以下、この発明を実施するための最良の形態である被検体内位置検出システムについて説明する。なお、図面は模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、それぞれの部分の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
(実施の形態1)
まず、実施の形態1にかかる被検体内位置検出システムについて説明する。本実施の形態1にかかる被検体内位置検出システムは、被検体1の内部に導入され、被検体内導入装置の一例として機能するテストカプセル2と、テストカプセル2の被検体1内部における位置の検出を行う位置検出装置3と、位置検出装置3によって検出されたテストカプセル2の位置情報を表示する表示装置4と、位置検出装置3と表示装置4との間の情報の受け渡しを行うための携帯型記録媒体5とを備える。
表示装置4は、位置検出装置3によって取得されたテストカプセル2の位置情報を表示するためのものであり、携帯型記録媒体5によって得られるデータに基づいて画像表示を行うワークステーション等のような構成を有する。具体的には、表示装置4は、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ等によって直接画像を表示する構成としても良いし、プリンタ等のように、他の媒体に画像を出力する構成としても良い。
携帯型記録媒体5は、後述する位置情報導出装置8および表示装置4に対して着脱可能であって、両者に対する挿着時に情報の出力および記録が可能な構造を有する。具体的には、携帯型記録媒体5は、テストカプセル2が被検体1の体腔内を移動している間は位置情報導出装置8に挿着されてテストカプセル2の位置に関する情報を記録する。そして、テストカプセル2が被検体1から排出された後に、位置情報導出装置8から取り出されて表示装置4に挿着され、記録したデータが表示装置4によって読み出される構成を有する。位置情報導出装置8と表示装置4との間のデータの受け渡しをコンパクトフラッシュ(登録商標)メモリ等の携帯型記録媒体5によって行うことで、位置情報導出装置8と表示装置4との間が有線接続された場合と異なり、テストカプセル2が被検体1内部を移動中であっても、被検体1が自由に行動することが可能となる。
テストカプセル2は、カプセル型内視鏡等を被検体1内に導入するに先立って、被検体1内にカプセル型内視鏡の通過が困難な狭窄部等が存在するか否か等の事前検査を行う際に用いられるものである。すなわち、本実施の形態1にかかる被検体内位置検出システムは、かかるテストカプセル2が被検体1内でどのように移動するのかを調べるためのものであり、かかる目的を達成するために高精度の位置検出機構を設けている。
図2は、テストカプセル2の構造を示す模式図である。図2に示すように、テストカプセル2は、カプセル型内視鏡の筐体と同様のカプセル形状を有する筐体10と、筐体10内部に配置された永久磁石11と、筐体10内面と永久磁石11との間の隙間を埋める部材として機能する充填部材12とを備える。
筐体10は、例えば、生体適合性材料によって形成されており、被検体1内に数日間に渡って留まった場合ににも生体である被検体1に害を及ぼすことがないよう形成されている。
永久磁石11は、特許請求の範囲における磁場発生手段として機能するものであり、筐体10内に収容可能なサイズの永久磁石によって構成され、磁場強度の時間変動が無視しうる静磁場を出力するためのものである。磁場発生手段を備えたテストカプセル2の移動に伴い周辺の磁場は変化するが、本実施の形態中では、磁場の強度を検出する時間内で磁場発生手段の位置はほとんど変化しないため、磁場発生手段は定磁場を出力することとしている。なお、永久磁石11の代わりに、例えば定電流が供給されることによって静磁場を発生するコイル等を磁場発生手段として用いることとしても良いが、永久磁石11を用いることとした場合には駆動電力が不要等の利点を有することから、永久磁石11を用いて磁場発生手段を構成することが好ましい。
永久磁石11から生じる静磁場は、図2に示すように、N極側から出力されて永久磁石11外部を進行した後に再びS極側に入力する閉曲線状の磁力線によって表現される。ここで、図2に示すように磁力線の進行方向は場所依存性を有するが、磁力線の密度によって表される静磁場の強度は、テストカプセル2からの距離のみに応じて定まるものとみなすことが可能である。すなわち、テストカプセル2に内蔵される永久磁石11のサイズは、テストカプセル2と磁場検出装置6a〜6hとの間の距離と比較して無視できる程度に微小であることから、テストカプセル2から距離rだけ離れた地点における磁場強度Pは、比例係数αを用いて、
P=α/r3 ・・・(1)
と表される。本実施の形態1にかかる被検体内位置検出システムは、後述するように(1)式に示す関係に基づいてテストカプセル2の位置を検出することとしている。
充填部材12は、筐体10の内面と永久磁石11との間を充填し、永久磁石11の位置を固定するためのものである。なお、充填部材12を形成する材料は被検体1に対して悪影響を与えないものであって、例えば、硫酸バリウムによって充填部材12は形成される。硫酸バリウムは、X線検査における造影剤として利用することが可能であるため、本実施の形態1における位置検出に加えてX線検査による位置検出が可能となり、両者による検出結果を対比することによって、より正確な位置検出を行うことが可能である。なお、本実施の形態1において充填部材12として硫酸バリウムを用いることは必須ではなく、充填部材として機能するものであれば任意のものを用いることが可能なのはいうまでもない。
次に、位置検出装置3について説明する。位置検出装置3は、テストカプセル2から出力される静磁場に基づいて、被検体1内部におけるテストカプセル2の位置を検出するためのものである。具体的には、位置検出装置3は、図1に示すように、テストカプセル2から出力される静磁場の強度を検出する磁場検出装置6a〜6hと、磁場検出装置6a〜6dを被検体1に対して固定する固定部材7aと、磁場検出装置6e〜6hを被検体1に対して固定する固定部材7bと、磁場検出装置6a〜6hによって検出された磁場強度に基づいてテストカプセル2の位置を導出する位置情報導出装置8と、磁場検出装置6a〜6hの位置を導出するための交流磁場を出力する交流磁場発生装置9とを備える。
磁場検出装置6a〜6hは、それぞれが配置された場所における磁場強度を検出するためのものである。具体的には、磁場検出装置6a〜6hは、例えば、MI(Magneto Impedance)センサを用いて形成されている。MIセンサは、例えばFeCoSiB系アモルファスワイヤを感磁媒体として用いた構成を有し、感磁媒体に高周波電流を通電した際に、外部磁界に起因して感磁媒体の磁気インピーダンスが大きく変化するMI効果を利用して磁場強度の検出を行っている。磁場検出装置6a〜6hとして他の磁場センサを用いることとしても良いが、MIセンサを用いた場合には、特に高い感度で磁場強度検出が行えるという利点を有する。
固定部材7a、7bは、磁場検出装置6a〜6hを被検体1に対して固定するためのものである。具体的には、固定部材7a、7bは、被検体1の胴部の外周を覆うよう環状に形成されており、被検体1の胴部に密着した状態で固定される構成を有する。
交流磁場発生装置9は、被検体1の運動に応じて変動する磁場検出装置6a〜6hの位置の導出を行うための交流磁場を出力するためのものである。なお、かかる交流磁場は磁場検出装置6a〜6hの位置の導出のために用いられることから、被検体1の運動に応じて交流磁場発生装置9の位置が大幅に変動することは好ましくない。従って、本実施の形態1においては、交流磁場発生装置9は、位置変動が実用上無視しうる腰部近傍に固定することとしている。なお、交流磁場発生装置9の配置場所としては腰部近傍に限定する必要はもちろん無く、例えば、被検体1の首の近傍に配置することとしても良い。
また、交流磁場発生装置9は、後述する減算部18に対して、自身の出力する交流磁場に対応した参照交流信号を出力する機能を有する。参照交流信号は、具体的には、交流磁場発生装置9から出力される交流磁場と等しい周波数を有すると共に、出力される交流磁場の強度に対応した振幅を備えた信号として定義される。
位置情報導出装置8は、被検体1の運動等により変動する磁場検出装置6a〜6hの位置の導出を行う機能を有すると共に、導出した磁場検出装置6a〜6hの位置および磁場検出装置6a〜6hにおいて検出されたテストカプセル2による静磁場に基づいてテストカプセル2の位置の導出を行う機能を有する。かかる両者の機能を実現するために、本実施の形態1においては、磁場検出装置6a〜6hによって検出される磁場を2系統に分岐し、それぞれの系統において所定の処理を行う構成を有する。
具体的には、位置情報導出装置8は、一方の系統において、検出磁場の直流磁場成分を抽出してテストカプセル2と磁場検出装置6a〜6hとの間の距離を導出する構成要素を有し、他方の系統において、検出磁場の交流磁場成分を抽出して磁場検出装置6a〜6hの位置の導出を行う構成要素を有する。さらに、位置情報導出装置8は、両系統において得られた結果に基づいて、テストカプセル2の位置を導出する構成要素を有する。以下、位置情報導出装置8におけるかかる3態様の構成要素について順に説明する。
まず、位置情報導出装置8は、磁場検出装置6a〜6hとテストカプセル2との間の距離を導出する構成要素として、入力される検出磁場に対して低周波数成分のみを通過させるLPF(Low Pass Filter)13と、LPF13を通過した磁場の強度を比較する強度比較部14と、強度比較部14による比較結果に基づいて磁場検出装置6a〜6hの一部において検出された磁場を選択するセレクタ15と、セレクタ15によって選択された磁場検出装置6とテストカプセル2との間の距離を導出する距離導出部16とを備える。
LPF13は、特許請求の範囲における直流磁場抽出手段の一例として機能するものであり、磁場検出装置6a〜6hによって検出された磁場のうち、低周波数成分のみを通過させるためのものである。より具体的には、LPF13は、検出された磁場のうち、静磁場成分、すなわち直流磁場成分のみを通過させることを意図して設けられている。上記のように、テストカプセル2に備わる永久磁石11は静磁場を出力する機能を有し、本実施の形態1にかかる被検体内位置検出システムでは、かかる静磁場の検出強度に基づいて、(1)式に示す演算を行うことによってテストカプセル2と磁場検出装置6a〜6hとの間の距離の導出を行う構成を有する。従って、距離導出を行うにあたっては検出された磁場のうち交流磁場成分を除去する必要があり、距離導出部16の前段にLPF13を配置することとしている。
強度比較部14は、磁場検出装置6a〜6hにおいて検出された磁場の直流磁場成分の強度の比較を行うためのものである。具体的には、強度比較部14は、磁場検出装置6a〜6hのうち、検出した磁場の直流磁場成分の強度が大きいものを3個選択し、選択した結果をセレクタ15に出力する。これに対して、セレクタ15は、かかる選択結果に対応する直流磁場成分を距離導出部16に対して出力している。
距離導出部16は、セレクタ15を介して入力された磁場強度に基づいて、基準装置および被選択装置とテストカプセル2との間の距離を導出するためのものである。具体的には、距離導出部16は、入力された磁場強度に対して、(1)式に示す演算処理を行うことによって、磁場強度が検出された磁場検出装置とテストカプセル2との間の距離を導出する機能を有する。
また、位置情報導出装置8は、磁場検出装置6a〜6hの位置の導出を行う構成要素として、検出磁場における直流磁場成分を除去するDC成分除去部17と、直流磁場成分が除去された磁場成分に対して所定の減算処理を行う減算部18と、減算結果に基づいて磁場検出装置6a〜6hの位置座標の導出を行う装置座標導出部19とを備える。
DC成分除去部17は、特許請求の範囲における交流磁場抽出手段の一例として機能するものであり、磁場検出装置6a〜6hにおいて検出された磁場のうち、直流磁場成分を除去するためのものである。本実施の形態において、交流磁場発生装置9から出力される、磁場検出装置6a〜6hの位置導出のための磁場は交流磁場であることから、位置導出と無関係な直流磁場成分を除去することが好ましいためである。DC成分除去部17は、具体的には例えば直流磁場成分を除去するコンデンサ等を備えた構造を有する。
減算部18は、DC成分除去部17によって直流磁場成分が除去された、すなわち交流磁場成分のみを抽出した検出磁場について、交流磁場発生装置9から出力された参照交流信号との間で差分演算を行うためのものである。ここで、参照交流信号は、交流磁場発生装置9から出力される交流磁場に対応した信号であって、交流磁場と等しい周波数を有すると共に出力される交流磁場の強度に対応した振幅を有する。従って、減算部18によって導出される差分演算結果は、磁場検出装置6a〜6hが配置されたそれぞれの位置における交流磁場の減衰の程度を示す値となり、装置座標導出部19は、かかる値を用いて磁場検出装置6a〜6hのそれぞれの位置座標を導出することとしている。
装置座標導出部19は、特許請求の範囲における座標導出手段の一例として機能するものである。具体的には、装置座標導出部19は、磁場検出装置6a〜6dによって検出された交流磁場の強度に基づいて磁場検出装置6a〜6dのそれぞれと交流磁場発生装置9との間の距離を導出し、導出した距離と、磁場検出装置6a〜6dの相互間の位置関係に基づいて磁場検出装置6a〜6dの位置の導出を行う機能を有する。より具体的には、装置座標導出部19は、交流磁場の強度値と、交流磁場発生装置9から出力された参照交流信号との差分値を用いて座標導出処理を行っている。
また、位置情報導出装置8は、テストカプセル2の位置の導出を行う構成要素として、距離導出部16における導出結果と、装置座標導出部19における導出結果とを用いた所定の演算処理を行うことによってテストカプセル2の位置の導出を行う位置演算部20と、演算処理によって得られたテストカプセル2の位置を記憶する記憶部21とを備える。
位置演算部20は、磁場検出装置6a〜6hとテストカプセル2との間の距離に基づいて所定の演算処理を行うことによって、テストカプセル2の位置を導出するためのものである。また、位置演算部20は、テストカプセル2の位置を導出した後、導出結果を記憶部21に出力する機能を有する。
次に、本実施の形態1における位置情報導出装置8の動作について説明する。図4は、位置情報導出装置8の動作を示すフローチャートであり、図5は、位置導出動作のアルゴリズムを説明するための模式図である。なお、図5において、磁場検出装置6a〜6hによって構成される立方体の1辺の長さをaとする。また、後述するように基準装置として選択される磁場検出装置6eの位置を原点とし、磁場検出装置6eから磁場検出装置6fに向かう方向をx方向、磁場検出装置6eから磁場検出装置6hに向かう方向をy方向、磁場検出装置6eから磁場検出装置6aに向かう方向をz方向とする。かかるxyz座標系に基づいて磁場検出装置6a〜6hの位置を定めると共に、xyz座標系におけるテストカプセル2の位置を(x、y、z)とする。以下、図4および図5を適宜参照して位置情報導出装置8の動作について説明を行う。
まず、位置情報導出装置8は、装置座標導出部19によって、磁場検出装置6a〜6hの位置座標の導出を行う(ステップS101)。具体的には、最初に装置座標導出部19は、磁場検出装置6a〜6hにおいて検出された磁場のうち、DC成分除去部17によって直流磁場成分が除去された、交流磁場成分に対して減算部18による減算処理を行い、交流磁場発生装置9から出力された交流磁場の減衰程度を導出する。そして、装置座標導出部19は、減衰程度に基づいて交流磁場発生装置9と磁場検出装置6a〜6hとの間の距離を導出し、導出結果から磁場検出装置6a〜6hの位置を導出している。図5の例では、位置座標の導出を行うことにより、磁場検出装置6a〜6hの位置について、それぞれ(xa、ya、za)、(xb、yb、zb)、・・・と導出されることとなる。
その後、位置情報導出装置8は、強度比較部14によって、磁場検出装置6a〜6hの中で受信した磁場のうち、直流磁場成分の磁場強度が高い磁場検出装置を3個選択する(ステップS102)。図5の例では、かかる磁場検出装置として磁場検出装置6b、6e、6fが選択されている。
その後、位置情報導出装置8は、距離導出部16によって、選択された磁場検出装置6における直流磁場成分(静磁場)の強度の具体的な値を取得し(ステップS103)、取得した値に基づいて選択された磁場検出装置6とテストカプセル2との間の距離を導出する(ステップS104)。具体的には、距離導出部16は、選択された磁場検出装置6において検出された直流磁場成分の磁場強度を用いて(1)式の演算を行うことによって距離の導出を行う。図5の例では、距離導出部16は、基準装置および被選択装置において検出された磁場強度に基づいて、テストカプセル2と磁場検出装置6e、6f、6bとの距離r1、r2、r3を導出している。
そして、位置情報導出装置8は、位置演算部20における演算処理によってテストカプセル2の位置の導出を行う(ステップS105)。具体的には、装置座標導出部19によって導出された磁場検出装置6a〜6hの位置座標と、距離導出部16によって導出された磁場検出装置とテストカプセル2との間の距離とを用いて、位置演算部20は演算処理を行う。
例えば、テストカプセル2の位置座標(x、y、z)は、図5に示す位置関係から幾何的に導出することが可能であって、具体的には以下の方程式を解くことによって導出される。
(x−xe)2+(y−ye)2+(z−ze)2=r1 2 ・・・(2)
(x−xf)2+(y−yf)2+(z−zf)2=r2 2 ・・・(3)
(x−xb)2+(y−yb)2+(z−zb)2=r3 2 ・・・(4)
(2)式〜(4)式において、xe、ye、ze、xf、yf、zf、xb、yb、zbは、ステップS101において導出された値であり、r1、r2、r3は、ステップS104において導出された値である。従って、(2)式〜(4)式における未知数はテストカプセル2の位置座標を示すx、y、zのみとなり、位置演算部20が(2)式〜(4)式を演算することによって、これらの値は導出されることとなる。
最後に、位置情報導出装置8は、記憶部21によって、ステップS105において導出されたテストカプセル2の位置を記憶する(ステップS106)。具体的には、テストカプセル2が被検体1内に導入されている間は、記憶部21には携帯型記録媒体5が装着されていることから、記憶部21は、携帯型記録媒体5に対してステップS105において得られた位置情報を記録させる。
かかるステップS101〜S106の工程は、所定時間間隔ごとに繰り返し行われ、この結果、携帯型記録媒体5は、テストカプセル2が被検体1内をどのように移動したかについての正確な情報を記録することとなる。そして、テストカプセル2が被検体1の外部に排出された後、携帯型記録媒体5は表示装置4に装着され、使用者は、表示装置4に表示された記録結果に基づいて、テストカプセル2が被検体1内でどのように移動したかを把握し、把握した結果により、被検体1内のいかなる場所に狭窄部位が存在するか等の判断を行う。
次に、本実施の形態1にかかる被検体内位置検出システムの利点について説明する。まず、本実施の形態1にかかる被検体内位置検出システムは、テストカプセル2内に備わる永久磁石11によって出力される静磁場に基づいてテストカプセル2の位置を導出することとしている。電磁波等と異なり、静磁場は、伝播領域における比誘電率および透磁率等の物理的パラメータの変動にかかわらずほぼ一意に強度が減衰する特性を有することから、(1)式の関係が良好に成立するという特徴を有する。従って、人体内部のように、物理的パラメータが互いに異なる臓器等が存在する空間内における位置検出であっても、電磁波等による位置検出の場合と比較して高い精度で位置検出を行うことが可能という利点を有する。
かかる静磁場による利点としては、テストカプセル2を被検体1内に導入する際に、被検体1の負担を軽減することも挙げられる。すなわち、上述の理由により、本実施の形態1にかかる被検体内位置検出システムでは、テストカプセル2の周囲環境の相違による位置検出精度の低下が抑制されるという利点があるため、例えば、テストカプセル2を被検体1内に導入する際に、他の検査方法のように飲食を控える等の制限を行う必要がない。従って、被検体1はテストカプセル2を用いた検査時においても通常生活を営むことが可能となり、検査における被検体1の負担を低減することが可能である。
さらに、本実施の形態1にかかる被検体内位置検出システムは、磁場検出装置6a〜6hの位置の導出を行う構成を有する。かかる構成を有することで、本実施の形態1にかかる被検体内位置検出システムでは、被検体1の姿勢変化等の運動によって固定部材7bに対する固定部材7aの位置関係が変動し、磁場検出装置6a〜6hの位置が変動した場合であってもテストカプセル2の位置を正確に導出することが可能である。
また、本実施の形態1では、磁場検出装置6a〜6hの位置導出を行うために交流磁場発生装置9を設け、交流磁場発生装置9から交流磁場を出力し、かかる交流磁場の検出強度に基づいて磁場検出装置6a〜6hの位置導出を行うこととしている。磁場検出装置6a〜6hは、テストカプセル2の位置検出のために磁場検出機能をあらかじめ備えていることから、本実施の形態1にかかる被検体内位置検出システムは、位置導出を行うために磁場検出装置6a〜6hに対して特別な機構を追加する必要がないという利点を有する。従って、本実施の形態1にかかる被検体内位置検出システムは、低い製造コストでテストカプセル2のさらなる正確な位置検出を行うことが可能である。
さらに、本実施の形態1では、磁場検出装置6a〜6hの位置導出に関して交流磁場を用いることとしている。上記したように、本実施の形態1では、テストカプセルの位置検出を行うために、テストカプセル2には静磁場を出力する永久磁石11が配置された構成を有する。これに対して、磁場検出装置6a〜6hの位置導出に交流磁場のみを用いることとしたために、磁場検出装置6a〜6hの位置導出の際に永久磁石11から出力される静磁場の影響を排除することが可能である。
なお、磁場検出装置6a〜6hの位置導出に交流磁場を用いることとしたが、テストカプセル2の位置検出の場合と異なり、被検体1の内蔵物に起因した減衰率の相違等の問題は実用上ほぼ問題となることはない。すなわち、食道から大腸に渡って広い範囲を移動するテストカプセル2とは異なり、磁場検出装置6a〜6hは、被検体1の姿勢変化等によって位置変化が行われるとはいっても位置の変動幅はさほど大きくない。しかも、交流磁場発生装置9との間に存在する内蔵物についても位置変動に伴って大きく変化することはなく、例えば初期状態における磁場検出装置6a〜6hから送信される無線信号の強度と、位置検出時における無線信号の強度とを比較するような構成を採用することによって、減衰率の相違による位置の導出誤差を低減する等の対処が可能である。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる被検体内位置検出システムについて説明する。本実施の形態2にかかる被検体内位置検出システムは、被検体内導入装置として静磁場形成手段のみならず所定の機能実行部および無線部を備えたカプセル型内視鏡と、静磁場形成手段より生じる静磁場に基づいて、被検体内におけるカプセル型内視鏡の位置検出のみならず、カプセル型内視鏡の長軸の向き、すなわち指向方向をも検出し、検出結果に基づいてカプセル型内視鏡から送信された無線信号を受信する複数のアンテナを切り替える位置情報導出装置とを備えた構成を有する。
図6は、本実施の形態2にかかる被検体内位置検出システムの全体構成を示す模式図である。図6に示すように、本実施の形態2にかかる被検体内位置検出システムは、被検体内導入装置の一例たるカプセル型内視鏡22と、位置検出装置23とを備える。なお、図6には実施の形態1における表示装置4および携帯型記録媒体5に相当する構成要素を図示していないが、このことは本実施の形態2においてこれらを除外する趣旨ではない。また、本実施の形態2にかかる被検体内位置検出システムにおいて、実施の形態1と同様の符号、名称を付した構成要素については、以下で特に言及しない限り、実施の形態1と同様の構成・作用を有するものとする。
位置検出装置23は、図6に示すように、磁場検出装置24a〜24hと、磁場検出装置24a〜24hを被検体1に対して固定する固定部材7a、7bと、カプセル型内視鏡22から送信される無線信号を受信するための受信用アンテナA1〜Anと、磁場検出装置24a〜24hおよび受信用アンテナA1〜Anによって得られた情報を処理し、カプセル型内視鏡22の被検体1内における位置情報を取得する位置情報導出装置25とを備える。
磁場検出装置24a〜24hは、それぞれが配置された位置における磁場強度および磁場方向を検出するためのものである。具体的には、磁場検出装置24a〜24hは、磁場強度および磁場方向の検出機能を備えたMIセンサ等によって構成される。実施の形態1における磁場検出装置6a〜6hは磁場強度のみを検出する構成を採用したが、本実施の形態2では、被検体内導入装置(カプセル型内視鏡22)の位置のみならず指向方向をも検出する構成を採用するため、磁場強度のみならず磁場方向も検出する構成を採用している。
受信用アンテナA1〜Anは、カプセル型内視鏡22から送信される無線信号を受信するためのものである。後述するように本実施の形態2におけるカプセル型内視鏡22は、被検体1内部の画像を撮像して外部に無線送信する機能を有し、受信用アンテナA1〜Anは、カプセル型内視鏡22から送信される無線信号を受信し、位置情報導出装置25に出力する構成を有している。受信用アンテナA1〜Anは、具体的には例えば、ループアンテナと、ループアンテナを被検体1に固定するための固着手段とによって構成されている。なお、カプセル型内視鏡22から無線信号が送信された際に受信用アンテナA1〜Anのすべてによって受信する構成としても良い。しかしながら、本実施の形態2では、複数存在する受信用アンテナA1〜Anのうち、後述するアンテナ選択部49によって受信に最も適していると判断される受信用アンテナを用いて受信することとしている。
図7は、カプセル型内視鏡22の構成を示すブロック図である。カプセル型内視鏡22は、実施の形態1におけるテストカプセル2と同様に、静磁場形成手段としての永久磁石11を備える。さらに、カプセル型内視鏡22は、被検体1の内部を撮影する際に撮像領域を照射するための照明手段として機能するLED26と、LED26の駆動状態を制御するLED駆動回路27と、LED26によって照射された領域からの反射光像の撮像を行う撮像手段として機能するCCD28と、CCD28の駆動状態を制御するCCD駆動回路29とを備える。なお、LED26、LED駆動回路27、CCD28およびCCD駆動回路29は、全体として、被検体1の内部の所定の情報を取得するための被検体内情報取得手段として所定の機能を果たす機能実行部39として定義される。
また、カプセル型内視鏡22は、CCD28によって撮像された画像データを変調してRF信号を生成する送信回路30と、送信回路30から出力されたRF信号を無線送信する無線手段としての送信アンテナ部31と、LED駆動回路27、CCD駆動回路29および送信回路30の動作を制御するシステムコントロール回路32とを備える。
これらの機構を備えることにより、カプセル型内視鏡22は、被検体1内に導入されている間、LED26によって照明された被検部位の画像データをCCD28によって取得する。そして、取得された画像データは、送信回路30においてRF信号に変換された後、送信アンテナ部31を介して外部に送信される。
また、カプセル型内視鏡22は、位置検出装置23側から送られてきた無線信号を受信する受信アンテナ部33と、受信アンテナ部33で受信した信号から給電用信号を分離する分離回路34とを備える。さらに、カプセル型内視鏡22は、分離された給電用信号から電力を再生する電力再生回路35と、再生された電力を昇圧する昇圧回路36と、昇圧された電力を蓄積する蓄電器37とを備える。また、カプセル型内視鏡22は、分離回路34で給電用信号と分離された成分からコントロール情報信号の内容を検出し、検出したコントロール情報信号をシステムコントロール回路32に対して出力するコントロール情報検出回路38を備える。なお、システムコントロール回路32は、蓄電器37から供給される駆動電力を他の構成要素に対して分配する機能も有する。
これらの機構を備えることにより、カプセル型内視鏡22は、まず、位置検出装置23側から送られてきた無線信号を受信アンテナ部33において受信し、分離回路34によって、受信した無線信号から給電用信号およびコントロール情報信号を分離する。分離回路34によって分離されたコントロール情報信号は、コントロール情報検出回路38を経てシステムコントロール回路32に出力され、LED26、CCD28および送信回路30の駆動制御に使用される。一方、給電用信号は、電力再生回路35によって電力として再生され、再生された電力は昇圧回路36によって電位を蓄電器37に適した電位にまで昇圧された後、蓄電器37に蓄積される。
次に、位置情報導出装置25の構成について説明する。図8は、位置情報導出装置25の構成を示すブロック図である。本実施の形態2における位置情報導出装置25は、カプセル型内視鏡22の被検体1内における位置を検出する構成要素として、LPF58、強度比較部40、セレクタ41、距離導出部42および位置演算部43を備えた構成を有する。ここで、本実施の形態2では磁場検出装置24a〜24hが磁場強度のみならず磁場方向についても位置情報導出装置25に対して出力する構成を有するため、強度比較部40は、磁場検出装置24a〜24hから出力された情報のうち、磁場強度を抽出して基準装置の選択を行うこととし、距離導出部42は、セレクタ41から入力された情報のうち、基準装置および被選択装置において受信された磁場強度を抽出して距離の導出を行う機能を有する点で実施の形態1と相違する。なお、本実施の形態2におけるカプセル型内視鏡22の位置の検出動作については実施の形態1とほぼ同様であることとし、詳細な説明については省略する。
また、位置情報導出装置25は、実施の形態1と同様に、磁場検出装置24a〜24hの位置の導出を行うためのDC成分除去部46と、減算部47と装置座標導出部48とを備える。装置座標導出部48等は、磁場検出装置24a〜24hが磁場方向についても検出することに対応して、磁場検出装置24a〜24hにおける検出結果から、磁場強度のみを抽出して所定の処理を行う機能をさらに有する。
さらに、位置情報導出装置25は、後述するようにカプセル型内視鏡22の指向方向を検出する際に使用される指向方向データベース44と、セレクタ41から出力された、所定の磁場検出装置24における磁場方向とに基づいてカプセル型内視鏡22の指向方向を検出する指向方向検出部45とを備える。指向方向データベース44は、磁場検出装置24において検出される磁場の強度および磁場検出装置24とカプセル型内視鏡22の位置関係に対するカプセル型内視鏡22の指向方向に関するデータをあらかじめ記憶したものである。なお、指向方向データベース44および指向方向検出部45の動作の具体的内容については、後に詳細に説明する。
また、位置情報導出装置25は、カプセル型内視鏡22から無線送信された、被検体1内部の画像データを受信する受信装置としての機能も有する。具体的には、位置情報導出装置25は、受信用アンテナA1〜Anの中からデータ受信に使用するものを選択するアンテナ選択部49と、選択した受信用アンテナ受信された無線信号に対して復調等の所定の処理を行い、無線信号の中からカプセル型内視鏡22によって取得された画像データを抽出し、出力する受信回路50と、出力された画像データに必要な処理を行う信号処理部51と、画像処理が施された画像データを記録するための記憶部52とを備える。
アンテナ選択部49は、カプセル型内視鏡22から送信される無線信号を受信するのに最も適した受信用アンテナを選択するためのものである。具体的には、アンテナ選択部49は、あらかじめ受信用アンテナA1〜Anの位置を把握していると共に、位置演算部43によって導出されたカプセル型内視鏡22の位置に関する情報と、指向方向検出部45によって導出されたカプセル型内視鏡22の指向方向に関する情報とが入力される構成を有する。このため、アンテナ選択部49は、カプセル型内視鏡22の位置および指向方向との関係において、最も良好な受信感度を有するものと推定される受信用アンテナを選択し、選択した受信用アンテナにおいて受信された無線信号を受信回路50に出力する機能を有する。
記憶部52は、信号処理部51から出力される画像データと、出力される画像データが撮像された時点におけるカプセル型内視鏡22の位置および指向方向とを対応づけて記憶する機能を有する。すなわち、位置情報導出装置25は、図8にも示すように記憶部52に位置演算部43、指向方向検出部45および信号処理部51において得られた情報が出力される構成を有しており、記憶部52は、これらの情報を対応づけた状態で記憶する機能を有する。この結果、記憶部52は、被検体1内部の所定領域の画像データと、かかる画像データを撮像した時点におけるカプセル型内視鏡22の位置および指向方向とが対応づけられた状態で記憶されている。
また、位置情報導出装置25は、カプセル型内視鏡22に対して送信する給電用信号等を生成し、給電用アンテナB1〜Bmに対して出力する機能を有する。具体的には、位置情報導出装置25は、給電用信号を生成する機能および発振周波数を規定する機能を有する発振器53と、カプセル型内視鏡22の駆動状態の制御のためのコントロール情報信号を生成するコントロール情報入力部54と、給電用信号とコントロール情報信号とを合成する重畳回路55と、合成された信号の強度を増幅する増幅回路56とを備える。増幅回路56で増幅された信号は、給電用アンテナB1〜Bmに送られ、カプセル型内視鏡22に対して送信される。なお、位置情報導出装置25は、所定の蓄電装置またはAC電源アダプタ等を備えた電力供給部57を備え、位置情報導出装置25の各構成要素は、電力供給部57から供給される電力を駆動エネルギーとしている。
次に、本実施の形態2にかかる被検体内位置検出システムにおける、カプセル型内視鏡22の指向方向を検出することの意義および指向方向検出動作の内容について説明する。上述したように、本実施の形態2にかかる被検体内位置検出システムは、カプセル型内視鏡22が所定の被検体内情報取得手段を備え、かかる被検体内情報取得手段によって取得された情報を位置検出装置23側に無線送信する構成を有する。そのため、位置検出装置23は、送信された無線信号を受信するための複数の受信用アンテナA1〜Anを備え、アンテナ選択部49によってかかる複数の受信用アンテナA1〜Anの中から受信に最適な受信用アンテナを選択する構成を有する。
複数の受信用アンテナA1〜Anの中から最適な受信用アンテナを選択するアルゴリズムとしては、第1にカプセル型内視鏡22との位置関係によって決定することが挙げられる。例えば、カプセル型内視鏡22から送信される無線信号は、距離に応じて減衰するとの過程のもとで、実施の形態1と同様の位置検出機構を用いてカプセル型内視鏡22の位置を導出し、導出された位置に最も近い受信用アンテナを使用することが考えられる。
しかしながら、カプセル型内視鏡からの無線信号を受信する場合には、アンテナとの位置関係のみによって受信用アンテナを選択することは必ずしも適切ではない。すなわち、カプセル型内視鏡22からの無線送信に用いられる送信アンテナ部31は、例えばループアンテナ等によって構成されること等に起因して、あらゆる方向に均等な強度で無線信号を送信するのではなく、ある程度の指向性を持って無線信号を送信する構成を有する。従って、カプセル型内視鏡からの無線信号を受信するのに最も適した受信用アンテナは、カプセル型内視鏡との位置関係のみによって決定されるのではなく、送信アンテナ部31から送信される無線信号の指向性をも考慮して決定されることが好ましい。そして、送信アンテナ部31は、カプセル型内視鏡22内に固定されていることから、送信される無線信号の指向方向を検出するためには、被検体1内におけるカプセル型内視鏡22の指向方向を把握することが重要となる。かかる事情に基づいて、本実施の形態2では、実施の形態1と同様にカプセル型内視鏡22の被検体1内における位置を検出する機構を備えるのみならず、指向方向データベース44および指向方向検出部45を新たに備えることによって、カプセル型内視鏡22の指向方向を検出することとしている。
図9は、本実施の形態2において、指向方向検出部45におけるカプセル型内視鏡22の指向方向の検出動作を説明するためのフローチャートである。また、図10は、カプセル型内視鏡の指向方向と磁場検出装置24との関係について示す模式図である。以下図9および図10を適宜参照しつつ指向方向検出部45の動作を説明する。
まず、指向方向検出部45は、カプセル型内視鏡22の位置と、複数存在する磁場検出装置24a〜24hの中から選択された磁場検出装置24によって受信された磁場の方向とを入力する(ステップS201)。磁場検出装置24の選択アルゴリズムは任意のものとして良いが、本実施の形態2では、例えば最も検出磁場強度の大きい磁場検出装置24を選択するものとする。図10の例では、指向方向検出部45によって、選択された磁場検出装置24の座標(a1、a2、a3)および矢印で示す方向ベクトルによって表現される磁場方向が把握される。
そして、指向方向検出部45は、ステップS201において選択された磁場検出装置24のカプセル型内視鏡22に対する相対位置を導出する(ステップS202)。具体的には、指向方向検出部45は、位置演算部43によって導出されたカプセル型内視鏡22の位置を入力され、ステップS201において選択された磁場検出装置24についてカプセル型内視鏡22に対する相対座標を導出する。図10の例では、磁場検出装置24の座標(a1、a2、a3)と、カプセル型内視鏡22の座標(x、y、z)に基づいて、カプセル型内視鏡22の位置を原点とした磁場検出装置24の相対位置座標(a1−x,a2−y,a3−z)が導出される。
その後、指向方向検出部45は、ステップS201において入力された磁場方向と、ステップS202において選択された磁場検出装置24の相対位置とを指向方向データベース44に入力し、カプセル型内視鏡22の指向方向に関するデータを取得する(ステップS203)。図10に示すように、カプセル型内視鏡22内に備わる永久磁石11から出力される静磁場の方向は、カプセル型内視鏡22の指向方向およびカプセル型内視鏡22に対する位置によって一意に定まる性質を有することから、指向方向データベース44には、あらかじめカプセル型内視鏡22の指向方向、カプセル型内視鏡22に対する相対座標および相対座標における静磁場の方向が対応づけられた状態で記憶されている。このため、指向方向データベース44に対して磁場検出装置24の相対座標および検出された静磁場の方向を入力することによって、カプセル型内視鏡22の指向方向を抽出することが可能である。図10の例では、指向方向データベース44の出力結果に基づいて、カプセル型内視鏡22の指向方向が(x1、y1、z1)であることが導出される。
最後に、指向方向検出部45は、取得したカプセル型内視鏡22の指向方向に関するデータをアンテナ選択部49および記憶部52に出力する(ステップS204)。アンテナ選択部49は、指向方向に関するデータと、位置演算部43から出力された位置に関する情報とに基づいて受信に最適な受信用アンテナを選択し、記憶部52は、所定時刻におけるカプセル型内視鏡22の指向方向を、画像データおよびカプセル型内視鏡22の位置情報と対応づけて記憶する。
次に、本実施の形態2にかかる被検体内位置検出システムの利点について説明する。まず、本実施の形態2にかかる被検体内位置検出システムでは、実施の形態1と同様にカプセル型内視鏡22内に永久磁石11を備え、永久磁石11から出力される静磁場に基づいてカプセル型内視鏡22の位置検出を行っている。既に述べたように静磁場は、被検体1内の臓器等における比誘電率、導電率等の値の違いに関わらず距離に応じてほぼ一様に減衰する特性を有することから、無線信号を用いて位置検出を行った場合と比較して、カプセル型内視鏡22の位置を正確に検出できるという利点を有する。
また、本実施の形態2にかかる被検体内位置検出システムは、永久磁石11から出力される静磁場に基づいてカプセル型内視鏡22の指向方向を検出する構成を有する。位置検出の場合と同様に、永久磁石11から出力される静磁場は、被検体1内の構成物による影響を受けにくいと共に、所定の位置における磁場方向は、カプセル型内視鏡22の指向方向およびカプセル型内視鏡22に対する相対位置に基づいてほぼ一意に定まるという特性を有する。従って、あらかじめ永久磁石11によって出力される静磁場の方位分布を導出して指向方向データベース44に記憶し、磁場検出装置24によって得られた情報に基づいて指向方向データベース44を参照することによって、カプセル型内視鏡22の指向方向を正確に検出することが可能である。
さらに、本実施の形態2にかかる被検体内位置検出システムは、位置検出の場合と同様に静磁場に基づいてカプセル型内視鏡22の指向方向を検出する構成を有することから、簡易な構成でシステムを実現できるという利点を有する。すなわち、本実施の形態2にかかる被検体内位置検出システムは、カプセル型内視鏡22の指向方向を検出する機能を備えるにあたってカプセル型内視鏡22内に新たな構成要素を追加する必要がなく、小型かつ低コストの位置情報検出システムを構築することが可能である。
また、本実施の形態2にかかる被検体内位置検出システムでは、導出されたカプセル型内視鏡22の位置および指向方向に基づいて、アンテナ選択部49が受信用アンテナを選択する構成を有する。受信用アンテナにおける無線信号の受信感度は、カプセル型内視鏡22からの距離およびカプセル型内視鏡22内に備わる送信アンテナ部31の指向性に依存する。従って、カプセル型内視鏡22の位置および指向方向に基づいて使用する受信用アンテナを的確に選択することが可能となり、カプセル型内視鏡22から送信される無線信号を常に高感度で受信可能な位置情報検出システムを実現することが可能である。
さらに、本実施の形態2にかかる被検体内位置検出システムでは、撮像された被検体1内の画像データと、導出されたカプセル型内視鏡22の位置および指向方向とを、記憶部52に出力する構成を有する。従って、カプセル型内視鏡22によって取得された画像データと、導出されたカプセル型内視鏡22の撮像時における位置および指向方向とを対応づけて記憶することが可能であり、表示装置4によって画像データを表示する際に、所定の範囲に位置する画像データのみを表示するよう指定することが可能である。すなわち、表示装置4においてあらゆる画像データを表示するのではなく、使用者にとって関心のある領域、例えば小腸のみの画像データを表示させることが可能となり、医師等にとって利便性を有する位置情報検出システムを実現することが可能である。
以上、実施の形態1、2に渡って本発明を説明したが、本発明は上記のものに限定されず、当業者であれば様々な実施例、変形例および応用例に想到することが可能である。例えば、実施の形態1にかかる被検体内位置検出システムにおいて、実施の形態2と同様にテストカプセル2の指向方向を導出する構成を備えることとしても良い。
また、実施の形態1、2において、磁場検出装置6等の個数を個に限定する必要はなく、最も簡易な構成としては単一の磁場検出装置6等を用いたシステムを構築することが可能である。すなわち、被検体内導入装置たるテストカプセル2またはカプセル型内視鏡22は、被検体1内を任意に移動するのではなく、食道、胃、小腸および大腸等の所定臓器内のある程度定まった経路に従って移動する構成を有する。従って、あらかじめ被検体内導入装置の移動経路を前もってある程度把握しておくことは可能であり、事前に把握した経路情報と、単一の磁場検出装置によって検出された静磁場の強度とを用いて被検体内導入装置の位置検出を行うこととしても良い。
同様に、例えば実施の形態2において、複数の磁場検出装置24を用いてカプセル型内視鏡22の指向方向を導出することとしても良い。すなわち、上記した手法による指向方向の導出を複数の磁場検出装置24について行い、それぞれによって得られた指向方向の平均を導出する等の手法を用いることで、より正確な指向方向の導出を行う構成とすることも好ましい。このことは被検体内導入装置の位置検出についても同様であって、異なる組み合わせの磁場検出装置6等を用いて複数回の位置検出を行い、それぞれによって得られた位置を平均化する構成を採用しても良い。
また、実施の形態2において、撮像手段たるCCD28等および照明手段たるLED26等を備えた機能実行部39について説明したが、機能実行部としてはこれらの他に、被検体1内におけるpH、温度に関する情報を取得する構成としても良い。また、被検体内導入装置が振動子を備える構成として、被検体1内の超音波画像を取得する構成としても良い。さらに、これらの被検体内情報の中から複数の情報を取得する構成としても良い。
また、給電用アンテナB1〜Bmから出力される無線信号としては、必ずしもコントロール情報信号と給電用信号とを重畳したものとする必要はないし、さらには位置検出装置からカプセル型内視鏡に対して無線送信を行わない構成としても良い。また、給電用信号と、コントロール情報信号以外の信号とを重畳して送信する構成としても良い。さらに、位置検出装置23は、カプセル型内視鏡から出力される無線信号の受信のみを行う構成としても良いし、カプセル型内視鏡内に記憶部を設け、被検体1外部に排出された後に記憶部から情報を取り出す構成としても良い。
また、実施の形態2では、給電用アンテナB1〜Bmの選択に関して特に言及していないが、受信用アンテナA1〜Anの場合と同様に、カプセル型内視鏡22の位置および指向方向に基づいて最適なものを選択して無線送信を行う構成としても良い。すなわち、給電用信号等の供給効率を向上させるために、すべての給電用アンテナから一様に無線信号を送信するのではなく、カプセル型内視鏡22の指向方向等を用いることで、カプセル型内視鏡22内に備わる受信アンテナ部33の指向方向等に対応したアンテナ選択を行うことも可能である。
また、実施の形態1、2に関して、複数の交流磁場発生装置を備える構成も有効である。かかる構成を採用した場合、テストカプセル2、カプセル型内視鏡22の位置検出と同様に、交流磁場発生装置からの距離のみに基づいて磁場検出装置6a等の位置の導出が可能である。