。また副原料を厳選し、Mg含有量の少ない副原料を用いることでMgを添加できる。
Ca:0.0002〜0.01%
Caは酸化物および硫化物生成元素である。ばね鋼においてはMnSを球状化させることで、疲労等の破壊起点としてのMnSの長さを抑制し、無害化することができる。その効果は0.0002%未満では明確ではなく、また0.01%を超えて添加しても歩留まりが悪いばかりか、酸化物やCaSなどの硫化物を生成し、製造上のトラブルやばねの疲労耐久特性を低下させるので0.01%以下とした。この添加量は好ましくは0.001%以下であることが好ましい。
Hf:0.0002〜0.01%
Hfは酸化物生成元素であり、MnSの析出核となる。そのため微細分散することでZrは酸化物および硫化物生成元素である。ばね鋼においては酸化物を微細に分散するため、Mgと同様、MnSの析出核となる。それにより疲労耐久性を向上させたり、延性を増すことでコイリング性を向上させる。その効果は0.0002%未満では明確ではなく、また0.01%を超えて添加しても歩留まりが悪いばかりか、酸化物やZrN、ZrSなどの窒化物、硫化物を生成し、製造上のトラブルやばねの疲労耐久特性を低下させるので0.01%以下とした。この添加量は好ましくは0.003%以下であることが好ましい。
Te:0.0002〜0.01%
TeはMnSを球状化させる効果がある。0.0002%未満ではその効果が明確ではなく、0.01%を超えるとマトリックスの靭性を低下させ、熱間割れを生じた入り、疲労耐久性を低下させたりする弊害が顕著となるため、0.01%を上限とする。
Sb:0.0002〜0.01%
SbはMnSを球状化する効果があり、0.0002%未満ではその効果が明確ではなく、0.01%を超えるとマトリックスの靭性を低下させ、熱間割れを生じた入り、疲労耐久性を低下させたりする弊害が顕著となるため、0.01%を上限とする。
なお、このような成分で製造された鋼は硫化物も含む非金属介在物がばね鋼に適した形態となり、その影響を小さくできる。
なお、ばねとしての使用では疲労耐久性だけでなく、へたりが重要であり、高負荷荷重でもへたり特性が良好なように熱処理素材は2000MPa以上の引張強度を有することが多い。また窒化する場合は窒化条件の温度500℃にさらされても大きく軟化しない、いわゆる焼戻し軟化抵抗を付与することが必要である。一方、高強度化によりコイリング性は低下するので、焼戻し軟化抵抗とコイリング性を両立する成分とすることが必要である。このことから、それを可能とする化学成分で、高強度ばね用鋼線では引張強度2250MPa、さらには2300MPa以上とすることが望ましい。そのため、本発明は熱処理後に高強度と高加工性を両立することを想定した化学成分を規定するものである。
表1〜3に各種性能を評価するために作成した鋼材の成分を、そして表4〜6に鋼材の溶製方法、性質等を示す。鋼材は少量真空溶解炉(10kg、150kg、2tのいずれか)または270t転炉で溶製した。各実施例の溶製に用いた炉を示す。真空溶解炉での溶製の場合、マグネシア坩堝を使用するなど、耐火物や原料のからの酸化物生成元素の混入に十分の注意を払い、実用転炉溶製材と同様の組成になるように調整した。
これらの少量溶解サンプルのうち、150kg材はダミービレットに溶接することで圧延した。また10kg溶解材はφ13まで鍛造後、熱処理(、焼順)、機械加工(φ10mm×400mm)の順に処理して細い直棒を作成した。この段階で表層酸化物分布、鋼中炭化物などの観察を行った。
一方、本願発明の発明例(実施例33)および比較例(実施例62)は270t転炉によって精錬したものを連続鋳造によってビレットを作成した。またその他の実施例は2t−真空溶解炉で溶製後、圧延によってビレットを作成した。その際、発明例では1200℃以上の高温に一定時間保定した。その後いずれの場合もビレットからφ8mmに圧延した。
ばね製作において、これらの材料はさらにパテンチング−伸線され、さらに工業的な連続炉を用いた焼入れ焼もどしすることが一般的である。
そこで、本試験材において、10kg溶解材は直棒に加工されているので、それらをダミーワイヤーロッドに連結することで、パテンチング、伸線さらには加熱炉を用いた焼入れ、鉛槽を用いた焼もどしを行って鋼線とした。
150kg溶解材、2t−真空溶解材および270t転炉溶製材は実機圧延されているため、そのまま工業的なパテンチング、伸線さらには加熱炉を用いた焼入れ焼もどしを行って鋼線とした。パテンチングにおける加熱温度は900℃以上であり、930℃以上が好ましい。本発明では950℃とした。
これらの材料は伸線によってφ4mmとした。一方、比較例は通常の圧延条件で圧延され伸線に供した。
また、φ4mmで処理した場合の本発明と比較鋼の化学成分、引張強度、コイリング特性(引張試験における伸び)、焼鈍後硬さ、平均疲労強度(回転曲げ)を評価した。
化学成分によって強度は異なってくるが、本発明については引張強度2200MPa以上になるように熱処理した。一方、比較例に関しても同じ温度で熱処理した。
即ち、焼入れ焼戻し処理では伸線材の内部温度が十分に加熱されるよう、加熱炉通過時間を設定した。本実施例では加熱温度950℃、加熱時間300sec、焼入れ温度50℃(オイル槽実測温度)、その冷却時間も5min以上と長く保定した。さらに焼戻しは鉛層を用いて温度450℃、焼戻し時間3minで焼戻し、強度を調整した。その結果得られた大気雰囲気での引張強度は表1中に明記したとおりである。
得られた鋼線はそのまま引張特性に供すると共に、一部には400℃×30minの焼鈍を行って硬さを測定し、回転曲げ疲労試験に供した。疲労試験片ではショットピーニングにより表層の熱処理スケールを除去した。
引張特性はJIS Z 2201 9号試験片によりJIS Z 2241に準拠して行い、その破断荷重から引張強度を算出した。
疲労試験は中村式回転曲げ疲労試験であり、10本のサンプルが50%以上の確率で10サイクル以上の寿命を示す最大負荷応力を平均疲労強度とした。
また、破断サンプルの破面の破壊起点を走査型電子顕微鏡で確認することで、介在物起因と考えられる破断の発生確率を介在物出現率として評価した。
表1〜3に化学成分を表4〜6にその評価結果を示す。φ4mmの鋼線に関しては化学成分が規定範囲外であるとコイリング性の指標となる伸びが小さくコイリング特性が劣ったり、中村式回転曲げ疲労強度が劣り、高強度ばねには使用できない。
実施例の61〜79は比較例であって、実施例61〜63はW量が規定に不足しているため、軟化抵抗が不足し、十分な疲労耐久性を確保できなかった例である。450℃×1hr保定の窒化シミュレート熱処理後の内部硬度は従来ばね並のHV550以下であり、さらなる軟化抵抗が必要なことが分かる。
実施例64、65はZrは規定内であるものの、Alが規定より多く添加された例で酸化物系介在物の存在形態に影響を及ぼし、疲労耐久性が低下する傾向にある。
また、Zrによる硫化物制御能力にも影響し、たとえZrが規定どおりの添加量であってもAlが多いと硫化物析出に適さない酸化物の生成させるため、コイリング性にも影響して、それを低下させる。
実施例66〜68はZr添加量が規定よりも多い場合である。Zrが多い場合には酸化物系介在物の寸法に影響し、疲労耐久性を低下させる。この場合も硫化物析出に適さない酸化物の生成させるため、コイリング性にも影響して、それを低下させる。
実施例69〜71はZr添加量が規定よりも少ない場合である。Zrが少ない場合には硫化物の制御が十分でないためにコイリング性(伸び)を低下させ、高強度鋼線における加工性を確保できない。
実施例72はMgを、実施例73はTiを規定より多く添加した場合で、前者は酸化物系、後者は窒化物系の硬質介在物が観察され、疲労耐久性の低下している。
実施例65、74、75も酸化物生成元素の添加量が規定を超え、疲労強度が低下した例である。
さらに実施例76、77はC量が規定より不足した場合で、工業的な焼入れ焼戻し工程において十分な強度を確保できず、高強度ばねとしての疲労強度が不足した例である。
また、実施例78、79はさらにC量が規定量よりも過剰に添加された場合である。この場合強度は確保できるものの、コイリング特性が劣り、高強度鋼線における加工性を確保できない。
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Claims (9)

  1. 質量%で、
    C:0.45〜0.7%、
    Si:1.0〜3.0%、
    Mn:0.05〜2.0%、
    P:0.015%以下、
    S:0.015%以下、
    N:0.0015〜0.02%、
    t−O:0.0002〜0.01%、
    W:0.05〜1.0%、
    Cr:0.05〜2.5%、
    Zr:0.0001〜0.0005%、
    V:0.05〜1.0%、
    を含有し、さらに、
    Al≦0.01%、
    Ti≦0.003%
    に制限し、残部がFe及び不可避不純物より成ることを特徴とするばね用鋼。
  2. 質量%で、
    C:0.45〜0.7%、
    Si:1.0〜3.0%、
    Mn:0.05〜2.0%、
    P:0.015%以下、
    S:0.015%以下、
    N:0.0015〜0.02%、
    t−O:0.0002〜0.01%、
    W:0.05〜1.0%、
    Cr:0.05〜2.5%、
    Zr:0.0001〜0.0005%、
    Mg:0.0001〜0.0005%、
    を含有し、さらに、
    Al≦0.01%、
    Ti≦0.003%
    に制限し、残部がFe及び不可避不純物より成ることを特徴とするばね用鋼。
  3. 質量%で、
    C:0.45〜0.7%、
    Si:1.0〜3.0%、
    Mn:0.05〜2.0%、
    P:0.015%以下、
    S:0.015%以下、
    N:0.0015〜0.02%、
    t−O:0.0002〜0.01%、
    W:0.05〜1.0%、
    Cr:0.05〜2.5%、
    Zr:0.0001〜0.0005%、
    V:0.05〜1.0%、
    Mg:0.0001〜0.0005%、
    を含有し、さらに、
    Al≦0.01%、
    Ti≦0.003%
    に制限し、残部がFe及び不可避不純物より成ることを特徴とするばね用鋼。
  4. さらに質量%で、
    Mo:0.05〜1.0%
    を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のばね用鋼。
  5. さらに質量%で、
    b:0.01〜0.05%
    含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のばね用鋼。
  6. さらに質量%で、
    Ni:0.05〜3.0%、
    Co:0.05〜3.0%、
    B:0.0005〜0.006%
    の1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のばね用鋼。
  7. さらに質量%で、
    Cu:0.05〜0.5%
    を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のばね用鋼。
  8. さらに質量%で、
    a:0.0002〜0.01%、
    Hf:0.0002〜0.01%
    の1種または2種を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のばね用鋼。
  9. さらに質量%で、
    Te:0.0002〜0.01%、
    Sb:0.0002〜0.01%
    の1種または2種を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のばね用鋼。
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