JP4553601B2 - 可視化プログラム - Google Patents
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Description
本発明では、各種構造の描画に適用し、部材当たりの要素節点出力データが少ない場合においても精度良くはり部材の変形形状を描画することを可能にするものである。また、はり要素の変形が小さい場合において変形形状を明示するために、はり理論の変形の仮定を満足する形に変位を拡大する方法を提案する。
Shade ユーザガイド,Expression Tools,2001
一方、3DCGソフトは透視投影法を用いるため、遠近感を表現することが可能であり、また視点や光源の位置を任意に設定することができるため、空間上の物体を現実的に表示するものとして適している。ただ、はり要素を用いた解析では構造部材が線材としてモデル化されるため、3DCGソフトを用いるには線材の節点における変形の情報から部材の立体画像を構築する必要があった。
変形形状を強調する場合には変位を拡大する必要がある。微小変位解析で通常用いられる方法として、はり要素節点の並進変位成分と回転成分に拡大倍率を乗ずる方法があるが、はり理論の場合、軸線の並進変位成分と回転角とは完全には独立ではないので、回転成分に並進変位成分と同一の拡大倍率を乗ずるとはりにおける変形の仮定(断面形状不変の仮定、Bernoulli-Euler の仮定)を満足しない不自然な変形状態になる。さらに、有限回転の場合、回転角成分はベクトル量ではないため、回転角成分に拡大倍率を乗ずることで拡大回転成分を求めることは正しくない。このような回転角の拡大方法も、拡大後の回転成分が微小とみなせないようなときには、はり理論における変形の仮定を満足しない変形形状を生ずる原因になる。
また、本発明の可視化プログラムは、変形前の節点部の軸方向接線が一致する隣接要素について、当該隣接要素間の共有節点部における軸方向輪郭線の接線ベクトルを平均化し、その平均接線を隣接する各要素の共有節点部の接線として用いることで隣接要素間における軸方向の輪郭線の接線を一致させるようにしたものであることを特徴とする。
また、本発明の可視化プログラムは、軸線上の並進変位成分に対して拡大倍率k1を乗ずることにより並進変位の拡大を行い、拡大後の軸線のたわみ形状から2つのたわみ角成分を求め、残りの自由度のねじれに関する回転成分についてはk1とは別の拡大倍率k2を乗じて拡大を行うようにしたものであることを特徴とする。
本可視化プログラムを実行するシステムは、図15に示すように、中央処理装置11と、主記憶装置12と、補助記憶装置13と、入力装置14と、表示装置15とを少なくとも備え、それら装置がバス16で接続されている。表示装置15は、高精細画像を画面に表示するビットマップディスプレイである。入力装置14は、画面の位置を入力するマウスなどのポインティングディバイスや、文字を入力するキーボードなどの装置である。そして、補助記憶装置13は、読書き可能で不揮発性の記憶装置であって、構造解析より得られた複雑な立体構造物の変形挙動や地震時における動的挙動に関する数値データを映像化するCGを用いた可視化プログラムとが格納されている。
なお、図面上に表され、また数式中に表された記号のうち、例えば∧(ハット記号)が付されているものについては、以下に説明する文章中において便宜的にそのハット記号を除いて記載している。そこで、図面と数式に使用された記号のうち明細書本文において変更しているものについて図14にその対比表を示す。
はり要素による有限要素解析における入出力データを用いて要素の輪郭線と表面を表示し、実際の構造物と同様な3次元変形形状を再現することを考える。
図1に示すように、変形後の要素両端節点における断面上の輪郭線は、はり理論の基本仮定である断面不変の仮定に基づいて表現するため、節点の変位と回転角より求めた変形後の断面の各頂点を線分を用いて結ぶことにより容易に求まる。一方、軸線方向の輪郭線については変形形状をスムーズに表すため、変形後の輪郭線両端における位置ベクトルと接線ベクトルを利用した3次ベジェ曲線を用いることとする。これによると要素両端断面a,bの頂点を結ぶベジェ曲線上の位置ベクトルrj は次のようにあらわされる。
以上より、要素断面の全頂点の軸方向輪郭線をベジェ曲線で表すには、要素両端断面各頂点の位置ベクトルとともに、これら頂点位置での軸方向輪郭線の接線ベクトルが既知でなければならない。
ここでは、変形後のはり要素の軸方向輪郭線を決定するための要素両断面での頂点jの接線ベクトルgj z1,gj z2の導出を行う。実務で用いられるはり要素としてはSt.Venantのねじれを考慮したBernoulli-Euler 直線はり要素が最も多いが、ここではより一般的なそりねじれも考慮しうる薄肉はり要素を対象とする。はり要素による通常の解析ソフトでは利用できる情報として要素節点位置での変位と回転角に加え、そりねじれを考慮できる場合はねじれ率のデータしかないので、断面全頂点での軸方向接線ベクトルを求めるためには、両端節点での変位と回転角、ねじれ率より要素変形形状を補間し接線ベクトルを求めることになる。すなわち、要素両端節点間の軸線の変形形状を補間し、断面上の任意頂点での軸方向輪郭線の変形形状は薄肉はりの変形に関する仮定を用いて求める。変位・回転角が小さい場合は、有限要素の変位関数と同様に低次のべき関数で要素両端節点間の軸線の変形形状を補間すれば十分であるが、大変形をする場合には剛体変位成分が大きいので、その精度が低下する。ここでは、Co-rotational 座標系を導入することで剛体変位を除去した上で、変位・回転成分を3次関数と1次関数で補間する。
(ix01,iy01,iz01) と基底ベクトル(ix,iy,iz) との関係は、2つの系の直交変換行列[R1 ]を用いて次の関係が成立する。
なお、ABAQUS(HKS社製の汎用非線形有限要素解析プログラム)等のように節点回転角が回転ベクトルを用いて出力される場合には、後記の「有限回転の表現方法」で説明するようになる。
式(数3)より変形前(x,y,z)にあった任意点の変形後の位置ベクトルrは次のように求まる。
式(数6)に式(数3)、式(数7)を代入し、さらに式(数2)を考慮すると、変形後のはり要素任意点における位置ベクトルrは(x,y,z)座標系の基底ベクトル(ix,iy,iz) を用いて以下のように表される。
Co-rotational 座標系での変位ならびに回転成分(d´x0,d´y0,d´z0) ,(θ´x0,θ´y0,θ´z0)は直交直線座標系(x,y,z)での変位回転成分により次のように表される。
要素分割が極端に粗い場合にはCo-rotational 座標系下の変位成分が微小とならず、各節点で輪郭線の接線ベクトルの不連続性が目立つ場合がある。これらの問題は要素分割を細かくとることにより解消される。しかしながら、構造解析の要素分割をCGによる描画のために細分割するのは不経済であり、大きな要素でも滑らかに描画しうるように検討すべきである。たとえば、実務設計等においては部材単位の大きな要素分割で弾性解析等を行った場合や、変形した構造物の一部を局所的に表示する場合などがある。
一般的な外力によって土木構造物に発生する変位は構造物の規模に較べて小さく、変形形状を視認することが困難な場合が多い。従って、構造物の変形形状をより明確に表示するためには変位の拡大を行う必要がある。
Bernoulli-Euler はり要素を用いる場合、簡易的にはり要素節点の並進変位成分と回転成分に等しい拡大倍率を乗ずる方法が通常用いられることが多い。この場合、式(数13)で定義される拡大前の節点の回転を表す行列[Ri] (i=1,2)に対応する拡大後の節点の回転を表す行列[R´i]は[Ri]の回転成分が微小量である場合、拡大倍率k を用いて次式のようにあらわすことができる。
しかしながら厳密に考えると、はり理論の場合、軸線の並進変位成分と回転角とは完全には独立ではないので、回転成分に並進変位成分と同一の拡大倍率を乗ずることはできない。さらに、有限回転の場合、回転成分はベクトル量ではないため、回転成分に拡大倍率を乗ずることで拡大回転成分を求めることができない。よって拡大後の回転成分が微小とみなせない場合には、はり理論における変形の仮定(断面形状不変の仮定、Bernoulli-Euler の仮定)にそわない不自然な形になる。
変位拡大後の節点の回転を図3に示すように、拡大後の並進変位により規定される軸線のたわみ形状より求まるたわみ角に関する回転(回転A:回転軸p”,回転角θ* )と軸線上の並進変位とは独立なねじれに関する回転(回転B:回転軸i* z0i,回転角γ* )の2度の回転に分離して考える。ここでθ* をたわみ角、γ* をねじれ角と呼ぶ。以上2度の回転により変位拡大後の節点の回転をつぎのようにあらわす。
図3(b)に示す回転軸をi* z0iとするねじれに関する回転Bについては、ねじれ角γに対して拡大倍率k2を乗じた回転量(γ*=k2γ)を与えることとする。ねじれ角の拡大倍率k2は任意に与えることが可能であるが、並進変位に与える拡大と同程度となるような自然な拡大を考える場合には、各要素拡大倍率k2として拡大前後のたわみ角の比(k2=θ*/θ)を与えると比較的自然な拡大をすることができる。
なお、拡大前のたわみ角θ、ねじれ角γは図3に示す節点の回転の拡大の場合と同様に、変形後の節点の回転をたわみに関する回転とねじれに関する2回の回転に分離して考えることにより求まる。
4-1) 「他の描画手法との比較」
ここでは本手法の有効性を検証するためにはり部材の輪郭線の描画に用いられる可能性がある次の2種類の方法と比較する。
(手法[1])
要素の輪郭線に3次ベジェ曲線を用いず、要素両端における断面の各頂点をつなぐ直線として軸方向の輪郭線を表示する方法。
(手法[2])
要素の輪郭線には3次ベジェ曲線を用いるがこれを決定する各頂点の要素両断面位置における接線ベクトルとして近似的に要素両端節点位置における軸線の接線ベクトルを用いる方法。
手法[2]では以下に示す要素両端節点位置における軸線の接線ベクトルizi
図4より曲げ変形に着目すると[2]の手法と提案した手法を用いて変形状態を表示した結果、(A.2.)および(A.3.)は要素数が少ないにも関わらず、かなり精度よく曲げ変形を表すことができることがわかる。曲げ変形の場合は断面任意点で軸線の接線方向はすべて一致するため[2]の手法を用いることによる問題点は生じない。一方、輪郭線を直線で表現する場合(A.1.)は節点上で不連続となり、他の手法と較べ描画精度が低下することがわかる。
以上のことから総合的に判断すると、本手法によれば曲げ変形とねじれ変形の両方に対応することが可能であり、最も自然な形で立体はり要素の変形形状を表現することができると考えられる。
(C.1.)、(C.2.)、(C.3.)に曲げとねじり変形が同時に生ずる状態として比較を行っているが、これらの図からも提案する手法が3種類の描画手法の中で最も精度よくはりの変形形状を表していることが確認できる。
3次元空間における複雑な大変形挙動の描画例としてリングの畳み込み解析により得られた変形形状を、その変形の進展に従って表示した例を図5に示す。前項と同様に、描画に用いた手法として、ここで提案した方法の他に、[1]要素輪郭線を直線で表現した場合、[2]断面各頂点の接線ベクトルとして断面節点位置における接線ベクトルを近似的に用いる方法を用いて変形形状を描画し、精度を比較する。正解の欄に示す変形図は十分な要素数(100要素)を用い、提案する手法を用いて描画したものでこれらの図を比較基準とする。手法[1],[2]および本手法に示す変形図はすべて20要素で表示したものである。このように変形形状が最終形状に至るまでに複雑に変化する場合は多数の静止画像を連続再生し、アニメーションを作成することで変形挙動を容易に把握することができる。
ねじれおよび曲げ変形が大きい場合として、Green-Hill問題として知られるねじれモーメントが作用する棒の曲げ座屈挙動の解析結果の描画例を図6に示す。正解の欄に示す変形図は十分な要素数(100要素)を用い、提案する手法により描画したものでこれらの図を比較基準とする。手法[1],[2]および本手法に示す変形図はすべて20要素で表示したものである。また、ここでは最終変形形状の局所的な拡大図を最下段に表示している。これらの図より手法[1]では変形が進むと棒の表面にしわが生じたようになり描画精度が低下し、また[2]では変形が大きくなる以前よりすでに描画精度が悪いことがわかる。
I型断面片持ちはり部材の横倒れ座屈の解析結果を図7に示す。ここではねじれ率を節点の自由度として持つ反りを考慮した開断面はり要素を用いており、変形形状の描画には式(数6)における反りの項を考慮している。図中には反り変形を分かりやすく表示するために視点Aから見た拡大図を表示している。この図より本手法によって上下のフランジ部分に生ずる反り変形が表現されていることが確認できる。
前述した(3)の「変形の拡大方法」により変位を拡大し、変形形状を強調表示した例を図8に示す。ここでは、長方形箱型断面を有するはり部材に2軸曲げとねじれ変形が生じている状態について、変形の進展に従って4つの段階に分け、各変形段階において変位を拡大表示した例を示している。2列目には節点の並進変位成分と回転角を拡大する通常用いられる簡易的な方法による描画例を示しており、3、4列目には本手法を用いて拡大表示した例を示している。本手法では並進変位を5倍(k1=5.0)、ねじれ角を5倍(k2=5.0)とした場合と、並進変位の拡大倍率を5倍 (k1=5.0) とし、各節点のねじれ角の拡大倍率k2には並進変位の拡大の結果として生ずる各節点のたわみ角の拡大比(k2=θ*/θ)を用いた場合との2通りの拡大倍率の与え方による表示例を示している。
本手法を実構造物の構造解析結果へ適用した例として上路式アーチ橋の地震時応答解析による変形挙動を表示したものを図9及び図10に示す。図9では地震波を橋軸方向に入力した場合、図10では橋軸直角方向に入力した場合のある時刻における変形図をそれぞれ表示している。アーチ橋の変形形状をより明確に表示するために、ここでは並進変位を10倍(k1=10.0)に拡大し、ねじれ角の拡大倍率としては前述したように、各要素の拡大前後のたわみ角の拡大倍率と等しい値(k2=θ*/θ)を与えている。
さらに、4-2)、4-3)で例を挙げたようにこのような静止画像を時間間隔ごとに作成し、アニメーションとして連続再生することにより構造物の動的挙動を容易に把握することが可能となる。特に、床板上からの視点を用いると橋上にいる場合の地震時の揺れを視覚的に体験することができる。
本実施形態の手法では、節点変位や回転角のみから節点上の各断面頂点の位置ベクトルと接線ベクトルを求め、要素の輪郭線に3次のベジェ曲線を用いるため、解析に用いる有限要素の分割数が少ない場合においても精度良くはり要素の変形形状を描画することが可能である。
さらに、構造物の変形形状を明確に表示するために必要な変形形状の拡大方法を示した。ここでは、拡大されたはり要素の変形形状がはり理論の仮定(断面形状不変の仮定、Bernoulli-Euler の仮定)を満足しうるように工夫した。
本実施形態の手法の精度と妥当性はいくつかの立体骨組構造の大変形状態を描画し他の手法と比較することにより確認した。実務への応用例として上路式鋼製アーチ橋の動的解析における変形挙動の描画例を示し、本手法の有効性を示した。ここでは、各時刻における静止画像を用いて動画を作成することにより、複雑な立体構造物の動的挙動を把握することが有用であることについても言及した。
はり要素の大変形形状を3次元空間に描画するためには有限回転を取り扱う必要がある。剛体の3次元空間での有限変位は並進変位と回転変位に分けられる。このうち並進変位については3次元空間においてもベクトルの線形和として表現できるため問題はないが、有限回転は並進変位のようにベクトルの線形和として合成を行うことはできない。3次元空間での有限回転をあらわす方法として各種方法が提示されているが、ABAQUSなどの非線形汎用プログラムでは回転ベクトルを用い有限回転を表すことが多いので、ここでは回転ベクトルを用いた直交変換行列[R]の誘導方法について説明する。
12 主記憶装置
13 補助記憶装置
14 入力装置
15 表示装置
16 バス
Claims (3)
- 演算手段を用いて、はり要素を用いた有限要素解析の入出力データを基に、変形後の構造物について、その要素の両端節点における断面上の輪郭線と軸方向の輪郭線とを求めさせ、表示手段を用いて、はり要素の前記輪郭線と表面とを表示させることにより構造物の3次元変形形状をCGによって表現させるための可視化プログラムであって、
前記断面上の輪郭線は、はり理論の基本仮定である断面不変の仮定に基づき、前記要素両端節点での変位と回転角により求めた断面の各頂点を線分を用いて結ぶことにより求めさせ、前記軸線方向の輪郭線は、軸方向両端における位置ベクトルと接線ベクトルを利用した3次ベジェ曲線を用いて求めさせるものであり、
前記3次ベジェ曲線で表すのに必要な要素両端断面各頂点の位置ベクトルとこれら頂点位置での軸方向輪郭線の接線ベクトルは、
前記有限要素解析の出力データである要素両端断面の節点位置での変位と回転角とから、当該位置ベクトルについては、はり理論の断面不変の仮定に基づいて求めさせ、当該接線ベクトルについては、両端節点での変位と回転角、ねじれ率より変形後の要素内任意点での位置ベクトルを補間し、軸線方向に微分して求めさせるようにしたものであることを特徴とする可視化プログラム。 - 請求項1に記載する可視化プログラムにおいて、
変形前の節点部の軸方向接線が一致する隣接要素について、当該隣接要素間の共有節点部における軸方向輪郭線の接線ベクトルを平均化し、その平均接線を隣接する各要素の共有節点部の接線として用いることで隣接要素間における軸方向の輪郭線の接線を一致させるようにしたものであることを特徴とする可視化プログラム。 - 請求項1に記載する可視化プログラムにおいて、
軸線上の並進変位成分に対して拡大倍率k1を乗ずることにより並進変位の拡大を行い、拡大後の軸線のたわみ形状から2つのたわみ角成分を求め、残りの自由度のねじれに関する回転成分についてはk1とは別の拡大倍率k2を乗じて拡大を行うようにしたものであることを特徴とする可視化プログラム。
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