JP4543860B2 - 試料の解析方法 - Google Patents
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Description
<1> (1)支持体上に固相化された、対象物質Aを含む試料に対し、
ブロッキング試薬と、前記対象物質Aに対する特異的結合能を有する物質Bとを用いることによって、前記物質Aと前記物質Bとの相互作用を判定する工程と、
(2)前記物質Aと相互作用した前記物質Bを前記物質Aから除去する工程と、
(3)前記工程(1)によって相互作用すると判定された前記対象物質Aを前記支持体上で断片化する工程と、
(4)断片化された前記対象物質Aを前記支持体上で質量分析によって同定する工程とを含み、
前記(1)において前記ブロッキング試薬は、前記(4)における前記物質Aの質量分析による解析結果に支障を与えるマススペクトルピークを呈さないものであり、
前記工程(1)〜前記工程(4)までを、同一支持体の同一位置において行う、試料の解析方法。
前記物質Aよりも大きい分子量を有し、且つ
前記工程(3)の条件によって、前記物質Aから生じる断片のいかなる断片が有する分子量以下の分子量を有する断片を生じない構造を有する、<1>に記載の試料の解析方法。
前記物質Aを含む試料を電気泳動したゲルと、質量分析用プレートとを、接触させることにより、前記質量分析用プレート上に固相化された前記物質Aを得る、<9>に記載の試料の解析方法。
本発明においてブロッキング試薬とは、解析対象となる物質が固相化された支持体上に、その物質に対する特異的結合物質が非特異的に結合するのを防止する物質である。そして、質量分析を妨害しないブロッキング試薬とは、質量分析の支障となるマススペクトルピークを呈さないブロッキング試薬である。すなわち、本発明において用いられるブロッキング試薬は、同定解析の対象となる物質に由来するピーク範囲内に検出されないものである。具体的には、本発明のブロッキング試薬は、同定解析の対象となる物質よりも大きい分子量を有し、且つ同定解析の対象となる物質を断片化することができる条件、すなわち後述の工程(3)における条件によって、その物質から生じる得る断片が有する分子量以下の分子量を有する断片を生じない構造を持つ物質である。
このようなブロッキング試薬としては、ポリビニルピロリドン(PVP)や、n-オクチル-β-D-グルコピラノシド等が挙げられる。
物質Bは、対象物質Aに特異的に結合することができる物質であり、通常は、対象物質Aとの免疫化学的反応により物質A−物質B複合体を形成しうる物質である。具体例には、タンパク質、核酸、脂質、糖鎖、及びこれらの複合体から選ばれる。さらに物質Bは、標識物質によりラベル化されているラベル化分子であってもよい。標識物質としては、蛍光標識物質等が挙げられる。このような物質Bは、適宜、溶液などに含ませて用いる。
本工程においては、前述の工程(1)によって物質Aと相互作用すると判定された物質Bを、物質Aから(すなわち支持体から)除去する。 物質Bを除去する方法としては、物質A及び物質Bの組み合わせ等を考慮し、適宜行えばよい。具体的には、例えば、グリシン−塩酸(例えばpH2.0)溶液を用いて洗浄することにより行うことができる。この洗浄は、通常室温で行われるが、50℃程度まで温度を上げて行っても良い。温度を上げることにより、除去効率を上げることが可能である。本工程を行うことによって、後述の工程(4)の質量分析において解析対象となる物質Aを高感度に同定することが可能になる。
本工程においては、公知の方法に基づいた断片化を行うことができる。例えば、トリプシン消化などを行うとよい。本発明においては、本工程の条件によって低分子量の断片を生じない構造を有するブロッキング試薬を用いているため、工程(1)によって相互作用を示した物質の、同じ支持体上における同じ位置で断片化処理を行っても、その位置に存在しうるブロッキング試薬から、後の工程(4)の質量分析の支障となるマススペクトルピークを呈する断片を生じさせることなく、解析対象となる物質を適切に断片化することができる。このように、本発明は、同一試料に対して異なる複数の処理を行うことができるため、解析効率が高い。
本工程においては、質量分析装置によって、上記工程(1)〜(3)と同一の支持体上の同一の位置で測定を行う。従って、本工程によってその位置に存在しうるブロッキング試薬も同時に測定されることもある。しかしながら、本工程においては、同定すべき物質の解析に必要なマススペクトルのピーク範囲内にブロッキング試薬のピークは検出されない。なぜなら、本発明において用いられるブロッキング試薬が、同定解析の対象となる物質よりも大きい分子量を有し、且つ工程(3)における断片化条件によって、同定解析の対象となる物質から生じる断片が有する分子量以下の分子量の断片を生じない構造を有するものに工夫されているためである。従って、本工程においては、ブロッキング試薬が同定すべき物質の解析に支障を与えることはない。このように本発明の解析の方法は、工程(1)から工程(4)までを、同一支持体上の同一位置において行うため、解析の効率が大変高い。
牛血清アルブミン(BSA;Bovine Serum Albumin)を、0.5、1、2、5、10、及び20 pmol/bandについてSDS-PAGE を行った後、疎水性のメンブレンに転写し、転写したメンブレンをサンプルプレートへ固定した。このように、電気泳動後のゲルをメンブレン上に転写する過程を模式的に示した図を図1に示す。転写したメンブレンに対し、Rapid Immunodetection Method (Millipore Application Note RP562)のプロトコルに準じてウエスタンブロットを行った。ただし本実施例では、Rapid Immunodetection Methodにおいて実際に用いられる界面活性剤を用いずに、ポリビニルピロリドン(PVP-40;シグマ社製)を用いて行った。すなわち、PVPを用いて固体支持体をブロッキングし、蛍光標識されたBSA抗体(Anti-BSA)を用いて免疫ブロット法により陽性バンドを検出した。このとき得られた結果を図2に示す。
1.メンブレンを、100%メタノールに10秒間浸漬した。
2.ブロットを濾紙上に15分間載置した。
3.ブロットをバキュームチャンバー内に30分間放置した。
4.ブロットを37℃で1時間インキュベートした。
5.ブロットをラボベンチ上に置き、室温で2時間乾燥させた。
1.ブロットを、0.25%(w/v)のポリビニルピロリドン(PVP-40;シグマ社製)と一次抗体とを含むTBSバッファに1時間浸漬した。このとき、ブロット1cm2に対して0.09ml のTBSバッファを用いた。
2.TBSを用いてブロットを10秒間洗浄した。このとき、ブロット1cm2に対して0.9mlのTBSバッファを用いた。この洗浄操作を2回繰り返した。
3.ブロットを、0.25%(w/v)のポリビニルピロリドン(PVP-40;シグマ社製)と二次抗体とを含むTBSバッファに1時間浸漬した。このとき、ブロット1cm2に対して0.09ml のTBSバッファを用いた。
4. TBSを用いてブロットを10秒間洗浄した。このとき、ブロット1cm2に対して0.9mlのTBSバッファを用いた。この洗浄操作を2回繰り返した。
5.ブロットをMilli-Q water(ミリポア社製)でリンスした。
6.ブロットをラボベンチ上に置き、室温で乾燥させた。
1.ブロットを0.2Mグリシン(pH 2.0)水溶液に10分間浸漬した。このとき、ブロット1cm2に対して0.09ml のTBSバッファを用いた。この操作を3回繰り返した。
2.ブロットをMilli-Q water(ミリポア社製)でリンスした。
3.ブロットをラボベンチ上に置き、室温で乾燥させた。
1.メンブレンを染色液に浸漬し、7分間静かに振とうした。
2.メンブレンを洗浄液に浸漬し、5分間静かに振とうした。この操作を3回行った。
3.メンブレンを水に数分間浸漬し、乾燥させた。
1.染色を行ったメンブレンをMSプレート上に両面導電テープを用いて貼り付けた。
2.化学インクジェットプリンターにセットした。
3.メンブレンにウェッティング溶液 7nlをプリントした。
4.トリプシン溶液2nlを25回プリントした。(全50nl)
5.MSプレートを装置から除去し、湿潤条件下、30℃で終夜インキュベートした。
6.MSプレートを化学インクジェットプリンターに戻し、マトリックス溶液4nlを25回プリントした。(全100nl)
抗体除去及び抗体除去後の染色を行わなかった以外は上述の実施例1と同様の操作を行うことによって、図6[A](a)〜(e)及び図6[B](a)〜(e)のマススペクトルを得た。図6においては、横軸に質量/電荷(Mass/Charge)、縦軸にイオンの相対強度(%Int)を表す。[B]は、[A]における1300-2000(Mass/Charge)のスペクトルを拡大したものである。さらに図6[A]及び[B]において、(a)は10 pmol/band、(b)は5 pmol/band、(c)は2 pmol/band、(d)は1 pmol/band、(e)は0.5 pmol/bandについてのスペクトルである。
大腸菌の可溶性画分(100 mg)を用いて等電点電気泳動(pH 4.0-7.0)を行った。二次元目に SDS-PAGE(12.5%)を行った。その後、メンブレンに転写した。転写したメンブレンに対し、上記実施例1における乾燥法と同じ操作を行った。
その後、上記実施例1と同じ操作を行うことによって抗体を除去した。
図9中、横軸は質量/電荷(Mass/Charge)を表し、縦軸はイオンの相対強度を表す。また、*印でマークした3つのピークは、GroESに由来するペプチドフラグメントのイオンピークである。この3つのピークを基にmascotデータベース(http://www.matrixscience.com/)による検索を行った。しかしながら、候補となるタンパク質が多数存在し、同定を行うことができなかった。そこで、これら3つのピークのうち、1495.5(Mass/Charge)のイオンピークを示すペプチドフラグメントについて、AXIMA-QITによるMS/MS測定を行った。そして、mascotデータベースによる検索を行った。(検索条件は、以下のとおりである。Taxonomy: All entries, Enzyme: Trypsin, Peptide tol. : ±0.3 Da, MS/MS tol. : ±0.4 Da, Peptide charge: +1, Monoisotopic, Instrument: MALDI-QIT-TOF)検索の結果、十分なスコアとシーケンスカバレージ(スコア46、14%シーケンスカバレージ)で同定することに成功した。
Claims (14)
- (1)支持体上に固相化された、対象物質Aを含む試料に対し、
ブロッキング試薬と、前記対象物質Aに対する特異的結合能を有する物質Bとを用いることによって、前記物質Aと前記物質Bとの相互作用を判定する工程と、
(2)前記物質Aと相互作用した前記物質Bを前記物質Aから除去する工程と、
(3)前記工程(1)によって相互作用すると判定された前記対象物質Aを前記支持体上で断片化する工程と、
(4)断片化された前記対象物質Aを前記支持体上で質量分析によって同定する工程とを含み、
前記(1)において前記ブロッキング試薬は、前記(4)における前記物質Aの質量分析による解析結果に支障を与えるマススペクトルピークを呈さないものであり、
前記工程(1)〜前記工程(4)までを、同一支持体の同一位置において行う、試料の解析方法。 - 前記ブロッキング試薬は、
前記物質Aよりも大きい分子量を有し、且つ
前記工程(3)の条件によって、前記物質Aから生じる断片のいかなる断片が有する分子量以下の分子量を有する断片を生じない構造を有する、請求項1に記載の試料の解析方法。 - 前記ブロッキング試薬がポリビニルピロリドン又はn-オクチル-β-D-グルコピラノシドである、請求項1又は2に記載の試料の解析方法。
- 前記物質Aが、タンパク質、核酸、脂質、糖鎖、及びこれらの複合体から選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の試料の解析方法。
- 前記物質Bが、タンパク質、核酸、脂質、糖鎖、及びこれらの複合体から選ばれる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の試料の解析方法。
- 免疫ブロット法によって前記相互作用を判定する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の試料の解析方法。
- 前記物質Bが、標識物質によりラベル化されているラベル化分子である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の試料の解析方法。
- 前記標識物質が蛍光標識物質である、請求項7に記載の試料の解析方法。
- 前記支持体に、メンブレン、プレート、非磁性粒子及び磁性粒子から選ばれる少なくとも1つが用いられる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の試料の解析方法。
- 前記支持体が、質量分析用プレートであり、
前記物質Aを含む試料を電気泳動したゲルと、質量分析用プレートとを、接触させることにより、前記質量分析用プレート上に固相化された前記物質Aを得る、請求項9に記載の試料の解析方法。 - 前記工程(3)において、微量分注装置を用いて、断片化のための試薬を添加する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の試料の解析方法。
- 前記工程(4)において、前記工程(3)で得られた少なくとも1つの断片についてMS解析を行い、さらに、前記MS解析によって得られたデータにおける少なくとも1つの断片についてMS/MS解析を行う、請求項1〜11のいずれか1項に記載の試料の解析方法。
- 前記工程(4)において、MALDI法によって質量分析を行う、請求項1〜12のいずれか1項に記載の試料の解析方法。
- 微量分注装置を用いてマトリックス溶液を添加する、請求項13に記載の試料の解析方法。
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