JP4530254B2 - プラズモンモード光導波路 - Google Patents

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本発明は、プラズモンポラリトン伝搬のための光導波路に関し、更に詳しく述べると、薄膜導波路パターンが、広幅ストリップ構造部と、その表面に一体的に形成されている狭幅突条部からなるプラズモンモード光導波路に関するものである。この技術は、例えばナノ光回路などにおいて、その微小な構成要素(例えば金属微粒子や光変調デバイスなど)などと効率よく結合させるために、プラズモンポラリトンを集中させてビーム径を十分に狭くしたいような場合などに有用である。
従来の光閉じ込めの原理に基づく光導波路(例えば光ファイバや誘電体光導波路など)では、回折限界によりビーム径を伝送光の半波長以下にすることができない。ところが、表面プラズモンポラリトン波を利用すると、回折限界を超える半波長以下にすることができる。プラズモンポラリトンは、誘電率の実数部が負となる負誘電率材料と誘電率の実数部が正となる正誘電率材料の結合界面に形成される局在化した電磁界モード(電子の疎密波の1種)である。プラズモンを発生させるには、例えばプリズムの表面に負誘電率材料膜(例えば金属薄膜)を形成し、入射光をプリズム表面で全反射するように照射する。プリズム界面での全反射によってエバネッセント光が発生し、このエバネッセント光が表面プラズモンを励起する。発生した表面プラズモンは金属薄膜上を伝搬する。
従って、基板に負誘電率材料(例えば金属材料)からなる薄膜パターンを形成すると、それがプラズモンポラリトン伝搬のための光導波路となる。このようなプラズモンモード光導波路を構成すると、回折限界を超える半波長以下にまでビーム径を狭くすることができ、ナノ光回路の小型化や光記録再生装置の高密度化を実現できる。従来のプラズモンモード光導波路は、一般に図5に示すように、基板10上に金属材料からなる断面矩形状の薄膜導波路パターン12を形成した構造である。この種のプラズモンモード光導波路は、例えば特許文献1などに開示されている。
このようなプラズモンモード光導波路において、プラズモンポラリトンの伝搬距離を長くするには、薄膜導波路パターンの幅Wを広くする(例えば2000nm以上)必要がある。パターン幅が狭くなると、放射損失やオーム損失が増大するからである。他方、そのような広幅の薄膜導波路パターン12を伝搬するプラズモンポラリトンは、それだけビーム径が広がるため、ナノ光回路などの微小な構成要素などと効率よく結合させることが困難となる。
例えば図5の構造において、基板10の誘電率ε1 =2.103(SiO2 を想定)、薄膜導波路パターン12の誘電率ε2 =−26+1.8j(金薄膜を想定)、それらの周囲が空気により取り囲まれているとする。そして、波長800nm、TMモードの光で励起したプラズモンポラリトンが、このプラズモンモード光導波路を伝搬するとする。このときの伝搬のシミュレーション結果は次のようになる。図6は、パターン幅Wとプラズモンポラリトン光強度が1/eとなるまでの伝搬距離との関係を示している。この結果から分かるように、薄膜導波路パターンの幅Wが狭くなるに従い、伝搬距離が短くなる。
ビーム径を狭めるために、薄膜導波路パターンの幅を徐々に狭くする構造も考えられるが、そのようなテーパ構造では、プラズモンポラリトンがテーパ部分を伝搬する間に放射損失などで伝搬光の強度は大きく失われてしまう。
特開平7−120636号公報
本発明が解決しようとする課題は、薄膜導波路パターン幅と伝搬距離が相反する関係にあることから、ビーム径を狭く且つ伝搬距離を長くすることができない点である。
本発明は、正誘電率材料からなる基板の表面に負誘電率材料からなる薄膜導波路パターンを形成したプラズモンポラリトン伝搬のための光導波路において、前記薄膜導波路パターンは、広幅ストリップ構造部と、該広幅ストリップ構造部と一体的に形成されている狭幅突条部からなり、伝搬するプラズモンポラリトンが該狭幅突条部に集中するようにしたことを特徴とするプラズモンモード光導波路である。


狭幅突条部は、例えば伝搬方向に直交する断面が三角形状もしくは台形状などであってよい。狭幅突条部は、基板に埋め込まれてい。ここで広幅ストリップ構造部の幅は2000nm以上とし、それに対して狭幅突条部は、底面幅が500nm以下、高さが200nm以下であり、狭幅突条部が広幅ストリップ構造部の幅方向のほぼ中央に位置している構成が好ましい。より好ましくは、狭幅突条部の底面幅を250nm以下、高さを100nm以下とすることである。


本発明に係るプラズモンモード光導波路は、負誘電率材料からなる薄膜導波路パターンを、広幅ストリップ構造部と、その表面に一体的に形成されている狭幅突条部とからなる構造としたことにより、伝搬するプラズモンポラリトンが狭幅突条部に集中するようになり、伝搬距離を長く且つビーム径を狭くすることができる。その結果、ナノ光回路の微小な構成要素などとの高効率での結合や光記録再生装置による記録の高密度化などが実現できる。
正誘電率材料からなる基板の表面に負誘電率材料からなる薄膜導波路パターンを形成したプラズモンモード光導波路である。薄膜導波路パターンは、広幅ストリップ構造部と、その表面の中央に一体的に形成されている1本の狭幅突条部からなり、該狭幅突条部は、伝搬方向に直交する断面が三角形状である。広幅ストリップ構造部の幅は2000nm以上とし、それに対して狭幅突条部は、底面幅を250nm以下、高さを100nm以下とする。
図1は、本発明に係るプラズモンモード光導波路の一実施例を示す説明図である。このプラズモンポラリトン伝搬のための光導波路は、正誘電率材料からなる基板10の平坦な表面に、金属材料(負誘電率材料)からなる薄膜導波路パターン22を形成した構造である。本発明では、薄膜導波路パターン22は、広幅ストリップ構造部24と、その表面に一体的に形成されている狭幅突条部26からなる。この実施例では、狭幅突条部26は、プラズモンポラリトンの伝搬方向に直交する断面が二等辺三角形状をなしている。広幅ストリップ構造部24と狭幅突条部26とは、同じ材料であってもよいし、異なる材料で構成することもできる。
図1に示す構造のプラズモンモード光導波路において、基板10の誘電率ε1 =2.103(SiO2 を想定)、薄膜導波路パターン22の誘電率ε2 =−26+1.8j(金薄膜を想定)とし、波長800nm、TMモードの光で励起したプラズモンポラリトンがプラズモンモード光導波路を伝搬するものとしてシミュレーションを行った。ここで、広幅ストリップ構造部24の断面形状は幅2000nm、厚さ50nmの矩形状であり、狭幅突条部26の断面形状は幅(底辺の長さ)200nm、高さ100nmの二等辺三角形状とする。そして、このようなプラズモンモード光導波路が空気により囲まれていると仮定する。
図2は、このようなプラズモンモード光導波路における狭幅突条部近傍の電界強度分布の計算結果を示している。本発明によるプラズモンモード光導波路では、エネルギーは狭幅突条部の先端部分に集中し、この例ではビーム半値幅は約60nmとなる。従って、伝搬する光の波長800nmよりも著しく狭いビーム径で光信号を伝搬させることが可能なことが分かる。これによって、例えばナノ光回路の微小な構成要素に対して、伝搬してきたプラズモンポラリトンを正確に且つ高い効率で結合させることができる。また、このプラズモンモード光導波路による伝搬距離は12.5μmとなり、これは従来構造(図5参照)のプラズモンモード光導波路の伝搬距離と同様の値である。
図3は、本発明に係るプラズモンモード光導波路の他の実施例を示す説明図である。基本的な構成は、図1に示すものと同様であるので、対応する部分には同一符号を付す。このプラズモンポラリトン伝搬のための光導波路も、基板10の平坦な表面に金属材料(負誘電率材料)からなる薄膜導波路パターン32を形成した構造である。薄膜導波路パターン32は、広幅ストリップ構造部24と、その表面に一体的に形成されている狭幅突条部36からなる。この実施例では、狭幅突条部36は、伝搬方向に直交する断面が台形状をなしている。このような構造であっても、狭幅突条部36に電界が集中するため、ビーム径を狭くすることができる。
図1及び図3に示すようなプラズモンモード光導波路は、フォトリソグラフィー技術を用いて作製できる。狭幅突出部26、36は、例えばスパッタ法や蒸着法などにより薄膜を成膜した後、イオンミリングのようなドライエッチングを施すことで形成できる。
本発明に係るプラズモンモード光導波路の更に他の実施例を図4に示す。このプラズモンポラリトン伝搬のための光導波路も、基板40の表面に金属材料(負誘電率材料)からなる薄膜導波路パターン42を形成した構造である。基板40の表面にV溝41を形成する。V溝41は、例えばイオンミリングのようなドライエッチングを施すことで形成できる。次に、このV溝41を埋めるように金属材料をスパッタ法などにより充填して狭幅突条部46を形成し、更に狭幅突条部46を覆うように成膜により広幅ストリップ構造部44を形成する。このような構造としても、狭幅突条部46に電界が集中するため、ビーム径を狭くすることができる。
本発明に係るプラズモンモード光導波路は、薄膜導波路パターン全長にわたって狭幅突条部を形成する場合の他、広幅ストリップ構造部の一部分(特に他の光部品との結合部近傍)のみに狭幅突条部を形成するような構成も含んでいる。また、プリズムを用いるプラズモン発生装置のプラズモン伝搬部分に適用してもよい。
本発明に係るプラズモンモード光導波路の一実施例を示す説明図。 その狭幅突条部への光強度の集中状態を示すグラフ。 本発明に係るプラズモンモード光導波路の他の実施例を示す説明図。 本発明に係るプラズモンモード光導波路の更に他の実施例を示す説明図。 従来技術の一例を示す説明図。 薄膜導体パターン幅と伝搬距離の関係を示すグラフ。
符号の説明
10 基板
22 薄膜導波路パターン
24 広幅ストリップ構造部
26 狭幅突条部

Claims (3)

  1. 正誘電率材料からなる基板の表面に負誘電率材料からなる薄膜導波路パターンを形成した表面プラズモンポラリトン伝搬のための光導波路において、前記薄膜導波路パターンは、広幅ストリップ構造部と、該広幅ストリップ構造部と一体的に形成されている狭幅突条部からなり、該狭幅突条部は基板に埋め込まれ、該狭幅突条部を覆うように広幅ストリップ構造部が形成されており、伝搬するプラズモンポラリトンが該狭幅突条部に集中するようにしたことを特徴とするプラズモンモード光導波路。
  2. 狭幅突条部は、伝搬方向に直交する断面が三角形状もしくは台形状をなしている請求項1記載のプラズモンモード光導波路。
  3. 広幅ストリップ構造部の幅は2000nm以上であるのに対して、狭幅突条部の幅は500nm以下、高さが200nm以下であり、該狭幅突条部が広幅ストリップ構造部の幅方向のほぼ中央に位置している請求項1又は2記載のプラズモンモード光導波路。
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