JP4516264B2 - 物理量センサ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、物理量センサの出力値をデジタル値に変換して出力する物理量センサ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種機器において多数の入力情報を総合的に判断して適切な機器動作を行うことが要求されたり、複数の機器を連動制御することが要求されるようになってきている。たとえば、車載機器であるアンチロックブレーキやエアバッグのような機器では、車両の動きの変化を検出して機器の動作を短時間で制御することが必要である。そこで、この種の機器では、車両の動きを検出する物理量センサとして加速度センサを用い、加速度センサの出力値に基づいて機器を短時間かつ適正に制御するためにマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と略称する)が用いられている。加速度センサの出力をマイコンで処理するには、加速度センサの出力値をデジタル値に変換することが要求される。
【0003】
ところで、物理量センサである加速度センサ、圧力センサ、ストレンゲージなどではピエゾ抵抗素子からなる抵抗体のブリッジ回路を用いる構成が知られており、このような物理量を電気抵抗に変換する物理量センサでは出力値に周囲温度の影響による誤差を含むおそれがある。したがって、この種の物理量センサの出力値の誤差を小さくするには、周囲温度に応じて出力値を補正することが必要であって、周囲温度を検出するために温度センサが必要になる。上述のように物理量センサの出力値をデジタル値に変換する場合では、物理量センサから出力されたアナログ信号の出力値に対して温度センサの出力値による補正を行う構成と、物理量センサから出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換した後のデジタル値に対して温度センサの出力値による補正を行う構成とが考えられる。後者の構成では、物理量センサの出力値とともに温度センサの出力値もデジタル値に変換しておき、物理量センサに対応するデジタル値と温度センサに対応するデジタル値とをデジタル演算が可能な演算回路に入力して物理量センサの出力値に対する温度補正を行うことになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、上述のように加速度センサの出力値により車載機器を制御する場合を想定すると、電源には車両に搭載したバッテリを用いることになる。この種のバッテリの電圧は車両の走行中の種々の条件で変動する。一方、加速度センサは上述のように抵抗体のブリッジ回路を備え、ブリッジ回路を構成する2つの分圧回路にバッテリの電圧を印加することによって抵抗体の抵抗値に応じた電圧値を取り出す形で使用されるから、バッテリの電圧が変動したときに加速度センサの出力が変動することになる。つまり、加速度センサへの印加電圧が高くなればADコンバータに入力される電圧値も高くなるのであって、ADコンバータから出力されるデジタル値が加速度センサに印加したバッテリの電圧変動によって変化するという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、物理量センサへの印加電圧の変動に伴うADコンバータの出力デジタル値の変動を抑制した物理量センサ装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、物理量の変化を電気抵抗の変化に変換する抵抗体を備え前記抵抗体を含む分圧回路に電源電圧を印加することにより前記抵抗体の抵抗値に応じた電圧値を出力する物理量センサと、定電圧が印加され前記物理量センサの周囲温度に応じた電圧値を出力する温度センサと、前記物理量センサおよび前記温度センサの出力値をデジタル値に変換するとともにリファレンス電圧により入力値に対する分解能が決まるADコンバータと、前記物理量センサの出力値と前記温度センサの出力値とを前記ADコンバータに択一的に入力するセレクタと、前記物理量センサと前記温度センサとの各出力値に対応して前記ADコンバータから出力されたデジタル値を用いて前記物理量センサの出力値に温度補正を行う演算回路と、前記セレクタにより前記温度センサが選択されているときに定電圧のリファレンス電圧を前記ADコンバータに印加する定電圧発生部と、前記セレクタにより前記物理量センサが選択されているときに前記抵抗体に印加する電源電圧が変動しても前記ADコンバータの出力値が変動しないように前記抵抗体に印加する電圧に比例したリファレンス電圧を前記ADコンバータに印加する電源比例電圧発生部とを備えることを特徴とする。この構成によれば、セレクタによって物理量センサを選択しているときに、物理量センサに設けた抵抗体に印加する電圧に比例する電圧をADコンバータの入力値に対する分解能を決めるリファレンス電圧とするから、物理量センサに印加する電圧が変動してもADコンバータの出力値の変動を抑制することができる。しかも、物理量センサと温度センサとの出力値をセレクタにより選択してADコンバータに入力するから、ADコンバータを物理量センサと温度センサとによって共用しながらも、定電圧が印加されている温度センサの出力値を選択しているときにはADコンバータのリファレンス電圧も定電圧として、温度センサが選択されているときにADコンバータの分解能が電圧に応じて変動するのを防止することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本実施形態では、図1に示すように、物理量センサとして加速度センサ1を例示するが、物理量センサとしては加速度センサ1に限らず、物理量の変化を電気抵抗の変化に変換する抵抗体を備える物理量センサであれば、圧力センサやストレンゲージなどにも本発明の技術を適用可能である。この種の物理量センサは一般に抵抗体としてピエゾ抵抗素子を備え、本実施形態における加速度センサ1ではピエゾ抵抗素子からなるブリッジ回路を備えている。つまり、加速度センサ1は抵抗体を用いた2個の分圧回路を並列接続した形であり、ブリッジ回路に電圧を印加することにより抵抗体の抵抗値に応じた電圧値が取り出される。また、本実施形態では、図2に示すように、1つのパッケージ10に、加速度センサ1と、加速度センサ1の出力値に温度補正を行って出力する集積回路である信号処理部11と、信号処理部11において用いるデータを格納したEEPROM12との3個のチップを収納してある。言い換えると、集積回路である信号処理部11のパッケージ10に加速度センサ1とEEPROM12とを収納していることになる。
【0009】
本実施形態で用いる加速度センサ1は上述のように加速度に対応した電圧値(アナログ信号)を出力するものであり、加速度センサ1の出力は信号処理部11に設けたセレクタ5に入力される。信号処理部11には周囲温度を検出して周囲温度に応じた電圧値(アナログ信号)を出力する温度センサ2が設けられ、温度センサ2の出力もセレクタ5に入力される。加速度センサ1にはパッケージ10に設けた電源端子(図示せず)を通して電源電圧が印加され、温度センサ2には電源電圧を定電圧化した定電圧が印加される。つまり、温度センサ2により検出される周囲温度は加速度センサ1の出力値の補正に用いるだけであるから高い精度を必要としないものの、電源電圧の変動によって温度センサ2の出力値が変動すると加速度センサ1の出力値の補正に用いることができないから、温度センサ2については定電圧を印加することによって電源電圧の変動の影響を受けないようにしている。
【0010】
セレクタ5は、図1に示すように、加速度センサ1および温度センサ2とADコンバータ(ADC)3との間に挿入してあり、ADコンバータ3に加速度センサ1と温度センサ2とを択一的に接続するスイッチ要素SW1(図1参照)を備える。スイッチ要素SW1はコントローラ7から与えられるタイミング信号によって制御される。
【0011】
セレクタ5を通して選択された加速度センサ1の出力値と温度センサ2の出力値とはADコンバータ3に順次入力される。本実施形態で用いるADコンバータ3は、ΣΔ変調器31と、ΣΔ変調器31の出力のうち高周波領域を除去するフィルタ回路32とを備える。フィルタ回路32は図示例では2段に構成されており、初段のデジタルフィルタ32aはΣΔ変調器31の出力のうち量子化誤差に相当する高周波領域を除去し、2段目のデジタルフィルタ32bはデジタルフィルタ32aの出力値の移動平均を求める。ΣΔ変調器31では、周知のように、サンプリング周波数を通常よりも高く設定してオーバサンプリングを行うとともに、ノイズ電力が高周波領域に偏在するように分布させるノイズシェーピングという操作を行う。すなわち、ΣΔ変調器31の出力のうちノイズ電力が分布している高周波領域を除去すれば量子化誤差に起因するノイズを大幅に低減することができることが知られており、サンプリング周波数を高くするほど信号対雑音比が向上し、またΣΔ変調器31の出力から高周波成分を除去するフィルタ回路32の特性を急峻にするほど信号対雑音比が向上することが知られている。
【0012】
このADコンバータ3の分解能は印加されるリファレンス電圧によって決められ、リファレンス電圧が高いほど分解能が低くなる。要するにリファレンス電圧が高いほど、入力値に対する分解能が低くなる。リファレンス電圧は電圧源6から印加されており、電圧源6には、図1に示すように、電源電圧に比例した電圧を発生する電源比例電圧発生部6aと、電源電圧を定電圧化する定電圧発生部6bとが設けられている。電源比例電圧発生部6aの出力電圧と定電圧発生部6bの出力電圧とはスイッチ要素SW2により択一的に選択され、リファレンス電圧としてADコンバータ3に印加される。電源比例電圧発生部6aはたとえば電源電圧を分圧する回路であり、定電圧発生部6bにはバンドギャップリファレンス回路などを用いて電源電圧を安定化する安定化電源回路を用いている。スイッチ要素SW2は、セレクタ5に設けたスイッチ要素SW1とともにコントローラ7からのタイミング信号により制御される。つまり、セレクタ5により加速度センサ1が選択されているときには電源比例電圧発生部6aが選択され、温度センサ2が選択されているときには定電圧発生部6bが選択される。
【0013】
上述した構成では、加速度センサ1の出力値が電源電圧の変動によって変動すると、ADコンバータ3の分解能も電源電圧に応じて変化するから、電源電圧が変動して加速度センサ1から出力される電圧値が高くなればADコンバータ3の分解能が低くなり、電源電圧が変動して加速度センサ1から出力される電圧値が低くなればADコンバータ3の分解能が高くなって、結果的に電源電圧の変動に伴うデジタル値の変化を抑制することができる。また、温度センサ2が選択されているときには、電源電圧が変動しても温度センサ2の出力は変動しないから、ADコンバータ3の分解能も一定に保つことによって温度センサ2の出力値を反映したデジタル値をADコンバータ3の出力として得ることができる。
【0014】
ところで、定電圧発生部6bの出力電圧は電源比例電圧発生部6aの出力電圧よりも高く設定してあり、セレクタ5によって温度センサ2の出力が選択されているときには加速度センサ1が選択されているときよりもADコンバータ3の分解能が低くなるように構成してある。
【0015】
実施形態では加速度を求めることが目的であるから、加速度に対応するデジタル値は高精度であることが望ましく、温度センサ2の出力値は加速度センサ1の出力値の補正用に用いるものであるから、加速度センサ1の出力値に比較すれば低精度であってもよい。一般に、ADコンバータ3から出力されるデジタル値の精度を高めようとすれば、サンプリング周期内において入力に割り当てる時間幅を長くするほうがよい。
【0016】
そこで、加速度センサ1の出力値についてはフィルタ回路32を構成する2段のデジタルフィルタ32a,32bの両方に通してΣΔ変調器31の出力の高周波領域を除去するだけではなく移動平均を求めることにより、ノイズなどによって瞬間的に生じる異常値の影響を抑制し、温度センサ2の出力値については初段のデジタルフィルタ32aのみを通してΣΔ変調器31の出力のうちの高周波領域の除去のみを行っている。デジタルフィルタ32bにおいて移動平均を求めるには複数個の値について平均値を求めるから比較的長い処理時間を要するが、デジタルフィルタ32aでは異常値の影響を抑制する機能はないものの比較的短い処理時間しか要さない。つまり、加速度センサ1の出力値を2段のデジタルフィルタ32a,32bに通すことによって異常値の影響を抑制した正確な値を得ることができ、温度センサ2の出力値はデジタルフィルタ32aのみを通すことによって短時間で処理することができる。
【0017】
フィルタ回路32の出力はマイコンからなるデジタル回路16に入力される。デジタル回路16は、加速度センサ1の出力に対して温度センサ2の出力に基づく補正演算を行う演算回路4を備えるとともに、セレクタ5に対してタイミング信号を発生するコントローラ7を備える。コントローラ7はデジタル回路16の外部に設けた発振器8からのクロック信号を受けてタイミング信号を生成し、さらにクロック信号に基づいて、演算回路4での補正演算のタイミングを指示するタイミング信号と、後述するサンプルホールド回路21へのタイミング信号とを生成する。デジタル回路16にはコントローラ7で生成されたタイミング信号に基づいて演算回路4に補正演算のタイミングを指示するためのステイトマシン9が設けられる。つまり、演算回路4はステイトマシン9により指示されたタイミングに応じて、デジタルフィルタ32a,32bから取得したデジタル値を、加速度センサ1の各出力と温度センサ2の出力とに分類して処理することになる。言い換えると、演算回路4は各デジタルフィルタ32a,32bの出力をセレクタ5での選択に同期して選択していることになる。
【0018】
演算回路4では温度センサ2に対応するデジタルフィルタ32aの出力を取得したときには、デジタル回路16に付設したEEPROM12からROMインタフェース13を介して補正データを取得する。つまり、EEPROM12には温度センサ2の出力に対応したデジタルフィルタ32aの出力値と、加速度センサ1の出力値の補正に用いる補正データとを対応付けたテーブルが格納されており、デジタルフィルタ32aの出力をテーブルに照合することによって補正データを取得するのである。上述したようにセレクタ5では温度センサ2の出力値をADコンバータ3に入力した後に、加速度センサ1の出力値をADコンバータ3によってデジタル値に変換するから、演算回路4では上述のようにして補正データを取得した後に加速度センサ1の出力値に対応するデジタル値をデジタルフィルタ32bの出力として取得する。このようにして、加速度センサ1の出力値と補正データとを取得した後に補正演算を行い、補正演算の結果を出力する。
【0019】
本実施形態の信号処理部11は、演算回路4から出力されるデジタル値をそのまま出力するほか、アナログ値に変換して出力する機能も備えており、デジタル回路16から出力されたデジタル信号はDAコンバータ14を通してアナログ信号に変換される。DAコンバータ14の出力はサンプルホールド回路15に保持して外部に取り出される。
【0020】
なお、本実施形態において温度センサ2を信号処理部11に内蔵した例を示したが、温度センサ2を信号処理部11と別に設けるようにしてもよい。
【0021】
【発明の効果】
請求項1の発明は、セレクタによって物理量センサを選択しているときに、物理量センサに設けた抵抗体に印加する電源電圧に比例する電圧をADコンバータの入力値に対する分解能を決めるリファレンス電圧とするので、物理量センサに印加する電圧が変動してもADコンバータの出力値の変動を抑制することができるという利点を有する。また、物理量センサと温度センサとの出力値をセレクタにより選択してADコンバータに入力するから、ADコンバータを物理量センサと温度センサとによって共用しながらも、定電圧が印加されている温度センサの出力値を選択しているときにはADコンバータのリファレンス電圧も定電圧として、温度センサが選択されているときにADコンバータの分解能が電圧に応じて変動するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す要部のブロック図である。
【図2】同上の全体構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 物理量センサ(物理量センサ)
2 温度センサ
3 ADコンバータ
4 演算回路
5 セレクタ
6 電圧源
6a 電源比例電圧発生部
6b 定電圧発生部
7 コントローラ

Claims (1)

  1. 物理量の変化を電気抵抗の変化に変換する抵抗体を備え前記抵抗体を含む分圧回路に電源電圧を印加することにより前記抵抗体の抵抗値に応じた電圧値を出力する物理量センサと、定電圧が印加され前記物理量センサの周囲温度に応じた電圧値を出力する温度センサと、前記物理量センサおよび前記温度センサの出力値をデジタル値に変換するとともにリファレンス電圧が低いほど入力値に対する分解能が小さくなるADコンバータと、前記物理量センサの出力値と前記温度センサの出力値とを前記ADコンバータに択一的に入力するセレクタと、前記物理量センサと前記温度センサとの各出力値に対応して前記ADコンバータから出力されたデジタル値を用いて前記物理量センサの出力値に温度補正を行う演算回路と、前記セレクタにより前記温度センサが選択されているときに定電圧のリファレンス電圧を前記ADコンバータに印加する定電圧発生部と、前記セレクタにより前記物理量センサが選択されているときに前記抵抗体に印加する電源電圧が変動しても前記ADコンバータの出力値が変動しないように前記抵抗体に印加する電圧に比例したリファレンス電圧を前記ADコンバータに印加する電源比例電圧発生部とを備えることを特徴とする物理量センサ装置
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