JP4552249B2 - 高温用エアフィルタ用濾材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は高温用エアフィルタ用濾材に係り、特に、400℃を超える高温清浄空気を長期に亘り安定に創り出すことができる高温用エアフィルタ用濾材に関する。なお、本発明の高温用エアフィルタ用濾材の浄化対象は空気以外のその他の気体も含まれる。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子精密工業等のクリーンルーム、バイオロジカルクリーンルーム、クリーンベンチ等の清浄空間を創り出すために、エアフィルタ用濾紙が用いられている。エアフィルタ用濾紙は、一般に、微細ガラス繊維を水中に分散させて湿式抄造することにより製造される。得られた抄紙は、その後強度付与のために結合剤が塗布される。この結合剤としては、一般にアルカリ系、ウレタン系等の有機物が使用されている。
【0003】
しかし、400℃を超える高温清浄空気を必要とする場合、このような高温では有機物は分散してしまうため、結合剤を含まない濾紙とする必要があり、例えば、特開平11−104426号公報では、結合剤を含まないガラス繊維フェルトを金網等の耐熱性の網体で挟持して高温用エアフィルタに用いることが提案されている。
【0004】
なお、特開平8−108022号公報、同5−134093号公報には、ガラス繊維不織布の片面又は両面に、ガラスクロスを配して、不織布からガラス繊維が脱落して飛散することによる自己発塵を防止したり、強度を高めたりした濾材が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
結合剤を含まないガラス繊維フェルトであれば、高温での使用が可能となるが、その耐熱性の程度は高々250℃程度であり、十分に高いとは言えず、しかも
▲1▼ ガラス繊維フェルトでは、繊維を均一に分散させることが難しく、その結果、得られるフェルトには粗密構造ができる。密の部分における捕集効率は良好であるが、粗の部分は捕集効率が悪くなるため、全体としての捕集効率のバラツキが大きく、安定した浄化を行えない。
【0006】
▲2▼ 上記の問題点を解決するべく、粗の部分をなくすためには、使用するガラス繊維の量を多くする必要があり、コストが高いものとなる。
【0007】
▲3▼ 繊維の圧縮成形によるフェルトの製造は、湿式抄造による抄紙の製造に比べて生産性が低く、製造工程の面からもコストアップを招く。
といった問題点があった。
【0008】
なお、結合剤を用いずに、ガラス繊維のみから湿式抄造により製造された抄紙では、高温での長期使用にも十分に耐え得る強度を得ることができず、使用中に抄紙から繊維が飛散する自己発塵の問題が発生し、実用的でない。
【0009】
この自己発塵や強度の問題は、ガラスクロスを積層することで改善することができるが、ガラスクロスでは、その耐熱性の程度は高々250℃程度であり、400℃を超える高温で長期使用に耐え得る濾材を提供し得ない。
【0010】
本発明は上記従来の問題点を解決し、400℃を超える高温雰囲気においても、自己発塵の問題なく、高い捕集効率で使用することができ、高清浄空気を長期に亘り安定に創り出すことができる高温用エアフィルタ用濾材を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の高温用エアフィルタ用濾材は、極細シリカ繊維を主体繊維として構成された濾紙と、この濾紙の少なくとも一方の面に積層された、シリカ繊維を主体として構成された織布とを備えた高温用エアフィルタ用濾材において、該濾紙は、平均繊維径が0.5〜0.7μmの極細シリカ繊維のみで構成された、目付が90〜110g/m 2 のものであり、該織布は、平均繊維径が15〜30μmのシリカ繊維のみで構成された、目付が400〜600g/m 2 のものであることを特徴とする。
【0012】
本発明の高温用エアフィルタ用濾材は、濾紙と織布が共に、400℃以上の耐熱性を有する極細シリカ繊維を主体として構成されるため著しく耐熱性に優れる。
【0013】
また、極細シリカ繊維は均一分散性に優れることから、捕集効率のバラツキのない濾紙を得ることができる。
【0014】
本発明の高温用エアフィルタ用濾材では、このような濾紙の少なくとも一方の面に織布を積層することから、強度が向上し、また、自己発塵の問題も解消される。
【0015】
本発明の高温用エアフィルタ用濾材は、上記濾紙の両面に前記織布が積層されていることが好ましい。
【0016】
この濾紙は極細シリカ繊維のみで構成されている。また、生産性に優れ、また、繊維の均一分散性に優れた、結合剤不使用の湿式抄造により製造されることが好ましい。
【0017】
また、織布はシリカ繊維のみで構成されている。この織布は耐熱性の面で好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明の高温用エアフィルタ用濾材の実施の形態を説明する模式図である。
【0020】
この高温用エアフィルタ用濾材は、極細シリカ繊維の湿式抄造で結合剤を用いることなく製造された濾紙(以下「シリカ濾紙」と称す。)1の両面にシリカ繊維製の織布(以下「シリカクロス」と称す。)2,3が積層されたものである。
【0021】
このような高温用エアフィルタ用濾材であれば、上流側からの被処理空気が第1層目のシリカクロス2、第2層目のシリカ濾紙1及び第3層目のシリカクロス3の順で通過する間に粉塵が捕集され、清浄空気を得ることができる。
【0022】
この際、被処理空気の風圧は、シリカ濾紙2に直接かからず、第1層目のシリカクロス1にかかるため、シリカ濾紙2が風圧から保護され、シリカ濾紙2の破損が防止される。そして、粉塵は第2層目のシリカ濾紙2で効率的に除去される。更に、第3層目のシリカクロス3により、シリカ濾紙2が破損した場合の自己発塵が防止される。
【0023】
即ち、シリカ濾紙2は捕集効率に優れるが、長期耐熱強度において十分に満足し得るものではない。このため通風により破損する恐れがある。そして、破損した場合には、濾紙2を構成する繊維が飛散して処理空気を繊維で汚染する自己発塵の問題が生起する。また、自己発塵が進行すると、濾紙そのものが繊維の欠損で消滅してしまい、濾材としての機能を失ってしまう。
【0024】
本発明の高温用エアフィルタ用濾材では、このような自己発塵の問題を濾紙2の通風方向下流側に配したシリカクロス3により防止することができる。
【0025】
本発明において、シリカ濾紙1を構成する極細シリカ繊維としては、抄造による繊維の絡み合いで捕集効率及び強度が共に良好な濾紙を得る上で、平均繊維径0.5〜0.7μmの極細繊維である。また、この濾紙1は捕集効率及び強度の面から目付90〜110g/m2程度である。
【0026】
一方、濾紙の両面に積層するシリカクロス2,3としては、強度や、前述の自己発塵防止性能等の面から、平均繊維径15〜30μmのシリカ繊維で構成された目付400〜600g/m2程度の織布である。
【0027】
なお、図1は本発明の高温用エアフィルタ用濾材の実施の形態の一例を示すものであって、本発明はその要旨を超えない限り、何ら図示の態様に限定されるものではない。
【0028】
例えば、シリカクロスは必ずしも濾紙の両面に設ける必要はなく、通風方向上流側のシリカクロスを省略し、通風方向下流側のシリカクロスのみでも良い。ただし、通風速度が速く、風圧が大きい場合には、通風方向上流側にもシリカ繊維を設けるのが好ましい。
【0029】
本発明では、400℃を超える高温での耐熱性を十分に高めるために、シリカ繊維のみからなる織布を用いる。
【0032】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0033】
なお、以下の実施例及び比較例で使用した濾紙及びシリカクロスの仕様は次の通りである。
〔シリカ濾紙〕
シリカ繊維(米国マンビル社製「106Q」、平均繊維径0.6μm)100%の湿式抄紙(結合剤なし、目付95g/m2)
〔ガラス濾紙〕
ガラス繊維(日本板硝子(株)製「306」、平均繊維径0.6μm)100%の湿式抄紙(結合剤なし、目付95g/m2)
〔シリカクロス〕
日本板硝子(株)製「AS−600H」目付550g/m2
また、製造された濾材の試験方法と判定基準は次の通りである。
〔圧力損失(Pa)〕
濾材に通過風速5.3cm/秒で空気を通過させた時の通過抵抗をマノメーターにより測定した。
判定基準:330Pa以下を○、330Paを超えるものを×とした。
〔捕集効率(%)〕
平均粒子径0.3μのジオクチルフタレート(DOP)粒子を発生させて濾材を通過させ、濾材の上流側と下流側のDOP粒子の個数比をレーザ・パーティクルカウンターで測定し、捕集効率を算出した。
判定基準:99.97%以上を○、99.97%未満を×とした。
〔自己発塵〕
捕集効率を測定する装置の上流側にULPA濾紙(超高性能濾紙)を設置して、流れる空気を完全に清浄なものとし、評価する濾材にこの空気を通過させる。
濾材を通過した空気をレーザ・パーティクルカウンターで粒径別に測定した。
判定基準:1立方フィート当たり、粒径1μ以上のパーティクルが1000個未満を○、1000個以上を×とした。
【0034】
実施例1,2、比較例1,2
表1に示す濾材構成で2層積層構造又は3層積層構造の濾材を製造し、得られた濾材を電気炉にて500℃で500時間加熱する前処理を施した後、各評価を行い、結果を表1に示した。
【0035】
【表1】
【0036】
表1より、本発明の濾材は、高耐熱性フィルタ性能に優れることがわかる。
【0037】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、400℃を超える高温雰囲気においても、自己発塵の問題なく、高い捕集効率で使用することができ、高清浄空気を長期に亘り安定に創り出すことができる高温用エアフィルタ用濾材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高温用エアフィルタ用濾材の実施の形態を示す模式図である。
【符号の説明】
1 シリカ濾紙
2,3 シリカクロス
Claims (4)
- 極細シリカ繊維を主体繊維として構成された濾紙と、この濾紙の少なくとも一方の面に積層された、シリカ繊維を主体として構成された織布とを備えた高温用エアフィルタ用濾材において、
該濾紙は、平均繊維径が0.5〜0.7μmの極細シリカ繊維のみで構成された、目付が90〜110g/m 2 のものであり、
該織布は、平均繊維径が15〜30μmのシリカ繊維のみで構成された、目付が400〜600g/m 2 のものであることを特徴とする高温用エアフィルタ用濾材。 - 請求項1において、該濾紙の両面に前記織布が積層されていることを特徴とする高温用エアフィルタ用濾材。
- 請求項1において、前記織布が、前記濾紙の両面のうち、通風方向下流側の面のみに積層されていることを特徴とする高温用エアフィルタ用濾材。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、該濾紙は湿式抄造により製造され、結合剤を含まないことを特徴とする高温用エアフィルタ用濾材。
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