JP4544865B2 - 統合失調症の診断および治療のための標的、方法、ならびに試薬 - Google Patents

統合失調症の診断および治療のための標的、方法、ならびに試薬 Download PDF

Info

Publication number
JP4544865B2
JP4544865B2 JP2003579753A JP2003579753A JP4544865B2 JP 4544865 B2 JP4544865 B2 JP 4544865B2 JP 2003579753 A JP2003579753 A JP 2003579753A JP 2003579753 A JP2003579753 A JP 2003579753A JP 4544865 B2 JP4544865 B2 JP 4544865B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
calcineurin
schizophrenia
compound
gene
susceptibility
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2003579753A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006507795A (ja
JP2006507795A5 (ja
Inventor
デイビッド ジェイ. ガーバー,
マリア カライオーゴー,
剛 宮川
ススム トネガワ,
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Massachusetts Institute of Technology
Original Assignee
Massachusetts Institute of Technology
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Massachusetts Institute of Technology filed Critical Massachusetts Institute of Technology
Publication of JP2006507795A publication Critical patent/JP2006507795A/ja
Publication of JP2006507795A5 publication Critical patent/JP2006507795A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4544865B2 publication Critical patent/JP4544865B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q1/00Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
    • C12Q1/68Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
    • C12Q1/6876Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes
    • C12Q1/6883Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes for diseases caused by alterations of genetic material
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
    • A61P25/18Antipsychotics, i.e. neuroleptics; Drugs for mania or schizophrenia
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P43/00Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q2600/00Oligonucleotides characterized by their use
    • C12Q2600/136Screening for pharmacological compounds
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q2600/00Oligonucleotides characterized by their use
    • C12Q2600/156Polymorphic or mutational markers

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Psychiatry (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Neurology (AREA)
  • Neurosurgery (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)

Description

(関連出願に対する相互参照)
この出願は、米国仮出願第60/367,944号(2002年3月26日出願)と、発明者としてGerber、Karayiorgou、Miyakawa、およびTonegawaが記されている「統合失調症および他の精神疾患の診断および治療ならびに関連試薬およびそれを用いる方法」が名称である米国仮出願(2003年3月7日出願、未だ一連番号付与されず)とに対して、優先権を主張する。これらの出願の内容を本明細書で援用する。
(政府による支援)
米国政府は、本発明の開発に利用される助成金による支援を提供してくれた。特に、国立衛生研究所によって与えられたP50−MH58880および国立衛生研究所によって与えられたR01−MH61399は、この発明の開発を支援した。米国政府は、本発明において何らかの権利を有するものと思われる。
統合失調症は、世界の人口の約1パーセントがかかっている重い精神医学的症状である(Lewis,D.A.&Lieberman,J.A.(2000)Neuron 28,325−3)。この疾患は、気紛れに的に生ずる種々の所謂「陽性」症状によって特徴づけられ、これらの症状として、幻覚、妄想、心因性精神病、および/または比較的持続性のある症状(例えば、情動、引き籠もり、注意力欠陥、および認知障害)が挙げられる。後に述べたカテゴリー中の症状は、しばしば「陰性症状」と称されている。
統合失調症の遺伝に関する研究によって、各々がリスクを適度に高める傾向にある多発性遺伝的感受性因子により、特徴づけられる多因子病であることがわかった(Karayiorgou,M.& Gogos,J.A.(1997)Neuron 19,967−79)。家族連鎖研究、および統合失調症に関連する染色体異常の研究は、多数の統合失調症感受性の遺伝子座を同定した(Karayiorgou,M.& Gogos,J.A.(1997)Neuron 19,967−79;Thaker,G.K.& Carpenter,W.T.,Jr.(2001)Nat Med 7,667−71)。これらの遺伝子座は、比較的大きな染色体領域が含まれており、何百もの遺伝子因子が含まれている可能性がある。したがって、これらの領域で特異的感受性遺伝子を同定することは難しい。
直接的な遺伝学的分析に加えて、薬理学的研究において長年の積み重ねが、ドーパミン作動性またはNMDA受容体媒介シグナル伝達の機能障害が統合失調症病因での主要な寄与因子であるという有力な仮説に至っている(Seeman,P.(1987)Synapse 1,133−52;Carlsson,A.,et al.,(2001)Annu Rev Pharmacol Toxicol 41,237−60)。統合失調症の病態生理学に関するドーパミン仮説は、統合失調症で起こる異常でドパミン神経伝達物質系の機能障害が重要な役割を果たすと主張している。この仮説は、統合失調症を治療することに効果的な多くの薬がドーパミン受容体を阻害する共通の特性を共有するという観察に端を発している。また、統合失調症の症状のいくつかは、ドーパミン作用系に対してポジティブに作用するアンフェタミン等の薬によって再現することができる。グルタミン酸塩機能障害仮説は、それに取って代わるもので、統合失調症の病因についての可能性のある説明と必ずしも矛盾するものではない。この仮説は、NMDA受容体(グルタミン酸塩に対する生理学的受容体)のアンタゴニストとして作用するフェンシクリジン(PCP)およびMK−801等のある種の化合物にさらすことが、統合失調症様症状の発現に至るという観察から得られた(例えば、Javitt,D. and Zukin,R.,Am J Psychiatry,October 1991;148(10):1301−8を参照せよ)。これらの仮説の訴えにもかかわらず、統合失調症とドーパミン受容体またはNMDA受容体との関連についての直接的な遺伝学的、生理学的、または生化学的証拠の信憑性は得られていない。また、統合失調症の治療のための種々の薬物が存在し、かつ幅広く用いられているにもかかわらず、真に満足のゆく治療法は存在しない。
したがって、統合失調症の病因に対してさらに理解を深めることが、当該技術分野においてなおも求められている。また、統合失調症または統合失調症感受性の診断および治療に対する改善された方法および試薬も当該技術分野において求められている。
(発明の要旨)
本発明は、統合失調症および関連症状の診断および治療のための標的を同定することに関する。本発明は、カルシニュリン突然変異マウスが統合失調症を思わせる表現型を持つこと、またカルシニュリン・サブユニット遺伝子の位置とカルシニュリン・シグナル伝達で働くポリペプチドをコードする数多くの他の遺伝子の位置とが統合失調症感受性の遺伝子座と一致するという観察を包含する。これらの発見は、カルシニュリン(本明細書ではCaNまたはCNと略す)と、統合失調症および/または関連症状の病因でのカルシニュリン・シグナル伝達経路の構成要素とに関係する。
別の態様では、本発明は統合失調症または関連症状を、例えば、カルシニュリンの活性および/またはカルシウム・ホメオスタシスを調節することで診断する種々の方法を提供する。例えば、本発明は、統合失調症または統合失調症感受性を診断するための方法であって、(i)統合失調症または統合失調症について試験すべき被験体から得た試料を提供するステップと、(ii)該試料中で、カルシニュリン・サブユニットをコードまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする遺伝子のコーディング領域または非コーディング部位を検出、または該遺伝子に連鎖したゲノム領域内での多形性現象の多形性変異体を検出するステップとを有する方法を提供する。本発明は、さらに、統合失調症または統合失調症感受性を診断するための方法であって、(i)統合失調症または統合失調症について試験すべき被験体から得た試料を提供するステップと、(ii)正常な被験体から得た試料中に期待される前記カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子の発現または活性に関連して、前記試料中のカルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子の発現または活性の変化または変異を検出するステップと、を含む方法を提供する。PPP3CC遺伝子(CNAγをコード)と統合失調症との関連性についての発見にもとづき、本発明は、統合失調症感受性に関連したリスク・ハプロタイプを提供する。
別の態様では、本発明は、統合失調症または関連症状もしくは統合失調症感受性または関連症状で用いられるための、そのような遺伝子および/または該遺伝子のmRNAまたはタンパク質発現産物において、多形性現象、突然変異、変異、発現の変化等を検出するための方法を提供する。そのような方法は、診断を含む種々の目的に有用である。
別の態様によれば、本発明は、種々の動物モデルで化合物のスクリーニングをおこなう方法を含む統合失調症および/または関連の治療に有用な化合物をスクリーニングするためのin vitroおよびin vivo方法のいくつかを提供する。
別の態様では、本発明は、それらのスクーリニング方法にもとづいて同定された化合物と、該化合物を含む医薬組成物とを提供する。
別の態様では、本発明は統合失調症または統合失調症感受性を治療する種々の方法を提供する。例えば、本発明は、統合失調症または統合失調症感受性を治療するための方法であって、(i)統合失調症のリスクまたは罹患状態にある被験体を提供するステップと、(ii)カルシニュリン、カルシニュリン・サブユニット、もしくはカルシニュリン相互作用分子の活性または存在量を調節する化合物を被験体に投与するステップとを含む方法を提供する。本発明は、さらに、統合失調症または統合失調症感受性を治療するための方法であって、(i)統合失調症のリスクまたは罹患状態にある被験体を提供するステップと、(ii)前記被験体に対して細胞内カルシウム濃度を調節する化合物を投与するステップとを含む方法を提供する。本明細書で説明する種々の治療方法で用いる化合物は、本明細書で説明する独創的なスクリーンのいずれかにもとづいて、あるいは他の手法を用いて、同定してもよい。本発明は、統合失調症または統合失調症感受性を治療するための方法であって、(i)統合失調症のリスクまたは罹患状態にある被験体を提供するステップと、(ii)前記被験体に対して海馬または皮質LTDを調節する化合物を投与するステップとを含む方法も提供する。本発明は、さらに、統合失調症または統合失調症感受性を治療するための方法であって、(i)統合失調症のリスクまたは罹患状態にある被験体を提供するステップと、(ii)1種類以上のNFAT−調節タンパク質の発現または活性を調節する化合物を投与するステップとを含む方法を提供する。本発明は、さらに、統合失調症または統合失調症感受性である被験体の免疫系症状を治療するための方法であって、(i)免疫異常のリスクまたは罹患状態にある被験体もしくは統合失調症のリスクまたは罹患状態にある被験体を提供するステップと、(ii)カルシニュリン、カルシニュリン・サブユニット、またはカルシニュリン相互作用分子の活性または存在量を調節する化合物を前記被験体に投与するステップとを含む方法を提供する。
本発明は、さらに、オリゴヌクレオチド等の試薬、オリゴヌクレオチド・アレイ、抗体、およびトランスジェニック・マウス(ノックアウトおよびノックダウン・マウスを含む)と、統合失調症または関連症状の治療に有用な化合物のスクリーンを実施する際にそれらを使用するための方法とを提供する。
引用した特許、特許出願、ジャーナル論文、書籍、および文献のすべての内容を本明細書で援用する。また、以下の標準的参考資料を本明細書で援用する。すなわち、Current Protocols in Molecular Biology,Current Protocols in Immunology,Current Protocols in Protein Science,and Current Protocols in Cell Biology, John Wiley & Sons,N.Y.,2002年3月版;Sambrook,Russell,Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,2001;およびUsing Antibodies:A Laboratory Manual,Harlow,E.and Lane,D.(Editors)New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,1998.
(定義)
「アゴニスト(agonist)」という用語は、ポリペプチドまたは核酸の効果の持続時間を増加または延長する分子をいう。アゴニストとして、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、小分子、イオン、またはポリペプチドあるいは核酸の効果を調節するなんらかの他の分子を挙げることができる。アゴニストは、ポリペプチドまたは核酸に結合することによって効果を発揮する分子である直接アゴニスト、もしくはポリペプチドまたは核酸に結合する以外のメカニズム(例えば、ポリペプチドまたは核酸の発現または安定性を変えることによって、ポリペプチドまたは核酸の標的の発現または活性を変えることによって、ポリペプチドまたは核酸が関与する経路の中間体と相互作用することによって、等)を介して効果を発揮する間接アゴニストであってもよい。
「対立形質(allele)」という用語は、ゲノム内の単一遺伝子座に存在する遺伝子またはDNA配列の異なる形態の1つをいう。この用語には、遺伝子連鎖および関連研究で一般に研究されている自然発生的な対立形質と、遺伝子操作された対立形質との両方が含まれる。
「アンタゴニスト(antagonist)」という用語は、ポリペプチドまたは核酸の効果の継続時間を減少または低下させる分子をいう。アゴニストとして、タンパク質、核酸、炭水化物、もしくはポリペプチドまたは核酸の効果を調節するなんらかの他の分子を挙げることができる。アンタゴニストは、ポリペプチドまたは核酸に結合することによって効果を発揮する分子である直接アゴニスト、もしくはポリペプチドまたは核酸に結合する以外のメカニズム(例えば、ポリペプチドまたは核酸の発現または安定性を変えることによって、ポリペプチドまたは核酸の標的の発現または活性を変えることによって、ポリペプチドまたは核酸が関与する経路の中間体と相互作用することによって、等)を介して効果を発揮する間接アゴニストであってもよい。
「抗体(antibody)」:抗体という用語は、天然もしくは完全または部分的に生成されたにせよ、免疫グロブリンをいう。特異的結合能を保つその全ての誘導体もまた、その用語に含まれる。この用語は、免疫グロブリン結合ドメインに対して相同またはかなり相同である結合ドメインを持つ任意のタンパク質も含む。これらのタンパク質は、天然の源に由来するものであっても、部分的または完全に合成されたものであってもよい。抗体は単一クローン性または多クローン性であってもよい。抗体は、任意の免疫グロブリン・クラスに属するもので、該クラスとしてヒトのクラス:IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEが挙げられる。抗体は、抗体断片、例えばFab、F(ab’)2、Fv、もしくは抗原結合部位を保持する他のフラグメント、あるいは組み換えによる産生したscFvフラグメントであってもよい。この用語は、「ヒト化(humanized)」抗体を含み、例えばヒトで最初に合成されるという意味で、齧歯動物由来の可変領域が直接ヒトから生ずる必要はない点に注意する。その代わり、「ヒト」ドメインは、ヒト免疫遺伝子をゲノムに取り込む齧歯動物で生成される。例えば、Vaughan,et al.,(1998),Nature Biotechnology,16:535−539を参照。抗体は、多クローン性または単一クローン性であってもよいが、本発明の目的から、単一クローン(モノクローナル)抗体であることが概ね好ましい。
本明細書で用いられるように、「診断情報(diagnostic information)」または診断のための情報は、任意の情報であって、該情報は、患者が疾患または症状を有するかを判断すること、および/または該疾患または症状の治療一般的な治療またはなんらかの特別な治療のいずれであっても)の予後または該治療に対する予想される応答に関して重要性を持つ表現型カテゴリーまたは任意のカテゴリーに、治療または症状を分類することに有用である。同様に、診断は、任意のタイプの診断情報を提供することをいい、該診断情報として、限定されるものではないが、被験体が症状(例えば、統合失調症)を呈するように思われるかどうか、疾患の性質または分類に関連した情報、予後に関連した情報、および/または適当な治療を選択する上で有用な情報が挙げられる。
本明細書で使用される「遺伝子」という用語は、一般に当該技術分野で理解されている意味を持つ。しかし、当業者に容易に理解されるように、この用語は当該技術分野において種々の意味を持つものであってもよく、そのうちのいくつかとして、遺伝子調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、等)および/またはイントロン配列、3’非翻訳領域、等が含まれ、ほかには、コーディング配列が限定されている。さらに、理解されることは、遺伝子の定義として、タンパク質をコードせず、むしろ機能性TNA分子、例えばtRNA、stRNA等をコードする核酸への言及が挙げられる。したがって、遺伝子という用語は、タンパク質をコードする核酸の一部をいうものであってもよく、また任意に調節配列を包含するものであってもよい。この定義は、非タンパク質コーディング発現に対する用語「遺伝子」の適用を除くことを意図しているのではなく、むしろ多くの場合、この書類で用いられているようにこの用語はタンパク質コーディング領域を含む核酸に言及している。
本明細書で使用されるように、「遺伝子産物または発現産物、もしくは遺伝子発現産物」は、一般に、遺伝子から転写されたRNAまたは遺伝子から転写されたRNAによってコードされたポリペプチドである。
「相同性(homology)」という用語は、2つ以上の核酸配列間、または2つ以上のアミノ酸配例間での類似性の度合いをいう。当該技術分野で周知のように、任意のヌクレオチドまたは配列を考えた場合、相同配列の同定は、ヌクレオチド配列用にBLASTN、アミノ酸配列用にギャップBLAST、およびPSI−BLAST等のコンピュータ/プログラムを用いて、データベース(例えば、GenBank,EST[発現配列タグ]データベース、GST[遺伝子配列タグ]データベース、GSS[ゲノム・サーベイ配列]データベース、生物塩基配列決定プロジェクト・データベース)を検索することによっておこなうことが可能である。これらのプログラムは、Altschul,S F,et al.,Basic local alignment search tool,J.Mol.Biol.,215(3):403−410,1990,Altchul,S F and Gish,W,Methods in Enzymology,およびAltschul,S F,et al.,「Gapped BLAST and PSI−BLAST:a new generation of protein database search programs」,Nucleic Acids Res.25:3389−3402,1997に記載されている。また、相同配列を同定するために、上記したプログラムは、概して相同性の度合いの表示を提供する。2つ以上のアミノ酸配列間またはより多くのヌクレオチド配列間に存在する同一性または相同性を決定することもまた、当該技術分野で周知の種々の他のアルゴリズムおよびコンピュータ・プログラムのいずれかを用いて、簡便に実行することができる。適当なプログラムに関する議論および提供元は、例えば、Baxevanis,A.,and Ouellette,B.F.F.,Bioinformatics:A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins,Wiley,1998;and Misener,S.and Krawetz,S.(eds.),Bioinformatics Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology,Vol.132),Humana Press,1999に見いだすことができる。
本明細書で用いられている「ハイブリダイズ(hybridize)」という用語は、2つの相補的な核酸配列間での相互作用のことをいう。「高ストリンジェント条件下でハイブリダイズする(hybridizes under high stringency conditions)」というフレーズは、高ストリンジェント条件で維持されている十分に安定な相互作用のことをいう。ハイブリダイゼーション反応を実行するための手引きは、例えば、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.,6.3.1−6.3.6,1989,およびそれよりも最近の最新版を参照することで、見いだすことができる。本明細書ではそのすべてを援用する。また、Sambrook,Russell,and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rded.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,2001を参照せよ。水性または非水性の方法がその参照文献に記載されており、いずれかを使用することができる。一般に、長さが約50〜100ヌクレオチドを超える核酸配列について、種々の段階のストリンジェンシーが定義される。例えば、低ストリンジェンシー(例えば、45℃で6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、その後、少なくとも50℃で0.2XSSC、0.1%SDS中で2回洗浄(洗浄温度は、中−低ストリンジェンシー条件で55℃まで高めることができる));2)中間ストリンジェンシー・ハイブリダイゼーション条件は、約45℃で6XSSCを用い、続いて60℃で0.2XSCC、01%SDS中で1回以上洗浄を繰り返し;3)高ストリンジェンシー・ハイブリダイゼーション条件は、約45℃で6XSSCを利用し、続いて65℃で0.2XSSC、0.1%SDSで1回以上洗浄し;さらに4)非常に高いストリンジェンシー条件は65℃で0.5Mリン酸ナトリウム、0.1%SDSであり、続いて65℃で0.2XSSC、1%SDSで1回以上洗浄する)。高ストリンジェンシー条件下でのハイブリダイゼーションは、相補性の度合いがかなり高い配列間で生ずる。当業者は、異なる度合いのストリンジェンシーに対するパラメータが、ハイブリダイズしている配列の長さ、それらがRNAまたはDNAを含むかどうか等、種々の因子にもとづいて、概ね異なることを理解するだろう。例えば、高、中、または低ストリンジェンシー・ハイブリダイゼーションに対して適当な温度は、一般にオリゴヌクレオチド等の短めの配列のほうが、長めの配列よりも低い。ストリンジェンシーが変化するハイブリダイゼーション条件のさらなる例は、例えば、Ausubel,et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(2002年3月の版)に見いだされる。
本明細書で使用されるように、「単離された(isolated)」は、(1)自然では一般に結合している複数の構成要素の少なくともいくつかが分離されること、および/または(2)自然では起こらないことを意味する。
本明細書で使用されるように、「連鎖(linkage)」または「連鎖している(linked)」は、一般に遺伝的な連鎖のことをいう。2つの遺伝子座(例えば、DNAマーカー遺伝子座および突然変異を引き起こす疾患等の疾患遺伝子座)は、これら2つの遺伝子座で生ずる組み換え事象の確率が50%未満(2つの連鎖していない遺伝子座間の組み換え確率に等しい)である場合、遺伝的に連鎖していると考えられる。「連鎖」または「連鎖した」という用語は、物理的連鎖のこともいうことができる。一般に、2つの遺伝子座は、それらがDNAの同一連続片上に存在する場合、物理的に連鎖している。2つの遺伝子座の物理的距離が大きければ大きいほど、物理的連鎖の度合いが低くなる。遺伝的連鎖と物理的連鎖との間に対応関係が存在するけれども、その対応関係は不正確であり、かつ非線形であると認められる。例えば、個々の塩基数がいかなるものであっても該塩基によって離間された2つの遺伝子座は、該遺伝子座間の組み換え頻度が低い場合、遺伝的に密接して連鎖することができる。しかし、これら2つの遺伝子座の組み換え頻度が高い場合、それらは本質的に遺伝的に連鎖していないか、または弱く連鎖するのみである。
「オリゴヌクレオチド」という用語は、長さが2ないし約70塩基の範囲内にある一本鎖核酸(通常はDNA)のことをいう。オリゴヌクレオチドは、多くの場合、合成されたものである。しかし、自然発生的なポリヌクレオチドから作ることも可能である。オリゴヌクレオチド・プローブまたはプライマーは、1種類以上の化学結合を介して(一般に水素結合形成による相補的対形成を介して)相補的配列の標的核酸に結合することが可能なオリゴヌクレオチドである。オリゴヌクレオチド・プローブおよび/またはプライマーは、多くの場合、5ないし60塩基であり、特定の実施形態では、10ないし40、または15ないし30塩基対の長さであってもよい。オリゴヌクレオチド・プローブまたはプライマーは、天然(例えば、A、G、C、またはT)または修飾塩基(7−デアノグアノシン、イノシン等)を含むものであってもよい。また、上記塩基は、リン酸時エステル結合以外の連鎖、例えばホスホルアミダイト型連鎖またはホスホロチオエート型連鎖によって、連結することが可能である。あるいは、それらはペプチド核酸であってもよく、連鎖がハイブリダイゼーションによって干渉されない限り、構成塩基がリン酸ジエステル結合よりもペプチド結合によって連結している。本明細書に記述するオリゴヌクレオチドのいずれも単離した形態または精製した形態で提供することが可能である。
「作動可能に連結(operably linked)」という用語は、核酸に関して、2つの核酸配列間の相互作用に言及しており、核酸配列の一方の発現または処理が、他方の核酸配列によって、制御、調節、修飾等がなされる。例えば、プロモーターは、該プロモーターがコード配列の転写産物を制御する場合、プロモーターがコード配列に作動可能に連結する。好ましくは、第2の核酸配列に作動可能に連結している核酸配列は、たとえどのような効果的三次元結合が条件を満たすとしても、直接的または間接的に、そのような配列に対して共有結合により連結する。上記用語は、一般に、第2の核酸またはポリペプチドの発現、処理、局在化、輸送等を調節し、かつ概ね化学的または物理的に結合(例えば、共有結合、水素結合、イオン結合による結合)する任意の核酸またはポリペプチドに適用可能である。
「多形性現象(polymorphism)」という用語は、集団のなかで2つ以上の代替配列または対立形質の発生のことをいう。「多形性部位」は、集団を構成するメンバー間でゲノムDNA配列に違いがある場所である。「多形性変異体」は、集団を構成するメンバー間の多形性部位に存在しうる任意の代替配列または対立形質である。本発明の目的にとって、「集団(population)」という用語は、世界の集団、または個体群の任意のサブセットまたはグループのことをいう。したがって、本明細書で使われる多形性変異体という用語は、例えば、組み換えDNA技術によって生成された変異体とは対照的に、自然発生的な変異体のことをいう。しかし、この用語は、変異体が自然発生的な変異体を複製または重複させる場合に、組み換えDNA技術によって生成される変異体を含む。自然発生的な変異体の複製または重複は、異なるヒト遺伝的背景またはマウス等の動物モデル(例えばマウス・ゲノムDNAの範囲内の対応部位での突然変異の生成)のいずれかで自然発生的なヒト変異体の反復を含ませることを意図している。
本明細書に記載される種々の方法(例えば、診断方法、原因となる突然変異体を同定する方法等)にとって、集団内に存在する多数の多形性変異体のなかで、どの多形性変異体が被験体に存在するかを決定することは重要である。
「プライマー」という用語は、適切な温度かつ適当な緩衝液中、適当な条件下での鋳型依存DNA合成の開始点として作用する一本鎖オリゴヌクレオチドのことをいう(例えば、4種類の異なるヌクレオシド三リン酸および重合剤(例えば、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、または逆転写酵素)の存在下)。プライマーの適当な長さは、該プライマーの使用目的に依存するが、概して約10ないし約30ヌクレオチドの範囲内である。短いプライマー分子は、鋳型と十分に安定なハイブリッド複合体を形成するために、一般に低い温度を必要とする。プライマーは、鋳型に対して完全に相補的である必要はないが、該鋳型とハイブリダイズするのに十分な相補性をもたなければならない。「プライマー部位」という用語は、プライマーがハイブリダイズする標的DNAの配列のことをいう。「プライマー対」という用語は、増幅されるDNA配列の5’末端にハイブリダイズする5’(上流)プライマーと、増幅する上記DNA配列とハイブリダイズする3’(下流)プライマーとがセットになったものをいう。これらのプライマーは、それぞれ順行(forward)プライマーおよび逆行(reverse)プライマーという。
本明細書で用いられるように、「精製(purified)」は、多くの化合物または構成要素(entities)から分離することを意味する。化合物または構成要素は、部分的に精製、実質的に精製、または純粋にしたものであり、全ての他の化合物または構成要素から実質的に取り除かれた場合が純粋である。すなわち、好ましくは、約90%、より好ましくは少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%を上回る純度である。
本明細書では、「調節配列(regulatory sequence)」または「調節因子(regulatory element)」という用語は、核酸配列の一領域に言及するもので、該核酸配列の領域は、それが作動可能に連結する配列の発現(特に転写、しかし、いくつかの例ではスプライシングまたは他のプロセッシング等の他のイベント)を導き、亢進し、または抑制する。この用語は、プロモーター、エンハンサー、および他の転写制御因子を含む。本発明のいくつかの実施形態では、調節配列が核酸配列の構成的発現を導くことが可能である。他の実施形態では、調節遺伝子が細胞型または組織特異的および/または誘導性発現を導くことが可能である。例えば、ほ乳類細胞にとって適当な組織特異的プロモーターの非限定的例としてリンパ様特異的プロモーターが挙げられ(例えば、Calame et al.,Adv.Immunol.43:235,1988を参照)、例えばT細胞受容体のプロモーター(例えば、Winoto et al.,EMBO J.8:729,1989を参照)および免疫グロブリンのプロモーター(例えば、Banerji et al.,Cell 33:729,1983;Queen et al.,Cell 33:741,1983を参照)、ならびに 神経細胞特異的プロモーター(例えば、神経線維プロモーター;Byrne et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5473,1989)がある。発生的に調節されたプロモーターもまた含まれ、該プロモーターの例としてネズミhoxプロモーター(Kessel et al.,Science 249:374,1990)およびα−フェトプロティン(Campes et al.,Genes Dev.3:537,1989)が挙げられる。
本明細書で用いられるように、被験体から得た「試料」は、限定されるものではないが、以下のもののいずれか、またはすべてを含むことが可能である。すなわち、細胞または細胞群、組織の一部、血液、血清、腹水、尿、唾液、羊水、髄液、および他の体液、分泌物、または排泄物である。試料は、例えば、皮膚、筋、口内または結膜粘膜、胎盤、胃腸管、もしくは他の器官から得た組織試料であってもよい。胎児または胚細胞あるいは組織から得たDNAの試料は、適当な方法、例えば羊水穿刺または漿膜絨毛サンプリングによって得ることができる。
「試料」という用語は、そのような試料を単離、精製、および/または処理することにより誘導された任意の材料も含む。誘導された試料として、試料から抽出した核酸またはタンパク質もしくは該試料をmRNAの増幅または逆転写等の技術にかけることによって得たものが挙げられる。
「短鎖干渉RNA(short,interfering RNA)」(siRNA)は、長さが約19塩基対の二本鎖RNAから構成され、さらに任意に1または2つの一本鎖オーバーハングまたはループを含む。siRNAは、互いにハイブリダイズした2本のRNA鎖であってもよい。あるいは、siRNAは、セルフ・ハイブリダイゼーション部位を含む一本鎖RNAを含むものであってもよい。siRNAが1つ以上の遊離鎖末端を含む場合、一般に遊離5’末端はリン酸基を持ち、遊離3’末端は水酸基を有する。本発明のある実施形態では、siRNAの一本鎖(または該siRNAのセルフ・ハイブリダイゼーション部位)は、標的転写産物の一領域と正確に相補的であり、siRNAが単一のミスマッチなしに標的転写産物にハイブリダイズすることを意味する。しかし、本発明の他の実施形態では、完全な相補性は必要ではない。ある種のsiRNA(例えば、マイクロRNA)にとって、完全な相補性は必要ではない。
siRNAは、(1)標的遺伝子産物の安定性が、siRNA非存在下と比べて、該siRNAの存在下で減少する場合、および/または(2)siRNAは、少なくとも約17、より好ましくは少なくとも約18または19ないし約21〜22ヌクレオチドにわたって標的転写産物と少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%正確な配列相補性を示す場合、および/または(3)siRNAがストリンジェント条件下で標的転写産物とハイブリダイズする場合、本明細書に記載した目的のための「標的」と考えられる。
本明細書で用いられるように、「特異的結合」という用語は、標的ポリペプチド(または、より一般的には標的分子)と小さな分子であってもよい結合分子(例えば、抗体、アゴニスト、またはアンタゴニスト)との相互作用のことをいう。この相互作用は、結合分子(例えば、抗体の場合)によって認識される抗原決定基またはエピトープ等の標的ポリペプチドの特定の構造的特徴の存在に、概して依存する。例えば、抗体がエピトープAに特異的であるならば、遊離標識Aおよびそれに対する抗体の両方を含む反応物中にエピトープAを含むポリペプチドが存在または遊離未標識Aが存在することで、抗体に結合する標識Aの量が減少する。このことから、特異性が絶対である必要はないと理解される。例えば、標的分子に存在するものに加えて、他のエピトープと多数の抗体が交叉反応することが当該技術分野で周知である。そのような交叉反応性は、抗体が使われる用途に応じて、受け入れられるものであってもよい。したがって、抗体の特異性の度合いは、それが使用されている状況(context)に依存する。一般に、抗体は、他の潜在的パートナーと結合することよりも特定のパートナーと結合することが好ましい場合、その特定のパートナーに対して特異性を示す。当該技術分野の当業者は、任意の用途で適切に実行されるのに十分な特異性の程度を有する抗体を選択することが可能である(例えば、標的分子の検出、治療目的等)。小分子の場合、相互作用も、標的ポリペプチドの特定の構造的特徴(例えば、小分子が嵌合する裂け目または三次元ポケット等)が存在する。
特異性の評価を、標的ポリペプチドに対する結合分子の親和性に対して他の標的(例えば競争相手)に対する結合分子の親和性等、追加の因子という状況のなかでおこなうことが可能であることも理解されよう。非標的分子を検出し、かつ該分子に対して低親和性であることが求められる標的分子に対して、結合分子が高い親和性を示す場合、結合分子は、許容される試薬、例えば診断用および/または治療用の試薬として有望である。ひとたび結合分子に対する特性が1つ以上の状況(context)で確立されると、他の状況、好ましくはその特異性を再評価する必要のない類似の状況で用いることが可能である。
本明細書で用いられるように、「治療(treating)」は、そのような用語が適用される疾患、障害、または症状の進行またはその可能性の減少を、または疾患、障害、または症状の1つ以上の兆候または発現を、後退、軽減、抑制することを含む。
「ベクター」という用語は、本明細書では、他の核酸分子が細胞に入る、例えば転移、輸送等を仲介することが可能な核酸分子のことをいう。転移された核酸は、概ねベクター核酸分子に連結、例えば挿入される。ベクターは、自立的増殖を導く配列を含むものであってもよく、または宿主細胞DNAへの組み込みを可能とするのに十分な配列を含むものであってもよい。有用なベクターとして、例えば、プラスミド、コスミド、およびウイルス・ベクターが挙げられる。ウイルス・ベクターとして、例えば、複製欠損レトロウイルス、アノデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、およびレンチウイルスが挙げられる。当該技術分野の当業者にとって明白であるように、ウィルス・ベクターは、転移核酸のエントリーを仲介する核酸に加えて、種々のウイルス構成要素を含むものであってもよい。
(特定の実施形態の詳細な説明)
I.概要
カルシニュリンは、Ca2+によって媒介されるシグナル伝達で重要な役割を果たすカルシウム依存性タンパク質ホスファターゼである。哺乳類の脳抽出物中ではじめて同定されたことから、例えば、カルシニュリンはリンパ球活性化、神経細胞および筋の分化、軸索突起生成、脊椎動物心臓弁の形態発生を含む種々の生物学的応答に関係している。また、学習および記憶に加えて、カルシニュリンが軸索誘導において重要な役割を持つことも示されている(Chang,H.,et al.(1995)Nature 376,686−690;Xeng,H.,et al.,Cell,Vol 107,617−629,1991)。種々のカルシニュリン・サブユニットおよびイソ型(以下を見よ)に加えて、多くの他の分子が、カルシニュリン活性に役割を持っている。これらの分子として、例えば、カルシニュリン存在量および/または活性(間接的または直接的な物理的相互作用を介して)を調節するタンパク質、サブユニット等が挙げられる。カルシニュリンをコードする遺伝子のゲノム位置およびカルシニュリン・シグナル伝達に関与する多くの分子が同定されている。
学習および記憶におけるカルシニュリンの能力をさらに調べるために、本発明は、遺伝子標的化技術を採用して、CNB1遺伝子(本明細書ではPPP3R1ともいう)をノック・アウトすることで、成熟マウス前脳の興奮性ニューロンでのカルシニュリンの唯一知られている調節サブユニットであるCNB1の発現を、減少または除去するために、遺伝子ターゲッティング方法を採用する。双方向性シナプスの可塑性およびワーキング/エピソード様記憶の中の欠乏に加えて(Zeng,H.,et al.,Cell,Vol 107,617−629,1991)、本発明者らはそれらのマウス(本明細書ではCNB欠損マウス、CNB突然変異マウス、またはCNBノックアウト・マウス)が行動に多くの異常な点が示されること、または統合失調症と思われる活性が示されている。例えば、実施例1に示すように、CNB欠損マウスが(1)自発運動、(2)常同運動、(3)無生物目標に対する探索行動、および(4)不安様運動の増加を示し、また社会的相互作用の減少、プレパルス抑制の障害、側方抑制の障害、および巣作り行動の障害も示された。これらの異常のほとんど、またはすべてが、統合失調症および/関連症状にかかったヒト被験体で見いだされる障害に対応する認識機能での障害を示しているものと考えられる。それらの多くが、他の現在入手可能な遺伝学的マウスのモデル、および/または薬理学的化合物(例えば、コカイン、PCP)で処理したマウスにみられる。ヒト被験体で統合失調症失調症様の症状が誘導されることはすでに知られている。
以下により詳細に説明するように、統合失調症の原因が同定されていない一方で、遺伝子因子が重要であることが示されている。数多くの被験体が遺伝学的研究から感受性遺伝子座として同定されており、またこれらの領域での変異または突然変異が統合失調症の病因をもたらすと考えられているが、個々の遺伝子、突然変異、または変異が役割を果たすことをはっきりと示しているものはない。CNB欠損マウスが統合失調症と思われる表現型を発現することの発見によって促され、本発明者らは、ヒトにおいて、カルシニュリン・シグナル伝達に関与するカルシニュリンおよび/または他の遺伝子が、統合失調症遺伝子座として同定された被験体に位置または近接していると思われる。
実施例2でより詳細に説明するように、種々のカルシニュリン・サブユニット、イソ型、およびカルシニュリン・シグナル伝達に関与する他の分子をコードしている遺伝子の位置と統合失調症感受性に関与すると考えられている遺伝子座との顕著な一致を、本発明者らが発見した。すなわち、カルシニュリン・サブユニットイソ型、カルシニュリン・シグナル伝達に関与する他の分子をコードする配列のゲノム位置は、ハーバー(harbor)突然変異または変異と考えられる部位内または該部位に近接して位置づけられる。これらの発見は、統合失調症および/または関連症状の病因で、カルシニュリンおよびカルシニュリン・シグナル伝達経路の他の構成要素と関係している。これらの分子および該分子をコードする遺伝子(以下でさらに議論)は、本明細書では集合的に「カルシニュリン相互作用分子」および「カルシニュリン相互作用遺伝子」もしくは「カルシニュリン・シグナル伝達分子」および「カルシニュリン/シグナル伝達遺伝子」として称される。
統合失調症感受性でカルシニュリン・シグナル伝達分子が担う重要な役割を同定することで、本発明は、統合失調症および/または関連症状の遺伝的複雑さとその根底にある分子的基礎との両方を説明するフレームワークを提供する。また、単に大きな被験体よりむしろ特定の候補遺伝子を同定することで、本発明は、統合失調症失調に対する感受性および/または該統合失調症の発達に貢献する遺伝子突然変異または変更を可能とする。遺伝子突然変異を識別するこの系統的方法または統合失調症の感受性および/または発達に関与する変化は、本発明の1つの態様である。
実施例3および4でさらに説明するように、本発明者らは当初の知見を拡張し、これらの遺伝子で、多形性現象(例えば、多形性変異体)と統合失調症にかかった家族構成員が一人以上である家族の試料での疾患との結合を試験する結合実験をおこなうことで、カルシニュリン・シグナル伝達遺伝子サブセットの一部について塩基配列を決定することによって、統合失調症に対する感受性または該統合失調症の進行をもたらす遺伝的突然変異または変化を同定するための新規な方法を提供する。また、実施例5で説明するように、本発明者らは、PPP3CC遺伝子と統合失調症感受性とのあいだの結合を発見し、特定のリスク・ハプロタイプを同定した。本発明者らは、PPP3CCが成人および胎児ヒト脳で発現し、さらに統合失調症におけるそれの関与が支持される。
いかなる理論によっても束縛されないことを望む一方で、本発明者らは、カルシニュリン機能が統合失調症の病因に関与させるいくつかの可能なメカニズムを示唆する。カルシニュリンのカルシウム依存活性化は、ドーパミンD1受容体活性に引き続いてリン酸化されるDARPP−32の脱リン酸化と、タンパク質ホスファターゼ1の関連阻害剤、阻害剤1の脱リン酸化とをもたらす(Mulkey,et al 1994,Greengard,et al 1999)。D1によって媒介されるドーパミン作用性シグナル伝達・カスケードで、下流のイベントのカルシウム依存的調節にとって、通常のカルシニュリン機能が必要であると思われる。加えて、カルシニュリンは特定の種類の長期抑圧(LTD)を含むNMDAレセプタ−依存的シナプス可塑性のために必要である(Mulkey,et al 1994,Zeng,et al,2001)。したがって、このように、変化したカルシニュリン活性は、双方向性シナプスの修飾の範囲に影響を及ぼすと思われる。ドーパミン作動性およびグルタミン酸作動性シグナル伝達のイベントにおけるカルシニュリンの関与は、2つの神経伝達物質系間のクリティカル・リンクとしてカルシニュリン機能が求められるという可能性を高める。
カルシニュリンとダイナミン1との複合体が、クラスリン媒介エンドサイトーシスの調節に関与することが示されている(Lai,M.M.,et al.,J Biol Chem 274,25963−6,1999)。このプロセスは、シナプス小胞のエンドサイトーシス(Lai,et al.1999)およびAMPA受容体(Haucke,V.(2000)Nat Neurosci 3,1230−2)にかかわってきた。したがって、変化したカルシニュリン活性は、クリティカルなシナプスのエンドサイトーシスの事象とそれに伴う異常シナプスの機能の異常カルシウム依存性調節に帰着するかもしれない。
カルシニュリンとリアノジン受容体3型(RYR3)/イノシトール・トリホスフェート受容体1(ITPR1)複合体が、細胞内カルシウム放出を調節することが示されている(Cameron,A.M.,et al.(1995)Cell 83,463−72)。また、カルシニュリン活性が神経のITPR1受容体の発現にとって必要であることが示されている(Genazzani,A.A.,Carafoli,E.& Guerini,D.(1999)Proc Natl Acad Sci USA 96,5797−801)。しがたって、カルシニュリン活性が変化することで、神経細胞のカルシウム・ホメオスターシスが異常になることもある。細胞内カルシウム放出調節での役割に加え、最近、カルシニュリンはL型カルシウム・チャンネル機能のセロトニン依存調節に関与することが示されている(Day,M.,Olson,P.A.,Platzer,J.,Striessnig,J.& Surmeier,D.J.(2002)J Neurophysiol 87,2490−504)。このことは、カルシニュリン活性の変化がカルシウム流入の異常なセロトニン作動性調節に至ることもありうる。
さらに、カルシニュリンは、NFAT媒介転写応答に必要である(Crabtree,G.R.& Olson,E.N.(2002)Cell 109 Suppl,S67−79)。少なくとも1つのNFATイソ型がほ乳類動物の脳で発現される(Plyte 2001)。変化したカルシニュリン活性が、計りしれない影響を神経機能に及ぼす可能性のあるカルシウム依存型の神経細胞転写における変化をもたらす可能性と一致して、カルシニュリン活性は、神経細胞での特異的遺伝子の発現に必要であることが示されている(enazzani 1999)。
以下にさらに説明するように、本発明は、統合失調症および関連症状ならびに障害に対する感受性および/または進行をもたらす遺伝的突然変異または変化を同定するための方法および試薬、統合失調症または統合失調症感受性を診断するための方法および試薬、統合失調症の予防または治療のための化合物を同定するための方法および試薬、ならびに多様な他の方法および試薬を提供する。
II.カルシニュリンおよびカルシニュリン依存シグナル伝達経路
カルシニュリンは、中枢神経系で高発現されるカルシウム依存性セリン/スレオニン・タンパク質ホスファターゼである(Klee,C.B.,Ren,H.& Wang,X.(1998)J Biol Chem 273,13367−70;Shibasaki,F.,Hallin,U.& Uchino,H.(2002)J Biochem(Tokyo)131,1−15;Rusnak,F.and Mertz,P.,Physiological Reviews(2000)80(4):1483−1522 カルシニュリンは、調節サブユニット、CNB、および触媒サブユニットCNAから構成されたヘテロ二量体からなる。3つの異なるCNAアイソ型があり、異なる遺伝子によってコードされたCNAα、CNAβ、およびCNAγ他と呼ばれる。Ca2+/カルモジュリン複合体に対するCNAサブユニットの結合は、活性に必要と思われる。CNBサブユニットは、カルモジュリンと構造的に関連しており、また完全CN活性に必要である。概してミリストイル化されているCNBは、概ねCa2+非存在下でCNAと結合したままであり、Ca2+がBサブユニットに結合した場合、ホスファターゼ活性が増加する。
カルシニュリンは、種々の異なるメカニズムを通してその効果を及ぼす。一主要作用機序は、転写因子のNF−ATファミリーの調節を介した転写の制御を含む(Shaw,J.P.,et al.(1988),Science,241:202−205;Flanagan,W.M.(1991),Nature,352:803−7;Liu,J.,et al.(1991),Cell,66:807−15;reviewed in Crabtree,G.(2001),J.Biol.Chem.,276(4):2313−2316,およびそれらに含まれる引用文献を参照)。明らかに、NF−ATファミリー・メンバーは、2つの構成成分を含むもので、そのうちの一方(NFATc)は細胞質に存在し、他方(NFATn)は核酸に存在する。カルシニュリンは、直接NF−ATサブユニットを脱リン酸化することで、NF−AT経路で機能し、続いて核に転移し、さらに核ではカルシニュリンが、NF−AT応答性調節要素(プロモーター)を含む多様なセットの転写を調節する活性複合体を形成する。カルシニュリンも種々の他の方法で作用し、そのうちのいくつかは転写とは独立している。
カルシニュリン活性は、ドーパミン作動性シグナル伝達の下流制御(Greengard,P.(2001)Science 294,1024−30)およびNMDA受容体依存シナプス可塑性のある種の形態の導入(Mulkey,R.et al.,(1994)Nature 369,486−8;Zeng,H.,et al.,(2001)Cell 107, 617−29)に重要な役割を担う。Yakel,J.(1997),Trends in Pharmacological Science,18:124−134およびその参照文献も参照せよ。このように、カルシニュリン機能は、ドーパミン作用性シグナル伝達とグルタミン酸作動性シグナル伝達との間のクリティカル・リンクを含む。
CNおよび/またはCNサブユニット(CNAイソ型および/またはCNB)は、種々の他の細胞内分子と相互作用する(物理的相互作用として直接、または物理的相互作用を必要としないなんらかの他のメカニズムとして間接的に)。一般に、これらの分子は、CN機能、レベルまたは活性の多くの側面のいずれかを変える可能性がある。例えば、いかなる限定を意味するものではなく、それらの分子のいくつか(例えば、Cabin 1)がCNの内因性阻害剤であり、他のものが基質(例えば、NF−ATc)、チャンネル、または受容体等である。
「CN、CNサブユニット、またはCN相互作用分子」というフレーズには、限定されるものではないが、カルシニュリン活性を持つ分子または分子複合体もしくはそれらのサブユニット(例えば、CNによる脱リン酸化部位として知られる部位で既知のCN基質を脱リン酸化する分子または分子複合体);カルシニュリン活性を変えるか、もしくは修飾する(例えば、増進(エンハンス)または抑制)分子;カルシニュリンの発現(任意のCNサブユニットまたは他のCN相互作用分子の発現調節含む)、細胞内位置、および/または機能的活性の調節する分子;カルシニュリン基質;細胞内カルシウム・レベルまたは局在化を調節してCN活性を変えたり、影響を及ぼしたりするチャンネル、ポンプ、または受容体;CN、CNサブユニット、および/またはCN相互作用分子を修飾および/または翻訳後処理する分子;ならびにカルシニュリンの効果をエンハンスまたはアンタゴナイズする分子が含まれる。本発明のいくつかの実施形態によれば、「カルシニュリン相互作用分子」として、カルシウム・チャンネルが挙げられ、例えば電気容量調節活性化チャンネル(capacitance regulated activation channel)(CRAC;Serafini,T.,et al.,Immunity,3,239−250,1995;Fanger,C.,et al.,J.Cell.Biol.,131,655−667,1995;Timmerman,L.,et al.,Nature,383,837−40,1996),L型カルシウム・チャンネル、カルシウム・ポンプ等がある。CN、CNサブユニット、またはCN相互作用分子の「発現の調節」として、転写の調節および翻訳後処理(例えば、スプライシング、ポリアデニル化)および/またはそのような分子をコードする転写産物の局在化、そのような分子をコードする転写産物の翻訳の調整、さらにそのような分子をコードする転写産物の分解の調整もしくは該分子そのものの分解の調整が挙げられる。
したがって、用語「CN相互作用分子」には、限定はされないが、CNおよび/またはCNサブユニットと物理的に相互作用する分子が含まれることが認識される。本明細書に記載されるように、CN、CNサブユニット、および/またはCN相互作用分子をコードする特定の遺伝子は、従来のマッピングまたは同定された統合失調症感受性遺伝子座と同時に存在する。本発明は、そのような分子に限定することを意図するものではなく、このサブセットには、以下のものが含まれる。すなわちCNB;CNAα;CNAβ;CNAγ;Cabin 1;カルシニュリンB相同タンパク質;カルシプレシン類(例えばDSCR−1);カルサルシン−1;カルサルシン−3;Aキナーゼ・アンカー・タンパク質5;FK506結合タンパク質5;インターロイキン・エンハンサー結合因子2(活性T細胞核因子のILF2サブユニット);活性T細胞、細胞質、カルシニュリン依存2の核因子;リアノジン受容体3型;IP3(イノシトール・トリホスフェート)受容体1型;下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP);カルシウム・シグナル調節シクロフィリン・リガンド;およびカルシニュリン活性と相互作用する種々の他の分子である。これらの分子および他のものを、それらの染色体位置および統合失調症感受性遺伝子座と同時に存在するまたは近くにある位置とともに、表1にリストにする。(表1中の参考文献は、参考文献リスト2でリストにされている)。特定のこれらの分子およびカルシニュリン・シグナル伝達でのそれらの役割に関する更なる詳細については、実施例2に提供する。今日まで特定のCNサブユニットおよび/またはCN相互作用分子の染色体位置と同時に存在するまたは近くにある統合失調症遺伝子座がないという事実は、遺伝的研究により、感受性遺伝子座のサブセットのみが同定されているという事実のみを反映するものであろう。
III.統合失調症および関連症状の遺伝的分析
統合失調症の原因は知られていないが、かなりの遺伝的要素を含むことが示されている。メンデル性遺伝パターンを示し、かつ単一遺伝子での突然変異が原因の嚢胞性線維症および鎌状赤血球貧血等の障害とは異なり、統合失調症は、多遺伝子性障害であると考えられ、この際多くの異なる遺伝子での突然変異または変異は、異なる程度および異なる組み合わせで、疾患の発生に寄与することが可能である。複数の遺伝子からの寄与は、任意の所定の患者に関与し、それらの遺伝子でのその突然変異または変異は、浸透度の変動する程度を示すので、個体が統合失調症病因に寄与することが可能な突然変異または変異を有する場合であっても、該個体が臨床上の疾患を発症しない可能性があるようだ。これらの特色により、統合失調症の遺伝的基礎を決定的に確定することが難しくなる。
多数の遺伝的研究により、ゲノムDNAの特定の領域(染色体位置)は、統合失調症の発症に寄与する突然変異または変異を有する可能性があるとして関係づけられる(Karayiorgou,M.&Gogos,J.A.(1997)Neuron 19,967−79;Thaker,G.K.&Carpenter,W.T.,Jr.(2001)Nat Med 7,667−71)。これらの領域は、通常、多数のキロベース長またはメガベース長程度であり、「感受性遺伝子座」として言及され、これらの領域のどこかにある突然変異または変異は、このような突然変異または変異を有する個体がその症状を発症する可能性の増加を付与すると考えられているという事実を反映する。そのため、このような領域は、患者の少なくともサブセットで、単独でまたは組み合わさって統合失調症に因果的に関与する遺伝子を有する可能性がある。遺伝的研究としては、一般集団の発生率と比べて、統合失調症の発生率の増加を有するファミリー(本明細書で「統合失調症ファミリー」として言及される)が研究されるリンク研究と、統合失調症であると診断される関連および非関連被験体両方を典型的に含む集団、例えば統合失調症ファミリーのグループが研究される関連研究とが挙げられる。関連研究では、対照および羅患集団での特定のハプロタイプの頻度を比較することができる。また、それらは、羅患発端者への特定のハプロタイプの伝達での不均衡を評価することができる。当該技術分野で許容される定義にしたがって、「ハプロタイプ」とは、単一の染色体上の所定の多形性現象に対する特異的な多形性変異体または特定の個体に対する単一の染色体上で表される多形性現象のグループに対する多形性変異体の組み合わせ(対立遺伝子)であり得る。
リンクおよび関連研究は、通常、遺伝的多形性現象、すなわちゲノム中の特定の位置にある集団のメンバー間に存在するゲノムDNA配列間の相違を利用する(例えばCardon,L.およびBell,J.、(2001),Nature Reviews Genetics,Vol.2,pp.91−99;Kruglyak,L.およびLander,E.(1995),Am.J.Hum.Genet.,56:1212−1223;Jorde,L.B.(2000),Genome Research,10:1435−1444;Pritchard,J.およびPrzeworski,M.(2001),Am.J.Hum.Genet.,69:1−14、ならびに遺伝的研究の設計の検討を論じるための、特に複合体の形質および統合失調症等の複数の遺伝子が役割を果たす疾患に関する先述の文献中の参考文献を参照せよ)。例えば、集団は、個体の複数のサブ集団を含むことが可能であり、そのそれぞれは、特定の染色体位置で、異なるDNA配列を有する。このような多形性現象は、単一ヌクレオチド相違(単一ヌクレオチド多形性現象、本明細書でSNPとして言及される)であり得る(例えばNowotny,P.ら、(2001),Curr.Op.Neurobiol.,11:637−641;Wall,J.(2001),11:647−651、ならびにこれらの文献中の参考文献を参照せよ)。コーディング領域内でSNPが生じるとき、それらにより、しばしば違うが、コードされるタンパク質のアミノ酸配列で変化を生じる可能性がある。一般に、任意の理論に制約されないことが望まれるが、SNPは、元はより均一な祖先配列であった突然変異の結果として生じると考えられている。他の多形性現象としては、複数のヌクレオチド多形性現象、欠失(微小欠失を含む)、挿入、逆位、転座等が挙げられる。
特定の多形性変異体は、例えばコードされるタンパク質での機能的変化を引き起こすことによって、疾患または表現型変異の原因であり得る一方で、多くの多形性現象は、サイレントであるらしく、この際異なる対立遺伝子を有する個体間で、表現型での既知の検出可能な相違は存在しないことが認識される。しかし、多形性現象(サイレントであってもなくても)は、遺伝子またはDNA配列に物理的および/または遺伝的に連鎖することが可能であり、この際突然変異または変異は、疾患に感受性を付与し、かつ/または疾患の原因としての役割を果たす(すなわち、それらはDNAの隣接する断片内に位置する)。遺伝的組み換えの非存在下で、このような突然変異または変異に物理的に連鎖する多形性現象は、一般に、突然変異または変異とともに遺伝される。
任意の所定の多形性現象および原因突然変異または変異間の遺伝的組み換えを増加するにつれて、共遺伝の程度が低減される。一般に、遺伝子座間の距離が増加するにつれて(必ずしも直線式ではないが)、遺伝子座間の遺伝的組み換えの可能性が増加するので、特定の多形性現象および特定の表現型の共遺伝は、多形性現象が原因突然変異または変異の近傍に位置していることを示唆する。したがって、多形性変異体、例えばSNPの共遺伝の研究によって、単独であるいは他の突然変異または変異と組み合わさって疾患感受性を引き起こすまたは増加させる突然変異または変異を有する可能性のあるゲノム領域の同定が可能になる。したがって、多形性現象は、遺伝的マッピングおよび候補遺伝子の同定に有用であり、その際突然変異または変異は、疾患の原因としての役割を果たすことが可能である。さらに、特定の多形性変異体(対立遺伝子)の検出は、本明細書に記載されるような疾患または疾患感受性の診断に有用である。
連鎖および関連研究により、多数の統合失調症感受性遺伝子座が同定されている。例えば、実施例3および4に関する参考文献リストの参考文献1〜24ならびに米国公表特許出願20020165144を参照せよ。これらの参考文献は代表的な例のみであり、当業者は、文献を調べて、付加的な該遺伝子座を知ることができる。さらに、遺伝的研究から同定された統合失調症感受性領域内または近くに位置する多数の候補遺伝子は、統合失調症の病因に役割を果たすことが示唆されている(例えばStraub,R.E.ら、Am.J.Hum.Genet(2002)71:337−348;Stefannson,H.ら、Am.J.Hum.Genet.(2002)71:877−892を参照せよ。しかし、統合失調症における任意のこれらの候補遺伝子の関与の決定的な証拠には欠けている)。
統合失調症は、類似表現型のスペクトルを示す精神医学的症状および障害のグループの1つである。これらの症状および障害の多くは、一般集団でのそれらの発生率に対して、統合失調症被験体のファミリー・メンバーで高い頻度で見出される。これらの要素によって、統合失調症感受性および/または病因に寄与する同じ遺伝的突然変異または変化は、これらの症状および障害の感受性および/または病因にも関与していることが考えられる。したがって、本発明の方法および試薬は、これらの関連症状および障害にも適用可能である。
統合失調症に関連する症状としては、限定はされないが、分裂感情障害、分裂病型人格障害、統合失調症(schizotypy)、非典型的な精神病性障害、回避性人格障害、躁鬱病、注意欠陥多動障害(ADHD)、および強迫性障害(OCD)が挙げられる。これらの症状に関する特色および診断基準は、DSM−III、DSM III−R、DSM−IV、またはDSM IV−Rで定義される。説明目的としては、「統合失調症および/または関連症状もしくは障害」に言及する以外で、本発明は、統合失調症自体の観点で記載される。しかし、本方法および試薬は、統合失調症自体について記載されるように、これらの症状および障害に関しても同様の方法で用いられ得ることが理解される。同様に、統合失調症用の潜在的な予防または治療薬剤として同定された化合物も、これらの関連障害の治療および/または予防のために用いられることが可能である。以下のセクションで、本発明の様々な態様の更なる説明を提供する。
IV.統合失調症または統合失調症感受性の診断用の方法および試薬
A.診断方法。本発明は、統合失調症または統合失調症感受性の診断用の様々な方法を提供する。具体的には、本発明は、(i)統合失調症または統合失調症感受性について試験すべき被験体から得た試料を提供するステップと、(ii)カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする遺伝子のコーディングまたは非コーディング部位中の多形性現象の多形性変異体を検出する、あるいは試料中のカルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする遺伝子のコーディングまたは非コーディング部位に結合するゲノム領域中の多形性現象の多形性変異体を検出するステップとを含む統合失調症または統合失調症感受性を診断するための方法を提供する。「統合失調症感受性」とは、被験体が統合失調症を発症していることを必ずしも意味しないが、統計学的な意味で、集団の平均的なメンバーと比べて被験体が統合失調症を発症する可能性が高いことが理解される。本明細書で使用されるように、被験体が、単独でまたは1つ以上の他の遺伝的決定因子と組み合わさって被験体のいくつかまたは全てで統合失調症を発症するリスクの増加に寄与する1つ以上の遺伝的決定因子(例えば多形性変異体または対立遺伝子)を有する場合、「統合失調症感受性」は存在することが可能である。被験体が任意の該遺伝的決定因子(すなわち、適当な遺伝的バックグラウンドで、統合失調症を発症するリスクを増加させる遺伝的決定因子)を有するかどうかを確認することは、本明細書で使用されるように、統合失調症感受性を診断するという概念に含まれる。このような決定因子は、例えば遺伝的カウンセリングの目的のために有用である。したがって、統合失調症感受性に関する診断情報を提供することは、遺伝的カウンセリングで有用な情報を提供することを含み、このような情報の提供は、本発明により組み込まれる。
試料自体は、通常、被験体から除去された細胞(例えば血液細胞)、組織等からなる。被験体は、成体、児童、胎児、または胚であり得る。本発明の特定の実施形態に従えば、胎児または胚から、あるいは母体から(例えば母体循環系に入る胎児または胚細胞から)試料を出生前に得る。検出ステップの前に試料をさらに処理することが可能である。例えば、細胞または組織試料中のDNAを試料の他の成分から分離すること、増幅すること等が可能である。任意の種類の更なる処理を受けるものを含む被験体から得た全ての試料は、被験体から得られると考えられる。
一般に、多形性現象が遺伝子中に位置する場合、それは、遺伝子の非コーディングまたはコーディング領域中に位置することが可能である。コーディング領域中に位置する場合、多形性現象により、しばしば違うが、アミノ酸変化を生じる。このような変化は、コードされるペプチドの機能または活性に影響する可能性がある、あるいは可能性がない。多形性現象が遺伝子に結合するが遺伝子内に位置しない場合、多形性現象は、遺伝子に密に結合することが好ましい。例えば、多形性現象および遺伝子間の組み換え頻度は、約20%未満、好ましくは約10%未満、約5%未満、約1%未満、またはそれより低いことが好ましい。
上記に記載される任意の本発明の方法の特定の好適な実施形態に従えば、遺伝子は、マッピングおよび同定された統合失調症感受性遺伝子座と同時に存在する。例えば、本発明の様々な実施形態にしたがって、遺伝子は、表1にリストにされる任意の分子をコードすることが可能である。以下にさらに論じる本発明の特定の実施形態では、遺伝子は、CNAγサブユニットをコードする。本発明の方法は、さらにマッピングまたは同定されるべき統合失調症感受性遺伝子座と同時に存在する遺伝子も包括する。「同時に存在する(coincident with)」とは、遺伝子またはその部分が、同定された染色体位置内で存在する、あるいはその位置に近接して位置することを意味する。一般に、遺伝的感受性遺伝子座を同定する研究の最小識別距離は、数十センチモルガン程度が可能である。本発明の特定の実施形態に従えば、「近接(close proximity)」とは、感受性遺伝子座のいずれかの側の20センチモルガン内を指し、より好ましくは感受性遺伝子座のいずれかの側の10センチモルガン内、さらにより好ましくは感受性遺伝子座のいずれかの側の5センチモルガン内を指す。一般に、感受性遺伝子座は、それらが及ぶ染色体バンド位置によって指定(例えば8p21は染色体8、腕p、バンド21を指す;8p20−21は、染色体8、腕p、バンド20〜21包括を指す)され、より高度の最小識別距離で定義され得る(例えば8p21.1)。一般に、用語「同時に存在する(coincident with)」および「近接(close proximity)」は、当業者の知識に照らし合わせて解釈され得る。
神経系で、例えば脳で発現される遺伝子は、統合失調症感受性遺伝子として特に興味深い候補であり得る。脳全体にわたって、脳中の特定の領域中で、あるいは統合失調症病因に関連する細胞型または領域(例えば前脳、皮質、海馬等)等の脳中の細胞型または領域中で、このような遺伝子を発現させることが可能である。しかし、脳で発現するとして現在認識されていない遺伝子が重要である可能性がある。例えば、特定の成長段階中で、特定の環境条件中で等、脳細胞の小サブセット中のみで、このような遺伝子を発現させることが可能である。脳内に加えて、あるいは脳内の代わりに脳外で、統合失調症感受性遺伝子を発現させることも可能である。
本発明は、(i)統合失調症または統合失調症感受性について試験すべき被験体から得た試料を提供するステップと、(ii)正常な被験体から得た試料で期待されるカルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子の発現または活性に対して、試料中のカルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子の発現または活性での変化または変異を検出するステップとを含む統合失調症または統合失調症感受性を診断するための方法をさらに提供する。例えば、本発明の様々な実施形態に従えば、遺伝子は、表1にリストにされる任意の分子をコードすることが可能である。さらに以下に論じるような本発明の特定の実施形態では、遺伝子は、CNAγサブユニットをコードする。
診断用の任意の本発明の方法の特定の実施形態に従えば、疾患または症状が臨床的に現れる前に本方法を適用する。これは、初期の介入に都合がよい。疾患の発症前(例えば出生前診断の場合は誕生前)に、羅患しやすい被験体(または出生前診断の場合は被験体の母体)に適当な療法を施すことが可能である。統合失調症は、少なくとも部分的に発展障害であり得るので、このような初期の介入が疾患の予防に重要であり得る。
以下のセクションで、本発明の方法および試薬の特定の実施形態に関する更なる詳細を提供する。限定することを意図するものではないことが理解される。
B. 多形性現象の同定および検出のための方法および試薬。一般に、当該技術分野で周知の任意の多数の方法を用いて、本発明を実施するために用いられる多形性現象を初めに同定することが可能である。例えば、多数の多形性現象が存在することが知られており、例えば実施例3に記載されるように検索することができる公開データベースで入手可能である。また、多形性現象を見出すことが望まれる領域中のゲノムDNAまたはcDNAをシーケンシングすることによって、多形性現象を同定することが可能である。1つのアプローチにしたがって、プライマーを設計して、このような領域を増幅し、統合失調症を羅患している被験体由来のDNAを得て増幅する。DNAをシーケンシングして、配列(「被験体配列」として言及される)を、通常「正常」または「野生型」配列を表すとされる基準配列と比較する。このような配列は、例えば実施例3で言及される様々なデータベースで公に入手可能なヒト・ドラフト・ゲノム配列またはジーンバンク(GenBank)等のデータベースに受託されている配列であり得る。一般に、シーケンシングによって、シーケンシング領域および基準配列間の相違が明らかになった場合、多形性現象が同定されている。この分析は、被験体配列または基準配列が「正常の」、最も共通の、または野生型の配列であることを必ずしも前提としていないことに注意する。実際は、多形性現象がその部位で存在することを決定する特定の部位でヌクレオチド配列での相違を同定する。多くの例では、特にSNPの場合では、2つの多形性変異体のみが任意の位置に存在する。しかし、SNPの場合は、DNA中に4つの天然に発生するヌクレオチドが存在するので、4つまでの変異体が存在することが可能である。挿入等の他の多形性現象は、4つより多い対立遺伝子を有することが可能である。
いったん多形性部位を同定したら、任意の様々な方法を使用して、被験体中の任意の特定の多形性変異体の存在を検出することが可能である。一般に、被験体は、その部位で基準配列または代替的な配列を有することが可能である。本明細書で使用されるように、フレーズ「多形性現象を検出する」または「多形性変異体を検出する」とは、一般に、2つ以上の多形性変異体のどちらが多形性部位に存在するかを決定することを指すが、「多形性現象を検出する」とは、多形性部位が集団中に存在することを初めに決定するプロセスも指す。これらのフレーズに与えられる意味は、当該技術分野の通常の技術の1つの知識に照らし合わせて解釈されるように、文脈から明らかになる。説明目的としては、被験体が所定の基準配列(例えばヒト・ドラフト・ゲノムに存在する配列)以外の任意の配列を多形性部位で有する場合、被験体は、多形性現象を示すと言及される。一般に、所定の多形性現象に関しては、任意の個体は、多形性部位(各染色体上のもの)で1つまたは2つの可能な変異体を示す。(しかし、これは、個体が欠失等の1つ以上の染色体異常を示す場合はそのケースではない可能性がある。)
上記に記載されるように多形性現象の存在を初めに確立する方法と同様に、シーケンシングによって、被験体中の多形性現象または多形性変異体の検出(遺伝子タイピング)を実行することが可能である。しかし、いったん多形性現象の存在を確立したら、様々なより効率的な方法を使用することが可能である。そのような方法の多くは、2つ以上の多形性変異体間での識別を容易にするオリゴヌクレオチド・プローブまたはプライマーの設計に基づいている。
本明細書で使用されるように、「プローブ」または「プライマー」とは、通常、塩基特異的な方法で相補的な核酸分子にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを指す。このようなプローブおよびプライマーとしては、ポリペプチド核酸が挙げられ、Nielsenら、Science,254,1497−1500(1991)に記載されている。具体的には、用語「プライマー」とは、一般に、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、LCR(リガーゼ連鎖反応)等の方法を用いた鋳型指向性DNA合成の開始点として機能することができる一本鎖オリゴヌクレオチドを指す。通常、プローブまたはプライマーは、少なくとも約8の、より頻繁には少なくとも約10から15の、通常は約20〜25の、頻繁には約40の、50の、または75の、核酸分子の連続するヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド配列の領域を含む。本発明の特定の実施形態では、プローブまたはプライマーは、100またはそれより少ないヌクレオチド、好ましくは6から50のヌクレオチド、好ましくは約12から30のヌクレオチドを含む。本発明の特定の実施形態では、プローブまたはプライマーは、隣接するヌクレオチド配列と、または隣接するヌクレオチド配列の相補体と少なくとも70%同一であり、好ましくは少なくとも80%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、さらにより好ましくは少なくとも95%同一であり、あるいはかなり高程度の同一性を有する。本発明の特定の実施形態では、好適なプローブまたはプライマーは、標的隣接ヌクレオチド配列と、または隣接ヌクレオチド配列の相補体と選択的にハイブリダイズすることができる。本発明の特定の実施形態に従えば、プローブまたはプライマーは、例えば放射性同位体、蛍光化合物、酵素、または酵素補因子を組み込むことによって、標識をさらに含む。
当該技術分野の通常の技術の1つによって、多形性部位への差別的または選択的結合を示すオリゴヌクレオチドを容易に設計することが可能である。例えば、多形性部位を包括する配列(すなわち、その中に、あるいは一端または他端に多形性部位を含む配列)に完全に相補的なオリゴヌクレオチドは、一般に、別の多形性変異体を有する核酸に相対する配列を含む核酸に優先的にハイブリダイズする。
多形性現象および/または多形性変異体を検出するために、多形性部位を包括するDNAの部分を増幅することがしばしば望まれる。その部位に隣接するゲノム配列および/またはcDNA配列に基づいて設計されたオリゴヌクレオチド・プライマーを用いたPCRによって、このような領域を増幅および単離することができる。例えばPCR Primer:A Laboratory Manual,Dieffenbach, C.W.およびDveksler,G.S.(Eds.);PCR Basics:From Background to Bench,Springer Verlag、2000;M.J.McPhersonら;Mattilaら、Nucleic Acids Res.,19:4967(1991);Eckertら、PCR Methods and Applications,1:17(1991);PCR(eds. McPhersonら、IRL Press,Oxford);ならびに米国特許番号第4,683,202号を参照せよ。使用され得る他の増幅方法としては、リガーゼ連鎖反応(LCR)(WuおよびWallace、Genomics,4:560(1989)、Landegrenら、Science,241:1077(1988)、転写増幅(Kwohら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:1173(1989))、自己持続性配列複製(self−sustained sequence replication)(Guatelliら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA,87:1874(1990))、ならびに核酸ベースの配列増幅(nucleic acid based sequence amplification(NASBA))が挙げられる。PCR増幅用のプライマーを選択するためのガイドラインは、当該技術分野で周知である。例えばMcPherson,M.ら、PCR Basics: From Background to Bench, Springer−Verlag、2000を参照せよ。プライマーを設計するための様々なコンピュータ・プログラムが利用可能であり、例えばオリゴ(「Oligo」)(National Biosciences, Inc, Plymouth MN)、マックベクター(MacVector)(Kodak/IBI)、および配列分析プログラムのGCG一式(Genetics Computer Group,Madison, Wisconsin 53711)である。
統合失調症または統合失調症感受性を診断するための特定の方法にしたがって、サザン分析、ノーザン分析、またはインシトゥ・ハイブリダイゼーション等のハイブリダイゼーション方法を用いることができる(Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel,F.ら、eds.,John Wiley & Sonsを参照せよ)。例えば、試料(例えばゲノムDNA、RNA、またはcDNAを含む試料)を、統合失調症に感受性または羅患状態であると疑われる被験体から得る。その後、DNA、RNA、またはcDNA試料を検査して、カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする遺伝子のコーディングまたは非コーディング部位中の多形性変異体あるいはカルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする遺伝子のコーディングまたは非コーディング部位に結合するゲノム領域中の多形性変異体が存在するかを測定する。核酸プローブへの、例えばDNAプローブ(cDNAおよびオリゴヌクレオチド・プローブを含む)またはRNAプローブへのゲノムDNA、RNA、またはcDNA中の遺伝子のハイブリダイゼーションによって、多形性変異体の存在を示すことができる。核酸プローブを設計して、特定の多形性変異体に、例えば統合失調症感受性を示唆する多形性変異体に特異的または優先的にハイブリダイズさせることができる。
統合失調症感受性を診断するために、少なくとも1つの核酸プローブに試料を接触させることによって、ハイブリダイゼーション試料を形成する。該プローブは、通常、カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする遺伝子のコーディングまたは非コーディング部位中の多形性部位を包括する、あるいはカルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする遺伝子のコーディングまたは非コーディング部位に結合するゲノム領域中の多形性変異体を包括するmRNA、ゲノムDNA、および/またはcDNA配列にハイブリダイズすることができる核酸プローブ(例えば放射性、蛍光、または酵素標識またはタグで標識することが可能)である。核酸プローブは、例えば少なくとも15、30、50、100、250、または500ヌクレオチド長であり、かつストリンジェントな条件下で、適当なmRNA、cDNA、またはゲノムDNAに特異的にハイブリダイズするのに十分なオリゴヌクレオチド等の完全長核酸分子またはその部分であり得る。
多形性部位を包括する領域への核酸プローブの特異的ハイブリダイゼーションを可能にするように選択される条件下で、ハイブリダイゼーション試料を維持する。例えば上記に記載されるような高ストリンジェンシー条件または中ストリンジェンシー条件下で、特異的なハイブリダイゼーションを実行することができる。特に好適な実施形態では、特異的ハイブリダイゼーション用のハイブリダイゼーション条件は、高ストリンジェンシーである。一般に、プローブは、それがハイブリダイズする領域に完全に相補的であることが可能であり、すなわち、部位が任意の特定の多形性配列を含むとき、多形性部位を包括する領域に完全に相補的である。複数の核酸プローブ(例えば多形性部位でのみ異なる複数のプローブまたは複数の多形性部位にある多形性変異体を検出するように設計された複数のプローブ)をこの方法で同時に用いることが可能である。核酸プローブの任意の1つの特異的ハイブリダイゼーションは、カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする遺伝子のコーディングまたは非コーディング部位中の多形性変異体の指標、あるいはカルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする遺伝子のコーディングまたは非コーディング部位に結合するゲノム領域中の多形性変異体の指標であるので、統合失調症感受性の診断となる。
カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする遺伝子のコーディングまたは非コーディング部位中の多形性現象の多形性変異体を検出するために、あるいはカルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする遺伝子のコーディングまたは非コーディング部位に結合するゲノム領域中の多形性変異体を検出するために、同様の核酸プローブを用いてノーザン分析を実行することが可能である。例えば、上記で参照されるAusubel、Current Protocols in Molecular Biologyを参照せよ。
本発明の特定の実施形態に従えば、上記に記載されるハイブリダイゼーション方法で、核酸プローブの代わりに、ペプチド核酸(PNA)プローブを用いることができる。PNAは、メチレン・カルボニル・リンカーを介してグリシン窒素に結合する有機塩基(A、G、C、TまたはU)とともにペプチド様無機主鎖、例えばN−(2−アミノエチル)グリシン単位を有するDNA擬態である(例えばNielsen,P.E.ら、Bioconjugate Chemistry,1994,5,American Chemical Society,p.1(1994)を参照せよ)。PNAプローブを設計して、統合失調症感受性を付与するまたは統合失調症の存在を示唆する多形性変異体を含む核酸に特異的にハイブリダイズさせることができる。
別の方法に従えば、多形性現象の別の多形性変異体により、制限部位の生成または除去を生じる場合、制限酵素消化分析を用いて、多形性現象の多形性変異体の存在を検出することができる。ゲノムDNAを含む試料を個体から得る。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、多形性部位を含む領域を増幅することができ、制限断片長多形性現象分析を実行する(上記で参照されるCurrent Protocols in Molecular Biologyを参照せよ)。関連DNA断片の消化パターンは、多形性現象の特定の多形性変異体の有無を示すので、統合失調症感受性の存在または非存在の指標である。
配列分析を用いても、特異的多形性変異体を検出することができる。DNAまたはRNAを含む試料を被験体から得る。PCRまたは他の適当な方法を用いて、必要であれば多形性部位を包括する部分を増幅することができる。その後、任意の標準的方法を用いて配列を確認して、多形性変異体の存在を測定する。
対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを用いても、例えば対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブを用いた増幅オリゴヌクレオチドのドットブロット・ハイブリダイゼーションの使用を介して、多形性変異体の存在を検出することができる(例えばSaiki,R.ら、(1986),Nature (London) 324:163−166を参照せよ)。「対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド」(本明細書で「対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド・プローブ」としても言及される)は通常、多形性現象を、例えば統合失調症感受性に関連する多形性現象を含む核酸領域に特異的にハイブリダイズする約10〜50塩基対のオリゴヌクレオチドであり、好ましくは約15〜30塩基対のオリゴヌクレオチドである。標準的方法を用いて、特定の多形性現象に特異的な対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド・プローブを調製することができる(Current Protocols in Molecular Biologyを参照せよ)。
複数の多形性変異体のどれかが被験体中に存在するかを測定するために、DNAを含む試料を個体から得る。PCRを用いて、多形性部位を包括する部分を増幅することができる。標準的方法(Current Protocols in Molecular Biologyを参照せよ)およびオリゴヌクレオチド・プローブに接触させるブロットを用いて、増幅部分を含むDNAをドットブロットすることが可能である。その後、DNAへのプローブの特異的ハイブリダイゼーションの存在を検出する。被験体から得たDNAへの対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド・プローブ(統合失調症感受性を示唆する多形性変異体に特異的な)の特異的ハイブリダイゼーションは、統合失調症感受性の指標である。
本発明の別の実施形態に従えば、被験体から得た核酸部分に相補的なオリゴヌクレオチド・プローブのアレイを用いて、多形性現象を同定することができる。オリゴヌクレオチド・アレイは、通常、異なる既知の位置で基盤表面に結合する複数の異なるオリゴヌクレオチド・プローブを有する。これらのオリゴヌクレオチド・アレイは、ジーンチップ(Genechip)(商標)としても言及され、例えば米国特許番号第5,143,854号ならびにPCT特許出願番号WO 90/15070および92/10092に記載されている。一般に、フォトリソグラフィー方法および固相オリゴヌクレオチド合成方法の組み合わせを取り込む機械的合成方法または光指向性合成方法を用いて、このようなアレイを製造することができる。Fodorら、Science,251:767−777(1991)、Pirrungら、米国特許番号第5,143,854号(PCT出願番号WO 90/15070も参照)、ならびにFodorら、PCT出願番号WO 92/10092および米国特許番号第5,424,186号を参照せよ。機械的合成方法を用いてこれらのアレイを合成する技術については、例えば米国特許番号第5,384,261号に記載されており、その全技術が参照により本明細書に組み込まれる。
アレイには、通常、異なる多形性変異体に特異的にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチド・プローブが含まれる。本方法に従えば、対象核酸、例えば多形性部位を包括する核酸(これは通常増幅される)をアレイとハイブリダイズさせて、走査する。一般に、標準的方法にしたがってハイブリダイゼーションおよび走査を実行する。例えば公表PCT出願番号WO 92/10092およびWO 95/11995、ならびに米国特許番号第5,424,186号を参照せよ。ハイブリダイゼーションおよび洗浄後に、アレイを走査して、核酸がハイブリダイズするアレイ上の位置を測定する。走査から得られたハイブリダイゼーション・データは、通常、アレイ上の位置の関数としての蛍光強度の形態である。
アレイには、複数の検出ブロック(すなわち特定の多形性現象の検出用に設計されたプローブの複数のグループ)を含むことができる。このようなアレイを用いて、複数の異なる多形性現象を分析することができる。単一のアレイ内または複数の異なるアレイ中で検出ブロックをグループ分けするので、ハイブリダイゼーション中で、変動条件(例えば、特定の多形性現象に最適化された条件)を用いることが可能である。例えば、A−T濃縮セグメントに集合するものとは分離して、ゲノム配列のG−C濃縮伸長内に集合するそれらの多形性現象の検出に備えることが望ましい。
多形性現象の検出用のオリゴヌクレオチド・アレイの使用の付加的な説明については、例えば米国特許番号第5,858,659号および第5,837,832号で見出され得る。本発明の特定の実施形態では、オリゴヌクレオチド・アレイに加えて、cDNAアレイを同様に用いることが可能である。
核酸分析の他の方法を用いて、多形性現象および/または多形性変異体を検出することができる。このような方法としては、例えば直接手動シーケンシング(ChurchおよびGilbert、(1988),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:1991−1995;Sanger,F.ら、(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.74:5463−5467;Beavis et al,米国特許番号第5,288,644号);自動化蛍光シーケンシング;一本鎖コンフォメーション多形性現象アッセイ(SSCP);固定変性ゲル電気泳動(CDGE);変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)(Sheffield,V.C.et al,(19891)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:232−236)、移動度シフト分析(Orita,M.et al,(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2766−2770)、制限酵素分析(Flavellet al,(1978)Cell 15:25;Geever et al,(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:5081);ヘテロ二本鎖分析;化学的ミスマッチ切断(CMC)(Cotton et al,(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:4397−4401);RNアーゼ保護アッセイ(Myers,R.M.et al,(1985)Science 230:1242);ヌクレオチド・ミスマッチを認識するポリペプチド、例えば大腸菌(E.coli)mutSタンパク質の使用;対立遺伝子特異的PCR等が挙げられる。
本発明の特定の実施形態では、蛍光偏光鋳型指向性染料−ターミネーター組み込み(fluorescence polarization template−directed dye−terminator incorporation(FP−TDI))を用いて、多形性現象の複数の多形性変異体のどれが被験体中に存在するかを測定する。この方法は、鋳型指向性プライマー伸長および蛍光偏光による検出に基づいている。この方法にしたがって、対立遺伝子特異的染料標識ジデオキシリボヌクレオシド・トリホスフェートおよび市販の修飾TaqDNAポリメラーゼの存在下で、オリゴヌクレオチド・プライマー(多形性部位に隣接するDNA鋳型にハイブリダイズするように設計されている)とともに多形性部位を含む増幅ゲノムDNAをインキュベートする。鋳型上に存在する対立遺伝子に特異的な染料−ターミネーターによって、プライマーを伸長し、蛍光団の分子量を10倍まで増加する。反応の最後に、分離または精製することなく、反応混合物中の2つの染料−ターミネーターの蛍光偏光を直接分析する。この均一なDNA診断方法は、非常に感度がよく、かつ特異的であることが示されており、多数の試料の自動化遺伝子タイピングに適している(Chen,X.et al,Genome Research,Vol.9,Issue 5,492−498、1999)。対立遺伝子特異的プローブまたはプライマーの使用を含む代わりに、この方法は、多形性部位に隣接して停止するプライマーを使用するために、単一のヌクレオチドによるプライマーの伸長によって、多形性部位の多形性変異体に相補的なヌクレオチドの取り込みが生じることに注意する。
リアルタイム・ピロリン酸DNAシーケンシングは、多形性現象および多形性変異体を検出するためのさらに別のアプローチである(Alderborn,A.et al,Genome Research,Vol.10,Issue 8,1249−1258,2000)。付加的な方法としては、例えば変性高速液体クロマトグラフィー(dHPLC)と組み合わせたPCR増幅法が挙げられる(Underhill,P.A.et al,Genome Research,Vol.7,No.10,pp.996−1005、1997)。
一般に、ゲノム中に存在する多形性部位の両コピーに関して、被験体の遺伝子型を決定することが対象である。例えば、−/−として、−/+として、または+/+として完全な遺伝子型を特徴付けることが可能であり、この際マイナス記号は、多形性部位にある基準または野生型配列の存在を示しており、プラス記号は、基準配列以外の多形性変異体の存在を示している。複数の多形性変異体が部位に存在する場合、これは、どちらのものが被験体中に存在するかを特定することによって、適当に示され得る。上記の任意の検出手段を用いて、被験体のゲノム中に存在する多形性現象の1つのまたは両方のコピーに関して、被験体の遺伝子型を決定することが可能である。
本発明の特定の実施形態に従えば、複数の多形性変異体(例えば、複数の多形性部位にある多形性変異体)の存在を平行してまたは実質的に同時に検出することができる方法を使用することが好ましい。オリゴヌクレオチド・アレイは、そうするための1つの好適な手段を表す。反応(例えば、増幅、ハイブリダイゼーション)が個別の容器中、例えばマルチウエル・プレートの個別のウエルまたは他の容器内で実行される方法を含む他の方法を、本発明の特定の実施形態にしたがって、複数の多形性変異体(例えば複数の多形性部位にある多形性変異体)の存在を平行してまたは実質的に同時に検出するように実行することが可能である。
本発明の方法は、コンピュータ読み取り可能媒体に格納された多形性配列のリストを含むデータベースを提供し、この際多形性配列が、カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする遺伝子のコーディングまたは非コーディング部位中で、あるいはこのような遺伝子に結合するゲノム領域中で生じ、かつリストが、大きくまたは全体的に多形性現象に限定されており、統合失調症または統合失調症感受性の遺伝子診断を実施する際に、あるいは統合失調症または統合失調症感受性の遺伝学的研究を実施する上で、有用なものとして同定されている。
C. プライマー、プローブ、オリゴヌクレオチド・アレイ、およびキット。
本発明は、カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする遺伝子のコーディングまたは非コーディング部位中の多形性現象の多形性変異体、あるいはカルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする遺伝子のコーディングまたは非コーディング部位に結合するゲノム領域中の多形性現象の多形性変異体を検出するできるオリゴヌクレオチド・プローブおよびプライマーを提供する。本発明の特定の実施形態に従えば、多形性部位にある特定の多形性変異体の存在は、統合失調症感受性または統合失調症の診断の指標である。遺伝子には、限定はされないが、本明細書に記載される(表1)任意の遺伝子中の多形性現象を検出することができるプライマーが含まれる。具体的には、本発明は、表3に定義されるような、CNAγサブユニットをコードする遺伝子中のCC−5、CC−21、CC33、およびCC−S3多形性現象の多形性変異体を検出することができるオリゴヌクレオチド・プローブおよびプライマーを提供する。
本発明の特定の実施形態に従えば、対立遺伝子特異的プライマーおよび/またはプローブは、好ましくは、検出すべき対立遺伝子に正確に相当する(すなわち、それらは配列で同一であるか、または多形性部位を包括するDNAの部分に完全に相補的であり、この際該部位が任意の可能な変異体を含む)が、その誘導体も提供され、この際例えば3’末端にある約6〜8のヌクレオチドは、検出すべき対立遺伝子に相当(すなわち配列で同一であるか、完全に相補的である)し、かつ8まで、6まで、4まで、2まで、または1までの残りのヌクレオチド等の10までの残りのヌクレオチドを、プライマーまたはプローブの特性に著しく影響することなしに変化させることが可能である。
本発明は、オリゴヌクレオチド・プライマーのセットをさらに提供し、この際プライマーは、カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする遺伝子のコーディングまたは非コーディング部位中の多形性部位に隣接して停止するか、あるいはプライマーは、カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子コードする遺伝子のコーディングまたは非コーディング部位に結合するゲノム領域中の多形性部位に隣接して停止する。このようなプライマーは、上記に記載されるように、例えば蛍光偏光鋳型指向性染料−ターミネーター取り込みを実行するのに有用である。具体的には、本発明は、表3に定義されるような、CNAγサブユニットをコードする遺伝子中のCC−21、CC33、およびCC−S3多形性部位にすぐ近くに隣接して停止するオリゴヌクレオチド・プライマーと、表2に定義されるような、CNAγサブユニットをコードする遺伝子中のCC−5多形性部位のすぐ近くに隣接して停止するプライマーとを提供する。これらのプライマーを用いて、例えばCC−21、CC−33、CC−S3の存在;G、C、A統合失調症リスク・ハプロタイプを検出することと、限定はされないが、多形性部位にAを有する変異体を含むCC−5多形性現象および多形性変異体の存在を検出することとが可能である。
本発明は、CC−21、CC−33、CC−S3、およびCC−5多形性現象のそれぞれに対して、3’側上の多形性部位のすぐ近くに隣接するヌクレオチド位置で停止し、かつこの部位から5’方向に少なくとも8および100未満のヌクレオチドを伸長するプライマーを提供する。先述のものには、両DNA鎖を表す配列を有する2つのクラスのプライマーが含まれることに注意する。本発明の特定の実施形態に従えば、プライマーは、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、または少なくとも20ヌクレオチドを5’方向で伸長する。本発明の特定の実施形態に従えば、プライマーは、80未満、60未満、50未満、40未満、30未満、または30未満のヌクレオチドを5’方向で伸長する。本発明は、カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする遺伝子中の任意の多形性部位、あるいはこのような遺伝子に結合するゲノム領域中の多形性部位対して同様に停止および伸長するプライマーをさらに提供し、この際多形性部位にある多形性現象の多形性変異体は、統合失調症感受性を付与するか、または統合失調症の存在の指標である。
一般に、任意の簡便な合成方法を用いて、プライマーおよびプローブを作製する。このような方法の例については、標準的な教科書、例えば”Protocols for Oligonucleotides and Analogues; Synthesis and Properties,”Methods in Molecular Biology Series;Volume 20;Ed.Sudhir Agrawal,Humana ISBN:0−89603−247−7;1993で見出され得る。本発明の特定の実施形態に従えば、プライマーおよび/またはプローブを標識して、検出を容易にする。
セットで、例えば特定の多形性部位で存在できる可能な多形性変異体のいくつかまたは全てのうちどの多形性変異体が存在するかについて測定することができるセットで、本発明のプライマーおよびプローブを簡便に提供することが可能である。該セットには、対立遺伝子特異的プライマーまたはプローブおよび/あるいは多形性部位のすぐ近くに隣接して停止するプライマーが含まれ得る。複数の多形性部位にある多形性変異体を検出することができるプライマーおよび/またはプローブの複数のセットを提供することが可能である。
診断および/または調査目的用のキットの形態でプライマーまたはプローブを提供することが可能であり、これは、限定はされないが、本発明の方法で使用するための適当なパッケージングおよび指示、適当な緩衝液、ヌクレオチド、ならびに/あるいは耐熱性ポリメラーゼ、例えばTaqポリメラーゼ等のポリメラーゼ、他の酵素、陽性および陰性対照試料、陰性対照プライマーおよび/またはプローブ等を含む任意の様々な他の構成要素をさらに有することが可能である。
本発明は、1つ以上の上記に記載される本発明のプローブを有するオリゴヌクレオチド・アレイをさらに提供する。具体的には、本発明は、表2および3に定義されるような、CNAγサブユニットをコードする遺伝子中のCC−5、CC−21、CC−33、およびCC−S3多形性現象(例えば、CC−21、CC−33、CC−S3;G、C、A統合失調症リスク・ハプロタイプ)の多形性変異体を検出することができるオリゴヌクレオチド・プローブを含むオリゴヌクレオチド・アレイを提供する。診断および/または調査目的用のキットの形態で、このようなアレイを提供することが可能である。キットには、オリゴヌクレオチド・アレイのハイブリダイゼーションおよびプロセッシングに特異的な更なる構成要素に加えて、上記に記載される任意の構成要素が含まれ得る。アレイを走査することによって得られた結果を分析するための適当なソフトウエア(すなわち、コンピュータ読み取り可能媒体に格納されるコンピュータ読み取り可能命令)が本発明により提供される。このようなソフトウエアは、ユーザーに、例えば試料の遺伝子型の指標を提供し、かつ/あるいは統合失調症への被験体の感受性の程度の評価または被験体が統合失調症に羅患する可能性の評価を提供する。
本発明の特定の実施形態に従えば、FDA承認診断キットに必要な良好な製造実施にしたがって、キットを製造する。
D. mRNAでの変化の検出。本発明の特定の実施形態に従えば、被験体が統合失調症に感受性または羅患状態であるかどうかを決定するために、mRNA発現での変化または変異を検出する。被験体から得た試料中のカルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードするmRNAの発現レベル(すなわち存在量)、発現パターン(例えば細胞下局在化、細胞型特異性を含む時間的または空間的発現パターン)等を測定して、正常な被験体から得た試料中で予期される発現レベルまたは発現パターンと比較する。mRNAサイズ、プロセッシング(例えばスプライシング変異体の存在、ポリアデニル化等)も比較することが可能である。本発明の特定の実施形態に従えば、カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子は、統合失調症感受性の遺伝子座内または遺伝子座に結合する遺伝子、あるいは統合失調症感受性または統合失調症の発症に貢献または寄与する機能性突然変異が存在し得る遺伝子座内の遺伝子にコードされるものである。
一般に、限定はされないが、ノーザン・ブロッティング、cDNAまたはオリゴヌクレオチド・アレイ・ハイブリダイゼーション、インシトゥ・ハイブリダイゼーション、RNアーゼ保護、PCR(例えばRT−PCR、定量的PCR)等を含む当該技術分野で既知の任意の多数の好適な方法を用いて、このような検出および/または比較を実行することが可能である。対照試料での検出方法を実行するよりはむしろ比較目的のために、従来のデータ(例えば正常集団での既知の発現レベル、パターン、またはサイズ)を用いることが可能である。
本発明は、上記に記載される分析を実行するのに有用なcDNAプローブおよびPCRプライマー、例えば1つ以上の多形性変異体に特異的にハイブリダイズするcDNAプローブおよびPCRプライマーを提供する。このようなプローブおよび/またはプライマーは、多形性部位を包括することが可能であり、任意のその可能な変異体中の部位を包括する領域に完全に相補的または配列で同一であり得る。本発明の特定の実施形態に従えば、プローブおよび/またはプライマーは、エキソン特異的であり、例えばそれらは、特定のエキソンを含有または欠失する変異体に選択的または特異的にハイブリダイズする。上述したもの等の他の構成要素に加えて、例えば上記に記載されるcDNAプローブおよび/またはプライマーを含む診断および/または調査目的用のキットが本発明により提供される。
E.タンパク質での変化の検出。本発明の特定の実施形態に従えば、被験体が統合失調症に感受性または羅患状態であるかどうかを決定するために、タンパク質発現での変化または変異および/または活性を検出する。被験体から得た試料中のカルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子の発現レベル(すなわち存在量)、発現パターン(例えば細胞下局在化、細胞型特異性を含む時間的または空間的発現パターン)、サイズ、他の細胞構成成分との関連(例えばCN複合体等の複合体での)等を測定して、正常な被験体から得た試料で予期される発現レベルまたは発現パターンと比較する。本発明の特定の実施形態に従えば、カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子は、統合失調症感受性の遺伝子座内のまたは遺伝子座に結合する遺伝子、あるいは統合失調症感受性または統合失調症の発症に貢献または寄与する機能性突然変異が存在し得るに遺伝子座内の遺伝子にコードされるものである。
一般に、限定はされないが、イムノブロッティング(ウエスタン・ブロテッィング)、免疫組織化学法、ELISA、ラジオイムノアッセイ、タンパク質チップ(例えば関連タンパク質に対する抗体を含む)等を含む当該技術分野で既知の任意の多数の好適な方法を用いて、このような検出および/または比較を実行することが可能である。比較目的のために、従来のデータ(例えば正常集団での既知の発現レベル、活性、発現パターン、またはサイズ)を用いることが可能である。
本発明は、カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子に特異的に結合することができる抗体を提供し、この際該サブユニットまたは分子は、統合失調症感受性の遺伝子座内のまたは遺伝子座に結合する遺伝子、あるいは統合失調症感受性または統合失調症の発症に貢献または寄与する機能性突然変異が存在し得るに遺伝子座内の遺伝子にコードされる。具体的には、本発明は、このようなカルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子の変異体に特異的に結合することができる抗体を提供し、この際被験体中の変異体の存在は、統合失調症感受性または統合失調症の存在の指標である。このような抗体は、多形性変異体にコードされる部位で異なるカルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子間で識別することができる。
抗体を生産するための一般に適用可能な方法は、当該技術分野で既知であり、上記に引用される参考文献、例えばCurrent Protocols in Immunology and Using Antibodies:A Laboratory Manualに広範に記載されている。完全長ポリペプチド、部分的ポリペプチド、融合タンパク質、またはペプチド(免疫原生を高めるために別の部と結合することができる)を用いて、動物(またはヒト)を免疫化することによって、抗体を生成できることに注意する。抗体の特異性は、動物を免疫化するために用いられる特定の調製によって、および抗体がポリクローナルまたはモノクローナルであるかによって変動する。例えば、ペプチドを用いる場合、結果として生じる抗体は、そのペプチドによって表される抗原決定基のみに結合する。ポリペプチドの特定の領域に、例えば細胞外ドメインに特異的に結合する抗体を開発および/または選択することが望ましい。その領域に対応するペプチドまたはポリペプチド断片を用いて動物を免疫化することによって、このような特異性を達成することが可能である。または、モノクローナル抗体のパネルをスクリーニングして、所望の領域に特異的に結合するものを同定することができる。上述したように、本発明の特定の実施形態に従えば、抗体は、多形性部位にコードされる領域を含む抗原決定基に特異的に結合する。本発明の特定の実施形態に従えば、このような抗体は、単一のアミノ酸により異なる分子間で識別することができる。具体的には、本発明は、アミノ酸163を含むCNAγまたはその部分に特異的に結合することができる抗体を提供し、この際アミノ酸163は、グルタミンまたはアルギニンである。本明細書で記載される任意の抗体を標識することが可能である。
本発明は、パネルで、例えば任意の特定のカルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子の複数の変異体に特異的に結合することができる抗体のパネル、および複数のカルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子の複数の変異体に特異的に結合することができる抗体のパネルで任意の先述の抗体を提供する。酵素反応用の基質を含む上述の付加的な構成要素を有するキットで、抗体を提供することが可能である。調査、診断、および/または治療目的のために、抗体を用いることが可能である。
一般に、好適な抗体は、高親和性を、それらの標的に対して、例えば200nM未満のK、好ましくは100nM未満のKを有する。本発明の特定の実施形態に従えば、 好適な抗体は、正常組織、例えば心臓、腎臓、脳、肝臓、骨髄、結腸、胸部、前立腺、甲状腺、胆嚢、肺、副腎、筋肉、神経線維、膵臓、皮膚等の主に重要な組織に対して著しい反応性を示さない。心臓、腎臓、中枢神経系組織、末梢神経系組織、および肝臓に対して低反応性を有する抗体が特に好ましい。組織に対する反応性の文脈では、用語「著しい反応性」とは、本明細書で使用されるように、免疫組織化学法に適した条件下で対象組織に適用されるとき、染色を全く誘発しないか、または無視できる程度に誘発する(例えば大部分のネガティブな細胞のフィールド間に散乱した少数のポジティブな細胞のみ)抗体または抗体フラグメントを指す。
本発明の特定の実施形態に従えば、被験体から得た試料中のカルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子の機能的活性を検出および/または測定して、正常な被験体から得た試料中で予期されるカルシニュリン・サブユニットまたは相互作用分子の活性と比較する。本発明の特定の実施形態に従えば、カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子は、統合失調症感受性の遺伝子座内のまたは遺伝子座に結合する遺伝子、あるいは統合失調症感受性または統合失調症の発症に貢献または寄与する機能性突然変異が存在し得るに遺伝子座内の遺伝子にコードされるものである。機能的活性を検出および/または測定する上で使用される特定のアッセイは、アッセイされる特定の分子に依存することが認識される。例えば、分子がホスファターゼ(例えばCN)である場合、適当なアッセイは、ホスファターゼの基質を用いたホスファターゼ・アッセイである。多数のCN基質(例えばDARPP−32、ダイナミン等)が当該技術分野で既知である。活性とは、転写を活性化または抑制する能力のことであり、これは、適当なレポーター構築物を用いて測定され得る。活性とは、別の分子に結合する能力および/またはその他の分子等の活性を阻害する能力であり得る。
V. 統合失調症または統合失調症感受性を治療するのに有用な化合物をスクリーニングするための方法および試薬。
本発明は、統合失調症または統合失調症感受性の治療で有用な化合物をスクリーニングするために用いることが可能な多数の方法および試薬を提供する。これらの方法にしたがって同定される任意の本発明の試薬、方法、および化合物は、統合失調症または統合失調症感受性の治療に関連する使用に限定されず、様々な他の目的のために使用され得ることに注意する。下記に記載されるスクリーニングは、理解するために都合よくかつ容易であるためのみにカテゴリー別に区分され、その分類は、任意の方法で化合物の適用を限定することまたはそれらの作用メカニズムに関して任意の制限を与えることを意図したものではないことにも注意する。
A.カルシニュリン活性を調節(増強または低減)する化合物のスクリーニング。
1.NF−AT転写アッセイ。本発明の方法の1つにしたがって、DNAトランスフェクション、電気穿孔法等を用いて、カルシニュリン機能に適した宿主である細胞系中に、カルシニュリン・サブユニットおよびNF−ATを発現、ならびにNF−ATレポーター構築物(例えばNFAT−ルシフェラーゼまたは任意の他の適当なNF−ATレポーター、例えばプロモーター等のNF−AT応答調節因子に作用可能に結合する検出可能なマーカーをコードする核酸を含む構築物)を導入する。また、この経路の1つ以上のカルシニュリンまたはNFAT成分を発現する細胞系を、宿主として用いることができ、例えばDNAトランスフェクションによって内在的に発現されない任意の成分を提供することができる。一般に、多数の一般に利用可能な細胞系が好適な宿主である。本発明の特定の実施形態に従えば、Cabin1またはCHP等の1つ以上のCNの内在性阻害剤を発現する細胞系の使用を避けることが好ましい。本発明の特定の実施形態に従えば、治療効果が生じると期待されるものと同様の特徴を示す細胞系、例えば神経またはグリア細胞系を用いることが可能である。
所望の成分全てを発現する細胞系をカルシウム・イオノフォアおよびPMAで処理して、NF−ATレポーター構築物(例えばNFAT−ルシフェラーゼ)の活性を評価することによって測定されるカルシニュリン活性を促進することが可能である[22〜24]。化合物(例えばコンビナトリアル・ライブラリ、天然産物の集まり等のメンバー)の非存在または存在下でのレポーター活性の比較を用いて、変化(例えば増加または減少)されたNFAT媒介転写を産生する化合物を同定する。これらのうち、化合物は、直接的にあるいはカルシニュリンまたは他の相互作用物を介して間接的に、NFAT活性を増加または減少させるものである。カルシニュリン特異性を確認するために、特異的カルシニュリン・サブユニット以外の存在する経路の全てのメンバーを用いて、または構成的に活性な形態のNF−AT45kDサブユニットの存在下で、同アッセイを実行することができる。これは、特異的カルシニュリン・サブユニットを欠損する細胞系を用いること、またはアッセイ中にRNAiによって特異的サブユニットを不活性化することを必要とする。1つ以上の特異的カルシニュリン触媒サブユニットをコードする1つ以上の転写物を標的にしたsiRNAの存在下で、本発明のスクリーニングを実行して、例えば単一の発現カルシニュリン触媒サブユニットを特異的に標的とする化合物をスクリーニングすることも可能である。
したがって、本発明は、(i)NF−AT、カルシニュリン、およびNF−ATレポーターを含む生物学的系を提供するステップと、(ii)生物学的系を化合物と接触させるステップと、(iii)化合物存在下でのレポーターの転写応答を、化合物の非存在下での応答または予想応答と比較するステップとを含む統合失調症または統合失調症感受性を治療するための候補化合物を同定する方法を提供する。化合物の存在下での転写応答が化合物の非存在下で生ずる、または見込まれる転写応答とは異なる(例えばより大きいまたはより少ない)場合、該化合物を統合失調症または統合失調症感受性の治療用のカルシニュリン活性のモジュレーターおよび候補化合物として同定する。「生物学的系」とは、任意の容器(vessel)、ウエル、または容器(container)を意味し、その中に生体分子(例えば核酸、ポリペプチド、多糖、脂質等);細胞または細胞集団;組織;生体等を入れる。通常、生物学的系とは、細胞または細胞集団であるが、精製タンパク質または組み換えタンパク質を用いて本方法を容器(vessel)中で実行することもできる。
トランスフェクションと組み合わせあるいはCabin 1またはCHP等のカルシニュリン阻害タンパク質を加えたこのアッセイを用いて、カルシニュリンおよび阻害タンパク質間の結合に干渉することによりカルシニュリンを活性化する化合物をスクリーニングすることもできる。また、阻害タンパク質遺伝子トランスフェクションの非存在下で、アッセイを繰り返すことによって、またはRNAiを用いて阻害タンパク質の発現を阻害することによって、特異性を測定することができる。
本発明の特定の実施形態に従えば、CNAαおよび/またはCNAβを標的にしたsiRNAの存在下でスクリーニングを実行して、CNAγ依存カルシニュリン活性を標的とする化合物を特異的にスクリーニングする。本発明の他の実施形態に従えば、CNAαまたはCNAβを欠損する細胞系で、スクリーニングを実行して、CNAγ依存カルシニュリン活性を標的とする化合物を特異的にスクリーニングする。その後、CNAαおよび/またはCNAβが存在し、かつCNAγ活性が存在しない同様のアッセイで同定化合物を試験して、化合物のCNAγ特異性に関して試験することが可能である。
上記のアッセイにより、NF−AT活性を高める非カルシニュリン指向性化合物も産生される可能性がある。これらの化合物は、高められたCN活性を模倣するので、統合失調症の有用な治療も包含することが可能である。このような化合物と、CNBサブユニット(または他のCNサブユニット)に直接結合するのみでCN活性に作用しない任意の化合物とをCNBノックアウト・マウス(または他のCNサブユニットを持たないマウス)で試験して、有効性に対するアッセイとして、それらがCNBの非存在の挙動的作用を抑制するかどうかを測定することが可能である。CN突然変異マウスを処理することによって、非CN結合候補化合物の有効性をスクリーニングする方法を参照せよ。
上記のスクリーニング方法は、NF−AT活性を減少または阻害する化合物も産生し、あるいは例えば高程度の基底NF−AT活性を示すレポーターを使用することおよび活性での低減をスクリーニングすることによって、そうするように容易に改変することができる。
2.カルシニュリン結合タンパク質の結合を阻害する分子のスクリーニング。標準的な酵母2ハイブリッドおよび/または3ハイブリッド・アッセイを用いることで、Cabin 1、CHP、CS1などのカルシニュリン結合タンパク質がカルシニュリン複合体および/またはサブユニットに結合するのを阻害する分子を得るためのスクリーニングを行うことが可能である。
3.CNホスファターゼ活性の賦活剤または阻害剤を得るためのスクリーニング。本発明は、例えば、基質脱リン酸化アッセイを用いた、CNホスファターゼ活性の賦活剤および阻害剤を同定する方法を提供する。本発明の特定の実施形態によると、リン酸化されたCN基質が提供され、候補化合物の存在下または非存在下で、CNと共に(そして場合によっては1つ以上のCN相互作用タンパク質と共に)生体外でインキュベートされる。基質の脱リン酸化の程度または速度が測定され、該化合物にさらされなかった細胞における脱リン酸化の程度または速度と比較される。該化合物にさらされた細胞で脱リン酸化の程度または速度が増大すれば、該化合物がCNホスファターゼ活性の賦活剤であることを示唆し、該化合物にさらされた細胞でリン酸化の程度または速度が減少すれば、該化合物がCNホスファターゼ活性の阻害剤であることを示唆する。他の細胞組成が存在しないため、そのような抑制または活性化の機構は、CNおよび/または基質の間での物理的相互作用が関与するという意味において、直接的である可能性が高い。上のアッセイのための成分(例えば、CN、CN相互作用タンパク質)は、細胞から単離、および/または精製してもよく、かつ/または生体外の組換えDNA技術を用いて生産してもよい。あるいは、それらの成分を含有する細胞抽出物を、CNおよび/またはCN相互作用蛋白質の供給源として用いてもよい。そのような細胞は、それらの成分の1つ以上を内在的に発現してもよく、あるいは、1つ以上のCNサブユニットおよび/またはCN相互作用タンパク質をコードする1つ以上のコンストラクトによって形質転換/エレクトロポレーションなどがされていてもよい。
したがって、本発明は、統合失調症または統合失調症感受性を治療するための候補化合物を同定する方法であって、(i)リン酸化されたカルシニュリン基質およびカルシニュリンを含有する生物学的系を提供するステップと;(ii)該化合物を生物学的系に接触させるステップと;(iii)基質の脱リン酸化の程度または速度を、該化合物の非存在下で起こるか、または起こると予想される脱リン酸化の程度または速度と比較するステップとを含む方法を提供する。該化合物存在下での基質の脱リン酸化の程度または速度が、該化合物非存在下で起こるか、または予想されるであろう基質の脱リン酸化の程度または速度と異なる(例えば、大きいか、または小さい)場合、該化合物をカルシニュリン活性の変調剤(modulator)として、かつ統合失調症または統合失調症感受性の治療のための候補化合物として同定する。
これらのアッセイには、いかなるCN基質を用いてもよい。通常、基質は検出を容易にするために標識されるだろう。脱リン酸化アッセイのための基質として、例えば、33−P標識された19残基のホスホペプチド(RIIホスホペプチド)、リン酸化されたDARPP−32、リン酸化された阻害剤1、またはこれらのタンパク質(もしくは、ダイナミンなどの他のCN基質)のリン酸化されたフラグメントを用いてもよい。そのような標識は、放射性のものでも、または放射性でないものでもよい。放射性標識(例えば、32−P)が使用される場合、放射性標識の検出に標準的な技法を用いて、基質のリン酸化状態を評価してもよい。
本発明の特定の実施形態によると、基質の脱リン酸化の程度または速度を検出するのに、リン酸化状態に特異的な抗体が用いられる。DARPP−32/阻害剤1に対する、リン酸化状態に特異的なモノクローナル抗体は、当技術分野で公知である[26、27]。リン酸化されていないDARPP−32/阻害剤1に特異的に結合する抗体は、それらと類似の方法を用いることで容易に生成されるだろうし、他のCN基質のリン酸化形態、または脱リン酸化形態に特異的に結合するリン酸化状態特異的モノクローナル抗体も同様であろう。
本発明の特定の実施形態にしたがい、このアッセイを、特定のカルシニュリン・サブユニットに特異的にするため、すべてのヒト・カルシニュリン型の組換え型、すなわち組替えヒトCNAγと、組替えヒトCNAαと、組替えヒトCNAβとを生成してもよい。これは例えば、Mondragon,A.et al,Biochemistry(1997),36(16):4934−42の記載にしたがって、達成してもよい。組替えヒトCNAγを用いてアッセイを行い、その活性を調節する化合物を得るためのスクリーニングを行ってもよい。同定された化合物は、その後、化合物のサブユニット特異性を決定するため、すなわち、CNAγに特異的な化合物を同定するため、組替えヒトCNAαまたはCNAβを用いた同一のアッセイによってテストすることが可能である。このスクリーニングによって、CNAγ依存的カルシニュリン活性を変調(modulate)する(すなわち、促進、または抑圧する)化合物を同定することができる。
CNおよびCN基質(ならびに、場合によっては、CN相互作用タンパク質のいずれか)を発現する細胞を、候補化合物にさらすことによる、類似の細胞ベース・アッセイ(cell−based assay)を行うことが可能である。そのような細胞は、CNおよび/またはCN相互作用分子と、CN基質とを内在的に発現してもよく、あるいは、これらの成分のいずれかをコードする1つ以上のコンストラクトで形質転換/エレクトロポレーションされていてもよい。また、細胞は、CN基質のリン酸化に必要な上流コンポーネント、またはCN基質のリン酸化に寄与する上流コンポーネントを発現する(または、発現するように操作されている)ことが好ましい。
CN基質は、細胞から単離され、脱リン酸化(またはリン酸化)の程度または速度が測定され、該化合物にさらされなかった細胞における脱リン酸化(または、リン酸化)の程度と比較される。該化合物にさらされた細胞における脱リン酸化(または、リン酸化)の程度または速度の増大は、該化合物がCNホスファターゼ活性の賦活剤(または、阻害剤)であることと示唆し、該化合物にさらされた細胞における脱リン酸化(または、リン酸化)の程度または速度の減少は、該化合物がCNホスファターゼ活性の阻害剤(または、賦活剤)であることを示唆する。そのような抑制または活性化の機構は、直接的であっても、または間接的であってもよい。
本発明の特定の実施形態によると、上述のように、CNAαおよびCNAβの非存在下でスクリーニングを行うことによって、スクリーニングの特異性が達成される。その後、CNAαまたはCNAβが存在し、かつCNAγが存在しない状態でスクリーニングを行うことによって、スクリーニングのサブユニット特異性を評価することができる。このスクリーニングによって、CNAγ依存的にカルシニュリン活性を変調する(すなわち、促進、または抑圧する)化合物が同定される。
細胞ベースのスクリーニングで脱リン酸化を測定するか、またはリン酸化を測定するかは、その基質が細胞内でリン酸化される程度によるであろう。本発明のある特定の実施形態によると、アッセイを行う前に、CN基質のリン酸化を増大させる化合物で細胞を処置する。例えば、DARPP−32/阻害剤1をリン酸化された状態にするため、細胞を適切なアゴニスト、例えば、ドーパミンによって処置してもよい。候補化合物の存在下および非存在下で、PMAおよびイオノマイシンによって、カルシニュリン系路を準飽和レベルに活性化してもよい。基質の脱リン酸化/リン酸化の程度または速度を検出するのに、免疫組織化学的方法、および/または、ELISAアッセイ(例えば上記のリン酸化状態特異的抗体を用いて)などの生体外免疫検出方法を用いてもよい。本発明の特定の実施形態によると、脱リン酸化の程度または速度を検出する定量的方法(例えば、ELISA)が採用される。
上記の発明的方法のある特定の実施形態によると、該化合物存在下でのCN基質の脱リン酸化の程度および/または速度が、該化合物非存在下での脱リン酸化の程度または速度に比べて増加または減少する場合、該化合物は統合失調症または統合失調症感受性の治療のための潜在的治療薬として同定される。この発明的方法のある特定の実施形態によると、該化合物存在下でのCN基質のリン酸化の程度および/または速度が、該化合物非存在下でのリン酸化の程度または速度に比べて増加または減少する場合、その化合物は統合失調症または統合失調症感受性の治療のための潜在的治療薬として同定される。
上の方法のいずれかの特定の実施形態によって、CNを活性化または阻害するとされたいずれかの化合物の特異性を確認するために、公知のCN阻害剤の存在下でアッセイが行われる(公知のCN阻害剤には、Cabin 1、CHP、DSCR1、DSCR2、ZAK14などの内在性阻害剤;シクロスポリンAやFK506などの免疫抑制剤薬;シペルメトリンやデルタメトリンなどのピレトロイド殺虫剤などを含む、いくつかのクラスが存在する)。
B.リガンドを含むリアノジン受容体3型を標的にする化合物を得るためのスクリーニング。
本発明は、統合失調症または統合失調症感受性の治療のための候補化合物として、リアノジン受容体3型の活性を変調する化合物を同定するさまざまな方法を提供する。そのような方法の1つは、リアノジン受容体3型への標識リアノジンの結合を変調する化合物の同定を含む。この方法によると、小胞体(ER)膜がリアノジン受容体3型を発現する細胞から単離され、標識リアノジン(例えば、[3H]リアノジン、または他のいかなる形態の標識リアノジンも使用可能である)の存在下でインキュベートされる。膜の単離に先立ち、細胞を候補化合物で前処置することが可能であり、あるいは、候補化合物との接触の前、後、または最中に、該化合物を単離された膜標品に加えることが可能である。
膜標品への標識リアノジンの結合を変化させる化合物が同定される。このアッセイは、リアノジン受容体への[3H]リアノジンの結合に対する、スラミンおよびスラミン・アナログの効果を評価するのに用いられている[28]。その場合、スラミンによって、膜へのリアノジンの結合が増加することと、チャネルの開く確率が増加する(例えば、カルシウム流入が増大する)こととが示されている。したがって、この原則に基づくスクリーニングによって、リアノジン受容体3型の活性を変調する化合物の同定が可能になるだろう。それらの同定される化合物の中には、受容体への結合を標識リアノジンと競合するリアノジン受容体リガンドがあるだろう。
本発明の特定の実施形態によると、そのように同定された化合物は、その後、細胞内カルシウム放出に対するそれら化合物の効果に関して、例えば、カルシウム感受性指示体を用いて、スクリーニングされる。多数のカルシウム感受性指示体が当技術分野で周知である。特異性は、リアノジン受容体3型を発現しない細胞のカルシウム放出に対する化合物の効果を調べることによって、または、リアノジン受容体3型をコードする転写産物を標的とするsiRNAと組み合わせることによって評価することができる。該化合物が特異的であるなら、その効果が、そのような細胞において、リアノジン受容体3型を発現する細胞より、実質的に少ないはずである。膜標品へのリアノジンの結合を変化させる化合物を検出するための方法で、標識リアノジンを使わない他の方法も、本発明の範囲の中にある。膜標品への標識リアノジンの結合を変化させる化合物は、統合失調症または統合失調症感受性の治療のための候補薬剤である。また、該化合物は、リアノジン受容体3型の活性を変調することが望ましい場合のいかなる目的に用いてもよい。
したがって、本発明は、統合失調症または統合失調症感受性の治療のための候補化合物を同定する方法であって、(i)リアノジン受容体3型を含む細胞膜を含有する生物学的系を提供するステップと;(ii)該生物学的系を該化合物と接触させるステップと;(iii)細胞膜をリアノジンと接触させるステップと;(iv)該化合物の存在下でリアノジンが細胞膜に結合する程度または速度を、該化合物の非存在下で起こる結合、または予測されるだろう結合の、程度または速度と比較するステップと;(v)該化合物の存在下で結合する程度または速度が、該化合物の非存在下で起こる結合、または起こると予測された結合の程度または速度と異なる場合に、該化合物を統合失調症または統合失調症感受性の治療のための候補化合物として同定するステップとを含む方法を提供する。本発明の特定の実施形態によると、リアノジンは標識されている。本発明の特定の実施形態によると、膜はER膜である。
C.リガンドを含むIP3受容体1型(ITPR1)を標的にする化合物を得るためのスクリーニング。本発明は、統合失調症または統合失調症感受性の治療のための候補化合物として、IP3受容体1型の活性を調節する化合物を同定するさまざまな方法を提供する。そのような方法の1つは、標識されたイノシトール1、4、5三リン酸(IP3)のIPTR1受容体への結合を変調する化合物の同定を含む。この方法によると、小胞体(ER)膜が、IPTR1受容体を発現する細胞から単離され、標識IP3(例えば、[3H]IP3、または他のいかなる形態の標識IP3も使用可能である)の存在下でインキュベートされる。膜の単離に先立ち、細胞を候補化合物で前処置することが可能であり、あるいは、候補化合物との接触の前、後、または最中に、該化合物を単離された膜標品に加えることが可能である。
膜標品への標識IP3の結合を変化させる化合物が同定される。このアッセイは、細胞膜上のIP3受容体への[3H]IP3の結合に対する、シクロスポリンA[29]またはクロロキン[30]の効果を評価するのに使われた。それらの研究で、シクロスポリンAまたはクロロキンによって、膜への[3H]IP3の結合が減少することと、カルシウム流入が減少することとが示された。したがって、この原則に基づくスクリーニングによって、IP3受容体1型の活性を変調する化合物が同定されるだろう。それらの同定される化合物の中には、受容体との結合を標識IP3と競合するリガンドがあるだろう。同定された化合物を、その後、カルシウム感受性指示体を用い、細胞内カルシウム放出に対するそれら化合物の効果に関して、スクリーニングすることが可能である。
特異性は、IP3受容体1型を発現しない細胞のカルシウム放出への該化合物の効果を調べることによって、または、IP3受容体1型をコードする転写産物を標的とするsiRNAと組み合わせることによって評価することができる。該化合物が特異的であるなら、その効果が、そのような細胞において、IP3受容体1型を発現する細胞より、実質的に少ないはずである。膜標品へのIP3の結合を変化させる化合物を検出するための方法で、標識されたIP3を使わない他の方法も、本発明の範囲の中にある。膜標品への標識IP3の結合を変化させる化合物は、統合失調症または統合失調症感受性の治療のための候補薬剤である。また、該化合物は、IP3受容体1型の活性を変調することが望ましい場合のいかなる目的に用いてもよい。リアノジン受容体3型とIP3受容体1型とが複合体を形成することは、注目されるべきことであり、例えば複合体の形成を阻害または活性化することによって、この複合体の形成に影響を与える化合物も、本発明の範囲の中に含まれる。
したがって、本発明は、統合失調症または統合失調症感受性の治療のための候補化合物を同定する方法であって、(i)IP3受容体1型を含む細胞膜を含有する生物学的系を提供するステップと;(ii)該生物学的系を該化合物に接触させるステップと;(iii)該細胞膜をIP3に接触させるステップと;(iv)該化合物の存在下でIP3が該細胞膜に結合する程度または速度を、該化合物の非存在下で起こる結合、または予測されるだろう結合の、程度または速度と比較するステップと;(v)該化合物の存在下で結合する程度または速度が、該化合物の非存在下で起こる結合、または起こると予測された結合の程度または速度と異なる場合、該化合物を統合失調症または統合失調症感受性の治療のための候補化合物として同定するステップとを含む方法を提供する。本発明の特定の実施形態によると、IP3は、標識されている。本発明の特定の実施形態によると、膜はER膜である。
D.PP1活性を変調する化合物を得るためのスクリーニング。本発明は、広く発現されるセリン/トレオニン・ホスファターゼであるプロテイン・ホスファターゼI(PPI)の活性を変調する(例えば、増大または低減する)化合物を得るための多くのスクリーニングを提供する。PP1は、カルシニュリンによる、様々な阻害剤(例えば、阻害剤1)の脱リン酸化依存的不活性化で間接的に活性化される。リン酸化された阻害剤1は、PP1の多くの阻害剤の1つである。(Watanabe,T.et al,Proc Natl Acad Sci USA、2001年3月13日;98(6):3080−5)。本発明の発明者らは、どのような理論に縛られることも望まないが、カルシニュリン活性の増進によって阻害剤1の不活性化が増大され、PP1活性化の増大が引き起こされるであろうと提案する。逆に、カルシニュリン活性の低減が阻害剤1の不活性化を低減させ、さらにPP1活性化の低減を引き起こし、その結果PP1活性が増大するのかもしれない。
PP1の基質の中には、MAPキナーゼ/c−fosプロモーター[28]、cAMP/CREB系路のコンポーネント[29]、およびレチノイン酸受容体経路のコンポーネント[30]などのシグナルの伝達系路の要素がある。これらの系路の最終出力の1つが、特異的なレポーター構成体(reporter construct)を用いることで測定可能な転写反応である。本発明は、PPI活性を変調する候補治療化合物を同定するための方法で、(i)PP1応答調節因子(PP1−responsive regulatory element)を有す転写レポーター構成体を持つ生物学的系を提供するステップと;(ii)該化合物を該生物学的系と接触させるステップと;(iii)該化合物の存在下での該構成体の転写応答を、該化合物の非存在下での応答または予測応答と比較するステップとを含む方法を提供する。該化合物の存在下での該転写応答が、該化合物の非存在下で生ずる、または見込まれる転写応答とは異なる(例えば、より大きいか、またはより小さい)場合、該化合物がPP1活性の修飾因子として同定される。該化合物がPP1活性の賦活剤として同定されるか、または阻害剤として同定されるかは、一般に、特定のPP1応答調節因子、または構成体での使用のために選択されたエレメントへのPP1活性の効果が、活性化か、または阻害かに依存することに注意するとよい。両方の種類のPP1応答調節因子が、本発明の範囲の中にある。PP1活性を変調する化合物は、統合失調症または統合失調症感受性の治療のための候補化合物として同定される。
本発明はさらに、DARPP−32または阻害剤2によるPP1抑制を阻害する化合物を同定するのに用いることが可能な同様のレポーター・ベース・アッセイを提供する。また、このアッセイは、他の機構でPP1活性を変化させる(例えば促進する)化合物も同定するだろう。そのような化合物もまた、統合失調症または統合失調症感受性の治療のための候補化合物である。
E.LTDを変調する化合物を得るためのスクリーニング。別の発明的方法によると、神経ペプチド、神経伝達物質受容体アゴニストおよびアンタゴニスト、ならびにイオン・チャネル・アンタゴニスト(例えば、イオン・チャネル遮断薬)およびアゴニストを含む化合物ならびに、キナーゼおよびホスファターゼを含む主要な神経シグナル伝達カスケードのコンポーネントと相互作用する化合物が、LTDを変調する(低減するか、または促進する)能力に関してスクリーニングされる。1つのアプローチによると、海馬切片の中でLTDを変調する能力。多数のそのような化合物が知られており、当業者であれば、科学的文献の概観によって、そのような多くの化合物を概ね同定することができるだろう。また、LTDの測定のための方法は、当技術分野で公知である。
それらの効果がカルシニュリン・シグナル伝達に依存しているかを確認するために、正常なマウスおよびCN−欠失マウス(例えば、CNB欠失ネズミ)からの切片を用いて、スクリーニングを行うことができる。統合失調症のマウス・モデル系で、LTDを変調する化合物の効力をテストすることができる。したがって、本発明は、統合失調症または統合失調症感受性の治療のための候補化合物を同定する方法であって:(i)LTDの測定に、適当な生物学的系を提供するステップと;(ii)該生物学的系を該候補化合物に接触させるステップと;(iii)該生物学系でLTDを測定するステップと;該生物学的系におけるLTDの程度が、該化合物の非存在下で生じるか、または生じると予測されるだろうLTDの程度と異なる場合、該化合物を統合失調症または統合失調症感受性の治療のための候補化合物として同定するステップとを含む方法を提供する。本発明の特定の実施形態によると、生物学的系は海馬切片である。
LTDを変調する化合物の分子標的は、統合失調症およびその関連疾病のための候補薬物標的であり、同定され場合、本発明は、統合失調症または統合失調症感受性の治療のための候補化合物として、それらの標的に結合する小分子を得るためのスクリーニングを含む。
F.細胞内カルシウム・レベルを変調する化合物を得るためのスクリーニング。本発明は、細胞内カルシウム・レベルを変調する(例えば、増大するか、または低減する)化合物を得るための多くのスクリーニングを提供する。1つのアプローチによると、カルシウム応答性分子(例えば、当技術分野で多数知られているカルシウム感受性色素)が細胞内カルシウム濃度をモニターするのに使用される。化合物は、カルシウム応答性分子が導入されている細胞、または改変(engineered)カルシウム・センサー・タンパク質を発現する細胞に添加され、細胞内カルシウム・レベルに対する効果が評価される。細胞内カルシウムレベルを変調する化合物を同定し、カルシニュリン活性を変調する能力、または統合失調症のマウス・モデル系における効力に関しテストしてもよい。また、このスクリーニングで同定された化合物を、上で記述された他のスクリーニング・アッセイ(例えば、NFAT活性スクリーニング)によってテストすることも可能である。これらの方法が、カルシウム応答性分子またはカルシウム・センサー・タンパク質に依存的である必要はなく、代わりに、直接カルシウムを測定してもよい(カルシウム同位元素を含む)。または、類似の輸送特性を示す別の分子、またはカルシウム測定のための代用薬として利用できる別の分子のフラックスを測定してもよい。
したがって、本発明は、統合失調症または統合失調症感受性の治療のための候補化合物を同定する方法であって、(i)細胞内カルシウムの測定に適当な生物学的系を提供するステップと;(ii)該生物学的系を該候補化合物と接触させるステップと;(iii)生物学的系における細胞内カルシウム、またはカルシウム・フラックスを測定するステップと;(iv)該生物学的系における細胞内カルシウム・レベルまたはカルシウム・フラックスレベルが、該化合物の非存在下で生じるかまたは生じると予測されるだろう細胞内カルシウム・レベルまたはカルシウム・フラックスレベルと異なっている場合、該化合物を統合失調症または統合失調症感受性の治療のための候補化合物として同定するステップとを含む方法を提供する。本発明の特定の実施形態によると、生物学的系は細胞または細胞の集団である。本発明の特定の実施形態によると、測定ステップは、カルシウム応答性分子のレベルまたはフラックスの測定、あるいはカルシウム・センサー・タンパク質活性の測定を含む。
G.分子ドラッグ・デザイン。本発明は、統合失調症または統合失調症感受性の治療のための候補化合物の同定のために、例えば、CNおよび/または、カルシニュリン・シグナル伝達経路の他のコンポーネントを含むカルシニュリン複合体の三次元構造(結晶構造、NMR溶液構造など)を用いて、分子モデリングに基づく合理的薬物デザインのための方法を提供する。そのような方法は、例えば、CaNと阻害タンパク質との間の結合を妨げる可能性のある化合物、またはカルシニュリンの自己抑制ドメインを妨害する化合物を同定するために特に有用であろう。カルシニュリンおよびFKBP12−FK506−カルシニュリン複合体の結晶構造は報告されている[51,52]。
また、構造情報を、スクリーニングのための適切な化合物ライブラリーの選択を誘導するのに用いてもよい。したがって、本発明は、統合失調症または統合失調症感受性の治療のための候補化合物を同定する方法であって、(i)CNもしくはCN複合体の分子状構造を提供するステップと;(ii)CNもしくはCN複合体に結合すると予測される構造、または別のCNサブユニットもしくはCN相互作用分子へのCNもしくはCNサブユニットの結合を阻害すると予測される構造を同定するステップと;(iii)そのような構造を持つ化合物を、統合失調症または統合失調症感受性の治療のための候補化合物として選択するステップを含む方法を提供する。
H.カルシニュリンとカルモジュリンとの結合を変調する化合物を得るためのスクリーニング。上述のように、カルシニュリン活性は、概ね、カルシウム依存性であるカルモジュリンの結合を必要とする。したがって、カルシニュリンへのカルモジュリンの結合を変化させる化合物は、カルシニュリン活性を変調する可能性が高い。例えば、カルシニュリンへのカルモジュリンの結合を促進する化合物、またはこの相互作用のカルシウム依存性をゆるやかに減少させる(すなわち、低いカルシウム濃度での結合を安定させる)化合物は、カルシニュリン活性を促進する可能性が高い。したがって、本発明はカルモジュリンとカルシニュリンとの結合を変化させる化合物を同定するための方法を提供する。本発明の特定の実施形態によると、精製および/または組換えがなされたカルシニュリンおよびカルモジュリンが調整され、タンパク質間相互作用に関する標準的なスクリーニング法(例えば、2ハイブリット・スクリーニング、または2ハイブリッド・スクリーニングに逆の2ハイブリッド・スクリーニングが含まれるようにした3ハイブリット・スクリーニング)が採用される。例えば、Serebriiskii I.G.et al,Methods MoL Biol、2001;175:415−54;Vidal,M.およびEndoh,H.Trends Biotechnol September 1999;17(9):374−81;Kolanus,W.,Curr Top Microbiol Immunol 1999;243:37−54、ならびに以上の記事の参考文献を参照。
本発明の他の実施形態によると、蛍光タグ付き組換え型カルモジュリンおよびカルシニュリン・タンパク質を用いた生物発光共鳴エネルギー転移によるスクリーニングが用いられる(Boute、N.et al,Trends in Pharmacol Sci(2002)23(8):351−4)。このスクリーニングは、カルシウム依存的に相互作用を安定させる分子を得るために、異なったカルシウム濃度で行うことが可能である。これらのスクリーニングは、CNAγ、CNAαまたはCNAβ特異的なカルシニュリン・カルモジュリン結合を変調する化合物を得るために、特定のCNAサブユニットを用いて行うことが可能である。
細胞から単離および/または精製されたCNおよびカルモジュリンを用いても、上記のスクリーニングを実行することができ、この場合、CNおよびカルモジュリンに、それらの単離/精製後に候補化合物を添加してもよく、あるいは単離前に細胞を化合物で処理して、CN、カルモジュリン、および/またはCN−カルモジュリン複合体を該細胞から単離してもよい。異なるカルシウム濃度範囲を用いて、任意の上記のスクリーニング(および本明細書に記載される他のもの)を実行することができる。
I.CNAγ−相互作用分子のスクリーニング。いずれの理論にも制約されないことが望まれるが、PPP3CC遺伝子が統合失調症感受性に関連する(実施例3および4参照)という本発明者らの発見により、CNAγ、CNAγと相互作用する分子、およびCNAγの特定の潜在的特異的基質は、統合失調症病因分子に関与する可能性があることが示唆される。したがって、CNAγと相互作用する分子およびCNAγの特定の潜在的特異的基質は、統合失調症または統合失調症感受性の治療用の特に興味深い候補化合物および/または治療薬の開発用の特に興味深い分子標的であり得る。
そのため、本発明は、統合失調症または統合失調症感受性の治療用の候補分子と、統合失調症または統合失調症感受性の治療法を開発するための分子標的との同定方法を提供する。本発明の特定の実施形態に従えば、このような化合物および標的は、CNAγ相互作用タンパク質である。標準的ツーハイブリッド方法論(例えば、酵母細胞または哺乳類細胞中で等)を用いて、該タンパク質を同定することができる。さらに、標準的生化学的手段によって、例えば細胞抽出物をCNAγアフィニティー・カラム・クロマトグラフィーにかけることによって、CNAγ相互作用タンパク質を同定することができる。例えば細胞のリン酸標識(例えば放射性リン酸標識)および二次元タンパク質ゲル電気泳動を用いたカルシニュリン活性化の後に、細細胞系のタンパク質リン酸化プロファイルをCNAγと比較する(例えば、CNAγのRNAi不活性化を用いて)ことおよび胞系のタンパク質リン酸化プロファイルをCNAγなしで比較することによって、CNAγ特異的基質を同定することができる。CNAγ含有細胞中で、特異的に脱リン酸化されたタンパク質を同定用に単離して、マイクロシークエンスすることができる。一般に、このスクリーニングを適用して、カルシニュリン基質を同定することもできる。
J. 統合失調症および統合失調症感受性の治療用候補化合物を同定するための付加的なインビトロおよびインビボ・スクリーニング方法。
化合物を、阻害タンパク質へのCNの結合を阻害するそれらの能力に対して、インビトロまたはインビボで試験することが可能である。例えば、1つ以上のこれらの化合物を発現する精製(例えば組み換え)タンパク質および/または細胞抽出物を用いて、阻害タンパク質へのCaNの結合を阻害する候補化合物の能力をインビトロで試験することが可能である。候補化合物の非存在または存在下で化合物を混和することが可能であり、CNを含有する複合体を単離およびアッセイして、それらが阻害タンパク質を含有しているかどうかを測定することができる。適当な単離方法および検出方法(例えば、免疫沈降法、ウエスタン・ブロット、ELISA)を使用することができる。同様に、例えば共免疫沈降法を用いて、阻害タンパク質へのカルシニュリンの結合を阻害する候補化合物の能力をインタクトな細胞中でアッセイすることが可能である。例えば[39]で使用される方法を参照せよ。細胞は、この成分を天然に発現してもよく、またはそうするように操作してもよい。
組み換えタンパク質を使用する任意の方法では、タグを、例えばGSTタグ、FLAGタグ、HAエピトープ・タグ等を含むタンパク質を用いることが望ましい。例えば[53]に記載されるような標準的方法を用いて、適当な発現ベクターの構築および細胞へのそれらの導入を実行することができる。カルシニュリン・タンパク質またはカルシニュリン・シグナル伝達経路の他の成分を操作して、容易に検出できるマーカー、例えばGFP等の蛍光または発光マーカーを含ませることが望ましい。このような容易に検出できるタンパク質は、カルシニュリンの細胞下局在化に対する化合物の作用等を研究するのに有用である。このようなアプローチを用いて、例えば、カルシニュリンと、AKAP5等のカルシニュリンを標的とするタンパク質との相互作用に干渉する化合物を同定することが可能である。
上記に記載される種々の化合物同定方法およびスクリーニング方法のいずれもハイスループット形式で使用することが可能であり、またはハイスループット・スクリーニング用に容易に修飾することが可能である。
K. スクリーニング用化合物。上記に記載される任意の化合物同定方法(または他の方法)で使用されるのに適当な化合物としては、小分子、天然産物、ペプチド、核酸等が挙げられる。化合物に対するソースとしては、天然産物抽出物、合成化合物の集まり、およびコンビナトリアル・ケミストリーで生成される化合物ライブラリが挙げられる。化合物ライブラリは、当技術で周知である。1つの代表的な例は、ダイバーセット(DIVERSet)(商標)として知られ、ケンブリッジ社(ChemBridge Corporation,16981 Via Tazon,Suite G,San Diego,CA 92127)から入手可能である。ダイバーセット(DIVERSet)(商標)は、10,000ないし50,000の薬剤様手動合成小分子を含む。化合物を事前選別して、最小数の化合物を有する最大のファルマコフォア多様性を網羅し、かつハイスループット・スクリーニングまたはそれより低度のスループット・スクリーニングに適している「全般的な」ライブラリを形成する。付加的なライブラリの説明に関しては、例えばTan et al,”Stereoselective Synthesis of Over Two Million Compounds Having Structural Features Both Reminiscent of Natural Products and Compatible with Miniaturized Cell−Based Assays”、Am.Chem Soc.120, 8565−8566、1998; Floyd CD、Leblanc C、Whittaker M、Prog Med Chem 36:91−168、1999を参照せよ。。多数のライブラリが市販されており、例えばアナリティコンUSA社(AnalytiCon USA Inc.,P.O.Box 5926,Kingwood,TX77325);3ディメンショナル・ファーマスーティカルズ社(3−Dimensional Pharmaceuticals,Inc.,665 Stockton Drive,Suite 104,Exton,PA 19341−1151);トリポス社(Tripos,Inc.,1699 Hanley Rd.,St.Louis,MO,63144−2913)等から市販されている。米国特許出願番号第6,448,443号およびPCT公報WO9964379も参照せよ。
一般に、任意の適当な溶媒中で、好ましくは、スクリーニングに細胞が含まれる場合に細胞増殖に有害な作用を及ぼすことのない溶媒中で、化合物を溶解することが可能である。化合物の濃度範囲を所望の作用に対して試験することが可能である。当業者に周知であるように、実質的に、任意の化合物は、十分な高濃度で存在する場合、生体に有害な作用を有する可能性がある。好適な化合物は、治療薬として投与するのに実用的な濃度(例えば治療される被験体中で容認できない悪作用を引き起こすことのない濃度)で作用を及ぼす。例えば、0.1μg/ml未満等の比較的低濃度で、1から100μg/ml等のそれより高い濃度で、または1mg/mlまで等のそれよりかなり高い濃度で、スクリーニングを実行することができる。一般に、当業者は、試験用の適当な濃度範囲を選択することができ、上述の例は限定することを意図したものではない。
L. 動物モデルおよびヒトでの候補化合物の有効性に対するスクリーニング。
遺伝的モデルおよび薬理学的モデル両方を含む統合失調症用の任意の適当な動物モデル中で、本明細書で記載される任意のスクリーニング方法(または他の好適な方法)を用いて同定された候補化合物を試験することができる。例えば、CNBノックアウト・マウスおよび/またはGainetdinov et al,”Genetic animal models:focus on schizophrenia”,Trends in Neurosciences,Vol.24,No.9、2001年9月に記載される任意のモデル中で該化合物を試験することができる。このようなモデルとしては、種々の選択または開発された(例えば遺伝子ターゲティング技術を用いて)マウス系統(例えば、NMDA受容体、ドーパミン輸送体等の神経伝達物質系の種々の成分中の突然変異または欠失を有するマウス)が挙げられる。また、PCP等の適当な化合物に動物を暴露して、統合失調症を示唆する症状を発症させることによって、動物モデルを得ることが可能である。
動物モデル中で化合物を試験するとき、化合物の期待標的中で、突然変異または欠失を含まない動物モデルを用いることが好ましい(化合物が該動物モデル中で同様に有効である場合、期待標的との相互作用を伴わないメカニズムを介して作用する可能性が大きいので、このような動物モデルは通常、化合物の特異度に対する対照として使用されるかもしれないが)。統合失調症、統合失調症に関連する症状、または統合失調症感受性を羅患しているヒト被験体中でも、候補化合物を試験することができる。
一般に、効果に対するこのような試験には、候補化合物を被験体(動物またはヒト)に投与することと、被験体を観察して、化合物の投与により統合失調症の任意の徴候または症状での改善または低減が生じたかどうか(あるいは、発症している統合失調症の発生率での減少を生じたかどうか)を測定することとが伴われる。限定はされないが、実施例1で記載される活動および挙動を含む統合失調症の動物モデルの任意の表現型特質(すなわち、統合失調症を示唆する表現型)を評価することが可能である。
ヒトでは、統合失調症または関連症状に羅患している、あるいは羅患していると疑われる患者の診断および/または評価で用いられる任意のパラメータを評価することが可能である。ヒトでの統合失調症用の候補治療薬の臨床試験を実行するための方法論は十分に確立されている。本発明の特定の実施形態に従えば、本明細書に記載される本発明の任意の方法を用いて、統合失調症のリスクまたは羅患状態にある被験体を同定することによって、臨床試験用のヒト被験体を選択する。例えば、被験体から得た試料中で、カルシニュリン・サブユニットをコードするまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする遺伝子のコーディングまたは非コーディング部位中での多形性現象の多形性変異体を検出することによって、あるいはこのような遺伝子に結合するゲノム領域中の多形性現象の多形性変異体を検出することによって、被験体を選択することが可能である。本発明の特定の実施形態に従えば、任意の本発明の方法を用いて選択された被験体のグループを、任意の他の診断基準を用いて選択された被験体のグループと比較する。
したがって、本発明は、(i)被験体または被験体群が少なくとも1つのカルシニュリン・サブユニットまたはカリシニュリン相互作用分子の発現での変化を有する統合失調症のリスクにある、あるいは統合失調症を示唆する1つ以上の表現型を示す被験体または被験体群を提供するステップと、(ii)候補化合物を被験体または被験体群に投与するステップと、(iii)被験体または被験体群中の表現型の重症度または発生率を、該化合物を投与されていない被験体または被験体群中の表現型の重症度または発生率と比較するステップとを含む統合失調症の治療用の候補化合物を同定するための方法を提供する。一般に、動物のグループを用いて該方法を実行する。化合物を投与された被験体(群)中で、表現型がより低い重症度で現れるか、または減じられた頻度で発生する場合、該化合物は、統合失調症および/または統合失調症感受性の治療用の候補化合物として同定される(このことは、当然、付加的な方法を用いて確認され得るが)。
本発明の特定の実施形態に従えば、化合物を受ける被験体および化合物を受けないもの(すなわち、対照)は、遺伝的に類似または同一の動物である。(従来の対照を用いることができることに注意する)。本発明の特定の実施形態に従えば、動物は、CNB欠損マウスである。本発明の特定の実施形態に従えば、化合物は、本明細書に記載される任意の本発明の化合物スクリーニング方法にしたがって同定される任意の化合物、例えば被験体へのカルシニュリン、カリシニュリン・サブユニット、またはカルシニュリン相互作用分子の活性または存在量を調節する化合物である。
M. 候補化合物の効果スクリーニング用の動物モデル。本明細書で記載されるCNB欠損マウスに加えて、本発明は、統合失調症および/または統合失調症感受性用の多数の他の動物モデルを提供する。本発明は、カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子の変化形態を発現するトランスジェニック動物、例えばマウスを提供する。本発明は、カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子を過発現するトランスジェニック動物をさらに提供する。該サブユニットまたは相互作用分子は、表1にリストにされる任意のサブユニットまたは分子であり得る。本発明の特定の実施形態に従えば、該サブユニットはCNAγである。
本発明は、カルシニュリン・サブユニット・マウス低次形態を提供し、この際CNサブユニットは任意のCNサブユニットである。本発明は、付加的なマウス低次形態をさらに提供し、この際低次形態遺伝子座は、限定はされないが、Cabin 1;カルシニュリンB相同タンパク質;DSCR−1等のカルシプレシン類;カルサルシン−1;カルサルシン−3;Aキナーゼ・アンカー・タンパク質5;FK506結合タンパク質5;インターロイキン・エンハンサー結合因子2(活性T細胞核因子のILF2サブユニット);活性T細胞、細胞質、カルシニュリン依存2の核因子;リアノジン受容体3型;IP3(イノシトール・トリホスフェート)受容体1型;下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP);およびカルシウム・シグナル調節シクロフィリン・リガンド(CAML)からなる群より選択される任意のタンパク質をコードする遺伝子を含むCN相互作用分子をコードする任意の遺伝子である。
「低次形態」とは、野生型より少ないレベルであるが、遺伝子の完全な欠失(または発現の他の完全な除去)に起因するよりは多いレベルで、所定の遺伝子を発現する動物を意味する。例えば、低次形態は、発現の野生型レベルの50%未満、25%未満、10%未満、5%未満、1%未満、またはそれよりかなり低いが0より大きいパーセント値で遺伝子を発現することが可能である。野生型発現レベルの10%ないし30%を発現する低次形態が好ましい。遺伝子の完全な欠失または相互作用により、対象表現型(例えば、統合失調症を示唆する表現型)の評価を防止または妨害する発達初期の致死または重度の欠陥が生じる際、低次形態マウスが特に有用である。例えば、[25]で記載されるようなPGKプロモーター等のプロモーターの「ノックイン」によって、低次形態マウスを作製することが可能である。このプロモーターは、標的遺伝子座で転写を極度に抑制することが示されており、この方法を用いて、マウスNMDA受容体低次形態が作製されてきた[25]。一般に、用語「低次形態」とは、組織特異的または領域的ノックアウトを意味しない。しかし、この用語には、発現における組織特異的または領域特異的低減が含まれる。
本発明は、CNサブユニットまたはCN相互作用分子をコードする任意の遺伝子の組織限定発現を有するマウスをさらに含む。具体的には、本発明は、1つ以上の神経系領域中、例えば1つ以上の脳領域中のCNサブユニットまたはCN相互作用分子をコードする遺伝子の発現の低減を持たないマウスあるいは低減を有するマウスを提供する。
一般に、従来の、近年開発の、あるいは開発中の種々のトランスジェニック技術またはノックアウト技術にしたがって、カリシニュリン・シグナル伝達経路の任意の上述の成分を過発現または少なく発現するマウスを生成することが可能である。このような技術には、細胞または組織特異的調節因子、誘導性系等の使用を含むことが可能である。例えば、Kwan,K.、”Conditional alleles in mice:practical considerations for tissue−specific knockouts.”Genesis,32(2):49−62,2002;Lewandowski,M.、”Conditional control of gene expression in the mouse”,Nat.Rev.Genet.,2(10):743−55,2001;Bockamp,E.et al,Physiol Genomics 11(3):115−32(2002)を参照せよ。
本明細書で使用するように、「トランスジェニック動物」とは、非ヒト動物であり、好ましくは哺乳類、より好ましくはラットまたはマウス等のげっ歯類動物であり、この際1つ以上の動物細胞には、導入遺伝子が含まれる。トランスジェニック動物の他の例としては、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ヤギ、ニワトリ、両生類等が挙げられる。導入遺伝子は、外来性DNAまたは再編成、例えば外来性染色体DNAの欠失であり、これは、好ましくは、トランスジェニック動物細胞のゲノム中に組み込まれる、またはゲノム中で発生する。したがって、「ノックアウト」動物が含まれる。導入遺伝子は、必ずしも必要ではないが、内在性遺伝子と交換することができる。導入遺伝子は、トランスジェニック動物の1つ以上の細胞型または組織中で、コードされる産物の発現を導くことができる。
本発明の特定の実施形態に従えば、マウス中のCNサブユニットまたはCN相互作用分子を標的にしたsiRNAを発現させる(これは、組織または細胞型特異的方法で、あるいは必要であれば誘導性方法で行うことが可能である)ことによって、マウス低次形態または有効な機能喪失(null)突然変異体を生成する。本発明の特定の実施形態に従えば、例えば2002年11月21日に申請された米国仮特許出願60/428,039に記載されるレンチウイルス・ベクターを用いて、このような発現を達成する。該マウスを交配させて、化合物ホモ接合体またはヘテロ接合体を生成することができる。本発明は、上記に記載される任意の本発明のマウスを、このグループの他のメンバーと交配させる(例えばCNB低次形態、CNAγ低次形態、CNBノックアウト、CNAγ低次形態等を、CNサブユニットまたはCN相互作用分子をコードする任意の他の遺伝子に対する低次形態またはノックアウトのマウスと交配させる)ことによって、あるいは、限定はされないが、統合失調症用のモデルとして用いられるマウス(例えば、NMDA受容体、ドーパミン輸送体等のサブユニットをコードする遺伝子で突然変異を有するマウス)および組織特異的方法でCre等のリコンビナーゼを発現するマウスを含む任意の異なる遺伝子型のマウスと交配させることによって生成されるマウスをさらに提供する。
具体的には、本発明は、CNAγをコードする遺伝子(PPP3CC)を過発現または少なく発現する、あるいは該遺伝子の変異体を発現するCNAγ低次形態を含むトランスジェニック・マウスおよびノックアウト・マウスを提供する。このようなマウスは、統合失調症または統合失調症感受性の治療用のCNAγ指向性化合物または付加的な化合物を試験するのに特に有用である。
本発明は、CNサブユニットまたはCN相互作用分子の変異体を発現するトランスジェニック動物を提供し、この際変異体は、相同ヒトタンパク質中の変異体の位置と相同な位置で発生し、該変異体は、統合失調症または統合失調症感受性に関連している。ヒト変異体は、統合失調症または統合失調症感受性に関連する多形性変異体を有する遺伝子にコードされる。
マウスに関して主に記載したが、本発明は該動物のみに限定されるものではなく、任意の他の動物を含み、この際、限定はされないが、ラット、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ属動物、および可能であれば霊長類を含む遺伝的に操作された変異体を作製することができる。具体的には、siRNA媒介遺伝子サイレンシングがトランスジェニック・ラットで実証されていることに注意する(Hasuwa,H.et al,FEBS Lett、2002年12月4日;532(1−2):227−30)。
上記に記載される任意の動物を用いて、統合失調症または統合失調症感受性の治療用の候補化合物の効果に対してスクリーニングすることが可能である。任意の特定のタンパク質に対して低次形態であるマウスは、そのタンパク質の活性を増強するように設計された化合物を試験するのに特に有用である。生化学的アッセイおよび挙動アッセイの両方に対してこれらのマウスを用いて、候補化合物を実証することができる。
VI.統合失調症または統合失調症感受性の治療のための化合物および方法。
A.化合物および使用方法。本発明は、上記に記載される本発明の化合物の任意の同定方法にしたがって同定される化合物を提供する。本発明の特定の実施形態に従えば、好適な化合物は、血液脳関門を通過する能力を示すために、中枢神経系で治療上有効な濃度が達成され得る。候補化合物、例えばインビトロ方法を用いて同定される化合物を、血液脳関門を通過する能力を高めるために、例えば親脂性部と連結させることによって、または当該技術分野で既知の任意の様々な方法によって、適当に修飾することができる。本発明の特定の実施形態に従えば、化合物が血液脳関門を通過する可能性を増大させるように、適当な出発化合物および/または置換基を用いて、化合物ライブラリを、例えばコンビナトリアル・ライブラリを合成する。
一般に、上記で記載されるように同定された任意の化合物をさらに最適化して、望ましくない特性の低減または除去、および/あるいは所望の特性の増加または増強が可能である。例えば、化合物を修飾して、可溶性の増加、吸収性の増加、または生物学的利用率の増強が可能である。このような化合物は、次の化合物の設計または選択するために、治療および/または先導化合物として有用である。したがって、本発明は、上記のスクリーニング方法にしたがって同定された化合物の誘導体、例えば生物学的利用率の増強、血液脳関門を通過する能力の増強、安全性プロファイルの改良等を示す誘導体を提供する。
上記に記載される本発明の方法にしたがって同定される任意の化合物は、調査および治療目的に対して、多数の付加的な用途を有してもよく、統合失調症または統合失調症感受性の治療に用いられる候補化合物としてのそれらの同定は、どのようにそれらを適用するかを限定することを意図したものではないことに注意する。
本発明は、(i)統合失調症のリスクまたは罹患状態にある被験体を提供するステップと、(ii)上記に記載される任意の本発明の方法にしたがって同定される化合物を被験体に投与するステップとを含む統合失調症または統合失調症感受性を治療する方法を提供する。
本発明は、(i)統合失調症のリスクまたは罹患状態にある被験体を提供するステップと、(ii)カルシニュリン、カルシニュリン・サブユニット、またはカルシニュリン相互作用分子の活性または存在量を調節する化合物を被験体に投与するステップとを含む統合失調症または統合失調症感受性を治療するための方法を提供する。本発明の様々な実施形態に従えば、該化合物は、カルシニュリン、カルシニュリン・サブユニット、またはカルシニュリン相互作用分子の活性または存在量を増強する。本発明の特定の他の実施形態に従えば、該化合物は、カルシニュリン、カルシニュリン・サブユニット、またはカルシニュリン相互作用分子の活性または存在量を低減する。本発明の特定の実施形態に従えば、該化合物は、カルシニュリン、カルシニュリン・サブユニット、またはカルシニュリン相互作用分子の活性を調節(例えば、増強または低減)する。本発明の特定の実施形態に従えば、カルシニュリン、カルシニュリン・サブユニット、またはカルシニュリン相互作用分子は、CNB;CNAa;CNAb;CNAg;Cabin 1;カルシニュリンB相同タンパク質;カルシプレシン類;DSCR−1;カルサルシン−1;カルサルシン−3;Aキナーゼ・アンカー・タンパク質5;FK506結合タンパク質5;インターロイキン・エンハンサー結合因子2(活性T細胞核因子のILF2サブユニット);活性T細胞、細胞質、カルシニュリン依存2の核因子;リアノジン受容体3型;IP3(イノシトール・トリホスフェート)受容体1型;下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP);およびカルシウム・シグナル調節シクロフィリン・リガンドからなる群より選択される。適当な化合物としては、限定はされないが、上記に記載される本発明の化合物の任意のスクリーニング方法にしたがって同定される化合物が挙げられる。
B. 遺伝子療法。本発明は、遺伝子療法を用いて統合失調症または統合失調症感受性を治療する方法も提供し、この際カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子(このようなサブユニットまたは分子の変化型を含む)を被験体の細胞中で発現させる。カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子は、表1にリストにされる任意のものまたはその他のものであり得る。また、本発明の特定の実施形態に従えば、カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン分子を標的にした阻害siRNAは、該サブユニットまたは分子の内在性発現を低減または除去するように発現される。これらの分子の発現を低減させる他の遺伝子療法に基づく方法も用いることが可能である。CNサブユニットまたはCN相互作用分子の転写を調節するための方法も、本発明の範囲内に含まれる。例えば米国特許番号第6,326,166号を参照せよ。遺伝子療法のための方法およびベクターは、当該技術分野で既知である。一般に、遺伝子療法用ベクターとしては、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、および多数の非ウイルスベクターが挙げられる。本発明の方法に従えば、適当な調節因子の制御下で、所望のサブユニットまたは分子をコードする核酸を遺伝子療法用ベクターに導入する。このような調節因子を選択して、選択した細胞型または組織中で、あるいは全身で誘導性発現または構成性発現を達成することが可能である。
遺伝子療法プロトコルには、インフルエンザ・ウイルス感染の前に、実質的に同時に、または後に、カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子あるいは阻害siRNAの発現を導くことができる遺伝子療法用ベクターの有効量を被験体に投与することを伴う。先述のものの代替として、または組み合わせて用いられ得る別のアプローチは、細胞の集団、例えば幹細胞または免疫系細胞の集団を被験体から単離することと、任意で組織培養で細胞を増殖させることと、カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子あるいは阻害siRNAの発現を導くことができる遺伝子療法用ベクターをインビトロで細胞に投与することとである。その後、この細胞を被験体に戻すことが可能である。任意で、カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子siRNAを発現する細胞をインビトロで選択し、その後それらを被験体に導入することができる。本発明の複数の実施形態では、細胞系からまたは被験体ではない個体から得た細胞であり得る細胞の集団を用いることができる。幹細胞、免疫系細胞等を被験体から単離する方法およびそれらを被験体に戻す方法は、当該技術分野で周知である。化学療法を受けている患者で、例えば骨髄移植、末梢血幹細胞移植等のためにこのような方法を用いる。
さらに別のアプローチでは、経口遺伝子療法を用いることが可能である。例えば、米国第6,248,720号には、プロモーターの制御下にある遺伝子が微粒子中に保護的に含有され、作用的な形態の細胞に送達されることによって、非侵襲性の遺伝子送達を達成することによる方法および組成物が記載されている。微粒子の経口投与後に、遺伝子は、吸収腸管上皮細胞を含む上皮細胞中に取り込まれ、消化管関連リンパ組織に取り込まれ、かつ粘膜上皮から離れた細胞にさえ輸送される。該明細書に記載されるように、微粒子は、粘膜上皮から離れた部位に遺伝子を送達する、すなわち上皮性関門を通過し、全身循環に入ることによって、他の位置で細胞をトランスフェクションすることができる。
VII.付加的な方法、試薬、および化合物。
本発明は、統合失調症または統合失調症感受性の治療、統合失調症または統合失調症感受性の治療法の開発、本明細書に記載される他の本発明の方法の実施、または様々な他の目的のために用いることが可能な多数の付加的な方法、試薬および化合物を提供する。
A. 短い干渉RNA(Short Interfering RNA)。RNA干渉(RNAi)は、二重鎖RNA(dsRNA)に媒介される転写後遺伝子サイレンシングのメカニズムであり、これは、アンチセンスおよびリボザイムに基づくアプローチとは異なる。dsRNA分子は、初めに、DICER(Bernstein et al, Nature 409:363、2001)と呼ばれるRNアーゼIII様酵素によって、それぞれが5’リン酸基および3’水酸基を有し、かつもう一方の鎖に正確に相補的な19nt領域を含むので2ntの3’オーバーハングに隣接される19ntの二重鎖領域が存在する2つの21nt鎖で構成されるより小さいdsRNA分子にプロセッシングされた後に、種々の型の細胞中でmRNAの配列特異的分解を導くと考えられている。したがって、RNAiは、短い干渉RNA(siRNA)により媒介されており、siRNAは通常、各鎖上に1〜2のヌクレオチド3’オーバーハングを有する約19ヌクレオチド長の二重鎖領域を含み、結果的に全体で約21ないし23ヌクレオチド長となる。哺乳類細胞では、約30ヌクレオチドより長いdsRNAは、通常、インターフェロン応答を介して非特異的mRNA分解を誘導する。しかし、哺乳類細胞中のsiRNAの存在は、インターフェロン応答を誘導するよりも、むしろ配列特異的遺伝子サイレンシングを生じる。
一般に、短い干渉RNA(siRNA)は、好ましくは約19塩基対長であるRNA二重鎖を含み、任意で、1つまたは2つの一本鎖オーバーハングまたはループをさらに含む。siRNAは、互いにハイブリダイズする2つのRNA鎖を含むか、または自己ハイブリダイゼーション部分を有するRNA一本鎖を含むことが可能である。siRNAは、1つ以上の遊離鎖末端を含むことが可能であり、この末端は、リン酸基および/または水酸基を含むことが可能である。siRNAは通常、ストリンジェントな条件下で、標的転写物とハイブリダイズする部分を含む。siRNAの1つの鎖(またはsiRNAの自己ハイブリダイゼーション部分)は通常、標的転写物の領域に正確に相補的であり、siRNAは、全くミスマッチがなく標的転写物にハイブリダイズすることを意味する。本発明の特定の実施形態では、完全な相補性を達成されない場合、siRNA末端で、またはsiRNA末端の近くに任意のミスマッチを設置することが一般に好ましい。
siRNAは、トランスフェクション、電気穿孔法、またはマイクロインジェクション等の方法によって哺乳類細胞に送達されたとき、あるいは任意の様々なプラスミドに基づくアプローチを介して細胞中で発現させたとき、遺伝子発現を下方制御(downregulate)することが示されている。siRNAを用いたRNA干渉は、例えばTuschl,T.、Nat.Biotechnol.,20:446−448、2002年5月に概説されている。Yu,J.et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,99(9),6047−6052(2002);Sui,G.et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,99(8),5515−5520(2002);Paddison,P.et al,Genes and Dev., 16, 948−958 (2002);Brummelkamp,T.et al,Science,296,550−553(2002);Miyagashi, M.およびTaira,K.、Nat.Biotech.,20,497−500(2002);Paul,C.et al,Nat.Biotech.,20,505−508(2002)も参照せよ。これらの参考文献および他の参考文献に記載されているように、siRNAは、2つの個々の核酸鎖からまたはヘアピン(ステム−ループ)構造を形成することができる自己相補的領域を有する一本鎖からなる可能性がある。構造、長さ、ミスマッチの数、ループのサイズ、オーバーハング中のヌクレオチドのアイデンティティ等での多数の変化は、効果的なsiRNA誘引遺伝子サイレンシングと整合性がある。いずれの理論にも制約されないことが望まれるが、種々の異なる前駆体の細胞内プロセッシング(例えばDICERによる)によって、遺伝子サイレンシングを効果的に媒介することができるsiRNAが産生されることが考えられる。一般に、イントロンよりもエキソンを標的とすることが好ましく、標的転写物の3’部分内の領域に相補的な配列を選択することも好ましい。一般に、ほぼ等モル比率の異なるヌクレオチドを含有する配列を選択することと、単一残基が複数回繰り返される伸長を避けることとが好ましい。
したがって、siRNAは、各鎖上に1〜2のヌクレオチド3’オーバーハングを持つ約19ヌクレオチド長の二重鎖領域を有し、結果的に全体で約21ないし23ヌクレオチド長となるRNA分子を含む。本明細書で使用されるように、siRNAは、インビボでプロセッシングされて該分子を生成することが可能な種々のRNA構造も含む。このような構造には、互いにハイブリダイズしてステム、ループ、および任意でオーバーハング、好ましくは3’オーバーハングを形成する2つの相補的因子を含有するRNA鎖が含まれる。好ましくは、ステムは、約19bp長であり、ループは、約1〜20nt長であり、より好ましくは約4〜10nt長、最も好ましくは約6〜8nt長であり、かつ/またはオーバーハングは、約1〜20nt長であり、より好ましくは約2〜15nt長である。本発明の特定の実施形態では、ステムは、最小で19ヌクレオチド長であり、約29ヌクレオチド長までは可能である。4ヌクレオチドまたはそれより大きいループは、より小さいループより立体的な制約を受けにくいので、好ましいであろう。オーバーハングには、5’リン酸基および3’水酸基が含まれ得る。オーバーハングは、必ずしも必要ではないが、複数のU残基、例えば1ないし5のU残基を含むことが可能である。
上記に記載される古典的なsiRNAは、それらが標的とするmRNAの分解を誘引することによって、タンパク質合成の割合も低減させる。古典的な経路を介して作用するsiRNAに加えて、鋳型転写物の3’UTRに結合する特定のsiRNAは、古典的なRNA干渉に関連するが異なるメカニズムによって、例えばその安定性を減少させるのではなく転写物の翻訳を低減させることによって、鋳型転写物にコードされるタンパク質の発現を阻害することが可能である。このようなRNAは、マイクロRNA(miRNA)として言及され、通常約20ないし26ヌクレオチド長、例えば22nt長である。マイクロRNAは、小さな一時的RNA(small temporal RNA(stRNA))として知られるより大きな前駆体またはmiRNA前駆体から由来しており、通常約4〜15ntループを有する約70nt長であると考えられる。(Grishok,A.et al,Cell 106,23−24,2001;Hutvagner,G.et al,Science,293,834−838,2001;Ketting,R.et al,Genes Dev.,15,2654−2659を参照せよ)。この型の内在性RNAは、哺乳類を含む多数の生体で同定されており、転写後遺伝子サイレンシングのこのメカニズムが広範にわたる可能性を示唆している(Lagos−Quintana,M.et al,Science,294,853−858,2001;Pasquinelli,A.、Trends in Genetics,18(4),171−173,2002、および先述の2つの文献中の参考文献)。マイクロRNAは、哺乳類細胞中で標的部位を含む標的転写物の翻訳を遮断することが示されている(Zeng,Y.et al,Molecular Cell,9,1−20,2002)。
3’UTR内で(または標的転写物の他の部位で)結合して翻訳を阻害する天然に発生するmiRNAまたは人工(すなわちヒトにより設計される)miRNA等のsiRNAは、siRNA/鋳型二重鎖中のより多い数のミスマッチを許容することが可能であり、特に、二重鎖の中央領域内のミスマッチを許容することが可能である。実際、天然に発生するstRNAは、インビトロで翻訳を阻害することが示されているmiRNAがするようなミスマッチを頻繁に示すので、複数のミスマッチが望ましいか、または要求されるという証拠がある。例えば、標的転写物とハイブリダイズさせるとき、該siRNAは、ミスマッチの領域により分離される完全な相補性の2つの伸長を頻繁に含む。種々の構造が可能である。例えば、miRNAには、非アイデンティティ(ミスマッチ)の複数の領域が含まれ得る。非アイデンティティ(ミスマッチ)の領域は、標的およびmiRNAの両方が非対のヌクレオチドを含むという点では対称である必要はない。通常、完全な相補性の伸長は、少なくとも5ヌクレオチド長であり、例えば6ヌクレオチド長、7ヌクレオチド長、またはそれより多いヌクレオチド長である一方で、ミスマッチの領域は、例えば1ヌクレオチド長、2ヌクレオチド長、3ヌクレオチド長、または4ヌクレオチド長であり得る。
siRNAおよびmiRNA前駆体を模倣するように設計されたヘアピン構造を、標的転写物の発現を低減または阻害することができる分子に細胞内でプロセッシングする(McManus,M.T.et al,RNA,8:842−850,2002)。これらのヘアピン構造は、19bpの二重鎖構造を形成する2つのRNA鎖からなる古典的なsiRNAに基づいており、クラスIヘアピンまたはクラスIIヘアピンとして分類される。クラスIヘアピンは、アンチセンスsiRNA鎖(すなわち阻害が望まれる標的転写物に相補的な鎖)の5’末端または3’末端にループを組み込んでいるが、他の点では、古典的なsiRNAに同一である。クラスIIヘアピンは、ステム中の1つ以上のヌクレオチド・ミスマッチに加えて、19nt二重鎖領域と、二重鎖のアンチセンス鎖の3’末端または5’末端にループとを含んでいる点で、miRNA前駆体に類似している。これらの分子は、サイレンシングを媒介することができる小さいRNA二重鎖構造に細胞内でプロセッシングされる。それらは、天然に発生するmiRNAおよびstRNAの場合に考えられているような翻訳抑制を介してというよりは、むしろ標的mRNAの分解を介して作用を及ぼしているように見える。
したがって、二重鎖構造を含有するRNA分子の多様なセットは、様々なメカニズムを介してサイレンシングを媒介できることは明らかである。本発明の目的のために、分解を誘引することによって、翻訳を阻害することによって、または他の手段によってその1つの部分が標的転写物に結合してその発現を低減させる任意の該RNAは、siRNAであると考えられ、このようなsiRNAを生成する(すなわちRNAに前駆体として機能する)任意の構造は、本発明の実施に有用である。
本発明の文脈では、例えば統合失調症のリスクまたは罹患状態にある被験体中のカルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子の発現を調節する治療目的に対して、かつカルシニュリンの活性またはレベルを調節する統合失調症治療用化合物を同定するための様々な本発明の方法に対して、siRNAは有用である。
したがって、本発明は、(i)カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする遺伝子の発現が阻害されるべき生体系を提供するステップと、(ii)カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする転写物を標的にしたsiRNAに該生体系を接触させるステップとを含むカルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする遺伝子の発現を阻害する方法を提供する。本発明の特定の実施形態に従えば、該サブユニットまたは分子は、統合失調症感受性の遺伝子座内の、または遺伝子座に結合する遺伝子、あるいは統合失調症の感受性または発症を引き起こすか、または寄与する機能性突然変異が存在し得る遺伝子座内の遺伝子にコードされる。本発明の特定の実施形態に従えば、生体系は、細胞を含み、接触ステップは、細胞中でsiRNAを発現させることを含む。本発明の特定の実施形態に従えば、生体系は、被験体を含み、例えばマウスまたはヒト等の哺乳類被験体を含み、接触ステップは、siRNAを被験体に投与することまたは被験体中でsiRNAを発現させることを含む。本発明の特定の実施形態に従えば、siRNAは、誘導的かつ/あるいは細胞型特異的または組織特異的方法で発現される。
本発明は、任意のカルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする転写物を標的にしたsiRNA分子を提供する。具体的には、本発明は、該転写物の多形性変異体をコードする転写物を選択的または特異的に標的にしたsiRNA分子を提供し、この際被験体中の多形性変異体の存在は、統合失調症感受性または統合失調症の存在の指標である。用語「を選択的または特異的に標的にした」とは、この文脈では、siRNAは、他の変異体(すなわち、被験体中でのその存在が統合失調症感受性または統合失調症の存在を示唆しない変異体)よりも該変異体の発現でより大きな低減を引き起こすことを示すことが意図されている。転写物は、例えば表1にリストにされる任意の分子またはその多形性変異体をコードすることが可能である。siRNAまたはsiRNAの集まりは、適当な付加的な成分を有するキットの形態で提供され得る。
B.完全長および部分長アンチセンスRNA転写物。アンチセンスRNA転写物は、同一細胞中で任意の他のRNA転写物の部分または全てに相補的な塩基配列を有する。このような転写物は、RNAスプリシングの調節、RNA輸送の調節、およびmRNAの翻訳の調節を含む様々なメカニズムを介して遺伝子発現を調節することが示されている(Denhardt、Annals NY Acad.Sci.,660:70,1992,Nellen,Trends Biochem.Sci.,18:419,1993;BakerおよびMonia,Biochim.Biophys.Acta,1489:3,1999;Xu et al,Gene Therapy,7:438,2000;French およびGerdes,Curr.Opin.Microbiol.,3:159,2000;TerrynおよびRouze,Trends Plant Sci.,5:1360,2000)。
C.アンチセンスRNAおよびDNAオリゴヌクレオチド。
アンチセンス核酸は、一般に、標的核酸(例えばmRNA転写物)の部分に相補的な一本鎖核酸(DNA、RNA、修飾DNA、または修飾RNA)であるために、標的に結合して二重鎖を形成することができる。通常、それらは、15から35ヌクレオチド長の範囲のオリゴヌクレオチドであるが、10から約50ヌクレオチド長までの範囲でもよい。結合により、通常、標的核酸の機能が低減または阻害される。例えば、アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、ゲノムDNAに結合するとき転写を遮断することが可能であり、mRNAに結合するとき翻訳を阻害することが可能であり、かつ/または核酸の分解にいたることが可能である。ポリペプチドをコードするmRNAの配列に相補的な配列を有するアンチセンス核酸またはペプチド核酸を投与することによって、カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用ポリペプチドの発現での低減を達成することが可能である。アンチセンス技術およびその適用は、当該技術分野で周知であり、Phillips,M.I.(ed.)Antisense Technology,Methods Enzymol.,Volumes 313 and 314,Academic Press,San Diego,2000、およびそこで言及される参考文献に記載されている。Crooke,S.(ed.)”Antisense Drug Technology:Principles,Strategies,and Applications”(1sted),Marcel Dekker;ISBN:0824705661;1st edition(2001)、およびそこに記載される参考文献も参照せよ。
細胞中の任意のRNA転写物の部分に相補的な塩基配列を用いて、アンチセンス・オリゴヌクレオチドを合成することができる。アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、RNAスプライシングの調節、RNA輸送の調節、およびmRNAの翻訳の調節を含む様々なメカニズムを介して遺伝子発現を調節することが可能である(Denhardt、1992)。安定性、毒性、組織分布、細胞の取り込み、および細胞の結合親和性を含むアンチセンス・オリゴヌクレオチドの様々な特性を、(i)リン酸ジエステル主鎖(例えばペプチド核酸、ホスホロチオエート・オリゴヌクレオチド、およびホスホルアミデ−ト・オリゴヌクレオチド)の置換と、(ii)糖塩基(例えば2’−O−プロピルリボースおよび2’−メトキシエトキシリボース)の修飾と、(iii)ヌクレオシド(例えばC−5プロピニルU、C−5チアゾールU、およびフェノキサジンC)の修飾とを含む化学的修飾を介して変化させることが可能である(Wagner,Nat.Medicine,1:1116,1995;Varga et al,Immun.Lett.,69:217,1999;Neilsen,Curr.Opin.Biotech.,10:71,1999;Woolf,Nucleic Acids Res.,18:1763,1990)。
本発明は、(i)カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする遺伝子の発現が阻害されるべき生体系を提供するステップと、(ii)カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする転写物にハイブリダイズするアンチセンス分子に該生体系を接触させるステップとを含むカルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする遺伝子の発現を阻害する方法を提供する。本発明の特定の実施形態に従えば、該サブユニットまたは分子は、統合失調症感受性の遺伝子座内の、または遺伝子座に結合する遺伝子、あるいは統合失調症の感受性または発症を引き起こすか、または寄与する機能性突然変異が存在し得る遺伝子座内の遺伝子にコードされる。本発明の特定の実施形態に従えば、生体系は細胞を含み、接触ステップは、細胞中でアンチセンス分子を発現させることを含む。本発明の特定の実施形態に従えば、生体系は、被験体を含み、例えばマウスまたはヒト等の哺乳類被験体を含み、接触ステップは、アンチセンス分子を被験体に投与することまたは被験体中でアンチセンス分子を発現させることを含む。該発現は、誘導的かつ/あるいは組織特異的または細胞型特異的であり得る。アンチセンス分子は、オリゴヌクレオチドまたはそれより長い核酸分子でもよい。本発明はこのようなアンチセンス分子を提供する。
D. リボザイム。リボザイムまたはデオキシリボザイムとして言及される特定の核酸分子は、RNA分子の配列特異的切断を触媒することが示されている。標的RNA中のヌクレオチドとのRNAまたはDNA酵素中のヌクレオチドの相補的ペアリングによって、切断部位を決定する。したがって、RNAおよびDNA酵素を設計して、任意のRNA分子を切断し、それによって、分解のその割合を増加させることができる(CottonおよびBirnstiel、EMBO J.8:3861−3866,1989;Usman et al,Nucl.Acids Mol.Biol.,10:243,1996;Usman et al,Curr.Opin.Struct.Biol.,1:527,1996;Sun et al,Pharmacol.Rev.,52:325,2000。例えば、CottonおよびBirnstiel、”Ribozyme mediated destruction of RNA in vivo”,EMBO J.8:3861−3866、1989も参照せよ。
本発明は、(i)カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする遺伝子の発現が阻害されるべき生体系を提供するステップと、(ii)カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする転写物にハイブリダイズするリボザイムに該生体系を接触させるステップとを含むカルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子をコードする遺伝子の発現を阻害する方法を提供し、転写物の切断を導く。本発明の特定の実施形態に従えば、該サブユニットまたは分子は、統合失調症感受性の遺伝子座内の、または遺伝子座に結合する遺伝子、あるいは統合失調症の感受性または発症を引き起こすか、または寄与する機能性突然変異が存在し得る遺伝子座内の遺伝子にコードされる。本発明の特定の実施形態に従えば、生体系は細胞を含み、接触ステップは、細胞中でリボザイムを発現させることを含む。本発明の特定の実施形態に従えば、生体系は、被験体を含み、例えばマウスまたはヒト等の哺乳類被験体を含み、接触ステップは、リボザイムを被験体に投与することまたは被験体中でリボザイムを発現させることを含む。本発明の特定の実施形態に従えば、該発現は、誘導的かつ/あるいは組織特異的または細胞型特異的であり得る。本発明は、上記に記載されるように、カルシニュリン・サブユニットまたはカルシニュリン相互作用分子あるいはそれらの多形性変異体をコードする転写物を切断するように設計されるリボザイムを提供する。
VIII. 統合失調症または統合失調症感受性の治療用の医薬組成物。
限定はされないが、非経口(例えば静脈内)、皮内、皮下、経口(例えば吸引)、経皮 (局所的)、経粘膜、直腸、および膣を含む任意の利用可能な経路によって送達するために、本発明の組成物を調剤することが可能である。好ましい送達経路としては、非経口、経粘膜、直腸、および膣が挙げられる。本発明の医薬組成物には、通常、製薬的に許容される担体と組み合わせた活性化合物またはその塩、関連化合物、あるいは類似体が含まれる。本明細書で使用されるように、用語「製薬的に許容される担体」としては、薬剤投与に適合する溶媒、分散媒、被覆剤、抗細菌剤、抗真菌剤、等張剤、および吸収遅延剤等が挙げられる。補足的な活性化合物を組成物中に組み込むこともできる。治療または他の目的のための核酸またはポリペプチドの送達に関しては、任意の種々の脂質ならびに/またはポリマー担体およびマトリックスを用いることが望ましい。(例えば、ポリマーに基づく送達戦略を論じているLangerらによる特許および公開PCT出願を参照せよ)。HIVtatタンパク質または1つ以上のその部分を含み、かつ細胞に送達すべき積荷(cargo)分子に共有結合する新規の輸送ポリペプチドに関連した米国特許番号第6,316,003号に記載されるような戦略を使用することが望ましい。
医薬組成物を調剤して、その意図する投与経路に適合させる。非経口、皮内、または皮下塗布用に用いられる溶液または懸濁液には、以下の成分を含むことができる。すなわち、注射用の水等の無菌希釈液、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレン・グリコール、グリセリン、プロピレン・グリコール、または他の合成溶媒;ベンジル・アルコールまたはメチルパラベン等の抗細菌剤;アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム等の酸化防止剤;エチレンジアミンテトラ酢酸等のキレート剤;酢酸、クエン酸、またはリン酸等の緩衝液および塩化ナトリウムまたはデキストロース等の張性の調整用の薬剤である。塩酸または水酸化ナトリウム等の酸または塩基を用いてpHを調整することができる。アンプル、使い捨て注射器、ガラスまたはプラスチックで作られた複数の投与バイアル中に非経口製剤を封入することができる。
注入可能な使用に適した医薬組成物としては、通常、無菌水溶液(水溶性である場合)、または無菌注入可能溶液または分散の即時製剤用の分散液または無菌粉末が挙げられる。静脈内投与に関しては、好適な担体としては、生理的食塩水、静菌水、クレモフォアEL(Cremophor EL)(商標)(BASF、Parsippany, NJ)、またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。全てのケースで、組成物は、殺菌すべきであり、容易に注射可能に存在する程度まで液体であるべきである。好ましい医薬調合物は、製造および保存の条件下で安定であり、細菌および真菌等の微生物が混入しないように保存されなければならない。一般に、関連する担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレン・グリコール、および液体ポリエチレン・グリコール等)、および好適なその混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。例えば、レシチン等の被覆剤を用いることによって、分散の場合は必要な粒子サイズを維持することによって、かつ界面活性剤を用いることによって、適切な流動性を維持することができる。種々の抗細菌剤および抗真菌剤によって、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって、微生物の作用の予防を達成することができる。多くの場合で、組成物中に、等張剤、例えば糖、マニトールおよびソルビトール等の多価アルコール、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。組成物中に、吸収を遅延する物質、例えばアルミニウム・モノステアレートおよびゼラチンを含むことによって、注入可能組成物の長期の吸収を引き起こすことができる。
必要であれば上記に列挙した成分の1つまたは組み合わせを有する適当な溶媒の必要量中に活性化合物を組み込み、その後濾過殺菌することによって、無菌の注入可能溶液を調製することができる。一般に、基本的な分散媒および上記に列挙したもののうち必要な他の成分を含有する無菌運搬体中に活性化合物を組み込むことによって、分散液を調製する。無菌の注入可能溶液を調製するための無菌粉末の場合、好適な調製方法は、予め殺菌濾過したその溶液から得た任意の付加的な所望成分に加えて活性成分の粉末を産む真空乾燥および凍結乾燥である。
経口用組成物には、一般に、不活性希釈剤または可食担体が含まれる。経口治療用投与の目的のために、活性化合物は、賦形剤とともに組み込まれ、錠剤、トローチ剤、またはカプセル、例えばゼラチン・カプセルの形態で使用されることができる。含嗽剤として使用するための液体担体を用いても経口用組成物を調製することができる。製薬的に適合する結合剤および/またはアジュバント物質を組成物の部分として含むことができる。錠剤、丸薬、カプセル、トローチ剤等は、任意の以下の成分または同様の性質の化合物を含有することができる。すなわち、微結晶セルロース、トラガカント・ゴム、またはゼラチン等の結合剤;デンプンまたはラクトース等の賦形剤、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)、またはコーンスターチ等の分解剤;ステアリン酸マグネシウムまたはステロート(Sterote)等の滑沢剤;コロイド二酸化ケイ素等の流動促進剤;ショ糖またはサッカリン等の甘味剤;あるいはペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジ香料等の香料添加剤である。経口送達用の調合物は、消化管内で安定性を改良する薬剤および/または吸収を増強する薬剤を都合よく組み込むことが可能である。
吸引による投与に関しては、好ましくは、好適な噴射体を、例えば二酸化炭素等のガス含有する加圧容器またはディスペンサー、あるいは噴射器からのエアロゾル・スプレーの形態で本発明の組成物を送達する。
全身投与は、経粘膜的手段または経皮的手段によるものでもあり得る。経粘膜投与または経皮投与に関しては、浸透すべき関門に適当な浸透剤を調合物中で用いる。このような浸透剤は、当該技術分野で公知であり、例えば、経粘膜投与用の洗剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経鼻スプレーまたは座薬の使用を介して経粘膜投与を実行することができる。経皮投与に関しては、当該技術分野で公知のように、軟膏(ointmentまたはsalve)、ゲル、またはクリーム中に活性化合物を調剤する。
直腸送達のための座薬の形態で(例えば、従来のココア・バターおよび他のグリセリド等の座薬主成分とともに)、または貯留浣腸剤の形態で、化合物を調製することもできる。
一実施形態では、インプラントおよびマイクロカプセル封入送達系を含む徐放性調合物等の身体からの急速な除去に対して化合物を防御する担体を用いて、活性化合物を調製する。エチレン・ビニル・アセテート、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルソエステル、およびポリ乳酸等の生分解性、生体適合性ポリマーを用いることができる。このような調合物を調製するための方法は、当業者には自明である。この材料もアルザ社(Alza Corporation)およびノバ・ファーマスーティカルズ社(Nova Pharmaceuticals, Inc.)から商業的に得ることができる。リポソーム懸濁物(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を有する感染細胞を標的にしたリポソームを含む)を製薬的に許容される担体として用いることもできる。これらを当業者に既知の方法にしたがって調製することができ、例えば米国特許番号第4,522,811号に記載されている。
容易に投与されて、投与量が一様に広がるための投与量単位形態で、経口用組成物または非経口用組成物を調剤することが有利である。本明細書で使用されるように、投与量単位形態とは、治療すべき被験体にとって単位投与量として適している物理的に個別の単位を指す。各単位には、必要な医薬担体と関連して所望の治療効果を生むように計算された活性化合物の所定量が含有される。
例えばLD50(その集団の50%に対する致死量)およびED50(その集団の50%で治療上有効な量)を決定するために、細胞培養物または実験動物中で、標準の医薬手順によってこのような化合物の毒性および治療効果を測定することができる。毒性作用および治療効果間の用量比率は治療上の指数であり、それをLD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。毒性副作用を示す化合物を用いることができる一方で、非感染細胞への潜在的な損傷を最小限にして、それにより副作用を低減するために、羅患組織部位にこのような化合物を標的化する送達系の設計は注意すべきである。
ヒトで使用される投与量の範囲を調剤する際に、細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータを用いることができる。このような化合物の投与量は、好ましくは、ほとんど毒性がないか、または全くないED50を含む循環濃度の範囲内である。投与量は、使用される投与量形態および利用される投与経路によって、この範囲内で変動することができる。本発明の方法で用いられる任意の化合物に関しては、細胞培養アッセイから治療上有効量を初めに推定することができる。動物モデルで用量を調剤し、細胞培養物中で測定されるように、IC50(すなわち症状の最大抑制の半分を達成する試験化合物の濃度)を含む循環する血漿濃度範囲を達成することができる。このような情報を用いて、より厳密にヒトでの有効量を決定することができる。例えば高速液体クロマトグラフィーによって、血漿中のレベルを測定することができる。
治療上有効量の医薬組成物は、通常、約0.001から30mg/kg体重の範囲であり、好ましくは約0.01から25mg/kg体重、より好ましくは約0.1から20mg/kg体重、さらにより好ましくは約1から10mg/kg体重、2から9mg/kg体重、3から8mg/kg体重、4から7mg/kg体重、または5から6mg/kg体重である。様々なインターバルで、かつ必要であれば異なる期間にわたって、例えば約1ないし10週、2ないし8週、約3ないし7週、約4週間、約5週間、または約6週間等の週ごとに1回で、医薬組成物を投与することができる。特定の条件に関しては、不定基準で医薬組成物を投与して、疾患を制御下に置くことが必要である。当業者には、限定はされないが、疾患または障害の重症度、先行の治療、被験体の全身の健康および/または年齢、ならびに他の疾患の存在を含む特定の成分が被験体を有効に治療するために必要な投与量およびタイミングに影響する可能性があることが理解される。一般に、本明細書に記載されるように本発明の組成物を用いた被験体の治療には、単一治療を含むことができ、また多くの場合は一連の治療を含むことができる。
好例の用量としては、被験体重量または試料重量1キログラム当たり本発明の組成物のミリグラム量またはマイクログラム量(例えば1キログラム当たり約1マイクログラムから1キログラム当たり約500ミリグラム、1キログラム当たり約100マイクログラムから1キログラム当たり約5ミリグラム、または1キログラム当たり約1マイクログラムから1キログラム当たり約50マイクログラム)が挙げられる。適当量は、任意で、例えば予め選択した所望の応答が達成されるまで用量を増加する投与によって、特定のレシピエントの条件にあわせる(tailored)ことが可能であることがさらに理解される。任意の特定の被験体に対する特有の用量レベルは、使用される特異的化合物の活性、被験体年齢、被験体体重、被験体の全身の健康、被験体性別、被験体の食餌、投与時間、投与経路、排泄の割合、任意の薬物の組み合わせ、および調節すべき発現または活性の程度を含む種々の要素に依存する可能性があることが理解される。
本発明の医薬組成物は、投与の指示と組み合わせて、容器、包み、ディスペンサー中に含まれることができる。
統合失調症の治療に有用な付加的な薬剤と同時に任意の本発明の化合物を投与することが可能である。そのような薬剤の多くは、当該技術分野で既知であり、広範な典型的および非典型的な抗精神病剤を含む。さらに、抗精神病剤の副作用を改善するのに有用な化合物と同時に、本化合物を投与することが可能である。例えば先述の目的に有用な多数の薬剤について論じているHardman,J.G.et al,(eds.)Goodman & Gilman’sThe Pharmacological Basis of Therapeutics,10th edition,McGraw Hill、2001を参照せよ。同時に投与される化合物を別々に被験体に投与することが可能であり、また一緒に調剤することが可能である。
IX.感受性遺伝子座および機能性突然変異を同定するための方法および試薬。
本発明は、付加的な統合失調症感受性遺伝子座、統合失調症または統合失調症感受性の診断に有用な多形性現象を同定するためと、統合失調症を引き起こすかまたは寄与する機能性突然変異を同定するためとの系統的アプローチとを提供する。本発明は、(i)CNサブユニットまたはCN相互作用タンパク質をコードする遺伝子中のまたは遺伝子に結合する1つ以上の多形性現象を同定するステップと、(ii)統合失調症に羅患している被験体から得た試料を含む試料のセットを提供するステップと、(iii)多形性現象の1つ以上の変異体が統合失調症とつながりまたは関連があるかに対して試料を試験するステップとを含む統合失調症または統合失調症感受性の診断に有用な多形性現象の同定方法を特定する方法を提供する。つながりまたは関連がある場合、多形性現象は、統合失調症または統合失調症感受性の診断に有用である。したがって、このような多形性現象は、統合失調症感受性の遺伝子座に位置するか、または統合失調症感受性の遺伝子座を定義することが可能である。試料のセットは、統合失調症に羅患した1つ以上のファミリーから得た試料を含むことが可能であり、かつ関連する個体および関連しない個体の両方を含むことが可能である。
本発明は、(i)CNサブユニットまたはCN相互作用タンパク質をコードする遺伝子中のまたは遺伝子に結合する1つ以上の多形性現象を同定するステップと、(ii)統合失調症感受性につながりまたは関連がある多形性現象の多形性変異体を決定するステップと、(iii)統合失調症を羅患している1つ以上の被験体から得た試料中の遺伝子および任意で遺伝子の調節領域をシーケンシングするステップと、(iv)同一遺伝子の正常配列または野生型配列と得られた配列を比較するステップと、(v)ステップ(iii)で得た配列が正常配列または野生型配列と異なる場合は、統合失調症を引き起こすか、または寄与する突然変異を表すとして多形性変異体を同定するステップとを含む統合失調症を引き起こすか、または寄与する候補機能性突然変異を同定する方法をさらに提供する。
該方法は、正常の被験体中および統合失調症に羅患している被験体中の遺伝子の発現を分析することをさらに含み、これはmRNAの存在量、サイズ、および組織発現パターンを調べることと、コードされるタンパク質の存在量、サイズ、組織発現パターン、および/または活性等を調べることとを含む。
実施例1:カルシニューリン欠失マウスは統合失調症を示唆する活動性異常および行動異常を示す
材料と方法
動物および実験設計。前脳特異的カルシニューリン・ノックアウト・マウス(CN変異体)の作製に関しては、他の場所で詳細に述べた[36]。試行開始時に生後11週間であった雄マウスを用いて、すべての行動試験を行った。マウスは、12時間の明暗サイクルがある(午前7時に照明をつける)部屋で個別に飼育し、食物および水へのアクセスを任意(ad libitum)とした。行動試験は、午前9時および午後5時の間に行った。動物の世話および取扱いに関するすべての処置を、MITおよびNIHのガイドラインにしたがって行った。
運動機能試験。ロータロッド・試験によって、運動調整およびバランスを試験した。ロータロッド・試験は、加速ロータロッド(UGO Basile Accelerating Rotarod)を用いて行い、マウスを回転するドラム(直径3cm)に配置することと、それぞれの動物がロッドの上でバランスを保てた時間を測定することとからなった。ロータロッドのスピードは、4〜40rpmを5分間かけて加速した。
目標探索試験。試験は、5回の試行(10分間/試行)からなった。透明な白いプラキシガラスで作られたボックス(40x40x30cm)にマウスを導入し、初日(試行1)および2日目(試行2)には、目標なしの自由な探索を許した。それらを、3日目に、2個の同一な目標(目標A)のあるボックス中に配置した(試行3)。試行3の10分後に、目標の1つを新規目標(目標B)に取り替え、マウスが、2個の異なった目標(目標Aおよび目標B)のあるボックスを探索するのを許した(試行4)。その翌日、目標Bを別の新規な目標に取り替えた(目標Aおよび目標C;試行5)。
マッキントッシュ・コンピュータに接続されたカラーCCDカメラ(Sony,DXC−151A)を用いて行動を観察した。自発運動量(locomotor activity)と、各動物が目標の周りで過ごした時間と、フィールドの中心部で費やした時間とを記録した。目標周囲の注目領域(ROI)を、目標の位置の中心から直径8cmの円として定義した。マウス映像の中心が、各目標用に定義されたROIの中にあったとき、マウスが「目標」にいるとみなされた。イメージOE(Image OE)ソフトウェアを用いて、分析を自動的に行った(「映像解析」を参照)。目標の記憶に関する指数として、認識指数(RI)を、(tB/(tA+tB))/100と定義した。
オープン・フィールド試験。各被検体をオープン・フィールド装置の中心に配置した(40x40x30cm;Accuscan Instruments,Columbus,Ohio)。装置は各試行の後に水で清掃した。総移動距離(cm)、垂直活動、中心で費やした時間、ならびに常同行動(stereotyped behavior)に関するエピソードおよびビーム・ブレーキ・カウント(beam−brake counts)の、数および所要時間を記録した。60分間隔でデータを集めた。
熱板試験。熱板試験は、苦痛な刺激に対する感度を評価するのに用いた。マウスを、55.0(±0.3)℃の熱板(Columbus Instruments,Columbus,Ohio)に配置し、最初の後ろ足反応(hind−paw response)までの待ち時間を記録した。後ろ足反応は、足の振とう(foot shake)、または足をなめること(paw lick)のどちらかであった。
明暗移行(light/dark transition)試験。明暗移行試験に用いられた装置は、小さな開口部を含む黒い隔壁よって2つの等しい大きさの区画に分割されたケージ(21x42x25cm)からなった(O’Hara & Co,Tokyo,Japan)。1つの部屋が明るく照らされたが、もう片方の部屋は暗かった。マウスを照らされた側に配置し、10分間、2つの部屋の間の自由な移行を許した。各試行の後に、部屋を水で清掃した。イメージLD4(Image LD4)ソフトウェアによって、移行総数、暗い側で費した時間、および移動距離を記録した(「映像分析」を参照)。
社会的相互作用試験。異なるケージで飼育された、同じ遺伝子型のマウス2匹を、ボックス中に一緒に(40x40x30cm)配置し、10分間、自由な探索を許した。マッキントッシュ・コンピュータに接続されたCCDカメラ(Sony、DXC−151A)を用いて、社会的行動を観察した。イメージSI(Image SI)ソフトウェアを用いて、分析を自動的に行った(「映像分析」を参照)。接触回数、1接触あたりの平均所要時間、および総移動距離を測定した。
側方抑制(latent inhibition)試験。訓練日(1日目)に、各マウスをショッキング・チャンバー(shoking chamber)(Coulbourn Instruments, Allentown,Pa.)(ボックスA)に配置した。マウスを、前処置される(preexposed)グループ(Pグループ)および前処置されない(non−preexposed)グループ(NPグループ)の2つのグループに分割した。Pグループは、40回の発振音(tone)(68dB、所要時間5秒間、刺激間間隔25秒)を受けた。一方NPグループは、同じ時間に刺激を受けなかった。発信音による前処置、すなわちショッキング・チャンバーで処置された直後に、5秒間のホワイト・ノイズ発信音(CS)と、同時終了する0.40mA、2秒間のフット・ショック(foot shock)(US)とからなる発振音−ショック・ペアーを刺激間間隔25秒で両グループに与えた。その後、マウスをホーム・ケージに戻す前に、25秒間、ショッキング・チャンバーに残した。2日目に、マウスを5分間、ボックスAの中に戻し、コンテクストに対するフリージング(freezing to the context)を測定した。3日目に、マウスを白いプラキシガラス部屋(ボックスB)に入れ、180秒後に、180秒間の発信音を与え、条件付けされたフリージング(cued freezing)を測定した。
プレパルス抑制タスク(prepulse inhibition task)。驚がく反射測定システムを用いた(MED Associates,St.Albans,Vt.)。マウスをプラキシガラス・シリンダの中に配置し、5分間それを乱さずに放置する(leave undisturbed)ことよって、試験・セッションを開始した。驚がく刺激として用いられたホワイト・ノイズの所要時間は、すべての試行型式で40msecであった。プレパルス刺激の開始に始まる160msecの間(1msec毎に反応を測定)、驚がく反応を記録した。各部屋のバックグラウンド・ノイズ・レベルは70dBであった。160msecのデータ採取ウィンドウ中に記録されたピーク驚がく振幅を、従属変数として用いた。試験・セッションは6つの試行型式から成った(すなわち、驚がく刺激のみの試行用に2型式、およびプレパルス抑制試行用に4型式である)。驚き刺激の強度は、100、105、110、または120dBであった。プレパルス音を、驚がく刺激の前に100msec与え、その強度は74dB、または78dBであった。プレパルスと驚がく刺激の組合せ4つを用いた(第1バッチの被検体用、および第2バッチの被検体の第1試験用に、74−110、78−110、74−120、および78−120;第2バッチの動物の第2試験用に、78−105 78−100と、74−105)。6つの試行型式の6つのプロック(プレパルスおよび驚がく刺激の組合せで4試行型式、驚がく刺激のみで2試行)を、それぞれの試行型式がプロックの中で一度示されるように、擬似ランダム順序で与えた。平均した試行間間隔は、15秒であった(範囲:10−20秒)。
ポーソルト(Porsolt)強制水泳試験。装置は4個のガラス・ビーカからなった(高さ15cm×直径10cm)。シリンダーを非透過のパネルによって相互に切り離し、マウスが互いを見るのを防いだ。7.5cmの高さまで、シリンダーを水(23℃)で満した。マウスをシリンダーに配置し、それらの行動を10分の試験期間にわたって記録した。イメージPS(Image PS)ソフトウェアを用いて、データ取得および分析を自動的に行せた(「映像分析」を参照)。イメージOF(Image OF)ソフトウェア(「映像分析」を参照)によって、保存されたイメージ・ファイルを用いて移動距離を測定した。
巣作りの定量。巣の写真をデジタルカメラ(Olympus, Melvile, N.Y.)を用いて撮影し、コンピュータに転送した(export)。各ケージに関して、ネストレット(nestlet)の点在したパーティクル(particle)の数を、NIHイメージ・プログラムを用いて数えた(映像解析を参照)。
映像解析。行動研究に用いたすべてのアプリケーション(イメージSI、イメージOE、イメージLD4、イメージPS、イメージOF、およびイメージFZ)は、マッキントッシュ・コンピュータ上で作動させた。アプリケーションはパブリック・ドメインのNIHイメージ・プログラム(Wayne Rasband(the U.S. National Institute of Mental Health)によって開発され、http://rsb.info.nih.gov/nih−image/ においてインターネットで利用可能である)に基づき、各試験用に、Tsuyoshi Miyakawaが改変した(O’Hara & Co.,Tokyo,Japanを通して利用可能)。
統計的分析。統計的分析は、StatView(SAS institute)、またはSAS(SAS institute)を用いて行った。データは両側t検定(two tailed t−test)、二元配置分散分析(two−way ANOVA)、またはくり返しのあるデータの二元配置分散分析(two−way repeated measures ANOVA)によって分析した。表とグラフによる値は、平均±SEMとして表示した。
結果
本発明の発明者らは、コンディショナル・ジーン・ターゲッティング(conditional gene targeting)技法を用い、カルシニューリン活性が成体マウスの前脳で特異的に破壊されたマウス(本明細書において、CNノックアウト・マウスと呼ぶ)を作製した[36]。具体的には、成体マウス前脳の興奮性ニューロン中でfCNB1遺伝子をノックアウトした。fCNB1遺伝子は、脳カルシニューリンの唯一の既知な調節サブユニットであるCNB1をコードする。インサイチュウ(in situ)ハイブリダイゼーション分析に基づき、fCNB1遺伝子が、海馬、新皮質、およびへん桃核の選択された細胞形のみで、欠失していることを確認した。一方、線条体、小脳、および他の皮質下の領域でのfCNB1発現は、すべての齢数で正常に見えた。fCNB1を発現している細胞の低減は、5週齢における海馬CA1および大脳皮質で最初に検出可能であった。上記の欠失パターンは約2.5月齢で明白になり、少なくとも、調べられた最後の時点である5月齢まで変わりがなかった。CNノックアウト・マウスは、巨視的に正常に見え、知覚障害または運動障害の明白な徴候はなかった。ヘマトキシリンによる脳切片の染色では、巨視的な構造的異常が見られなかった。CNノックアウト・マウスに関して行われた追加検討の詳細、およびさらなる記載については、[36]を参照するとよい。
以前の生化学的研究によって、CNAサブユニットがその触媒活性を発現するには、まずCNB調節サブユニットに結合しなければならないことが示された(Merat et al,1985;Perrino et al,1992;Sikkink et al,1995)。CNBは、複合体安定化における構造的役割を果たすだけではなく、Ca2+−カルモジュリンによる、ホスファターゼ活性の最大活性化にも必要である(Stemmer、およびKlee,1994)。CNB1は脳で唯一の調節サブユニットであるため、その欠失はカルシニューリン活性の喪失につながるであろう。
活動性および行動の多様な様相において、CNの役割を評価するため、CNノックアウト・マウスを一連の試験にかけた。これらの試験は、統合失調症および他の精神障害に苦しむヒト被験者で変化が見られる活動性および行動の諸様相を反映するものである。以下で記述されるように、CNノックアウト・マウスは、統合失調症および/または関連障害に独特の表現型を示すさまざまな異常を表した。
自発運動量、常同行動、および、無生物目標に対する探索行動の増加。CN変異体は、それらの野生型同腹仔より、重さが約12%軽かった(コントロール、30.3±0.7;CN変異体、26.6±0.7;p<0.01)。外観(ほおひげ、および毛皮)、痛覚感度(熱板試験)、および運動調整(加速ロータロッド試験)では有意差がなかった。
CN変異種は、いくつかの異なった試験で自発運動量の著しい増大を示した。この過活動性表現型は、オープン・フィールド試験、目標認識試験、および社会的相互作用試験で一貫して観測された。目標探索試験中、オープン・フィールド試験中(図1B、p<0.0001)、および社会的相互作用試験中(図2D、p=0.003)のCN変異体の総移動距離は、コントロールより有意に大きかった(図1A(p<0.0001)。CN変異体では、コントロールと比べて、オープン・フィールド試験における垂直活動数(図1C;遺伝子型効果、p=0.010)および、常同行動のカウント(図1D、p=0.001)でも増加があった。常同行動のエピソードの数は、遺伝子型間で有意差がみられなかった(図1F)が、60分間の試行の後半中において、コントロールと比較したCN変異体の常同行動の所要時間が増加していた(図1E;時間×遺伝子型相互作用、p<0.05;試行後半の遺伝子型効果、p<0.05).
目標探索試験の順化フェーズ(すなわち、試行1および試行2)でCN変異体はコントロールより長い間、フィールドの周辺領域にいた(図の1Aの上側のパネル; p<0.05)。きわだったことに、フィールドに目標を導入した後(すなわち、試行3、試行4、および試行5)、CN変異体はフィールドの中心領域で、より多くの時間を過ごした。これは目標に対する探索行動の増加を示すものである(p<0.01)。CN変異体が目標の近くで費やした時間も、コントロールのそれよりかなり長かった(図1A下部パネル、p=0.0088)。認識指数に関しては、1時間の試行(すなわち、試行4)、または24時間の試行(すなわち、試行5)のいずれでも、CN変異体とコントロールとに有意差がみられなかった(データは示されていない)。
ポーソルト(Porsolt)強制水泳試験における移動距離および無動姿勢での消費時間に関しては、CN変異体とコントロールとの間で有意差がみられなかった(データは示されていない)。これは、この試験で評価される「行動性の絶望(behavior despire)」に関して、CNマウスに明白な異常がないことを示している。
社会的相互作用の減少、および不安様行動(anxiety−like behavior)の増加。CN変異体はオープン・フィールド装置の中心領域で、有意に少ない時間を過ごした(図1G;p<0.01)。これは、一般に、不安の増大を反映するものと考えられている。明暗移行試験では、被検体の2つの独立したバッチにおいて、CN変異体による2つのコンパートメント間の移行数が、コントロール・マウスに比べ、有意に減少した(図2B;被検体の各バッチあたりp<0.01)。一方、点灯されたコンパートメントでの合計消費時間に関しては、被検体の1つのバッチにおいてのみ、短縮がみられた(図2C;p<0.05)。不安(anxiety)の尺度としては、点灯されたコンパートメントでの消費時間より、移行数の方が良い尺度であると考えられている。自発運動量に関する他のいくつかの指標によって、CNマウスが過活動性であると判明しているため、CN変異体ネズミの明暗移行数の減少は、CN変異体マウスの恐怖感または不安の増加を、格別に示唆するものである。加えて、CN変異体は、それらの著しい過活動性にもかかわらず、独特かつ一貫した自発運動量タイムコースを示す。すなわち、CN変異体は、オープン・フィールド試験(図1B)、第1の目標探索試行(図1A)、および社会的相互作用試験(図2D)の初期1〜2分の間、コントロール・マウスより低い活動度を示す。CN変異体マウスの不安様行動の増加を示す他の2つの発見を考慮すると、それらの初期活動度の低下は、新規な刺激/状況に対する恐怖が増大していることの反映である可能性がある。
社会的相互作用試験において、10分の時間内に、CN変異体の社会的接触回数は、コントロール・マウスの社会的接触回数から、有意な相違を示さなかった。しかし、CN変異体による接触の合計持続時間、および1接触あたりの平均持続時間は、コントロール・マウスのものより有意に短かった(図2F;p=0.0009)。CNマウスの自発運動量は、この試験において増加しているため(上記の段落を参照)、それらの接触持続時間の減少は、速度増加の結果である可能性がある。しかし、この可能性は、2つの理由からありそうもない。第1に、目標探索試験において、無生物目標探索の持続時間が増大した。第2に、マウスが社会的接触をもつ動機(motivation)に相違がないと仮定するなら、一般的にいって、自発運動量の増大のみで、接触回数および接触の合計持続時間が増加するはずである。例えば、M1ムスカリン様アセチルコリン受容体を欠失したマウスは、過活動性であり、かつ同時に、回数および合計持続時間の増加した接触を行うことが示されている[27]。したがって、同程度の接触回数で、社会的接触の持続時間が減少しているのは、社会的相互作用の減少を反映いる可能性が最も高い。CN変異体の社会的相互作用の減少が、不安の増大のためか、または社会的接触をもつ動機の欠如のためであるかは明らかでないが、明暗移行試験、およびオープン・フィールド試験で観察された、不安様行動の増加の発見は、前の可能性を支持している。
プレパルス抑制障害。プレパルスのない驚がく反応の強度は、100、105、110、または120dBの刺激において、遺伝子型の間で有意に異なっていなかった。知覚運動性ゲート(sensorimotor gating)の指標であるプレパルス抑制比率(パーセント・プレパルス抑制)は、驚がく刺激強度が100、105、および110dBであったときに、CN変異体でコントロールより有意に低かった(図3;それぞれ、p=0.0023、p=0.0447、p=0.001)。刺激強度が120dBであったときに遺伝子型の間の有意差は観測されなかった(p=0.2610)が、それはおそらく、驚がく刺激の強い強度によるシーリング効果(ceiling effect)のためである。
側方抑制障害。ショック提示中の移動距離によって測定される電気ショックへの感度、条件づけ試行のポスト・ショック(posy−shock)時間中のフリーズ比率(pecent freezing)、およびコンテクスト試行中のフリーズ比率は、Pグループに関しても、またはNPグループに関しても、コントロールおよび変異体の間で統計的に異なっていなかった。条件づけフェーズのプレ・ショック(pre−shock)時間中の無動性比率(percent immobility)は、変異体マウスでコントロールより有意に低かった(データは示されていない)が、これは、おそらく変異体マウスの過活動性のためである。コントロール・マウスによる、条件付けされた試行では、Pグループのフリージング比率が、NPグループのフリージング比率より有意に低かった(図4は左パネル;p=0.030)。これは、コントロール・マウスの有意な側方抑制を示すものである。対照的に、CN変異体は有意な側方抑制を示さなかった(図4、右パネル)。
巣篭もり行動障害。本発明の発明者らは、CN変異体の巣が不十分に形成されているのを観測した。通常、正常なマウスは、ケージ中の明確な位置に、清潔かつ同定可能な巣を形成する。しかし、CN変異体は、概して、識別可能な個別の巣を形成せず、ケージの床上に巣づくり材料の断片を点在させる傾向がある。したがって、巣の写真は撮影し、各ケージに関して、巣づくり材料の点在したパーティクルの数を数えた。CN変異体のケージ中のパーティクル数は、コントロールのものより有意に大きかった(コントロール:9.5±2.3、CN変異体:18.2±3.2;p=0.037)。
実施例2:カルシニューリン・サブユニット遺伝子、カルシニューリン結合タンパク質遺伝子、およびカルシニューリン活性と相互作用するタンパク質をコードする遺伝子の位置は、統合失調症感受性遺伝子座(schizophrenia susceptibility loci)と一致する。
材料と方法
遺伝子座決定分析。カルシニューリン・サブユニット遺伝子およびカルシニューリン関連遺伝子の染色体位置を決定するため、ヒト・ドラフト配列のマップ・ビューアー機能/サイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/cg− i−bin/Entrez/hum_srch?chr=hum_chr.inf&query)を、「カルシニューリン」などのクエリー用語(query term)を用いて探索し、それらの遺伝子の正確な染色体位置を検索した。それらの遺伝子の染色体位置を記述する用語(例えば、chromosome 8、または8q)を、「schizophrenia」という用語に結合し、それらの個々の組合せを、Entrez Pubmedデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Entrez/)を捜すのに用いることによって、それらの染色体にある統合失調症感受性遺伝子座を記述する刊行物を検索した。それら統合失調症遺伝子座の染色体位置を、該遺伝子の遺伝子座と比較し、一致度(coincidence)の検出を行った。より詳細な分析のため、ヒト・ゲノム・ブラウザ(Human Genome Browser)(http://genome.ucsc.edu/cgi−bin/hgGate−wav)、またはヒトEnsemblサイト(http://www.ensembl.org/Homo_sapiens/)を用い、所与の領域の疾患感受性(a given region of susceptibility)に関する最重要マーカーの位置と、正確な遺伝子位置とを比べた。
結果
カルシニューリンおよびカルシニューリン結合タンパク質をコードする遺伝子の位置。CN変異体で観察された行動異常、および実施例1に記載された行動異常は、統合失調症発病機序におけるカルシニューリン機能不全の関与を集合的に示した。統合失調症病因に、カルシニューリン遺伝子の変異が寄与しうるかを調査するため、4つのカルシニューリン・サブユニット遺伝子、すなわちPPP3R1、PPP3CA、PPP3CC、およびPPP3CB、ならびに2つのカルシニューリン結合タンパク質、すなわちCABIN 1およびCABIN 2をコードする遺伝子の染色体位置を、以前に同定された統合失調症感受性遺伝子座と比較した。これらの5つの遺伝子の染色体位置は、以前にマッピングされた(mapped)統合失調症遺伝子座と一致していると認められた(表1)。
例えば、カルシニューリンCNB調節サブユニットをコードするPPP3R1遺伝子は、2p13.3に位置し、ミクロネシアのPalauan集団で同定された、2p13−14にある強い疾患感受性遺伝子座の中にある[5,7]。カルシニューリンCNAγ触媒サブユニットをコードするPPP3CC遺伝子は、8p21.3に位置し、8p21−22にある主要な疾患感受性遺伝子座の中にある[3,17,20,29]。カルシニューリンの阻害剤[23]であるカルシニューリン結合タンパク質1をコードするCABIN 1遺伝子は、22q11.3に位置し、22q11にある際立った統合失調症感受性遺伝子座と一致する[18,34]。また、この領域は、統合失調症の増加リスクを与える微小欠失が起きやすい領域でもある[19]。カルシニューリン活性を阻害することが示されているカルシニューリンB相同タンパク質をコードするCHP遺伝子[25]は、15q15.1に位置し、15q15にある周期的カタトニー(periodic catatonia)の主要遺伝子座と一致する。周期的カタトニーは非体系的統合失調症(unsystematic schizophrenia)の臨床亜型である[32]。
CNAαおよびCNAβサブユニットをコードする、PPP3CAおよびPPP3CB遺伝子は、より穏やかな重要度において疾患感受性領域(susceptibility region)に関連づけられる。PPP3CAは4q24に位置し、4q13−31にある疾患感受性として報告されている遺伝子座の中にある。この疾患感受性遺伝子座は、コア、劣性モデル(core,recessive model)によってピーク重要度にあるとされる4q24に位置した1つのマーカーによって特徴付けられる[17]。さらに、PPP3CAの位置は、2つの研究で同定された4q25にある感受性遺伝子座の近傍でもある[21,24]。PPP3CB遺伝子は10q22.2に位置する。この部位は、疾患感受性領域の中にはないが、ピーク重要度が10q22.3にある疾患感受性として示唆されている領域の近くにある[1]。
CS−1(calsarcin−1)[24][21]、CS−3(calsarcin−3)[17][28]、AKAP−5(A kinase anchoring protein5)[12][8][1]、およびFKBP−5(FK506 binding protein−5)[6][35](表1参照)を含むカルシニューリン結合タンパク質をコードする他の多くの遺伝子も、統合失調症感受性として提案されている遺伝子座(表1を参照)の中、または近傍に位置する。
カルシニューリン・シグナル伝達に関連するタンパク質をコードする遺伝子の位置。リアノジン受容体型3(RYR3)は、カルシニューリンと相互作用し、さらにカルシニューリン・シグナル伝達に関与している[15]。RYR3遺伝子は15q13.3に位置し、15q13−14にある主要な統合失調症感受性遺伝座の中にある[34]。興味深いことに、RYR3変異体マウスは、CN変異体マウスに類似の行動、および電気生理学的異常を示す[2,14,22,33]。RYR3はIP3受容体タイプ1(IPTR1)と結合し、この複合体がカルシニューリンと相互作用する[15]。また、IPTR1遺伝子は、3p26.1にマッピングされた統合失調症感受性遺伝子座の近傍に位置している[29]。
NFATファミリー転写因子のメンバーは、CNの主要な基質である[30]。NFATは、CNによる脱リン酸化に続いて活性化されて、核に移行する[37、およびその中の参考文献]。興味深いことに、NFATのサブユニットをコードするILF2遺伝子は、1q21.3に位置し、1q21−22にマッピングされている主要な統合失調症感受性遺伝子座と一致する[4]。その上、また、別のカルシニューリン依存性NFATサブユニットをコードするNFATC2遺伝子は、20q13にある統合失調症感受性として提案されている遺伝座と一致する[13]。いくつかの追加候補分子が表1に記載されている。
参考文献リスト1(実施例1および2のための参考文献)
実施例3:統合失調症患者におけるカルシニューリン・サブユニットおよびカルシニューリン・シグナル伝達関連タンパク質をコードする遺伝子の配列分析
材料と方法
患者試料。この研究で使用した合衆国患者試料および南アフリカ患者試料に関しては、以前に記述されている[1,2]。成人分裂症患者(AS)試料に関する詳細な情報は、Sobin,C.,Blundell,M.L.,Conry,A.,Weiller,F.,Gavigan,C.,Haiman,C.,およびKarayiorgou,M.(2001)Psychiatry Res.101,101−113.に提供されている。南アフリカ試料は、本発明の発明者らによるアフリカ人出自統合失調症患者の進行中の収集の一部であり、他の場所で詳細に記述されるだろう(M.K.,M.Torrington,C.S.,B.R.,S.C.H.,M.L.B.,H.Pretorius,S.Lay,J.A.G.,およびJ.L.R.,の未発表研究)両試料の発端者(proband)は、統合失調症、または分裂情動性型障害(schizoaffective disorder)に関するDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th Ed.(DSM−IV)(American Psychiatric Association.(1994)Diagnostic and Statistical Manual(Am.Psychiatric Assoc.,Washington,D.C.))の寿命評価基準を満たした。特別に訓練された臨床医により、Diagnostic Interview for Genetic Studies (DIGS)(Numberger,J.I.,et al.1994)Arch.Gen. Psychiatry 51,849−859)を用いて参加者をインタビューした。COS試料に関する詳細な情報は、Usiskin,S.I.,ら(1999)J.Am.Acad.Child Adolesc.Psychiatry 38, 1536−1543,およびNicolson,R.,ら(2000)Am.J.Psychiatry 157,794−800に提供されている。すべてのCOS発端者は、統合失調症の変更されていない評価基準を満たし、彼らの13回目の誕生日以前に精神病性の徴候を開始し、精神病の平均発病年齢は10.1才(±1.8年)であった。実験計画書(protocol)および同意書(concent form)は、すべての参加部署における施設内審査委員会(Institutional Review Bord)(IRB)によって承認された。National Institute of Mental Health(NIMH)試料は、NIMH Human Genetics Inititative dataset(http://zork.wustl.edu/nimh)から入手した。
PCR法/シークエンシング。PCRプライマーは、コード配列、非コード(non−coding)エキソン、プロモーター配列、およびいくらかのイントロン配列を含むエキソン配列全体にわたるゲノム断片を増幅するように設計された(プライマー配列に関しては、補遺1を参照)。すべてのプライマー設計用に、UCSCの進行中ヒト・ドラフト・サイト(working human draft site)、http://genome.ucsc.edu/で利用可能なヒト・ドラフト配列を用いた。各PCRプライマー・ペアは、特異的なゲノム断片を増幅するように設計されたフォワード・プライマーとリバース・プライマーとからなった。フォワードPCRプライマーは、18bpのフォワード・ユニバーサル・シークエンシング・タグ(5’−TGTAAAACGACGGCCAGT−3’(配列番号1))と、その5’末端に融合された19〜21bpの相同配列とを含んだ。リバースPCRプライマーは、18bpのリバース・ユニバーサル・シークエンシング・タグ(5’−CAGGAAACAGCTATGACC−3’(配列番号2))と、その5’末端に融合された19〜21bpの相同配列とを含んだ。このため、すべてのシークエンシング反応のプライミングに、これらの2つのプライマーを用いることによって、すべてのPCR断片を両方向で配列決定することが可能になった。PCR反応は、プログラム可能なPCRテトラド・マシン(PCR tetrad machine)(MJ Research,Cambridge Mass.)を用いて行った。反応の大部分を、OptiPrime 10xPCR緩衝液6(Stratagene,La Jolla,Calif.)を用いて行った。特定の配列を、20ngのゲノムDNA、400nM濃度の各プライマー、200uM濃度の各dNTP、および1.5UのTaqポリメラーゼ(Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo.)を含み、適切なOptiPrime緩衝条件にある25ulの反応混合液中で増幅した。PCR増幅は以下のようにして行った。すなわち、94℃での初期変性ステップを5分間、続いて34増幅サイクル(94℃で45秒;適切なアニーリング温度(通常62.5℃)で60秒;72℃での伸長を60秒)、続いて72℃での最終伸長ステップを7分とした。GCリッチ断片は、Advantage GCゲノム・ポリメラーゼ・ミックス(Becton Dickenson,Palo Alto,Calif.)を用い、1M GC melt、および400nm濃度のプライマーを含む25ulの反応液中で、メーカーのインストラクションにしたがって増幅した。GCリッチPCR増幅は以下のようにして行った。すなわち、95℃での初期変性ステップを1分間、続いて34増幅サイクル(94℃で30秒;68℃で3分)、続いて68℃での最終伸長ステップを7分とした。PCR断片は、2%のアガロース・ゲル電気泳動法で分離し、Qiagen Minelute Gel extraction kit(Qiagen,Valencia, Calif.)を用いて精製した。すべてのシークエンシング反応は、ACGT社(Northbrook, Ill)によって行われた。
配列分析。配列分析は、DNAStarソフトウェアを用いて行った。患者の配列を、UCSCウェブサイト、http://genome.ucsc.edu/ で利用可能なヒトゲノム・ドラフト配列と比較した。患者配列とヒト・ドラフト配列とを含むコンティグ(contig)を、各断片に関して構築し、比較によって多形性現象(polymorphonism)を同定した。
遺伝子型決定。遺伝子型決定に用いられた多形性現象は、直接配列決定法によって同定するか、あるいは、NCBI SNPデータベース、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/およびhttp://www.celera.com/のセレラ・データベースにリンクする、UCSCの進行中ヒト・ドラフト・サイト、http://genome.ucsc.edu/ または、Weizmann Institute Gene Cardsサイト、http://bioinfo.weizmann.ac.il/cards/index.htmlを含むSNPデータベースで発見した。そう入/欠失多形性現象は、個々の被検者からのゲノムDNAをPCR増幅して判定(type)し、アガロース・ゲル電気泳働によって評価された断片・サイズの変化によって同定した。制限エンドヌクレアーゼ部位の変更を起こした一塩基多型(single nucleotide polymorphism)(SNP)は、PCR制限酵素断片長多型分析法(PCR−Restriction Fragment Length Polymorphism Genotyping)を用いて判定した[1][2]。簡潔には、SNPにまたがる断片を、個々の被検者のゲノムDNAからPCRによって増幅し、10ulのPCR産物を15ulの反応液中で適切な制限酵素によって、メーカーの指示(New England Biolabs, Beverly, Mass.)にしたがって消化した。消化産物を4%のアガロース・ゲル電気泳動にかけ、エチジウム・ブロマイド染色で可視化し、Eagle Eye装置(Stratagene, La Jolla, Calif.)で写真撮影した。制限部位に変更を起こさないSNPは、蛍光偏光鋳型依存的ダイ・ターミネーター取り込み(fluorescence polarization template−directed dye−terminator incorporation) (FP−TDI)遺伝子型決定法を用い、[1,2]で引用されている刊行物および上記に特別に言及された刊行物にしたがって、判定した。
結果
統合失調症感受性に寄与する可能性のある6つの遺伝子(カルシニューリン・サブユニット、またはカルシニューリン・シグナル伝達に関連する他のタンパク質をコードする遺伝子)の潜在的な機能的多形性現象、および関連性研究に用いる可能性のある多形性現象を同定するため、12人の独立している統合失調症患者から単離されたゲノムDNA中にあるこれらの遺伝子のコード領域、非コード・エキソン領域、およびいくらかのプロモーター領域の配列を決定した。選択された遺伝子は、PPP3R1、PPP3CA、PPP3CB、PPP3CC、CAMLG、およびFKBP5であった。ここに提示されるデータは、これらの遺伝子のうち、最初の3つの遺伝子の分析に関する。
シークエンシング・ストラテジーは、配列決定される領域をカバーする断片のPCR増幅、およびそれに続く、これらの断片の配列決定からなった。PCRプライマー(補遺1)は、患者ゲノムDNAからの、エキソン配列およびいくらかのプロモーター配列にまたがる断片を増幅するように設計され、同じ2つのプライマーで、すべての断片をフォワード方向と、リバース方向とに配列決定可能なように、ユニバーサル・シークエンシング・プライマーで、タグ付けされた。エキソン断片は、スプライシング・ドナー部位およびレシピエント部位、またいくつかの場合には、推定分枝部位(branch site)をカバーするようにそれぞれの側に少なくとも100bpの隣接イントロン配列を含有した。得られた配列は、多形性現象を同定するためにヒト・ドラフト配列と比較した。
同定された多形性現象、および患者の遺伝子型のリストを、表2に示した。各多形性現象には、IDが割り当てられる。IDには、多形性現象が起きた特定の遺伝子を示す略語、および言及されている遺伝子内の多形性現象を同定する数が含まれる。略語は以下の通りである。すなわち、R1=PPP3R1遺伝子;CA=PPP3CA;CB=PPP3CB;CC=PPP3CC;CG=CAMLG;FK=FKBP 5とした。例えば、R1−15のIDは、PPP3R1遺伝子に多形性現象が起こり、No.15として同定されることを示す。12人の患者に、ID番号が割り当てられる。患者IDの下に記載された遺伝子型における+は、患者が多形性現象を表したことを示す。一方、−は、患者が多型部位で野生型(基準)配列を表したことを示す。例えば、++の遺伝子型は、示された遺伝子の両方の対立形質が多形性現象を表したことを示す。
同定された多形性現象の配列を補遺2に提供する。補遺2および4で、赤い大文字アルファベットはエキソン配列である。黒い小文字はイントロン配列である。多形性部位は、太字、着色、およびアンダーラインされ、欄外におけるそれらへの参照、またはそれらのアイデンティフィケーション(例えば、SNP A/G)は、それらの部位サイトと同じ色である。青色および緑色の配列は、増幅プライマーである。
19個の多形性現象がPPP3R1遺伝子で同定された。これらのうち1個(R1−14)だけが、コード配列に位置し、それはアミノ酸配列の変更を引き起こさない。12個の多形性現象がPPP3CAの遺伝子中で見つけられた。これらのうち、CA−2、およびCA−9は、コード配列に位置しているが、どちらもアミノ酸配列の変更を引き起こさない。4個の多形性現象がPPP3CB遺伝子の中で同定されたが、それらのいずれもコード配列にない。16個の多形性現象がPPP3CCの遺伝子中で見つけられた。これらのうち1個(CC−5)は、エキソン5に位置し、コードされたタンパク質のアミノ酸配列で、ポジション163の電荷をもつアルギニン残基から中性グルタミン残基への非保存性(non−conservative)の変化を引き起こす。CC−5多形性現象は、12人の患者のうち、患者15だけで見出された。それは非保存性アミノ酸変化を引き起こすため、比較的まれな機能的な突然変異を表す可能性がある。6個の多形性現象がCAMLG遺伝子の中で同定された。これらのうちの1個であるCG−2は、コード配列に位置し、そのタンパク質のポジション78でバリン残基からイソロイシン残基への保存的変化を引き起こす。更なる分析によって、試験された210人患者のうち3人で、CC−5多形性現象が見つかり、そして、Coriell Cell Repositoryからの75個の影響を受けていないコントロールでは、いずれからも見つからなかった(患者およびコントロール集団が完全には合ないので、この調査結果の有意性は明らかでない)。4つの多形性現象がFKBP5遺伝子で見つけられたが、そのいずれもコード配列を変更しない。
実施例4:カルシニューリン・サブユニットの関連研究と関連の同定
材料と方法
関連解析。単一SNP、および複数のSNPのハプロタイプ伝達は、Transmitプログラムを用い、伝達不平衡試験(Transmission Disequilibrium Test)によって分析した[3]。記載されたP値は、transmitプログラムによって計算された全体的な有意水準(global significance level)を表し、http://www−gene.cimr.cam.ac.uk/clayton/software/transmit.txtで説明されている。P値は、transmitプログラムのTDT分析から得られた全体的カイ2乗値(global chi square)から計算した。
結果
統合失調症発病機序におけるカルシニューリン・サブユニットおよびカルシニューリン相互作用タンパク質をコードする遺伝子の関与をさらに調査するため、本発明の発明者らは、表1に記載された候補遺伝子と、多数の罹患家族(affected family)を含んだ標本における疾病との関連を体系的に試験している。現在、これらの遺伝子のうち、PPP3R1、PPP3CA、および3PPP3CCの3遺伝子に関して初期関連解析を行ってきている。この研究には、本発明の発明者らが直接配列決定法で同定した多型現象のいくつかを利用し、NCBIまたはセレラ・データベースから得られた追加の1塩基多形(SNP)を補足した。利用された多形性現象は、表3に記載されている。遺伝子型決定反応に用いられたプライマーの配列を補遺3に記載し、これらの多形性現象の配列を補遺4に提供する。
まず、合衆国集団から得られた210個の統合失調症トリアド(triad)(両親および罹患発端者)に関し、表3に記載された多形性現象(便宜上、本明細書において以下SNPと呼ばれる)すべてについて遺伝子型を決定した[1,2]。その後、観測された単一SNP、または複数の(2、3、4、および5)SNPの組合せの伝達(transmission)に、この標本の期待値から逸れるものがあるかを判別するため、スライディング・ウインドウ・ストラテジー(sliding window strategy)でtransmitプログラムを使用し、伝達不平衡試験(TDT)を行った。
この分析の結果を、表4に提示する。表4および表5のデータは、少なくとも3%の頻度をもつすべてのハプロタイプを考慮している。すべてのP値は、TDT分析から得られた全体的カイ2乗値から計算された全体的な有意性を表す。PPP3R1に関しては、個々のSNP、または複数のSNP組合せのいずれに関しても、予想された伝達からの有意の偏位が観測されなかった(すべてのP値>0.005 TDT試験、transmitプログラム、表4)。同様に、PPP3CAに関して、個々のSNP、または複数のSNP組合せのいずれに関しても、予想された伝達からの有意の偏位が観測されなかった(すべてのP値>0.005、表4)。3つのSNPの組合せ(CAS6、CASFP1、CASFP2)は、分析の結果、0.061のP値をもたらした。これは、この遺伝子に関して、伝達不平衡への傾向、および疾病との関連を表している可能性がある。これらの遺伝子に関し、この研究で、有意の伝達不平衡が検出されなかったことは、必ずしもこれらの遺伝子と統合失調症との関連の欠如を示すものではない。例えば、異なった遺伝子が異なった集団の統合失調症と関連しているかもしれず、そのような集団の研究によって、関連が明らかにされる場合もあり得る。また、望まれているように、これまでの分析ですべてのハプロタイプ・プロックがカバーされているかは、現在明らかでないため、遺伝子全体の提示を確実にするためには、これらの3つの遺伝子に関し、より多くのSNPを調べる必要があるだろう。さらに、より弱い、しかし、有意な関連を検出するためには、210家族の標本では十分な威力がないかもしれないので、より多くの家族を調べることで関連が明らかにされるかもしれない。加えて、いくつかの遺伝子は、高レベルの突然変異、または例えば欠失などのゲノム不安定性の傾向があるかもしれない。このような場合、変異があまりに頻繁に起き、ヒト集団で変異が進行する可能性があり、そのため、特定のハプロタイプがそれらと関連しないということもありうる。
PPP3CCの遺伝子に関しては、単一SNP(CC21, P=0.038; CCS3, P=0.041)、2SNPの組合せ(CC21,33, P=0.013; CC33,S3, P=0.003)、3SNPの組合せ(CC20,21,33, P=0.031; CC21,33,S3, P=0.024)、4SNPの組合せ(CC1a,20,21,33, P=0.003; CC20,21,33,S3, P=0.0047)、および5SNPの組合せ(CC1a,20,21,33, S3, P=0.016)で、予想された伝達からの有意の偏位が観測された(表4)。これらの結果は、PPP3CC遺伝子と米国集団の統合失調症との関連に関する証拠を提供する。
PPP3CC遺伝子の統合失調症との関連性をさらに調査するため、本発明の発明者らは、PPP3CCの5つのSNPすべてに関して、トリアド、およびいくつかのより大きな系図の集合を含む、南アフリカの集団からの追加200家族の標本の遺伝子型を決定した[1,2]。その後再び、観測された単一SNP、または複数の(2、3、4、および5)SNPの組合せの伝達に、410家族を含む米国標本と南アフリカ標本とを併せたものの期待値から逸れるものがあるかを判別するため、スライディング・ウインドウ・ストラテジーでtransmitプログラムを使用し、TDTを行った。この分析の結果を表5に提示する。単一SNPのCC21(P=0.025)、およびSNPペアのCC21、33(P=0.013)に関して、有意の伝播不平衡がこの標本で観測された。2SNPの組合せ(CC33、S3、P=0.0004)、3SNPの組合せ(CC20,21,33, P=0.0008; CC21,33,S3, P=0.0003)、4SNPの組合せ(CC1a,20,21,33, P=0.005; CC20,21,33,S3, P=0.0001)、および5SNPの組合せ(CC1a,20,21,33, S3, P=0.0027)に関して、非常に有意の伝播不平衡がこの標本で観測された(表5)。
個々のハプロタイプの伝達検査によって、CC21、CC33、およびCCS3を含む特定の3SNPハプロタイプが、観測された伝播不平衡を引き起こすことを示した(例えば、表6を参照)。具体的にはハプロタイプ(CC21:対立形質1=G、CC33:対立形質2=C、CCS3:対立形質1=A、[CC21、33、S3=1、2、1=G、C、A])が、統計的に高度な有意性で、予想より大きな頻度で伝達する。これらの結果は、PPP3CC遺伝子中の変異が統合失調症感受性と関連することを強く示唆し、CC21,33,S3:G,C,Aハプロタイプを統合失調症に関するリスク・ハプロタイプと定義する。この遺伝子でのコード配列変異(CC−5 Arg−> Gln)を、患者のひとりで同定したことは、注目にすべきことである(表2)。罹病性がこの遺伝子に結合されるのがわかったので、本発明の発明者らは、このSNPがいくつかの患者/ファミリーにおいて、疾患感受性に寄与する比較的まれな機能的突然変異を表すものであると提案する。
本発明の発明者らによる伝達解析は、PPP3CCの統合失調症との関連を、比較的不均質な合衆国母集団標本で示し、加えて、独立、かつ人口統計的により限定された、南アフリカからの罹病家族の標本でも示した。このことは、この遺伝子と疾患との関連における潜在的一般性を示すものである。
PPP3CC遺伝子は、異なった集団に由来するいくつかの独立した標本でのリンケージ分析によって、統合失調症感受性遺伝子座として同定された領域である染色体8p21.3の中に位置する。図6は、PPP3CC遺伝子座の概念図である。8p21.3領域中のPPP3CC遺伝子の位置は、図6Aの連鎖研究からの関連するマーカーとの関係において示されている。図6Bは、エキソン/イントロン構造、関連研究に用いられたSNPの位置、およびエキソン5に同定されたコード配列変異(D8S136:Pulverr et al, 1995、Brzustowicz et al, 1999;D8S1771:Blouin et al, 1998、Gurling et al, 2001;D8S1752:Blouin et al, 1998;D8S1715、D8S133:Kendler et al, 1996)を含んだ、PPP3CC遺伝子の拡大図を提示する。この図における距離および位置は、2002年11月のヒト・ドラフト配列による。図6Cは、ハプロタイプ分布およびPPP3CC遺伝子座における伝達を示す。≧5%の頻度をもつ4種のハプロタイプだけが、US標本およびSA標本の両方で観測され、ここに示されている。最も一般的なPPP3CCハプロタイプは、両方の標本で一貫して過剰伝達されている。T/nT:伝達(transmitted)/非伝達(non−transmitted)
本発明の発明者らがPPP3CCと統合失調症感受性との間の関連を発見したことは、統合失調症発病機序にカルシニューリン・シグナル伝達の変調が関与していることを支持する有力な証拠を提供する。上で記載したように、これらの結果は、さらに拡張され、表1に記載した追加遺伝子の統合失調症との遺伝的関連の調査、および既に分析された遺伝子の分析にさらなる集団標本を追加する拡大が行われるだろう。上に記載した系統的研究を拡張することによって、カルシニューリン・シグナル伝達に関与する追加遺伝子座の統合失調症感受性との関連が決定されるだろう。
実施例3および4ならびに表1のための参照文献
実施例5:ヒト脳の諸領域におけるPPP3CCの発現
材料と方法
cDNAのPCR。成人全ヒト脳cDNA、胎児全ヒト脳cDNA、およびヒト精巣cDNAは、クローンテック(Clontech (Palo Alto, Calif.))から購入したmarathon−ready cDNAからなった。成人脳の諸領域パネルは、オリジーン(Origene (Rockville, Md.).)から購入した。
プライマー・ペア1は、PPP3CCエキソン1(5’−GCGCTTCCACCTCTCCACC−3’(配列番号3))からのフォワード・プライマーと、PPP3CCエキソン2(5’−CTATCATAGTCTTCTCTTGCCTC−3’(配列番号4))からのリバース・プライマーとからなる。プライマー・ペア2は、フォワード・プライマー(5’−CCCATTCATGACTTAGAGTCC−3’(配列番号5))と、PPP3CCエキソン14(3’UTR)からリバース・プライマー(CCCCTTTATAGCACAAGACTTC−3’、(配列番号6))とからなる 。これらのプライマーは、PPP3CA配列およびPPP3CB配列と異なるように、特に3’末端で、PPP3CC特異的になるように設計された。プライマー・ペア1は、エキソン1からエキソン2に広がる218bpのフラグメントを増幅する。プライマー・ペア2は、3’UTR配列からなるエキソン14から298bpのフラグメントを増幅する。
断片は、0.25ngのcDNA(Clonetech)、または1.0 ngのcDNA (Origene)、400nM濃度の各プライマー、200uM濃度の各dNTP、および1.5UのTaqポリメラーゼ(Sigma Chemical Co., St. Louis, Mo.)を含み、OptiPrime緩衝液6条件にある25ulの反応混合液中で増幅した。反応が以下のタッチダウンPCR増幅で行われた。すなわち、94℃での初期変性ステップを2分間、続いて20増幅サイクル(94℃で30秒;68℃で45秒;初めは72℃(各サイクルの−1℃)で45秒)、続いて15増幅サイクル(94℃で30秒;53℃で45秒;72℃で45秒)、続いて72℃での最終伸長ステップを7分とした。
PCRの全増幅生成物を、2%アガロース・ゲルにかけ、エチジウム・ブロマイド染色で可視化した。
結果
PPP3CCは、最初、マウスでの初期特徴付けに基づいて、睾丸特異的カルシニューリン触媒サブユニットの遺伝子とされた。PPP3CCがヒト脳で発現されるかを決定するため、本発明の発明者らは、まず、PPP3CC特異的プライマーを用いて、ヒト全成人脳、および全胎児脳からのcDNAのPCR増幅を行った。図7Aに示されるように、異なった2プライマーペアをもちいたPCR反応によって、PPP3CCがヒト成人および胎児脳で発現されることを示した。
ヒト脳でのPPP3CC発現をさらに分析するため、PPP3CC特異的プライマー・ペアの一組を用いて、CNS領域特異cDNAパネルのPCR増幅を行った。図7Bに示されるように、PPP3CC発現は、前頭葉、側頭葉、海馬、へん桃核、視床、線条体、黒質、視床下部、小脳、脳橋、および延髄を含む、成人脳の複数の領域で検出される。また、PPP3CC発現は脊椎にも検出される。
図7Aのレーン順序は、1−100bpのマーカー;2−成人脳、プライマー1;3−成人脳、プライマー2;4−胎児脳プライマー1;5−−胎児脳プライマー2;6−−睾丸、プライマー1;7−睾丸、プライマー2;8−DNAなしのコントロール、プライマー1;9−DNAなしのコントロール、プライマー2である。DNAなしのコントロールの中の、サイズが100bpより小さい産物は、おそらくプライマー関連の増幅アーティファクトである。
図7Bのレーン順序は、1−100bpのマーカー、2−前頭葉、3−側頭葉、4−小脳、5−海馬、6−黒質、7−尾状核、8−へん桃核、9−視床、10−視床下部、11−脳橋、12−延髄、13−脊椎。
全般的な参照文献リスト
















図1は、NB欠損マウスでの自発運動増進、無生物目標に対する探索行動増進、定形化した行動の増進を示すデータのプロットを表す。図1Aは、目標探査試験での野生型の動作と突然変異マウスの動作とを比較する。図1Bは、オープン・フィールド試験での野生型およびCNB欠損マウスの水平活動(horizontal activities) の数を比較する。図1Cは、オープン・フィールド試験での野生型およびCNB欠損マウスの垂直活動(vertical activities) の数を比較する。図1Dは、野生型およびCNB欠損マウスでの常同行動の回数を比較する。図1Eは、野生型およびCNB欠損マウスでの常同行動の継続時間を比較する。図1Fは、野生型およびCNB欠損マウスでの常同行動の回数を比較する。図1Gは、オープン・フィールド試験において、野生型および突然変異マウスが中央領域で過ごした時間を比較する。 図2は、CNB欠損マウスでの社会的相互作用の減少と不安様行動の増加を示すデータを表す。図2Aは、オープン・フィールド試験中の野生型およびCNB欠損マウスによる全移動距離を比較する。図2Bは、オープン・フィールド試験中に野生型およびCNB欠損マウスによる明暗コンパートメント間の移行数を比較する。図2Cは、オープン・フィールド試験中に野生型およびCNB欠損マウスが明るいコンパートメントで過ごす全時間を比較する。図2Dは、社会的相互作用試験中に野生型およびCNB欠損マウスが移動した距離を比較する。図2Eは、社会的相互作用試験中に、野生型およびCNB欠損マウスによってなされた積極的接触回数を比較する。図2Fは、社会的相互作用試験中に野生型およびCNB欠損マウスによってなされた接触の平均継続時間を比較する。 図3は、種々の驚愕刺激強度での野生型およびCNB欠損マウスにおけるプレパルス抑制を比較するもので、プレパルス抑制障害がCNB欠損マウスで認められる。 図4は、側方抑制試験の際に野生型およびCNB欠損マウスでのフリージング比率を比較するもので、CNB欠損マウスで側方抑制障害が認められる。 図5は、カルシニュリンおよびその関連分子の模式図を示す。図5A:カルシニュリンがPP1の抑制を和らげる阻害剤1またはDARPP−32を脱リン酸化する。PCPによるNMDA受容体の阻害とシクロスポリンAまたはFK−506によるカルシニュリンの抑制とが、精神病または精神病的行動を引き起こすことが示されている。図5B:カルシウム流入によるカルシニュリンの活性化が、NF−AT媒介転写の活性化に必要な核へのNF−ATの脱リン酸化および転位を生ずる。 Snyder et al., 1998を改変。図5C:カルシウム放出チャンネルRyRおよびIP3Rが、FKBP12およびカルシニュリンと生理学的に複合体化されている。カルシニュリンは、受容体を介したカルシウム流入の調節を、カルシウムに依存したかたちでIP3Rのリン酸化状態を変えることでおこなう。カルシニュリンの阻害によって、IP3Rのリン酸化のリン酸化が高まり、IP3R/RyRがカルシウムの放出に関してよりいっそう効果が高まるとともに「漏れやすく(リーキーに)」なる。Snyder et al., 1998を改変。 図6は、PP3CC遺伝子座の模式図である。図6Aは、8p21.3領域内のPPP3CC遺伝子の位置を、連鎖研究から得た関連マーカーとの関係で示している。図6Bは、エクソン/イントロン構造を含むPPP3CC遺伝子座の拡大図であり、関連の研究に用いられるSNPの位置とエクソン5に同定されるコーディング配列突然変異の位置とが示されている。D8S136: Pulver et al., 1995, Brzustowicz et al., 1999; D8S1771: Blouin et al., 1998, Gurling et al., 2001; D8S1752: Blouin et al., 1998; D8S1715, D8S133: Kendler et al., 1996。。図6は、PPP3CC遺伝子座の模式図である。8p21.3領域にあるPPP3CC遺伝子の位置を、連鎖研究かれ得た関連マーカーに関連させて図6Aに示す。図6Bは、エクソン/イントロン構造を含むPPP3CC遺伝子座の拡大図であり、関連の研究に用いられるSNPの位置とエクソン5に同定されるコーディング配列突然変異の位置とが示されている。D8S136: Pulver et al., 1995, Brzustowicz et al., 1999; D8S1771: Blouin et al., 1998, Gurling et al., 2001; D8S1752: Blouin et al., 1998; D8S1715, D8S133: Kendler et al., 1996。図中の距離および位置は、2002年11月、ヒト・ドラフト配列にもとづく。図6Cは、PPP3CC遺伝子座でのハプロタイプ分布および伝達を示す。T/nT:伝達T/nT:非伝達。 図7Aは、成人の全脳、胎児の全脳、および精巣の産物を示し、かつヒト脳でのPPP3CC発現を表すアガロース・ゲルの写真である。図7Bは、成人の全脳から得たcDNAのPCR増幅産物を示すアガロース・ゲルの写真である。

Claims (29)

  1. 統合失調症または統合失調症感受性の治療に有用な候補化合物をスクリーニングする方法であって、該方法は、
    (a)リン酸化カルシニュリン基質およびカルシニュリンを含む生物学的系を提供するステップと、
    (b)該生物学的系を化合物と接触させるステップと、
    (c)該カルシニュリン基質の脱リン酸化の程度または速度を、コントロールと比較して、該化合物が、カルシニュリンホスファターゼ活性の賦活剤であるかどうかを決定するステップと、
    (d)該化合物が、ステップ(c)の結果に基づいて、統合失調症または統合失調症感受性の治療に有用な候補化合物であるかどうかを決定するステップと
    を含む、方法。
  2. 前記コントロールが、前記化合物の非存在下で、前記カルシニュリン基質の脱リン酸化の程度または速度を示す、請求項1に記載の方法。
  3. ステップ(d)が、前記カルシニュリン基質の脱リン酸化の程度または速度が前記コントロールと比較して増大する場合に、前記化合物を、カルシニュリンホスファターゼ活性の賦活剤と同定するステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. ステップ(d)が、前記化合物が、カルシニュリンホスファターゼ活性の賦活剤である場合に、該化合物を、統合失調症または統合失調症感受性の治療に有用な候補化合物と同定するステップを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記生物学的系が細胞または細胞群である請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記細胞または細胞群が、カルシニュリンを内在的に発現する、請求項5に記載の方法。
  7. 前記細胞または細胞群が、さらにカルシニュリン基質を内在的に発現する、請求項6に記載の方法。
  8. 前記生物学的系が、特定のカルシニュリンサブユニットを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記生物学的系がCNAγを含み、かつCNAαとCNAβとを欠如している請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記生物学的系がカルシニュリン阻害剤をさらに含む請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記化合物が、小分子、天然産物、ペプチド、または核酸である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記化合物が、小分子である、請求項11に記載の方法。
  13. 前記カルシニュリン基質の脱リン酸化の程度または速度が、イムノブロッティング、免疫組織化学法、ELISA、ラジオイムノアッセイ、または、タンパク質チップにより決定される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記方法が、ハイスループット形式で行われる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 前記方法が、動物モデルにおいて、統合失調症を治療するための前記候補化合物の能力を試験するステップをさらに含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記動物モデルが、統合失調症を示唆する一つ以上の表現型を示す、請求項15に記載の方法。
  17. 前記動物モデルが、カルシニュリンノックアウトマウスである、請求項16に記載の方法。
  18. 前記カルシニュリンノックアウトマウスが、成体マウス前脳におけるCNB1コンディショナルノックアウトマウスである、請求項17に記載の方法。
  19. 統合失調症を治療するための化合物を同定する方法であって、
    (a)候補化合物が投与されている非ヒト被験体を提供するステップであって、該候補化合物は、カルシニュリンの活性または発現を変調し、該非ヒト被験体は、該候補化合物の非存在下で、統合失調症を示唆する一つ以上の表現型を示す、ステップと、
    (b)該被験体における統合失調症を示唆する一つ以上の表現型の重症度または発生率が、コントロールと比較して低減される場合に、該候補化合物を、統合失調症の治療のための化合物と同定するステップと
    を含む、方法。
  20. 前記コントロールが、前記候補化合物が投与されていないコントロール非ヒト被験体において、統合失調症を示唆する一つ以上の表現型の重症度または発生率を示す、請求項19に記載の方法。
  21. 前記候補化合物が、小分子、天然産物、ペプチド、または核酸である、請求項19または20に記載の方法。
  22. 前記候補化合物が、小分子である、請求項21に記載の方法。
  23. 前記候補化合物が、カルシニュリンまたはカルシニュリン相互作用分子の活性または発現を変調する、請求項19〜22のいずれか一項に記載の方法。
  24. 前記候補化合物が、カルシニュリン基質の脱リン酸化を変調する、請求項23に記載の方法。
  25. 前記候補化合物が、カルシニュリンサブユニットに結合する、請求項23に記載の方法。
  26. 前記非ヒト被験体が、カルシニュリンノックアウトマウスである、請求項19〜25のいずれか一項に記載の方法。
  27. 前記カルシニュリンノックアウトマウスが、成体マウス前脳におけるCNB1コンディショナルノックアウトマウスである、請求項26に記載の方法。
  28. 前記カルシニュリンノックアウトマウスが、ヘテロ接合カルシニュリンノックアウトマウスある、請求項26に記載の方法。
  29. 前記非ヒト被験体が、CNAγ低次形態であり、ここで、該CNAγ低次形態が、野生型より少ないレベルであるが、CNAγ遺伝子の完全な欠失に起因するよりは多いレベルで、CNAγを発現する非ヒト被験体として定義される、請求項19〜25のいずれか一項に記載の方法。
JP2003579753A 2002-03-26 2003-03-26 統合失調症の診断および治療のための標的、方法、ならびに試薬 Expired - Fee Related JP4544865B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US36794402P 2002-03-26 2002-03-26
US45281303P 2003-03-07 2003-03-07
PCT/US2003/009578 WO2003082210A2 (en) 2002-03-26 2003-03-26 Targets, methods, and reagents for diagnosis and treatment of schizophrenia

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009125893A Division JP2009189373A (ja) 2002-03-26 2009-05-25 統合失調症の診断および治療のための標的、方法、ならびに試薬

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2006507795A JP2006507795A (ja) 2006-03-09
JP2006507795A5 JP2006507795A5 (ja) 2009-07-16
JP4544865B2 true JP4544865B2 (ja) 2010-09-15

Family

ID=28678204

Family Applications (2)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003579753A Expired - Fee Related JP4544865B2 (ja) 2002-03-26 2003-03-26 統合失調症の診断および治療のための標的、方法、ならびに試薬
JP2009125893A Withdrawn JP2009189373A (ja) 2002-03-26 2009-05-25 統合失調症の診断および治療のための標的、方法、ならびに試薬

Family Applications After (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009125893A Withdrawn JP2009189373A (ja) 2002-03-26 2009-05-25 統合失調症の診断および治療のための標的、方法、ならびに試薬

Country Status (6)

Country Link
US (3) US7935500B2 (ja)
EP (2) EP2270197A3 (ja)
JP (2) JP4544865B2 (ja)
AU (1) AU2003233451A1 (ja)
CA (1) CA2481238A1 (ja)
WO (1) WO2003082210A2 (ja)

Families Citing this family (34)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7820393B2 (en) * 1999-01-14 2010-10-26 Scantibodies Laboratory, Inc. Methods, kits and antibodies for detecting parathyroid hormone
US6689566B1 (en) * 1999-01-14 2004-02-10 Scantibodies Laboratory, Inc. Methods, kits, and antibodies for detecting parathyroid hormone
US6828097B1 (en) * 2000-05-16 2004-12-07 The Childrens Mercy Hospital Single copy genomic hybridization probes and method of generating same
US7935500B2 (en) 2002-03-26 2011-05-03 Massachusetts Institute Of Technology Identifying calcineurin activators for treatment of schizophrenia
US20050158733A1 (en) * 2003-06-30 2005-07-21 Gerber David J. EGR genes as targets for the diagnosis and treatment of schizophrenia
DE602004029923D1 (de) * 2003-11-25 2010-12-16 Max Planck Gesellschaft Fkbp51: ein neues ziel für die therapie mit antidepressiva
US8032310B2 (en) * 2004-07-02 2011-10-04 The United States Of America As Represented By The Secretary Of The Navy Computer-implemented method, computer readable storage medium, and apparatus for identification of a biological sequence
ATE482288T1 (de) * 2004-11-18 2010-10-15 Eppendorf Array Technologies Echtzeit-pcr von zielen auf einem mikroarray
CA2578072A1 (en) * 2004-12-28 2006-07-06 Ares Trading S.A. Compositions and methods for treating schizophrenia and related disorders
US7897354B2 (en) * 2005-05-18 2011-03-01 Nuclea Biotechnologies, Inc. Kinase peptides and antibodies
WO2007046094A2 (en) * 2005-10-17 2007-04-26 Hadasit Medical Research Services And Development Ltd. Schizophrenia associated genes and markers
GB0524609D0 (en) * 2005-12-02 2006-01-11 Univ Cambridge Tech Methods of monitoring and diagnosing psychotic disorders and of identifying biomarkers for psychotic disorders
CA2537042A1 (en) * 2006-02-21 2007-08-21 Soucy International Inc. Polymeric endless track
JP2009112266A (ja) * 2007-11-07 2009-05-28 Mitsubishi Tanabe Pharma Corp 精神神経疾患診断マーカ、診断方法、および治療薬評価方法
EP2570499A3 (en) 2008-01-02 2013-04-03 Suregene Llc Genetic markers of mental illness
CA2712075A1 (en) 2008-01-17 2009-07-23 Suregene Llc Genetic markers of mental illness
NZ587903A (en) * 2008-02-14 2013-05-31 Decode Genetics Ehf Susceptibility for lung cancer using the polymorphic marker rs1051730
EP2344672B8 (en) 2008-09-25 2014-12-24 SureGene LLC Genetic markers for optimizing treatment for schizophrenia
US7972793B2 (en) 2009-11-04 2011-07-05 Suregene, Llc Methods and compositions for the treatment of psychotic disorders through the identification of the SULT4A1-1 haplotype
US9939449B2 (en) * 2011-02-01 2018-04-10 The University Of Vermont And State Agricultural College Diagnostic and therapeutic methods and products related to anxiety disorders
US20130090329A1 (en) 2011-10-07 2013-04-11 Suregene, Llc Methods and Compositions for the Treatment of Psychotic Disorders Through the Identification of the Olanzapine Poor Response Predictor Genetic Signature
JP5758479B2 (ja) * 2013-12-17 2015-08-05 学校法人藤田学園 精神神経疾患診断マーカ、診断方法、および治療薬評価方法
EP3143166A4 (en) 2014-05-16 2018-04-18 University of Massachusetts Treating chronic myelogenous leukemia (cml)
KR102648281B1 (ko) 2015-04-16 2024-03-14 하. 룬드벡 아크티에셀스카브 항-pacap 항체 및 그의 용도
TWI770020B (zh) 2016-04-15 2022-07-11 丹麥商H朗德貝克公司 人類化抗pacap 抗體及其用途
US20190241962A1 (en) * 2016-10-02 2019-08-08 Sharon Anavi-Goffer Genetic susceptibility diagnosis and treatment of mental disorders
CA3094828A1 (en) 2018-03-23 2019-09-26 Massachusetts Eye And Ear Infirmary Crispr/cas9-mediated exon-skipping approach for ush2a-associated usher syndrome
WO2019191279A2 (en) 2018-03-27 2019-10-03 Board Of Regents, The University Of Texas System Compounds with anti-tumor activity against cancer cells bearing her2 exon 19 mutations
CN113473990A (zh) 2018-10-08 2021-10-01 锐新医药公司 用于治疗癌症的shp2抑制剂组合物
CN113840569A (zh) * 2019-03-19 2021-12-24 剑桥认知有限公司 诊断精神病症和推荐用于精神病症的治疗的方法和用途
US20220220440A1 (en) 2019-05-09 2022-07-14 FUJIFILM Cellular Dynamics, Inc. Methods for the production of hepatocytes
WO2021087458A2 (en) 2019-11-02 2021-05-06 Board Of Regents, The University Of Texas System Targeting nonsense-mediated decay to activate p53 pathway for the treatment of cancer
AU2021206217A1 (en) 2020-01-07 2022-09-01 Revolution Medicines, Inc. SHP2 inhibitor dosing and methods of treating cancer
MX2023002248A (es) 2020-09-03 2023-05-16 Revolution Medicines Inc Uso de inhibidores de sos1 para tratar neoplasias malignas con mutaciones de shp2.

Family Cites Families (22)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4522811A (en) 1982-07-08 1985-06-11 Syntex (U.S.A.) Inc. Serial injection of muramyldipeptides and liposomes enhances the anti-infective activity of muramyldipeptides
US4683202A (en) * 1985-03-28 1987-07-28 Cetus Corporation Process for amplifying nucleic acid sequences
US5424186A (en) * 1989-06-07 1995-06-13 Affymax Technologies N.V. Very large scale immobilized polymer synthesis
US5143854A (en) * 1989-06-07 1992-09-01 Affymax Technologies N.V. Large scale photolithographic solid phase synthesis of polypeptides and receptor binding screening thereof
US6316003B1 (en) 1989-12-21 2001-11-13 Whitehead Institute For Biomedical Research Tat-derived transport polypeptides
US5288644A (en) * 1990-04-04 1994-02-22 The Rockefeller University Instrument and method for the sequencing of genome
EP0562025B1 (en) 1990-12-06 2001-02-07 Affymetrix, Inc. (a Delaware Corporation) Compounds and their use in a binary synthesis strategy
US5384261A (en) 1991-11-22 1995-01-24 Affymax Technologies N.V. Very large scale immobilized polymer synthesis using mechanically directed flow paths
US5837832A (en) * 1993-06-25 1998-11-17 Affymetrix, Inc. Arrays of nucleic acid probes on biological chips
US5858659A (en) * 1995-11-29 1999-01-12 Affymetrix, Inc. Polymorphism detection
EP0730663B1 (en) 1993-10-26 2003-09-24 Affymetrix, Inc. Arrays of nucleic acid probes on biological chips
US6326166B1 (en) 1995-12-29 2001-12-04 Massachusetts Institute Of Technology Chimeric DNA-binding proteins
US6248720B1 (en) 1996-07-03 2001-06-19 Brown University Research Foundation Method for gene therapy using nucleic acid loaded polymeric microparticles
US6448443B1 (en) 1996-10-16 2002-09-10 President And Fellows Of Harvard College Synthesis of combinatorial libraries of compounds reminiscent of natural products
AU1103699A (en) * 1997-10-17 1999-05-10 Rockefeller University, The Use of an inhibitor of the dephosphorylation of darpp-32 for treating schizophrenia
US6013621A (en) * 1997-10-17 2000-01-11 The Rockfeller University Method of treating psychosis and/or hyperactivity
WO1999064379A2 (en) 1998-06-11 1999-12-16 President And Fellows Of Harvard College Biomimetic combinatorial synthesis
US20020165144A1 (en) 2000-02-28 2002-11-07 Decode Genetics Ehf, Iceland Human schizophrenia gene
IL160305A0 (en) * 2001-08-10 2004-07-25 Univ Rockefeller Compositions and methods for modulation of darpp-32 phosphorylation
US20060241042A1 (en) * 2002-03-22 2006-10-26 National Institute Of Agrobiological Sciences Calcineurin activators
US7935500B2 (en) 2002-03-26 2011-05-03 Massachusetts Institute Of Technology Identifying calcineurin activators for treatment of schizophrenia
WO2004007762A2 (en) * 2002-07-11 2004-01-22 Novartis Ag Genes associated with schizophrenia, adhd and bipolar disorders

Also Published As

Publication number Publication date
AU2003233451A8 (en) 2003-10-13
EP2270197A2 (en) 2011-01-05
EP1578354A2 (en) 2005-09-28
WO2003082210A3 (en) 2007-01-04
US20110288027A1 (en) 2011-11-24
EP2270197A3 (en) 2011-02-16
JP2006507795A (ja) 2006-03-09
US7935500B2 (en) 2011-05-03
EP1578354A4 (en) 2008-04-09
AU2003233451A1 (en) 2003-10-13
US20040014095A1 (en) 2004-01-22
CA2481238A1 (en) 2003-10-09
WO2003082210A2 (en) 2003-10-09
US20110172158A1 (en) 2011-07-14
JP2009189373A (ja) 2009-08-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4544865B2 (ja) 統合失調症の診断および治療のための標的、方法、ならびに試薬
US20140303243A1 (en) Genetic Alterations Associated with Autism and the Autistic Phenotype and Methods of Use Thereof for the Diagnosis and Treatment of Autism
WO2010005750A2 (en) Potential prognostic markers and therapeutic targets for neurological disorders
WO2006095559A1 (ja) 造血因子としてのFgf21の使用
Tran et al. A Trem2 R47H mouse model without cryptic splicing drives age-and disease-dependent tissue damage and synaptic loss in response to plaques
US20050158733A1 (en) EGR genes as targets for the diagnosis and treatment of schizophrenia
WO2008058399A1 (en) Methods for diagnosis, prognosis or treatment of migraine and related disorders
JP2007503210A (ja) ヒト自閉症感受性遺伝子およびその使用
JP5677291B2 (ja) 肥満素因の評価方法及びキット、並びに、抗肥満薬及びそのスクリーニング方法、非ヒト動物、脂肪組織、脂肪細胞、トランスジェニックマウス作成方法、抗原、抗体
US11041205B2 (en) Molecular targets for ALS and related disorders
US20060100132A1 (en) Method for diagnosing inflammatory bowel disease
US6902888B1 (en) Diabetes gene
US20150071934A1 (en) Methods For Regulating Hair Growth Disorders
US20030159158A1 (en) Method for identifying an agonist of neuronal calcium sensor-1 (NCS-1), for therapy of CNS disorders
WO2006081350A2 (en) Methods and compositions for the diagnosis and treatment of schizophrenia
EP1512013A2 (en) Diagnostic and therapeutic use of steroidogenic acute regulatory protein for neurodegenerative diseases
US20180066318A1 (en) Methods of characterizing e-syt2 inhibitors, e-syt2 inhibitors, and methods of use
WO2008042762A2 (en) Single nucleotide polymorphisms associated with cardiovascular disease
WO2012065100A2 (en) Cxcr4 as a susceptibility locus in juvenile idiopathic arthritis (jia) and methods of use thereof for the treatment and diagnosis of the same
Sampson David J Kwiatkowski, Mary Pat Reeve, Jeremy P Cheadle and Julian R Sampson
US20070118913A1 (en) Diagnostic and therapeutic use of steroidogenic acute regulatory protein for neurodegenerative diseases
EP1514119A2 (en) DIAGNOSTIC POLYMORPHISM OF 11s-HYDROXYSTEROID DEHYDROGENASE USEFUL FOR IDENTIFYING RISK OF DEVELOPING ALZHEIMER S DISEA SE
US20050130165A1 (en) Polymorphism of soati useful for identifying risk of developing alzheimer's disease
US20050106569A1 (en) Diagnostic and therapeutic use of ma onconeuronal antigents for neurodegenerative diseases
WO2007101991A1 (en) Target for the enhancement qf cognitive function

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060301

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060301

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20081125

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20090224

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20090303

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20090319

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20090327

A524 Written submission of copy of amendment under article 19 pct

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A524

Effective date: 20090525

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20090525

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20090707

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20091109

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20091222

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20100104

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20100127

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100513

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100525

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100611

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100629

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130709

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees