JP4531267B2 - ホーミングプロアポトーシス結合体およびホーミングプロアポトーシス結合体を使用する方法 - Google Patents
ホーミングプロアポトーシス結合体およびホーミングプロアポトーシス結合体を使用する方法 Download PDFInfo
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Description
本研究は、国立癌センター(National Cancer Institute)(USA)からの助成金CA74238、CA28896およびCA30199によって、ならびに国防総省からの助成金DAMD17−98−1−8581によって支援された。アメリカ合衆国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、一般に、癌の生物学および薬物送達の分野に関し、そしてより詳細には、抗菌ペプチド(antimicrobial peptide)の選択的ターゲッティングに関する。
【0003】
(背景情報)
過去四半世紀にわたって続けられた開発によって、医師が患者における癌を診断する能力においては、かなりの改善がもたらされてきた。不幸なことに、癌を処置する方法は、この疾患を診断する方法と歩調を合わせていない。従って、医師が初期に疾患を検出する能力に起因して、種々の癌に由来する死亡率は減少してきているが、より進行した疾患を提示する患者を処置する能力は、最小限にしか進歩していない。
【0004】
癌の処置における進歩に対する主要な障害は、正常な組織は容赦しつつ癌を選択的に標的化し得る因子の相対的欠如である。例えば、一般的に限局性の処置である放射線治療および外科手術は、処置の領域における正常な組織に対してかなりの損傷を引き起こし得、瘢痕、そして重篤な場合には、正常な組織の機能喪失を生じる。一般に全身投与される化学療法は、骨髄、粘膜、皮膚および小腸のような器官に対してかなりの損傷を引き起こし得、これらの器官は、急速な細胞交代および連続的な細胞分裂を受ける。結果として、所望されない副作用(例えば、悪心、毛髪喪失および血球数の減少)が、化学療法剤を用いた癌患者の全身的処置の結果として生じる。このような所望されない副作用は、しばしば、投与され得る処置の量を制限する。処置におけるこのような欠点に起因して、癌は、患者の罹患率および死亡の主要な原因のままである。
【0005】
腫瘍は、腫瘍の生存、増殖、および転移を支持するための新たな血管の連続的な形成を生じる、相対的に高レベルの活性な新脈管形成によって、一部特徴付けられる。腫瘍の生存および増殖に必要とされる脈管形成性の血管は、成熟した脈管構造とは識別可能である。脈管形成脈管構造の特徴的な特質の一つは、独特な内皮細胞表面マーカーが発現されるということである。従って、腫瘍中の血管は、その腫瘍に治療剤を指向させる潜在的な標的を提供し、それによって、その薬剤が感受性の正常組織を殺傷する可能性を減少させる。脈管形成脈管構造への抗癌治療剤のターゲッティングは、脈管形成脈管構造に対して選択的にホーミングする化合物の同定に依存する。
【0006】
強力な抗菌活性が、天然に存在するペプチド(例えば、メリチン、グラミシジン、マガイニン、ディフェンシン、およびセクロピン(cecropin))を含むペプチドのクラスについて観察されている。天然に存在する抗菌ペプチドおよび関連した合成抗菌配列は、一般に、両親媒性ドメインにおいて等しい数の極性残基および非極性残基を有し、そして十分な数の塩基性残基を有して、中性pHで、そのペプチドに全体として正電荷を与える。グラム陽性細菌に対する両親媒性αヘリックスペプチドの生物学的活性は、これらのペプチドが膜二重層を通してイオンチャネルを形成する能力からもたらされ得る。多くの抗菌ペプチドが、細菌細胞と哺乳動物細胞との間の膜の差異に起因する、明白な細菌細胞の差次的感度を伴って、低い哺乳動物細胞毒性を維持しつつ、選択的に細菌を阻害および殺傷する。本明細書中で示されるように、これらの抗菌ペプチドは、腫瘍増殖を支持する脈管形成血管の内皮細胞のような、特定の真核生物細胞型に対する選択的な細胞傷害性活性を付与され得る。
【0007】
脈管形成脈管構造に対して選択的に標的化される新規の抗癌治療剤についての必要性が存在する。本発明は、脈管形成脈管構造に対する選択的な毒性を有する結合体を生成するために、抗菌ペプチドと腫瘍ホーミング化合物とを結合するホーミングプロアポトーシスペプチド(homing pro−apoptotic peptide)を提供することによって、この必要性を満たす。関連する利点も同様に提供される。
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、組織に選択的にホーミングし得るプロアポトーシス結合体を提供する。この結合体は、抗菌ペプチドに結合した、選択された哺乳動物細胞型または組織に選択的にホーミングする腫瘍ホーミング分子を含み、ここでこの結合体は、この哺乳動物細胞型または組織によって選択的にインターナライズされ、そしてこの哺乳動物細胞型または組織に対して高い毒性を示し、そしてここで、この抗菌ペプチドは、この腫瘍ホーミング分子に結合していない場合には、低い哺乳動物細胞毒性を有する。1つの実施形態では、本発明のホーミングプロアポトーシス結合体は、脈管形成内皮細胞に対する選択的な毒性を示す。
【0009】
別の実施形態では、本発明のホーミングプロアポトーシス結合体は、両親媒性αヘリックス構造を有する抗菌ペプチドを含む。ホーミングプロアポトーシス結合体の抗菌ペプチド部分は、例えば、配列(KLAKLAK)2(配列番号200);(KLAKKLA)2(配列番号201);(KAAKKAA)2(配列番号202);または(KLGKKLG)3(配列番号203)を含み得る。好ましい実施形態では、抗菌ペプチドは、配列D(KLAKLAK)2を含む。
【0010】
本発明はさらに、腫瘍ホーミング分子が腫瘍ホーミングペプチドであるホーミングプロアポトーシス結合体を提供する。このような腫瘍ホーミングペプチドは、アミノ酸配列NGRを含み得、そして例えば、ペプチドCNGRC(配列番号8)、NGRAHA(配列番号6)、またはCNGRCVSGCAGRC(配列番号3)であり得る。本発明の結合体において有用な腫瘍ホーミングペプチドはまた、アミノ酸配列RGDを含み得、そして例えば、ペプチドCDCRGDCFC(配列番号1)であり得る。好ましい実施形態では、本発明のホーミングプロアポトーシス結合体は、配列CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2またはACDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2を有する。
【0011】
本発明はさらに、インビボで、抗菌ペプチドを脈管形成脈管構造を有する腫瘍に指向させる方法を提供する。この方法は、脈管形成脈管構造を有する腫瘍を含む被験体に本発明のホーミングプロアポトーシス結合体を投与することによって実施される。本発明のこのような方法では、抗菌ペプチドは、例えば、配列D(KLAKLAK)2を含み得る。好ましい実施形態では、被験体に投与されるホーミングプロアポトーシス結合体は、配列CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2またはACDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2を有する。
【0012】
本発明により、インビボで、脈管形成脈管構造を有する腫瘍に選択的毒性を誘導する方法がさらに提供される。この方法は、脈管形成脈管構造を有する腫瘍を含む被験体に本発明のホーミングプロアポトーシス結合体を投与することによって実施される。本発明のこのような方法では、抗菌ペプチドは、例えば、配列D(KLAKLAK)2を含み得る。好ましい実施形態では、ホーミングプロアポトーシス結合体は、配列CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2またはACDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2を有する。
【0013】
本明細書において、脈管形成脈管構造を有する腫瘍を有する患者を処置する方法もまた提供される。このような処置方法では、本発明のホーミングプロアポトーシス結合体は、患者に投与され、そして腫瘍に対して選択的に毒性である。この抗菌ペプチド部分は、例えば、配列D(KLAKLAK)2を含み得る。好ましい実施形態では、ホーミングプロアポトーシス結合体は、配列CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2またはACDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2を有する。
【0014】
本発明はさらに、抗菌ペプチドに結合した前立腺ホーミングペプチドを含む、キメラ前立腺ホーミングプロアポトーシスペプチドを提供し、このキメラペプチドは、前立腺組織によって選択的にインターナライズされ、そして前立腺組織に対して高い毒性を示すが、この抗菌ペプチドは、この前立腺ホーミングペプチドに結合していない場合は、低い哺乳動物細胞毒性を有する。本発明のキメラペプチドにおいて、その前立腺ホーミングペプチド部分は、例えば、配列SMSIARL(配列番号207)または機能的に等価な配列を含み得、そしてその抗菌ペプチド部分は、両親媒性αへリックス構造を有し得、この構造は例えば、以下の配列である:(KLAKLAK)2(配列番号200)、(KLAKKLA)2(配列番号201)、(KAAKKAA)2(配列番号202)、または(KLGKKLG)3(配列番号203)。好ましい実施形態において、この抗菌ペプチド部分は、配列D(KLAKLAK)2を含む。例示的な前立腺ホーミングプロアポトーシスペプチドが、本明細書中でSMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2として提供される。
【0015】
さらに、本発明は、前立腺癌においてインビボにて選択的毒性を誘導する方法を提供する。この方法は、前立腺癌を有する被験体に、抗菌ペプチドに結合した前立腺ホーミングペプチドを含むキメラ前立腺ホーミングプロアポトーシスペプチドを投与する工程を包含し、このキメラペプチドは、前立腺組織によって選択的にインターナライズされ、そして前立腺組織に対して高い毒性を示すが、この抗菌ペプチドは、この前立腺ホーミングペプチドに結合していない場合には、低い哺乳動物細胞毒性を有する。前立腺癌においてインビボにて選択的毒性を誘導する方法は、例えば、配列SMSIARL(配列番号207)または機能的に等価な配列を含む前立腺ホーミングペプチドを用いて実施され得る。この抗菌ペプチドは、例えば、配列D(KLAKLAK)2を含み得る。好ましい実施形態において、このキメラ前立腺ホーミングプロアポトーシスペプチドは、配列SMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2を含む。
【0016】
(発明の詳細な説明)
抗菌ペプチド(溶解ペプチドまたはチャネル形成ペプチドとしてもまた公知)は、広範なスペクトルの抗菌剤である。これらのペプチドは、代表的には、細菌の細胞膜を破壊し、細胞の溶解および死を引き起こす。100個を越える抗菌ペプチドが、天然に存在する。さらに、アナログが、Javadpourら、J.Med.Chem.39:3107〜3113(1996);ならびにBlondelleおよびHoughten、Biochem.31:12688〜12694(1992)(これらの各々が、本明細書中で参考として援用される)に記載されるように、新規に合成されている。メリチンのようないくつかの抗菌ペプチドは選択的でなく、そして最小の殺菌濃度で正常な哺乳動物細胞を損傷するが、他のものは、細菌細胞選択性である。例えば、天然に存在するマガイニンおよびセクロピンは、正常な哺乳動物細胞に対して致死性ではない濃度で、実質的な殺菌活性を示す。
【0017】
抗菌ペプチドは、しばしば、カチオン性アミノ酸を含み、このカチオン性アミノ酸が、アニオン性リン脂質のヘッド基に誘引され、負の荷電した膜の優先的破壊を生じる。一旦、静電気的結合すると、この両親媒性へリックスは、その脂質マトリックスを歪め得、膜障壁機能の損失を生じる(Epand、The Amphipathic Helix、CRC Press:Boca Raton(1993);Lugtenbergおよびvan Alphen、Biochim.Biophys.Acta、737:51〜115(1983)(これらの各々が、本明細書中に参考として援用される)。原核生物細胞質膜は、大きな膜貫通電位を維持し、そして高容量のアニオン性リン脂質を有する。対照的に、真核生物原形質膜の外側リーフレットは、一般的に、低い膜電位を有するか、または膜電位を有さず、そしてほぼ排他的に双生イオン性リン脂質から構成される。従って、異なる膜組成に起因して、抗菌ペプチドは、真核生物膜と比較した場合に、選択的に原核生物膜を破壊し得る。
【0018】
本発明は、抗菌ペプチド配列が、腫瘍ホーミング分子に結合して、ホーミングプロアポトーシス結合体を生成し得、ホーミングプロアポトーシス結合体が、一般的に真核生物細胞の外側には非毒性であるが、真核生物細胞に標的とされそしてインターナライズされた場合には、ミトコンドリア膜の破壊に続いて細胞死を促進する、という驚くべき発見に関する。ホーミングプロアポトーシス結合体(例えば、HPP−1(環状腫瘍ホーミング分子CNGRC(配列番号8)に結合した抗菌ペプチドD(KLAKLAK)2を含む))は、脈管形成内皮細胞に対してインビボで選択的毒性を有し得、従って、新規な種類の抗癌治療剤として有用であり得る。
【0019】
従って、本発明は、ホーミングプロアポトーシス結合体を提供し、このホーミングプロアポトーシス結合体は、抗菌ペプチドに結合した、選択された哺乳動物細胞型または組織に選択的にホーミングする腫瘍ホーミング分子を含み、この結合体は、哺乳動物細胞型または組織に選択的にインターナライズされ、そしてその哺乳動物細胞型または組織に対して高い毒性を示し、そしてこの抗菌ペプチドは、この腫瘍ホーミング分子に結合していない場合は、低い哺乳動物細胞毒性を有する。例えば、本発明のホーミングプロアポトーシス結合体は、脈管形成内皮細胞に対して選択的毒性を示し得、そして例えば、脈管形成脈管構造を有する腫瘍において、インビボで選択的毒性を誘導する方法において、有用であり得る。
【0020】
本明細書中に開示されるように、真核生物細胞と比較して細菌に対して選択的毒性を有する合成抗菌ペプチドD(KLAKLAK)2は、濃度10μMにて顕著なミトコンドリアの腫脹を誘導した(図2a)。この濃度は、真核生物細胞を殺傷するのに必要な濃度より有意に少なく、このことは、D(KLAKLAK)2が、真核生物膜と比較してミトコンドリア膜を優先的に破壊することを示す(実施例Iを参照のこと)。さらに、D(KLAKLAK)2は、特徴的なカスパーゼ3プロセシング(図2b)によって測定されるように、ミトコンドリア依存性の無細胞性(cell−free)アポトーシスを活性化したが、非αへリックス形成ペプチドであるDLSLARLATARLAI(配列番号204)は、このアポトーシスを活性化しなかった。これらの結果は、D(KLAKLAK)2のような抗菌ペプチドは、ミトコンドリア膜(これは、細菌膜と同様に、高容量のアニオン性リン脂質を有する)を破壊し得、このことは、細菌とミトコンドリアの共通の祖先を反映している(Epand、前出、1993;Lugtenbergおよびvan Alphen、前出、1983;Matsuzakiら、Biochemistry 34:6521〜6526(1995);Hoviusら、FEBS Lett.330:71〜76(1993);ならびにBaltcheffskyおよびBaltcheffsky、Mitochondria and Microsomes(Leeら)、Addison−Wesley:Reading、MA(1981)(これらの各々が、本明細書中にて参考として援用される))。
【0021】
本明細書中にさらに開示されるように、この抗菌ペプチドD(KLAKLAK)2は、グリシニルグリシン架橋を介して環状腫瘍ホーミングペプチドCNGRC(配列番号8)に結合されて、ペプチドCNGRC−GG−D(KLAKLAK)2(「HPP−1」と称する)を生成した。本明細書中に開示されるように、HPP−1は、索状配列(cord)形成をアッセイすることによって、脈管形成の組織培養モデルにて試験された。この索状配列形成は、通常に「丸石」状から細胞の鎖または索状配列への内皮細胞形態の変化によって示される、移動形態である。60μM HPP−1での正常なヒト皮膚微小血管細胞(DMEC)の処理によって、増殖状態(図3c)または索状配列形成状態(図3d)にて、時間とともに生存パーセントの減少をもたらしたが、非標的化D(KLAKLAK)2ペプチドでの処理によっては、無視できる程度の生存率の損失しか生じなかった(実施例IIを参照のこと)。さらに、表1にて示されるように、HPP−1で処理された増殖中または移動中のDMECのLC50は、100%のコンフルエンシーの単層にて維持された血管形成抑制性DMECのLC50よりも低いオーダーであった。このことは、脈管形成条件下でのHPP−1による優先的殺傷を示す。本明細書中に開示される結果はさらに、D(KLAKLAK)2で24時間処理されたDMECのミトコンドリアは形態学的に正常のままであったが、CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2またはACDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2で処理されたDMECのミトコンドリアは、アポトーシスの古典的形態学的指標(核濃縮および断片化を含む)を示す前に、ミトコンドリア形態の変化を示した。
【0022】
実施例IIIに示されるように、このHPP−1ペプチドCNGRC−GG−D(KLAKLAK)2はまた、インビボでも活性を有する。図4aおよび4bに開示されるように、ヒトMDA−MD−435乳癌腫異種移植片を保有するヌードマウスが、HPP−1で処理された。腫瘍体積は、コントロール群と比較して、このHPP−1処理動物群において、平均で1桁小さく、そして生存率は長かった。さらに、このHPP−1処理マウスのうちの何匹かは、コントロールマウスより数ヶ月長生きした。このことは、原発性腫瘍の増殖および転移の両方が阻害されたことを示す。腫瘍の構築の破壊および広範な細胞死が、腫瘍の組織病理学的分析の際に明らかであり、約50%のアポトーシス性細胞死を伴った。HPP−1はまた、ヒト黒色腫細胞株C8161由来の腫瘍に対して有効であり、そしてACDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2は、MDA−MD−435乳癌腫瘍に対して有効であった。要するに、これらの結果は、腫瘍ホーミングペプチド配列および抗菌ペプチド配列に基づくホーミングプロアポトーシスペプチドが、真核生物細胞の外側に非毒性であり得るが、標的とした真核生物標的細胞にインターナライズされた場合に、ミトコンドリア膜の破壊に続いて細胞死を促進し得ることを示す。HPP−1のようなホーミングプロアポトーシスペプチドは、脈管形成内皮細胞に対して選択的毒性を有しており、抗癌治療剤として特に価値を有し得る。
【0023】
本明細書中に開示されるさらなる結果は、網膜の新生脈管形成が、本発明のホーミングプロアポトーシス結合体により選択的に阻害され得ることを示す。特に、ホーミングプロアポトーシス結合体CDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2で処理されたマウスにおける網膜の新生血管の数は、コントロールレベルの30〜40%までに減少した(図5を参照のこと)。従って、本発明のホーミングプロアポトーシス結合体は、腫瘍ホーミング分子を含み得るか、または選択された哺乳動物細胞型または組織に選択的にホーミングする、別のホーミング分子を含み得る。
【0024】
本発明のホーミングプロアポトーシス結合体は、インターナライズされる哺乳動物細胞型に対して非常に毒性であることによって特徴付けられる。本明細書中で使用される場合、用語「非常に毒性である」とは、その結合体が、選択された細胞型または組織の細胞死を生じるのに比較的有効であることを意味する。当業者は、細胞の生存率についての種々の周知のアッセイのうちの1つを使用して、毒性が分析され得ることを理解する。一般的に、この用語、非常の毒性であるは、半最大殺傷濃度(LC50)が約100μM未満、好ましくは約50μM未満である結合体をいうために使用される。例えば、本明細書中に開示されるように、ホーミングプロアポトーシス結合体HPP−1は、脈管形成増殖中のDMEC細胞および索状配列形成中のDMEM細胞ならびにKS1767細胞について、それぞれ、51、34および42というLC50によって特徴付けられた。さらに、本発明のホーミングプロアポトーシス結合体で処理された腫瘍保有マウスの生存の延長によって、この選択的毒性がインビボで再現され得ることが示される。
【0025】
本明細書中で使用される場合、用語「抗菌ペプチド」とは、抗菌活性を有する、天然に存在するペプチドまたは合成ペプチドを意味し、この抗菌活性は、1つ以上の微生物の増殖を殺傷するかまたは遅延させる能力である。抗菌ペプチドは、例えば、グラム陽性細菌またはグラム陰性細菌を含む細菌、あるいは真菌または原生動物のうちの1つ以上の株の増殖を殺傷または遅延させ得る。従って、抗菌ペプチドは、例えば、Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosaまたはStaphylococus aureusのうちの1つ以上の株に対して、例えば、静菌活性または殺菌活性を有し得る。以下のことによって拘束されることは望まないが、抗菌ペプチドは、自己凝集の結果として、膜二重層を通るイオンチャネルを形成する能力に起因する、生物学的活性を有し得る。
【0026】
抗菌ペプチドは、代表的には、非常に塩基性であり、直鎖状または環状の構造を有し得る。以下にさらに考察されるように、抗菌ペプチドは、両親媒性αへリックする構造を有し得る(米国特許第5,789,542号;Javadpourら、前出、1996;BlondelleおよびHoughten、前出、1992を参照のこと)。抗菌ペプチドはまた、例えば、Manchenoら、J.Peptide Res.51:142〜148(1998)に記載されるように、β鎖/シート形成ペプチドであり得る。
【0027】
抗菌ペプチドは、天然に存在するペプチドであり得るし、または合成ペプチドでもあり得る。天然の存在する抗菌ペプチドは、生物学的供給源(例えば、細菌、昆虫、両性類および哺乳動物)から単離され、そして細菌感染から宿主生物を保護し得る誘導性防御タンパク質を提示すると考えられる。天然に存在する抗菌ペプチドとしては、グラミシジン、マガイニン、メリチン、ディフェンシン、およびセクロピンが挙げられる(例えば、MaloyおよびKari、Biopolymers 37:105〜122(1995);Alvarez−Bravoら、Biochem.J.302:535〜538(1994);Bessalleら、FEBS 274:151〜155(1990);ならびにBlondelleおよびHoughter、Annual Reports in Medicinal Chemistry、Bristol編、159〜168頁、Academic Press、San Diego(これらの各々が、参考として本明細書中に援用される)を参照のこと)。以下にさらに考察されるように、抗菌ペプチドはまた、天然のペプチドのアナログであり得、特に、両親媒性を保有するかまたは増強するアナログであり得る。
【0028】
本発明のホーミングプロアポトーシス結合体内に組み込まれる抗菌ペプチドは、腫瘍ホーミング分子に結合していない場合、低い哺乳動物細胞毒性を有する。哺乳動物細胞毒性は、慣用的アッセイを使用して、容易に評価され得る。例えば、哺乳動物細胞毒性は、Javadpourら、前出、1996に記載されるように、インビトロにてヒト赤血球の溶解によってアッセイされ得る。「低い哺乳動物細胞毒性」と有する抗菌ペプチドは、ヒト赤血球に対して溶解性でないか、あるいは溶解活性のために、100μMより高い濃度、好ましくは、200μM、300μM、500μMまたは1000μMよりも高い濃度を必要とする。
【0029】
好ましい実施形態では、本発明はまた、抗菌ペプチド部分が、真核生物細胞によってインターナライズされた場合にミトコンドリア膜の破壊を促進する、ホーミングプロアポトーシス結合体(homing pro−apoptotic conjugate)を提供する。特に、このような抗菌ペプチドは、ミトコンドリア膜を、真核生物膜と比較して優先的に破壊する。ミトコンドリア膜は、細菌膜と同様に、しかし真核生物原形質膜とは対照的に、高い含量の負に荷電したリン脂質を有する。抗菌ペプチドは、ミトコンドリア膜を破壊する際の活性について、例えば、ミトコンドリア腫脹アッセイ(実施例Iに記載される通り)または当該分野で周知の別のアッセイを用いてアッセイされ得る。本明細書中に開示される場合、例えば、D(KLAKLAK)2は、著しいミトコンドリア腫脹を10μMの濃度で誘導した。この濃度は、真核生物細胞を殺傷するために必要とされる濃度よりも有意に低い。例えば、50μM、40μM、30μM、20μM、10μM以下で有意なミトコンドリア腫脹を誘導する抗菌ペプチドは、ミトコンドリア膜の破壊を促進するペプチドとみなされる。
【0030】
本発明はまた、腫瘍ホーミング分子が、両親媒性αヘリックス構造を有する抗菌ペプチドに連結されている、ホーミングプロアポトーシス結合体を提供する。本発明のホーミングプロアポトーシス結合体では、この抗菌ペプチド部分は、例えば、配列(KLAKLAK)2、(配列番号200);(KLAKKLA)2(配列番号201);(KAAKKAA)2(配列番号202);または(KLGKKLG)3(配列番号203)、特に配列D(KLAKLAK)2を有し得る。本発明のホーミングプロアポトーシス結合体は、例えば、配列CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2またはACDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2を有し得る。
【0031】
抗菌ペプチドは一般に、希釈水溶液中でランダムコイルコンホメーションを有するが、高レベルのらせん性が、ヘリックス促進溶媒および両親媒性媒体(例えば、ミセル、合成二重層または細胞膜)によって誘導され得る。αヘリックス構造は当該分野で周知であり、理想的なαヘリックスは、1ターンあたり3.6残基および1残基あたり1.5Åのトランスロケーション(1ターンあたり5.4Å;Creighton、Proteins:Structures and Molecular Properties、W.H.Freeman、New York(1984)を参照のこと)を有することにより特徴付けられる。両親媒性αヘリックス構造では、極性アミノ酸残基および非極性アミノ酸残基は、両親媒性ヘリックスへと整列され、このヘリックスは、このペプチドをヘリックス軸に沿ってみた場合、疎水性アミノ酸残基が1つの面に優先的に存在し、親水性残基がその対向面に優先的に存在するαヘリックスである。
【0032】
配列が広範に変化する抗菌ペプチドが単離されており、これらは、共通の特徴として両親媒性αヘリックス構造を共有する(Saberwalら、Biochim.Biophys.Acta 1197:109−131(1994))。両親媒性およびらせん性を増強すると予測されるアミノ酸置換を有するネイティブペプチドのアナログは代表的に、増加した抗菌活性を有する。一般に、増加した抗菌活性を有するアナログはまた、哺乳動物細胞に対する増加した細胞傷害性を有する(Maloyら、Biopolymers 37:105−122(1995))。
【0033】
抗菌ペプチドを言及して本明細書中で用いられる場合、用語「両親媒性αヘリックス構造」は、生理学的pHでいくつかの極性残基を含む親水性面および非極性残基を含む疎水性面を有するαヘリックスを意味する。極性残基は、例えば、リジン残基またはアルギニン残基であり得、一方、非極性残基は、例えば、ロイシン残基またはアラニン残基であり得る。両親媒性αヘリックス構造を有する抗菌ペプチドは一般に、両親媒性ドメイン中に等しい数の極性残基および非極性残基を、そしてペプチドに対して中性pHで全体として正の電荷を与えるに十分な数の塩基性残基を有する(Saberwalら、Biochim.Biophys.Acta 1197:109−131(1994)、これは、本明細書中に参考として援用される)。当業者は、ヘリックス促進アミノ酸(例えば、ロイシンおよびアラニン)が、本発明の抗菌ペプチド中に有利に含まれ得ることを理解する(例えば、Creighton、前出、1984を参照のこと)。
【0034】
両親媒性αヘリックス構造を有する種々の抗菌ペプチドが当該分野で周知である。このようなペプチドとしては、ヘプタド(heptad)構築ブロックスキームに基づく、合成の、最小限度の(minimalist)ペプチドが挙げられ、ここで、反復ヘプタドは、さらなる1残基を有する反復トリマーから構成される。このような合成抗菌ペプチドとしては、例えば、一般式[(X1X2X2)(X1X2X2)X1]n(配列番号205)または[(X1X2X2)X1(X1X2X2)]n(配列番号206)のペプチドが挙げられ、ここでX1は極性残基であり、X2は非極性残基であり;そしてnは2または3である(Javadpourら、前出、1996を参照のこと)。(KLAKLAK)2(配列番号200);(KLAKKLA)2(配列番号201);(KAAKKAA)2(配列番号202);および(KLGKKLG)3(配列番号203)は、両親媒性αヘリックス構造を有する合成抗菌ペプチドの例である。両親媒性αヘリックス構造を有する同様の合成抗菌ペプチドもまた、例えば、McLaughlinおよびBeckerに対する米国特許第5,789,542号に記載されるように、当該分野で公知である。
【0035】
らせん性は、当業者によって、例えば、円偏光二色性分光法を用いて容易に決定され得る。αヘリックスのパーセントは、例えば、Javadpourら、前出、1996(また、McLeanら、Biochemistry
30:31−37(1991)を参照のこと、これは、本明細書中に参考として援用される)に記載されるようなモル楕円性を222nmにて測定した後に決定され得る。本発明の両親媒性αヘリックス抗菌ペプチドは、両親媒性媒体(例えば、25mM SDS)中でアッセイした場合、例えば、少なくとも約20%のらせん性を有し得る。当業者は、両親媒性αヘリックス構造を有するこのような抗菌ペプチドが、25mM SDS中でアッセイした場合、例えば、少なくとも約25%、30%、35%または40%のらせん性を有し得ることを理解する。αヘリックス構造を有する抗菌ペプチドは、25mM SDS中でアッセイした場合、例えば、25%〜90%のらせん性;25%〜60%のらせん性;25%〜50%のらせん性;25%〜40%のらせん性;30%〜90%のらせん性;30%〜60%のらせん性;30%〜50%のらせん性;40%〜90%のらせん性または40%〜60%のらせん性を有し得る。両親媒性は、例えば、そのペプチドのヘリックスホイール提示を用いて容易に決定され得る(例えば、BlondelleおよびHoughten、前出、1994を参照のこと)。
【0036】
本発明の例示的なホーミングプロアポトーシス結合体であるCNGRC−GG−D(KLAKLAK)2の構造を図1に示す。図1に示され得るように、ホーミングドメインCNGRC(配列番号8)は、ジスルフィド結合された環状構造であり、そして膜破壊ドメインD(KLAKLAKKLAKLAK)へとグリシニルグリシン架橋を介して結合されている。この結合体の膜破壊性抗菌部分におけるD−アミノ酸は、結合体に増加した安定性をインビボで付与する際に有用であり得る。さらに、膜破壊D(KLAKLAKKLAKLAK)部分は、両親媒性ヘリックスを形成する。特に、リジン残基は、ヘリックスの1つの面に整列され(ヘリックスの、暗く陰影を付けた領域として示す)、一方、非極性のロイシン残基およびアラニン残基は、このヘリックスの対向(明るく陰影を付けた)面に整列される。
【0037】
本発明のホーミングプロアポトーシス結合体は、腫瘍ホーミング分子が腫瘍ホーミングペプチドである、キメラペプチドであり得る。本発明のホーミングプロアポトーシスキメラペプチドは、約18アミノ酸〜約50アミノ酸以上の種々の長さを有し得る。本発明のキメラペプチドは、例えば、約20〜約50のアミノ酸、好ましくは20〜40のアミノ酸、より好ましくは20〜30のアミノ酸を有し得る。このようなキメラペプチドは、例えば、40、35、30、27、25または21のアミノ酸という上限の長さを有し得る。本発明のキメラペプチドは、直鎖状または環状であり得る。好ましい実施形態では、本発明のホーミングプロアポトーシスキメラペプチドとしては、環状腫瘍ホーミングペプチド部分が挙げられる。
【0038】
本発明のホーミングプロアポトーシスキメラペプチドはまた、ペプチド模倣物であり得る。本明細書中で使用される場合、用語「ペプチド模倣物」は、対応するペプチドの活性を実質的に有するペプチド様分子を意味するために広範に使用される。ペプチド模倣物としては、化学改変ペプチド、天然に存在しないアミノ酸を含むペプチド様分子、ペプトイドなどが挙げられ、ペプチド模倣物を誘導したペプチドの選択的ホーミング活性および高い毒性を有する(例えば、「Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery」、第5版、第1巻〜第3巻(M.E.Wolff編;Wiley Interscience 1995を参照のこと)、これは、本明細書中に参考として援用される)。例えば、Dアミノ酸は、本発明のキメラペプチドの抗菌ペプチド部分に有利に含まれ得る(実施例Iおよび実施例IIを参照のこと)。ペプチド模倣物は、ペプチドを超える種々の利点(消化管を通過する間の増加した安定性を含む)を提供し、それゆえ、経口治療剤として有利に用いられ得る。
【0039】
本発明のホーミングプロアポトーシス結合体では、「結合ドメイン」を用いて、腫瘍ホーミングペプチドおよび抗菌ペプチドを連結し得、そして例えば、結合体に対して全体として可撓性を付与し得る。結合ドメインは、例えば、グリシニルグリシンリンカー、アラニンイルアラニンリンカーまたはグリシン、アラニンもしくは他のアミノ酸を取り込む他のリンカーであり得る。グリシニルグリシン結合ドメインの使用は、実施例IIに記載される。
【0040】
腫瘍内の脈管構造は一般に、活性な新脈管形成を経て、増殖中の腫瘍を支持する新規な血管の連続的な形成をもたらす。このような脈管形成血管は、脈管形成脈管構造が独特の内皮細胞表面マーカー(αvβ3インテグリン(Brooks、Cell 79:1157−1164(1994);WO 95/14714(国際出願日1994年11月22日))を含む)および脈管形成増殖因子についてのレセプター(MustonenおよびAlitalo、J.Cell Biol.129:895−898(1995);Lappi、Semin.Cancer Biol.6:279−288(1995))を発現する、という点で成熟した脈管構造と識別可能である。さらに、腫瘍脈管構造は、腫瘍脈管構造が有窓であるという点で他の血管と組織学的に識別可能である(Folkman、Nature Med.1:27−31(1995);Rakら、Anticancer Drugs 6:3−18(1995))。従って、腫瘍脈管構造の独特の特徴は、これを抗癌治療剤についての特に魅力的な標的にする。
【0041】
本明細書中に開示したように、腫瘍ホーミング分子は、腫瘍の微小血管の内皮内層に結合し得る。腫瘍内の脈管構造は、おそらく、連続した新生血管形成に起因して独特であり、これは、腫瘍増殖に必要とされる新たな血管の形成をもたらす。腫瘍内の脈管形成新生脈管構造の独特の特性は、内皮細胞および血管周囲細胞における特定のマーカーの存在に反映される(Folkman、Nature Biotechnol.15:510(1997);Risau、FASEB J.9:926−933(1995);Brooksら、前出、1994);これらのマーカーは、開示された腫瘍ホーミング分子によって標的化されるようである。
【0042】
腫瘍ホーミング分子が腫瘍内の血管を標的とする能力は、全身処置法または腫瘍細胞を直接標的とする方法を超えるかなりの利点を提供する。例えば、腫瘍細胞は、生存を血管供給に依存し、そして血管の内皮内層は、循環しているプローブに対して容易にアクセス可能である。逆に、固形腫瘍細胞に到達するためには、治療薬剤は、潜在的に長い拡散距離、緊密に充填された腫瘍細胞、および血管外遊出を妨げる高い間質圧を有する緻密な繊維性支質を克服しなければならない(BurrowsおよびThorpe、Pharmacol.Ther.64:155−174(1994))。
【0043】
さらに、腫瘍脈管構造が標的化される場合、全ての標的細胞の殺傷は、必要とされないかもしれない。内皮の部分的露出は、罹患した腫瘍血管全体を通しての血流を停止させる閉塞性血栓の形成を導き得るからである(BurrowsおよびThorpe、前出、1994)。さらに、直接腫瘍標的化とは異なり、腫瘍脈管構造標的化には内因性増幅機構が存在する。単一の毛細管ループは、100個までの腫瘍細胞に栄養を供給し得、腫瘍細胞の各々は、血液供給にきわどく依存する(Denekamp、Cancer Metast.Rev.9:267−282(1990);Folkman、前出、1997)。
【0044】
上記に示しそして本明細書中に例示したように、腫瘍脈管構造の脈管形成内皮細胞に選択的である腫瘍ホーミング分子は、プロアポトーシス抗菌ペプチドが正常で健常な器官または組織に対して毒性効果を有する確率を減少させながらも、プロアポトーシス抗菌ペプチドを腫瘍脈管構造へと指向させるために特に有用であり得る。従って、1つの実施形態では、本発明は、抗菌ペプチドに連結された、脈管形成内皮細胞にホーミングする腫瘍ホーミング分子を含むホーミングプロアポトーシス結合体を提供し、ここで、この結合体は、脈管形成内皮細胞によって選択的にインターナライズされ、そして脈管形成内皮細胞に対する高い毒性を示し、そして腫瘍ホーミング分子に連結されていない場合には、抗菌ペプチドは低い哺乳動物細胞毒性を有する。
【0045】
本明細書中で使用される場合、用語「選択的毒性」は、コントロールの細胞型または組織と比較して増強された、選択された細胞型または組織の細胞死を意味する。一般に、選択的毒性は、コントロールの細胞型または組織(例えば、血管形成抑制性(angiostatic)内皮細胞)と比較して少なくとも2倍高い程度の、選択された細胞型または組織(例えば、脈管形成内皮細胞)における細胞死によって特徴付けられる。従って、本明細書中で使用される場合、用語選択的毒性は、それによって細胞死が選択された細胞型または組織のみに本質的に生じる特異的毒性、ならびに選択された細胞型または組織に加えて、制限された数の細胞型または組織において生じる毒性を包含する。当業者は、用語選択的毒性が、アポトーシス細胞死および壊死性細胞死を含む全ての機構によってもたらされる細胞死をいうことをさらに理解する。従って、脈管形成内皮細胞についての選択的毒性を示す本発明のホーミングプロアポトーシス結合体は、血管形成抑制性内皮細胞または他の型の周囲の細胞と比較して増強された、脈管形成内皮細胞の細胞死をもたらす。
【0046】
本明細書中に開示されるように、同定された腫瘍ホーミング分子は、ホーミング分子に連結された所望の抗菌ペプチドを、選択された細胞型(例えば、脈管形成内皮細胞)へと標的化するために有用である。腫瘍脈管構造中の脈管形成内皮細胞によってインターナライズされた後、この抗菌ペプチドは、内皮細胞に対して毒性であり、それによって腫瘍への血液供給を制限し、そして腫瘍増殖を阻害する。
【0047】
本発明のホーミングプロアポトーシス結合体において有用な腫瘍ホーミング分子は、例えば、NGRモチーフ(例えば、CNGRC(配列番号8);NGRAHA(配列番号6)またはCNGRCVSGCAGRC(配列番号3))を含むペプチドであり得る。本発明において有用な腫瘍ホーミング分子はまた、RGDモチーフを含み得、そして例えば、CDCRGDCFC(配列番号1)であり得るか、またはGSLモチーフ(例えば、ペプチドCGSLVRC(配列番号5))を含み得る。さらなる腫瘍ホーミング分子は、以下にさらに詳細に示すようなインビボパンニングによって分子のライブラリーをスクリーニングすることによって同定され得る(また、実施例IV〜実施例VIII;1997年4月22日に発行された米国特許第5,622,699号;ならびにPasqualiniおよびRuoslahti、Nature 380:364−366(1996)を参照のこと、これらの各々は、本明細書中に参考として援用される)。
【0048】
本明細書中で使用される場合、用語「腫瘍ホーミング分子」は、選択された細胞型または組織へとインビボで選択的にホーミングする、有機化学分子(例えば、薬物;核酸分子;ペプチドもしくはペプチド模倣物もしくはタンパク質)を意味する。「選択的にホーミングする」とは、インビボで、腫瘍ホーミング分子が、選択された細胞型または組織に、コントロールの細胞型、組織または器官と比較して優先的に結合することを意味し、そして一般に、選択された細胞型または組織での、コントロールの細胞型または組織と比較して少なくとも2倍多い局在によって特徴付けられる。本発明において有用な腫瘍ホーミング分子は、例えば、脈管形成脈管構造の内皮細胞に対して、他の細胞型または血管形成抑制脈管構造と比較して優先的に結合する分子であり得る。
【0049】
腫瘍ホーミング分子は、インビボパンニングを以下のように使用して同定された。乳癌、黒色腫およびカポージ肉腫に対してインビボでパンニングすることにより、腫瘍に対して選択的にホーミングする種々のペプチドを発現するファージが同定された(それぞれ、表2、表3および表4を参照のこと)。ファージの大きなサイズ(900nm〜1000nm)およびファージが循環するのが可能な時間が短い(3分間〜5分間)ことに起因して、かなりの数のファージが、特に脳および腎臓において循環系を出たようである。組織染色研究は、同定された腫瘍ホーミング分子が、器官特異的様式で発現されるようである内皮細胞表面マーカーに主にホーミングし、そしてこのマーカーに結合することを示した。これらの結果は、インビボパンニングを用いて、内皮細胞特異性を同定および分析し得ることを示す。このような分析は、培養中の内皮細胞を用いては可能ではない。なぜなら、培養された細胞は、組織特異的差異を失う傾向があるからである(PauliおよびLee、Lab.Invest.58:379−387(1988))。
【0050】
インビボパンニングが行われた条件は、内皮細胞マーカーに主に結合する腫瘍ホーミングペプチドを同定したが、腫瘍ホーミングペプチドを発現するファージの特異的存在もまた腫瘍実質において、特にこのペプチドの投与後の後期に観察された(実施例VII)。これらの結果は、ペプチドを発現するファージが、おそらく、血管の有窓性質に起因して腫瘍内の血管を通過し得ることを実証し、そしてインビボパンニング方法が、腫瘍細胞によって発現される標的分子ならびに内皮細胞によって発現される標的分子を同定するために有用であり得ることを示す。
【0051】
ファージペプチドディスプレイライブラリーは、SmithおよびScott(前出、1993;また、Koivunenら、Biotechnology 13:265−270(1995);Koivunenら、Meth.Enzymol.245:346−369(1994b)(これらの各々は、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)に記載されるように本質的に構築された。実質的にランダム化されたアミノ酸配列を有するペプチドをコードするオリゴヌクレオチドは、「NNK」コドンに基づいて合成された。ここで「N」は、A,T、CまたはGであり、そして「K」は、GまたはTである。「NNK」は、20個のアミノ酸およびアンバー終止コドンをコードする32個のトリプレットをコードする(ScottおよびSmith(前出)1990)。いくつかのライブラリーにおいて、システインをコードする少なくとも1つのコドンをまた、環状ペプチドが、ジスルフィド結合を通して形成され得るように、各々のオリゴヌクレオチドに含めた(実施例IV)。このオリゴヌクレオチドは、ベクターフューズ5中の遺伝子IIIタンパク質(gIII)をコードする配列とインフレームで挿入され、その結果、ペプチド−gIII融合タンパク質が、発現された。発現に続いて、この融合タンパク質は、ベクターを含むファージの表面で発現された(Koivunenら(前出)1994b;SmithおよびScott(前出)1993)。
【0052】
インビボパンニング法に続いて、このファージを、わずかにのみ異なるペプチド配列を表示するヒト乳癌腫、マウス黒色腫またはヒトカポージ肉腫に選択的にホーミングするそれらの能力に基づいて、単離した(それぞれ、表2、3および4を参照のこと)。スクリーニングの1つは、αV含有インテグリンに選択的に結合することが先に実証されたペプチド(Koivunenら(前出)1995;WO 95/14714)の関係において、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)インテグリン認識配列(Ruoslahti,Ann.Rev.Cell Devel.Biol.12:697(1996))を含んだペプチド配列を示した。残りの腫瘍ホーミングペプチドのほとんどの配列は、内皮細胞レセプターに対する公知のリガンドと有意な類似性を示さなかった。しかし、腫瘍ホーミングペプチドの1つは、アスパラギン−グリシン−アルギニン(NGR)モチーフを含んだ。このモチーフは、インテグリン結合ペプチド中に存在するモチーフと類似する弱いインテグリン結合モチーフである(1996年7月16日に発行されたRuoslahtiら、米国特許第5,536,814号(本明細書中で参考として援用される);またKoivunenら(前出)1994aを参照のこと)。他のスクリーニングは、多くのNGR含有ペプチドを示した(表2を参照のこと)。NGRペプチドの弱いインテグリン結合能にかかわらず、インテグリンレセプターは、本明細書中で例示されるNGR腫瘍ホーミングペプチドによって認識される標的分子ではあり得ない。本明細書中で使用される場合、用語「インテグリン」は、ヘテロ二量体細胞表面接着レセプターを意味する。
【0053】
乳房腫瘍にホーミングしたファージによって発現されるペプチドは、ペプチドCGRECPRLCQSSC(配列番号2)およびCNGRCVSGCAGRC(配列番号3;表2を参照のこと;実施例V)を含んだ。同様に、ペプチドCDCRGDCFC(配列番号1)およびCGSLVRC(配列番号5)を含む腫瘍ホーミングペプチドは、乳房腫瘍保有マウスに投与された他の2つのファージライブラリーから同定された(表2)。いくつかのこれらのモチーフおよび新規のモチーフはまた、マウス黒色腫およびヒトカポージ肉腫に対するスクリーニングによって、単離された(表3および4を参照のこと)。これらの結果は、腫瘍ホーミング分子がインビボパンニング法を使用して同定され得ることを実証した。
【0054】
同定された3つの主な腫瘍ホーミングモチーフは、本発明のホーミングプロアポトーシス結合体において、特に有用であり得る。腫瘍ホーミング分子部分が、NGRモチーフ、RGDモチーフまたはGSLモチーフを含む、ホーミングプロアポトーシス結合体を使用して、連結された抗菌ペプチドが脈管形成脈管構造の内皮細胞を標的とし得る。
【0055】
1つの実施形態において、本発明は、抗菌ペプチドに連結された配列NGRを含む腫瘍ホーミングペプチドを含む、ホーミングプロアポトーシス結合体を提供する。本発明のこのようなホーミングプロアポトーシス結合体において、腫瘍ホーミングペプチドは、例えば、CNGRC(配列番号8);NGRAHA(配列番号6)またはCNGRCVSGCAGRC(配列番号3)であり得る。好ましい実施形態において、このホーミングプロアポトーシス結合体は、配列CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2を含む。
【0056】
別の実施形態において、本発明は、抗菌ペプチドに連結された配列RGDを含む腫瘍ホーミングペプチドを含む、ホーミングプロアポトーシス結合体を提供する。このようなホーミングプロアポトーシス結合体において、腫瘍ホーミングペプチドは、例えば、CDCRGDCFC(配列番号1)であり得る。好ましい実施形態において、このホーミングプロアポトーシス結合体は、配列ACDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2を含む。
【0057】
本発明は、さらに抗菌ペプチドに連結された配列GSLを含む腫瘍ホーミングペプチドを含む、ホーミングプロアポトーシス結合体を提供する。このようなホーミングプロアポトーシス結合体において、腫瘍ホーミングペプチドは、例えば、CGSLVRC(配列番号5)であり得る。
【0058】
上記で議論されるように、1つのモチーフは、ペプチド構造であるCDCRGDCFC(配列番号1)中に埋め込まれた配列RGD(Ruoslahti(前出)1996)を含み、このペプチド構造は、αVインテグリンに選択的に結合することが公知である(Koivunenら(前出)1995;WO 95/14714)。αVβ3インテグリンおよびαVβ5インテグリンは、脈管形成脈管のマーカーであるので(Brooksら(前出)1994;Friedlanderら、Science 270:1500(1995))、ペプチドCDCRGDCFC(配列番号1)を発現するファージは、腫瘍標的化について調査され、そして本明細書中で開示されるように、高度な選択的様式において腫瘍にホーミングした(実施例VIを参照のこと)。さらに、CDCRGDCFC(配列番号1)ファージによるホーミングは、遊離のCDCRGDCFC(配列番号1)ペプチドの同時投与によって阻害された。
【0059】
別の乳房腫瘍ホーミングペプチドは、配列CNGRCVSGCAGRC(配列番号3)を有し、この配列は、弱いインテグリン結合活性を有することが先に示されたNGRモチーフを含む(Koivunenら、J.Biol.Chem.268:20205−20210(1993);Koivunenら(前出)1994a;WO 95/14714)。NGR含有ペプチドが、同定されたので、2つのさらなるペプチド(直鎖状ペプチドであるNGRAHA(配列番号6)および環状ペプチドであるCVLNGRMEC(配列番号7))(このペプチドの各々は、NGRモチーフを含む)は、腫瘍ホーミングについて調査された。CNGRCVSGCAGRC(配列番号3)を発現するファージと同様に、NGRAHA(配列番号6)またはCVLNGRMEC(配列番号7)を発現するファージは、腫瘍にホーミングした。さらに、このファージが、ヒト乳癌腫において、ならびにマウス黒色腫保有マウスおよびヒトカポージ肉腫異種移植片保有マウスの腫瘍において選択的に蓄積したように、腫瘍ホーミングは、腫瘍の型または種に依存しなかった。
【0060】
RGD含有ペプチドおよびNGR含有ペプチドを含む種々のペプチドは、一般的に腫瘍血管に結合された。この最小の環状NGRペプチドであるCNGRC(配列番号8)は、CNGRCVSGCAGRC(配列番号3)配列に基づいて合成された。CNGRC(配列番号8)ペプチドが、CNGRCVSGCAGRC(配列番号3)、NGRAHA(配列番号6)またはCVLNGRMEC(配列番号7)のいずれかを発現するファージと同時注入された場合、乳癌腫異種移植片におけるファージの蓄積が、阻害された。しかし、NGRファージのホーミングを阻害したペプチドより10倍まで多い量を投与した場合でも、CNGRC(配列番号8)ペプチドは、CDCRGDCFC(配列番号1)ペプチドを発現するファージのホーミングを阻害しなかった。比較すると、必要量が、CNGRCペプチド(配列番号8)の量よりも5〜10倍多いが、CDCRGDCFC(配列番号1)ペプチドは、部分的にNGRファージのホーミングを阻害した。これらの結果は、NGRペプチドおよびRGDペプチドが、腫瘍脈管構造における異なるレセプター部位に結合することを示す。
【0061】
第3のモチーフであるGSL(グリシン−セリン−ロイシン)はまた、乳癌腫保有マウス、悪性黒色腫保有マウスまたはカポージ肉腫保有マウスにおけるインビボパンニング法に従って、同定された。GSLペプチドであるCGSLVRC(配列番号5)を発現するファージのホーミングは、遊離CGSLVRC(配列番号5)ペプチドの同時投与によって阻害された。RGDペプチドおよびNGRペプチドと同様に、GSLペプチドを発現するファージはまた、腫瘍の血管に結合した。本明細書中で開示されるように、腫瘍ホーミングペプチド中に存在する保存されたRGDモチーフ、NGRモチーフおよびGSLモチーフの同定を考慮して、このようなモチーフを含むペプチドが、腫瘍ホーミングペプチドとして、特に、腫瘍に抗菌ペプチドを選択的に送達し得るホーミングプロアポトーシス結合体を形成するために有用であり得ることが認識される。
【0062】
13個までのアミノ酸を含む種々のペプチドライブラリーが、構築され、そしてNGRペプチドであるCNGRCVSGCAGRC(配列番号3)が、乳房腫瘍に対するインビボパンニング法の結果として得られた。ランダムペプチドライブラリーをスクリーニングすることによって得られたこのNGRペプチドは、腫瘍ホーミングペプチドであった。さらに、ペプチドライブラリーが、式CXXXNGRXX(配列番号13)またはCXXCNGRCX(配列番号14)(これらの各々は、NGR配列に対して偏らせる)に基づいて構築され、そして乳房腫瘍に対するインビボパンニング法のために使用した場合、多くのNGRペプチドが得られた(表2を参照のこと)。
【0063】
これらの結果は、本発明の腫瘍ホーミング分子が、アミノ酸配列RGDまたはNGRまたはGSLを含み得ることを示す。このような腫瘍ホーミング分子は、5個のアミノ酸のような小さなペプチド(例えば、CNGRC(配列番号8))である。このような腫瘍ホーミングペプチドはまた、少なくとも13個のアミノ酸長(本明細書中で例示された最も大きなペプチド)であり得るだけでなく、所望の場合、20アミノ酸長まで、もしくは30アミノ酸長まで、または50〜100アミノ酸長までであり得る。好都合なことに、本発明の腫瘍ホーミングペプチドは、化学合成によって産生される。
【0064】
免疫組織化学分析は、約4分間循環させ続いて、マウスの心臓を通して灌流させたファージについて組織の染色を比較することによるか、またはファージ注入から24時間後に分析された組織を用いて実施された。投与から24時間後に、本質的に循環中のファージはなく、従って、灌流は必要ではない(Pasqualiniら(前出)1997)。強いファージ染色が、腫瘍脈管構造において観察されたが、CNGRCVSGCAGRC(配列番号3)ファージの投与から4分後、調査されたサンプル中の通常の内皮においては、観察されなかった(実施例VII)。比較すると、この腫瘍の染色は、24時間で強く、そして、腫瘍実質に血管が外側に広がっているようであった。NGRAHA(配列番号6)ファージおよびCVLNGRMEC(配列番号7)ファージは、同様の染色パターンを示した(実施例VII)。対照的に、コントロール器官および組織は、免疫染色がほとんどか、または全くされないことを示し、腫瘍血管のNGRモチーフの特異性を確認した。しかし、脾臓および肝臓は、予測されたようにファージを捕獲した。なぜなら、ファージによるペプチド発現の存在に関係なく、ファージ粒子の一般的な特性は、網内細胞系によって取り込まれるからである(Pasqualiniら(前出)1997)。
【0065】
免疫染色はまた、GSLモチーフ含有ペプチドであるCLSGSLSC(配列番号4)を発現するファージの投与後に観察され、そしてこの場合、NGRペプチドのファージと同様に、黒色腫腫瘍内の血管内に配置された(以下を参照のこと;また実施例VIIおよびVIIIを参照のこと)。同様に、RGDモチーフ含有ペプチドであるCDCRGDCFC(配列番号1)を発現するファージの乳房腫瘍保有マウスへの投与後の免疫染色は、腫瘍内の血管に位置されるが、脳、腎臓または種々のほかの非腫瘍組織内には観察されなかった(実施例VIおよびVIIを参照のこと;またPasqualiniら(前出)1997を参照のこと)。これらの結果は、この種々の腫瘍ホーミングペプチドが、一般的に腫瘍脈管構造にホーミングすることを実証する。
【0066】
腫瘍ホーミング分子を同定するためのインビボパンニング法の一般的な適用可能性は、同系の黒色腫を保有するマウスに種々のペプチドの集団を発現するファージを注入することによって調査された(実施例VIII)。B16マウス黒色腫モデルが、これらの研究のために選択された。なぜなら、形成される腫瘍は、非常に血管化されており、そしてこの腫瘍株の生物学は、十分に特徴付けられているからである(Minerら、Cancer Res.42:4631−4638(1982)を参照のこと)。さらに、このB16黒色腫細胞は、マウス起源の細胞であることから、宿主と腫瘍細胞ドナーとの間の種の違いは、例えば、通常の器官へのファージの分布と比較して、腫瘍へのファージの分布に影響しない。本明細書中で開示されるように、B16黒色腫細胞に対するインビボパンニング法は、例えば、GSL部分含有ペプチドCLSGSLSC(配列番号4;また表3を参照のこと)を含む腫瘍ホーミングペプチドを明らかにし、そして抗ファージ抗体を使用する腫瘍および他の器官の免疫組織化学的染色は、CLSGSLSC(配列番号4)発現ファージが、黒色腫において免疫染色を生じたが、皮膚、腎臓または他のコントロール器官においては、本質的に染色されなかったことを実証した(実施例VIII)。染色パターンは、一般的に黒色腫内の血管に従ったが、厳密に血管に限定されていなかった。
【0067】
インビボパンニング法は、マウスにおいて、実施されたが、腫瘍ホーミング分子(例えば、NGRモチーフ、RGDモチーフまたはGSLモチーフを含むペプチド)はまた、おそらくヒト血管構造をも標的とし得る。NGRファージは、移植されたヒト乳房腫瘍内の血管に結合するが、正常の組織内の血管には、結合しなかった。このことは、このモチーフが、患者における腫瘍標的化のために特に有用であり得ることを示す。CDCRGDCFC(配列番号1)ペプチドは、ヒト患者の腫瘍血管において選択的に発現される、ヒトαVインテグリン(Koivunenら(前出)1995)に結合する(Maxら、Int.J.Cancer 71:320(1997);Maxら、Int.J.Cancer 72:706(1997))。CDCRGDCFC(配列番号1)が抗菌ペプチドに連結されるホーミングプロアポトーシス結合体の使用は、この抗菌ペプチドが、腫瘍細胞自体を標的とし得るというさらなる利点を提供する。なぜなら、乳癌腫細胞が、例えば、αVβ3インテグリンを発現し得るからである(Pasqualiniら(前出)1997)。実際に、多くのヒト腫瘍は、このインテグリンを発現する。これは、特定の腫瘍(例えば、悪性黒色腫(Albeldaら、Cancer Res.50:6757−6764(1990);Danenら、Int.J.Cancer 61:491−496(1995);Felding−Habermannら、J.Clin.Invest.89:2018−2022(1992);Sandersら、Cold Spring Harb.Symp.Quant.Biol.58:233−240(1992);Mitjansら、J.Cell.Sci.108:3067−3078(1995))の進行に関与し得る。CDCRGDCFC(配列番号1)ペプチドとは違って、NGRペプチドは、MDA−MD−435乳癌腫細胞に結合しないようである。しかし、NGRペプチドは、乳房腫瘍に治療的有効量のドキソルビシンを送達し得、このことは、腫瘍ホーミング分子が、腫瘍血管構造のみにホーミングする場合(すなわち、腫瘍細胞に直接ではない)でも、このような脈管構造標的化は、その分子に連結された部分の効果を与えるのに十分ではないことを示す。
【0068】
αVβ3インテグリンが、脈管形成脈管構造における内皮細胞によって発現されるので、実験は、新脈管形成を受けている腫瘍脈管構造が、本明細書中で開示されるような方法を使用してインビボで標的となり得るか否かを決定するために実施された。αVβ3インテグリンに結合することが公知である、ペプチドCDCRGDCFC(配列番号1;Koivunenら(前出)1995)を発現するファージが、ヒト乳癌腫細胞、マウス黒色腫細胞またはヒトカポージ肉腫細胞から形成された腫瘍を保有するマウスに注入された(実施例VIIを参照のこと)。CDCRGDCFC(配列番号1)ファージは、この腫瘍の各々に選択的にホーミングしたのに対して、このようなホーミングは、コントロールファージで起らなかった。例えば、ヒト乳癌腫細胞の移植によって形成された腫瘍を保有しているマウスにおいて、非選択的コントロールファージと比較して、20〜80倍以上のCDCRGDCFC(配列番号1)ファージが、腫瘍内に蓄積された。
【0069】
ファージについての組織染色は、腫瘍内の血管におけるCDCRGDCFC(配列番号1)ファージの蓄積を示したが、これに対して、脳、腎臓または他のコントロール器官においては、染色が観察されなかった。CDCRGDCFC(配列番号1)ファージによる腫瘍ホーミングの特異性は、競合実験によって実証された。この実験において、遊離のCDCRGDCFC(配列番号1)ペプチドとの同時注入は、RGDファージの腫瘍ホーミングを非常に減少したが、これに対して、非RGD含有コントロールペプチドとの同時注入は、RGDファージのホーミングに影響しなかった(実施例VI)。これらの結果は、αVβ3標的分子が、腫瘍における内皮細胞の管腔の表面で発現されること、およびαV含有インテグリンに結合するペプチドが、このインテグリン、従って、新脈管形成を受ける脈管構造に選択的に結合し得ることを実証する。
【0070】
これらの研究の結果は、腫瘍ホーミング分子が、インビボパンニング法によって同定され得、そして場合によっては、腫瘍ホーミング分子が、腫瘍内の脈管組織および腫瘍実質にホーミングし得ることを示す。これはおそらく循環器系からのファージの迅速な退去を容認する血管の有窓性質のためであり得る。このような腫瘍ホーミング分子が腫瘍にホーミングする能力に起因して、この分子は、連結された抗菌ペプチドの腫瘍への標的化のために有用である。従って、本発明は、部分に連結した腫瘍ホーミング分子を含む結合体を提供し、このような結合体は、この部分の腫瘍細胞への標的化のために有用である。
【0071】
特定の腫瘍にホーミングする分子が、同じか、または類似の組織学的型の別の腫瘍に選択的にホーミングする能力は、例えば、ヌードマウスにおいて増殖するヒト腫瘍またはこれらの実験のための同系マウスにおけるマウス腫瘍を使用して決定され得る。例えば、種々のヒト乳癌細胞株(MDA−MB−435の乳房癌腫(Priceら、Cancer Res.50:717−721(1990))、SKBR−1−IIおよびSK−BR−3(Foghら、J.Natl.Cancer Inst.59:221−226(1975))、ならびにマウス乳房腫瘍株(EMT6(Rosenら、Int.J.Cancer 57:706−714(1994))およびC3−L5(LalaおよびParhar,Int.J.Cancer 54:677−684(1993)を含む)は、容易に入手可能であり、そしてヒト乳癌のためのモデルとして一般に使用される。例えば、このような乳房腫瘍モデルを使用して、多様な乳房腫瘍について同定された乳房腫瘍ホーミング分子の特異性に関する情報が得られ得、そして広範な異なる乳房腫瘍にホーミングするか、または最も都合のよい特異性プロフィールを提供する分子が、同定され得る。さらに、このような分析は、新たな情報(例えば、腫瘍支質について)を生じ得る。なぜなら、支質細胞遺伝子発現(内皮細胞の遺伝子発現に類似する)は、インビトロにおいて再生され得ないように腫瘍によって改変され得るからである。
【0072】
分子(例えば、ペプチドまたはタンパク質)の腫瘍に対する選択的なホーミングは、特定の細胞標的分子(例えば、腫瘍中の細胞上に存在する細胞表面レセプター)のペプチドによる特異的な認識に起因し得る。ホーミングの選択性は、1つのみまたはいくつかの異なる細胞型上に発現される特定の標的分子に依存し、その結果、この分子は、主に腫瘍にホーミングする。上記で議論されるように、同定された腫瘍ホーミングペプチドは、少なくとも一部において、腫瘍中に存在する血管において内皮細胞表面マーカーを認識し得る。しかし、ほとんどの細胞型(特に、器官または組織に対して独特な特定の細胞型)は、独特な標的分子を発現し得る。従って、インビボパンニングを使用して、特定の型の腫瘍細胞(例えば、乳癌細胞)に選択的にホーミングする分子を同定し得;特異的なホーミングは、適切な競合実験を実施することによって示され得る。
【0073】
本明細書中で使用される場合、用語「腫瘍」は、少なくとも一部において、脈管形成脈管構造を含むことによって特徴付けられる細胞の塊を意味する。用語「腫瘍」は、腫瘍実質細胞ならびに支持支質(腫瘍実質細胞塊を浸潤する脈管形成血管を含む)を含むように広範に使用される。腫瘍は、一般に、悪性腫瘍(すなわち、「癌」)であるが、腫瘍はまた、非悪性であり得る。ただし、新生血管形成は、腫瘍に関連する。用語「正常」組織または「非腫瘍」組織は、「腫瘍」でない組織をいうために使用される。本明細書中に開示されるように、腫瘍ホーミング分子は、この分子が、腫瘍にホーミングするが、対応する非腫瘍組織にはホーミングしない能力に基づいて、同定され得る。
【0074】
本明細書中で使用される場合、用語「対応する」は、腫瘍もしくは組織またはその両方に対する参照において使用される場合、2つ以上の腫瘍、または2つ以上の組織、あるいは組織もしくは腫瘍が、同じ組織学的型であることを意味する。当業者は、組織の組織学的型が、その組織を含む細胞の相関物(function)であることを認識する。従って、当業者は、例えば、乳房腫瘍に対応する非腫瘍組織は正常な乳房組織であり、一方、黒色腫に対応する非腫瘍組織は皮膚(これは、メラノサイトを含む)であることを認識する。さらに、本発明の目的のために、腫瘍ホーミング分子が、腫瘍(これは、一般に、新生血管形成を受ける血管を含む)中の脈管構造によって発現される標的分子に特異的に結合し得、この場合において、その腫瘍に対応する組織は、活性な脈管形成を受けない血管を含む非腫瘍組織を含むことが、認識される。
【0075】
本発明において有用な腫瘍ホーミング分子は、本明細書中に開示されるようなインビボパンニングにより分子のライブラリーをスクリーニングすることによって同定され得、そして米国特許第5,622,699号(1997年4月22日発行);ならびにPasqualiniおよびRuoslahti,Nature 380:364−366(1996)(これらの各々は、本明細書中で参考として援用される)に示され得る。本明細書中で使用される場合、用語「ライブラリー」は、分子の収集物を意味する。ライブラリーは、いくつかまたは多数の異なる分子を含み得、約10個の分子から数10億個以上の分子まで変化する。所望される場合、分子は、タグに結合され得、このタグは、分子の回収または同定を容易にし得る。
【0076】
本明細書中で使用される場合、用語「分子」は、ポリマー性または非ポリマー性の有機化学物質(例えば、薬物);核酸分子(例えば、RNA、cDNAまたはオリゴヌクレオチド);ペプチド(本明細書中でペプチド模倣物として言及されるような改変体または改変ペプチドまたはペプチド様分子を含み、これは、ペプチドの活性を模倣する);あるいはタンパク質(例えば、抗体もしくは増殖因子レセプターまたはそれらのフラグメント(例えば、結合ドメインを含む抗体のFvフラグメント、FdフラグメントまたはFabフラグメント))を意味するように広範に使用される。簡便さのために、用語「ペプチド」は、ペプチド、タンパク質、タンパク質のフラグメントなどを意味するように本明細書中で広範に使用される。分子はまた、天然に存在しない分子(これは、天然に存在しないが、インビトロ方法の結果として産生される)であり得るか、または天然に存在する分子(例えば、cDNAライブラリーから発現されるタンパク質またはそのフラグメント)であり得る。
【0077】
腫瘍ホーミング分子はまた、ペプチド模倣物であり得る。本明細書中で使用される場合、用語「ペプチド模倣物」は、腫瘍ホーミングペプチドの結合活性を有するペプチド様分子を意味するように広範に使用される。本発明の腫瘍ホーミングペプチドに関して、ペプチド模倣物(これは、化学的に改変されたペプチド、天然に存在しないアミノ酸を含むペプチド様分子、ペプトイドなどを含む)は、このペプチド模倣物が由来する腫瘍ホーミングペプチドの結合活性を有する(例えば、「Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery」、前出、1995を参照のこと)。
【0078】
ペプチド模倣物を同定するための方法は、当該分野において周知であり、そして、例えば、潜在的なペプチド模倣物のライブラリーを含むデータベースのスクリーニングが挙げられる。例えば、Cambridge Structural Databaseは、公知の結晶構造を有する300,000個より多い化合物の収集物を含有する(Allenら、Acta Crystallogr.第B節,35:2331(1979))。この構造の受託所は、新たな結晶構造が決定され、そして適切な形状(例えば、腫瘍ホーミング分子と同じ形状、ならびに腫瘍ホーミングペプチドによって結合される標的分子に対する潜在的な幾何学的および化学的な相補性)を有する化合物についてスクリーニングされ得る場合に、頻繁にアップデートされる。腫瘍ホーミングペプチド、または腫瘍ホーミング分子を結合する標的分子の結晶構造が入手可能でない場合、構造は、例えば、プログラムCONCORD(Rusinkoら、J.Chem.Inf.Comput.Sci.29:251(1989))を使用して生成され得る。別のデータベースであるAvailable Chemicals Directory(Molecular Design Limited,Informations Systems;San Leandro CA)は、市販されており、そしてまた腫瘍ホーミング分子の潜在的なペプチド模倣物を同定するために検索され得る、約100,000個の化合物を含有する。
【0079】
種々の型の分子(例えば、ペプチド、ペプトイドおよびペプチド模倣物)の多様な集団を含むライブラリーを調製するための方法は、当該分野において周知であり、そして種々のライブラリーが、市販されている(例えば、EckerおよびCrooke,Biotechnology 13:351−360(1995)、およびBlondelleら、Trends Anal.Chem.14:83−92(1995)、ならびにそれらに引用される参考文献(これらの各々は、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと;また、GoodmanおよびRo,Peptidomimetics for Drug Design、「Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery」、第1巻(M.E.Wolff編;John Wiley & Sons 1995)、803−861頁、ならびにGordonら、J.Med.Chem.37:1385−1401(1994)(これらの各々は、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。分子がペプチド、タンパク質またはそれらのフラグメントである場合、この分子は、インビトロにおいて直接的に産生され得るか、あるいは核酸(これは、インビトロにおいて産生され得る)から発現され得る。合成ペプチドおよび核酸化学の方法は、当該分野において周知である。
【0080】
分子のライブラリーはまた、例えば、目的の細胞、組織、器官または生物から収集されたmRNA由来のcDNA発現ライブラリーを構築することによって産生され得る。このようなライブラリーを産生するための方法は、当該分野において周知である(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A laboratory manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press 1989(これは、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。好ましくは、このcDNAによってコードされるペプチドは、細胞またはcDNAを含むウイルスの表面上で発現される。例えば、cDNAは、フューズ(fuse)5(実施例IV)のようなファージベクター中にクローニングされ得、ここで、発現に際して、コードされたペプチドは、ファージの表面上に融合タンパク質として発現される。
【0081】
さらに、分子のライブラリーは、核酸分子のライブラリーを含み得、この核酸分子は、DNAまたはRNA、あるいはそれらのアナログであり得る。例えば、細胞表面レセプターに結合する核酸分子が、周知である(例えば、O’Connellら、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 93:5883−5887(1996);TuerkおよびGold、Science 249:505−510(1990);Goldら、Ann.Rev.Biochem.64:763−797(1995)(これらの各々は、参考として本明細書中に援用される)を参照のこと)。従って、核酸分子のライブラリーは、腫瘍を有する被験体に投与され得、そして引き続き腫瘍ホーミング分子が、インビボパンニングによって同定され得る。所望の場合、この核酸分子は、例えば、ヌクレアーゼによる攻撃にさほど感受性ではない、核酸アナログであり得る(例えば、Jelinekら、Biochemistry 34:11363−11372(1995);Lathamら、Nucl.Acids.Res.22:2817−2822(1994);Tamら、Nucl.Acids.Res.22:977−986(1994);Reedら、Cancer Res.59:6565−6570(1990)(これらの各々は、参考として本明細書中に援用される)を参照のこと)
本明細書中に示されるように、インビボパンニングは、腫瘍ホーミング分子を同定するために使用され得、この腫瘍ホーミング分子は、抗菌ペプチドに連結されて、本発明のホーミングプロアポトーシス結合体を形成し得る。インビボパンニングは、ライブラリーを被験体に投与する工程、腫瘍のサンプルを収集する工程、および腫瘍ホーミング分子を同定する工程を包含する。腫瘍ホーミング分子の存在は、当該分野で周知の種々の方法を使用して同定され得る。一般的に、腫瘍中の腫瘍ホーミング分子の存在は、ライブラリー中に存在する分子に共通する1以上の特性に基づいて同定され、次いで、特定の腫瘍ホーミング分子の構造が同定される。例えば、質量分析法のような高感度な検出方法が、単独で、またはガスクロマトグラフィーのような方法と組み合わせてかのいずれかで、腫瘍中の腫瘍ホーミング分子を同定するために使用され得る。従って、ライブラリーが、薬物のような有機分子の構造に一般的に基づいて、多様な分子を含む場合、腫瘍ホーミング分子は、特定の分子に対する親ピークの存在を決定することによって同定され得る。
【0082】
所望の場合、腫瘍は収集され得、次いで、HPLCのような方法を使用して処理され得る。このような方法は、例えば、ライブラリーを含む分子の一般的な特性に依存して、規定された範囲の分子量あるいは極性または非極性の特性などを有する分子が富化された画分を提供し得る。HPLCのための条件は、特定の分子の化学に依存し、そして当業者に周知である。同様に、潜在的な干渉性細胞物質(例えば、DNA、RNA、タンパク質、脂質または炭水化物)の大量除去のための方法は、例えば、選択的抽出方法を使用する、有機分子を含む画分を富化するための方法と同様に、当該分野で周知である。ライブラリーが多様な有機化学分子(その各々が、特異的オリゴヌクレオチドタグに連結され、その結果、特異的分子が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用してオリゴヌクレオチド配列を決定することによって同定され得る)の集団を含む場合、ゲノムDNAは、バックグラウンドのPCR反応の潜在性を減少するために、収集された腫瘍のサンプルから除去され得る。さらに、ライブラリーは、共通の共有タグに各々連結された、有機化学分子のような、多様な分子の集団を含み得る。その共有タグの存在および特性に基づいて、腫瘍に選択的に選択的にホーミングするライブラリーの分子が、その腫瘍のサンプルから実質的に単離され得る。これらおよび他の方法は、特定の腫瘍ホーミング分子について、収集された腫瘍のサンプルを富化し、それによって、その収集されたサンプルから潜在的な混入物質を除去し、そして分子の検出の選択性を増加するために有用であり得る。
【0083】
本明細書中に提供される証拠は、十分な数の腫瘍ホーミング分子が、インビボパンニングの間に腫瘍にホーミングし、その結果、その分子が迅速に同定され得ることを示す。例えば、同じペプチドを発現する種々の独立したファージが、移植されたヒト乳癌細胞(表2)、マウス黒色腫細胞(表3)またはヒトカポージ肉腫細胞(表4)から形成される腫瘍中に同定された。
【0084】
その同定された腫瘍ホーミング分子の実質的な画分は、同じ構造を有するが、少数の単離されたファージのみのペプチド挿入物が決定された。しかし、器官ホーミングペプチドを発現する数十万から数百万のファージが、器官ホーミング分子についてのインビボパンニング後に回収されたことが認識されるべきである(例えば、米国特許第5,622,699号;PasqualiniおよびRuoslahti、前出、1996を参照のこと)。これらの結果は、特異的腫瘍ホーミング分子が、インビボホーミング後に腫瘍中に実質的な数で存在し、それによって、その分子が同定され得る容易性を増加することを示す。
【0085】
腫瘍ホーミング分子(特に、タグ化されていない分子)の同定の容易性は、種々の因子(潜在的に混入しているバックグラウンドの細胞物質を含む)に依存する。従って、腫瘍ホーミング分子が、タグ化されていないペプチドである場合、多数が、細胞タンパク質のバックグラウンドに対して特異的なペプチドを同定するために、腫瘍にホーミングしなければならない。対照的に、さらに少数のタグ化されていない有機化学ホーミング分子(例えば、薬物)が、同定可能である。なぜなら、そのような分子は、通常、体内に存在しないか、またはただ少数のみが存在するからである。このような場合、質量分析法のような高感度方法は、腫瘍ホーミング分子を同定するために使用され得る。当業者は、分子を同定する方法が、特定の分子の化学に一部依存することを認識する。
【0086】
腫瘍ホーミング分子が、核酸分子であるか、または核酸分子でタグ化される場合、PCRのようなアッセイが、分子の存在を同定するために特に有用である。なぜなら、原理的に、PCRは、単一の核酸分子の存在を検出し得るからである(例えば、Erlich,PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification (Stockton Press 1989)(これらは、参考として本明細書中に援用される)を参照のこと)。予備研究は、10ngの約6000塩基対のプラスミドのマウスへの静脈内注射および2分間の循環後に、そのプラスミドが、肺のサンプル中にPCRによって検出可能であることを実証した。これらの結果は、核酸分子が、循環中に投与された場合に十分に安定であり、その結果、インビボパンニングが、腫瘍に選択的にホーミングする核酸分子を同定するために使用され得ることを示す。
【0087】
ライブラリーの分子は、タグ化され、このことは、分子の回収または同定を容易にし得る。本明細書中で使用される場合、用語「タグ」は、ライブラリーの分子に連結される、物理学的部分、化学的部分または生物学的部分(例えば、それぞれ、プラスチックマイクロビーズ、オリゴヌクレオチドまたはバクテリオファージ)を意味する。分子をタグ化するための方法は、当該分野で周知である(Hermanson,Bioconjugate Techniques(Academic Press 1996)(これは、参考として本明細書中に援用される))。
【0088】
タグ(これは、共有タグまたは特異的タグであり得る)は、ライブラリーの腫瘍ホーミング分子の存在または構造を同定するために有用であり得る。本明細書中で使用される場合、用語「共有タグ(shared tag)」とは、ライブラリーの各分子に共通の、物理的部分、化学的部分または生物学的部分を意味する。例えば、ビオチンは、ライブラリーの各々の分子に連結される、共有タグであり得る。共有タグは、サンプル中のライブラリーの分子の存在を同定するために有用であり得、そしてまた、サンプルからその分子を実質的に単離するのに有用であり得る。例えば、共有タグがビオチンである場合、ライブラリー中のビオチンタグ化分子は、ストレプトアビジンへ結合させることによって実質的に単離され得るか、またはそれらの存在は、標識化されたストレプトアビジンを結合させることによって同定され得る。ライブラリーがファージディスプレイライブラリーである場合、そのペプチドを発現するファージが、共有タグの別の例である。なぜなら、ライブラリーの各ペプチドは、ファージに連結されるからである。さらに、赤血球凝集素抗原のようなペプチドは、ライブラリー中の各分子に連結される共有タグであり得、従って、選択された腫瘍のサンプルからライブラリーの分子を実質的に単離するために赤血球凝集素抗原に特異的な抗体の使用を可能にする。
【0089】
共有タグは、核酸分子であり得、これは、サンプル中のライブラリーの分子の存在を同定するために、またはサンプルからライブラリーの分子を実質的に単離するために有用であり得る。例えば、ライブラリーの分子の各々は、共有タグを構成する、同じ選択されたヌクレオチド配列に連結され得る。次いで、この共有タグに相補的であるヌクレオチド配列を含むアフィニティーカラムは、共有タグを含むライブラリーの分子をハイブリダイズし、従って、腫瘍サンプルからその分子を実質的に単離するために使用され得る。共有ヌクレオチド配列タグの一部に相補的なヌクレオチド配列はまた、PCRプライマーとして使用され得、その結果、共有タグを含む分子の存在が、PCRによってサンプル中に同定され得る。
【0090】
タグはまた、特異的タグであり得る。本明細書中で使用される用語「特異的タグ」は、ライブラリー中の特定の分子に連結され、そしてその特定の分子に独特である、物理的タグ、化学的タグ、または生物学的タグである。特異的タグは、それが容易に同定可能である場合、特に有用である。ライブラリーの特定の分子に独特であるヌクレオチド配列は、特異的タグの一例である。例えば、独特のヌクレオチド配列でタグ化されたペプチドを合成する方法は、それぞれが特異的タグを含む分子のライブラリーを提供し、これにより、ヌクレオチド配列を決定する際に、そのペプチドの正体が知られる(BrennerおよびLerner、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 89:5381−5383(1992)(これは、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。ペプチドまたは他のタイプの分子に対する特異的タグとしてのヌクレオチド配列の使用は、サンプル中の分子の存在を同定するための簡便な手段を提供する。なぜなら、極度に感度の高い方法(例えば、PCR)が、特異的タグのヌクレオチド配列を決定するために使用され、それによりそれに連結された分子の配列を同定し得るからである。同様に、ファージ上で発現されたペプチドをコードする核酸配列は、特異的タグの別の例である。なぜなら、特異的タグの配列決定は、発現されたペプチドのアミノ酸配列を同定するからである。
【0091】
共有タグまたは特異的タグの存在は、インビボパンニング後に腫瘍ホーミング分子を同定または回収するための手段を提供し得る。さらに、共有タグと特異的タグとの組み合わせは、腫瘍ホーミング分子を同定するために特に有用であり得る。例えば、ペプチドのライブラリーが、それぞれが特異的ヌクレオチド配列タグに連結されるように、調製され得る(例えば、BrennerおよびLerner、前出、1992を参照のこと)。ここで、各特異的ヌクレオチド配列タグは、その中に共有タグ(例えば、ビオチン)を取り込んでいる。腫瘍へのホーミングの際に、この特定の腫瘍ホーミングペプチドは、共有タグに基づいて腫瘍のサンプルから実質的に単離され得、そして特異的ペプチドは、例えば、特異的タグのPCRにより、同定され得る(Erlich、前出、1989を参照のこと)。
【0092】
タグはまた、支持体として機能し得る。本明細書中で使用される用語「支持体」は、分子が付着され得る規定の表面を有するタグを意味する。一般に、支持体として有用なタグは、共有タグである。例えば、支持体は、生物学的タグ(例えば、ウイルスもしくはウイルス様粒子(例えば、バクテリオファージ(「ファージ」));細菌(例えば、E.coli);または真核生物細胞(例えば、酵母、昆虫細胞もしくは哺乳動物細胞))であり得るか;あるいは、物理的タグ(例えば、リポソームまたはマイクロビーズ(これらは、プラスチック、アガロース、ゼラチン、もしくは他の生物学的もしくは不活性材料で構成され得る))であり得る。所望であれば、支持体として有用である共有タグは、それに特異的タグを連結していることができる。従って、ファージディスプレイライブラリーは、例えば、ファージ(これは、支持体でもある共有タグである)および発現されるペプチドをコードする核酸配列(この核酸配列は特異的タグである)からなることが考慮され得る。
【0093】
一般に、支持体は、その最も短い寸法において約10μmから約50μmより小さい直径を有する。これにより、この支持体は、比較的遮られないで、被験体に存在する毛細血管床を通過し得、そして循環を閉塞し得ない。さらに、支持体は、無毒であり得(これにより、それは、細胞表面分子の正常な発現も被験体の正常な生理学も妨げない)、そして、生分解性であり得る(特に、選択された腫瘍を採集するために、インビボパンニングのために用いられる被験体が屠殺されない場合)。
【0094】
分子が支持体に連結される場合、タグ化された分子は、被験体中の細胞において標的分子と相互作用し得ると思われる分子の部分が、相互作用に関与し得るように位置づけられるように、支持体の表面に付着された分子を含む。例えば、腫瘍ホーミング分子が、成長因子レセプターに対するリガンドであると思われる場合、支持体に付着された分子の結合部分は、それが、腫瘍中の細胞上の成長因子レセプターと相互作用し得るように位置づけられる。所望であれば、適切なスペーサー分子が、潜在的な腫瘍ホーミング分子が標的分子と相互作用する能力を妨げられないように、分子と支持体との間に位置づけられる。スペーサー分子はまた、反応基(これは、分子を支持体に連結する便利で効率的な手段を提供する)を含み得、そして、所望であれば、タグ(この分子の回収または同定を容易にし得る)を含み得る(Hermanson、前出、1996を参照のこと)。
【0095】
本明細書中で例証されるように、選択された腫瘍(例えば、乳癌または黒色腫)にホーミングし得ると思われるペプチドは、融合タンパク質のN末端として発現された。ここでC末端は、ファージコートタンパク質からなった。この融合タンパク質の発現の際に、C末端コートタンパク質は、N末端ペプチドが、腫瘍中の標的分子と相互作用する位置にあるように、ファージの表面に融合タンパク質を連結した。従って、共有タグを有する分子は、ファージへのペプチドの連結により形成された。ここで、ファージは、生物学的支持体を提供し、ペプチド分子は、融合タンパク質として連結され、融合タンパク質のファージコード部分は、スペーサー分子として作用し、そしてペプチドをコードする核酸は、腫瘍ホーミングペプチドの同定を可能にする特異的タグを提供した。
【0096】
本明細書中で使用される用語「インビボパンニング」は、腫瘍ホーミング分子の同定に関して用いられる場合、ライブラリーを被験体に投与し、そして被験体中の腫瘍に選択的にホーミングする分子を同定することにより、ライブラリーをスクリーニングする方法を意味する(米国特許第5,622,699号を参照のこと)。用語「被験体に投与する」とは、分子のライブラリーまたはこのようなライブラリーの一部に関して用いられる場合、その最も広い意味で、ライブラリーが被験体(これは、一般には、脊椎動物、特に、哺乳動物(例えば、ヒト)である)中の腫瘍に送達されることを意味するように使用される。
【0097】
ライブラリーは、例えば、この分子が腫瘍を通過するように、ライブラリーを被験体の循環に注射することにより、被験体に投与され得る;適切な期間の後、循環は、被験体を屠殺することにより、または腫瘍のサンプルを取り出すことにより終結される(実施例IV;米国特許第5,622,699号;PasqualiniおよびRuoslahti、前出、1996もまた参照のこと)。あるいは、カニューレが、被験体中の血管に挿入されて、それにより、ライブラリーが、適切な期間の間灌流することにより投与され得、その後、このライブラリーは、カニューレによって循環から取り出され得るか、または、被験体が腫瘍を採集するために屠殺され得るか、もしくは腫瘍がサンプリングされて、循環を終結させ得る。同様に、ライブラリーは、被験体中の適切な血管のカニューレ挿入により、腫瘍を含む1つまたは少数の器官を通って分流され得る。ライブラリーはまた、切り離された灌流腫瘍に投与され得ることが認識される。切り離された灌流腫瘍におけるこのようなパンニングは、腫瘍分子に結合する分子を同定するために有用であり得、そして所望であれば、ライブラリーの初期スクリーニングとして使用され得る。
【0098】
腫瘍ホーミング分子を同定するためのインビボパンニングの使用は、腫瘍保有マウスにおいてファージペプチドディスプレイライブラリーをスクリーニングし、そして乳房腫瘍または黒色腫腫瘍に選択的にホーミングした特異的ペプチドを同定することにより、本明細書中に例示される(実施例IV)。しかし、タンパク質レセプター分子(例えば、抗体または抗体の抗原結合フラグメント(例えば、Fv、Fd、もしくはFabフラグメント)を含む);ホルモンレセプター(例えば、成長因子レセプター);または細胞接着レセプター(例えば、インテグリンもしくはセレクチン)を提示するファージライブラリーもまた、本発明の実施のために使用され得る。このような分子の改変体は、周知の方法(例えば、ランダム変異誘発、部位特異的変異誘発、もしくはコドンに基づく変異誘発(Huse、米国特許第5,264,563号(1993年11月23日発行)(これは、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)を用いて構築され得る。所望であれば、ペプチドは、ファージの発現後であるが、被験体への投与前に、化学的に改変され得る。従って、種々のタイプのファージディスプレイライブラリーが、インビボパンニングによってスクリーニングされ得る。
【0099】
ファージディスプレイ技術が、ランダムペプチドまたは選択的にランダム化されたペプチドの多様な集団を発現するための手段を提供する。ファージディスプレイの種々の方法、およびペプチドの多様な集団を生成するための方法が、当該分野で周知である。例えば、Ladnerら(米国特許第5,223,409号、1993年6月29日発行(これは、本明細書中に参考として援用される))は、ファージの表面上に結合ドメインの多様な集団を調製するための方法を記載する。特に、Ladnerらは、ファージディスプレイライブラリーを生成するために有用なファージベクター、ならびに潜在的な結合ドメインを選択するための方法、およびランダムに変異された結合ドメインまたは選択的に変異された結合ドメインを生成するための方法を記載する。
【0100】
同様に、SmithおよびScott(Meth.Emzymol.217:228−257(1993);また、ScottおよびSmith、Science 249:386−390(1990)を参照のこと(これらは、それぞれ、本明細書中に参考として援用される))は、ベクターを含むファージペプチドディスプレイライブラリーを生成する方法、および発現されるペプチドの集団を多様化する方法を記載している(また、Huse、WO91/07141およびWO91/07149もまた参照のこと(これらは、本明細書中に参考として援用される);また実施例IVを参照のこと)。ファージディスプレイ技術は、例えば、コドンに基づく変異誘発方法(これは、ランダムペプチド、またはランダムにバイアスされたかもしくは所望にバイアスされたペプチドを生成するために使用され得る)と共に用いる場合、特に強力であり得る(Huse、米国特許第5,264,563号、前出、1993)。これらの方法または他の周知の方法が、ファージディスプレイライブラリーを作製するために使用され得る。ファージディスプレイライブラリーは、本発明のホーミングプロアポトーシス結合体において有用な腫瘍ホーミング分子を同定するために、インビボパンニングに供され得る。
【0101】
ファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることに加えて、インビボパンニングは、種々の他のタイプのライブラリー(例えば、RNAもしくはDNAライブラリーまたは化学ライブラリーを含む)をスクリーニングするために使用され得る。所望であれば、腫瘍ホーミング分子は、タグ化され得る。このことは、腫瘍からの分子の回収または腫瘍における分子の同定を容易にし得る。例えば、各々が共有タグを含む有機分子のライブラリーがスクリーニングされる場合、このタグは、ビオチンのような部分であり得る。この部分は、分子に直接的に結合され得るか、または分子を含有する支持体に連結され得る。ビオチンは、アビジンまたはストレプトアビジンアフィニティーマトリクスを用いて、選択された腫瘍サンプルから分子を回収するために有用な共有タグを提供する。さらに、分子または分子を含有する支持体が、ハプテン(例えば、4−エトキシ−メチレン−2−フェニル−2−オキサゾリン−5−オン(phOx))に連結され得る。このハプテンは、分子を回収する手段として磁気ビーズに連結された抗phOx抗体によって結合され得る。ビオチンもしくはphOx標識された結合体を精製するための方法は、当該分野で公知であり、そしてこれらの手順を実施するための材料は、市販されている(例えば、Invitrogen、La Jolla CA;およびPromega Corp.、Madison WI)。ファージライブラリーがスクリーニングされる場合、このファージは、実施例IVに開示されたような方法を用いて回収され得る。
【0102】
インビボパンニングは、腫瘍に選択的にホーミングし得る腫瘍ホーミング分子を直接的に同定するための方法を提供する。本明細書中に使用される用語「ホーミングする」または「選択的にホーミングする」とは、特定の分子が、被験体への投与後、腫瘍中に存在する標的分子に比較的特異的に結合することを意味する。一般に、腫瘍ホーミング分子は、部分的には、コントロール器官または組織と比較して、腫瘍に対して、少なくとも2倍(2×)大きい特異的結合を示すことにより、特徴付けられる。
【0103】
いくつかの場合では、分子は、腫瘍を含む器官または組織に非特異的に局在し得ることが認識されるべきである。例えば、ファージディスプレイライブラリーのインビボパンニングは、網膜内皮系(RES)の顕著な成分を含む器官(例えば、肝臓および脾臓)において高いバックグラウンドを生じ得る。従って、例えば、肝臓に腫瘍が存在する場合、RESによる取り込みに起因する分子の非特異的結合が、腫瘍ホーミング分子の同定をより困難にし得る。
【0104】
しかし、腫瘍ホーミング分子の選択的ホーミングは、腫瘍にホーミングする異なる個々のファージの能力における差異を検出することにより、非特異的結合と区別され得る。例えば、選択的ホーミングは、推定腫瘍ホーミング分子(例えば、ファージ上で発現されたぺプチド)を、大過剰の非感染ファージまたは非選択ペプチドを発現する約5倍過剰のファージと合わせ、被験体に混合物を注入し、そして腫瘍のサンプルを採集することにより、同定され得る。後者の場合、例えば、腫瘍ホーミングペプチドを発現する注入されたファージの数が、標的分子を飽和しないように十分に低いものであれば、腫瘍中のファージの約20%よりも多くが、推定腫瘍ホーミング分子を発現するという決定が、ファージにより発現されたペプチドが特異的腫瘍ホーミング分子であるとの決定的な証拠である。さらに、非特異的局在は、例えば、過剰量の「遊離」ペプチドと組み合わせて推定腫瘍ホーミングペプチドを発現するファージを用いて、競合実験を実施することにより、選択的ホーミングから区別され得る(実施例VII)。
【0105】
さらに、種々の方法が、RESの成分を含む器官への分子の非特異的結合を妨げるために使用され得る。例えば、RESの成分を含む器官に存在する腫瘍に選択的にホーミングする分子は、まずRESを、例えばポリスチレンラテックス粒子もしくはデキストラン硫酸を用いてブロックし(Kalinら、Nucl.Med.Biol.20:171−174(1993);Illumら、J.Pharm.Sci.75:16−22(1986);Takeyaら、J.Gen.Microbiol.100:373−379(1977)を参照のこと(これらの各々は、本明細書中に参考として援用される))、次いでライブラリーを被験体に投与することにより得られ得る。例えば、試験物質の投与前のデキストラン硫酸500もしくはポリスチレンマイクロスフェアの事前投与は、Kupffer細胞(これは、肝臓のRES成分である)による試験物質の非特異的取り込みをブロックするために使用されてきた(Illumら、前出、1986)。同様に、RESによる薬剤の非特異的取り込みは、炭素粒子またはシリカ(Takeyaら、前出、1977)またはゼラチンコロイド(Kalinら、前出、1993)を用いてブロックされてきた。従って、RESによる非特異的取り込みをブロックするために有用な種々の薬剤が公知であり、そして慣用的に使用される。
【0106】
ファージのRESまたは他の部位への非特異的結合はまた、例えば、マウスに、特異的ファージディスプレイライブラリーを非感染性にされた同じファージと共に共注入することにより、妨げられ得る(Smithら、前出、1990、1993)。さらに、RES成分を含む器官中の腫瘍にホーミングするペプチドは、特定の器官に対する低いバックグラウンド結合を示すファージを用いてファージディスプレイライブラリーを調製することにより、同定され得る。例えば、Merrillら(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 93:3188−3192(1996)、これは、本明細書中に参考として援用される)は、RESにより取り込まれず、そして、結果として、長期の間、循環中に残存するλ型ファージを選択した。例えば、繊維状ファージ改変体は、同様の方法を用いて選択され得る。
【0107】
腫瘍ホーミング分子の選択的ホーミングは、コントロール器官もしくは組織に比較した腫瘍に対する腫瘍ホーミング分子の特異性を決定することにより実証され得る。選択的ホーミングはまた、1ラウンドのインビボパンニングにより同定されたような腫瘍にホーミングする分子が、続くラウンドのインビボパンニングにおいて腫瘍ホーミング分子について富化されることを示すことにより、実証され得る。例えば、黒色腫腫瘍に選択的にホーミングするファージ発現ペプチドは、インビボパンニングによって単離され、次いで、更なるラウンドのインビボパンニングに供された。第二のラウンドのスクリーニング後、腫瘍から回収されたファージは、脳に比較して腫瘍へのホーミングにおいて3倍の富化を示した。第三ラウンドのスクリーニング後に腫瘍から回収されたファージは、脳に比較して腫瘍へのホーミングにおいて平均して10倍の富化を示した。選択的ホーミングはまた、1ラウンドのインビボパンニングにより同定されたような選択された腫瘍にホーミングする分子が、続くラウンドのインビボパンニングにおいて腫瘍ホーミング分子について富化されることを示すことにより、実証され得る。
【0108】
腫瘍ホーミング分子は、例えば、移植された腫瘍を含むマウスを用いて、インビボパンニングによって同定され得る。このような移植された腫瘍は、例えば、ヌードマウスのような免疫不全マウスに移植されたヒト腫瘍、または組織培養においてもしくはマウスにおいて継代することにより維持されるマウス腫瘍であり得る。細胞レセプターの保存された性質、および特定のレセプターに結合するリガンドの保存された性質に起因して、種々の種における脈管形成脈管構造および組織学的に類似の腫瘍細胞は、腫瘍ホーミング分子について標的分子として有用な共通の細胞表面マーカーを共有し得ることが期待される。従って、当業者は、例えば、規定の組織学的タイプのマウス腫瘍(例えば、黒色腫)を有するマウスにおいてインビボパンニングを用いて同定された腫瘍ホーミング分子がまた、ヒトまたは他の種において腫瘍中の対応する標的分子にも結合することを認識する。同様に、実験動物において増殖する腫瘍は、ちょうどヒトまたは他の種において増殖する腫瘍に必要とされるような、付随する新生脈管形成を必要とする。従って、マウスにおいて増殖した腫瘍において脈管構造において存在する標的分子に結合する腫瘍ホーミング分子はまた、ヒトまたは他の哺乳動物被験体における腫瘍の脈管構造中の対応する標的分子に結合し得るようである。ヒトカポージ肉腫にも、またはマウス黒色腫にも結合する、例えばヒト乳房腫瘍にホーミングすることにより同定された腫瘍ホーミング分子の一般的な能力は、標的分子が多くの腫瘍によって共有されることを示す。実際、本明細書中に開示された結果は、標的分子が、新生脈管構造(これは宿主組織である)において発現されることを実証する(実施例VIIを参照のこと)。
【0109】
実験動物(例えば、マウス)においてインビボパンニングを用いて同定された腫瘍ホーミング分子は、例えば、この分子がまた、患者から得られた腫瘍のサンプルに特異的に結合し得ることを実証することにより、ヒト被験体において対応する腫瘍に結合する能力について容易に試験され得る。例えば、CDCRGDCFC(配列番号1)ファージおよびNGRペプチドは、ヒト腫瘍の顕微鏡用切片において血管に結合することが示されたが、一方、非腫瘍組織の血管においては、結合はほとんどまたは全く生じない。従って、実験動物においてインビボパンニングを用いて同定された腫瘍ホーミング分子がまた、ヒト腫瘍における標的分子にも結合し得ることを確認するために、慣用的な方法が使用され得る。
【0110】
ライブラリーを被験体に投与する工程、選択された腫瘍を収集する工程およびその腫瘍にホーミングする腫瘍ホーミング分子を同定する工程は、1回のインビボパンニングを包含する。必要とはされないが、1回以上のさらなる回のインビボパンニングが一般に、実施される。さらなる回のインビボパンニングが実施される場合、以前の回において腫瘍から回収される分子が被験体に投与され、この被験体は、腫瘍の一部のみが収集された、以前の回において用いられた同じ被験体であり得る。
【0111】
第2回のインビボパンニングを実施することによって、第1回から回収される分子の相対的な結合選択性は、同定された分子を被験体に投与する工程、腫瘍を収集する工程、および第1回の後に回収されるファージと比較して、より多くのファージが第2回のスクリーニング後の腫瘍から回収されるか否かを決定する工程によって、決定され得る。必要とはされないが、コントロール器官またはコントロール組織もまた収集され得、そして腫瘍から回収される分子は、このコントロール器官から回収される分子と比較され得る。理想的には、第2回または引き続く回のインビボパンニング後にコントロール器官またはコントロール組織から回収される分子は存在しない。しかし、一般に、分子の集団はまた、コントロール器官またはコントロール組織中に存在する。この場合において、コントロール器官と比較される選択された腫瘍における分子の比(選択された分子:コントロール分子)が、決定され得る。例えば、第1回のインビボパンニング後に黒色腫にホーミングするファージは、さらなる2回のパンニング後のコントロール器官(脳)と比較して、選択された腫瘍にホーミングする際に3倍の濃縮を示した(実施例VIII)。
【0112】
さらなる回のインビボパンニングを使用して、特定の分子が選択された腫瘍にのみホーミングするか否かを決定し得るか、あるいは被験体の1つ以上の正常器官または正常組織においてもまた発現されるか、または腫瘍に対する標的分子に十分に類似する、腫瘍上の標的を認識し得る。腫瘍ホーミング分子はまた、対応する正常組織にホーミングしそうにない。なぜなら、インビボパンニングの方法は、選択された腫瘍にホーミングする分子のみを選択するからである。腫瘍ホーミング分子がまた、腫瘍に加えて1つ以上の正常器官または正常組織にホーミングすることを指向する場合、その器官または組織は、選択された組織または器官のファミリーを構成すると考えられる。インビボパンニングの方法を使用して、選択された腫瘍にのみホーミングする分子が、1つ以上の選択された器官または組織にもまたホーミングする分子と識別され得る。このような同定は、引き続く回のインビボパンニングの間に種々の器官または組織を収集することによって、促進される。
【0113】
用語「コントロール器官またはコントロール組織」は、腫瘍ホーミング分子の同定が所望される腫瘍以外の器官または組織を意味するように、使用される。コントロール器官またはコントロール組織は、腫瘍ホーミング分子がコントロール器官に選択的にホーミングしない際に特徴付けられる。コントロール器官またはコントロール組織は、例えば、分子の非特異的結合を同定するため、または分子のホーミングの選択性を決定するために、収集され得る。さらに、非特異的結合は、例えば、コントロール分子(これは、腫瘍にホーミングしないが、潜在的な腫瘍ホーミング分子に化学的に類似しないことが既知である)を投与することによって同定され得る。あるいは、投与された分子が支持体に結合される場合、支持体単独の投与はまた、非特異的結合を同定するために使用され得る。例えば、遺伝子IIIタンパク質単独を発現するが、ペプチド融合タンパク質を含まないファージは、ファージ支持体の非特異的結合のレベルを決定するためにインビボパンニングによって研究され得る。
【0114】
本明細書中に開示されるように、腫瘍ホーミング分子の特異的ホーミングは、容易に、対応する非腫瘍組織ならびにコントロール器官またはコントロール組織と比較して、選択された腫瘍組織を試験することによって同定され得る。例えば、免疫組織学的分析は、腫瘍ホーミングペプチドを提示するために使用されるファージに特異的な抗体を使用して、腫瘍組織および対応する非腫瘍組織に対して実施され得る(実施例VIIを参照のこと)。あるいは、市販されている検出システムのように、ペプチド(例えば、FLAGエピトープなど)とともに発現される共有されたタグに特異的である抗体が、使用され得る。
【0115】
一般に、分子のライブラリー(これは、ランダムの多様な集団または目的の選択的にランダム化される分子を含む)が調製され、次いで、被験体に投与される。投与後、選択された時間にて、被験体は屠殺され、そして腫瘍が収集され、その結果、腫瘍中に存在する分子が同定され得る(実施例IVを参照のこと)。所望される場合、1つ以上のコントロール器官またはコントロール組織あるいはコントロール器官またはコントロール組織の一部が、サンプリングされ得る。例えば、乳癌または黒色腫腫瘍を有するマウスに、ファージペプチドディスプレイライブラリーを用いて注射し、次いで、約1〜5分後に、マウスを麻酔し、液体窒素中に凍結したか、または好ましくは、ファージの循環を終結するために心臓を通して還流するかのいずれかを行い、腫瘍および1つ以上のコントロール器官を、各々の、腫瘍中に存在するファージから収集し、そしてコントロール器官を回収し、そして代表的な腫瘍に選択的にホーミングするペプチドを同定した(実施例IV、VおよびVIIIを参照のこと)。
【0116】
提供される実施例において、動物を屠殺して、選択された腫瘍およびコントロール器官またはコントロール組織を収集した。しかし、腫瘍の一部のみが、腫瘍ホーミング分子を含む支持体を回収するために収集され、そして同様に、器官または組織の一部のみがコントロールとして収集される必要があることは、認識されるべきである。従って、例えば、腫瘍の一部が、生検によって収集され得、その結果、ファージによって発現されるペプチドのような分子は、所望されるように、第2回以上同じ被験体に投与され得る。同じ被験体に対して第2回に投与されるべき分子が、例えば、支持体にタグ化されるかまたは結合される場合、このタグまたは支持体は、引き続く回のスクリーニングを妨害しないように、非毒性かつ生分解性であるべきである。
【0117】
ファージライブラリーのインビトロスクリーニングは、以前に、抗体または細胞表面レセプターに結合するペプチドを同定するために使用されている(SmithおよびScott、前出、1993)。例えば、ファージペプチドディスプレイライブラリーのインビトロスクリーニングは、インテグリン接着レセプター(Koivunenら、J.Cell Biol.124:373〜380(1994a)。これは、本明細書中に参考として援用される)およびヒトウロキナーゼレセプター(Goodsonら、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA 91:7129〜7133(1994))に特異的に結合される、新規なペプチドを同定するために使用されている。しかし、このようなインビトロ研究は、インビトロにおいて選択されたレセプターに特異的に結合し得るペプチドがまた、インビボでそのレセプターを結合するか否か、またはそのペプチドもしくはそのレセプターが体内において特異的な器官に独特であるか否かに対する見識を提供しない。さらに、インビトロ方法は、人工的な系において、規定され、十分に特徴付けられた標的分子を使用して実施される。例えば、Goodsonら、前出、1994は、組換えウロキナーゼレセプターを発現する細胞を利用した。しかし、このようなインビトロ方法は標的分子の事前の知識を必要とし、そして、任意の情報は、インビボ利用性に関する場合にほとんど得られないという点で制限される。
【0118】
培養中の細胞に対するインビトロパンニングもまた、細胞によって発現されるレセプターに特異的に結合し得る分子を同定するために使用されている(Barryら、Nature Med.2:299〜305(1996)(これは、本明細書中に参考として援用される)。しかし、インビボにおいて細胞によって発現される細胞表面分子は、しばしば、この細胞が培養中に増殖される場合に変化する。従って、培養中の細胞を使用するインビトロパンニング方法はまた、培養中の細胞に対するその結合に起因して同定される分子がインビボにおいて同じ能力を有する保証は、存在しないという点で制限される。さらに、スクリーニングにおいて使用される腫瘍細胞にのみホーミングするが、他の細胞型にはホーミングしない分子を識別するためにインビトロパンニングを使用することは不可能である。
【0119】
対照的に、インビボパンニングは、事前の知識または標的分子のアベイラビリティーを必要とせず、そしてインビボにおいて発現される細胞表面標的分子に結合する分子を同定する。また、「非標的化」組織がスクリーニングの間に存在するので、ホーミングの特異性を欠如する腫瘍ホーミング分子の単離の可能性は、大いに減少される。さらに、例えば、代謝活性に起因してインビボパンニングによって腫瘍ホーミング分子を得る際に、インビボでの循環における分解に特に感受性であり得る任意の分子は、回収されない。従って、インビボパンニングは、腫瘍中に存在する標的分子に対してインビボで選択的にホーミングする腫瘍ホーミング分子を同定することによって、以前の方法に対する有意な利点を提供する。
【0120】
インビボパンニングの開示された方法が作用する機構は十分に規定されていないが、1つの可能性は、ファージ上に発現されるペプチドのような分子が認識され、そして腫瘍中の血管に沿って内皮細胞上に存在する標的分子に結合することである。証拠は、例えば、種々の器官中の血管組織が別のものとは異なること、およびこのような差異が体内における細胞性輸送の調節に関与し得ることを示す。例えば、リンパ球は、それらの組織中の内皮細胞による特異的な「アドレス(address)」分子の発現に一部起因して、リンパ節または他のリンパ組織にホーミングする(Salmiら、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 89:11436〜11440(1992);Springer、Cell 76:301〜314(1994))。同様に、種々の白血球は、炎症シグナルによって誘導される内皮細胞マーカーの発現に一部起因して、炎症の部位を認識し得る(ButcherおよびPicker、Science 272:60〜66(1996);Springer、前出、1994を参照のこと)。従って、内皮細胞マーカーは、腫瘍ホーミング分子によって選択的に結合され、そして結合された抗菌ペプチドを腫瘍に指向するために使用され得る、潜在的な標的を提供する。
【0121】
さらなる成分は、所望される場合、ホーミングプロアポトーシス結合体の一部として含まれ得る。例えば、いくつかの場合において、腫瘍ホーミング分子と抗菌ペプチドとの間のオリゴペプチドスペーサーを利用することが望ましくあり得る。このようなスペーサーは、例えば、FitzpatrickおよびGarnett、Anticancer Drug Des.10:1〜9(1995)に記載されるように、当該分野で周知である。
【0122】
本発明のホーミングプロアポトーシスキメラペプチドは、固体状態ペプチド合成の慣用的な方法を使用して、必要な量で容易に合成され得る。本発明のキメラペプチドはまた、市販の供給業者(例えば、AnaSpec,Inc.;San Jose,CA)から購入され得る。抗菌ペプチドが、非ペプチド腫瘍ホーミング分子に結合されるべきである場合、抗菌ペプチド部分は、周知の方法を使用して独立して合成され得るか、または市販の供給業者から得られ得る。
【0123】
抗菌ペプチドを腫瘍ホーミング分子に結合するために使用され得るいくつかの方法は、当該分野で公知であり、これは、この分子の化学的特徴に依存する。例えば、応用免疫学の分野において慣用的に使用されるような、キャリアタンパク質にハプテンを結合する方法(例えば、HarlowおよびLane、前出、1988;Hermanson、前出、1996を参照のこと)。
【0124】
予め作製された(premade)抗菌ペプチドはまた、例えば、カルボジイミド結合体を使用して腫瘍ホーミングペプチドに結合体化され得る(BaumingerおよびWilchek、Meth.Enzymol.70:151〜159(1980)。これは、本明細書中で参考として援用される)。カルボジイミドは、一般式R−N=C=N−R’ (ここで、RおよびR’は、脂肪族であってもよいしまたは芳香族であってもよい)を有する一群の化合物を含み、そしてペプチド結合の合成のために使用される。調製用手順は単純であり、比較的速く、そして温和な条件下で実施される。カルボジイミド化合物は、カルボン酸基を攻撃して、このカルボン酸基を遊離のアミノ基に対する反応性部位に変化させる。カルボジイミド結合体は、種々の化合物を抗体の産生のためのキャリアに結合体化するために使用されている。
【0125】
水溶性カルボジイミドである1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)は、抗菌ペプチドを腫瘍ホーミング分子に結合体化するために有用であり得る。このような結合体は、アミノ基(これは、例えば、抗菌ペプチドによって提供され得る)、およびカルボキシル基(これは、腫瘍ホーミング分子によって提供され得る)の存在を必要とする。
【0126】
ペプチド結合の直接的な形成のためにカルボジイミドを使用することに加えて、EDCはまた、活性エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル)を調製するために使用され得る。次いで、NHSエステル(これは、アミノ基のみに結合する)は、ドキソルビシンの1つのアミノ基とのアミド結合の形成を誘導するために使用され得る。組合せにおけるEDCおよびNHSの使用は、一般に、結合体形成の収率を増加するために結合体化について使用される(BaumingerおよびWilchek、前出、1980)。
【0127】
抗菌ペプチドを腫瘍ホーミング分子に結合体化するための他の方法もまた、使用され得る。例えば、過ヨウ素酸ナトリウム酸化に続く適切な反応物の還元的アルキル化が使用され得、同様に、グルタルアルデヒド架橋もまた使用され得る。しかし、本発明の結合体を生成する方法が選択されるにもかかわらず、腫瘍ホーミング分子がその標的能力を維持し、そして抗菌ペプチドがその抗菌活性を維持する決定がなされなければならないことが、認識される。当該分野で公知の方法は、本発明のホーミングプロアポトーシス結合体の活性を確認し得る。
【0128】
形成される抗菌ペプチド/腫瘍ホーミング分子結合体の収量は、慣用的な方法を使用して決定される。例えば、HPLCまたはキャピラリー電気泳動または他の定量的方法もしくは定性的方法が、使用され得る(例えば、Liuら、J.Chromatogr.735:357〜366(1996);Roseら、J.Chromatogr.425:419〜412(1988)を参照のこと。これらの各々は、本明細書中で参考として援用される;例えばまた、実施例VIIIを参照のこと)。特に、当業者は、結合体反応の収量を決定するための方法の選択が、特定の抗菌ペプチドおよび腫瘍ホーミング分子の物理的特徴または化学的特徴に一部依存することを、認識する。結合体化後、反応生成物は脱塩されて、任意の遊離のペプチドまたは分子を除去する。
【0129】
本発明はまた、脈管形成脈管構造を有する腫瘍に対してインビボにおいて抗菌ペプチドを指向する方法を提供する。この方法は、本発明のホーミングプロアポトーシス結合体を、脈管形成脈管構造を有する腫瘍を含有する被験体に投与することによって実施される。脈管形成脈管構造を有する腫瘍に対してインビボで抗菌ペプチドを指向するための本発明の方法において、抗菌ペプチドは、例えば、配列D(KLAKLAK)2を含み得る。脈管形成脈管構造を有する腫瘍を含有する被験体に投与され得る、特に有用な結合体は、CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2およびACDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2を含む。
【0130】
本発明は、さらに、脈管形成脈管構造を有する腫瘍においてインビボでの選択的毒性を誘導する方法を提供する。この方法は、本発明のホーミングプロアポトーシス結合体を、脈管形成脈管構造を有する腫瘍を含有する被験体に投与することによって実施される。本発明の方法において選択的な毒性を誘導する際に有用な抗菌ペプチドは、例えば、配列D(KLAKLAK)2を含むペプチドであり得る。脈管形成脈管構造を有する腫瘍においてインビボでの選択的毒性を誘導するために投与され得る特に有用な結合体は、CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2およびACDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2を含む。
【0131】
脈管形成脈管構造を有する腫瘍を有する患者を処置する方法もまた、本明細書中に提供される。処置のこのような方法において、本発明のホーミングプロアポトーシス結合体は、患者に投与され、そして腫瘍に対して選択的に毒性である。抗菌ペプチド部分は、例えば、配列D(KLAKLAK)2を含み得る。好ましい実施形態において、ホーミングプロアポトーシス結合体は、配列CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2およびACDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2を有する。
【0132】
被験体に投与される場合、本発明のホーミングプロアポトーシス結合体は、例えば、結合体および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物として、投与され得る。薬学的に受容可能なキャリアは、当該分野において周知であり、そして例えば、水溶液(例えば、水もしくは生理学的緩衝化生理食塩水)あるいは他の溶媒またはビヒクル(例えば、グリコール、グリセロール、油(例えば、オリーブ油まもしくは注射用有機エステル)が挙げられる。
【0133】
薬学的に受容可能なキャリアは、例えば、結合体の吸収を安定化または増加するように作用する、生理学的に受容可能な化合物を含み得る。このような生理学的に受容可能な化合物としては、例えば、糖質(例えば、グルコース、スクロースもしくはデキストラン);酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸またはグルタチオン);キレート化剤;低分子量タンパク質;または他の安定化剤または賦形剤が挙げられる。当業者は、薬学的に受容可能なキャリア(生理学的に受容可能な化合物を含む)の選択が、例えば、その化合物の投与の経路に依存することを理解する。薬学的組成物はまた、癌治療薬剤のような薬剤を含み得る。
【0134】
当業者は、本発明のホーミングプロアポトーシス結合体が、薬学的組成物として種々の経路で、例えば、経口的または非経口的に(例えば、静脈内的に)被験体に投与され得ることを既知である。この結合体を含む薬学的組成物は、注射または挿管により投与され得る。薬学的組成物はまた、リポソームまたは他のポリマーマトリックスと結合された腫瘍ホーミング分子(そこに、抗菌ペプチドを組み込み得る)であり得る(Gregoriadis,Liposome Technology、第1巻(CRC Press,Boca Raton,FL 1984)参考として本明細書に援用される)。例えば、リン脂質または他の脂質からなるリポソームは、非毒性であり、生理学的に受容可能であり、そして作製および投与が比較的単純である代謝可能なキャリアである。
【0135】
本明細書において開示される治療法方法のためには、有効量のホーミングプロアポトーシス結合体が被験体に投与されるべきである。本明細書において用いる場合、用語「有効量(effective amount)」は、所望の効果を生じる結合体の量を意味する。有効量はしばしば、腫瘍ホーミング分子に結合された特定の抗菌ペプチドに依存する。腫瘍ホーミング分子が特定の抗菌ペプチドに連結されたホーミングプロアポトーシス結合体の有効量は、当業者に周知の方法を用いて決定され得る。
【0136】
ホーミングプロアポトーシス結合体の投与の経路は、部分的には、その分子の化学構造に依存する。例えば、ペプチドは、特に、経口的に投与された場合、有用でない。なぜなら、ペプチドは、消化管で分解され得るからである。しかし、内因性のプロテアーゼによる分解に対するペプチドの感受性を低くするように、または消化管を通じてより吸収されるようにペプチドを化学的に改変する方法(これには、Dアミノ酸の組み込みを含む)が、周知である(例えば、Blondelleら、前出,1995;EckerおよびCrooke,前出、1995;GoodmanおよびRo、前出、1995、を参照のこと)。このような改変は、インビボパンニングにより同定された腫瘍ホーミングペプチド、および抗菌ペプチドの上で実行され得る。さらに、ペプチド模倣物のライブラリー(これは、Dアミノ酸、他の非天然に存在するアミノ酸、もしくは化学的に改変されたアミノ酸を含み得る;またはペプチドの構造を模倣する有機分子であり得る;またはビニル類似(vinylogous)ペプトイドのようなペプトイドであり得る)を調製する方法が、当該分野で公知であり、そして経口投与に安定な腫瘍ホーミング分子を同定するために用いられ得る。
【0137】
腫瘍ホーミングペプチドは、直鎖状または環状の構造を有し得る。いくつかのペプチドには、システイン残基が含まれ、ペプチドの環化を可能にした。特に、少なくとも2つのシステイン残基を含むペプチドは、自発的に環化する。さらに、このような環状ペプチドはまた、直鎖状形態で存在する場合、活性であり得る(例えば、Koivunenら、前出、1993を参照のこと)。例えば、直鎖状ペプチドであるNGRAHA(配列番号6)はまた、腫瘍ホーミング分子として有用であった(表2を参照のこと)。従って、いくつかの場合には、本明細書において開示された、さもなければ腫瘍ホーミングペプチドとして同定された、腫瘍ホーミングペプチドにおける1つ以上のシステイン残基は、このペプチドの腫瘍ホーミング活性に有意な影響を与えることなく、欠失され得る。本発明のペプチドの腫瘍ホーミング活性について、システイン残基またはシステイン残基に対してアミノ酸残基N末端もしくはC末端の必要性を決定する方法は、慣用的であり、そして当該分野で周知である。
【0138】
本明細書にさらに開示されるように、全てではないが、いくつかの腫瘍ホーミング分子はまた、腫瘍内に含まれない脈管形成脈管構造に対してホーミングし得る。例えば、RGDモチーフまたはGSLモチーフのいずれかを含む腫瘍ホーミング分子は、特異的に網膜新生脈管構造にホーミングした(Smithら、Invest.Opththamol.Vis.Sci.35:101〜111(1994)(参考として本明細書に援用される)が、一方、NGRモチーフを含む腫瘍ホーミングペプチドは、この脈管形成脈管構造において実質的に蓄積しなかった。これらの結果は、腫瘍脈管構造が、他の種類の脈管形成脈管構造では実質的に発現されない標的分子を発現することを示す。本明細書において開示される方法は、非腫瘍脈管形成脈管構造にホーミングするペプチドから腫瘍ホーミングペプチドを識別するために用いられ得る。当業者は、好ましくは、腫瘍を処置するために、腫瘍脈管構造に選択的にホーミングする、腫瘍ホーミングペプチドを有する結合体を投与することを理解する。
【0139】
本発明は、キメラ前立腺ホーミングプロアポトーシスペプチドを提供する。これは、例えば、良性前立腺過形成または前立腺癌の処置に用いられ得る。本明細書において開示される場合、SMSIARLペプチド(配列番号207)は、全身投与された場合、前立腺組織、詳細には前立腺脈管構造に、選択的に局在化し得る(実施例IX.BおよびIX.Eを参照のこと)。さらに、前立腺ホーミングペプチド SMSIARL(配列番号207)は、前立腺組織に連結部分(例えば、ビオチンまたはファージ)を選択的に送達するために用いられ得る。本明細書においてさらに開示されるように、アポトーシスは、SMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2キメラペプチドの全身投与によりマウス前立腺に誘導された;非前立腺組織においてアポトーシスが観察された証拠はなかった(図7および実施例IX.Cを参照のこと)。本明細書において開示される結果はまた、SMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2キメラペプチドの投与が、TRAMPマウス(Gingrichら、Cancer Res.56:4096〜4102(1996)に記載されるようにトランスジーンの影響下で前立腺癌を発症する)の生存を延長し得ることを実証する。図8は、SMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2で処置したマウスが、ビヒクル単独、D(KLAKLAK)2ペプチド単独、またはSMSIARLペプチド(配列番号207)単独で処置したマウスよりも長く生存したことを示す。これらの結果に基づいて、本発明は、キメラ前立腺ホーミングプロアポトーシスペプチド、および以下にさらに記載するように前立腺癌を有する患者の処置のためこのペプチドを用いる方法を提供する。
【0140】
従って、本発明は、抗菌ペプチドに連結された前立腺ホーミングペプチドを含むキメラ前立腺ホーミングプロアポトーシスペプチドを提供する。ここで、このキメラペプチドは、前立腺組織に選択的にインターナライズされ、そしてその組織に対する高い毒性を示すが、一方、抗菌ペプチドは、前立腺ホーミングペプチドに連結されない場合は、低い哺乳動物細胞毒性を有する。本発明のキメラペプチドにおいて、前立腺ホーミングペプチド部分は、例えば、配列SMSIARL(配列番号207)または機能的に等価な配列を含み得、そして抗菌ペプチド部分は、配列(KLAKLAK)2(配列番号200)、(KLAKKLA)2(配列番号201)、(KAAKKAA)2(配列番号202)、または(KLGKKLG)3(配列番号203)などの両親媒性αヘリックス構造を有し得る。好ましい実施形態において、抗菌ペプチド部分は、配列D(KLAKLAK)2を含む。例示的な前立腺ホーミングプロアポトーシスペプチドは、SMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2として、本明細書に提供される。
【0141】
本発明はさらに、前立腺癌に対してインビボで抗菌ペプチドを指向する方法を提供する。この方法は、抗菌ペプチドに連結された前立腺ホーミングペプチドを含むキメラ前立腺ホーミングプロアポトーシスペプチドを投与する工程を包含する。ここでこのキメラペプチドは、前立腺組織に選択的にインターナライズされ、そしてその組織に対する高い毒性を示すが、一方、抗菌ペプチドは、前立腺ホーミングペプチドに連結されない場合は、低い哺乳動物細胞毒性を有する。本発明の方法において、前立腺ホーミングペプチドは、例えば、配列SMSIARL(配列番号207)または機能的に等価な配列を含み得、そして抗菌ペプチドは、D(KLAKLAK)2のような配列を含み得る。好ましい実施形態において、キメラ前立腺ホーミングプロアポトーシスペプチドは、配列SMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2を含む。
【0142】
前立腺癌において選択的毒性をインビボで誘導する方法もまた、本発明により提供される。この方法は、キメラ前立腺ホーミングプロアポトーシスペプチドを、前立腺癌を有する被験体に投与する工程を包含する。ここでこのキメラペプチドは、抗菌ペプチドに連結された前立腺ホーミングペプチドを含み、このキメラペプチドは、前立腺組織に選択的にインターナライズされ、そしてその組織に対する高い毒性を示すが、一方、抗菌ペプチドは、前立腺ホーミングペプチドに連結されない場合は、低い哺乳動物細胞毒性を有する。前立腺癌においてインビボで選択的な毒性を誘導する方法は、例えば、配列SMSIARL(配列番号207)または機能的に等価な配列を含む前立腺ホーミングペプチドを用いて、実施され得る。抗菌ペプチドは、例えば、配列D(KLAKLAK)2を含み得る。好ましい実施形態において、キメラ前立腺ホーミングプロアポトーシスペプチドは、配列SMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2を含む。
【0143】
さらに、本発明は、前立腺癌を有する患者に本発明のキメラ前立腺ホーミングプロアポトーシスペプチド(これによりこのキメラペプチドは、腫瘍に対して選択的に毒性である)を投与することにより、この患者を処置する方法を提供する。このキメラペプチドは、抗菌ペプチドに連結された前立腺ホーミングペプチドを含み、そしてこのキメラペプチドは、前立腺組織に選択的にインターナライズされ、そしてその組織に対する高い毒性を示すが、一方、抗菌ペプチドは、前立腺ホーミングペプチドに連結されない場合は、低い哺乳動物細胞毒性を有する。この前立腺ホーミングペプチド部分は、例えば、配列SMSIARL(配列番号207)または機能的に等価な配列を含み得、そして抗菌ペプチド部分は、例えば、配列D(KLAKLAK)2を含み得る。前立腺腫瘍を有する患者の処置のための好ましい実施形態において、キメラペプチドは、配列SMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2を含む。
【0144】
本明細書において用いる場合、用語「前立腺ホーミングペプチド」は、コントロール組織(例えば、脳)に比べ、前立腺組織に対してインビボで選択的にホーミングするペプチドを意味する。このようなペプチドは一般に、コントロールの細胞型または組織に比較して、前立腺組織に対する少なくとも2倍大きい局在化により特徴付けられる。前立腺ホーミングペプチドは、他の細胞型または他の脈管構造に比べて、例えば、前立腺脈管構造に対して、選択的にホーミングし得る(実施例IXを参照のこと)。
【0145】
本発明のキメラペプチドは、前立腺ホーミングペプチド部分の選択的ホーミング活性によって、前立腺に選択的に送達される。種々の前立腺ホーミングペプチドが、本発明において有用である。このペプチドとしては、マウスへのX7ライブラリーの注射(表7)および米国特許第5,622,699号に記載の引き続くインビボパンニングにより同定されたSMSIARL(配列番号207)およびVSFLEYR(配列番号222)が挙げられる。この前立腺ホーミングペプチドSMSIARL(配列番号21)およびVSFLEYR(配列番号22)は、脳に比べ、前立腺において、それぞれ34倍および17倍の濃縮を示した。
【0146】
1つの実施形態において、本発明は、配列SMSIARL(配列番号207)または機能的に等価な配列を含む前立腺ホーミングペプチドに依存する。配列SMSIARL(配列番号207)に関して、用語、「機能的に等価な配列」は、本明細書において用いる場合、配列SMSIARL(配列番号207)についての図9に示すように、前立腺血管の内皮に選択的に結合する配列、およびこの配列が同じレセプターに選択的に結合するという点で同様に機能する配列を意味する。
【0147】
本発明のキメラ前立腺ホーミングプロアポトーシスペプチドが、種々の前立腺障害において、選択的な毒性を誘導するために用いられ得ることが理解される。このような障害としては、良性結節性前立腺過形成、ならびに臨床的に明白な癌および無症状の癌を含む原発性癌または二次的な癌が挙げられる。本発明のキメラペプチドを用いて処置されるべき癌としては腺癌のような前立腺癌腫が挙げられる。
【0148】
以下の実施例は、例示の意図であり本発明を限定する意図ではない。
【0149】
(実施例I)
(D(KLAKLAK)2の特徴付け)
本実施例は、D(KLAKLAK)2が、ミトコンドリア膜を優先的に破壊させ、そしてミトコンドリア依存性アポトーシスを誘導することを実証する。
【0150】
(KLAKLAK)2と示した合成の14マーKLAKLAKKLAKLAK(配列番号200)を選択した。なぜなら、これが、真核生物細胞を殺傷するのに必要な濃度よりも2桁低い濃度で細菌を殺傷するからである(Javadpourら、J.Med.Chem.39:3107〜3113(1996))。全てのD−エナンチオマーであるD(KLAKLAK)2を用いて、プロテアーゼによる分解を回避した(Bassalleら、FEBS Lett.274:151〜155(1990);Wadeら、Proc.Natl.Acad.Sci87:4761〜4765(1990))。
【0151】
(D(KLAKLAK)2は、優先的にミトコンドリア膜を破壊する)
真核生物の原形質膜にわたってD(KLAKLAK)2がミトコンドリア膜を優先的に破壊する能力を、ミトコンドリア腫脹アッセイによって、およびアポトーシスのミトコンドリア依存性無細胞系において、ならびに細胞傷害性アッセイによって評価した。
【0152】
ミトコンドリア腫脹アッセイを以下のとおり実施した。簡略には、ラット肝臓ミトコンドリアを、Ellerbyら、J.Neurosci.17:6165〜6178(1997)に記載のように調製した。ペプチドをHPLCにより90%より高い純度に合成した(DLSLARLATARLAI(配列番号204)、Coast Scientific,Inc.,San Diego,CA;他のペプチドは全てAnaSpec,Inc.)。ミトコンドリアを10μM D(KLAKLAK)2、10μM DLSLARLATARLAI陰性コントロールペプチド(配列番号204)、または200μM Ca+2(陽性コントロールとして)の濃度で処理した。ペプチドをキュベット中のミトコンドリアに添加した。そして520nmでの吸光度を測定することにより腫脹を定量した。
【0153】
図2aに示すように、10μM D(KLAKLAK)2は、著明なミトコンドリア腫脹を誘導した。3μMの濃度で軽度の腫脹を認めた。これは、細胞単層の50%を殺傷するのに必要な致死濃度(LC50;表1)で測定した場合の、真核生物細胞を殺傷するのに必要な濃度(約300μM)より2桁低い。陰性コントロールとして用いた非αヘリックス形成ペプチドDLSLARLATARLAI(配列番号204)は、ミトコンドリア腫脹を誘導しなかった。これらの結果は、D(KLAKLAK)2が、真核生物の原形質膜に比較して、ミトコンドリア膜を優先的に破壊することを実証する。
【0154】
【表1】
(D(KLAKLAK)2は、ミトコンドリア依存性アポトーシスを誘導する)
D(KLAKLAK)2ペプチドを、正常な細胞質ゾル抽出物中に懸濁した正常なミトコンドリアで構成した無細胞系において、ミトコンドリア依存性アポトーシスを活性化する能力についてアッセイした(Ellerbyら、J.Neurosci.17:6165〜6178(1997))。不活性なプロ形態から活性なプロテアーゼを処理する特徴的なカスパーゼ3によりアポトーシスを測定した(Alnemriら、Cell 87:171(1996))。
【0155】
無細胞性アポトーシスアッセイを本質的には以下のとおり実施した。無細胞系をEllerbyら、前出、1997に記載のように再構成した。そしてミトコンドリア依存性反応については、ラット肝臓ミトコンドリアを、真皮微細血管内皮細胞(dermal microvessel endothelial cell)から調製した正常な(非アポトーシス性の)細胞質ゾル抽出物中に懸濁した。100μMの濃度でペプチドを添加し、そして30℃または37℃で2時間インキュベーティングした後、ミトコンドリアを遠心分離によって取り除き、そして上清を、12%ゲル(Biorad;Hercules,CA)上で、SDS/PAGE免疫ブロッティングにより分析した。タンパク質をPVDF膜(Biorad)に転写し、そして抗カスパーゼ3抗体(Santa Cruz Biotechnology;Santa Cruz,CA)とインキュベートし、その後、ECL検出(Amersham;Arlington Heights,IL)した。
【0156】
特徴的カスパーゼ3処理を、Ellerbyら、前出、1997に記載のように真皮微小血管内皮細胞溶解産物中で測定した。簡略には、細胞溶解産物のアリコート(1μl溶解産物液、8〜15mg/ml)を100μM N−アセチル−Asp−Glu−Val−Asp−pNA(DEVO−pNA;BioMol;100μl、100mM HEPES、10%スクロース、0.1%CHAPS、1mM DTT、pH7.0)に添加した。DEVD−pNAの加水分解を25℃で分光光度的に(400nm)モニターした。
【0157】
図2b、レーン4に示すように、活性プロテアーゼを処理する特徴的カスパーゼ3は、ミトコンドリアおよびD(KLAKLAK)2の存在下で観察された。陰性コントロールとして用いた非αヘリックス形成ペプチドDLSLARLATARLAI(配列番号204)は、無細胞系において試験した場合、不活性であり真核生物細胞に対して致死的でなかった(図2b;また、Ellerbyら、前出、1997を参照のこと)。
【0158】
まとめると、これらの結果は、D(KLAKLAK)2が、真核生物の原形質膜に比較して、ミトコンドリア膜を優先的に破壊し、そしてミトコンドリア依存性アポトーシスを活性化することを示す。
【0159】
(実施例II)
(HPP−1の特徴付け)
本実施例は、CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2(HPP−1)が、組織培養モデルにおける新脈管形成を阻害することを実証する。
【0160】
グリシニルグリシン架橋を介して抗菌ペプチドに連結したホーミングドメインを含むキメラを調製した。上記のように、ペプチドを、AnaSpec、IncによりHPLCで90%より高い純度で商業的に合成した。
【0161】
ホーミングドメインは、環式(システイン間のジスルフィド結合)CNGRCペプチド(配列番号8、図1参照のこと)、または二環式ACDCRGDCFCペプチド(配列番号16)のいずれかであり、それらの両方は、腫瘍ホーミング特性を有し(Pasqualiniら、Nature Biotech.15:542〜546(1997);Arapら、Science 279:377〜380(1998))、そしてインターナライズされ得る(Arapら、前出、1998;Hartら、J.Biol.chem.269:12468〜12474(1994);Bretscherら、EMBO.J.8:1341〜1348(1989))。ホーミングドメイン−レセプター相互作用の推定されるキメラ特性のために、ホーミングドメインを全てのL型アミノ酸より合成した。グリシニルグリシン架橋を、ホーミングドメインと抗菌ドメインを結合させ、ペプチドに可撓性を与え、そして潜在的な立体的相互作用を最小化させるために使用した。
【0162】
(HPP−1で処理された皮膚微小血管内皮細胞の生存率)
HPP−1の有効性および特異性を、Gotoら、Lab.Invest.69:508〜517(1993)に記載されたように新脈管形成の組織培養モデルにおいて評価した。新脈管形成の間、毛細管内皮細胞は、増殖し、そして移動する(Risau、Nature 386:671〜674(1997);Zetter、Ann.Rev.Med.49:407〜424(1998))。索状配列形成は、移動の形態であり、それはインビトロで、通常の「丸石」から、図3に示される細胞の鎖または索状配列への内皮細胞の形態における変化によって表される(Gotoら、前出、1993もまた参照のこと)。
【0163】
HPP−1の効果を、増殖および索状配列形成の脈管形成条件下で正常ヒト皮膚微小血管内皮細胞(DMEC)についてアッセイした。加えて、HPP−1の効果を、(以下に記載されるように)100%のコンフルーエンシーで維持された単層の血管形成抑制性条件下でアッセイした。
【0164】
簡単には、皮膚微小血管内皮細胞(DMEC)を、CADMEC Growth MediaTM(Cell Applications,Inc.,San Deigo,CA)において、増殖させた。次いで、皮膚微小血管内皮細胞を、3通りの実験条件下:増殖(500ng/mlのヒト組換え血管内皮増殖因子(VEGF;Pharmingen)を補充した増殖培地中で、30%のコンフルーエンシー);非増殖(単層を維持するために処方された培地中で、100%のコンフルーエンシー);ならびに索状配列形成(索状配列形成を誘導するために処方された培地中で(誘導のために必要とされる)60%のコンフルーエンシー)で培養した。KS1767およびMDA−MB−435細胞を、Arapら、前出、1998;Hernierら、前出、1994に記載されるように培養した。
【0165】
生存率パーセントおよびLC50(表1)を、アポトーシスの形態によって、Ellerbyら、J.Neurosci.17:6165〜6178(1997)に記載されるように決定した。生存率パーセントアッセイのために、皮膚微小血管内皮細胞を、60μM HPP−1、またはコントロールペプチドD(KLAKLAK)2で処理した。示された時点で、細胞培養培地を、接着性細胞から吸引し、そしてこれらの細胞を一度、37℃のPBSで穏やかに洗浄した。引き続いて、PBS中の20倍希釈の色素混合液(100μg/mlのアクリジンオレンジおよび100μg/mlのエチジウムブロマイド)を穏やかに、ピペットで細胞に移し、それらを倒立顕微鏡(Nikon TE 300)で観察した。クロマチンの辺縁化(margination)および凝集を示す核および/または核の断片化(初期/中期アポトーシス)を有する細胞、あるいは損失された形質膜(後期アポトーシス)を有する細胞を、生存可能でないとしてスコアした。各実験における所定の時点で、少なくとも500の細胞をスコアした。生存率パーセントを、未処理のコントロールと比較して計算した。単層、増殖(60%のコンフルーエンシー)および索状配列形成についてのLC50を72時間でスコアした。
【0166】
図3に示すように、60mM HPP−1を用いた皮膚微小血管内皮細胞の処理は、増殖または索状配列形成の条件下で、未処理のコントロールと比較して、時間についての生存率パーセントにおける減少を生じた(それぞれ、図3cおよび3dを参照のこと)。対照的に、ネガティブコントロールとしての非標的化ペプチドD(KLAKLAK)2を用いる処理は、生存率におけるわずかな減少を生じた。さらに、HPP−1で処理された増殖性または移動性皮膚微小血管内皮細胞についてのLC50は、100%のコンフルーエンシーの単層中に維持された血管形成抑制性の皮膚微小血管内皮細胞についてのLC50よりも小さい規模のオーダーである(表1)。これらの結果は、血管形成抑制条件と比較した脈管形成条件下でのHPP−1による優先的な殺傷を実証する。
【0167】
種々のコントロールをまた、皮膚微小血管内皮細胞の生存率への効果についてアッセイした。脈管形成条件下での非標的化コントロールD(KLAKLAK)2についてのLC50は、血管形成抑制条件下でのHPP−1についてのLC50と同様であった。さらに非結合D(KLAKLAK)2およびCNGRC(配列番号8)の混合物、非標的化形態のCARAC−GG−D(KLAKLAK)2、ならびにスクランブル形態のCGRNC−GG−D(KLAKLAK)2は、D(KLAKLAL)2に対する同様の結果を生じた。さらに、代替的なプロトタイプACDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2は、CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2についてのプロトタイプと同様の結果を生じた(HPP−1;データ示さず)。
【0168】
(HPP−1で処理された皮膚微小血管内皮細胞のミトコンドリアの形態)
皮膚微小血管内皮細胞のミトコンドリアの形態を、60μMのHPP−1、ACDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2または非標的化D(KLAKLAK)2での処理後の増殖細胞において、以下のように評価した。皮膚微小血管内皮細胞を、ペプチドでの24時間および72時間の処理後、30分間37℃での100nMのミトコンドリア染色MitoTracker RedTM(Molecular Probes,Inc.,Eugene,OR)および500nMの核染色DAPI(Molecular Probes,Inc.)を用いるインキュベーションによって染色した。引き続いて、ミトコンドリアを、三重波長フィルターセットを使用する倒立型顕微鏡(Nikon)の下で、蛍光顕微鏡法(×100)を使用して可視化した。
【0169】
D(KLAKLAK)2で、24時間処理した皮膚微小血管内皮細胞のミトコンドリアは、形態学的に正常なままであったが、各々のプロトタイプで処理されたミトコンドリアは、変更されたミトコンドリアの形態を示した。特に、変更されたミトコンドリアの形態は、細胞が集合する(round up)前にCNGRC−GG−D(KLAKLAK)2またはACDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2で処理された約80%の細胞において明らかであった。最後に、CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2(HPP−1)で処理された皮膚微小血管内皮細胞は、72時間で観察されるような核の凝集および断片化を含むアポトーシスの古典的な形態的な指標を示した(Ellerbyら、前出、1997)。アポトーシス細胞死を、カスパーゼ活性についてのアッセイによって確認した(図3b;Ellerbyら、前出、1997を参照のこと)。
【0170】
(HPP−1で処理されたKS1767細胞およびMDA−MB−435細胞の生存率)
キメラHPP−1ペプチドは、(カポージ肉腫由来である)KS1767細胞、ならびに増殖性または移動性の皮膚微小血管内皮細胞に対して毒性である(表1;Hernierら、AIDS 8:575〜581(1994))。対照的に、HPP−1は、MDA−MB−435ヒト乳癌細胞に対して、約1桁の大きさで毒性が低かった(表1)。KS1767細胞(内皮細胞起源の細胞である)は、脈管形成内皮細胞に類似し、そしてCNGRCペプチド(配列番号8)を結合するが、MDA−MB−435細胞は、結合しない(Samaniegoら、Amer.J.Path.152:1433〜1443(1998);Arapら、前出、1998)。
【0171】
つまり、これらの結果は、HPP−1が、皮膚微小血管内皮細胞におけるミトコンドリアの腫脹およびアポトーシスを誘導することを実証する。
【0172】
(実施例III)
(ホーミングプロアポトーシスペプチドのインビボ活性)
この実施例は、CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2(HPP−1)が、腫瘍の増殖を阻害し、そして腫瘍保有動物の生存を延ばすことを実証する。この実施例は、CDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2が網膜新生血管形成を阻害することを、さらに実証する。
【0173】
(A.CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2(HPP−1)のインビボ活性)
HPP−1の活性を、ヒトMDA−MD−435乳癌異種移植片を有するヌードマウスを使用して、以下のようにインビボにて試験した。簡単には、MDA−MB−435およびC8161由来の腫瘍異種移植片を、Arapら、前出、1998に記載されるように、2ヶ月齢の雌ヌードマウスにおいて確立した(Jackson Labs;Bar Harbor,ME)。マウスを、蒸留水中で調製された2,2,2−トリブロモエタノール(Aldrich;Milwaukee,WI)および2−メチル−ブタノール(Aldrich)の混合物で麻酔した後、ペプチドを尾静脈を通じて静脈内に、250μg/week/マウスの用量で、200μの容量でゆっくり与えて投与した。腫瘍の3次元の測定を、麻酔下でカリパスによって行い、そして腫瘍体積を算出するために使用した(Pasqualiniら、前出、1996)。
【0174】
図4aに示されるように、腫瘍体積は、コントロール(非標的化CARAC−GG−D(KLAKLAK)2ならびに非結合D(KLAKLAK)2およびCNGRC(配列番号8)ペプチドの混合物)においてよりも、平均して1桁の大きさでより小さかった。さらに図4bに示されるように、HPP−1処置群における生存は、コントロール群における生存よりも長かった。HPP−1処置マウスのいくつかは、数ヶ月、コントロールマウスよりも長生きした。それは、原発性腫瘍増殖および転移の両方が、HPP−1によって阻害されたことを示した。組織病理学的分析は、腫瘍構造の明白な破壊および腫瘍における広範な細胞死を明らかにし、この細胞死がほぼ等しくアポトーシス性および壊死性であったことを実証した。同様の実験において、HPP−1はまた、ヒト黒色腫細胞株C8161に由来する腫瘍に対して有効であった(Welchら、Int.J.Cancer 47:227〜237(1991))。
【0175】
これらの結果は、ホーミングプロアポトーシス結合体(例えば、CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2(HPP−1))が、インビボでの強力な抗腫瘍活性を有することを示した。
【0176】
(B.CDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2のインビボ活性)
網膜新脈管形成は、新生マウスにおいて酸素誘導性であった。引き続いて、マウスを、単一の13μgの静脈内用量(1群あたり1動物)のビヒクル;CDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2;または非結合体化CDCRGDCFC(配列番号1)およびD(KLAKLAK)2のコントロール混合物で処置した。4日後、網膜新血管数を、各々の処置において決定した。
【0177】
図5に示される結果は、ビヒクル単独で処置されたマウス(カラム1;黒棒)または非標的化プロアポトーシスペプチドで処置されたマウス(カラム3;灰色棒)と比較して、ホーミングプロアポトーシスペプチドCDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2で処置されたマウス(カラム2;綾目模様の棒)において、網膜新血管の数が減少したことを実証した。特に、ホーミングプロアポトーシスペプチドCDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2で処置されたマウスにおける脈管形成応答は、コントロールマウスにおいて観察された応答の30〜40%のみであった。
【0178】
これらの結果は、ホーミングプロアポトーシスペプチド(例えば、CDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2)が、脈管形成応答(例えば、網膜新生血管形成)を選択的に阻害し得ることを示す。
【0179】
(実施例IV)
(インビボパンニング)
この実施例は、ファージライブラリーを調製するための方法および腫瘍ホーミングペプチドを発現するファージを同定するために、インビボパンニングを使用してそのライブラリーをスクリーニングするための方法を実証する。
【0180】
(A.ファージライブラリーの調製)
ファージディスプレイライブラリーを、Koivunenら(前出、1995;Koivunenら、前出、1994b)によって記載されるようにフューズ5(fuse 5)ベクターを使用して構築した。CX5C(配列番号9)、CX6C(配列番号10)、CX7C(配列番号11)、CX3CX3CX3C(配列番号12)と名付けたペプチドをコードするライブラリーを調製した。ここで「C」は、システインを示し、「XN」は、所定数の個別に選択されたアミノ酸を示す。ペプチド中に少なくとも2つのシステイン残基が存在する場合、これらのライブラリーは、環状ペプチドを表し得る。加えて、定義されたシステイン残基を含まないライブラリーもまた、構築した。このようなライブラリーは、主に、直鎖状ペプチドの産生を生じるが、環状ペプチドもまた、ランダムな可能性に起因して生じ得る。
【0181】
配列CXXXNGRXX(配列番号13)に基づく偏りのあるライブラリーもまた、構築した。さらに、いくつかの場合、CXXXNGRXX(配列番号13)のライブラリーは、NGR配列に隣接するシステイン残基(すなわち、CXXCNGRCX)の取り込みにおいて、さらに偏らせた(配列番号14;表2を参照のこと)。
【0182】
定義されたシステイン残基を含むライブラリーを、「C」は、コドンTGTによってコードされ、そして「XN」は、NNKによってコードさるように構築されたオリゴヌクレオチドを使用して生成した。ここで「N」は、等しいモル濃度のA、C、GおよびTの混合物であり、そしてここで「K」は、等しいモル濃度のGおよびTの混合物である。従って、CX5C(配列番号9)によって表されるペプチドは、配列TGT(NNK)5TGT(配列番号14)を有するオリゴヌクレオチドによって表され得る。オリゴヌクレオチドを、3サイクルのPCR増幅によって二重鎖にし、精製し、そしてフューズ5ベクターにおいて遺伝子IIIタンパク質をコードする核酸に連結した。その結果、発現の際に、このペプチドは融合タンパク質として、遺伝子IIIタンパク質のN末端に存在する。
【0183】
このベクターをエレクトロポレーションによってMC1061細胞にトランスフェクトした。細菌を、24時間、20μg/mlのテトラサイクリンの存在下で培養し、次いで、ファージを上清からポリエチレングリコールを用いた二度の沈澱により収集した。各々のライブラリーは、約5×109〜5×1014の形質導入単位(TU;個々の組換えファージ)を含んだ。
【0184】
(B.ファージのインビボパンニング)
腫瘍を、以下の実施例VおよびVIに記載されるようにマウスに移植した。1×109〜1×1014のTUを含むファージライブラリーの混合物を、200μlのDMEMに希釈し、そして麻酔(AVERTIN(0.015ml/g);米国特許第5,622,699号;PasqualiniおよびRuoslahti、前出、1996を参照のこと)されたマウスの尾静脈に注入した。1〜4分後、マウスを液体窒素中で急冷した。ファージを回収するために、死体を、室温で1時間、部分的に解凍し、腫瘍およびコントロール器官を収集し、そして重量を測定し、次いで1mlのDMEM−PI(プロテアーゼインヒビター(PI);フェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF;1mM)、アプロチニン(20μg/ml)、ロイペプチン(1μg/ml)を含むDMEM)中に置いた。
【0185】
あるいは、マウスへのライブラリーの導入に続いて、ライブラリーの循環を、心臓を通じた灌流によって終結する。簡単には、マウスを、AVERTINで麻酔し、次いで心臓を露出させ、そして0.5mmのカニューレを介して10ccのシリンジに連結した0.4mmの針を左心室に挿入した。切開術を右心房に施し、そして5〜10mlのDMEMをゆっくり投与し、体全体に約5〜10分間、灌流させた。灌流の有効性を、組織学的分析によって直接モニターした。
【0186】
腫瘍および器官サンプルを、1%のウシ血清アルブミン(BSA)を含む氷冷DMEM−PIを用いて3回洗浄し、次いで、1mlのK91−kan細菌で1時間、直接インキュベートした。0.2μg/mlのテトラサイクリンを含む10mlのNZY培地(NZY/tet)を細菌培養物に添加した。その混合物を、37℃の振とう機中で、1時間インキュベートし、次いで、10μlまたは100μlのアリコートを、12.5μg/mlのテトラサイクリンを含む寒天プレート(tet/agar)にプレートした。
【0187】
腫瘍から回収されたファージを含む個々のコロニーを、16時間、5mlのNZY/tet中で増殖させた。個々のコロニーから得られた細菌培養物をプールし、そしてファージを精製し、そして、2回目のインビボパンニングのために上記のようにマウスに再注入した。通常、3回目のパンニングをまた行った。ファージDNAを最終回のインビボパンニングから得られた個々の細菌コロニーから精製し、そして選択されたファージによって発現されるペプチドをコードするDNA配列を決定した(Koivunenら、前出、1994bを参照のこと)。
【0188】
(実施例V)
(乳房腫瘍に対するインビボパンニングによる腫瘍ホーミングペプチドの同定)
この実施例は、インビボパンニングが、種々の腫瘍にホーミングする腫瘍ホーミングペプチドを同定するために乳房腫瘍に対して行われ得ることを実証する。
【0189】
ヒト435乳癌細胞(Priceら、Cancer Res.50:717〜721(1990))をヌードマウスの乳房の脂肪パッドに接種した。腫瘍が直径約1cmに達した場合、ファージ標的化実験(この実験において、特異的なペプチドを発現するファージが腫瘍保有マウスに投与された)を行うか、またはインビボパンニングを行うかのいずれかを行った。
【0190】
乳房腫瘍保有マウスに、CX3CX3CX3C(配列番号12)ペプチドのライブラリーを発現する1×109のファージを注入した。ここでX3は、独立して選択されるランダムなアミノ酸の3つの群を示す。ファージを4分間、循環させ、次いで、マウスを麻酔し、麻酔中に液体窒素中で急冷し、そして腫瘍を取り出した。ファージを、腫瘍から単離し、そしてさらに2回のインビボパンニングに供した。
【0191】
【表2】
第3回目のパンニングに続いて、ファージを定量し、そしてクローン化されたファージによって発現されたペプチド配列を決定した。クローン化されたファージは、種々の異なるペプチドを発現し、これには表2に示すペプチドを含む。同様に、CX7C(配列番号11)およびCX5C(配列番号9)ライブラリーをスクリーニングし、そして乳房腫瘍ホーミングペプチドを同定した(表2)。これらの結果は、乳房腫瘍に対するインビボパンニングが、腫瘍ホーミング分子を同定し得ることを示す。
【0192】
(実施例VI)
(RGD(an an RGD)ペプチドを発現するファージの腫瘍に対するインビボターゲッティング)
ヒト435乳房癌腫細胞を、ヌードマウスの乳房脂肪パッドに接種した。腫瘍が、直径約1cmに達したときに、特定のRGD含有ペプチドを発現するファージを腫瘍保有マウスに投与した。以下に議論する結果と同様の結果がまた、ヒト黒色腫C8161細胞の移植によってかまたはマウスB16黒色腫細胞の移植によって形成された腫瘍を保有するヌードマウスで得られた。
【0193】
RGD含有ペプチド(CDCRGDCFC(配列番号1;Koivunenら、前出、1995を参照のこと))を発現する1×109のファージまたはコントロール(挿入物なし)ファージを、マウスに静脈内(iv)に注射し、そして4分間循環させた。次いで、マウスをスナップ凍結(snap frozen)するか、または麻酔下で心臓を介して灌流し、そして腫瘍、脳、および腎臓を含む種々の器官を除去し、そして器官に存在するファージを定量した(米国特許第5,622,699号;PasqualiniおよびRuoslahti、前出、1996を参照のこと)。
【0194】
脳および腎臓と比較した場合、(約2〜3倍の)CDCRGDCFC(配列番号1)ペプチドを発現するファージが、乳房腫瘍で検出され、これは、CDCRGDCFC(配列番号1;RGDファージ)ペプチドが、乳房腫瘍へのファージの選択的なホーミングを生じることを示す。並行する研究において、種々に多様なペプチドを発現する選択されていないファージを、腫瘍保有マウスに注射し、そして種々の器官をファージの存在について試験した。この腫瘍と比較した場合、腎臓にかなり多くのファージが存在し、そしてより少ない程度で脳に存在した。従って、選択されていないファージよりも80倍のRGDを発現するファージが、この腫瘍に集中していた。これらの結果より、RGD含有ペプチドを発現するファージは、おそらく腫瘍において形成する血管上のαVβ3インテグリンの発現に起因して、腫瘍にホーミングすることが示される。
【0195】
乳房腫瘍ホーミングペプチドの特異性は、競合実験によって証明され、この実験において、500μgの遊離ペプチド(ACDCRGDCFCG(配列番号16);Pasqualiniら、前出、1997を参照のこと)と、腫瘍ホーミングペプチドを発現するファージとの同時注入は、腫瘍におけるファージの量を約10倍減少したが、不活性なコントロールペプチド(GRGESP(配列番号17)との同時の注射は、本質的に影響を与えなかった。これらの結果より、脈管形成の脈管構造上に発現されたインテグリンに結合し得るペプチドを提示するファージが、インビボで、器官または組織(例えば、そのような脈管構造を含む腫瘍)に選択的にホーミングし得ることが証明される。
【0196】
(実施例VII)
(腫瘍ホーミングペプチドの免疫組織学的分析)
本実施例は、免疫組織学的試験による、腫瘍ホーミング分子の局在を同定する方法を提供する。
【0197】
腫瘍ホーミングペプチドを発現するファージの局在を、腫瘍保有マウスへの腫瘍ホーミングペプチドを発現するファージ「ペプチド−ファージ」の投与の5分後または24時間後のいずれかで得られた組織学的切片の免疫化学的方法によって同定した。ペプチド−ファージの投与の5分後に得られたサンプルについては、マウスをDMEMを用いて灌流し、そして腫瘍を含む種々の器官を取り出し、そしてブワン溶液中で固定した。24時間目に得られたサンプルについては、循環中にペプチド−ファージが残存せず、従って、灌流が不要であった。組織学的切片を調製し、そして抗M13(ファージ)抗体と反応させた(Pharmacia Biotech;米国特許第5,622,699号;PasqualiniおよびRuoslahti、前出、1996を参照のこと)。結合抗M13抗体の可視化を、製造者の指示書に従って、ペルオキシダーゼ結合体化2次抗体(Sigma;St.Louis MO)を用いて実施した。
【0198】
実施例VIに議論するように、腫瘍ホーミングペプチドを発現するファージ(CDCRGDCFC(配列番号1;「RGDファージ」)を、乳房腫瘍を保有するマウスに静脈内投与した。さらに、RGDファージを、マウス黒色腫またはヒトカポージ肉腫を保有するマウスに投与した。ファージの循環を終了し、そしてマウスを上記のように屠殺し、そして腫瘍のサンプルおよび腫瘍、脳、腎臓、肺および肝臓に隣接する皮膚のサンプルを収集した。ファージに対する免疫組織化学的染色は、乳房腫瘍ならびに黒色腫およびカポージ肉腫に存在する血管におけるRGDファージの蓄積を示したが、コントロール器官において染色はほとんどもしくは全く観察されなかった。
【0199】
同様の実験が、MDA−MB−435乳房癌腫によって形成された腫瘍に対するインビボパンニングによって同定された、腫瘍ホーミングペプチドを発現するファージ(CNGRCVSGCAGRC(配列番号3;「NGRファージ」))を用いて実施された。これらの実験において、NGRファージまたはペプチドを発現しないコントロールファージを、MDA−MB−435乳房癌腫またはヒトSLKカポージ肉腫異種移植片によって形成された腫瘍を保有するマウスに投与され、次いでマウスを上記のように屠殺し、そして腫瘍ならびにコントロール器官(脳、リンパ節、腎臓、膵臓、子宮、乳房脂肪パッド、肺、腸、皮膚、骨格筋、心臓ならびに腎臓の腎杯、膀胱および尿管の上皮を含む)を回収した。組織学的サンプルを調製し、上記のように免疫染色によって試験した。
【0200】
NGRファージの投与の4分後に屠殺したマウスから得られたサンプルにおいて、乳房腫瘍およびカポージ肉腫の両方の脈管構造の免疫染色が観察された。挿入物のないコントロールファージが投与されたマウスにおけるこれらの腫瘍の内皮において、染色は、非常に少しかまたは全く観察されなかった。NRGファージの投与の24時間後に屠殺したマウスから得られたサンプルにおいて、腫瘍サンプルの染色は、脈管の外側で乳房腫瘍実質およびカポージ肉腫実質に広がっているようであった。さらに、挿入物のないコントロールファージが投与されたマウスにおけるこれらの腫瘍から調製されたサンプルにおいて、染色は、少しかまたは全く観察されなかった。さらに、NGRファージが投与されたマウスにおける種々のコントロール器官において、染色は、少しかまたは全く観察されなかった。
【0201】
他の実験において、同様の結果が、NGR腫瘍ホーミングペプチド(NGRAHA(配列番号6)もしくはCVLNGRMEC(配列番号7))を発現するファージの腫瘍保有マウスへの投与の後に得られた。また、以下に議論するように、同様の結果が、黒色腫のインビボパンニングによって同定されたGSL腫瘍ホーミングペプチド(CLSGSLSC(配列番号4))を発現するファージを用いて得られた(以下の実施例VIIIを参照のこと)。
【0202】
これらの結果は、腫瘍ホーミングペプチドが選択的に腫瘍、特に、腫瘍中の脈管構造にホーミングし、そして、例えば、乳房癌腫に対するインビボパンニングによって同定された腫瘍ホーミングペプチドもまた、カポージ肉腫および黒色腫を含む他の腫瘍に選択的にホーミングすることを証明する。さらに、これらの結果は、免疫組織化学的分析が、腫瘍ホーミングペプチドを発現するファージの局在を同定するための好都合なアッセイを提供することを証明する。
【0203】
(実施例VIII)
(黒色腫腫瘍に対するインビボパンニングによる、腫瘍ホーミングペプチドの同定)
インビボパンニング方法の、腫瘍ホーミングペプチドを同定するための一般的な適用性を、移植されたマウス黒色腫腫瘍に対してインビボパンニングを実施することによって試験した。
【0204】
黒色腫を保有するマウスを、高度に血管化された腫瘍を産生するB16B15bマウス黒色腫細胞の移植によって作製した。B16B15bマウス黒色腫細胞を、ヌードマウス(2ヶ月齢)の乳房脂肪パッドに皮下注射し、そして腫瘍を直径が約1cmになるまで、増殖させた。インビボパンニングを上記のように実施した。CX5C(配列番号9)、CX6C(配列番号10)またはCX7C(配列番号11)ライブラリーを発現する、約1×1012形質導入単位のファージを、静脈内注射し、そして4分間循環させた。次いで、マウスを液体窒素中でスナップ凍結するか、または麻酔下で心臓を介して灌流し、腫瘍組織および脳(コントロール器官)を除去し、そしてファージを上記のように単離した。3回のインビトロパンニングを実施した。
【0205】
【表3】
アミノ酸配列を、B16B15b腫瘍から回収された89個のクローン化されたファージにおける挿入物について決定した。これらのファージによって発現されるペプチドは、2つの優性な配列、CLSGSLSC(配列番号4;配列決定されたクローンの52%)およびWGTGLC(配列番号18;クローンの25%;表3を参照のこと)によって表される。1つの選択されたペプチドを発現するファージの再感染は、脳と比較して、腫瘍にホーミングするファージの約3倍の富化を生じた。
【0206】
マウス器官において腫瘍ホーミングペプチドを発現するファージの局在はまた、腫瘍および種々の他の組織の免疫組織化学的染色によって試験された(実施例VIIを参照のこと)。これらの実験において、コントロール(挿入物なし)ファージまたは腫瘍ホーミングペプチド(CLSGSLSC(配列番号4)を発現するファージの1×109pfuを、腫瘍保有マウスに静脈内注射し、そして4分間循環させた。
【0207】
免疫染色は、CLSGSLSC(配列番号4)腫瘍ホーミングペプチドを発現するファージを用いて注射されたマウスから得られた黒色腫において明確であった。黒色腫の染色は、一般的に、腫瘍内の血管へ局在するが、いくつかの染色がまた、腫瘍実質に存在した。本質的に、挿入物のないコントロールファージで注射されたマウスから得られた腫瘍において、またはいずれかのファージで注射されたマウスから得られた皮膚のサンプルもしくは腎臓のサンプルにおいて、染色は観察されなかった。しかし、免疫染色が肝臓洞様毛細血管および脾臓において検出され、これは、ファージが、RESを含む器官に非特異的に捕捉される得ることを示す。
【0208】
同様の方法を用いて、インビボパンニングをSLKヒトカポージ肉腫を保有するマウスにおいて実施した。腫瘍ホーミングペプチドが同定された。そしてこれを表4に開示する。ともに、これらの結果は、インビボパンニング方法が、一般的に、腫瘍ホーミングペプチドを発現するファージを同定するためにファージライブラリーをスクリーニングするための方法に適用可能であることを証明する。
【0209】
【表4】
(実施例IX)
(前立腺ホーミングペプチドおよびD(KLAKLAK)2から構成されるキメラペプチドの特徴付け)
本実施例は、キメラペプチドSMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2が、全身投与後に前立腺組織において選択的にアポトーシスを誘導し得、そして実験的な前立腺癌を有する動物の生存を延長させ得ることを証明する。
【0210】
(A.前立腺ホーミングペプチドの単離)
X7ライブラリーを、マウスに注射し、そしてWO99/46284に記載のように、脳と比較した場合に前立腺において優先的に見出された配列を単離した。前立腺ホーミングペプチドSMSIARL(配列番号207)およびVSFLEYR(配列番号222)は、脳と比較した場合、前立腺において、それぞれ、34倍および17倍の豊富さを示した。インビボパンニングによって同定されたさらなる前立腺ホーミング配列を、表5に示す。
【0211】
【表5】
(B.前立腺ホーミングペプチドビオチン結合体の前立腺ホーミング)
ヘプタペプチドファージライブラリーのインビボスクリーニングを用いて、種々の他の組織よりも、前立腺で35倍濃縮している前立腺ホーミングペプチドが同定された。このファージは、ペプチドSMSIARL(配列番号207)を提示する。合成SMSIARLペプチド(配列番号207)の同時注入は、SMSIARL(配列番号207)保有ファージの前立腺選択的ホーミングを阻害した。さらに、組織切片の抗体染色により、ファージをマウスに静脈内注射した後に、SMSIARL(配列番号207)ファージは、前立腺組織に局在するが、他の組織には局在しないことが示された。コントロールファージはまた、前立腺に蓄積しなかった。SMSIARL(配列番号207)ファージはまた、ラット前立腺組織にホーミングする。
【0212】
図6に示すように、ビオチン結合体化SMSIARL(配列番号207)合成ペプチドが、前立腺にホーミングすることが示された。簡単に言うと、1mgのビオチン結合体化前立腺ホーミングペプチドSMSIARL(配列番号207)またはビオチン標識コントロールペプチドCARAC(配列番号208)を、マウスに静脈内注射し、このマウスを10分後に屠殺した。前立腺および他の組織をアビジン−ペルオキシダーゼを用いた染色のために収集し、切り出し、そして加工した。ビオチン染色は、結合体の全身注射の10分後すぐに、脈管構造よりも腺の管腔において主に見出された。これらの結果より、SMSIARL(配列番号207)ペプチドならびにSMSIARLペプチドに結合する他の部分(例えば、ファージまたはビオチン)が、前立腺上皮に移動し、次いで腺の管腔へ移動することが示される。
【0213】
(C.前立腺選択的アポトーシスの誘導)
SMSIARLペプチド(配列番号207)が、プロアポトーシスペプチド(pro−apoptotic peptide)(D(KLAKLAK)2)を前立腺に送達する能力を分析した。簡単に言うと、SMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2キメラペプチドまたはコントロール物質を、単回用量の250μgペプチド/マウスで投与し、そして24時間後に得た組織でTUNEL染色を実施した。図7に示すように、SMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2キメラで注射したマウスは、それらの前立腺、そして特に、前立腺の腺の毛細管内皮および基底筋上皮細胞におけるアポトーシスが増加したことを示した。精巣、腎臓および脳のような他の組織における増加したアポトーシスの証拠は存在しなかった。SMSIARL(配列番号207)およびD(KLAKLAK)2の250μgの非結合体化の混合物で処理されたネガティブコントロールマウスにおいて、アポトーシスは、観察されなかった。
【0214】
(D.TRAMPマウスのSMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2処理)
TRAMPマウスは、Gingrichら(前出、1996)に記載されるような外来遺伝子の影響下で、前立腺癌を発生する。SMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2キメラペプチドをTRAMPマウスにおける癌の発生を抑制する能力についてアッセイした。処置を12週齢のマウス(1群当たり10匹)で開始し、マウスは、SMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2ペプチドまたはコントロールペプチドを、250μg/用量で隔週、全量が10用量で受けた。可視の腫瘍を有さない4匹のマウスを、注射後に数分以内に死んだ後、SMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2群から排除した。図8に示すように、SMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2処置されたマウスは、コントロール(これは、ビヒクルである、D(KLAKLAK)2ペプチド単独、またはSMSIARLペプチド(配列番号207)単独で処置されたマウスよりも長く生存した。従って、数ヶ月の期間にわたる標的化されたプロアポトーシスSMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2化合物を用いたTRAMPマウスの処置は、コントロールマウスと比較して、処置されたマウスの生存に明確な増加を生じた。
【0215】
(E.前立腺ホーミングSMSIARL(配列番号207)ファージは、ヒト前立腺脈管構造に結合する)
正常組織および癌性組織の両方を含むヒト前立腺組織切片を、109TU SMSIARLファージ(配列番号207)で覆い、そしてファージの結合を、抗ファージ抗体およびペルオキシダーゼ染色で検出した。図9に示すように、SMSIARL(配列番号207)ファージは、ヒト前立腺血管の内皮に結合する(パネルaおよびbを参照のこと)。ペプチド挿入物を含まないファージでは、内皮の染色は見られなかった(パネルc)。さらに、可溶性SMSIARLペプチド(配列番号207)が、覆いに0.3mg/mlで含まれる場合、SMSIARL(配列番号207)ファージ染色が阻害された。図9に示される結果により、少なくともいくつかの腫瘍が、ホーミングペプチドのレセプターを保有することが示される。さらに、ペプチド(配列番号207)は、前立腺内の癌の脈管に結合し得るが、一方、いくつかの他のヒト組織における血管は、SMSIARL(配列番号207)ファージによって染色されなかった。
【0216】
上記に提供される全ての学術論文、参考文献、および特許の引用は、括弧内またはそうでなければ、以前に述べられていようと述べられてなかろうと、本明細書中に参考として援用される。
【0217】
本発明は、上記の実施例を参照して記載してきたが、種々の改変が、本発明の精神から逸脱することなくなされ得ることは理解されるべきである。従って、本発明は、上記の特許請求の範囲によってのみ、限定される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2(「HPP−1」と呼ばれる)のコンピューターで作製したモデルおよびアミノ酸配列を示す。
上のパネル:CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2(HPP−1)は、結合ドメインによって結合した、ホーミングドメインおよび膜破壊ドメインから構成される。
下のパネル:上のパネルに示される構造に対応する、「HPP−1」のアミノ酸配列。
【図2】 図2は、D(KLAKLAK)2の存在下でのミトコンドリアの腫脹およびミトコンドリア依存性アポトーシスを示す。
a.D(KLAKLAK)2またはCa2+(陽性コントロール)の存在下での、ミトコンドリア腫脹曲線(光学吸光スペクトル)が示される。
b.ミトコンドリアの存在下または不在下での、D(KLAKLAK)2またはDLSLARLATARLAI(配列番号204)の存在下での、32kDaプロ形態ならびに8kDaおよび20kDaのプロセス形態を示す、カスパーゼ3切断のイムノブロット。代表的な実験が示される。結果は、3つの独立した実験にて再現された。
【図3A】 図3は、CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2(HPP−1)で処理された、皮膚微小血管内皮細胞における、ミトコンドリアの腫脹およびアポトーシスを示す。
a.皮膚の微小血管内皮細胞索状配列形成、棒目盛=250μm。
【図3B】 図3は、CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2(HPP−1)で処理された、皮膚微小血管内皮細胞における、ミトコンドリアの腫脹およびアポトーシスを示す。
b.CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2(HPP−1)で処理された、増殖中の皮膚微小血管内皮細胞における、DEVD−pNA加水分解(カスパーゼ活性化)。
【図3C】 図3は、CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2(HPP−1)で処理された、皮膚微小血管内皮細胞における、ミトコンドリアの腫脹およびアポトーシスを示す。
c.HPP−1で処理された増殖中の皮膚微小血管内皮細胞の経時的生存率(黒棒)またはコントロールペプチドD(KLAKLAK)2(灰色棒)で処理された増殖中の皮膚微小血管内皮細胞の経時的生存率。(t検定、P<0.05)。
【図3D】 図3は、CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2(HPP−1)で処理された、皮膚微小血管内皮細胞における、ミトコンドリアの腫脹およびアポトーシスを示す。
d.HPP−1で処理された索状配列形成皮膚微小血管内皮細胞の経時的生存率(黒棒)またはコントロールペプチドD(KLAKLAK)2(灰色棒)で処理された増殖中の皮膚微小血管内皮細胞の経時的生存率。(t検定、P<0.05)。
【図3E】 図3は、CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2(HPP−1)で処理された、皮膚微小血管内皮細胞における、ミトコンドリアの腫脹およびアポトーシスを示す。
【図3F】 図3は、CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2(HPP−1)で処理された、皮膚微小血管内皮細胞における、ミトコンドリアの腫脹およびアポトーシスを示す。
【図3G】 図3は、CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2(HPP−1)で処理された、皮膚微小血管内皮細胞における、ミトコンドリアの腫脹およびアポトーシスを示す。
【図4】 図4は、ヒトMDA−MB−435由来の乳癌腫異種移植片を保有するヌードマウスのHPP−1処理の効果を示す。
a.コントロールCARAC−GG−D(KLAKLAK)2処理腫瘍と比較した場合の、HPP−1処理腫瘍の腫瘍体積。1日目と50日目との間での腫瘍体積の差異が示される(t検定、P=0.027)。
b.HPP−1で処理されたヒトMDA−MB−435由来の乳癌腫異種移植片を保有するヌードマウスの生存またはコントロールペプチド(D(KLAKLAK)2とCNGRC(配列番号8)の混合物)で処理されたヒトMDA−MB−435由来の乳癌腫異種移植片を保有するヌードマウスの生存を示す、Kaplan−Meier生存プロット。各グループは、13匹の動物から構成された。(Log−Rank検定、P<0.05)。
【図5】 図5は、新生児マウスにおける網膜の酸素誘導性新生血管形成に対するCDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2の効果を示す。網膜の新生血管数が、ビヒクルでの処理(黒棒);CDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2での処理(縞棒);および結合していないCDCRGDCFC(配列番号1)とD(KLAKLAK)2のコントロール混合物での処理(綾目模様の棒)について、示される。
【図6】 図6は、前立腺組織における静脈注射された前立腺ホーミングペプチドのビオチン結合体の蓄積を示す。a.ビオチン標識前立腺ホーミングペプチドSMSIARL(配列番号207)を注射されたマウス由来の前立腺切片のアビジン−ペルオキシダーゼ染色。b.ビオチン標識コントロールペプチドCARAC(配列番号208)を注射されたマウス由来の前立腺切片のアビジン−ペルオキシダーゼ染色。
【図7】 図7は、正常なマウス前立腺においてSMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2で誘導されたアポトーシスを示す。a.SMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2キメラペプチドで処理されたマウス由来の前立腺組織のTUNEL染色。b.aにおけるTUNEL染色と類似する、より高倍率の視野。c.結合していないSMSIARL(配列番号207)とD(KLAKLAK)2の混合物250μgで処理されたネガティブコントロールマウスのTUNEL染色。
【図8】 図8は、SMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2、ビヒクルのみ、D(KLAKLAK)2ペプチドのみ、またはSMSIARLペプチド(配列番号207)のみで処理された、TRAMPマウスの生存を示す。
【図9】 図9は、ヒト前立腺脈管構造への前立腺ホーミングSMSIARL(配列番号207)ファージの結合を示す。aおよびb.109TU SMSIARLファージ(配列番号207)を重層され、そして抗ファージ抗体を用いて検出された、正常組織および癌性組織の両方を含むヒト前立腺組織切片のペルオキシダーゼ染色。aは、概観であり(×20)、一方bは、より高い倍率(×40)にてパネルaからの詳細を示す。c.ペプチドインサートを欠くファージを用いての、パネルaにおいてと同様のペルオキシダーゼ染色。d.重層に含まれる可溶性SMSIARLペプチド(配列番号207)を用いてのaにおいてと同様のペルオキシダーゼ染色。
Claims (25)
- ホーミングプロアポトーシス結合体であって、該ホーミングプロアポトーシス結合体は、抗菌ペプチドに結合した、選択された哺乳動物細胞型または組織に選択的にホーミングする腫瘍ホーミングペプチドを含み、
該結合体は、該哺乳動物細胞型または組織によって選択的にインターナライズされ、そして該哺乳動物細胞型または組織に対して高い毒性を示し、そして
該抗菌ペプチドは、該腫瘍ホーミングペプチドに結合していない場合には、低い哺乳動物細胞毒性を有し、
該腫瘍ホーミングペプチドは、以下:
CDCRGDCFC(配列番号1)
CNGRC(配列番号8);
NGRAHA(配列番号6);および
CNGRCVSGCAGRC(配列番号3)
からなる群より選択されるペプチドであり;そして
該抗菌ペプチドは、以下:
(KLAKLAK) 2 (配列番号200);
(KLAKKLA) 2 (配列番号201);
(KAAKKAA) 2 (配列番号202);および
(KLGKKLG) 3 (配列番号203)
からなる群から選択される配列を含む、
ホーミングプロアポトーシス結合体。 - 請求項1に記載の結合体であって、脈管形成内皮細胞に対する選択的な毒性を示す、結合体。
- 請求項1に記載の結合体であって、前記抗菌ペプチドが、両親媒性αヘリックス構造を有する、結合体。
- 請求項1に記載の結合体であって、前記抗菌ペプチドが、配列D(KLAKLAK)2を含む、結合体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の結合体であって、前記腫瘍ホーミングペプチドが、以下:
CNGRC(配列番号8);
NGRAHA(配列番号6);および
CNGRCVSGCAGRC(配列番号3)
からなる群から選択されるペプチドである、結合体。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の結合体であって、前記腫瘍ホーミングペプチドが、CDCRGDCFC(配列番号1)である、結合体。
- ホーミングプロアポトーシス結合体であって、以下:
CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2および
ACDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2
からなる群から選択される配列を含む、ホーミングプロアポトーシス結合体。 - 請求項7に記載のホーミングプロアポトーシス結合体であって、以下:
CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2および
ACDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2
からなる群から選択される、ホーミングプロアポトーシス結合体。 - インビボで、抗菌ペプチドを脈管形成脈管構造を有する腫瘍に指向させるための、請求項1に記載の結合体。
- 請求項9に記載の結合体であって、前記抗菌ペプチドが、配列D(KLAKLAK)2を含む、結合体。
- 請求項10に記載の結合体であって、前記ホーミングプロアポトーシス結合体が、以下:
CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2および
ACDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2
からなる群から選択される、結合体。 - インビボで、脈管形成脈管構造を有する腫瘍に選択的毒性を誘導するための、請求項1に記載の結合体。
- 請求項12に記載の結合体であって、前記抗菌ペプチドが、配列D(KLAKLAK)2を含む、結合体。
- 請求項13に記載の結合体であって、前記ホーミングプロアポトーシス結合体が、以下:
CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2および
ACDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2
からなる群から選択される、結合体。 - 脈管形成脈管構造を有する腫瘍を有する患者を処置するための請求項1に記載の結合体であって、それにより該結合体は該腫瘍に対して選択的に毒性である、結合体。
- 請求項15に記載の結合体であって、前記抗菌ペプチドが、配列D(KLAKLAK)2を含む、結合体。
- 請求項16に記載の結合体であって、前記ホーミングプロアポトーシス結合体が、以下:
CNGRC−GG−D(KLAKLAK)2および
ACDCRGDCFC−GG−D(KLAKLAK)2
からなる群から選択される、結合体。 - キメラ前立腺ホーミングプロアポトーシスペプチドであって、該キメラ前立腺ホーミングプロアポトーシスペプチドは、抗菌ペプチドに結合した前立腺ホーミングペプチドを含み、
該キメラペプチドは、前立腺組織によって選択的にインターナライズされ、そして該前立腺組織に対して高い毒性を示し、
該抗菌ペプチドは、該前立腺ホーミングペプチドに結合していない場合には、低い哺乳動物細胞毒性を有し、
該前立腺ホーミングペプチドは、配列SMSIARL(配列番号207)を含み、そして
該抗菌ペプチドは、以下:
(KLAKLAK) 2 (配列番号200);
(KLAKKLA) 2 (配列番号201);
(KAAKKAA) 2 (配列番号202);および
(KLGKKLG) 3 (配列番号203)
からなる群から選択される配列を含む、
キメラ前立腺ホーミングプロアポトーシスペプチド。 - 請求項18に記載のキメラペプチドであって、前記抗菌ペプチドが、配列D(KLAKLAK)2を含む、キメラペプチド。
- 請求項18に記載のキメラペプチドであって、配列SMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2を含む、キメラペプチド。
- 請求項20に記載のキメラペプチドであって、配列SMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2からなる、キメラペプチド。
- 前立腺癌を処置するための、請求項18に記載のキメラペプチド。
- 請求項22に記載のキメラペプチドであって、前記抗菌ペプチドが、配列D(KLAKLAK)2を含む、キメラペプチド。
- 請求項23に記載のキメラペプチドであって、前記キメラペプチドが、配列SMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2を含む、キメラペプチド。
- 請求項24に記載のキメラペプチドであって、前記キメラペプチドが、SMSIARL−GG−D(KLAKLAK)2である、キメラペプチド。
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