以下、本発明の実施の形態に係る呼気アルコール濃度検知装置について添付図面を参照して説明する。本実施形態の呼気アルコール濃度検知装置は、例えば自動車に搭載され、ドライバーの飲酒の有無を検知するために用いられるものである。図1は、第1実施形態に係る呼気アルコール検知装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態の呼気アルコール検知装置10aは、呼気吹きかけ式アルコール検知センサ12、呼気温度検知センサ14、呼気温度変化検知部16、呼気判断部18、及び計測完了判断部20を備えている。
呼気吹きかけ式アルコール検知センサ12は、マウスピース等を用いずに被測定者が吹きかけた呼気を被測定者の口と接触せずに取得して、呼気中のアルコール濃度を検知するためのものであり、呼気取得手段として機能する。呼気吹きかけ式アルコール検知センサ12としては、半導体を用いたもの、燃料電池を用いたもの、赤外線を用いたものを適用することができる。
半導体を用いた呼気吹きかけ式アルコール検知センサ12は、半導体の中にもともと流れている電子の量が、呼気中のアルコールにより吸収され、変化する特性を利用する。この原理の呼気吹きかけ式アルコール検知センサ12では、半導体内の電子の量が変化することにより、センサ内の電気抵抗も変化するため、その電気抵抗の強さから被測定者の呼気中アルコール濃度を推定することができる。
燃料電池を用いた呼気吹きかけ式アルコール検知センサ12は、呼気中のアルコールから電子を作り出すことのできる燃料電池の特性を利用する。この原理の呼気吹きかけ式アルコール検知センサ12では、アルコールにより作り出された電子の多さが、電気の流れの強さになるため、その電流の強さから、被測定者の呼気中アルコール濃度を推定することができる。
赤外線を用いた呼気吹きかけ式アルコール検知センサ12は、赤外線が、車室内の空気中のアルコールにより吸収されることによる特性を利用する。この原理の呼気吹きかけ式アルコール検知センサ12では、アルコールにより吸収された赤外線を、光検出器で電気信号に変換し、電気信号をマイクロプロセッサーで解析することにより、被測定者の呼気中アルコール濃度を推定することができる。
呼気温度検知センサ14は、被測定者の呼気の温度を検知するためのものであり、吹きかけ方検知手段として機能する。呼気温度検知センサ14は、呼気吹きかけ式アルコール検知センサ12における作動温度測定用の温度センサとは別個に設けられている。
呼気温度変化検知部16は、呼気温度検知センサ14が検知した呼気の温度が一定時間にどれだけ変動するかを検知するためのものである。呼気判断部18は、呼気温度変化検知部16が検知した一定時間内における呼気温度の変動から、当該呼気が人の呼気であるか否か、当該呼気中のアルコール濃度を有効なものとして扱うか無効なものとして扱うかを判断するためのものである。呼気温度変化検知部16及び呼気判断部18は、アルコール濃度検知手段として機能する。
計測完了判断部20は、呼気判断部18が当該呼気中のアルコール濃度を有効なものと判断したときは、計測完了として判定し、呼気判断部18が当該呼気中のアルコール濃度を無効なものと判断したときは、計測が未完了として判定して再度の計測を行なわせるためのものである。
次に、図2〜5を参照して、本実施形態の呼気アルコール検知装置の動作について説明する。本実施形態の呼気アルコール検知装置10aは、運転者がエンジンを始動した状態から動作を開始する。図2に示すように、呼気吹きかけ式アルコール検知センサ12の電源が投入され(S11)、呼気吹きかけ式アルコール検知センサ12が安定状態に達した後に(S12)、アルコール濃度計測開始が可能となる(S13)。
呼気吹きかけ式アルコール検知センサ12の上記ウォームアップの終了後、呼気温度検知センサ14は検知温度の初期値T0を計測し、呼気温度変化検知部16は初期値T0を記憶する(S14)。
ドライバーにより吹きかけられた呼気中のアルコール濃度を呼気吹きかけ式アルコール検知センサ12が計測し、呼気温度変化検知部16は呼気温度検知センサ14により検知された呼気温度を一定周期で取得する(S15)。呼気温度検知部16が一定時間t内に初期値T0から所定値ΔT以上の温度変化を検知したか否かを判定する(S16)。所定値T0以上の温度変化を検知しなかった場合は、十分な呼気吹きかけがなかったものとしてS15に戻る。所定値ΔT以上の温度変化を検知した場合、その温度変化が上昇により変化したものであるのか否かを判定する(S17)。温度変化が上昇により変化したものである場合は、呼気吹きかけ式アルコール検知センサ12で検知された呼気に含まれるアルコール濃度を有効なものとして表示する(S18)。温度変化が上昇により変化したものでない場合(下降により変化した場合)は、呼気吹きかけ式アルコール検知センサ12で検知された呼気に含まれるアルコール濃度を無効なものとして表示する(S19)。
従来のマウスピース等を用いずに被測定者が吹きかけた呼気を被測定者の口と接触せずに取得する形式の呼気アルコール検知装置では、呼気の吹きかけ方を考慮していないため、風船やエアーダスター等を用いて実際に人が呼気を吹きかけたようになりすますことが可能である。実際に人が吹きかけた呼気であるかどうかを判断するためには、風量センサ、呼気成分検知センサ、吸い込み検知装置等が別途必要となり、装置の複雑化とコスト高を招く。
また、従来の呼気アルコール検知装置では呼気の吹きかけ方によっても検知する値が異なる。すなわち、図3に示すような通常の口100の形状に比べて、図4に示すように口100をすぼめたままで、呼気を「ふぅーっ」と吹きかけた場合は、被測定者の体内に含まれるアルコールが十分に呼気に含まれないことになり、正確な測定が難しくなる。
一方、従来のマウスピース等を用いて被測定者の口と接触しつつ呼気を取得する形式の呼気アルコール検知装置では、呼気を吹き込み、最後に吸い込むことで呼気と判断する。あるいは、呼気に含まれる成分(酸素、二酸化炭素)や呼気の風量を検知して人の呼気と判断する。そのため、呼気成分検知センサ、吸い込み検知装置、風量センサ等が別途必要となり、装置の複雑化とコスト高を招く。加えて、被測定者はマウスピースを口にくわえる必要があるため、衛生的に問題がある。
一方、本実施形態においては、呼気の吹きかけ方を考慮して呼気中のアルコール濃度を検知する。すなわち、図5に示すように、被測定者が口100を開いて呼気を「はぁーっ」と吹きかけた場合は、肺から出た暖かい呼気の吹きかけにより検知温度が上昇する。この場合、被測定者の体内に含まれるアルコールが十分に呼気に含まれることになり、正確な測定が可能となる。一方、図4に示すように、被測定者が口100をすぼめて呼気を「ふぅーっ」と吹きかけた場合は、口で勢い付けられた呼気が吹きかけられることにより検知温度が下降するが、人が呼気を吹きかけたようになりすまそうとして風船等を用いて空気を吹きかけた場合も同様に検知温度が下降する。
そのため、本実施形態では上記点に着目し、呼気温度変化検知部16及び呼気判断部18は呼気温度検知センサ14で検知した温度を一定周期で取得し、呼気温度検知センサ14で計測した温度が呼気によって一定時間内に下がった場合は、呼気判断部18は、図4に示すように被測定者が口100をすぼめて呼気を「ふぅーっ」と吹きかけたのか、風船等を用いて人が呼気を吹きかけたようになりすましたのか判別が付かないと判断して、呼気吹きかけ式アルコール検知センサ12により検知されたアルコール濃度を無効なものとする。
一方、呼気温度検知センサ14で計測した温度が呼気によって一定時間内に上がった場合は、呼気判断部18は、図5に示すように被測定者が口100を開いて呼気を「はぁーっ」と吹きかけたと判断して、呼気吹きかけ式アルコール検知センサ12により検知されたアルコール濃度を被測定者の呼気に含まれるアルコール濃度として有効なものとする。
このため、本実施形態では、被測定者の体内に含まれるアルコールを十分に呼気に含ませて精度良く検知することができる。また、風船等を用いたなりすましを防止することができる。さらに、呼気成分検知センサ、吸い込み検知装置、風量センサ等の装置は不要となり装置の簡便化と低コスト化を達成することができる。加えて、本実施形態では、呼気吹きかけ式アルコール検知センサ12は、測定者が吹きかけた呼気を被測定者の口と接触せずに取得するため、マウスピース等を用いる接触式の装置に比べて被測定者が測定を受けることが容易であり、衛生的なものとできる。また、本実施形態では、再計測を行うたびに、呼気温度検知センサ14のキャリブレーションを実施するため、より正確に呼気の温度変化を検知することができる。
以下、本発明の第2実施形態について説明する。図6は、本発明の第2実施形態に係る呼気アルコール検知装置の構成を示すブロック図である。図6に示すように、本実施形態の呼気アルコール検知装置10bでは、呼気吹きかけ式アルコール検知センサ12、呼気温度検知センサ14、呼気温度変化検知部16、呼気判断部18、及び計測完了判断部20に加えて、カメラセンサ22及びドライバー口検出装置24を備えている。
カメラセンサ22は、ドライバーの顔全体又は口付近を撮像するためのものである。カメラセンサ22は、ドライバーの顔向きや閉眼等を監視するためのドライバーモニタ用のカメラセンサを適用することができる。
ドライバー口検出装置24は、カメラセンサ22により撮像されたドライバーの画像により、ドライバーが呼気吹きかけ式アルコール検知センサ12に呼気を吹きかける時の口の形状を検知するためのものである。カメラセンサ22及びドライバー口検出装置24は、吹きかけ方検知手段として機能する。
次に、図7及び8を参照して、本実施形態の呼気アルコール検知装置の動作について説明する。図7に示すように、本実施形態のステップS21〜S26においては、図2に示す上記第1実施形態のステップS11〜S16が同様に行われる。
本実施形態では、図8に示すように、ステップS21〜S26と並行して、ドライバー口検出装置24は、カメラセンサ22により撮像されたドライバーの顔全体又は口付近の映像を取得する(S27)。ドライバー口検出装置24は、カメラセンサ22のカメラ画像からドライバーの口部分を検出する(S28)。
ドライバー口検出装置24が、ドライバーの口の形状を図5に示すような口100を開いて呼気を「はぁーっ」と吹きかけた形状であると判断したときは(S29)、呼気判断部18は、ステップS26における呼気の温度変化検知時刻と口が開いたことを検知した時刻とを比較する(S30)。
呼気判断部18は、一定時間t内の呼気の温度変化と口が開いたことを検知した時刻とが、例えば時刻差Δt以内といった同等のタイミングであるときは(S31)、呼気吹きかけ確認フラグをONにする(S32)。一方、ドライバー口検出装置24が、ドライバーの口の形状が呼気を「はぁーっ」と吹きかけた形状でないと判断したときや(S29)、ドライバー口検出装置24が、ドライバーの口の形状が呼気を「はぁーっ」と吹きかけた形状であると判断したときでも、呼気判断部18が、一定時間t内の呼気の温度変化と口が開いたことを検知した時刻とが、例えば時刻差Δtを超えた同等のタイミングでないと判断したときは(S31)、呼気判断部18は、呼気吹きかけ確認フラグをOFFにする(S33)。
図7に戻り、呼気判断部18は、呼気吹きかけ確認フラグがONの場合は、以下のステップS35において、上記第1実施形態の図1のステップ17と同様の処理を行う。すなわち、T0に比べて一定時間t内の温度変化がΔT以上の温度上昇による変化であるときは(S35)、呼気判断部18は当該呼気を人の呼気であると判断し、呼気吹きかけ式アルコール検知センサ12で検知された呼気に含まれるアルコール濃度を有効なものとして表示する(S36)。
もし、T0に比べて一定時間t内の温度変化がΔT以上の温度上昇による変化ではない場合は(S35)、呼気判断部18は当該呼気を人の呼気であると判別できないと判断し、呼気吹きかけ式アルコール検知センサ12での検知されたアルコール濃度は無効としてドライバーに通知する(S37)。
さらに、呼気判断部18は、呼気吹きかけ確認フラグがOFFの場合は、呼気判断部18は当該呼気を人の呼気ではないと判断し、呼気吹きかけ式アルコール検知センサ12での検知されたアルコール濃度は無効としてドライバーに通知する(S37)。
呼気判断部18は、呼気吹きかけ確認フラグがONの場合はOFFとする(S38)。
本実施形態においては、カメラセンサ22及びドライバー口検出装置24によりドライバーの口の形状を検出するため、より確実にドライバーの呼気の吹きかけ方を確認することができ、呼気吹きかけ時の不正を、例えば無人の装置であっても防止することができる。また、本実施形態においては、カメラセンサ22及びドライバー口検出装置24に、ドライバーの顔向きや閉眼等を監視するためのドライバーモニタ用のカメラセンサやECUを適用することにより、呼気アルコール検知装置10bをより低コストで構成することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、車載の呼気アルコール検知装置を中心に説明したが、本発明の呼気アルコール検知装置は車載の装置に限定されず、種々の用途に適用可能である。
10a,10b…呼気アルコール検出装置、12…呼気吹きかけ式アルコール検知センサ、14…呼気温度検知センサ、16…呼気温度変化検知部、18…呼気判断部、20…計測完了判断部、22…カメラセンサ、24…ドライバー口検出装置、100…口。