JP4511704B2 - 破砕方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、岩石などを破壊する破砕方法に関し、より特定的には、放電に伴って発生する圧力波を利用する破砕方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
岩石などを破壊するための従来の破砕方法としては、たとえば特開平4−222794号公報に開示されているものがある。図25は、従来の破砕装置を示す模式図である。図25を参照して、上記特開平4−222794号公報に開示された破砕方法を実施するための破砕装置の構造および動作原理について説明する。
【0003】
図25を参照して、まず、従来の破砕装置の構造を簡単に説明する。パルスパワー源106は、コンデンサ108、スイッチ107などを含む回路からなっている。このパルスパワー源106には電源109が接続されている。パルスパワー源106の回路、この回路を含む筐体および車体は接地されている。
【0004】
岩石などを破壊するための破壊電極としての同軸電極101は、パルスパワー源106と同軸ケーブル105によって接続されている。同軸電極101の先端には、接地された接地電極と、パルスパワー源106のスイッチ107が閉じられたときにコンデンサ108に蓄えられた電荷が導かれる電極とが配置されている(図示省略)。
【0005】
次に従来の破砕方法を説明する。破壊対象となる岩石などに、ドリルなどを用いてあらかじめ下孔を形成する。この下孔の中に水などの電解液を注入する。この下孔に同軸電極101を挿入する。
【0006】
そして、電源109で電荷を発生させ、この電荷をコンデンサ108に蓄積する。ただし、コンデンサ108の片側の極は接地されている。
【0007】
コンデンサ108に十分に電荷が蓄積された後にスイッチ107を閉じることによって、同軸ケーブル105を介して同軸電極101に電荷が供給される。そして、同軸電極101の先端において、電極と接地電極との間に電位差が生じることにより放電が起こる。このとき、同軸電極101の先端付近の電解液が放電エネルギーによってプラズマ化することにより、衝撃波(衝撃圧力)が発生する。この衝撃波により、同軸電極101の周囲の岩石などを破壊する。
【0008】
上記特開平4−222794号公報では、岩石などの破砕の際には、1マイクロ秒あたり少なくとも100MWの割合で、少なくとも3GWのピーク値のパワーが破砕すべき物質の閉じ込めた領域の電解液の中に浸漬された同軸電極の2電極間を横切って得られるまで、電気エネルギーを同軸電極に供給するとしている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開平4−222794号公報に開示された技術では、上述のような莫大なエネルギーを必要とする。しかし、発明者らが検討した結果、実際に岩石などの破砕に用いられるエネルギー量は、下孔の形状にもよるが電力投入開始後20マイクロ秒(μs)程度までに供給されたエネルギーの積分値であった。つまり、特開平4−222794号公報の図2に示されているような投入電力波形の場合、20μs以降のエネルギーが大部分を占めているため、投入されたエネルギーが岩石の破砕に有効に利用されているとは言えなかった。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、岩石などの破砕において投入エネルギーを効率良く利用することができる破砕方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明の1の局面における破砕方法は、電極に電流を供給することにより発生する放電によって形成された圧力波を、媒体を介して破砕対象物に到達させてこの破砕対象物を破壊する破砕方法であって、圧力波の圧力の上昇に伴って、媒体中での圧力波の伝播速度が上昇することを利用して、第1の時刻において発生する第1の圧力波と前記第1の時刻より後の第2の時刻において発生する第2の圧力波とが重なって破砕対象物に到達するように、第1および第2の時刻において前記電極に供給される電流の値を決定することを特徴とする。
【0012】
発明者らは、従来あまり検討されていなかった破砕に用いる衝撃波の形成過程について研究し、本発明を完成するに至った。つまり、電極に電流を供給して放電を発生させる場合、第1および第2の時刻において電極に供給される電流の値(電流値)によりそれぞれの時刻における放電の際の放出エネルギーは決定される。そして、この放出エネルギーにより第1および第2の圧力波の圧力が決定される。また、媒体中での圧力波の伝播速度は、基本的に媒体の材質と圧力波の圧力とにより決定される。したがって、第2の時刻における電流値を第1の時刻における電流値より大きくして、第2の圧力波の圧力を第1の圧力波の圧力より充分大きくすることにより、第2の圧力波の伝播速度は第1の圧力波の伝播速度より速くなる。また、圧力波が発生してから破砕対象物に到達するまでの時間(到達時間)は、電極と破砕対象物との間の距離と圧力波の伝播速度とにより決定される。圧力波の圧力が高いほど伝播速度は上昇するので、圧力波の圧力が高くなれば到達時間は短くなる。そのため、第2の圧力波の圧力を第1の圧力波の圧力より十分高くしておけば、先に発生した第1の圧力波が破砕対象物に到達する前に、第2の圧力波が第1の圧力波に追いつくことができる。その結果、第1および第2の圧力波が重なり合うことによって衝撃波を形成できる。
【0013】
このようにすれば、破砕対象物の表面に、第1および第2の圧力波が重なることにより形成される衝撃波を到達させることができる。この結果、破砕対象物を破砕するために必要な急峻な圧力の立ち上りを容易に得ることができる。
【0014】
また、破砕に必要な圧力を得るためには、衝撃波を形成する第1および第2の圧力波の圧力を加算した結果が破砕対象物の破砕に必要な圧力となるように、第1および第2の時刻における電流値を決定すればよい。つまり、従来のようにやみくもに大きなエネルギーを投入することなく、必要最小限のエネルギーを投入することで破砕対象物の破砕を実施することが可能になる。この結果、投入エネルギーを最適化できるので、従来余分に投入され、破砕に寄与していなかったエネルギーを削減できる。
【0015】
この発明の他の局面における破砕方法は、電極に電流を供給することにより発生する放電によって形成された圧力波を、媒体を介して電極と距離を隔てて位置する破砕対象物に到達させて前記破砕対象物を破壊する破砕方法であって、圧力波の圧力の上昇に伴って、媒体中での圧力波の伝播速度が上昇することを利用して、第1の時刻において発生する第1の圧力波と第1の時刻より後の第2の時刻において発生する第2の圧力波とが重なって前記破砕対象物に到達するように、破砕対象物と電極との間の距離と、媒体の材質と、第1および第2の時刻において電極に供給される電流の値とを決定することを特徴とする。
【0016】
ここで、第1の圧力波と第2の圧力波とが重なることにより(第2の圧力波が第1の圧力波に追いつくことにより)衝撃波が形成されるかどうかは、第1および第2の時刻が規定されている場合、第1および第2の圧力波の媒体中の伝播速度と、破砕対象物と電極との間の距離とにより決定される。そして、圧力波の媒体中での伝播速度は、上述のように基本的に媒体の材質と圧力波の圧力とにより決定される。第1および第2の圧力波の圧力は、第1および第2の時刻に供給される電流の値により決定される。つまり、破砕対象物と電極との間の距離と、媒体の材質と、電流の値とを調整することで、第1および第2の圧力波が重なることにより形成される衝撃波を破砕対象物に到達させることができる。したがって、破砕対象物を破壊するために必要な急峻な圧力増加を容易に得ることができる。たとえば、破砕対象物と電極との間の距離を十分に確保できず、媒体として水などを用いては第2の圧力波が第1の圧力波に追いつく前に第1の圧力波が破砕対象物に到達してしまう場合(第1および第2の圧力波を重ね合わせて衝撃波(急峻な圧力の立ち上り)を形成することができないような場合)を考える。このとき、媒体の材質を変更することにより媒体中での圧力波の伝搬速度を遅くすることで、電流値などの条件を変えずに第1および第2の圧力波を重ね合わせて衝撃波を形成することができる。あるいは、第1および第2の時刻における電流値を変更してもよい(たとえば第2の時刻における電流値をより大きくして、第2の圧力波の圧力をより高くすることにより、第2の圧力波の伝播速度を速くしてもよい)。
【0017】
上記1の局面または他の局面における破砕方法では、第1の時刻から第2の時刻まで、電極に供給される電流の値は連続的に大きくなっていることが好ましい。
【0018】
この場合、第1の時刻から第2の時刻までの間に発生する圧力波の圧力を徐々に大きくする事ができる。そのため、第1の時刻から第2の時刻までの間に発生する圧力波の伝搬速度を徐々に速くすることができるので、電極から破砕対象物への圧力波の到達時間を徐々に短くすることができる。したがって、電流の値を媒体の材質や電極と破砕対象物との間の距離などに基づいて所定の値に決定する事で、第1の時刻から第2の時刻までの間に発生する圧力波を、破砕対象物に到達する前に重ね合わせて衝撃波を形成することができる。
【0019】
上記1の局面または他の局面における破砕方法では、電流の値は、第1の時刻から第2の時刻までの間に電極に8kJ以上の電力を供給するように決定されていることが好ましい。第1の時刻から第2の時刻までの間の時間は、第1の時刻において発生した圧力波が破砕対象物に到達するのに必要な時間の約2/3以下であることが好ましい。
【0020】
この場合、上記のように電力量を供給することにより、第1および第2の圧力波により形成される衝撃波の圧力を、破砕対象物を破壊するのに十分な大きさにすることができる。
【0021】
また、電極に投入される電流が正弦波の半波であり、第1の時刻とは電流投入開始時である場合を考えると、上記のように第1および第2の時刻の間の時間を設定すれば、第1の時刻から第2の時刻の間に発生する圧力波を重ね合せて確実に衝撃波を形成できる。したがって、破砕対象物をこの衝撃波により確実に破壊できる。
【0022】
上記1の局面または他の局面における破砕方法では、媒体は液体であることが好ましい。媒体として水を用いてもよい。また、媒体として電解質などの溶質を水などの溶媒に溶解した溶液を用いてもよい。
【0023】
この場合、媒体として一般的に入手が容易で比較的安価な水を用いれば、破砕方法のランニングコストを低減できる。
【0024】
なお、破砕対象物と電極との間の距離は、第2の圧力波が第1の圧力波に追いついて衝撃波を形成するためにある程度の長さが必要である。その距離は、電極に供給される電流の値や立ち上りの条件、また媒体の材質などのより変化する。さらに、完全な衝撃波を形成しなくても、ある程度の圧力波の重畳が起これば、破砕対象物を十分に破砕できる場合もある。したがって、破砕対象物と電極との間の距離は、一般的には20mm以上、少なくとも10mmは必要である。
【0025】
また、この破砕対象物と電極との間の距離があまり大きくなると、破砕対象物に到達した際の圧力波が広がっているため、破砕対象物を破壊するのに必要な圧力(衝撃力)を確保する事が難しくなる。
【0026】
上記1の局面または他の局面における破砕方法は、媒体での音速を変更する工程をさらに備えることが好ましい。
【0027】
この場合、電極と破砕対象物との間の距離を十分確保できない時などに、媒体での音速(すなわち圧力波の伝搬速度)を遅くすれば、第1の圧力波が破砕対象物に到達するまでの時間(到達時間)を実質的に延長することができる。そのため、第2の圧力波が第1の圧力波に確実に重なる(追いつく)ようにすることができる。したがって、第1および第2の圧力波から衝撃波を確実に形成できるので、破砕対象物を確実に破壊できる。
【0028】
上記1の局面または他の局面における破砕方法では、媒体での音速を変更する工程が、媒体の温度を変更することを含んでいてもよい。
【0029】
ここで、媒体としてその音速が温度依存性を有する材料を用いている場合、媒体の温度を変更するという比較的簡単な工程により、媒体の材質を変更することなく媒体中の音速を変更できる。したがって、第1および第2の圧力波を重ね合せて衝撃波を形成できるように、プロセス条件をより詳細に設定できる。
【0030】
上記1の局面または他の局面における破砕方法では、媒体中に、媒体の材料とは異なる材料からなる部材を混入してもよい。
【0031】
この場合、媒体の音速はそのままであっても、第1および第2の圧力波が電極から破砕対象物まで媒体中を伝搬する際、上記のような部材により圧力波の進路が変更されることになる。したがって、電極から破砕対象物まで圧力波が進む経路の実効的な長さ(実効距離)を長くする事ができる。この結果、電極と破砕対象物との間の距離を十分確保できないような場合でも、上述した実効距離を長くする事により、第1および第2の圧力波が重なって衝撃波が形成されるようにすることができる。
【0032】
上記1の局面または他の局面における破砕方法では、媒体はシリコンオイルであってもよい。
【0033】
この場合、シリコンオイルにおける音速は水における音速の約2/3程度であるので、電極と破砕対象物との間の距離を十分確保できないような場合にシリコンオイルを媒体として用いれば、確実に第1および第2の圧力波を重ね合せて衝撃波を形成できる。
【0034】
上記1の局面または他の局面における破砕方法では、媒体に導電体が混入されていてもよい。
【0035】
この場合、導電体を混入する事で電極における放電を容易に発生させることができる。したがって、本発明による破砕方法を容易に実施できるようになる。また、媒体が絶縁体である場合など、この導電体により電極における放電を容易に発生させることができるので効果的である。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0037】
(実施の形態1)
図1は、本発明による破砕方法の実施の形態1を説明するための模式図である。図1を参照して、本発明による破砕方法を説明する。
【0038】
図1を参照して、本発明による破砕方法では、同軸電極1とパルスパワー源6と電源9と同軸ケーブル5とを備える破砕装置を用いる。パルスパワー源6はコンデンサ8、スイッチ7などを含む回路からなる。パルスパワー源6には電源9が接続されている。パルスパワー源6の回路は接地されている。同軸電極1はパルスパワー源6と同軸ケーブル5により接続されている。同軸電極1の先端には、接地された接地電極と、パルスパワー源6のスイッチ7が閉じられたときにコンデンサ8に蓄えられた電荷が導かれる電極とが配置されている。
【0039】
図1に示した本発明による破砕方法では、まず、岩などの破砕対象物2に同軸電極1を挿入するための孔10を形成する。孔10の内部は媒体としての水11により満たされている。この孔10の内部に、水11に先端部が浸漬するように同軸電極1を挿入する。同軸電極1の中心と破砕対象物2の壁面とは距離Lを隔てて位置する。距離Lは50mmとする。
【0040】
この場合、媒体として一般的に入手が容易で比較的安価な水11を用いる事で、破砕方法のランニングコストを低減できる。なお、媒体として水に電解質などを溶解した水溶液やその他の液体を用いてもよい。
【0041】
また、同軸電極1と破砕対象物2との間の距離Lを、後述する電流条件を用いる場合上記のように50mmとすれば、同軸電極1の放電点4において発生する圧力波を重ね合せて確実に衝撃波を形成することができる。なお、この距離Lがあまり大きくなると、破砕対象物2に到達する衝撃波の力の大きさが小さくなるため、破砕対象物2を破壊する力を確保する事が難しくなる。一方、この距離2があまり小さいと、後から発生した圧力の高い圧力波が、先に発生した圧力波に追いつく前に、先に発生した圧力波が破砕対象物2の壁面に到達するため、圧力波を重ねあわせて衝撃波を形成することが困難になる。
【0042】
パルスパワー源6のコンデンサ8は電源9から供給される電荷を蓄積する。コンデンサ8に十分電荷が蓄積された後、ギャップスイッチなどを用いたスイッチ7を閉じることにより、同軸ケーブル5を介して同軸電極1に電流が供給される。同軸電極1の先端において、電極と接地電極との間に電位差が生じることにより放電点4において放電が起こる。この放電により、急激なジュール加熱によって水11がガス化し、膨張することによって水11中において圧力波が発生する。圧力波の圧力は、水11中において消費されるエネルギーに比例する。このエネルギーは、投入電流の2乗×放電抵抗に比例する。すなわち、発生する圧力波の圧力は同軸電極1に供給される電流の値の2乗に比例する。また、媒体中での圧力波の伝播速度は、基本的に媒体の材質と圧力波の圧力とにより決定される。
【0043】
たとえば、同軸電極1に供給される電流の波形が以下に説明するように正弦波の場合、電流の供給開始時から供給された電流の値は徐々に大きくなる。このため、第1の時刻としての電流の供給開始時に発生した第1の圧力波より、その後の第2の時刻としての所定の時刻に発生する第2の圧力波の圧力はだんだん大きくなる。そのため、第2の圧力波の伝播速度を第1の圧力波の伝播速度より速くできる。
【0044】
また、圧力波が放電点4において発生してから破砕対象物2に到達するまでの時間(到達時間)は、同軸電極1と破砕対象物2との間の距離Lと圧力波の伝播速度とにより決定される。圧力波の圧力が高いほど伝播速度は上昇するので、圧力波の圧力が高くなれば到達時間は短くなる。そのため、第2の圧力波の圧力を第1の圧力波の圧力より十分高くしておけば、先に発生した第1の圧力波が破砕対象物2に到達する前に、第2の圧力波が第1の圧力波に追いつくことができる。その結果、第1および第2の圧力波が重なり合うことによって衝撃波を形成できる。
【0045】
このようにすれば、破砕対象物2の表面に、第1および第2の圧力波が重なることにより形成される衝撃波を到達させることができる。この結果、破砕対象物2を破砕するために必要な圧力を容易に得ることができる。
【0046】
なお、図2に示すように、媒体としてゼリー状物質3など粘性のある材料を用いれば、図1に示したように破砕対象物2に孔10を形成する必要はない。図2は、本発明による破砕方法の実施の形態1の変形例を説明するための模式図である。図2を参照して、媒体としてゼリー状物質3を用いれば、孔10(図1参照)を形成することなく、破砕対象物2と同軸電極1とを距離Lを隔てて配置し、かつ、破砕対象物2と同軸電極1との間に媒体としてのゼリー状物質3を配置することができる。
【0047】
以下、破砕対象物2と同軸電極1との間の距離Lを50mmとし、媒体として水11を用い、同軸電極1に投入する電流を図3に示すようにその周期が0.2ミリ秒(ms)、最大電流値が300kAである正弦波の半波である場合について説明する。図3は、本発明による破砕方法の実施の形態1において同軸電極1に投入される電流の値(供給電流値)と供給開始後の時刻との関係を示すグラフである。
【0048】
なお、上記のような条件下では、後から発生した圧力波が先に発生した圧力波に追いつくことにより衝撃波を発生させるためには、距離Lを40mm以上60mm以下とすることが好ましい。ただし、この距離Lの値は媒体の材質や同軸電極1への投入電流値などにより変化する。また、完全な衝撃波を形成しなくても、ある程度の圧力波の重畳が起これば、破砕対象物2を十分に破砕できる場合もある。したがって、破砕対象物2と同軸電極1との間の距離Lは、一般的には20mm以上、少なくとも10mmが下限値と考えられる。一方、距離Lがあまり長いと、圧力波が広がって波高値の減少が著しくなるため、破壊力が小さくなる。また、同軸電極1の直径が40mm〜70mm程度であること、および孔10(図1参照)のサイズなどを考慮すると、距離Lの最大値は100mm程度とすることが好ましい。したがって、距離Lの範囲は、一般的には10mm以上100mm以下、好ましくは20mm以上60mm以下、より好ましくは40mm以上60mm以下である。
【0049】
図4は、本発明による破砕方法の実施の形態1における、同軸電極1に電流の投入を開始してからの時刻と発生圧力との関係を示すグラフである。図4を参照して、横軸が同軸電極1に電流の投入を開始してからの時刻であり、縦軸がそれぞれの時刻において発生した圧力波の圧力を示している。圧力波の圧力は同軸電極1に投入された電流の2乗×放電抵抗に比例する。図4では、時刻がほぼ0.5×10-4秒の時に発生した圧力波の圧力が9×108Paと最大値を示している。なお、放電抵抗は一定であると仮定している。
【0050】
図5は、本発明による破砕方法の実施の形態1における、電極に電流の投入を開始してからの時刻と発生した圧力波の伝播速度との関係を示すグラフである。縦軸は圧力波の伝播速度を示し、横軸は同軸電極1に電流の投入を開始してからの時刻を示す。横軸方向にそれぞれの圧力波が発生した時刻をとり、縦軸方向にその圧力波の伝播速度をとった位置に点をプロットすることにより、図5の曲線は形成されている。なお、圧力波の圧力が極めて大きな領域については実測値が存在しないため、シミュレーションによる計算結果のデータを用いている。図4および5を参照して、圧力波の圧力が高くなればなるほど、圧力波の伝播速度(圧力波の速度)が速くなることがわかる。
【0051】
図6は、本発明による破砕方法の実施の形態1における、電極に電流の投入を開始してからの時刻と、それぞれの時刻で発生した圧力波が破砕対象物の壁面に到達する時刻との関係を示すグラフである。図6を参照して、横軸は同軸電極1に電流の投入を開始してからの時刻を表し、縦軸は圧力波が破砕対象物2の壁面に到達する時刻を表している。横軸において圧力波の発生した時刻をとり、その位置から縦軸方向において、当該圧力波が破砕対象物2の壁面に到達する時刻に該当する位置に点をプロットすることにより、図6の曲線は形成されている。
【0052】
図3および6を参照して、第1の時刻としての投入開始直後から、第2の時刻としての0.2×10-4秒までの間に発生した圧力波は、同軸電極1に電流の投入を開始してから約3.5×10-5秒(0.35×10-4秒)後というほぼ同じタイミングで壁面に到達する。これは、同軸電極1と破砕対象物2との間の距離L、媒体の材質および供給電流の波形(第1および第2の時刻における電流値)を上記のように選択することにより可能になる。つまり、図5を参照して、電流の投入開始直後から0.2×10-4秒までの間に連続的に発生する圧力波の伝播速度が徐々に大きくなっているので、圧力波が同軸電極1から破砕対象物2の壁面まで伝播する際、後から発生した圧力波が先に発生した圧力波に追いつくことになる。このようにして、複数の圧力波が重なって衝撃波が形成されている。この衝撃波が破砕対象物2の壁面に到達する。
【0053】
圧力波が破砕対象物2の壁面に到達した際に、壁面が受ける圧力の計算結果を図7に示す。図7は、本発明による破砕方法の実施の形態1における、同軸電極1に電流の投入を開始してからのそれぞれの時刻で発生する圧力波が壁面に到達した際に壁面に与える圧力を、圧力波が破砕対象物の壁面に到達する時刻をX軸(横軸)とし、圧力波が壁面に与える圧力の値をY軸(縦軸)としたXY平面にプロットしたグラフである。図7の曲線は、同軸電極1に電流の投入を開始してから1×10-4秒後までに発生した圧力波について、それぞれの時刻で発生した圧力波が壁面に到達した際に与えるであろう圧力の計算値をプロットすることにより形成されている。
【0054】
図6および7からもわかるように、同軸電極1に電流の投入を開始してから3.5×10-5秒後において、電流の投入を開始後0.2×10-4秒までに発生した複数の圧力波が重なって衝撃波として壁面に到達するので、実際に壁面が受ける圧力は、図8に示すように大きなピーク値を示す。なお、後にも述べるように、衝撃波形成時の実際に壁面が受ける圧力の計算は難しく、本発明の実施の形態では、先に発生した圧力波に後発の圧力波が追いついた場合の圧力波の音速変化を考慮していない簡易的なシミュレーション計算を行なっている。ここで、図8は、本発明による破砕方法の実施の形態1における、圧力波が破砕対象物の壁面に到達する時刻と、破砕対象物の壁面における実際の圧力との関係を示すグラフである。横軸は圧力波が破砕対象物2の壁面に到達する時刻を示し、その原点は同軸電極1に電流の投入を開始した時刻である。図8に示した同軸電極1に電流の投入を開始してから3.5×10-5秒後における圧力のピークは、図6に示した同軸電極1に電流の投入を開始後0.2×10-4秒までに発生した圧力波が破砕対象物の壁面に到達する前に重なることにより衝撃波となっているために発生する。このような衝撃波の圧力はおよそ8×1010Pa程度となり、岩などの破砕対象物2を破壊するのに十分な圧力となる。
【0055】
図3に示したように、第1の時刻としての電流の投入開始直後から第2の時刻としての0.2×10-4秒まで、同軸電極1に供給される電流値を連続的に大きくなるようにしておけば、図4に示すように電流の投入開始直後から0.2×10-4秒までの間に発生する圧力波の圧力を徐々に大きくする事ができる。そのため、図5に示すように、電流の投入開始直後から0.2×10-4秒までの間に発生する圧力波の伝搬速度を徐々に速くすることができるので、同軸電極1から破砕対象物2への圧力波の到達時間を徐々に短くすることができる。したがって、本発明の実施の形態1においては、電流の投入開始直後から0.2×10-4秒までの間に発生する圧力波を重ね合わせて衝撃波として破砕対象物2に到達させる事が可能になる。この結果、高い圧力を示す衝撃波により破砕対象物を破壊できる。
【0056】
また、図6〜8を参照して、図8に示した0.35×10-4秒での衝撃波は、電流の投入開始直後から0.2×10-4秒までに発生した圧力波が重なり合うことにより形成される。この0.35×10-4秒という時間は、図6からもわかるように、第1の時刻としての電流の投入開始直後に発生した圧力波が破砕対象物2に到達するのに必要な時間である。つまり、本発明の実施の形態1に示した体系では、電流の投入開始直後から0.2×10-4秒、つまり、電流の投入開始直後に発生した圧力波が破砕対象物2に到達するのに必要な時間の2/3までに発生した圧力波が衝撃波を形成している。したがって、この時間内に破砕対象物を破壊することができる衝撃波を形成可能な圧力波を形成すればよい。具体的には、この時間内に8kJ以上の電力を同軸電極1に供給することにより必要な圧力波を形成すれば、岩石などの破砕対象物を破壊するために十分な圧力を有する衝撃波を確実に形成できるという顕著な効果を得ることができる。なお、本発明の実施の形態1では、電流の投入開始直後から0.2×10-4秒までの投入電力が同じであれば、それ以降の投入電力の大小が破砕の効果に影響を及ぼすことは少ない。
【0057】
(実施の形態2)
本発明による破砕方法の実施の形態1において、同軸電極1と破砕対象物との距離Lを短くした場合、たとえばこの距離Lを約25mmとした場合を考える。その他の条件、たとえば媒体の材質や投入電力条件などは実施の形態1と同一とする。図9は、本発明による破砕方法の実施の形態1において、同軸電極1と破砕対象物2との距離を短くした場合の、同軸電極に電流の投入を開始してからの時刻と、それぞれの時刻で発生した圧力波が破砕対象物の壁面に到達する時刻との関係を示すグラフである。図9は図6に対応する。
【0058】
図9を参照して、同軸電極1と破砕対象物2との距離を短くした場合、先に発生した第1の圧力波(たとえば同軸電極1に電力を投入開始した直後に発生した圧力波)に後から発生した第2の圧力波(たとえば時刻0.2×10-4秒において発生した圧力波)が追いつく前に、第1の圧力波は破砕対象物2に到達するため、異なるタイミングで発生した第1および第2の圧力波が、破砕対象物2に到達する前に重なることはない。つまり、このままでは本発明の実施の形態1で示したような衝撃波は形成されない。
【0059】
このときのそれぞれの圧力波が破砕対象物2の壁面に与える圧力を図10に示す。図10は、本発明による破砕方法の実施の形態1において、同軸電極と破砕対象物との距離を短くした場合の、同軸電極に電流の投入を開始してからのそれぞれの時刻で発生する圧力波が壁面に到達した際に壁面に与える圧力を、圧力波が破砕対象物の壁面に到達する時刻をX軸とし、壁面に圧力波が与える圧力の値をY軸としたXY平面にプロットしたグラフである。図10は図7に対応する。
【0060】
そして、この場合の破砕対象物2の壁面における実際の圧力を図11に示す。図11は、本発明による破砕方法の実施の形態1において、同軸電極と破砕対象物との距離を短くした場合の、圧力波が破砕対象物の壁面に到達する時刻と、破砕対象物の壁面における実際の圧力との関係を示すグラフであり、図8に対応する。図9〜11を参照して、このように同軸電極1と破砕対象物2との距離Lを小さくしすぎた場合、圧力波が重ね合せられることにより形成される衝撃波は発生しない事がわかる。
【0061】
そこで、このように同軸電極1と破砕対象物2との距離Lが小さい場合、媒体の材質を変更して、媒体中の圧力波の伝播速度を小さくすることが考えられる。たとえば、図12に示すように、媒体での音速を変更する工程として、媒体としてシリコンオイル12を選択することが考えられる。図12は、本発明による破砕方法の実施の形態2を説明するための模式図である。
【0062】
図12を参照して、媒体としてのシリコンオイル12はその音速が水の2/3程度であるため、媒体中の圧力波の伝播速度を確実に低減できる。したがって、同軸電極1と破砕対象物2との距離Lが小さく、媒体として水を用いると圧力波を重ね合せることが困難な場合に、シリコンオイル12を用いることで圧力波を重ね合せて衝撃波を形成することができる。なお、シリコンオイル12は環境への影響が小さいという点からも媒体として適した材料である。また、シリコンオイル12は絶縁体であるが、高電圧を印加すれば絶縁破壊を起こし、放電の発生は可能である。さらに、このシリコンオイル12に導電体からなる不純物を混入してもよい。この場合、同軸電極1における放電を容易に発生させることができる。
【0063】
また、音速を変更する工程として、媒体としての水11の温度を低下させてもよい。この場合、媒体をシリコンオイル12に変更した場合と同様の効果を得ることができる。なお、媒体としてその音速が温度依存性を有する材料を用いる場合、このように媒体の音速を変更するために媒体の温度を変化させるという手段をとることができる。
【0064】
また、図13に示すように、媒体としてのゼリー状物質3に、ゼリー状物質とは異なる材質の部材、たとえば小石13などを混入してもよい。図13は、本発明による破砕方法の実施の形態2の変形例を説明するための模式図である。このように、ゼリー状物質3に小石13を混入することで、媒体としてのゼリー状物質3の音速はそのままであっても、圧力波が同軸電極1から破砕対象物2までゼリー状物質3中を伝播する際、小石13により圧力波の進路が変更されることになる。したがって、同軸電極1から破砕対象物2まで圧力波が進む経路の実効的な長さ(実効距離)を長くする事ができる。この結果、同軸電極1と破砕対象物2との間の距離Lを十分確保できないような場合、上述した実効距離を長くする事により、圧力波が重なって衝撃波が形成されるようにすることができる。なお、上記のような方策は、同軸電極1に供給される電流の立上りがあまり急激ではない場合(単位時間あたりの電流値の増加率が小さい場合)についても適用でき、上記のように媒体の材質などを変更することにより圧力波を重ね合わせて衝撃波を形成することが可能である。
【0065】
上述のように、媒体の材質を変更する、あるいは媒体中の音速を変更する工程を実施することにより、本発明の実施の形態1と同様に衝撃波を形成することができる。たとえば、図12に示した本発明の実施の形態2による破砕方法によれば、図14に示すように、同軸電極1に電流を供給開始した直後から、時刻が0.2×10-4秒までの間に発生した圧力波を重ね合わせて、破砕対象物2の壁面にほぼ同一タイミングで到達させる事ができる。
【0066】
図14は、本発明による破砕方法の実施の形態2における、同軸電極に電流の投入を開始してからの時刻と、それぞれの時刻で発生した圧力波が破砕対象物の壁面に到達する時刻との関係を示すグラフである。図14では、媒体中の音速を水中の音速の2/3とした。図14は、図6に対応する。そして、この場合、図15および16に示すように、本発明の実施の形態1と同様に、圧力波を重ねあわせることにより衝撃波を形成する事ができる。ここで、図15は、本発明による破砕方法の実施の形態2における、同軸電極に電流の投入を開始してからのそれぞれの時刻で発生する圧力波が壁面に到達した際に壁面に与える圧力を、圧力波が破砕対象物の壁面に到達する時刻をX軸とし、壁面に圧力波が与える圧力の値をY軸としたXY平面にプロットしたグラフであり、図7に対応する。また、図16は、本発明による破砕方法の実施の形態2における、圧力波が破砕対象物の壁面に到達する時刻と、破砕対象物の壁面における実際の圧力との関係を示すグラフであり、図8に対応する。
【0067】
なお、同軸電極1に供給される電流の波形を、後述するように電流値の立上りの早い波形、たとえば最大電流値はほぼ同じで、より周期の短い正弦波などにすることにより、後から発生する圧力波の伝播速度を速くしてもよい。このようにすれば、圧力波を重ね合せて本発明の実施の形態1と同様に衝撃波を形成できる。
【0068】
(実施の形態3)
圧力波が重ね合せられて形成される衝撃波の圧力を高めることができれば、より硬い岩盤などを破砕することができる。衝撃波の圧力を高める方法として、同軸電極1に投入する電流の立上がりを早くしてもよい。図17は、本発明による破砕方法の実施の形態3において同軸電極1に投入される電流の値と供給開始後の時刻との関係を示すグラフである。図17では、参考のため本発明の実施の形態1において同軸電極1に供給される電流の値も示している。図17を参照して、本発明の実施の形態3では、投入する電流の周期を50μ秒(0.5×10-4秒)としている。このため、電流値のピーク値は実施の形態1における投入電流と同じにしているが、同軸電極1に供給される電力は実施の形態1の場合と比べて約1/4になっている。また、本発明の実施の形態3では、他の条件は基本的に本発明の実施の形態1における条件と同一とした。
【0069】
このような条件において発生した圧力波が破砕対象物2に到達する時刻を図18に示す。図18は、本発明による破砕方法の実施の形態3における、同軸電極に電流の投入を開始してからの時刻と、それぞれの時刻で発生した圧力波が破砕対象物の壁面に到達する時刻との関係を示すグラフである。図18は図6に対応する。図18を参照して、同軸電極1に電流の投入を開始した直後の圧力波より、同軸電極1に電流の投入を開始してから約1×10-5秒(10μ秒)後に発生した圧力波が計算上は先に破砕対象物2の壁面に到達する、つまり後から発生した圧力波が先に発生した圧力波に追いつくことができることがわかる。このため、圧力波を重ね合わせて衝撃波を形成できる。
【0070】
なお、図18は、先に発生した圧力波に後発の圧力波が追いついた場合の圧力波の音速変化を考慮していない簡易的なシミュレーション計算の結果であるため、同軸電極1に電流の投入を開始してから約1×10-5秒(10μ秒)後に発生した圧力波が、同軸電極1に電流の投入を開始した直後の圧力波より先に破砕対象物に到達するという計算結果となっている(なお、図7、8、11、15、16および19についても、同様の簡易的なシミュレーション計算を行なっている)。しかし、実際には、後から発生した圧力波が先行する圧力波に追いついた場合、これらの圧力波は重なり合い、一体となる(つまり、後発の圧力波が先行する圧力波を追い越すことは無い)。この結果、より圧力の高い圧力波が形成されることになる。すなわち、後発のより高い圧力を有する圧力波が先行する圧力波に順次追いついて一体となり、衝撃波が形成される。このような衝撃波が形成される現象を正確にシミュレーションで再現するためには、非線形計算を含む複雑な計算を行なう必要がある。そのため、ここでは現象をわかりやすく表現するために簡素化した計算式を用いて計算を行なっている。したがって、圧力波が重なって形成される衝撃波の波高値(圧力値)などは現実の衝撃波の波高値と異なる可能性がある。しかし、後発の圧力波が先行する圧力波に追いつくための、いわゆる助走距離(破砕対象物2と同軸電極1との間の距離)が一定の長さ必要であることは確かであり、圧力波を重ね合わせることのできる条件、さらに衝撃波の圧力の急峻な立ち上りを形成できる条件を検証するという意味において、このシミュレーション計算結果は正しい。
【0071】
また、本発明の実施の形態3における破砕対象物の壁面に加えられる実際の圧力を図19に示す。図19は、本発明による破砕方法の実施の形態3における、圧力波が破砕対象物の壁面に到達する時刻と、破砕対象物の壁面における実際の圧力との関係を示すグラフである。図19は図8に対応する。図18および19を参照して、後発の圧力波が先行する圧力波と重なることにより衝撃波が形成され、その衝撃波が破砕対象物2の壁面に到達して大きな圧力を壁面に加えていることがわかる。また、図8と図19とを対比すると、図19に示した本発明の実施の形態3における衝撃波の方が実施の形態1における衝撃波より高い圧力を示している(図19に示した衝撃波の圧力の値(約6×109Pa)は、図8に示した衝撃波の圧力の値(約26×108Pa)の3倍近くになっている)。つまり、本発明の実施の形態3では、図17に示したように電流の立上がりを早くすることで、供給電力量を小さくできる一方、衝撃波の圧力を高めることができる。これは、電流の立上がりを早めることにより、投入される全電力に対する衝撃波の形成に寄与する電力の割合が増加したためである。したがって、同軸電極1に投入する電流の立上がりを早くすれば、より小さな投入電力で大きな圧力の衝撃波を形成できる。
【0072】
【実施例】
本発明による破砕方法について、図20に示すような回路を用いて検証試験を行なった。図20は、本発明による破砕方法の実施例における検証装置の回路図である。図20を参照して、回路はコンデンサC1、抵抗R1〜R3、インダクタLおよびスイッチS1を備える。コンデンサC1については静電容量が2mFおよび0.333mFという2種類のものを用意した。また、抵抗R1の抵抗値は2mΩ、抵抗R2およびR3の抵抗値は10mΩ、インダクタLのインダクタンスは2μHである。なお、このインダクタLは、ケーブルなどのインダクタンスを集中定数回路で表したものであり、抵抗R1、R2についても同様である。抵抗R3は同軸電極1における媒体中での放電時の放電抵抗を表わしている。図20に示した回路では、コンデンサC1に蓄積した電荷を、スイッチS1を閉じることにより放出する。ここでは、コンデンサC1の静電容量を2mFおよび0.333mFと変え、他の条件は同一として、コンデンサC1に蓄積した電荷の放出実験を行なった。
【0073】
コンデンサC1の静電容量を2mFおよび0.333mFとした場合の、抵抗R3における放電電流波形を図21〜24に示す。図21は、図20に示した検証装置においてコンデンサC1の静電容量を2mFとした場合(以下、ケース1と呼ぶ)の放電時の放電開始からの時刻と電流値との関係を示すグラフである。また、図22は、図21に示したグラフの部分拡大図である。また、図23は、図20に示した検証装置においてコンデンサの静電容量を0.333mF(以下、ケース2と呼ぶ)とした場合の放電時の放電開始からの時刻と電流値との関係を示すグラフである。図24は、図23に示したグラフの部分拡大図である。
【0074】
図21〜24を参照して、コンデンサに蓄積される電荷量についてケース1はケース2の約6倍となるが、放電電流波形については、特に放電開始から20μ秒までの間、ケース1とケース2とはほとんど同様の電流波形となっている。つまり、実施の形態1などで示したように、水を媒体として用い、同軸電極1と破砕対象物2との間の距離を50mmとした条件下では、放電開始後20μ秒までに発生する圧力波が衝撃波の圧力などを決定することを考えれば、実施の形態1に示した構成においてパルスパワー源としてケース1およびケース2に示した回路を用いた場合に発生する衝撃波の圧力はほとんど変わらないと考えられる。
【0075】
このように、衝撃波の形成に寄与する圧力波が発生する期間(ここでは放電開始後20μ秒まで)に供給される電力が衝撃波の圧力(強さ)を決定する。つまり、放電開始後20μ秒以後に供給される電力は特に衝撃波の形成には寄与しないため、このような衝撃波の形成に寄与しない電力を削減することにより、同軸電極に供給される電力の無駄を省き、最適化することが可能になる。また、コンデンサに蓄積される電荷量を少なくできるので、破砕装置を小型化することも可能になる。
【0076】
なお、放電開始後20μ秒までに供給される電力は、ケース1およびケース2とも、その期間の電流値および抵抗R3の抵抗値から約8kJと計算される。これだけの電力を放電開始後20μ秒までに供給して、衝撃波を形成できれば、岩石などの破砕対象物を充分破壊できる。
【0077】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0078】
【発明の効果】
このように、本発明によれば、投入エネルギーを効率よく利用して、圧力波を重ね合わせることにより形成された衝撃波を用いて岩などの破砕対象物の破壊を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による破砕方法の実施の形態1を説明するための模式図である。
【図2】 本発明による破砕方法の実施の形態1の変形例を説明するための模式図である。
【図3】 本発明による破砕方法の実施の形態1において同軸電極1に投入される電流の値と供給開始後の時刻との関係を示すグラフである。
【図4】 本発明による破砕方法の実施の形態1における、同軸電極に電流の投入を開始してからの時刻と発生圧力との関係を示すグラフである。
【図5】 本発明による破砕方法の実施の形態1における、同軸電極に電流の投入を開始してからの時刻と発生した圧力波の伝播速度との関係を示すグラフである。
【図6】 本発明による破砕方法の実施の形態1における、同軸電極に電流の投入を開始してからの時刻と、それぞれの時刻で発生した圧力波が破砕対象物の壁面に到達する時刻との関係を示すグラフである。
【図7】 本発明による破砕方法の実施の形態1における、同軸電極に電流の投入を開始してからのそれぞれの時刻で発生する圧力波が壁面に到達した際に壁面に与える圧力を、圧力波が破砕対象物の壁面に到達する時刻をX軸とし、壁面に圧力波が与える圧力の値をY軸としたXY平面にプロットしたグラフである。
【図8】 本発明による破砕方法の実施の形態1における、圧力波が破砕対象物の壁面に到達する時刻と、破砕対象物の壁面における実際の圧力との関係を示すグラフである。
【図9】 本発明による破砕方法の実施の形態1において、同軸電極と破砕対象物との距離を短くした場合の、同軸電極に電流の投入を開始してからの時刻と、それぞれの時刻で発生した圧力波が破砕対象物の壁面に到達する時刻との関係を示すグラフである。
【図10】 本発明による破砕方法の実施の形態1において、同軸電極と破砕対象物との距離を短くした場合の、同軸電極に電流の投入を開始してからのそれぞれの時刻で発生する圧力波が壁面に到達した際に壁面に与える圧力を、圧力波が破砕対象物の壁面に到達する時刻をX軸とし、壁面に圧力波が与える圧力の値をY軸としたXY平面にプロットしたグラフである。
【図11】 本発明による破砕方法の実施の形態1において、同軸電極と破砕対象物との距離を短くした場合の、圧力波が破砕対象物の壁面に到達する時刻と、破砕対象物の壁面における実際の圧力との関係を示すグラフである。
【図12】 本発明による破砕方法の実施の形態2を説明するための模式図である。
【図13】 本発明による破砕方法の実施の形態2の変形例を説明するための模式図である。
【図14】 本発明による破砕方法の実施の形態2における、同軸電極に電流の投入を開始してからの時刻と、それぞれの時刻で発生した圧力波が破砕対象物の壁面に到達する時刻との関係を示すグラフである。
【図15】 本発明による破砕方法の実施の形態2における、同軸電極に電流の投入を開始してからのそれぞれの時刻で発生する圧力波が壁面に到達した際に壁面に与える圧力を、圧力波が破砕対象物の壁面に到達する時刻をX軸とし、壁面に圧力波が与える圧力の値をY軸としたXY平面にプロットしたグラフである。
【図16】 本発明による破砕方法の実施の形態2における、圧力波が破砕対象物の壁面に到達する時刻と、破砕対象物の壁面における実際の圧力との関係を示すグラフである。
【図17】 本発明による破砕方法の実施の形態3において同軸電極1に投入される電流の値と供給開始後の時刻との関係を示すグラフである。
【図18】 本発明による破砕方法の実施の形態3における、同軸電極に電流の投入を開始してからの時刻と、それぞれの時刻で発生した圧力波が破砕対象物の壁面に到達する時刻との関係を示すグラフである。
【図19】 本発明による破砕方法の実施の形態3における、圧力波が破砕対象物の壁面に到達する時刻と、破砕対象物の壁面における実際の圧力との関係を示すグラフである。
【図20】 本発明による破砕方法の実施例における検証装置の回路図である。
【図21】 図20に示した検証装置においてコンデンサの静電容量を2mFとした場合の放電時の放電開始からの時刻と電流値との関係を示すグラフである。
【図22】 図21に示したグラフの部分拡大図である。
【図23】 図20に示した検証装置においてコンデンサの静電容量を0.333mFとした場合の放電時の放電開始からの時刻と電流値との関係を示すグラフである。
【図24】 図23に示したグラフの部分拡大図である。
【図25】 従来の破砕装置を示す模式図である。
【符号の説明】
1 同軸電極、2 破砕対象物、3 ゼリー状物質、4 放電点、5 同軸ケーブル、6 パルスパワー源、7 スイッチ、8 コンデンサ、9 電源、10孔、11 水、12 シリコンオイル、13 小石。

Claims (7)

  1. 電極に電流を供給することにより発生する放電によって形成された圧力波を、媒体を介して破砕対象物に到達させて前記破砕対象物を破壊する破砕方法であって、
    圧力波の圧力の上昇に伴って、媒体中での圧力波の伝播速度が上昇することを利用して、第1の時刻において発生する第1の圧力波と前記第1の時刻より後の第2の時刻において発生する第2の圧力波とが重なって前記破砕対象物に到達するように、前記第1および第2の時刻において前記電極に供給される電流の値を決定することを特徴とする、破砕方法。
  2. 電極に電流を供給することにより発生する放電によって形成された圧力波を、媒体を介して前記電極と距離を隔てて位置する破砕対象物に到達させて前記破砕対象物を破壊する破砕方法であって、
    圧力波の圧力の上昇に伴って、媒体中での圧力波の伝播速度が上昇することを利用して、第1の時刻において発生する第1の圧力波と前記第1の時刻より後の第2の時刻において発生する第2の圧力波とが重なって前記破砕対象物に到達するように、前記破砕対象物と前記電極との間の距離と、媒体の材質と、前記第1および第2の時刻において前記電極に供給される電流の値とを決定することを特徴とする、破砕方法。
  3. 前記第1の時刻から前記第2の時刻まで、前記電極に供給される電流の値は連続的に大きくなっている、請求項1または2に記載の破砕方法。
  4. 前記電流の値は、前記第1の時刻から前記第2の時刻までの間に前記電極に8kJ以上の電力を供給するように決定され、前記第1の時刻から前記第2の時刻までの間の時間は、前記第1の時刻において発生した圧力波が前記破砕対象物に到達するのに必要な時間の2/3以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の破砕方法。
  5. 前記媒体での音速を変更する工程をさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の破砕方法。
  6. 前記媒体での音速を変更する工程は、前記媒体の温度を変更することを含む、請求項5に記載の破砕方法。
  7. 前記媒体中に、前記媒体の材料とは異なる材料からなる部材を混入する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の破砕方法。
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