JP4553004B2 - 燃料電池スタック - Google Patents

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Description

この発明は燃料電池システムに関し、特に燃料電池スタックの電解質膜の湿潤状態を維持するために循環される水を燃料電池スタックから効率よく排出させる構成の改良に関する。
昨今汎用されるPEM型の燃料電池本体は、燃料極と空気極との間に高分子固体電解質膜が挟持された構成である。
燃料極及び空気極はともに触媒物質を含む触媒層と、前記触媒層を支持すると共に反応ガスを供給しさらに集電体としての機能を有する電極器材からなる。
燃料極と空気極の更に外側には、反応ガスを外部より電極内に均一に供給するとともに、余剰ガスを外部に排出するためのガス流通溝を設けたセパレータ(コネクタ板)が積層される。このセパレータはガスの透過を防止するとともに発生した電流を外部へ取り出すための集電を行う。
上記燃料電池本体とセパレータとで燃料電池の単位ユニットが構成される。実際の燃料電池システムでは、かかる単位ユニットの多数個が直列に積層されてスタックが構成される。
燃料電池本体では、一般的に発生電力にほぼ相当する熱量の熱が発生する。従って、燃料電池本体が過度にヒートアップすることを防止するために、スタックに冷却板を内蔵させる。この冷却板には空気や水などの冷却媒体が流通されてスタックが冷却され、もって燃料電池本体が所望の温度に維持される。
このような構成の燃料電池の起電力は、燃料極側(アノード)に燃料ガスが供給され、空気極側に酸化ガスが供給された結果、電気化学反応の進行に伴い電子が発生し、この電子を外部回路に取り出すことにより、発生される。
即ち、燃料極(アノード)にて得られる水素イオンがプロトン(H)の形態で、水分を含んだ電解質膜中を空気極(カソード)側に移動し、また燃料極(アノード)にて得られた電子が外部負荷を通って空気極(カソード)側に移動して酸化ガス(空気を含む)中の酸素と反応して水を生成する、一連の電気化学反応による電気エネルギーを取り出すことができるからである。
上記において、プロトンが燃料極より空気極に向かって電解質膜中を移動する際に水和の状態をとるため、電解質膜が乾燥してしまうと、イオン伝導率が低下し、エネルギー変換効率が低下してしまう。
よって、良好なイオン伝導を保つために固体電解質膜に水分を供給する必要があり、そのために燃料ガス及び酸化ガスを加湿して、水分を供給している。
また、アノード電極側では、電極反応を適正に継続させるために、より水素ガスの湿潤状態を維持する必要があり、燃料ガスの加湿方法については従来から様々な提案がある。
他方、プロセス空気を加湿する方法は従来から提案されているが、反応熱により昇温されている(通常80℃程度である)空気極を確実に加湿するには、常温のプロセス空気を加湿器において予め加温しておく必要がある。飽和水蒸気量を空気極の周囲の環境と一致させるためである。そのため、加湿器は水の供給機能とプロセス空気の昇温機能とが求められる複雑な構成であった。
特開平7−14599号公報に開示の燃料電池装置では、空気導入管に噴射ノズルを設けて加湿に必要な水がプロセス空気中に噴霧される。この噴射ノズルが圧縮機の上流側にある場合、噴霧された水はプロセス空気の圧縮にともなう熱で蒸発され、水蒸気の状態で空気極を加湿する。また、この装置でも、必要に応じて空気の加湿装置が更に付加される。
いずれにせよ従来の技術では空気へ水蒸気を混入させることにより電解質膜へ水分を補給していた。
更には、特開平9−266004号公報に示される燃料電池装置では、排出される水素ガスの濃度を下げるため、燃料極から排出されるガス(この排気ガスには未反応の水素ガスが含まれている)を空気極側へ導入してその中の水素ガスを空気極において燃焼させている。当該燃焼において反応水(回収水)が生成されるため、このような燃料電池装置では加湿器を特に付加しなくても、電解質膜へ充分な水分を補給できることとなる。
更なる研究により以下の事項が解った。
所定値以下の厚さの電解質膜により、燃料電池を構成した場合に、プロトンが空気極において空気中の酸素と反応して生成された水が、電解質膜中を空気極から水素極へ逆浸透する。この逆浸透された水により、電解質膜を好適な湿潤状態に維持することができるため、水素極(アノード電極)側で水素(燃料ガス)を加湿する必要がない。
しかし、空気極(カソード電極)側において、導入される空気(酸化ガス)流により、電解質膜の空気極側の水分が蒸発するため、電解質膜の空気極側の水分が不足することが解った。
そこで本出願人は特願平10―67885号において、燃料電池本体の空気極に水が液体の状態で供給される、水直噴タイプの燃料電池システムを提案した。
このように構成された燃料電池システムによれば、空気極の表面に供給された水が優先的に空気から潜熱を奪うので、空気極側の電解質膜から水分の蒸発することが防止される。従って、電解質膜はその空気極側で乾燥することなく、常に均一な湿潤状態を維持する。よって、燃料電池システムの性能及び/又は耐久性が向上する。
さらには、水を液体の状態で空気極に供給すると、空気極の表面に供給された水は空気極自体からも熱を奪いこれを冷却するので、これにより燃料電池本体の温度を制御できる。即ち、燃料電池スタックへ冷却板を付加しなくても当該燃料電池本体を冷却することができる。
本発明者はこのような水直噴タイプについて鋭意検討を重ねた結果、下記の解決すべき課題を見出した。
即ち、燃料電池システムの効率を上げ、更にその小型軽量化を図るには、燃料電池スタックに供給された液体状の水をいかに効率よく燃料電池スタックから排出させ、これを循環させるかが問題となる。
このような水対策は水直噴タイプの燃料電池に限られたものではない。プロセス空気を加湿する従来タイプの燃料電池であっても、特に車輌用に適用しようと大型化した場合には、燃料電池スタックから効率よく水を排出することはその発電効率を確保する上で解決すべき課題となる。
そこで、この発明は効率よく水を排出できる燃料電池スタックおよびこれを備えた燃料電池システムを提供することを一つの目的とする。
更に他の目的は、新規な構成の燃料電池システムを提供することにある。
更に他の目的は、コンパクトな燃料電池システムを提供することにある。
この発明の第1の局面は上記目的の少なくとも一つを達成する燃料電池スタックであり、その構成は次のとおりである。
燃料電池の単位ユニットを複数枚重ね合わせて構成された燃料電池スタックであって、
前記各単位ユニットはその下縁が傾斜している、こと特徴とする燃料電池スタック。
このように構成された第1の局面の発明によれば、燃料電池の単位ユニットの下縁が傾斜しているので、単位ユニット中の水分は重力により下縁まで降下するとともに、当該単位ユニットの下縁の傾斜に応じてその下縁の一角に集合する。よってこの一角にドレインを設ければ、ここから効率よく水を排出できることとなる。
燃料電池の単位ユニットの下縁の傾斜は単位ユニットを全体的に傾斜させること、若しくは下縁のみが傾斜するように単位ユニットを設計することにより達成される。
車輌用に適したこの発明の一つの実施の形態では、各単位ユニットは車輌の幅方向に重ね合わされて燃料電池スタックを構成し、各単位ユニットは車輌の進行方向に対して傾斜している。即ち、各単位ユニットの下縁は車輌の進行方向に向いており、かつ水平線と交差している。そして、更に燃料電池スタック自体が車輌の幅方向に対して傾斜している。即ち、燃料電池スタックが三次元的に傾いており、よってその一つの角に水が集中し、そこから排出される
燃料電池スタックの下側に、単位ユニットから排出される水を受けるパン(水回収装置)を設けることが好ましい。そして、パン自体も傾斜させて水の回収を容易にする。
この発明の一つの実施の形態では、単位ユニットの複数枚を車輌幅方向に重ねあわせて燃料電池スタックを構成し、各単位ユニットの下縁を車輌の進行方向に対して傾斜させる。そして、燃料電池スタックの下側に取り付けられる水受けパンを車輌の幅方向に傾斜させた。走行時に車輌がその幅方向に傾斜する頻度は進行方向に傾斜する頻度に比べて少ない。従って、パンの傾斜に沿って水が円滑に流れ、回収されることとなる。他方、燃料電池の単位ユニットにおいては、その空気流路(空気極に供給された水はここを流れる)は狭いので、傾斜が多少変化しても、その下縁部において水の流れに殆ど影響はない。
なお、水回収装置を燃料電池スタックの下に配置すれば、燃料電池スタック内の水は自重で水回収装置まで落下する。従って、燃料電池スタックから水回収装置まで水を強制的に移動させるための補器(ポンプ等)を特に設ける必要がなくなる。よって、システムの軽量小型化を達成できる。
この発明の第2の局面の燃料電池システムは次のように構成される。
燃料電池スタックと該燃料電池スタックに水を供給し排出空気及び/又は排出燃料ガス中から水を回収する水供給系とを備え、該水供給系の水タンクが前記燃料電池スタックより下側に配置されている、ことを特徴とする燃料電池システム。
このように構成された燃料電池システムによれば、水タンクが燃料電池スタックの下側に配置されているので、燃料電池スタックから排出される液体状の水が自重で当該水タンクまで落下していく。そのため、燃料電池スタックから排出された水を水タンクまで強制的に移動させるための補器(ポンプ等)を特に設ける必要がない。よって、システムの軽量小型化を達成できる。
なお、水を燃料電池スタックから水タンクまでより円滑に流すため、両者を連絡する配管も燃料電池スタックを上側にした傾斜を常に維持しているものとすることが好ましい。
かかる第2の局面の発明は、水直噴タイプのように大量の水を燃料電池スタックから排出させる必要があるシステムにおいてより有効である。
この発明の第3の局面の燃料電池システムは次のように構成される。
燃料電池スタックと、該燃料電池スタックに燃料ガスを供給し該燃料電池スタックから燃料ガスを排出させる燃料供給系とを備え、前記燃料ガスの排気バルブが前記燃料電池スタックより下側に設けられている、ことを特徴とする燃料電池システム。
燃料電池スタックでは、既述のように燃料極側においてもその湿潤状態を維持しなければならない。そのため、燃料極側で水がたまりこれが燃料ガス流路を塞いでしまうなど、不具合を引き起こす場合がある。特に、燃料ガスの完全燃焼を図るべく燃料ガスを間欠的に流通させるタイプにおいて燃料ガス流路から水を確実に排出することが要求される。
上記第2の局面の燃料電池システムによれば、燃料ガスの排気バルブが燃料電池スタックより下側に設けられている。したがって、燃料電池スタックの燃料極側の水は自重で排気バルブまで落下し、排気バルブを開放したとき、燃料排気ガスとともにこの水も排出される。
燃料極から排気バルブまでの水の落下を補助するために、両者をつなぐ配管は少なくとも燃料電池スタックから下方に向けて配設されていることが好ましい。即ち、この配管は燃料電池スタック側を上側とした傾斜を常に維持するものとする。
上記と同じ見地から、燃料電池スタックの燃料ガス排出口は燃料極より下側に配置されことが好ましい。より好ましくは、燃料電池スタックの最も下の位置にこの燃料ガス排出口を設ける。
水の排出効率を高めるために、上記のように燃料ガス排出口の位置が定められる。他方、燃料ガスの導入口は、燃料ガスが上から下に流れて水の落下を阻害しないように、燃料ガス排出口より高い位置に設けることとなる。この燃料ガス排出口は燃料極より高い位置にあることが好ましい。更に好ましくは、燃料電池スタックにおいて、最も高い位置にこの燃料ガス導入口を設ける。
(実施例)
次にこの発明の実施例を説明する。なお、以下の説明では、実施例の燃料電池システム1の全体構成を説明し、続いて各要素を詳細に説明する。
図1にこの発明の実施例の燃料電池システム1の構成を示す。図1に示すように、この燃料電池システム1は燃料電池スタック2、水素吸蔵合金11を含む燃料供給系10、空気供給系40、水供給系50及び負荷系70から大略構成される。
燃料電池スタック2は燃料電池の単位ユニットUを複数接続したものである。この単位ユニットUは、図2に示すように、空気極3と燃料極4とで固体高分子電解質5を挟持した構成の燃料電池本体を、更にカーボンブラックのセパレータ6、7で挟持した構成である。この単位ユニットUの形状は特に限定されないが、セパレータ6と空気極3との間には空気を流通させる空気流路8が上下方向に形成される。セパレータ7と燃料極4との間には水素ガスを流通させる水素ガス流路9が形成されている。
燃料供給系10では、水素供給路20を介して水素吸蔵合金11から放出された水素を燃料スタック2の各単位ユニットUの水素ガス流路9へ送る。水素供給路20には、水素調圧弁21が配設され、水素吸蔵合金11から放出された水素ガスを調圧している。符号23は水素供給電磁弁23であって、水素供給路20の開閉を制御している。燃料電池スタック2へ供給される直前の水素ガス圧は水素元圧センサ25でモニタされている。
燃料供給系10において、燃料電池スタック2から排出される水素ガスは水素排気路30を介して大気へ放出される。水素排気路30には逆止弁31と電磁弁33が設けられている。逆止弁31は水素排気路30を介して空気が燃料電池スタック2の燃料極に進入することを防止する。電磁弁33は間欠的に駆動されて水素の完全燃焼を図る。
空気供給系40は大気から空気を燃料電池スタック2の空気流路8に供給し、燃料電池スタック2から排出された空気を水凝縮器51を通過させて排気する。
空気供給路41にはファン43が備えられ、大気から空気を空気マニホールド45へ送る。空気はマニホールド45から燃料電池スタック2の空気流路8へ流入して空気極3へ酸素を供給する。燃料電池スタック2から排出された空気は水凝縮器51(水回収装置)で水分が凝縮・回収されて大気へ放出される。
燃料電池スタック2から排出される温度は排気温度センサ47によりモニタされている。
この実施例では、空気マニホールド45の側壁にノズル55が配設されて、これより吸気中に水が液体の状態で供給される。この水の大部分は液体の状態を維持したまま水凝縮器51に到達し、そのままタンク53へ送られて回収される。供給された水の一部は蒸発し、水凝縮器51において凝縮されて回収される。なお、排出空気に含まれる水蒸気には燃料電池スタック2の発電反応に伴う反応水に起因するものもあると考えられる。
水供給系50はタンク53の水をノズル55から空気マニホールド45へ供給し、この水を水凝縮器51で回収してタンク53に戻すという閉じられた系である。勿論、水供給系50を完全に閉じることは不可能であるので、タンク53の水位を水位センサ56でモニタしてこの水位が所定の閾値を超えたら外部より水を補給する。冬季にタンク53中の水が凍結しないようにタンク53にはヒータ57と凍結防止電磁バルブ58が取り付けられている。
水凝縮器51とタンク53を連結する配管には電磁バルブ60が取り付けられてタンク53内の水が蒸発するのを防止している。
タンク53の水はポンプ61により空気マニホールド内に配設されたノズル55へ圧送され、ここから空気極3の表面に対して連続的若しくは間欠的に噴出される。この水は燃料電池スタック2の空気極3に供給され、ここにおいて優先的に空気から潜熱を奪うので、空気極3側の電解質膜5からの水分の蒸発が防止される。従って、電解質膜5はその空気極3側で乾燥することなく、常に均一な湿潤状態を維持する。
また、空気極3の表面に供給された水は空気極3自体からも熱を奪いこれを冷却するので、これにより燃料電池スタック2の温度を制御できる。即ち、燃料電池スタック2へ冷却水供給系を付加しなくても当該燃料電池スタック2を充分に冷却することができる。
なお、排気温度センサ47で検出された排出空気の温度に対応してポンプ61の出力を制御し、燃料電池スタック2の温度を所望の温度に維持する。
負荷系70は燃料電池スタック2の出力を外部に取り出して、モータ77等の負荷を駆動させる。この負荷系70にはスイッチのためのリレー71と補助出力源となる2次電池75が設けられ、2次電池75とリレー71との間に整流用のダイオード73が介在されている。
なお、燃料電池スタック2自体の出力は電圧センサ75で常にモニタされている。このモニタ結果に基づき、図示しない制御回路で水素排気電磁弁33の開閉が制御される。
図3は実施例の燃料電池システム1を車輌に組み付けた状態において水供給系50を抽出した図である。図中の符号Tはタイヤである。
空気マニホールド45、燃料電池スタック2、水凝縮器(水回収装置)51およびファン43を図で上下に組み付けてなる組付け体100の側面図を図4に、平面図を図5に及び底面図を図6にそれぞれ示す。図中の符号101は組付け体100の基枠である。
図7は組付け体100の構成を示す概念図である。ここで、水凝縮器51は燃料電池スタックの排気ポート511と吸気ポート515とを上下に重ねた構成からなる。排気ポート511と吸気ポート515とは仕切り板513で仕切られており、この仕切り板103は排気ポート511の空気と吸気ポート515の空気との間で熱交換がされるよう、熱伝導性のよい材料(ステンレス鋼など)で形成されている。仕切り板513は傾斜しており、その最も低い部分がドレイン516となる。
燃料電池スタック2を通過した後の排出空気の温度は約50℃であり、大気から導入された吸気ポート515内の空気に比べて排気ポート511内の空気はその温度が相当高い。よって、仕切り板513を介して排気ポート511内の空気は吸気ポート515内の空気と熱交換され、もって冷却される。このとき、排出空気の水蒸気が凝縮される。即ち、この水蒸気は仕切り板513において結露する。そして、傾斜している仕切り板513にそって流れて、ドレイン516より水供給系50に戻される。
なお、ノズル55より供給された水分のうち気化しなかったものは自重で排気ポート511の仕切り板513まで落ちてきて、同様にしてドレイン516から水供給系50へ戻される。
図3及び4からわかるとおり、燃料電池スタック2は各単位ユニットUの約100枚を車軸方向、即ち車輌の幅方向へ重ねて構成される。そして燃料電池スタック2は車輌の進行方向に対して傾斜して配置されている。図例では前側が持ち上げられている(傾斜角度:約15度)。
図8には、単位ユニットUを構成するセパレータ106の正面図を示す。このセパレータ106には縦方向に空気流路108が形成されており、各空気流路108を区画する隔壁109には隣合う空気流路108を連通するバイパス110が形成されている。図の符号112はセパレータ106の下縁部であって、空気とともに供給された水はこの下縁部より滴下可能である。しかし実際には下縁部の通路の幅(空間)は大変狭いので、空気流路108の水がそのまま滴下しない場合がある。そうすると、空気流路108が閉塞され、その部分で空気極へ十分に空気が供給されなくなる。
ここで、単位ユニットUが傾斜していると、水は傾斜した下縁部112を伝って、その最も低い部分から滴下する。更には、単位ユニットUを傾斜させることにより、空気流路108内の水がバイパス110へ流れ込み易くなる。
このように、単位ユニットUが傾斜していると、空気極3に供給された水が流れやすくなって最下端の角部に集合し、そこで大きな水滴となる。よって、自重により確実に燃料電池ユニットUから排出されることとなる。
このようにして単位ユニットUから排出された水は水凝縮器51の仕切り板513に滴下する。この仕切り板513は、図4に示す通り、車輌の幅方向に対して傾斜している。そして、その最下点にドレイン516(図6参照)が取り付けられている。これにより、単位ユニットUから滴下した水は仕切り板513に沿ってドレイン516に集められ、これからタンク53へ送られる。このとき、図3に示すように、タンク53はドレイン516、即ち燃料電池スタック2の下方に位置するので、水は自重でタンク53まで降下する。
このタンク53はその上側部分に配水管520が連結されている。配水管520はドレイン516側を常に上側とした傾斜を維持している。これにより、ドレイン516より排出された水が滞りなくタンク53まで流れる。
かかる水凝縮器51を用いない場合には、燃料電池スタック2自体を車輌の幅方向へ傾斜させることが好ましい。
図9は実施例の燃料電池システム1を車輌に組み付けた状態において燃料供給系10を抽出した図である。燃料供給系10を構成する各要素において図1に示したものと同一のものには同一の符号を付してある。
図9からわかるように、水素ガスを燃料電池スタック2へ導入する導入口120は燃料電池スタック2の最も高い位置にある。また、燃料電池スタック2から水素ガスを排出する排出口121は燃料電池スタック2において最も低い位置とした。これにより、水素ガスの流れに沿って水素流路6内の水を排出口121へ押し流すことができる。
排出口121まできた水はほぼ垂直に配設された配管30に入り、この配管30に沿って自重で水素排気電磁弁(排気バルブ)33まで達する。この電磁弁33は水素ガスの消費に応じて適当なタイミングで開閉される。この電磁弁33が開放されたとき、そこに溜まった水も同時に排出される。
このように、水素ガスを排出するための水素ガス排出系300がすべて燃料電池スタック2の水素ガス排出口121より下方に配置されている。従って、燃料極4周囲の水はその自重により燃料流路、排出口121、配管30及び電磁弁33を介して外部へ排出されることとなる。
逆止弁31は電磁弁33を開放したときに大気中の空気が水素ガス排出系300を逆流することを防止する。空気が逆流して燃料電池スタック2の燃料極4まで達すると、次に水素ガスを燃料電池スタック2へ供給したとき、燃料極上で当該供給された水素と先に逆流してきた空気とが異常反応を引き起こすおそれがある。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
以下、次の事項を開示する。
(20) 請求項4〜5のグループ、請求項6〜8のグループ、請求項9〜10のグループ、請求項11〜12のグループ、請求項13〜15のグループにおいて、少なくとも2つのグループからそれぞれ少なくとも1つ取り出された請求項の要件を組み合わせてなる燃料電池システム。
(121) 前記燃料供給系は前記燃料電池スタックから前記燃料ガスを排出することを制御する排気バルブを備え、該排気バルブは前記燃料電池スタックの燃料ガスの排出口より下側に設けられている、ことを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載の燃料電池システム。
(130) 燃料電池スタックと、該燃料電池スタックに燃料ガスを供給し該燃料電池スタックから燃料ガスを排出させる燃料供給系とを備え、前記燃料電池スタックの前記燃料ガスの排出口は前記燃料電池スタックの燃料極より低い位置にある、ことを特徴とする燃料電池システム。
(131) 前記燃料供給系は前記燃料電池スタックから前記燃料ガスを排出することを制御する排気バルブを備え、該排気バルブは前記燃料ガスの排出口より下側に設けられている、ことを特徴とする(130)に記載の燃料電池システム。
以下の事項を開示する。
(請求項1)
燃料電池の単位ユニットを複数枚重ね合わせて構成された燃料電池スタックであって、
前記各単位ユニットはその下縁が傾斜している、ことを特徴とする燃料電池スタック。
(請求項2)
前記下縁は前記燃料電池を備えた車輌の進行方向に対して傾斜している、ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池スタック。
(請求項3)
前記燃料電池スタックはそれ自身が前記車輌の進行方向に対する幅方向に傾斜している、ことを特徴とする燃料電池スタック。
(請求項4)
請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池スタックを備える燃料電池システム。
(請求項5)
燃料電池スタックと該燃料電池スタックに取り付けられる水回収装置とを備え、前記燃料電池スタックと前記水回収装置とが実質的に箱型に組付けられて、該箱型の組付け体の1つの角が実質的に最下点となるように配置される、ことを特徴とする燃料電池システム。
(請求項6)
燃料電池スタックと該燃料電池スタックの下側に配置される水回収装置とを備えてなる燃料電池システム。
(請求項7)
前記燃料電池スタックは単位ユニットを車輌の幅方向に重ね合わせてなりかつ前記各単位ユニットの下縁が車輌の進行方向に対して傾斜しており、前記水回収装置の水受け面は前記車輌の進行方向に対する幅方向に対して傾斜している、ことを特徴とする請求項6に記載の燃料電池システム。
(請求項8)
前記燃料電池スタックの上側に、該燃料電池スタックの各空気極に水を液体の状態で供給する水供給手段が更に備えられる、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の燃料電池システム。
(請求項9)
燃料電池スタックと該燃料電池スタックに水を供給し排出空気及び/又は排出燃料ガス中から水を回収する水供給系とを備え、該水供給系の水タンクが前記燃料電池スタックより下側に配置されている、ことを特徴とする燃料電池システム。
(請求項10)
前記水供給系は前記燃料電池スタックの空気極に水を液体の状態で供給し、排出空気から水を回収する、ことを特徴とする請求項9に記載の燃料電池システム。
(請求項11)
燃料電池スタックと、該燃料電池スタックに燃料ガスを供給し該燃料電池スタックから燃料ガスを排出させる燃料供給系とを備え、前記燃料ガスの排気バルブが前記燃料電池スタックより下側に設けられている、ことを特徴とする燃料電池システム。
(請求項12)
前記燃料電池スタックの燃料ガス排出口と前記燃料ガス排気バルブとを連結する配管は前記燃料電池スタックの燃料ガス排出口より実質的に下方に向けて配設されている、ことを特徴とする請求項11に記載の燃料電池システム。
(請求項13)
燃料電池スタックと、該燃料電池スタックに燃料ガスを供給し該燃料電池スタックから燃料ガスを排出させる燃料供給系とを備え、前記燃料電池スタックの燃料ガス導入口は前記燃料ガスの排出口より高い位置にある、ことを特徴とする燃料電池システム。
(請求項14)
前記燃料ガスの導入口は前記燃料電池スタックの燃料極より高い位置にあり、前記燃料ガスの排出口は前記燃料電池スタックの燃料極より低い位置にある、ことを特徴とする請求項13に記載の燃料電池システム。
(請求項15)
前記燃料ガスの導入口は前記燃料電池スタックの最も高い位置にあり、前記燃料ガスの排出口は前記燃料電池スタックの最も低い位置にある、ことを特徴とする請求項13に記載の燃料電池システム。
図1はこの発明の一の実施例の燃料電池システムの構成を示す概念図である。 図2は同じく燃料電池の単位ユニットの構成を示す断面図である。 図3は同じく実施例の燃料電池システムを車輌に実装した状態において水供給系を抽出した図である。 図4は同じく空気マニホールド、燃料電池スタック、水凝縮器及び空気供給ファンの組付け体の側面図である。 図5は同じく組付け体の平面図である。 図6は同じく組付け体の底面図である。 図7は同じく組付け体の構成を示す概念図である。 図8は単位ユニットにおいて空気流路を備えたセパレータを示す正面図である。 図9は同じく実施例の燃料電池システムを車輌に実装した状態において燃料供給系を抽出した図である。
符号の説明
1 燃料電池システム
2 燃料電池スタック
3 空気極
4 燃料極
8 空気流路
10 燃料供給系
33 電磁弁
40 空気供給系
45 空気マニホールド
50 水供給系
51 水凝縮器
53 タンク
55 ノズル
70 負荷系
120 水素ガス導入口
121 水素ガス排出口

Claims (3)

  1. 高分子固体電解質膜を燃料極と空気極とで挟持してなる燃料電池本体とセパレータとを備えてなる矩形の単位ユニットの多数個を直列に積層してなる燃料電池スタックと該燃料電池スタックの下側に配置される水回収装置とを備え、車輌用に適用される燃料電池システムであって、
    前記燃料電池スタックの各単位ユニットはその下縁が前記車輌の進行方向に対して傾斜し、前記燃料電池スタックは前記車輌の幅方向に対して傾斜して前記燃料電池スタックとして三次元的に傾いており、
    前記水回収装置の水受け面は前記車輌の幅方向に傾斜している、ことを特徴とする燃料電池システム。
  2. 前記水受け面の最下点にドレインが取り付けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
  3. 前記単位ユニットには前記空気極と前記セパレータとの間に上下方向の空気流路が形成され、前記燃料電池スタックの上側に空気マニホールドとその側壁に配設されたノズルとを備え、前記単位ユニットの空気流路は前記空気マニホールドに開口して前記ノズルから放出された水が液体の状態で前記空気極に供給される、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
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