JP4557429B2 - アレイ・アンテナを有する無線通信局を較正する方法および装置 - Google Patents
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Description
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、アレイ・アンテナを用いる無線周波数システムに関し、より具体的にはそのようなシステムの較正に関する。
【0002】
(背景)
アレイ・アンテナは、1つまたは複数のアンテナを用いて無線周波数信号を送信または受信する任意のタイプのシステムに使用することができる。そのようなシステムの例には、無線通信システム、レーダ、無線周波数信号を利用するある種の医療システムがある。そのようなシステムにアレイ・アンテナを使用すると、単一素子アンテナを使用するよりアンテナの性能が向上する。こうしたアンテナの性能向上としては、受信信号に関しては指向性向上、信号対雑音比向上、干渉除去向上などがあり、送信信号に関しては指向性向上、安全向上、送信出力要件低減などがある。アレイ・アンテナは、信号受信専用、信号送信専用、または送受信兼用として使用することができる。
【0003】
典型的なアレイ・アンテナ・システムは、アンテナの配列、および個々のアレイ素子との間を往来する信号を合成する信号処理装置からなる。この処理はビーム形成と呼ばれることがある。
【0004】
アレイ・アンテナ・システムの典型的な応用分野は無線通信システムである。例としては、セルラ通信システムやワイヤレス・ローカル・ループ・システムなどがある。そのような無線通信システムは、遠隔端末装置や送受話器とも呼ばれる加入者装置とそれぞれ通信する、一般に基地局と呼ばれる1つまたは複数の通信局を有する。セルラ・システムでは遠隔端末装置は典型的には移動体であるが、ワイヤレス・ローカル・ループ・システムでは遠隔端末装置は通常、固定位置にある。アレイ・アンテナは典型的には基地局に位置する。通信の方向を表す用語は、通常の衛星通信に由来し、衛星を基地局に置き換えたものである。すなわち、遠隔端末装置から基地局への通信はアップリンクと呼ばれ、基地局から遠隔端末装置への通信をダウンリンクと呼ばれる。したがって、アレイ・アンテナはダウンリンク方向で送信し、アップリンク方向で受信する。アレイ・アンテナはまた、同じ「従来型」(FDMA、TDMA、またはCDMA)チャネルを介して複数の利用者と同時に通信する能力である空間分割多元接続(SDMA)機能を加えた無線通信システムに使用することもできる。本出願人は、SDMAおよび非SDMAシステムのスペクトル効率を向上させるためのアレイ・アンテナに関する空間処理を既に開示している。参照により本明細書に組み込む1996年5月7日発行の「Spatial Division Multiple Access Wireless Communications System」という名称の米国特許第5515378号、同様に参照により本明細書に組み込む1997年1月7日発行の「Spectrally Efficient High Capacity Wireless Communications Systems」という名称の米国特許第5592490号、同様に参照により本明細書に組み込む1996年10月23日出願の「Spectrally Efficient High Capacity Wireless Communications Systems with Spatio−Temporal Processing」という名称の米国特許出願第08/735520号、および同様に参照により本明細書に組み込む1996年10月11日出願の「Method and Apparatus for Decision Directed Demodulation Using Antenna Arrays and Spatial Processing」という名称の米国特許出願第08/729390号を参照されたい。アレイ・アンテナを使用して通信効率を改善および/またはSDMAを提供するシステムは、スマート・アンテナ・システムと呼ばれることがある。本明細書では、前記特許および特許出願をまとめて「スマート・アンテナ発明書類」と呼ぶ。
【0005】
スマート・アンテナ通信システムでは、アップリンク通信の間、アレイ・アンテナ素子で受信された各信号に振幅および位相調整を適用して、関係ない信号または雑音、すなわち干渉を最小限に抑えながら目的の信号を選択(すなわち優先的に受信)する。そのような振幅および位相調整は、複素数の重みである受信重みで表現することができ、アレイのすべての素子の受信重みは、複素数ベクトルである受信重みベクトルで表現することができる。ダウンリンク信号も同様に、送信のためアレイ・アンテナの各アンテナに向かう信号の振幅および位相を調整することによって処理される。そのような振幅および位相制御は、複素数の重みである送信重みで表現することができ、アレイのすべての素子の送信重みは、複素数ベクトルである送信重みベクトルで表現することができる。一部のシステムでは、受信(および/または送信)重みは時間的処理を含み、そのような場合、受信(および/または送信)重みは、周波数の関数として周波数領域内に適用する、すなわちたたみこみカーネルとして適用される時間の関数とすることができる。
【0006】
通常、受信重みベクトルは、例えば遠隔利用者からアレイのアンテナで受信されたアップリンク信号からなどの様々な技法によって決定される特定の遠隔利用者の空間的識別特性によって決定される。空間的識別特性(受信多様体ベクトルとも呼ばれる)は、干渉または他の加入者装置がない場合の基地局のアレイが特定の加入者装置から信号を受信する方法を特徴づける。通常動作では、受信重みベクトルは空間的識別特性と干渉によって決定することができる。ダウンリンクで特定の利用者との通信に使用される送信重みベクトルもまた、その特定の利用者の空間的識別特性から決定される。したがって、特定の利用者の受信重みベクトルから送信重みベクトルを決定することが望ましい。
【0007】
時分割デュプレックス(TDD)システムは、特定の遠隔利用者とのアップリンクおよびダウンリンク通信が同じ周波数で、ただし異なるタイム・スロットで行われるシステムである。周波数分割デュプレックス(FDD)システムは、特定の遠隔利用者とのアップリンクおよびダウンリンク通信が異なる周波数で行われるシステムである。
【0008】
実際上の問題によって、特定の利用者の受信重みベクトルから送信重みベクトルを決定することは実行が困難である可能性がある。時分割デュプレックス(TDD)システムは、特定の遠隔利用者とのアップリンクおよびダウンリンク通信が同じ周波数で、ただし異なるタイム・スロットで行われるシステムである。周波数分割デュプレックス(FDD)システムは、特定の遠隔利用者とのアップリンクおよびダウンリンク通信が異なる周波数で行われるシステムである。周知のレシプロシティ定理によって、受信重みベクトルから送信重みベクトルを決定することは簡単であると考えられるかもしれない。しかしながら、アップリンクでは、処理される受信信号はアレイ・アンテナの各アンテナ素子に関連する受信装置チェーンによって多少歪んでいる可能性がある。受信装置チェーンとしては、アンテナ素子、ケーブル、フィルタ、無線周波数電子回路、物理接続、および処理がデジタルならばアナログ・デジタル変換器(「ADC」)などがある。多素子アレイ・アンテナの場合、通常は各アレイ・アンテナ素子ごとに別々の受信装置チェーンがあり、したがって各素子で受信される各信号の振幅および位相が各受信装置チェーンごとに異なって歪む可能性がある。これを考慮に入れない受信重みベクトルは誤りとなり、基地局での受信が最適でなくなる。しかしながら、実際にはそれでもなお通信は可能である。アレイ・アンテナを介してダウンリンク信号を送信すると、アンテナ素子によって放射される各信号は異なる送信装置チェーンを経由するため、ことによると送信信号に異なる振幅シフトおよび位相シフトが生じるかもしれない。送信重みベクトルが受信装置チェーンにおける違いを考慮に入れていない受信重みベクトルから得られたものだとすると、基地局からの送信は実行が困難である可能性がある。送信重みベクトルが送信装置チェーンにおける違いを考慮に入れたものでない場合はさらに困難が生じる可能性があり、ことによるとそのような送信重みベクトルを用いる通信は最適なものでなくなるかもしれない。較正の目的は、受信チェーン内の信号に生じる異なる振幅誤差および位相誤差、ならびに送信チェーン内に生じる異なる振幅誤差および位相誤差を補償するための較正係数を決定することである。なお、受信装置チェーンおよび送信装置チェーン内に生じる位相シフトおよび振幅シフトは一般に周波数依存であることを付け加えておく必要がある。
【0009】
FDDシステムの場合、もはやレシプロシティを仮定することができないため、特定の利用者の受信重みベクトルから送信重みベクトルを決定することはさらに困難である。アップリンクおよびダウンリンクにおける伝搬の違いをさらに考慮に入れる必要がある。そのような違いを考慮に入れてもなお、受信チェーン内の信号に生じる異なる振幅誤差および位相誤差、ならびに送信チェーン内に生じる異なる振幅誤差および位相誤差を補償するための較正係数を決定する必要がある。
【0010】
当初、アレイ・アンテナ・システムの製造者は、すべての送信電子回路および受信電子回路が完全なものであると仮定された、あるいは送信装置チェーンおよび受信装置差チェーンが各アンテナにとって理想的であると仮定された、理想的なアレイ・アンテナを仮定した信号処理装置を使用した。その結果、そうしたアレイ・アンテナ・システムは設計および製造が困難であるばかりでなく価格も法外で、しかも誤差、干渉、および時間に対するドリフトを受ける。受信重みを使用して送信重みを決定することは、そのようなシステムによる効率的な通信にはつながらない可能性がある。
【0011】
補償は、アンテナ素子によって受信または送信される各m信号を、各較正関数が信号が送信(または受信)装置チェーンを通過するときに受ける利得および位相誤差を補償するのに必要な伝達関数補正を示す複素較正関数によって(すなわち複素数時系列によって)たたみこむことで達成されることは周知である。一部のシステムでは、これは、各較正関数を較正係数すなわち補償に必要な必須の振幅補正および位相補正を示す複素数とする乗法的補正に簡素化することができる。一般に、その1組の較正関数は一方を送信パス、もう一方を受信パスの複素数較正ベクトル関数とし、各関数を時系列とする較正ベクトル関数の要素である。乗法的補正の場合、その1組の較正係数は一方を送信パス、もう一方を受信パスの複素数較正ベクトルとする較正ベクトルの要素である。従来技術によるアレイ較正ベクトル関数の決定方法は、いくつかの付随する欠点を有する測定を必要とする。第1に、その方法は、高価で扱いにくく、繰り返して使用することが煩わしい外部測定器を必要とする。第2に、従来の較正方法は、測定を行う長期間のうちに周波数基準などのシステム・パラメータのドリフトの影響を受けやすく、これらのドリフトによって測定されるアレイ較正ベクトルが不正確になる。さらに、一部の従来技術はたたみこみカーネル較正係数ではなく乗法的較正係数のみを決定し、アレイ・アンテナに周波数依存成分がある。この周波数依存をなくしながら乗法的較正ベクトルを使用するためには、通信の各周波数チャネルごとにアレイ・アンテナを較正する必要がある。第3に、無線周波数電子回路の伝達特性は温度、湿度などの変化する周囲条件に依存し、そのためアレイ・アンテナをその周囲環境で繰り返して較正することが不可欠になる。
【0012】
Harrisonらは、米国特許第5274844号(1993年12月28日)において、リソース制御装置と遠隔端末装置を接続するデータ・バスを使用する2つの実験で送信および受信較正ベクトルを(複素数ベクトル伝達関数として)較正する方法を開示している。第1の実験で、データ・バスは基地局に周知の信号を送信することを遠隔端末装置に指示する。これによって受信装置チェーンの較正を決定する。第2の実験で、遠隔端末装置で受信された信号は、送信装置チェーンの較正を決定できるようにするためにデータ・バスを介してリソース制御装置に送り返される。
【0013】
1996年8月13日に発行され、本発明の譲受人に譲渡された共同所有の米国特許第5546090号では、遠隔端末装置で基地局から受信された信号を基地局に再送信する、遠隔端末装置と同じ場所に配置された単純なトランスポンダを用いて送信較正ベクトルと受信較正ベクトルの両方を決定することができる較正方法を開示している。当該の方法は、Harrisonらの発明の配線式データ・バスは必要としない。しかしながら、追加のトランスポンダ装置が必要である。
【0014】
これらの従来技術による較正方法は、受信パスと送信パスを別々に較正し、さらに基地局のアンテナ素子と加入者装置間の異なる空中パスを較正するが、特別の構成装置を必要とする。
【0015】
Johannissonらの発明者の「Antenna array calibration」という名称のPCT国際特許出願公告95/34103号(1995年12月14日公告)では、アレイ・アンテナの送信(および受信)を較正する方法および装置を開示している。送信の較正の場合、入力送信信号を各アンテナ素子に一度に1つのアンテナずつ入力する。入力送信信号がそれぞれの電力増幅器を通過した後、各アンテナ素子によって送信された信号を較正ネットワークによって抽出する。その結果得られる信号を受信装置に送り込み、計算手段によって各アンテナ素子ごとに受信信号と元の送信信号を関係付ける。その後、各アンテナ素子ごとに補正係数を形成することができる。次いで、その補正係数を用いて、送信の間に各素子を適正に較正できるようにアンテナ素子を(振幅と位相、または同相分Iと直角分Qについて)調整することができる。受信の較正の場合、既知の入力信号を生成し、較正ネットワーク(受動分配ネットワーク)を用いてアレイ・アンテナの各アンテナ素子に注入する。その信号は、アンテナ素子からそれぞれの低雑音増幅器を通過し、各アンテナ素子によって受信された信号をビーム形成装置によって測定する。次いで、ビーム形成装置は、注入された信号と測定された信号を比較することによって、各アンテナ素子を個別に較正できるように補正係数を生成することができる。補正は、振幅補正と位相補正として、または同相分Iおよび直角分Qの補正として表現することができる。
【0016】
Johannissonらの方法は、受信パスと送信パスを別々に較正するが、特別の較正装置を必要とする。
【0017】
したがって、当技術分野では、必要な装置と必要な時間の両方の点で簡単であり、その結果希望するときいつでも何度でも素早く較正を実行することができる較正方法および装置が必要とされている。当技術分野ではまた、既存の基地局の電子回路のみを使用し、特別の較正ハードウェアを必要としない簡単な較正技法も必要とされている。当技術分野ではさらに、受信装置チェーンおよび送信装置チェーンの較正を含めて、較正が既存の基地局の電子回路を使用し、特別の較正ハードウェアを必要としない簡単な技法を用いて得られる、受信重みベクトルから送信重みベクトルを決定することができる方法も必要とされている。
【0018】
(発明の概要)
(発明の目的)
本発明の目的は、追加の高価で扱いにくい較正計器を必要としない、アレイ・アンテナを用いる基地局を較正する改良型の方法および装置である。
【0019】
本発明の他の目的は、基地局の較正に必要な時間を削減し、較正済み送信重みベクトルの使用が可能である較正方法および装置であって、その送信重みベクトルが受信重みベクトルから本質的に決定される方法および装置である。
【0020】
本発明の他の目的は、設置場所で容易に使用することができるアレイ・アンテナ・システムの較正方法および装置であって、較正において較正済み送信重みベクトルの使用が可能であり、その送信重みベクトルが受信重みベクトルから本質的に決定される方法および装置である。
【0021】
本発明の他の目的は、無線周波数システム内で容易に実施することができ、常習的および定期的なシステム較正の実行を実用的なものにする較正方法および装置であって、較正において較正済み送信重みベクトルの使用が可能であり、その送信重みベクトルが受信重みベクトルから本質的に決定される方法および装置である。
【0022】
本発明の他の目的は、受信重みベクトルから較正済み送信重みベクトルを決定する方法であって、その送信重みベクトルの較正において受信装置チェーンおよび送信装置チェーンによって導かれる位相誤差を考慮し、較正において既存の基地局の電子回路を使用する方法である。
【0023】
(発明の大要)
本発明の上記その他の目的は、少なくとも1つの加入者装置と少なくとも1つの通信局(基地局)を含み、その通信局が複数の素子のアレイ・アンテナを含む通信システムで動作する方法によって達成される。各アンテナ素子は、その通信システムと関連し、送信装置チェーンおよび受信装置チェーン内に含まれる。各チェーンの位相および振幅の挙動は、受信装置チェーン伝達関数(受信装置チェーンの場合)または送信装置チェーン伝達関数(送信装置チェーンの場合)によって本質的に表される。
【0024】
本発明の一態様では、アンテナ素子からそのアンテナ素子に関連する送信装置チェーンを使用して所定の信号を送信しながら、その送信された信号をそのアンテナに関連しない少なくとも1つの受信装置チェーンで受信することを含む通信局の較正方法が記述されている。これは、較正係数が必要とされるすべてのアンテナ素子から所定の信号が送信されるまで繰り返される、他の送信装置チェーンによる他のアンテナ素子からの所定の信号(一般に同じである必要はない)の送信である。各アンテナ素子ごとに較正係数が決定され、アンテナ素子の較正係数は関連する送信装置チェーンおよび受信装置チェーンの伝達関数に依存し、その決定には1つまたは複数の所定の信号と送信の間に受信された各信号が使用される。ある特定の実施態様では、所定の信号はすべての送信に関して同じであり、受信信号はその後の処理のために記憶される。
【0025】
較正係数は一般に周波数に依存する。特定の一実施態様は、当該の周波数範囲内の周波数に本質的に依存しない較正係数の決定を記述している。
【0026】
この場合もやはり、記述する一実施態様では、送信装置チェーン伝達関数と受信装置チェーン伝達関数を決定する。この場合の一実施態様は、すべての受信装置チェーンと送信装置チェーンの伝達関数を基準受信装置伝達関数と基準送信装置伝達関数に相関してそれぞれ決定できるように、共通のアンテナ素子を共用するある受信装置チェーンとある送信装置チェーンを基準として指定することを含む。
【0027】
他の特定の実施態様は、通信局と加入者装置間のダウンリンクおよびアップリンク通信が同じ周波数チャネルで行われる場合に適用する。その場合、任意のアンテナ素子用の単一の較正係数を決定する。一変形態様では、その単一の較正係数は、位相に関して、特定のアンテナ素子に関連する送信装置チェーン伝達関数の位相と受信装置チェーン伝達関数の位相の差の関数である。この場合、あるアンテナ素子を基準アンテナ素子として指定し、それによってその基準アンテナ素子に関連しないすべての較正係数を基準アンテナ素子に関連する較正係数にそれぞれ相関させることができる。例えば、基準アンテナ素子に関連しない特定のアンテナ素子の較正係数は、位相に関して、所定の信号を基準アンテナに関連する送信装置チェーンから送信したときに特定のアンテナ素子で受信される信号と、所定の信号を特定のアンテナ組織に関連する送信装置チェーンから送信したときに基準アンテナ素子に関連する受信装置チェーンで受信される信号の位相差の関数として決定することができる。
【0028】
他の変形態様では、その単一の較正係数は、位相に関して、特定のアンテナ素子に関連する送信装置チェーン伝達関数と受信装置チェーン伝達関数の比の関数である。この場合も同様に、あるアンテナ素子を基準アンテナ素子として指定し、それによってその基準アンテナ素子に関連しないすべての較正係数を基準アンテナ素子に関連する較正係数に対してそれぞれ決定することができる。例えば、基準アンテナ素子に関連しない特定のアンテナ素子の較正係数は、所定の信号を基準アンテナに関連する送信装置チェーンから送信したときに特定のアンテナ素子で受信される信号と、所定の信号を特定のアンテナ組織に関連する送信装置チェーンから送信したときに基準アンテナ素子に関連する受信装置チェーンで受信される信号の比の関数として決定することができる。
【0029】
本発明の他の態様では、通信局から加入者装置にダウンリンク信号を送信する方法が記述されている。その方法は、各較正係数が特定のアンテナ素子に関連する1組の較正係数を決定するために通信局で実験を実行すること、および各アンテナ素子ごとに1組の重み付き送信信号を形成するために1組の送信重みに従ってダウンリンク信号に重みを付けることを含み、その特定のアンテナ素子の送信重みが加入者装置とのアップリンク通信の間にそのアレイ・アンテナで受信された信号と特定のアンテナ素子に関連する較正係数から決定され、さらにその重み付き送信信号を送信装置チェーンを介して送信することを含む。通信局が受信ベースバンド信号を処理することによって加入者装置とアップリンクで通信することができ、各受信ベースバンド信号がアンテナ素子のいずれかの対応する信号から決定される一実施態様では、処理は受信ベースバンド信号から決定される1組の受信重みに従って受信ベースバンド信号に重みを付けることを含み、各受信重みはアンテナ素子のいずれかに対応する。この実施態様では、特定のアンテナ素子の送信重みは、特定のアンテナ素子に対応する受信重みとその特定のアンテナ素子に関連する較正係数から決定される。通信局と加入者装置間のダウンリンク通信およびアップリンク通信が同じ周波数チャネルで行われる場合、使用される較正係数は、位相に関して、対応するアンテナ素子の送信装置チェーン伝達関数の位相と受信装置チェーン伝達関数の位相の差の関数であり、各送信重みは対応する受信重みおよび対応する較正係数に比例する。通信局と加入者装置間のダウンリンク通信およびアップリンク通信が同じ周波数チャネルで行われる別の場合、使用される較正係数は、対応するアンテナ素子の送信装置チェーン伝達関数と受信装置チェーン伝達関数の比の関数であり、各送信重みは対応する受信重みおよび対応する較正係数に比例する。
【0030】
受信重みから送信重みを決定するのに使用する較正係数を決定する実験は、較正係数を決定する前述の方法のいずれかに従うことができる。
【0031】
本発明の他の態様では、通信局を較正する装置は、通信局の装置の一部として記述されている。
【0032】
(好ましい実施形態の説明)
図1に、送信と受信の両方に使用される単一のアレイ・アンテナ103を用いるアレイ・アンテナ基地局システムを示す。本発明の方法および装置の好ましい実施形態は、この一般的な構成を有するシステムで動作するように実施される。図1に示すものと同様のシステムは従来技術かもしれないが、図1のシステムのように本発明の態様を実施するようにプログラミングまたは配線されたシステムは従来技術ではない。図1では、アレイ・アンテナ103の1つまたは複数の素子を送信モードでは送信電子回路113に、受信モードでは受信電子回路121に選択的に接続するために、アレイ・アンテナ103と送信電子回路113(1つまたは複数の送信信号処理装置119を含む)および受信電子回路121(1つまたは複数の受信信号処理装置123を含む)の間に、送信/受信(「TR」)スイッチ107が接続されている。スイッチ107の2つの可能な実施は、周波数分割デュプレックス(FDD)システムでは周波数送受切換器として、時分割デュプレックス(TDD)システムでは時間スイッチとしてである。本発明の好ましい実施形態ではTDDを使用する。
【0033】
送信電子回路と受信電子回路(それぞれ要素113と要素121)は、アナログ電子回路、デジタル電子回路、またはこれら2つの組合せを用いて実施することができる。信号処理装置119および123は、静的(常に同じ)、動的(所望の指向性に応じて変化する)、またはスマート(受信信号に応じて変化する)にすることができ、好ましい実施形態では適応型である。信号処理装置119および123は、受信用と送信用の異なるプログラミングを備える同じ1つまたは複数のDSPデバイスでも、異なるDSPデバイスでも、一部の機能用の異なるデバイスと他の機能用の同じデバイスでもよい。
【0034】
困ったことに、アレイ・アンテナ103、ケーブル105、109および111、送信電子回路チェーン113、および受信回路チェーン121の構築に際しての通常の製造上のばらつきのため、これらの構成要素によって導かれる異なる誤差および非線形性があり、アレイ・アンテナ103の異なる素子を通過する同じ信号は異なる振幅と位相で出現することになる。同様に、ケーブル109および111および電子回路113および121の異なるチャネルをそれぞれ通過する同じ信号は、振幅と位相が変化することになる。これらの振幅および位相の複合誤差は、1組の受信アレイ較正伝達関数と送信アレイ較正伝達関数によって捕捉することができ、その要素を一緒にして受信較正伝達関数ベクトルと送信較正伝達関数ベクトルを形成する。アレイ・アンテナ103の各素子、ケーブル105および109の対応するチャネル、スイッチ107の対応するチャネル、および送信電子回路113の対応するチャネルを送信アンテナ素子の送信装置チェーンと呼ぶものとし、アレイ・アンテナ103の各素子、ケーブル105および109の対応するチャネル、スイッチ107の対応するチャネル、および受信電子回路123の対応するチャネルをアンテナ素子の受信装置チェーンと呼ぶものとする。すべての構成要素が等しく、かつ完全な挙動を示すとすれば、そのようなアレイ較正伝達ベクトルは、アレイ・アンテナ素子からの各チェーンの末尾に見られる実際の信号を各チェーンの末尾に期待される対応する信号に変換する。送信信号と受信信号は若干異なるハードウェア・パスを辿るため、システムは送信アレイ較正ベクトル伝達関数と送信アレイ較正ベクトル伝達関数の両方を備えることになる。送信装置チェーンへの入力は送信信号入力115であり、受信装置チェーンの出力は受信信号出力117である。
【0035】
本発明の様々な好ましい実施形態は、ARJB標準規格第2版(RCR STD−28)の「パーソナル・ハンディホン・システム」(PHS)を用いるセルラ・システムに組み込むためのものである。これらの実施形態で使用されるPHSシステムの基地局は一般に図1に合致する。PHSシステムは、真の時分割デュプレックス(TDD)による8スロットの時分割多元接続(TDMA)システムである。したがって、8個のタイムスロットは4個の送信(TX)タイムスロットと4個の受信(RX)タイムスロットに分けられる。これは、特定のチャネルに関して受信周波数と送信周波数が同じであることを意味する。また、受信タイムスロットと送信タイムスロット間の加入者装置の移動が最小限であると仮定すると、相互依存すなわちダウンリンク(基地局から利用者の遠隔端末装置)とアップリンク(利用者の遠隔端末装置から基地局)の伝搬パスが同じであることも意味する。好ましい実施形態に使用されるPHSシステムの周波数帯は、1895〜1918.1MHzである。8個のタイムスロットはそれぞれ長さ625マイクロ秒である。PHSシステムは、発呼が行われる制御チャネル専用の周波数およびタイムスロットを有する。リンクが確立されると、呼は通常の通信のためにサービス・チャネルに渡される。通信は、フル・レートと呼ばれる32キロビット/秒(kbps)で任意のチャネル内で行われる。フル・レート未満の通信も可能であり、本明細書で説明する実施形態を変更してフル・レート未満の通信を組み込む方法の詳細は、当業者には明白であろう。
【0036】
好ましい実施形態で使用されるPHSにおいて、バーストは、単一のタイムスロットの間で空中を介して送信または受信される有限期間の無線周波数信号と定義する。グループは、4個のTXタイムスロットおよび4個のHANDYPHONEタイムスロットの1組と定義する。グループは、常に第1のTXタイムスロットから始まり、その期間は8×0.625=5ミリ秒である。
【0037】
PHSシステムは、ベースバンド信号に対してπ/4差動4相位相変調(π/4 DQPSK)を使用する。ボー・レートは192キロボーである。すなわち1秒当たり19万2,000個の符号がある。
【0038】
図2に、本発明の実施形態が実施されたPHS基地局の概略の構成図を示す。この場合もやはり、図2に示すものと同様のアーキテクチャを備えるシステムは従来技術かもしれないが、図2のシステムのように本発明の態様を実施するようにプログラミングまたはハードワイアードされたシステムは従来技術ではない。図2では、m=4として複数のm個のアンテナ201が使用されている。アンテナの出力は、このTDDシステムでは時間スイッチである送受切換器107に接続されている。受信の場合、アンテナ出力は切換器107を介して受信装置205に接続され、無線周波数受信装置(RX)モジュール205によってアナログで混合されて搬送周波数(約1.9GHz)から最終的に384kHzの中間周波数(「IF」)となる。次いで、この信号はアナログ・デジタル変換器(「ADC」)209によって1.536MHzでデジタル化(サンプリング)される。サンプリングされるのは信号の実部のみである。したがって複素位相ベクトル表記では、デジタル信号は−384kHzのイメージと共に384kHzの複素数IF信号を含むものとして視覚化することができる。ベースバンドへの最終的なダウンコンバートは、デジタルで1.536メガサンプル/秒の実部のみの信号と384kHzの複素位相ベクトルを乗算することによって実施される。その結果は、複素数ベースバンド信号に−2×384=−768kHzのイメージを加えたものを含む複素数信号である。この不要な負の周波数イメージをデジタル・フィルタ処理して、1.536MHzでサンプリングされた複素数ベースバンド信号を生成する。好ましい実施形態では、GrayChip Inc.GC2011デジタル・フィルタを使用してダウンコンバートとデジタル・フィルタ処理を実施し、後者には有限インパルス応答(FIR)フィルタ技法を利用する。これはブロック213として示す。
【0039】
各アンテナのGC2011デジタル・フィルタ装置213からは、受信タイムスロットごとに1つずつ、4つのダウンコンバートされた出力がある。本発明の一態様によれば、4個の各受信タイムスロットごとに、4つのアンテナから4つのダウンコンバートされた出力が較正を含めたその後の処理のためにデジタル信号処理装置(DSP)デバイス217(以下「タイムスロット処理装置」)に送られる。好ましい実施形態では、4つのMotorola DSP56303 DSPをタイムスロット処理装置として、受信タイムスロットごとに1つずつ使用する。
【0040】
タイムスロット処理装置217は、受信信号電力監視、周波数偏差推定と時間合せ、特定の遠隔利用者からの信号を判定する際の各アンテナ素子に対する重みの決定を含むスマート・アンテナ処理、決定した信号の復調を含めて、様々な機能を実行する。
【0041】
タイムスロット処理装置217の出力は、4個の各受信タイムスロットごとの復調されたバースト・データである。このデータは、システムおよびインタフェースのすべての要素を高レベル処理で制御することが主な機能であるホストDSP処理装置231に送られるが、その高レベル処理とはPHS通信プロトコルで定義されたすべての異なる制御チャネルとサービス通信チャネルでの通信に必要な信号を扱う処理である。好ましい実施形態では、ホストDSP231はMotorola DSP56303である。タイムスロット処理装置はまた、決定した受信重みもホストDSP231に送る。ホストDSP231の主な機能は、具体的には下記のものを含む。
【0042】
・状態およびタイミング情報の維持
【0043】
・タイムスロット処理装置217からのアップリンク・バースト・データの受信。
【0044】
・一実施形態ではタイムスロット処理装置217に対する較正モードへの移行指示を含めた、タイムスロット処理装置217のプログラミング。較正モードは、基地局が遠隔利用者にトラフィック・チャネルを割り当てた後に行われる。好ましい実施形態において、較正モードでは、基地局は新たに割り当てられたトラフィック・チャネル内の4つの連続するフレーム内の1個のRXタイムスロットを用い、本明細書で説明する好ましい実施形態の較正方法を実行する。TXタイムスロットの間は主基地局が送信中である可能性があり、それによってシステム内の低雑音増幅器が飽和状態になっている可能性があるため、較正実験はRXタイムスロットの間のみ実行されることが好ましい。代替実施形態では、較正実験はTXタイムスロットの間に実行される。較正モードでは、較正係数を決定するその後の処理のために、各フレームの終わりに部分的な結果がタイムスロット処理装置217からホストDSP231にアップロードされる。次いで、ホストDSP231は自動利得補正(「AGC」)回路から読み取った値で較正係数を調整し、そのデータを保存する。
【0045】
・アップリンクの復号、逆スクランブル、誤り訂正(CRC)符号検査、バースト・デコンストラクションを含む、通常モードでのアップリンク信号の処理。
【0046】
・通常モードでの、基地局の他の部分での高レベル処理に送るアップリンク信号のフォーマッティング。
【0047】
・通常モードでの、基地局でのその後の高レベル処理のための適応差分パルス符号変調(「ADPCM」音声データのフォーマッティングおよびサービス・データのフォーマッティング。
【0048】
・通常モードでの、基地局の他の部分からのダウンリンク・メッセージおよびADPCM音声データ(およびベアラ・サービス)の受信。
【0049】
・通常モードでのダウンリンク・バーストの処理(バースト構築、CRC、スクランブル、暗号化)
【0050】
・較正モードでの、較正バーストのフォーマッティングおよび符号237として示す送信制御装置/変調装置への送信を含む、ダウンリンク・バーストのフォーマッティングおよび送信制御装置/変調装置237への送信。
【0051】
・送信重みベクトルの決定および送信制御装置/変調装置237への送信を含む、送信制御装置/変調装置237のプログラミング。一実施形態において、通常モードでは、送信重みベクトルは較正モードの間に本発明の好ましい実施形態に従って決定された較正係数を使用してDSP231で補正された受信重みベクトルである。次いで、送信重みベクトルは所望の送信電力制限を満たすように全体としてスケーリングされ、送信制御装置/変調装置237に送られる。
【0052】
・符号233として示す無線周波数制御装置の制御
・通常モードでのモデム状態情報の維持と報告、および同期の制御
【0053】
無線周波数制御装置233は、ブロック245として示す無線周波数システムとのインタフェースとなり、また無線周波数システムとモデルの両方が使用するいくつかのタイミング信号の生成も行う。無線周波数制御装置233が実行する具体的なタスクは、下記のものを含む。
【0054】
・無線周波数システム用(RXおよびTX)およびモデムの他の部分のタイミング信号の生成。
・送信電力監視値の読取り。
・送信電力制御値の書込み。
・送受切換器107転換器制御信号の生成。
・自動利得制御(AGC)値の読取り。
【0055】
無線周波数制御装置233は、ホストDSP231から各バーストごとのタイミング・パラメータおよびその他の設定を受け取る。
【0056】
送信制御装置/変調装置237は、ホストDSP231から一度に4個の符号ずつ送信データを受け取る。送信制御装置は、このデータを使用してアナログIF出力を生成し、それを無線周波数送信装置(TX)モジュール245に送る。送信制御装置/変調装置237が実行する具体的は操作は以下のとおりである。
【0057】
・π/4 DQPSK変調による複素変調信号へのデータ・ビットの変換。
・1.536MHzの中間周波数へのアップコンバート(まだデジタル)。これは、GrayChip 2011を使用して実施される。
・1.536MHzのIF信号の4倍オーバーサンプリングによる6.144メガサンプル/秒信号の取得。IF信号を4倍オーバーサンプリングすると、全体で32倍のサンプリング信号が得られることに留意されたい。
・この4倍オーバーサンプリングした(IFと比較して)複素信号とホストDSP231から得られた送信重みの乗算。得られる複素数波形の実部を取って4つの実部のみのIF信号を得る。
・送信制御装置/変調装置237の一部であるデジタル・アナログ変換器(「DAC」)による、送信モジュール245に送るアナログ送信波形への上記信号の変換。
【0058】
送信モジュール245は、信号を送信周波数にアップコンバートし、信号を増幅する。増幅された送信信号出力は、送受切換器/時間スイッチ107を介してアンテナ201に送られる。
【0059】
以下の表記法を使用する。m個のアンテナ素子(好ましい実施形態ではM=4)があるものとし、z1(t),z2(t),...,zm(t)をそれぞれダウンコンバート後すなわちベースバンドで表したサンプリング後の第1、第2、...、第mのアンテナ素子の複素数応答(すなわち同相分Iと直角分Qを有する)とする。上記の表記法ではtは離散である。これらのm倍サンプリングの量は、z(t)の第i行をzi(t)として単一のmベクトルz(t)によって表現することができる。有限数のサンプルを収集し、それによってz1(t),z2(t),...,zm(t)を行ベクトルとして表現できるようにし、z(t)を行列として表現できるようにする。ただし、このように有限数のサンプルを組み込むことの詳細はこの考察の範囲外であり、こうした詳細を組み込む方法は当業者には明白であろう。いくつかの信号が基地局からいくつかの遠隔利用者に送信されるものと仮定する。具体的には、当該の加入者装置が信号s(t)を送信するものと仮定する。空間処理は、送信された信号s(t)の推定値を引き出すために、受信信号z1(t),z2(t),...,zm(t)のI値とQ値の特定の組合せの取得を含む。当該の重みは、第i要素をwriとする複素数重みベクトルwrで表される、この特定の加入者装置の受信重みベクトルによって表現することができる。次いで、信号の推定値を下式に送る。
【数1】
上式で、w’riはwriの複素共役であり、wr Hは受信重みベクトルwrのエルミート転置(すなわち転置と複素共役)である。時空的処理を含む実施形態では、受信重みベクトルの各要素は時間の関数とし、それによって重みベクトルを、第i要素をwri(t)とするwr(t)で表すことができるようにする。次いで、信号の推定値は下式として表現することができる。
【数2】
上式で、演算子「*」はたたみこみ演算である。時空的処理による信号の推定値の形成は、周波数(フーリエ変換)領域で同等に実施することができる。s(t)、zi(t)、wri(t)、z(t)、およびwr(t)の周波数領域表現は、kを離散周波数値としてそれぞれS(k)、Zi(k)、Wi(k)、Z(k)、およびWr(k)で表す。
【数3】
【0060】
以下の説明では、複素数受信重みベクトルwrまたはその要素について述べる場合は常に、これを一般化して前述の時空的処理を組み込むことができることを理解されたい。
【0061】
本発明の範囲内においては、当該の特定の信号に対する複素数重みベクトルwrを決定するいくつかの方法が考えられる。好ましい実施形態では、受信信号が特定の変調フォーマットを有することの知識を用いて受信信号自体からwrを決定する。当該の特定の信号に対する複素数重みベクトルwrの推定値を得る方法、および遠隔端末装置からの他の信号が存在するとき、すなわち同一チャネル間干渉が存在するときに当該の特定の遠隔端末から送信された信号を復調する方法についての説明は、前述の1996年10月11日出願の「Method and Apparatus for Decision Directed Demodulation Using Antenna Arrays and Spatial Processing」という名称の米国特許出願第08/729390号(以下「本出願人の復調発明書類」)に記述されている。
【0062】
変調された信号Si(t)をいくつかの遠隔利用者に送信するには、zti(t)=w'tist(t)、i=1,...,m、wtiを複素数の重みとして、信号zt1(t),zt2(t),...,ztm(t)をそれぞれm個のアンテナに印加する。その1組のwtiは、第i要素をwtiとする複素数m次元列ベクトルによって要約することができ、これをその利用者の送信重みベクトルと呼ぶ。すなわち、m個のアンテナのm個の信号を、第i要素をzti(t)、i=1,...,mとして列ベクトルzt(t)で表すと下式となる。
【数4】
上式で、w’tはベクトルwtの複素共役を表す。
【0063】
あるいは、時空的処理を使用して遠隔加入者装置に送信することもできる。そのような場合、送信重みベクトルは、時間(たたみこみカーネル)の関数で、zti(t)=W’ti(t)*st(t)、i=1,...,mである要素を有する。ベクトル表記では、zt(t)=W’t(t)*st(t)となる。この場合もやはり、以下の説明では複素数送信重みベクトルwtまたはその要素について述べる場合は常に、これを一般化して前述の時空的処理を組み込むことができることを理解されたい。
【0064】
好ましい実施形態のシステムは、送信周波数と受信周波数が同じであることを知ることができるようにTDDを使用する。周知のレシプロシティ定理を用いて、特定の利用者の送信重みベクトルをその利用者の受信重みベクトルから決定する。当該の受信重みベクトルはその利用者の受信信号から決定する。
【0065】
実際には、計算される実際の重みベクトルは、アンテナ素子で受信される信号に対するものであるが、受信装置チェーンの末尾で受信された信号に対して使用され、ことによるとその信号から計算されることになり、したがって基地局のアレイ・アンテナの各アンテナ素子へのアップリンク伝搬パスに関する情報のみならず、各アンテナ素子に関連する各受信装置チェーンによって導かれる振幅誤差および位相誤差も含んでいないことになる。その結果、これらの信号から決定された受信重みベクトルは、基地局と電話機間の伝搬パス特性の正確な表現を使用していない。伝搬特性(利得および位相)を決定するには、受信装置チェーンに関する較正データが必要である。受信装置で測定されるあるアンテナ素子からの特定の信号は、その信号が受信装置チェーンによって他のアンテナ素子からの信号と比較して遅延している場合、相対的に位相を前進させる必要があるはずである。同様に、ダウンリンク方向では、アンテナ素子から送信されるものを決定する送信重みを送信信号処理装置で印加すると、各アンテナ素子に関連する各送信装置チェーンによって導かれる振幅誤差および位相誤差によって誤りが生じることになる。特定のアンテナ素子に対応する特定の重みベクトル要素は、信号処理装置で送信された信号が送信装置チェーンによって他のアンテナ素子に送られる他の信号と比較して遅延している場合、相対的に前進させる必要がある。
【0066】
本発明の一実施形態では、Hを第iアンテナの受信および送信装置チェーンのスカラ較正係数、i=1,...,mとして、wti=H'iwriである。他の実施形態では、送信および受信装置チェーンの較正の結果、送信処理に時空的処理を使用する。この場合、周波数領域ではHiを第iアンテナの受信および送信装置チェーンの較正係数、i=1,...,mとして、Wti(k)=H'i(k)wriである。受信処理も時空的である場合は、周波数領域ではi=1,...,mとして、Wti(k)=H'i(k)Wri(k)である。
【0067】
好ましい実施形態では、特定の遠隔利用者に対する受信および送信を実施するときに、受信重みベクトルから得られた送信重みベクトルの要素に適用される較正は、位相に関して、その要素に対応する信号の送信チェーンの位相と受信チェーンの位相の差の関数である。
【0068】
次に、較正係数を決定するために基地局で実行される実験について述べる。本発明の一態様では、実験には図1に示す一般的アーキテクチャの基地局を使用し、基地局自体を使用するように制約する。当該の基地局はアンテナ素子のアレイ・アンテナ103を含み、各アンテナ素子はメッセージ信号入力からアンテナ素子に至るまでの対応する送信装置チェーン、およびアンテナ素子から受信信号処理装置を含めてそこに至るまでの対応受信装置チェーンするを有する。また、あるいは受信信号処理装置でもある送信信号処理装置は、較正テスト信号を生成し、受信信号から較正データを抽出するために基地局内に含まれる。
【0069】
本発明の好ましい実施形態を実施するハードウェアは、図2に示すとおりであることが好ましい。
【0070】
基本的な較正実験方法は、m個のアンテナ素子のいずれかに関連する送信装置チェーンを使用して既知の信号を送信しながら、その送信信号を、他の(m−1)個のアンテナ素子で(m−1)個の関連する各受信装置チェーンを介して受信することを含む。図3(a)に4個のアンテナ素子を備えるアレイ・アンテナに関係する伝搬パスを示し、図3(b)に5素子アレイ・アンテナの伝搬パスを示す。番号付きのノードはアンテナ素子を表し、相互接続された方向を示す矢印はデュプレックスパスを示し、関連する1組の符号{Gij}は各パスに関連する利得および位相シフトを示す。デュプレックスパスの番号m(m−1)/2は、アレイ内のアンテナ素子の数に伴って二次的に増加する。図3(b)では、符号{Gij}をすべて示していないことに留意されたい。
【0071】
このように、4つのアンテナの場合、それぞれアレイ内のアンテナのいずれかから4つの送信を行い、送信していない3つの受信装置の各送信ごとに測定を行う。
【0072】
ベースバンドで表されたその1組の受信信号の各信号は{sij(t)}は、サンプリングされた時間(t)の関数でありその1組の各構成要素は、i,j=1,...,4として下式で表現することができる。
sij(t)=si(t)*τi(t)*gij(t)*rj(t) 式(1) 上式で、
sij(t)は、アンテナiから送信され、アンテナjで受信される信号をベースバンドで表す時系列(すなわち1組のサンプル)であり、
sj(t)は、ベースバンドで表されたアンテナiから送信された時系列の較正信号であり、
τi(t)は、送信チェーンiのベースバンド伝達関数を表すたたみこみカーネルであり、
gij(t)は、アンテナiとアンテナjの間の伝搬パスの伝達関数を表すたたみこみカーネルであり、
rj(t)は、受信装置チェーンの伝達関数を表すたたみこみカーネルであり、
*はたたみこみ演算を表す。
【0073】
式(1)は、同等の周波数領域(フーリエ変換)で下式として表現することができる。
Sij(k)=Si(k)・Ti(k)*Gij(k)・Rj(k)
上式で、各項は式(1)の対応する項のフーリエ変換であり、独立の離散周波数変数kの各値ごとの複素周波数領域関数(関連する振幅および位相を有する)である。したがって、周波数領域および対応する時間領域関数は、以下のように表現することができる。
Sij(k)⇔sij(t)は、周波数領域受信信号と時間領域受信信号であり、
Si(k)⇔si(t)は、第i送信装置チェーンの周波数領域受信信号と時間領域受信信号であり、
Ti(k)⇔τi(t)は、第i送信装置チェーン(第i送信装置アンテナ素子を含めて)の周波数領域伝達関数と時間領域たたみこみカーネルであり、
Gij(k)⇔gij(t)は、第iアンテナ素子から第jアンテナ素子までの伝搬パスの周波数領域伝達関数と時間領域たたみこみカーネルであり、
Rj(k)⇔rj(t)は、受信装置チェーン(第j送信装置アンテナ素子を含めて)の周波数領域伝達関数と時間領域たたみこみカーネルである。
【0074】
図2のシステムによる好ましいPHS実施形態ではm=4である。したがって、1個のアンテナ素子によって既知の信号を送信し、残りの(m−1)=3個のアンテナ素子で同時に受信する。基地局の受信装置機能と送信装置機能の両方を同時に使用していること、および送信アンテナ素子と受信アンテナ素子が近接しているために伝搬損失が非常に小さい(約30dB)ことに留意することが重要である。同じ手順を繰り返し、各組ごとに異なるアンテナ素子を使用して残りのm−1個のアンテナに送信して合計m組の測定を行い、合計m(m−1)の測定(好ましい実施形態では12回)でm組のm−1個の測定信号を得る。好ましい実施形態では、伝搬パス損失が小さいため、受信機が飽和状態にならないように各受信装置に適用する重みを縮小する。
【0075】
m個の送信装置チェーン較正({Ti})、m個の受信装置チェーン較正({Ri})および各アンテナと残りのm−1個のアンテナの間のパス数(m(m−1)/2 Gij)の2倍の伝達関数が不明である。したがって、未知数の合計数はm(m+1)であり、m=4の場合は20であり、測定によって作成することができる式の数は12個である。決定すべき未知数の数は、以下のように減らすことができる。TDDシステムに適用する場合のレシプロシティを仮定すると、各アンテナと残りのm−1個のアンテナの間のパスはいずれの方向でも同じであり、したがって未知数はm(m−1)/2だけ少なくなり、合計m(m+3)/2個の未知数となり、m=4の場合は14個である。一態様では、主な関心は相対的な受信および送信較正係数にあり、送信伝達関数のいずれかおよび受信伝達関数のいずれかは1.0と仮定することができる。好ましい実施形態では、すべてのkについてR1(k)=T1(k)=1.0と仮定する。したがって、m=4の場合、以下の12個の式を解く必要がある。
S12=G12R2
S13=G13R3
S14=G14R4
S21=T2G21
S23=T2G23R3 式(2)
S24=T2G24R4
S31=T3G31
S32=T3G32R2
S34=T3G34R4
S41=T4G41
S42=T4G42R2
S43=T3G43R3
【0076】
上記の式は、両辺の対数、例えば関数loge(x)=1nxとして定義されるeを底とする対数を取ることによって線形化することができる。得られる式は下式のとおりである。
【数5】
受信装置チェーンと送信装置チェーンに対して別々の較正を得るためには、これらの式を解く必要がある。明確な解を得るにはさらに仮定が必要であることが分かっている。
【0077】
好ましい実施形態では、たとえば周波数領域での受信重みは、較正なしで決定され、周波数領域送信重みベクトルは、周波数領域受信重みベクトルに(周波数依存の)較正ベクトルによって決定されるm行m列の対角較正行列を乗じたものである。好ましい実施形態では、各送信重みベクトル要素は対応する受信重みベクトルに各周波数で、特定の要素に関する受信装置チェーン応答と送信装置チェーン応答の比を乗じたものである。原理的に、これが、送信時の適正な較正を与えることを調べるために、単一のユーザでの受信時に、信号(i番目の要素aiの空間符号a)が、アンテナj(正位相)よりも遅くアンテナiに到着する場合を考える。また、受信装置チェーンのため、アンテナiに到着するその信号が、アンテナj(正位相)に到着する信号よりも、信号プロセッサに到着するのに長時間要すると仮定しよう。Giは、遠隔ユーザからi番目アンテナ素子までの空気経路を示し、それは、ユニット信号が遠隔ユーザから送信されることを想定しているとしよう。次いで、aのi番目の要素は、i番目のアンテナ素子Giでの信号である。信号プロセッサで受信される信号は、GiRiである。これは、受信重みベクトルはGiRiに比例するi番目の要素を有することを意味する。好ましい戦略的方針に従う場合、送信電子装置でG'iR'iに比例する信号を(すなわち、GiRiに比例するi番目の要素を有する重みベクトルを用いて)送信することになり、その結果、G'iR’iTiに比例するi番目のアンテナ素子での信号を生じることになる(G'iR'iTiに比例するアンテナでのi番目の要素をともなう重みベクトルで送信することと等価である)。好ましい戦略的方針によると、G'に比例するi番目のアンテナ素子での信号で(すなわち、Giに比例するアンテナでのi番目の要素をともなう重みベクトルで)送信することが望ましい。これを実現するため、i番目の送信信号に対するRi/Tiの較正係数が必要とされ、R'iは1/Riに比例することに留意されたい。このことは、R’/T’に比例する送信重みベクトル要素較正係数を適用することと同様である。較正係数をHi=Ri/Tiと定義する。
【0078】
したがって、本発明の一態様では、m=4に対する較正手順において、4組の測定値からの12個の信号を受信する。(周波数領域)信号比Qijを次式で定義し、
Qij=Sij/Sji
ここで、除算は各要素に対するもので、前述のように、Sijはi番目のアンテナから送信され、j番目のアンテナ要素で受信された信号である。次いで、交換関係(Gij=Gji)を用いて、
Qij=TiRj/RiTj=HjHi
となり、ここで上述のように、較正係数Hiは、i番目のチャネルに対する受信チェーン伝達関数Riと送信チェーン伝達関数Tiの比である。12個の式は6個の比を与える。相対的較正に関心があるので、Hi≒1.0と定義する。次いで、他の較正が、特定の位置チャネルに対して、任意には第1チャネルに対して決定される。解くための十分な数の式を形成する複数の方法が可能である。以下の式を使用できる。
H1=1.0
H2=Q12H1=Q12=S12/S21
H3=Q13H1=Q31=S13/S31
H4=Q14H1=Q14=S14/S41 式(4)
H3=Q23H2
H4=Q24H2
H4=Q34H3
【0079】
一実施形態では、式(4)の初めの4つの式によって、使用する較正係数を与えられ、その結果、基準要素に対する要素(たとえばH1に対するH2)の較正係数は、基準要素から送信され要素(たとえばS12)で受信された信号と、該要素から送信され基準要素(たとえばS21)で受信された信号との比となる。
【0080】
アンテナの一実施形態では、次いでこれらの較正係数は、式H3=Q23H2、H4=Q24H2、およびH4=Q34H2で無矛盾性についてのチェックを受け、一方法で獲得された各較正係数に他の方法で決定された同じ係数の複素共役を乗ずることにより、その位相が位相誤差の測定となる数字が与えられる。代替態様では、受容できない位相誤差にフラグをつけるために閾値が使用され、次いでフラグは較正手順を繰り返すために使用される。
【0081】
他の実施形態では、式のすべては、式(4)の線形化を用いた最小二乗的理解で解かれる。これは、各側の対数をとり、多元式の組を解き、最後に対数空間からの結果を再転換することで3つの較正定数を計算することによって、線形化される。線形化式は、下記のようになる。
InH2=InQ12
InH3=InQ13
InH4=InQ14
InH3=InQ23+InH2
InH4=InQ24+InH2
InH4=InQ34+InH3
これらは、以下の行列形式で表現される。
【数6】
この行列式から以下の解が得られる。
InH2=0.5InQ12+0.25InQ13+0.25InQ14−0.25InQ23−0.25InQ24
InH3=0.25InQ12+0.5InQ13+0.25InQ14−0.25InQ23−0.25InQ34
InH4=0.25InQ12+0.25InQ13+0.5InQ14+0.25InQ24+0.25InQ34 式(5)
ついでこれらは、以下の式を用いて、線形項に変換しなければならない。
H2=exp(InH2),
H3=exp(InH3),および
H4=exp(InH4), 式(6)
【0082】
前記議論では、通信システムの較正のために、伝達関数が使用される。伝達関数の計算は、当業では知られている。伝達関数は、一般に、独立周波数変数の関数である。これは、複数の周波数(または広帯域)信号と関数が含まれることを暗示する。しかし、伝達関数の大きさが相対的に均一であり、信号帯域を通してほぼ線形の位相特性を有するならば、すべての伝達関数は、対象の帯域の定数(好ましい実施形態では300kHz)である。この場合、以下のタイムドメインで計算される比が、比Qijに置き換えられる。
【数7】
ここで、すべての対象のサンプル全体の総和がとられ、または、代替実施形態では、受信したサンプルのサブセットがとられる。導かれた較正係数Hi,i=1,...,mもまた、複素数値をもつ(すなわち位相と振幅)スカラーであり、仮に、対応する受信重みベクトル要素がスカラーである場合、導かれた伝達重みベクトル要素もまた、複素数値をもつスカラーである。
【0083】
好ましい実施形態では、図2の装置を使用して、標準SYNCHバースト(SYNCHバーストに関する詳細は、本発明者の復調に関する発明の文書を参照のこと)が、4つの連続したタイムスロットの4つのアンテナの1つを介して送信される。代替実施形態では、伝送のために、伝達タイムスロットを使用することができ、かつ/または、他の知られる信号を使用することができる。非伝送アンテナに結合される3つの受信装置チェーンのそれぞれからの、複素数値をもつ(位相および求積法において)受信機信号出力が測定される。図2の好ましい装置では、タイムスロット317が使用される。
【0084】
本発明の一態様は、アップリング重みと較正係数から得られるダウンリンク重みを使用する。図4に、較正を使用してダウンリンク重みを決定する流れ図を示す。ステップ403が、アップリンク重みwrhi=1,...,mを決定している。図2によって記述される基地局の好ましい実施形態では、アップリンク重みの決定は、本発明者の復調に関する発明の文書に記述の通りである。ステップ405は、較正係数Hi(k)=Ri(k)/Tl(k)を決定している。較正係数を決定するステップ405の好ましい実施形態は、図5の流れ図によって記述され、非周波数依存較正係数を決定する。ステップ407では、ステップ405からの較正係数と、ステップ403からの受信重みは、受信重みベクトル要素に対応する較正係数の共役複素数を乗じることによって伝達重みを決定するために使用される。伝達重みベクトル要素の相対的な大きさは、ステップ407で決定され、全体的な大きさは、パワー・コントロールの一部として決定される。
【0085】
較正係数を決定するステップ405の実施形態を、図5の流れ図の助けを借りて説明する。ステップ503および505をm個のアンテナ素子のそれぞれに対して実行する。これを確実に行う多くの方式が可能である。この流れ図では、1つのそうした方法を使用する。ステップ507が、すべてのアンテナ素子に対してステップ503および505が実行されたかを判定する。実行されていない場合、ステップ503および505を別のアンテナ素子に対して、すべてに行き渡るまで繰り返す。ステップ503で、バースト、好ましくはSYNCHバーストを、まだ行き渡ってないアンテナ素子を介して伝送する。伝送ステップ503の最中に実行されたステップ505で、伝送ステップ503の結果、残りの(m−1)個のアンテナで受信した信号を得る。好ましくは、同相値および直角位相値を、特定のアンテナ素子と関連する受信装置チェーンを使用して判定する。図1の全体のシステムの図2の実施形態を使用するとき、ステップ503の最中に、送受切換器107を送信アンテナに対して送信モードにし、他のm−1個のアンテナに対して受信モードにする。送信装置チェーン121を送信のために使用し、受信装置チェーン113を受信のために使用する。図2の装置を使用しているとき、ホストDSP231およびRF/タイミング・コントローラ133を使用して、ステップ503および505を制御する。特定の時間スロットに対する時間スロット・プロセッサ217を使用して、ステップ505の最中に信号を受信する。
【0086】
ステップ509で、あるアンテナ素子(受信しているとき)によって別のアンテナ素子(送信しているとき)から受信された信号の、その別のアンテナ素子(受信しているとき)により、前記あるアンテナ素子(送信しているとき)によって信号送信されたときに、受信された信号に対する比率を判定する。一実施形態では、この比率は、周波数領域内で判定する。図2の装置を使用するものを含み、そこでSNCHパルスが送信される別の実施形態では、1セットの時間サンプルを使用し、この時間サンプルは、SYNCHパルスのサンプルのサブセットに対応して、Qijによって表される複素値スカラーである比率は、下記の式を使用して判定する。
【数8】
ただし、総和は、サンプルの前記サブセットに対するものである。
【0087】
ステップ509で判定した比率を使用するステップ511で、基準と呼ぶ1つのアンテナ素子に関する較正係数を判定する。前述したとおり、一実施形態では、式(4)での最初の4つの式を使用して較正係数を与え、基準素子に関する較正係数が、基準素子から送信されてその素子で受信された信号の、その素子から送信されて基準素子で受信された信号に対する比率であるようにする。また、前述のとおり、別の実施形態では、式(4)での最初の4つの式を使用して、較正係数を直接に与え、ステップ519が、さらに、式(4)の最後の3つの式を使用する整合性検査を伴う。さらに別の実施形態では、式(5)および(6)を使用して、較正係数を得る。
【0088】
図2の装置を使用する実施形態では、較正係数は、ホストDSP231によって判定され、スカラー比率に基づく。別の実施形態では、周波数領域較正係数を得る。
【0089】
非TDDシステム、例えば、FDDシステムでは、未較正の送信重みを受信信号または受信重みから判定する手順を使用した後、本発明の方法の異なる実施形態を使用して較正を達することが可能である。この方法は、送信周波数および受信周波数での違いを考慮に入れるためにのみ、変更する必要がある。
【0090】
前述の内容は、本発明の特定の実施形態の完全な説明であるが、これらの実施形態は、例示を目的とするだけのものであり、様々な変更、代替構成、および等価態様を使用することが可能である。したがって、前記の説明は、本発明の範囲を制限するものと受け取るべきではない。本発明の範囲は、本明細書に添付した請求項およびそれと法律上、等価であるものによって定義されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【図1】 そこで、またそのために本発明の実施形態を実施することが可能な、送信と受信の両方のために、単一のアンテナ・アレイを使用するアンテナ・アレイ・システムを示す図である。
【図2】 そこで本発明の実施形態を実施するPHSベース・ステーションの簡略化したブロック図である。
【図3】 4素子アレイで、アンテナ・アレイのアレイ内伝搬パスを示す図(a)と5素子アレイで、アンテナ・アレイのアレイ内伝搬パスを示す図(b)である。
【図4】 本発明の一態様である、較正済み送信重みを受信重みおよび較正係数から判定するための方法を示す流れ図である。
【図5】 本発明の較正方法の実施形態を示す流れ図である。
Claims (5)
- アンテナアレイを有する通信局のデジタル信号処理装置(DSP)によって、通常モードから較正モードに切り換えるステップと、
前記較正モード用のスロットを含むトラフィック・チャネルを割り当てるステップと、
前記アンテナ・アレイ中の第1アンテナで、第1信号を送信するステップと、
前記アンテナ・アレイ中の第1アンテナ以外の残りのアンテナで、前記割り当てられたトラフィック・チャネルのスロットで前記第1信号を受信するステップと、
前記アンテナ・アレイ中の第2アンテナが第2信号を送信するステップと、
前記アンテナ・アレイ中の第2アンテナ以外の残りのアンテナが、前記第2信号を受信するステップと、
前記アンテナアレイの第2アンテナによって送信されるとともに第1アンテナによって受信される前記第2信号に対する前記アンテナアレイの第1アンテナによって送信されるとともに第2アンテナによって受信される前記第1信号の第1の比をとることによって、外部装置又は追加の装置を使用せずに、第1アンテナに対する第2アンテナの較正係数を決定するステップと、
前記DSPによって、較正モードから通常モードに切り換えるステップと
を有する方法。 - 前記第1アンテナを基準アンテナとして指定するステップと、
その基準アンテナに対する前記第2アンテナの較正係数を、前記アンテナアレイの前記基準アンテナによって送信されるとともに前記第2アンテナによって受信される第1信号に対する前記アンテナアレイの第2アンテナによって送信されるとともに前記基準アンテナによって受信される第2信号の第2の比をとることによって、決定するステップとをさらに含む請求項1記載の方法。 - アンテナアレイで加入者装置からアップリンク信号を受信するステップと、
前記アップリンク信号に基づいてアンテナアレイの受信重みを決定するステップと、
アンテナアレイの送信重みを生成するために前記較正係数を前記アンテナアレイの受信重みに乗算するステップと、
前記アンテナアレイから加入者装置へのダウンリンク信号に送信重みを適用するステップと、
その重み付けされたダウンリンク信号を加入者装置に送信するステップと
をさらに有する請求項1記載の方法。 - 複数のアンテナを有するアンテナアレイと、
第1信号を前記アンテナアレイの第1アンテナによって他のアンテナへ送るとともに第2信号を前記アンテナアレイの第2アンテナによって他のアンテナに送るための各アンテナ用の送信用チャネルと、
前記第1、第2信号を受信するための各アンテナ用の受信用チャネルと、
前記受信用チャネルに接続され、前記第2信号を記憶するメモリと、
そのメモリに接続され、前記アンテナアレイの各アンテナの較正係数を、前記アンテナアレイの第2アンテナによって送信されるとともに第1アンテナによって受信される前記第2信号に対する前記アンテナアレイの第1アンテナによって送信されるとともに第2アンテナによって受信される前記第1信号の比をとることによって、決定する信号処理装置と
を含む通信局。 - 前記第1アンテナが基準アンテナとして指定され、前記信号処理装置がその基準アンテナに対する前記第2アンテナの較正係数を決定するよう構成されている請求項4記載の通信局。
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