JP4521736B2 - 医療用液体輸送管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療用液体輸送管、例えば輸血、輸液を行なう際に注射針と輸血、輸液用のチューブとの間に接続し輸血、輸液中に混入する空気をトラップするために用いる管状本体と、該本体上面部に空気溜め突出部を有する、輸液用タコ管と呼ばれる医療用液体輸送管に関する。
【0002】
【従来技術】
輸液セットは、瓶針、点滴筒、チューブ、ゴム管、タコ管、静脈針などを連結して構成してなり、チューブには流量を調節するためのクランプが装着されている。タコ管は輸液中に混入した気泡が体内に流入するのを防止するためのものであり、中央部には空気溜めが設けられていて、両端にはゴム管と静脈針にそれぞれ接続するための接続部が形成されている。したがって、タコ管は両端が細く中央が太い形状になっている。
従来、この種の医療用液体輸送管としては、中空の膨出部の直下に開口部を設けるようにして一体的に構成したものが提案されている(実公昭55−30495)。しかし、前記のような構成の医療用液体輸送管は、中空の膨出部に輸液圧が加わったとき、前記の栓が外れるとか、栓周辺から液漏れを起こすと言う不具合があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、中空の膨出部に輸液圧が加わっても上記の従来技術の問題を解決し、前記の栓が外れるとか、栓周辺から液漏れを起こすと言う不具合を生じない医療用液体輸送管を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、開口円筒部を外周面上に一体的に結合して有する環状の中空状液体輸送部材(A)と前記開口円筒部に被着されるキャップ部材(B)を有して構成される医療用液体輸送管であって、前記開口円筒部の外部表面および前記キャップ部材の内部表面のいずれか一方の表面の周面方向に台形状の突起部、また他方の表面の周面方向に前記台形状の突起部と嵌合可能な形状の溝部を有し、かつこれら突起部と溝部の嵌合により前記キャップ部材が開口円筒部に被着されたことを特徴とする医療用液体輸送管を提供することにより、前記技術的課題を解決することができた。
【0005】
本発明の医療用液体輸送管は、前記開口円筒部に被着されたキャップ部材が、台形状の突起部と該突起部と嵌合可能な形状の溝部の嵌合により、開口円筒部から再脱離が実質的に不可能な程度の嵌合力により被着されたものであり、かつ該嵌合力が、主に前記台形状の突起部の断面積によってコントロールされることができる構造のものであることを特徴とする。
【0006】
前記の「開口円筒部に被着された前記キャップ部材が開口円筒部から再脱離が実質的に不可能な程度の嵌合力」とは、前記傾斜角度αおよび傾斜角度β、ならびに前記開口円筒部およびキャップ部材を構成する材料の種類によっても相違するが、通常、5kgf以上程度の嵌合力を指し、この嵌合力を与えるに必要な台形状の突起部の断面積は、通常、0.15mm2以上、好ましくは0.04〜0.30mm2程度の断面積である。
【0007】
さらに、本発明者らは、図2、3に示すように、L2(台形状部材の上辺部長さ)、L3(溝部の開口部長さ)、H1(台形状突起部の高さ)およびt(台形状突起部が形成された部材の壁厚さ)が特定の要件を満足することが、前記の嵌合力が生じるのに好ましいことを見出した。
すなわち、図3の(c)の嵌合力が最も大きく、図3の(b)の嵌合力が次に大きく、図3の(a)の嵌合力が最も小さいことから、前記の嵌合力を生じるためには、L2(台形状部材の上辺部長さ)≧H1(台形状突起部の高さ)およびt(台形状突起部が形成された部材の壁厚さ)≧H1(台形状突起部の高さ)の要件を満足することが好ましいことを見出した。
【0008】
以下、図面に基づいて、本発明の医療用液体輸送管をさらに具体的に説明する。
本発明の医療用液体輸送管においては、台形状の突起部は開口円筒部外部表面およびキャップ部材内部表面のどちらかに形成される。
すなわち、図1の(a)は、キャップ部材の内部表面に台形状の突起部を形成し、開口円筒部の外部表面に前記台形突起部と嵌着可能な形状の溝部を形成したものであり、また図1の(b)は、キャップ部材の内部表面に下記台形突起部と嵌着可能な形状の溝部を形成し、開口円筒部の外部表面に、上記溝部に嵌着可能な台形状の突起部を形成したものである。
【0009】
特に、前記嵌合の中でも、キャップ部材内部表面の方に台形状の突起部を形成し、開口円筒部の外部表面の方に前記台形突起部と嵌合可能な形状の溝部を形成したものが、前記開口円筒部に被着されたキャップ部材と開口円筒部の嵌合力をより向上させることができるので好ましい。
【0010】
図2は、前記図1の(a)のタイプに属する医療用液体輸送管の一例の台形突起部と溝部の嵌合部分の拡大断面である。
図2中、両αは台形状突起部のキャップ部材の垂直内表面に対する傾斜角度、両βは開口円筒部の外部表面に対する溝部の傾斜角度、L1は台形状部材の底辺部長さ、L2は台形状部材の上辺部長さ、L3は溝部の底辺部長さ、L4は溝部開口部長さ、H1は台形状突起部の高さ、H2は溝部の深さ、tは台形状突起部が形成された部材(キャップ部材)の壁厚さをそれぞれ表す。
【0011】
前記両αおよび両βは、本図のものにおいては、それぞれ実質的に等しい角度を組み合わせたものであるが、本発明においては、両αと両βとも必ずしも実質的に等しい角度の組み合わせのものには限定されず、例えばα同士およびβ同士の間には10〜30°程度の角度の差異はあっても良い。
【0012】
また、前記αとβは実質的に等しい角度のものが好ましいが、本発明においては、αとβは必ずしも実質的に等しい角度のものには限定されず、例えば両者の間に10〜30°程度の角度の差異はあっても良い。
【0013】
さらに、前記のように突起部と溝部の嵌合力が、主に台形状の突起部の容積によってコントロールすることができる構造のものであるから、図2における突起部の台形面積はできるだけ大きい方が好ましいが、成形工程上の制約によって前記台形状突起部の高さH1を余り大きくすることはできないので、台形状突起部の下辺部長さL1を一定とした場合、前記嵌合力は、主に台形状突起部の上辺部長さL2によってコントロールされるので、この上辺部長さL2は、前記嵌合力を考慮するとより大きいことが好ましい。しかし、一方で、このL2が大きくなると前記傾斜角度αも大きくなり、このαが60°を超えると離型性が劣り、また、αが30°未満であると、嵌合性が劣るから、αは下記の要件を満足するものが好ましい。
30°≦α≦60°
また、βも前記のようにαと実質的に等しい角度のものが好ましいから、αと同様に下記の要件を満足するものが好ましい。
30°≦β≦60°
ただし、βはαより10〜30°程度大きくて良く、従って、αとβは、
α≦βとなることが必要である。
【0014】
さらに、本図のキャップ部材と開口円筒部材は下記の要件を満足するものである。
30°≦α(台形状突起部の垂直表面に対する傾斜角度)≦60°
30°≦β(溝部の垂直表面に対する傾斜角度)≦90°
H1(台形状突起部の高さ)≦H2(溝部深さ)
L2(台形状突起部の上辺部長さ)≦L3(溝部底部長さ)
L1(台形状突起部の下辺部長さ)≒L4(溝部開口部長さ)
特に、前記要件中、台形状突起部の下辺部長さL1≒溝部開口部長さL4と言う要件を採用することにより、安定したガタつきの無い嵌合が得られると言う効果が得られる。
また、前記のように突起部と溝部の嵌合力が、主に台形状の突起部の断面積によってコントロールされるが、同じ台形状突起部の断面積の場合、前記H1を余り大きくせず、前記L2を大きくした方が、脱離しにくく、同じ嵌合力でより嵌めやすい構造のものが得られる。
【0015】
前記キャップ部材の内壁表面と開口円筒部材の外壁表面に形成する突起部あるいは溝部は、キャップ部材の内壁表面と開口円筒部材の外壁表面の全円周すべてにわたって設けても良いし、あるいは円周方向に2箇所以上独立して設けても良いが、嵌合強度は、突起部の容積によって影響されるので、全円周すべてにわたって設けるのが好ましい。
また、開口円筒部の頂部付近の壁表面一部を全円周方向にわたって削除し、開口円筒部の頂部付近に、キャップ部材を装着し易くするための段部を設けても良い。
【0016】
本発明の医療用液体輸送管を構成する前記中空状液体輸送部材と前記キャップ部材は、種々の合成樹脂成型加工法によって製造することができるが、成型精度の点から射出成型法によって製造したものが好ましく、前記両部材の素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS樹脂等が挙げられる。
また、前記中空状液体輸送部材と前記キャップ部材は、同一種類の素材で構成される必要はなく、例えば中空状液体輸送部材はポリカーボネート、ABS樹脂等、またキャップ部材は、ポリエチレン、ポリプロピレンで構成されても良い。
【0017】
【実施例】
実施例1
図2に示す構成における各構成箇所の具体的なサイズは、例えば以下のようなサイズが挙げられる(各数値はmmを表す。)。台形状突起部材およびキャップ部材ともポリプロピレンで構成されている。
L1(台形状突起部材の底辺部長さ):0.4〜1.0、例えば0.75
L2(台形状突起部材の上辺部長さ):0.3〜1.0、例えば0.35
L3(溝部の底辺部長さ):0.4〜1.0、例えば0.75
L4(溝部の開口部長さ):0.4〜1.0、例えば0.75
H1(台形状突起部材の高さ):0.1〜0.3、例えば0.2
H2(溝部の深さ):0.1〜0.3、例えば0.2
t(キャップ部材の壁厚さ):0.5〜1.0、例えば0.84
【0018】
また、環状の中空状液体輸送部材の外周面7上に一体的に結合される図4で示す開口円筒部の高さDは、前記外周面7から4.0〜10.0mm程度が適当(本実施例の場合は7.0mm)であり、また、台形状突起部材4は、その底辺部が前記外周面7から0.4〜1.0mm(本実施例の場合は0.80mm)程度の高さEの位置に設けるのが、好ましい。
【0019】
【効果】
本発明は、開口円筒部を外周面上に一体的に結合して有する環状の中空状液体輸送部材(A)と前記開口円筒部に被着されるキャップ部材(B)を有して構成される医療用液体輸送管として、中空の膨出部に輸液圧が加わっても上記の従来技術の問題を解決し、前記のキャップ部材(B)が外れるとか、該キャップ部材(B)周辺から液漏れを起こすと言う不具合を生じない医療用液体輸送管を提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【図1】キャップ部材と開口円筒部の嵌合状態を示す図である。
(a)は、キャップ部材の内部表面に台形状の突起部を形成し、開口円筒部の外部表面に前記台形突起部と嵌着可能な形状の溝部を形成したもの。
(b)は、キャップ部材の内部表面に下記台形突起部と嵌着可能な形状の溝部を形成し、開口円筒部の外部表面に、上記溝部に嵌着可能な台形状の突起部を形成したもの
【図2】図1の嵌合部の拡大図である。
【図3】t≧H1の場合のL2とH1との関係を示す図である。
(a)L2<H1
(b)L2=H1
(c)L2>H1
【図4】本発明の医療用液体輸送管の一例の断面図である。
【符号の説明】
1 キャップ部材
2 開口円筒部
3 台形状突起部
4 溝部
5 切欠き部
6 環状の中空状液体輸送部材
7 環状の中空状液体輸送部材の外周面
α 台形状突起部のキャップ部材の垂直内表面に対する傾斜角度
β 開口円筒部の外部表面に対する溝部の傾斜角度
L1 台形状突起部の下辺部長さ
L2 台形状突起部の上辺部長さ
L4 溝部開口部長さ
L3 溝部底辺部長さ
m1 キャップ部材の内径
m2 キャップ部材の内径
t キャップ部材の壁厚さ
H1 台形状突起部材の高さ
H2 溝部の深さ
D 開口円筒部の高さ
E 突起部材の高さ
Claims (1)
- 開口円筒部を外周面上に一体的に結合して有する環状の中空状液体輸送部材(A)と前記開口円筒部に被着されるキャップ部材(B)を有して構成される医療用液体輸送管において、前記開口円筒部の外部表面および前記キャップ部材の内部表面のいずれか一方の表面の周面方向に台形状の突起部また他方の表面の周面方向に前記台形状の突起部と嵌合可能な形状の溝部を有し、かつ下記(1)〜(4)の要件を満足したものであることを特徴とする医療用液体輸送管。
(1) 前記台形状の突起部がL 2 (台形状突起部材の上辺部長さ)≧H 1 (台形状突起部の高さ)およびt(台形状突起部が形成された部材の壁厚さ)≧H 1 (台形状突起部の高さ)の要件を満足すること。
(2) 前記台形状の突起部および前記溝部とは上方向に離間して開口円筒部の頂部付近の壁部表面に周方向に亘って形成されたキャップ部材を装着しやすくするための段部を有すること。
(3) 前記開口円筒部が前記台形状の突起部と該突起部と嵌合可能溝部を嵌合させた状態において、前記キャップ部材(B)の下端を支える段部を有すること。
(4) 前記中空状液体輸送部材(A)と前記キャップ部材(B)がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートまたはABS樹脂で構成されていること。
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