以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、バンドパスフィルタの回路構成を示す説明図である。
バンドパスフィルタは、所定の間隔をおいて上下に積層されたN個(N≧2)の共振器1,2(図1に示すものは2個の共振器)を備えている。この共振器は、例えば上面に導体パターンが形成された誘電体層が複数積層されるなどにより、導体パターンおよび誘電体層が交互に複数積層されたもので、ストリップ線路、マイクロストリップ線路又はコプレーナ線路を含む構造により構成される。ここで、共振器1,2がストリップ線路またはマイクロストリップ線路を含む構造の場合としては、この線路を構成するグランド(図示しない)が例えば図1に示す入力線路3よりも上側および/または出力線路4よりも下側に配置され、共振器1と共振器2でこのグランドを共有するようになっている構造のものが挙げられる。
前記2個の共振器1,2は、同一寸法(通過帯域の略中心周波数における誘電体層内部の伝搬波長をλとすると信号伝搬方向の長さは基本的にλ/4)の導体を含む構造であり、積層方向(図1の上方向)から見て、少なくとも一部、好ましくはほぼ全部が重ねて配置されている。そして、この重なりにより2個の共振器1,2は、互いに電磁的に結合している(図1にMで示している)。この結合は、いわゆる「ブロードサイド結合」といい、上下2個の共振器1,2の主面同士を対向させて結合させる方法である。ここで、通常、狭帯域フィルタを設計する際には、中心周波数と共振周波数をほぼ等しくして行われている。しかし、ブロードサイド結合を用いた広帯域バンドパスフィルタの設計では、結合が強いため、フィルタの中心周波数と共振器の共振周波数は必ずしも一致しない。従って、フィルタの中心周波数に対して上記共振器の共振周波数はやや高めに設定しておく必要があり、ここでいう略中心周波数とは上記共振周波数までの周波数のずれを含むことを意味する。
また、前記2個の各共振器1,2の一端(入力部,出力部に一端が結合される場合はこの結合される側とは反対側(図1の右側)にある端部)は、ともに接地されている(接地端という)。
また、図では入力部への入力方向と出力部からの出力方向、すなわち信号伝搬方向を「F」で表しており、共振器の信号伝搬方向Fに沿った長さ(図に示す共振器の長手方向の長さ)は、通過帯域の略中心周波数における誘電体層内部の伝搬波長をλとすると、基本的にλ/4である。ここで、基本的にとは、共振器間の結合調整等、フィルタ全体的な特性を出すために、共振器の長さをλ/4から微妙にずらす(微調整する)必要があるとともに、後述のようにキャパシタ素子またはインダクタ素子の利用により共振器の長さをλ/4よりも短縮することができるので、このように表現したものである。
そして、図1に示す各共振器1,2の一端は、それぞれキャパシタ素子C1,C2を介して入力電極IN、出力電極OUTに電磁的に結合されている。これらの電磁気的に結合された部分を「入力部」、「出力部」という。すなわち、キャパシタ素子C1,C2は入力部,出力部に含まれ、その一部を構成している。ここで、共振器に結合される結合素子としては、キャパシタ素子C1,C2以外にインダクタ素子を用いることもできる。また、必ずしも集中定数素子を用いる必要はなく、分布定数線路を用いて入力部,出力部を構成してもよい。また、後述するように入力線路および出力線路を用いて面全体に結合(ブロードサイド結合)されてもよい。
このような構造により、2個の共振器1,2同士で強い結合を得ることができ、通過帯域の広帯域化を図ることができる。また、バンドパスフィルタの小型化を図ることもできる。
一方、図2はバンドパスフィルタの他の回路構成を示す説明図である。この回路構成は、図1のものと比べて、入力方向F及び出力方向Fが、互いに同じ方向にある(入力端と出力端が積層方向から見て反対側に位置している)点で異なっている。したがって、各共振器1,2の接地端は、積層方向から見て前段の共振器の反対側の端部に存在し、互いに反対側にある。
この構造は、図1と同様、通過帯域の広帯域化、小型化を図ることができるとともに、接地端の位置が互い違いになるような構造になっていることにより、図1の構造よりも、共振器1,2同士の結合を強化でき、さらに広帯域化を実現するのに有利になる(後に図35、図36のデータを比較しながら説明する)。
図3は、バンドパスフィルタのさらに他の回路構成を示す説明図である。各共振器1,2の一端(入力端,出力端)を、それぞれキャパシタ素子C1,C2を介して入力電極IN、出力電極OUTに電磁的に結合させるとともに、共振器の入力端,出力端(非接地端)をキャパシタ素子C3,C4を介して接地した構造を示している。
この回路構成は、各共振器1,2の入力方向F及び出力方向Fが異なっている(入力端と出力端(非接地端同士)が積層方向から見て同一側に位置し、接地端は積層方向から見て共振器の同一側の端部に位置している)。また、図1のものと比べて、非接地端がキャパシタ素子C3,C4を介して接地されているところが異なっている。これにより、共振器1,2の実効長の一部がキャパシタ素子C3,C4で置換され、共振器1,2の長さ(信号伝搬方向の長さ)を図1における共振器の長さであるλ/4よりも短縮させることができる。
図4は、バンドパスフィルタのまたさらに他の回路構成を示す説明図である。各共振器1,2の非接地端を、それぞれキャパシタ素子C1,C2を介して入力電極IN、出力電極OUTに電磁的に結合させるとともに、これらの非接地端をキャパシタ素子C3,C4を介して接地した構造を示している。
この構成は、共振器1,2の非接地端が、共振器1と共振器2とで反対側の位置にある。これは、図2の構造で、非接地端をキャパシタ素子C3,C4を介して接地したのと同じ構成になる。この構成においても、共振器1,2の実効長の一部がキャパシタ素子C1,C2により置き換えられるので、共振器1,2の長さ(信号伝搬方向の長さ)をλ/4よりも短縮することができる。したがって、図2と同様に小型化を図ることができるとともに、図1の構造と比べて、より広帯域化が図れる。さらに、この構造によれば、後述する実施例のデータで示されるように、高次モードを高周波側へ移動させることができ、帯域外の特性も改善することができる。
いままで説明した図1から図4の構成では、入出力電極IN,OUTをキャパシタ素子C1,C2又はインダクタ素子を介して、共振器1,2の入力端,出力端(非接地端)に接続していたが、前記キャパシタ素子又はインダクタ素子に代えて、共振器1,2に結合された入力線路及び出力線路を用いてもよい。
この入力線路,出力線路としては、ストリップ線路、マイクロストリップ線路又はコプレーナ線路を含む構造を用いることができる。これらの線路は、共振器1,2に対してブロードサイド結合をする。
図5は、入力部及び出力部として、共振器1,2に結合された入力線路3及び出力線路4を含む構造を用いたバンドパスフィルタの断面を示す説明図である。
このように入力線路3及び出力線路4を用いた構造によれば、例えばキャパシタ素子又はインダクタ素子として集中定数素子としてのチップ部品などを用いて構成した場合のように誘電体基板上面に配置する必要がなくなり、部品点数を少なくでき、バンドパスフィルタの高さを低くすることができる。また、入力線路3や出力線路4は、誘電体層上に他の導体パターンを形成する場合に、他の導体パターンと同時に誘電体層上に形成することができるので、製造工程が増えることもない。
図6は、入力部及び出力部として、共振器1,2に結合された入力線路3及び出力線路4を含む構造を用いたバンドパスフィルタの他の形態の断面を示す説明図である。この構成と図5に示す構成との違いは、入力線路3への入力方向が、図5に示す入力方向とは反対に、共振器1の非接地端に向かう方向にあることである。また、出力線路4からの出力方向も、図5とは反対に、共振器2の接地端に向かう方向にある。
図7は、入力部及び出力部として、共振器1,2に結合された入力線路3及び出力線路4を含む構造を用いたバンドパスフィルタのさらに他の形態の断面を示す説明図である。このものは、図5,図6と異なり、共振器1,2の接地端がともに共振器1,2の同一側(図の右側)に配置された構成になっている。また、入力線路3への入力方向と出力線路4からの出力方向とは互いに逆方向になっている。
図8は、入力部及び出力部として共振器1,2に結合される入力線路3及び出力線路4を含む構造を用いたバンドパスフィルタのさらに他の形態の断面を示す説明図である。この図8の構成では、図7と同様に、共振器1,2の接地端はともに共振器1,2の同一側(図の右側)に配置されている。この構成と、図7の構成との違いは、図7では、バンドパスフィルタの入力端INと出力端OUTとが、共振器1,2の接地端と同じ側になっていたのに対して、図8では、反対側になっていることである。このため、信号の入出力端IN,OUTと、接地端とを反対側に配置することができる。
以上のように、図5〜図8に示す構造のバンドパスフィルタでは、信号の入出力に、共振器1,2に対して結合するストリップ線路などの線路を用いることができるので、集中定数素子を用いなくても済み、小型化と製造の容易化を図ることができる。それとともに、共振器の入力端,出力端及び接地位置を図5〜図8のように選択できるので、回路設計上の制約がある場合に、自由に対応できる。
なお、信号の入出力にストリップ線路などの線路を用いた場合、入力線路又は出力線路の幅は、積層方向から見て、前記共振器1,2と重なりあう部分の端(図5にTで示す)において、ステップ状に形成することが望ましい。上述のバンドパスフィルタの具体的形状については、後に図11以下を用いて詳しく説明する。
以上のバンドパスフィルタにおけるN(N≧2)個の共振器は、導体パターンおよび誘電体層が交互に複数積層されて形成される。例えば、上面に所定の導体パターンを有する誘電体層が複数積層されて形成される。
各誘電体層は、例えば、低温焼成用のセラミックス(LTCC; Low Temperature Co-fired Ceramics)で形成され、各誘電体層に形成される導体パターンは、銅や銀などの低抵抗導体によって形成される。特に、誘電率の高い誘電体を用いることによって、バンドパスフィルタの小型化を図ることができる。
このように導体パターンおよび誘電体層が交互に複数積層されてなる多層基板は、周知の多層セラミック技術によって形成されるもので、例えば、セラミックグリーンシートの表面に導電ペーストを塗布して各共振器を構成する導体パターンをそれぞれ形成した後積層し、所要の圧力と温度の下で熱圧着し、焼成して形成される。なお、各誘電体層には複数の層にわたって、上下の導体パターンを接続するために必要なビアホール導体が適宣形成される。
図9は、図2に示すバンドパスフィルタを、誘電体多層基板の内部に形成した構造を具体的に示す断面図であり、図10は、このバンドパスフィルタの導体パターンの配列を示す、A−A端面を見た斜視図である(誘電体層の図示は省略している)。
多層(3層以上)形成された誘電体層のうち、隣接する2層に、それぞれ共振器1,2を構成する導体パターンA1,A2が形成され、その上下の層に、各共振器1,2の端部を接地するためのグランド導体である接地パターンE1,E2が形成されている。なお、共振器1,2の導体パターンA1,A2が形成される層と、接地パターンE1,E2が形成される層とは、必ずしも上下に隣接している層である必要はない(2層以上離れていてもよい)。
接地パターンE1,E2と、共振器1,2を構成する導体パターンA1,A2とは、共振器1,2の接地端において、誘電体層を貫くビアホール導体5,6により接続されている。これにより、前記共振器1,2は接地端において接地される。
なお、共振器1の入力端(又は共振器2の入力端)は、ビアホール導体8(7)を介して最上段の誘電体層(つまり誘電体基板の主面)に形成されたパッドに接続されている。このパッドには、チップ状の集中定数キャパシタ素子C1(C2)が接続される。
共振器2の出力端(又は共振器1の出力端)も、入力端と同様、ビアホール導体7(8)を介して最上段の誘電体層の主面に形成されたパッド10,11に接続され、これらのパッド10,11にチップ状の集中定数キャパシタ素子C2(C1)が接続される。
以上では、図2に示したバンドパスフィルタを想定して、断面図、斜視図を用いて説明したが、図1のバンドパスフィルタについても、共振器1,2の入出力端、接地端の位置が違うだけで、基本的には同様の構造をとることができる。そして、図3,図4のバンドパスフィルタでは、共振器1,2にキャパシタ素子C3,C4を接続するが、そのキャパシタ素子C3,C4と接地パターンE1,E2との接続構造も、上記の図9,図10について説明したのと同様、ビアホール導体を介して行うことができる。
次に、図5〜図8に示した入出力線路を用いたバンドパスフィルタを、誘電体多層基板の内部に形成した構造の具体例を説明する。
図5〜図8に示すバンドパスフィルタは、入力部及び出力部として、共振器1,2に結合された入力線路3及び出力線路4を含む構造を用いている。図5〜図8に示すバンドパスフィルタでは、入力線路3と出力線路4の間に挟まれた共振器1,2の端部を接地する必要がある。
そこで、各共振器1,2の端部を接地するためのグランド導体(接地パターン)を、共振器1,2及び入出力線路3,4を構成する各導体パターンの上下の誘電体層に設けるか、または、共振器1,2が形成されている誘電体層と同じ層に設けるなどの構造が採用できる。
図11〜図14に、共振器1,2の端部を接地するためのグランド導体(接地パターンE1,E2)を、共振器1,2と同じ誘電体層に設けた具体例を示す。
図11は、入力線路3が設けられた誘電体層(1層)、共振器1,2が設けられた誘電体層(2層、3層)、出力線路4が設けられた誘電体層(4層)を分解して示す平面図である。このバンドパスフィルタの積層構造は、図5にて説明したバンドパスフィルタに対応するものである。
この構造によれば、2層、3層には、一部に「コ」の字状の空隙が形成された導体パターンが設けられることで、矩形状の共振器1,2が形成されるとともに、この共振器1,2の一端(接地端)のみが接地されるように、共振器1,2の周囲を囲んでグランド導体(接地パターンE1,E2)が形成されている。ここで、「コ」の字状の空隙とは、共振器1,2の周囲であって接地端以外の部分に形成された空隙である。
1層に設けられた入力線路3の幅W、2層に設けられた共振器1の幅、3層に設けられた共振器2の幅、4層に設けられた出力線路4の幅Wは、ともに略同一となっている。そして、1層に設けられた入力線路3の幅Wは、積層方向から見て、前記共振器1,2と重なりあう部分の端(信号入力端)Tにおいてステップ状に狭くなっている。狭くなった幅をWaで示す。また、4層には出力線路4が設けられているが、1層と同様、その幅Wは、積層方向から見て、前記共振器1,2と重なりあう部分の端(信号出力端)Tにおいてステップ状に狭くなっている。これにより、減衰極の制御ができるようになる。従って、減衰特性の改善に有利になる。
以上のように、図11の構造によれば、共振器1,2とグランド導体(接地パターンE1,E2)とを同一層に設けているので、共振器1,2を他の層の接地パターンとビアで接続しなくても、共振器1,2の端部が接地される。これにより、一度の工程で導体パターンを形成でき、製造工程が増えず製造容易であるという利点がある。
また、図12は図6に対応するバンドパスフィルタの積層構造を示し、図13は図7に対応するバンドパスフィルタの積層構造を示し、図14は図8に対応するバンドパスフィルタの積層構造を示している。この構造も図11に示す構造と同様に、2層、3層には、一部に「コ」の字状の空隙が形成された導体パターンが設けられることで、矩形状の共振器1,2が形成されるとともに、この共振器1,2の一端(接地端)のみが接地されるように、共振器1,2の周囲を囲んで接地パターンE1,E2が形成されている。いずれの構造も、共振器1,2と接地パターンE1,E2は同一層に設けられるので、一度に形成でき、製造工程が増えず製造容易であるという利点がある。また入力線路3又は出力線路4の幅は、積層方向から見て、前記共振器1,2と重なりあう部分の端面Tにおいて、ステップ状に形成されているので、これにより、減衰極の制御ができるようになる。従って、減衰特性の改善に有利になる。
なお、図11〜図14に示す構造は、空隙の幅(共振器と接地パターンとの距離)が広ければ、共振器の接地端に対する他端としての非接地端と、グランド導体における非接地端に近接する部位との間でのキャパシタンスは考慮する必要はない。しかし、空隙の幅が狭ければ、これらの間でのキャパシタンスが形成される構造になっており、後述の図15にも相当することとなる。ただし、この図15は具体的形態として図16や図17に示すように、共振器の接地端に対する他端としての非接地端と、グランド導体における非接地端に近接する部位との間にさらにキャパシタンスを付加する構成を想定した説明図である。
図15は、本発明の実施の形態の一例である、入力部及び出力部として共振器1に結合される入力線路3及び出力線路4を含む構造を用い、共振器1の非接地端とグランド導体との間にキャパシタンスが付加されているバンドパスフィルタの回路構成を示す断面図である。
この図15の構成では、図5の構造に、さらに共振器1の非接地端がキャパシタ素子Cを介して接地されている。この構成により、共振器1の実効長の一部がキャパシタ素子Cにより置換され、共振器1の信号伝搬方向の長さをλ/4よりも短縮することができる。また、高次モードを高周波側へ移動させることができ、帯域外のS21特性を改善することができる。なお、このようにキャパシタンスを付加する方法は、図5〜図8までの構造に適用可能である。
このキャパシタンスを付加してなる形態としては、具体的には、図16に示すように、接地パターンを段階的に幅が変化するステップ状に形成して、共振器1,2の周囲の接地端以外の部分に形成された空隙(「コ」の字状の空隙)のうちの非接地端寄りの領域の幅を狭く形成したものが挙げられる。この構造によれば、空隙の幅を狭くした領域でキャパシタンスが発生し、当該共振器1,2の信号伝搬方向の長さを図11に示す構造よりもさらに短縮することができる。また、高次モードを高周波側へ移動させることができ、帯域外の特性も改善することができる。さらにこのステップ状構造により、共振器における接地端側と接地パターンとの空隙の幅を離すことで共振器のQ値を向上させることができる。
また、キャパシタンスを付加してなる形態としては、図17に示すように、図11のバンドパスフィルタの積層構造に対して、積層方向にキャパシタンスを形成させた構造のものが挙げられる。
具体的には、共振器1における非接地端の上側または下側に近接して第一の導体91が設けられるとともに、第一の導体91とグランド導体(接地パターンE1)とを接続するビア導体51が設けられることにより、共振器1と第一の導体91との間でキャパシタンスが形成されるようになっている。この構造によれば、同一平面で形成されるキャパシタンスよりも大きなキャパシタンスを得ることができ、共振器1の信号伝搬方向の長さをさらに短縮することができる。また、高次モードもさらに高周波側へ移動させることができ、帯域外の特性も改善することができる。
図18は、入力部及び出力部として共振器1に結合される入力線路3及び出力線路4を含む構造を用い、共振器1,2にインダクタンスを付加してなるバンドパスフィルタを示す断面図である。この図18の構成では、図5の構造に、例えば積層方向から見て共振器1の接地端側が非接地端側に比して狭くなるような形状にするなどにより、共振器1の接地端側にインダクタンスが付加されている(インダクタ素子Lを介して接地されている)。これにより、共振器1の実効長の一部がインダクタ素子Lにより置換され、共振器1の信号伝搬方向の長さを図11に示す構造よりも短縮することができる。また、図15に示すキャパシタンスを付加する方法と同様に、高次モードを高周波側へ移動させることができ、帯域外の特性も改善することができる。なお、このようにインダクタンスを付加する方法は、図5〜図8までの構造に適用可能である。
具体的には、各共振器が、積層方向から見て、接地端側に向かって段階的または連続的に狭くなるように形成されたものであって、図19に示すものは、ステップ状に(段階的に)形成されている。この構造によれば、大きなインダクタンスを得ることができ、当該共振器1の信号伝搬方向の長さを図11に示す構造よりも短縮することができる。また、高次モードもさらに高周波側へ移動させることができ、帯域外の特性も改善することができる。
なお、キャパシタンスを付加する構造とインダクタンスを付加する構造とは、組み合わせて同時に用いられてもよい。
また、入力部と出力部との間に、電磁気的な結合手段として、換言すれば、回路的にはキャパシタンスまたはインダクタンスが付加されているのが好ましい。例えば、バンドパスフィルタとして、入力線路、N段(図は3段)の共振器、出力線路を含む構造において、図20には入力線路と出力線路との間にキャパシタンス性の飛び越し結合を設けたものが示され、図21には入力線路と出力線路との間にインダクタンス性の飛び越し結合を設けたものが示されている。
このように、入力線路と出力線路との間にキャパシタンスやインダクタンスを付加して電磁気的な結合をさせることにより、通過帯域外であって通過帯域と帯域外との境界近傍に新たな減衰極を形成することができ、さらに急峻なスカート特性を得ることができる。
上述の具体的構造としては、図22に示すように、入力線路3と同一平面上に第二の導体92が設けられ、出力線路4と同一平面上に第三の導体93が設けられ、第二の導体92と第三の導体93とを接続するビア導体51が設けられることにより、入力線路3と出力線路4との間にキャパシタンスまたはインダクタンスが付加されている構造が挙げられる。この構造により、入力線路と出力線路との間は電磁気的に結合され、図20に示すキャパシタンスおよび図21に示すインダクタンスを併せ持つようになっている。このように、同一平面でエッジ結合をさせる構造の場合、弱い結合が得やすく高域側に減衰極を形成するのが容易であるという利点がある。この構造に対するシミュレーションの結果に関しては図39に示す。
また、図23および図24には、入力線路3の下側に近接して第二の導体92が設けられ、出力線路4の上側に近接して第三の導体93が設けられ、第二の導体92と第三の導体93とを接続するビア導体51が設けられることにより、入力線路3と出力線路4との間に電磁気的な結合手段としてキャパシタンスまたはインダクタンスが付加されている構造が示されている。ここで、第二の導体92は入力線路3の幅の狭い領域3aと結合し、第三の導体93は出力線路4の幅の狭い領域4aと結合するようになっている。
なお、図23に示す構造では、第二の導体92および第三の導体93がグランド導体としての接地パターンE1につながっており、図24に示す構造では、第二の導体92および第三の導体93がグランド導体としての接地パターンE1につながっていないが、どちらも高域側の通過帯域外であって通過帯域と帯域外との境界近傍に新たな減衰極を形成することができ、急峻なスカート特性を得ることができる。特に、図24の場合には、図23と比較して減衰極を多く形成することができ、スカート特性および帯域外特性の改善に効果的である。
また、図25および図26には、入力線路3の上側に近接して第二の導体92が設けられ、出力線路4の下側に近接して第三の導体93が設けられ、第二の導体92と第三の導体93とを接続するビア導体51が設けられることにより、入力線路3と出力線路4との間にキャパシタンスまたはインダクタンスが付加されている構造が示されている。ここで、第二の導体92は入力線路3の幅の広い領域と結合し、第三の導体93は出力線路4の幅の広い領域と結合するようになっている。この場合、図23および図24に示す構造とは異なり、低域側に減衰極を形成するのが容易であるという利点がある。
なお、第二の導体92および第三の導体93が、積層方向から見て、ビア導体51に接続される部位に向かって段階的または連続的に狭くなるように形成されているのが、インダクタンスを持たせ減衰極の位置を低域側にする点から望ましい。
また、任意の二個の共振器間に、電磁気的な結合手段としてキャパシタンスまたはインダクタンスが付加されているのが好ましい。例えば、バンドパスフィルタとして、入力線路、3段の共振器、出力線路を含む構造において、図27には任意の二個の共振器間にキャパシタンス性の飛び越し結合を設けたものが示され、図28には任意の二個の共振器間にインダクタンス性の飛び越し結合を設けたものが示されている。このように、任意の二個の共振器間にキャパシタンスやインダクタンスを付加して電磁気的な結合をさせることにより、入力部と出力部との間に電磁気的な結合手段としてキャパシタンスまたはインダクタンスを付加するのと同様に、通過帯域外であって通過帯域と帯域外との境界近傍に新たな減衰極を形成することができ、さらに急峻なスカート特性を得ることができる。
図27と図28に示したキャパシタンス性の結合およびインダクタンス性の結合は、同時に存在することも可能である。また、バンドパスフィルタの段数が増えた場合、その組み合わせも増すこととなる。例えば、5段フィルタを考えた場合、1段目の共振器と5段目の共振器に結合を持たせても良いし、2段目の共振器と4段目の共振器に結合を持たせても良い。また、場合によっては、入力線路と共振器との間や出力線路と共振器との間に、電磁気的な結合手段としてキャパシタンスまたはインダクタンスを付加してもよい。例えば、入力線路と2段目の共振器に飛び越し結合を持たせ、出力線路と4段目の共振器に飛び越し結合を持たせることができる。
上述の具体的構造としては、各共振器のうちの任意の一個の共振器と同一平面上に第四の導体94が設けられ、前記任意の一個の共振器とは異なる共振器と同一平面上に第五の導体95が設けられ、前記第四の導体94と前記第五の導体95とを接続するビア導体51が設けられることにより、前記任意の二個の共振器間に前記キャパシタンスまたは前記インダクタンスが付加されている構造が挙げられる。このような構造は、入力線路3と出力線路4との間にキャパシタンスまたはインダクタンスが付加されている構造としてすでに述べた図24に示す構造にも相当する。すなわち、図24に示す構造における第二の導体92および第三の導体93は、これらと同一平面上に配置された共振器との間においてもキャパシタンス、インダクタンスの電磁気的な結合が付加された構造になっている。
また、図29に示すように、各共振器のうちの任意の一個の共振器の上側または下側に近接して第四の導体94が設けられ、前記任意の一個の共振器とは異なる共振器の上側または下側に近接して第五の導体95が設けられ、前記第四の導体94と前記第五の導体95とを接続するビア導体51が設けられることにより、前記任意の二個の共振器間に前記キャパシタンスまたは前記インダクタンスが付加されている構造が挙げられる。この構造により、任意の共振器間は電磁気的に結合され、図27に示すキャパシタンスおよび図28に示すインダクタンスを併せ持つようになっている。この場合、図25および図26に示す構造と同様に、低域側に減衰極を形成するのが容易であるという利点がある。
なお、第四の導体94および第五の導体95が、積層方向から見て、ビア導体51に接続される部位に向かって段階的または連続的に狭くなるように形成されているのが、インダクタンスを持たせ減衰極の位置を低域側にする点から望ましい。
いままで述べた構成の組み合わせの一例として、図30には図19、図22、図29の構成が組み合わされた例を示している。このものは、各共振器が、積層方向から見て接地端側に向かってステップ状に(段階的に)形成されている。また、入力線路3と同一平面上に第二の導体92が設けられ、出力線路4と同一平面上に第三の導体93が設けられ、第二の導体92と第三の導体93とを接続するビア導体51が設けられることにより、入力線路3と出力線路4との間にキャパシタンスまたはインダクタンスが付加されている。さらに、各共振器のうちの任意の一個の共振器の上側または下側に近接して第四の導体94が設けられ、前記任意の一個の共振器とは異なる共振器の上側または下側に近接して第五の導体95が設けられ、前記第四の導体94と前記第五の導体95とを接続するビア導体51が設けられることにより、前記任意の二個の共振器間に前記キャパシタンスまたは前記インダクタンスが付加されている。
ここで、図30に示す構造のバンドパスフィルタにおいては、1層目の入力線路3と3層目の第四の導体94との間に、2層目として一個の共振器1が設けられているが、この共振器1とグランド導体としての接地パターンE1との間の間隙を介して、入力線路3と第四の導体94とが不要な結合を起こして共振が発生してしまい、帯域外に不要な共振ピークが発生してしまうことがある。このことは、9層目の出力線路4と7層目の第五の導体95との間でも同様に起こることである。
そこで、図31に示すように、2層目の共振器1により第四の導体94が入力線路3から覆われ、8層目の共振器1により第五の導体95が出力線路4から覆われるように形成されているのが好ましい。ここで、覆われているとは、入力線路3から見て2層目における共振器1とグランド導体としての接地パターンE1との間の間隙を介して3層目における第四の導体94が露出するような位置に形成されていないことをいい、また出力線路4から見て8層目における共振器1とグランド導体としての接地パターンE1との間の間隙を介して7層目における第五の導体95が露出するような位置に形成されていないことをいう。このとき、第四の導体94は4層目の共振器1の内部に独立して形成された線路状の第六の導体96の一端にビア導体で接続され、第五の導体95は6層目の共振器の内部に独立して形成された線路状の第七の導体97の一端にビア導体で接続され、第六の導体96と第七の導体97の他端同士がビア導体で接続される。このようにすることで、入力線路3と第四の導体94の間および出力線路4と第五の導体95の間の不要な結合を抑えることができる。なお、独立してとは、第六の導体96または第七の導体97が、この周囲に形成されたスリットにより、共振器1とは分離されていることを意味するものである。
さらに、図32に示すように、入力線路3から見て2層目における共振器1とグランド導体としての接地パターンE1との間の間隙を介して4層目における第六の導体96が露出しないように、図31に示す3層目の接地パターンE1の形状を図32に示す突起部E11を設けた形状に変更しこの突起部E11で第六の導体96が覆われるようにするとともに、出力線路4から見て8層目における共振器1とグランド導体としての接地パターンE1との間の間隙を介して6層目における第七の導体97が露出しないように、図31に示す7層目の接地パターンE1の形状を図32に示す突起部E11を設けた形状に変更しこの突起部E11で第七の導体97が覆われるようにするのが好ましい。
このような構造にすることで、図30に示した構造よりも優れた帯域外特性と低域側および高域側の減衰極の形成を実現することができる。
次に、積層して配置された共振器1,2を、横に2列構成した他の構造のバンドパスフィルタを説明する。
図33は、この構造のバンドパスフィルタを示す説明図であり、図34は、図33の具体例として、入力線路3及び出力線路4が設けられた誘電体層(1層)、共振器1a,2aが設けられた誘電体層(2層)、共振器1b,2bが設けられた誘電体層(3層)、結合導体が設けられた誘電体層(4層)を分解して示す平面図である。
この構造によれば、1層に入力線路3と出力線路4とが形成され、入力線路3、出力線路4の幅Wは、その信号入力端、信号出力端においてステップ状に狭くなっている。
また2層には、全面に接地パターンE1が形成されているとともに、接地パターンE1の各列に対応する部分に「コ」の字状の空隙を設けて共振器1a,2aを形成している。また3層には、全面に接地パターンE2が形成されているとともに、接地パターンE2の各列に対応する部分に「コ」の字状の空隙を設けて共振器1b,2bを形成している。なお、「コ」の字状の空隙とは、共振器1,2の周囲であって接地端以外の部分に形成された空隙のことをいうものである。
4層には、誘電体層の全面に設けられた接地パターンE3に四角枠状の空隙を形成している。この溝の内部が結合導体12となる。結合導体12は、いずれの導体とも接続されない構造となっている。この結合導体12の信号伝搬方向の長さは、通過帯域の略中心周波数における誘電体層内部の伝搬波長をλとすると、基本的にλ/2である。この結合導体12は、最下面の共振器1b,2b同士を結合する機能を持つ。
以上に説明したように、図5と同様のバンドパスフィルタを横に2列構成して、結合導体12によって、信号を折り返すようにしている。
したがって、バンドパスフィルタの高さを半分にできるので、これを搭載する無線通信装置の低背化を実現できる。それととともに、入力線路3と出力線路4とを同一誘電体上に形成することができるので、入出力信号の出し入れが簡単になる。
最後に、以上に説明したバンドパスフィルタを搭載する無線通信機器の構成例を、図35に示す。
図35によれば、無線通信機器は、ベースバンド信号を処理するベースバンドIC25、高周波信号を処理するRFIC24、平衡信号と不平衡信号を変換するバラン23、本発明のバンドパスフィルタ22、送受信を切り替える高周波スイッチ21及びアンテナより構成される。
前記RFIC24は、ベースバンドIC25より取得される送信信号の周波数変換、高周波増幅を行うとともに、受信信号の低雑音増幅を行う。前記高周波スイッチ21は、送信と受信との経路を時間的に切り換えるスイッチである。
バンドパスフィルタ22は、UWBの送受信信号の帯域を通過させ、帯域外の信号をシャープに減衰させる帯域通過フィルタとして機能する。この機能により、送受信信号を減衰させることなく、他のシステムとの相互干渉を防止することができる。
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更を施すことが可能である。
図1のフィルタの上下に接地導体を設けた構成にて、バンドパスフィルタの通過特性S21及び反射特性S11を、シミュレーションソフトを使って算出した。算出条件は、誘電体の比誘電率9.4、キャパシタC1=C2=0.6pF、共振器1,2の長さL=4mm,共振器1,2間の距離S=0.06mm,上下の接地導体間の距離D=0.9mm、共振器1,2の幅W=0.1mmとした(各部の寸法は図10参照)。
その結果を図36のグラフに示す。グラフの横軸は周波数、縦軸は減衰量を表す。
図36によると、3.16GHzから4.75GHzの約1.5GHzの通過帯域内で通過損失が1.5dB未満であることが示されている。また、約6GHz近傍に減衰極が発生している。さらに5.75GHz以上においても、10GHzまでにわたって8dBの減衰量を呈していることが示されている。
したがって、図1に示す構造のバンドパスフィルタにより、1.5GHzの広帯域において低損失かつ、急峻な減衰特性を持つフィルタが実現できることが理解できる。また、フィルタの厚みDは0.9mmと十分低いので、低背の無線通信機器に搭載できる。
図37は、図2の入出力端が反対側にあるバンドパスフィルタを上下の接地導体間に挟んだ場合の、通過特性S21及び反射特性S11を示すグラフである。算出条件は、誘電体の比誘電率9.4、キャパシタC1=C2=3pF、共振器1,2の長さL=4mm,共振器1,2間の距離S=0.06mm,上下の接地導体間の距離D=0.9mm、共振器1,2の幅W=0.1mmとした。
図37のグラフによれば、図36に比べて通過帯域がさらに広くなっている。通過帯域内で通過損失が1.5dB未満であることが示されている。また、通過帯域外の減衰量も十分な値が得られている。このように広帯域が実現されたのは、共振器1,2の接地端が互い違いとなるように配置していることにより、共振器どうしの結合量が増大したためと考えられる。
図38は、図3の入出力端が同一側にあり、共振器1,2の非接地端が、集中定数キャパシタ素子C1,C2を介して接地されているバンドパスフィルタを上下の接地導体間に挟んだ場合の、通過特性S21及び反射特性S11のグラフである。算出条件は、誘電体の比誘電率9.4、キャパシタC1=C2=0.8pF、キャパシタC3=C4=0.2pF、共振器1,2間の距離S=0.06mm,上下の接地導体間の距離Dは0.9mm、共振器1,2の幅W=0.1mmとした。ただし、共振器1,2の長さLは、4mmよりも短い値3.5mmとした。
図38のグラフによれば、図36に比べて広帯域化が実現できている。また、共振器1,2の長さLを短くできることから、このバンドパスフィルタが搭載される無線通信機器の小型化に、さらに有利になると考えられる。
図39は、信号の入力部及び出力部として、共振器1,2に結合された入力線路3及び出力線路4を用い、かつ接地パターンE1,E2を、共振器1,2を形成されている誘電体層上に形成したバンドパスフィルタ、すなわち図5及び図11の構成のバンドパスフィルタの通過特性S21及び反射特性S11のグラフを示す。算出条件は、誘電体の比誘電率2.2、共振器1,2の長さL=7mm、入出力線路3及び共振器1の距離 0.51mm、共振器1,2間の距離S=0.51mm,共振器2及び入出力線路4の距離 0.51mm、上下の入出力線路3,4間の距離Dは1.55mm、入出力線路3,4及び共振器1,2の幅W=3.8mm、Wa=1.6mmとした。
図39のグラフによれば、通過帯域において、3dB程度の通過減衰量があるものの、広帯域の通過特性が得られていることが分かる。
図40は、図33及び図34に示す、上下2段に配置された共振器を、横に2列構成したバンドパスフィルタの通過特性S21及び反射特性S11のグラフである。算出条件は、誘電体の比誘電率2.2、共振器1,2の長さL=7mm、入出力線路3及び共振器1の距離0.51mm、共振器1,2間の距離S=0.51mm,共振器2及び入出力線路4の距離0.51mm、上下の入出力線路3,4間の距離Dは1.55mm、入出力線路3,4及び共振器1,2の幅W=3.8mm、Wa=1.6mmとした。
図40のグラフによれば、通過帯域の損失が低下しているものの、広帯域の通過特性が得られると同時に、帯域外の減衰特性が急峻性を増していることがわかる。
図41は、信号の入力部及び出力部として、共振器1に結合された入力線路3及び出力線路4を用い、かつ接地パターンE1を、共振器1を形成されている誘電体層上に形成し、各共振器にインダクタンスを付加したバンドパスフィルタ、すなわち図18及び図19に示す構成の5段フィルタの通過特性S21のグラフを示す。ここで、図19に示す構成とは、各共振器が、積層方向から見て、接地端側に向かってステップ状に(段階的に)形成されたものである。なお、比較のため、新たな減衰極を形成していない図11に示す構造(図19の電極のステップがない構造)の5段フィルタの計算結果を併せて示す。算出条件は、誘電体の比誘電率2.2、従来の共振器1の長さ=7mm、ステップ形成の共振器の長さL=5.5mm(内ステップ部W0=0.6mm、L0=0.4mm)、入力線路3及び共振器1の距離 0.2mm、共振器間の距離S=0.65mm,共振器及び出力線路4の距離 0.2mm、入出力線路3,4及び共振器1の幅W=3.2mm、Wa=0.6mm、長さL=5.5mmとした。
図19の構造にすることで、共振器長に関しては、図11に示す構造よりも1.5mm短縮し、小型化することができる。また、図41のグラフによれば、高域側の帯域外特性が大きく改善されている。例えば、この場合、−20dB以下の減衰域は、図11に示す構造は15GHzまでだったのに対して図19の構造にすることで19GHzまで改善されている。
図42は、信号の入力部及び出力部として、共振器1に結合された入力線路3及び出力線路4を用い、共振器1を取り囲むように接地パターンE1を形成し、入力線路3および出力線路4のそれぞれの同一平面上に導体を形成するとともにこれらをビア導体51で接続して入力と出力が結合されているバンドパスフィルタ、すなわち図22の構成の5段バンドパスフィルタの通過特性S21のグラフを示す。ここで、比較のため、新たな減衰極を形成していない図13に示す構造(図22の第二の導体92、第三の導体93、ビア導体がない構造)の5段フィルタの計算結果を併せて示す。算出条件は、誘電体の比誘電率2.2、共振器1の長さL=7mm、入出力線路3及び共振器1の距離 0.2mm、共振器間の距離S=0.75mm,入出力線路3,4及び共振器1の幅W=3.4mm、Wa=0.6mm、電極9の幅W=0.8mm、長さL=0.7mm、電極9と入力線路3および出力線路4との距離g=0.7mmとした。
図42のグラフによれば、図22に示す構造では高域側に新たな減衰極が形成され、図13に示す構造に比べて急峻なスカート特性が達成できている。この手法を用いることで少ない段数で急峻なスカート特性を得ることが可能となり、小型化、低損失化に有効である。
図43は、信号の入力部及び出力部として、共振器1に結合された入力線路3及び出力線路4を用い、共振器1を取り囲むように接地パターンE1を形成し、任意の共振器の上側または下側に近接して導体を形成するとともにこの共振器と異なる共振器の上側または下側に近接して導体を形成し、これらをビア導体51で接続してなるバンドパスフィルタ、すなわち図29の構成の5段バンドパスフィルタの通過特性S21のグラフを示す。ここで、比較のため、新たな減衰極を形成していない図13に示す構造(図25の第四の導体94、第五の導体95、ビア導体51がない構造)の5段フィルタの計算結果を併せて示す。算出条件は、誘電体の比誘電率2.2、共振器1の長さL=7mm、入出力線路3及び共振器1の距離 0.2mm、共振器間の距離S=0.75mm,入出力線路3,4及び共振器1の幅W=3.4mm、Wa=0.6mm、電極9の幅W=3.4mm、長さL=6.6mm、電極9と4層目および7層目の共振器1との距離d=0.2mmとした。
図43のグラフによれば、図29に示す構造では低域側に新たな減衰極が形成され、図13に示す構造に比べて急峻なスカート特性が達成できている。この手法を用いることで少ない段数で急峻なスカート特性を得ることが可能となり、小型化、低損失化に有効である。
また、さらに図22の構造と図29の構造を作ることにより高域側と低域側に減衰極が形成でき、急峻なスカート特性を得ることが可能である。
さらに、図30に示したパターン構造のバンドパスフィルタの通過特性S21を、シミュレーションソフトを使って算出した。算出条件は、誘電体の比誘電率2.2、ステップ形成の共振器1の長さL=5.2mm、幅W=3.2mm(内ステップ部の幅W0=1.1mm、長さL0=0.4mm)、入力線路3及び共振器1の距離 0.2mm、共振器間の距離S=0.65mm,共振器及び出力線路4の距離 0.2mm、入出力線路3,4の幅W=3.2mm、長さL=5.4mm、入出力線路3a,4aの幅Wa=0.6mmとした。また、電極92、93の長さLg=0.7mm、幅Wg=1.0mmと入力線路3および出力線路4との距離g=0.5mmとした。第四の導体94、第五の導体95の幅W=3.0mm、長さL=4.4mm、また、線路2はW=0.1mm、長さL=1.2mm、第四の導体94、第五の導体95と4層目および6層目の共振器1との距離d=0.2mmとした。
一方、図32に示した構造のバンドパスフィルタの通過特性S21を、シミュレーションソフトを使って算出した。算出条件は、誘電体の比誘電率2.2、ステップ形成の共振器1の長さL=5.2mm、幅W=3.2mm(内ステップ部の幅W0=1.2mm、長さL0=0.4mm)、入力線路3及び共振器1の距離 0.2mm、共振器間の距離S=0.65mm,共振器及び出力線路4の距離 0.2mm、入出力線路3,4の幅W=3.2mm、長さL=5.4mm、入出力線路3a,4aの幅Wa=0.6mmとした。また、第二の導体92、第三の導体93の長さLg=0.6mm、幅Wg=1.0mmと入力線路3および出力線路4との距離g=0.5mmとした。第四の導体94、第五の導体95の幅W=3.0mm、長さL=3.6mm、また、4層目の第六の導体96および6層目の第七の導体97はW=0.2mm、長さL=2.0mm、第四の導体94、第五の導体95と4層目および6層目の共振器1との距離d=0.2mmとした。また、3層目および7層目の突起部E11の大きさは、幅W=1.2mm、長さL=0.8mmとした。
これらの計算結果を図44に示す。
図44のグラフによれば、図30と図32のどちらの構造を用いても低域側および高域側に減衰極が形成され、急峻なスカート特性が達成できている。この手法を用いることで少ない段数で急峻なスカート特性を得ることが可能となり、小型化、低損失化に有効である。しかしながら、図30に示す構造では、帯域外に鋭い共振ピークが発生し、帯域外特性をやや劣化させている。一方、図32に示す構造では、この共振ピークを抑制し、広範囲に渡り、良好な帯域外特性が達成されている。