以下、図面を参照して本発明の指向特性取得方法、指向特性取得装置、記憶媒体及び光セレクタの実施の形態について説明する。
<本実施の形態の測定装置の構成例>
図1は、指向特性取得方法を実現する本実施の形態の指向特性取得装置の一例を示す構成図、図2は、指向特性が取得される光導波路の一例を示す模式的な断面図である。
第1の実施の形態の測定装置1Aは、任意の方向から入射された光を、乱反射によって全周方向から出射させる平面型の光導波路2Aと、光を出力する光出力部3と、光が入力される光入力部4を備える。
ここで、反射とは、進行波あるいは粒子等が、進行中の媒質と異なる媒質あるいは不連続的変化のある境界面に当たって方向を変え、もとの媒質中の新しい方向に進む現象で、境界面の凹凸が波長と同程度、あるいはそれより大きければ、反射波は種々の方向に進む。このような反射を乱反射あるいは拡散反射という。
一方、散乱とは、波がその波長に比べてあまり大きくない障害物に当たったときに、それを中心として周囲に広がっていく波ができる現象である。
光導波路2Aは、光が伝搬される導光部として、第1の導光部20Aを中央部分に備えると共に、第1の導光部20Aの周囲に第2の導光部20Bを備える。また、光導波路2Aは、第2の導光部20Bの上下面に対向して設けられた反射材21と、光導波路2Aの中央部分である第1の導光部20Aの上下面に対向して設けられた乱反射材22を備える。
第1の導光部20Aと第2の導光部20Bは、本例では空気層で形成される。反射材21は円形で、光を全反射させる反射面を対向させて、所定の間隔で第2の導光部20Bを上下両面から挟み、第2の導光部20Bの外周を全周に亘って露出させる。
乱反射材22は、入射される光の波長と同程度あるいはそれより大きい凹凸で光を乱反射させる乱反射面を、空気層である第1の導光部20Aに対向させて、第1の導光部20Aの中央部分を上下両面から挟む。乱反射材22は円形で、円形の光導波路2Aの中心と乱反射材22の中心が合わせられる。また、本例では、乱反射材22の乱反射面と反射材21の反射面が同一面となるように構成される。
これにより、光導波路2Aは、第2の導光部20Bの外周の任意の位置が光の入射部及び出射部となり、光導波路2Aの外周から光が入出射される。また、光導波路2Aの外周から乱反射材22に向けて入射された光は、直接または反射材21で全反射して乱反射材22に入射し、乱反射材22の乱反射面での乱反射によって、全周方向に出射される。
従って、光導波路2Aは、外周の任意の位置から対向する反射材21の間に入り、かつ、乱反射材22に入る角度で、乱反射材22に向けて光が入射されると、乱反射材22での乱反射で全周方向に光が出射されて、外周の任意の位置で受光が可能となる。
光出力部3は、光源として例えばレーザダイオード(LD)30を備えると共に、レーザダイオード30から光導波路2Aの乱反射材22に入射される光の像を主に変える機能を有した像調節機構31と、乱反射材22に入射される光の座標を主に変える機能を有した座標調節機構32を備える。
光入力部4は、入射した光がレベルに応じた電気信号に変換されて出力されるフォトディテクタ(PD)40を備えると共に、フォトディテクタ40を光導波路2Aの外周に沿って全周方向に移動させるレール等を備えた移動機構41を備える。なお、光入力部4は、測定分解能に応じた数のフォトディテクタを、測定分解能に応じた角度で光導波路2Aの外周に沿って全周方向に配置しても良い。
測定装置1Aは、光導波路2Aの全周方向で所定の強度分布が得られる光の入射パターンを実験で求めるために、光出力部3及び光入力部4を制御する制御部5を備える。また、光出力部3から光導波路2Aの乱反射材22に入射される光の像及び座標を制御したときに、光入力部4で受光された出力光量から、乱反射材22に入射される光のパターンを求めてテーブルを作成する演算部50を備える。
更に、制御部5及び演算部50で実行されるプログラム、演算で必要なテーブル及び演算で作成されたテーブル等が記憶される記憶部6と、作成されたテーブルを記憶媒体70に出力する出力部7と、演算で必要な各種データ等が入力される入力部8を備える。
光導波路2Aの全周方向で所定の強度分布が得られる光の入射パターンを演算で求める場合は、入力部8は、光導波路2A及び光出力部3に関するパラメータ等が入力される。また、記憶部6は、光導波路2Aの全周方向における強度分布を演算で求める場合に使用される乱反射材22に関するルックアップテーブル(LUT)等が記憶される。更に、演算部50は、光導波路2Aの全周方向における強度分布を、反射、屈折及び乱反射で生じる光路を演算することで求める。
<LD出射光のコントロール因子>
図3は、光出力部の一例を示す構成図である。光出力部3は、平行光に調節された光を出射するレーザダイオード30の後段に、像調節機構31として、コリメート部33と拡散・集光部34と中央反射部35の何れか、または、これらコリメート部33と拡散・集光部34と中央反射部35の中の2つの要素、あるいは全ての要素を組み合わせた構成を備える。
図4は、コリメート部の一例を示す構成図である。コリメート部33は、拡大コリメート部33Wと縮小コリメート部33Nの何れか、または、これらの双方の要素を有して拡大コリメート部33Wと縮小コリメート部33Nのいずれかを任意に選択可能な構成を備える。
拡大コリメート部33Wは、図4(a)に示すように、前段に凹レンズ33L(1)が設けられると共に、後段に凸レンズ33L(2)が設けられ、入射された光のスポット径が拡大されて出射される。また、縮小コリメート部33Nは、図4(b)に示すように、前段に凸レンズ33L(3)が設けられると共に、後段に凹レンズ33L(4)が設けられ、入射された光のスポット径が縮小されて出射される。
図5は、拡散・集光部の一例を示す構成図である。拡散・集光部34は、図5(a)に示すように、入射された光を集光する凸レンズ34LNと、図5(b)に示すように、入射された光を拡散する凹レンズ34LWの何れか、または、これらの双方の要素を有して凸レンズ34LNと凹レンズ34LWのいずれかを任意に選択可能な構成を備える。
図6は、中央反射部の一例を示す構成図である。中央反射部35は反射変換部の一例で、45°の反射面角度を有し、入射された光をそれぞれ±90°に反射する第1の反射鏡35aを備えると共に、第1の反射鏡35aから入射された光を90°±θで反射させる反射面角度を有した第2の反射鏡35bを備える。
ここで、第1の反射鏡35aを円錐形状、第2の反射鏡35bを円錐の一部の内面形状とすることで、円形のスポット光がリング状に変換されて出射される。
また、第2の反射鏡35bの反射面角度θを、45°±θ′に調節できるように、第2の反射鏡35bの向きを変える可動機構等を備えることで、出射光路が平行光を基準として、破線で示す+θ′から一点鎖線で示す−θ′の範囲で変更可能となる。更に、第2の反射鏡35bの反射面を曲面で構成することで、出射される光を拡散または集光させることが可能となる。
また、第2の反射鏡35bの反射面角度θを、45°−θ′に調節する事で、光導波路2Aの側面に入射する際の入光径を小さく絞る事ができるため、光導波路2Aの断面厚さをより薄く設計できる。
但し、入光径を照射対象である乱反射材22または反射材21の手前でクロスするまで絞ると、乱反射材22に到達するまでに光が拡散方向に広がりすぎてしまうので、反射面角度θを−方向に調整する際には、最終的に照射される乱反射材22での写像と光導波路2Aの断面厚さを考慮して調整する必要がある。
コリメート部33と拡散・集光部34と中央反射部35において、レンズで構成されている部分を、曲率を変動させる機構を持つ例えば水レンズ等で構成することで、スポット径の調節が可能となる。
また、コリメート部33と拡散・集光部34と中央反射部35において、レンズで構成されている部分を、レンズ中心に対して断面V方向と平面H方向の独立した2つのブロックで構成することで、スポットの形状を断面方向と平面方向で独立して調節が可能となる。
更に、コリメート部33と拡散・集光部34と中央反射部35において、光導波路2Aとの距離を、それぞれ独立に調節する導波路距離調節機構33D,34D,35Dを備える。また、コリメート部33と拡散・集光部34と中央反射部35を、それぞれ独立に退避領域33E,34E,35Eに格納する退避機構33I,34I,35Iを備える。
そして、レンズや反射鏡の曲率の異なる、コリメート部33と拡散・集光部34と中央反射部35を複数設け、目的の発光パターンを実現する組み合わせになるように、それぞれのモジュールを組み替える機構を備える。
これにより、光出力部3では、上述した像調節機構31を備えることで、A−A断面における出力光源は以下の像コントロール因子を持って光導波路2Aに照射され、像コントロール因子が制御されることで、光導波路2Aの乱反射材22に入射される光の像が変えられる。
断面方向
LD断面スポット外半径 LD_vor[mm]
LD断面スポット内半径 LD_vir[mm]
LD断面−最外スポット光角度 LD_vo_ang[°]
LD断面−最内スポット光角度 LD_vi_ang[°]
平面方向
LD平面スポット外半径 LD_hor[mm]
LD平面スポット内半径 LD_hir[mm]
LD平面−最外スポット光角度 LD_ho_ang[°]
LD平面−最内スポット光角度 LD_hi_ang[°]
図7は、光出力部の像調節機構で制御される光の像の一例を示す説明図である。図7(a)に示すスポット光では、断面方向における像コントロール因子は、LD断面スポット外半径LD_vorと、LD断面−最外スポット光角度LD_vo_angで、像コントロール因子のそれぞれの値は、LD_vor=x[mm]、LD_vo_ang=0[°]である。
また、水平方向における像コントロール因子は、LD平面スポット外半径LD_horと、LD平面−最外スポット光角度LD_ho_angで、像コントロール因子のそれぞれの値は、LD_hor=x[mm]、LD_ho_ang=0[°]である。
図7(b)に示す拡散光では、断面方向における像コントロール因子は、LD断面スポット外半径LD_vorと、LD断面−最外スポット光角度LD_vo_angで、像コントロール因子のそれぞれの値は、LD_vor=x[mm]、LD_vo_ang=y[°]である。
また、水平方向における像コントロール因子は、LD平面スポット外半径LD_horと、LD平面−最外スポット光角度LD_ho_angで、像コントロール因子のそれぞれの値は、LD_hor=x[mm]、LD_ho_ang=y[°]である。
図7(c)に示す集光では、断面方向における像コントロール因子は、LD断面スポット外半径LD_vorと、LD断面−最外スポット光角度LD_vo_angで、像コントロール因子のそれぞれの値は、LD_vor=x[mm]、LD_vo_ang=−y[°]である。
また、水平方向における像コントロール因子は、LD平面スポット外半径LD_horと、LD平面−最外スポット光角度LD_ho_angで、像コントロール因子のそれぞれの値は、LD_hor=x[mm]、LD_ho_ang=−y[°]である。
図7(d)に示す中央反射(拡散)光では、断面方向における像コントロール因子は、LD断面スポット外半径LD_vorと、LD断面スポット内半径LD_virと、LD断面−最外スポット光角度LD_vo_angと、LD断面−最内スポット光角度LD_vi_angである。像コントロール因子のそれぞれの値は、LD_vor=x[mm]、LD_vir=x′[mm]、LD_vo_ang=y[°]、LD_vi_ang=y′[°]である。
また、中央反射(拡散)光での水平方向における像コントロール因子は、LD平面スポット外半径LD_horと、LD平面スポット内半径LD_hirと、LD平面−最外スポット光角度LD_ho_angと、LD平面−最内スポット光角度LD_hi_angである。像コントロール因子のそれぞれの値は、LD_hor=x[mm]、LD_hir=x′[mm]、LD_ho_ang=y[°]、LD_hi_ang=y′[°]である。
図7では図示しないが、中央反射(集光)光では、断面方向における像コントロール因子は、LD断面スポット外半径LD_vorと、LD断面スポット内半径LD_virと、LD断面−最外スポット光角度LD_vo_angと、LD断面−最内スポット光角度LD_vi_angである。像コントロール因子のそれぞれの値は、LD_vor=x[mm]、LD_vir=x′[mm]、LD_vo_ang=-y[°]、LD_vi_ang=-y′[°]である。
また、中央反射(集光)光での水平方向における像コントロール因子は、LD平面スポット外半径LD_horと、LD平面スポット内半径LD_hirと、LD平面−最外スポット光角度LD_ho_angと、LD平面−最内スポット光角度LD_hi_angである。像コントロール因子のそれぞれの値は、LD_hor=x[mm]、LD_hir=x′[mm]、LD_ho_ang=-y[°]、LD_hi_ang=-y′[°]である。
座標調節機構32は、光出力部3の向きを変える入射角度調節機構と、位置を変える位置調節機構を備える。入射角度調節機構と位置調節機構は、光出力部3の向きと位置を、断面方向と平面方向でそれぞれ独立して調節可能な構成を有する。
<LD出射光を光導波路の乱反射材に入射させるコントロール因子>
図8は、光導波路の乱反射材に光が入射される条件を示す動作説明図で、次に、光出力部3から出射された光が、光導波路2Aの乱反射材22に入射するために必要な条件について説明する。
ここで、前提条件として、光出力部3から出射される光源は点平行光源とする(条件01)。また、光導波路2Aの第1の導光部20Aと第2の導光部20Bは空気層とする(条件02)。更に、光出力部3からの照射点は、対向する乱反射材22のどちらか片側の乱反射材22とする(条件03)。
光出力部3では、上述した座標調節機構32等を備えることで、光出力部3と光導波路2Aに対して以下の像コントロール因子が設定される。座標コントロール因子が制御されることで、光導波路2Aの乱反射材22に入射される光の座標が変えられる。
断面方向
LD断面角度 LD_vag[°]
LD垂直位置 LD_vst[mm]
LD−導光素材距離 LD_dst[mm]
平面方向
LD平面角度 LD_hag[°]
LD平面位置 LD_hst[mm]
また、光導波路2Aの乱反射材22の半径をR1、光導波路2Aの半径をR2、光導波路2Aの厚さをdとする。
光導波路2Aの外側の任意の点は、座標コントロール因子のLD−導光素材距離LD_dstと、LD平面位置LD_hstと、LD平面位置LD_hstを用いて、以下の(1)式で表される。
(x,y,z)=(R2+LD_dst,LD_hst,LD_vst)・・・(1)
また、光出力部3から出射された光であるLD光源の光導波路2A(乱反射材22)に対する入射角度は、座標コントロール因子のLD断面角度LD_vagと、LD平面角度LD_hagを用いて、以下の(2)式で表される。
(∠XY,∠XZ)=(LD_hag,LD_vag)・・・(2)
そして、光導波路2Aの外側の点(x,y,z)=(R2+LD_dst,LD_hst,LD_vst)を通り、(∠XY,∠XZ)=(LD_hag,LDvag)の角度を持つ直線L00に対し、光導波路2Aの外周を示すV−V′平面に投射されるLD光源の断面方向における入射位置Vinは、以下の(3)式、(4)式及び(5)式の条件を満たす曲面との交点である。
y2+x2=R22・・・(3)
x>0・・・(4)
−d/2<z<d/2・・・(5)
また、乱反射材22の内周を示すH−H′平面に投射されるLD光源の平面方向における入射位置Hinは、以下の(6)式、(7)式及び(8)式の条件を満たす平面との交点である。
y2+x2=R12・・・(6)
z=−d/2(LD_vag>0)・・・(7)
z=d/2 (LD_vag<0)・・・(8)
入射位置Vinが、上述した(3)式、(4)式及び(5)式の条件を満たす曲面との交点である光は、光導波路2Aの外周から入射させることが可能である。また、入射位置Hinが、上述した(6)式、(7)式及び(8)式の条件を満たす平面との交点である光は、光導波路2Aの乱反射材22に入射させることが可能である。
これにより、上述した(3)式〜(6)式の条件を満たすように座標コントロール因子を制御すれば、光出力部3から出射された光を、光導波路2Aの外周から乱反射材22に入射させることが可能になる。
光導波路2Aに入射した光が反射材21で反射する回数をRef_noとすると、上述した(7)式及び(8)式は、以下の(9)式及び(10)式の制約条件を満たす。
z=−d/2(Ref_no=2n,LD_vag<0)・・・(9)
z=d/2 (Ref_no=2n+1,LD_vag>0)・・・(10)
上述した(9)式及び(10)式の条件を満たすことで、光導波路2Aを伝搬される光が、対向する乱反射材22のどちらに入射されるか特定可能である。また、光導波路2Aから出射される光が、対向する反射材21のどちらで反射したか特定可能で、光入力部4の角度による指向性の選択性を求めることも可能になる。
また、光出力部3から出射される光の断面方向におけるスポット光角度を特定する像コントロール因子であるLD断面−最外スポット光角度LD_vo_angと、LD断面−最内スポット光角度LD_vi_angを、上述した(3)式〜(10)式に追加したときに、各式の条件を満たすように各値が設定される。
同様に、平面方向におけるスポット光角度を特定する像コントロール因子であるLD平面−最外スポット光角度LD_ho_angと、LD平面−最内スポット光角度LD_hi_angを、上述した(3)式〜(10)式に追加したときに、各式の条件を満たすように各値が設定される。
更に、光出力部3から出射される光の断面方向におけるスポット光半径を特定する像コントロール因子であるLD断面スポット外半径LD_vorと、LD断面スポット内半径LD_virを、上述した(3)式〜(10)式に追加したときに、各式の条件を満たすように各値が設定される。
同様に、光出力部3から出射される光の平面方向におけるスポット光半径を特定する像コントロール因子であるLD平面スポット外半径LD_horと、LD平面スポット内半径LD_hirを、上述した(3)式〜(10)式に追加したときに、各式の条件を満たすように各値が設定される。
これにより、上述した(3)式〜(10)式を所定の条件で満たすように、像コントロール因子と座標コントロール因子が制御されることで、どちらか一方の乱反射材22の任意の位置に、任意の形状でLD照射面を形成することができる。
<LD照射形状とPDの受光量の関係>
図9〜図13は、光導波路の乱反射材に入射される光の入射角度及び形状と出力光量の関係を示す説明図で、次に、像コントロール因子と座標コントロール因子を制御して、光出力部3から光導波路2Aの乱反射材22に光を入射したときに、乱反射材22に照射される光の形状(LD照射形状と称す)と、光導波路2Aの全周方向において光入力部4で取得される出力光量の関係について説明する。
[前提条件]
入力光量P_inの光出力部3で、図9に示すように、LD断面角度LD_vag=±90°から光を入射すると、乱反射材22に写像されるLD照射形状は、図10(a)に示すような点写像C1となり、出力光量は、図10(b)に示すように、光導波路2Aの全周方向に均一となる。このときの出力光量をP_outとする。一方、図9に示すように、LD断面角度LD_vag=+m°から光を入射すると、乱反射材22に写像されるLD照射形状は、図11(a)に示すような0−180楕円写像C2となり、出力光量は、図11(b)に示すように、0°の方向に強い指向性を持ち、180°の方向に若干強い指向性を持つ。このときの出力光量をP′_outとする。
光導波路2Aの円周方向の位置を角度θとしたときに、p_nを、角度nにおける出力光量、run_p_nを、乱反射材22で乱反射した光が更に乱反射材22で乱反射したときに出る損失光量、ref_p_nを、乱反射材22で乱反射した光が反射材21で反射したときに出る損失光量とする。
上述した条件で、入力光量と出力光量の関係は、以下の(11)式、(12)式及び(13)式で表される
点写像の場合は、
1)p_n=一定に近似
2)run_p_n=一定に近似
3)ref_p_n=一定に近似
の関係が成り立つ。
ここで、乱反射材22に写像されるLD照射形状を以下に示す条件(a)〜(c)で点写像とした場合に、光導波路2Aの円周方向において、出力光量及び損失を一定に近似できる理由について説明する。
(a)乱反射材22に対する光の入射角度を、LD断面角度LD_vag=±90°として、乱反射材22の直上から中心に光を照射する。
(b)乱反射材22に照射される光の写像が円形状である。
(c)円形の光導波路2Aの中心に乱反射材22が設けられ、光が出射される光導波路2Aの外周が、写像に対して等距離に配置されている。
乱反射材22を使っている場合、乱反射面に入射した光は種々な方向に反射するため、光導波路2Aの円周方向の角度nにおける損失は一定にはならない。但し、上述した条件(a)〜(c)を満たすことで、損失のばらつきが、乱反射材22の乱反射面形状、例えば、乱反射面を水平方向に1回転した時の出力損失の差のみに左右される。これにより、乱反射材22の直上からの照射の方が、光導波路2Aの側面からの照射の時と比べて、損失は一定に近づいてくる。
従って、乱反射材22に対する光の入射角度を、LD断面角度LD_vag=±90°として、乱反射材22に写像されるLD照射形状を点写像とした場合に、光導波路2Aの円周方向において、出力光量及び損失は一定に近似できる。
0−180楕円写像の場合は、光導波路2Aの円周方向で180°→0°に光出力部3の光ベクトルが推移し、
1)p_n=fP(n)
2)run_p_n=frun_p(n)
3)ref_p_n=fref_p(n)
4)n=0−90−180とn=0−270−180は線対象
の関係が成り立つ。
上述した(3)式〜(10)式を所定の条件で満たすように、像コントロール因子と座標コントロール因子を制御して、乱反射材22に光を入射したとき、0−180楕円写像_外半径が以下の(14)式を満たし、90−270楕円写像_外半径が以下の(15)式と以下条件を満たした状態をState(ST)00とする。
<ST00>
Hin_X=R1・・・(14)
Hin_Y≒R1_min・・・(15)
R1_min:光出力部3で調節できる最小半径
このST00で、LD断面−最外スポット光角度LD_vo_ang[°]を−y方向に調節して、光出力部3から出射される光を集光することで、0−180楕円写像_外半径を以下の(16)式を満たすように変化させるコントロール因子を、CTL01とする。なお、以下の(16)式では、図12(a)に示すように、0−180楕円写像が点写像C3に変換される。
<CTL01>
R1>Hin_X>0・・・(16)
そして、コントロール因子CTL01を制御して、0−180楕円写像_外半径を、上述した(16)式を満たすように変化させたとき、以下の(17)式を満たすp_nをTABLE01として記憶する。
コントロール因子CTL01を制御して、0−180楕円写像_外半径を、上述した(16)式を満たすように変化させると、図13に示すように、0°及び180°付近の出力光量が下がると共に、90°及び270°付近の出力光量が上がる。これにより、TABLE01は、光導波路2Aの全周方向で、図12(b)に示すように、出力光量の分布が一定に近づくようなLD照射形状が記憶される。
上述したST00で、LD断面スポット外半径LD_vor[mm]を調節して、光出力部3から出射される光を絞ることで、0−180楕円写像_外半径を上述した(16)式を満たすように変化させたとき、上述した(17)式を満たすp_nをTABLE01として記憶しても良い。
<正方配列−重ね合わせ演算法>
次に、光導波路2Aの乱反射材22に、複数のスポット光を入射させる場合を考える。図14は、円写像の配列の一例を示す。図14(a)及び図14(b)に示すように、円写像を正方配列した場合は、実線で示すように4個の隣り合う円写像C4で、対称性を利用して出力光量を求められる。
そこで、図1で説明した構成で、光出力部3を4組独立で設け、それぞれの光出力部3で上述したようにコントロール因子を制御して、<TABLE01>を記憶した後、以下の(18)式、(19)式及び(20)式の条件を満たした状態をST01とする。
<ST01>
Hin_X≒R1_min・・・(18)
Hin_Y≒R1_min・・・(19)
Hin_Y2=Hin_X2・・・(20)
このST01で、断面方向におけるスポット光半径を特定する円写像コントロール因子であるLD断面スポット外半径LD_vor[mm]、または、断面方向におけるスポット光半径を特定する円写像コントロール因子であるLD断面−最外スポット光角度LD_vo_ang[°]を調節する。
同様に、平面方向におけるスポット光半径を特定する円写像コントロール因子であるLD平面スポット外半径LD_hor[mm]、または、平面方向におけるスポット光半径を特定する円写像コントロール因子であるLD平面−最外スポット光角度LD_ho_ang[°]を調節する。
更に、断面方向におけるスポット光座標を特定する円中心座標コントロール因子であるLD断面角度LD_vag[°]と、LD垂直位置LD_vst[mm]と、LD−導光素材距離LD_dst[mm]を調節する。
同様に、平面方向におけるスポット光座標を特定する円中心座標コントロール因子であるLD平面角度LD_hag[°]と、LD平面位置LD_hst[mm]を調節する。
このように、各コントロール因子を制御したときに、円写像C4を重ね合わせて、以下の(21)式と(22)式を満たすような円写像群を割り当てるコントロール因子を、CTL02とする。
<CTL02>
(Hin_Y±R1_min*n)2=(Hin_X±R1_min*n)2
・・・(21)
R1_min*n<R1・・・(22)
図15は、円写像群の一例を示し、例えば図15(a)に示す円写像群の中で、図15(b)に示すように重なり合う4組の円写像の集合を抽出して、光出力部3を4組独立でOn−Offさせる。
そして、コントロール因子CTL02を制御して、図14(a)に示すように、円写像C4を正方配列で重ね合わせた円写像群を割り当て、重なり合う4組の円写像の集合を抽出して、光出力部3を4組独立でOn−Offさせたとき、以下の(23)式を満たすp_nをTABLE02として記憶する。
ここで、ST1は、円写像の配列及び形状を示し、ST1=squareは、円写像が正方配列である状態を示す。ST2は、円写像を重ねるか離すかを示し、ST2=repeatは、円写像を重ねた状態を示す。ST3は、円写像の重なり分を減算するか否かを示し、ST3=totalは、複数の円写像の出力光量の合計を求める状態を示す。
<正方配列−重ね合わせ減算法>
上述したコントロール因子CTL02を制御して、図14(a)に示すように、円写像C4を正方配列で重ね合わせた円写像群を割り当て、重なり合う4組の円写像の集合を抽出して、光出力部3を4組独立でOn−Offさせたとき、図14(a)に示す円写像C4の重なり部分における出力光量を減算して、以下の(24)式を満たすp_nをTABLE03として記憶する。
ここで、ST3=calは、円写像の重なり分を減算する状態を示す。
<正方配列−近似法>
図1で説明した構成で、光出力部3を1組設け、<TABLE01>を記憶した後、上述したST01で、円写像C4を離して隣り合わせて、以下の(25)式と(26)式を満たすような円写像群を割り当てるコントロール因子を、CTL03とする。
<CTL03>
(Hin_Y±R1_min*2n)2=(Hin_X±R1_min*2n)2
・・・(25)
R1_min*2n<R1・・・(26)
そして、コントロール因子CTL03を制御して、図14(b)に示すように、円写像C4を正方配列で離して隣り合わせた円写像群を割り当て、隣り合う4組の円写像C4の集合を抽出して、以下の(27)式を満たすp_nをTABLE04として記憶する。
ここで、ST2=sepalateは、円写像を離した状態を示す。
<ハニカム配列−重ね合わせ演算法>
図14(c)及び図14(d)に示すように、円写像C4をハニカム配列した場合は、実線で示すように3個の隣り合う円写像C4で、対称性を利用して出力光量を求められる。
そこで、上述したST01でコントロール因子CTL02を制御して、図14(c)に示すように、円写像C4をハニカム配列で重ね合わせた円写像群を割り当て、重なり合う3組の円写像C4の集合を抽出して、以下の(28)式を満たすp_nをTABLE05として記憶する。
ここで、ST1=hexagonは、円写像がハニカム配列である状態を示す。
<ハニカム配列−重ね合わせ減算法>
上述したコントロール因子CTL02を制御して、図14(c)に示すように、円写像C4をハニカム配列で重ね合わせた円写像群を割り当て、重なり合う3組の円写像C4の集合を抽出して、図14(c)に示す円写像C4の重なり部分における出力光量を減算し、以下の(29)式を満たすp_nをTABLE06として記憶する。
<ハニカム配列−近似法>
上述したST01でコントロール因子CTL03を制御して、図14(d)に示すように、円写像C4をハニカム配列で離して隣り合わせた円写像群を割り当て、隣り合う3組の円写像C4の集合を抽出して、以下の(30)式を満たすp_nをTABLE07として記憶する。
<円写像群におけるLD分光特性補正>
上述したTABLE02〜TABLE07は、複数の円写像C4を正方配列またはハニカム配列とした円写像群における出力光量を示している。そこで、以下の(31)式〜(36)式に示すように、光出力部3の入力光量P_inを円写像群の数で割った光量P_in/nで、TABLE02〜TABLE07を乗算して、TABLE02′〜TABLE07′として記憶する。
<TABLE02′>=<TABLE02>*p_in/n・・・(31)
<TABLE03′>=<TABLE03>*p_in/n・・・(32)
<TABLE04′>=<TABLE04>*p_in/n・・・(33)
<TABLE05′>=<TABLE05>*p_in/n・・・(34)
<TABLE06′>=<TABLE06>*p_in/n・・・(35)
<TABLE07′>=<TABLE07>*p_in/n・・・(36)
<LD分光特性補正>
上述したTABLE02′〜TABLE07′は、複数の円写像C4を正方配列またはハニカム配列とした円写像群における出力光量を示している。この円写像群を単一の円写像で近似する場合を考える。
上述したST01で、断面方向におけるスポット光半径を特定する円写像コントロール因子であるLD断面スポット外半径LD_vor[mm]、または、断面方向におけるスポット光半径を特定する円写像コントロール因子であるLD断面−最外スポット光角度LD_vo_ang[°]を調節する。
同様に、平面方向におけるスポット光半径を特定する円写像コントロール因子であるLD平面スポット外半径LD_hor[mm]、または、平面方向におけるスポット光半径を特定する円写像コントロール因子であるLD平面−最外スポット光角度LD_ho_ang[°]を調節する。
このように、各コントロール因子を制御したときに、以下の(37)式、(38)式、(39)式及び(40)式を満たすような円写像を割り当てるコントロール因子を、CTL04とする。
<CTL04>
Hin_Y2=Hin_X2・・・(37)
R1_min<Hin_X<R1・・・(38)
R1_min<Hin_Y<R1・・・(39)
Hin_Y=Hin_X・・・(40)
図16は、円写像の一例を示し、コントロール因子CTL04を満たすように制御すると、円写像は図16(a)から図16(b)、そして、図16(c)に示すように変化する。そして、コントロール因子CTL04を制御して、以下の(41)式を満たすp_nをTABLE08として記憶する。
ここで、ST1=cycleは、円写像が円形である状態を示す。
<角度依存特性を一定に調節する方法>
図17は、作成されたテーブルの一例を示す。上述したTABLE02〜TABLE07は、光導波路2Aの乱反射材22に点光源を照射したときの出力光量P_nの角度依存特性である。
一方、上述したTABLE02′〜TABLE07′は、円写像群の複数の集合によって得られる出力レベルを実際の円写像単体でのレベルに補正した出力レベル補正テーブルである。更に、TABLE08は、1つの光源を拡散することで円写像群の複数の集合を近似して得た、実際の円写像単体での出力レベルテーブルである。
これらのテーブルから、出力光量P_nが以下の(42)式を満たすような円写像群の組み合わせを演算する。
これにより、光導波路2Aの全周方向で、角度依存特性を一定にすることができる。また、上述した(42)式で演算された円写像群の組み合わせから、乱反射材22に実際に入射させる光のパターンの形状及び座標を求め、テーブルとして記憶する。
そして、このテーブルを記憶媒体70に記憶することで、乱反射材が設けられた光導波路と、光出力部及び光入力部を有した機能基板を備え、光導波路の円周方向に複数の機能基板が実装される光セレクタにおいて、記憶媒体70に記憶されたテーブルに基づいたパターン及び座標で光を出射できる。これにより、光導波路の全周方向に所望の強度で光を出射させることができると共に、機能基板を任意に配置可能となる。
光セレクタにおいては、(42)式で演算された円写像群の組み合わせを実現する光のパターン及び座標で写像を作り出せる自由曲面レンズまたは光学系を機能基板に備えることとすれば良い。
図18は、光導波路の乱反射材に形成した円写像の座標の配列を示し、図19は、出力光量の角度依存特性の配列を示す。ここで、負の範囲は正の範囲の鏡面写像なので、演算時に正の範囲から写像すれば、演算は省略可能である。
図18に示す3次の円写像座標Arrayに対して全ての組み合わせは2nC(2n−1)通りであり、各円写像をOn(照射)−Off(非照射)した時の各角度における光入力部4の受光総和光量が一定となる組み合わせを、ピアゾン(peason)の相関係数を用いて最小二乗法で算出する。
または、図19に示す角度依存の出力値を大きい順に順位付けを行い、図18に示す3次の円写像座標Arrayの全ての組み合わせ(2nC(2n−1)通り)に対して、各円写像をOn(照射)−Off(非照射)した時の各角度における光入力部4の受光影響順位が一定となる組み合わせを、ケンドール(kendall)またはスピアマン(spearman)の相関係数を用いて最小二乗法で算出する。
これらの手法によって、光導波路2Aの円周上を光入力部4でスキャンした結果から、円周上に均一に光が照射されるパターンを設定できる。
<LD出射光を光導波路の乱反射材に入射させるコントロール因子の変形例>
図20は、光導波路の乱反射材に光が入射される条件を示す動作説明図で、次に、光出力部3から出射された光が、光導波路2Aの乱反射材22に入射するために必要な条件について説明する。
ここで、上述した前提条件02として、光導波路2Aの第1の導光部20Aは空気層とし、第2の導光部20Bは、所定の波長領域において透明な樹脂材料等の空気層以外とする。
光導波路2Aにおいて、第2の導光部20Bが空気層以外であると、空気との境界である第2の導光部20Bの外周面、空気層である第1の導光部20Aとの境界である第2の導光部20Bの内周面で、それぞれ屈折が発生する。
ここで、空気の屈折率は、Nair=1.000292である。また、第1の導光部20Aの屈折率Naは、第1の導光部20Aが空気層であることから、Na=Nairである。一方、第2の導光部20Bの屈折率はNbとする。
光導波路2Aにおいて、第2の導光部20Bが屈折率Nbを持つ空気層以外の構成では、光出力部3と光導波路2Aに対して以下のコントロール因子が設定される。
空気−第2の導光部20B間(外周側)
断面方向
LD断面角度 LD_vag[°]
LD垂直位置 LD_vst[mm]
LD−導光素材距離 LD_dst[mm]
平面方向
LD平面角度 LD_hag[°]
LD平面位置 LD_hst[mm]
第2の導光部20B内
断面方向
LD断面角度 LD_vag′[°]
LD垂直位置 LD_vst′[mm]
LD−導光素材距離 LD_dst′[mm]
平面方向
LD平面角度 LD_hag′[°]
LD平面位置 LD_hst′[mm]
第2の導光部20B−第1の導光部20A(乱反射材)内
断面方向
LD断面角度 LD_vag″[°]
LD垂直位置 LD_vst″[mm]
LD−導光素材距離 LD_dst″[mm]
平面方向
LD平面角度 LD_hag″[°]
LD平面位置 LD_hst″[mm]
断面方向屈折角度関係式
Nair・sin(LD_vag)
=Nb・sin(LD_vag′)
=Nair・sin(LD_vag″)
平面方向屈折角度関係式
Nair・sin(LD_hag)
=Nb・sin(LD_hag′)
=Nair・sin(LD_hag″)
光導波路2Aの乱反射材22の半径をR1、光導波路2Aの半径をR2、光導波路2Aの厚さをdとする。
光導波路2Aの外側の任意の点(x,y,z)は、上述した(1)式で表され、LD光源の光導波路2Aの外周に対する入射角度は、上述した(2)式で表される。
そして、光導波路2Aの外側の点(x,y,z)=(R2+LD_dst,LD_hst,LD_vst)を通り、(∠XY,∠XZ)=(LD_hag,LDvag)の角度を持つ直線L00に対し、第2の導光部20Bの外周を示すV0−V0′平面に投射されるLD光源の断面方向における入射位置Vin0は、以下の(43)式、(44)式及び(45)式の条件を満たす曲面との交点である。
y2+x2=R22・・・(43)
x>0・・・(44)
−d/2<z<d/2・・・(45)
また、第2の導光部20Bの外周との交点(x′,y′,z′)を通り、(∠XY,∠XZ)=(LD_hag′,LDvag′)の角度を持つ直線L01に対し、第1の導光部20Aの外周を示すV1−V1′平面に投射されるLD光源の断面方向における入射位置Vin1は、以下の(46)式、(47)式及び(48)式の条件を満たす曲面との交点である。
y2+x2=R12・・・(46)
x>0・・・(47)
−d/2<z<d/2・・・(48)
更に、乱反射材22の内周を示すH−H′平面に投射されるLD光源の平面方向における入射位置Hinは、以下の(49)式、(50)式及び(51)式の条件を満たす平面との交点である。
y2+x2=R12・・・(49)
z=−d/2(LD_vag″>0)・・・(50)
z=d/2 (LD_vag″<0)・・・(51)
第2の導光部20Bに対する入射位置Vin0が、上述した(43)式、(44)式及び(45)式の条件を満たす曲面との交点で、第1の導光部20Aに対する入射位置Vin1が、上述した(46)式、(47)式及び(48)式の条件を満たす曲面との交点である光は、光導波路2Aの外周から乱反射材22に入射させることが可能である。また、入射位置Hinが、上述した(49)式、(50)式及び(51)式の条件を満たす平面との交点である光は、光導波路2Aの乱反射材22に入射させることが可能である。
これにより、上述した(43)式〜(51)式の条件を満たすように座標コントロール因子を制御すれば、光導波路2Aにおいて第2の導光部20Bが空気層以外であっても、光出力部3から出射された光を、光導波路2Aの外周から乱反射材22に入射させることが可能になる。
光導波路2Aに入射した光が反射材21で反射する回数をRef_noとすると、上述した(50)式及び(51)式は、以下の(52)式及び(53)式の制約条件を満たす。
z=−d/2(Ref_no=2n,LD_vag″<0)・・・(52)
z=d/2 (Ref_no=2n+1,LD_vag″>0)・・・(53)
上述した(52)式及び(53)式の条件を満たすことで、光導波路2Aにおいて第2の導光部20Bが空気層以外であっても、光導波路2Aを伝搬される光が、対向する乱反射材22のどちらに入射されるか特定可能である。また、光導波路2Aから出射される光が、対向する反射材21のどちらで反射したか特定可能で、光入力部4の角度による指向性の選択性を求めることも可能になる。
<角度依存特性を選択可能にする方法>
図17に示すテーブルから、出力光量P_nが以下の(54)式及び(55)式を満たすような円写像群の組み合わせを演算する。
これにより、光導波路2Aの全周方向で、角度依存特性を選択することができる。また、上述した(54)式及び(55)式で演算された円写像群の組み合わせから、乱反射材22に実際に入射させる光のパターンの形状及び座標を求め、テーブルとして記憶する。
そして、このテーブルを記憶媒体70に記憶することで、乱反射材が設けられた光導波路と、光出力部及び光入力部を有した機能基板を備え、光導波路の円周方向に複数の機能基板が実装される光セレクタにおいて、記憶媒体70に記憶されたテーブルに基づいたパターン及び座標で光を出射できる。これにより、光導波路に所望の指向性を持たせることができると共に、指向性に応じて機能基板を配置可能となる。
光セレクタにおいては、(54)式及び(55)式で演算された円写像群の組み合わせを実現する光のパターン及び座標で写像を作り出せる自由曲面レンズまたは光学系を機能基板に備えることとすれば良い。
<光線密度で光導波路の全周方向で均一性と選択性を取得する方法>
上述したTABLE02′〜TABLE07′から、個々の円写像群に照射する光線密度の変化を自由曲面レンズで再現することで、光導波路2Aの全周方向で出力光量の強度の均一性または選択性を選択することができる。
また、TABLE02′〜TABLE07′から、個々の円写像群に照射する光線密度の変化を複数の光出力部3で再現することでも、光導波路2Aの全周方向で出力光量の強度の均一性または選択性を選択することができる。
図21〜図27は、乱反射材に入射させる光のパターンの具体例を示す。上述した図12に示すように、光導波路2Aの全周方向において、90°及び270°の付近の出力光量が低いので、図21(a)に示すように、乱反射材22に光が入射されることで形成される円写像(パターン)C6を、90−270楕円写像とすると、全周で均一な指向性に近づけることが可能である。
また、0°付近に比べると、180度付近の出力光量が低いので、図21(b)に示すように、180°側に90−270楕円写像C6を形成しても良い。同様に、図21(c),図21(d)に示すように、180°側に所定の楕円で円写像C6を形成しても良いし、図21(e),図21(f)に示すように、180°側に所定のリング状で円写像C6を形成しても良い。
図22(a)〜図22(e)に示すように、乱反射材22に光が入射されることで形成される円写像C7を点写像として、座標を変えることで、0°−90°−180°の間、及び0°−270°−180°の間で、指向性が選択可能である。
同様に、図23(a),図23(b)に示すように、乱反射材22に光が入射されることで形成される円写像C8を0−180楕円写像または90−270楕円写像とすることで、0−180°方向または90−270°方向に指向性が選択可能である。
更に、図24(a)〜図24(d)及び図25(a)〜図25(d)に示すように、乱反射材22に光が入射されることで形成される円写像C9を0−180楕円写像または90−270楕円写像とし、座標を0°−90°−180°の間、または0°−270°−180°の間で偏らせることで、0°−90°−180°の間、及び0°−270°−180°の間で、指向性が選択可能である。
更に、図26(a),図26(b)に示すように、乱反射材22に光が入射されることで形成される円写像C10をリング状とすることでも、指向性が選択可能で、図27に示すように、乱反射材22に光が入射されることで形成される円写像C11を乱反射材全面に照射される形状とすることでも、指向性が選択可能である。
<光導波路の全周方向で均一性と選択性を取得する他の方法>
乱反射材22に実際に入射させる光のパターンの形状及び座標を、上述した各種演算手法で求め、このパターンが得られる簡易的なレンズ部を通して光を照射した際の出力光量の角度既存特性分布を光入力部で算出して、光導波路2Aの全周方向で強度分布の特性を演算する。これにより、光導波路2Aの全周方向で出力光量の強度の均一性または選択性を選択することができる。
上述した各例では、光導波路2Aの上下に対向する乱反射材22の一方に光を入射させて乱反射させているが、少なくとも2組の独立した光出力部で、対向する乱反射材22のそれぞれに円写像を形成することとしても良い。
また、断面方向におけるスポット光座標を特定するLD断面角度LD_vag[°]を調節して、1回目の反射で任意の側の乱反射材22に照射した後、乱反射した光がもう一方の乱反射材22に円写像を形成こととしても良い。
以上の説明では、光出力部におけるコントロール因子を調節した。これに対して、光入力部、以下のコントロール因子を設定する。
断面方向
PD垂直位置 PD_vst[mm]
PD−導光素材距離 PD_dst[mm]
平面方向
PD平面位置 PD_hst[mm]
そして、上述したコントロール因子を調節することで、複数の光入力部で選択性を持たせることができる。
<乱反射材における指向性の演算方法>
次に、入射された光を乱反射で全周方向へ出射させる光導波路における出力光量の分布を演算で求める手法について説明する。
図28は、出力光量の分布を演算する光導波路の概要を示す構成図である。光導波路2Aにおける出力光量の分布の演算は、光出力部3から乱反射材22に入射される光を分割して、それぞれにアドレスをつける。そして、各アドレスの光について光路を演算し、光導波路2Aを円周方向にn分割した受光領域で、第2の導光部20Bの外周から外に出て行く光の位置、ベクトル(方向)及びレベルを求める。また、第2の導光部20Bから外に出られない光の位置、ベクトル(方向)及びレベルを求める。
光導波路2Aでは、第1の導光部20Aは、上下に乱反射材22が対向して設けられ、第1の導光部20Aの外周の第2の導光部20Bは、上下に反射材21が対向して設けられる。また、第1の導光部20Aと第2の導光部20Bの間に側面拡散構造体20Cが設けられる。
このように、光路中に複数の要素が存在する場合、素材境界面毎に反射または乱反射による光路演算が行われる。
図29は、光路演算の全体の流れを示すフローチャートである。まず、図29(a)に示すように、第2の導光部20Bの外周を入力とし、側面拡散構造体20Cを出力として、反射による光路演算が行われる。演算結果は、後段の図29(b)に渡される。
次に、図29(b)に示すように、側面拡散構造体20Cを入力とし、第1の導光部20Aと第2の導光部20Bの境界面を出力として、反射による光路演算が行われる。演算結果は、後段の図29(c)に渡される。
次に、図29(c)に示すように、第1の導光部20Aと第2の導光部20Bの境界面を入力とし、乱反射材22の入射点を出力として、反射による光路演算が行われる。演算結果は、後段の図29(d)に渡される。
次に、図29(d)に示すように、乱反射材22の入射点を入力とし、第1の導光部20Aと第2の導光部20Bの境界面を出力として、乱反射による光路演算が行われる。演算結果は、後段の図29(e)に渡される。
そして、図29(e)に示すように、第1の導光部20Aと第2の導光部20Bの境界面を入力とし、第2の導光部20Bの外周を出力として、反射による光路演算が行われる。
図30は、出力光量の分布を演算する乱反射材の概要を示す構成図、図31は、乱反射及び反射による光路演算方法の一例を示すフローチャートで、まず、乱反射及び反射による光路演算方法の全体の流れについて説明する。
State0:設定されている初期値をリセットする。
State1:光源(レーザダイオード30)の特性、光導波路2Aの特性等の初期値を設定する。
State2:光導波路2Aに入射される光の各導光部での交点を演算する。
State3:乱反射(反射)のベクトルを演算する。
State4:State3で求めた乱反射で光がどれだけ減衰するか演算する。
State5:State2からState4までの演算を光線数分繰り返す。
State6:State2からState5までの演算で得られたデータの配列を並び替える。
State7:出力結果を生成する。
図32は、初期値を設定する処理の一例を示すフローチャートで、次に、図31のState1の処理について説明する。
State10では、レーザダイオード30の特性が設定される。図33は、State10で設定されるレーザダイオードの特性に関する設定値例である。
State10では、例えば図33に示すように、入力光源分割数ld_noと、レーザ出力ld_powerと、光源のスペクトラムsp_typeと、光源の波長sp_noが設定される。なお、図33で設定されている各数値は一例である。
入力光源分割数ld_noでは、レーザダイオード30から出射される光にアドレスを付与するための分割数が設定され、演算結果の精度に応じて分割数が決められる。レーザ出力ld_powerは、レーザダイオード30の出力が設定される。
光源のスペクトラムsp_typeは、レーザダイオード30で使用される光源のスペクトル線が設定される。光源の波長sp_noは、レーザダイオード30で使用される光源の波長が設定される。図34は、レーザダイオードで使用される光源の波長を記憶したテーブル例である。図34に示すテーブル001は、光源の種類、スペクトル線、スペクトル線の種類を示す記号、波長が配列されているルックアップテーブル(LUT)である。光源の波長sp_noは、光源のスペクトル線sp_typeで図34に示すテーブル001を参照して設定される。
図32のState11では、光導波路2Aを構成する各導光部の特性が設定される。図35は、State11で設定される第1の導光部の特性に関する設定値例である。
State11では、例えば図35に示すように、第1の導光部20Aの直径mt_a_rと、第1の導光部20Aの厚さmt_a_tと、第1の導光部20Aの中心座標mt_a_pが設定される。
また、第1の導光部20Aを構成する素材名mt_aと、第1の導光部20Aを構成する素材の屈折率mt_a_refractionが設定される。
更に、乱反射演算をテーブルを参照するかレイトレースで行うかの設定Random_cul_stが設定される。なお、図35で設定されている各数値は一例である。State11で設定されるパラメータは、第1の導光部20Aの外形を表現できる式を特定できるパラメータであることが必要で、第1の導光部20Aの形状、原点位置、素材を特定するパラメータが設定され、第1の導光部20Aの形状によってパラメータは変化する。
ここで、乱反射材の反射率を高めるために反射材をコーティングする場合は、反射素材の素材名と反射率が設定される。なお、第2の導光部20Bに関しても、第1の導光部20Aと同様に、第2の導光部20Bの形状、原点位置、素材を特定するパラメータが設定される。また、図2に示すように、反射材21が設けられている構成では、反射素材の素材名と反射率が設定される。更に、図28に示すように、側面拡散構造体20Cが設けられている構成では、側面拡散構造体20Cの形状、原点位置、反射率等を特定するパラメータが設定される。
図36は、導光素材と屈折率の関係を記憶したテーブル例である。図36に示すテーブル002は、所定の素材、本例では空気の各波長(光源)に対する屈折率が配列されているルックアップテーブル(LUT)である。第1の導光部20Aを構成する導光素材Aの屈折率mt_a_refractionは、第1の導光部20Aを構成する素材名mt_aで図36に示すテーブル002を参照して設定される。
図37は、乱反射材のテーブル例である。乱反射材LUTは、入射光ベクトルの集合が光の波長より大きい乱反射面に入射された場合に、実験的手法で作成されるものである。図37(a)は、乱反射材LUTの概念を示し、図37(b)は、入射角度と入力波長における全周囲の出力ベクトル分布を示す。乱反射材LUTは、ある表面形状の乱反射材(面)に、複数の入射角度で光が入射された場合に、それぞれの光が反射によって出力される方向(ベクトル)を求めるものであり、複数の表面形状に対して、複数の入射角度と入力波長における全周囲の出力ベクトルが求められる。乱反射材LUTは、乱反射材の表面形状が1つであれば2次元となり、乱反射材の表面形状が複数あれば3次元となる。
図32のState12では、演算量を減らして演算コストを落とすための閾値が設定される。図38は、State13で設定される演算コストを落とすための閾値の設定値例である。
State12では、例えば図38に示すように、入力光源の分割数ld_noの上限設定値ray_cnt_endと、最大の反射数cross_cnt_endと、第1の導光部20Aの最外周の到達ポイントの分解能circle_cnt_endと、P波−S波のフレネル演算を行うか否かの設定Fresnel_onが設定される。
図32のState13では、1つの入力光源に対してアドレスが生成される。図39は、入力光源の配列情報例である。図29(a)〜図29(c)の演算では、State10で設定された入力光源分割数ld_noに応じて、入力光源の位置情報(x1,y1,z1)と、入力光源の単位ベクトル(i,j,k)と、入力光源1つあたりのレベル(level)が演算されて、図39に示す配列情報が作成される。
図40は、アドレスの生成例で、図40(a)は、生成されるアドレスの概念、図40(b)は、各アドレス毎のデータの概念を示す。ある面に対する入射角度が90°である場合、光が全反射すれば、アドレスは1個である。一方、入射角度が0°に近づくと、アドレスは最大で360個となる。乱反射の場合は、入射角度が90°であっても、出力は複数になるので、一点鎖線で示すようなツリー状になる。
図41は、データ構造の一例で、1つの入力光源に対して、ツリー深さ、入光角度、周縁に対してどのような出力が出るかによってアドレスを持つ。また、乱反射材22に入射される光の入光角度が0〜90°のそれぞれの場合で、第1の導光部20Aの全周方向(0〜359)での入力光源の位置情報(x1,y1,z1)と、入力光源の単位ベクトル(i,j,k)と、入力光源1つあたりのレベル(level)をデータとして持つ。
そして、ある1つの光線がどのような角度で乱反射して出てきたかというデータに対して、それぞれ2階層目で演算する。
なお、図30に示す平面XYZに対して、レーザダイオード30の出力の分布に対称性がある場合は、鏡像の部分の配列情報は作成しない。また、図37に示す乱反射材LUTでも、鏡像の部分の出力ベクトル分布は作成しない。乱反射材で出力の分布に対象性が得られる場合とは、対向する乱反射材が同一の表面形状で、それぞれの乱反射材に同一の形状で光を入射した場合が考えられる。
図42は、鏡面対称のLD出力分布例、図43は、回転対称のLD出力分布例である。図42に示すような鏡面対称で、XY平面またはYZ平面に対称な1平面のレーザの場合は、演算工数は50%になる。また、光が拡散または集光するような場合、図42(b)に示すように、網掛けで表示した部分と白抜きで表示した部分が同じになるので、XY平面及びYZ平面に対称な2平面のレーザの場合は、演算工数は25%になる。
更に、図43(a)に示すような回転対称で、X軸に対称な1軸のレーザの場合も、対称性を利用して演算工数を減らすことができる。一方、図48(b)に示すような回転対称の場合、密度によるLD出力が中心に行く程密になり外に行く程粗になるので、対象性は無い。非対称の場合は、演算工数は100%である。
図44は、光導波路に入射される光と各導光部との交点を演算する処理の一例を示すフローチャートで、次に、図31のState2の処理について、入力光源と第1の導光部20Aとの交点を演算する処理を例に説明する。
State20では、各入力光源と第1の導光部20Aとの交点が求められる。第1の導光部20Aの形状は、State11で設定された第1の導光部20Aの直径mt_a_rと厚さmt_a_tを利用して、以下の(56)式で表され、選択された入力光源は、図41に示すCross_dataのアドレスに対応した図39の配列情報を利用して、以下の(57)式で表される。
これにより、(56)式と(57)式から入力光源と第1の導光部20Aとの交点が求められる。
図44のState21では、State20と同様の手順で各入力光源と第1の導光部20Aとの交点の絶対値が求められ、交点の位置関係が求められる。
図44のState22では、State21で求められた各交点の絶対値から重解を検索する。図45は、重解が存在する条件例であり、(56)式と(57)式から入力光源と第1の導光部20Aの交点を求めると、図45に示す解1と解2が存在する。
State22では、重解を含めて各交点の絶対値のデータを整理し、解1、すなわち、第1の導光部20Aに外部から入る光と第1の導光部20Aとの交点を求める。
図44のState23では、State22で求められた重解を除いた各交点の絶対値から、各入力光源が第1の導光部20Aと何処で交差しているか求められる。
State23では、各交点の絶対値が以下の(58)式の条件を満たす場合は、入力光源が第1の導光部20Aの側面と交差していると判断して、State24でcross_type=1として設定値が保持される。また、各交点の絶対値が以下の(59)式の条件を満たす場合は、入力光源が乱反射材22に入射していると判断して、State24でcross_type=2として設定値が保持される。
図46は、光導波路に入射される光と第1の導光部との交点の演算結果例を示す。上述したState20〜State24の処理では、図46に示すCross_dataの一点鎖線で囲んだ値が入力となり、実線で囲んだ範囲が出力となる。
なお、各入力光源と第2の導光部20Bとの交点は、上述した(56)式における導光部の直径と厚さを、第2の導光部20Bの直径と厚さに置き換えて、(57)式との交点を演算することで求められる。
また、側面拡散構造体20Cが設けられている構成では、各入力光源と側面拡散構造体20Cとの交点は、上述した(56)式における導光部の直径と厚さを、側面拡散構造体20Cの直径と厚さに置き換えて、(57)式との交点を演算することで求められる。
そして、入力光源が第2の導光部20Bの側面と交差しているか、または、第2の導光部20Bの底面と交差しているか、本例では、反射材21に入射しているか、更に、側面拡散構造体20Cが設けられている構成では、入力光源が側面拡散構造体20Cの側面と交差しているかに応じて、cross_typeが所定の値に設定される。
図47は、State2で求めた各交点での反射(乱反射)のベクトルを演算する処理の一例を示すフローチャートで、次に、図31のState3の処理について説明する。
State30では、各入力光源が第1の導光部20Aと何処で交差しているか参照される。入力光源が第1の導光部20Aの側面と交差しているcross_type=1の場合は、処理を終了する。入力光源が乱反射材22と交差しているcross_type=2の場合は、State31の処理が行われる。
State31では、State11で設定された乱反射演算を乱反射材LUTを参照するかレイトレースで行うかの設定Random_cul_stが参照され、乱反射演算を乱反射材LUTを参照する場合はState31の処理が行われ、乱反射演算をレイトレースで行う場合はState33の処理が行われる。
図47のState32では、以下の(60)式で反射屈折の角度が演算される。
なお、円偏光では、グースウヘンシェルシフト及びアンベールシフトを考慮する必要があるが、nm単位のシフト量なので、本例では考慮しない。
図48は、反射角度の演算結果例を示す。上述したState31の処理では、図48に示すCross_dataの一点鎖線で囲んだ値が入力となり、実線で囲んだ範囲が出力となる。
図47のState32では、次にフレネルによる反射屈折比率がXY平面とYZ平面で演算される。ここで、以下の演算は、本例では、図32のState12で、Fresnel_on=1の場合に実行される。
図49は、入射光と反射光及び屈折光の関係を示す説明図である。s波(TE波、H波、水平偏波、直交偏波)の振幅反射率rpは、以下の(61)式で求められ、振幅透過率tpは、以下の(62)式で求められる。また、p波(TM波、E波、垂直偏波、平行偏波)の振幅反射率rsは、以下の(63)式で求められ、振幅透過率tsは、以下の(64)式で求められる。
そして、s波の振幅反射率rpの絶対値Rpは、以下の(65)式で求められ、s波の振幅透過率tpの絶対値Tpは、以下の(66)式で求められる。また、p波の振幅反射率rsの絶対値Rsは、以下の(67)式で求められ、p波の振幅透過率tsの絶対値Tsは、以下の(68)式で求められる。
なお、Rp+Tp=1、Rs+Ts=1が成立するので、どちらか一方を取得するようにしても良い。
図50は、反射屈折比率の演算結果例を示す。上述したState32の処理では、図50に示すCross_dataの一点鎖線で囲んだ値が入力となり、実線で囲んだ範囲が出力となる。
ここで、本例では、乱反射材22に入射した光の反射(乱反射)による光路を演算で求めているので、屈折の演算結果は損失の演算に使用する。
なお、図32のState12で、Fresnel_on=0の場合は、例えば、以下の(69)式に示すSchlickの演算式が実行される。但し、精度が悪いので、フレネルによる演算が好ましい。
乱反射演算をレイトレースで行う場合のState33の処理は、State32の反射演算と同様であるので、ここでは説明を省略する。
図47のState34では、演算が終了したか否かに応じて処理を決定する信号(fix_vection_cal)が生成される。
入力光源が乱反射材22と交差しているcross_type=2の場合には、演算が終了していないとしてfix_vection_calが生成され、State2の処理に戻される。また、入力光源が第1の導光部20Aの側面と交差しているcross_type=1の場合は、演算が終了したとしてState4の処理が行われる。
なお、State3における入力光源と各導光部の交点での反射ベクトルの演算は、各入力光源と第2の導光部20Bとの交点、及び、側面拡散構造体20Cが設けられている構成では、各入力光源と側面拡散構造体20Cとの交点についても行われる。
すなわち、cross_typeの値から、各入力光源が第2の導光部20Bと何処で交差しているか参照され、入力光源が第2の導光部20Bの底面と交差している場合は、上述した(60)式で反射屈折の角度が演算され、(61)式〜(68)式で反射屈折比率が演算される。また、入力光源が第2の導光部20Bの側面と交差している場合は、演算が終了したとしてState4の処理が行われる。
図51は、State3で求めた反射(乱反射)で光がどれだけ減衰するか演算する処理の一例を示すフローチャートで、次に、図31のState4の処理について説明する。
図51のState40では、XY平面での反射による減衰率mt_reflectionが、State32で求めたs波とp波の反射率(絶対値)Rp,Rsから、以下の(70)式で求められ、XY平面で反射によって減衰した光のレベルreflect_levelが、以下の(71)式で求められる。
(71)式におけるreflect_levelは、Cross_dataで選択された入力光源のレベルcross_data,levelに、減衰率mt_reflectionを乗じた値である。
図52は、反射によるレベルの演算結果例を示す。上述したState40では、図52に示すCross_dataの一点鎖線で囲んだ値が入力となり、実線で囲んだ範囲が出力となる。
図51のState41では、演算が終了したか否かに応じて処理を決定する信号(fix_level_cal)が生成される。
入力光源が第1の導光部20Aの側面と交差しており、第1の導光部20Aから外に出られるcross_type=1の場合は、演算が終了したとしてState5の処理が行われる。
なお、State4における減衰の演算は、第2の導光部20B、及び、側面拡散構造体20Cが設けられている構成では、側面拡散構造体20Cについても行われる。そして、入力光源が第2の導光部20Bの側面と交差しており、第2の導光部20Bから外に出られる場合は、演算が終了したとしてState5の処理が行われる。
State5では、上述したState2からState4までの演算が、State10で設定された入力光源分割光線数分繰り返される。
State6では、上述したState2からState5までの演算で得られたCross_dataがソートされる。
State6では、LD出力分布の対称性に基づいてCross_dataの配列が戻される。また、各交点の座標Cross_addressに基づいてCross_dataがソートされ、第1の導光部20Aの外周上のアドレスに直される。これは、第1の導光部20Aの円周方向のあるアドレスにいくつ光が来ているか、そのレベルはどの位かを検索するためである。
State7では、上述したState2からState6までの演算で得られた出力結果が生成される。
上述したState2からState6までの演算で得られたCross_dataで、第1の導光部20Aから第2の導光部20Bへ出て行く光の出力分布レベルとして、第1の導光部20Aの円周方向0〜2πの間で、第1の導光部20Aから出て行く光の位置(x,y,z)と、第1の導光部20Aから出て行く光のベクトル(i,j,k)と、第1の導光部20Aから出て行く光のレベルが求められる。
また、上述したState2からState6までの演算で得られたCross_dataで、第1の導光部20Aから出られない光の損失分布レベルとして、第1の導光部20Aから出られない光の位置(x,y,z)と、第1の導光部20Aから出られない光のベクトル(i,j,k)と、第1の導光部20Aから出られない光のレベルが求められる。
これにより、第1の導光部20Aの円周方向0〜2πにおいて、各アドレスに光がいくつ来ているか、それぞれのレベル、及びベクトルが求められる。
また、第1の導光部20Aから第2の導光部20Bへ出て行く光について、第2の導光部20Bから外へ出て行く光の出力分布レベルとして、第2の導光部20Bの円周方向0〜2πの間で、第2の導光部20Bから外へ出て行く光の位置(x,y,z)と、第2の導光部20Bから外へ出て行く光のベクトル(i,j,k)と、第2の導光部20Bから外へ出て行く光のレベルが求められる。
これにより、第2の導光部20Bの円周方向0〜2πにおいて、各アドレスに光がいくつ来ているか、それぞれのレベル、及びベクトルが求められる。
<反射による光路の演算方法>
図53は、反射による指向性を演算する光導波路の概要を示す構成図で、次に、光導波路2Aにおける反射による指向性の演算方法の詳細について説明する。
光導波路2Aにおける指向性の演算は、レーザダイオード30から第1の導光部20Aに入射される光をM×N分割して、それぞれにアドレスをつける。そして、各アドレスの光について光路を演算し、光導波路2Aを円周方向にn分割した受光領域で、第2の導光部20Bの外周から外に出て行く光の位置、ベクトル(方向)及びレベルを求める。また、第1の導光部20Aから外に出られない光の位置、ベクトル(方向)及びレベルを求める。
なお、本例では、レーザダイオード30から平行光が第1の導光部20Aに入射されるとする。また、第1の導光部20Aを構成する導光素材Aはガラス(BK7)、第2の導光部20Bを構成する導光素材Bは空気とする。
図54は、光導波路における反射による指向性の演算方法の一例を示すフローチャートで、まず、光導波路2Aにおける反射による指向性の演算方法の全体の流れについて説明する。
State00:設定されている初期値をリセットする。
State01:レーザダイオード30の特性、光導波路2Aの特性等の初期値を設定する。
State02:光導波路2Aに入射される光と第1の導光部20A及び第2の導光部20Bとの交点を演算する。
State03:State2で求めた各交点での反射と屈折のベクトルを演算する。
State04:State3で求めた反射と屈折で光がどれだけ減衰するか演算する。
State05:State2からState4までの演算を光線数分繰り返す。
State06:State2からState5までの演算で得られたデータの配列を並び替える。
State07:出力結果を生成する。
図55は、初期値を設定する処理の一例を示すフローチャートで、次に、図54のState01の処理について説明する。
State010では、レーザダイオード30の特性が設定される。レーザダイオード30の特性は、上述した図33で説明した設定値例及び図34で説明したテーブルを参照に設定される。
図55のState011では、第1の導光部20Aを構成する導光素材Aの特性が設定される。図56は、State011で設定される第1の導光部の特性に関する設定値例である。
State011では、例えば図56に示すように、第1の導光部20Aの直径mt_a_rと、第1の導光部20Aの厚さmt_a_tと、第1の導光部20Aの中心座標mt_a_pが設定される。
また、第1の導光部20Aを構成する素材名mt_aと、第1の導光部20Aを構成する素材の屈折率mt_a_refractionが設定される。
更に、第1の導光部20Aに設けられた反射部材の素材名mt_a_zと、反射率mt_a_z_LUTが設定される。なお、図56で設定されている各数値は一例である。State011で設定されるパラメータは、第1の導光部20Aの外形を表現できる式を設定できるパラメータであることが必要で、第1の導光部20Aの形状、原点位置、素材を設定するパラメータが設定され、第1の導光部20Aの形状によってパラメータは変化する。
図57は、導光素材と屈折率の関係を記憶したテーブル例である。図57(a)に示すテーブル02は、所定の素材、本例ではBK7の各波長(光源)に対する屈折率が配列されているルックアップテーブル(LUT)である。第1の導光部20Aを構成する素材の屈折率mt_a_refractionは、第1の導光部20Aを構成する素材名mt_aで図57(a)に示すテーブル02を参照して設定される。
図58は、反射素材と反射率の関係を記憶したテーブル例である。図58(a)に示すテーブル04は、所定の素材、本例ではアルミ蒸着コーティングの各波長に対する反射率が、垂直入射の場合と、45°入射でS面とP面の場合で配列されているルックアップテーブル(LUT)である。第1の導光部20Aに設けられた反射素材の反射率mt_a_z_LUTは、第1の導光部20Aに設けられた反射部材の素材名mt_a_zで図58(a)に示すテーブル04を参照して設定される。
なお、図58(b)に示すテーブル05は、エンハンスドアルミコーティングの各波長に対する反射率が配列されているルックアップテーブル(LUT)であり、第1の導光部20Aに設けられた反射部材の素材名mt_a_zが本例ではAL_023の場合は、第1の導光部20Aに設けられた反射素材の反射率mt_a_z_LUTは、図58(b)に示すテーブル05を参照して設定される。
図55のState012では、第2の導光部20Bを構成する導光素材Bの特性が設定される。図59は、State012で設定される第2の導光部の特性に関する設定値例である。
State012では、例えば図59に示すように、第2の導光部20Bの直径mt_b_rと、第2の導光部20Bの厚さmt_b_tと、第2の導光部20Bの中心座標mt_b_pが設定される。
また、第2の導光部20Bを構成する素材名mt_bと、第2の導光部20Bを構成する素材の屈折率mt_b_refractionが設定される。
更に、第2の導光部20Bに設けられた反射部材の素材名mt_b_zと、反射率mt_b_z_LUTが設定される。なお、図59で設定されている各数値は一例である。State012で設定されるパラメータは、第2の導光部20Bの外形を表現できる式を設定できるパラメータであることが必要で、第2の導光部20Bの形状、原点位置、素材を設定するパラメータが設定され、第2の導光部20Bの形状によってパラメータは変化する。
図57(b)に示すテーブル03は、本例では空気の各波長(光源)に対する屈折率が配列されているルックアップテーブル(LUT)であり、第2の導光部20Bを構成する素材の屈折率mt_b_refractionは、第2の導光部20Bを構成する素材名mt_bで図57(b)に示すテーブル03を参照して設定される。
また、第2の導光部20Bに設けられた反射素材の反射率mt_b_z_LUTは、第2の導光部20Bに設けられた反射部材の素材名mt_b_zで例えば図58(a)に示すテーブル04を参照して設定される。
図55のState013では、演算量を減らして演算コストを落とすための閾値が設定される。State013では、上述した図38に示すように、入力光源の分割数ld_noの上限設定値ray_cnt_endと、最大の反射・屈折数cross_cnt_endと、第2の導光部20Bの最外周の到達ポイントの分解能circle_cnt_endと、P波−S波のフレネル演算を行うか否かの設定Fresnel_onが設定される。
図55のState014では、入力光源の配列情報が作成される。State014では、State010で設定された入力光源分割数ld_noに応じて、入力光源の位置情報(x1,y1,z1)と、入力光源の単位ベクトル(i,j,k)と、入力光源1つあたりのレベル(level)が演算されて、上述した図39に示す配列情報が作成される。本例では、x方向の単位ベクトルi=−1であり、レーザダイオード30から垂直に入射する光を扱うものとする。
入力光源のレベルは、例えば、State010で設定された入力光源分割数ld_noとレーザ出力ld_powerから、以下の(72)式で求められる。ここで、(72)式で、入力光源分割数ld_noに1を加算したのは、中心の光の光路を求めるためである。なお、図示しないが照射対象表からレベルとベクトルを設定しても良い。
Level=ld_power/(ld_no+1)・・・(72)
さて、入力光源が、第1の導光部20Aの径と同じスポット径である場合は、対称性を考慮して、図39に示す配列情報で、−1〜−50までの入力光源に関しては配列情報を作成しなくても良い。
すなわち、図53に示す平面XYZに対して、レーザダイオード30から垂直に光が入射する場合で、レーザダイオード30の出力の分布に対称性がある場合は、鏡像の部分の配列情報は作成しない。
上述した図42に示すような鏡面対称で、XY平面またはYZ平面に対称な1平面のレーザの場合は、演算工数は50%になる。また、光が拡散または集光するような場合、図42(b)に示すように、網掛けで表示した部分と白抜きで表示した部分が同じになるので、XY平面及びYZ平面に対称な2平面のレーザの場合は、演算工数は25%になる。
一方、図43(a)に示すような回転対称で、X軸に対称な1軸のレーザの場合も、対称性を利用して演算工数を減らすことができる。これに対して、図43(b)に示すような回転対称の場合、密度によるLD出力が中心に行く程密になり外に行く程粗になるので、対象性は無い。非対称の場合は、演算工数は100%である。
図55のState015では、1つの入力光源が第2の導光部20Bの外周に到達するまでに反射屈折を繰り返した時の経路分割数(アドレス)が生成される。図60は、反射した光及び屈折した光に付与されるアドレスの生成例である。
第1の導光部20Aに外部から入射したある光の一部は、第1の導光部20Aの外周のビームスプリッタ23で反射して、第2の導光部20Bの外周に到達する。第1の導光部20Aに外部から入射したある光の一部は、ビームスプリッタ23で屈折して、第1の導光部20Aに入る。
第1の導光部20Aに入った光の一部は、第1の導光部20Aの外周で屈折して外に出て行き、第2の導光部20Bの外周に到達する。第1の導光部20Aに入った光の一部は、第1の導光部20Aの外周面で反射して、第1の導光部20A内に戻る。
以下同様に、反射または屈折を繰り返すことで、図60(a)に破線で囲んだ第1の導光部20Aから外に出られない光と、二点差線で囲んだ第2の導光部20Bから外に出られる光が存在することになる。
これにより、第1の導光部20Aに外部から入射したあるアドレスの光に対して、反射及び屈折で生じる光に対してそれぞれアドレスを付与して行き、図60(b)に示すように、例えば7ビットの情報からなるクロスカウントアドレスcross_cnt_adを持つデータ(Cross_data)が生成される。
図60のCross_dataでは、cross_cnt_adの1ビット目で、第2の導光部20Bから第1の導光部20Aに光が入るか、第1の導光部20Aから第2の導光部20Bに光が入るか示され、cross_cnt_adの0ビット目で、反射屈折が示される。
図20のCross_dataでは、第2の導光部20Bから第1の導光部20Aに光が入るか否かを示すデータB→A_onが追加されている。この値は、cross_cnt_adの1ビット目と同じ情報であるので、省略しても良い(B→A_on= cross_cnt_ad[1])。
図61は、光導波路に入射される光と第1の導光部及び第2の導光部との交点を演算する処理の一例を示すフローチャートで、次に、図54のState02の処理について説明する。
State020では、各入力光源と第1の導光部20A及び第2の導光部20Bとの交点が求められる。第1の導光部20Aの形状は、State011で設定された第1の導光部20Aの直径mt_a_rと厚さmt_a_tを利用して、以下の(73)式で表され、第2の導光部20Bの形状は、State012で設定された第2の導光部20Bの直径mt_b_rと厚さmt_b_tを利用して、以下の(74)式で表され、選択された入力光源は、図60(b)に示すCross_dataのアドレスに対応した図39の配列情報を利用して、以下の(75)式で表される。
これにより、(73)式と(75)式から入力光源と第1の導光部20Aとの交点が求められ、(74)式と(75)式から入力光源と第2の導光部20Bとの交点が求められる。
図61のState021では、State020と同様の手順で各入力光源と第1の導光部20A及び第2の導光部20Bとの交点の絶対値が求められ、交点の位置関係が求められる。
図61のState022では、State021で求められた各交点の絶対値から重解を検索する。(73)式と(75)式から入力光源と第1の導光部20Aの交点を求めると、上述した図45に示す解1と解2が存在する。
State022では、重解を含めて各交点の絶対値のデータを整理し、解1、すなわち、第1の導光部20Aに外部から入る光と第1の導光部20Aとの交点を求める。
図61のState023では、State022で求められた重解を除いた各交点の絶対値から、各入力光源が第1の導光部20A及び第2の導光部20Bと何処で交差しているか求められる。
State023では、各交点の絶対値が以下の(76)式の条件を満たす場合は、入力光源が第1の導光部20Aの側面と交差していると判断して、State024でcross_type=1として設定値が保持される。また、各交点の絶対値が以下の(77)式の条件を満たす場合は、入力光源が第1の導光部20Aの底面と交差していると判断して、State024でcross_type=2として設定値が保持される。
更に、各交点の絶対値が以下の(78)式の条件を満たす場合は、入力光源が第2の導光部20Bの側面と交差していると判断して、State024でcross_type=3として設定値が保持される。また、各交点の絶対値が以下の(79)式の条件を満たす場合は、入力光源が第2の導光部20Bの底面と交差していると判断して、State024でcross_type=4として設定値が保持される。
図62は、光導波路に入射される光と第1の導光部及び第2の導光部との交点の演算結果例を示す。上述したState020〜State024の処理では、図62に示すCross_dataの一点鎖線で囲んだ値が入力となり、実線で囲んだ範囲が出力となる。
図63は、State02で求めた各交点での反射と屈折のベクトルを演算する処理の一例を示すフローチャートで、次に、図54のState03の処理について説明する。
State030では、各入力光源が第1の導光部20A及び第2の導光部20Bと何処で交差しているか参照される。入力光源が第1の導光部20Aの側面と交差しているcross_type=1の場合は、State031の処理が行われ、入力光源が第1の導光部20Aの底面または第2の導光部20Bの底面と交差しているcross_type=2,4の場合は、State033の処理が行われ、入力光源が第2の導光部20Bの側面と交差しているcross_type=3の場合は、State034の処理が行われる。
入力光源が第1の導光部20Aの側面と交差している場合に実行される図63のState031では、上述した(60)式で反射屈折の角度が演算される。
なお、円偏光では、グースウヘンシェルシフト及びアンベールシフトを考慮する必要があるが、nm単位のシフト量なので、本例では考慮しない。
図64は、反射屈折角度の演算結果例を示す。上述したState031の処理では、図64に示すCross_dataの一点鎖線で囲んだ値が入力となり、実線で囲んだ範囲が出力となる。
図63のState032では、フレネルによる反射屈折比率がXY平面とYZ平面で演算される。ここで、以下の演算は、本例では、図55のState013で、Fresnel_on=1の場合に実行される。
上述した図49の入射光と反射光及び屈折光の関係から、s波(TE波、H波、水平偏波、直交偏波)の振幅反射率rpは、上述した(61)式で求められ、振幅透過率tpは(62)式で求められる。また、p波(TM波、E波、垂直偏波、平行偏波)の振幅反射率rsは(63)式で求められ、振幅透過率tsは(64)式で求められる。
そして、s波の振幅反射率rpの絶対値Rpは(65)式で求められ、s波の振幅透過率tpの絶対値Tpは(66)式で求められる。また、p波の振幅反射率rsの絶対値Rsは(67)式で求められ、p波の振幅透過率tsの絶対値Tsは(68)式で求められる。なお、Rp+Tp=1、Rs+Ts=1が成立するので、どちらか一方を取得するようにしても良い。
図65は、反射屈折比率の演算結果例を示す。上述したState032の処理では、図65に示すCross_dataの一点鎖線で囲んだ値が入力となり、実線で囲んだ範囲が出力となる。
なお、図55のState13で、Fresnel_on=0の場合は、例えば、上述した(69)式に示すSchlickの演算式が実行される。但し、精度が悪いので、フレネルによる演算が好ましい。
入力光源が第1の導光部20Aの底面または第2の導光部20Bの底面と交差している場合に実行される図63のState033では、Z平面反射の演算が行われる。
State033では、演算式はState031で説明したスネルの(60)式が使用され、入力光源の単位ベクトル(i,j,k)を入力とし、State010で設定された光源の波長sp_noと、入力光源が第1の導光部20Aの底面と交差している場合は、State011で設定された第1の導光部20Aに設けられた反射部材の反射率mt_a_z_LUTを参照して演算が行われる。また、入力光源が第2の導光部20Bの底面と交差している場合は、State012で設定された第2の導光部20Bに設けられた反射部材の反射率mt_b_z_LUTを参照して演算が行われ、反射ベクトルが求められて、反射材21での反射回数(レベル反射損失回数と称す)がカウントされる。
図66は、Z平面反射の演算結果例を示す。上述したState033では、図66(a)に示すCross_dataの一点鎖線で囲んだ値が入力となり、図66(b)に示すデータ(Z_Cross_dataと称す)が生成されて、実線で囲んだ範囲が出力となる。
Z_Cross_dataは、アドレスと反射ベクトルとレベル反射損失回数を保持する。そしてアドレスが変化した場合は行を追加して行き、アドレスが変化しない場合はデータを上書きして行く。Z_Cross_dataでは、光のレベルではなく、レベル反射損失回数の値を保持する。これは、反射回数が判れば、反射回数に損失を乗じた値から、反射で損失したレベルが求められるためである。
図63のState034では、演算が終了したか否かに応じて処理を決定する信号(fix_vection_cal)が生成される。
入力光源が第1の導光部20Aの底面または第2の導光部20Bの底面と交差しているcross_type=2,4の場合には、演算が終了していないとしてfix_vection_calが生成され、State02の処理に戻される。また、入力光源が第1の導光部20Aの側面と交差しているcross_type=1の場合と、入力光源が第2の導光部20Bの側面と交差しているcross_type=3の場合は、演算が終了したとしてState04の処理が行われる。
図67は、State03で求めた反射と屈折で光がどれだけ減衰するか演算する処理の一例を示すフローチャートで、次に、図54のState04の処理について説明する。
State040では、各入力光源が第1の導光部20A及び第2の導光部20Bと何処で交差しているか参照される。
図66(b)に示すZ_Cross_dataで、入力光源が第1の導光部20Aの底面または第2の導光部20Bの底面と交差していることで、State03の処理でレベル反射損失回数が保持されてz_cross_data,level>0となっているcross_type=2,4の場合は、State041の処理が行われる。
また、入力光源が第1の導光部20Aの側面または第2の導光部20Bの側面と交差していることで、z_cross_data,level=0となっているcross_type=1,3の場合は、State042の処理が行われる。
図67のState041では、Z方向で反射によって減衰した光のレベルz_levelが、以下の(80)式で求められる。
(80)式におけるz_levelは、反射率mt_z_LUTを、図66(b)に示すZ_Cross_dataのレベル反射損失回数z_cross_data,levelで累乗した値を、図66(a)に示すCross_dataで選択された入力光源のレベルcross_data,levelに乗じた値であり、反射回数に応じて減衰量が乗算される。
z方向での反射は反射材21で起こるので、反射率mt_z_LUTは、入力光源が第1の導光部20Aの底面と交差しているcross_type=2の場合は、State011で設定された第1の導光部20Aにおける反射部材の反射率mt_a_z_LUTが参照されて演算が行われる。また、それ以外、本例では、入力光源が第2の導光部20Bの底面と交差しているcross_type=4の場合は、State012で設定された第2の導光部20Bにおける反射部材の反射率mt_b_z_LUTが参照されて演算が行われる。
図67のState042では、XY平面での反射による減衰率mt_reflectionが、State032で求めたs波とp波の反射率(絶対値)Rp,Rsから、以下の(81)式で求められ、XY平面で反射によって減衰した光のレベルreflect_levelが、以下の(82)式で求められる。また、XY平面での屈折による減衰率mt_refractionが、State032で求めたs波とp波の透過率(絶対値)Tp,Tsから、以下の(83)式で求められ、XY平面で屈折によって減衰した光のレベルrefract_levelが、以下の(84)式で求められる。
(82)式におけるreflect_levelは、Cross_dataで選択された入力光源のレベルcross_data,levelに、減衰率mt_reflectionを乗じた値であり、(84)式におけるrefract_levelは、Cross_dataで選択された入力光源のレベルcross_data,levelに、減衰率mt_refractionを乗じた値である。
図68は、XY平面での反射・屈折によるレベルの演算結果例を示す。上述したState042では、図68に示すCross_dataの一点鎖線で囲んだ値が入力となり、実線で囲んだ範囲が出力となる。
図67のState043では、演算が終了したか否かに応じて処理を決定する信号(fix_level_cal)が生成される。
入力光源が第2の導光部20Bの側面と交差しており、第2の導光部20Bから外に出られるcross_type=3の場合は、演算が終了したとしてState05の処理が行われる。それ以外、本例では、入力光源が第1の導光部20Aの側面と交差しているcross_type=1の場合と、入力光源が第1の導光部20Aの底面または第2の導光部20Bの底面と交差しているcross_type=2,4の場合には、演算が終了していないとしてfix_level_calが生成され、State03の処理に戻される。
State05では、上述したState02からState04までの演算が、State010で設定された入力光源分割光線数分繰り返される。
State06では、上述したState02からState05までの演算で得られたCross_dataとZ_Cross_dataがソートされる。
State06では、LD出力分布の対称性に基づいてCross_dataの配列が戻される。また、各交点の座標Cross_addressに基づいてCross_dataがソートされ、第2の導光部20Bの外周上のアドレスに直される。これは、第2の導光部20Bの円周方向のあるアドレスにいくつ光が来ているか、そのレベルはどの位かを検索するためである。さらに、Z方向での交点の座標Z_Cross_addressに基づいてZ_Cross_dataがソートされ、第2の導光部20Bから外に出る光と外に出ない光が分別される。
State07では、上述したState02からState06までの演算で得られた出力結果が生成される。
上述したState02からState06までの演算で得られたCross_dataで、cross_cnt_ad[1]=0でかつcross_cnt_ad[0]=1のアドレスcross_cnt_adを抽出することで、第2の導光部20Bから外に出て行く光の出力分布レベルとして、Cross_cnt_data,x1,y1,z1は、第2の導光部20Bの円周方向0〜2πの間で、第2の導光部20Bから外に出て行く光の位置(x,y,z)である。また、Cross_cnt_data,i,j,kは、第2の導光部20Bから外に出て行く光のベクトル(i,j,k)である。更に、Cross_cnt_data,levelは、第2の導光部20Bから外に出て行く光のレベルである。
また、上述したState02からState06までの演算で得られたCross_dataで、cross_cnt_endが最大でかつcross_cnt_ad[0]=0のアドレスcross_cnt_adを抽出することで、第1の導光部20Aから外に出られない光の損失分布レベルとして、Cross_cnt_data,x1,y1,z1は、第1の導光部20Aから外に出られない光の位置(x,y,z)である。また、Cross_cnt_data,i,j,kは、第1の導光部20Aから外に出られない光のベクトル(i,j,k)である。更に、Cross_cnt_data,levelは、第1の導光部20Aから外に出られない光のレベルである。
これにより、第2の導光部20Bの円周方向0〜2πにおいて、各アドレスに光がいくつ来ているか、それぞれのレベル、及びベクトルが求められ、光導波路2Aの円周方向における指向性が求められる。
なお、図67のState041では、Z方向で反射によって減衰した光のレベルz_levelが、レベル反射損失回数を利用して求められる。これに対して、上述した(80)式を以下の(85)式に置き換えれば、z_cross_data,levelとして、反射により損失した光のレベルを得ることができる。ここで、State41での処理は、上述した(80)式での演算か、(85)式での演算のどちらかを選択して行えば良い。
1A・・・指向特性取得装置、2A・・・光導波路、20A・・・第1の導光部、20B・・・第2の導光部、21・・・反射材、22・・・乱反射材、3・・・光出力部、30・・・レーザダイオード、31・・・像調節機構、32・・・座標調節機構、4・・・光入力部、41・・・移動機構、5・・・制御部、50・・・演算部、6・・・記憶部、7・・・出力部、70・・・記憶媒体、8・・・入力部