JP4529107B2 - 油圧緩衝器 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、自動車等の車両の懸架装置等に装着される油圧緩衝器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の減衰力調整式油圧緩衝器の一例について、図9を参照して説明する。
【0003】
図9に示すように、減衰力調整式油圧緩衝器1は、油液が封入されたシリンダ2内に、ピストン3が摺動可能に嵌装され、このピストンによってシリンダ2内がシリンダ上室2aとシリンダ下室2bとの2室に画成されている。ピストン3の両端部には、後述する伸び側および縮み側減衰力発生機構4、5が設けられ、これらにピストンボルト6が挿通されてナット7によって固定されている。ピストンボルト6の基端部には、ピストンロッド8の一端部が連結され、ピストンロッド8の他端側は、シリンダ2の端部に設けられたロッドガイド(図示せず)およびオイルシール(図示せず)に挿通されて外部へ延出されている。シリンダ2には、ピストンロッド8の伸縮に伴う容積変化を吸収するために、油液及びガスが封入されたリザーバ9が接続されている。
【0004】
ピストン3には、シリンダ上下室2a、2b間を連通させる伸び側通路10および縮み側通路11が穿設されている。そして、ピストンロッド8の伸び行程時には、伸び側油路10の油液の流れを伸び側減衰力発生機構4によって制御して減衰力を発生させ、縮み行程時には、縮み側油路11の油液の流動を縮み側減衰力発生機構5によって制御して減衰力を発生させる。
【0005】
伸び側減衰力発生機構4は、ディスクバルブ12、固定部材13および可動部材14を含み、これらによって、背圧室15が形成されている。そして、ディスクバルブ12によって、伸び側油路10の油液の流れを制御して減衰力を発生させ、背圧室15の圧力をディスクバルブ12の背面に作用させて、その開弁圧力を調整する。さらに、伸び側油路10は、固定オリフィス16、背圧室15、ピストンボルト6内に設けられた圧力制御弁17及び逆止弁18を介してシリンダ下室2bに連通されている。
【0006】
縮み側減衰力発生機構5は、ディスクバルブ19、固定部材20および可動部材21を含み、これらによって、背圧室22が形成されている。そして、ディスクバルブ19によって、縮み側油路11の油液の流れを制御して減衰力を発生させ、背圧室22の圧力をディスクバルブ19の背面に作用させて、その開弁圧力を調整する。さらに、縮み側油路11は、固定オリフィス23、背圧室22、ピストンボルト6内に設けられた圧力制御弁24及び逆止弁25を介してシリンダ上室2aに連通されている。
【0007】
そして、ピストンロッド8の基部に設けられた比例ソレノイド26によって、ピストンボルト6内に嵌装されたプランジャ27を付勢して、伸び側及び縮み側の圧力制御弁17、24の制御圧力を調整することにより、伸び側及び縮み側油路10、11の油液の流れを直接制御して減衰力を発生させると共に、これによって背圧室15、22の圧力を変化させてディスクバルブ12、19の開弁圧力を制御することにより、減衰力特性を調整することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の減衰力調整式油圧緩衝器では、次のような問題があった。ピストン3に穿設された伸び側油路10及び縮み側油路11は、ピストン3の両端面にディスクバルブ12、19を配置し、これらのディスクバルブ12、19が充分な受圧面積を確保できるようにするため、ピストン3の軸方向に対して傾斜して配置されている。このように傾斜された油路は、燒結等によって型成形することが困難であるため、一般的に、油圧緩衝器のピストンは、燒結等によってピストン基材を型成形した後、傾斜された油路を機械加工することによって製造されている。
【0009】
このように、型による成形後、さらに、機械加工を必要とするため、ピストンの製造工程が煩雑であるという問題があった。また、一般的に、ピストンの油路は、ドリル加工するため、その断面形状が円形となっており、その直径がピストンの半径によって制限されるため、流路面積を大きくするためには、油路を複数設ける必要があり、工程が煩雑になる。
【0010】
さらに、上記従来例の減衰力調整式油圧緩衝器1では、背圧室15、22を形成するため、ピストン3の両端部に、別途、固定部材13、20及び可動部材14、21等を設ける必要があり、ピストン部の軸長が長くなるので、全長が長くなって車載性が悪化するとともに、ピストンロッド8の伸縮ストロークが短くなるという問題があった。
【0011】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、ピストンを燒結等によって容易に型成形することができ、また、ピストン部の軸長を小さくすることができる油圧緩衝器を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明は、油液が封入されたシリンダ内に、該シリンダ内を上下2室に画成し、ピストンロッドが連結されたピストンを摺動可能に嵌装した油圧緩衝器であって、
前記ピストンは、軸方向に分割した2つのピストン部材を有し、該各ピストン部材の外周側には軸方向に延びる複数の切欠部と係合部とを周方向に交互に隣接して設け、一方の前記ピストン部材の前記切欠部に他方の前記ピストン部材の前記係合部を交互に噛合わせて、一方の前記ピストン部材の前記係合部と他方の前記ピストン部材の前記係合部とで外周面を形成し、該外周面にピストンバンドを装着したことを特徴とする。
このように構成したことにより、各ピストン部材の切欠部と係合部とを交互に噛合わせることによって、ピストンが形成されて、シリンダ内が上下2室に画成される。
また、一方のピストン部材の係合部と、他方のピストン部材の係合部とでピストンの外周面が形成され、これらの係合部の段差がピストンバンドによって吸収される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態に係る減衰力調整式油圧緩衝器は、上記従来例に対して、ピストン部の構造以外は概して同様の構造であるから、ピストン部及びその周辺部分のみを図示し、同様の部分については同一の符号を付して、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る減衰力調整式油圧緩衝器28では、ピストン29は、同一の形状を有する2つのピストン部材30A、30Bからなる分割構造となっている。図2ないし図6に示すように、ピストン部材30A、30Bは、外周部に複数の切欠を有する略有底円筒状の大径部31A、31Bと、大径部31A、31Bの底部32A、32B側に設けられて大径部31A、31Bに対してやや小径の円筒状の小径部33A、33Bとからなる段付の円筒状に形成されている。大径部31A、31Bの側面部と共に、底部32A、32Bの外周部及び小径部33A、33Bの側面部の外周部は、複数箇所(図示の例では4箇所)が周方向に沿って等間隔(同じ中心角)に略扇形に切り欠かれており、大径部31A、31Bには、これらの切欠部34A、34Bと同じ中心角を有する複数(図示の例では4つの)の扇形の係合部35A、35B(シリンダ摺動壁)が放射状に形成されて軸方向に延びている。
【0015】
そして、図7に示すように、これら2つのピストン部材30の大径部31A、31B側を互いに対向させて、それぞれの係合部35A、35Bと切欠部34A、34Bとを交互に噛合わせることにより、図8に示すように、大径部31A、31Bの側壁(シリンダ2に部分的に摺動する係合部35A、35Bの外周)によって円筒状のピストン部(ピストン全周にわたる外周面)を形成してピストン29を構成し、切欠部34A、34Bと係合部35A、35Bとの間の径方向の隙間によって、大径部31A、31B内に互いにピストン部の反対側に開口する独立した油室36A、36B(図1参照)を形成する。
【0016】
大径部31A、31Bの底部32A、32Bには、その中央部にピストンボルト6を挿通させる開口37A、37Bが設けられている。大径部31A、31Bの底部32A、32Bには、軸方向に貫通する内周側に配置された複数の油路38A、38B及び外周側に配置された複数の油路39A、39Bが設けられている。内周側の油路38A、38Bは、断面形状が扇形で、係合部35A、35Bの内周部に配置されて、底部32A、32Bの大径部31A、31B側の表面に形成された略扇形の凹部40A、40Bを介して、対向する一方の油室36A、36Bに連通する。また、外周側の油路39A、39Bは、断面形状が扇形で、切欠部34A、34Bの内周部に配置されて、対向する他方の油室36A、36Bに直接連通する。小径部33A、33B内の底部32A、32Bの表面には、開口部37A、37Bの周縁部、内周側の油路38A、38Bと外周側の油路39との間、及び、外周側の油路39A、39Bの外周側に、それぞれ環状のシート部41A,41B、42A,42B及び43A,43Bが突出されている。
【0017】
切欠部34A、34B及び係合部35A、35Bを交互に嵌合して形成したピストン部の外周には、フッ素樹脂等からなるピストンバンド44が装着されており、ピストン3はピストンバンド44を介してシリンダ2の内面を摺動する。
【0018】
一方のピストン部材30Bには、伸び側減衰力発生機構4が設けられ、他方のピストン部材30Aには、縮み側減衰力発生機構5が設けられている。伸び側減衰力発生機構4は、ピストン部材30Bのシート部42Bにディスクバルブ45が着座され、その上にシート部41B、43Bに当接する複数のシールリング46が積層されている。小径部33Bには、ピストンボルト6が挿通される環状の固定部材47が嵌合され、シールリング46と固定部材47とによって小径部33B内に背圧室15が一体に形成されている。そして、シリンダ上室2a側から、油室36B、油路38A、油路39B、油室36Aを通ってシリンダ下室2b側へ流れる油液の流動をディスクバルブ45によって制御し、背圧室15の圧力をディスクバルブ45の背面側に作用させてその開弁圧力を調整する。
【0019】
また、縮み側減衰力発生機構5は、ピストン部材30Aのシート部に42Aにディスクバルブ48が着座され、その上にシート部41A、43Aに当接する複数のシールリング49が積層されている。小径部33Aには、ピストンボルト6が挿通される環状の固定部材50が嵌合され、シールリング49と固定部材50とによって小径部33A内に背圧室22が一体に形成されている。そして、シリンダ下室2b側から、油室36A、油路38A、39A、油室36Bを通って流れる油液の流動をディスクバルブ48によって制御し、背圧室22の圧力をディスクバルブ48の背面側に作用させてその開弁圧力を調整する。
【0020】
以上のように構成した本実施形態の作用について次に説明する。
ピストンロッド8の伸び行程時には、シリンダ上室2a側から油室36B、油路38B、固定オリフィス16、背圧室15及び逆止弁18を介してシリンダ下室2b側へ流れる油液の流動を比例ソレノイド26への通電電流に基づいて伸び側圧力制御弁17によって直接制御して減衰力を発生させると共に、これによって、背圧室15の圧力を変化させてディスクバルブ45の開弁圧力を制御することにより、減衰力特性を調整する。
【0021】
ピストンロッド8の縮み行程時には、シリンダ下室2b側から油室36A、油路38A、固定オリフィス23、背圧室22及び逆止弁25を通ってシリンダ上室2a側へ流れる油液の流動を比例ソレノイド26への通電電流に基づいて縮み側圧力制御弁24によって直接制御して減衰力を発生させると共に、これによって、背圧室22の圧力を調整してディスクバルブ48の開弁圧力を制御することにより、減衰力特性を調整する。
【0022】
ピストン29を構成するピストン部材30A、30Bは、油路38A、38Bおよび油路39A、39Bが軸方向に貫通されているので、燒結等によって、これらの油路を同時に型成形することができ、生産性を高めることができる。このように、油路38A、38B、39A、39Bは、ドリル加工等の機械加工によらず、燒結等によって型形成されるので、円形以外の断面形状とすることができ、流路面積を大きくとることができる。ピストン29は、同形状のピストン部材30A、30Bによって構成されているので、部品の種類が少なく、製造コストは安価である。なお、ピストン部材30A、30Bは、同形状でなくてもよい。
【0023】
ピストン部材30A、30Bは、複数の切欠部34A、34B及び係合部35A、35Bが交互に噛合うことによって、強固に結合される。切欠部34A、34B及び係合部35A、35Bが交互に噛合って形成されたピストン部の外周に、ピストンバンド44を装着することにより、切欠部34A、34Bと係合部35A、35Bとの結合部の段差を吸収することができ、シリンダ2の内壁との間のシール性を容易に確保することができる。
【0024】
ピストン部材30A、30Bの小径部33A、33Bに固定部材47、50を嵌合させて背圧室15、22をピストン部材30A、30B内に一体に形成したことにより、ピストン部の軸方向の寸法を短縮することができ、減衰力調整式油圧緩衝器28の全長を短くして車載性を向上させると共に、ピストロッド8のストロークを大きくすることができる。
【0025】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明に係る油圧緩衝器によれば、各ピストン部材の切欠部と係合部とを交互に噛合わせることによって、ピストンを形成して、シリンダ内を上下2室に画成することができる。その結果、ピストンを燒結等によって容易に型成形することができ、また、ピストン部の軸長を小さくすることができる。
また、一方のピストン部材の係合部と、他方のピストン部材の係合部とでピストンの外周面を形成することができ、これらの係合部の段差をピストンバンドによって吸収して、シリンダ内壁とのシール性を容易に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るピストン構造を適用した減衰力調整式油圧緩衝器のピストン部の縦断面図である。
【図2】図1の装置のピストン部材の平面図である。
【図3】図2のピストン部材の下面図である。
【図4】図2のピストン部材の側面のA矢視図である。
【図5】図2のピストン部材の側面のB矢視図である。
【図6】図2のピストン部材のC-C線による縦断面図である。
【図7】図1の装置のピストンの分解側面図である。
【図8】図1の装置のピストンの組立側面図である。
【図9】従来の減衰力調整式油圧緩衝器のピストン部の縦断面図である。
【符号の説明】
2 シリンダ
8 ピストンロッド
28 減衰力調整式油圧緩衝器(油圧緩衝器)
29 ピストン
30A、30B ピストン部材
35A、35B 係合部(シリンダ摺動壁、外周)
44 ピストンバンド
Claims (2)
- 油液が封入されたシリンダ内に、該シリンダ内を上下2室に画成し、ピストンロッドが連結されたピストンを摺動可能に嵌装した油圧緩衝器であって、
前記ピストンは、軸方向に分割した2つのピストン部材を有し、該各ピストン部材の外周側には軸方向に延びる複数の切欠部と係合部とを周方向に交互に隣接して設け、一方の前記ピストン部材の前記切欠部に他方の前記ピストン部材の前記係合部を交互に噛合わせて、一方の前記ピストン部材の前記係合部と他方の前記ピストン部材の前記係合部とで外周面を形成し、該外周面にピストンバンドを装着したことを特徴とする油圧緩衝器。 - 前記2つのピストン部材を同形状としたことを特徴とする請求項1に記載の油圧緩衝器。
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JPS59132934U (ja) * | 1983-02-25 | 1984-09-06 | トヨタ自動車株式会社 | 液圧緩衝器 |
JPH08303515A (ja) * | 1995-04-28 | 1996-11-19 | Showa:Kk | 油圧緩衝器のピストン構造 |
WO2000022318A1 (de) * | 1998-10-14 | 2000-04-20 | Gkn Sinter Metals Gmbh | Kolben mit druckabhängiger dichtwirkung für eine kolben-zylinder-anordnung, insbesondere stossdämpferkolben |
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