JP4551528B2 - 二重共鳴吸収顕微鏡 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、二重共鳴吸収過程を用いて超解像性を実現する二重共鳴吸収顕微鏡に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、レーザー技術や電子画像技術をはじめとする周辺技術の進歩にともない、様々なタイプの高性能かつ多機能な顕微鏡が開発されてきている。本願発明の発明者も、その一つとして、複数波長の光を試料に照明することによって発生する二重共鳴吸収過程を用いて、得られる画像のコントラスト制御および試料の化学分析を可能とする顕微鏡(以下、二重共鳴吸収顕微鏡と呼ぶ)をすでに提案している(特願平6−329165参照)。
【0003】
この二重共鳴吸収顕微鏡では、二重共鳴吸収過程を用いて特定の分子を選択し、特定の光学遷移に起因する吸収および蛍光を観測することができる。その原理を説明すると、まず、基底状態(S0状態:図1)の試料分子(つまり、試料を構成する分子)が持つ価電子軌道の電子を、レーザー光などの共鳴波長λ1光により第一電子励起状態へ励起させ(S1状態:図2)、続いて共鳴波長λ2光により第二電子励起状態またはさらに高位の励起状態へ励起させる(S2状態:図3)。分子は、この励起状態から蛍光あるいは燐光を発光したりして基底状態に戻る(図4)。そして、図2に示した吸収や図4に示した蛍光や燐光の発光を用いて吸収像や発光像を観察する。
【0004】
S1状態への励起過程においては、単位体積内のS1状態の分子数は照射する光の強度が増加するにしたがって増加する。線吸収係数は、分子一個当たりの吸収断面積と単位体積当たりの分子数の積で与えられるので、S2状態への励起過程においては続いて照射する共鳴波長λ2に対する線吸収係数は最初に照射した共鳴波長λ1の光の強度に依存する。すなわち、共鳴波長λ2(以下、波長λ2と略称)に対する線吸収係数は共鳴波長λ1(以下、波長λ1と略称)の光の強度で制御できる。このことは、波長λ1および波長λ2の2波長の光で試料を照射し、波長λ2による透過像を撮影すれば、透過像のコントラストを波長λ1の光で完全に制御できることを示している。また、S2状態からの蛍光または燐光による脱励起過程が可能である場合には、その発光強度はS1状態にある分子数に比例する。したがって、蛍光顕微鏡として利用する場合にも画像コントラストの制御が可能となる。
【0005】
また、この二重共鳴吸収顕微鏡は、コントラストの制御のみならず、化学分析も可能にする。図1に示される最外穀価電子軌道は個々の分子に固有なエネルギー準位をもつので、波長λ1は分子によって異なる。同時に波長λ2も分子固有のものとなる。単一波長で照明・観察を行う従来の顕微鏡においても、ある程度は特定の分子の吸収像あるいは蛍光像を観察することが可能ではあるが、一般にはいくつかの分子の吸収帯の波長領域は重複するため、試料の化学組成の正確な同定までは不可能である。これに対し、二重共鳴吸収顕微鏡では波長λ1および波長λ2の2波長により吸収あるいは発光する分子を限定するので、従来技術よりも正確な試料の化学組成の同定が可能となる。また、価電子を励起する場合、分子軸に対して特定の電場ベクトルを持つ光のみが強く吸収されるので、波長λ1および波長λ2の偏光方向を決めて、吸収像または蛍光像を撮影すれば、同じ分子でも配向方向の同定をも行うことができる。
【0006】
本願発明の発明者はさらに、回折限界を越える高い空間分解能の二重共鳴吸収顕微鏡をも提案している(特願平8−302232参照)。二重共鳴吸収過程については、図5に例示したようにS2状態からの蛍光が極めて弱くなるある種の分子が存在する。このような光学的性質を持つ分子に対しては、以下のような極めて興味深い現象が起きる。図6は、図5と同じく二重共鳴吸収過程の概念図であるが、横紬にX軸を設けて空間的距離の広がりを表現しており、波長λ1光および波長λ2光が照射されている空間領域A1(=蛍光抑制領域)と、波長λ1光のみが照射されて波長λ2光が照射されていない空間領域A0(=蛍光領域)について示している。空間領域A0では波長λ1光による励起によってS1状態の分子が多数生成される。このとき空間領域A0からは波長λ3で発光する蛍光が見られる。しかし空間領域A1では、波長λ2光が照射されるので、S1状態の分子が即座に高位のS2状態へと励起され、S1状態の分子は存在しなくなる。このため空間領域A1においては、波長λ3の蛍光は全く発生せず、しかもS2状態からの蛍光はもともとないので、完全に蛍光自体が抑制されることとなる。すなわち蛍光が発生するのは空間領域A0のみとなる。このような現象の発生が数種類の分子において確認されている。
【0007】
したがって、従来の走査型レーザー顕微鏡などでは、レーザー光を集光して観察試料上に形成されるマイクロビームのサイズが集光レンズの開口数と波長による回折限界で決まるので、それ以上の空間分解能が原理的に期待できないにの対し、図6で示した現象によれば波長λ1光と波長λ2光を空間的に一部分重ね合わせることで、波長λ2光の照射で蛍光領域が抑制されるため、たとえば波長λ1光の照射領域に着目すると、蛍光領域は集光レンズの開口数と波長とで決まるビームのサイズよりも狭くなっており、実質的に空間分解能の向上が図られている。
本願発明者による二重共鳴吸収顕微鏡(特願平8−302232参照)は、この原理を用いて、回折限界を越える超解像顕微鏡を実現しているのである。
【0008】
そして本願発明の発明者は、この二重共鳴吸収顕微鏡の超解像性をさらに高めるべく、その機能を十分に活かすための試料の調整や波長λ1光・波長λ2光の試料への照射タイミングなどをもすでに提案している(特願平9−255444)。より具体的には、試料を染色分子により染色する。この染色分子として、基底状態を含め少なくとも3つの量子状態(S0状態,S1状態,S2状態・・・)を有し、且つS1状態を除く高位の量子状態から基底状態へ脱励起するときの遷移において蛍光による緩和過程よりも熱緩和過程が支配的である各種分子(以下、蛍光ラベラー分子と呼ぶ)を用いるのである。このような蛍光ラベラー分子と生化学的な染色技術を施した生体分子とを化学結合させてなる試料に、波長λ1光を照射して蛍光ラベラー分子をS1状態に励起させ、続いて即座に波長λ2光を照射して蛍光ラベラー分子をより高位の量子準位に励起させることで、S1状態からの蛍光を効果的に抑制できるようになる。この際に、上述したような空間的な蛍光領域の人為的な抑制を行うことにより、空間分解能のさらなる向上が実現される。
【0009】
上記の蛍光ラベラー分子の光学的性質は、以下のように量子化学的な見地から説明できる。一般に、分子はそれを構成する各原子のσまたはπ結合によって結ばれている。言い換えると、分子の分子軌道はσ分子軌道またはπ分子軌道をもっていて、これらの分子軌道に存在する電子が各原子を結合する重要な役割を担っている。そのなかでも、σ分子軌道の電子は、各原子を強く結合し、分子の骨格である分子内の原子間距離を決める。これに対して、π分子軌道の電子は、各原子の結合にほとんど寄与しないで、むしろ分子全体に極めて弱い力で束縛される。
【0010】
多くの場合、σ分子軌道にいる電子を光で励起させると、分子の原子間隔が大きく変化し、分子の解離を含む大きな構造変化が起こる。その結果として、原子の運動エネルギーや構造変化するために光が分子に与えたエネルギーのほとんどが熱エネルギーに形を変える。したがって、励起エネルギーは蛍光という光の形態で消費されない。また、分子の構造変化は極めて高速におこるので(たとえばピコ秒より短い)、その過程で仮に蛍光が起きても極めて蛍光寿命が短い。しかしそれに対して、π分子軌道の電子が励起しても、分子の構造自体はほとんど変化せず、高位の量子的な離散準位に長時間とどまり、ナノ秒のオーダーで蛍光を放出して脱励起する性質を持つ。
【0011】
量子化学よれば、分子がπ分子軌道を持つことと、二重結合を持つこととは同等であり、用いる蛍光ラベラー分子には、二重結合を豊富に持つ分子を選定することが必要条件となる。そして、二重結合を持つ分子でもベンゼンやビラジンなどの6員環分子においては、S2状態からの蛍光が極めて弱いことが確かめられている(例えば、M..Fujii et.al., Chem. Phys. Lett. 171 (1990) 341)。したがって、ベンゼンやビラジンなどの6員環分子を含む分子を蛍光ラベラー分子として選定すればS1状態からの蛍光寿命が長くなり、しかも光照射によりS1状態からS2状態に励起させることで分子からの蛍光を容易に抑制でき、上述の二重共鳴吸収顕微鏡の超解像性を効果的に利用することができるようになる。
【0012】
すなわち、これらの蛍光ラベラー分子により試料を染色して観察を行えば、高空間分解能の蛍光像を取得することができるだけでなく、その蛍光ラベラー分子の側鎖の化学基を調整することにより生体試料の特定の化学組織のみを選択的に染色でき、試料の詳細な化学組成までも分析可能となる。
【0013】
一般に、二重共鳴吸収過程は二つの光の波長や偏光状態等が特定の条件を満たす場合のみに起こるので、これを用いることで非常に詳細な分子の構造を知ることが可能となる。すなわち、光の偏光方向と分子の配向方向とは強い相関関係があり、二波長光それぞれの偏光方向と分子の配向方向とが特定の角度をなすとき二重共鳴吸収過程が強く起こる。したがって、二波長光を試料に照射して、各光の偏光方向を回転することにより、蛍光の消失の程度が変化するので、その様子から観察しようとする組織の空間配向の情報も得られる。さらに、二つの波長の光を調整させることでもこのことが可能である。
【0014】
他方、波長λ1光と波長λ2光の照射タイミングを適当なものに調整することにより(特願平9−255444参照)、蛍光像のS/Nを改善し、且つ蛍光抑制をさらに効果的に起こすことも可能となっている。
【0015】
また、本願発明の発明者により、波長λ1光と波長λ2光の照射タイミングのさらなる工夫により、S/Nおよび蛍光抑制のさらなる向上を実現することも提案されている(特願平10―97924参照)
ところで、前述した波長λ1光の照射領域の一部分への波長λ2光の照射領域の重ね合わせは、波長λ2光を中空ビーム化して、つまり中央部(軸近傍領域)がゼロ強度であり、且つ軸対象な強度分布を有する中空ビーム光にして、波長λ1光の一部分と空間的に重ね合わせ、試料上に集光することで実現できる。図7は、この重合せおよびそれによる蛍光抑制を例示した概念図である。波長λ2光は位相板により中空ビーム化されとり、この中空ビーム化された波長λ2光と波長λ1光の重ね合わせにより、波長λ2光の強度がゼロとなる光軸近傍の領域以外では蛍光は抑制され、波長λ1光の広がりよりも狭い領域に存在する蛍光ラベラー分子(または試料分子)の蛍光のみが観察される。その結果、超解像性が発現する。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
さて、以上のように本願発明の発明者によってこれまで開発されてきた二重共鳴吸収顕微鏡は、その超解像性と分析能力において際立った有用性と技術的優位性を示しているものの、未だに以下に示すような改良すべき点が残されているのが実情である。なおここからは、試料分子(=試料を構成する分子)をS0状態からS1状態へ励起させる波長λ1光をポンプ光、S1状態の分子をS2状態へ励起させる波長λ2光をイレース光と呼ぶこととする。また、S0状態からS1状態への励起はS0→S1励起、S1状態からS2状態への励起はS1→S2励起と略称する。また、超解像性の実現をより効果的なものとすべく、蛍光ラベラー分子を用いて試料を染色する場合には、試料分子とはこの蛍光ラベラー分子のこととなる。
【0017】
まず第1に、ポンプ光およびイレース光の照射領域の一部重合せによる蛍光領域の抑制によって理論通りの超解像度を実現するためには、中空イレース光が期待どおりのの中空ビーム形状となっている必要がある。この中空ビーム形状の乱れ、つまり強度分布の乱れはそのまま顕微鏡画像の劣化を招いてしまう。
【0018】
イレース光の光源としてはレーザーがしばしば用いられるが、イレース光を期待通りの中空ビームに成形するためには、その大前提としてレーザ光のビームプロファイルが整っている必要がある。すなわち、ビームの強度分布が光軸軸対称であることが必要となる。しかしながら、たとえば色素レーザーでは、そのビーム形状が三角形に近く、強度分布も一様でないことから、期待する中空ビームを得ることが難しい場合がある。このため、試料上で集光したビーム形状が崩れたビームパターンとなり、顕微鏡画像の解像度劣化や画質低下の原因となっている。
【0019】
また、輪帯アパーチャーを介して中空イレース光を取得することが提案されてはいる。しかしながら、輪体アパーチャーを利用すると、光紬合わせや焦点合わせなどが難しく、良好な画像を得るまでの調整時間や手間が非常に多くなり、且つそのための熟達技能も必要となる。実用上好ましいものではない。
【0020】
さらにまた、中空イレース光として理想的なビームプロファイルを持つ一次のベッセルビームも提案されてはいる。しかしながら、実際にはレーザー光は、そのビーム面内で完全に位相面が揃っているわけではなく、ビーム中央部から外れるに従って位相面が乱れてくるため、一次ベッセルビームを形成する際、この位相面の乱れに起因して、電場の相殺が不完全となり、ビーム中央部の強度が完全にゼロとならない不完全な一次ベッセルビームができてしまう。これでは二重共鳴吸収顕微鏡にとって理想的な中空イレース光とはいえない。
【0021】
また第2には、二重共鳴吸収顕微鏡においても、他の顕微鏡と同様に、当然のことながらより良好な操作性や保守性が求められている。前述した二重共鳴吸収顕微鏡の技術は、色素レーザーやオプティカルバラメトリックオシレータ(OPO)等の波長可変レーザーを光源として用いることにより、多種の蛍光ラベラー分子の共鳴条件に対して適用可能となる。しかし、従来の色素レーザーは、色素の劣化による光量の低下および頻繁で煩雑な色素交換が伴い、実用上好ましいものではない。またOPOは、便利ではあるが、非常に精密な光学システムであるために湿度や温度の管理が厳しく、また使用する非線形光学結晶は寿命が短い上に高価である。システム全体としても高価なので、ユーザーにとっては保守管理の負担の大きい光源であるといえる。
【0022】
この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、従来の二重共鳴吸収顕微鏡を改良し、超解像性をより効果的に発現することができ、且つ、光源に対する操作性および保守性が優れたものとなっている、新しい二重共鳴吸収顕微鏡を提供することを課題としている。
【0023】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、試料分子を基底状態から第一電子励起状態へ励起させる波長λ1のポンプ光の光源と、第一電子励起状態の試料分子を第二電子励起状態またはより高い励起状態へ励起させる波長λ2のイレース光の光源と、ポンプ光およびイレース光の照射領域を一部分重ね合わせる重ね手段とを備えており、重ね手段を介してポンプ光およびイレース光を試料に照射することにより、第一電子励起状態の試料分子が基底状態へ脱励起する際の発光領域を一部分抑制する二重共鳴吸収顕微鏡において、イレース光光源がコヒーレント光源であり、このコヒーレント光源からのイレース光から、そのビーム面内における位相の乱れがλ 2 /2以下となっている領域のみを取り出すビーム領域限定手段が備えられており、このビーム領域限定手段により、イレース光はそのビーム面内における位相の乱れがλ 2 /2以下であるものとされていることを特徴とする二重共鳴吸収顕微鏡(請求項1)を提供する。
【0024】
また、この出願の発明は、上記の二重共鳴吸収顕微鏡において、試料が、基底状態を含め少なくとも三つの電子状態を有する蛍光ラベラー分子により染色されており、前記試料分子はこの蛍光ラベラー分子であること(請求項2)を一態様としている。さらには、前記ビーム領域限定手段を通過したイレース光に対してそのビーム断面内において空間的位相分布を与える位相変調素子が備えられていること(請求項3)や、この位相変調素子が、前記ビーム領域限定手段を通過したイレース光の光軸を中心とした光軸周りにπの位相差を与えるもの、あるいは、前記ビーム領域限定手段を通過したイレース光の断面内において、同心円上に空間的位相分布を与えるもの、前記ビーム領域限定手段を通過したイレース光の断面内において、円形領域とこの円形領域の外周の円環領域にπの位相差を有する空間的位相分布を与えるものであること(請求項4)(請求項5)(請求項6)や、これらの位相変調素子が、イレース光に対してオプティカルフラットな平行基板に、所定の厚み分布をもつ光学薄膜が被膜されてなる、あるいは、イレース光に対してオプティカルフラットな平行基板に、エッチングが施されてなること(請求項7)(請求項8)もその態様として提供する。さらにまた、光電子変換面、マイクロチャネルプレート、フォスファースクリーン、光ファイバーカップラー、およびCCD検出器から構成される蛍光検出手投が備えられていること(請求項9)や、この蛍光検出手投は、蛍光信号からポンプ光またはイレース光もしくはその両方を除去する分光素子または波長分散素子を光電子変換面の前方に有していること(請求項10)や、試料面から前記蛍光検出手段までの光路上にスリットまたはピンホールが備えられていること(請求項11)や、前記スリットまたはピンホールは、光電変換面の直前に備えられていること(請求項12)をもその態様として提供する。さらにまた、前記光電子変換面、マイクロチャネルプレート、フォスファースクリーン、およびCCD検出器それぞれの電極への印加電圧を時間制御する時間制御手段が備えられていること(請求項13)や、この時間制御手段は、スイッチングにより印加電圧を時間制御し、そのスイッチング応答時間が試料分子の蛍光時間より短く設定されていること、あるいは、電圧印加時間を試料分子の蛍光時間よりも長くなるように制御すること(請求項14)(請求項15)をもその態様として提供する。さらにまた、蛍光信号からポンプ光またはイレース光もしくはその両方を除去する分光素子または波長分散素子が備えられていること(請求項16)をもその一態様として提供する。さらにまた、イレース光のパルス幅がポンプ光のパルス幅よりも長く設定されており、且つポンプ光の照射時間がイレース光の照射時間と完全にオーバーラップするように設定されていること(請求項17)や、イレース光のパルス幅がポンプ光のパルス幅よりも長くなるように、イレース光のパルス幅を広げるパルス幅調整手段が備えられていること(請求項18)や、このパルス幅調整手段として、分光を行うハーフミラーと、このハーフミラーを光路上に含むループ光路を形成する反射光学系とから構成されるパルスストレッチャー光学系が備えられていること(請求項19)や、ポンプ光の照射時間がイレース光の照射時間と完全にオーパーラップするように、イレース光およびポンプ光の試料への到達時間を調整する照射タイミング調整手段が備えられていること(請求項20)や、この照射タイミング調整手段は、ポンプ光およびイレース光の光路差を調整することにより、ポンプ光およびイレース光の試料への到達時間を調整すること、あるいは、請ポンプ光光源およびイレース光光源がそれぞれ独立したパルスレーザーである場合において、各パルスレーザーのQスイッチを調整することにより、ポンプ光およびイレース光の試料への到達時間を調整すること(請求項21)(請求項22)をもその態様として提供する。さらにまた、ポンプ光およびイレース光に対して透明な基板に、ポンプ光およびイレース光のいずれでも励起可能な分子が均一に塗布されてなる標準試料が用いられ、この標準試料にポンプ光およびイレース光を同時に照射したときの前記分子からの発光の面積が最小、発光の輝度が最大となるように、ポンプ光およびイレース光の光軸が調整されたものとなっていること(請求項23)をもその一態様として提供する。あらにまた、少なくともナノメートルオーダーでのポンプ光およびイレース光の走査あるいは試料の走査を行う機構を有していること(請求項24)や、試料の走査機構として、電磁モータまたはピエゾ圧電素子により二次元移動可能とされた試料ステージ機構が備えられていること(請求項25)や、ポンプ光およびイレース光の走査機構として、揺動ミラー機構が備えられてこと(請求項26)をもその態様としている。
【0025】
この出願の発明では、少なくとも二つ以上の量子準位を持つ色素分子を分散させてなる固体レーザー媒質、およびこの固体レーザー媒質を励起させる短パルスレーザーを有している固体色素レーザーをも用いることができる。この固体色素レーザーにおいて、固体レーザー媒質が、前記色素分子が分散された無機溶液または有機溶液に対してゾルゲル法を用いることにより生成されたものや、固体レーザー媒質は、前記色素分子が分散された固体有機材料に対して溶融加熱法を用いることにより生成されたものや、色素分子が二重結合またはベンゼン環を有する分子であるものや、その色素分子が、
2,2"-Dimethyl-p-terphenyl:
P-terphenyl(PTP):
3,3',2",3"-Tetramethyl-P-quaterphenyl:
2,2'''-Dimethyl-P-quaterphenyl:
2-Methyl-5-t-butyl-p-quaterphenyl:
2-(4-Biphenylyl)-5-(4-t-butylphenyl)-1,3,4-oxiazol(BPBD-365):
2-(4-Biphenylyl)-phenyl-1,3,4-oxadiazol:
2,5,2''''5,''''-Tetramethyl-p-quinquephenyl:
3,5,3''''5,''''-Tetra-t-butyl-p-quinquephenyl:
2,5-Diphenyloxazol:
2,5-Diphenylfuran:
PQP(p-Quanterphenyl):
2,5-Bis-(4-biphenylyl)-1,3,4-oxadiazol:
p-Quaterphenyl-4-4'''-disulfonicacid Disodiumsalt:
p-Quaterphenyl-4-4'''-disulfonicacid Dipotassiumsalt:
4,4'''-Bis-(2-butyloctyloxy)-p-quanterphenyl:
3,5,3''''5,''''-Tetra-t-butyl-p-sexiphenyl:
2-(1-Naphthyl)-5-phenyloxazol:
2-(4-Biphenylyl)-6-phenylbenzoxazotetrasulfonicacid Potassium Salt:
2-(4-Biphenylyl)-6-phenylbenzoxazol-1,3:
4,4'-Diphenylstilbene:
[1,1'-Biphenyl]-4-sulfonic acid, 4,4"-1,2-ethene-diylbis-,dipotassium salt:
2,5-Bis-(4-biphenylyl)-oxazol:
2,2'-([1,1'-Biphenyl]-4,4'-diyldi-2,1-ethenediyl)-bis-benzenesulfonic acid Disodium Salt:
7-Amino-4-methylcarbostyryl:
1,4-Di[2-(5-phenyloxazoly)]benzene:
7-Hydroxy-4-methylcoumarin:
p-Bis(o-methylstyryl)-benzene:
Benzofuran,2,2'-[1,1'-biphenyl]-4,4'-diyl-bis-tetrasulfonic-acid:
7-Dimethylamino-4-methylquinolom-2:
7-Amino-4-methylcoumarin:
2-(p-Dimethylaminostyryl)-pyridylmethyl Iodide:
7-Diethylaminocoumarun:
7-Diethylamino-4-methylcoumarin:
2,3,5,6-1H,4H-Tetrahydro-8-methylqinolizino-[9,9a,1-gh]-coumarin:
7-Diethylamino-4-trifluormethylcoumarin:
7-Dimethylamino-4-trifluormethylcoumarin:
7-Amino-4-trifluormethylcoumarin:
2,3,5,6-1H,4H-Tetrahydroquinolizino-[9,9a,1-gh]-coumarin:
7-Ethylamino-6-methyl-4-trifluormethylcoumarin:
7-Ethylamino-4-trifluormethylcoumarin:
2,3,5,6-1H,4H-Tetrahydro-9-carboethoxyquinolizino-[9,9a,1-gh]coumarin:
2,3,5,6-1H,4H-Tetrahydro-9-(3-pyridyl)-quinolizino-[9,9a,1-gh]coumarin:
3-(2'-N-Methylbenzimidazolyl)-7-n,n-diethylaminocoumarin:
2,3,5,6-1H,4H-Tetrahydro-9-acetylquinolizino-[9,9a,1-gh]-coumarin:
N-Methyl-4-trifluormethylpiperidino-[3,2-g]-coumarin:
2-(p-Dimethylaminostyryl)-benzothiazolylethyl Iodide:
3-(2'-Benzimidazolyl)-7-N,N-diethylaminocoumarin:
Brillantsulfaflavin:
3-(2'-Benzothiazolyl)-7-diethylaminocoumarin:
2,3,5,6-1H,4H-Tetrahydro-8-trifluormethylquinolizino-[9,9a,1-gh]coumarin:
3,3'-Diethyloxacarbocyanine Iodide:
3,3'-Dimethyl-9-ethylthiacarbocyanine Iodide:
Disodium Fluorescein (Uranin):
9-(o-Carboxyphenyl)-2,7-dichloro-6-hydroxy-3H-xanthen-3-on2,7-Dichlorofluorescien・Fluorescein 548:
Fluorol 555 (Fluorol 7GA):
o-(6-Amino-3-imino-3H-xanthen-9-yl)-benzonic acid (Rhodamine 560):
BenzoicAcid,2-[6-(ethylamino)-3-(ethylimino)-2,7-dimethyl-3H-xanthen9-yl],perchlorate(Rhodamine 575):
Benzonic Acid,2-[6-(ethylamino)-3-(ethylimino)-2,7-dimethyl-3X-xanthen-9-yl]- ethylester,monohydrochloride (Rhodamine 590):
1,3'-Diethyl-4,2'-quinolyloxacarbocyanine Iodide:
1,1'-Diethyl-2,2'-carbocyanine Iodid:
2-[6-(diethylamino)-3-(diethylimino)-3H-xanthen-9-yl] benzonic acid(Rhodamine 610):
Ethanaminium,N-[(6-diethylamino)-9-(2,4-disulfophenyl)-3H-xanthen-3-ylidene]-N- ethylhydroxid,inner salt,sodium salt:
Malachit Green:
3,3'-Diethylthiacarbocyanine Iodide:
1,3'-Diethyl-4,2'-quinolylthiacarbocyanine Iodide:
8-(2-Carboxyphenyl)-2,3,5,6,11,12,14,15-octahydro-1H,4H,10H,13H-diquinolizino[9,9a,1-bc:9',9a',1-hi]xanthylium Perchlorate(Rhodamine640):
4-Dicyanmethylene-2-methyl-6-(p-dimethylaminostyryl)-4H-pyran:
3,3'-Diethyloxadicarbocyanine Iodide:
8-(2,4-Disulfophenyl)-2,3,5,6,11,12,14,15-octahydro-1H,4H,10H,13H-diquinolizino [9,9a,1-bc:9',1-hi]xanthene (Sulforhodamine 640):
5,9-Diaminobenzo[a]phenoxazonium Perchorate:
9-Diethylamino-5H-benzo(a)phenoxazin-5-one:
5-Amino-9-diethylimino(a)phenoxazonium Perchlorate:
3-Ethylamino-7-ethylimino-2,8-dimethylphenoxazin-5-ium Perchorate:
8-(Trifluoromethyl)-2,3,5,6,11,12,14,15-octahydro-1H,4H,10H,13H-diquinolizino[9,9a,1-bc:
9',9a,1-hi]xanthylium Perchlorate:
1-Ethyl-2-(4-(p-Dimethylaminophenyl)-1,3-butadienyl)-pyridinium Perchlorate:
Carbazine 122:
9-Ethylamino-5-ethylimino-10-methyl-5H-benzo(a)phenoxazoniumPerchlorate:
3-Diethylamino-7-diethyliminophenoxazonium Perchlorate:
3-Diethylthiadicarbocyanine Iodide:
Oxazine 750:
1-Ethyl-4-(4-(p-Dimethylaminophenyl)-1,3-butadienyl)-pyridininum Perchlorate:
1,1',3,3,3',3'-Hexamethylindodicarbocyanine Iodide:
1,1'-Diethyl-4,4'-carbocyanine Iodide:
2-(4-(p-Dimethylaminophenyl)-1,3-butadienyl)-1,3,3-trimethyl-3H-indoliumPerchlorate:
2-(4-(p-Dimethylaminophenyl)-1,3-butadienyl)-3-ethylbenzothoazolium Perchlorate:
1,1'-Diethyl-2,2'-dicarbocyanine Iodide:
1-Ethyl-4-(4-(9-(2,3,6,7-tetrahydro-1H,5H-benzo(i,j)-chinolinozinium))-1,3-buta dienyl)-pyridinium Perchlorate:
3,3'-DimethyloxatricarbocyanineIodide:
1-Ethyl-4-(p-Dimethylaminophenyl)-1,3-buta dienyl)-quinolinium Perchlorate:
8-Cyano-2,3,5,6,11,12,14,15-octahydro-1H,4H,10H,13H-diquinolizino[9,9a,1-bc:9a',1-hi]xanthylium Perchlorate (Rhodamine800]:
2-(6-(4-Dimethylaminophenyl)-2,4-neopentylene-1,3,5)-3-methylbenzothiazoliumPerchlorate:
1,1',3,3,3',3'-Hexamethylindotricarbocyanine Iodide:
IR125 :
3,3'-Diethylthiatricarbocyanine Iodide :
IR144 :
2-(6-(9-(2,3,6,7,-Tetrahydro-1H,5H-benzo(i,j)-chinolizinium))-2,4-neopentylene-1,3,5-hexatrienyl)-3-methyllbenzothiazolium Perchlorate:
3,3'-Diethyl-9,11-neopentylenethiatricarbocyanine Iodide:
1,1',3,3,3',3'-Hexamethyl-4,4',5,5'-dibenzo-2,2'-indotricarbocyanine Iodide:
3,3'-Diethyl-4,4',5,5'-dibenzothiatricarbocyanine Iodide:
1,2'-Diethyl-4,4'-dicarbocyanine Iodide:
IR140:
2-(8-(4-p-Dimethyhlaminophenyl)-2,4-neopentylene-1,3,5,7-octatetraenyl)-3-methylbenzothiazolium Perchlorate:
IR132 :
2-(8-(9-(2,3,6,7-Tetrahydro-1H,5H-benzo(i,j)chinolizinium))-2,4-neopentylene-1,3,5,7-octatetraenyl)-3-methylbenzothiazolium Perchlorate:
IR26:
IR 5
のうちのいずれかであるものや、短パルスレーザーからのパルスレーザー光が10nsec以下のパルス幅を有しているものや、光学系を変更することなく固体レーザー媒質を交換可能に構成されているものや、レーザー発振波長を制御するためのオプティカルグレーティングが備えられているものや、励起光とプリズムの空間的位置制御による波長走査が可能とされているものを用いることができる。
【0026】
そして、この出願の発明では、上記の二重共鳴吸収顕微鏡において、上記の固体色素レーザーが、イレース光光源またはポンプ光光源もしくはその両方として備えられているものも使用することができる。
【0027】
【0028】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴を持つものであり、ポンプ光光源、イレース光光源、および重ね手段を基本構成として備え持つ二重共鳴吸収顕微鏡において、超解像性をより効果的に発現させるべく、中空ビーム形成、蛍光信号検出、ポンプ光・イレース光照射について改善している。また、ポンプ光光源およびイレース光光源としてレーザーを用い、レーザー走査型顕微鏡の構成態様とした場合におけるレーザー走査についても改善している。またさらに、色素レーザーについても顕微鏡に適した光源として有用なものを実現しており、この色素レーザーを用いることで二重共鳴吸収顕微鏡の光源に関する機能性や操作性をより一層向上させることができる。以下に、[中空ビーム形成][蛍光信号検出][ポンプ光・イレース光照射][レーザー走査][色素レーザー]として説明する。
【0029】
[中空ビーム形成]
この出願の発明の二重共鳴吸収顕微鏡は、超解像性を発現させるのに必要となるイレース光の中空ビーム化を、イレース光光源としてコヒーレント光源を用い、このコヒーレント光源からのイレース光としてのコヒーレント光をそのドーム面内での位相の乱れがλ2/2以下になるものとすることにより、イレース光光源の位相の乱れとそれが引き起こすイレース光のビームプロファイルの歪みを解消して、実現している。
【0030】
光学の回折理論によれば、無収差の光学系で平行レーザー光を集光したときの強度プロファイルI(x,y,z)は次式で与えられる。
【0031】
【数1】
【0032】
この数1において、
f=光学系の焦点距離
λ=集光する光の波長
点(x,y,z)=観測点
(ξ,ζ,η)=積分変数
積分領域=光学系瞳面の全体
φ=瞳面上の光軸を中心とした角度
である。
【0033】
この数1で、瞳面が軸対称の境界条件をもち、m=1とすれば集光した一次のベッセルビームの強度プロファイルであり、また、m=0とすれば通常のレーザービームの集光した強度プロファイルに対応する。図8に例示したように、一次のベッセルビームは、光紬を中心にして1周すると位相が2π変化する。理論上は、光軸に関して軸対称な点ではお互いの位相がπずれることから、軸上では電場が完全に相殺されてゼロとなる。しかし、実際にレーザービームの波面が一様でない場合には相殺が不完全となり、光軸上に電界強度成分が現れるため、一次のベッセルビームにおいてもレーザービームの波面が一様でない場合には、二重共鳴吸収顕微鏡にとって理想的なイレース光とはいえない。特に、レーザービーム面内で、且つ光軸に関して軸対称な点で、位相にλ/2以上の波面の乱れがあると、電場強度の符号が同じになる可能性があることから、理想的な中空ビームの形成が困難となる。
【0034】
したがって、超解像性の発現に適した中空イレース光を形成するためには、少なくともレーザービーム面内での波面の乱れをλ/2以下に限定する必要がある。言い換えると、レーザーなどのコヒーレント光源をイレース光光源として用い、そのコヒーレント光源からのイレース光をそのビーム面内における位相の乱れがλ2/2以下になるものとすることで、ビームプロファイルの歪みが解消され、超解像性の実現に最適な中空ビーム状のイレース光を得ることができるようになる。
【0035】
コヒーレント光源からのイレース光をそのビーム面内における位相の乱れがλ2/2以下となるようにするには、たとえば、コヒーレント光における位相波面の乱れがλ2/2よりも大きい領域を削除し、それ以外の領域のみを取り出せばよい。取り出した領域のビームはイレース光として利用される。このように限定した領域の取出しは、たとえば、幅が調整可能なスリットや径が調整可能なアパーチャーなどを有するビーム領域限定手段を、イレース光の光路上に設けることで実現できる。すなわち、スリットの幅やアパーチャーの径を調整することにより、それを通過するイレース光における必要領域のみを取り出す。調整範囲は、用いるコヒーレント光源によって決まってくる。
【0036】
たとえば、コヒーレント光源として、共振器にガウシアンミラーが用いられているレーザーを用いた場合、ガウシアンミラーは、光軸中心部におけるレーザービームの位相波面は極めて良く揃っているが、中心部から外れるにつれて位相波面の乱れが大きくなるといった光学特性を有しているので、位相波面の乱れたビーム周縁部をカットしてレーザービームの中心部のみを利用する。これにより、ビーム面内における位相の乱れがλ2/2以下になるコヒーレント光が実現され、良好なビームプロファイルを持つイレース光として利用することができる。
【0037】
図9は、上述のようなイレース光を実現する光学系の一例を示した概略図である。この図9の例では、虹彩絞りやピンホールプレートなどのビーム領域限定手段(102)が、コヒーレント光源(101)の出射側に設けられており、虹彩やピンホール径を調整することにより、イレース光からその位相の乱れがλ2/2以下の領域のみを取り出す。
【0038】
図9ではさらに、イレース光の光路上にビーム径拡大用光学素子(103)および位相変調素子(104)が設けられている。この場合、ビーム領域限定手段(102)を通過したイレース光は、ビーム径拡大用光学素子(103)によりそのビーム径が拡大され、さらに位相変調素子(104)によりその位相面が変調される。
【0039】
より具体的には、ビーム径拡大用光学素子(103)としては、たとえばテレスコープを用いることができる。他方、位相変調素子(104)は、イレース光に対してそのビーム断面内において空間的位相分布を与えるものである。このような位相変調素子(104)の一つとしては、たとえば、イレース光に対しその光軸を中心とした光軸周りにπだけ位相差を与える、すなわち光軸に対して軸対称となる点でコヒーレント光の位相をπずらすものを用いることができる。この場合の位相変調素子(104)は、たとえば図10に例示したような位相板とすることができる。この図10に例示した位相板は、光軸の周りを四等分割して、各領域が位相をπ/2ずつずらす構成を有しており、光軸を中心に位相を周回して2πずらす働きをする構成を簡素化したものである。そして、テレスコープなどのビーム径拡大用光学素子(103)によってこの位相板に対して適当なサイズにビーム径が拡大されたイレース光は、位相板を通過することで一次ベッセルビームとなる。この一次ベッセルビームは、上述したようにビーム領域限定手段(102)によってビーム面内における位相の乱れがλ2/2以下となった良好なビームプロファイルのイレース光から生成されたものなので、二重共鳴吸収顕微鏡の超解像性を実現する中空イレース光として最適なものとなっている。
【0040】
なお、この位相変調素子(104)は、たとえば、イレース光に対してオプティカルフラットな平行基板(透明であることも好ましい一態様である)上に、イレース光に対してその光軸を中心とした光軸周りにπだけ位相差を与え得る厚み分布をもつ光学薄膜が被膜されてなるものや、同様な平行基板に、イレース光に対してその光軸を中心とした光軸周りにπだけ位相差を与え得るエッチングが施されてなるものとすることができる。図10の位相板は、そのように各領域毎に異なる厚み分布を持つ光学薄膜が被膜されたあるいはエッチングが施された構造となっている。
【0041】
また、上述した位相変調素子(104)の他にも、たとえば、ビーム領域限定手段(102)を通過したイレース光に対し、その断面内において、同心円上に空間的位相分布を与える位相変調素子(104)や、たとえば図11に例示したように、円形領域とこの円形領域の外周の円環領域にπの位相差を有する空間的位相分布を与える位相変調素子(104)を用いることもできる。この場合でも、二重共鳴吸収顕微鏡に最適な中空ビーム状のイレース光を実現できる。すなわち、内側円内の位相と外側輪帯の部分の位相が反転するため、このビームをレンズで集光すると中央で電場が相殺されて、良好な中空ビームが形成できるのである。なお良好な中空ビーム化には、内側の円の面積と外側の輪帯の面積の比率を調整する必要がある。
【0042】
この場合の位相変調素子(104)は、たとえば、イレース光に対してオプティカルフラットな平行基板(透明であることも好ましい一態様である。)上に、イレース光に対してそのビーム断面内において同心円上に空間的位相分布を与え得る、あるいは円形領域とこの円形領域の外周の円環領域にπの位相差を有する空間的位相分布を与え得る厚み分布をもつ光学薄膜が被膜されてなるもの(たとえば位相板)や、同様な平行基板に、イレース光に対してそのビーム断面内において同心円上に空間的位相分布を与え得る、あるいは円形領域とこの円形領域の外周の円環領域にπの位相差を有する空間的位相分布を与え得るエッチングが施されてなるもの(たとえば位相板)とすることができる。
[蛍光信号検出]
この発明の二重共鳴吸収顕微鏡においては、上記のように極めて良好な中空ビーム形状のイレース光とポンプ光との重ね合わせにより蛍光領域の一部抑制が行われ、超解像性が発現する。しかしながら、この場合、蛍光領域、つまり観察領域はたとえば数10nm以下という非常に狭い範囲に限定されることとなるため、極小の観察領域内に拡散した蛍光分子数は極端に少なくなり、蛍光発光強度が弱くなってしまう。このため、高感度の蛍光検出技術が必要となる。また、試料分子(あるいは蛍光ラベラー分子)によってはポンプ光やイレース光の波長が蛍光帯域に重なる場合があり、ポンプ光やイレース光の迷光が蛍光信号に混入することがある。もちろん他の染色分子以外からの蛍光も混入する場合もある。このため、S/Nの良好な顕微像を得るには、不要な光を蛍光信号から分離する技術も必要となる。
【0043】
そこで、この発明の二重共鳴吸収顕微鏡では、高感度検出および高S/Nを可能とする、二重共鳴吸収顕微鏡に適した蛍光検出手段を使用することが望ましい。図12は、その蛍光検出手段の一例を示したものである。たとえばこの図12に例示した蛍光検出手段は、光電子変換面(201)、マイクロチャネルプレート(202)、フォスファースクリーン(203)、光ファイバーカップラー(204)、およびCCD検出器(205)を有し、いわゆるICCD(I Charge-Coupled Device)カメラを構成している。
【0044】
まず、光(光子)が光電変換面(201)に入射すると、光電変換面(201)は、入射光子数に応じて背面より光電子を高い効率で放出する[光→電子変換]。放出された光電子は電界によりマイクロチャネルプレート(202)に引き込まれる。マイクロチャネルプレート(202)は、数10μm程度のファイバーを束ねてプレート状にしたもであり、各ファイバーの両端面に高電圧が印加されている。光電子がファイバー面に当たると二次電子が放出され、ファイバー面内を衝突する毎に二次電子を発生させるので、マイクロチャネルプレートの出口からは非常に膨大な量の二次電子が放出される。この二次電子はフォスファースクリーン(203)を叩き、蛍光発光させる[電子→光変換]。この時点で、入射した1光子は膨大な光子数に増幅されたことになる。そして、フォスファースクリーン(203)からの増幅光子は、光ファイバーカップラー(204)によってCCD検出器(205)に導かれ、2次元像として検出される。
【0045】
このようなICCDカメラは、入射光子が1つでも検出できるので、極めて高感度な蛍光検出を実現でき、上述したように厳しい蛍光発生条件の二重共鳴吸収顕微鏡に有用である。なお、この蛍光検出手段としてのICCDカメラの構成は、図12に例示したものが基本構成となるが、この他にもリレーレンズなどのレンズ系や結像系などを有する場合があることは言うまでもない。
【0046】
他方、高S/Nを実現するには、ICCDカメラの前方において、蛍光の光路上に分光フィルターなどの分光素子や回折格子などの波長分散素子を設置する。
分光フィルターとしては、たとえばポンプ光およびイレース光や試料分子以外からの蛍光をカットするノッチフィルター、バンドパスフィルタ、シャープカットフィルターなどが可能である。この分光素子または波長分散素子とICCDカメラとからなる蛍光検出手段により、ポンプ光またはイレース光もしくはその両方を蛍光信号から波長分離し、必要な蛍光強度のみを的確に測定することが可能となる。また、回折格子を用いた場合では、直接、レーザー1ショット毎の発光スペクトルを得ることができるので、コンピュータ等の計算機のソフトウェア上でデータ処理を施せば、不要波長光の除去が可能となる。
【0047】
もちろん、必ずしも上記ICCDカメラと分光素子・波長分散素子とを組み合わせた蛍光検出手段を用いる必要はない。たとえば、通常の蛍光検出器の前に分光素子または波長分散素子のみを設けるようにしても、不要波長光の除去は可能である。
【0048】
なお、試料面から蛍光検出手段までの光路上にはスリットまたはピンホールを設置してもよい。この場合、特に光電変換面(201)の直前に設置することが好ましい。
【0049】
さらにまた、光電子変換面(201)、マイクロチャネルプレート(202)、フォスファースクリーン(203)、CCD検出器(205)の電極への印加電圧を時間制御する手段を備えておく態様も可能である。この場合、印加電圧の時間制御は、たとえばon/offスイッチングにより行うことができ、そのスイッチング応答時間は試料分子(または蛍光ラベラー分子)の蛍光時間より短いこと、また電圧印加時間は試料分子(または蛍光ラベラー分子)の蛍光時間より長いことなどの設定が好ましい。
【0050】
[ポンプ光・イレース光照射:パルス幅・照射タイミング調整]
この発明の二重共鳴吸収顕微鏡において、ポンプ光光源およびイレース光光源として色素レーザーを用いる場合、一般に色素レーザーでは、ポンプ光のパルス幅よりも、波長変換されたイレース光のパルス幅の方が若干短くなる。また、光路等の調整が行われないと、ポンプ光とイレース光のパルスが試料面に到達する時刻も異なってしまう。したがって、観察に必要でない領域に関しては、蛍光を極力抑制したいにもかかわらず、イレース光の照射時間の短さや、ポンプ光とイレース光の照射時間のオーバーラップが不完全であるため、蛍光抑制が不十分になってしまう恐れがある。
【0051】
このため、この発明の二重共鳴吸収顕微鏡では、より効果的に蛍光抑制を発現させるべく、ポンプ光およびイレース光のパルス幅を、たとえば図13に示したように設定することが好ましい照射態様である。
【0052】
具体的には、イレース光のパルス幅をポンプ光のそれより長くし、且つ完全にポンプ光の照射時間がイレース光のそれとオーバーラップするように設定する。
これにより、ポンプ光の照射領域の一部にイレース光の照射領域を重ねて、重なった領域におけるS1状態の試料分子を確実にS2状態へ励起させることができ、蛍光抑制効果を向上させることができる。
【0053】
これらの設定を行う具体的態様について説明する。まず、図14は、イレース光のパルス幅がポンプ光のパルス幅よりも長くなるように、イレース光のパルス幅を調整するパルス幅調整手段の一例を示したものである。この図14に例示したパルス幅調整手段は、分光を行う一つのハーフミラー(301)と、このハーフミラー(301)を光路上に含むループ光路を形成する反射光学系としての複数のプリズム(302)とを有するパルスストレッチャー光学系を構成している。この場合、入射光は、まずハーフミラー(301)により第一透過光と第一反射光に分離される。第一反射光は、各プリズム(302)で光路が変更されて、ハーフミラー(301)へ戻り、第二透過光と第二反射光に分離される。第二反射光は第一透過光と同じ光路を通過し、第二透過光は各プリズム(302)を介して同じループ光路を通過してハーフミラー(301)で第三透過光と第三反射光に分離される。このようにしてハーフミラー(301)による分光およびプリズム(302)によるループが繰り返される。したがって、イレース光をこのパルスストレッチャー光学系に入射させることで、ループ光路の分だけ遅延したパルスが次々と発生し、結果的にループ光路を抜け出たパルスの時間幅は等価的に広がることになる。その結果、ポンプ光のそれよりも長いパルス幅のイレース光を容易に生成することができる。
【0054】
また、このようにパルス幅が拡大されたイレース光とポンプ光との照射時間の完全オーバーラップは、両光の試料への到達時間を調整することで可能となる。
この調整は、たとえばポンプ光およびイレース光の光路差の調整により実現できる。すなわち、光は大気中で1nsecに約30cmだけ進むので、その比でポンプ光とイレース光の光路に差を与えれば、これら2つのパルス光が試料表面に到達する時間を任意に調節できる。このような光路調整による照射タイミング調整手段としては、たとえば、直線移動ステージおよびそれに搭載されたプリズムまたはミラーなどからなる遅延光学系を用いることができる。この場合、直線移動ステージを移動させて、プリズムまたはミラーを介した入射光の光路距離を調整することで、両光の到達時間の調整が可能となる。
【0055】
また、ポンプ光とイレース光が、それぞれ独立したパルスレーザー(たとえば2台のNd:YAGパルスレーザー)から発振される場合には、各パルスレーザーのQスイッチ信号を電気的に調整する、つまりQスイッチ信号の発生時間を相対的にずらすことによっても、両光の試料到達時間を調整できる。たとえば、パルスジェネレーターを用い、時間差をもつ二つのトリガーパルスを発生させ、それらを各パルスレーザーに与えることで、Qスイッチを制御できる。
【0056】
[ポンプ光・イレース光照射:光軸調整]
この発明の二重共鳴吸収顕微鏡においては、超解像性を十分に引き出すべく、ポンプ光およびイレース光の光軸を一致させることが望ましい。この光軸アライメントは、実際の試料観察の前に、標準試料を用いて、その標準試料の蛍光像を観察することで可能となる。
【0057】
より具体的には、まず、ポンプ光励起およびイレース光励起のいずれでも蛍光可能な分子を、ポンプ光およびイレース光の両方に対して透明な基板に均一に塗布することにより作成された標準試料を用いる。そして、この標準試料にポンプ光およびイレース光を同時照射して、そのときの蛍光像の面積と輝度を測定する。
もし、ポンプ光とイレース光との重なりが完全であれば、すなわちポンプ光とイレース光の光軸が一致していれば、面積は最小となり、かつ輝度が最大となる。
したがって、この場合の蛍光像面積が最小、輝度が最大となるように光軸調整することで、完全な光軸アライメントが実現できる。
【0058】
なお、蛍光像を撮像する手投が前述のICCDカメラであれば、弱いレーザー光で励起した微弱な蛍光像であっても観察できる。このため、ポンプ光やイレース光の迷光が背景光として蛍光像に混入したとしても、微弱であるので、面積・輝度測定に重要な影響を及ぼすことはなく、精度の高い光軸調整が可能となる。
また、迷光の影響をさらに減少させたければ、前述したように分光素子や波長分散素子を光路上に設ければよい。
【0059】
[レーザー走査]
この発明の二重共鳴吸収顕微鏡は、空間分解能が非常に高く、1画素に対応する観察領域の1辺が100nm以下となり得る。逆に言うと、このような超空間分解能を確実に発現させるには、たとえばこの二重共鳴吸収顕微鏡をレーザー走査型顕微鏡として用いた場合、ポンプ光およびイレース光の試料に対する走査も高精度なものとする必要がある。レーザー走査型顕微鏡では、集光点と試料を相対的に平面移動させて一点毎の蛍光信号を測定し、情報処理技術を組合せて、蛍光信号を二次元画像化している。
【0060】
そこで、この発明の二重共鳴吸収顕微鏡では、そのナノメートルオーダーの空間分解能に対応させるために、ナノメートルオーダーでのポンプ光およびイレース光の走査あるいは試料の移動が可能な機構を有していることが望ましい。ポンプ光・イレース光の走査機構としては、たとえば、ポンプ光・イレース光の光路上のミラーを揺動させることで微細走査を可能とした揺動ミラー機構を用いることができる。また、試料の移動機構としては、たとえば、電磁モータやピエゾ圧電素子(圧電振動子とも呼ぶ)により二次元移動可能とされた試料ステージ機構を用いることができる。もちろん、前述したようにポンプ光とイレース光を同軸にアライメントすることにより、ナノメートルオーダーの微小移動・走査がより確実なものとなる。
【0061】
[色素レーザー]
さて、この出願の発明は、前述したような従来の色素レーザーの問題点を解消すべく、機能性・保守性・経済性に優れた新しい色素レーザーをも提供する。この発明の色素レーザーは、少なくとも二つ以上の量子準位を持つ分子を色素として分散させてなる固体レーザー媒質、およびこの固体レーザー媒質を励起させる短パルスレーザーを有していることを特徴とするものである(以下、固体色素レーザーと呼ぶこととする)。
【0062】
この固体色素レーザーでは、まず、そのレーザー媒質は色素分子を含んだ固体媒質となっているので、従来の色素レーザーの液体媒質とは全くことなる。このため、たとえば、ワンタッチ交換が可能なカートリッジ型の固体色素レーザー媒質が可能となるなど、他の光学系を変更することなく、極めて簡単な媒質交換を実現でき、メンテナンス等の負担を緩和することができる。
【0063】
固体レーザー媒質の生成には、たとえばゾルゲル法を用いることができる。無機溶液または有機溶液に上記色素分子を分散させておき、その溶液をゾルゲル法により固体化させるのである。生成される固体は、破損レーザー強度閾値が極めて高いことから、無機ガラスまたはPMMAなどが好ましい。ゾルゲル法によれば様々な形状の固体を生成できるので、レーザーに適当な形状の固体レーザー媒質を容易に実現することもできる。ゾルゲル法の出発溶液や各種条件などは、無機ガラスまたはPMMAなどのようにレーザー媒質として適した固体を生成できればよいので、特に限定されない。
【0064】
また、PMMAを初めとする固体有機材料を媒質として色素を分散させる場合には、ゾルゲル法だけでなく、溶融加熱法によっても固定レーザー媒質を生成することができる。この場合では、PMMAなどの固体有機材料を溶融加熱し、その中に色素を添加して冷却する。これにより簡単に、優れた量産性で固体レーザー媒質を製造できる。
【0065】
色素分子としては、たとえば二重結合またはベンゼン環を含むものを用いることができる。具体的には、たとえば前記に列挙した分子などを用いることができる。
【0066】
他方、この固体色素レーザーでは、短パルスレーザー励起を利用しているので、二重共鳴吸収顕微鏡におけるポンプ光光源やイレース光光源として用いることで、超解像性の実現に極めて有用なものとなる。具体的には、二重共鳴吸収顕微鏡において蛍光抑制を実現するには、多くの試料分子(特に蛍光ラベラー分子)の蛍光寿命がナノオーダーという極めて短いものであるために、ポンプ光およびイレース光のパルス幅も極短である必要がある。そこで、上記の固体色素レーザーを用いれば、短パルスレーザー励起によって、試料分子(または蛍光ラベラー分子)の蛍光寿命よりも短いナノオーダー(たとえば10nsec以下、さらには1nsec以下)のパルスポンプ光およびパルスイレース光を発振させることができ、蛍光抑制を効果的に実現できるのである。
【0067】
また、ナノオーダの極短パルス幅で固体色素レーザーの色素分子を励起させると、色素分子がレーザー発振に寄与しない3重項準位に留まることがないため、レーザー発振効率を高くすることも可能となる。
【0068】
またさらに、この固体色素レーザーは、従来の液体色素レーザーでは不可能であった、容易な波長変換をも可能ならしめる。たとえば図15に例示したように、周期的な光強度分布をもつ色素励起光(402)を短パルスレーザー(401)から、ハーフミラー(404)や反射ミラー(405)などを介して、固体レーザー媒質(403)の1面に対し異なる2方向から照射すると、色素励起光(402)の波長オーダーの干渉パターン(406)が形成される。この場合、固体レーザー媒質(403)内には周期的な構造をもつ反転分布が形成され、その周期にマッチングした波長で色素励起光(402)の照射面と平行な方向にレーザー光(407)が発振される。したがって、色素励起光(402)の照射方向を変えることによって干渉パターンの周期間隔が異なることから、レーザー光(407)の波長を変化させることが可能となる。すなわち、色素励起光(402)の照射方向を変えるだけで、試料分子(または蛍光ラベラー分子)に合わせた波長λ1のポンプ光や波長λ2のイレース光を発振できるのである。また、短パルスレーザー(401)からのレーザー光を波長λ1のポンプ光として用い、固体レーザー媒質(403)からのレーザー光を波長λ2のイレース光として用いることで、一つの固体色素レーザーのみでポンプ光光源およびイレース光光源の両方を実現することができる。
【0069】
なお、レーザー発振波長はオプティカルグレーティングを用いて制御されるように構成されていてもよい。さらにまた、波長走査を励起光とプリズムの空間的位置制御により行う機構が付加されていてもよい。
【0070】
以上のように、この発明の固体媒質レーザーは、機能性・保守性・経済性に優れたものであり、二重共鳴吸収顕微鏡の各光源として用いた場合、顕微鏡システムとしての保守性・経済性等を向上させるだけでなく、超解像性の実現をより確実、且つより容易ならしめることができる。二重共鳴吸収顕微鏡に極めて有用なレーザーなのである。もちろん、二重共鳴吸収顕微鏡以外の蛍光顕微鏡などにおいても用いることができるのは言うまでもない。
【0071】
この出願の発明は、以上のとおりの特徴を持つものであるが、以下に実施例を示し、さらに具体的に説明する。
【0072】
【実施例】
[実施例1]
図16は、この発明の二重共鳴吸収顕微鏡の一実施例を示した概略図である。
この図16に例示した二重共鳴吸収顕微鏡は、レーザー走査型蛍光顕微鏡を構成しており、ポンプ光およびイレース光を集光してスポット化し、試料(523)をそのスポットと相対的に走査させながら蛍光を検出し、蛍光信号をコンピュータ(501)を用いて画像化するシステムとなっている。
【0073】
このシステム全体は、コンピュータ(501)により制御される。コンピュータ(501)は、レーザーコントローラー(502)を介して、基本光源であるNd:YAGレーザー(505)の発振のタイミングを制御する。それと同時に、試料ステージコントローラー(503)を介して、試料ステージ(524)の移動をレーザー発振のタイミングと同期させながら制御し、試料(523)を二次元走査する。また、同様にレーザー発振と同期させてカメラコントローラー(504)を介して、ICCDカメラ(540)から試料(523)の蛍光信号を取得する。
【0074】
本実施例では、試料(523)は蛍光ラベラー分子により染色されたものとし、その蛍光ラベラー分子としてはローダミン系分子を想定する。図17は、ローダミン系分子の一つであるローダミン6Gの分光データを例示したものである。
この16に例示したように、S0→S1励起に相当する吸収バンドが530nm前後に存在し、S1→S2励起および蛍光発光帯域が600nm前後に存在する。したがって、波長λ1=532nmのポンプ光でS0→S1励起させ、波長λ2=599nmのイレース光でS1→S2励起させることで、二重共鳴吸収過程と誘導放出過程により、599nm以外の波長の蛍光は消失する。
【0075】
波長532nm光は、Nd:YAGレーザー(505)の基本波(波長1064nm)をBBO結晶やKTP結晶などからなる波長変調素子(507)により2倍波変調することで生成できる。波長599nm光は、Ba(NO3)2等のラマンシフター(512)で波長532nmを599nmに変換することで生成できる。波長変調素子(507)からの波長532nm光は、ハーフミラー(508)により分光され、その透過光は、テレスコープ(509)により適正サイズの平行光に拡大されて、ポンプ光として利用される。他方、反射光は、ラマンシフター(512)によって波長599nm光に変調されて、イレース光として利用される。
【0076】
一般にNd:YAGレーザー(505)は、共振器にガウシアンミラーを用いているため、前述したとおり、ビームの光軸近傍の中央部の波面は比較的揃っているが、ビーム周縁部は波面の乱れが多くなり、中央部と比較すると位相差が生じる。このため、ビームプロファイルの良好なレーザー光を取得すべく、Nd:YAGレーザー(505)からのレーザー光をピンホールプレート(506)を通すことで、その光軸近傍の中央部のみを取り出すようにする。このレーザー光ビームを、上記のように波長変調素子(507)やラマンシフター(512)を通すことで、二重共鳴吸収顕微鏡に最適な、波面が揃った良好なポンプ光およびイレース光を生成することができる。
【0077】
このように良好なビームプロファイルをもつイレース光は、テレスコープ(513)で適正サイズの平行光に拡大された後、位相板(514)に入射する。本実施例では、イレース光の波長λ2は599nmであるので、位相板(514)として、図18に例示したようにガラス基板をエッチングしたものを利用した。
ガラスの屈折率は1.46(波長599nm)であるため、イレース光の1/4波長はガラス基板の厚み325.5nmに対応する。したがって、図18に例示したように、位相板(514)の領域を4分割し、隣接する各領域で位相差が1/4波長ずつになるように厚さを設定してエッチングしておけば、イレース光を理想的に中空ビーム化させることができる。すなわち、イレース光を、その光軸と位相板(514)の中心とを一致させるようにして位相板(514)を通過させることで、位相板(514)の中心部分で対向した各領域を通るイレース光の光軸付近領域の位相が反転するため、その光軸付近領域の電場強度はゼロとなる。これにより、蛍光抑制による超解像性の発現に理想的な中空ビーム形状をもつイレース光が得られるのである。このように中空ビーム化されたイレース光は、一次ベッセルビームとなっている。
【0078】
なお、位相板(514)としては、エッチングの代わりに弗化マグネシウム等の薄膜を位相差を与えるものとして基板上に蒸著したものを用いてもよい。また、理想的な中空ビーム・イレース光が得られる限り、ピンホールプレート(506)、ラマンシフター(512)、テレスコープ(513)、位相板(514)の順序は変更してもよいことは言うまでもない。
【0079】
ポンプ光およびイレース光は、各々、反射ミラー(510)および反射ミラー(515)を介してビームコンバイナー(511)に入射され、同軸光となる。
もちろん両光はテレスコープ(509)(513)によって同一サイズとされている。同軸光とされたポンプ光およびイレース光は、一種のテレスコープ光学系であるビームリデューサー(520)によって、集光対物レンズ(522)の開口一杯に両光を取り込むべく、集光対物レンズ(522)の口径と等しいサイズに調整される。そして、集光対物レンズ(522)により試料(523)面上に集光される。
【0080】
本実施例では、前述の図13に例示したように、イレース光のパルス幅をポンプ光のそれよりも長くし、且つ試料(523)に対するポンプ光の照射時間がイレース光のそれと完全にオーバーラップするような照射設定を実現すべく、イレース光に対するパルス幅調整手段としてのパルスストレッチャー光学系(図示していないが、前述の図14に例示した構成を有するもの)が反射ミラー(515)および反射ミラー(516)の間に備えられており、且つ、照射タイミング調整手段として、直線移動ステージ(518)およびそれに搭載されたプリズム(519)からなる遅延光学系が反射ミラー(516)による反射光路側に備えられている。
【0081】
この場合、図14に例示したパルスストレッチャー光学系によって、前述したように、パルス幅がポンプ光のそれよりも長くなるように拡大されたイレース光は、続いて、遅延光学系のプリズム(519)に入射される。このとき、直線移動ステージ(518)を、イレース光のポンプ光に対する遅延距離だけ移動させ、プリズム(519)を介したイレース光の折り返し距離を調整する。遅延距離は、到達時間差1nsecに対して30cmとなる。この遅延距離は、たとえばマイクロメーター等を用いて測定でき、その測定結果を直線移動ステージ(518)の移動距離に反映させればよい。これにより、イレース光のパルス幅をポンプ光のそれよりも長く、且つ完全にポンプ光の照射時間がイレース光のそれとオーバーラップする、蛍光抑制の発現に最適な照射が可能となる。
【0082】
さて、このようにしてポンプ光およびイレース光が試料(523)に照射されると、ポンプ光の照射領域の一部に中空イレース光が重なっていることで、両光が重なり合っている照射領域は蛍光抑制領域A1となり、中空イレース光の中空部分であるポンプ光のみの照射領域は蛍光領域A0となり(図6参照)、この蛍光領域A0(=観察領域)のみからローダミン系分子の蛍光が発生する。
【0083】
この蛍光は、再び集光対物レンズ(522)を通過し、接眼レンズ(538)から分光器(539)へ入射する。分光器(539)は、たとえば図19に例示したように、コリメータ球面鏡(5391)、フォーカシング球面鏡(5392)、および機械的に切り替え可能な回折格子(5393)を基本光学系として備えている。入射スリット(5395)を通過した蛍光は、反射ミラー(5394)でコリメータ球面鏡(5391)に入射され、コリメータ球面鏡(5391)で回折格子(5393)上へ集光される。そして、回折格子(5393)上で波長分解された蛍光は、フォーカシング球面鏡(5392)でICCDカメラ(540)のCCD素子上に結像される。
【0084】
このときのICCDカメラ(540)で得られる信号は、レーザー1ショット当りの蛍光スペクトルである。レーザー1ショットに同期させて試料ステージ(524)を二次元移動させて、そのときの蛍光スペクトルをコンピュータ(501)により積算画像化することで、試料(523)の二次元蛍光像を構築することができる。また、前述したように蛍光信号にポンプ光およびイレース光が混在している場合には、コンピュータ(501)による画像生成において、ポンプ光およびイレース光の波長成分の信号を取り除き、本来の蛍光波長成分のみの信号を用いて画像化すれば、十分な超解像性が発現し、且つ高いS/Nの蛍光像を得ることができる。
【0085】
また、超解像性をさらに向上すべく、分光器(539)の前に、ポンプ光波長をカットするノッチフィルター(536)およびイレース光波長をカットするノッチフィルター(537)を挿入しておいてもよい(図16中では、分光器(539)への接眼レンズ(538)の前に挿入されている)。これにより、分光器(539)に入射する前にポンプ光およびイレース光を蛍光信号から分離して、本来の蛍光成分のみをスペクトル分析することができ、蛍光信号のいわゆる純度を高め、より効果的に超解像性を発現させることができる。もちろん、ノッチフィルター(536)(537)以外にも、必要に応じてバンドパスフィルターやシャープカットフィルターを挿入し、蛍光ラベラー分子からの蛍光以外の不要な波長成分をカットするようにしてもよい。
【0086】
なお、仮に分光器(539)の入射スリット(5395)を開いて、回折格子(5393)のゼロ次光をICCDカメラ(540)のCCD素子上に結像すれば、試料(523)面からの蛍光像そのものとなる。特にこの場合では、S/N向上のため、上記のノッチフィルター(536)(537)や、バンドパスフィルターあるいはシャープカットフィルターを挿入しておくことが好ましい。
【0087】
次に、本実施例の試料移動機構について説明する。前記のようにコンピュータ制御される試料ステージ(524)は、XYZφθ方向への5次元移動ステージとなっている。
【0088】
まず、光軸方向であるZ方向への移動には、たとえば、ピエゾ圧電素子の一種を用いたインチワームステージ機構を用いることができ、ローターリーエンコーダーでその絶対位置をモニターできるように構成されていることが好ましい。
【0089】
一般に、開口数の大きい対物レンズで集光すると、焦点深度は非常に浅くなり、その焦点位置の探索が非常に困難である。たとえば、開口数NAのレンズで集光したときの、焦点からδzだけ離れた点における集光ビームの広がりdは、以下の式で与えられる。
【0090】
【数2】
【0091】
ここで仮にδzが600nmであるとすると、dは約400nm程度となる。
これは、ポンプ光を回折限界まで絞ったサイズと同等であり、基本的には1μm以下の精度で位置制御を行なう必要があることを意味している。そのため、ピエソ圧電素子の一種を用いたインチワームステージは、サブμmでの位置制御が可能なために、超解像性を発現するこの発明の二重共鳴吸収顕微鏡に適したステージである。また、絶対位置をモニターすることで、試料(523)を交換したとしても、迅速に観察領域を発見できる。
【0092】
図20は、試料ステージ(524)のXY方向の二次元移動機構の一例を示したものである。この図20に例示したXY二次元移動機構は、板バネ(601)および二つの積層型ピエゾ圧電素子(602)(603)から構成されており、積層型ピエゾ圧電素子(602)(603)で板バネ(601)を駆動し、一方の積層型ピエゾ圧電素子(602)でX軸方向へ、他方の積層型ピエゾ圧電素子(603)でY軸方向へ、試料ステージ(524)を光軸と直交する面内において二次元移動させる。また、図21に例示したように、直接、積層型ピエゾ圧電(602)(603)を試料ステージ(524)に取り付けた移動機構を用いることもできるが、図20のように板バネ(601)を介した機構の方が、走査面の歪みによる画質劣化の発生をより効果的に抑制することができる。
【0093】
また、試料ステージ(524)にはθφ方向の駆動機構をも設けているが、これらは試料(523)表面とポンプ光およびイレース光の光軸とを正確に直交させるために付加されたものである。
【0094】
以上の五次元移動機構による試料ステージ(524)は、試料(523)に対するメカニカルスキャンを前提としている場合のものであるが、たとえば、揺動するガルバノミラーを光路上に設けて、レーザービーム自体を走査することもできる。
【0095】
さてここで、ポンプ光およびイレース光の光軸調整の一例について説明する。
光軸調整用の標準試料としては、ポンプ光およびイレース光の両光に対して透明な薄膜にローダミンBを分散させてなるものを用いる。ローダミンBは、ポンプ光およびイレース光の両光によって高い確率でS0→S1励起が起きるため、十分な量の蛍光を観測することが可能となる。この標準試料としての薄膜は、たとえば、溶液状態のPMMAにローダミンBを分散させて、スライドガラスの上に厚さ数μmでスピンコートすることで製作される。
【0096】
光軸調整の手順としては、上記標準試料にポンプ光およびイレース光を同時照射し、発生される蛍光をICCDカメラ(540)を介してコンピュータ(501)で観察しながら、ポンプ光の集光点とイレース光の集光点が一致するように、ポンプ光の光路上にある反射ミラー(510)またはイレース光の光路上にある反射ミラー(515)の傾きなどを調節して集光点の位置を移動させる。このとき、ポンプ光およびイレース光の集光点が一致するときの蛍光像は、発光面積が最小となり、且つ、発光輝度が最大となるので、そのような蛍光像が得られるように光学系を調整すれば、ポンプ光およびイレース光の光軸一致が実現される。
【0097】
なお、図16において、(533)はハーフミラー、(534)は照明光用レンズ、(535)は照明光源であり、これらは光軸調整のために用いられる光学系である。
【0098】
また、図16に例示したように、光軸調整のための別の顕微鏡光学系を、試料(523)の後側に設けておいてもよい。図16において、(525)は透過光用レンズ、(526)はハーフミラー、(527)は照明光用レンズ、(528)は照明光源、(529)(530)はポンプ光およびイレース光をカットするノッチフィルター、(531)は接眼レンズ、(532)はICCDカメラであり、これらによって光軸調整用の顕微鏡光学系が構成されている。
【0099】
以下に、上述したシステム全体の制御について説明する。
【0100】
本実施例の顕微鏡システムは、電気的制御を行うユニットとして、ICCDカメラ(540)(上記光軸用顕微鏡光学系を併せ備えた場合にはICCD(532)も)を制御するカメラコントローラー(504)と、試料ステージ(524)を制御する試料ステージコントローラー(503)と、Nd:YAGレーザー(505)を制御するレーザーコントローラー(502)とを有しており、これらのコントローラーはコンピュータ(501)により集中管理される。
【0101】
ICCDカメラ(540)に対しては蛍光信号の検出時間を決めるゲートパルスの発生と取得された蛍光信号のコンピュータ(501)ヘの送信、試料ステージ(524)に対してはピエゾ圧電素子(602)(603)(図20、図21参照)のステップ移動、Nd:YAGレーザー(505)に対してはQスイッチ信号の制御がそれぞれ行われる。システムの処理シーケンスとしては、
1.Nd:YAGレーザーの発振
2.ICCDカメラのゲートパルス発生
3.データ取り込み
4.ピエゾ圧電素子のステップ移動
というサイクルを、取得する画像の画素数分だけ繰り返すことになる。ICCDカメラ(540)からの各画素毎の蛍光スペクトルは、コンピュータ(501)にて数値データとして取り込まれ、全画素分のデータを取得後、数値演算処理によって、バックグラウンド信号として混在しているポンプ光およびイレース光の波長成分を除去し、その他の波長成分の積分値を1画素の画像信号とする。このようにして得られた画像データは必要に応じて、CRTやプリンター等の外部出力装置に出力されたり、HDDやFDD等の記憶装置に記憶される。
【0102】
[実施例2]
図22は、波長変換自在なこの発明の固体色素レーザーの一実施例を示した概略図である。
【0103】
この図21に例示した固体色素レーザーでは、固体レーザー媒質(703)の励起面に、それに密着してプリズム(705)が設置されている。この場合、励起光源としての短パルスレーザー(701)より色素励起光(702)を、固体レーザー媒質(703)の励起面へ斜め方向から入射すると、プリズム(705)と固体レーザー媒質(703)の境界面において直接透過光とプリズム内部で反射した光とによる干渉が起こり、干渉縞(706)のピッチで固体レーザー媒質(703)内に周期的な反転分布が形成される。このとき、固体レーザー媒質(703)内での定在波の波長が反転分布のピッチで決定するフラッグ条件を満たすとき、その波長が共振条件を満たすことになりレーザー光(704)が発振される。干渉縞(706)のピッチは色素励起光(702)の入射角により変化することを利用して、干渉縞(706)のピッチを任意に設定し、固体レーザー媒質(703)からの発振波長を変化させることが可能である。
【0104】
したがって、この固体色素レーザーによって、固体レーザー媒質(703)の波長チューニングレンジ内で波長変換が実現するのである。発振波長領域を変えたい場合には、別の色素分子を分散させた固体レーザー媒質(703)を交換すればよく、この交換も固体であるので簡単に行うことができる。なおこのとき、色素分子の濃度は共振条件が変わらない様に調整しておく。
【0105】
また、図22では、エンドミラー(707)で共振器を構成しているが、このときのレーザー発振条件は、エンドミラー(707)、固体レーザー媒質(703)の加工精度、プリズム(705)の仕様で決まる。つまり、発振されるレーザー光の波面は、短パルスレーザー(701)からの色素励起光(702)の波面の質には依存しないこととなる。したがって、固体色素レーザーの共振器を確実に構成することで、波面が均一なレーザー光を発振させることができる。このレーザー光を前述したような位相板(図10および図11参照)を通すことで、蛍光抑制に最適な中空ビーム形状を持つイレース光を生成することができる。
【0106】
ここで、この図22の固体色素レーザーにおいて、具体的に以下のような固定レーザー媒質(703)および短パルスレーザー(701)を用いた場合について説明する。なお、試料は、蛍光ラベラー分子としてのローダミン6Gで染色した生体試料であるとする。
【0107】
まず、固体レーザー媒質(703)としては、ローダミンBを濃度1mmol/lでPMMA(ポリメタクリル酸メチル)に分散させてなるブロック状(5mm×5mm×5mm)のものを用いる。この固体レーザー媒質(703)のレーザー発振面と色素励起光入射面はほぼオプティカルフラットで研磨されているとする。
【0108】
短パルスレーザー(701)としては、Nd:YAGパルスレーザーを用いる。この場合、Nd:YAGパルスレーザーの第二高調波(532nm)による励起によって、上記の固体レーザー媒質(703)からの発振波長が590nm前後で変換効率が最大となる。この波長帯域はローダミン6GのS1→S2励起に必要な波長λ2を含んでいる。また、この第二高調波(532nm)は、ローダミン6GのS0→S1励起に必要なポンプ光の波長λ1と同じである。したがって、Nd:YAGパルスレーザーからの第二高調波(532nm)はそのまま色素励起光およびポンプ光として用いることができ、それにより固体レーザー媒質(703)から発振されるレーザー光(704)はイレース光として用いることができる。なお、一台のNd:YAGパルスレーザーからの第二高調波を色素励起光およびポンプ光として用いる場合には、第二高調波を分光させるハーフミラーなどの分光素子を第二高調波の光路上に挿入すればよい。
【0109】
図23は、この発明の固体色素レーザーの別の一実施例を示した概略図である。この図22に示した例では、固体レーザー媒質(703)からの発振波長の制御を、外部共振器である回折格子(708)で行うようになっている。この場合、回折格子(708)を回転することで発振波長を選択することができる。
【0110】
以上の固体色素レーザーをこの発明の二重共鳴吸収顕微鏡においてポンプ光光源またはイレース光光源もしくはその両方として用いることにより、ポンプ光またはイレース光の容易な発生が実現でき、二重共鳴吸収・蛍光抑制を様々な試料分子(または蛍光ラベラー分子)に容易に適応させることができるようになる。
また、前述したように、励起光源がサブナノ秒パルスレーザーが可能な短パルスレーザー(701)であるので、二重共鳴吸収・蛍光抑制のさらに確実な発現を図ることができる。分散した色素分子が3重項状態に蓄積されることがないので、高効率でのレーザー発振が可能でもある。
【0111】
この固体色素レーザーの固体レーザー媒質は、前述したようにたとえばゾルゲル法を用いて製造することができる。以下に、ゾルゲル法を用いいた場合の一例について説明する。
【0112】
ゾルゲル法では、たとえばまず、金属アルコキシド−水−アルコール酸からなる溶液を適温で攪拌することで、加水分解、宿重合が生じ、金属酸化物のコロイド状の粒子が生成したゾルに変化する。さらに反応を進行させると全体がゲルとなる。このゾル→ゲル変化の間に任意形状の整形が可能であり、たとえばディップ法によるコーディング膜状、紡糸によるファイバー状、あるいはバルク状、粉末状、粒状など様々な加工が可能である。次いで、必要条件を選択してゲルを乾燥すると、多孔質の乾燥ゲルが得られる。この乾燥ゲルを、適温にゆっくり加熱すると、さらに重合が進み金属化合物が得られる。
【0113】
このようなゾルゲル法を用いて、たとえば、予めガラス溶液中に色素分子を分散させ、上述の過程によってガラス媒質に色素分子がドープされた固体色素を生成することができる。また、有機分子を無機化合物の端末基に化学重合させることで、固体色素の媒質に有機と無機によるハイブリット分子構造を持たせることも可能である。
【0114】
この発明は以上の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0115】
【発明の効果】
以上詳しく説明したように、この出願の発明の二重共鳴吸収顕微鏡により、両光なビームプロファイルの中空ビーム・イレース光の実現や、優れた蛍光信号検出の実現や、ポンプ光およびイレース光の優れた照射態様の実現などによって、超解像性のより効果的、且つ確実な発現が可能である。また、煩雑な色素交換が解消された固体色素レーザーが実現され、これをポンプ光・イレース光光源として用いることで、二重共鳴吸収顕微鏡の操作性・保守性等の向上が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】基底状態の試料分子の電子配置を例示した図である。
【図2】S1状態に励起された試料分子の電子配置を例示した図である。
【図3】S2状態に励起された試料分子の電子配置を例示した図である。
【図4】脱励起した試料分子の電子配置を例示した図である。
【図5】二重共鳴吸収過程を例示した概念図である。
【図6】二重共鳴吸収過程を空間的に例示した概念図である。
【図7】ポンプ光およびイレース光の一部重合せおよびそれによる蛍光抑制を例示した概念図である。
【図8】光紬を原点とした一次ベッセルビームの断面の位相分布を例示した概念図である。
【図9】イレース光の中空ビーム化(一次ベッセルビーム)の一例を示した概略図である。
【図10】位相変調素子としての位相板の一例を示した概略図である。
【図11】位相変調素子としての位相板の別の一例を示した概略図である。
【図12】ICCDカメラの一例を示した概略図である。
【図13】ポンプ光およびイレース光の照射態様を例示した図である。
【図14】パルスストレッチャー光学系の一例を示した概略図である。
【図15】この発明の固体色素レーザーの一例を示した概略図である。
【図16】この発明の一実施例である二重共鳴吸収顕微鏡を用いたレーザー走査型蛍光顕微鏡システムを例示した概略図である。
【図17】ローダミン6Gの吸収特性(実線)および蛍光特性(点線)を例示した図である。
【図18】ガラス基板のエッチングによる位相板の一例を示した概略図である。
【図19】図16の顕微鏡システムにおける分光器の内部構造を例示した概略図である。
【図20】図16の顕微鏡システムにおける試料ステージのXY二次元移動機構の一例を示した概略図である。
【図21】試料ステージのXY二次元移動機構の別の一例を示した概略図である。
【図22】この発明の一実施例である固体色素レーザーを例示した概略図である。
【図23】この発明の別の一実施例である固体色素レーザーを例示した概略図である。
【符号の説明】
101 コヒーレント光源
102 ビーム領域限定手段
103 ビーム径拡大用光学素子
104 位相変調素子
201 光電子変換面
202 マイクロチャネルプレート
203 フォスファースクリーン
204 光ファイバーカップラー
205 リレーレンズ
206 CCD検出器
301 ハーフミラー
302 プリズム
401 短パルス半導体レーザー
402 色素励起光
403 固体レーザー媒質
404 ハーフミラー
405 反射ミラー
406 干渉パターン
407 レーザー光
501 コンピュータ
502 レーザーコントローラー
503 試料ステージコントローラー
504 カメラコントローラー
505 Nd:YAGレーザー
506 ピンホールプレート
507 波長変調素子
508 ハーフミラー
509 テレスコープ
510 反射ミラー
511 ビームコンバイナー
512 ラマンシフター
513 テレスコープ
514 位相板
515,516,517 反射ミラー
518 直線移動ステージ
519 プリズム
520 ビームリデューサー
521 ハーフミラー
522 集光対物レンズ
523 試料
524 試料ステージ
525 透過光用レンズ
526 ハーフミラー
527 照明光用レンズ
528 照明光源
529,530 ノッチフィルター
531 接眼レンズ
532 ICCDカメラ
533 ハーフミラー
534 照明光用レンズ
535 照明光源
536,537 ノッチフィルター
538 接眼レンズ
539 分光器
5391 コリメータ球面鏡
5392 フォーカシング球面鏡
5393 回折格子
5394 反射ミラー
5395 スリット
540 ICCDカメラ
601 板バネ
602,603 積層型エピゾ圧電素子
701 短パルスレーザー
702 色素励起光
703 固体レーザー媒質
704 レーザー光
705 プリズム
706 干渉縞
707 エンドミラー
708 回折格子
Claims (26)
- 試料分子を基底状態から第一電子励起状態へ励起させる波長λ1のポンプ光の光源と、第一電子励起状態の試料分子を第二電子励起状態またはより高い励起状態へ励起させる波長λ2のイレース光の光源と、ポンプ光およびイレース光の照射領域を一部分重ね合わせる重ね手段とを備えており、重ね手段を介してポンプ光およびイレース光を試料に照射することにより、第一電子励起状態の試料分子が基底状態へ脱励起する際の発光領域を一部分抑制する二重共鳴吸収顕微鏡において、イレース光光源がコヒーレント光源であり、このコヒーレント光源からのイレース光から、そのビーム面内における位相の乱れがλ 2 /2以下となっている領域のみを取り出すビーム領域限定手段が備えられており、このビーム領域限定手段により、イレース光はそのビーム面内における位相の乱れがλ 2 /2以下であるものとされていることを特徴とする二重共鳴吸収顕微鏡。
- 試料は、基底状態を含め少なくとも三つの電子状態を有する蛍光ラベラー分子により染色されており、前記試料分子はこの蛍光ラベラー分子である請求項1の二重共鳴吸収顕微鏡。
- 前記ビーム領域限定手段を通過したイレース光に対してそのビーム断面内において空間的位相分布を与える位相変調素子が備えられている請求項2の二重共鳴吸収顕微鏡。
- 前記位相変調素子は、前記ビーム領域限定手段を通過したイレース光の光軸を中心とした光軸周りにπの位相差を与えるものである請求項3の二重共鳴吸収顕微鏡。
- 前記位相変調素子は、前記ビーム領域限定手段を通過したイレース光の断面内において、同心円上に空間的位相分布を与えるものである請求項3の二重共鳴吸収顕微鏡。
- 前記位相変調素子は、前記ビーム領域限定手段を通過したイレース光の断面内において、円形領域とこの円形領域の外周の円環領域にπの位相差を有する空間的位相分布を与えるものである請求項3の二重共鳴吸収顕微鏡。
- 前記位相変調素子は、イレース光に対してオプティカルフラットな平行基板に、所定の厚み分布をもつ光学薄膜が被膜されてなる請求項3ないし6のいずれかの二重共鳴吸収顕微鏡。
- 前記位相変調素子は、イレース光に対してオプティカルフラットな平行基板に、エッチングが施されてなる請求項3ないし6のいずれかの二重共鳴吸収顕微鏡。
- 光電子変換面、マイクロチャネルプレート、フォスファースクリーン、光ファイバーカップラー、およびCCD検出器から構成される蛍光検出手投が備えられている請求項1ないし8のいずれかの二重共鳴吸収顕微鏡。
- 前記蛍光検出手投は、蛍光信号からポンプ光またはイレース光もしくはその両方を除去する分光素子または波長分散素子を光電子変換面の前方に有している請求項9の二重共鳴吸収顕微鏡。
- 試料面から前記蛍光検出手段までの光路上にスリットまたはピンホールが備えられている請求項9または10の二重共鳴吸収顕微鏡。
- 前記スリットまたはピンホールは、光電変換面の直前に備えられている請求項11の二重共鳴吸収顕微鏡。
- 前記光電子変換面、マイクロチャネルプレート、フォスファースクリーン、およびCCD検出器それぞれの電極への印加電圧を時間制御する時間制御手段が備えられている請求項9ないし12のいずれかの二重共鳴吸収顕微鏡。
- 前記時間制御手段は、スイッチングにより印加電圧を時間制御し、そのスイッチング応答時間が試料分子の蛍光時間より短く設定されている請求項13の二重共鳴吸収顕微鏡。
- 前記時間制御手段は、電圧印加時間を試料分子の蛍光時間よりも長くなるように制御する請求項13の二重共鳴吸収顕微鏡。
- 蛍光信号からポンプ光またはイレース光もしくはその両方を除去する分光素子または波長分散素子が備えられている請求項1ないし8のいずれかの二重共鳴吸収顕微鏡。
- イレース光のパルス幅がポンプ光のパルス幅よりも長く設定されており、且つポンプ光の照射時間がイレース光の照射時間と完全にオーバーラップするように設定されている請求項1ないし16のいずれかの二重共鳴吸収顕微鏡。
- イレース光のパルス幅がポンプ光のパルス幅よりも長くなるように、イレース光のパルス幅を広げるパルス幅調整手段が備えられている請求項17の二重共鳴吸収顕微鏡。
- 前記パルス幅調整手段として、分光を行うハーフミラーと、このハーフミラーを光路上に含むループ光路を形成する反射光学系とから構成されるパルスストレッチャー光学系が備えられている請求項18の二重共鳴吸収顕微鏡。
- ポンプ光の照射時間がイレース光の照射時間と完全にオーパーラップするように、イレース光およびポンプ光の試料への到達時間を調整する照射タイミング調整手段が備えられている請求項17の二重共鳴吸収顕微鏡。
- 前記照射タイミング調整手段は、ポンプ光およびイレース光の光路差を調整することにより、ポンプ光およびイレース光の試料への到達時間を調整する請求項20の二重共鳴吸収顕微鏡。
- 前記照射タイミング調整手段は、ポンプ光光源およびイレース光光源がそれぞれ独立したパルスレーザーである場合において、各パルスレーザーのQスイッチを調整することにより、ポンプ光およびイレース光の試料への到達時間を調整する請求項20の二重共鳴吸収顕微鏡。
- ポンプ光およびイレース光に対して透明な基板に、ポンプ光およびイレース光のいずれでも励起可能な分子が均一に塗布されてなる標準試料が用いられ、この標準試料にポンプ光およびイレース光を同時に照射したときの前記分子からの発光の面積が最小、発光の輝度が最大となるように、ポンプ光およびイレース光の光軸が調整されたものとなっている請求項1ないし22のいずれかの二重共鳴吸収顕微鏡。
- 少なくともナノメートルオーダーでのポンプ光およびイレース光の走査あるいは試料の走査を行う機構を有している請求項1ないし23のいずれかの二重共鳴吸収顕微鏡。
- 試料の走査機構として、電磁モータまたはピエゾ圧電素子により二次元移動可能とされた試料ステージ機構が備えられている請求項24の二重共鳴吸収顕微鏡。
- ポンプ光およびイレース光の走査機構として、揺動ミラー機構が備えられている請求項24の二重共鳴吸収顕微鏡。
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